説明

触媒装置およびリーン条件下で運転される内燃機関の排ガスを浄化する方法

本発明はリーン条件下で運転される内燃機関の排ガスを浄化するための触媒装置に関する。壁厚の薄い多孔質担体の片面を窒素酸化物貯蔵触媒で被覆し、かつ他方の面をSCR触媒で被覆することが提案される。排ガスが触媒被覆および支持材料を通過する際に、別々の担体上の触媒の直列配置と比較して窒素酸化物の変換率における著しい改善が達成される。壁厚の薄い担体としてウォールフローフィルターが有用であることが判明した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリーン条件下で運転される内燃機関からの排ガスの浄化、特にディーゼルエンジンからの排ガスの浄化に関する。本発明は触媒装置およびこれらのエンジンからの排ガスの浄化方法を記載する。
【0002】
リーン条件下で運転される内燃機関を以下ではリーンバーンエンジンともよぶ。これらは希薄混合気を使用して運転される。従ってその排ガスは通常の汚染物質である一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)および燃焼されなかった炭化水素(HC)および粒子状物質(PM)のみではなく、15体積%までの高い割合の酸素も含有しているので、排ガスはネット酸化作用を有する。この理由のために、通常は化学量論的に運転される内燃機関のための三元触媒による排ガス浄化法を使用することはできない。特に窒素酸化物の窒素への変換は酸化性排ガス雰囲気中では著しく困難である。
【0003】
リーンバーンエンジンの排ガス中の窒素酸化物の主成分は一酸化窒素(NO)および二酸化窒素(NO)であり、その際、一酸化窒素が主要な成分である。内燃機関の運転条件に依存して、一酸化窒素の比率は全窒素酸化物の60〜95体積%である。
【0004】
酸化性排ガスの窒素酸化物を低減するために、選択的接触還元(SCR)の方法が久しく公知である。この場合、アンモニアを還元剤として排ガスに添加し、かつこの気体混合物を次いで選択的接触還元のための触媒(SCR触媒)に通過させる。窒素酸化物は選択的にSCR触媒上でアンモニアと反応して窒素と水を形成する。この方法は目下、発電所からのオフガスの浄化において一般的に使用されている。一般的なSCR触媒は触媒活性成分としてたとえばTiO/WO/MoO/V/SiO/SOの系からの固体酸を含有する。その他のSCR触媒は遷移金属により置換された耐酸性のゼオライト、たとえば脱アルミニウムYゼオライト、モルデナイト、ケイ酸塩またはZSM−5をベースとする。これらの触媒の使用温度は約300〜500℃である。
【0005】
排ガスに還元剤を添加する必要性に基づいて、SCR法は自動車のための適用で使用するためには極めて複雑である。この理由のため、NO貯蔵技術がSCR法の代替法として開発されてきた。この場合、リーン排ガス中に存在する窒素酸化物は一時的に硝酸塩の形で窒素酸化物貯蔵触媒上に貯蔵される。貯蔵触媒の貯蔵容量が尽きた後、該触媒を再生しなくてはならない。この目的のために内燃機関は濃厚混合気を使用して簡単に運転される、つまり燃焼空気を使用して完全燃焼することができるよりも多くの燃料が混合気に導入されるため、排ガスはリッチである。従って該排ガスは燃焼していない炭化水素を含有する。貯蔵された硝酸塩は還元剤としてリッチな排ガス中で窒素酸化物へと分解され、かつリッチな排ガス中に存在する燃焼していない炭化水素と反応して窒素と水を形成する。
【0006】
窒素酸化物を硝酸塩の形で貯蔵するために、窒素酸化物貯蔵触媒はアルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、およびまた希土類金属の酸化物、たとえば酸化セリウムおよび酸化ランタンのような塩基性成分を含有する。酸化バリウムおよび酸化ストロンチウムを使用することが有利である。加えて、窒素酸化物貯蔵触媒はさらに触媒活性貴金属、通常は白金を含有する。これらの貴金属の役割は排ガス中に主として存在する一酸化窒素を二酸化窒素へと酸化することである。これのみが排ガス中の水蒸気の存在下で貯蔵成分と反応して硝酸塩を形成することができる。貯蔵触媒の再生中に脱着された窒素酸化物は触媒活性貴金属上で窒素と水とに還元される。
【0007】
希薄混合気および濃厚混合気を交互に用いてエンジンを周期的に運転することはリーンバーンエンジンの排ガスの浄化のための窒素酸化物貯蔵技術の使用にとって必要である。この場合、リーン運転がリーンバーンエンジンの通常の運転モードである。運転のこの段階の間に排ガス中の窒素酸化物は貯蔵触媒によって貯蔵される(貯蔵段階)。リッチ運転の間、窒素酸化物は再び脱着し、かつ反応する(脱着段階)。この貯蔵段階は通常、1〜2分継続し、その一方で脱着段階は5〜20秒の短い期間を必要とするのみである。
【0008】
リーンバーンエンジンの排ガスを浄化するために適用される場合に上記の2つの方法を改善するためには、種々の解決手段が公知となっている。欧州特許明細書EP0733354A1は、還元のために必要とされるアンモニアを排ガス中に存在する窒素酸化物から発生させる選択的接触還元法を記載している。この目的のために、排ガス浄化ユニットは、三元触媒および下流のSCR触媒を有する。リーンバーンエンジンは、窒素酸化物貯蔵技術の場合と同様に、濃厚混合気および希薄混合気により交互に運転される。濃厚混合気による運転の間、三元触媒上で排ガス中に存在する窒素酸化物からアンモニアが形成される。この段階の間、アンモニアは下流のSCR触媒上に貯蔵される。希薄混合気による運転の間、窒素酸化物は三元触媒を通過し、かつSCR触媒上で前もって貯蔵されていたアンモニアにより選択的に窒素と水とに変換される。従ってEP0733354A1により記載された方法では、アンモニアは車両に搭載された状態で生成され、かつ排ガスへ別個に導入する必要はない。
【0009】
ドイツ国特許明細書DE19820828A1は、EP0733354A1の方法の改善を記載している。この目的のために、窒素酸化物貯蔵触媒を三元触媒の上流に設置する。リーン段階の間、窒素酸化物貯蔵触媒は、排ガス中に存在する窒素酸化物の大部分を貯蔵する。リッチ段階の間には窒素酸化物は脱着され、かつ三元触媒により部分的にアンモニアへと変換される。DE19820828A1により記載される排ガス浄化装置はEP0733354A1の装置と比較して窒素酸化物の変換の度合いが改善されていると記載されている。
【0010】
しかしいずれの解決手段も装置の観点から極めて複雑である。これらは少なくとも2つの別々の触媒ユニットを必要とし、かつこれらの触媒が達成することができる窒素酸化物の変換率はさらに改善しなくてはならない。従って本発明の課題は、従来技術から公知の装置よりも著しく簡単な構造を有し、かつ窒素酸化物の変換における一層の改善を達成することができるような装置を提供することである。
【0011】
この課題は、排ガスのための入口面と出口面とを有する開放気孔の多孔質担体からなる触媒装置により解決される。該触媒装置において、担体の入口面および出口面は異なった触媒活性層により被覆されており、その際、出口面の触媒層は選択的接触還元のための触媒により形成されており、かつ入口面の触媒層はリーン排ガス条件下で窒素酸化物を貯蔵し、かつ該窒素酸化物をリッチ排ガス条件下でアンモニアへと変換することができる。
【0012】
本発明を以下で図1および図2に基づいてより詳細に説明する。図面において、
図1は、本発明により被覆されたウォールフローフィルターの構造を示し、
図2は、実施例において記載されている触媒装置1〜4に関するNO変換曲線を示す。
【0013】
本発明によれば該触媒装置は、直接接触することはないが、しかし単に触媒ユニット上で相互に近接して配置された2つの異なった触媒を有する単一の触媒ユニットからなる。これらの間に開放気孔の担体が存在する。この担体はたとえばディスクとして構成されており、ここを排ガスが垂直方向に通過してもよい。しかし担体として、ディーゼルエンジンの排ガスからの黒煙微粒子を除去するために使用されるようなディーゼル・パティキュレート・フィルターを使用することが有利である。
【0014】
図1は、担体としてウォールフローフィルターを使用する本発明の触媒装置の断面図を示す。ウォールフローフィルターは、セラミック材料から製造された公知のハニカム触媒担体と類似の構造を有する。このようなハニカム担体(1)は排ガスのための多数の狭い流路(4、5)を有し、該排ガスは入口面(2)から出口面(3)へ向かって該担体を通過する。ウォールフローフィルターでは、これらの流路は交互にセラミックプラグ(6)により閉鎖されており、入口流路(4)と出口流路(5)とが形成される。この構造に基づいて、排ガスは担体の入口面から出口面へ向かう途中で流路の間の多孔質の仕切り壁(7)を通過しなくてはならない。排ガスのための入口面はこの場合、入口流路(4)の壁面により形成されており、かつ第一の触媒層(8)を有する。出口流路の壁面は出口面を形成し、かつ第二の触媒層(9)により被覆されている。
【0015】
2つの触媒層(8、9)は、多孔質担体により物理的に分離されている。担体の厚さをできる限り小さく維持することは有利であることが判明した。入口面および出口面が相互に1mmより小さい間隔で、特に0.5mmより小さい間隔で存在していることが有利である。担体は排ガスが通過することができるように開放気孔の構造を有していなくてはならない。セラミック材料、たとえばコーディエライト、炭化ケイ素またはチタン酸アルミニウムから製造された担体を使用することが有利である。
【0016】
触媒は分散液被覆の形で触媒装置の入口面および出口面に適用される。これらの被覆は微粒子状の酸化物担体材料を含有し、該材料に触媒活性成分が微分散した形で適用されている。酸化物担体材料の粒径は通常、5〜9μmの範囲であり、かつ触媒は単に、フィルター材料の選択された平均細孔径に依存して、フィルター本体へと浸透する。
【0017】
これに対して、触媒活性化合物の前駆化合物の溶液による含浸は、これらの成分によるフィルター本体の浸透につながる。2つの触媒層の有利な分離は、2つの触媒の一方を含浸によってフィルター本体自体へ導入し、かつ次いで第二の触媒をフィルター本体の入口面または出口面に分散被覆の形で適用すると達成することができることも判明した。
【0018】
原則として入口面および出口面は異なった触媒の種々の組み合わせによって被覆することができる。有用な組み合わせは入口面で三元触媒または窒素酸化物貯蔵触媒、および出口面でSCR触媒、および入口面でSCR触媒、窒素酸化物貯蔵触媒、HC−DeNO触媒または炭化水素貯蔵材料と、出口面でのディーゼル酸化触媒との組合わせである。入口面での窒素酸化物貯蔵触媒と、出口面でのディーゼル酸化触媒との組み合わせもまた有利である。
【0019】
リーンバーンエンジンの排ガスを処理するために、本発明によれば、排ガス中に存在する窒素酸化物の少なくとも一部をリーン運転条件下で吸着することができ、リッチ排ガス条件下で、脱着された窒素酸化物の一部をアンモニアへと変換することができる触媒(8)を入口面に適用することが有利である。選択的接触還元を実施するために、出口面はSCR触媒(9)により被覆されている。
【0020】
触媒(8)はこの場合、窒素酸化物貯蔵触媒または三元触媒であってよい。窒素酸化物貯蔵触媒の場合にリーン排ガス条件下での窒素酸化物貯蔵容量は特に顕著であり、かつ貯蔵された窒素酸化物からアンモニアを形成する能力は副産物であり、これらの状況は三元触媒の場合には正反対である。しかし、これらの2つの極端な触媒の間にある触媒、たとえば窒素酸化物のための貯蔵容量が窒素酸化物貯蔵成分の添加によって増大している三元触媒を使用することも可能である。入口面上の触媒は、1つの層が窒素酸化物貯蔵触媒により形成されており、かつ第二の層が三元触媒により形成されている2層の触媒であってもよい。
【0021】
担体の入口面の触媒の最適な組成は最終的に内燃機関の特性およびエンジンの放出物の汚染物質の種類に依存し、かつ当業者によって簡単な試験を用いて確認することができる。提案された触媒装置による窒素酸化物の変換は、エンジン制御システムの適切なプログラミングによって入口面のための任意の触媒のために最適化することもできる。
【0022】
処理すべき内燃機関からの排ガスは、本発明の触媒装置の場合、第一に担体の入口面の触媒層を通過し、次いで多孔質担体を通過し、かつその直後に出口面のSCR触媒を通過する。実施例で示されているように、この装置は窒素酸化物貯蔵触媒とSCR触媒とを有する公知の2つの別々の触媒ユニットの直列の配置と比較して、窒素酸化物の変換の顕著な改善につながる。
【0023】
実験結果によりこの場合に相乗効果が存在することが明らかである。このための理由はおそらく、入口面の触媒からの排出および出口面の触媒への導入の間のカバーされる距離が極めて短いためである。加えて本発明の触媒装置では、排ガスが強制的に触媒層を通過し、その一方で通常のハニカム触媒の場合、排ガスは触媒層の接線を通過して搬送され、かつ触媒層との相互作用は拡散効果によってのみ行われる。これに対して本発明の触媒装置の場合には、触媒層との強制的な相互作用が行われる。
【0024】
この装置のさらなる利点は、入口面の貴金属を含有する触媒層は、実質的に不活性の多孔質担体によって、出口面に適用されたSCR触媒とは明らかに分離されていることである。これは物理的な分離が2つの異なった触媒の間での、おそらくダメージを与える相互作用を低減するからである。たとえばバナジウムを含有するSCR触媒は、バナジウムの熱による移行の結果として、別の高表面積の担持触媒と接触する際に失活しうる。
【0025】
入口部分における触媒層のために使用される触媒は、有利には窒素酸化物貯蔵触媒であり、これは窒素酸化物を貯蔵するためのアルカリ土類金属の塩基性化合物および触媒活性白金族金属を含有する。アルカリ土類金属として、バリウムおよび/またはストロンチウムを使用することが有利であり、これらを酸化物、水酸化物または炭酸塩の形で触媒に配合することができる。有利な白金族金属は白金および/またはロジウムであり、これらは微分散した形で別の担体材料、たとえば活性酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素または酸化チタンに、またはセリウム/ジルコニウム混合酸化物に適用されている。特に有利であるのは炭酸バリウムを貯蔵成分として、およびセリウム/ジルコニウム混合酸化物、およびさらに活性酸化アルミニウム上の白金およびロジウムを含有する窒素酸化物貯蔵触媒である。
【0026】
出口面のSCR触媒は有利には遷移金属により、特に鉄、銅、セリウムまたはマンガンにより置換された少なくとも1のゼオライトを含む。代替法として、固体酸系TiO/WO/MoO/V/SiO/SOをベースとする触媒を使用することも可能である。有利な固体酸系は、VまたはV/WOまたはV/MoOと組み合わせたTiOまたはTiO/AlまたはTiO/SiOである。
【0027】
以下の試験では、窒素酸化物貯蔵触媒およびSCR触媒を種々に組み合わせて使用することによって達成することができた窒素酸化物の変換率を、触媒装置の上流の排ガス温度との関数として測定した。窒素酸化物貯蔵触媒およびSCR触媒は以下の組成を有する。
【0028】
窒素酸化物貯蔵触媒:
窒素酸化物貯蔵触媒を製造するために、セリウム/ジルコニウム混合酸化物(質量比70/30)をまず、質量比10/1で細孔容積含浸法により白金およびロジウムにより負荷した。次いでこの材料を酸化アルミニウムおよび炭酸バリウムと一緒に加工して被覆懸濁液を形成した。
【0029】
SCR触媒:
H−ZSM−5ゼオライト(SiO/Alのモル比=40)を塩化鉄(FeCl)を使用して固体状態のイオン交換により鉄によってその交換容量まで交換し、かつ引き続き水中に懸濁させた。交換したゼオライトは酸化物として計算して鉄を3.5質量%含有していた。
【0030】
比較例1:
コーディエライトから製造され、かつ25.4mmの直径、152.4mmの長さおよび46.5cm−2(300cpsi)のセル密度を有するウォールフローフィルターの入口面を、窒素酸化物貯蔵触媒のための被覆懸濁液により被覆した。過剰の被覆懸濁液を除去した後に、該被覆を乾燥させ、かつ500℃でか焼した。被覆したフィルターは、フィルター本体1リットルあたり、150gの被覆濃度を有しており、そのうちの1.94g/lは白金であり、かつ12.1g/lは酸化バリウムとして計算されるバリウムであった。
【0031】
この方法で製造した窒素酸化物貯蔵触媒を以下では触媒装置C1とよぶ。
【0032】
比較例2:
別の窒素酸化物貯蔵触媒を比較例1に記載したとおりに製造し、かつ別のフィルター本体の入口面をゼオライト懸濁液により被覆することによって得られたSCR触媒と組み合わせ、乾燥させ、かつか焼した。この場合の被覆濃度はフィルター本体1lあたり100gであった。
【0033】
窒素酸化物貯蔵触媒および下流のSCR触媒は触媒装置C2を形成する。
【0034】
比較例3:
上記の寸法を有する別のフィルター本体の入口面をSCR触媒および窒素酸化物触媒の二重層で被覆した。この目的のために、フィルター本体の入口面をまずSCR触媒(100g/l)により、次いで窒素酸化物貯蔵触媒(150g/l)により被覆した。
【0035】
完成した触媒はフィルター本体1lあたり250gの全被覆濃度を有しており、そのうち1.94gは白金であり、かつ12.1gは酸化物として計算されるバリウムであった。これを以下では触媒装置3とよぶ。
【0036】
例1:
もう1つのフィルター本体を本発明によりその入口面で窒素酸化物触媒(150g/l)により、およびその出口面でSCR触媒(100g/l)により被覆した。
【0037】
この触媒を触媒装置4とよぶ。
【0038】
適用例:
上記の触媒装置を該触媒の窒素酸化物変換に関してモデルガスユニット中、触媒装置の排ガス温度上流の関数として試験した。
【0039】
モデルガスユニット上で触媒装置を交互にリーンおよびリッチのモデル排ガスに暴露し、かつ窒素酸化物変換率を測定した。試験条件は以下の表に記載されている。
【0040】
【表1】

【0041】
測定結果は図2に記載されている。
【0042】
触媒装置1は窒素酸化物貯蔵触媒のみからなる。図2に示されているNO変換曲線はこのような触媒の典型例である。触媒装置1と比較して、触媒装置2は窒素酸化物貯蔵触媒の下流に別の担体上のSCR触媒装置を有する。このことによりNO変換率は、特に230℃を超える温度範囲で上昇するが、しかし変換曲線の幅はほぼ変化しないままである。230℃より低い温度ではNO貯蔵触媒単独により達成されるNO変換率およびSCR触媒と組み合わせた場合のNO変換率はほぼ同一である。このような低い温度で、SCR触媒はこのNO不含のモデル排ガス中では変換を達成しない。
【0043】
SCR触媒および窒素酸化物貯蔵触媒を二重層として担体の入口側に適用すると(触媒装置3)、変換曲線は窒素酸化物貯蔵触媒の単独使用と比較して著しく低下する。300℃を超える温度では、この触媒装置は純粋な窒素酸化物貯蔵触媒よりも低い変換率を示す。このことは窒素酸化物貯蔵触媒からの貴金属の痕跡によってSCR触媒が部分的に被毒することに起因する。比較的高い温度ではこれらはリーン運転条件下でSCR触媒中に貯蔵されたアンモニアの部分的な酸化、たとえばNOの形成につながる。このことは、貴金属触媒とSCR触媒とが直接接触することの不利な影響を示している。
【0044】
これに対して本発明による触媒装置4は、NO変換曲線において、最大値に関しても、および曲線の幅に関しても、著しい改善を示す。このことは排ガスの流れの方向で相互に近接して続く2つの触媒層の上記の相乗効果を示している。この装置は排ガスの流れの方向における触媒の連続に関しては触媒装置2と同一であるにもかかわらず、本発明による装置は変換曲線における著しい改善を示す。このことは別々の担体上の公知の触媒装置に基づいては予測することができなかった。本発明による触媒装置は全ての温度範囲にわたって、特に低温および高温の範囲において、著しく改善された活性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明により被覆されたウォールフローフィルターの構造を示す図
【図2】触媒装置に関するNO変換曲線を示すグラフの図
【符号の説明】
【0046】
1 ハニカム担体、 2 入口面、 3 出口面、 4 流路、 5 流路、 6 セラミックプラグ、 7 分離壁、 8 第一の触媒層、 9 第二の触媒層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排ガスを浄化するための触媒装置であって、排ガスのための入口面と出口面とを有する開放気孔の多孔質担体からなり、該担体の入口面および出口面は異なった触媒活性層により被覆されており、その際、出口面の触媒層は選択的接触還元のための触媒により形成されており、かつ入口面の触媒層はリーン排ガス条件下で窒素酸化物を貯蔵し、かつ窒素酸化物をリッチ排ガス条件下でアンモニアへと変換することができる、内燃機関の排ガスを浄化するための触媒装置。
【請求項2】
入口面の触媒層が窒素酸化物貯蔵触媒により形成されている、請求項1記載の触媒装置。
【請求項3】
窒素酸化物貯蔵触媒がアルカリ土類金属の塩基性化合物と触媒活性白金族金属とを含む、請求項2記載の触媒装置。
【請求項4】
窒素酸化物貯蔵触媒がセリウム/ジルコニウム混合酸化物、およびさらに活性酸化アルミニウムおよび炭酸バリウム上の白金およびロジウムを含む、請求項3記載の触媒装置。
【請求項5】
SCR触媒が遷移金属により置換された少なくとも1のゼオライトを含有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の触媒装置。
【請求項6】
SCR触媒が、酸化チタンまたは酸化チタン/酸化アルミニウムまたは酸化チタン/二酸化ケイ素からなる群から選択された固体酸系を、バナジウム、バナジウム/酸化タングステンまたはバナジウム/酸化モリブデンと組み合わせて含有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の触媒装置。
【請求項7】
入口面の触媒層が三元触媒により形成されている、請求項1記載の触媒装置。
【請求項8】
三元触媒が高表面積支持材料上の白金族からの少なくとも1の貴金属、およびさらに酸化セリウムをベースとする少なくとも1の酸素貯蔵成分を含有する、請求項7記載の触媒装置。
【請求項9】
開放気孔の多孔質担体がウォールフローフィルターである、請求項1記載の触媒装置。
【請求項10】
周期的にリーンからリッチへと変化するエンジンへ供給される混合気によりリーン条件下で運転される内燃機関の排ガスを浄化する方法において、出口面の触媒層は選択的接触還元のための触媒により形成されており、かつ入口面の触媒層はリーン排ガス条件下で窒素酸化物を貯蔵し、かつ窒素酸化物をリッチ排ガス条件下でアンモニアへと変換することができる、内燃機関の排ガスを浄化する方法。
【請求項11】
開放気孔の多孔質担体がウォールフローフィルターである、請求項10記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−501107(P2007−501107A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522295(P2006−522295)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008539
【国際公開番号】WO2005/014146
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4、D−63457 Hanau、Germany
【Fターム(参考)】