説明

貫通孔への円筒部材装着治具、装着方法及び円筒部材が装着された貫通孔を備えた基材

【課題】貫通孔の中心軸と円筒部材の中心軸とを一致させ、円筒部材を貫通孔に同心状に装着させることができる円筒部材装着治具を提供する。
【解決手段】リフターピン21が貫通する貫通孔41と、貫通孔41に連通し、貫通孔41よりも径が大きい座繰り穴42とを有する基材13において貫通孔41にスリーブ45を装着するための治具であって、座繰り穴42に嵌合する台座部51と、台座部51から突出し、リフターピン21の外形よりも太く且つスリーブ45の内径よりも細い位置合わせピン52を備え、この位置合わせピン52は、台座部51を座繰り穴42に嵌合させた際、位置合わせピン52の中心軸52aが貫通孔41の中心軸41aと重なるように位置決めされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピン部材が貫通し、前進及び後退を繰り返す貫通孔の内周面に円筒部材を装着する貫通孔への円筒部材装着治具、装着方法及び円筒部材が装着された貫通孔を備えた基材に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)をはじめとするFPD(Flat Panel Display)の製造工程において、ガラス基板をはじめとする各種基板に対しプラズマ処理を施す基板処理装置が知られている。
【0003】
このような基板処理装置においては、処理室(以下、「チャンバ」という。)内でガラス基板(以下、単に「基板」という。)を支持し下部電極として機能する基板載置台(以下、「サセプタ」という。)と、該サセプタと処理空間を隔てて対向するように配置された上部電極とを有し、サセプタにプラズマ生成用の高周波電力(RF)を印加すると共に、処理空間に処理ガスを導入してプラズマを生成させ、生成したプラズマを用いてサセプタの基板載置面に載置された基板に対して所定のプラズマ処理が施される。
【0004】
下部電極として機能するサセプタの基材には、リフターピン(昇降ピン)が昇降するための貫通孔が設けられている。リフターピンは、チャンバ内へ基板を搬入する際又はチャンバから基板を搬出する際、サセプタの基板載置面の上方の搬送位置まで延びて基板搬送装置との間で基板の受け渡しを行う。
【0005】
サセプタには、プラズマ生成用の高周波電力が印加されるため、基材と該基材に設けられた貫通孔を昇降するリフターピンとの間の絶縁性を確保する必要があり、リフターピンが昇降する貫通孔の内周面には、絶縁性のセラミックスリーブ(以下、単に、「スリーブ」という。)が装着されている(例えば、「特許文献1」参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−235430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、通常、スリーブは接着剤を用いて人手によって貫通孔の内周面に装着されるために、スリーブの中心軸を貫通孔の中心軸に合わせるための位置決めの精度が低く、スリーブが貫通孔内で偏った位置に装着されるという問題がある。ここで、偏った位置の典型例としては、貫通孔の中心軸とスリーブの中心軸が平行で、ずれている場合が挙げられる。
【0008】
図8は、スリーブが貫通孔の偏った位置に装着された基材を示す図であって、図8(A)は断面図、図8(B)は、要部を示す平面図である。
【0009】
図8において、基材13の貫通孔41内の偏った位置にスリーブ45が装着されており、貫通孔41の内周面にスリーブ45を接着させる接着剤層46の厚さが貫通孔41の周方向において不均一となっている。このように、偏った位置にスリーブ45が装着されると、図9に示したように、リフターピン21を装着した際、リフターピン21の昇降に伴って該リフターピン21とスリーブ45の内周面とが摺接し、この摺接に伴って粉塵が発生するという問題がある。
【0010】
なお、上記以外にスリーブ45が貫通孔41内の偏った位置に装着される事例として、例えば、スリーブ45の中心軸が貫通孔41の中心軸と交叉するようにスリーブ45が貫通孔41内において斜めに装着されている場合が挙げられる。この場合にも粉塵が発生するという問題がある。
【0011】
本発明の課題は、貫通孔の中心軸と円筒部材の中心軸とを一致させ、円筒部材を貫通孔に同心状に装着させることができる貫通孔への円筒部材装着治具、装着方法及び円筒部材が装着された貫通孔を備えた基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1記載の貫通孔への円筒部材装着治具は、ピン状部材が貫通する貫通孔と、該貫通孔に連通し、該貫通孔よりも径が大きい座繰り穴とを有する基材において前記貫通孔に円筒部材を装着するための治具であって、前記座繰り穴に嵌合する台座部と、該台座部から突出し、前記ピン状部材の外形よりも太く且つ前記円筒部材の内径よりも細い位置合わせピンとを備え、前記位置合わせピンは、前記台座部を前記座繰り穴に嵌合させた際、該位置合わせピンの中心軸が前記貫通孔の中心軸と重なるように位置決めされていることを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の貫通孔への円筒部材装着治具は、請求項1記載の貫通孔への円筒部材装着治具において、前記位置合わせピンの長さは、前記貫通孔の長さの1/2以上であることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の貫通孔への円筒部材装着治具は、請求項1又は2記載の貫通孔への円筒部材装着治具において、前記位置合わせピンと前記台座部は線膨張係数が低く基材に割れを生じさせない材料によって一体成形されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の貫通孔への円筒部材装着治具は、請求項3記載の貫通孔への円筒部材装着治具において、前記位置合わせピンと前記台座部はステンレス鋼によって一体成形されていることを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の貫通孔への円筒部材装着治具は、請求項1又は2記載の貫通孔への円筒部材装着治具において、前記位置合わせピンと前記台座部は、アルミニウム若しくはアルミ合金によって一体成形され、少なくとも前記位置合わせピンの外周面にアルマイト被膜が形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の貫通孔への円筒部材装着治具は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の貫通孔への円筒部材装着治具において、少なくとも前記位置合わせピンの外周面にダイヤモンドライクカーボンによる被膜が形成されていることを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の貫通孔への円筒部材装着治具は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の貫通孔への円筒部材装着治具において、前記基材は基板処理装置における基板載置台の構成部材であり、前記ピン状部材は前記基板載置台に載置される基板の昇降のためのリフターピンであることを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決するために、請求項8記載の貫通孔への円筒部材装着方法は、ピン状部材が貫通する貫通孔と、該貫通孔に連通し、該貫通孔よりも径が大きい座繰り穴とを有する基材の前記貫通孔に円筒部材装着治具を用いて円筒部材を装着する方法であって、前記円筒部材装着治具は、前記基材の前記座繰り穴に嵌合する台座部と、該台座部から突出し、前記ピン状部材の外形よりも太く且つ前記円筒部材の内径よりも細い位置合わせピンとを備え、前記台座部を前記座繰り穴に嵌合させた際、前記位置合わせピンの中心軸が前記貫通孔の中心軸と重なるように位置決めされており、前記円筒部材装着治具の前記台座部を前記基材の前記座繰り穴に嵌合させる嵌合ステップと、前記円筒部材の外周面に接着剤を塗布する接着剤塗布ステップと、前記接着剤が塗布された円筒部材を前記貫通孔に、前記座繰り穴と連通する端部とは反対側の端部から挿入して当該円筒部材に前記貫通孔内に位置する前記円筒部材装着治具の前記位置合わせピンが嵌通するように装填する円筒部材装填ステップと、を有することを特徴とする。
【0020】
請求項9記載の貫通孔への円筒部材装着方法は、請求項8記載の貫通孔への円筒部材装着方法において、前記嵌合ステップの前段に、前記位置合わせピン及び台座の外周面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布ステップを有することを特徴とする。
【0021】
請求項10記載の貫通孔への円筒部材装着方法は、請求項8又は9記載の貫通孔への円筒部材装着方法において、前記円筒部材装填ステップの後段に、前記接着剤が固まるまで静置する接着剤固化ステップと、該接着剤固化ステップの後、前記円筒部材装着治具を取り外す除去ステップと、を有することを特徴とする。
【0022】
請求項11記載の貫通孔への円筒部材装着方法は、請求項8乃至10のいずれか1項に記載の貫通孔への円筒部材装着方法において、前記基材は基板処理装置における基板載置台の構成部材であり、前記ピン状部材は前記基板載置台に載置される基板の昇降のためのリフターピンであることを特徴とする。
【0023】
上記課題を解決するために、請求項12記載の円筒部材が装着された貫通孔を備えた基材は、ピン状部材が貫通する貫通孔と、該貫通孔に連通し、該貫通孔よりも径が大きい座繰り穴とを有する基材の前記貫通孔に円筒部材が装着された基材であって、前記円筒部材の中心軸が前記貫通孔の中心軸と重なっていることを特徴とする。
【0024】
請求項13記載の円筒部材が装着された貫通孔を備えた基材は、請求項12記載の円筒部材が装着された貫通孔を備えた基材において、前記貫通孔の内周面と前記円筒部材の外周面との間隙に、円周方向に沿って均一厚さの接着剤層が形成されていることを特徴する。
【0025】
請求項14記載の円筒部材が装着された貫通孔を備えた基材は、請求項12又は13記載の円筒部材が装着された貫通孔を備えた基材において、前記基材は基板処理装置における基板載置台の構成部材であり、前記ピン状部材は前記基板載置台に載置される基板の昇降のためのリフターピンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、貫通孔の中心軸と円筒部材の中心軸とを一致させ、円筒部材を貫通孔に同心状に装着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明が適用される基板載置台を備える基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る円筒部材装着治具が適用される貫通孔を有する基材の説明図であり、図2(A)は、断面図、図2(B)は、貫通孔と該貫通孔に連通する座繰り穴との位置関係を示す上から見た平面模式図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る貫通孔への円筒部材装着治具の説明図であり、図3(A)は、断面図、図3(B)は、上から見た平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る貫通孔への円筒部材装着方法のフローチャートである。
【図5】本実施の形態に係る円筒部材装着方法における基材の貫通孔にスリーブが装着された状態を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る貫通孔にスリーブが装着された基材を示す断面図である。
【図7】図6の基材にリフターピンを装着した状態を示す断面図である。
【図8】スリーブが貫通孔の偏った位置に装着された基材を示す図であって、図8(A)は断面図、図8(B)は、要部を示す平面図である。
【図9】スリーブが貫通孔の偏った位置に装着された基材にリフターピンを装着した状態を示す図であって、図9(A)は、断面図、図9(B)は、要部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0029】
図1は、本発明が適用される基板載置台を備える基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。この基板処理装置は、例えば、液晶表示装置製造用のガラス基板に所定のプラズマ処理を施すものである。
【0030】
図1において、基板処理装置10は、例えば1辺が数mの矩形のガラスからなる基板Gを収容するチャンバ11を有し、該チャンバ11内部の図中下方には基板Gを載置するサセプタ12が配置されている。サセプタ12は、例えば、表面がアルマイト処理されたアルミニウムからなる基材13で構成されており、基材13は絶縁部材14を介してチャンバ11の底部に支持されている。基材13は断面凸型を呈しており、上部には静電電極板16を内蔵した静電チャック20が設置され、その上部平面は基板Gを載置する基板載置面20aとなっている。
【0031】
基板載置面20aの周囲を囲むようにシールド部材としてのシールドリング15が設けられており、シールドリング15は、例えばアルミナ等の絶縁性セラミックスで構成されている。
【0032】
静電電極板16には直流電源17が接続されており、静電電極板16に正の直流電圧が印加されると、基板載置面20aに載置された基板Gにおける静電電極板16側の面(以下、「裏面」という。)には負電荷が誘起され、これによって静電電極板16及び基板Gの裏面の間に電界が生じ、該電界に起因するクーロン力又はジョンソン・ラーベック力により、基板Gが基板載置面20aに吸着保持される。
【0033】
基材13の内部には、基材13及び基板載置面20aに載置された基板Gの温度を調節するための温度調節機構(図示省略)が設けられている。この温度調節機構に、例えば、冷却水やガルデン(登録商標)等の冷媒が循環供給され、該冷媒によって冷却された基材13は基板Gを冷却する。
【0034】
基材13の周囲には、シールドリング15と基材13との当接部を含む側面を覆うサイドシール部材としての絶縁リング18が配置されている。絶縁リング18は絶縁性のセラミックス、例えばアルミナで構成されている。
【0035】
チャンバ11の底壁、絶縁部材14及び基材13を貫通する貫通孔に、リフターピン21が昇降可能に挿通されている。リフターピン21は基板載置面20aに載置される基板Gの搬入及び搬出時に作動するものであり、基板Gをチャンバ11内に搬入する際又はチャンバ11から搬出する際には、サセプタ12の上方の搬送位置まで上昇し、それ以外のときには基板載置面20a内に埋設状態で収容されている。
【0036】
基板載置面20aには、図示省略した複数の伝熱ガス供給孔が開口している。複数の伝熱ガス供給孔は伝熱ガス供給部(図示しない)に接続され、伝熱ガス供給部から伝熱ガスとして、例えばヘリウム(He)ガスが基板載置面20a及び基板Gの裏面の間隙に供給される。基板載置面20a及び基板Gの裏面の間隙に供給されたヘリウムガスはサセプタ12の熱を基板Gに効果的に伝達する。
【0037】
サセプタ12の基材13には、高周波電力を供給するための高周波電源23が整合器24を介して接続されている。高周波電源23からプラズマ生成用の高周波電力(RF)が印加され、サセプタ12は下部電極として機能する。整合器24は、サセプタ12からの高周波電力の反射を低減して高周波電力のサセプタ12への印加効率を最大にする。
【0038】
基板処理装置10では、チャンバ11の内側壁とサセプタ12の側面とによって側方排気路26が形成される。この側方排気路26は排気管27を介して排気装置28に接続されている。排気装置28としてのTMP(Turbo Molecular Pump)及びDP(Dry Pump)(ともに図示省略)はチャンバ11内を真空引きして減圧する。具体的には、DPはチャンバ11内を大気圧から中真空状態(例えば、1.3×10Pa(0.1Torr)以下)まで減圧し、TMPはDPと協働してチャンバ11内を中真空状態より低い圧力である高真空状態(例えば、1.3×10−3Pa(1.0×10−5Torr)以下)まで減圧する。なお、チャンバ11内の圧力はAPCバルブ(図示省略)によって制御される。
【0039】
チャンバ11の天井部分には、サセプタ12と対向するようにシャワーヘッド30が配置されている。シャワーヘッド30は内部空間31を有するとともに、サセプタ12との間の処理空間Sに処理ガスを吐出する複数のガス孔32を有する。シャワーヘッド30は接地されて上部電極として機能し、下部電極として機能するサセプタ12と共に一対の平行平板電極を構成している。
【0040】
シャワーヘッド30は、ガス供給管36を介して処理ガス供給源39に接続されている。ガス供給管36には、開閉バルブ37及びマスフローコントローラ38が設けられている。また、チャンバ11の側壁には基板搬入出口34が設けられており、この基板搬入出口34はゲートバルブ35により開閉可能となっている。そして、このゲートバルブ35を介して処理対象である基板Gが搬入出される。
【0041】
基板処理装置10では、処理ガス供給源39から処理ガス導入管36を介して処理ガスが供給される。供給された処理ガスは、シャワーヘッド30の内部空間31及びガス孔32を介してチャンバ11の処理空間Sへ導入される。導入された処理ガスは、高周波電源23からサセプタ12を介して処理空間Sへ印加されるプラズマ生成用の高周波電力によって励起されてプラズマとなる。プラズマ中のイオンは、基板Gに向かって引きこまれ、基板Gに対して所定のプラズマエッチング処理を施す。
【0042】
基板処理装置10の各構成部品の動作は、基板処理装置10が備える制御部(図示省略)のCPUがプラズマエッチング処理に対応するプログラムに応じて制御する。
【0043】
次に、図1の基板処理装置10における基板載置台12の基材13、及び該基材13に設けられた貫通孔に円筒部材を装着する際に用いられる本発明に係る貫通孔への円筒部材装着治具(以下、単に「円筒部材装着治具」という。)について詳細に説明する。
【0044】
図2は、本発明の実施の形態に係る円筒部材装着治具が適用される貫通孔を有する基材の説明図であり、図2(A)は、断面図、図2(B)は、貫通孔41と該貫通孔41に連通する座繰り穴42との位置関係を示す上(便宜上、紙面の上を「上」とする)から見た平面模式図である。
【0045】
図2において、基材13は、ピン状部材(以下、「リフターピン」という。)が貫通する内径φBの貫通孔41と、該貫通孔41に連通する内径φAの座繰り穴42と、該座繰り穴42が連通する蓋嵌合用凹部43とを有する。φA>φBであり、座繰り穴42の公差は、例えば0〜50μmに設定されており、貫通孔41の公差は0〜100μmに設定されている。
【0046】
このような基材13の貫通孔41の内周面には、基材13とリフターピンとを絶縁するためにセラミックからなる円筒部材(以下、「スリーブ」という。)が装着される。スリーブについては、コストを抑えるために一般量産品を使用することも多く、その場合、その内径及び外径における公差は、基材13の座繰り穴42及び貫通孔41の公差に比べて一般に大きい。
【0047】
図3は、本発明の実施の形態に係る円筒部材装着治具の説明図であり、図3(A)は、断面図、図3(B)は、上(便宜上、紙面の上を「上」とする)から見た平面図である。
【0048】
図3において、円筒部材装着治具50は、基材13の座繰り穴42に嵌合する台座部51と、該台座部51の上部平面から突出する位置合わせピン52とから主として構成されており、台座部51と位置合わせピン52は、例えばアルミニウムやアルミ合金、ステンレス鋼で一体に形成されている。ただし、温度変化の激しい環境で使用する可能性がある場合には、台座部が熱膨張することにより基材に割れが生じるのを防ぐため、線膨張係数が低く熱膨張し難い材料、例えばステンレス鋼を用いることが望ましい。
【0049】
円筒部材装着治具50の台座部51の外径は、台座部51と座繰り穴42とが嵌合するためφA(例えば、φ24mm)であり、その公差は、−0〜13μm程度である。位置合わせピン52の台座部51上における位置は、基材13における座繰り穴42と貫通孔41の位置関係に応じて決まり、例えば、座繰り穴42の中心軸と貫通孔41の中心軸とが一致する場合には、台座部51の中心軸51aと、位置合わせピン52の中心軸52aは同軸であり、位置合わせピン52は、台座部51の中心軸に沿って傾くこと無く位置決めされている。従って、円筒部材装着治具50の位置合わせピン52を基材13の貫通孔41に挿入し、台座部51を座繰り穴42に嵌合させると、台座部51の中心軸51a、すなわち位置合わせピン52の中心軸52aは、貫通孔41の中心軸41a(図1参照)と重なるように位置決めされている。従って、台座部51の座繰り穴42への取り付け精度が位置合わせピンの位置精度を左右し、ひいてはスリーブの取り付け精度を左右することとなる。
【0050】
円筒部材装着治具50における位置合わせピン52の外径は、後に説明するようにスリーブを嵌通するためスリーブの内径を超えないようにする必要があるが、その一方で、リフターピンの外径よりも小さくなると貫通孔41に装着されたスリーブがリフターピンと干渉する虞もあるためリフターピンの外径よりも大きい必要があり、例えば、スリーブ内径と同じ寸法で、且つ、その公差が−0〜10μm程度に設定されている。従って、位置合わせピン52の外周面と基材13の貫通孔41の内周面との間に形成される円筒状の空間部は、円周方向に亘って均一幅となる。
【0051】
次に、このような円筒部材装着治具を用いた円筒部材装着方法について説明する。
【0052】
図4は、本発明の実施の形態に係る貫通孔への円筒部材装着方法のフローチャートである。
【0053】
図4において、基材13の貫通孔41へのスリーブ装着処理は、以下のように実行される。すなわち、先ず、円筒部材装着治具50に蓋部材55(後述する図5参照)を取り付ける(ステップS1)。その後、円筒部材装着治具50の位置合わせピン52を基材13の貫通孔41に、図2中下方から挿入し、台座部51を基材13の座繰り穴42に嵌合させ、これによって貫通孔41に対して位置合わせピン52を位置決めし、蓋部材55を基材13に固定する(ステップS2)。尚、円筒部材装着治具50の外周面には、座繰り穴42に嵌め合わせ易くするため潤滑剤を塗布、又はDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングを施してもよく、また、円筒部材装着治具50がアルミニウムやアルマイト合金で作成されている場合には嵌合部にアルマイト処理を行ってもよい。また、蓋部材55は、例えばアルミ材で構成されており、スリーブ45の位置決めには特には寄与しないので、その寸法についての公差に台座51や位置合わせピン52などのように高い精度が要求されることはない。
【0054】
次に、貫通孔41に装着するスリーブ45(後述する図5参照)の外周面に接着剤を塗布する(ステップS3)。接着剤としては、例えば、アルミナ−シリカ系の接着剤を用いる。次いで、外周面にアルミナ−シリカ系の接着剤が塗布されたスリーブ45を貫通孔41に、座繰り穴42と連通する端部とは反対側の端部から挿入して貫通孔41内で位置決めされた位置合わせピン52がスリーブ45を嵌通するように装填する(ステップS4)。
【0055】
図5は、本発明の実施の形態に係る円筒部材装着方法における基材13の貫通孔41にスリーブ45が装填された状態を示す断面図である。
【0056】
図5において、基材13の座繰り穴42に円筒部材装着治具50の台座部51が嵌合され、位置合わせピン52の中心軸52aが貫通孔41の中心軸41aと重なっている。また、外周面に接着剤が塗布されたスリーブ45に位置合わせピン52が嵌通するような状態でスリーブ45が貫通孔41に装填されており、貫通孔41の内周面とスリーブ45の外周面との間に接着剤層46が形成されている。
【0057】
このようにして、スリーブ45を貫通孔41に装填した後、接着剤を固化する(ステップS5)。アルミナ−シリカ系の接着剤の固化温度は、例えば70℃乃至80℃である。
【0058】
接着剤が固化した後、蓋嵌合用凹部43に装着されている蓋部材55を取り外すことにより、蓋部材55が取り付けられている円筒部材装着治具50を取り外して本処理を終了する(ステップS6)。
【0059】
図4のスリーブ装着処理によれば、基材13の座繰り穴42に円筒部材装着治具50の台座部51を嵌合させることによって位置合わせピン52の中心軸52aを貫通孔41の中心軸41aに合わせ、その後、外周面に接着剤が塗布されたスリーブ45を貫通孔41内の位置合わせピン52が該スリーブ45を嵌通するように装填するので、スリーブ45を基材13の貫通孔41のほぼ中央に装着することができる。
【0060】
次に、円筒部材装着方法によって得られた本発明の実施の形態に係る貫通孔に円筒部材が装着された基材について説明する。
【0061】
図6は、本発明の実施の形態に係る貫通孔にスリーブが装着された基材を示す断面図である。
【0062】
図6において、基材13の貫通孔41にスリーブ45が装着されており、スリーブ45の中心軸45aと貫通孔41の中心軸41aが一致している。また、貫通孔41の内周面とスリーブ45の外周面との間隙に、円周方向に沿って均一厚さの接着剤層46が形成されている。
【0063】
本実施の形態に係る貫通孔に円筒部材が装着された基材によれば、スリーブ45の取り付け精度が向上するので、スリーブ45内を昇降するようにリフターピンを装着してもリフターピンとスリーブとの接触を防止して粉塵の発生を未然に防止することができる。
【0064】
図7は、図6の基材13にリフターピン21を装着した状態を示す断面図である。
【0065】
図7において、リフターピン21は、基材13の貫通孔41の内周面に装着されたスリーブ45の中心軸に沿って配置されており、昇降運動を繰り返してもスリーブ45の内周面と接触することはない。従って、スリーブ45及びリフターピン21が粉塵の発生源となることはない。
【0066】
本実施の形態に係る円筒部材装着治具50において、位置合わせピン52の長さは、基材13の貫通孔41の長さの1/2以上であることが好ましい。これによって、貫通孔41内において位置合わせピン52が傾くことを抑制できるので、円筒部材装着治具50を用いた円筒部材装着方法におけるスリーブ45の位置決め精度を確保することができる。
【0067】
本実施の形態に係る円筒部材装着治具50において、位置合わせピン52の先端部の外周部に面取り処理を施しておくことが好ましい。これによって、円筒部材装着治具50を基材13の座繰り穴42に嵌合させた後、該円筒部材装着治具50の位置合わせピン52へのスリーブ45の装填の際に位置合わせピン52の先端部の外周部にスリーブ45が引っかかることがなくなり、スリーブ45の装填が容易となる。
【0068】
本実施の形態に係る円筒部材装着治具50において、スリーブ45の最小内径と、円筒部材装着治具50の位置合わせピン52の最大外径との差は、少なくとも100μm程度であることが好ましい。スリーブ45の最小内径と、位置合わせピン52の最大外径との差が上記寸法以上であれば、基材13の貫通孔41内に位置決めされた位置合わせピン52へのスリーブの装填不良を回避して良好な操作性を確保することができる。
【0069】
本実施の形態に係る円筒部材装着方法おいて、あらかじめ位置合わせピン52の外周面に潤滑剤、例えばグリス等を塗布しておくことが好ましい。これによって、位置合わせピン52へのスリーブ45の装填が容易となる。
【0070】
本実施の形態に係る円筒部材装着方法において、貫通孔41にスリーブ45を装着した後、円筒部材が装着された基材を洗浄することが好ましい。これによって、スリーブ装着処理で基材13に付着した汚染物質を除去することができる。洗浄ステップは、円筒部材が装着された基材13に、例えばエタノール等によって手拭きするなどによって行われる。
【0071】
以上、本発明を実施の形態を用いて詳細に説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0072】
10 基板処理装置
12 基板載置台(サセプタ)
13 基材
41 貫通孔
42 座繰り穴
43 蓋嵌合用凹部
45 円筒部材(スリーブ)
50 円筒部材装着治具
51 台座部
52 位置合わせピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピン状部材が貫通する貫通孔と、該貫通孔に連通し、該貫通孔よりも径が大きい座繰り穴とを有する基材において前記貫通孔に円筒部材を装着するための治具であって、
前記座繰り穴に嵌合する台座部と、
該台座部から突出し、前記ピン状部材の外形よりも太く且つ前記円筒部材の内径よりも細い位置合わせピンとを備え、
前記位置合わせピンは、前記台座部を前記座繰り穴に嵌合させた際、該位置合わせピンの中心軸が前記貫通孔の中心軸と重なるように位置決めされていることを特徴とする貫通孔への円筒部材装着治具。
【請求項2】
前記位置合わせピンの長さは、前記貫通孔の長さの1/2以上であることを特徴とする請求項1記載の貫通孔への円筒部材装着治具。
【請求項3】
前記位置合わせピンと前記台座部は線膨張係数が低く基材に割れを生じさせない材料によって一体成形されていることを特徴とする請求項1又は2記載の貫通孔への円筒部材装着治具。
【請求項4】
前記位置合わせピンと前記台座部はステンレス鋼によって一体成形されていることを特徴とする請求項3記載の貫通孔への円筒部材装着治具。
【請求項5】
前記位置合わせピンと前記台座部は、アルミニウム若しくはアルミ合金によって一体成形され、少なくとも前記位置合わせピンの外周面にアルマイト被膜が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の貫通孔への円筒部材装着治具。
【請求項6】
少なくとも前記位置合わせピンの外周面にダイヤモンドライクカーボンによる被膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の貫通孔への円筒部材装着治具。
【請求項7】
前記基材は基板処理装置における基板載置台の構成部材であり、前記ピン状部材は前記基板載置台に載置される基板の昇降のためのリフターピンであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の貫通孔への円筒部材装着治具。
【請求項8】
ピン状部材が貫通する貫通孔と、該貫通孔に連通し、該貫通孔よりも径が大きい座繰り穴とを有する基材の前記貫通孔に円筒部材装着治具を用いて円筒部材を装着する方法であって、
前記円筒部材装着治具は、前記基材の前記座繰り穴に嵌合する台座部と、該台座部から突出し、前記ピン状部材の外形よりも太く且つ前記円筒部材の内径よりも細い位置合わせピンとを備え、前記台座部を前記座繰り穴に嵌合させた際、前記位置合わせピンの中心軸が前記貫通孔の中心軸と重なるように位置決めされており、
前記円筒部材装着治具の前記台座部を前記基材の前記座繰り穴に嵌合させる嵌合ステップと、
前記円筒部材の外周面に接着剤を塗布する接着剤塗布ステップと、
前記接着剤が塗布された円筒部材を前記貫通孔に、前記座繰り穴と連通する端部とは反対側の端部から挿入して当該円筒部材に前記貫通孔内に位置する前記円筒部材装着治具の前記位置合わせピンが嵌通するように装填する円筒部材装填ステップと、
を有することを特徴とする貫通孔への円筒部材装着方法。
【請求項9】
前記嵌合ステップの前段に、前記位置合わせピン及び台座の外周面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布ステップを有することを特徴とする請求項8記載の貫通孔への円筒部材装着方法。
【請求項10】
前記円筒部材装填ステップの後段に、
前記接着剤が固まるまで静置する接着剤固化ステップと、
該接着剤固化ステップの後、前記円筒部材装着治具を取り外す除去ステップと、
を有することを特徴とする請求項8又は9記載の貫通孔への円筒部材装着方法。
【請求項11】
前記基材は基板処理装置における基板載置台の構成部材であり、前記ピン状部材は前記基板載置台に載置される基板の昇降のためのリフターピンであることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の貫通孔への円筒部材装着方法。
【請求項12】
ピン状部材が貫通する貫通孔と、該貫通孔に連通し、該貫通孔よりも径が大きい座繰り穴とを有する基材の前記貫通孔に円筒部材が装着された基材であって、
前記円筒部材の中心軸が前記貫通孔の中心軸と重なっていることを特徴とする円筒部材が装着された貫通孔を備えた基材。
【請求項13】
前記貫通孔の内周面と前記円筒部材の外周面との間隙に、円周方向に沿って均一厚さの接着剤層が形成されていることを特徴する請求項12記載の円筒部材が装着された貫通孔を備えた基材。
【請求項14】
前記基材は基板処理装置における基板載置台の構成部材であり、前記ピン状部材は前記基板載置台に載置される基板の昇降のためのリフターピンであることを特徴とする請求項12又は13記載の円筒部材が装着された貫通孔を備えた基材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−142325(P2012−142325A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291979(P2010−291979)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】