説明

試料の検査,測定方法、及び荷電粒子線装置

【課題】
外乱等の影響に依らず、焦点等の調整が行われた高画質画像に基づく測定が可能な試料
の検査,測定方法を提供すること。
【解決手段】
焦点調整が行われた電子ビームを走査して、前記パターンを測定するための画像、或いは測定のための位置合わせを行うための画像を形成し、当該画像の評価値と、予め取得された参照画像の画像評価値を比較し、当該参照画像との比較によって、前記形成された画像が所定の条件を満たさないと判断される場合に、前記電子ビームの焦点調整を再度実行する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の検査,測定方法、及び走査電子顕微鏡に係り、特に検査,測定の前に、フォーカス調整を行う検査,測定方法、及び走査電子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の高集積化及び微細化に伴い、微細なパターンを高速に、正確に検査,測定する技術が重要になっている。しかしながら、パターンの微細化と、走査電子顕微鏡等の検査,測定装置のハードウェアの性能限界から、現状では何段階かの倍率にて、画像処理技術を用いて位置合わせを行い、最終的に測長倍率にて、正しい位置にて焦点の合った状態の画像を取得するようなシーケンスにて処理を実行し、検査,測定を行っている。
【0003】
特許文献1には、焦点合わせ処理(オートフォーカス)の後、テンプレートを用いたパターンマッチングを行い、その後、パターンの測定を行う例が説明されている。一般的に、オートフォーカスは、対物レンズを用いて、焦点を一定間隔で変化させていき、その際の画像、あるいは信号情報を取得していき、その変化量あるいはエッジ量が最大になった際の焦点を、“焦点が合った”と判定し、その位置を焦点位置とする。
【0004】
更に、焦点調整が行われた画像を用いた位置合わせ処理が行われる。一般的な手法としては、参照画像あるいは設計情報を事前に登録しておき、実際の画像との相関を算出し、相関値が最大となった位置を、“検出すべき位置”としてその位置に位置合わせを行う。
【0005】
最終的に、位置合わせされた個所、或いはその個所から特定される他の個所に含まれる検査,測定対象の検査,測定を行う。
【0006】
【特許文献1】特開平11−251224号公報(対応米国特許USP 6,363,167)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
オートフォーカスが施されることによって、電子顕微鏡の電子ビームは焦点が合った状態となるが、その様な電子ビームを用いて、位置合わせや測定のための画像を取得する場合であっても、以下の理由により画像が乱れることがある。
【0008】
まず、オートフォーカスを行った後、測定等に用いられる画像を取得するまでの間、或いはその画像を取得している間に外的要因に画質が乱れる場合がある。一例として装置の設置場所周辺の環境が、外乱要因となる場合がある。例えば、電子顕微鏡の本体がエレベータの近くにあり、当該エレベータが不定期に動作することで、突発的な振動や磁場の乱れが発生する場合がある。更に、装置付近で重量物を運搬した場合などにも予想しない振動が発生する可能性がある。
【0009】
他に、オートフォーカスに用いたパターンと、測定対象パターンや位置合わせ用パターンが異なる場合、両者の高さに違いがあると、測定対象パターン等に焦点が合わない場合がある。この高さの違いの要因として、装置の調整不備により発生する高さの不均衡、試料自体の問題に基づく高さの不均衡などがある。
【0010】
以上の要因により、測定等に用いる画像取得の際に、焦点ずれ(デフォーカス)が発生し、測定精度や、位置合わせ精度に影響を与える可能性がある。自動計測を行っている場合、オペレーターは最終結果から測定精度低下の事実を知る他なく、装置の自動測定率を低下させてしまう可能性がある。
【0011】
特許文献1には、パターンが所定の基準を満たさない場合に、パターンの測定をスキップすることが説明されているだけで、精度低下要因がある場合には測定の実行が不可能となってしまう。
【0012】
また、焦点合わせ処理にて正しい焦点情報が得られたと仮定しても、実際の測定パターンへのダメージを最小限にするために焦点合わせを行う位置と検査・測定位置を別の位置にした場合に、焦点合わせを終了してから実際の測定位置に移動する際に外部の振動や磁場、あるいは焦点合わせ位置と検査・測定位置の高さが異なることにより焦点が合わない場合がある。
【0013】
また、パターンの高さあるいは深さが大きい場合に、たとえば検査・測定位置の表面に焦点があっていても、底面に関しては焦点が合わない場合が存在する。それらの場合、実際に測定を行う画像あるいは検査・測定する部位に焦点のずれが発生することとなり、正しい検査・測定を行うことができない可能性がある。
【0014】
以下に、外乱等の影響に依らず、焦点等の調整が行われた高画質画像に基づく測定が可能な試料の検査,測定方法、及び走査電子顕微鏡について説明する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための一態様として、焦点調整を行った電子ビームを試料上に走査することによって得られる電子に基づいて、前記試料上のパターンの検査、或いは測定を行う試料の検査,測定方法、或いは装置において、焦点調整が行われた電子ビームを走査して、前記パターンを測定するための画像、或いは測定のための位置合わせを行うための画像を形成し、当該画像の評価値と、予め取得された参照画像の画像評価値を比較し、当該参照画像との比較によって、前記形成された画像が所定の条件を満たさないと判断される場合に、前記電子ビームの焦点調整を再度実行する方法、及び装置を提供する。
【0016】
このように、予め取得した測定画像、或るいは位置合わせ画像の画像評価値と、実際に取得された画像の評価値の比較によって、取得された画像の適否を判断することで、外乱等によって、測定等に適さなくなった画像であっても、適正な処理の上で、測定、或いは位置合わせに供することが可能となる。更に測定に適すると判断される場合は、焦点調整を行うことなく測定等に移行することができるので、スループット向上にも効果がある。
【発明の効果】
【0017】
上記一態様によれば、外乱等の影響により測定等を実行するのに適さないと判断される状態のときに選択的に焦点調整を行うため、高精度測長と装置の高スループット化の両立を実現できる。
【0018】
また、その焦点ずれの情報を複数のウェーハにて取得し統計的に処理すること等により、ハードウェアの構成などにより特定の位置などの条件でかならず発生する焦点ずれと、それ以外の原因により発生する焦点ずれを区別し、ハードウェア構成に起因するものに関しては、その位置での測定、あるいは位置あわせを行わないようユーザに警告を発することで、作業効率を向上する効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
〔実施例1〕
走査電子顕微鏡による検査,測定位置への位置合わせは、例えば、何段階かの倍率及び位置にて特徴的なパターン(参照画像)とその位置を記憶しておき、実際の検査画像とのパターンマッチングを行うことによりその位置を自動で検知し、最終的に計測する微細パターンの位置を検出する。更にウェーハの高さの変化などによる像質の劣化を防ぐために、パターンの自動あるいは手動での焦点合わせの処理も行っている。
【0020】
各段階での位置あわせ/測長を行う際の一般的なシーケンスを、図1を用いて説明する。まず、画像条件の設定((1))を行う。ここでは、位置あわせ/測長を行うための倍率などの条件を設定する。次に、焦点合わせ処理((2))を行う。ここでは、必要に応じて焦点合わせを行うための倍率などの条件設定や、位置への移動を行う。その後、焦点合わせを行う。焦点合わせを行うための一般的な処理としては、焦点を一定間隔で変化させていきその際の画像、あるいは信号情報を取得していき、その変化量あるいはエッジ量が最大になった際の焦点を“焦点が合った”と判定し、その位置を焦点位置とする。その次に、位置あわせ処理((3))を行う。一般的な手法としては、参照画像あるいは設計情報を事前に設定しておき、実際の画像との相関を算出し、相関値が最大になった位置を“検出すべき位置”としてその位置にあわせる。最後に必要に応じて測長・画像保存などの処理((4))を行う。最終的に測長やその他の検査を行うシーケンスであれば、測長あるいはその他の検査を行う。
【0021】
しかし、以下のような問題により、最終的に取得する画像に問題が発生する場合がある。まず、焦点合わせを実行した後、に使用する画像を取得するまでの間あるいは画像を取得している間に外的要因により画質が乱れる。更に焦点合わせを行った際のパターンが測定や位置あわせの対象となるパターンと異なる場合に、その高さの違いなどにより実際の位置あわせ対象パターンにて焦点が合わないという場合も考えられる。
【0022】
上述の外的要因とは、例えば装置設置場所周辺の環境により発生するもので、エレベータが近くにあり、不定期に動作することにより、突発的に振動や磁場の乱れ場発生する。また、装置付近で重量物を運搬した場合などにも予想しない振動が発生する可能性がある。
【0023】
また上述の測定パターン等と焦点調整用パターンの高さの違いは、例えば装置の調整不備により発生する高さの不均衡、同じくウェーハ自体の高さの不均衡、などにより発生する。これらの問題により、実際の位置あわせや測長に使用する画像に像の焦点ずれ(デフォーカス)が発生し、測定精度を低下させる場合があり、結果として自動測定の信頼性が低下するという問題がある。
【0024】
このような問題点を解決するために、上記画像の焦点合わせ処理と、位置あわせや測長に使用する画像の取得処理の間、あるいは焦点合わせを行わない場合には位置あわせや測長処理の前処理として、その画像が実際に焦点のあった画像であるかどうか、位置あわせや測長の処理に使用できる画像であるかどうかを判定し、その基準に満たない場合には再度焦点合わせ処理を実行するような処理を実施する(図2−(3)′)。
【0025】
以下に提案する画像評価処理(図2−(3)′)に関しては、取得画像のS/N値や取得画像のエッジ量のような画像を評価する値を用いる。これらの評価値を、位置あわせや測長の際に用いる参照画像と比較する。ここでは両者の比率を算出し、当該比率が所定値に達しなかった場合に焦点調整を再実行する。なお、ここでは両者の比率に基づいて2つの画像の比較を行っているが、そのほか一般的に提案されている画像評価の処理に基づく比較であれば適用可能である。上記画像評価処理は、たとえば焦点合わせ処理を行わなかった場合でも実施することが可能である。また、上記判定はそのうちのいくつか、あるいは全てを判定の基準とすることができる。
【0026】
本画像評価処理は、基本的には画像を取得する処理全ての段階で適用することが可能であるが、処理時間やGUIにユーザにその適用要否を設定させる利便性から、特に重要と思われる段階で処理を実施すればよい。図2では、位置あわせ処理、及び測長などの処理の直前に画像評価処理を適用する。以上のような構成によれば、位置あわせや測長処理を行う前に低画質の画像を検知することが可能となる。
【0027】
以下、実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図3に、一般的に、自動での測長/検査のシーケンスを示す。装置の位置精度や測定対象とするウェーハなどの製造工程による品質のばらつきなどを考慮し、複数の倍率にて位置あわせの処理を実行していき、最終的な測長/検査倍率まで進み、以下の順で処理を行っていく。
【0028】
まず、光学顕微鏡や金属顕微鏡などを使用し、100倍−500倍程度の倍率にて画像を取得して、位置合わせを行う。次に低倍像による位置合わせを行う。この際には走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy、以後SEM)などを用い、1000倍〜20000倍程度の倍率を使用して処理を実行する。その後、必要に応じて中間倍での位置合わせを行い、最終的に測長あるいはその他の検査を行う倍率にて位置合わせ処理を実行していき、測定,検査対象となるパターンの位置を検出し、測定,検査に耐えうるような画質の画像あるいは信号を取得する。測定対象となるウェーハ内の複数点にて、これらの処理を繰り返し実行する。
【0029】
これらの処理の各段階で、画像評価処理を実行する。なお画像評価のための設定は、図4,図5に示すようなGraphical User Interface(以後GUI)にて設定できるようにする。
【0030】
図4に設定画面の例を挙げる。各処理毎にON/OFFを設定するためにボタンを設ける。選択されない場合には画面と同系色、選択された場合には黄色や緑でそのボタンを色表示し、選択されたことを明示化する。また、各項目毎に必要に応じて詳細ウインドウへ遷移するためのボタンを設ける。本ボタンをクリックすると詳細設定画面に遷移する。
【0031】
詳細設定画面の例を図5に示す。詳細設定画面では、画像評価方式を羅列し、各項目毎にON/OFFのボタンとThreshold値を入力可能とする。検査画像の画像評価の数値がここで設定するThreshold値よりも小さい場合にはエラーと判定し、エラーを発行して次の測定点の処理に遷移するか、あるいは自動で再度の処理を実行する、またはその状態で停止し、ユーザによる対処を促す、などの状態に遷移する。
【0032】
また、図6,図7に図示するように、本情報をウェーハなど測定対象に関して統計的処理をし、GUI表示を行い、表示する。画像評価結果の数値を色変化にて表示し、値が低い場合には赤などの警告色で表示する。本機能により、ウェーハ内での傾向を把握することが出来る。
【0033】
図8は、走査電子顕微鏡の概略図である。ここで説明する走査電子顕微鏡は図示しない制御装置によって制御され、当該制御装置は、図1〜図3に示すようなシーケンスに基づいて、装置をコントロールする。また、図4〜図7に図示するようなGUIを表示装置14に表示させるようなプログラムを記憶する記憶媒体を備えている。またGUIから設定された条件に基づいて、図1〜図3に示すシーケンスを実行するようなプログラムも併せて記憶されている。更に図9〜図22に例示する処理フロー、或いはウェーハマップを表示させるプログラムを記憶させるようにしても良い。なお、本実施例では、荷電粒子線装置の一例である走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope: SEM)を例にとって説明するが、これに限られることはなく、例えば、イオンビームを走査して得られる二次粒子(電子やイオン)に基づいて画像を形成する集束イオンビーム(Focused Ion Beam)装置等、他の荷電粒子線装置への適用も可能である。また、本実施例では、ビームの焦点を調整するための構成として磁界形の対物レンズを用いる例を説明するが、これに限られることはなく、例えば、静電形の対物レンズ、或いは磁界型と静電型を重畳した重畳レンズを適用することも可能である。静電レンズは、試料に負の電圧を印加し、試料に到達する電子ビームを低加速化する技術(リターディング技術)によって形成されるものであっても良い。
【0034】
また、制御装置は、SEM鏡体を制御する専用のコンピュータでも良いし、各種の通信媒体を経由して、データの送受信を行う外部のコンピュータであっても良い。
【0035】
走査電子顕微鏡の鏡体3内の電子銃1は、加熱フィラメント2に通電加熱して電子ビーム8を得る。ウェーネルド4により引き出された電子ビーム8は、アノード5によって加速され、コンデンサレンズ6によって集束され、偏向信号発生器14から偏向信号が印加される偏向コイル7によって走査され、対物レンズ9にて試料室10内に置かれた試料11上に焦点を合わされる。
【0036】
こうして電子ビーム8は、微細パターンの刻まれている試料11上を一次元的、あるいは二次元的に走査される。電子ビーム8の照射により、試料11の表面付近からその形状に応じた量の二次電子が発生し、二次電子検出器15によって検出される。検出された二次電子は増幅器16により増幅され、CRT13の輝度変調信号となる。CRT13は偏向信号発生器14に同期しており、輝度変調信号は同期して照射された電子ビーム8によって試料11の表面部分から発生する二次電子像を再現することになる。以上の手順により、試料表面に形成された微細パターンの情報を取得することができる。CRT13に表示された二次電子像は、必要によりカメラ12で撮影される。
【0037】
〔実施例2〕
実施例1では、オートフォーカス(焦点あわせ)と、測定,検査のための画像取得との間に発生する外乱等に依らず、焦点が適性に調整された画像に基づく測定,検査を行い得る方法、及び装置の例について、説明したが、実施例2では、更に、測定,検査の対象パターンに、他のパターンが隣接して配置されているような場合や、半導体プロセス起因で起こりえる画質判定エラー等を抑制し得る方法、及び装置の例について、説明する。
【0038】
図9は焦点調整から、測定,検査処理を行うまでの処理の流れを説明するフローチャートである。まず、倍率や画像の取得条件(SEMの光学条件や検出器の増幅率,適用する画像処理の種類や程度等)の設定を行う(ステップ(1))。次に、設定された取得条件に基づいて、電子ビームの照射位置(電子ビームを走査する位置)を、試料上の焦点合わせを行う位置に移動させる。電子ビームの照射位置の移動は、試料が配置される試料ステージの移動,電子ビームの軌道を偏向するイメージシフト、或いはその両方を併用して行われる。
【0039】
焦点あわせが行われる位置に電子ビームの照射位置を移動させた後、焦点あわせを行う(ステップ(2))。焦点あわせは、電子ビームの焦点を所定間隔でずらしていき、各焦点で得られた画像、或いは信号情報について、焦点評価値を判定し、その評価値が最も高い焦点位置を、合焦点位置と判定し、その際のレンズ条件(磁場型の対物レンズであれば励磁電流、静電型レンズであればレンズを構成する電極への印加電圧、両レンズを併用する場合は、その両方)を記憶する。
【0040】
この際に画質判定を行う(ステップ(3)′)。この際に画質判定結果が所定の条件を満たしていない場合には、ステップ(2)に戻り、再度焦点あわせ処理を実行する。
【0041】
次に、画像の位置合わせ処理を行う(ステップ(4)′)。電子ビームの照射位置を移動させ、ステップ(2)にて取得したレンズ条件にて電子ビームを集束した状態で画像を取得する。更に当該画像についても画質判定(ステップ(3)′)を行い、所定の条件を満たさないと判断される場合には、ステップ(2)に戻って、再度、焦点あわせ処理を実行する。
【0042】
画質判定処理によって、適正な画像と判断された場合に、測長用の画像を取得し、当該画像についても画質判定処理を行う(ステップ(5))。なお、ステップ(5)の画質判定処理は、位置合わせ処理時に取得された画像と測長用の画像が同じであれば、省略することもできる。
【0043】
画質判定の結果が適正なものであれば、測定,検査を実行(ステップ(6))し、その際に再度画質判定を行い(ステップ(5)′)、この結果が所定の条件を満たさない場合は、再度焦点あわせを行い、適正な画像を取得できるようにする。
【0044】
図9のフローチャートでは、位置合わせ処理(ステップ(4)′)及びその後の画質判定処理(ステップ(3)′)が行われた後、測定,検査用の画像が取得されることになる。この際、画質判定処理を適正に実施可能なように、以下のような対応を採ることが考えられる。
【0045】
例えば、測定,検査の対象となるパターンに隣接した別のパターンが存在し、且つ位置合わせ処理(ステップ(4)′)にて十分な位置あわせ精度を確保できなかった場合、あるいは測定,検査するパターンの材質などの特性から電子ビーム照射によるパターンのダメージの抑制を優先して、位置合わせ処理(ステップ(4)′)を行わない場合、画質評価のための参照画像には存在しない、隣接パターンが画質評価対象となる画像に現れることがある。
【0046】
また、予期しない異物等が試料に付着していた場合、測定,検査画像には、その異物等が表示される一方、参照画像にはそのような異物は表現されない。
【0047】
これらのような状況において、参照画像と測定,検査画像との比較に基づく画質判定を行うと、異なる対象物を比較していることになるため、本来適正だと判断すべき、画像を不適正と判断したり、逆に不適正な画像であるにもかかわらず、適正なものとして判断してしまう場合がある。図10は、同じ形状のコンタクトホールが配列された試料の画像例を示す図である。参照画像を1つのコンタクトホールが選択的に表現された画像とした場合に、図10(a)のように、参照画像と同じ対象パターンのみが、測定,検査画像に現れている場合は問題がない。しかしながら、図10(b)のように、参照画像と異なるパターンが測定,検査画像に含まれている場合には、比較の対象となる画像が、参照画像と大きく異なることになるため、画像比較による画質判定の信頼度が低下する。
【0048】
以上のように、参照画像とは異なるパターンや異物等が混入したとしても、適正に画質判定処理を行うべく、本実施例では、位置合わせ処理時に、参照画像と、測定,検査画像が重複した領域のみを選択的に画質判定に用いる手法を提案する(図12(b))。この場合、例えば前段の位置合わせ(例えば図9ステップ(4)′)処理にて、参照画像と重複している領域を選択的に使用する。
【0049】
具体的な画質評価手法の一例として、画像の一致度判定を行った際、一致度が最も高く評価された参照画像と、測定,検査画像との相対位置において、一致度が所定の値を下回った部分を除いて、画質判定を行うことが考えられる。
【0050】
また、画像判定に使用する領域は、例えば参照画像と検査画像の位置合わせを行う際に使用する位置合わせ用のテンプレートの位置・サイズの情報を使用する。それらは位置合わせの方式により、参照画像の画面全体を使用したり(図12a)、あるいは位置あわせのための設定としてユーザが指定する、あるいは自動で設定する、画面内の特徴のある部位が含まれる領域(図12b)、あるいは測定に使用する領域(図12c,d)の情報を使用する。
【0051】
また、測定,検査対象とするパターンの高さが、装置の焦点深度(高さ方向に焦点が合う範囲)以上になる場合などでウェーハの底面部、(或いは最上部)を計測することを目的とした場合に、パターンの表面層(或いは最下層)に焦点が合ってしまうことで、肝心の検査領域であるパターン底面部の焦点がぼけてしまう場合がある。図11はその原理を説明するための図である。図11の例の場合、パターン(コンタクトホール)の表面から底までの深さが、SEMの焦点深度より深い例を示している。一般的なオートフォーカス(Automatic Focus Correction:AFC)では、電子ビームの走査領域内(視野,Field Of View:FOV)の焦点評価値が最も高い焦点位置を、合焦点位置と判断し、ホール底など、部分的に高さの異なる位置に対して、焦点がずれて設定される。
【0052】
本来は画面全体に焦点が合うことが望ましいが、測定,検査対象となる部分の焦点があっていることが最重要となる。かかる問題の回避方法として、以下方法が考えられる。パターン測定を行う場合、画面の特定の1つあるいは複数の興味領域を限定し、その範囲でのエッジを検出する。
【0053】
その選択的な領域情報を利用し、画質判定を行う。その領域は四角(図12(c))あるいは放射上の円(図12(d))などが考えられる。
【0054】
画像評価に使用する領域の例として、以下のようなものが考えられる。1つに、測定,検査時に取得される画像全体を画像評価の対象とすることが考えられる(図12(a))。他にも、測定,検査に使用する領域を選択的に画質評価の対象とする場合が考えられる。この場合、パターン寸法の測定の基準となる位置を選択的に画質評価に用いる。図12(c)の例では、2つの興味領域(Region Of Interest:ROI)のみを測定対象としているため、当該部分を選択的に画質評価の対象とする。また、測定対象がコンタクトホールである場合には、ホールの中心から放射方向に、ホール径(或いはホールの半径)を測定する場合があるので、図12(d)に示すように、ホールのエッジ部分が表現された領域を選択的に、画質評価領域とする。
【0055】
また、所定の半導体プロセスを経て、形成されるパターンは、その材質,製造装置,製造工程,製造条件などにより、その形状等が変動する。パターンの幅,形状などのばらつき(以後、プロセス変動と呼ぶ)は、設計段階で決められた一定の範囲内の変動であるか、あるいは半導体の性能に影響を及ぼさない範囲であれば、許容される。
【0056】
しかしながらプロセス変動が発生することによりその画像評価値は影響を受けることになるため、プロセス変動の影響と焦点ずれを区別して管理することが望ましい。かかるプロセス変動と焦点ずれの判別方法の例として以下の方法を提案する。
【0057】
第1に、参照画像及び検査画像のパターンのエッジ量(周囲長)情報を使用する手法が考えられる。第2に、参照画像及び検査画像の信号量情報を使用する手法が考えられる。
【0058】
まずは上記第1の手法について、コンタクトホールを測定対象とした場合を例にとって説明する。図13は、コンタクトホールのエッジ検出に基づいて、プロセス変動の有無を判定する手法の一例を説明する図である。
【0059】
まず、参照画像,検査画像のそれぞれに対して、既存のエッジ検出などの手法を適用して、その内周及び外周を検出する(図13(1))。次に、以下の式にて周囲長の基準値を算出する。対象とするパターンが複数個存在する場合には、複数のパターンそれぞれに本算出法を適用する。
【0060】
内周量の比:R_in=r_ins_in/r_ref_in …(1)
外周比:R_out=r_ins_out/r_ref_out …(2)
内外周比:R_io=r_ins_io/r_ref_io …(3)
周長比:R_total=r_ins_total/r_ref_total …(4)
r_ins_in : 検査画像の内周
r_ins_out : 検査画像の外周
r_ins_io : 検査画像の内周と外周の比
r_ins_total : 検査画像の内周と外周の合計
r_ref_in : 参照画像の内周
r_ref_out : 参照画像の外周
r_ref_io : 参照画像の内周と外周の比
r_ref_total : 参照画像の内周と外周の合計
「r_ins_in」と「r_ins_out」は、ホールの半径、或いは直径としても良い。
【0061】
上記の各数値を個別あるいは総合的に管理することで、プロセス変動を計測できる。例えばコンタクトホールの内周を計測する場合には、R_inの数値を主に管理すればよい。プロセス変動が大きすぎると欠陥となり、デバイスの性能低下を引き起こすが、本数値を管理することにより、それらも検出可能となる。
【0062】
また、パターンがN個存在する場合、R_in[N]として数値を管理する。画面内に類似のホールパターンが4つ存在する場合の例を示す(図14)参照画像,検査画像のそれぞれに対して上記の数値を算出し、R_in[1〜4],R_out[1〜4],R_io[1〜4],R_total[1〜4]の数値として管理する。図14の検査画像(1)のようにNo.2のHoleが小さい場合、導通のためのHoleの面積が小さくなり、デバイス性能が低下する。
【0063】
R_ins_in[2], R_ins_out[2], R_ins_total[2]の数値が他の数値と比較して小さくなり、その形成が不十分であることを検知できる。また、検査画像(2)の場合、No.2のHoleが開いていない。この場合には下位層との導通が取れなくなり、デバイス全体の性能に影響する。この場合、R_ins_in[2] の数値が他(R_ins_inやR_ref_in)と比較して小さくなるために、パターンに欠陥があることが検出可能となる。
【0064】
なお、測定対象パターンがラインパターンの場合には、上記周囲長を用いた判定の適用のみでは難しい。よって第2の“信号量情報を利用した方式”を適用する。
【0065】
参照画像・検査画像のそれぞれに対して、既存のエッジ検出や2値化手法を用いて、その左右の信号量の強い部分の画素数を算出する(図15(1))。その後、以下の式にて左右の信号量を算出する。対象とするパターンが複数個存在する場合には、複数のパターンそれぞれに本算出法を適用する。
【0066】
左側エッジの信号比:S_left=s_ins_l/s_ref_l …(5)
右側エッジの信号比:S_right=s_ins_r/s_ref_r …(6)
検査画像と参照画像の左右エッジの信号比の比較値比:
S_lr=s_ins_lr/s_ref_lr …(7)
検査画像と参照画像の合計信号量比:
S_total=s_ins_total/s_ref_total …(8)
s_ins_l : 検査画像の左側の信号量
s_ins_r : 検査画像の右側エッジの信号量
s_ins_lr : 検査画像の左右エッジの信号量の比
s_ins_total : 検査画像の左右エッジの信号量の合計
s_ref_l : 参照画像の左側エッジの信号量
s_ref_r : 参照画像の右側エッジの信号量
s_ref_lr : 参照画像の左右エッジの信号量の比
s_ref_total : 参照画像の左右エッジの信号量の合計
【0067】
前述したHoleパターンの例と同様に、パターンがN個存在する場合、R_in[N]として数値を管理する。必ずしもこの複数のパターンは同一形状である必要はなく、参照画像と検査画像で同一形状のものであればよい。また、ここで記載する参照画像は、必ずしも装置で取得した画像である必要はなく、設計データを用いても良い。
【0068】
プロセス変動と焦点ずれを区別するには、上述の第1,第2の手法にて得られた情報を利用する。
【0069】
画像評価に、画像内のエッジ量を適用した場合の例を示す。画像のエッジ量を以下のように定義する。
【0070】
内周のエッジ量の比:E_in=e_ins_in/e_ref_in …(9)
外周のエッジ量の比:E_out=e_ins_out/e_ref_out …(10)
内外周のエッジ量の比:E_io=e_ins_io/e_ref_io …(11)
エッジ量の比:E_total=e_ins_total/e_ref_total …(12)
e_ins_in : 検査画像の内周付近のエッジ量
e_ins_out : 検査画像の外周付近のエッジ量
e_ins_io : 検査画像の内周付近のエッジ量と外周付近のエッジ量の比
e_ins_total :検査画像の内周付近のエッジ量と外周付近のエッジ量の合計
e_ref_in : 参照画像の内周付近のエッジ量
e_ref_out : 参照画像の外周付近のエッジ量
e_ref_io : 参照画像の内周付近のエッジ量と外周付近のエッジ量の比
e_ref_total : 参照画像の内周付近のエッジ量と外周付近のエッジ量の合計
【0071】
上記処理にて、例えば測長などの処理(図9のステップ(6))の前に画面全体の評価値を算出しておき、そこで問題がある場合には警告メッセージをGUI上に表示してユーザに警告を促すか、自動で焦点合わせ処理を行うことも可能である。また、測長処理のあとに評価値を算出する場合(図9のステップ(5)′)には、測長を行った結果を利用することができる。
【0072】
図12(c)(d)のような、興味領域のみを限定する際に、測長で検出したエッジ位置の±20%の範囲のみを評価値算出領域として定義することも可能である。
【0073】
また、測定結果の情報と焦点ずれの情報の双方を用いて、測定,検査結果の評価を行ったり、その後の装置条件の調整を行うようにしても良い。
【0074】
得られた測定結果は、以下のような(a)〜(d)の状況下で取得されている可能性がある。
【0075】
(a)測定結果は正常であり、焦点もあっている、
(b)測定結果は正常だが焦点がずれている、
(c)測定結果に異常があり、焦点もずれている、
(d)測定結果に異常があるが、焦点はあっている。
【0076】
上記4つの例のうち、(a)の場合には特に問題なく、測定結果は信頼性が高いと判断できる。(d)の場合も同様で、測定対象に何らかの問題があると考えられるが、(b)および(c)の場合には必ずしも測定の結果が正しくない可能性がある。
【0077】
これらの場合、問題のあるパターンを正常と誤った判断をしてしまう、あるいは正常なパターンを異常と判断してしまうことで後の作業効率を落とすこととなり、問題となる。よって、(b)(c)の場合には、その測定点に関しては、焦点がずれていることをユーザに警告することで、後で再計測するように促すか、あるいは自動で焦点合わせの処理から繰り返すことが望ましい。
【0078】
また、ウェーハを支える点やウェーハ搬送用のアーム周辺、あるいはウェーハの端部分では、そのハードウェアに起因した電子ビームの乱れにより電子顕微鏡の撮像に影響が発生し、像質が乱れる現象が知られている。
【0079】
以下に提案する手法では、取得された焦点ずれの計測結果を、ウェーハの複数の所定領域ごと(チップ単位、或いは光学式露光装置のショット単位、或いは任意の領域単位)に分類し、試料起因の焦点ずれ情報と、装置(SEM)起因の焦点ずれ情報を併せて表示,管理することによって、以下に示すような技術効果を得ることができる。
【0080】
ハードウェアに起因する焦点ずれと、ウェーハに起因する焦点ずれ(ハードウェア起因の焦点ずれ以外)とを分離して管理することが可能となるので、像質が乱れる要因を速やかに究明することが可能となる。なお、ここでの“ハードウェア起因の焦点ずれ”とは、例えばウェーハを固定するためのピンが磁化してしまい、その部分の磁界が変化することにより発生する焦点ずれ、あるいは、リターディング電圧ケーブルなど、ウェーハ周辺に配置される各種部品に異常が発生することに起因する焦点ずれを指す。このような情報はSEMの記憶媒体等に記憶され、装置管理に使用される。
【0081】
また、特に「ハードウェア起因の焦点ずれ」に関して、例えば毎日同じウェーハで測定を実施することで、例えばハードウェアがあるときから磁気を帯びた可能性がある、などの情報を監視することが可能となる。図16(1)のように、ウェーハ内の複数Chipにて、同一パターンの評価値を算出し、Map表示する。ここで、評価値を0−100で規格化し、例えば以下のように5段階でレベル分けし、色表示し、このマップを“焦点評価値Map”とする。焦点評価値は、「100」を完全な合焦状態としたときの評価結果であり、参照画像と検査画像との一致度と同義の値である。本例では、以下のように、チップごとの評価結果を5つに分類し、当該分類を識別表示する。
【0082】
分類1:0−19(問題あり(詳細調査要))
分類2:20−39(問題あり)
分類3:40−59(多少問題あり)
分類4:60−79(ほぼ問題なし)
分類5:80−100(問題なし)
【0083】
当該評価結果は、チップ毎に複数取得された評価値の内、任意の代表値で表すようにしても良いし、評価値の平均値や統計値で表現するようにしても良い。次に、ハードウェア的に焦点ずれの発生する可能性の高い部分に関して、図16(2)のように、同じくMapを作成する。このMapは、ウェーハ形状にあわせてMapしてもよいし、ステージを含めてマッピングしても良い。本Mapを“ハードウェア焦点ずれMap”とする。
【0084】
前述2つのMapを重ねあわせ、ハードウェア的に問題なく、かつ焦点ずれの発生している部分に関しては、ウェーハ起因あるいは焦点合わせ方法に起因する焦点ずれと考えられる。
【0085】
前述のデータを複数種類のウェーハにて取得し、やはり同一箇所で焦点ずれが発生する場合には、ハードウェア起因を仮定し、“ハードウェア焦点ずれMap”を修正する。また、焦点ずれが特定のプロセスの複数ウェーハ、あるいはあるウェーハのみで発生している場合には、ウェーハ起因の局所的な帯電現象の影響などと仮定することができる。
【0086】
このように、焦点ずれのMapを利用することにより、焦点ずれの発生する部位を警告し、その点を測定に使用しないようユーザに促す、あるいは焦点ずれの発生しやすい(=その原因となる局所的な帯電現象の発生しやすい)工程,場所を特定することも可能となる。
【0087】
さらに、以下の情報を組みあわせることにより、誤測定の特定に基づく、測定精度の向上が期待できる。
【0088】
(1)評価値情報(上記実施例により取得する情報)
(2)測定結果情報(SEMにて取得される測定結果に関する情報)
(3)欠陥情報(欠陥検査装置にて取得する情報)
【0089】
図17は、上記(1)(2)(3)の表示例を説明するための図である。なお本実施例では、(1)(2)(3)の情報を分割して表示する例を説明しているが、これに限られることはなく、例えば、重畳して表示するようにしても良い。この場合、「問題あり」と判断される領域を、他の領域に対して識別表示すると共に、「問題あり」と判断される領域が、上記(1)(2)(3)の情報のいずれもが問題なのか、1つのみが問題なのか、或いは3つの内、2つが問題なのかを識別して表示するようにしても良い。
【0090】
まずは、上記(1)(2)の組み合わせの例を示す。例えば凸のラインパターンの線幅を測定した場合を考える。図18は、ビームの焦点が合っている場合(a)と、焦点がずれている場合(デフォーカス状態:b)に、それぞれで得られるラインプロファイルの形状を例示している。
【0091】
これらを同一基準で測定した場合(例えばパターンの上部と底部の、上から70%のところを測定する、とした場合)、デフォーカスに起因するパターンの形状変化のために測定結果が異なる(この場合にはデフォーカスにより測定結果が実際よりも大きくなる(ケース1)。また、設計値よりも細く、本来は異常パターンとして検知されるべきケース(c)でも、デフォーカスにより見た目上パターンが大きく計測され、正常値として判定されてしまうケースも想定される(ケース2)。凹パターンを測定した場合には逆の現象となる。
【0092】
かかる現象に基づく誤検出を把握するために、上記(1)(2)の情報を併せてパターンの形成状況を判断する。たとえ(1)の測定結果では正常であっても、(2)の結果が異常である場合には、測定に問題があると判断し、再測定などを行うようにユーザに促す。
【0093】
以上のように所定領域ごとに、(1)(2)の両方が異常なのか、(1)(2)のいずれかが異常であるのかを表示、或いは情報管理することで、誤検出要因の特定に基づく、測定精度の向上を実現することが可能となる。
【0094】
次に、上記(1)(2)(3)の組み合わせの例を示す。図19は、ウェーハマップの表示例の一例であり、ウェーハの縁部に近い領域の評価値が低い場合の表示例を説明する図である。
【0095】
ウェーハの周辺領域の評価値が低くなる場合などには、異物による評価値の変動である可能性も想定される。異物が原因である場合には、「(1)評価値情報」と、「(3)欠陥情報」とを併せて確認できれば、その状況を評価することができる。即ち、欠陥が存在する領域では、欠陥のない状態の参照画像との比較によって求められる評価値は低くなる傾向にあり、且つ欠陥検査の結果も欠陥が存在するという意味において、悪くなる傾向にある。このように異物や欠陥に纏わる情報を併せて判断することで、測定結果変動の要因特定を容易に実現することが可能となる。この場合、併せて画像を表示させるようにしても良い。
【0096】
なお、欠陥が存在する場合、装置にて測定する結果にも悪影響を及ぼすことが想像されるが、たとえ画面内に欠陥が存在しても、それが測定部位でなければ、測定結果に直接影響の出ない場合もある。このような状況は「(2)測定値情報」を併せて確認することによって、容易に特定することが可能となる。また、ウェーハの周辺は電解が乱れるために、デフォーカスが発生しやすい部分でもある。「(3)欠陥情報」と照らし合わせ、欠陥が無いのに評価値が低い場合には、デフォーカスである可能性が高い。
【0097】
上記のように、(1)−(3)の情報を併せて管理することで、測定結果不正の原因詳細が欠陥起因であるか、デフォーカス起因であるかを判断することも可能である。
【0098】
また、光学式露光装置によって露光される領域単位で、その中心と周囲部で例えば「(2)評価値情報」の数値が大きく変動するような場合は、光学式露光装置に用いられるマスクに起因したプロセス変動の可能性がある。図20は、指光学式露光装置のショット単位で、同等の評価値分散結果が認められる例を説明する図であり、当該表示によれば、マスク、或いは光学式露光装置に起因するプロセス変動を容易に特定することが可能と成る。
【0099】
また、ウェーハ上の一部あるいはウェーハ周辺でのみ発生する場合には、局所帯電、あるいは露光の問題によるプロセス変動の問題が想定される。図21は、局所的に評価値情報が変動したウェーハのウェーハマップの表示例を説明する図である。このような表示によれば、局所的に発生した帯電に起因して、評価値が変動したことが予想できる。更に、チップ単位で同じ部分の評価値のみが低い場合は、当該部分のパターン構造に起因する評価値変動要因(例えば局所的な帯電)の存在が考えられる。図22は、ウェーハ上に形成された複数のチップの同じ個所の評価値が低い場合のウェーハマップの表示例を説明する図である。
【0100】
その他、ウェーハ全体で数値が低い場合には、ウェーハ全面の帯電か、あるいは露光の問題でプロセス変動が全面的に存在している可能性、またはレシピの設定が適切でない可能性が考えられる。
【0101】
これらの、ウェーハ前面での評価値の分布状況からある程度の現象を類推し、その原因を特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】位置あわせのシーケンスの一例を示す図。
【図2】本発明にて提案する位置あわせのシーケンスの一例。
【図3】一般的な自動検査のシーケンス。
【図4】画像評価値設定画面の例。
【図5】画像評価値設定画面(詳細)の例。
【図6】画像評価値の算出結果表示方法の例(1)。
【図7】画像評価値の算出結果表示方法の例(2)。
【図8】走査電子顕微鏡の概略図。
【図9】測定前後に画像評価を行う場合の処理の流れを説明するフローチャート。
【図10】画像の選択領域を画質判定に用いる例を説明する図。
【図11】パターン高さが装置の焦点深度以上となる状態を説明する図。
【図12】画像評価を行う範囲の類型を説明する図。
【図13】パターンの周囲長情報を使用してプロセス変動と焦点ずれを判別する方法の例を説明する図。
【図14】画面内に存在する複数パターンに対し画像評価を適用した例を説明する図。
【図15】ラインパターンが表示された画像の評価を行う例を説明する図。
【図16】ウェーハ中の複数チップの情報を統計的に用いて局所的な焦点ずれを検知する例を説明する図。
【図17】画質評価情報を含む複数の情報をウェーハマップ状に表示する例を説明する図。
【図18】デフォーカスに起因する誤測定の原理を説明する図。
【図19】ウェーハマップの表示例の一例を説明する図。
【図20】ウェーハマップの表示例の一例を説明する図。
【図21】ウェーハマップの表示例の一例を説明する図。
【図22】ウェーハマップの表示例の一例を説明する図。
【符号の説明】
【0103】
1 電子銃
2 加熱フィラメント
3 走査電子顕微鏡の鏡体
4 ウェーネルド
5 アノード
6 コンデンサレンズ
7 偏向コイル
8 電子ビーム
9 対物レンズ
10 試料室
11 試料
12 カメラ
13 CRT
14 偏向信号発生器
15 二次電子検出器
16 増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点調整を行った電子ビームを試料上に走査することによって得られる電子に基づいて、前記試料上のパターンの検査、或いは測定を行う試料の検査,測定方法において、
焦点調整が行われた電子ビームを走査して、前記パターンを測定するための画像、或いは測定のための位置合わせを行うための画像を形成し、当該画像の評価値と、予め取得された参照画像の画像評価値を比較し、当該参照画像との比較によって、前記形成された画像が所定の条件を満たさないと判断される場合に、前記電子ビームの焦点調整を再度実行する試料の検査,測定方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記パターンを測定するための画像、或いは測定のための位置合わせを行うための画像は、前記電子ビームの焦点調整が行われた後に、前記電子ビームを走査することによって、検出される電子に基づいて形成されることを特徴とする試料の検査,測定方法。
【請求項3】
請求項1において、当該参照画像の評価値と検査画像の評価値の差異が発生する原因に関して、計測対象とするパターンそのものの形状変動に起因するもと、それ以外の焦点調整が不十分であるために発生する差異とを区別しそれぞれ数値化し、所定条件を満たさない場合に前記電子ビームの焦点調整を再度実行する試料の検査,測定方法。
【請求項4】
請求項1において、当該参照画像の評価値と検査画像の評価値の差異が発生する原因に関して、計測対象とするパターンそのものの形状変動に起因するもと、それ以外の焦点調整が不十分であるために発生する差異とを区別しそれぞれ数値化するために、画面全体あるいは任意の領域のみを使用し数値化する方法。
【請求項5】
荷電粒子源から放出された荷電粒子線を試料に集束して照射する対物レンズと、当該対物レンズを制御する制御装置を備えた荷電粒子線装置において、
当該制御装置は、前記対物レンズによる焦点調整が行われた電子ビームを走査して、前記パターンを測定するための画像、或いは測定のための位置合わせを行うための画像を形成し、当該画像の評価値と、予め取得された参照画像の画像評価値を比較し、当該参照画像との比較によって、前記形成された画像が所定の条件を満たさないと判断される場合に、前記電子ビームの焦点調整を再度実行することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項6】
対物レンズによって集束される電子ビームを試料上に走査することによって得られる電子に基づいて、画像を形成する走査電子顕微鏡に接続されるコンピュータに、前記対物レンズのレンズ条件を調整させるプログラムにおいて、
当該プログラムは、前記コンピュータに、前記対物レンズによる焦点調整が行われた電子ビームを走査して、前記パターンを測定するための画像、或いは測定のための位置合わせを行うための画像を形成させ、当該画像の評価値と、予め取得された参照画像の画像評価値を比較させ、当該比較によって、前記形成された画像が所定の条件を満たさないと判断される場合に、前記電子ビームの焦点調整を再度実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−98132(P2009−98132A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243532(P2008−243532)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】