説明

走行制御装置

【課題】 配管数を少なくすることができ、アンダーステアを防止してステアリング操作時の効率を向上させることができ、しかも走行補正制御を安定して行うことができる走行制御装置を提供する。
【解決手段】 短絡油路5Aを、右走行用回路1における主管路4aと左走行用回路11における主管路14aとを短絡する回路として配設する。短絡油路5Aとして、主管路4aから主管路14aに流れる流量を制御する第1流量制御弁6と第1流量制御弁6とは逆方向に流れる流量を制御する第2流量制御弁16を直列に配設する。また、各流量制御弁6、16には、それぞれの流量制御で流量を制御する方向とは逆方向への流れを許容する第1チェック弁9及び第2チェック弁19をそれぞれ並列に配設する。これにより、流量制御弁6、16が単に通路として機能するときの、流量制御弁6、16における通路圧損を軽減することができ、ステアリング操作の操作性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ポンプと油圧モータとを閉回路にて構成した走行用回路を、左右独立して配設した走行制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種の走行制御装置にあっては、車両の直進走行時に左右の走行用回路における効率の相違によって、車両が直進せずに曲がって走行してしまうことがある。これは、左右の走行用回路に配設した各油圧ポンプの製作上の公差によって、それぞれの吐出容量に差が生じている状態で、左右の走行用回路が構成されていることが主な原因となっている。
【0003】
このため、車両の直進時において左右の油圧ポンプから吐出するポンプ吐出流量が異なり、左右の油圧モータにおいて回転数に差が発生してしまう。直進走行を行わせている筈の車両が、いつのまにか左右の一方向側に曲がりながら走行してしまうことになる。
【0004】
しかし、油圧ポンプや油圧モータの容量を極めて精度良く構成するには、多大な時間と多大なコストとを必要とする。このため、油圧ポンプが有する製作上の公差を解消するため、車両の直進走行時には左右の走行用回路同士を短絡させて、左右の走行用回路間において圧力補償を行うことにより、直進走行性を高めることが行われている。
【0005】
車両の直進走行時において左右の走行用回路同士を短絡させる構成としては、油圧駆動装置(特許文献1参照。)や走行制御装置(特許文献2参照。)などが提案されている。
特許文献1に記載された油圧駆動装置の回路構成は、従来例1として図6に示すことにする。77は右走行用回路、78は左走行用回路であり、79はチャージポンプである。右走行用回路77と左走行用回路78とは、同様の構成となっている。このため、左右の走行用回路において同じ部材については、右走行用回路で用いた部材符号に20を加えた部材符号を左走行用回路の部材符号として用いることでその説明を省略する。
【0006】
油圧ポンプ41と油圧モータ42とは、主管路43、44を介して閉回路として構成されている。主管路43、44間には、シャトル弁45が配設されている。シャトル弁45は、主管路43と主管路44との圧力が等しい時には、主管路43と主管路44との接続を遮断する中立位置となる。主管路43の圧力が高いときには、主管路43は連通路46に接続し、主管路44はリリーフ弁47を備えたドレーン路48に接続する。主管路44の圧力が高いときには、主管路44は連通路46に接続し、主管路43はリリーフ弁47を備えたドレーン路48に接続する。
【0007】
連通路46は、流量制御弁53を介して短絡路54に接続している。また、短絡路54は、左走行用回路78における流量制御弁73に接続している。右走行用回路77における流量制御弁53の開口部53aを閉じる方向には、短絡路54に設けた絞り55の上流側の圧力、即ち、絞り55と流量制御弁53との間の圧力、が作用する。また、開口部53aを解放する方向には、絞り55の下流側における圧力、即ち、短絡路54における圧力、とバネ58とが作用する。
【0008】
連通路46から短絡路54側に向かって流量が流れるときには、絞り55の前後差圧によって、開口部53aを閉じる力が作用する。このとき、流量制御弁53では、開口部53aを閉じる力とバネ58とが釣り合うように作動して、大きな流量が流れるほど開口部53aの開口面積が小さくなる。従って、一定流量以上の流量が流れないように制限することができる。短絡路54から連通路46へ流量が流れるときには、開口部53aの開口状態は、バネ56のバネ力によりで最大開口面積になる。また、絞り55の手前の圧力もバネ56のバネ力を増やす方向に作用するため、流量制御弁53は最大開口面積に維持される。
【0009】
車両が直進前進して走行するときには、油圧ポンプ41から主管路43に吐出圧油が出力され、油圧ポンプ61からは主管路63に吐出圧油が出力される。即ち、主管路43、63は高圧側となり、主管路44、64は低圧側となる。これにより、シャトル弁45、65が中立位置から切換わり、主管路43、63と連通路46、66とをそれぞれ接続する位置に切換わる。
【0010】
以下において、右走行用回路77における油圧ポンプ41のポンプ吐出流量が、左走行用回路78における油圧ポンプ61のポンプ吐出流量よりも多いと仮定すると次のようになる。右走行用回路77における油圧モータ42は左走行用回路78における油圧モータ62よりも速く回転することとなり、車両は左に旋回を行うことになる。このため、右走行用回路77は左走行用回路78の抵抗を受けることになり、主管路43の圧力は主管路63の圧力よりも高くなる。
【0011】
これにより、主管路43から圧油が、順次シャトル弁45、連通路46、流量制御弁53、短絡路54、流量制御弁73、連通路66、シャトル弁65を通って、主管路63に流入することができる。
この主管路43から主管路63への圧油の流れによって、油圧モータ42、62は等速で回転することができるようになり、車両は直進走行することができる。
【0012】
車両の直進状態から、例えば、左旋回を行わせるために左ステアリング操作が行われたときには、次のようになる。油圧ポンプ61のポンプ吐出流量が減少し、油圧モータ62の回転数は油圧モータ42の回転数よりも小さくなる。これにより、右走行用回路77が左走行用回路78からの抵抗を受け、主管路43の圧力が主管路63の圧力よりも高圧となる。
【0013】
このため、直進走行させた場合と同様に、短絡路54を介して主管路43の圧油が、主管路63内に流入し車両は直進することになる。このとき、流量制御弁53が作動して、一定流量以上の圧油が主管路63に流入しないよう制限される。
【0014】
更に、左ステアリング操作が行われると、油圧モータ42と油圧モータ62との回転数差が更に大きくなる。しかし、短絡路54から主管路63に流入する流量は、流量制御弁53によって一定流量に制限されている。このため、油圧モータ42と油圧モータ62との回転数差を補うだけの流量を主管路43から主管路63に補充することができなくなり、車両は左旋回することになる。
【0015】
次に、特許文献2に記載された走行制御装置の回路構成は、従来例2として図7に示すことにする。閉回路81が、左走行用回路として構成され、閉回路86が、右走行用回路として構成されている。閉回路81は、左走行用の油圧ポンプ82及び油圧モータ83と、前進用及び後進用の主管路84、85とにより構成されている。また、閉回路86は右走行用の油圧ポンプ87及び油圧モータ88と、前進用及び後進用の主管路89、90とによって構成されている。
【0016】
前進用の主管路84、89間には、前進用の短絡ライン94が配設されている。短絡ライン94中には、直進操作時において前進用の主管路84、89同士を短絡し、旋回走行操作時において短絡を解除する前進用の短絡弁96が設けられている。また、後進用の主管路85、90間には、後進用の短絡ライン95が配設されている。短絡ライン95中には、直進操作時において後進用の主管路85、90同士を短絡し、旋回走行操作時において短絡を解除する後進用の短絡弁98が配設されている。
【0017】
各短絡弁96、98は、オペレータの手動操作により操作されるジョイスティックに設けられた減圧弁91a〜91dと、減圧弁91a〜91dから出力された出力圧を選択するシャトル弁92a〜92dとの組み合わせにより制御される。
【0018】
即ち、前進用の短絡弁96及び後進用の短絡弁98は、バネ100により短絡位置に付勢されている。また、短絡弁96及び短絡弁98には、左用及び右用の減圧弁91b、91dの二次圧ライン93a、93b間に接続した左右旋回走行信号圧を取出すシャトル弁101からの出力圧が、パイロットライン102を介してバネ100とは反対側の受圧部に供給される。
【0019】
そして、前進用の短絡弁96は、前進の直進操作時においてバネ100による短絡位置で前進用の主管路84、89同士を短絡する。また、前進の旋回走行操作時においてパイロットライン102を経た左右旋回走行信号圧により短絡ライン94を遮断する位置に切換わり短絡を解除する。同様に、後進用の短絡弁98は、後進の直進操作時には主管路85、90同士を短絡するとともに、後進の旋回走行操作時には短絡を解除する。
【0020】
前進用の短絡解除弁97および後進用の短絡解除弁99は、それらのスプールの両端に設けられたバネ103によって、短絡ライン94、95を連通する中立位置を有している。また、これらの短絡解除弁97、99を介した両側の短絡ライン間に差圧が生ずると、パイロットライン104を経てスプールの両端部にその差圧が作用する。スプールの両端部に作用する差圧によって、短絡解除弁97,99は、短絡ライン94、95を遮断する切換位置に切換わる。
【0021】
前進用の短絡解除弁97は、前進用の短絡弁96による短絡状態で主管路84、89間の圧力が等しいときは、中立位置状態となって主管路84、89間の短絡を維持する。主管路84、89間に差圧が生じたときは、その差圧によって短絡解除弁97は中立位置から遮断位置に切換わる。これにより、短絡弁96が短絡状態であっても、前進用の短絡解除弁97は遮断位置に切換わって短絡を解除する。後進用の短絡解除弁99においても、前進用の短絡解除弁97と同様に作動する。
【0022】
後進用の減圧弁91a又は前進用の減圧弁91cのみによる直進操作時には、パイロットライン102には左右旋回走行信号圧が立たない。このため、前進用および後進用の短絡弁96、98はバネ100により短絡位置にある。これにより、主管路84、89同士を前進用の短絡弁96及び短絡解除弁97により短絡するとともに、後進用の主管路85、90同士を後進用の短絡弁98及び短絡解除弁99により短絡する。
【0023】
これによって、左走行用の閉回路81と右走行用の閉回路86は完全に独立した回路ではなくなる。従って、油圧ポンプ82、87の製作上における公差によって、それぞれのポンプ吐出流量に差があっても、短絡ライン94,95によって油圧モータ83、88に供給される作動油流量を等しく保つことができ、車両の直進性を保つことができる。
【0024】
左旋回用の減圧弁91b又は右旋回用の減圧弁91dによる旋回走行操作時には、シャトル弁101を介してパイロットライン102に左右旋回走行信号圧が立つ。この左右旋回走行信号圧によって、短絡弁96及び短絡弁98は共に短絡解除位置に切換えられる。これにより、前進用の主管路84、89同士及び後進用の主管路85、90同士の短絡を解除して、二つの閉回路81、86を独立させることができる。従って、各油圧モータ83、88に供給される作動油流量を異ならせることができ、車両の左旋回走行または右旋回走行が可能となる。
【0025】
直進操作時において車両が傾斜地を斜めに横切る場合などでは、左右の駆動トルクに差が生じ、左右の油圧モータ83、88に異なる負荷がかかる場合がある。このような場合には、前進用及び後進用の短絡弁96、98によって左右の閉回路81、86が短絡状態となっているため、高負荷側のモータ軸回転数が減少し、かえって直進性を保てなくなる。
【0026】
このときには、前進用の主管路84、89間及び後進用の主管路85、90間に生じた差圧により、短絡解除弁97及び短絡解除弁99が中立位置から遮断位置に切換わる。これにより、短絡ライン94、95を遮断することとなる。つまり、左右の閉回路81、86間における短絡が解除され、それぞれ独立した回路となることができる。このため、大幅な直進性の悪化が防止される。
【特許文献1】実願昭55−167417号(実開昭57−90267号)のマイクロフィルム
【特許文献2】特開2000−186762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
特許文献1に記載された油圧駆動装置では、短絡路54から主管路63又は主管路43に流入する流量は、流量制御弁53又は流量制御弁73によって一定流量に制限されている。即ち、ステアリング操作時においては、主管路43と主管路63との圧力差に応じて一方の主管路から他方の主管路に補充することが求められる流量が、前記一定流量以下のときには車両のステアリング走行が行われず車両は直進走行することになる。
【0028】
また、このとき流量制御を行っていない一方の流量制御弁は、単に通路として圧油を流す構成となっている。このため、通路として圧油を流す側における流量制御弁の流路抵抗が、通路圧損として無視できる場合には、有効な油圧駆動装置として機能することができる。しかし、流量制御弁の流路抵抗が、通路圧損として無視できない場合や、ステアリング操作時の油圧ロスが無視できない場合などにおいては、不都合が生じてしまうことがある。
【0029】
従って、主管路43と主管路63との圧力差が、前記一定流量よりも多い流量の補充を求める圧力差となったときに始めて、車両のステアリング動作が開始されることになる。このため、ステアリング操作時における不感帯が存在することになる。不感帯の大きさは、流量制御弁53又は流量制御弁73によって制限されている一定流量や通路圧損の大きさによって規定されることになる。
【0030】
流量制御弁53又は流量制御弁73によって制限されている一定流量の値を小さく設定すると、ステアリングの応答性は改善する。しかし、直進走行時において一方の主管路から他方の主管路に補充することのできる流量が少なくなり、油圧ポンプ41、61に対する製作上の公差を少なくするよう厳しく求められることになる。
【0031】
流量制御弁53又は流量制御弁73によって制限されている一定流量の値を大きく設定すると、油圧ポンプ41、61に対する製作上の公差は緩やかになる。しかし、ステアリング時における不感帯領域が拡大し、ステアリング時の操作性が悪化する。特に、ステアリング時における不感帯領域が大きくなると、主管路43と主管路63との圧力差が前記不感帯領域幅を超えた圧力差になった時に、ステアリングが開始され車両は旋回を始めることになる。このため、作業者が意図したステアリング操作量に比べて車両は、ステアリングが行われない不感帯幅が大きくなり、実際に旋回することのできるステアリングの量は小さなものになる。
【0032】
特許文献2に記載された走行制御装置では、短絡弁96、98を独立して配設するとともに、短絡弁96、98を制御するためには、シャトル弁101、パイロットライン102を配設しなければならなかった。このため、これらを配設するための場積を必要とした。パイロットライン102の管路が増えることに伴って、走行制御装置としての配管路が複雑になってしまう問題もあった。
【0033】
また、不整地走行等において左右の走行用回路において圧力変動が生じると、短絡解除弁97、99が作動して、短絡ライン94,95が遮断される。このため、直進補正が減少してしまうという問題があった。
【0034】
本願発明ではこれらの問題を解決することができ、配管数を少なくすることができ、アンダーステアを防止してステアリング操作時の効率を向上させることができ、しかも走行補正制御を安定して行うことができる走行制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本願発明の課題は請求項1、2に記載された各発明により達成することができる。
即ち、本願発明では請求項1に記載したように、油圧ポンプと油圧モータとを閉回路にてそれぞれ構成した右走行用回路及び左走行用回路と、前記右走行用回路と前記左走行用回路とにおける前進用の回路同士、及び/又は後進用の回路同士を繋ぐ短絡油路とを備え、車両の前後進及び旋回走行を制御する走行制御装置において、前記短絡油路が、前記右走行用回路から前記左走行用回路への流量を制御する第1流量制御弁と、前記左走行用回路から前記右走行用回路への流量を制御する第2流量制御弁と、前記第1流量制御弁と並列して接続され、前記左走行用回路から前記右走行用回路への流れを許容する第1チェック弁と、前記第2流量制御弁と並列して接続され、前記右走行用回路から前記左走行用回路への流れを許容する第2チェック弁と、を備え、並列に接続した前記第1流量制御弁及び前記第1チェック弁と並列に接続した前記第2流量制御弁及び前記第2チェック弁とが、直列に接続されてなることを最も主要な特徴となしている。
【0036】
また、本願発明では請求項2に記載したように、右走行用回路の圧力と左走行用回路の圧力とに基づいて切換わる切換弁を配設した構成を特定したことを主要な特徴となしている。
【発明の効果】
【0037】
本願発明では、左右の走行用回路における圧力差、言い換えると左右の走行用回路における流量差、に対して短絡油路を介して流量補正を行うことができる。しかも、流量制御を行っていない、所謂逆さ流しを行う一方の流量制御弁は、チェック弁によってバイパスさせることができる。
【0038】
これによって、逆さ流しを行う流量制御弁の通路圧損の影響を受けることなく、短絡油路を通過する圧油の通路圧損を半減させることができる。従って、車両の直進走行性をより精度良く維持することができるとともに、ステアリング時におけるステアリング操作性を向上させることができる。
【0039】
また、本願発明によって、不整地走行時や坂道登坂走行等においても平地走行時と同様に流量補正を行わせることができる。しかも、短絡油路は、第1流量制御弁と第1チェック弁との組み合わせ、及び第2流量制御弁と第2チェック弁との組み合わせによって構成することができるので、短絡油路を油圧ポンプや油圧モータ等上に簡単に搭載させることができる。このため、制御用のパイロット管路等が不要となり配管通路を半減させることができる。これにともなって、走行制御装置の製造コストを削減することができる。
【0040】
また、請求項2に記載したように、切換弁によって旋回走行時には、短絡油路を遮断することができる。このため、旋回走行時の低負荷回路側に無駄な補正流量を供給するといった流量ロスを防止できる。しかも、ステアリング操作時には、左右の走行用回路を独立して駆動させることができるので、ステアリング操作の効率を向上させることができる。しかも、アンダーステアリング量が大きくなるのを防止できる。即ち、ステアリング時の不感帯の幅を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明のパイロットバルブの構成としては、以下で説明する形状、配設構成以外にも本願発明の課題を解決することができる形状、配設構成であれば、それらの形状、配設構成を採用することができるものである。このため、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【実施例1】
【0042】
図1は、本発明の実施形態に係わる走行制御装置の概略回路図である。走行制御装置では、右走行用回路1と左走行用回路11とが独立して配設されている。そして、両走行用回路1、11の主管路4aと主管路14a及び主管路4bと主管路14bとは、それぞれ短絡油路5A、5’Aを介して接続されている。尚、図1〜図5における矢印は、車両が前進走行するときの、可変容量型油圧ポンプ2、12からそれぞれ吐出する圧油の流れる方向を示している。
【0043】
また、図1において左右の走行用回路1、11のそれぞれにおいて、上述した従来例1、2における油圧回路図で示されているような、主管路間の圧力差が所定圧力差以上となった時に、一方の主管路から他方の主管路に対して圧油を供給する流量制御弁などの部材や、左右の走行用回路1、11における主管路間で低圧側となった主管路にチャージ圧を供給するチャージ回路や、可変容量型油圧ポンプを駆動するエンジンや、タンク等は、省略して示している。
【0044】
右走行用回路1では、図示せぬエンジンにより駆動される可変容量型油圧ポンプ2と、図示せぬ車両の走行装置を駆動する可変容量型油圧モータ3とが、主管路4a、4bにより閉回路接続されている。同様に、左走行用回路11では、図示せぬエンジンにより駆動される可変容量型油圧ポンプ12と図示せぬ車両の走行装置を駆動する可変容量型油圧モータ13とが、主管路14a、14bにより閉回路接続されている。
【0045】
説明を行う上の便宜のため、主管路4aと主管路14aとを車両の前進用の主管路とし、主管路4bと主管路14bとを車両の後進用の主管路として、以下の説明を行う。前進用の主管路4aと主管路14aとは、それぞれ油路20、21とによって短絡油路5Aに接続している。また、後進用の主管路4bと主管路14bとは、それぞれ油路20’、21’とによって短絡油路5’Aに接続している。
【0046】
短絡油路5Aと短絡油路5’Aとは、同様の構成となっている。このため、短絡油路5’Aにおける各部材ついては、短絡油路5Aにおける対応する各部材の符号に「’」を加えた符号を用いることでその説明を省略する。また、短絡油路5’Aは必ずしも必要な構成ではなく、後進用においても直進走行性を確保する場合において配設することができるものである。
【0047】
図1に示すように、油路20と油路21とは、油路22及び油路23とが並列に接続している。また、油路22と油路23とは、油路24によって連通している。油路22には、第1流量制御弁6と第2流量制御弁16とが配設されている。また、油路23には、第1チェック弁9と第2チェック弁19とが配設されている。
【0048】
第1流量制御弁6は、開放状態と可変絞り状態との2位置に切換えることができる切換弁8と絞り7、切換弁8に作用するバネ8c、及び絞り7前後の圧力差を切換弁に作用させるパイロット油路8a、8bから構成されている。切換弁8の切換えは、切換弁8と油路21との間に配設した絞り7前後の圧力差と切換弁8に作用しているバネ8cのバネ力とによって制御される。
【0049】
切換弁8の開口部を開放状態とする方向には、油路21における圧力とバネ8cのバネ力とが作用することになる。切換弁8の開口部を可変絞り状態とする方向には、絞り7と切換弁8との間における圧力が作用することになる。即ち、切換弁8には、開口部を開放する圧力と同開口部を閉じる圧力とが同時に作用することになる。そして、両圧力がバランスするところで、切換弁8の開口部における開口面積が制御され、第1流量制御弁6を流れる流量が制御されることになる。
【0050】
このため、油路24から油路21に流れる流量が大きくなるほど、第1流量制御弁6における切換弁8の開口面積は小さく制御され、第1流量制御弁6を流れる流量が制御される。また、第1チェック弁9は、第1流量制御弁6と並列に配設され、油路21からの圧油の流れを許容する方向に配設されている。従って、第1流量制御弁6で規定される一定流量以上の流量は、油路24から油路21に流れないように制御されることになる。
【0051】
第2流量制御弁16は、第1流量制御弁6と同様に構成されている。即ち、第2流量制御弁16は、開放状態と可変絞り状態との2位置に切換えることができる切換弁18と絞り17、切換弁18に作用するバネ18c、及び絞り17前後の圧力差を切換弁に作用させるパイロット油路18a、18bから構成されている。切換弁18の切換えは、切換弁18と油路20との間に配設した絞り17前後の圧力差と切換弁18に作用しているバネ18cのバネ力とによって制御される。
【0052】
第2流量制御弁16における切換弁18の開口部を開放状態とする方向には、油路20における圧力とバネ18cのバネ力とが作用することになる。切換弁18の開口部を可変絞り状態とする方向には、絞り17と切換弁18との間における圧力が作用することになる。即ち、切換弁18には、開口部を開放する圧力と同開口部を閉じる圧力とが同時に作用することになる。そして、両圧力がバランスするところで、切換弁18の開口部における開口面積が制御され、第2流量制御弁16を流れる流量が制御されることになる。
【0053】
このため、油路24から油路20に流れる流量が大きくなるほど、第2流量制御弁16における切換弁18の開口面積は小さく制御され、第2流量制御弁16を流れる流量が制御される。また、第2チェック弁19は、第2流量制御弁16と並列に配設され、油路20からの圧油の流れを許容する方向に配設されている。従って、第2流量制御弁16で規定される一定流量以上の流量は、油路24から油路20に流れないように制御されることになる。
【0054】
このように、短絡油路5Aは、右走行用回路1における前進用の主管路4aと左走行用回路11における前進用の主管路14aとを短絡する油路として構成されている。同様に、短絡油路5’Aは、右走行用回路1における後進用の主管路4bと左走行用回路11における後進用の主管路14bとを短絡する油路として構成されている。
【0055】
次に、走行制御装置の作動について説明する。最初に、車両を前進方向へ直進操作している場合について、説明する。この場合、各主管路4a、14aがそれぞれ可変容量型油圧ポンプ2、12からの吐出圧管路となって高圧側油路となり、各主管路4b、14bがそれぞれ可変容量型油圧モータ3、13からの戻り圧油管路となって低圧側油路となっている。そして、高圧側となった主管路4aと主管路14aとが、短絡油路5Aによって接続されることになる。
【0056】
車両を後進方向へ直進操作している場合は、各主管路4b、14bがそれぞれ可変容量型油圧ポンプ2、12からの吐出圧管路となって高圧側油路となり、各主管路4a、14aがそれぞれ可変容量型油圧モータ3、13からの戻り圧油管路となって低圧側油路となっている。そして、高圧側となった主管路4bと主管路14bとが、短絡油路5’Aによって接続されることになる。
【0057】
このため、短絡油路5’Aの作動としては、短絡油路5Aと同様の作用を奏することになる。このため、短絡油路5’Aについての作動説明は、短絡油路5Aの作動説明を持って代えることとする。
【0058】
右走行用回路1における可変容量型油圧ポンプ2からのポンプ吐出流量が、左走行用回路11における可変容量型油圧ポンプ12からのポンプ吐出流量よりも多いものと仮定すると、次のような作動が行われる。即ち、右走行用回路1における可変容量型油圧モータ3は、左走行用回路11における可変容量型油圧モータ13よりも速く回転する。これにより、車両の右走行用の走行装置は、左走行用の走行装置の抵抗を受けながら左走行用の走行装置よりも速く進もうとする。
【0059】
このため、右走行用回路1における主管路4aの圧力は、左走行用回路11における主管路14aの圧力よりも高くなる。高圧となった主管路4aの圧油は、第2流量制御弁16をバイパスして第2チェック弁19から油路24に流入することになる。油路24に流入した圧油は、第1流量制御弁6を通って油路21から主管路14aに流入することになる。
【0060】
絞り7の上流側の圧力は、パイロット圧としてパイロット油路8bから作用し切換弁8の開口面積を小さくする方向に作用する。絞り7の下流側における圧力は、バネ8cとともに切換弁8の開口面積を開放する方向に作用する。開口面積を小さくする方向に作用する圧力と開口面積を開放する方向に作用する圧力とが、バランスした位置における開口面積で第1流量制御弁6から油路21に供給する圧油の流量が制御される。
【0061】
油路21に供給された圧油は、左走行用回路11の主管路14aに供給され、右走行用回路1と左走行用回路11とのポンプ吐出流量の差を補償することができる。これにより、可変容量型油圧モータ3、13をそれぞれ等速にて回転させることができる。従って、車両の前進時における直進性を確保することができる。
【0062】
次に、車両の前進直進状態から、左旋回方向にステアリング操作を行った場合について説明を行う。左ステアリング操作が行われると、可変容量型油圧ポンプ12のポンプ吐出流量が減少し、可変容量型油圧モータ13の回転数は可変容量型油圧モータ3の回転数よりも小さくなる。
【0063】
このため、右走行用回路1における主管路4aにおける圧力は、左走行用回路11における主管路14aの圧力よりも高くなる。高圧となった主管路4aの圧油は、第2流量制御弁16をバイパスして第2チェック弁19から油路24に流入することになる。油路24に流入した圧油は、第1流量制御弁6を通り絞り7に流入することになる。
【0064】
このとき、上述した車両の前進直進状態と同様に、短絡油路5Aを介して主管路4aからの圧油は、主管路14aに供給されることになる。更に、ステアリング操作されて、右走行用回路1における主管路4aの圧力と、左走行用回路11における主管路14aの圧力との差圧が高くなっても、第1流量制御弁6を流れる流量は一定に制御される。
【0065】
このため、可変容量型油圧ポンプ2からのポンプ吐出流量のうち、左走行用回路11に分流して補充する流量よりも多くの流量を可変容量型油圧モータ3に供給することができ、車両は左旋回することになる。
【0066】
可変容量型油圧モータ3と可変容量型油圧モータ13との回転数差を補うために短絡油路5Aを流れる圧油は、大部分が第2チェック弁19を流れ、第2流量制御弁16内にはほとんど流れないことになる。このため、第2流量制御弁16における通路圧損が無視できない場合であったとしても、第2流量制御弁16は第2チェック弁19を介して迂回することができるので、第2流量制御弁16における通路圧損の影響を除くことができる。
【0067】
また、油路20からの圧油が、第2流量制御弁16を迂回して第2チェック弁19から油路24に流れ込むと、油路24に流れ込んだ圧油は、第1流量制御弁6によって流量制御されて油路21に流れ出ることになる。即ち、第1流量制御弁6における通路圧損よりも主管路4a、14a間における差圧が大きければ、主管路4a、14a間における差圧に基づいて高圧側の主管路における圧油を低圧側の主管路に供給することができ、車両の直進走行における直進補正を行うことができる。また、主管路4a、14a間の差圧が少なければ、その差圧に合った流量で、直進補正を行うことができる。
【0068】
上述した従来例1の油圧駆動装置では、一定流量を流す流量制御弁における通路圧損と、単に圧油を流すだけの流量制御弁における通路圧損とを合算した圧力よりも、主管路間の差圧が大きくならないと、左右同じ流量で車両を走行させる直進補正が行えない。
【0069】
これに対して本願発明では、第2流量制御弁16の通路圧損は第2チェック弁19を介して迂回させることができる。このため、第1流量制御弁6における通路圧損よりも、主管路4a、14a間における差圧が大きくなれば、左右同じ流量で車両を走行させる直進補正が行える。これによって、直進補正が行われない不感帯の幅を狭くすることができ、ステアリングの操作性を大幅に向上させることができる。
【0070】
従って、例えば、牽引走行などのように通路圧損の影響が大きな場合であっても、チェック弁を迂回して圧油を流すことができるので、短絡油路5Aにおける通路圧損の上昇を回避することができる。
【0071】
尚、左走行用回路11におけるポンプ吐出流量が、右走行用回路1におけるポンプ吐出流量よりも多いときには、上述とは全く反対の圧油の流れが、短絡油路5Aにおいて行われることになる。同様に、車両の後進における直進状態では、短絡油路5’Aを介して、高圧側となっている主油路4bと主油路14bとの間で、上述したと同様の作用が行われる。
【0072】
また、短絡油路5’Aを短絡油路5Aに対して独立して設ける代わりに、図5に示すように短絡油路5Aを兼用させることもできる。図5では、前進用の主管路4a、14aにおける圧力と、後進用の主管路4b、14bにおける圧力に応じて、切換弁28を切換える構成となっている。切換弁28の中立状態では、主管路4a、14a又は主管路4b、14bと短絡油路Aとの接続は遮断されている。
【0073】
左右の走行用回路1、11が前進走行状態となっているときには、主管路4a、14aの圧力が主管路4b、14bの圧力よりも高圧となる。このときには、主管路4a、14aと短絡油路5Aとが接続する。左右の走行用回路1、11が後進走行状態となっているときには、逆に主管路4b、14bと短絡油路5Aとが接続する。
【0074】
また、スピンターンのように、一方の走行用回路を前進走行状態とし、他方の走行用回路を後進走行状態としたときには、切換弁28はバネの付勢力によって中立位置に戻り、左右の走行用回路1、11をそれぞれ独立して駆動させることができる。
【実施例2】
【0075】
図2は、本発明の実施形態に係わる他の走行制御装置の概略回路図を示している。実施例2の短絡油路5Bでは、第1流量制御弁6と並列状態に接続した第1チェック弁9との配設位置、及び第2流量制御弁16と並列状態に接続した第2チェック弁19との配設位置を、それぞれ実施例1における短絡油路5Aにおける配置位置とは逆に配設したことを特徴としている。
【0076】
他の構成は、実施例1における構成と同様の構成となっている。このため、実施例1と同じ構成部材については、同じ部材符号を用いることでその説明を省略する。また、図2においては、後進用の主管路4b、14b間には短絡油路を配設していない構成を示している。しかし、後進時において直進走行性が必要な場合には、実施例1と同様に後進用の短絡油路を配設することができる。
【0077】
実施例2においても、右走行用回路1におけるポンプ吐出流量が、左走行用回路11におけるポンプ吐出流量よりも多いもの仮定すると、次のような作動が行われる。即ち、右走行用回路1における主管路4aの圧力は、左走行用回路11における主管路14aの圧力よりも高くなる。高圧となった主管路4aの圧油は、切換弁8を通り絞り7に流入することになる。
【0078】
絞り7の上流側の圧力は、パイロット圧としてパイロット油路8bから切換弁8の開口面積を小さくする方向に作用する。絞り7の下流側における圧力は、バネ8cとともに切換弁8の開口面積を開放する方向に作用する。開口面積を小さくする方向に作用する圧力と開口面積を開放する方向に作用する圧力とが、バランスした位置における開口面積で油路20から第1流量制御弁6を介して油路24に出力される圧油の流量が制御される。
【0079】
油路24に流入した圧油は、第2流量制御弁16をバイパスして第2チェック弁19から油路21に流入して、主管路14aに供給される。油路24から第1チェック弁9に流れた圧油は、油路24における油圧が油路20における油圧よりも低圧状態となっているため、油路20に流れ出ることは防止される。
【0080】
これにより、左走行用回路11の主管路14aに供給された圧油によって、右走行用回路1と左走行用回路11とにおけるポンプ吐出量の差を補償することができる。即ち、可変容量型油圧モータ13と可変容量型油圧モータ3との回転数差を補償することができる。従って、車両の前進時における直進性を補償することができる。
【0081】
次に、車両の前進直進状態から、左旋回方向にステアリング操作を行った場合について説明を行う。左ステアリング操作が行われると、右走行用回路1の主管路4aにおける圧力は、左走行用回路11の主管路14aにおける圧力よりも高くなる。高圧となった主管路4aの圧油は、切換弁8を通り絞り7に流入することになる。
【0082】
このとき、上述した車両の前進直進状態と同様に、短絡油路5Bを介して主管路4aからの圧油は、主管路14aに供給されることになる。更に、ステアリングの操作量が増大されると、右走行用回路1における主管路4aの圧力と、左走行用回路11における主管路14aの圧力との差圧が大きくなる。
【0083】
しかし、第1流量制御弁6を流れる流量は一定に制御されているため、一定流量を供給するだけでは可変容量型油圧モータ3と可変容量型油圧モータ13との回転数差を補うことができなくなる。このため、車両は左旋回することになる。このようにして、第2実施例においても、第1実施例と同様の作用効果を奏することができる。
尚、左走行用回路11におけるポンプ吐出流量が、右走行用回路1におけるポンプ吐出流量よりも多いときには、上述とは全く反対の圧油の流れが、短絡油路5Bにおいて行われることになる。
【実施例3】
【0084】
図3は、本発明の実施形態に係わる別の走行制御装置の概略回路図を示している。実施例3における短絡油路5Cでは、第1実施例の短絡油路5Aにおいて、並列状態に接続した第1流量制御弁6及び第1チェック弁9と、並列状態に接続した第2流量制御弁16及び第2チェック弁19との間に切換弁25を配設したことを特徴としている。切換弁25は、油路20と油路21との差圧に応じて、切換弁25における開口部を開放状態と遮断状態との2位置に切換えることができる。
【0085】
他の構成は、実施例1における構成と同様の構成となっている。このため、実施例1と同じ構成部材については、同じ部材符号を用いることでその説明を省略する。また、図3においては、後進用の主管路4b、14b間には短絡油路を配設していない構成を示している。しかし、後進時において直進走行性が必要な場合には、実施例1と同様に後進用の短絡油路を配設することができる。
【0086】
切換弁25は、油路20(即ち、主管路4a)と油路21(即ち、主管路14a)における差圧が、予め設定した差圧よりも大きくなったとき遮断位置に切換わる。即ち、主管路4aと主管路14aとの差圧の大きさに応じて、パイロット油路26a及びパイロット油路26bを介したパイロット圧となって切換弁25の開口面積が制御されることになる。切換弁25は、最終的には油路20と油路21とを遮断状態にすることができる。
【0087】
切換弁25には一対のバネ25aが作用している。切換弁25が中立位置にあるときには、切換弁25の開口部は開放状態となり、油路20と油路21との間を連通状態にする。切換弁25は、油路20と油路21との圧力差に応じて、油路20と油路21との間を連通状態から遮断状態に切換えることができる。また、バネ25aのバネ力を調整することによって、ステアリングが効き始めるときにおける油路20と油路21との圧力差を調整することができる。
【0088】
ステアリング操作における油圧ロスを少なくする場合に切換弁25を遮断位置に切換えることで、油圧ロスを解消することができる。尚、車両の直進走行時には切換弁25を中立位置にしておくことにより、実施例1と同様の作用効果を奏させることができる。
【0089】
ステアリング操作によって、主管路4aと主管路14aとの間の差圧が、予め設定したバネ25aのバネ力よりも大きくなると、切換弁25が作動して右走行用回路1と左走行用回路11とをそれぞれ独立した回路として機能させることができる。これにより、ステアリング操作を有効に行わせることができる。
【実施例4】
【0090】
図4は、本発明の実施形態に係わる更に別の走行制御装置の概略回路図を示している。実施例4の短絡油路5Dでは、第2実施例の短絡油路5Bにおいて、並列状態に接続した第1流量制御弁6及び第1チェック弁9と、並列状態に接続した第2流量制御弁16及び第2チェック弁19との間に切換弁25を配設したことを特徴としている。切換弁25は、油路20と油路21との差圧に応じて、切換弁25における開口部を開放状態と遮断状態との2位置に切換えることができる。
【0091】
他の構成は、実施例2における構成と同様の構成となっている。また、切換弁25の構成は、実施例3における切換弁25と同様の構成となっている。このため、実施例2、実施例1及び実施例3と同じ構成部材については、同じ部材符号を用いることでその説明を省略する。
【0092】
また、図4においては、後進用の主管路4b、14b間には短絡油路を配設していない構成を示している。しかし、後進時において直進走行性が必要な場合には、実施例2において説明したように実施例1と同様に後進用の短絡油路を配設することができる。
【0093】
切換弁25は、油路20(即ち、主管路4a)と油路21(即ち、主管路14a)における差圧が、予め設定した差圧よりも大きくなったときに遮断位置に切換わる。即ち、主管路4aと主管路14aとの差圧の大きさに応じて、切換弁25の開口面積が制御されることになり、最終的には油路20と油路21との間を遮断状態にすることができる。
【0094】
パイロット油路26aとパイロット油路26bとの差圧による押圧力が、予め設定したバネ25aのバネ力よりも大きくなると、切換弁25は開口部の開放状態から遮断状態に切換えられる。即ち、切換弁25における開口部は、車両のステアリング操作によって油路20と油路21との間にバネ25aのバネ力よりも大きな差圧を発生させることにより、開放状態から遮断状態へと切換えられる。
【0095】
バネ25aのバネ力を調整することによって、ステアリングが効き始めるときにおける油路20と油路21との圧力差を調整することができる。ステアリング操作における油圧ロスを少なくする場合において、切換弁25を遮断位置に切換えることで、油圧ロスを解消することができる。尚、車両の直進走行時には切換弁25を中立位置にしておくことにより、実施例1と同様の作用効果を奏させることができる。
【0096】
ステアリング操作によって、主管路4aと主管路14aとの間の差圧が、予め設定した差圧、即ち、予め設定したバネ25aのバネ力よりも大きくなると、切換弁25が作動して右走行用回路1と左走行用回路11とをそれぞれ独立した回路として機能させることができる。これにより、ステアリング操作を有効に行わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本願発明は、本願発明の技術思想を適用することができる装置等に対しては、本願発明の技術思想を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】走行制御装置の概略油圧回路図である。(実施例1)
【図2】走行制御装置の概略油圧回路図である。(実施例2)
【図3】走行制御装置の概略油圧回路図である。(実施例3)
【図4】走行制御装置の概略油圧回路図である。(実施例4)
【図5】後進用の短絡油路の変形例を示す概略油圧回路図である。(実施例1)
【図6】油圧駆動装置の油圧回路図である。(従来例1)
【図7】走行制御装置の油圧回路図である。(従来例2)
【符号の説明】
【0099】
1・・・右走行用回路、 5A、5’A、5B〜5D・・・短絡油路、 6、6’・・・第1流量制御弁、 9、9’・・・第1チェック弁、 11・・・左走行用回路、 16、16’・・・第2流量制御弁、 19、19’・・・第2チェック弁、 25・・・切換弁、28・・・切換弁、 43、44・・・主管路、 46・・・連通路、 53・・・流量制御弁、 54・・・短絡路、 55・・・絞り、 63、64・・・主管路、 66・・・連通路、 73・・・流量制御弁、 75・・・絞り、 77・・・右走行用回路、78・・・左走行用回路、 81・・・閉回路、 84、85・・・主管路、 86・・・閉回路、89、90・・・主管路、 94、95・・・短絡ライン、 96・・・短絡弁、 97・・・短絡解除弁、 98・・・短絡弁、 99・・・短絡解除弁、 102・・・パイロットライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプと油圧モータとを閉回路にてそれぞれ構成した右走行用回路及び左走行用回路と、前記右走行用回路と前記左走行用回路とにおける前進用の回路同士、及び/又は後進用の回路同士を繋ぐ短絡油路とを備え、車両の前後進及び旋回走行を制御する走行制御装置において、
前記短絡油路が、前記右走行用回路から前記左走行用回路への流量を制御する第1流量制御弁と、
前記左走行用回路から前記右走行用回路への流量を制御する第2流量制御弁と、
前記第1流量制御弁と並列して接続され、前記左走行用回路から前記右走行用回路への流れを許容する第1チェック弁と、
前記第2流量制御弁と並列して接続され、前記右走行用回路から前記左走行用回路への流れを許容する第2チェック弁と、
を備え、
並列に接続した前記第1流量制御弁及び前記第1チェック弁と並列に接続した前記第2流量制御弁及び前記第2チェック弁とが、直列に接続されてなることを特徴とする走行制御装置。
【請求項2】
前記短絡油路の両端部における前記右走行用回路の圧力と前記左走行用回路の圧力とに基づいて切換わる切換弁が、前記短絡油路に配設され、
前記切換弁が、右走行用回路の圧力と前記左走行用回路の圧力との差圧が予め設定した所定差圧よりも大きいときには前記短絡油路を遮断し、前記差圧が前記所定差圧以下のときには前記短絡油路を連通してなることを特徴とする請求項1記載の走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−329398(P2006−329398A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157445(P2005−157445)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】