説明

誘電体膜積層体及び誘電体膜積層体の製造方法

【課題】赤外線領域での遮熱性能に優れ、色味調整が容易で、誘電体膜積層膜のクラック耐性、耐衝撃性に優れ、低ヘイズで、耐久性(耐光性)に優れた誘電体膜積層体と、その製造方法を提供する。
【解決手段】基材上に、無機顔料を含有する層と、低屈折率誘電体膜と高屈折率誘電体膜とを交互に積層した誘電体膜ユニットとを有することを特徴とする誘電体膜積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外反射性を備えた誘電体膜積層体と、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に積層して、多層膜構造による光学干渉効果を利用することにより、紫外線または近赤外線領域等の遮断性能を発揮する方法が知られている。
【0003】
この光学干渉効果に関しては、高屈折率膜と低屈折率膜との屈折率差が大きいほどその効果が得られ易いといわれているが、高屈折率膜と低屈折率膜の材料が異なるため、形成された膜の硬さが異なり、そのためこれらの屈折率の異なる層を積層させると、最終的に得られる積層体では、目視で観察できるレベルのクラックが入り、クラックが入ることでのヘイズが高くなり、反射特性が劣化するという問題があり改善が要望されている。
【0004】
上記課題に対し、例えば、ガラス板上に低屈折率膜、高屈折率膜、低屈折率膜、高屈折率膜および低屈折率膜がこの順序で積層し、低屈折率膜として酸化ケイ素を主成分とする膜とし、高屈折率膜として酸化チタンを主成分とする近赤外線遮断ガラスにより、高可視光透過率で、かつ低太陽光透過率の近赤外線遮断ガラスを提供する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、外側ガラス板と、赤外線反射膜と、中間膜と、内側ガラス板と、反射防止膜とをこの順に有し、赤外線反射膜が、高屈折率被膜と低屈折率被膜とが外側ガラス板側からこの順に交互に積層され、反射防止膜が、高屈折率被膜と低屈折率被膜とを内側ガラス板側から積層して構成した窓用合わせガラスが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、これら提案されている方法では、形成した積層体のクラック耐性、耐衝撃性や、近赤外線領域の遮熱性能、ヘイズ、さらには耐光性等十分なものでなく改善が望まれていた。
【0005】
一方、樹脂組成物中の着色成分としてカーボンブラックと、赤外線吸収の少ない赤外線反射特性を有する顔料あるいは染料を含有する赤外線反射組成物が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。特許文献3で開示されている方法によれば、赤外線反射体で遮蔽された構造物の温度上昇を効果的に防止し、任意の色調からなる赤外線反射体が得られるとされている。しかしながら、着色成分としてカーボンブラックを用いた際のヘイズに関する課題、あるいは形成した積層体のクラック耐性、耐衝撃性や、近赤外線領域の遮熱性能、耐光性に関する言及はなく、これらの特性に関する改良についての示唆も見られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−348145号公報
【特許文献2】特開2008−37667号公報
【特許文献3】特開平11−302549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、近赤外線領域での遮熱性能に優れ、色味調整が容易で、誘電体膜積層膜のクラック耐性、耐衝撃性に優れ、低ヘイズで、耐久性(耐光性)に優れた誘電体膜積層体と、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0009】
1.基材上に、無機顔料を含有する層と、低屈折率誘電体膜と高屈折率誘電体膜とを交互に積層した誘電体膜ユニットとを有することを特徴とする誘電体膜積層体。
【0010】
2.前記誘電体膜ユニットが、前記基材の少なくとも一方の面に有していることを特徴とする前記1記載の誘電体膜積層体。
【0011】
3.前記基材が、樹脂支持体であることを特徴とする前記1または2に記載の誘電体膜積層体。
【0012】
4.前記低屈折率誘電体膜及び前記高屈折率誘電体膜が、いずれも赤外線反射膜であることを特徴とする前記1から3のいずれか1項に記載の誘電体膜積層体。
【0013】
5.基材上に、無機顔料を含有する層と、低屈折率誘電体膜と高屈折率誘電体膜とが交互に積層した誘電体膜ユニットとを有する誘電体膜積層体を製造する誘電体膜積層体の製造方法において、該低屈折率誘電体膜及び該高屈折率誘電体膜は、大気圧又は大気近傍の圧力下で、ガスを放電空間に導入し、該放電空間に高周波電界を形成することによりガスをプラズマ状態とし、該基材を該プラズマ状態のガスに晒すことによって形成されたことを特徴とする誘電体膜積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、近赤外線領域での遮熱性能に優れ、色味調整が容易で、誘電体膜積層膜のクラック耐性、耐衝撃性に優れ、低ヘイズで、耐久性(耐光性)に優れた誘電体膜積層体と、その製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示した概略図である。
【図2】対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図3】ロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【図4】角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0017】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、基材上に、無機顔料を含有する層と、低屈折率誘電体膜と高屈折率誘電体膜とを交互に積層した誘電体膜ユニットとを有することを特徴とする誘電体膜積層体により、近赤外線領域での遮熱性能に優れ、色味調整が容易で、誘電体膜積層膜のクラック耐性、耐衝撃性に優れ、低ヘイズで、耐久性(耐光性)に優れた誘電体膜積層体を実現することができることを見出し、本発明に至った次第である。
【0018】
すなわち、特許文献3等に記載されている様な無機顔料のみ含有する機能層により、断熱性能を付与させようとする場合には、バインダーが保持しきれない位の無機顔料添加量が必要となり、膜擦れ等で脱離したりして、安定な性能が得られない。また、原理的には光の反射でなく、光を吸収するため、十分な断熱性能を得ることができない。また、これらの方法では、可視波長域の光透過率を低下させるため、ガラスに貼付して使用するなどした場合、可視化性能が劣化するという課題を抱えている。また、断熱性能も著しく高いものが得られない等の課題があった。
【0019】
また、前述の特許文献1、2で提案されている様な低屈折率誘電体膜と高屈折率誘電体膜とを交互に積層した誘電体膜のみから構成されている場合には、膜厚や層数を変化させることにより、誘電体膜積層体の微妙な色調を制御することは、目的である断熱性能を維持したままでは非常に難しい。また、低屈折率誘電体膜と高屈折率誘電体膜は一般に硬くてもろい膜物性であり、耐衝撃性が高いとは言い難く、特に基材に樹脂支持体を用いた場合、クラックが入りやすいこと、耐光性により断熱性能が劣化するなどの欠点があった。
【0020】
本発明者は、鋭意検討を進めた結果、無機顔料を含有する層と、低屈折率誘電体膜と高屈折率誘電体膜とを交互に積層した誘電体膜ユニットとを併用することにより、それぞれを単独で用いた場合より、可視化特性も確保すると共に、断熱性能を著しく向上でき、かつ無機顔料層を設けることにより、誘電体膜ユニットにかかる応力が緩和され、その結果、クラックが入りにくくなり、耐衝撃性、耐光性が著しく向上することができたものである。加えて、適切な有色の無機顔料を適用することにより、誘電体膜積層体の色調を所望の色調にコントロールする事ができ、目視品質的にも著しく向上させることができた。
【0021】
以下、本発明の誘電体膜積層体とその製造方法の詳細について説明する。
【0022】
《無機顔料を含有する層》
本発明の誘電体膜積層体は、基材上に、無機顔料を含有する層を有することを1つの特徴とする。
【0023】
本発明に係る無機顔料は、色調を有し、水その他の溶剤に溶解しない微粉末で、300〜3000nmの波長の光をある範囲で吸収するものと定義する。
【0024】
無機顔料を含有する層における無機顔料の添加量としては、JIS 3211に準拠して測定した可視光線透過率を著しく低下させず、かつヘイズを著しく劣化させない範囲で選択すれば、特に制限はないが、好ましくは、無機顔料を含有する層の全固形分量に対し、無機顔料の固形分としては0.02質量%以上、0.2質量%以下の範囲である。
【0025】
本発明に適用可能な無機顔料の一例としては、天然無機顔料、合成無機顔料等を挙げることができる。
【0026】
天然無機顔料としては、例えば、イエローオーカー、テールベルト、ローシェンナ、ローアンバー等の土系顔料、バーントシェンナ、バーントアンバー等の焼成土、ラピスラズリ、アズライト、マラカイト、オーピメント、辰砂等の鉱物性顔料等が挙げられる。
【0027】
また、合成顔料としては、例えば、コバルトブル−、セルリアンブル−、コバルトバイオレット、コバルトグリーン、ジンクホワイト、チタニウムホワイト、ライトレッド、クロムオキサイドグリ−ン、マルスブラック等の酸化物顔料、ビリジャン、イエローオーカー、アルミナホワイト等の水酸化物顔料、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、バーミリオン、リトポン等の硫化物顔料、ウルトラマリーン、タルク、ホワイトカーボン等の珪酸塩顔料、ミネラルバイオレット、ローズコバルトバイオレット等の燐酸塩顔料、金粉、ブロンズ粉、アルミニウム粉等の金属粉顔料、アイボリーブラック、ピーチブラック、ランプブラック、カーボンブラック等の炭素顔料が挙げられる。本発明においては、その中でも特には、カーボンブラックが好ましい。
【0028】
本発明において、本発明に係る無機顔料の粒子径としては、一次平均粒子径として13nmから50nmの範囲とすることが、波長吸収性と誘電体膜積層体との複合の遮熱性能として好ましい。
【0029】
本発明の誘電体膜積層体においては、基材上の任意の位置に無機顔料を含有する層を設けることを特徴とし、誘電体膜積層体の層構成の一例を以下に示すが、本発明では下記の層構成にのみ限定されるものではない。
【0030】
1)基材/無機顔料を有する層/誘電体膜ユニット
2)基材/誘電体膜ユニット/無機顔料を有する層
3)無機顔料を有する層/基材/誘電体膜ユニットの構成
4)誘電体膜ユニット/無機顔料を有する層/基材/無機顔料を有する層/誘電体膜ユニット
5)誘電体膜ユニット/基材/無機顔料を有する層/誘電体膜ユニット
等であっても良く、特に制限はなく用いられる。
【0031】
特に、本発明において好ましい層構成は、1)基材/無機顔料を有する層/誘電体膜ユニットの層構成、4)誘電体膜ユニット/無機顔料を有する層/基材/無機顔料を有する層/誘電体膜ユニットの層構成が挙げられる。
【0032】
《基材》
本発明に適用可能な基材としては、特に制約なく、例えば、ガラス、アルミナ、樹脂支持体等を用いることができ、その中でも特に樹脂支持体が好ましい。
【0033】
本発明に適用可能な樹脂支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、アセテート、ナイロン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、セルロースエステル類等を挙げることができる。これらの樹脂支持体は、単独で用いても、ガラス、アルミナ等の支持体と併用で用いても良い。
【0034】
これら樹脂支持体においては、無機顔料を含有する層あるいは誘電体膜ユニットとの接着性を向上させる観点から、無機顔料を含有する層あるいは誘電体膜ユニットを設ける面側に易接着処理や下塗り層の塗布を行うことが好ましい。易接着処理としては、コロナ放電処理や火炎処理、紫外線照射処理等が挙げられる。また、下塗り層としては、ゼラチンやラテックス、ポリマーバインダーを含む層等が挙げられる。
【0035】
《誘電体膜ユニット》
本発明の誘電体膜積層体においては、上記基材上に低屈折率誘電体膜と高屈折率誘電体膜とを交互に積層した誘電体膜ユニットを設ける際には、基材に対し高屈折率誘電体膜から設けても、低屈折率誘電体膜から設けても良く、その形成順としては特に制限はない。また、最上部に位置する層が高屈折率誘電体膜であっても、低屈折率誘電体膜であってもよい。ただし、本発明に係る誘電体膜ユニットにおいては、低屈折率誘電体膜と高屈折率誘電体膜が交互の積層し、層数として3層以上で構成することが、赤外線反射膜としての効果をいかんなく発揮でき、かつクラック耐性及び耐衝撃性の観点から好ましい。
【0036】
本発明の誘電体膜積層体においては、誘電体膜ユニットを基材の片面のみ設けても、あるいは両面に設けても良いが、基材の一方の面側にのみ誘電体膜ユニットを設ける場合、基材の片面にのみ応力が集中することでクラック、ヘイズ性能が不利になることがあるため、両面に誘電体膜ユニットを設けることが好ましい場合がある。
【0037】
本発明において、誘電体膜ユニットを構成する低屈折率誘電体膜、高屈折率誘電体膜の形成材料としては、金属酸化物、窒酸化物、窒化物を主成分とする材料を好適に使用できる。
【0038】
屈折率1.60以上の高屈折率誘電体膜としては、少なくともZn、Ti、Sn、In、Nb、Si、TaまたはAlを含む酸化物、窒酸化物、窒化物を主成分として構成することが好ましい。また、屈折率1.60未満の低屈折率誘電体膜としては、少なくともSiまたはAlを含む酸化物、窒酸化物、窒化物を主成分とし、特に、酸化珪素から構成されることが好ましい。その誘電体膜の形成方法としては、気相成長法が好ましく、更には真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、触媒化学気相成長(Cat−CVD)法、またはプラズマCVD法が好ましく、本発明においては、特に、大気圧もしくはその近傍の圧力下、放電空間にガスを導入し、該放電空間に高周波電界を形成することにより該ガスを励起し、樹脂支持体をプラズマ状態に励起したガスに晒すことにより、該樹脂支持体上に誘電体膜を形成する大気圧プラズマ処理方法により形成することを特徴とする。大気圧プラズマ処理方法により形成される誘電体膜は、低残留応力であり好ましい。
【0039】
低屈折率誘電体膜には、カルシウム、バリウム、リチウム、マグネシウムのフッ化物を主成分とする材料も用いることもできる。また、本発明において、屈折率の異なる層のうち、少なくとも1層は、同一層内で成分比率を傾斜的に変化させる構成とすることができる。
【0040】
更に、本発明に係る誘電体膜の詳細について説明する。
【0041】
本発明の誘電体膜積層体においては、低屈折率誘電体膜と高屈折率誘電体膜とが交互に3層以上積層されて形成されていることを特徴とするが、本発明でいう高屈折率誘電体膜とは、波長633nmの光に対する屈折率が1.60以上である膜と定義し、好ましくは屈折率が1.70以上の誘電体膜である。誘電体膜の屈折率は、例えば、分光光度計1U−4000型(日立製作所製)を用いて、5度正反射の条件にて反射率の測定を行う。測定は、観察側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーを用いて光吸収処理を行い、フィルム裏面での光の反射を防止して、反射率(400nm−700nmの波長について)の測定を行った。該スペクトルのλ/4値より光学膜厚を算出し、それを基に、633nmにおける屈折率を算出する方法、あるいは自動複屈折率計(王子計測機器(株)製、KOBRA−21ADH)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、590nmの波長において10カ所測定し3次元屈折率測定を行い、屈折率を測定する方法を用いることができ、本発明においては、後者の方法を用いて測定した屈折率値を用いた。
【0042】
本発明に係る高屈折率誘電体膜の主成分としては、具体的には、例えば、チタンの酸化物、亜鉛の酸化物、インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウムとスズとの酸化物、マグネシウムの酸化物、アルミニウムの酸化物、ジルコニウムの酸化物、ニオブの酸化物、セリウムの酸化物などの金属酸化物を例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。また、これら金属酸化物は、2種以上の金属酸化物が複合した複酸化物であっても良い。
【0043】
上記金属酸化物としては、とりわけ、高屈折率が得られやすいなどの観点から、酸化チタン(IV)(TiO)、チタン酸塩、ITO、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)などを好適なものとして例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
【0044】
また、本発明でいう低屈折率誘電体膜とは、波長633nmの光に対する屈折率が1.60未満である膜と定義し、好ましくは屈折率が1.45以下の誘電体膜である。
【0045】
本発明に係る低屈折率誘電体膜を形成する主成分としては、例えば、フッ素含有(メタ)アクリレート、シリコーンレジン、SiOなどのケイ素の酸化物などを例示することができ、これらは1種または2種以上含まれていても良い。
【0046】
本発明の誘電体膜積層体は、低屈折率の誘電体膜と高屈折率の誘電体膜が相互に3層以上積層された一組の誘電体膜ユニットを一ユニット以上、基材上(例えば、樹脂支持体)に形成したもの、あるいは二ユニット以上形成した構成を挙げることができる。
【0047】
本発明の誘電体膜積層体においては、低屈折率誘電体膜及び高屈折率誘電体膜の総膜厚としては500nm以上であることが好ましく、更に好ましくは500nm以上、2000nm以下である、本発明において、各誘電体膜の膜厚測定は、光学式膜厚測定装置としては、例えば、USB簡易型膜厚測定装置 Solid Lambda Thickness((株)スペクトラ・コープ製)が挙げられる。あるいは、形成した誘電体膜積層体の断面部を、ミクロトーム等を用いて切り出し、その断面部を、電子顕微鏡等を用いて観察して、誘電体膜の総膜厚を求めることができる。本発明においては、後者の方法を用いて測定した。
【0048】
また、本発明において、低屈折率誘電体膜と高屈折率誘電体膜とのナノインデンテーション法で測定した硬さの差が、1.4GPa以上であることが好ましいが、より好ましくはその硬さの差が、1.4GPa以上、3.0GPa以下である。
【0049】
本発明においては、各誘電体膜の硬さはナノインデンテーション法で測定した値を用いるが、ナノインデンテーション法による硬度の測定方法は、微小なダイヤモンド圧子を誘電体膜に押し込みながら荷重と押し込み深さ(変位量)の関係を測定し、測定値から塑性変形硬さを算出する方法である。
【0050】
《大気圧プラズマ法》
次いで、本発明に係る低屈折率誘電体膜と高屈折率誘電体膜の形成に用いる大気圧プラズマ法について説明する。
【0051】
本発明に係る各誘電体膜は、大気圧プラズマ法において、原料(原材料ともいう)である有機金属化合物、分解ガス、分解温度、投入電力等の条件を選ぶことで、SiまたはAlを含む酸化物、窒化酸化物、窒化物を主成分とするセラミック層で、かつ屈折率の異なる誘電体膜を形成することができる。
【0052】
例えば、珪素化合物を原料化合物として用い、分解ガスに酸素を用いれば、珪素酸化物が生成する。また、シラザン等を原料化合物として用いれば、酸化窒化珪素が生成する。これはプラズマ空間内では非常に活性な荷電粒子・活性ラジカルが高密度で存在するため、プラズマ空間内では多段階の化学反応が非常に高速に促進され、プラズマ空間内に存在する元素は熱力学的に安定な化合物へと非常な短時間で変換されるためである。
【0053】
このような誘電体膜の形成原料としては、珪素化合物であれば、常温常圧下で気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合にはそのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、バブリング、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用する。また、溶媒によって希釈して使用してもよく、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサン等の有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用できる。なお、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子状、原子状に分解されるため、影響はほとんど無視することができる。
【0054】
このような珪素化合物としては、例えば、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラキスジメチルアミノシラン、テトライソシアナートシラン、テトラメチルジシラザン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、トリエトキシフルオロシラン、アリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ベンジルトリメチルシラン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、1,4−ビストリメチルシリル−1,3−ブタジイン、ジ−t−ブチルシラン、1,3−ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン、フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン、プロパルギルトリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリメチルシリルアセチレン、1−(トリメチルシリル)−1−プロピン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ビニルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、Mシリケート51等が挙げられる。
【0055】
アルミニウム化合物としては、アルミニウムエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウム−ブトキシド、アルミニウムt−ブトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、トリエチルジアルミニウムトリ−s−ブトキシド等が挙げられる。
【0056】
また、これら珪素またアルミニウムを含む原料ガスを分解して酸化珪素、または酸化アルミニウム膜を得るための分解ガスとしては、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素ガス、水蒸気、フッ素ガス、フッ化水素、トリフルオロアルコール、トリフルオロトルエン、硫化水素、二酸化硫黄、二硫化炭素、塩素ガス等が挙げられる。
【0057】
例えば、珪素を含む原料ガスと、分解ガスを適宜選択することで、酸化珪素、また、窒化物、炭化物等を含有する誘電体膜を得ることができる。
【0058】
本発明に係る大気圧プラズマ法においては、これらの反応性ガスに対して、主にプラズマ状態になりやすい放電ガスを混合し、プラズマ放電発生装置にガスを送りこむ。このような放電ガスとしては、窒素ガスまたは周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも特に、窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられる。
【0059】
上記放電ガスと反応性ガスを混合し、誘電体膜形成(混合)ガスとしてプラズマ放電発生装置(プラズマ発生装置)に供給することで誘電体膜の形成を行う。放電ガスと反応性ガスの割合は、得ようとする膜の性質によって異なるが、混合ガス全体に対し、放電ガスの割合を50%以上として反応性ガスを供給する。
【0060】
本発明に係る低屈折率誘電体膜あるいは高屈折率誘電体膜においては、例えば、上記有機珪素化合物に、さらに酸素ガスや窒素ガスを所定割合で組み合わせて、O原子とN原子の少なくともいずれかと、Si原子とを含む酸化珪素を主体とした誘電体膜を得ることができる。
【0061】
次に、気圧プラズマ法について詳細に説明する。
【0062】
本発明の誘電体膜積層体の製造方法においては、本発明に係る低屈折率誘電体膜、高屈折率誘電体膜等の誘電体膜の形成には、大気圧プラズマ法を用いることを特徴とする。
【0063】
大気圧プラズマ法は、例えば、特開平10−154598号公報や特開2003−49272号公報、WO02/048428号明細書等に記載されているが、大気圧もしくはその近傍の圧力下、放電空間に誘電体膜形成ガス及び放電ガスを含有するガスを供給し、該放電空間に高周波電界を形成することにより該ガスを励起し、励起したガスに晒すことにより、誘電体膜を形成する。
【0064】
特に、特開2004−68143号公報に記載されている薄膜形成方法が、緻密な誘電体膜を形成するには好ましい。また、ロール状の元巻きからウエブ状の基材、例えば、樹脂支持体を繰り出して、屈折率の異なる誘電体膜を連続的に形成することができる。
【0065】
本発明でいう高周波とは、少なくとも0.5kHzの周波数を有するものをいう。
【0066】
本発明に係る誘電体膜の形成に用いられる上記の大気圧プラズマ法は、大気圧もしくはその近傍の圧力下で行われるプラズマCVD法であり、大気圧もしくはその近傍の圧力とは20〜110kPa程度であり、本発明に記載の良好な効果を得るためには、93〜104kPaが好ましい。
【0067】
本発明における放電条件としては、高周波電界の周波数が1kHz〜2500MHzで、かつ供給電力が1〜50W/cmであることが好ましく、周波数が50kHz以上で、かつ供給電力が5W/cm以上であることがより好ましい。さらに、放電空間に異なる周波数の電界を2つ以上印加し、重畳したものがより好ましい。
【0068】
上記でサイン波等の連続波の重畳について説明したが、これに限られるものではなく、両方パルス波であっても、一方が連続波でもう一方がパルス波であっても構わない。また、さらに周波数の異なる第3の電界を有していてもよい。
【0069】
上記高周波電界を、同一放電空間に印加する具体的な方法としては、例えば、対向電極を構成する第1の電極に周波数ω1の高畳周波電界を印加する第1電源を接続し、第2電極に周波数ω2の高周波電界を形成する第2電源を接続した大気圧プラズマ放電処理装置を用いる。
【0070】
ここで、第1電源の周波数としては、1kHz〜1MHzであり、200kHz以下が好ましく用いることができる。またこの電界波形としては、連続波でもパルス波でもよい。
【0071】
一方、第2電源の周波数としては、1MHz〜2500MHzが好ましく800kHz以上が好ましく用いられる。この第2電源の周波数が高い程、プラズマ密度が高くなり、緻密で良質な誘電体膜が得られる。
【0072】
また、第1電極、第1電源またはそれらの間のいずれかには第2電源からの高周波電界の電流を通過しにくくする第1フィルタを、また第2電極、第2電源またはそれらの間のいずれかには第2フィルタを接続することが好ましい。
【0073】
本発明において、放電開始電界の強さとは、実際の薄膜形成方法に使用される放電空間(電極の構成等)及び反応条件(ガス条件等)において放電を起こすことのできる最低電界強度のことを指す。放電開始電界強度は、放電空間に供給されるガス種や電極の誘電体種または電極間距離等によって多少変動するが、同じ放電空間においては、放電ガスの放電開始電界強度に支配される。
【0074】
ここで、本発明でいう印加電界強度と放電開始電界強度は、下記の方法で測定されたものをいう。
【0075】
印加電界強度V1及びV2(単位:kV/mm)の測定方法:
各電極部に高周波電圧プローブ(P6015A)を設置し、該高周波電圧プローブの出力信号をオシロスコープ(Tektronix社製、TDS3012B)に接続し、所定の時点の電界強度を測定する。
【0076】
放電開始電界強度IV(単位:kV/mm)の測定方法:
電極間に放電ガスを供給し、この電極間の電界強度を増大させていき、放電が始まる電界強度を放電開始電界強度IVと定義する。測定器は上記印加電界強度測定と同じである。
【0077】
上記の大気圧プラズマ放電処理装置には、対向電極間に、放電ガスと誘電体膜形成ガスとを供給するガス供給手段を備える。さらに、電極の温度を制御する電極温度制御手段を有することが好ましい。
【0078】
本発明に用いられる大気圧プラズマ放電処理装置は、上述のように、対向電極の間で放電させ、前記対向電極間に導入したガスをプラズマ状態とし、前記対向電極間に静置あるいは電極間を移送される樹脂支持体を該プラズマ状態のガスに晒すことによって、該樹脂支持体の上に誘電体膜を形成させるものである。また他の方式として、大気圧プラズマ放電処理装置は、上記同様の対向電極間で放電させ、該対向電極間に導入したガスを励起しまたはプラズマ状態とし、該対向電極外にジェット状に励起またはプラズマ状態のガスを吹き出し、該対向電極の近傍にある樹脂支持体(静置していても移送されていてもよい)を晒すことによって該樹脂支持体の上に誘電体膜を形成させるジェット方式の装置がある。
【0079】
図1は、本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示した概略図である。
【0080】
ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置は、プラズマ放電処理装置、二つの電源を有する電界印加手段の他に、図1では図示してない(後述の図2に図示してある)が、ガス供給手段、電極温度調節手段を有している装置である。
【0081】
プラズマ放電処理装置10は、第1電極11と第2電極12から構成されている対向電極を有しており、該対向電極間に、第1電極11からは第1電源21からの周波数ω1の高周波電界が印加され、また第2電極12からは第2電源22からの周波数ω2の高周波電界が印加されるようになっている。
【0082】
第1電極11と第2電極12との対向電極間(放電空間)13に、後述の図3に図示してあるようなガス供給手段から前述した誘電体膜形成ガスGを導入し、第1電源21と第2電源22により第1電極11と第2電極12間に、前述した高周波電界を形成して放電を発生させ、前述した誘電体膜形成ガスGをプラズマ状態にしながら対向電極の下側(紙面下側)にジェット状に吹き出させて、対向電極下面と基材Fとで作る処理空間をプラズマ状態のガスG°で満たし、図示してない基材の元巻き(アンワインダー)から巻きほぐされて搬送して来るか、あるいは前工程から搬送して来る基材Fの上に、処理位置14付近で誘電体膜を形成させる。誘電体膜形成中、後述の図2に図示してあるような電極温度調節手段から媒体が配管を通って電極を加熱または冷却する。プラズマ放電処理の際の基材の温度によっては、得られる誘電体膜の物性や組成等は変化することがあり、これに対して適宜制御することが望ましい。温度調節の媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、基材の幅手方向あるいは長手方向での温度ムラができるだけ生じないように電極の内部の温度を均等に調節することが望まれる。
【0083】
ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置を、樹脂支持体Fの搬送方向と平行に複数台並べ、同時に同じプラズマ状態のガスを放電させることにより、同一位置に複数層の誘電体膜を形成可能となり、短時間で所望の膜厚を形成可能となる。また樹脂支持体Fの搬送方向と平行に複数台並べ、各装置に異なる誘電体膜形成ガスを供給して異なったプラズマ状態のガスをジェット噴射すれば、異なる屈折率を有する誘電体膜の積層誘電体膜を形成することもできる。
【0084】
図2は本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【0085】
大気圧プラズマ放電処理装置は、少なくとも、プラズマ放電処理装置30、二つの電源を有する電界印加手段40、ガス供給手段50、電極温度調節手段60を有している装置である。
【0086】
ロール回転電極(第1電極)35と固定電極群(第2電極)36との対向電極間32(以下対向電極間を放電空間32とも記す)で、樹脂支持体Fをプラズマ放電処理して誘電体膜を形成するものである。
【0087】
ロール回転電極35と固定電極群36との間に形成された放電空間32に、ロール回転電極35には第1電源41から周波数ω1の高周波電界を、また固定電極群36には第2電源42から周波数ω2の第2の高周波電界をかけるようになっている。
【0088】
なお、本発明においては、ロール回転電極35を第2電極、また固定電極群36を第1電極としてもよい。いずれにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。
【0089】
ガス供給手段50のガス発生装置51で発生させた誘電体膜形成ガスGは、不図示のガス流量調整手段により流量を制御して給気口52よりプラズマ放電処理容器31内に導入する。
【0090】
樹脂支持体Fを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送されて来るか、または前工程から矢印方向に搬送されて来て、ガイドロール64を経てニップロール65で基材に同伴されて来る空気等を遮断し、ロール回転電極35に接触したまま巻き回しながら固定電極群36との間に移送する。
【0091】
移送中にロール回転電極35と固定電極群36との両方から電界をかけ、対向電極間(放電空間)32で放電プラズマを発生させる。樹脂支持体Fはロール回転電極35に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスにより誘電体膜を形成する。
【0092】
なお、固定電極の数は、上記ロール電極の円周より大きな円周上に沿って複数本設置されており、該電極の放電面積はロール回転電極35に対向している全ての固定電極のロール回転電極35と対向する面の面積の和で表される。
【0093】
樹脂支持体Fは、ニップロール66、ガイドロール67を経て、図示してない巻き取り機で巻き取るか、次工程に移送する。
【0094】
放電処理済みの処理排ガスG′は排気口53より排出する。
【0095】
誘電体膜形成中、ロール回転電極35及び固定電極群36を加熱または冷却するために、電極温度調節手段60で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管61を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。なお、68及び69はプラズマ放電処理容器31と外界とを仕切る仕切板である。
【0096】
図3は、図2に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0097】
図3において、ロール電極35aは導電性の金属質母材35Aとその上に誘電体35Bが被覆されたものである。プラズマ放電処理中の電極表面温度を制御し、また、樹脂支持体Fの表面温度を所定値に保つため、温度調節用の媒体(水もしくはシリコンオイル等)が循環できる構造となっている。
【0098】
図4は、電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。該電極の構造は図示しないが、ジャケット構造となっており、放電中の温度調節が行えるようになっている。
【0099】
図4において、固定電極36aは、導電性の金属質母材36Aに対し、図3同様の誘電体36Bの被覆を有している。
【0100】
図4に示した固定電極36aの形状は、特に限定されず、円筒型電極でも角筒型電極でも良い。
【0101】
図3及び図4において、ロール電極35a及び電極36aは、それぞれ導電性の金属質母材35A及び36Aの上に誘電体35B及び36Bとしてのセラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したものである。セラミックス誘電体は片肉で1mm程度被覆あればよい。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、特に好ましく用いられる。また、誘電体膜が、ライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
【0102】
導電性の金属質母材35A及び36Aとしては、チタン金属またはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料を挙げることができる。
【0103】
対向する第1電極及び第2の電極の電極間距離は、電極の一方に誘電体を設けた場合、該誘電体表面ともう一方の電極の導電性の金属質母材表面との最短距離のことをいう。双方の電極に誘電体を設けた場合、誘電体表面同士の距離の最短距離のことをいう。電極間距離は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電界強度の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5〜5mmである。
【0104】
プラズマ放電処理容器31はパイレックス(登録商標)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けてもよく、該金属フレームにセラミックス溶射を行い、絶縁性をとってもよい。図2において、平行した両電極の両側面(基材面近くまで)を上記のような材質のもので覆うことが好ましい。
【0105】
本発明において、大気圧プラズマ放電処理装置に設置する第1電源(高周波電源)としては、神鋼電機社製SPG5−4500(5kHz)、春日電機製AGI−023(15kHz)、ハイデン研究所製PHF−6k(100kHz*)、パール工業製CF−2000−200k(200kHz)等の市販のものを挙げることができ、何れも使用することができる。
【0106】
また、第2電源(高周波電源)としては、パール工業製CF−2000−800k(800kHz)、同CF−5000−13M(13.56MHz)、同CF−2000−150M(150MHz)等の市販のものを挙げることができ、いずれも好ましく使用できる。
【0107】
なお、上記電源のうち、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。それ以外は連続サイン波のみ印加可能な高周波電源である。
【0108】
本発明においては、このような電界を印加して、均一で安定な放電状態を保つことができる電極を大気圧プラズマ放電処理装置に採用することが好ましい。
【0109】
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、第2電極(第2の高周波電界)に1W/cm以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、エネルギーを誘電体膜形成ガスに与え、誘電体膜を形成する。第2電極に供給する電力の上限値としては、好ましくは50W/cm、より好ましくは20W/cmである。下限値は、好ましくは1.0W/cmである。なお、放電面積(cm)は、電極間において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0110】
また、第1電極(第1の高周波電界)にも、1W/cm以上の電力(出力密度)を供給することにより、さらなる膜質を向上させることができる。好ましくは5W/cm以上である。第1電極に供給する電力の上限値は、好ましくは50W/cmである。
【0111】
ここで高周波電界の波形としては、特に限定されない。連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モード等があり、そのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2電極側(第2の高周波電界)は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
【0112】
本発明においては、屈折率の異なる誘電体膜が、大気圧もしくはその近傍の圧力下、放電空間に誘電体膜形成ガス及び放電ガスを含有するガスを供給し、該放電空間に高周波電界を形成することにより該ガスを励起し、励起したガスに晒すことにより、誘電体膜を形成する誘電体膜形成方法により形成されることが好ましい。
【0113】
また、前記放電ガスが窒素ガスであり、放電空間に印加される高周波電界は、第1の高周波電界及び第2の高周波電界を重畳したものであり、該第1の高周波電界の周波数ω1より該第2の高周波電界の周波数ω2が高く、該第1の高周波電界の強さV1、該第2の高周波電界の強さV2及び放電開始電界の強さIVとの関係が、V1≧IV>V2またはV1>IV≧V2の関係を満たし、該第2の高周波電界の出力密度が1W/cm以上であることが好ましい。
【実施例】
【0114】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0115】
《誘電体膜積層体の作製》
〔誘電体膜積層体101の作製〕
(樹脂支持体1の準備)
樹脂支持体1として、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記)フィルム(厚さ125μm)を用いた。
【0116】
(無機顔料含有層1の形成)
このPETフィルム上に、下記組成の無機顔料としてカーボンブラックと、光安定剤として紫外線吸収剤を含有した無機顔料含有層1塗布液を調製し、硬化後の膜厚が1.0μmとなるようにマイクログラビアコーターを用いて塗布し、次いで、乾燥工程において80℃/110℃/125℃(各ゾーンは30sec)と段階的に温度を変化させながら熱風乾燥して、無機顔料含有層1を設けた。
【0117】
〈無機顔料含有層1塗布液の調製〉
メチルメタクリレート65質量%、2−ヒドロキシエチルメタクリレート35質量%を共重合して、平均分子量50000の水酸基導入メタクリル酸エステル樹脂を得た。この樹脂に対して、無機顔料として三菱化学株式会社製のカーボンブラック#2600を0.059質量%、紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−t−ペンチルフェノール(商品名:TINUVIN328、チバ・ジャパン(株)製)を5質量%、光安定剤としてヒンダードアミン系光安定剤であるデカン二酸ビス[2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル]エステル(商品名:TINUVIN123、チバ・ジャパン(株)製)を5質量%配合し、粘度調整のためメチルエチルケトンにて希釈し、固形分が20質量%となるよう調整した主剤(a)を得た。
【0118】
一方、架橋剤(硬化剤)となるポリイソシアネート化合物として、アダクト型のヘキサメチレンジイソシアネートをメチルエチルケトンで固形分が75質量%となるように調整した硬化剤(b)を得た。上記主剤(a)に対して、上記硬化剤(b)を15質量%添加して、無機顔料含有層1塗布液を調製した。
【0119】
この無機顔料含有層1塗布液中のカーボンブラック#2600(三菱化学株式会社製)の含有量は、0.05質量%である。
【0120】
また、カーボンブラック#2600の一次粒子径を、株式会社島津製作所 IG−1000で測定した結果、13nmであった。
【0121】
(誘電体膜ユニット1の形成)
樹脂支持体1に形成した無機顔料含有層1上に、図2に記載の大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、下記成膜条件で高屈折率層1(厚み:120nm、屈折率:2.01)、低屈折率層1(厚み:190nm、屈折率1.46)を交互に7層積層した誘電体膜ユニット1を形成して、誘電体膜積層体101を作製した。
【0122】
以上作製した誘電体膜積層体101の層構成は、樹脂支持体1/無機顔料含有層1/高屈折率層1/低屈折率層1/高屈折率層1/低屈折率層1/高屈折率層1/低屈折率層1/高屈折率層1であり、これを層構成Aと称す。
【0123】
[高屈折率層1の形成]
〈高屈折率層形成混合ガス組成物〉
放電ガス:窒素 97.9体積%
薄膜形成ガス:テトライソプロポキシチタン 0.1体積%
添加ガス:水素 2.0体積%
〈高屈折率層成膜条件〉
第1電極側
電源種類 ハイデン研究所 100kHz(連続モード) PHF−6k
周波数 100kHz
出力密度 10W/cm(この時の電圧Vpは7kVであった)
電極温度 120℃
第2電極側
電源種類 パール工業 13.56MHz CF−5000−13M
周波数 13.56MHz
出力密度 5W/cm(この時の電圧Vpは1kVであった)
電極温度 90℃
[低屈折率層1の形成]
〈低屈折率層混合ガス組成物〉
放電ガス:窒素 96.33体積%
薄膜形成ガス:ヘキサメチルジシロキサン 2.76体積%
添加ガス:酸素 0.91体積%
〈低屈折率層成膜条件〉
第1電極側
電源種類 ハイデン研究所 100kHz(連続モード) PHF−6k
周波数 100kHz
出力密度 10W/cm(この時の電圧Vpは7kVであった)
電極温度 120℃
第2電極側
電源種類 パール工業 13.56MHz CF−5000−13M
周波数 13.56MHz
出力密度 10W/cm(この時の電圧Vpは2kVであった)
電極温度 90℃
〔誘電体膜積層体102の作製〕
上記誘電体膜積層体101の作製において、無機顔料含有層1の形成に用いたカーボンブラック#2600(三菱化学株式会社製、平均一次粒子径:13nm)をカーボンブラック#2350(三菱化学株式会社製)に変更した以外は同様にして、誘電体膜積層体102を作製した。
【0124】
なお、カーボンブラック#2350(三菱化学株式会社製)の平均一次粒子径を株式会社島津製作所のIG−1000で測定した結果、15nmであった。
【0125】
〔誘電体膜積層体103の作製〕
上記誘電体膜積層体101の作製において、無機顔料含有層1の形成に用いたカーボンブラック#2600(三菱化学株式会社製、平均一次粒子径:13nm)をカーボンブラック#970(三菱化学株式会社製)に変更した以外は同様にして、誘電体膜積層体103を作製した。
【0126】
なお、カーボンブラック#970(三菱化学株式会社製)の平均一次粒子径を株式会社島津製作所のIG−1000で測定した結果、16nmであった。
【0127】
〔誘電体膜積層体104の作製〕
上記誘電体膜積層体101の作製において、無機顔料含有層1の形成に用いたカーボンブラック#2600(三菱化学株式会社製、平均一次粒子径:13nm)をカーボンブラック#3030B(三菱化学株式会社製)に変更した以外は同様にして、誘電体膜積層体104を作製した。
【0128】
なお、カーボンブラック#3030B(三菱化学株式会社製)の平均一次粒子径を株式会社島津製作所のIG−1000で測定した結果、55nmであった。
【0129】
〔誘電体膜積層体105の作製〕
上記誘電体膜積層体101の作製と同様にして、樹脂支持体1上に無機顔料含有層1を形成し、次いで図2に記載の大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、誘電体膜積層体101と同様にして、誘電体膜ユニットとして高屈折率層1(厚み:120nm、屈折率:2.01)/低屈折率層1(厚み:190nm、屈折率1.46)/高屈折率層1を積層した。
【0130】
次いで、樹脂支持体1の無機顔料含有層1及び誘電体膜ユニットを設けた面と反対側の面に、同様にして無機顔料含有層1/高屈折率層1/低屈折率層1/高屈折率層1を積層して、誘電体膜積層体105を作製した。
【0131】
以上作製した誘電体膜積層体105の層構成は、高屈折率層1/低屈折率層1/高屈折率層1/無機顔料含有層1/樹脂支持体1/無機顔料含有層1/高屈折率層1/低屈折率層1/高屈折率層1であり、これを層構成Bと称す。
【0132】
〔誘電体膜積層体106の作製〕
上記誘電体膜積層体105の作製において、無機顔料含有層1の形成に用いたカーボンブラック#2600(三菱化学株式会社製、平均一次粒子径:13nm)をカーボンブラック#2350(三菱化学株式会社製)に変更した以外は同様にして、誘電体膜積層体106を作製した。
【0133】
〔誘電体膜積層体107の作製〕
上記誘電体膜積層体105の作製において、無機顔料含有層1の形成に用いたカーボンブラック#2600(三菱化学株式会社製、平均一次粒子径:13nm)をカーボンブラック#970(三菱化学株式会社製)に変更した以外は同様にして、誘電体膜積層体107を作製した。
【0134】
〔誘電体膜積層体108の作製〕
上記誘電体膜積層体105の作製において、無機顔料含有層1の形成に用いたカーボンブラック#2600(三菱化学株式会社製、平均一次粒子径:13nm)をカーボンブラック#3030B(三菱化学株式会社製)に変更した以外は同様にして、誘電体膜積層体108を作製した。
【0135】
〔誘電体膜積層体109の作製〕
上記誘電体膜積層体101の作製と同様にして、樹脂支持体1上に無機顔料含有層1を形成し、次いで図2に記載の大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、誘電体膜積層体101と同様にして、誘電体膜ユニットとして低屈折率層1/高屈折率層1/低屈折率層1/高屈折率層1を積層した。
【0136】
次いで、樹脂支持体1の無機顔料含有層1及び誘電体膜ユニットを設けた面と反対側の面に、同様にして無機顔料含有層1/低屈折率層1/高屈折率層1/低屈折率層1/高屈折率層1を積層して、誘電体膜積層体109を作製した。
【0137】
以上作製した誘電体膜積層体109の層構成は、高屈折率層1/低屈折率層1/高屈折率層1/低屈折率層1/無機顔料含有層1/樹脂支持体1/無機顔料含有層1/低屈折率層1/高屈折率層1/低屈折率層1/高屈折率層1であり、これを層構成Cと称す。
【0138】
〔誘電体膜積層体110の作製〕
上記誘電体膜積層体109の作製において、無機顔料含有層1の形成に用いたカーボンブラック#2600(三菱化学株式会社製、平均一次粒子径:13nm)をカーボンブラック#2350(三菱化学株式会社製)に変更した以外は同様にして、誘電体膜積層体110を作製した。
【0139】
〔誘電体膜積層体111の作製〕
上記誘電体膜積層体109の作製において、無機顔料含有層1の形成に用いたカーボンブラック#2600(三菱化学株式会社製、平均一次粒子径:13nm)をカーボンブラック#970(三菱化学株式会社製)に変更した以外は同様にして、誘電体膜積層体111を作製した。
【0140】
〔誘電体膜積層体112の作製〕
上記誘電体膜積層体109の作製において、無機顔料含有層1の形成に用いたカーボンブラック#2600(三菱化学株式会社製、平均一次粒子径:13nm)をカーボンブラック#3030B(三菱化学株式会社製)に変更した以外は同様にして、誘電体膜積層体112を作製した。
【0141】
〔誘電体膜積層体113の作製〕
上記誘電体膜積層体109の作製において、樹脂支持体1の一方の面側の無機顔料含有層1を除いた以外は同様にして、誘電体膜積層体113を作製した。
【0142】
以上作製した誘電体膜積層体113の層構成は、高屈折率層1/低屈折率層1/高屈折率層1/低屈折率層1/無機顔料含有層1/樹脂支持体1/低屈折率層1/高屈折率層1/低屈折率層1/高屈折率層1であり、これを層構成Dと称す。
【0143】
〔誘電体膜積層体114の作製〕
上記誘電体膜積層体113の作製において、無機顔料含有層1の形成に用いたカーボンブラック#2600(三菱化学株式会社製、平均一次粒子径:13nm)をカーボンブラック#2350(三菱化学株式会社製)に変更した以外は同様にして、誘電体膜積層体114を作製した。
【0144】
〔誘電体膜積層体115の作製〕
上記誘電体膜積層体113の作製において、無機顔料含有層1の形成に用いたカーボンブラック#2600(三菱化学株式会社製、平均一次粒子径:13nm)をカーボンブラック#970(三菱化学株式会社製)に変更した以外は同様にして、誘電体膜積層体115を作製した。
【0145】
〔誘電体膜積層体116の作製〕
上記誘電体膜積層体113の作製において、無機顔料含有層1の形成に用いたカーボンブラック#2600(三菱化学株式会社製、平均一次粒子径:13nm)をカーボンブラック#3030B(三菱化学株式会社製)に変更した以外は同様にして、誘電体膜積層体116を作製した。
【0146】
〔誘電体膜積層体117の作製〕
上記誘電体膜積層体101の作製において、無機顔料含有層1の形成位置を、樹脂支持体1と高屈折率層1間から、誘電体膜ユニット1の最表層である高屈折率層1の上に、変更した以外は同様にして、誘電体膜積層体117を作製した。
【0147】
以上作製した誘電体膜積層体117の層構成は、樹脂支持体1/高屈折率層1/低屈折率層1/高屈折率層1/低屈折率層1/高屈折率層1/低屈折率層1/高屈折率層1/無機顔料含有層1であり、これを層構成Eと称す。
【0148】
〔誘電体膜積層体118の作製〕
上記誘電体膜積層体109の作製において、無機顔料含有層1におけるカーボンブラック#2600の含有量を、0.05質量%から0.008質量%に変更した以外は同様にして、誘電体膜積層体118を作製した。
【0149】
〔誘電体膜積層体119の作製〕
上記誘電体膜積層体109の作製において、無機顔料含有層1におけるカーボンブラック#2600の含有量を、0.05質量%から0.10質量%に変更した以外は同様にして、誘電体膜積層体119を作製した。
【0150】
〔誘電体膜積層体120の作製〕
上記誘電体膜積層体109の作製において、無機顔料含有層1におけるカーボンブラック#2600の含有量を、0.05質量%から0.50質量%に変更した以外は同様にして、誘電体膜積層体120を作製した。
【0151】
〔誘電体膜積層体121の作製:比較例〕
上記誘電体膜積層体101の作製において、誘電体膜ユニット1を形成せずに、樹脂支持体1/無機顔料含有層1のみの層構成とした以外は同様にして、誘電体膜積層体121を作製した。
【0152】
以上作製した誘電体膜積層体121の層構成は、樹脂支持体1/無機顔料含有層1であり、これを層構成Fと称す。
【0153】
〔誘電体膜積層体122の作製:比較例〕
上記誘電体膜積層体101の作製において、無機顔料含有層1を除いた以外は同様にして、誘電体膜積層体122を作製した。
【0154】
以上作製した誘電体膜積層体122の層構成は、樹脂支持体1/高屈折率層1/低屈折率層1/高屈折率層1/低屈折率層1/高屈折率層1/低屈折率層1/高屈折率層1であり、これを層構成Gと称す。
【0155】
〔誘電体膜積層体123の作製:比較例〕
上記誘電体膜積層体105の作製において、樹脂支持体1の両面に設けた誘電体膜ユニット(高屈折率層1/低屈折率層1/高屈折率層1)をいずれも除き、無機顔料含有層1/樹脂支持体1/無機顔料含有層1(この層構成を、層構成Hと称す)とした以外は同様にして、誘電体膜積層体123を作製した。
【0156】
〔誘電体膜積層体124の作製:比較例〕
上記誘電体膜積層体105の作製において、樹脂支持体1の両面に設けた無機顔料含有層1を除いた以外は同様にして、誘電体膜積層体124を作製した。
【0157】
以上作製した誘電体膜積層体124の層構成は、高屈折率層1/低屈折率層1/高屈折率層1/樹脂支持体1/高屈折率層1/低屈折率層1/高屈折率層1であり、これを層構成Iと称す。
【0158】
〔誘電体膜積層体125の作製:比較例〕
上記誘電体膜積層体109の作製において、樹脂支持体1の両面に設けた無機顔料含有層1を除いた以外は同様にして、誘電体膜積層体125を作製した。
【0159】
以上作製した誘電体膜積層体125の層構成は、高屈折率層1/低屈折率層1/高屈折率層1/低屈折率層1/樹脂支持体1/低屈折率層1/高屈折率層1/低屈折率層1/高屈折率層1であり、これを層構成Jと称す。
【0160】
《誘電体膜積層体の評価》
上記作製した各誘電体膜積層体について、下記の各評価を行った。
【0161】
〔クラック耐性の評価〕
上記作製した各誘電体膜積層体表面を100倍ルーペを用いて観察し、下記の基準に従ってクラック耐性を評価した。下記評価で、ランク5、4であれば、実用上許容される品質であると判定した。
【0162】
5:クラック発生がまったく認められない
4:微小なクラックが若干発生しているが、実用上特に問題はない
3:小さなクラック発生が認められ、実用上懸念される品質である
2:明らかなクラック発生が認められ、使用上問題となる品質である
1:大きなクラックが多数発生しており、実用に全く耐えない品質である
〔ヘイズの評価〕
日本電色工業株式会社のヘイズメーター NDH 2000を用いて、光源D65でJIS 7361−1に準拠した方法でヘイズを測定した。数値が大きいほどヘイズ値が高く、可視性が悪くなり、低いほど可視性が良好となる。
【0163】
〔遮熱性の評価〕
誘電体膜積層体の一方の面側(表面側)に対し、赤外線照射器(日本ピー・アイ(株))で赤外線ランプ1000ワット、距離150mmから照射し、裏面側から50mm離れた位置の温度を非接触温度計(株式会社シロ産業 製 MB8R−303K)で測定し、これを温度T1(℃)とした。次いで、同様にして、誘電体膜積層体に代えて樹脂支持体1を用いて、裏面側から50mm離れた位置の温度を測定し、これを温度T2(℃)とした。
【0164】
次いで、両者の温度差(温度T2−温度T1)を求め、これを遮断性の尺度とした。温度差が大きいほど遮断性に優れていることを表す。
【0165】
〔色調性の評価〕
各誘電体膜積層体について、20人のモニターにより、4850°Kのデーライト透過光で色調を観察し、下記の基準に従ってランク付を行い、その評価点の総計を求めた。最高点は100点、最低点は20点である。
【0166】
5:非常に好感の持てる色調である
4:好感の持てる色調である
3:特に何も感じない色調である
2:違和感のある色調であるが、我慢できる範疇である
1:明らかに不快な色調である
〔耐衝撃性の評価〕
表面温度が100℃で、抱き角30度の加熱ロールに、各誘電体膜積層体の誘電体膜ユニットを設けた面側がタッチするように、張力10MPaの力で往復10回搬送を行った後、誘電体膜積層体表面を目視観察し、下記の基準に従って耐衝撃性の評価を行った。
【0167】
5:クラック発生がまったく認められない
4:微小なクラックが若干発生しているが、実用上特に問題はない
3:小さなクラック発生が認められ、実用上懸念される品質である
2:明らかなクラック発生が認められ、使用上問題となる品質である
1:大きなクラックが多数発生しており、実用に全く耐えない品質である
〔耐久性(耐光性)の評価〕
第1ステップとして、光源として岩崎電気株式会社のメタルハライドランプ セラルクス400Wを用い、光源より20cm離れた位置に誘電体膜積層体を配置し、100時間の連続光照射を行った。
【0168】
第2ステップとして、上記遮熱性の評価と同様にして、温度差(温度T2−温度T1)を求め、これを耐久性(耐光性)の尺度とした。
【0169】
以上により得られた各評価結果を、表1に示す。
【0170】
【表1】

【0171】
表1に記載の結果より明らかな様に、本発明で規定する構成からなる誘電体膜積層体は、比較例に対し、ヘイズを高めることなく、クラック耐性、遮熱性、色調、耐衝撃性及び耐久性に優れていることが分かる。
【符号の説明】
【0172】
10 プラズマ放電処理装置
11 第1電極
12 第2電極
21 第1電源
22 第2電源
24 第2フィルタ
30 プラズマ放電処理装置
32 放電空間
35 ロール回転電極
35a ロール電極
35A 金属質母材
35B 誘電体
36 角筒型固定電極群
40 電界印加手段
41 第1電源
42 第2電源
43 第1フィルタ
44 第2フィルタ
50 ガス供給手段
51 ガス発生装置
52 給気口
53 排気口
60 電極温度調節手段
G 薄膜形成ガス
G° プラズマ状態のガス
G′ 処理排ガス
F 樹脂支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、無機顔料を含有する層と、低屈折率誘電体膜と高屈折率誘電体膜とを交互に積層した誘電体膜ユニットとを有することを特徴とする誘電体膜積層体。
【請求項2】
前記誘電体膜ユニットが、前記基材の少なくとも一方の面に有していることを特徴とする請求項1記載の誘電体膜積層体。
【請求項3】
前記基材が、樹脂支持体であることを特徴とする請求項1または2に記載の誘電体膜積層体。
【請求項4】
前記低屈折率誘電体膜及び前記高屈折率誘電体膜が、いずれも赤外線反射膜であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の誘電体膜積層体。
【請求項5】
基材上に、無機顔料を含有する層と、低屈折率誘電体膜と高屈折率誘電体膜とが交互に積層した誘電体膜ユニットとを有する誘電体膜積層体を製造する誘電体膜積層体の製造方法において、該低屈折率誘電体膜及び該高屈折率誘電体膜は、大気圧又は大気近傍の圧力下で、ガスを放電空間に導入し、該放電空間に高周波電界を形成することによりガスをプラズマ状態とし、該基材を該プラズマ状態のガスに晒すことによって形成されたことを特徴とする誘電体膜積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−104830(P2011−104830A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260762(P2009−260762)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】