説明

誘導プラズマによる有機化合物の熱破壊方法および装置

a)前記供給物が前記プラズマ中に導入され、酸素ガスの供給が前記少なくとも一種のプラズマ形成ガス、および/または前記プラズマもしくは前記プラズマの近傍にて達成され、それにより原子への分解が誘発されたガスが得られる工程;b)反応囲壁室中において、原子への分解が誘発された前記ガスを熱破壊する第一運転が行われる工程;c)前記第一熱破壊運転を経た前記ガスを空気および/または酸素と混合することにより、前記ガスを熱破壊する第二運転が行われる工程;d)前記混合からの前記ガスの少なくとも一部を冷却することにより、再結合が達成される工程;e)前記ガスが排出される工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、誘導プラズマによる有機化合物の熱破壊方法および装置に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、インダクターまたは誘導旋回体によりイオン化された少なくとも一種のプラズマガスにより形成された少なくとも一種の誘導プラズマを用いて、少なくとも一種の有機化合物を含む供給物、装入物または装填物を熱破壊する方法および装置に関する。
【0003】
上記供給物は、廃棄物から構成されていてもよく、特に液状、ガス状または粉末状であってもよい。特に、該供給物は放射性供給物であってもよい。
【0004】
上記有機化合物は、炭化水素または有機塩素化物質などの有害、有毒または危険化合物であってもよい。
【0005】
概して、本発明の技術分野は、熱処理による廃棄物の分解に係る分野、特に誘導プラズマによる廃棄物の分解に係る分野であると定義することができる。
【背景技術】
【0006】
廃棄物処理の問題が深刻化しておよそ10年である。実際、過去においては廃棄物の大部分は単に集積場に投棄されるのみであり、故にこれら廃棄物の実質管理は何もなされてこなかった。
【0007】
しかし現在は、廃棄物の性質および量の変化により、廃棄物処理を行うために産業的手法が採用されている。
【0008】
したがって、環境を害することなく発展を継続し得るように、多数の技術が廃棄物の処理に適用されている。このような高度な廃棄物分解技術に共通していることは、いずれも廃棄物の分解方法、該分解の際に製造されるヒュームの処理、および生成し得る液体または固体残留物の管理を含んでいることである。
【0009】
一般に、多くの化学化合物の安定性により生じる問題を克服するため、廃棄物分解のための熱的方法が用いられる。したがって、危険物質を分解するための設備は、従来から焼却炉であり、例えば、液体物質は、焼却のために固体物質と混合される。
【0010】
しかし、廃棄物を焼却することにより揮発性残留物が得られ、これをさらに除去する必要がある。
【0011】
さらに、これらの設備においては、燃料と燃焼酸化剤との間の反応を完全に行うため、および運転費用を抑えるためにサイズ容積が調節可能であることが必要である。
【0012】
これらの問題に対する解決策として、多くの廃棄物分解方法は、プラズマ技術を用いている。実際、プラズマ焼却炉は非常に高い温度を達成し、よって廃棄物分解化学反応およびそれにより得られる化学元素の再結合反応を促進する可能性を与えるため、プラズマを適用する方法は、必要な設備のサイズの小型化が可能であるという利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第4,438,706号公報
【特許文献2】米国特許第4,479,443号公報
【特許文献3】米国特許第4,644,877号公報
【特許文献4】米国特許第4,886,001号公報
【特許文献5】米国特許第5,505,909号公報
【特許文献6】米国特許第5,288,969号公報
【特許文献7】仏国特許出願公開第2765322号公報
【特許文献8】仏国特許出願公開第2866414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
文献[1]では、ブローンアークプラズマによって有機物質を分解する試みがなされている。廃棄物の燃焼により発生したガスは、セグメント化された管段階のプラズマトーチの出口において空気、水または酸素と混合される。この技術は、ガス状廃棄物をアークトーチからのプラズマガスと混合することにより、容易に廃棄物を分解することを可能とする。しかし、供給物はトーチ中を通過しないため、上記方法の効率は低下する。ブローンプラズマアークトーチからの高温高速気相に液相を均一に混合することは困難であるため、液体物質の分解はより複雑となる。この困難性のため、上記方法の熱収量および効率がさらに低下する。
【0015】
ブローンアークプラズマを用いる他の例は、文献[2]および[3]に示されている。分解対象廃棄物は、第一バーナーで気相に状態変化された後、ブローンアークプラズマを有する管状トーチ中に導入される。
【0016】
文献[2]に記載の技術では、プラズマトーチ中を通過させるために供給物を気化させている。このことは、該方法の分解効率を向上させる可能性を与える一方、供給物が適切に気化していることを絶えず観察する必要があるため、方法がかなり複雑化する可能性もある。ガスバーナーは、適切に運転するためには相当量の空気を供給する必要があり、その設置はガス流量の増加につながり、供給物の質量割合が低下する。
【0017】
文献[3]に記載の方法は、分解対象供給物が液体であるか気体であるかにかかわらず、該供給物を直接プラズマトーチ中に導入することを可能とする。この方法は、電磁場によりトーチ中の電気アークを安定化させる技術を用いている。この方法は、大量の電気エネルギーを消費することから、超多量に存在する物質の分解に使用が限定される。さらに、トーチを運転するため、または原子の再結合を制御するために用いるガスの種類については言及されていない。したがって上記方法では、物質の分解は熱分解、すなわち酸素を供給することなく行われる。このため、強還元性ガスが得られ、大気中に排出する前にトーチ出口において、これを燃焼させなければならない。
【0018】
文献[4]では、廃棄物を水またはメタノールと混合し、管状アークトーチへ導入する。空気の代わりに、酸素もプラズマガスとして使用される。これらの変更は、廃棄物分解効率を改善することを目的としている。この文献では、セグメント化された管状アークトーチが用いられている。これは、安定運転を得るパラメーターを規定するためにプラズマ技術に関する深い知識を必要とする、比較的稀な技術である。このような技術において2種類の相、すなわち液相と気相を用いた場合、安定運転を確立することは容易ではない。
【0019】
文献[5]では、従来型の焼却炉から流出するガスを精製および浄化するためにプラズマバーナーが使用されている。それにより、混合室において中和対象ガス物質に空気を投入して高温の後燃焼が達成される。前述の通り、この方法においては、ガス精製のための高エネルギー担体としてプラズマトーチが用いられている。したがって、液体を、例えば従来型の焼却炉において事前に気化させずに、直接処理することは不可能である。
【0020】
さらに、供給物がトーチ中に導入されないという事実のため、材料の不相溶性の理由により、該方法の効率は著しく低下する。
【0021】
また、無線周波プラズマまたは高周波プラズマを用いることも可能である。例えば、文献[6]では、分解対象固体物質を、まず回転炉に導入してガス状に変化させる。ガス流は、次に回収器へと送られ、そこでキャリアガス、さらには必要に応じて液状廃棄物と混合される。この混合物は、その後高周波プラズマトーチへ導入される。トーチからの生成物は、次に電場および磁場を発生させるトーリックシステムを備えた遠心分離器に通される。このシステムにより、異なる元素を分離することが可能である。
【0022】
上記技術は、供給物の異なる構成成分を分離し、必要に応じて重元素などの再利用可能な貴重物質を回収することを主な目的としている。
【0023】
上記トーチは特定の形態を有しており、供給物は特に限定されない回収器を介してトーチ中に導入される。場の温度として300〜1000℃が達成されるが、このような温度では厳密な意味での分解は起こらず、むしろ異なる元素の分離のための調整がなされる。
【0024】
文献[7]は、空気/アルゴン混合物のもとでプラズマトーチを運転することによる、軍由来の有毒ガス物質の分解に関する。
【0025】
反応を停止するために、上記トーチの出口において空気/水冷却混合物が導入される。分解対象供給物は、不活性化モジュールまたはプラズマモジュールのいずれかに通される。したがって、プラズマモジュールに送られるのは主にガスであると考えられる。液体を導入することは、供給物の組成に応じた可能性の一つであるにすぎない。
【0026】
上記したような廃棄物分解方法の大部分においては、廃棄物分解効率が不十分であるプラズマアークトーチが、特定の反応器に配置され用いられている。
【0027】
このため、これらの分解効率を大幅に改善するために、液状または粉末状の分解対象有機化合物または有機ハロゲン化合物を水と混合し、プラズマ形成ガスとともに誘導プラズマトーチの芯部に導入する方法が開発された。換言すれば、この方法は、分解対象化合物を含む供給物をトーチ内部に導入する誘導プラズマトーチの使用に基づいている。この方法は、水を分解対象化合物とともにプラズマ中に噴射して導入することにより、供給物を確実に分解する。
【0028】
この方法は、文献[8]仏国特許出願公開第2966414号公報に記載されている。出願された装置を図1に示す。
【0029】
この装置は、誘導プラズマトーチを含み、該トーチに供給されたプラズマガス(1)はインダクター(2)によりイオン化されそれによりプラズマ(3)が形成される。
【0030】
このトーチは、上流に、処理対象供給物を導入するためのシステム(4)を備えている。供給物が規格に準拠して確実に分解されるために、導入された供給物(5)に水が混合される。
【0031】
非常に高い温度で水が解離することにより、一方で有機または有機ハロゲン化物種を酸化するために必要な酸素が確実に供給され、他方ではHClの形成に必要な水素が確実に供給される。
【0032】
この点に関し、文献[8]の第1クレームには、少なくとも混合物の炭素と酸素原子との間の化学量論比を満足するために、有機物質を十分な量の水と混合すること、または、少なくとも一方で混合物の炭素と酸素原子との間、および他方で混合物の水素とハロゲン原子との間の化学量論比を満足するために、有機ハロゲン化物を十分な量の水と混合することが示されている。
【0033】
実際、媒体中の水素不足は、ホスゲンCOCl2などの望ましくない分子の発生原因となる場合がある。プラズマ(3)は、多くの高反応性イオン種を発生させ、これらが有機化合物の分解を確実に行う。これら分解反応は、内壁(8)を並設する耐熱性材料(7)により非常に高い温度に保たれた反応器(6)中で行われる。
【0034】
反応器底部およびベンチュリ部(11)において空気および/または酸素(9、10)を導入することにより、ガスが確実に十分に混合され、酸素が追加的に供給される。
【0035】
次に、最終の反応が行われる再結合領域(12)に入る前に、上記ガスは急冷される。
【0036】
次に、上記ガスは、特に酸種の中和にある処理へと送られる(13)。
【0037】
文献[8]に記載の方法の効率を試験するために、試験設備を設けた。プラズマ中の有効電力1〜1.5kWに対するプラズマ発生器の電力は4.5kWである。
【0038】
加熱および気化すべき水の量が大量であるため、物質の分解が非常に満足のいくものであった場合、上記方法のエネルギー効率は平均的か、または劣っているとさえ言えるであろう。
【0039】
例として、2種類の参照用分子を、それぞれ100g/hの流速で供給し、試験設備で処理を行った:
CHCl3の式で表されるトリクロロメタンまたはクロロホルム、
65Clの式で表されるクロロベンゼン。
【0040】
クロロホルムの処理には、約100Wの処理熱収支に対して、最低約30g/hの水を供給する必要がある。よって、トーチで得られる電力は、溶媒を完全に確実に処理するために非常に十分である。
【0041】
クロロベンゼンの処理には、約550Wの処理熱収支に対して、最低約200g/hの水を供給する必要がある。プラズマ中の電力がまだ十分な場合、得られるマージンはさらに限られる。処理が確実に行われることを保証するために水の量を化学量論量の2倍とした場合、熱収支はおよそ900Wにまで増加し、エネルギーマージンはほぼ0まで低下する。
【0042】
反応効率の理由から、水の化学量論量の少なくとも2倍を用いることは妥当であることを考慮すると、エネルギー収量は大幅に低下する。
【0043】
例として、プラズマ中で得られるkW当たりの、塩素化脂肪族溶媒CxHyClの最大処理流速の時間依存変化を図2に示す。
【0044】
注釈として、塩素原子1つ(z=1)を有する脂肪族鎖を含む溶媒について計算を行った。しかし、結論は、塩素原子数zが1とは異なる場合と同一であろう。
【0045】
上記流速は、炭素原子数xとともに実質的に減少することが示されている。このことより、上記方法を大規模な産業用途に用いることは、どちらかといえば、またはそれほど魅力的ではない。
【0046】
したがって、上記より、文献[8]に記載の方法および装置は、特に以下のようないくつかの問題を有していることが分かる:
−方法のエネルギー収量が不十分である;
−供給速度が限定される;
−アルゴンなどの高価なプラズマガスの使用により、産業上の用途の範囲において、上記方法は特に魅力的ではない;
−水と混和しない化合物を処理および分解することが困難である。
【0047】
よって、文献[8]に記載の方法および装置の問題を有さず、インダクターによりイオン化された少なくとも一種のプラズマ形成ガスにより形成された少なくとも一種の誘導プラズマを用いて、少なくとも一種の有機化合物を含む供給物を分解する方法および装置が求められている。
【0048】
本発明の目的は、特に、インダクターによりイオン化された少なくとも一種のプラズマ形成ガスにより形成された少なくとも一種の誘導プラズマを用いて、少なくとも一種の有機化合物を含む供給物を分解する、特に上記要望を満たす方法および装置を提供することである。
【0049】
さらに、本発明の目的は、文献[8]に記載された方法および装置などの従来技術の方法および装置の問題、欠点、制約および不都合を有さない、上述のような方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0050】
本発明によれば、上記目的および他の目的は、インダクターによりイオン化された少なくとも一種のプラズマ形成ガスにより形成された少なくとも一種の誘導プラズマにより、少なくとも一種の有機化合物を含む少なくとも一種の供給物を熱破壊する方法であって、下記の連続工程が行われる方法:
a)前記供給物が前記プラズマ中に導入され、酸素ガスの供給が前記少なくとも一種のプラズマ形成ガス、および/または前記プラズマもしくは前記プラズマの近傍にて達成され、それにより原子への分解が誘発されたガスが得られる工程;
b)反応囲壁室中において、原子への分解が誘発された前記ガスを熱破壊する第一運転が行われる工程;
c)前記第一熱破壊運転を経た前記ガスを空気および/または酸素と混合することにより、前記ガスを熱破壊する第二運転が行われる工程;
d)前記混合からの前記ガスの少なくとも一部を冷却することにより、再結合が達成される工程;
e)前記ガスが排出される工程。
【0051】
有利には、上記酸素ガスの供給は、純酸素を単独プラズマ形成ガスとして用いることによって達成されてもよい。
【0052】
換言すれば、上記(複数の)プラズマ形成ガスは、純酸素から構成される。
【0053】
よって、酸素ガスを他の方法で供給する、例えば、酸素ガスを上記プラズマ中または上記プラズマの近傍に運搬することにより供給を達成することは、通常、不要である。
【0054】
上記(複数の)プラズマ形成ガスが酸素から構成されない場合、酸素を含まない場合、または酸素をほとんど含まない場合、酸素ガスを(すでに形成された)上記プラズマ中または(すでに形成された)上記プラズマの近傍に運搬することにより、上記酸素ガスの供給が達成されてもよい。
【0055】
プラズマとは、すでに形成され、すでに発生したプラズマを意味する。すでに形成され、すでに発生したプラズマを、(複数の)プラズマ形成ガスと誤解してはならない。
【0056】
(複数の)プラズマ形成ガスが酸素をほとんど含まないとは、通常、該(複数の)プラズマ形成ガス中の酸素の量が、原子への分解、ならびに上記第一および第二熱破壊運転が十分な条件下で行われるためには不十分であることを意味する。
【0057】
有利には、上記(複数の)プラズマガスが酸素から構成されない場合、酸素を含まない場合、または酸素をほとんど含まない場合、酸素ガスを、上記供給物が導入される位置と同一または該位置の近傍の位置において後者と同時に上記プラズマ中に導入することにより、上記酸素ガスの供給が達成されてもよい。
【0058】
有利には、上記(複数の)有機化合物に供給される酸素ガスのモル比は、化学量論的燃焼比より大きい。
【0059】
有利には、工程c)において、空気および/または酸素ガスが投入されるベンチュリ装置を用いて混合が達成されてもよい。
【0060】
通常、空気および/または酸素ガスは、混合の際に系統的に投入され、混合の際に冷却が行われる。
【0061】
または、特に、しかし限定はされないが、上記供給物がさらに少なくとも一種の鉱物充填剤を含有する場合、工程c)において、上記反応囲壁室の主軸に向けて空気および/または酸素ガスを投入する、空気および/または酸素配給リングによって混合が達成されてもよい。
【0062】
有利には、工程d)の最後に、上記ガスを化学的に処理する少なくとも一つの工程d1)が設けられていてもよい。
【0063】
有利には、上記ガスを化学的に処理する少なくとも一つの工程d1)は、脱ハロゲン化または中和工程、窒素酸化物の脱酸化工程、および脱硫工程から選ばれる。
【0064】
有利には、上記供給物がさらに少なくとも一種の鉱物充填剤を含有する場合、工程d)の後および工程d1)の前にガスろ過工程が設けられていてもよい。
【0065】
有利には、上記ガスの化学的処理工程d1)の最後に、該ガスを液滴捕捉コンデンサにて処理してもよい。
【0066】
有利には、複数の同一種または異種の供給物を、複数のプラズマを用いて処理してもよい。
【0067】
本発明の方法は、文献[8]に記載された方法を変更したもの、またはむしろ、該方法を改善したものと定義することができる。
【0068】
本発明によれば、水の代わりに、水に代えて酸素を酸化燃焼剤として適用するために文献[8]の方法を変更した。
【0069】
換言すれば、本発明が目的とする文献[8]の方法の変更とは、主に、プラズマ形成ガスとして純酸素を用い、該純酸素にプラズマ形成ガスおよび酸化燃焼剤ガスとしての二元機能を持たせて方法を行うように; または、酸素をまったく、もしくはほとんど含まないプラズマ形成ガスを用い、酸素を供給して方法を行うように文献[8]の方法を適応させることからなる。
【0070】
換言すれば、本発明によれば、供給物のみをプラズマ中に導入し、文献[8]のようにプラズマ中に導入する前に供給物を水と混合することも、本発明では行わない。
【0071】
本発明の方法においては、酸素ガスの導入、到着、流入、供給により、有機化合物の分解が確実に行われる。純酸素を単独プラズマ形成ガスとして用いる場合、この導入は、望ましくは、確実にプラズマにより実現されてもよい(図6参照)。
【0072】
または、上記酸素導入は、補助導入口を介して確実に行われてもよく、その場合、上記プラズマは、酸素を含まない、または酸素をほとんど含まない一種または数種の他のガスから構成される(図7参照)。
【0073】
本発明の方法は、従来技術において記載も示唆もされていない、一連の特定工程を含む。
【0074】
特に、誘導プラズマを用いた廃棄物の熱破壊方法において、水の代わりに酸素を酸化燃焼剤として使用することは、従来技術、特に上記文献[8]において記載も示唆もされていない。
【0075】
本発明の方法は、従来技術の方法の問題、欠点、制約および不都合を有しておらず、従来技術の方法、特に上記文献[8]の方法の問題に対する解決手段を提供する。
【0076】
最初に注目するべきこととして、水を酸素に置き換えることは、上記方法の適用に対して全体的に非常に限られた影響しか与えない。
【0077】
したがって、本発明の方法は、酸化燃焼剤ガスとして水を用いて運転する既存の設備において、設備の大幅な変更を必要とすることなしに適用することができる。
【0078】
酸化剤として水の代わりに酸素が用いられるように、場合によっては僅かな調整を行う必要があるのみである。
【0079】
より詳細には、有機ハロゲン化合物の処理に関心がある場合、有機ハロゲン化物質を水で処理することは、ホスゲンCOCl2などの毒性の強い化合物の形成を防ぐために妥当であることは知られている。この化合物は、還元性条件下において塩素原子とCOラジカルとの間で形成される。水を導入することにより、塩酸HClを生成するためにこれらの塩素原子を結合させるのに必要な一定の水素ポテンシャルが生じ、そのような塩酸は、下流の洗浄カラムで中和される。このことは、文献[8]に記載されている。
【0080】
本発明の方法のように酸素を系に導入することにより、より酸化性条件となるが、塩素の結合力は制限される。
【0081】
塩素を多く含む分子CHCl3について行った研究では、該物質1モルを処理する際に形成されるCOCl2量は、導入される酸化燃焼剤の量に依存することが示される。量比が1/1未満では、いずれの場合もホスゲンが形成され、最大量は酸素を用いて処理を行った場合に3倍となる。一方、量比が1/1を超えると、ホスゲンは形成されなくなる。水を用いて処理した場合、この量比を超えた時の水素ポテンシャルは、塩素との反応が起きHClが形成されるために十分であり、そのような塩酸は後に中和される。酸素処理の場合、上記量比を超えた時の酸素ポテンシャルは、全炭素をCO2へと気化させるのに十分である。
【0082】
結論として、使用する酸化燃焼剤に関らず、化学量論比未満の条件ではホスゲンが形成される。化学量論比を超えると、この有毒化合物は消失する。クロロホルム1モルを処理した際の上記結果を図3に示す。
【0083】
双方の運転方式の違いは、図4に示すように、O2を用いて処理を行った際の塩素Cl2の形成にある。水を用いて処理した場合は、この量は1/1比となったところでゼロまで減少する。
【0084】
酸素を用いて運転される本発明の方法においては、当初塩化水素HClを中和するように設計および調整されたガス処理設備は、塩素ガスCl2の中和を確実に行うために変更および再調整される必要があると思われるかもしれない。
【0085】
ここで、後者は、洗浄カラムにおいて炭酸水で容易に中和され、塩化ナトリウムおよび次亜塩素酸ナトリウムNaClOが形成されることが分かる。したがって、当初水を用いて運転する設備に配置されたガス処理システムは、変更される必要がない。下流における流出物の管理において、通常、この次亜塩素酸塩の存在を考慮に入れる必要があるのみである。
【発明の効果】
【0086】
本発明の方法は、従来技術の方法、特に文献[8]の方法に対して多くの利点を有する。該利点は、概して、酸素がプラズマ形成ガスを構成しているか否かに関らず、有機材料、化合物の燃焼を確実に行うために水を酸素に置換することに特に関係している。これら利点は、特に以下の通りである:
−本発明の方法によると、エネルギー収量が非常に大幅に改善される;
−あらゆる種類の供給物、および水と混和しない液体供給物でさえ処理することが可能である。このことは、文献[8]に記載の方法では、可能ではあったが困難を伴うものであった。本発明の方法によると、そのような液体を容易にプラズマ中に導入し処理することができる。しがたって、本発明の方法により処理することができる供給物の範囲は、非常に広く、ほとんど限定されない;
−同サイズの設備に対して、供給量レベルが大幅に増加される。
【0087】
純酸素をプラズマ形成ガスとして用いる本発明の方法の好ましい態様の場合、すなわち、水の代わりに酸素を使用し、該酸素をプラズマ形成ガスとしても用いる場合に、本発明による方法の利点はより多く、そしてより顕著である。一部について上記したこれらの利点は、特には以下の通りである:
−第一に、現在用いられているプラズマ形成ガスは空気、窒素またはアルゴンである。空気または窒素の使用は、多量の窒素酸化物の生成につながり、下流において通常アンモニア溶液を用いる接触還元カラムの設置が必要となる。それに関してアルゴンを用いることは、産業的利用にはコストがかかる。
【0088】
本発明による方法のこの好ましい態様において、アルゴンよりも大幅に安価で、窒素酸化物の生成を引き起こさない純酸素をプラズマ形成ガスとして用いることは、酸素がプラズマ源となるだけでなく、有機化合物の燃焼に必要な酸素供給も確実に行うことから、選択すべき解決手段である。換言すれば、酸素は、プラズマ形成ガスとしての役割、および酸化燃焼剤ガスとしての役割をともに果たす。窒素を用いないため、対応する酸化物を中和するための装置を増設することが回避される。
【0089】
プラズマガスとして純酸素を用いることにより、非常に高価なアルゴンをこの目的に使用することが特に回避される。このことは、方法の運転費用に大きな影響を有する。
−廃棄物、廃液分解能力が改善され、ガスの燃焼が最適化される;
−上記したように、水と混和しない液体供給物を処理することが可能である;
−方法の処理能力が大幅に増加する。
【0090】
より詳細には、<<水方式>>において、すなわち文献[8]の方法の場合において、方法は多くの<<エネルギーを消費>>し、処理における流速が制限される。
【0091】
例えば、脂肪族炭化水素系列CxyClの化合物を処理する場合、流速100g/hで処理するために必要な電力は、炭素原子数xとともに増加する。酸素方式においては、有機材料の燃焼は電力を放出する。供給速度100kg/hに基づくと、この電力は実質的に炭素原子数xとともに増加する。
【0092】
これら二つの方式の違いは、図5に表れている。第二方式の負の目盛は、電力の発生を考慮している。これは、溶媒の燃焼によって生じ、反応器の温度を上昇させること、および熱量の放散を最適化することで相殺される必要がある。
【0093】
産業的大規模運転において、処理の際に生じた電力を利用することができる。例えば、クロロヘキサンに類似の化合物を50kg/hで処理する装置は、450kW近い電力を生じると考えられる。
【0094】
本発明はさらに、インダクターによりイオン化された少なくとも一種のプラズマ形成ガスにより形成された少なくとも一種の誘導プラズマにより、少なくとも一種の有機化合物を含む少なくとも一種の供給物を分解する装置であって、
−少なくとも一つの誘導プラズマトーチ;
−該トーチ中に少なくとも一種のプラズマ形成ガスを導入する手段;
−必要に応じて、上記(複数の)プラズマガスが酸素から構成されない場合、酸素を含まない場合、または酸素をほとんど含まない場合、酸素ガスを上記プラズマ中または上記プラズマの近傍に運搬する手段;
−該供給物を該トーチ中に導入する手段;
−上記誘導プラズマトーチ(6)から流出したガスの熱破壊を行うことを可能とすることができる反応囲壁室または反応室(7);
−上記反応囲壁室または反応室(7)から流出したガスの混合を行うことを可能とする装置;
−上記混合装置(8)中に空気および/または酸素ガス(9)を導入する手段;
−上記混合装置(8)からのガスの少なくとも一部を、冷却により再結合させることを可能とする装置(10);を含み、
上記誘導プラズマトーチ(6)、上記囲壁室または反応室(7)、上記混合装置(8)および上記再結合装置(10)が、流動可能に連通されている装置に関する。
【0095】
有利には、上記供給物をトーチ中に導入する手段は、耐熱性材料から形成され、その内部に耐熱性材料の繊維から形成される織物が充填された管からなっていてもよい。
【0096】
有利には、該耐熱性材料から形成される管は、その中央に、酸素ガスをプラズマ中に運搬するための管をさらに含んでいてもよい。
【0097】
有利には、上記ガスの混合を行うことを可能とする装置は、ベンチュリ装置であってもよい。
【0098】
または、上記ガスの混合を行うことを可能とする装置は、上記反応囲壁室の主軸に向けて空気および/または酸素を投入することが可能な配給リングであってもよい。
【0099】
有利には、上記混合装置からのガスの少なくとも一部を冷却により再結合させることを可能とする装置は、水冷二重囲壁器であってもよい。
【0100】
有利には、上記装置は、上記ガス再結合装置からガス循環方向の下流に位置する、該再結合装置からのガスを化学的に処理することを可能とする少なくとも一つの装置をさらに含んでいてもよい。
【0101】
有利には、上記再結合装置からのガスを化学的に処理することを可能とする少なくとも一つの装置は、脱ハロゲン化、窒素酸化物の脱酸化、および脱硫から選ばれる少なくとも一つの反応を達成してもよい。
【0102】
有利には、上記装置は、ガス循環方向において上記ガス再結合装置の下流、および上記再結合装置からのガスを化学的に処理することを可能とする少なくとも一つの装置の上流に、ろ過手段をさらに含んでいてもよい。
【0103】
有利には、上記装置は、複数のプラズマトーチを含んでいてもよい。
【0104】
有利には、上記装置は、移動手段に搭載されていてもよい。
【0105】
以下に記載する詳細な説明を読むことにより、本発明はさらに理解され、発明の他の利点も明らかとなるであろう。下記詳細な説明は例示であり、限定的なものではない。添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】酸化燃焼剤として水を用いる文献[8]に記載の方法を行うための装置の概略縦断面図である。
【図2】水を酸化燃焼剤として用いてCxyCl化合物を処理する際の最大流速を示すグラフである。最大処理流速(g/h/kW)を縦軸にプロットし、化合物の炭素原子数xを横軸にプロットする。
【図3】クロロホルムの分解に酸化燃焼剤としてそれぞれ水または酸素を用いた場合の、酸化燃焼剤の量および性質に対するホスゲンCOCl2の形成の変化を示すグラフである。COCl2形成量(モル)を縦軸にプロットし、クロロホルム1モルに対する酸化燃焼剤量を横軸にプロットする。
【図4】クロロホルムの分解に酸化燃焼剤としてそれぞれ水または酸素を用いた場合の、酸化燃焼剤の量および性質に対する塩素Cl2の形成の変化を示すグラフである。Cl2形成量(モル)を縦軸にプロットし、クロロホルム1モルに対する酸化燃焼剤量を横軸にプロットする。
【図5】水および酸素を酸化燃焼剤として用いてCxyCl化合物を100g/hで処理するために必要な電力を、該化合物の炭素原子数xに対して示すグラフである。100g/hで処理するために必要な電力(W)を縦軸にプロットし、CxyCl化合物の炭素原子数xを横軸にプロットする。 正の座標は電力吸収に相当し、負の座標は電力発生に相当する。
【図6】プラズマ形成ガスが純酸素から構成される態様における本発明の方法を行うための装置の概略的縦断面図である。
【図7】プラズマ形成ガスが酸素を含まない、または酸素をほとんど含まない態様における本発明の方法を行うための装置の概略的断面図である。
【図8】流体供給物をプラズマの芯部中に導入するために設計された特定のロッドの構造、およびプラズマトーチへの適用を示す概略的縦断面図である。
【図9】流体供給物、および酸素などの酸化ガスをプラズマの芯部中に導入するために設計された特定のロッドの構造、およびプラズマトーチへの適用を示す概略的縦断面図である。
【図10】本発明の方法を行うための装置全体を示す概略的縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0107】
まず、本発明の方法および装置は、少なくとも一種の有機化合物を含む装填物、供給物または装入物を熱分解する方法および装置であると定義する。
【0108】
好ましくは、上記供給物は、該少なくとも一種の有機化合物から構成される(からなる)。
【0109】
本発明によれば、処理される供給物は、通常、流体状供給物、すなわち液体、気体または粉末状である(すなわち、後者の場合、供給物は流動性粉末を形成している)。
【0110】
有機化合物とは、通常、炭素および水素原子、ならびに必要に応じて酸素、窒素、硫黄原子および塩素、臭素、ヨウ素およびフッ素原子などのハロゲン原子から選ばれる原子を含み、好ましくはこれら原子から構成され、これら原子からなる化合物を意味する。
【0111】
上記(複数の)分解対象有機化合物は、通常、例えば爆発性化合物などの有毒、有害または危険な有機化合物;および/または放射性化合物である。
【0112】
これら化合物は、例えば、有機ハロゲン化溶媒、特に有機塩素化溶媒、油、芳香族または脂肪族炭化水素、クロロフルオロカーボンCFCまたはヒドロクロロフルオロカーボンHCFCなどの有毒ガス物質、軍事ガス、固形爆薬などであってもよい。
【0113】
本発明の方法で処理することができる好ましい供給物の一つは、ハロゲン化有機化合物を含み、該化合物の構造中に14Cまたは3Hなどの放射性トレーサーを含む放射性液体供給物である。
【0114】
分解とは、方法の終了時、すなわち、通常は排出ガス中において、当初供給物中に存在し除去が望まれていた有機化合物が、もはや存在しない、または、10質量%未満、好ましくは5質量%未満の含有量で存在すること、もしくは、これら化合物が、もはや検知不可能であり、したがってその含有量がゼロと考えられることを意味する。本方法において、分解対象有機化合物は、より小さいサイズの分子であって、供給物中に当初存在する分解対象化合物よりも有害性、毒性もしくは危険性の低い分子、または、毒性もしくは有害性がないと考えられる分子に変換される。
【0115】
図6は、プラズマ形成ガスが純酸素から構成されてなる態様における本発明の方法を行うための装置を示している。同図の装置は、図1の装置(同一符号使用)と実質的に類似であるが、酸素がプラズマ形成ガスとして使用され、プラズマトーチ中へと開放されたダクト(1)を通して反応器中に導入される点、および供給物と水との混合物ではなく処理対象供給物(5)のみがプラズマ中に導入、供給される点で相違している。さらに、有利には、図1の装置の導入供給システム(4)は、本発明の装置においては、必要に応じて特定の導入ロッドまたは管(14)で置き換えてもよく、および/または、図1の装置のベンチュリ部(11)は停止させて、反応器の中心に向けて空気および/または酸素(15)を投入するガス配給リングで置き換えてもよい。このような態様を、以下にさらに詳細に説明する。
【0116】
図7は、プラズマ形成ガスが純酸素ではない態様、または(複数の)プラズマ形成ガスが酸素を含まない、もしくは酸素をほとんど含まない態様における本発明の方法を行うための装置を示している。
【0117】
したがって、酸素供給を行う必要があるが、該供給は、ガスを直接反応器の芯部に運搬する、または、供給物、例えば、処理対象液状またはガス状供給物と同時におよび共に運搬することにより達成してもよい。第一の場合、図7に示すように、従来型のタッピング(16)により、酸素を反応器中にプラズマに可能な限り近付けて、またはプラズマ中へ確実に到達させることが可能となる一方、他の独立したダクト(1)により、プラズマ形成ガスをプラズマトーチ中に導入することが可能となる。残りの構造に関しては、図7の装置は図6の装置と実質的に類似である。
【0118】
図10は、本発明の方法を行うための装置全体を示している。
【0119】
該設備は、上流から下流へ、トーチ(102)の形態に適した高周波電流を供給する電源(380V/50Hz)に接続された発電機(101)により駆動される誘導プラズマトーチ(102)を備えている。
【0120】
発電機(101)によるトーチ(102)への電力供給は、通常、コントロールパネル(図示せず)を介して行われる。
【0121】
タングステンフィラメント(103)をトーチ(102)にセットすることにより、トーチ(102)の起動が大気圧で確実に行われる。該フィラメントは、高周波電磁場に供されると、プラズマを引き起こす。
【0122】
酸素プラズマの場合、電極の酸化を避ける他の手段により起動を行ってもよい。
【0123】
通常、トーチ(102)は、通常空気冷却された単一コイルまたは旋回体からなり、該コイルには、適当な導入口(104)により酸素が供給され、さらに供給物をプラズマ内部へと導入する適切な手段(105)により供給物が供給される。
【0124】
好ましくは、特に供給物が液体の場合、供給物をプラズマ内部へと導入する上記手段は、液体をプラズマ芯部へと導入する特定のロッドからなる。
【0125】
この特定のロッドまたは管は、図8により詳細に示されている。
【0126】
実際、プラズマは、流体を内部に導入するのが困難な粘稠性媒体である。
【0127】
ロッド(81)は、プラズマ(82)の芯部に突入し、単一誘導コイルまたは誘導旋回体(84)の下部において開放(83)し、それにより、ロッドの上端(86)から送られた供給物(85)が該開放口から導入される。
【0128】
図8を参照すれば、上記ロッドは、
−アルミナなどの耐熱性材料から形成され、機械的構造を確保する管(87);
−ガラス、アルミナまたはジルコニアなどの耐熱性材料の繊維から形成される織物から構成され、その内部に、ロッドの一方の端部、すなわち該ロッドは通常垂直に保持されるため通常はその上端部(86)から通常流体である供給物(85)が導入される充填物または芯(88)、からなる。
【0129】
この構造において、織物繊維充填物(88)は、プラズマ(82)を通過して落下する液滴の形成を防止する。該充填物は、毛細管含浸によって一定の流速を確保する。
【0130】
流体が液体の場合、ロッドの中央部で達成される高温により、気化が確実に行われ、有機材料は実質的にガス状で処理される。
【0131】
しかし、液体ではない流体に対しても上記ロッドを用いることができる。
【0132】
上述したように、酸素の提供または供給は複数の方法により行うことができる。よって、プラズマ形成ガスが酸素から構成される場合、上記酸素の供給は、したがって、当然このプラズマ形成ガスを供給することからなる(図6)。
【0133】
または、プラズマ形成ガスが酸素を含まない場合、もしくは酸素をほとんど含まない場合、上記酸素の提供または供給は、したがって、酸素ガスを直接反応器の芯部に運搬する、または、供給物と共に運搬することにより達成してもよい。
【0134】
第一の場合、従来型のタッピングにより、プラズマを発生させるトーチ中に酸素が確実に到達する(図7)。
【0135】
供給物は、図8に記載されるロッドを通じてプラズマ内に運搬される。
【0136】
第二の場合、上記および図8に記載のロッドを介して酸素を内部に運搬してもよい。このロッドは、酸素の通過が可能なように変更されている。
【0137】
この変更型ロッド、または二重もしくは二路ロッド(91)を図9に示す。
【0138】
安全上の理由から、反応器内部に到達する前に酸素を供給物の有機化合物と混合することができないため、通常はキャピラリー管である管(92)を、上記織物状または繊維状充填物(88)を保持するロッド(91)の中心に設置してもよい。そして、酸素(93)をキャピラリー(92)中に導入し、その一方で有機化合物を含む供給物(85)を、ロッドの一方の端部、通常は上端部(86)を介して、酸素運搬管の壁(94)とロッドの壁(87)との間に形成された環状空間における周辺部に導入する。
【0139】
プラズマトーチ(102)で形成されたプラズマは、反応器または反応囲壁室(106)中で燃焼する。
【0140】
この反応室(106)は、通常、冷却水が内部を循環する二重壁を含む。この二重壁は、鋼から形成されていてもよい。二重壁の内面は、保護耐熱性材料で覆われる。
【0141】
反応器の外壁は、通常、水の循環により冷却される。
【0142】
上記プラズマからの化学種は、特に純酸素がプラズマ形成ガスとして使用される場合、トーチ(102)中に導入された酸素により、反応器または反応囲壁室(106)中で酸化される。反応室は、プラズマトーチで発生した熱を閉じ込め、それにより廃棄物の分解を完全に行うための機能を有する。よって、この反応囲壁室からのガスは、1500℃超の温度を達成することができる。
【0143】
上記反応室は、通常、垂直円柱形状であり、その頂部にプラズマトーチが配置されている。通常、反応囲壁室の壁は耐熱性材料によって熱的に遮断されている。
【0144】
上記酸化は、反応囲壁室の下部に位置するベンチュリ装置などの混合装置(107)によって促進される。この装置において、酸化燃焼剤ガス、例えば空気および/または酸素(108)の導入を行うことができる。
【0145】
上記混合装置がベンチュリ装置である場合、混合装置への空気および/または酸素の導入は常に行われる。
【0146】
上記ベンチュリ装置を停止する場合、配給リングによる空気および/または酸素の導入のみを維持する。
【0147】
上記ベンチュリ装置の構造は、文献[8]に詳細に記載されており、その記載を参照することができる。
【0148】
空気および/または酸素などの酸化ガスの供給によるベンチュリにより、この酸化燃焼剤と反応囲壁室からのガスとの間に二次燃焼または後燃焼を起こすことが可能となる。したがって、この装置を用いることにより、反応囲壁室(106)での第一分解段階を免れた可能性のある化合物、特に有毒化合物を分解することが可能である。
【0149】
換言すれば、上記ベンチュリ装置の目的は、低温空気および/または酸素の供給(108)により、反応室(106)からの反応ガスに強い乱流を発生させることにある。該低温空気および/または酸素と反応生成物とからなるガス混合物は、熱を追加することなく、反応室からのガスの後燃焼を起こすことを可能にする。したがって、反応室(106)で変換されずに反応性を維持している可能性のあるガスを、完全に分解することが可能となる。上記ベンチュリ装置において、H2、CO、C・・・などの異なるガス種は、下記の反応に従って空気と反応する:
CO + H2 + O2 → CO2 + H2
【0150】
よって、有毒ガスCOは、より毒性の低いガスへ変換される。
【0151】
ベンチュリ装置により空気および/または酸素(108)を添加することで、特に、再結合率または速度を改善するための混合、および冷却が確実に行われると言うことができるであろう。
【0152】
上記流体が鉱物充填剤を含む場合、ベンチュリ装置を停止させ、空気を導入することでもガスおよびガス中の粒子の急冷が確実に行われる。
【0153】
本発明において、上記反応器または反応囲壁室の形態は、混合装置(107)において、反応器が鉱物充填剤をより容易に受け入れるために、変更されてもよい。
【0154】
実際、本発明の方法は、通常、鉱物充填剤を含まない流体の処理を対象としている。
【0155】
しかし、例えば、鉱物を含有する材料を溶解するために用いた使用済み溶媒を処理する場合、結果的にこれら鉱物充填剤が粒子状に濃縮されて析出物を形成する場合もある。
【0156】
ガスの十分な混合を確実に行うために存在する上記ベンチュリ装置の存在は、析出物の形成および詰まりの原因となる危険がある。このことから、鉱物を含む液体の処理は、異なる設計の反応器を用いて行われることが好ましい。
【0157】
この態様においては、ベンチュリ装置での不要な析出物を避けるために、ベンチュリ装置を除去する。その代わりに、ガス、例えば酸素濃化されていてもよい空気を配給するリングを用いる。該リングは、(通常垂直円柱として見える)反応器の軸に向けて、上方に傾けてもよい方向に、空気および/または酸素を投入する。この傾きは、反応器の形態、および用いるプラズマトーチの電力により異なる。該傾きは、場合に応じて水平方向に対して0°〜70°の範囲であってもよい。
【0158】
上記ガスの投入圧は、反応器の形態およびプラズマの電力に応じて調整することができる。上記ガスは、流内に断裂領域を発生させる役割、および適切な混合に必要な乱流を生じさせる役割を果たす。また、方法の運転を害する恐れのある凝集析出物の形成を制限するために、ガスおよびガス中に存在する可能性のある液体粒子の急冷を確実に行う。上記ガス配給リングにより、ベンチュリ装置と同様に、後燃焼が確実に行われる。
【0159】
鉱物充填剤を含有する可能性のある液体を処理する場合は、反応器の下流においてろ過工程を行う必要がある。したがって、ガス処理系統にフィルター(112)を導入する必要がある。
【0160】
上記のようなガス配給リングを有する反応器の構成を図6および7に示す。増設フィルターは図示されていないが、ガスの処理には組み込まれる。
【0161】
この混合装置(107)の下流において、ガスは冷却器(109)中に進行し、そこで、下流に位置する処理装置に適した温度までガスが冷却される。
【0162】
また、この冷却器(109)は、上記ベンチュリ装置にてすでに開始されたガスの再結合プロセスを終了させる。再結合とは、プラズマ中で分解され、酸素により酸化された有機化合物が再結合して小さな分子となり、通常、例えば、HClまたはCl2などの特定の種を除去する中和処理後に大気中に排出することのできるガスを形成することを意味する。
【0163】
再結合空間と呼ぶこともできる上記冷却器(109)は、通常、水冷された二重壁室内にある。この空間において、上記ガスの温度は急速に低下し、出口では例えば200℃となる。反応囲壁室(106)とは異なり、上記再結合空間は熱的に遮断されておらず、その二重壁は、中央冷却装置からの水を循環させることにより冷却される。この空間において、上記ガスは、上記壁近傍の自然対流によって流動し、冷却される。
【0164】
上記冷却器または再結合空間(109)の出口において、例えば質量分析により、または赤外分光により(118)、上記ガスは分析される。この分析により、上記熱処理の効率を確認し、この熱処理後のガスの組成を知ることが可能である。しかし、特に、上記分析により、上記ガスをさらに少なくとも一つの化学処理に供する必要があるかを知ることが可能である。
【0165】
上記ガスをガス処理設備(113)に向けて送る前に、《オーバースリーブ》部(110)の入口で水(111)を噴射することにより、ガスの温度を調整することができる。よって、温度が過度に高い場合、特にハロゲン中和システムを保護するために、上記ガスの温度を低下させることが可能である。
【0166】
このガス処理設備(113)は、処理が必要な化合物に適合されている。この設備において、上記ガスに対して、例えば脱ハロゲン化処理またはハロゲン除去処理、窒素酸化物除去処理、および脱硫処理から選ばれる一種類または数種類の化学処理を行うことが可能である。
【0167】
したがって、通常、上記ガス処理設備(113)は、ハロゲン中和装置および/または特にプラズマ形成ガスが窒素を含む場合、上記ガスの触媒脱窒を可能とするいわゆる《DENOX》システムおよび/または必要に応じて脱硫装置を含んでもよい。
【0168】
HClまたは塩素ガスの形で存在するハロゲンの中和は、通常、炭酸水の噴射による標準的な洗浄によって、下記の反応に従って行われる:
HCl + NaOH → NaCl + H2O、
または、下記の反応に従って行われる:
Cl2 + 2NaOH → NaCl + NaClO + H2
【0169】
窒素酸化物の脱窒は、例えば、アンモニアとの反応により行われる:
NO + NO2 + 2NH3 → 2N2 + 3H2
4NO + 4NH3 + O2 → 4N2 + 6H2
2NO2 + 4NH3 + O2 → 3N2 + 6H2
【0170】
廃液が鉱物を含む場合、上述したように、これらのガスは、洗浄システム(113)の上流に配置されたフィルター(112)に通される。
【0171】
廃液が放射性の場合、このフィルター(112)は、VHE(《Very High Efficiency》)型とすることができる。
【0172】
このようなタイプのフィルターは、現在広く市販されている。
【0173】
洗浄後、上記ガスは液滴捕捉コンデンサ(114)に通され、構成体(116)および煙突(117)への液の移動を制限することができる。
【0174】
上記ガスは、系を軽度の減圧下に維持する引抜装置(115)により、上流から下流に設備内を循環する。
【0175】
ガスを大気中に排出してもよいかの決定を常に行うため、例えば赤外分光分析または質量分析型のオンライン分析手段(118、119)により、冷却器(109)出口および煙突(117)におけるガスの性質の監視が確実に行われる。
【0176】
最後に、注目すべきこととして、同一反応器に複数のプラズマトーチを配置してもよい。この配置とすることにより、流体をかなりの流速で処理することが可能となり、および/または、互いに不混和もしくは化学的に非相溶な異なる流体を同時に処理することが可能となる。
【0177】
さらに、本発明の装置は、移動手段に搭載された移動可能装置であってもよい。
【符号の説明】
【0178】
1 プラズマ形成ガス、2 インダクター、3 誘導プラズマ、4、14、105 導入、5 供給物、6、106 反応囲壁室、9、10、15、108 酸素、11、107 混合、12、109 再結合、16 窒素酸化物、88 織物、87 管、112 ガスろ過工程、113 少なくとも一つの工程、114 液滴捕捉コンデンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクターによりイオン化された少なくとも一種のプラズマ形成ガスにより形成された少なくとも一種の誘導プラズマにより、少なくとも一種の有機化合物を含む少なくとも一種の供給物を熱破壊する方法であって、下記の連続工程が行われる方法:
a)前記供給物が前記プラズマ中に導入され、酸素ガスの供給が前記少なくとも一種のプラズマ形成ガス、および/または前記プラズマもしくは前記プラズマの近傍にて達成され、それにより原子への分解が誘発されたガスが得られる工程;
b)反応囲壁室中において、原子への分解が誘発された前記ガスを熱破壊する第一運転が行われる工程;
c)前記第一熱破壊運転を経た前記ガスを空気および/または酸素と混合することにより、前記ガスを熱破壊する第二運転が行われる工程;
d)前記混合からの前記ガスの少なくとも一部を冷却することにより、再結合が達成される工程;
e)前記ガスを排出する。
【請求項2】
前記酸素ガスの供給が、純酸素を単独プラズマ形成ガスとして用いることにより達成される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記(複数の)プラズマ形成ガスが酸素から構成されない、酸素を含まない、または酸素をほとんど含まないガスであり、酸素ガスを前記プラズマ中または前記プラズマの近傍に運搬することにより、前記酸素ガスの供給が達成される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
酸素ガスを、前記供給物が導入される位置と同一または前記位置に近い位置において後者と同時に前記プラズマ中に導入することにより、前記酸素ガスの供給が達成される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記(複数の)有機化合物に供給される前記酸素ガスのモル比が、化学量論的燃焼比よりも大きい請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
工程c)において、空気および/または酸素ガスが投入されるベンチュリ装置を用いて前記混合が達成される前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
特に前記供給物が少なくとも一種の鉱物充填剤をさらに含有する場合、工程c)において、前記反応囲壁室の主軸に向けて空気および/または酸素としてを投入する、空気および/または酸素配給リングによって混合が達成される請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程d)の最後に、前記ガスを化学的に処理する少なくとも一つの工程d1)が設けられている前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ガスを化学的に処理する前記少なくとも一つの工程d1)が、脱ハロゲン化または中和工程、窒素酸化物の脱酸化工程、および脱硫工程から選ばれる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記供給物が少なくとも一種の鉱物充填剤をさらに含有し、工程d)の後および工程d1)の前にガスろ過工程が設けられている請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ガスの化学的処理工程d1)の最後に、前記ガスが液滴捕捉コンデンサにて処理される請求項8乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
複数の同一種または異種の供給物が、複数のプラズマを用いて処理される前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
インダクターによりイオン化された少なくとも一種のプラズマ形成ガスにより形成された少なくとも一種の誘導プラズマにより、少なくとも一種の有機化合物を含む少なくとも一種の供給物を分解する装置であって、
−少なくとも一つの誘導プラズマトーチ;
−前記トーチ中に少なくとも一種のプラズマ形成ガスを導入する手段;
−必要に応じて、前記(複数の)プラズマ形成ガスが酸素から構成されない場合、酸素を含まない場合、または酸素をほとんど含まない場合、酸素ガスを前記プラズマ中または前記プラズマの近傍に運搬する手段;
−前記供給物を前記トーチ中に導入する手段;
−前記誘導プラズマトーチ(6)から流出した前記ガスの熱破壊を行うことを可能とすることができる反応囲壁室(7);
−前記反応囲壁室(7)から流出した前記ガスの混合を行うことを可能とする装置(8);
−前記混合装置(8)中に空気および/または酸素ガス(9)を導入する手段;
−前記混合装置(8)からの前記ガスの少なくとも一部を、冷却により再結合させることを可能とする装置(10);を含み、
前記誘導トーチ(6)、前記反応囲壁室(7)、前記混合装置(8)および前記再結合装置(10)が、流動可能に連通されている装置。
【請求項14】
前記供給物を前記トーチ中に導入する前記手段が、耐熱性材料から形成され、その内部に耐熱性材料の繊維から形成される織物が充填された管からなる請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記耐熱性材料から形成される前記管が、その中央に、酸素ガスを前記プラズマ中に運搬するための管をさらに含む請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記ガスの混合が達成されることを可能とする前記装置が、ベンチュリ装置である請求項13乃至15のいずれか一項に記載の熱破壊装置。
【請求項17】
前記ガスの混合が行われることを可能とする前記装置が、前記反応囲壁室の主軸に向けて空気および/または酸素を投入することが可能な配給リングである請求項13乃至15のいずれか一項に記載の熱破壊装置。
【請求項18】
前記ガス再結合装置から前記ガスの循環方向の下流に位置する、前記再結合装置からの前記ガスを化学的に処理することを可能とする少なくとも一つの装置をさらに含むことを特徴とする請求項13乃至17のいずれか一項に記載の熱破壊装置。
【請求項19】
前記再結合装置からの前記ガスを化学的に処理することを可能とする前記少なくとも一つの装置が、脱ハロゲン化、窒素酸化物(16)の脱酸化、および脱硫から選ばれる少なくとも一つの反応を達成することを特徴とする請求項18に記載の熱破壊装置。
【請求項20】
前記ガス循環方向において前記ガス再結合装置の下流、および前記再結合装置からの前記ガスを化学的に処理することを可能とする前記少なくとも一つの装置の上流に、ろ過手段をさらに含むことを特徴とする請求項18乃至19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
複数のプラズマトーチを含む請求項13乃至20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
移動手段に搭載されていることを特徴とする請求項13乃至21のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−512406(P2013−512406A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540437(P2012−540437)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068254
【国際公開番号】WO2011/064314
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(512067104)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【住所又は居所原語表記】25, rue Leblanc, Batiment  Le Ponant D ,F−75015 Paris FR
【Fターム(参考)】