走査荷電粒子顕微鏡装置及びそれを用いたパターン寸法の計測方法
【課題】
半導体パターンの広範囲の撮像領域(EP)を複数の撮像領域(SEP)に分割し,SEPをSEMを用いて撮像した画像群を画像処理により繋ぎ合せるパノラマ画像合成技術において,繋ぎ合せの手掛かりとなるパターンが少なくても全画像が繋がるSEPを決定すること,およびそのようなSEPを決定できなくてもユーザの要求項目をなるべく満たすSEPを決定することである。
【解決手段】
一部のSEP間の重複領域に繋ぎ合せの手掛かりとなるパターンが含まれなくても全画像が繋がるケースがあることに着目し,SEP配置の最適化により前記ケースを抽出することで全画像が繋がるSEPを決定できるケースが増える。また,そのようなSEPを決定できなくても,複数のSEP配置の候補とユーザの要求項目を可視化した情報を表示・SEPを選択させることでユーザの要求項目をなるべく満たすSEPを容易に決定できる。
半導体パターンの広範囲の撮像領域(EP)を複数の撮像領域(SEP)に分割し,SEPをSEMを用いて撮像した画像群を画像処理により繋ぎ合せるパノラマ画像合成技術において,繋ぎ合せの手掛かりとなるパターンが少なくても全画像が繋がるSEPを決定すること,およびそのようなSEPを決定できなくてもユーザの要求項目をなるべく満たすSEPを決定することである。
【解決手段】
一部のSEP間の重複領域に繋ぎ合せの手掛かりとなるパターンが含まれなくても全画像が繋がるケースがあることに着目し,SEP配置の最適化により前記ケースを抽出することで全画像が繋がるSEPを決定できるケースが増える。また,そのようなSEPを決定できなくても,複数のSEP配置の候補とユーザの要求項目を可視化した情報を表示・SEPを選択させることでユーザの要求項目をなるべく満たすSEPを容易に決定できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型電子顕微鏡を用いて広範囲・高分解能な画像を取得するため、撮像領域を複数の局所領域に分割して撮像し、前記局所領域の撮像画像を画像処理により繋ぎ合せることによってパノラマ画像を生成してパターンの寸法を計測する装置およびその方法に関するものであり、特に高い繋ぎ合せ精度となる前記局所領域の撮像位置および撮像倍率の決定が可能な走査荷電粒子顕微鏡及びそれを用いたパターン寸法の計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハに配線パターンを形成するに際しては,半導体ウェーハ上にレジストと呼ばれる塗布材を塗布し,レジストの上に配線パターンの露光用マスク(レチクル)を重ねてその上から可視光線,紫外線あるいは電子ビームを照射し,レジストを感光(露光)して現像することによって半導体ウェーハ上にレジストによる配線パターンを形成し,このレジストの配線パターンをマスクとして半導体ウェーハをエッチング加工することにより配線パターンを形成する方法が採用されている。
【0003】
マスクやウェーハ上のパターン形状の検査には,走査荷電粒子顕微鏡の一つである測長走査電子顕微鏡(Critical Dimension Scanning Electron Microscope:CD−SEM)が広く用いられている。パターン形状の評価のため,SEM撮像を行う座標を評価ポイントと呼び,以降,EP(Evaluation Point)と略記する。EPを少ない撮像ずれ量で,かつ高画質で撮像するため,アドレッシングポイント(以降,APと呼ぶ)あるいはオートフォーカスポイント(以降,AFと呼ぶ)あるいはオートスティグマポイント(以降,ASTと呼ぶ)あるいはオートブライトネス・コントラストポイント(以降,ABCCと呼ぶ)の一部又は全ての調整ポイントを必要に応じて設定し,それぞれの調整ポイントにおいて,アドレッシング,オートフォーカス調整,オートスティグマ調整,オートブライトネス・コントラスト調整を行った後,EPを撮像する。
【0004】
前記アドレッシングにおける撮像ずれ量は,事前に登録テンプレートとして登録された座標既知のAPにおけるSEM画像と,実際の撮像シーケンスにおいて観察されたSEM画像とをマッチングし,前記マッチングのずれ量を撮像位置のずれ量として補正している。前記評価ポイント(EP),調整ポイント(AP,AF,AST,ABCC)をまとめて撮像ポイントと呼ぶ。EPのサイズ・座標,撮像条件,ならびに各調整ポイントの撮像条件,調整方法,ならびに各撮像ポイントの撮像順(あるいは調整順),ならびに前記登録テンプレートは撮像レシピとして管理され,SEMは前記撮像レシピに基づき,EPの撮像を行う。
【0005】
従来,レシピの生成はSEMオペレータがマニュアルで行っており,労力と時間を要する作業であった。また,各調整ポイントの決定や登録テンプレートをレシピに登録するためには,実際にウェーハを低倍で撮像する必要があることから,レシピの生成がSEM装置の稼働率低下の一因となっていた。更に,パターンの微細化・複雑化に伴い,評価を要するEPの点数は爆発的に増加し,前記レシピのマニュアルによる生成は,労力,生成時間の観点から非現実的になりつつある。
【0006】
そこで撮像レシピに関して,例えばGDSII形式で記述された半導体の回路パターンの設計情報を基にAPを決定し,さらに設計情報からAPにおけるデータを切り出して前記登録テンプレートとして撮像レシピに登録する半導体検査システムが開示されている(特許文献1:特開2002−328015号公報)。そこでは,APの決定ならびに登録テンプレートの登録の目的のみで実ウェーハを撮像する必要がなく,SEMの稼働率向上が実現する。また,実際の撮像シーケンスにおいてAPにおけるSEM画像(実撮像テンプレート)を取得した際,前記実撮像テンプレートと設計情報の登録テンプレートとのマッチングを行い,前記設計情報の登録テンプレートの位置に対応するSEM画像を登録テンプレートとして撮像レシピに再登録し,以降,前記再登録したSEM画像の登録テンプレートをアドレッシング処理に使用する機能を有する。さらに設計情報から特徴のあるパターン部分を自動的に検出し,APとして登録する機能を有する。
【0007】
また、特許文献2には、アドレッシングパターンを数万倍程度の倍率で撮像して得た画像を予め記憶しておいたアドレッシングテンプレート画像と比較してアドレッシングパターンの位置を求め、この求めた位置情報に基づいて測長領域の中心座標を取得し、この中心座標情報に基づいて数十万倍程度の倍率で測長位置の拡大画像を取得することについて記載されている。
【0008】
更に、特許文献3には、SEMを用いて試料を撮像するための撮像レシピを自動生成する方法として、EPの座標、サイズ、形状、撮像条件、EP周辺のCADデータ等を入力して、EPを観察するための撮像ポイントの点数、座標、サイズ、形状、撮像シーケンス、撮像条件などを含む撮像レシピをウェーハレスで作成することについて記載されている。
EPとしては,ユーザからの指定点や,EDA(Electronic Design Automation)ツール等から出力されるホットスポットと呼ばれるデバイス不良が発生しやすい危険箇所等が挙げられ,これらEPにおけるパターン寸法値を基にマスクパターンの形状補正や半導体製造プロセス条件の変更等のフィードバックを行い,高い歩留まりを実現する。近年の半導体デバイスの高速化・高集積化のニーズに対応して,配線パターンの微細化・高密度化が進んでおり,光近接効果補正(Optical Proximity Correction:OPC)に代表される超解像度露光技術が導入されている。これに伴うマスクパターンの複雑化によりウェーハ上に転写されるパターン形状のシミュレーション予測や,実際に転写されたパターン形状の検査がより重要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−328015号公報
【特許文献2】特開2005−265424号公報
【特許文献3】特開2007−250528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ウェーハ上に転写されるパターン形状のシミュレーション予測のためには,マスク上のパターン形状を入力する必要があるが,光近接効果を加味したシミュレーションを行うためにはある程度広範囲のパターン形状を入力する必要がある。前記パターン形状として設計情報を入力する方法が考えられるが,設計情報と実際にマスク上に生成されたパターン形状とは乖離があるため,この乖離がシミュレーション誤差となってしまう。そこで,マスク上に生成されたパターンをSEM撮像し,形状を抽出することが考えられるが,前記広範囲をカバーするように低倍率で撮像を行うと画像分解能が低下してしまう。逆に高倍率で撮像を行うと分解能は改善するが視野は狭くなってしまう。そこで,広範囲な撮像範囲(EP)を,複数の局所領域に分割して撮像し,前記局所領域の撮像画像を画像処理によって繋ぎ合せることによって広範囲・高分解能なパノラマ画像(隣接する複数の画像を繋ぎ合せて合成した画像)を生成することが考えられる。前記局所領域のことをEPを分割した領域ということで,以降,SEP(Segmental Evaluation Point)と呼ぶ。
【0011】
例えば、光近接効果を加味したシミュレーションを行うためには、SEMで得られる高倍率の画像1枚だけからの情報では不十分で、高倍率の比較的広い範囲の画像、すなわち高倍率の複数の視野に亘る画像を得ることが必要になる。しかい、上記した特許文献1乃至3の何れにも、比較的広い範囲に亘って高倍率の画像を得ることについては記載されていない。
【0012】
一般に局所領域の画像を組合わせて広域画像であるパノラマ画像を合成することはよく知られた処理であるが,例えばCCDカメラ等で撮像された画像のパノラマ合成に対し,SEMを用いた半導体パターンに対するパノラマ画像合成処理には以下のような特有の課題がある。
【0013】
(1)画像の繋ぎ合せはSEP間の重複領域に含まれるパターンを基に行われるが,半導体パターンは密に存在せず,かつ繋ぎ合せの手掛かりとなるのは基本的にパターンのエッジのみである。そのため,SEP間の全ての全重複領域に繋ぎ合せの手掛かりとなるパターンが十分に含まれない場合がありうる。パターンが十分に含まれない(あるいは全くパターンが含まれない)重複領域をもつSEPは,繋ぎ合せ精度が低くなる(あるいは繋ぎ合せが不可能となる)危険性がある。例えば視野10μmのEPを視野1.5μmのSEPで分割しようとした場合,SEPは50枚程度となる。このように多数のSEPに対して限られたパターンで全てのSEPがうまく繋がらなければならない。
【0014】
(2)原理的に全てのユーザ要求(例えば全SEPが画像処理により繋がる等)を満たすSEP配置が存在しない場合がある。そのような場合であっても,なるべくユーザの要求を満たすSEP配置を準最適解として決定することが望ましいが,例えば上記のように50枚にも及ぶSEPを眺めながら,ユーザ要求の満足度を評価する作業は容易でない。
光近接効果を加味してウェーハ上に転写されるパターン形状のシミュレーション予測を行うために必要な,マスク上のある程度広範囲な領域のパターン形状を比較的高い倍率で撮像して入力する方法、および 必要があるが,光近接効果を加味したシミュレーションを行うためにはある程度広範囲のパターン形状を入力する必要がある
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決して、複数の高倍率のSEM画像を繋ぎ合わせることにより比較的広い範囲に亘る高倍率のSEM画像を合成し、この比較的広い範囲の高倍率のSEM画像を処理してパターンの寸法を計測することが可能なSEM装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明では、以下のような特徴を有する走査荷電粒子顕微鏡(SEM)装置及びそれを用いて半導体のマスクパターンあるいは前記マスクパターンをウェーハに転写した回路パターンの広域な画像を取得して所望のパターンの寸法(パターンの線幅、パターンの長さ、パターン間のギャップ、パターンの角部の丸みなど)を計測する方法とした。
【0016】
すなわち本発明では、走査型電子顕微鏡手段と、走査型電子顕微鏡手段で表面にパターンが形成された試料を撮像する撮像レシピを作成し、作成した撮像レシピに基づいて走査型電子顕微鏡手段で試料を撮像して得た試料の画像を処理する処理手段と、処理手段で処理した試料の画像から試料上に形成されたパターンの寸法情報を抽出する寸法情報抽出手段と、画像処理手段と寸法情報抽出手段とで処理する情報及び処理した情報を入出力する入出力手段と、顕微鏡手段と処理手段と寸法情報抽出手段と入出力手段とを制御する制御手段とを備えた走査型電子顕微鏡装置において、走査型電子顕微鏡手段は処理手段で作成した撮像レシピに基づいて試料上の隣接する複数の領域をそれぞれ一部重ねて順次撮像して複数の画像を取得し、処理手段は走査型電子顕微鏡手段で取得した複数の画像を各画像間の重なり領域に存在するパターンのエッジ情報を用いて複数の画像を繋ぎ合わせたパノラマ画像を作成し、寸法情報抽出手段は画像処理手段で作成したパノラマ画像からパターンの寸法情報を抽出するように構成した。
【0017】
また、本発明では、走査型電子顕微鏡手段と、走査型電子顕微鏡手段で表面にパターンが形成された試料を撮像するための撮像レシピを作成する撮像レシピ作成手段と、撮像レシピ作成手段で作成した撮像レシピに基づいて走査型電子顕微鏡手段で試料を撮像して得た試料の画像を処理する画像処理手段と、画像処理手段で処理した試料の画像から試料上に形成されたパターンの寸法情報を抽出する寸法情報抽出手段と、表示画面を備えて画像処理手段と寸法情報抽出手段とで処理する情報及び処理した情報を入出力する入出力手段と、顕微鏡手段と撮像レシピ作成手段と画像処理手段と寸法情報抽出手段と入出力手段とを制御する制御手段とを備えた走査型電子顕微鏡装置において、撮像レシピ作成手段は、走査型電子顕微鏡手段で撮像して得た試料の低倍率の画像が表示された入出力手段の画面上で指定された高倍率画像取得領域の情報を用いて指定された高倍率画像取得領域を隣接する領域同士が互いにパターンのエッジの一部を含んで重なり合うようにして複数の領域に分割する機能を有し、制御手段は、撮像レシピ作成手段で作成した撮像レシピに基づいて走査型電子顕微鏡手段を制御して分割された各領域を高倍率で撮像させる機能を有し、
画像処理手段は、走査型電子顕微鏡手段で撮像して得た各領域の高倍率の画像を各画像間の重なり領域に存在するパターンのエッジ情報を用いて繋ぎ合わせた高倍率のパノラマ画像を作成する機能を有し、寸法情報抽出手段は、画像処理手段で作成した高倍率のパノラマ画像からパターンの寸法を抽出する機能を有するように構成した。
【0018】
更に、本発明では、走査型電子顕微鏡装置を用いたパターン寸法計測方法において、表面にパターンが形成された試料を走査型電子顕微鏡を用いて低倍率で撮像し、撮像して得た試料の低倍率の画像を画面上に表示し、低倍率の画像が表示された画面上で指定された高倍率画像取得領域の情報を用いて指定された高倍率画像取得領域を隣接する領域同士が互いにパターンのエッジの一部を含んで重なり合うようにして複数の領域に分割して撮像するための撮像レシピを作成し、作成した撮像レシピに基づいて分割した各領域を走査型電子顕微鏡で撮像して各領域の高倍率の画像を取得し、撮像して得た各分割した領域のそれぞれの高倍率の画像を各画像間の重なり領域に存在するパターンのエッジ情報を用いて繋ぎ合わせて高倍率のパノラマ画像を作成し、作成した高倍率のパノラマ画像からパターンの寸法情報を抽出するようにした。
【0019】
また、本発明では、高倍率のパノラマ画像を作製する上において、以下のような特徴を有する。
【0020】
(1) 入力した広域の撮像領域(EP)を適切なSEMの撮像倍率で撮像可能な局所撮像領域(SEP)に分割する。SEPはEPを埋め尽くすように決定する必要がある。ここで適切な撮像倍率とは,ユーザが要求するパターン形状精度を満たす画像分解能が得られる倍率を指す。前記で決定したSEPをSEMで撮像し,これらのSEP画像群を画像処理により繋ぎ合せて広域のパノラマ画像を生成することができる。
【0021】
高精度のパノラマ画像を生成するためには,全SEPが繋がるSEP配置を決定する必要がある。隣接する二つのSEP間の繋ぎ合せ可否あるいは繋ぎ合せ易さは前記二つのSEP間の重複領域に繋ぎ合せ可能あるいは繋ぎ合せ易いパターンが含まれるか否かによって判定できる。しかし,半導体パターンは密に存在しないため,全ての重複領域に繋ぎ合せの手掛かりとなるパターンを含ませるSEP配置が困難な場合がある。その一方で,一部の重複領域にしかパターンを含まなくてもその組合せによっては全SEPが繋がる場合があることに着目した。
【0022】
そこで本発明は,二つのSEP間の重複領域に含まれるパターンを基に前記任意の隣接する(重複領域を共有する)二つのSEP間の繋ぎ合わせ可否または繋ぎ合せ易さを示す指標値(以後「隣接リンク情報」と呼ぶ)を算出し,前記隣接リンク情報を基に任意の二つのSEP間の繋ぎ合わせ可否または繋ぎ合せ易さを示す指標値(以後「任意リンク情報」と呼ぶ)を算出することを特徴とする。また,前記任意リンク情報を評価値としてSEP配置を決定することを特徴とする。任意リンク情報を評価値としてSEP配置を決定することにより,全ての重複領域にパターンを含まないが全SEPが繋がるSEP配置を決定できるケースが増える。これは全重複領域にパターンを含ませることが困難な粗なパターンに対して有効である。また,隣接リンク情報および任意リンク情報は,入力された回路パターンあるいはマスクパターンの設計情報を入力として計算機内で自動算出されることを特徴とし,自動算出された隣接リンク情報あるいは任意リンク情報を基にSEPを自動決定することを特徴とする。設計情報を用いることで,SEPを決定のためだけにマスクあるいはウェーハをSEM撮像する必要がなくなる(SEP決定のオフライン化)。
【0023】
また,前述のSEP配置の決定に加え,SEPの撮像倍率(視野)も同時に決定可能なことを特徴とする。SEPの撮像倍率は任意の値を指定したり(この場合,撮像倍率は固定),あるいは撮像倍率の設定範囲を指定することもできる(例えば,Pmin〜Pmax。この場合,撮像倍率はPmin〜Pmaxの範囲内で決定される)。
【0024】
(2)上記項目(1)のSEP決定において全てのユーザ要求を満たすSEP配置が原理的に存在しない場合がある。例えば,SEPを指定した撮像倍率にするためには,どうしても全SEPの繋ぎ合せが困難となり,逆に全SEPが繋ぎ合せ可能とするためには,どうしてもSEPの撮像倍率が指定した値よりも小さくせざるを得ない等である。
そこで本発明は,そのような場合であってもなるべくユーザの要求を満たすSEP配置を準最適解として決定するために,SEPの撮像位置あるいは撮像倍率の異なるSEP配置の候補(以後,SEP候補と呼ぶ)を複数算出することを特徴とする。更にこれらの候補から適切な準最適解を決定するための手段として,これらの候補をGUI上に表示すると共に,判断基準として,隣接リンク情報あるいは任意リンク情報を表示させることを特徴とする。SEP選択時にはSEP配置とSEP候補の選択の手掛かりとなる情報を併せてユーザに表示することで,ユーザは各SEP候補がユーザの要求項目を満たすか否かを容易に判別することができ,適切なSEP候補を選択することが可能となる。
【0025】
(3)前記任意リンク情報には,SEP全体をお互いに繋ぎ合せ可能なSEPの集合に分割した結果や,繋ぎ合せ易さが同程度のSEPの集合に分割した結果を含むことを特徴とする。このような情報を任意リンク情報に含ませることによって,同情報を上記項目(1)(2)で述べたように,SEPの自動決定における評価値とし,GUI表示することが可能となる。
【0026】
(4)前記任意リンク情報あるいは隣接リンク情報は,実際にSEP間を繋ぎ合せた場合に想定される位置ずれ量を含む,あるいは前記位置ずれ量を基に算出した値を含むことを特徴とする。また,前記位置ずれ量は設計情報を用いて推定した各SEPの擬似的なSEM画像を実際に繋ぎ合せた場合の位置ずれ量を基に算出することを特徴とする。
【0027】
(5)ユーザの指定するパターンを「(重複領域の)禁止領域」とし,前記禁止領域がSEP間の重複領域あるいはその近傍に含まれないようにSEP配置を決定することを特徴とする。前記ユーザの指定するパターンには,複雑なOPCパターン等,形状の最適化のため特に検証したいパターンが含まれることを特徴とする。このようなパターンを重複領域(SEP間の繋ぎ目)あるいはその近傍にしないことによって,SEP間の繋ぎ合せ誤差によるパノラマ画像における形状誤差や,画像周辺に発生する場合がある像歪みの影響を避けることができる。また,前記禁止領域の指定は前述のようにユーザが指定することも可能であるし,設計情報を基にパターンの形状の複雑さを評価した指標値やEDAツール等から出力されたデバイス不良の発生し易い危険箇所等を基に自動で指定することも可能である。
【0028】
前記禁止領域を,前記隣接リンク情報あるいは任意リンク情報と同様,SEP配置あるいは撮像倍率の決定の際の指標値として用いることを特徴とする。このことにより,禁止領域がなるべく重複領域に含まれないSEP配置あるいは撮像倍率の決定が実現する。また,前記禁止領域を,前記隣接リンク情報あるいは任意リンク情報と同様,SEP配置と併せてGUI上に表示することを特徴とする。このことにより,ユーザは着目するパターン(例えばOPCパターン)が禁止領域に含まれるか否かを容易に判別することができる。
【0029】
(6)決定したSEPの撮像画像を画像処理により繋ぎ合せるには,各SEP間の重複領域に含まれるパターンの重なり度合い(相関値)が高くなるように位置合せする必要がある。しかしながら,重複領域は複数存在するため,重複領域における相関値を全て最大にすることはできない(ある重複領域の相関値を最大にすると,他の重複領域における相関値が下がることがある)。そのため,SEPの撮像画像を画像処理により繋ぎ合せる際,前記隣接リンク情報あるいは任意リンク情報におけるSEP間の繋ぎ合せ易さ可否あるいは繋ぎ合せ易さの情報を基に,重複領域毎に相関値を考慮する度合いを重みとして設定することを特徴とする。
【0030】
傾向として大きな重みが設定された重複領域の相関値がなるべく高くなるように繋ぎ合せが行われる。例として,繋ぎ合せが困難な重複領域,例えば繋ぎ合せの手掛かりとなるパターンが全く含まれない重複領域における相関値は画像ノイズのみによって計算される。そのため,このような画像ノイズによって計算された相関値を高くするようなSEP繋ぎ合せは大きな位置ずれを発生させる危険性がある。前述の重複領域毎の重み設定により,このようなパターンが全く含まれない重複領域の重みは小さく設定され,SEP繋ぎ合せずれを低減することができる。
【0031】
(7)広範囲・高分解能なパターン輪郭線の抽出方法としては,以下の2通りあることを特徴とする。
・複数のSEPをSEM撮像したSEP画群を画像処理により繋ぎ合せた広範囲のパノラマ画像を得て,前記パノラマ画像から広範囲のパターン輪郭線を抽出する。
・複数のSEPをSEM撮像してSEP画像群を得,前記SEP画像群の画像毎にパターン輪郭線を抽出してパターン輪郭線群を得,前記パターン輪郭線群を繋ぎ合せて広範囲のパターン輪郭線を得る。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、パターンが粗であってもSEPが全て繋がるSEP配置やSEP撮像倍率を決定することができ、また,全SEPが繋がるSEP配置を決定できない場合においても,ユーザの要求項目をなるべく満たすSEPを容易に決定することができ、得られたSEPの撮像画像を繋ぎ合せることで広範囲・高分解能なパノラマ画像(あるいは広範囲・高分解能なパターン輪郭線)を取得できるので、従来の1枚の高倍率のSEM画像だけからでは取得できなかった複数枚の高倍率SEM画像撮像領域を繋ぎ合わせて作成した広い視野の高倍率画像からのパターン情報を得ることができるようになった。
【0033】
また、本発明によれば、マスクを観測して得られたパノラマ画像から光近接効果を加味したシミュレーションを行うのに必要なマスク上に生成されたパターンの比較的広い領域に亘る形状情報を得ることができ,前記パターン形状を入力としてウェーハ上に転写されるパターン形状の高精度なシミュレーション予測を実現することができる。また,前記マスク上に生成されたパターン形状とマスクの設計情報等との比較により,製造誤差の算出や,製造条件へのフィードバックを実現することができる。
【0034】
また,ウェーハを観測して得られたパノラマ画像からウェーハ上に生成されたパターン形状を得ることができ,生成パターンの設計情報等との比較により,マスク転写誤差の算出や,露光条件等の製造パラメータへのフィードバックを実現することができる。更に製造パラメータの変更で修正しきれない形状誤差に対してはマスクパターンの変更等を実施し,高い歩留まりを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】SEM装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図2A】半導体ウェーハ上への電子線のx及びy方向への走査を示す図である。
【図2B】半導体ウェーハ上から放出される電子の信号量を画像化する方法を示す図である。
【図3A】入力されたEPを4つのSEPに分割した状態を示す試料パターンの拡大図である。
【図3B】4つのSEPのうち互いに隣接するSEP間の繋ぎ合せ可否を評価した結果を示す図である。
【図3C】4つのSEPの互いに隣接するSEP間の繋ぎ合せ可否と重複領域間のパターンの線分長を基に繋ぎ合わせ易さとを評価した結果を示す図である。
【図4A】全てのSEP間の重複領域に繋ぎ合せの手掛かりとなるパターんが含まれて全SEPが繋がる例を示す図である。
【図4B】一部のSEP間の重複領域に繋ぎ合せの手掛かりとなるパターんが含まれていないが、全SEPが繋がる例および繋がらない例を示す図である。
【図4C】一部のSEP間の重複領域に繋ぎ合せの手掛かりとなるパターんが含まれておらず、全SEPが繋がらない例を示す図である。
【図5A】入力されたEP及び設計情報に基づいて9のSEPに分割した例を示す図である。
【図5B】SEP間の隣接リンク情報を算出した例を示す図である。
【図5C】x方向の隣接リンク情報を抜き出した例を示す図である。
【図5D】y方向の隣接リンク情報を抜き出した例を示す図である。
【図5E】503−1と503−9の各SEPが繋ぎ合せ可能であることを示す図である。
【図6A】入力されたEP及び設計情報に基づいて9のSEPに分割した例を示す図である。
【図6B】SEP間の隣接リンク情報に基づいて全SEPが二つの繋ぎ合せ可能なSEP集合に分離された状態を示す図である。
【図6C】分離された繋ぎ合せ可能な集合同士をなるべく繋ぐように各SEPの撮像位置を更新した結果を示す図である。
【図6D】各SEPの撮像位置を更新して一つのSEP集合にまとまった結果の各SEP間の隣接リンク情報を示す図である。
【図7A】入力されたEPと設計情報とを重ねて示す図である。
【図7B】SEP撮像倍率を設定可能範囲の上限に設定してEPを9つのSEPに分割した例示す図である。
【図7C】撮像倍率を設定可能範囲の上限に設定してEPを分割した9つのSEPについて隣接する各SEP間の隣接リンク情報を算出した結果を示す図である。
【図7D】SEP撮像倍率を設定可能範囲の下限に設定してEPを4つのSEPに分割した例を示す図である。
【図7E】撮像倍率を設定可能範囲の下限に設定してEP分割した4つのSEPについて隣接する各SEP間の隣接リンク情報を算出した結果を示す図である。
【図8】全SEPを繋ぎ合せ易さが同程度のSEP集合に分割した例を示す図である。
【図9A】入力されたEPの情報と設計情報とに基づいてEPを4つのSEPに分割した状態を示す図である。
【図9B】4つの各SEPに対応させて作成した擬似的なSEM画像である。
【図9C】4つの擬似的なSEM画像を繋ぎ合わせた結果を示す図である。
【図9D】繋ぎ合せた各擬似的なSEM画像間の位置ずれ量を求めた結果を示す図である。
【図10A】入力されたEPの情報と設計情報とユーザが指定した禁止領域とを示す図である。
【図10B】指定された禁止領域がSEP間の重複領域近傍に含まれないように入力されたEPの情報と設計情報とに基づいて9つのSEPを配置した例を示す図である。
【図10C】禁止領域を設計情報において線分の集合として指定する例を示す図である。
【図10D】設計情報において線分の集合として指定された禁止領域がSEP間の重複領域近傍に含まれないように入力されたEPの情報と設計情報とに基づいて5つのSEPを配置した例を示す図である。
【図11A】入力されたEPの情報及び設計情報を基にEPを5つのSEPで分割した例を示す図である。
【図11B】分割した5つのSEPの配置について隣接リンク情報を算出した結果を示す図である。
【図11C】算出した隣接リンク情報を基に重複領域ごとに相関値を考慮する度合いの重みを設定した結果を示す図である。
【図11D】分割した5つのSEPの配置について隣接する2つのSEP間の繋ぎ合せ易さを算出した結果を示す図である。
【図11E】算出した隣接する2つのSEP間の繋ぎ合せ易さを基に重複領域の重みを設定した結果を示す図である。
【図12A】複数のSEP画像を繋ぎ合せて作成した広範囲のパノラマ画像を示す図である。
【図12B】パノラマ画像から広範囲のパターン輪郭線を抽出した例を示す図である。
【図12C】複数のSEPを撮像して得たSEP画像群を示す図である。
【図12D】複数のSEP画像毎にそれぞれ輪郭線を抽出してパターン輪郭線群を得た状態を示す図である。
【図12E】各SEP画像から抽出したパターン輪郭線群を繋ぎ合せて広範囲のパターン輪郭線を生成した例を示す図である。
【図13A】EP領域情報や設計データを入力して試料を撮像して得た高倍率のSEM画像から高倍率のパノラマ画像を合成してパターン寸法を計測する間瀬の一連の処理全体のフローを示すフロー図である。
【図13B】SEP撮像の詳細なフローを示すフロー図である。
【図13C】SEP撮像の詳細なフローにおけるEP,AP,AF,AST,ABCCの各位置の例を示す試料パターンの平面図である。
【図14】ユーザ選択によるSEP決定を含む処理全体フローを示すフロー図である。
【図15A】入力されたEPの情報及び設計情報を基にEPを9つのSEPで分割した例を示す図である。
【図15B】9つのSEP配置における接続リンク情報を算出した結果に基づいて二つの繋ぎ合せ可能SEP集合に分割した例を示す図である。
【図15C】入力されたEPの情報及び設計情報を基にEPを4つのSEPで分割した例を示す図である。
【図15D】4つのSEP配置における接続リンク情報を算出した結果に基づいて全てのSEPが繋ぎ合せ可能な状態になっている例を示す図である。
【図15E】入力されたEPの情報及び設計情報を基にEPを重複する領域の含まれる禁止領域の面積が図15Cの場合よりも少なくなるように5つのSEPで分割した例を示す図である。
【図15F】5つのSEP配置における接続リンク情報を算出した結果に基づいて全てのSEPが繋ぎ合せ可能な状態になっている例を示す図である。
【図16】GUI画面の一例を示す図である。
【図17】GUI画面の一例を示す図である。
【図18】GUI画面の一例を示す図である。
【図19A】本発明による走査型電子顕微鏡装置を半導体デバイスの製造ラインに適用した場合のシステムの概略の構成を示すブロック図である。
【図19B】図19AのシステムにおいてEDAツールサーバ、データサーバ、SEM制御装置(A),SEM制御装置(B),撮像レシピ作成装置、画像処理装置、形状計測・評価ツールサーバ等を一台の装置にまとめたシステムの概略の構成を示すブロック図である。
【図20】半導体デバイスの設計・製造の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は,走査荷電粒子顕微鏡を用いて試料上の隣り合った領域を撮像して得られた複数枚の比較的高い倍率のSEM画像を高い繋ぎ合せ精度の広域画像、すなわちパノラマ画像を生成し、この生成した合成画像を用いて試料上のパターンの寸法や形状情報を得る装置およびその方法に関する発明である。以下,本発明に係る実施の形態を,走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)に適用した場合について説明する。
【0037】
1. SEM
図1に試料の二次電子像(Secondary Electron:SE像)あるいは反射電子像(Backscattered Electron:BSE像)を取得するSEMの構成概要のブロック図を示す。また,SE像とBSE像を総称してSEM画像と呼ぶ。また,ここで取得される画像は測定対象を垂直方向から電子ビームを照射して得られたトップダウン画像の一部または全てを含む。
電子光学系102は内部に電子銃103を備え,電子線104を発生する。電子銃103から発射された電子線はコンデンサレンズ105で細く絞られた後,ステージ121上におかれた試料である半導体ウェーハ101上の任意の位置において電子線が焦点を結んで照射されるように,偏向器106および対物レンズ108により電子線の照射位置と絞りとが制御される。電子線を照射された半導体ウェーハ101からは,2次電子と反射電子が放出され,ExB偏向器107によって照射電子線の軌道と分離された2次電子は2次電子検出器109により検出される。一方,反射電子は反射電子検出器110および111により検出される。反射電子検出器110と111とは互いに異なる方向に設置されている。2次電子検出器109および反射電子検出器110および111で検出された2次電子および反射電子はA/D変換機112,113,114でデジタル信号に変換され,処理・制御部115に入力されて,画像メモリ117に格納され,CPU116で目的に応じた画像処理が行われる。
【0038】
図2Aに半導体ウェーハ上に電子線を走査して照射した際,半導体ウェーハ上から放出される電子の信号量を画像化する方法を示す。電子線は,例えば図2Aに示すようにx,y方向に201〜203又は204〜206のように走査して照射される。電子線の偏向方向を変更することによって走査方向を変化させることが可能である。x方向に走査された電子線201〜203が照射された半導体ウェーハ上の場所をそれぞれG1〜G3で示す。同様にy方向に走査された電子線204〜206が照射された半導体ウェーハ上の場所をそれぞれG4〜G6で示す。前記G1〜G6において放出された電子の信号量は,それぞれ図2B内に示した画像209における画素H1〜H6の明度値になる(G,Hにおける添字1〜6は互いに対応する)。208は画像上のx,y方向を示す座標系である。このように視野内を電子線で走査することにより,画像フレーム209を得ることができる。また実際には同じ要領で前記視野内を電子線で何回か走査し,得られる画像フレームを加算平均することにより,高S/Nな画像を得ることができる。加算フレーム数は任意に設定可能である。
【0039】
図1中の処理・制御部115はCPU116と画像メモリ117を備えたコンピュータシステムであり,撮像レシピを基に撮像ポイントを撮像するため,ステージコントローラ119や偏向制御部120に対して制御信号を送る,あるいは半導体ウェーハ101上の任意の撮像ポイントにおける撮像画像に対し各種画像処理を行う等の処理・制御を行う。ここで撮像ポイントとはアドレッシングポイント(以降,APと呼ぶ),オートフォーカスポイント(以降,AFと呼ぶ),オートスティグマポイント(以降,ASTと呼ぶ),オートブライトネス・コントラストポイント(以降,ABCCと呼ぶ),評価ポイント(以降,EPと呼ぶ)の一部または全てを含む。また,処理・制御部115は処理端末118(ディスプレイ,キーボード,マウス等の入出力手段を備える)と接続されており,ユーザに対して画像等を表示する,あるいはユーザからの入力を受け付けるGUI(Graphic User Interface)を備える。121はXYステージであり,半導体ウェーハ101を移動させ,前記半導体ウェーハの任意の位置の画像撮像を可能にしている。XYステージ121により撮像位置を変更することをステージシフト,例えば偏向器106により電子線を偏向することにより観察位置を変更することをイメージシフトと呼ぶ。一般にステージシフトは可動範囲は広いが撮像位置の位置決め精度が低く,逆にイメージシフトは可動範囲は狭いが撮像位置の位置決め精度が高いという性質がある。
【0040】
図1では反射電子像の検出器を2つ備えた実施例を示したが,前記反射電子像の検出器をなくすことも,数を減らすことも,数を増やすことも可能である。
撮像レシピ作成装置122においては,後述する方法によりSEPの決定およびSEPを撮像するための撮像レシピを生成し,前記レシピに基づきSEM装置を制御することにより画像撮像を行う。前記撮像レシピには,SEPのサイズ・座標,撮像条件,ならびにSEPを撮像するための撮像シーケンス(撮像ポイントの座標や撮像順。広く,前記撮像ポイントのサイズ,撮像条件や調整方法も含む),ならびにAP、AF,AST,ABCC等の登録テンプレートの情報が書き込まれている。
【0041】
また,画像処理装置123においては,撮像された複数のSEP画像を用いたパノラマ画像合成処理や前記パノラマ画像からの回路パターンの輪郭線抽出処理等を行う。形状計測・評価ツールサーバ124では,前記パノラマ画像や輪郭線を用いた形状計測や形状評価等を行う。撮像レシピ作成装置122,画像処理装置123,形状計測・評価ツールサーバ124は処理端末125(ディスプレイ,キーボード,マウス等の入出力手段を備える)と接続されており,ユーザに対して処理結果等を表示する,あるいはユーザからの入力を受け付けるGUI(Graphic User Interface)を備える。また,126は半導体回路パターンの設計レイアウト情報(以降,設計情報)等のデータベースを格納したストレージであり,前記データベースには撮像したSEP画像,生成したパノラマ画像,輪郭線,形状計測・評価結果,撮像レシピ等の情報を保存・共有することが可能である。115,122,123,124で行われる処理は,任意の組合せで複数台の装置に分割,あるいは統合して処理させることが可能である。
【0042】
2.パノラマ画像合成処理
画像処理装置123で行う広域画像であるパノラマ画像合成処理は,入力した広域の撮像領域(EP)をSEMの比較的高い撮像倍率で撮像可能な局所撮像領域(SEP)に分割し,前記SEPをSEMの比較的高い倍率で撮像し,これらの高倍率SEP画像群を画像処理により繋ぎ合せることで一枚の広範囲かつ高倍率(高分解能)なSEM画像(パノラマ画像)を生成する処理である。
【0043】
高精度なパノラマ画像を取得するためには,全てのSEM画像が繋ぎ合せ可能となるSEPの撮像位置(SEP配置)およびSEPの撮像倍率を決定する必要がある。本発明は全SEPが繋ぎ合せ可能となるSEPの決定およびSEP画像の繋ぎ合せに関する。以下,本発明に関わるSEP決定に関する実施例について述べる。
【0044】
パノラマ画像合成処理においては,入力した広域の撮像領域(EP)を適切なSEMの撮像倍率で撮像可能な局所撮像領域(SEP)に分割する。SEPはEPを埋め尽くすように決定する必要がある。ここで適切な撮像倍率とは,ユーザが要求するパターン形状精度を満たす画像分解能が得られる倍率を指す。前記で決定したSEPをSEMで撮像し,これらのSEP画像群を画像処理により繋ぎ合せて広域のパノラマ画像を生成することができる。
【0045】
高精度のパノラマ画像を生成するためには,全SEPが繋がるSEP配置を決定する必要がある。次にSEP間の繋ぎ合せの可否・繋ぎ合せ易さの評価法について述べる。
【0046】
2.1 隣接リンク情報
隣接する二つのSEP間の繋ぎ合せ可否あるいは繋ぎ合せ易さは前記二つのSEP間の重複領域に繋ぎ合せ可能あるいは繋ぎ合せ易いパターンが含まれるか否かによって判定できる。二つのSEP間の重複領域に含まれるパターンを基に前記任意の隣接する(重複領域を共有する)二つのSEP間の繋ぎ合わせ可否または繋ぎ合せ易さを示す指標値を以後「隣接リンク情報」と呼ぶ。具体的に前記隣接リンク情報は入力された回路パターンあるいはマスクパターンの設計情報を基に算出することができる。
【0047】
隣接リンク情報の算出例を図3A乃至図3Cで説明する。図3Aの301は入力した設計パターンで,入力したEP(302)を4つのSEP(303−1〜303−4)で分割した結果を示す。もし,SEP間の重複領域にx方向に変化するパターンを十分含めばx方向のずれを検知できるため,x方向に位置合せが可能となる(例えば,303−2と303−4のSEP)。同様に,前記重複領域内にy方向に変化するパターンを十分含めばy方向に位置合せが可能となる(例えば,303−1と303−2のSEP)。したがって,重複領域内にx,y方向に変化するパターンを十分含めば,二つの隣接するSEPは繋ぎ合せが可能となる(例えば,303−3と303−4のSEP)。
【0048】
図3Bに図3AのSEP配置に対して,隣接するSEP間の繋ぎ合せ可否を評価した結果を示す。同図ではx方向のみに位置合せ可能なSEP間を黒線で結びxを丸で囲んだ記号で表記し(304−2,304−3),y方向のみに位置合せ可能なSEP間を黒線で結びyを丸で囲んだ記号で表記し(304−1),xy両方向に位置合せ可能なSEP間を黒線で結びxyを丸で囲んだ記号で表記し(304−4),重複領域にパターンを含まないSEP間は何も表記をしていない。更に,繋ぎ合せ易さとして重複領域内に含まれるx,y方向別のパターンの線分長を指標値とすることもできるし,その線分長を基に指標値を算出することもできる。
【0049】
図3Cに重複領域間のパターンの線分長を基に繋ぎ合せ易さを算出した結果を示す(305−1〜305−4)。同図においては,x方向の繋ぎ合せ易さをx:数値,y方向の繋ぎ合せ易さをy:数値として表記し,この数値が高いほど繋ぎ合せが容易であることを示している。
【0050】
次に,SEP全体の繋ぎ合せ可否・繋ぎ合せ易さの評価法について述べる。まず,SEP全体が繋ぎ合せ可能となる条件について図4を用いて説明する。同4A乃至図4Cは入力されたEP(401,402,403)および設計情報(404,405,406)に対してそれぞれSEP(407−1〜407−9,408−1〜408−9,409−1〜409−9)で分割した例を示す。
【0051】
図4Aは全てのSEP間の重複領域に繋ぎ合せの手掛かりとなるパターンが含むSEP配置である。この場合,全てのSEPが繋ぎ合せ可能である。しかし,半導体パターンは密に存在しないため,全ての重複領域に繋ぎ合せの手掛かりとなるパターンを含ませるSEP配置が困難な場合がある。その一方で,一部の重複領域にしかパターンを含まなくてもその組合せによっては全SEPが繋がる場合があることに着目した。
【0052】
例えば,図4BのSEP配置は全ての重複領域にパターンが含まれていないが,SEPの繋ぎ合せを408−1,408−2,408−3,408−6,408−5,408−4,408−7,408−8,408−9の順に行うと全てのSEPが繋ぎ合せ可能である。その一方で,図4Cのように全ての重複領域にパターンが含まれていないため,全SEPが繋ぎ合せができない場合も当然ある。
【0053】
すなわち,図4(c)においては409−1,409−2,409−3のSEPは互いに繋ぎ合せが可能であるが,それ以外のSEP(409−4〜409−9)とは繋ぎ合せができない。このように,全ての重複領域にパターンを含まない場合においては,全SEPが繋がる場合と繋がらない場合が存在するため,この両者を正確に判別するために,全SEPの繋ぎ合せ可否判定が必要となる。全SEPが繋がるためには,任意の二つのSEP間が繋ぎ合せ可能であればよい。
【0054】
2.2 隣接リンク情報
そこで本発明は,前記隣接リンク情報を基に任意の二つのSEP間の繋ぎ合わせ可否または繋ぎ合せ易さを示す指標値(以後「任意リンク情報」と呼ぶ)を算出することを特徴とする。具体的に,図5A乃至図5Eに隣接リンク情報を用いて任意リンク情報を算出した例を示す。
【0055】
図5Aは入力されたEP(501)および設計情報(502)に対して9つのSEP(503−1〜503−9)で分割した結果である。図5Bは図5AのSEP配置に対する隣接リンク情報を示す。同図の黒丸は図5AのSEPの中心位置に対応しており,隣接するSEP間でx方向に位置合せ可能ならばその間を実線で結びxを丸で囲んだ記号で表記し(504−1,504−2),同様にy方向に位置合せ可能ならばyを丸で囲んだ記号で表記し(504−3,504−4),xy方向に位置合せ可能ならばxyを丸で囲んだ記号で表記している(504−5〜504−10)。
【0056】
図5Bに示す隣接リンク情報を基に任意の2つのSEP間のx,y方向別の繋ぎ合せ可否を判定できる。例えばSEP503−1とSEP503−9の繋ぎ合せ可否判定について図5C及び図5Dを用いて説明する。図5C及び図5Dは,図5BからSEP503−1とSEP503−9の間に存在する隣接リンク情報をそれぞれx,y方向別に抜き出したものである。図5Cでは505−1〜505−6のリンクを経由して503−1と503−9のSEPがx方向に位置合せ可能となり,図5Dでは506−1〜506−5のリンクを経由して503−1と503−9がy方向に位置合せ可能となることから,503−1と503−9のSEPが繋ぎ合せ可能であることが分かる。同様の判定を二つのSEP間の全ての組合せについて行い,全てxy方向に位置合せ可能ならば全SEPが繋ぎ合せ可能であることが分かる。
【0057】
また本発明は,前記任意リンク情報を評価値としてSEP配置を決定することを特徴とする。任意リンク情報を評価値としてSEP配置を決定することにより,全ての重複領域にパターンを含まないが全SEPが繋がるSEP配置を決定できるケースが増える。これは全重複領域にパターンを含ませることが困難な粗なパターンに対して有効である。
【0058】
図6A乃至図6Dは全てのSEP間の重複領域にパターンを含ませることが困難な例であるが,前述の任意リンク情報を用いることにより全てのSEPが繋がるSEP配置を決定することができる。図6Aに示すように入力されたEP(601)および設計情報(602)に対して603−1〜603−9のSEPで分割し,その隣接リンク情報を図6Bに示すように604−1〜604−8で示している。また,xy両方向に繋ぎ合せ可能なSEP集合を太黒枠で囲んでいる(605および606)。図6Bにおいては,全SEPが二つの繋ぎ合せ可能なSEP集合に分離され,全SEPの繋ぎ合せができない。そこで,この分離された繋ぎ合せ可能集合同士をなるべく繋ぐように各SEPの撮像位置を更新した結果を図6C及び図6Dに示す。図6Cの607−1〜607−9は更新されたSEP配置で,図6Dの608−1〜608−8はその隣接リンク情報である。この場合,分離していた605と606のSEP集合が608−3のリンクにより繋がることが判る。このように,任意リンク情報を指標値としてSEPを決定することで,全ての重複領域にパターンが含まれなくても全てのSEPが繋がるSEP配置が決定できる。また,隣接リンク情報および任意リンク情報は,入力された回路パターンあるいはマスクパターンの設計情報を入力として計算機内で自動算出されることを特徴とし,自動算出された隣接リンク情報あるいは任意リンク情報を基にSEPを自動決定することを特徴とする。設計情報を用いることで,SEPを決定のためだけにマスクあるいはウェーハをSEM撮像する必要がなくなる(SEP決定のオフライン化)。
【0059】
2.3 SEP撮像倍率の決定
前述のSEP配置の決定に加え,SEPの撮像倍率(視野)も同時に決定可能なことを特徴とする。SEPの撮像倍率は任意の値を指定したり(この場合,撮像倍率は固定),あるいは撮像倍率の設定範囲を指定することもできる(例えば,Pmin〜Pmax。この場合,撮像倍率はPmin〜Pmaxの範囲内で決定される)。SEPの撮像倍率を決定する方法として例えば,入力したSEPの撮像倍率の設定可能範囲で,全SEPが繋がるSEP配置が可能なSEP撮像倍率のうち,最大の撮像倍率をSEPの撮像倍率として自動で設定することもできる。
【0060】
本例を図7A乃至図7Eを用いて説明する。入力したEP(701)および設計情報(702)を図7Aに示す。同図の703,704はSEP撮像倍率の設定可能範囲の下限Pminおよび上限Pmaxに相当する撮像倍率のSEPである。図7Bは,SEP撮像倍率を設定可能範囲の上限Pmaxに設定して,前記EPを9つのSEP(705−1〜705−9)に分割した結果である。図7Cの706−1〜706−6は同SEP配置(705−1〜705−9)の隣接リンク情報で,707〜709は全SEPを繋ぎ合せ可能なSEP集合に分割した結果である。SEP撮像倍率Pmaxでは全てのSEPを繋ぎ合せることができなかった。
【0061】
一方,図7DはSEP撮像倍率を設定可能範囲の下限Pminに設定して,前記EPを4つのSEP(710−1〜710−4)に分割した結果である。図7Eの711−1〜711−4は隣接リンク情報で,712は繋ぎ合せ可能なSEP集合を示す。SEP撮像倍率Pminでは全てのSEPを繋ぎ合せることができた。そのため,本例においては撮像倍率をPminと自動決定することで,全てのSEPを繋ぎ合せ可能なSEP配置を決定することができる。ここでは説明のため,二種類の撮像倍率Pmin ,Pmaxを比較して撮像倍率を決定したが,実際にはPmin ,Pmax間の任意の撮像倍率で繋ぎ合せ可否,あるいは繋ぎ合せ易さを評価し,任意の撮像倍率を設定することができる。
【0062】
2.4 隣接リンク情報・任意リンク情報のバリエーション
前記任意リンク情報には,図7の説明で述べたようなSEP全体をお互いに繋ぎ合せ可能なSEPの集合(繋ぎ合せ可能SEP集合)に分割した結果(図7の707,708,709に相当)や,繋ぎ合せ易さが同程度のSEPの集合(繋ぎ合せ容易SEP集合)に分割した結果を含むことを特徴とする。図8に全SEPを繋ぎ合せ容易SEP集合に分割した例を示す。同図の801−1〜801−9はSEP配置を示し,802−1〜802−10は隣接リンク情報(隣接SEP間の繋ぎ合せ易さ)を示す。803〜807は分割された繋ぎ合せ容易集合を示す。繋ぎ合せ容易SEP集合とは繋ぎ合せ易さが同程度のSEPを集合としてまとめたものであり,803〜807の枠は太いもの程,繋ぎ合せが容易であることを示す。繋ぎ合せ容易SEP集合804,807は繋ぎ合せ易さの指標値が0.2以下(小さい程繋ぎ合せ難い)の集合,繋ぎ合せ容易SEP集合803は繋ぎ合せ易さの指標値が0.2より大きく0.5以下の集合であり,繋ぎ合せ容易SEP集合805,806は繋ぎ合せ易さの指標値が0.5より大きく0.8以下の集合である。繋ぎ合せ容易SEP集合の情報を任意リンク情報に含ませることによって,同情報をSEPの自動決定における評価値とすることができる。繋ぎ合せ容易SEP集合の情報はGUI表示することができる。GUI表示の実施例については後述する。
【0063】
また,前記任意リンク情報あるいは隣接リンク情報は,実際にSEP間を繋ぎ合せた場合に想定される位置ずれ量を含む,あるいは前記位置ずれ量を基に算出した値を含むことを特徴とする。また,前記位置ずれ量は設計情報を用いて推定した各SEPの擬似的なSEM画像を実際に繋ぎ合せた場合の位置ずれ量を基に算出することを特徴とする。ここで擬似的なSEM画像とは,実際に得られるSEM画像を模擬して,設計情報に対して実際に発生しうるパターンの変形やSEM撮像のずれや画像ノイズを加えて生成した画像のことである。この擬似的なSEM画像を全SEPについて作成し,擬似的なSEM画像群を実際に繋ぎ合せることによって,実際にSEM画像の撮像・繋ぎ合せを行わなくても,実際に発生しうる繋ぎ合せ誤差を推定することができる。
【0064】
本方法により位置ずれ量を算出した例を図9A乃至図9Dで説明する。図9Aは入力した設計情報(901)およびEP(902)に対して,4つのSEP(903−1〜903−4)で分割した結果である。同SEP配置に対して,各SEPにおける擬似的なSEM画像を作成し(図9Bの904−1〜904−4),これらの画像群を繋ぎ合せた結果を図9Cの905に示す。擬似的なSEM画像904−1〜904−4の位置は設計情報の切り出し位置から明らかなので,繋ぎ合せた画像905における各SEPの位置ずれ量も求めることができる。図9Dに,推定した位置ずれ量を示す。同図の906−1〜906−4は,SEP間のx,y方向別に推定した相対的な位置ずれ量を示している。また,SEP間の相対的な位置ずれ量ではなく,ある基準に対する各SEPの絶対的な位置ずれ量を算出することもできる。同図の907−1〜907−4は各SEPの絶対的な位置ずれ量をベクトル表示したものであり,908−1〜908−4は前記ベクトルの大きさを示す。
【0065】
2.5 禁止領域
ユーザの指定するパターンを「(重複領域の)禁止領域」とし,前記禁止領域がSEP間の重複領域あるいはその近傍に含まれないようにSEP配置を決定することを特徴とする。前記ユーザの指定するパターンには,複雑なOPCパターン等,形状の最適化のため特に検証したいパターンが含まれることを特徴とする。このようなパターンを重複領域(SEP間の繋ぎ目)あるいはその近傍にしないことによって,SEP間の繋ぎ合せ誤差によるパノラマ画像における形状誤差や,画像周辺に発生する場合がある像歪みの影響を避けることができる。また,前記禁止領域の指定は前述のようにユーザが指定することも可能であるし,設計情報を基にパターンの形状の複雑さを評価した指標値やEDAツール等から出力されたデバイス不良の発生し易い危険箇所等を基に自動で指定することも可能である。具体的に,禁止領域の指定および禁止領域を加味してSEPを決定した例を図10A乃至図10Dで説明する。図10Aは入力した設計情報(1001)およびEP(1002)およびユーザが禁止領域を矩形領域(斜線でハッチング)で指定した領域(1003)を示している。図10Bは図10Aで指定した禁止領域がSEP間の重複領域近傍に含まれないようにSEP配置(1004−1〜1004―9)を決定した結果である。
【0066】
禁止領域の指定方法にはバリエーションが考えられる。すなわち,図10Aのように矩形領域で指定することもできるし,図10C1007−1,1007−2に示すように設計情報において線分の集合として指定することもできる。図10Dは図10Cで指定した禁止領域がSEP間の重複領域近傍に含まれないようにSEP配置(1008−1〜1008―5)を決定した結果である。また,これらの禁止領域の指定はユーザが行ってもよいし,EP(1006)内の設計情報(1005)から,パターン形状の複雑さ等を評価する指標値(単位面積辺りのパターンのx,y方向に変化する頻度等)を算出し,前記指標値を基に禁止領域を自動設定することもできる。
【0067】
前記禁止領域を,前記隣接リンク情報あるいは任意リンク情報と同様,SEP配置あるいは撮像倍率の決定の際の指標値として用いることを特徴とする。このことにより,禁止領域がなるべく重複領域に含まれないSEP配置あるいは撮像倍率の決定が実現する。また,前記禁止領域を,前記隣接リンク情報あるいは任意リンク情報と同様,SEP配置と併せてGUI上に表示することを特徴とする。このことにより,ユーザは着目するパターン(例えばOPCパターン)が禁止領域に含まれるか否かを容易に判別することができる。GUI表示の実施例については後述する。
【0068】
2.6 SEP画像の繋ぎ合せ
決定したSEPの撮像画像を画像処理により繋ぎ合せるには,各SEP間の重複領域に含まれるパターンの重なり度合い(相関値)が高くなるように位置合せする必要がある。しかしながら,重複領域は複数存在するため,重複領域における相関値を全て最大にすることはできない(ある重複領域の相関値を最大にすると,他の重複領域における相関値が下がることがある)。そのため,SEPの撮像画像を画像処理により繋ぎ合せる際,前記隣接リンク情報あるいは任意リンク情報におけるSEP間の繋ぎ合せ易さ可否あるいは繋ぎ合せ易さの情報を基に,重複領域毎に相関値を考慮する度合いを重みとして設定することを特徴とする。傾向として大きな重みが設定された重複領域の相関値がなるべく高くなるように繋ぎ合せが行われる。
【0069】
例として,繋ぎ合せが困難な重複領域,例えば繋ぎ合せの手掛かりとなるパターンが全く含まれない重複領域における相関値は画像ノイズのみによって計算される。そのため,このような画像ノイズによって計算された相関値を高くするようなSEP繋ぎ合せは大きな位置ずれを発生させる危険性がある。
【0070】
具体例を図11A乃至図11Eで説明する。図11Aは入力された設計情報(1101)およびEP(1102)に対して,5つのSEP(1103−1〜1103―5)で分割した結果を示す。図11Bは図11AのSEP配置に対して,隣接リンク情報(隣接する2つのSEP間の繋ぎ合せ可否)を算出した結果である(1104−1〜1104―6)。図11Cは図11Bで算出した隣接リンク情報を基に,重複領域毎に相関値を考慮する度合いの重み(1105−1〜1105−7)を設定した結果を示す。本例ではxy両方向に繋ぎ合せ可能なSEP間の重みを1とし,x,yどちらか一方のみ繋ぎ合せ可能なSEP間の重みを0.5とし,重複領域にパターンが含まれないSEP間の重みを0としている。すなわち,各SEPはxy両方向に繋がるSEPとの位置合せを優先し,重複領域にパターンが含まれないSEPとの位置合せは優先度を下げる。また,図11Dは図11AのSEP配置に対して隣接する2つのSEP間の繋ぎ合せ易さを算出した結果(1106−1〜1106−6)を示す。図11Eは図11DのSEP間の繋ぎ合せ易さを基に前記の重複領域の重み(1107−1〜1107−6)を設定した結果を示す。
【0071】
2.7 パターン輪郭線の生成
前述のように決定したSEPを撮像したSEM画像群を繋ぎ合せることにより広範囲・高分解能のパノラマSEM画像が取得できる。
また,広範囲・高分解能なパターン輪郭線の抽出方法としては,図12A乃至図12Eに示すように以下の2通りあることを特徴とする。
・図12Aに示すように、複数のSEPをSEM撮像したSEP画群を画像処理により繋ぎ合せた広範囲のパノラマ画像を得て(1201),図12Bに示した前記パノラマ画像から広範囲のパターン輪郭線を抽出する(1202)。
・複数のSEPをSEM撮像して図12Cに示すSEP画像群を得(1203−1〜1203−4),前記SEP画像群の画像毎にパターン輪郭線を抽出して図12Dのパターン輪郭線群を得(1204−1〜1204−4),前記パターン輪郭線群を繋ぎ合せて図12Eの広範囲のパターン輪郭線を得る(1205)。
【0072】
2.8 全体フロー
以上をまとめてパノラマ画像合成処理及び合成したパノラマ画像を用いたパターンの寸法計測の全体フローを図13Aを用いて説明する。まず,EPの領域と半導体回路あるいはマスクパターンの設計情報を入力する(それぞれステップ1301,1302)。EPは取得したいパノラマ画像の撮像範囲であり,EPの座標は,例えばEDA(Electronic Design Automation)ツールで実行される露光シミュレーション等の結果を基に検出されたデバイス不良が発生しやすいホットスポット(危険ポイント)の座標が入力されたり,あるいはユーザが自身の判断により(必要に応じて前記EDAツールの情報も参考にしながら)入力される場合もある。
【0073】
また,必要に応じてユーザの指定するパターンを含む領域を禁止領域として入力することができる(ステップ1303)。この禁止領域の入力方法としてはユーザが座標や範囲を直接入力してもよいし,GUI上で設計情報を見ながら領域を指定して与えても良い。また,必要に応じて処理パラメータを入力することができる(ステップ1304)。
【0074】
前記処理パラメータとして,ステージ/イメージシフト予想誤差,繋ぎ合せに最低限必要な重複領域内のパターン線分長,設計パターンのコーナーカット長(実パターンはコーナー部が丸まる等の設計情報と形状乖離が発生するためコーナーから一定範囲内の設計パターンデータをカットするためのパラメータ)等を指定することができる。また,必要に応じてSEPの撮像倍率あるいはSEPの撮像倍率の設定可能な範囲を入力することができる。また,必要に応じてSEP間の重複領域幅あるいはSEP間の重複領域幅の設定可能な範囲を入力することができる。禁止領域算出ステップ(1307)では,ステップ1303で入力した禁止領域に加えて,ユーザの指定するパターンを禁止領域として自動で抽出する。前記禁止領域は,設計情報を基にパターンの形状の複雑さを評価した指標値やEDAツール等から出力されたデバイス不良の発生し易い危険箇所等を基に自動で指定することも可能である。
【0075】
SEP配置あるいはSEP撮像倍率は,前記禁止領域あるいは分割指標値算出ステップ(ステップ1308)で算出されるSEP間の繋ぎ合せ可否・繋ぎ合せ易さを評価した分割指標値を基に,SEP決定ステップ(ステップ1309)で決定される。SEPの撮像倍率はステップ1305で入力することができる。ここで,SEPの撮像においてはイメージシフトあるいはステージシフトによる視野ずれが発生するため,SEPの決定時には重複領域に繋ぎ合せの手掛かりとなるパターンが含まれると評価していても,実際には前記視野ずれにより含まれるはずのパターンが重複領域外となる危険がある。
【0076】
そこで,発生しうるイメージシフトおよびステージシフトそれぞれの予想される最大視野ずれ量を入力し(ステップ1304),これらの最大の視野ずれが発生しても繋ぎ合せが可能となるような範囲内でSEPを決定することで視野ずれにロバストなSEPを決定することができる。ここで,各SEPの視野移動がイメージシフト,あるいはステージシフトのどちらの方式で行われるかは,SEPの撮像シーケンスに依存する。そこで,SEP決定ステップにおいては,このような視野移動方式の違いによる視野ずれの違いを加味して,SEP配置,SEP撮像倍率,ならびに各SEPの視野移動方式を決定することを特徴とする。
【0077】
次に,ステップ1309で決定したSEP配置,SEP撮像倍率,SEPへの視野移動方式を撮像レシピとして保存する(ステップ1310)。
【0078】
次に,SEMを用いてステップ1310において作成した撮像レシピに基づき順次,複数のSEPの撮像を行う(ステップ1311)。
【0079】
次に,ステップ1312では,前記複数のSEPにおいてそれぞれ撮像したSEP画像群を画像処理により繋ぎ合わせてパノラマ画像を生成する。また,前記パノラマ画像から広範囲のパターン輪郭線を抽出することもできる。また,前記広範囲のパターン輪郭線は,複数のSEPをSEM撮像してSEP画像群を得,前記SEP画像群の画像毎にパターン輪郭線を抽出してパターン輪郭線群を得,前記パターン輪郭線群を繋ぎ合せることで得ることもできる。
【0080】
ステップ1313において、合成したパノラマSEM画像を処理して例えば図12Eに示したようなパターン間のギャップLg、パタンの幅寸法Lw、パターンの長さLlなどのパターンの寸法やパターンの丸みLrなどの形状情報を計測する。
【0081】
次に、ステップ1311における複数のSEP撮像の詳細な手順を、図1に示したSEMシステムを参照しながら図13Bに基づいて詳細に説明する。
まず図13Bのステップ1311-1において試料である半導体ウェーハまたはマスク(以降、これらを合わせて試料と記載する)をSEM装置のステージ121上に取り付ける。ステップ1311-2において光学顕微鏡等(図1のSEMシステムにおいては記載を省略)でウェーハ上のグローバルアライメントマークを観察することにより,ウェーハの原点ずれやウェーハの回転を補正する。
【0082】
ステップ1311-3において,処理・制御部115でステージコントローラ119を制御してステージ117を移動させ,SEMによる撮像位置がアドレッシングポイント(以降,APと呼ぶ)になるように試料の位置を調整して撮像し,アドレッシングのパラメータを求め,該求められたパラメータに基づいてアドレッシングを行う。
ここでAPについて説明する。SEPを観察する場合,直接SEPを観察しようとすると,ステージの位置決め誤差により,撮像ポイントが大きくずれてSEMの視野から外れてしまう可能性がある。そこで,一旦位置決め用として予め座標値とテンプレート(撮像ポイントのパターン)とが与えられたAPを観察する。この撮像ポイントのテンプレートは撮像レシピに登録しておく。以降,これをAP登録テンプレートと呼ぶ。APはSEPの近傍(最大でもビームシフトにより移動可能な範囲)から選択する。また,APはSEPに対して一般に低倍視野であるため,多少の撮像位置のずれに対しても,撮像したいパターンが完全のSEMの視野から外れてしまう可能性は低い。そこで,予め登録されたAP登録テンプレートと,実際に撮像されたAPのSEM像(実撮像テンプレート)とをマッチングすることにより,APにおける撮像ポイントの位置ずれ量を推定することができる。AP,SEPの座標値は既知なので,AP−SEP間の相対変位量を求めることができ,かつAPにおける撮像ポイントの位置ずれ量も前述のマッチングにより推定できるため,前記相対変位量から前記位置ずれ量を差し引くことにより,実際に移動すべきAP撮像位置からSEPまでの相対変位量が分かる。前記相対変位量分だけ,位置決め精度の高いビームシフトによって移動(ステージ121は停止したまま)することにより,高い座標精度でSEPを撮像することが可能となる。
【0083】
そのため,登録されるAPは,(1)SEPからビームシフトにより移動可能な距離に存在するパターンであり(かつSEPにおけるコンタミネーションの発生を抑えるためAP撮像時の範囲(Field of view:FOV)にSEP撮像時のFOVを含まないことを条件とする場合もある),(2)APの撮像倍率はステージの位置決め精度を加味してSEPの撮像倍率よりも低く,(3)パターン形状あるいは明度パターンが特徴的であり,AP登録テンプレートと実撮像テンプレートとのマッチングがし易い、等の条件を満たしていることが望ましい。どの場所をAPとして選択するかに関しては,この条件をシステム内部で評価することで,良好なAPの選択および撮像シーケンスの決定を行うことができる。
【0084】
予め登録するAP登録テンプレートはCAD画像,あるいはSEM画像,あるいは一旦CADデータテンプレートで登録しておいたものを実際の撮像時に得たAPのSEM画像をSEM画像テンプレートとして再登録する等のバリエーションが考えられる。
【0085】
前述のAP選択範囲について補足する。一般的に電子ビーム垂直入射座標は複数のSEPの中心座標に設定されるので,APの選択範囲は最大でもSEPを中心としたビームシフト可動範囲としたが,電子ビーム垂直入射座標が複数のSEPの中心座標と異なる場合は,前記電子ビーム垂直入射座標からのビームシフト可動範囲が選択範囲となる。また撮像ポイントに要求される許容電子ビーム入射角によっては,電子ビーム垂直入射座標からの探索範囲もビームシフト可動範囲より小さくなることがある。これらは他のテンプレートについても同様である。以降の説明において,SEPの撮像の場合は特に断りのない限り電子ビーム垂直入射座標とSEPの中心座標は同じとして説明するが,前述の通り本発明はこれに限られるものではない。
【0086】
次にステップ1311-4において,処理・制御部115の制御及び処理に基づいて,ビームシフトにより撮像位置をオートフォーカスポイント(以降,AFと呼ぶ)に移動して撮像し,オートフォーカス調整のパラメータを求め,該求められたパラメータに基づいてオートフォーカス調整を行う。
【0087】
ここでAFについて説明する。撮像時には鮮明な画像を取得するためオートフォーカスを行うが,試料に電子線を長く照射すると汚染物質が試料に付着してしまう(コンタミネーション)。そこで,SEPにおけるコンタミネーションの付着を抑えるため,一旦SEP周辺の座標をAFとして観察し,オートフォーカスのパラメータを求めてから前記パラメータを基にEPを観察するという手段がとられる。
【0088】
そのため,登録されるAFは,(1)AP,SEPからビームシフトにより移動可能な距離に存在するパターンであり,かつAF撮像時のFOVにEP撮像時のFOVは含まれない,(2)AFの撮像倍率はSEPの撮像倍率と同程度である(ただし,これはSEP用のAFの場合。AP用のAFの場合は前記APの撮像倍率と同程度の撮像倍率でAFを撮像する。後述するAST,ABCCに関しても同様),(3)オートフォーカスをかけ易いパターン形状をもつ(フォーカスずれに起因する像のぼけを検出し易い)等の条件を満たしていることが望ましい。本発明によれば,AF選択についても,APと同様,前述の条件をシステム内部で評価し,自動で良好なAFの選択を行うことが可能となる。
【0089】
次にステップ1311-5において,処理・制御部115の制御及び処理に基づいて,ビームシフトにより撮像位置をオートスティグマポイント(以降,ASTと呼ぶ)に移動して撮像し,オートスティグマ調整のパラメータを求め,該求められたパラメータに基づいてオートスティグマ調整を行う。
【0090】
ここでASTについて説明する。撮像時には歪みのない画像を取得するため非点収差補正を行うが,AFと同様,試料に電子線を長く照射すると汚染物質が試料に付着してしまう。そこで,SEPにおけるコンタミネーションの付着を抑えるため,一旦SEP近くの座標をASTとして観察し,非点収差補正のパラメータを求めてから前記パラメータを基にSEPを観察するという手段がとられる。
【0091】
そのため,登録されるASTは,(1)AP,SEPからビームシフトにより移動可能な距離に存在するパターンであり,かつAST撮像時のFOVにEP撮像時のFOVは含まれない,(2)ASTの撮像倍率はSEPの撮像倍率と同程度である,(3)非点収差補正をかけ易いパターン形状をもつ(非点収差に起因する像のぼけを検出し易い)等の条件を満たしていることが望ましい。
【0092】
本実施例によれば,AST選択についても,APと同様,前述の条件をシステム内部で評価し,自動で良好なASTの選択を行うことが可能となる。
【0093】
次にステップ1311-6において,処理・制御部115の制御及び処理に基づいて,ビームシフトにより撮像位置をオートブライトネス&コントラストポイント(以降,ABCCと呼ぶ)に移動して撮像し,ブライトネス・コントラスト調整のパラメータを求め,該求められたパラメータに基づいてオートブライトネス・コントラスト調整を行う。ここでABCCについて説明を加えておく。撮像時には適切な明度値及びコントラストをもつ鮮明な画像を取得するため,例えば二次電子検出器109におけるフォトマル(光電子増倍管)の電圧値等のパラメータを調整することよって,例えば画像信号の最も高い部分と最も低い部分とがフルコントラストあるいはそれに近いコントラストになるように設定するが,AFと同様,試料に電子線を長く照射すると汚染物質が試料に付着してしまう。そこで,EPにおけるコンタミネーションの付着を抑えるため,一旦EP近くの座標をABCCとして観察し,ブライトネス・コントラスト調整のパラメータを求めてから前記パラメータを基にEPを観察するという方法がとられる。
【0094】
そのため,登録されるABCCは,(1)AP,SEPからビームシフトにより移動可能な距離に存在するパターンであり,かつABCC撮像時のFOVにSEP撮像時のFOVは含まれない,(2)ABCCの撮像倍率はSEPの撮像倍率と同程度である,(3)ABCCにおいて調整したパラメータを用いて測長ポイントにおいて撮像した画像のブライトネスやコントラストが良好であるために,ABCCは前記測長ポイントにおけるパターンに類似したパターンである等の条件を満たしていることが望ましい。本発明によれば,ABCC選択についても,APと同様,前述の条件をシステム内部で評価し,自動で良好なABCCの選択を行うことが可能となる。
【0095】
なお,前述したステップ1311-3,1311-4,1311-5,1311-6におけるAP,AF,AST,ABCCの撮像は場合によって,一部あるいは全てが省略される,あるいは1311-3,1311-4,1311-5,1311-6の順番が任意に入れ替わる,あるいはAP,AF,AST,ABCCの座標で重複するものがある(例えばオートフォーカス,オートスティグマを同一箇所で行う)等のバリエーションがある。
【0096】
最後にステップ1311-7においてビームシフトにより撮像ポイントをSEPに移動してステップ1309で決定された撮像枚数分だけ順次SEPを撮像する。
次に、先に説明したステップ1312において、複数枚撮像したSEPのSEM画像を合成する。
【0097】
SEPにおいても,撮像したSEM画像と事前に撮像レシピに登録された前記SEP位置に対応する登録テンプレートとをマッチングし,計測位置のずれを検出することがある。撮像レシピ作成装置122で作成される撮像レシピには前述の撮像ポイント(SEP,AP,AF,AST,ABCC)の座標や撮像シーケンス,撮像条件等の情報が書き込まれており,SEMは前記撮像レシピに基づきSEPを観察する。図3Cに低倍像1320上におけるSEP1321,AP1322,AF1323,AST1324,ABCC1325のテンプレート位置の一例を点線枠で図示する。
【0098】
本実施例によれば,1回の撮像では取得できない比較的広い領域の高倍率のSEM画像を用いてパターンの寸法の計測やパターン形状評価等を行うことができる。
【0099】
3.SEP候補の選択によるSEP決定
2.で述べたSEP決定ステップにおいて全てのユーザ要求を満たすSEP配置が原理的に存在しない場合がある。例えば,SEPを指定した撮像倍率にするためには,どうしても全SEPの繋ぎ合せが困難となり,逆に全SEPが繋ぎ合せ可能とするためには,どうしてもSEPの撮像倍率が指定した値よりも小さくせざるを得ない等である。
そこで第二の実施例として,そのような場合であってもなるべくユーザの要求を満たすSEP配置を準最適解として決定する方式を提供する。本処理のフローを図14を用いて説明する。
【0100】
本処理はパノラマ画像合成処理の条件を入力し(ステップ1301〜1306),禁止領域(ステップ1307)を算出した後に,ステップ1308で算出した分割指標値を基にSEPの撮像位置あるいは撮像倍率の異なるSEP配置の候補(以後,SEP候補と呼ぶ)を複数算出することを特徴とする(ステップ1401)。これらの候補から適切な準最適解を決定するための手段として,これらの候補をGUI上に表示すると共に,判断基準として,隣接リンク情報あるいは任意リンク情報を表示させ(ステップ1402),SEP候補群からSEPを選択(ステップ1403)することを特徴とする。
【0101】
SEP選択時にはSEP配置とSEP候補の選択の手掛かりとなる情報を併せてユーザに表示することで,ユーザは各SEP候補がユーザの要求項目を満たすか否かを容易に判別することができ,適切なSEP候補を選択することが可能となる。
【0102】
ユーザの要求項目としては,例えばSEPの配置,SEP撮像倍率,SEPの繋ぎ合せ易さ,前記禁止領域とSEP間の重複領域との重複量,SEP間の重複領域幅,SEP数(少ない程,撮像時間が短い)などがある。これらの各項目をユーザに分かり易くGUI上に可視化することで,ユーザはSEP候補の選択が容易となる。
【0103】
図15A乃至図15FにSEP候補の算出例を示す。図15A乃至図15Fは入力した設計情報(1501)およびEP(1502)に対する3つのSEP候補を示す。図15A及び図15Bの1503−1〜1503−9,図15C及び図15Dの1506−1〜1506−4,および図15E及び図15Fの1509−1〜1509−5はそれぞれのSEP配置である。また,図15Bの1504−1〜1504−7,図15Dの1507−1〜1507−4,および図15Fの1510−1〜1510−6はそれぞれのSEP配置に対する隣接リンク情報を示す。また,図15Bにおいて全SEPは1501−1および1501−2の二つの繋ぎ合せ可能SEP集合に分割され,図15Dおよび図15Fにおいては全SEPが繋ぎ合せ可能である(1508および1511)。
すなわち,図15AのSEP配置はSEPの撮像倍率が高いが,全SEPが繋がらない。一方,図15C乃至図15FはSEPの撮像倍率が図15Aより低くなるが全SEPが繋ぎ合せ可能である。また,図15E及び図15Fは図15C及び図15Dの場合に比べてSEP間の重複領域幅が大きくSEPの数も多いが重複領域に含まれる禁止領域(1512)の面積が少ない。
【0104】
このように,SEPの撮像倍率,繋ぎ合せ易さ,および禁止領域と重複領域との重複量の間にはトレードオフがあるためこの3つの要求を満たすSEP配置は困難である。しかし,これらのユーザの要求項目を全て満たすSEP配置が決定できなくても,本例のようにこれらのユーザの要求項目に関する情報を可視化することで,ユーザはユーザの要求項目をなるべく満たすSEP配置を準最適解として容易に決定することができる。また,ユーザに表示する情報のバリエーションとしては,SEP全体をお互いに繋ぎ合せ可能なSEPの集合に分割した結果や,繋ぎ合せ易さが同程度のSEPの集合に分割した結果を表示することもできる。また,実際にSEP間を繋ぎ合せた場合に想定される位置ずれ量(推定位置ずれ量),あるいは前記位置ずれ量を基に算出した値を表示することもできる。
【0105】
ここで,前記推定位置ずれ量は設計情報を用いて推定した各SEPの擬似的なSEM画像を実際に繋ぎ合せた場合の位置ずれ量を基に算出することを特徴とする。推定位置ずれ量の算出には画像生成および繋ぎ合せが必要であるため多くの処理時間を要する。そこで,算出した全てのSEP候補あるいは指定したSEP候補に対してのみ,推定位置ずれ量を算出して表示することもできる。
【0106】
4.GUI
本発明における入力・出力情報の設定あるいは表示を行うGUIの実施例を図16に示す。図16中のウィンドウ1701内に一画面で描画された各種情報は任意の組合せでウィンドウに分割してディスプレイ等に表示することができる。また,図中の**はシステムに入力された,あるいは出力された任意の数値(あるいは文字列)や数値の範囲であることを示す。
【0107】
ボックス1702はパノラマ画像合成処理を行う対象となるEPのリストを表示している。本リストからEPを選択してパノラマ画像合成処理を行うこともできるし,バッチ処理で全EPに対してパノラマ画像合成処理を行うこともできる。バッチ処理を行う場合は,処理を行うEPにチェックをつけ(1703),そのEPのみ処理を行うこともできる。本例では,EPのリストから3番目のEPを選択している。1704は選択したEPのIDを表示している。ボックス1705は選択したEPの撮像範囲を表示している。撮像範囲は矩形領域の左上と右下の座標で与えてもよいし,EPの中心座標と視野で与えてもよい。ボックス1706においてはSEPの撮像倍率範囲およびボックス1707においてはSEP間の重複領域幅の範囲を設定することができる。
【0108】
範囲の入力においては,範囲の下限と上限を指定することもできるし,下限と上限を同じ値で設定することでSEPの撮像倍率やSEP間の重複幅を指定することができる。ボックス1708はEPとその周辺のパターンを表示する。EPの範囲を点線の枠(1709)で示し,EP周辺の回路あるいはマスクパターンの設計情報を網状のハッチングを施した図形(1710)で表示している。また,手動あるいは設計情報を基に自動で設定した禁止領域を斜め線のハッチングを施した領域(1711)で表示している。ボックス1712〜1715では,SEP決定における処理パラメータ(イメージ/ステージシフト予想誤差,SEP間の繋ぎ合せに必要なパターン線分長の最小値,コーナーカット長等)を設定することができる。
【0109】
上記EP,SEPおよび処理パラメータの設定を行った後,ボタン1716を押すと,上記選択したEPに対してSEPの候補を算出する。また,ボタン1717を押すとEPのリストでチェックのついた全てのEPに対してSEP候補の算出を行う。
【0110】
バッチ処理においては,対象となる各EPに対してSEP候補を算出しておき,後からユーザが各EPのSEP候補を選択することもできる。また,算出するSEP候補数はボックス1718で指定することもできる。
【0111】
ボックス1719〜1721は,選択したEPに対して算出された3つのSEP候補を示す。1723〜1724は各SEP候補の詳細情報を示す。この場合,SEP候補1は撮像倍率100Kの9枚のSEP配置となっており,9枚のうち互いに繋ぎ合せ可能なSEP数は最大で4枚であることを示している。
【0112】
ボックス1725〜1727は各SEP候補のSEP配置を表示している。図中の黒枠(1728)はSEPで黒丸(1729)はその中心座標を示す。また,前記SEP候補の表示の際はボックス1708と同様に設計情報,EPおよび禁止領域を重ねて表示することもできる。また,重複領域に含まれる禁止領域内のパターンは太線で強調して表示することもできる(1730)。
ボックス1729〜1731は,それぞれボックス1725〜1727に示すSEP配置に対するリンク情報を表示している。隣接リンク情報をx,yあるいはxyを丸で囲んだ記号とSEP間を結ぶ黒線で表示することができ,それぞれx方向に位置合せ可能(1732),y方向に位置合せ可能(1733)あるいはxy方向に位置合せ可能(1734)であることを示す。また,SEP全体をお互いに繋ぎ合せ可能なSEP集合(繋ぎ合せ可能SEP集合)で分割し,各分割されたSEP集合のSEPの中心位置を太い黒枠で囲んで表示することもできる。
【0113】
本例では,SEP候補1は3つの繋ぎ合せ可能SEP集合1735と1736に分断され,全SEPが繋ぎ合せができないことを示している。一方,SEP候補2およびSEP候補3は,全SEPが太い黒枠で囲まれており全SEPが繋ぎ合せ可能であることを示している。
【0114】
また,表示する情報としては図3に示すようなSEP間の繋ぎ合せ易さを表示することもできるし,図8で示すような全SEPを互いに繋ぎ合せが同程度のSEP集合(繋ぎ合せ容易SEP集合)に分割した結果を表示することも出来る。また,図5に示すように任意のSEP間のx,y方向別の繋ぎ合せ可否を表示することもできる。
【0115】
ユーザは各SEP候補のSEP配置とSEP間の連結関係を示す情報を判断基準にして,ボタン1739〜1741を押してSEPを選択する。本例では3つのSEP候補を表示しているが,それ以上のSEPを候補を算出することもできる。その場合,スクロールバー1742を動かしてその他のSEP候補を見ることができる。
【0116】
また,SEP候補の表示においては各SEP候補に表示の優先度を付けて,表示の優先度の高い順にSEP候補を表示することもできる。表示の優先度としては,SEP撮像倍率,繋ぎ合せ易さ,禁止領域と重複領域との重複量といったユーザの要求項目をどの程度満たすのかを評価して優先度を設定することもできる。
【0117】
また,SEP候補の詳細情報のバリエーションとして,図17に示すように実際の繋ぎ合せ処理を行った場合の推定位置ずれ量を表示することもできる。推定位置ずれ量は,決定したSEP配置(1801)および設計情報から生成した擬似的なSEM画像を繋ぎ合せ(1802),そのときの位置ずれ量を各SEPあるいはSEP間で表示することも出来る(1803)。SEP間のx,y方向別に推定した相対的な位置ずれ量を表示することも出来るし,SEP間の相対的な位置ずれ量ではなく,ある基準に対する各SEPの絶対的な位置ずれ量を表示することもできる。また,位置ずれの方向や大きさを矢印で表示することもできる。
【0118】
また,SEP候補の表示法としては図18に示すようにユーザの要求項目(例えば,SEP撮像倍率,繋ぎ合せ易さ,禁止領域と重複領域との重複量,SEP間の重複領域幅等)を軸にとり,その軸に従ってSEP候補を表示する位置を変更することもできる。図18では重複領域幅およびSEP撮像倍率をそれぞれX軸(1901)およびY軸(1902)にとり,6つのSEP候補(1903−1〜1903−6)を表示している。ユーザは表示されたSEP候補の中から,ボタン1904−1〜1904−6を押してSEPを選択する。本例は重複領域幅とSEP撮像倍率の2項目についてそれぞれ値を振った結果を二次元表示しているが,任意の3項目についてそれぞれ値を振った結果を三次元表示する等のバリエーションが可能である。
【0119】
5.半導体デバイスの設計・製造ラインおよびプロセスへの適用
本発明を半導体デバイスの設計・製造ラインおよびプロセスに適用した場合のシステム構成の実施例を図19A及び図19B及び図20を用いて説明する。
図19Aにおいて1601はマスクパターン設計装置,1602はマスク描画装置,1603はマスクパターンのウェーハ上への露光・現像装置,1604はウェーハのエッチング装置,1605および1607はSEM装置,1606および1608はそれぞれ前記SEM装置を制御するSEM制御装置,1609はEDA(Electronic Design Automation)ツールサーバ,1160はデータベースサーバ,1611はデータベースを保存するストレージ,1612は撮像レシピ作成装置,1613は画像処理装置,1614は生成したパターン形状の計測・評価ツールサーバであり,これらはネットワーク1615を介して情報の送受信が可能である。
【0120】
データベースサーバ1160にはストレージ1611が取り付けられており,(a)EPのサイズ・座標,(b)設計情報(マスク設計情報(OPCなし/あり),ウェーハ転写パターン設計情報),(c)撮像レシピ生成ルール,(d)生成された撮像レシピ(SEP,撮像シーケンス含む),(e)撮像・生成した画像(SEP画像,パノラマ画像),(f)画像から抽出した輪郭線,(g)シミュレーションパターン,(h)計測・評価結果の一部または全てを,品種,製造工程,日時,データ取得装置等とリンクさせて保存し,また参照することが可能である。
【0121】
また,同図においては例として二台のSEM装置1605,1607がネットワークに接続されているが,本発明においては,任意の複数台のSEM装置において撮像レシピをデータベースサーバ1611により共有することが可能であり,一回の撮像レシピ作成によって前記複数台のSEM装置を稼動させることができる。また複数台のSEM装置でデータベースを共有することにより,過去の前記撮像あるいは計測の成否や失敗原因の蓄積も早く,これを参照することにより良好な撮像レシピ生成の一助とすることができる。
【0122】
図19Bは一例として図19AにおけるSEM制御装置(A)1606,SEM制御装置(B)1608,EDAツールサーバ1609,データベースサーバ1160,撮像レシピ作成装置1612、画像処理装置1613、形状計測・評価ツールサーバ1614を一つの装置1616に統合したものである。本例のように任意の機能を任意の複数台の装置に分割,あるいは統合して処理させることが可能である。
【0123】
また、図19Bにおける装置1616からEDAツールサーバ1609とデータベースサーバ1160とを分離して設置する構成も可能である。
【0124】
上記実施例で説明したようなパノラマ画像を用いることによって,半導体設計・製造の効率化を図ることができる。図20に半導体デバイスの設計・製造フローを示す。まず,半導体の回路設計を行い(ステップ2001),次にマスクパターンのレイアウトを設計する(ステップ2002)。このとき,光近接効果補正(Optical Proximity Correction:OPC)等をパターンに施すことができる。次に,前記レイアウトを基にマスクを製造し(ステップ2003),このマスクパターンをウェーハ上に転写(露光)してウェーハを製造する(ステップ2005)。
【0125】
本発明によれば,例えばマスク製造(ステップ2003)の後,前記マスクをSEM撮像して生成した広視野かつ高分解のSEMのパノラマ画像を用いてマスクの出来栄えを広範囲に渡って検査することができる(ステップ2004)。例えば,前記パノラマ画像から抽出したマスクパターン形状とマスクの設計情報との比較により,マスクの製造誤差を算出することができるし,マスク上のパターンの欠陥を検出することもできる。
【0126】
また,前記広範囲かつ高分解能なマスクパターン形状を入力としてウェーハ上に転写されるパターン形状を高精度にシミュレーション予測することが可能となり(ステップ2006),前記予測結果に基づきマスク上のパターンの修正(ステップ2007),あるいはマスクのレイアウト設計の修正(ステップ2008)を行うことができる。レイアウト設計の修正にはOPCパターン形状の修正も含まれ,効率的なOPC検証・修正を実現することができる。
【0127】
また,前記予測結果に基づき露光条件等の製造パラメータを調整(ステップ2009)することでウェーハ上の転写パターン形状とウェーハパターンの設計形状との乖離を低減することができ,高い歩留まりを実現することができる。更に,本発明によればウェーハのパノラマ画像も生成可能であり,前記ウェーハのパノラマ画像から広範囲かつ高分解能なウェーハパターン形状を得ることができる。前記ウェーハパターン形状とウェーハパターンの設計形状との比較により,マスク転写誤差の算出や,露光条件等の製造パラメータへのフィードバックが実現する。
【0128】
以上の実施例では,パノラマ画像を生成した後,前記パノラマ画像から回路パターンの輪郭線を抽出することによって広域な輪郭線情報を取得する方法について説明したが,本発明はこれに限定されるものではなく,複数のSEPの撮像画像から輪郭線群を抽出し,その後に前記輪郭線群を繋ぎ合せることによって広域な輪郭線情報を取得してもよい。
また,以上の実施例は,走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いたシステムについて説明したが,本発明はこれに限定されるものではなく,走査型イオン顕微鏡(Scanning Ion Microscope:SIM)又は走査型透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope:STEM)等の走査荷電粒子顕微鏡に応用することが可能である。
【符号の説明】
【0129】
101…半導体ウェーハ 102…電子光学系 103…電子銃 104…電子線(一次電子)105…コンデンサレンズ 106…偏向器 107…ExB偏向器 108…対物レンズ 109…二次電子検出器 110,111…反射電子検出器 112〜114…A/D変換器 115…処理・制御部 116…CPU 117…画像メモリ 118,126…処理端末 119…ステージコントローラ 120…偏向制御部 121…ステージ 122…撮像レシピ作成装置 123…画像処理装置 124…形状計測・評価ツールサーバ 126…データベース(ストレージ) 302…EP 303-1〜303-4…SEP 401〜403…EP 407-1〜407-9,408-1〜408-9,409-1〜409-9…SEP 501…EP 503-1〜503-9…SEP 601…EP 603-1〜603-9…SEP 701…EP 03,704,705-1〜705-9…SEP 902…EP 903-1〜903-4…SEP 904-1〜904-4…推定SEM画像 1002…EP 1003…禁止領域 1004-1〜1004-4…SEP 1006…EP 1008-1〜1008-5…SEP,
1102…EP 1103-1〜1103-5…SEP 1201…パノラマSEM画像 1203-1〜1203-4…各SEPのSEM画像 1501…EP 1503-1〜1503-9…SEP 1506-1〜1506-4…SEP 1509-1〜1509-4…SEP 1601…マスクパターン設計装置 1602…マスク描画装置 1603…露光・現像装置 1604…エッチング装置 1605,1007…SEM装置 1606,1608…SEM制御装置 1609…EDAツールサーバ 1160…データベースサーバ 1611…データベース 1612…撮像レシピ作成装置 1613…画像処理装置 1614…形状計測・評価ツールサーバ 1615…ネットワーク 1615…EDAツール,データベース管理,撮像レシピ作成,画像処理,形状計測・評価ツール SEM制御用統合サーバ&演算装置 1701…GUI画面 1717…SEP候補算出ボタン 1718…SEP候補数設定ボックス 1719〜1721…SEP候補表示ボックス 1725〜1727…SEP配置表示ボックス 1728…SEP 1739〜1741…SEP選択ボタン 1904-1〜1904-6…SEP選択ボタン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型電子顕微鏡を用いて広範囲・高分解能な画像を取得するため、撮像領域を複数の局所領域に分割して撮像し、前記局所領域の撮像画像を画像処理により繋ぎ合せることによってパノラマ画像を生成してパターンの寸法を計測する装置およびその方法に関するものであり、特に高い繋ぎ合せ精度となる前記局所領域の撮像位置および撮像倍率の決定が可能な走査荷電粒子顕微鏡及びそれを用いたパターン寸法の計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハに配線パターンを形成するに際しては,半導体ウェーハ上にレジストと呼ばれる塗布材を塗布し,レジストの上に配線パターンの露光用マスク(レチクル)を重ねてその上から可視光線,紫外線あるいは電子ビームを照射し,レジストを感光(露光)して現像することによって半導体ウェーハ上にレジストによる配線パターンを形成し,このレジストの配線パターンをマスクとして半導体ウェーハをエッチング加工することにより配線パターンを形成する方法が採用されている。
【0003】
マスクやウェーハ上のパターン形状の検査には,走査荷電粒子顕微鏡の一つである測長走査電子顕微鏡(Critical Dimension Scanning Electron Microscope:CD−SEM)が広く用いられている。パターン形状の評価のため,SEM撮像を行う座標を評価ポイントと呼び,以降,EP(Evaluation Point)と略記する。EPを少ない撮像ずれ量で,かつ高画質で撮像するため,アドレッシングポイント(以降,APと呼ぶ)あるいはオートフォーカスポイント(以降,AFと呼ぶ)あるいはオートスティグマポイント(以降,ASTと呼ぶ)あるいはオートブライトネス・コントラストポイント(以降,ABCCと呼ぶ)の一部又は全ての調整ポイントを必要に応じて設定し,それぞれの調整ポイントにおいて,アドレッシング,オートフォーカス調整,オートスティグマ調整,オートブライトネス・コントラスト調整を行った後,EPを撮像する。
【0004】
前記アドレッシングにおける撮像ずれ量は,事前に登録テンプレートとして登録された座標既知のAPにおけるSEM画像と,実際の撮像シーケンスにおいて観察されたSEM画像とをマッチングし,前記マッチングのずれ量を撮像位置のずれ量として補正している。前記評価ポイント(EP),調整ポイント(AP,AF,AST,ABCC)をまとめて撮像ポイントと呼ぶ。EPのサイズ・座標,撮像条件,ならびに各調整ポイントの撮像条件,調整方法,ならびに各撮像ポイントの撮像順(あるいは調整順),ならびに前記登録テンプレートは撮像レシピとして管理され,SEMは前記撮像レシピに基づき,EPの撮像を行う。
【0005】
従来,レシピの生成はSEMオペレータがマニュアルで行っており,労力と時間を要する作業であった。また,各調整ポイントの決定や登録テンプレートをレシピに登録するためには,実際にウェーハを低倍で撮像する必要があることから,レシピの生成がSEM装置の稼働率低下の一因となっていた。更に,パターンの微細化・複雑化に伴い,評価を要するEPの点数は爆発的に増加し,前記レシピのマニュアルによる生成は,労力,生成時間の観点から非現実的になりつつある。
【0006】
そこで撮像レシピに関して,例えばGDSII形式で記述された半導体の回路パターンの設計情報を基にAPを決定し,さらに設計情報からAPにおけるデータを切り出して前記登録テンプレートとして撮像レシピに登録する半導体検査システムが開示されている(特許文献1:特開2002−328015号公報)。そこでは,APの決定ならびに登録テンプレートの登録の目的のみで実ウェーハを撮像する必要がなく,SEMの稼働率向上が実現する。また,実際の撮像シーケンスにおいてAPにおけるSEM画像(実撮像テンプレート)を取得した際,前記実撮像テンプレートと設計情報の登録テンプレートとのマッチングを行い,前記設計情報の登録テンプレートの位置に対応するSEM画像を登録テンプレートとして撮像レシピに再登録し,以降,前記再登録したSEM画像の登録テンプレートをアドレッシング処理に使用する機能を有する。さらに設計情報から特徴のあるパターン部分を自動的に検出し,APとして登録する機能を有する。
【0007】
また、特許文献2には、アドレッシングパターンを数万倍程度の倍率で撮像して得た画像を予め記憶しておいたアドレッシングテンプレート画像と比較してアドレッシングパターンの位置を求め、この求めた位置情報に基づいて測長領域の中心座標を取得し、この中心座標情報に基づいて数十万倍程度の倍率で測長位置の拡大画像を取得することについて記載されている。
【0008】
更に、特許文献3には、SEMを用いて試料を撮像するための撮像レシピを自動生成する方法として、EPの座標、サイズ、形状、撮像条件、EP周辺のCADデータ等を入力して、EPを観察するための撮像ポイントの点数、座標、サイズ、形状、撮像シーケンス、撮像条件などを含む撮像レシピをウェーハレスで作成することについて記載されている。
EPとしては,ユーザからの指定点や,EDA(Electronic Design Automation)ツール等から出力されるホットスポットと呼ばれるデバイス不良が発生しやすい危険箇所等が挙げられ,これらEPにおけるパターン寸法値を基にマスクパターンの形状補正や半導体製造プロセス条件の変更等のフィードバックを行い,高い歩留まりを実現する。近年の半導体デバイスの高速化・高集積化のニーズに対応して,配線パターンの微細化・高密度化が進んでおり,光近接効果補正(Optical Proximity Correction:OPC)に代表される超解像度露光技術が導入されている。これに伴うマスクパターンの複雑化によりウェーハ上に転写されるパターン形状のシミュレーション予測や,実際に転写されたパターン形状の検査がより重要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−328015号公報
【特許文献2】特開2005−265424号公報
【特許文献3】特開2007−250528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ウェーハ上に転写されるパターン形状のシミュレーション予測のためには,マスク上のパターン形状を入力する必要があるが,光近接効果を加味したシミュレーションを行うためにはある程度広範囲のパターン形状を入力する必要がある。前記パターン形状として設計情報を入力する方法が考えられるが,設計情報と実際にマスク上に生成されたパターン形状とは乖離があるため,この乖離がシミュレーション誤差となってしまう。そこで,マスク上に生成されたパターンをSEM撮像し,形状を抽出することが考えられるが,前記広範囲をカバーするように低倍率で撮像を行うと画像分解能が低下してしまう。逆に高倍率で撮像を行うと分解能は改善するが視野は狭くなってしまう。そこで,広範囲な撮像範囲(EP)を,複数の局所領域に分割して撮像し,前記局所領域の撮像画像を画像処理によって繋ぎ合せることによって広範囲・高分解能なパノラマ画像(隣接する複数の画像を繋ぎ合せて合成した画像)を生成することが考えられる。前記局所領域のことをEPを分割した領域ということで,以降,SEP(Segmental Evaluation Point)と呼ぶ。
【0011】
例えば、光近接効果を加味したシミュレーションを行うためには、SEMで得られる高倍率の画像1枚だけからの情報では不十分で、高倍率の比較的広い範囲の画像、すなわち高倍率の複数の視野に亘る画像を得ることが必要になる。しかい、上記した特許文献1乃至3の何れにも、比較的広い範囲に亘って高倍率の画像を得ることについては記載されていない。
【0012】
一般に局所領域の画像を組合わせて広域画像であるパノラマ画像を合成することはよく知られた処理であるが,例えばCCDカメラ等で撮像された画像のパノラマ合成に対し,SEMを用いた半導体パターンに対するパノラマ画像合成処理には以下のような特有の課題がある。
【0013】
(1)画像の繋ぎ合せはSEP間の重複領域に含まれるパターンを基に行われるが,半導体パターンは密に存在せず,かつ繋ぎ合せの手掛かりとなるのは基本的にパターンのエッジのみである。そのため,SEP間の全ての全重複領域に繋ぎ合せの手掛かりとなるパターンが十分に含まれない場合がありうる。パターンが十分に含まれない(あるいは全くパターンが含まれない)重複領域をもつSEPは,繋ぎ合せ精度が低くなる(あるいは繋ぎ合せが不可能となる)危険性がある。例えば視野10μmのEPを視野1.5μmのSEPで分割しようとした場合,SEPは50枚程度となる。このように多数のSEPに対して限られたパターンで全てのSEPがうまく繋がらなければならない。
【0014】
(2)原理的に全てのユーザ要求(例えば全SEPが画像処理により繋がる等)を満たすSEP配置が存在しない場合がある。そのような場合であっても,なるべくユーザの要求を満たすSEP配置を準最適解として決定することが望ましいが,例えば上記のように50枚にも及ぶSEPを眺めながら,ユーザ要求の満足度を評価する作業は容易でない。
光近接効果を加味してウェーハ上に転写されるパターン形状のシミュレーション予測を行うために必要な,マスク上のある程度広範囲な領域のパターン形状を比較的高い倍率で撮像して入力する方法、および 必要があるが,光近接効果を加味したシミュレーションを行うためにはある程度広範囲のパターン形状を入力する必要がある
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決して、複数の高倍率のSEM画像を繋ぎ合わせることにより比較的広い範囲に亘る高倍率のSEM画像を合成し、この比較的広い範囲の高倍率のSEM画像を処理してパターンの寸法を計測することが可能なSEM装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明では、以下のような特徴を有する走査荷電粒子顕微鏡(SEM)装置及びそれを用いて半導体のマスクパターンあるいは前記マスクパターンをウェーハに転写した回路パターンの広域な画像を取得して所望のパターンの寸法(パターンの線幅、パターンの長さ、パターン間のギャップ、パターンの角部の丸みなど)を計測する方法とした。
【0016】
すなわち本発明では、走査型電子顕微鏡手段と、走査型電子顕微鏡手段で表面にパターンが形成された試料を撮像する撮像レシピを作成し、作成した撮像レシピに基づいて走査型電子顕微鏡手段で試料を撮像して得た試料の画像を処理する処理手段と、処理手段で処理した試料の画像から試料上に形成されたパターンの寸法情報を抽出する寸法情報抽出手段と、画像処理手段と寸法情報抽出手段とで処理する情報及び処理した情報を入出力する入出力手段と、顕微鏡手段と処理手段と寸法情報抽出手段と入出力手段とを制御する制御手段とを備えた走査型電子顕微鏡装置において、走査型電子顕微鏡手段は処理手段で作成した撮像レシピに基づいて試料上の隣接する複数の領域をそれぞれ一部重ねて順次撮像して複数の画像を取得し、処理手段は走査型電子顕微鏡手段で取得した複数の画像を各画像間の重なり領域に存在するパターンのエッジ情報を用いて複数の画像を繋ぎ合わせたパノラマ画像を作成し、寸法情報抽出手段は画像処理手段で作成したパノラマ画像からパターンの寸法情報を抽出するように構成した。
【0017】
また、本発明では、走査型電子顕微鏡手段と、走査型電子顕微鏡手段で表面にパターンが形成された試料を撮像するための撮像レシピを作成する撮像レシピ作成手段と、撮像レシピ作成手段で作成した撮像レシピに基づいて走査型電子顕微鏡手段で試料を撮像して得た試料の画像を処理する画像処理手段と、画像処理手段で処理した試料の画像から試料上に形成されたパターンの寸法情報を抽出する寸法情報抽出手段と、表示画面を備えて画像処理手段と寸法情報抽出手段とで処理する情報及び処理した情報を入出力する入出力手段と、顕微鏡手段と撮像レシピ作成手段と画像処理手段と寸法情報抽出手段と入出力手段とを制御する制御手段とを備えた走査型電子顕微鏡装置において、撮像レシピ作成手段は、走査型電子顕微鏡手段で撮像して得た試料の低倍率の画像が表示された入出力手段の画面上で指定された高倍率画像取得領域の情報を用いて指定された高倍率画像取得領域を隣接する領域同士が互いにパターンのエッジの一部を含んで重なり合うようにして複数の領域に分割する機能を有し、制御手段は、撮像レシピ作成手段で作成した撮像レシピに基づいて走査型電子顕微鏡手段を制御して分割された各領域を高倍率で撮像させる機能を有し、
画像処理手段は、走査型電子顕微鏡手段で撮像して得た各領域の高倍率の画像を各画像間の重なり領域に存在するパターンのエッジ情報を用いて繋ぎ合わせた高倍率のパノラマ画像を作成する機能を有し、寸法情報抽出手段は、画像処理手段で作成した高倍率のパノラマ画像からパターンの寸法を抽出する機能を有するように構成した。
【0018】
更に、本発明では、走査型電子顕微鏡装置を用いたパターン寸法計測方法において、表面にパターンが形成された試料を走査型電子顕微鏡を用いて低倍率で撮像し、撮像して得た試料の低倍率の画像を画面上に表示し、低倍率の画像が表示された画面上で指定された高倍率画像取得領域の情報を用いて指定された高倍率画像取得領域を隣接する領域同士が互いにパターンのエッジの一部を含んで重なり合うようにして複数の領域に分割して撮像するための撮像レシピを作成し、作成した撮像レシピに基づいて分割した各領域を走査型電子顕微鏡で撮像して各領域の高倍率の画像を取得し、撮像して得た各分割した領域のそれぞれの高倍率の画像を各画像間の重なり領域に存在するパターンのエッジ情報を用いて繋ぎ合わせて高倍率のパノラマ画像を作成し、作成した高倍率のパノラマ画像からパターンの寸法情報を抽出するようにした。
【0019】
また、本発明では、高倍率のパノラマ画像を作製する上において、以下のような特徴を有する。
【0020】
(1) 入力した広域の撮像領域(EP)を適切なSEMの撮像倍率で撮像可能な局所撮像領域(SEP)に分割する。SEPはEPを埋め尽くすように決定する必要がある。ここで適切な撮像倍率とは,ユーザが要求するパターン形状精度を満たす画像分解能が得られる倍率を指す。前記で決定したSEPをSEMで撮像し,これらのSEP画像群を画像処理により繋ぎ合せて広域のパノラマ画像を生成することができる。
【0021】
高精度のパノラマ画像を生成するためには,全SEPが繋がるSEP配置を決定する必要がある。隣接する二つのSEP間の繋ぎ合せ可否あるいは繋ぎ合せ易さは前記二つのSEP間の重複領域に繋ぎ合せ可能あるいは繋ぎ合せ易いパターンが含まれるか否かによって判定できる。しかし,半導体パターンは密に存在しないため,全ての重複領域に繋ぎ合せの手掛かりとなるパターンを含ませるSEP配置が困難な場合がある。その一方で,一部の重複領域にしかパターンを含まなくてもその組合せによっては全SEPが繋がる場合があることに着目した。
【0022】
そこで本発明は,二つのSEP間の重複領域に含まれるパターンを基に前記任意の隣接する(重複領域を共有する)二つのSEP間の繋ぎ合わせ可否または繋ぎ合せ易さを示す指標値(以後「隣接リンク情報」と呼ぶ)を算出し,前記隣接リンク情報を基に任意の二つのSEP間の繋ぎ合わせ可否または繋ぎ合せ易さを示す指標値(以後「任意リンク情報」と呼ぶ)を算出することを特徴とする。また,前記任意リンク情報を評価値としてSEP配置を決定することを特徴とする。任意リンク情報を評価値としてSEP配置を決定することにより,全ての重複領域にパターンを含まないが全SEPが繋がるSEP配置を決定できるケースが増える。これは全重複領域にパターンを含ませることが困難な粗なパターンに対して有効である。また,隣接リンク情報および任意リンク情報は,入力された回路パターンあるいはマスクパターンの設計情報を入力として計算機内で自動算出されることを特徴とし,自動算出された隣接リンク情報あるいは任意リンク情報を基にSEPを自動決定することを特徴とする。設計情報を用いることで,SEPを決定のためだけにマスクあるいはウェーハをSEM撮像する必要がなくなる(SEP決定のオフライン化)。
【0023】
また,前述のSEP配置の決定に加え,SEPの撮像倍率(視野)も同時に決定可能なことを特徴とする。SEPの撮像倍率は任意の値を指定したり(この場合,撮像倍率は固定),あるいは撮像倍率の設定範囲を指定することもできる(例えば,Pmin〜Pmax。この場合,撮像倍率はPmin〜Pmaxの範囲内で決定される)。
【0024】
(2)上記項目(1)のSEP決定において全てのユーザ要求を満たすSEP配置が原理的に存在しない場合がある。例えば,SEPを指定した撮像倍率にするためには,どうしても全SEPの繋ぎ合せが困難となり,逆に全SEPが繋ぎ合せ可能とするためには,どうしてもSEPの撮像倍率が指定した値よりも小さくせざるを得ない等である。
そこで本発明は,そのような場合であってもなるべくユーザの要求を満たすSEP配置を準最適解として決定するために,SEPの撮像位置あるいは撮像倍率の異なるSEP配置の候補(以後,SEP候補と呼ぶ)を複数算出することを特徴とする。更にこれらの候補から適切な準最適解を決定するための手段として,これらの候補をGUI上に表示すると共に,判断基準として,隣接リンク情報あるいは任意リンク情報を表示させることを特徴とする。SEP選択時にはSEP配置とSEP候補の選択の手掛かりとなる情報を併せてユーザに表示することで,ユーザは各SEP候補がユーザの要求項目を満たすか否かを容易に判別することができ,適切なSEP候補を選択することが可能となる。
【0025】
(3)前記任意リンク情報には,SEP全体をお互いに繋ぎ合せ可能なSEPの集合に分割した結果や,繋ぎ合せ易さが同程度のSEPの集合に分割した結果を含むことを特徴とする。このような情報を任意リンク情報に含ませることによって,同情報を上記項目(1)(2)で述べたように,SEPの自動決定における評価値とし,GUI表示することが可能となる。
【0026】
(4)前記任意リンク情報あるいは隣接リンク情報は,実際にSEP間を繋ぎ合せた場合に想定される位置ずれ量を含む,あるいは前記位置ずれ量を基に算出した値を含むことを特徴とする。また,前記位置ずれ量は設計情報を用いて推定した各SEPの擬似的なSEM画像を実際に繋ぎ合せた場合の位置ずれ量を基に算出することを特徴とする。
【0027】
(5)ユーザの指定するパターンを「(重複領域の)禁止領域」とし,前記禁止領域がSEP間の重複領域あるいはその近傍に含まれないようにSEP配置を決定することを特徴とする。前記ユーザの指定するパターンには,複雑なOPCパターン等,形状の最適化のため特に検証したいパターンが含まれることを特徴とする。このようなパターンを重複領域(SEP間の繋ぎ目)あるいはその近傍にしないことによって,SEP間の繋ぎ合せ誤差によるパノラマ画像における形状誤差や,画像周辺に発生する場合がある像歪みの影響を避けることができる。また,前記禁止領域の指定は前述のようにユーザが指定することも可能であるし,設計情報を基にパターンの形状の複雑さを評価した指標値やEDAツール等から出力されたデバイス不良の発生し易い危険箇所等を基に自動で指定することも可能である。
【0028】
前記禁止領域を,前記隣接リンク情報あるいは任意リンク情報と同様,SEP配置あるいは撮像倍率の決定の際の指標値として用いることを特徴とする。このことにより,禁止領域がなるべく重複領域に含まれないSEP配置あるいは撮像倍率の決定が実現する。また,前記禁止領域を,前記隣接リンク情報あるいは任意リンク情報と同様,SEP配置と併せてGUI上に表示することを特徴とする。このことにより,ユーザは着目するパターン(例えばOPCパターン)が禁止領域に含まれるか否かを容易に判別することができる。
【0029】
(6)決定したSEPの撮像画像を画像処理により繋ぎ合せるには,各SEP間の重複領域に含まれるパターンの重なり度合い(相関値)が高くなるように位置合せする必要がある。しかしながら,重複領域は複数存在するため,重複領域における相関値を全て最大にすることはできない(ある重複領域の相関値を最大にすると,他の重複領域における相関値が下がることがある)。そのため,SEPの撮像画像を画像処理により繋ぎ合せる際,前記隣接リンク情報あるいは任意リンク情報におけるSEP間の繋ぎ合せ易さ可否あるいは繋ぎ合せ易さの情報を基に,重複領域毎に相関値を考慮する度合いを重みとして設定することを特徴とする。
【0030】
傾向として大きな重みが設定された重複領域の相関値がなるべく高くなるように繋ぎ合せが行われる。例として,繋ぎ合せが困難な重複領域,例えば繋ぎ合せの手掛かりとなるパターンが全く含まれない重複領域における相関値は画像ノイズのみによって計算される。そのため,このような画像ノイズによって計算された相関値を高くするようなSEP繋ぎ合せは大きな位置ずれを発生させる危険性がある。前述の重複領域毎の重み設定により,このようなパターンが全く含まれない重複領域の重みは小さく設定され,SEP繋ぎ合せずれを低減することができる。
【0031】
(7)広範囲・高分解能なパターン輪郭線の抽出方法としては,以下の2通りあることを特徴とする。
・複数のSEPをSEM撮像したSEP画群を画像処理により繋ぎ合せた広範囲のパノラマ画像を得て,前記パノラマ画像から広範囲のパターン輪郭線を抽出する。
・複数のSEPをSEM撮像してSEP画像群を得,前記SEP画像群の画像毎にパターン輪郭線を抽出してパターン輪郭線群を得,前記パターン輪郭線群を繋ぎ合せて広範囲のパターン輪郭線を得る。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、パターンが粗であってもSEPが全て繋がるSEP配置やSEP撮像倍率を決定することができ、また,全SEPが繋がるSEP配置を決定できない場合においても,ユーザの要求項目をなるべく満たすSEPを容易に決定することができ、得られたSEPの撮像画像を繋ぎ合せることで広範囲・高分解能なパノラマ画像(あるいは広範囲・高分解能なパターン輪郭線)を取得できるので、従来の1枚の高倍率のSEM画像だけからでは取得できなかった複数枚の高倍率SEM画像撮像領域を繋ぎ合わせて作成した広い視野の高倍率画像からのパターン情報を得ることができるようになった。
【0033】
また、本発明によれば、マスクを観測して得られたパノラマ画像から光近接効果を加味したシミュレーションを行うのに必要なマスク上に生成されたパターンの比較的広い領域に亘る形状情報を得ることができ,前記パターン形状を入力としてウェーハ上に転写されるパターン形状の高精度なシミュレーション予測を実現することができる。また,前記マスク上に生成されたパターン形状とマスクの設計情報等との比較により,製造誤差の算出や,製造条件へのフィードバックを実現することができる。
【0034】
また,ウェーハを観測して得られたパノラマ画像からウェーハ上に生成されたパターン形状を得ることができ,生成パターンの設計情報等との比較により,マスク転写誤差の算出や,露光条件等の製造パラメータへのフィードバックを実現することができる。更に製造パラメータの変更で修正しきれない形状誤差に対してはマスクパターンの変更等を実施し,高い歩留まりを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】SEM装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図2A】半導体ウェーハ上への電子線のx及びy方向への走査を示す図である。
【図2B】半導体ウェーハ上から放出される電子の信号量を画像化する方法を示す図である。
【図3A】入力されたEPを4つのSEPに分割した状態を示す試料パターンの拡大図である。
【図3B】4つのSEPのうち互いに隣接するSEP間の繋ぎ合せ可否を評価した結果を示す図である。
【図3C】4つのSEPの互いに隣接するSEP間の繋ぎ合せ可否と重複領域間のパターンの線分長を基に繋ぎ合わせ易さとを評価した結果を示す図である。
【図4A】全てのSEP間の重複領域に繋ぎ合せの手掛かりとなるパターんが含まれて全SEPが繋がる例を示す図である。
【図4B】一部のSEP間の重複領域に繋ぎ合せの手掛かりとなるパターんが含まれていないが、全SEPが繋がる例および繋がらない例を示す図である。
【図4C】一部のSEP間の重複領域に繋ぎ合せの手掛かりとなるパターんが含まれておらず、全SEPが繋がらない例を示す図である。
【図5A】入力されたEP及び設計情報に基づいて9のSEPに分割した例を示す図である。
【図5B】SEP間の隣接リンク情報を算出した例を示す図である。
【図5C】x方向の隣接リンク情報を抜き出した例を示す図である。
【図5D】y方向の隣接リンク情報を抜き出した例を示す図である。
【図5E】503−1と503−9の各SEPが繋ぎ合せ可能であることを示す図である。
【図6A】入力されたEP及び設計情報に基づいて9のSEPに分割した例を示す図である。
【図6B】SEP間の隣接リンク情報に基づいて全SEPが二つの繋ぎ合せ可能なSEP集合に分離された状態を示す図である。
【図6C】分離された繋ぎ合せ可能な集合同士をなるべく繋ぐように各SEPの撮像位置を更新した結果を示す図である。
【図6D】各SEPの撮像位置を更新して一つのSEP集合にまとまった結果の各SEP間の隣接リンク情報を示す図である。
【図7A】入力されたEPと設計情報とを重ねて示す図である。
【図7B】SEP撮像倍率を設定可能範囲の上限に設定してEPを9つのSEPに分割した例示す図である。
【図7C】撮像倍率を設定可能範囲の上限に設定してEPを分割した9つのSEPについて隣接する各SEP間の隣接リンク情報を算出した結果を示す図である。
【図7D】SEP撮像倍率を設定可能範囲の下限に設定してEPを4つのSEPに分割した例を示す図である。
【図7E】撮像倍率を設定可能範囲の下限に設定してEP分割した4つのSEPについて隣接する各SEP間の隣接リンク情報を算出した結果を示す図である。
【図8】全SEPを繋ぎ合せ易さが同程度のSEP集合に分割した例を示す図である。
【図9A】入力されたEPの情報と設計情報とに基づいてEPを4つのSEPに分割した状態を示す図である。
【図9B】4つの各SEPに対応させて作成した擬似的なSEM画像である。
【図9C】4つの擬似的なSEM画像を繋ぎ合わせた結果を示す図である。
【図9D】繋ぎ合せた各擬似的なSEM画像間の位置ずれ量を求めた結果を示す図である。
【図10A】入力されたEPの情報と設計情報とユーザが指定した禁止領域とを示す図である。
【図10B】指定された禁止領域がSEP間の重複領域近傍に含まれないように入力されたEPの情報と設計情報とに基づいて9つのSEPを配置した例を示す図である。
【図10C】禁止領域を設計情報において線分の集合として指定する例を示す図である。
【図10D】設計情報において線分の集合として指定された禁止領域がSEP間の重複領域近傍に含まれないように入力されたEPの情報と設計情報とに基づいて5つのSEPを配置した例を示す図である。
【図11A】入力されたEPの情報及び設計情報を基にEPを5つのSEPで分割した例を示す図である。
【図11B】分割した5つのSEPの配置について隣接リンク情報を算出した結果を示す図である。
【図11C】算出した隣接リンク情報を基に重複領域ごとに相関値を考慮する度合いの重みを設定した結果を示す図である。
【図11D】分割した5つのSEPの配置について隣接する2つのSEP間の繋ぎ合せ易さを算出した結果を示す図である。
【図11E】算出した隣接する2つのSEP間の繋ぎ合せ易さを基に重複領域の重みを設定した結果を示す図である。
【図12A】複数のSEP画像を繋ぎ合せて作成した広範囲のパノラマ画像を示す図である。
【図12B】パノラマ画像から広範囲のパターン輪郭線を抽出した例を示す図である。
【図12C】複数のSEPを撮像して得たSEP画像群を示す図である。
【図12D】複数のSEP画像毎にそれぞれ輪郭線を抽出してパターン輪郭線群を得た状態を示す図である。
【図12E】各SEP画像から抽出したパターン輪郭線群を繋ぎ合せて広範囲のパターン輪郭線を生成した例を示す図である。
【図13A】EP領域情報や設計データを入力して試料を撮像して得た高倍率のSEM画像から高倍率のパノラマ画像を合成してパターン寸法を計測する間瀬の一連の処理全体のフローを示すフロー図である。
【図13B】SEP撮像の詳細なフローを示すフロー図である。
【図13C】SEP撮像の詳細なフローにおけるEP,AP,AF,AST,ABCCの各位置の例を示す試料パターンの平面図である。
【図14】ユーザ選択によるSEP決定を含む処理全体フローを示すフロー図である。
【図15A】入力されたEPの情報及び設計情報を基にEPを9つのSEPで分割した例を示す図である。
【図15B】9つのSEP配置における接続リンク情報を算出した結果に基づいて二つの繋ぎ合せ可能SEP集合に分割した例を示す図である。
【図15C】入力されたEPの情報及び設計情報を基にEPを4つのSEPで分割した例を示す図である。
【図15D】4つのSEP配置における接続リンク情報を算出した結果に基づいて全てのSEPが繋ぎ合せ可能な状態になっている例を示す図である。
【図15E】入力されたEPの情報及び設計情報を基にEPを重複する領域の含まれる禁止領域の面積が図15Cの場合よりも少なくなるように5つのSEPで分割した例を示す図である。
【図15F】5つのSEP配置における接続リンク情報を算出した結果に基づいて全てのSEPが繋ぎ合せ可能な状態になっている例を示す図である。
【図16】GUI画面の一例を示す図である。
【図17】GUI画面の一例を示す図である。
【図18】GUI画面の一例を示す図である。
【図19A】本発明による走査型電子顕微鏡装置を半導体デバイスの製造ラインに適用した場合のシステムの概略の構成を示すブロック図である。
【図19B】図19AのシステムにおいてEDAツールサーバ、データサーバ、SEM制御装置(A),SEM制御装置(B),撮像レシピ作成装置、画像処理装置、形状計測・評価ツールサーバ等を一台の装置にまとめたシステムの概略の構成を示すブロック図である。
【図20】半導体デバイスの設計・製造の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は,走査荷電粒子顕微鏡を用いて試料上の隣り合った領域を撮像して得られた複数枚の比較的高い倍率のSEM画像を高い繋ぎ合せ精度の広域画像、すなわちパノラマ画像を生成し、この生成した合成画像を用いて試料上のパターンの寸法や形状情報を得る装置およびその方法に関する発明である。以下,本発明に係る実施の形態を,走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)に適用した場合について説明する。
【0037】
1. SEM
図1に試料の二次電子像(Secondary Electron:SE像)あるいは反射電子像(Backscattered Electron:BSE像)を取得するSEMの構成概要のブロック図を示す。また,SE像とBSE像を総称してSEM画像と呼ぶ。また,ここで取得される画像は測定対象を垂直方向から電子ビームを照射して得られたトップダウン画像の一部または全てを含む。
電子光学系102は内部に電子銃103を備え,電子線104を発生する。電子銃103から発射された電子線はコンデンサレンズ105で細く絞られた後,ステージ121上におかれた試料である半導体ウェーハ101上の任意の位置において電子線が焦点を結んで照射されるように,偏向器106および対物レンズ108により電子線の照射位置と絞りとが制御される。電子線を照射された半導体ウェーハ101からは,2次電子と反射電子が放出され,ExB偏向器107によって照射電子線の軌道と分離された2次電子は2次電子検出器109により検出される。一方,反射電子は反射電子検出器110および111により検出される。反射電子検出器110と111とは互いに異なる方向に設置されている。2次電子検出器109および反射電子検出器110および111で検出された2次電子および反射電子はA/D変換機112,113,114でデジタル信号に変換され,処理・制御部115に入力されて,画像メモリ117に格納され,CPU116で目的に応じた画像処理が行われる。
【0038】
図2Aに半導体ウェーハ上に電子線を走査して照射した際,半導体ウェーハ上から放出される電子の信号量を画像化する方法を示す。電子線は,例えば図2Aに示すようにx,y方向に201〜203又は204〜206のように走査して照射される。電子線の偏向方向を変更することによって走査方向を変化させることが可能である。x方向に走査された電子線201〜203が照射された半導体ウェーハ上の場所をそれぞれG1〜G3で示す。同様にy方向に走査された電子線204〜206が照射された半導体ウェーハ上の場所をそれぞれG4〜G6で示す。前記G1〜G6において放出された電子の信号量は,それぞれ図2B内に示した画像209における画素H1〜H6の明度値になる(G,Hにおける添字1〜6は互いに対応する)。208は画像上のx,y方向を示す座標系である。このように視野内を電子線で走査することにより,画像フレーム209を得ることができる。また実際には同じ要領で前記視野内を電子線で何回か走査し,得られる画像フレームを加算平均することにより,高S/Nな画像を得ることができる。加算フレーム数は任意に設定可能である。
【0039】
図1中の処理・制御部115はCPU116と画像メモリ117を備えたコンピュータシステムであり,撮像レシピを基に撮像ポイントを撮像するため,ステージコントローラ119や偏向制御部120に対して制御信号を送る,あるいは半導体ウェーハ101上の任意の撮像ポイントにおける撮像画像に対し各種画像処理を行う等の処理・制御を行う。ここで撮像ポイントとはアドレッシングポイント(以降,APと呼ぶ),オートフォーカスポイント(以降,AFと呼ぶ),オートスティグマポイント(以降,ASTと呼ぶ),オートブライトネス・コントラストポイント(以降,ABCCと呼ぶ),評価ポイント(以降,EPと呼ぶ)の一部または全てを含む。また,処理・制御部115は処理端末118(ディスプレイ,キーボード,マウス等の入出力手段を備える)と接続されており,ユーザに対して画像等を表示する,あるいはユーザからの入力を受け付けるGUI(Graphic User Interface)を備える。121はXYステージであり,半導体ウェーハ101を移動させ,前記半導体ウェーハの任意の位置の画像撮像を可能にしている。XYステージ121により撮像位置を変更することをステージシフト,例えば偏向器106により電子線を偏向することにより観察位置を変更することをイメージシフトと呼ぶ。一般にステージシフトは可動範囲は広いが撮像位置の位置決め精度が低く,逆にイメージシフトは可動範囲は狭いが撮像位置の位置決め精度が高いという性質がある。
【0040】
図1では反射電子像の検出器を2つ備えた実施例を示したが,前記反射電子像の検出器をなくすことも,数を減らすことも,数を増やすことも可能である。
撮像レシピ作成装置122においては,後述する方法によりSEPの決定およびSEPを撮像するための撮像レシピを生成し,前記レシピに基づきSEM装置を制御することにより画像撮像を行う。前記撮像レシピには,SEPのサイズ・座標,撮像条件,ならびにSEPを撮像するための撮像シーケンス(撮像ポイントの座標や撮像順。広く,前記撮像ポイントのサイズ,撮像条件や調整方法も含む),ならびにAP、AF,AST,ABCC等の登録テンプレートの情報が書き込まれている。
【0041】
また,画像処理装置123においては,撮像された複数のSEP画像を用いたパノラマ画像合成処理や前記パノラマ画像からの回路パターンの輪郭線抽出処理等を行う。形状計測・評価ツールサーバ124では,前記パノラマ画像や輪郭線を用いた形状計測や形状評価等を行う。撮像レシピ作成装置122,画像処理装置123,形状計測・評価ツールサーバ124は処理端末125(ディスプレイ,キーボード,マウス等の入出力手段を備える)と接続されており,ユーザに対して処理結果等を表示する,あるいはユーザからの入力を受け付けるGUI(Graphic User Interface)を備える。また,126は半導体回路パターンの設計レイアウト情報(以降,設計情報)等のデータベースを格納したストレージであり,前記データベースには撮像したSEP画像,生成したパノラマ画像,輪郭線,形状計測・評価結果,撮像レシピ等の情報を保存・共有することが可能である。115,122,123,124で行われる処理は,任意の組合せで複数台の装置に分割,あるいは統合して処理させることが可能である。
【0042】
2.パノラマ画像合成処理
画像処理装置123で行う広域画像であるパノラマ画像合成処理は,入力した広域の撮像領域(EP)をSEMの比較的高い撮像倍率で撮像可能な局所撮像領域(SEP)に分割し,前記SEPをSEMの比較的高い倍率で撮像し,これらの高倍率SEP画像群を画像処理により繋ぎ合せることで一枚の広範囲かつ高倍率(高分解能)なSEM画像(パノラマ画像)を生成する処理である。
【0043】
高精度なパノラマ画像を取得するためには,全てのSEM画像が繋ぎ合せ可能となるSEPの撮像位置(SEP配置)およびSEPの撮像倍率を決定する必要がある。本発明は全SEPが繋ぎ合せ可能となるSEPの決定およびSEP画像の繋ぎ合せに関する。以下,本発明に関わるSEP決定に関する実施例について述べる。
【0044】
パノラマ画像合成処理においては,入力した広域の撮像領域(EP)を適切なSEMの撮像倍率で撮像可能な局所撮像領域(SEP)に分割する。SEPはEPを埋め尽くすように決定する必要がある。ここで適切な撮像倍率とは,ユーザが要求するパターン形状精度を満たす画像分解能が得られる倍率を指す。前記で決定したSEPをSEMで撮像し,これらのSEP画像群を画像処理により繋ぎ合せて広域のパノラマ画像を生成することができる。
【0045】
高精度のパノラマ画像を生成するためには,全SEPが繋がるSEP配置を決定する必要がある。次にSEP間の繋ぎ合せの可否・繋ぎ合せ易さの評価法について述べる。
【0046】
2.1 隣接リンク情報
隣接する二つのSEP間の繋ぎ合せ可否あるいは繋ぎ合せ易さは前記二つのSEP間の重複領域に繋ぎ合せ可能あるいは繋ぎ合せ易いパターンが含まれるか否かによって判定できる。二つのSEP間の重複領域に含まれるパターンを基に前記任意の隣接する(重複領域を共有する)二つのSEP間の繋ぎ合わせ可否または繋ぎ合せ易さを示す指標値を以後「隣接リンク情報」と呼ぶ。具体的に前記隣接リンク情報は入力された回路パターンあるいはマスクパターンの設計情報を基に算出することができる。
【0047】
隣接リンク情報の算出例を図3A乃至図3Cで説明する。図3Aの301は入力した設計パターンで,入力したEP(302)を4つのSEP(303−1〜303−4)で分割した結果を示す。もし,SEP間の重複領域にx方向に変化するパターンを十分含めばx方向のずれを検知できるため,x方向に位置合せが可能となる(例えば,303−2と303−4のSEP)。同様に,前記重複領域内にy方向に変化するパターンを十分含めばy方向に位置合せが可能となる(例えば,303−1と303−2のSEP)。したがって,重複領域内にx,y方向に変化するパターンを十分含めば,二つの隣接するSEPは繋ぎ合せが可能となる(例えば,303−3と303−4のSEP)。
【0048】
図3Bに図3AのSEP配置に対して,隣接するSEP間の繋ぎ合せ可否を評価した結果を示す。同図ではx方向のみに位置合せ可能なSEP間を黒線で結びxを丸で囲んだ記号で表記し(304−2,304−3),y方向のみに位置合せ可能なSEP間を黒線で結びyを丸で囲んだ記号で表記し(304−1),xy両方向に位置合せ可能なSEP間を黒線で結びxyを丸で囲んだ記号で表記し(304−4),重複領域にパターンを含まないSEP間は何も表記をしていない。更に,繋ぎ合せ易さとして重複領域内に含まれるx,y方向別のパターンの線分長を指標値とすることもできるし,その線分長を基に指標値を算出することもできる。
【0049】
図3Cに重複領域間のパターンの線分長を基に繋ぎ合せ易さを算出した結果を示す(305−1〜305−4)。同図においては,x方向の繋ぎ合せ易さをx:数値,y方向の繋ぎ合せ易さをy:数値として表記し,この数値が高いほど繋ぎ合せが容易であることを示している。
【0050】
次に,SEP全体の繋ぎ合せ可否・繋ぎ合せ易さの評価法について述べる。まず,SEP全体が繋ぎ合せ可能となる条件について図4を用いて説明する。同4A乃至図4Cは入力されたEP(401,402,403)および設計情報(404,405,406)に対してそれぞれSEP(407−1〜407−9,408−1〜408−9,409−1〜409−9)で分割した例を示す。
【0051】
図4Aは全てのSEP間の重複領域に繋ぎ合せの手掛かりとなるパターンが含むSEP配置である。この場合,全てのSEPが繋ぎ合せ可能である。しかし,半導体パターンは密に存在しないため,全ての重複領域に繋ぎ合せの手掛かりとなるパターンを含ませるSEP配置が困難な場合がある。その一方で,一部の重複領域にしかパターンを含まなくてもその組合せによっては全SEPが繋がる場合があることに着目した。
【0052】
例えば,図4BのSEP配置は全ての重複領域にパターンが含まれていないが,SEPの繋ぎ合せを408−1,408−2,408−3,408−6,408−5,408−4,408−7,408−8,408−9の順に行うと全てのSEPが繋ぎ合せ可能である。その一方で,図4Cのように全ての重複領域にパターンが含まれていないため,全SEPが繋ぎ合せができない場合も当然ある。
【0053】
すなわち,図4(c)においては409−1,409−2,409−3のSEPは互いに繋ぎ合せが可能であるが,それ以外のSEP(409−4〜409−9)とは繋ぎ合せができない。このように,全ての重複領域にパターンを含まない場合においては,全SEPが繋がる場合と繋がらない場合が存在するため,この両者を正確に判別するために,全SEPの繋ぎ合せ可否判定が必要となる。全SEPが繋がるためには,任意の二つのSEP間が繋ぎ合せ可能であればよい。
【0054】
2.2 隣接リンク情報
そこで本発明は,前記隣接リンク情報を基に任意の二つのSEP間の繋ぎ合わせ可否または繋ぎ合せ易さを示す指標値(以後「任意リンク情報」と呼ぶ)を算出することを特徴とする。具体的に,図5A乃至図5Eに隣接リンク情報を用いて任意リンク情報を算出した例を示す。
【0055】
図5Aは入力されたEP(501)および設計情報(502)に対して9つのSEP(503−1〜503−9)で分割した結果である。図5Bは図5AのSEP配置に対する隣接リンク情報を示す。同図の黒丸は図5AのSEPの中心位置に対応しており,隣接するSEP間でx方向に位置合せ可能ならばその間を実線で結びxを丸で囲んだ記号で表記し(504−1,504−2),同様にy方向に位置合せ可能ならばyを丸で囲んだ記号で表記し(504−3,504−4),xy方向に位置合せ可能ならばxyを丸で囲んだ記号で表記している(504−5〜504−10)。
【0056】
図5Bに示す隣接リンク情報を基に任意の2つのSEP間のx,y方向別の繋ぎ合せ可否を判定できる。例えばSEP503−1とSEP503−9の繋ぎ合せ可否判定について図5C及び図5Dを用いて説明する。図5C及び図5Dは,図5BからSEP503−1とSEP503−9の間に存在する隣接リンク情報をそれぞれx,y方向別に抜き出したものである。図5Cでは505−1〜505−6のリンクを経由して503−1と503−9のSEPがx方向に位置合せ可能となり,図5Dでは506−1〜506−5のリンクを経由して503−1と503−9がy方向に位置合せ可能となることから,503−1と503−9のSEPが繋ぎ合せ可能であることが分かる。同様の判定を二つのSEP間の全ての組合せについて行い,全てxy方向に位置合せ可能ならば全SEPが繋ぎ合せ可能であることが分かる。
【0057】
また本発明は,前記任意リンク情報を評価値としてSEP配置を決定することを特徴とする。任意リンク情報を評価値としてSEP配置を決定することにより,全ての重複領域にパターンを含まないが全SEPが繋がるSEP配置を決定できるケースが増える。これは全重複領域にパターンを含ませることが困難な粗なパターンに対して有効である。
【0058】
図6A乃至図6Dは全てのSEP間の重複領域にパターンを含ませることが困難な例であるが,前述の任意リンク情報を用いることにより全てのSEPが繋がるSEP配置を決定することができる。図6Aに示すように入力されたEP(601)および設計情報(602)に対して603−1〜603−9のSEPで分割し,その隣接リンク情報を図6Bに示すように604−1〜604−8で示している。また,xy両方向に繋ぎ合せ可能なSEP集合を太黒枠で囲んでいる(605および606)。図6Bにおいては,全SEPが二つの繋ぎ合せ可能なSEP集合に分離され,全SEPの繋ぎ合せができない。そこで,この分離された繋ぎ合せ可能集合同士をなるべく繋ぐように各SEPの撮像位置を更新した結果を図6C及び図6Dに示す。図6Cの607−1〜607−9は更新されたSEP配置で,図6Dの608−1〜608−8はその隣接リンク情報である。この場合,分離していた605と606のSEP集合が608−3のリンクにより繋がることが判る。このように,任意リンク情報を指標値としてSEPを決定することで,全ての重複領域にパターンが含まれなくても全てのSEPが繋がるSEP配置が決定できる。また,隣接リンク情報および任意リンク情報は,入力された回路パターンあるいはマスクパターンの設計情報を入力として計算機内で自動算出されることを特徴とし,自動算出された隣接リンク情報あるいは任意リンク情報を基にSEPを自動決定することを特徴とする。設計情報を用いることで,SEPを決定のためだけにマスクあるいはウェーハをSEM撮像する必要がなくなる(SEP決定のオフライン化)。
【0059】
2.3 SEP撮像倍率の決定
前述のSEP配置の決定に加え,SEPの撮像倍率(視野)も同時に決定可能なことを特徴とする。SEPの撮像倍率は任意の値を指定したり(この場合,撮像倍率は固定),あるいは撮像倍率の設定範囲を指定することもできる(例えば,Pmin〜Pmax。この場合,撮像倍率はPmin〜Pmaxの範囲内で決定される)。SEPの撮像倍率を決定する方法として例えば,入力したSEPの撮像倍率の設定可能範囲で,全SEPが繋がるSEP配置が可能なSEP撮像倍率のうち,最大の撮像倍率をSEPの撮像倍率として自動で設定することもできる。
【0060】
本例を図7A乃至図7Eを用いて説明する。入力したEP(701)および設計情報(702)を図7Aに示す。同図の703,704はSEP撮像倍率の設定可能範囲の下限Pminおよび上限Pmaxに相当する撮像倍率のSEPである。図7Bは,SEP撮像倍率を設定可能範囲の上限Pmaxに設定して,前記EPを9つのSEP(705−1〜705−9)に分割した結果である。図7Cの706−1〜706−6は同SEP配置(705−1〜705−9)の隣接リンク情報で,707〜709は全SEPを繋ぎ合せ可能なSEP集合に分割した結果である。SEP撮像倍率Pmaxでは全てのSEPを繋ぎ合せることができなかった。
【0061】
一方,図7DはSEP撮像倍率を設定可能範囲の下限Pminに設定して,前記EPを4つのSEP(710−1〜710−4)に分割した結果である。図7Eの711−1〜711−4は隣接リンク情報で,712は繋ぎ合せ可能なSEP集合を示す。SEP撮像倍率Pminでは全てのSEPを繋ぎ合せることができた。そのため,本例においては撮像倍率をPminと自動決定することで,全てのSEPを繋ぎ合せ可能なSEP配置を決定することができる。ここでは説明のため,二種類の撮像倍率Pmin ,Pmaxを比較して撮像倍率を決定したが,実際にはPmin ,Pmax間の任意の撮像倍率で繋ぎ合せ可否,あるいは繋ぎ合せ易さを評価し,任意の撮像倍率を設定することができる。
【0062】
2.4 隣接リンク情報・任意リンク情報のバリエーション
前記任意リンク情報には,図7の説明で述べたようなSEP全体をお互いに繋ぎ合せ可能なSEPの集合(繋ぎ合せ可能SEP集合)に分割した結果(図7の707,708,709に相当)や,繋ぎ合せ易さが同程度のSEPの集合(繋ぎ合せ容易SEP集合)に分割した結果を含むことを特徴とする。図8に全SEPを繋ぎ合せ容易SEP集合に分割した例を示す。同図の801−1〜801−9はSEP配置を示し,802−1〜802−10は隣接リンク情報(隣接SEP間の繋ぎ合せ易さ)を示す。803〜807は分割された繋ぎ合せ容易集合を示す。繋ぎ合せ容易SEP集合とは繋ぎ合せ易さが同程度のSEPを集合としてまとめたものであり,803〜807の枠は太いもの程,繋ぎ合せが容易であることを示す。繋ぎ合せ容易SEP集合804,807は繋ぎ合せ易さの指標値が0.2以下(小さい程繋ぎ合せ難い)の集合,繋ぎ合せ容易SEP集合803は繋ぎ合せ易さの指標値が0.2より大きく0.5以下の集合であり,繋ぎ合せ容易SEP集合805,806は繋ぎ合せ易さの指標値が0.5より大きく0.8以下の集合である。繋ぎ合せ容易SEP集合の情報を任意リンク情報に含ませることによって,同情報をSEPの自動決定における評価値とすることができる。繋ぎ合せ容易SEP集合の情報はGUI表示することができる。GUI表示の実施例については後述する。
【0063】
また,前記任意リンク情報あるいは隣接リンク情報は,実際にSEP間を繋ぎ合せた場合に想定される位置ずれ量を含む,あるいは前記位置ずれ量を基に算出した値を含むことを特徴とする。また,前記位置ずれ量は設計情報を用いて推定した各SEPの擬似的なSEM画像を実際に繋ぎ合せた場合の位置ずれ量を基に算出することを特徴とする。ここで擬似的なSEM画像とは,実際に得られるSEM画像を模擬して,設計情報に対して実際に発生しうるパターンの変形やSEM撮像のずれや画像ノイズを加えて生成した画像のことである。この擬似的なSEM画像を全SEPについて作成し,擬似的なSEM画像群を実際に繋ぎ合せることによって,実際にSEM画像の撮像・繋ぎ合せを行わなくても,実際に発生しうる繋ぎ合せ誤差を推定することができる。
【0064】
本方法により位置ずれ量を算出した例を図9A乃至図9Dで説明する。図9Aは入力した設計情報(901)およびEP(902)に対して,4つのSEP(903−1〜903−4)で分割した結果である。同SEP配置に対して,各SEPにおける擬似的なSEM画像を作成し(図9Bの904−1〜904−4),これらの画像群を繋ぎ合せた結果を図9Cの905に示す。擬似的なSEM画像904−1〜904−4の位置は設計情報の切り出し位置から明らかなので,繋ぎ合せた画像905における各SEPの位置ずれ量も求めることができる。図9Dに,推定した位置ずれ量を示す。同図の906−1〜906−4は,SEP間のx,y方向別に推定した相対的な位置ずれ量を示している。また,SEP間の相対的な位置ずれ量ではなく,ある基準に対する各SEPの絶対的な位置ずれ量を算出することもできる。同図の907−1〜907−4は各SEPの絶対的な位置ずれ量をベクトル表示したものであり,908−1〜908−4は前記ベクトルの大きさを示す。
【0065】
2.5 禁止領域
ユーザの指定するパターンを「(重複領域の)禁止領域」とし,前記禁止領域がSEP間の重複領域あるいはその近傍に含まれないようにSEP配置を決定することを特徴とする。前記ユーザの指定するパターンには,複雑なOPCパターン等,形状の最適化のため特に検証したいパターンが含まれることを特徴とする。このようなパターンを重複領域(SEP間の繋ぎ目)あるいはその近傍にしないことによって,SEP間の繋ぎ合せ誤差によるパノラマ画像における形状誤差や,画像周辺に発生する場合がある像歪みの影響を避けることができる。また,前記禁止領域の指定は前述のようにユーザが指定することも可能であるし,設計情報を基にパターンの形状の複雑さを評価した指標値やEDAツール等から出力されたデバイス不良の発生し易い危険箇所等を基に自動で指定することも可能である。具体的に,禁止領域の指定および禁止領域を加味してSEPを決定した例を図10A乃至図10Dで説明する。図10Aは入力した設計情報(1001)およびEP(1002)およびユーザが禁止領域を矩形領域(斜線でハッチング)で指定した領域(1003)を示している。図10Bは図10Aで指定した禁止領域がSEP間の重複領域近傍に含まれないようにSEP配置(1004−1〜1004―9)を決定した結果である。
【0066】
禁止領域の指定方法にはバリエーションが考えられる。すなわち,図10Aのように矩形領域で指定することもできるし,図10C1007−1,1007−2に示すように設計情報において線分の集合として指定することもできる。図10Dは図10Cで指定した禁止領域がSEP間の重複領域近傍に含まれないようにSEP配置(1008−1〜1008―5)を決定した結果である。また,これらの禁止領域の指定はユーザが行ってもよいし,EP(1006)内の設計情報(1005)から,パターン形状の複雑さ等を評価する指標値(単位面積辺りのパターンのx,y方向に変化する頻度等)を算出し,前記指標値を基に禁止領域を自動設定することもできる。
【0067】
前記禁止領域を,前記隣接リンク情報あるいは任意リンク情報と同様,SEP配置あるいは撮像倍率の決定の際の指標値として用いることを特徴とする。このことにより,禁止領域がなるべく重複領域に含まれないSEP配置あるいは撮像倍率の決定が実現する。また,前記禁止領域を,前記隣接リンク情報あるいは任意リンク情報と同様,SEP配置と併せてGUI上に表示することを特徴とする。このことにより,ユーザは着目するパターン(例えばOPCパターン)が禁止領域に含まれるか否かを容易に判別することができる。GUI表示の実施例については後述する。
【0068】
2.6 SEP画像の繋ぎ合せ
決定したSEPの撮像画像を画像処理により繋ぎ合せるには,各SEP間の重複領域に含まれるパターンの重なり度合い(相関値)が高くなるように位置合せする必要がある。しかしながら,重複領域は複数存在するため,重複領域における相関値を全て最大にすることはできない(ある重複領域の相関値を最大にすると,他の重複領域における相関値が下がることがある)。そのため,SEPの撮像画像を画像処理により繋ぎ合せる際,前記隣接リンク情報あるいは任意リンク情報におけるSEP間の繋ぎ合せ易さ可否あるいは繋ぎ合せ易さの情報を基に,重複領域毎に相関値を考慮する度合いを重みとして設定することを特徴とする。傾向として大きな重みが設定された重複領域の相関値がなるべく高くなるように繋ぎ合せが行われる。
【0069】
例として,繋ぎ合せが困難な重複領域,例えば繋ぎ合せの手掛かりとなるパターンが全く含まれない重複領域における相関値は画像ノイズのみによって計算される。そのため,このような画像ノイズによって計算された相関値を高くするようなSEP繋ぎ合せは大きな位置ずれを発生させる危険性がある。
【0070】
具体例を図11A乃至図11Eで説明する。図11Aは入力された設計情報(1101)およびEP(1102)に対して,5つのSEP(1103−1〜1103―5)で分割した結果を示す。図11Bは図11AのSEP配置に対して,隣接リンク情報(隣接する2つのSEP間の繋ぎ合せ可否)を算出した結果である(1104−1〜1104―6)。図11Cは図11Bで算出した隣接リンク情報を基に,重複領域毎に相関値を考慮する度合いの重み(1105−1〜1105−7)を設定した結果を示す。本例ではxy両方向に繋ぎ合せ可能なSEP間の重みを1とし,x,yどちらか一方のみ繋ぎ合せ可能なSEP間の重みを0.5とし,重複領域にパターンが含まれないSEP間の重みを0としている。すなわち,各SEPはxy両方向に繋がるSEPとの位置合せを優先し,重複領域にパターンが含まれないSEPとの位置合せは優先度を下げる。また,図11Dは図11AのSEP配置に対して隣接する2つのSEP間の繋ぎ合せ易さを算出した結果(1106−1〜1106−6)を示す。図11Eは図11DのSEP間の繋ぎ合せ易さを基に前記の重複領域の重み(1107−1〜1107−6)を設定した結果を示す。
【0071】
2.7 パターン輪郭線の生成
前述のように決定したSEPを撮像したSEM画像群を繋ぎ合せることにより広範囲・高分解能のパノラマSEM画像が取得できる。
また,広範囲・高分解能なパターン輪郭線の抽出方法としては,図12A乃至図12Eに示すように以下の2通りあることを特徴とする。
・図12Aに示すように、複数のSEPをSEM撮像したSEP画群を画像処理により繋ぎ合せた広範囲のパノラマ画像を得て(1201),図12Bに示した前記パノラマ画像から広範囲のパターン輪郭線を抽出する(1202)。
・複数のSEPをSEM撮像して図12Cに示すSEP画像群を得(1203−1〜1203−4),前記SEP画像群の画像毎にパターン輪郭線を抽出して図12Dのパターン輪郭線群を得(1204−1〜1204−4),前記パターン輪郭線群を繋ぎ合せて図12Eの広範囲のパターン輪郭線を得る(1205)。
【0072】
2.8 全体フロー
以上をまとめてパノラマ画像合成処理及び合成したパノラマ画像を用いたパターンの寸法計測の全体フローを図13Aを用いて説明する。まず,EPの領域と半導体回路あるいはマスクパターンの設計情報を入力する(それぞれステップ1301,1302)。EPは取得したいパノラマ画像の撮像範囲であり,EPの座標は,例えばEDA(Electronic Design Automation)ツールで実行される露光シミュレーション等の結果を基に検出されたデバイス不良が発生しやすいホットスポット(危険ポイント)の座標が入力されたり,あるいはユーザが自身の判断により(必要に応じて前記EDAツールの情報も参考にしながら)入力される場合もある。
【0073】
また,必要に応じてユーザの指定するパターンを含む領域を禁止領域として入力することができる(ステップ1303)。この禁止領域の入力方法としてはユーザが座標や範囲を直接入力してもよいし,GUI上で設計情報を見ながら領域を指定して与えても良い。また,必要に応じて処理パラメータを入力することができる(ステップ1304)。
【0074】
前記処理パラメータとして,ステージ/イメージシフト予想誤差,繋ぎ合せに最低限必要な重複領域内のパターン線分長,設計パターンのコーナーカット長(実パターンはコーナー部が丸まる等の設計情報と形状乖離が発生するためコーナーから一定範囲内の設計パターンデータをカットするためのパラメータ)等を指定することができる。また,必要に応じてSEPの撮像倍率あるいはSEPの撮像倍率の設定可能な範囲を入力することができる。また,必要に応じてSEP間の重複領域幅あるいはSEP間の重複領域幅の設定可能な範囲を入力することができる。禁止領域算出ステップ(1307)では,ステップ1303で入力した禁止領域に加えて,ユーザの指定するパターンを禁止領域として自動で抽出する。前記禁止領域は,設計情報を基にパターンの形状の複雑さを評価した指標値やEDAツール等から出力されたデバイス不良の発生し易い危険箇所等を基に自動で指定することも可能である。
【0075】
SEP配置あるいはSEP撮像倍率は,前記禁止領域あるいは分割指標値算出ステップ(ステップ1308)で算出されるSEP間の繋ぎ合せ可否・繋ぎ合せ易さを評価した分割指標値を基に,SEP決定ステップ(ステップ1309)で決定される。SEPの撮像倍率はステップ1305で入力することができる。ここで,SEPの撮像においてはイメージシフトあるいはステージシフトによる視野ずれが発生するため,SEPの決定時には重複領域に繋ぎ合せの手掛かりとなるパターンが含まれると評価していても,実際には前記視野ずれにより含まれるはずのパターンが重複領域外となる危険がある。
【0076】
そこで,発生しうるイメージシフトおよびステージシフトそれぞれの予想される最大視野ずれ量を入力し(ステップ1304),これらの最大の視野ずれが発生しても繋ぎ合せが可能となるような範囲内でSEPを決定することで視野ずれにロバストなSEPを決定することができる。ここで,各SEPの視野移動がイメージシフト,あるいはステージシフトのどちらの方式で行われるかは,SEPの撮像シーケンスに依存する。そこで,SEP決定ステップにおいては,このような視野移動方式の違いによる視野ずれの違いを加味して,SEP配置,SEP撮像倍率,ならびに各SEPの視野移動方式を決定することを特徴とする。
【0077】
次に,ステップ1309で決定したSEP配置,SEP撮像倍率,SEPへの視野移動方式を撮像レシピとして保存する(ステップ1310)。
【0078】
次に,SEMを用いてステップ1310において作成した撮像レシピに基づき順次,複数のSEPの撮像を行う(ステップ1311)。
【0079】
次に,ステップ1312では,前記複数のSEPにおいてそれぞれ撮像したSEP画像群を画像処理により繋ぎ合わせてパノラマ画像を生成する。また,前記パノラマ画像から広範囲のパターン輪郭線を抽出することもできる。また,前記広範囲のパターン輪郭線は,複数のSEPをSEM撮像してSEP画像群を得,前記SEP画像群の画像毎にパターン輪郭線を抽出してパターン輪郭線群を得,前記パターン輪郭線群を繋ぎ合せることで得ることもできる。
【0080】
ステップ1313において、合成したパノラマSEM画像を処理して例えば図12Eに示したようなパターン間のギャップLg、パタンの幅寸法Lw、パターンの長さLlなどのパターンの寸法やパターンの丸みLrなどの形状情報を計測する。
【0081】
次に、ステップ1311における複数のSEP撮像の詳細な手順を、図1に示したSEMシステムを参照しながら図13Bに基づいて詳細に説明する。
まず図13Bのステップ1311-1において試料である半導体ウェーハまたはマスク(以降、これらを合わせて試料と記載する)をSEM装置のステージ121上に取り付ける。ステップ1311-2において光学顕微鏡等(図1のSEMシステムにおいては記載を省略)でウェーハ上のグローバルアライメントマークを観察することにより,ウェーハの原点ずれやウェーハの回転を補正する。
【0082】
ステップ1311-3において,処理・制御部115でステージコントローラ119を制御してステージ117を移動させ,SEMによる撮像位置がアドレッシングポイント(以降,APと呼ぶ)になるように試料の位置を調整して撮像し,アドレッシングのパラメータを求め,該求められたパラメータに基づいてアドレッシングを行う。
ここでAPについて説明する。SEPを観察する場合,直接SEPを観察しようとすると,ステージの位置決め誤差により,撮像ポイントが大きくずれてSEMの視野から外れてしまう可能性がある。そこで,一旦位置決め用として予め座標値とテンプレート(撮像ポイントのパターン)とが与えられたAPを観察する。この撮像ポイントのテンプレートは撮像レシピに登録しておく。以降,これをAP登録テンプレートと呼ぶ。APはSEPの近傍(最大でもビームシフトにより移動可能な範囲)から選択する。また,APはSEPに対して一般に低倍視野であるため,多少の撮像位置のずれに対しても,撮像したいパターンが完全のSEMの視野から外れてしまう可能性は低い。そこで,予め登録されたAP登録テンプレートと,実際に撮像されたAPのSEM像(実撮像テンプレート)とをマッチングすることにより,APにおける撮像ポイントの位置ずれ量を推定することができる。AP,SEPの座標値は既知なので,AP−SEP間の相対変位量を求めることができ,かつAPにおける撮像ポイントの位置ずれ量も前述のマッチングにより推定できるため,前記相対変位量から前記位置ずれ量を差し引くことにより,実際に移動すべきAP撮像位置からSEPまでの相対変位量が分かる。前記相対変位量分だけ,位置決め精度の高いビームシフトによって移動(ステージ121は停止したまま)することにより,高い座標精度でSEPを撮像することが可能となる。
【0083】
そのため,登録されるAPは,(1)SEPからビームシフトにより移動可能な距離に存在するパターンであり(かつSEPにおけるコンタミネーションの発生を抑えるためAP撮像時の範囲(Field of view:FOV)にSEP撮像時のFOVを含まないことを条件とする場合もある),(2)APの撮像倍率はステージの位置決め精度を加味してSEPの撮像倍率よりも低く,(3)パターン形状あるいは明度パターンが特徴的であり,AP登録テンプレートと実撮像テンプレートとのマッチングがし易い、等の条件を満たしていることが望ましい。どの場所をAPとして選択するかに関しては,この条件をシステム内部で評価することで,良好なAPの選択および撮像シーケンスの決定を行うことができる。
【0084】
予め登録するAP登録テンプレートはCAD画像,あるいはSEM画像,あるいは一旦CADデータテンプレートで登録しておいたものを実際の撮像時に得たAPのSEM画像をSEM画像テンプレートとして再登録する等のバリエーションが考えられる。
【0085】
前述のAP選択範囲について補足する。一般的に電子ビーム垂直入射座標は複数のSEPの中心座標に設定されるので,APの選択範囲は最大でもSEPを中心としたビームシフト可動範囲としたが,電子ビーム垂直入射座標が複数のSEPの中心座標と異なる場合は,前記電子ビーム垂直入射座標からのビームシフト可動範囲が選択範囲となる。また撮像ポイントに要求される許容電子ビーム入射角によっては,電子ビーム垂直入射座標からの探索範囲もビームシフト可動範囲より小さくなることがある。これらは他のテンプレートについても同様である。以降の説明において,SEPの撮像の場合は特に断りのない限り電子ビーム垂直入射座標とSEPの中心座標は同じとして説明するが,前述の通り本発明はこれに限られるものではない。
【0086】
次にステップ1311-4において,処理・制御部115の制御及び処理に基づいて,ビームシフトにより撮像位置をオートフォーカスポイント(以降,AFと呼ぶ)に移動して撮像し,オートフォーカス調整のパラメータを求め,該求められたパラメータに基づいてオートフォーカス調整を行う。
【0087】
ここでAFについて説明する。撮像時には鮮明な画像を取得するためオートフォーカスを行うが,試料に電子線を長く照射すると汚染物質が試料に付着してしまう(コンタミネーション)。そこで,SEPにおけるコンタミネーションの付着を抑えるため,一旦SEP周辺の座標をAFとして観察し,オートフォーカスのパラメータを求めてから前記パラメータを基にEPを観察するという手段がとられる。
【0088】
そのため,登録されるAFは,(1)AP,SEPからビームシフトにより移動可能な距離に存在するパターンであり,かつAF撮像時のFOVにEP撮像時のFOVは含まれない,(2)AFの撮像倍率はSEPの撮像倍率と同程度である(ただし,これはSEP用のAFの場合。AP用のAFの場合は前記APの撮像倍率と同程度の撮像倍率でAFを撮像する。後述するAST,ABCCに関しても同様),(3)オートフォーカスをかけ易いパターン形状をもつ(フォーカスずれに起因する像のぼけを検出し易い)等の条件を満たしていることが望ましい。本発明によれば,AF選択についても,APと同様,前述の条件をシステム内部で評価し,自動で良好なAFの選択を行うことが可能となる。
【0089】
次にステップ1311-5において,処理・制御部115の制御及び処理に基づいて,ビームシフトにより撮像位置をオートスティグマポイント(以降,ASTと呼ぶ)に移動して撮像し,オートスティグマ調整のパラメータを求め,該求められたパラメータに基づいてオートスティグマ調整を行う。
【0090】
ここでASTについて説明する。撮像時には歪みのない画像を取得するため非点収差補正を行うが,AFと同様,試料に電子線を長く照射すると汚染物質が試料に付着してしまう。そこで,SEPにおけるコンタミネーションの付着を抑えるため,一旦SEP近くの座標をASTとして観察し,非点収差補正のパラメータを求めてから前記パラメータを基にSEPを観察するという手段がとられる。
【0091】
そのため,登録されるASTは,(1)AP,SEPからビームシフトにより移動可能な距離に存在するパターンであり,かつAST撮像時のFOVにEP撮像時のFOVは含まれない,(2)ASTの撮像倍率はSEPの撮像倍率と同程度である,(3)非点収差補正をかけ易いパターン形状をもつ(非点収差に起因する像のぼけを検出し易い)等の条件を満たしていることが望ましい。
【0092】
本実施例によれば,AST選択についても,APと同様,前述の条件をシステム内部で評価し,自動で良好なASTの選択を行うことが可能となる。
【0093】
次にステップ1311-6において,処理・制御部115の制御及び処理に基づいて,ビームシフトにより撮像位置をオートブライトネス&コントラストポイント(以降,ABCCと呼ぶ)に移動して撮像し,ブライトネス・コントラスト調整のパラメータを求め,該求められたパラメータに基づいてオートブライトネス・コントラスト調整を行う。ここでABCCについて説明を加えておく。撮像時には適切な明度値及びコントラストをもつ鮮明な画像を取得するため,例えば二次電子検出器109におけるフォトマル(光電子増倍管)の電圧値等のパラメータを調整することよって,例えば画像信号の最も高い部分と最も低い部分とがフルコントラストあるいはそれに近いコントラストになるように設定するが,AFと同様,試料に電子線を長く照射すると汚染物質が試料に付着してしまう。そこで,EPにおけるコンタミネーションの付着を抑えるため,一旦EP近くの座標をABCCとして観察し,ブライトネス・コントラスト調整のパラメータを求めてから前記パラメータを基にEPを観察するという方法がとられる。
【0094】
そのため,登録されるABCCは,(1)AP,SEPからビームシフトにより移動可能な距離に存在するパターンであり,かつABCC撮像時のFOVにSEP撮像時のFOVは含まれない,(2)ABCCの撮像倍率はSEPの撮像倍率と同程度である,(3)ABCCにおいて調整したパラメータを用いて測長ポイントにおいて撮像した画像のブライトネスやコントラストが良好であるために,ABCCは前記測長ポイントにおけるパターンに類似したパターンである等の条件を満たしていることが望ましい。本発明によれば,ABCC選択についても,APと同様,前述の条件をシステム内部で評価し,自動で良好なABCCの選択を行うことが可能となる。
【0095】
なお,前述したステップ1311-3,1311-4,1311-5,1311-6におけるAP,AF,AST,ABCCの撮像は場合によって,一部あるいは全てが省略される,あるいは1311-3,1311-4,1311-5,1311-6の順番が任意に入れ替わる,あるいはAP,AF,AST,ABCCの座標で重複するものがある(例えばオートフォーカス,オートスティグマを同一箇所で行う)等のバリエーションがある。
【0096】
最後にステップ1311-7においてビームシフトにより撮像ポイントをSEPに移動してステップ1309で決定された撮像枚数分だけ順次SEPを撮像する。
次に、先に説明したステップ1312において、複数枚撮像したSEPのSEM画像を合成する。
【0097】
SEPにおいても,撮像したSEM画像と事前に撮像レシピに登録された前記SEP位置に対応する登録テンプレートとをマッチングし,計測位置のずれを検出することがある。撮像レシピ作成装置122で作成される撮像レシピには前述の撮像ポイント(SEP,AP,AF,AST,ABCC)の座標や撮像シーケンス,撮像条件等の情報が書き込まれており,SEMは前記撮像レシピに基づきSEPを観察する。図3Cに低倍像1320上におけるSEP1321,AP1322,AF1323,AST1324,ABCC1325のテンプレート位置の一例を点線枠で図示する。
【0098】
本実施例によれば,1回の撮像では取得できない比較的広い領域の高倍率のSEM画像を用いてパターンの寸法の計測やパターン形状評価等を行うことができる。
【0099】
3.SEP候補の選択によるSEP決定
2.で述べたSEP決定ステップにおいて全てのユーザ要求を満たすSEP配置が原理的に存在しない場合がある。例えば,SEPを指定した撮像倍率にするためには,どうしても全SEPの繋ぎ合せが困難となり,逆に全SEPが繋ぎ合せ可能とするためには,どうしてもSEPの撮像倍率が指定した値よりも小さくせざるを得ない等である。
そこで第二の実施例として,そのような場合であってもなるべくユーザの要求を満たすSEP配置を準最適解として決定する方式を提供する。本処理のフローを図14を用いて説明する。
【0100】
本処理はパノラマ画像合成処理の条件を入力し(ステップ1301〜1306),禁止領域(ステップ1307)を算出した後に,ステップ1308で算出した分割指標値を基にSEPの撮像位置あるいは撮像倍率の異なるSEP配置の候補(以後,SEP候補と呼ぶ)を複数算出することを特徴とする(ステップ1401)。これらの候補から適切な準最適解を決定するための手段として,これらの候補をGUI上に表示すると共に,判断基準として,隣接リンク情報あるいは任意リンク情報を表示させ(ステップ1402),SEP候補群からSEPを選択(ステップ1403)することを特徴とする。
【0101】
SEP選択時にはSEP配置とSEP候補の選択の手掛かりとなる情報を併せてユーザに表示することで,ユーザは各SEP候補がユーザの要求項目を満たすか否かを容易に判別することができ,適切なSEP候補を選択することが可能となる。
【0102】
ユーザの要求項目としては,例えばSEPの配置,SEP撮像倍率,SEPの繋ぎ合せ易さ,前記禁止領域とSEP間の重複領域との重複量,SEP間の重複領域幅,SEP数(少ない程,撮像時間が短い)などがある。これらの各項目をユーザに分かり易くGUI上に可視化することで,ユーザはSEP候補の選択が容易となる。
【0103】
図15A乃至図15FにSEP候補の算出例を示す。図15A乃至図15Fは入力した設計情報(1501)およびEP(1502)に対する3つのSEP候補を示す。図15A及び図15Bの1503−1〜1503−9,図15C及び図15Dの1506−1〜1506−4,および図15E及び図15Fの1509−1〜1509−5はそれぞれのSEP配置である。また,図15Bの1504−1〜1504−7,図15Dの1507−1〜1507−4,および図15Fの1510−1〜1510−6はそれぞれのSEP配置に対する隣接リンク情報を示す。また,図15Bにおいて全SEPは1501−1および1501−2の二つの繋ぎ合せ可能SEP集合に分割され,図15Dおよび図15Fにおいては全SEPが繋ぎ合せ可能である(1508および1511)。
すなわち,図15AのSEP配置はSEPの撮像倍率が高いが,全SEPが繋がらない。一方,図15C乃至図15FはSEPの撮像倍率が図15Aより低くなるが全SEPが繋ぎ合せ可能である。また,図15E及び図15Fは図15C及び図15Dの場合に比べてSEP間の重複領域幅が大きくSEPの数も多いが重複領域に含まれる禁止領域(1512)の面積が少ない。
【0104】
このように,SEPの撮像倍率,繋ぎ合せ易さ,および禁止領域と重複領域との重複量の間にはトレードオフがあるためこの3つの要求を満たすSEP配置は困難である。しかし,これらのユーザの要求項目を全て満たすSEP配置が決定できなくても,本例のようにこれらのユーザの要求項目に関する情報を可視化することで,ユーザはユーザの要求項目をなるべく満たすSEP配置を準最適解として容易に決定することができる。また,ユーザに表示する情報のバリエーションとしては,SEP全体をお互いに繋ぎ合せ可能なSEPの集合に分割した結果や,繋ぎ合せ易さが同程度のSEPの集合に分割した結果を表示することもできる。また,実際にSEP間を繋ぎ合せた場合に想定される位置ずれ量(推定位置ずれ量),あるいは前記位置ずれ量を基に算出した値を表示することもできる。
【0105】
ここで,前記推定位置ずれ量は設計情報を用いて推定した各SEPの擬似的なSEM画像を実際に繋ぎ合せた場合の位置ずれ量を基に算出することを特徴とする。推定位置ずれ量の算出には画像生成および繋ぎ合せが必要であるため多くの処理時間を要する。そこで,算出した全てのSEP候補あるいは指定したSEP候補に対してのみ,推定位置ずれ量を算出して表示することもできる。
【0106】
4.GUI
本発明における入力・出力情報の設定あるいは表示を行うGUIの実施例を図16に示す。図16中のウィンドウ1701内に一画面で描画された各種情報は任意の組合せでウィンドウに分割してディスプレイ等に表示することができる。また,図中の**はシステムに入力された,あるいは出力された任意の数値(あるいは文字列)や数値の範囲であることを示す。
【0107】
ボックス1702はパノラマ画像合成処理を行う対象となるEPのリストを表示している。本リストからEPを選択してパノラマ画像合成処理を行うこともできるし,バッチ処理で全EPに対してパノラマ画像合成処理を行うこともできる。バッチ処理を行う場合は,処理を行うEPにチェックをつけ(1703),そのEPのみ処理を行うこともできる。本例では,EPのリストから3番目のEPを選択している。1704は選択したEPのIDを表示している。ボックス1705は選択したEPの撮像範囲を表示している。撮像範囲は矩形領域の左上と右下の座標で与えてもよいし,EPの中心座標と視野で与えてもよい。ボックス1706においてはSEPの撮像倍率範囲およびボックス1707においてはSEP間の重複領域幅の範囲を設定することができる。
【0108】
範囲の入力においては,範囲の下限と上限を指定することもできるし,下限と上限を同じ値で設定することでSEPの撮像倍率やSEP間の重複幅を指定することができる。ボックス1708はEPとその周辺のパターンを表示する。EPの範囲を点線の枠(1709)で示し,EP周辺の回路あるいはマスクパターンの設計情報を網状のハッチングを施した図形(1710)で表示している。また,手動あるいは設計情報を基に自動で設定した禁止領域を斜め線のハッチングを施した領域(1711)で表示している。ボックス1712〜1715では,SEP決定における処理パラメータ(イメージ/ステージシフト予想誤差,SEP間の繋ぎ合せに必要なパターン線分長の最小値,コーナーカット長等)を設定することができる。
【0109】
上記EP,SEPおよび処理パラメータの設定を行った後,ボタン1716を押すと,上記選択したEPに対してSEPの候補を算出する。また,ボタン1717を押すとEPのリストでチェックのついた全てのEPに対してSEP候補の算出を行う。
【0110】
バッチ処理においては,対象となる各EPに対してSEP候補を算出しておき,後からユーザが各EPのSEP候補を選択することもできる。また,算出するSEP候補数はボックス1718で指定することもできる。
【0111】
ボックス1719〜1721は,選択したEPに対して算出された3つのSEP候補を示す。1723〜1724は各SEP候補の詳細情報を示す。この場合,SEP候補1は撮像倍率100Kの9枚のSEP配置となっており,9枚のうち互いに繋ぎ合せ可能なSEP数は最大で4枚であることを示している。
【0112】
ボックス1725〜1727は各SEP候補のSEP配置を表示している。図中の黒枠(1728)はSEPで黒丸(1729)はその中心座標を示す。また,前記SEP候補の表示の際はボックス1708と同様に設計情報,EPおよび禁止領域を重ねて表示することもできる。また,重複領域に含まれる禁止領域内のパターンは太線で強調して表示することもできる(1730)。
ボックス1729〜1731は,それぞれボックス1725〜1727に示すSEP配置に対するリンク情報を表示している。隣接リンク情報をx,yあるいはxyを丸で囲んだ記号とSEP間を結ぶ黒線で表示することができ,それぞれx方向に位置合せ可能(1732),y方向に位置合せ可能(1733)あるいはxy方向に位置合せ可能(1734)であることを示す。また,SEP全体をお互いに繋ぎ合せ可能なSEP集合(繋ぎ合せ可能SEP集合)で分割し,各分割されたSEP集合のSEPの中心位置を太い黒枠で囲んで表示することもできる。
【0113】
本例では,SEP候補1は3つの繋ぎ合せ可能SEP集合1735と1736に分断され,全SEPが繋ぎ合せができないことを示している。一方,SEP候補2およびSEP候補3は,全SEPが太い黒枠で囲まれており全SEPが繋ぎ合せ可能であることを示している。
【0114】
また,表示する情報としては図3に示すようなSEP間の繋ぎ合せ易さを表示することもできるし,図8で示すような全SEPを互いに繋ぎ合せが同程度のSEP集合(繋ぎ合せ容易SEP集合)に分割した結果を表示することも出来る。また,図5に示すように任意のSEP間のx,y方向別の繋ぎ合せ可否を表示することもできる。
【0115】
ユーザは各SEP候補のSEP配置とSEP間の連結関係を示す情報を判断基準にして,ボタン1739〜1741を押してSEPを選択する。本例では3つのSEP候補を表示しているが,それ以上のSEPを候補を算出することもできる。その場合,スクロールバー1742を動かしてその他のSEP候補を見ることができる。
【0116】
また,SEP候補の表示においては各SEP候補に表示の優先度を付けて,表示の優先度の高い順にSEP候補を表示することもできる。表示の優先度としては,SEP撮像倍率,繋ぎ合せ易さ,禁止領域と重複領域との重複量といったユーザの要求項目をどの程度満たすのかを評価して優先度を設定することもできる。
【0117】
また,SEP候補の詳細情報のバリエーションとして,図17に示すように実際の繋ぎ合せ処理を行った場合の推定位置ずれ量を表示することもできる。推定位置ずれ量は,決定したSEP配置(1801)および設計情報から生成した擬似的なSEM画像を繋ぎ合せ(1802),そのときの位置ずれ量を各SEPあるいはSEP間で表示することも出来る(1803)。SEP間のx,y方向別に推定した相対的な位置ずれ量を表示することも出来るし,SEP間の相対的な位置ずれ量ではなく,ある基準に対する各SEPの絶対的な位置ずれ量を表示することもできる。また,位置ずれの方向や大きさを矢印で表示することもできる。
【0118】
また,SEP候補の表示法としては図18に示すようにユーザの要求項目(例えば,SEP撮像倍率,繋ぎ合せ易さ,禁止領域と重複領域との重複量,SEP間の重複領域幅等)を軸にとり,その軸に従ってSEP候補を表示する位置を変更することもできる。図18では重複領域幅およびSEP撮像倍率をそれぞれX軸(1901)およびY軸(1902)にとり,6つのSEP候補(1903−1〜1903−6)を表示している。ユーザは表示されたSEP候補の中から,ボタン1904−1〜1904−6を押してSEPを選択する。本例は重複領域幅とSEP撮像倍率の2項目についてそれぞれ値を振った結果を二次元表示しているが,任意の3項目についてそれぞれ値を振った結果を三次元表示する等のバリエーションが可能である。
【0119】
5.半導体デバイスの設計・製造ラインおよびプロセスへの適用
本発明を半導体デバイスの設計・製造ラインおよびプロセスに適用した場合のシステム構成の実施例を図19A及び図19B及び図20を用いて説明する。
図19Aにおいて1601はマスクパターン設計装置,1602はマスク描画装置,1603はマスクパターンのウェーハ上への露光・現像装置,1604はウェーハのエッチング装置,1605および1607はSEM装置,1606および1608はそれぞれ前記SEM装置を制御するSEM制御装置,1609はEDA(Electronic Design Automation)ツールサーバ,1160はデータベースサーバ,1611はデータベースを保存するストレージ,1612は撮像レシピ作成装置,1613は画像処理装置,1614は生成したパターン形状の計測・評価ツールサーバであり,これらはネットワーク1615を介して情報の送受信が可能である。
【0120】
データベースサーバ1160にはストレージ1611が取り付けられており,(a)EPのサイズ・座標,(b)設計情報(マスク設計情報(OPCなし/あり),ウェーハ転写パターン設計情報),(c)撮像レシピ生成ルール,(d)生成された撮像レシピ(SEP,撮像シーケンス含む),(e)撮像・生成した画像(SEP画像,パノラマ画像),(f)画像から抽出した輪郭線,(g)シミュレーションパターン,(h)計測・評価結果の一部または全てを,品種,製造工程,日時,データ取得装置等とリンクさせて保存し,また参照することが可能である。
【0121】
また,同図においては例として二台のSEM装置1605,1607がネットワークに接続されているが,本発明においては,任意の複数台のSEM装置において撮像レシピをデータベースサーバ1611により共有することが可能であり,一回の撮像レシピ作成によって前記複数台のSEM装置を稼動させることができる。また複数台のSEM装置でデータベースを共有することにより,過去の前記撮像あるいは計測の成否や失敗原因の蓄積も早く,これを参照することにより良好な撮像レシピ生成の一助とすることができる。
【0122】
図19Bは一例として図19AにおけるSEM制御装置(A)1606,SEM制御装置(B)1608,EDAツールサーバ1609,データベースサーバ1160,撮像レシピ作成装置1612、画像処理装置1613、形状計測・評価ツールサーバ1614を一つの装置1616に統合したものである。本例のように任意の機能を任意の複数台の装置に分割,あるいは統合して処理させることが可能である。
【0123】
また、図19Bにおける装置1616からEDAツールサーバ1609とデータベースサーバ1160とを分離して設置する構成も可能である。
【0124】
上記実施例で説明したようなパノラマ画像を用いることによって,半導体設計・製造の効率化を図ることができる。図20に半導体デバイスの設計・製造フローを示す。まず,半導体の回路設計を行い(ステップ2001),次にマスクパターンのレイアウトを設計する(ステップ2002)。このとき,光近接効果補正(Optical Proximity Correction:OPC)等をパターンに施すことができる。次に,前記レイアウトを基にマスクを製造し(ステップ2003),このマスクパターンをウェーハ上に転写(露光)してウェーハを製造する(ステップ2005)。
【0125】
本発明によれば,例えばマスク製造(ステップ2003)の後,前記マスクをSEM撮像して生成した広視野かつ高分解のSEMのパノラマ画像を用いてマスクの出来栄えを広範囲に渡って検査することができる(ステップ2004)。例えば,前記パノラマ画像から抽出したマスクパターン形状とマスクの設計情報との比較により,マスクの製造誤差を算出することができるし,マスク上のパターンの欠陥を検出することもできる。
【0126】
また,前記広範囲かつ高分解能なマスクパターン形状を入力としてウェーハ上に転写されるパターン形状を高精度にシミュレーション予測することが可能となり(ステップ2006),前記予測結果に基づきマスク上のパターンの修正(ステップ2007),あるいはマスクのレイアウト設計の修正(ステップ2008)を行うことができる。レイアウト設計の修正にはOPCパターン形状の修正も含まれ,効率的なOPC検証・修正を実現することができる。
【0127】
また,前記予測結果に基づき露光条件等の製造パラメータを調整(ステップ2009)することでウェーハ上の転写パターン形状とウェーハパターンの設計形状との乖離を低減することができ,高い歩留まりを実現することができる。更に,本発明によればウェーハのパノラマ画像も生成可能であり,前記ウェーハのパノラマ画像から広範囲かつ高分解能なウェーハパターン形状を得ることができる。前記ウェーハパターン形状とウェーハパターンの設計形状との比較により,マスク転写誤差の算出や,露光条件等の製造パラメータへのフィードバックが実現する。
【0128】
以上の実施例では,パノラマ画像を生成した後,前記パノラマ画像から回路パターンの輪郭線を抽出することによって広域な輪郭線情報を取得する方法について説明したが,本発明はこれに限定されるものではなく,複数のSEPの撮像画像から輪郭線群を抽出し,その後に前記輪郭線群を繋ぎ合せることによって広域な輪郭線情報を取得してもよい。
また,以上の実施例は,走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いたシステムについて説明したが,本発明はこれに限定されるものではなく,走査型イオン顕微鏡(Scanning Ion Microscope:SIM)又は走査型透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope:STEM)等の走査荷電粒子顕微鏡に応用することが可能である。
【符号の説明】
【0129】
101…半導体ウェーハ 102…電子光学系 103…電子銃 104…電子線(一次電子)105…コンデンサレンズ 106…偏向器 107…ExB偏向器 108…対物レンズ 109…二次電子検出器 110,111…反射電子検出器 112〜114…A/D変換器 115…処理・制御部 116…CPU 117…画像メモリ 118,126…処理端末 119…ステージコントローラ 120…偏向制御部 121…ステージ 122…撮像レシピ作成装置 123…画像処理装置 124…形状計測・評価ツールサーバ 126…データベース(ストレージ) 302…EP 303-1〜303-4…SEP 401〜403…EP 407-1〜407-9,408-1〜408-9,409-1〜409-9…SEP 501…EP 503-1〜503-9…SEP 601…EP 603-1〜603-9…SEP 701…EP 03,704,705-1〜705-9…SEP 902…EP 903-1〜903-4…SEP 904-1〜904-4…推定SEM画像 1002…EP 1003…禁止領域 1004-1〜1004-4…SEP 1006…EP 1008-1〜1008-5…SEP,
1102…EP 1103-1〜1103-5…SEP 1201…パノラマSEM画像 1203-1〜1203-4…各SEPのSEM画像 1501…EP 1503-1〜1503-9…SEP 1506-1〜1506-4…SEP 1509-1〜1509-4…SEP 1601…マスクパターン設計装置 1602…マスク描画装置 1603…露光・現像装置 1604…エッチング装置 1605,1007…SEM装置 1606,1608…SEM制御装置 1609…EDAツールサーバ 1160…データベースサーバ 1611…データベース 1612…撮像レシピ作成装置 1613…画像処理装置 1614…形状計測・評価ツールサーバ 1615…ネットワーク 1615…EDAツール,データベース管理,撮像レシピ作成,画像処理,形状計測・評価ツール SEM制御用統合サーバ&演算装置 1701…GUI画面 1717…SEP候補算出ボタン 1718…SEP候補数設定ボックス 1719〜1721…SEP候補表示ボックス 1725〜1727…SEP配置表示ボックス 1728…SEP 1739〜1741…SEP選択ボタン 1904-1〜1904-6…SEP選択ボタン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査型電子顕微鏡手段と、
該走査型電子顕微鏡手段で表面にパターンが形成された試料を撮像する撮像レシピを作成し、該作成した撮像レシピに基づいて前記走査型電子顕微鏡手段で前記試料を撮像して得た該試料の画像を処理する処理手段と、
該処理手段で処理した前記試料の画像から前記試料上に形成されたパターンの寸法情報を抽出する寸法情報抽出手段と、
前記処理手段と前記寸法情報抽出手段とで処理する情報及び処理した情報並びに前記試料の設計情報を入出力する入出力手段と、
前記顕微鏡手段と前記処理手段と前記寸法情報抽出手段と前記入出力手段とを制御する制御手段とを備えた走査型電子顕微鏡装置であって、
前記処理手段は、前記入出力手段で入力した設計情報に基づいて前記複数の画像のうち隣接する領域の画像間の繋ぎ合せの可否または繋ぎ合せ易さを示す指標値を算出する指標値算出部と、該指標値算出部で算出した繋ぎ合せ易さを示す指標値に基づいて前記複数の画像のそれぞれの撮像領域と撮像倍率とを含む局所撮像領域群の撮像レシピを作成する局所撮像領域群撮像レシピ作成部と、該局所撮像領域群撮像レシピ作成部で作成した撮像レシピに基づいて前記走査型電子顕微鏡を制御して前記試料上の隣接する複数の領域をそれぞれ一部重ねて順次撮像して得た複数の画像を繋ぎ合せて広域の画像を生成する局所画像群繋ぎ合せ部とを有し、
前記寸法情報抽出手段は前記処理手段で複数の画像を繋ぎ合せて生成した広域の画像から前記パターンの寸法情報を抽出する
ことを特徴とする走査型電子顕微鏡装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記入出力手段から入力された撮像領域の情報と前記パターンの設計情報とを用いて前記走査型電子顕微鏡手段で撮像する前記試料上の隣接する複数の領域の画像間の重なり幅を算出し、該算出した重なり幅の情報を用いて前記走査型電子顕微鏡手段を制御して前記走査型電子顕微鏡手段で前記試料を撮像することを特徴とする請求項1記載の走査型電子顕微鏡装置。
【請求項3】
走査型電子顕微鏡手段と、
該走査型電子顕微鏡手段で表面にパターンが形成された試料を撮像するための撮像レシピを作成する撮像レシピ作成手段と、
該撮像レシピ作成手段で作成した撮像レシピに基づいて前記走査型電子顕微鏡手段で前記試料を撮像して得た該試料の画像を処理する画像処理手段と、
該画像処理手段で処理した前記試料の画像から前記試料上に形成されたパターンの寸法情報を抽出する寸法情報抽出手段と、
表示画面を備えて前記画像処理手段と前記寸法情報抽出手段とで処理する情報及び処理した情報を入出力する入出力手段と、
前記顕微鏡手段と前記撮像レシピ作成手段と前記画像処理手段と前記寸法情報抽出手段と前記入出力手段とを制御する制御手段とを備えた走査型電子顕微鏡装置であって、
前記撮像レシピ作成手段は、前記走査型電子顕微鏡手段で撮像して得た前記試料の低倍率の画像が表示された前記入出力手段の画面上で指定された高倍率画像取得領域の設計情報を用いて該指定された高倍率画像取得領域を複数の局所撮像領域に分割したときに前記複数の局所撮像領域の画像のうち隣接する局所撮像領域の画像間の繋ぎ合せの可否または繋ぎ合せ易さを示す指標値として任意の隣接する二つの局所撮像領域間の重複領域に含まれるパターンを基に該任意の隣接する二つの局所撮像領域間の繋ぎ合わせ可否または繋ぎ合せ易さを示す指標値(隣接リンク情報)と,該繋ぎ合わせ可否または繋ぎ合せ易さを示す指標値を基に任意の二つの局所撮像領域間の繋ぎ合わせ可否または繋ぎ合せ易さを示す指標値(任意リンク情報)とを含む指標値を算出し、該算出したする指標値を用いて撮像レシピを作成する機能を有し、
前記制御手段は、前記撮像レシピ作成手段で作成した撮像レシピに基づいて前記走査型電子顕微鏡手段を制御して前記各局所撮像領域を高倍率で撮像させる機能を有し、
前記画像処理手段は、前記走査型電子顕微鏡手段で撮像して得た各局所撮像領域の高倍率の画像を繋ぎ合わせた高倍率の広域画像を作成する機能を有し、
前記寸法情報抽出手段は、前記画像処理手段で作成した高倍率の広域画像から前記パターンの寸法を抽出する機能を有する
ことを特徴とする走査型電子顕微鏡装置。
【請求項4】
前記撮像レシピ作成手段の複数の領域に分割する機能は前記高倍率画像取得領域を複数の領域に分割することを複数のケースについて求めることを含み、前記入出力手段は前記撮像レシピ作成手段で求めた複数の分割のケースを前記表示画面上に並べて表示し、前記制御手段は前記並べて表示した画面上で指定された分割のケースに基づいて前記走査型電子顕微鏡手段を制御して前記分割された各領域を撮像させることを特徴とする請求項3記載の走査型電子顕微鏡装置。
【請求項5】
前記撮像レシピ作成手段は、前記試料の低倍率の画像が表示された画面上で指定された高倍率画像取得領域の画像情報と該指定された高倍率画像取得領域の設計情報とを用いて該指定された高倍率画像取得領域を隣接する領域同士が互いに前記パターンのエッジの一部を含んで重なり合うようにして複数の領域に分割することを特徴とする請求項3記載の走査型電子顕微鏡装置。
【請求項6】
前記試料が露光用マスクであり、前記パターンが光近接効果補正がなされたパターンであることを、特徴とする請求項1または3に記載の走査型電子顕微鏡装置。
【請求項7】
表面にパターンが形成された試料を走査型電子顕微鏡を用いて低倍率で撮像し、
該撮像して得た前記試料の低倍率の画像を画面上に表示し、
該低倍率の画像が表示された画面上で指定された高倍率画像取得領域の設計情報を用いて該指定された高倍率画像取得領域を複数の局所撮像領域に分割したときに隣接する局所撮像領域の画像間の繋ぎ合せの可否または繋ぎ合せ易さを示す指標値を算出し、該算出した繋ぎ合せ易さを示す指標値に基づいて前記複数の画像のそれぞれの撮像領域と撮像倍率とを含む局所撮像領域群の撮像レシピを作成し、
該作成した撮像レシピに基づいて前記分割した各局所撮像領域を前記走査型電子顕微鏡で撮像して前記各局所撮像領域の高倍率の画像を取得し、
該撮像して得た各局所撮像領域のそれぞれの高倍率の画像を繋ぎ合わせて高倍率の広域画像を作成し、
該作成した高倍率の広域画像から前記パターンの寸法を抽出する
ことを特徴とする走査型電子顕微鏡装置を用いたパターン寸法計測方法。
【請求項8】
前記高倍率画像取得領域を複数の領域に分割することを複数のケースについて求め、該求めた複数の分割のケースを前記表示画面上に並べて表示し、該表示した画面上で指定された分割のケースに基づいて前記走査型電子顕微鏡手段で前記分割された各領域を高倍率で撮像することを特徴とする請求項7記載の走査型電子顕微鏡装置を用いたパターン寸法計測方法。
【請求項9】
前記撮像レシピを作成する工程において、前記試料の低倍率の画像が表示された画面上で指定された高倍率画像取得領域の画像情報と該指定された高倍率画像取得領域の設計情報とを用いて該指定された高倍率画像取得領域を隣接する領域同士が互いに前記パターンのエッジの一部を含んで重なり合うようにして複数の領域に分割することを特徴とする請求項7記載の走査型電子顕微鏡装置を用いたパターン寸法計測方法。
【請求項1】
走査型電子顕微鏡手段と、
該走査型電子顕微鏡手段で表面にパターンが形成された試料を撮像する撮像レシピを作成し、該作成した撮像レシピに基づいて前記走査型電子顕微鏡手段で前記試料を撮像して得た該試料の画像を処理する処理手段と、
該処理手段で処理した前記試料の画像から前記試料上に形成されたパターンの寸法情報を抽出する寸法情報抽出手段と、
前記処理手段と前記寸法情報抽出手段とで処理する情報及び処理した情報並びに前記試料の設計情報を入出力する入出力手段と、
前記顕微鏡手段と前記処理手段と前記寸法情報抽出手段と前記入出力手段とを制御する制御手段とを備えた走査型電子顕微鏡装置であって、
前記処理手段は、前記入出力手段で入力した設計情報に基づいて前記複数の画像のうち隣接する領域の画像間の繋ぎ合せの可否または繋ぎ合せ易さを示す指標値を算出する指標値算出部と、該指標値算出部で算出した繋ぎ合せ易さを示す指標値に基づいて前記複数の画像のそれぞれの撮像領域と撮像倍率とを含む局所撮像領域群の撮像レシピを作成する局所撮像領域群撮像レシピ作成部と、該局所撮像領域群撮像レシピ作成部で作成した撮像レシピに基づいて前記走査型電子顕微鏡を制御して前記試料上の隣接する複数の領域をそれぞれ一部重ねて順次撮像して得た複数の画像を繋ぎ合せて広域の画像を生成する局所画像群繋ぎ合せ部とを有し、
前記寸法情報抽出手段は前記処理手段で複数の画像を繋ぎ合せて生成した広域の画像から前記パターンの寸法情報を抽出する
ことを特徴とする走査型電子顕微鏡装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記入出力手段から入力された撮像領域の情報と前記パターンの設計情報とを用いて前記走査型電子顕微鏡手段で撮像する前記試料上の隣接する複数の領域の画像間の重なり幅を算出し、該算出した重なり幅の情報を用いて前記走査型電子顕微鏡手段を制御して前記走査型電子顕微鏡手段で前記試料を撮像することを特徴とする請求項1記載の走査型電子顕微鏡装置。
【請求項3】
走査型電子顕微鏡手段と、
該走査型電子顕微鏡手段で表面にパターンが形成された試料を撮像するための撮像レシピを作成する撮像レシピ作成手段と、
該撮像レシピ作成手段で作成した撮像レシピに基づいて前記走査型電子顕微鏡手段で前記試料を撮像して得た該試料の画像を処理する画像処理手段と、
該画像処理手段で処理した前記試料の画像から前記試料上に形成されたパターンの寸法情報を抽出する寸法情報抽出手段と、
表示画面を備えて前記画像処理手段と前記寸法情報抽出手段とで処理する情報及び処理した情報を入出力する入出力手段と、
前記顕微鏡手段と前記撮像レシピ作成手段と前記画像処理手段と前記寸法情報抽出手段と前記入出力手段とを制御する制御手段とを備えた走査型電子顕微鏡装置であって、
前記撮像レシピ作成手段は、前記走査型電子顕微鏡手段で撮像して得た前記試料の低倍率の画像が表示された前記入出力手段の画面上で指定された高倍率画像取得領域の設計情報を用いて該指定された高倍率画像取得領域を複数の局所撮像領域に分割したときに前記複数の局所撮像領域の画像のうち隣接する局所撮像領域の画像間の繋ぎ合せの可否または繋ぎ合せ易さを示す指標値として任意の隣接する二つの局所撮像領域間の重複領域に含まれるパターンを基に該任意の隣接する二つの局所撮像領域間の繋ぎ合わせ可否または繋ぎ合せ易さを示す指標値(隣接リンク情報)と,該繋ぎ合わせ可否または繋ぎ合せ易さを示す指標値を基に任意の二つの局所撮像領域間の繋ぎ合わせ可否または繋ぎ合せ易さを示す指標値(任意リンク情報)とを含む指標値を算出し、該算出したする指標値を用いて撮像レシピを作成する機能を有し、
前記制御手段は、前記撮像レシピ作成手段で作成した撮像レシピに基づいて前記走査型電子顕微鏡手段を制御して前記各局所撮像領域を高倍率で撮像させる機能を有し、
前記画像処理手段は、前記走査型電子顕微鏡手段で撮像して得た各局所撮像領域の高倍率の画像を繋ぎ合わせた高倍率の広域画像を作成する機能を有し、
前記寸法情報抽出手段は、前記画像処理手段で作成した高倍率の広域画像から前記パターンの寸法を抽出する機能を有する
ことを特徴とする走査型電子顕微鏡装置。
【請求項4】
前記撮像レシピ作成手段の複数の領域に分割する機能は前記高倍率画像取得領域を複数の領域に分割することを複数のケースについて求めることを含み、前記入出力手段は前記撮像レシピ作成手段で求めた複数の分割のケースを前記表示画面上に並べて表示し、前記制御手段は前記並べて表示した画面上で指定された分割のケースに基づいて前記走査型電子顕微鏡手段を制御して前記分割された各領域を撮像させることを特徴とする請求項3記載の走査型電子顕微鏡装置。
【請求項5】
前記撮像レシピ作成手段は、前記試料の低倍率の画像が表示された画面上で指定された高倍率画像取得領域の画像情報と該指定された高倍率画像取得領域の設計情報とを用いて該指定された高倍率画像取得領域を隣接する領域同士が互いに前記パターンのエッジの一部を含んで重なり合うようにして複数の領域に分割することを特徴とする請求項3記載の走査型電子顕微鏡装置。
【請求項6】
前記試料が露光用マスクであり、前記パターンが光近接効果補正がなされたパターンであることを、特徴とする請求項1または3に記載の走査型電子顕微鏡装置。
【請求項7】
表面にパターンが形成された試料を走査型電子顕微鏡を用いて低倍率で撮像し、
該撮像して得た前記試料の低倍率の画像を画面上に表示し、
該低倍率の画像が表示された画面上で指定された高倍率画像取得領域の設計情報を用いて該指定された高倍率画像取得領域を複数の局所撮像領域に分割したときに隣接する局所撮像領域の画像間の繋ぎ合せの可否または繋ぎ合せ易さを示す指標値を算出し、該算出した繋ぎ合せ易さを示す指標値に基づいて前記複数の画像のそれぞれの撮像領域と撮像倍率とを含む局所撮像領域群の撮像レシピを作成し、
該作成した撮像レシピに基づいて前記分割した各局所撮像領域を前記走査型電子顕微鏡で撮像して前記各局所撮像領域の高倍率の画像を取得し、
該撮像して得た各局所撮像領域のそれぞれの高倍率の画像を繋ぎ合わせて高倍率の広域画像を作成し、
該作成した高倍率の広域画像から前記パターンの寸法を抽出する
ことを特徴とする走査型電子顕微鏡装置を用いたパターン寸法計測方法。
【請求項8】
前記高倍率画像取得領域を複数の領域に分割することを複数のケースについて求め、該求めた複数の分割のケースを前記表示画面上に並べて表示し、該表示した画面上で指定された分割のケースに基づいて前記走査型電子顕微鏡手段で前記分割された各領域を高倍率で撮像することを特徴とする請求項7記載の走査型電子顕微鏡装置を用いたパターン寸法計測方法。
【請求項9】
前記撮像レシピを作成する工程において、前記試料の低倍率の画像が表示された画面上で指定された高倍率画像取得領域の画像情報と該指定された高倍率画像取得領域の設計情報とを用いて該指定された高倍率画像取得領域を隣接する領域同士が互いに前記パターンのエッジの一部を含んで重なり合うようにして複数の領域に分割することを特徴とする請求項7記載の走査型電子顕微鏡装置を用いたパターン寸法計測方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図15E】
【図15F】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図20】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図15E】
【図15F】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図20】
【公開番号】特開2011−23273(P2011−23273A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168771(P2009−168771)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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