説明

警報システム及び警報器

【課題】フェールセーフ機能を向上させることのできる警報システム及び警報器を得る。
【解決手段】親機として動作する火災警報器Aは、少なくとも自己アドレス及び次に親機として動作すべき火災警報器Bのアドレスを含んだ交代要求信号を子機として動作する火災警報器に対して所定タイミングで送信し(S20)、子機として動作する火災警報器のうち、次に親機として動作すべき火災警報器Bは、前記交代要求信号を受信すると、親機に交代可能か否かを判定するための交代可否判定情報に基づいて交代の可否を判定し(S30)、交代可能と判定した場合には親機としての動作を開始する(S31)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に通信可能な親警報器と一又は複数の子警報器とを備える警報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
室内等に発生した熱や煙を検知して警報を行う警報器がある。このような警報器を各部屋にそれぞれ設け、これら複数の警報器のうちの一つが親機、その他が子機として動作することで互いに連動して警報動作を行う警報システムがある。
【0003】
このような警報システムで使用される子機として、「一台の無線親機と複数台の無線子機で構成され、通信可能な周波数帯を1波として無線双方向通信を行う特定小電力無線双方向通信システムにおいて使用される無線子機であって、当該無線子機を含む無線子機すべてが前記無線親機との通信を行っていない状態で、前記無線親機との通信を開始する場合、通信を開始することを宣言する「通信開始」の宣言電文を送信する手段と、当該無線子機を除く無線子機の任意の一台に関する、通信を開始したことを宣言した「通信開始」の宣言電文を受信する手段と、該受信した宣言電文を識別し、直ちに、当該無線子機を除く無線子機の任意の一台が前記無線親機との通信を行っていることを示す発呼待機状態に移行する手段と、前記無線親機との通信が終了した時点で、前記無線親機との通信を終了したことを宣言する「通信終了」の宣言電文を送信する手段と、当該無線子機を除く無線子機の任意の一台に関する、通信を終了したことを宣言した「通信終了」の宣言電文を受信する手段と、該受信した宣言電文を識別し、直ちに前記発呼待機状態を解除する手段と、を備え」たものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−294943号公報(第4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
相互に通信可能な親機と子機とを備える警報システムにおいては、親機は、警報システム内の子機端末の追加、交換、削除等を行う際における端末情報の記憶や管理を行うとともに、ある子機から発信された火災等に関する情報信号を他の子機に対して転送して、信号の中継を行っている。このようにすることで、警報システム内の親機と子機とが互いに連動して警報動作を行っている。
【0006】
しかしながら、警報システムを構成する子機の台数が増えると、親機と子機との間で行う通信の頻度が高くなる。これに伴い、親機が処理すべき通信タスクが増加して、親機の消費電流が増加することとなり、例えば電池で駆動する親機であれば電池寿命が短くなってしまう。親機に対してはAC電源により電源を供給すれば、電池残量を気にすることなく動作させることができるが、電源コンセントの位置によって親機を設置する場所が限定される場合がある。さらに、親機と子機とで異なる構成の製品となるので、製造工程や検査工程が複雑化して作業が増えることから、製造コストが上昇してしまう。
【0007】
また、親機が通信処理に関して行うべき処理量が増加することにより、本来機能(例えば、火災検出や火災警報など)の実施が後回しになると、親機は警報器としての機能を十分に果たすことができない。
【0008】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、定期的に親機として動作する警報器を交代することで、フェールセーフ機能を向上させることのできる警報システム及び警報器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る警報システムは、親警報器と一又は複数の子警報器との間で送受信する警報システムにおいて、前記親警報器は、少なくとも自己アドレス及び次に親警報器として動作すべき子警報器アドレスを含んだ交代要求信号を子警報器に対して所定タイミングで送信し、前記子警報器アドレスが付与された子警報器は、前記交代要求信号を受信すると子警報器と親警報器とが交代可能か否かを判定するための交代可否判定情報に基づいて交代の可否を判定し、交代可能と判定した場合には親警報器として動作を開始し、または、交代不可能と判定した場合には異常信号を送信するものである。
【0010】
また、前記警報システムにおいて、前記親警報器は、前記異常信号を送信した子警報器に対し、前記交代要求信号を送信しないものである。
さらに、前記交代可否判定情報は、電池電圧低下情報とするものである。
【0011】
また、本発明に係る警報器は、状態検出部と、該状態検出部の出力信号に基づいて状態を判断する状態判別部と、該状態判別部の判断結果に基づいて警報を出力させる制御部と、を備える警報器において、他の警報器と互いに状態信号の送受信を行う送受信部と、親警報器として動作するか、または、子警報器として動作するか、を設定する動作設定部と、を有し、親警報器として動作している場合には、前記制御部は、少なくとも自己アドレス及び次に親警報器として動作すべき子警報器アドレスを含んだ交代要求信号を他の警報器に対して所定タイミングで前記送受信部を介して送信し、子警報器として動作している場合には、前記制御部は、前記交代要求信号を受信すると、子警報器と親警報器とが交代可能か否かを判定するための交代可否判定情報に基づいて交代の可否を判定し、交代可能と判定した場合には前記動作設定部が親警報器として動作するよう設定し、交代不可能と判定した場合には前記送受信部を介して異常信号を他の警報器に対して送信するものである。
【0012】
前記制御部は、前記異常信号を送信した警報器に対し、前記交代要求信号を送信しないものである。
さらには、前記交代可否判定情報は、電池電圧低下情報とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る警報システムにおいては、所定時間が経過すると親機として動作する警報器を交代している。このため、各警報器における消費電力の均等化を図ることができ、警報システムのフェールセーフ機能を向上させることができる。
【0014】
また、本発明に係る警報システムにおいては、親機の交代が不可能であると判定した子機に対しては親機を承継しないようにしている。このため、適切な子機に親機を承継することができる。
さらには、本発明に係る警報システムにおいては、電池電圧低下情報に基づいて親機の承継が可能であるか否かの判定をしている。このため、電池残量の少ない警報器に対して親機を承継させることがなく、警報システムのフェールセーフ機能を向上させることができる。
【0015】
また、本発明に係る警報器においては、親機として動作するか子機として動作するかを選択的に設定可能である。このため、複数の警報器で構成される警報システムに適用した場合、警報システムのフェールセーフ機能を向上させることができる。
【0016】
また、本発明に係る警報器においては、異常状態にある警報器は親機として動作すべき警報器として選定されない。このため、複数の警報器で構成される警報システムに適用した場合、適切な子機に親機を承継することができる。
さらには、本発明に係る警報器においては、親機として動作可能か否かを、電池電圧に基づいて判定している。このため、複数の警報器で構成される警報システムに適用した場合、警報システムのフェールセーフ機能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施の形態.
以下、本実施の形態では、電池で駆動されて無線通信を行う複数の火災警報器からなる警報システムに、本発明を適用した場合を例に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る警報システム200の構成を示す図である。警報システム200は、複数の火災警報器100で構成される。これらの各火災警報器100は、それぞれ火災を検出する機能を有するとともに、独自に警報する機能を有している。
後述するように、火災警報器100はいずれも同様に構成されており、動作設定部の設定により親機としても子機としても動作することができる。なお、各火災警報器100を区別して説明するために、火災警報器A、火災警報器B、火災警報器C、火災警報器Dと称する場合がある。ここで、火災警報器A〜火災警報器Dは1つの同じグループに属している。また、図1において、各火災警報器100同士を結ぶ実線は、無線通信により互いに通信可能であることを示している。
【0019】
図2は、本発明の実施の形態に係る火災警報器100の主要構成を示す機能ブロック図である。
図2において、火災警報器100は、制御回路1、電池2、電源回路3、電池電圧検出回路4、送受信回路5、アンテナ6、火災検出回路7、警報音制御回路8、表示灯回路9を備える。
【0020】
電池2は、電源回路3に直流電源を供給する。電源回路3は、電池2の電圧を所定電圧に制御し、制御回路1、送受信回路5、火災検出回路7、警報音制御回路8、表示灯回路9に供給する。
【0021】
電池電圧検出回路4は、電源回路3に印加される電池2の電圧を検出し、検出した電圧に応じた電池電圧検出信号を制御回路1に出力する。電池電圧検出回路4は、電池残量が低下したこと、または、電池切れの閾値を超えたこと、を検出すると、制御回路1によって警報音制御回路8と表示灯回路9を駆動させるとともに、電池切れの状態情報を含む状態信号を送受信回路5により出力させる。
【0022】
火災検出回路7は本発明の状態検出部に相当し、火災現象に基づく煙または熱等の検知対象物の物理量または物理的変化を検出して、検出内容に応じた信号を制御回路1に出力する。警報音制御回路8は、ブザー・スピーカ等による音声鳴動の動作を制御する回路である。表示灯回路9は、発光ダイオード等の表示灯の点灯動作を制御する回路である。
【0023】
送受信回路5は、無線信号を送受信するためのアンテナ6に接続されている。送受信回路5は、アンテナ6から入力された無線信号を処理し、自己宛の信号の場合には受信処理を行う。また、自己宛以外の信号の場合には受信処理を行わない。受信処理した信号は、制御回路1へ出力する。また、送受信回路5は、制御回路1に制御されて、状態信号などの信号の送信処理を行う。
【0024】
制御回路1は、火災検出回路7によって出力された信号に基づいて、警報音制御回路8及び表示灯回路9を制御して音声及び表示灯によって警報および警報停止を行う。また、送受信回路5が受信した信号に基づいて必要な処理を行うとともに、必要に応じて送受信回路5を制御して他の火災警報器への状態信号などの信号の送信を行う。なお、本発明の状態判別部は、本実施の形態では制御回路1に相当する。
【0025】
また、制御回路1は、動作設定部11を備える。動作設定部11は、火災警報器100が、親機として動作するか、子機として動作するかを設定する機能を有する。動作設定部11の設定に従い、制御回路1は、後述する記憶部10に記憶されたプログラムに基づいて、親機または子機としての動作を行うように各構成要素の動作を制御する。
【0026】
記憶部10は、親機として動作する際の制御プログラムである親機動作プログラム101と、子機として動作する際の制御プログラムである子機動作プログラム102を備える。制御回路1は、動作設定部11の設定に従い、親機動作プログラム101または子機動作プログラム102に基づいて動作制御を行う。すなわち、火災警報器100は、親機としても子機としても動作可能である。
【0027】
また、記憶部10は、電池電圧閾値103及びグループ情報104を備える。
電池電圧閾値103は、電池電圧検出回路4が検出した電池電圧の判定を行うための閾値を格納する。なお、本発明の交代可否判定情報は、本実施の形態では電池電圧閾値103に相当する。
グループ情報104は、自己及び自己が属するグループに関する各種情報を記憶する。
【0028】
グループ情報104においては、自己アドレス105、親機アドレス106、子機アドレス107、及び親機交代順序108を備える。また、図示しないが、グループを識別するためのグループIDも備える。
自己アドレス105は、警報システム200における各火災警報器100が固有に持つアドレス情報である。本例では、火災警報器A〜Dのアドレスを、例えば、それぞれアドレスA〜Dとして説明する。
親機アドレス106は、警報システム200において親機として動作する火災警報器100の自己アドレス105である。図1の例では、すべての火災警報器100は、親機アドレス106として火災警報器Aの自己アドレス105であるアドレスAを格納している。
子機アドレス107は、警報システム200において子機として動作する火災警報器100のうち、自己以外の他の火災警報器100の自己アドレス105である。図1の例では、火災警報器Bは、子機アドレス107として、アドレスBを除いたアドレスCとアドレスDを格納している。
【0029】
親機交代順序108は、親機を交代する際の火災警報器A〜Dの順序を示す情報である。親機交代順序108は、任意に定めることができる。例えば、警報システム200に加入した順番を、親機交代順序108とすることができる。
なお、少なくとも、親機アドレス106、子機アドレス107、親機交代順序108は、書き換え可能である。
【0030】
以上のように構成された火災警報器100は、複数台で1つのグループを構成し、1台が親機、他が子機として動作する。親機としての設定は、例えば、電源投入後に図示しない登録ボタンを押すことによって行う。一方、子機の設定は、例えば、親機の図示しない登録ボタンを押して登録モードにした状態で、子機の電源投入後に図示しない登録ボタンを押すことによって行う。このような親機または子機としての設定において無線通信を行い、グループ情報104を格納するとともに、動作設定部11により設定を行う。
【0031】
次に、警報システム200において火災が発生した場合の動作を説明する。
親機である火災警報器Aが設置された環境で火災が発生すると、火災警報器Aは、火災検出回路7により火災を検出し、音声や表示灯によって警報を行うとともに、火災に関する情報を連動信号として他の子機(火災警報器B〜D)に送信する。そして、親機(火災警報器A)により送信された連動信号を受信した子機(火災警報器B〜D)は、音声や表示灯によって必要な警報を行う。その後、親機(火災警報器A)が火災を検出しなくなると自己復旧して警報停止するとともに、他の子機(火災警報器B〜D)への連動信号の送信を停止する。そして、連動信号を受信しなくなった他の子機(火災警報器B〜D)も警報を停止する。
【0032】
また、子機である火災警報器Bが設置された環境で火災が発生すると、火災警報器Bは火災検出回路7により火災を検出し、音声や表示灯によって警報を行うとともに、火災に関する情報を連動信号として親機(火災警報器A)と他の子機(火災警報器C、D)に送信する。そして、火災警報器Bにより送信された連動信号を受信した親機(火災警報器A)と他の子機(火災警報器C、D)は、音声や表示灯によって必要な警報を行う。
さらに、子機である火災警報器Bにより発せられた連動信号を受信した親機(火災警報器A)は、送信元の火災警報器B以外の子機(火災警報器C、D)に連動信号を転送する。よって、各子機同士(火災警報器B〜D)が離れているために、火災警報器Bが送信した連動信号が火災警報器C、Dで受信されなくても、親機(火災警報器A)により転送された連動信号が火災警報器C、Dで受信される。その後、火災警報器Bが火災を検出しなくなると自己復旧して警報停止するとともに、親機(火災警報器A)と他の子機(火災警報器C、D)への連動信号の送信を停止する。そして、連動信号を受信しなくなった親機(火災警報器A)と子機(火災警報器C、D)も警報を停止する。このように、親機(火災警報器A)と子機(火災警報器B〜D)は、互いに連動して警報動作を行うことで、より確実に使用者に警報を伝えることができる。
【0033】
また、警報システム200においては、各火災警報器100の状態を確認するため、火災監視(定常状態)中に、状態確認のための定期送信を行っている。この定期送信においては、親機(火災警報器A)は、定められた送信タイミングになると、親機(火災警報器A)またはそれが属するグループの状態情報と、送信元を識別するための自己アドレス105を含む情報とを状態信号として、子機(火災警報器B〜D)に対して送信する。この状態信号は、所定回数繰り返して送信してもよい。このようにすることで、子機(火災警報器B〜D)による正常受信の確率を高めることができる。
子機(火災警報器B〜D)は、親機(火災警報器A)からの状態信号を受信すると、例えば、自身に関する状態情報と、送信元を識別するための自己アドレス105を含む情報とを状態信号として、親機(火災警報器A)に送信する。
この際、親機(火災警報器A)と子機(火災警報器B〜D)は、それぞれの状態信号に含まれる自己アドレス105により、どの火災警報器からの信号であるかを区別できる。
親機および子機(火災警報器A〜D)に関する状態情報の例としては、電池残量、火災検出回路7のセンサ状態(劣化、汚損等)、受信処理回数(規定以外の無線に対する処理の回数)などが挙げられる。また、グループに関する状態情報の例としては、異常が発生している子機のアドレスやグループID、無線通信が成立していない子機のアドレスやグループIDなどが挙げられる。
【0034】
以上のように構成された火災警報器100及び警報システム200において、親機として動作する火災警報器は、所定の時間が経過すると交代する。親機の交代においては、親機交代タイミングになると、現在の親機が、親機交代順序108に格納されている順番に従って次に親機となるべき子機を選定し、現在の親機に関する情報及び次に親機となるべき子機に関する情報をすべての子機に対して送信する。そして、次に親機となるべき子機は、親機を交代することが可能か否かを交代可否判定情報に従って判定し、親機及び他の子機に対して判定結果を応答する。親機の交代が可能であれば交代し、不可能であれば異常信号を現在の親機及び他の子機に対して送信する。なお、親機の交代に失敗した場合には、現在の親機は、親機交代順序108に従って他の子機に対して再び親機の交代を試みる。このようにして、親機の交代を所定時間ごとにで行う。
【0035】
図4〜図6を参照しながら、親機を交代する際の動作を説明する。図4〜図6は、親機(火災警報器A)から子機(火災警報器B)へ親機を交代する際の動作の流れを示す図である。図4は、親機(火災警報器A)から子機(火災警報器B)へ親機の交代が正常に行われた場合の図である。図5と図6は、親機(火災警報器A)から子機(火災警報器B)への親機の交代が失敗した場合の図である。なお、火災警報器Cと火災警報器Dは同様の動作を行うため、図4〜図6では火災警報器Cのみ記載している。また、本例では、親機交代順序108が、火災警報器A、火災警報器B、火災警報器C、火災警報器Dの順で設定されている場合を例に説明する。
【0036】
図4を参照して親機の交代が正常に行われる場合の動作を説明する。
(S20)
まず、親機(火災警報器A)が、親機の交代要求信号を同じグループ(警報システム200)に属するすべての子機(火災警報器B〜D)に対して送信する。交代要求信号には、現在の親機の情報として親機(火災警報器A)の自己アドレス105であるアドレスAが、次の親機の情報として火災警報器Bの自己アドレス105であるアドレスBが含まれている。また、交代要求送信は、所定の親機交代タイミングで行う。親機交代タイミングは、所定時間毎あるいは所定時刻などの定期的なタイミングを任意に設定することができ、前述した定期送信の動作における定められた送信タイミングと親機交代タイミングを同じにしてもよい。
【0037】
(S30)
次に親機となるべき自己アドレス105にアドレスBが設定された子機(火災警報器B)は、親機の交代要求信号を受信すると、親機の交代の可否を判定する。判定においては、電池電圧検出回路4が検出した電池電圧が、記憶部10に格納されている電池電圧閾値103より大きいか否かを確認し、大きい場合には親機の交代が可能であると判定する。また、小さい場合には親機の交代が不可能であると判定する。なお、電池電圧閾値103は、次の親機の交代タイミングまでの間、親機として動作するのに十分な電池残量を示す値が設定されている。
【0038】
(S31)
次に、火災警報器Bは、親機としての動作設定を行う。具体的には、動作設定部11により親機として動作するよう設定を行い、制御回路1は、親機動作プログラム101に従った動作制御を開始する。
【0039】
(S32)
次に、火災警報器Bは、交代要求送信に対する応答信号を、応答送信として火災警報器A及び他の子機(火災警報器C、D)に送信する。応答信号には、親機の交代が完了したことを示す信号が含まれている。火災警報器Bは、グループ情報104に親機アドレス106及び子機アドレス107を格納しているので、グループ内のすべての火災警報器100に対して応答信号を送信できる。
【0040】
(S33)
続けて、火災警報器Bは、グループ情報104を更新する。本処理においては、親機アドレス106としてアドレスBを格納するとともに、子機アドレス107としてアドレスA、アドレスC、及びアドレスDを格納する。すなわち、交代前に親機であった火災警報器AのアドレスAを、子機アドレス107として追加で格納する。
【0041】
(S21)
火災警報器Aは、親機の交代が完了したことを示す応答信号を受信すると、子機としての動作設定を行う。具体的には、動作設定部11が子機として動作するよう設定を行い、制御回路1は、子機動作プログラム102に従った動作制御を開始する。
【0042】
(S22)
続けて、火災警報器Aは、グループ情報104を更新する。本処理においては、親機アドレス106として火災警報器Bのアドレスを格納するとともに、子機アドレス107として火災警報器C及び火災警報器Dのアドレスを格納する。すなわち、子機アドレス107から、交代後の親機である火災警報器BのアドレスBを削除する。
【0043】
(S40)
一方、自己アドレス105に次に親機となるべきアドレスBが設定されていない子機(火災警報器C)は、火災警報器Aが送信した交代要求信号を受信すると、火災警報器Aから火災警報器Bへ親機の交代が行われることを認識し、親機の交代に関する信号の受信待機状態となる。
【0044】
(S41)
そして、火災警報器Bから、親機の交代が完了したことを示す応答信号を受信すると、グループ情報104を更新する。本処理においては、親機アドレス106としてアドレスBを設定すると共に、子機アドレス107としてアドレスAを追加で格納する。例えば、火災警報器Cは、子機アドレス107として、アドレスA、及びアドレスDを格納している。
【0045】
次に、図5を参照して親機の交代に失敗した場合の動作を説明する。図5では、次の親機となるべき火災警報器Bが、親機の交代が不可能であると判定する場合について説明する。
【0046】
(S20a)
まず、親機(火災警報器A)が、親機の交代要求信号をすべての子機(火災警報器B〜D)に対して送信する。本処理は、前述の図4におけるステップS20と同様の処理である。
【0047】
(S30a)
次に親機となるべき自己アドレス105にアドレスBが設定された子機(火災警報器B)は、親機の交代の可否を判定する。ここで、電池電圧検出回路4が検出した電池電圧が、記憶部10に格納されている電池電圧閾値103より小さく、親機の交代が不可能であると判定したとする。
【0048】
(S31a)
次に、火災警報器Bは、交代要求送信に対する応答信号を、火災警報器A及び他の子機(火災警報器C、D)に送信する。応答信号には、火災警報器Aから火災警報器Bへ親機の交代に失敗したことを示す信号が含まれている。
【0049】
(S21a)
火災警報器Aは、親機の交代に失敗したことを示す応答信号を受信すると、親機交代順序108を参照して火災警報器Bの次に親機になるべき火災警報器(本例では火災警報器C)を選定する。
(S22a)
続けて、火災警報器Aは、次の親機を火災警報器Cとする交代要求送信(現在の親機のアドレスAと次の親機のアドレスCを含む)を行って親機の交代を試みる。以後の処理は、前述の通りである。
【0050】
(S40a)
自己アドレス105に次に親機となるべきアドレスBが設定されていない子機(火災警報器C)は、火災警報器Aが送信した交代要求信号を受信すると、火災警報器Aから火災警報器Bへ親機の交代が行われることを認識し、親機の交代に関する信号の受信待機状態となる。
(S41a)
そして、親機の交代に失敗したことを示す応答信号を受信すると、待機状態をリセットし、交代要求信号を受け取る前の状態に戻る。
【0051】
次に、図6を参照して親機の交代に失敗した場合の他の動作を説明する。図6では、通信異常などの何らかの理由により、次に親機となるべき子機(火災警報器B)が、親機の交代要求信号を受信できなかった場合について説明する。
【0052】
(S20b)
まず、親機(火災警報器A)が、親機の交代要求信号をすべての子機(火災警報器B〜D)に対して送信する。本処理は、前述の図4におけるステップS20と同様の処理である。ここで、例えば混信などにより通信異常が発生し、火災警報器Bは交代要求信号を受信できていない。
【0053】
次に親機となるべき自己アドレス105にアドレスBが設定された火災警報器Bは、交代要求信号を受信していないので、そのまま通常の監視状態を継続し、親機の交代の可否を判定する処理は行わない。
【0054】
(S21b)
親機(火災警報器A)は、交代要求送信を行ってから所定時間が経過しても火災警報器Bからの応答信号を受信できない場合には、親機の交代に失敗したものと判断し、交代エラー信号をすべての子機に対して送信する。
(S22b)
そして、親機交代順序108を参照して火災警報器Bの次に親機になるべき火災警報器(本例では火災警報器C)を特定する。
(S23b)
続けて、火災警報器Aは、次の親機を火災警報器Cとする交代要求送信を行う。以後の処理は、前述の通りである。
【0055】
(S40b)
一方、自己アドレス105に次に親機となるべきアドレスBが設定されていない子機(火災警報器C)は、火災警報器Aが送信した交代要求信号を受信すると、火災警報器Aから火災警報器Bへ親機の交代が行われることを認識し、親機の交代に関する信号の受信待機状態となる。
(S41)
そして、火災警報器Cは、交代エラー信号を受信すると、待機状態をリセットし、交代要求信号を受ける前の状態に戻る。
【0056】
ここで、親機の交代に失敗した場合には、火災警報器Bに何らかの異常が発生したと判断し、親機(火災警報器A)が何らかの警報を行うことができる。このようにすることで、使用者に火災警報器Bの点検を促すことができる。そして、親機の交代に失敗した子機(図5、図6の例では火災警報器B)については、親機交代順序108において「交代不可能」であることを各火災警報器が記憶し、火災警報器Bに対しては親機の交代を行わないようにする。そして、電池の入れ替えを行うなどして親機の交代が可能になると親機交代順序108に加わる。
【0057】
このように本実施の形態によれば、火災警報器100は所定タイミングで親機を交代している。上述のように、親機は警報システム内の端末情報の管理や信号の中継などを行うため子機よりも消費電流が多いが、本実施の形態では親機を順番に交代することにより、特定の火災警報器100の電池寿命が短くなることがなく、電池寿命の片寄りを少なくすることができる。例えば、特定の火災警報器を常に親機として動作させた場合、親機の電池寿命は短いので、他の子機よりも頻繁に電池の入れ替えを行う必要がある。電池の入れ替え中は親機が存在しないことになるので、警報システム200として稼動できなくなってしまい警報の連動動作などを行うことができない。しかし、本実施の形態に係る火災警報器100及び警報システム200によれば、親機の電池残量低下に伴う警報システム200のシステムダウンを防ぐことができ、警報システム200のフェールセーフ機能を向上させることができる。
【0058】
また、本実施の形態では、所定時間毎、あるいは所定時刻などの定期的なタイミングで親機を交代することとした。このため、各火災警報器100が親機として動作する時間を均一にすることができ、火災警報器100の電池寿命の片寄りを少なくすることができる。
【0059】
また、本実施の形態によれば、火災警報器100は親機としても子機としても動作することができる。このため、親機と子機とで異なる仕様の火災警報器を製造する必要がなく、製造工程や検査工程を共通化して製造コストを抑制することができる。
【0060】
なお、本実施の形態では、親機の交代を定期的なタイミングで行う場合を例に説明したが、これと組み合わせ、他のタイミングで親機の交代を行うこととしてもよい。例えば、親機として機能しているときに電池電圧が所定値以下に減少するなどの異常が発生したときに、親機の交代を行うことができる。このようにすることで、親機の電池残量低下に伴う警報システム200のシステムダウンを防ぐことができる。
【0061】
また、本実施の形態では、交代可否判定情報として電池電圧閾値103を用いる場合を例に説明したが、これに限定するものではない。例えば、無線電波の電界強度を測定し、電界強度の値を交代可否判定情報として用いてもよい。また、電界強度と電池残量を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
また、本実施の形態では、親機交代順序108を任意に予め設定しておく場合を例に説明したが、順位を動的に変更することも可能である。例えば、親機は、予め子機から電池残量の値を取得しておき、電池残量が多い火災警報器を次の親機とすることができる。このようにすることで、各火災警報器の電池残量の片寄りを防ぐことができる。
【0063】
なお、上記説明では、電池で駆動されて無線通信を行う火災警報器を備える警報システムに本発明を適用した場合を例に説明したが、火災警報器の電源の供給方法や通信方式を限定するものではなく、また、火災警報器以外に異常検出用などの警報器に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態を示す警報システムの構成図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す警報器の機能ブロック図である。
【図3】グループ情報の構成を示すブロック図である。
【図4】親機の交代に成功した場合の動作の流れを示す図である。
【図5】親機の交代に失敗した場合の動作の流れを示す図である。
【図6】親機の交代に失敗した場合の他の動作の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 制御回路、2 電池、3 電源回路、4 電池電圧検出回路、5 送受信回路、6 アンテナ、7 火災検出回路、8 警報音制御回路、9 表示灯回路、10 記憶部、11 動作設定部、100 火災警報器、101 親機動作プログラム、102 子機動作プログラム、103 電池電圧閾値、104 グループ情報、105 自アドレス、106 親機アドレス、107 子機アドレス、108 親機交代順序、200 警報システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親警報器と一又は複数の子警報器との間で送受信する警報システムにおいて、
前記親警報器は、少なくとも自己アドレス及び次に親警報器として動作すべき子警報器アドレスを含んだ交代要求信号を子警報器に対して所定タイミングで送信し、
前記子警報器アドレスが付与された子警報器は、前記交代要求信号を受信すると子警報器と親警報器とが交代可能か否かを判定するための交代可否判定情報に基づいて交代の可否を判定し、交代可能と判定した場合には親警報器としての動作を開始することを特徴とする警報システム。
【請求項2】
親警報器と一又は複数の子警報器との間で送受信する警報システムにおいて、
前記親警報器は、少なくとも自己アドレス及び次に親警報器として動作すべき子警報器アドレスを含んだ交代要求信号を子警報器に対して所定タイミングで送信し、
前記子警報器アドレスが付与された子警報器は、前記交代要求信号を受信すると子警報器と親警報器とが交代可能か否かを判定するための交代可否判定情報に基づいて交代の可否を判定し、交代不可能と判定した場合には前記親警報器に異常信号を送信することを特徴とする警報システム。
【請求項3】
前記親警報器は、前記異常信号を送信した子警報器に対し、前記交代要求信号を送信しないことを特徴とする請求項2記載の警報システム。
【請求項4】
前記交代可否判定情報は、電池電圧低下情報であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の警報システム。
【請求項5】
状態検出部と、
該状態検出部の出力信号に基づいて状態を判断する状態判別部と、
該状態判別部の判断結果に基づいて警報を出力させる制御部と、を備える警報器において、
他の警報器と互いに状態信号の送受信を行う送受信部と、
親警報器として動作するか、または、子警報器として動作するか、を設定する動作設定部と、を有し、
親警報器として動作している場合には、前記制御部は、少なくとも自己アドレス及び次に親警報器として動作すべき子警報器アドレスを含んだ交代要求信号を他の警報器に対して所定タイミングで前記送受信部を介して送信し、
子警報器として動作している場合には、前記制御部は、前記交代要求信号を受信すると、子警報器と親警報器とが交代可能か否かを判定するための交代可否判定情報に基づいて交代の可否を判定し、交代可能と判定した場合には前記動作設定部が親警報器として動作するよう設定することを特徴とする警報器。
【請求項6】
状態検出部と、
該状態検出部の出力信号に基づいて状態を判断する状態判別部と、
該状態判別部の判断結果に基づいて警報を出力させる制御部と、を備える警報器において、
他の警報器と互いに状態信号の送受信を行う送受信部と、
親警報器として動作するか、または、子警報器として動作するか、を設定する動作設定部と、を有し、
親警報器として動作している場合には、前記制御部は、少なくとも自己アドレス及び次に親警報器として動作すべき子警報器アドレスを含んだ交代要求信号を他の警報器に対して所定タイミングで前記送受信部を介して送信し、
子警報器として動作している場合には、前記制御部は、前記交代要求信号を受信すると子警報器と親警報器とが交代可能か否かを判定するための交代可否判定情報に基づいて交代の可否を判定し、交代不可能と判定した場合には前記送受信部を介して異常信号を他の警報器に対して送信することを特徴とする警報器。
【請求項7】
前記制御部は、前記異常信号を送信した警報器に対し、前記交代要求信号を送信しないことを特徴とする請求項6記載の警報システム。
【請求項8】
前記交代可否判定情報は、電池電圧低下情報であることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の警報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−134737(P2010−134737A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310650(P2008−310650)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】