説明

走行装置、走行装置の制御方法

【課題】制御パラメータの調整を迅速かつ容易に行うことができ、さらには、ロバスト性の高い制御系を容易に実現可能な走行装置及びその制御方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る走行装置は、本体の姿勢情報を検出する姿勢検出手段と、車両の速度を検出する車両速度検出手段と、を備え、車両を加速又は減速させる場合に、擬似姿勢指令生成手段17は、検出した姿勢情報と、検出した車両速度と、入力する姿勢情報指令と、入力する車両速度指令とに基づいて、本体の擬似姿勢情報指令を生成し、姿勢制御手段18は、姿勢検出手段で検出した姿勢情報が、擬似姿勢指令生成手段17で生成した本体の擬似姿勢情報指令に追従するように姿勢制御を行うものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は走行装置及びその制御方法に関し、特に、自己の姿勢情報を検出して、検出した姿勢情報に基づいて駆動制御を行う走行装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人間を搭乗させて走行する走行装置であって、自己の姿勢情報を検出して、検出した姿勢情報に基づいて駆動制御を行う様々な車体構成、車両構造の走行装置が提案されている。これらの走行装置では、自己に搭載したジャイロセンサと加速度センサ信号から自己の姿勢情報を検出して、倒立振子による姿勢を制御する原理により、自己の姿勢を保つようにモータへの回転指令を演算し、モータ制御装置へ回転指令データを送信する。こうしたフィードバック制御により自己の姿勢を保ち、搭乗者の重心姿勢変化により走行することができる。
【0003】
例えば特許文献1と特許文献2には、同軸上に二車輪が配置された同軸二輪車が開示されている。このような同軸二輪車は構造上前後に不安定なものであり、姿勢センサからのフィードバックにより車輪の制御を行い、姿勢を安定させる、という特徴を有している。また、前進、後退、左右旋回などの車両の操作については、乗員の重心移動による指示や、ステップの傾きによる指示や、操縦桿からの指示などにより行われている。或いは、外部からの指令入力による遠隔操作や、自己の軌道計画に基づく自律移動が行われる場合もある。
【特許文献1】特開2006−211899号公報
【特許文献2】特開2006−315666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の同軸二輪車の制御系では、姿勢制御器における制御パラメータの調整が非常に困難なものであり、その調整に多くの手間や時間を必要とし、また、乗員の体重変動などに対するロバスト性が低くなってしまうという問題があった。
【0005】
以下、従来の同軸二輪車の問題点についてより詳細に説明する。従来の同軸二輪車において、車両のピッチ角度及びピッチ角速度の少なくとも一つの制御のみ、或いは、車両のピッチ角度及びピッチ角速度の少なくとも一つの制御と、車両の位置、速度、方向角度(ヨー方向)、方向速度(ヨー速度)の少なくとも一つの制御とを同時に成立させる場合には、トルク指令を生成してモータアンプに出力する制御系が一般的に使用されている。
【0006】
図15は、特許文献1の図33に示される制御系を示す制御ブロック図である。図15に示す制御系では、車両のピッチ角度及びピッチ角速度の制御に関する制御パラメータとしてK1及びK2が用いられており、車両の位置及び速度に関する制御パラメータとしてK3及びK4が用いられている。即ち、図15に示す制御系では、車両のピッチ角度及びピッチ角速度の制御と、車両の位置及び速度の制御とが同時に成立するように制御パラメータK1〜K4を調整する必要がある。
【0007】
ここで、同軸二輪車は倒立振子である以上、加速や減速といった制御動作を行なわせる際には、それら動作に応じて必ず車両のピッチ角度を傾ける必要があるという物理的制約がある。例えば、同軸二輪車を減速後に停止させたい場合には、車両を単純に減速させるように制御するものとしては、同軸二輪車は慣性により倒立状態を維持することができずに、前方へとそのまま転倒してしまう。このため、同軸二輪車を減速させて停止させたい場合には、走行方向前方へと車両を一旦加速させて、乗員よりも前に車両を出させるように制御する必要がある(即ち、乗員の上体を後に傾けるように車両ピッチ角度を変更する必要がある)。そして、乗員の上体を後傾させた後、徐々に車両速度を減速させ、車両速度が0に到達した時点で倒立状態を維持させるように停止させることで、減速時における車両の転倒を回避することができる。即ち、車両のピッチ角度を水平に維持したまま車両位置を変更させる、或いは、車両のピッチ角度を傾けたままで車両を所定の位置に静止させる、というように車両のピッチ角度と位置をそれぞれ独立に制御することはできない。従って、車両のピッチ姿勢(ピッチ角度及びピッチ角速度)に関する制御パラメータ(図15では、K1及びK2)と、車両の位置・速度に関する制御パラメータ(図15では、K3及びK4)とは互いに密接に相関しており、それぞれを独立に決定することはできない。
【0008】
制御対象を正確にモデル化することができれば、最適レギュレータの手法などにより、制御パラメータ相互の関係を数学的に決定することができる。しかし、通常は、モデル化できない摩擦、外乱、特に乗員の身長及び体重が様々に異なるために生じる質量や慣性モーメントの誤差などに起因して、制御パラメータの調整が非常に困難となっている。
【0009】
このように従来の同軸二輪車の制御系では、姿勢制御器における制御パラメータの調整が非常に困難なものであり、その調整に多くの手間や時間を必要とし、また、乗員の体重変動などに対するロバスト性が低くなってしまうという問題があった。
【0010】
従って、本発明は、制御パラメータの調整を迅速かつ容易に行うことができ、さらには、ロバスト性の高い制御系を容易に実現可能な走行装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る走行装置は、同軸上に配置された複数の車輪を独立に駆動する駆動ユニットと、前記複数の車輪を連結する本体と、前記本体の姿勢情報としての姿勢角度及び姿勢角速度の少なくとも一つを検出する姿勢検出手段と、前記本体の擬似姿勢情報指令としての擬似姿勢角度指令及び擬似姿勢角速度指令の少なくとも一つを生成する擬似姿勢指令生成手段と、前記駆動ユニットの駆動指令を生成する姿勢制御手段と、前記本体と前記複数の車輪との相対角速度を検出する車輪角速度検出手段と、前記検出した前記複数の車輪の車輪角速度と、前記姿勢検出手段で検出する姿勢角速度とに基づいて、車両の速度を検出する車両速度検出手段と、を備え、前記姿勢制御手段で生成した駆動指令に応じて前記駆動ユニットのモータを駆動して走行する走行装置であって、車両を加速又は減速させる場合に、前記擬似姿勢指令生成手段は、前記検出した姿勢情報と、前記検出した車両速度と、入力する姿勢情報指令と、入力する車両速度指令とに基づいて、前記本体の擬似姿勢情報指令を生成し、前記姿勢制御手段は、前記姿勢検出手段で検出した姿勢情報が、前記擬似姿勢指令生成手段で生成した前記本体の擬似姿勢情報指令に追従するように姿勢制御を行うものである。
【0012】
このように、車両の姿勢制御を行う姿勢制御手段に加えて、姿勢制御手段に入力する指令を生成する擬似姿勢指令生成手段をさらに設け、車両を加速又は減速させる場合に、擬似姿勢指令生成手段で車両速度指令に基づいて擬似姿勢指令を生成することで、姿勢制御手段における姿勢制御器の制御パラメータの調整は、特に正確なモデルを必要とせずに比較的簡単に行なうことができ、また、負荷変動などに対する高いロバスト性を実現することができる。また、擬似姿勢指令生成手段における擬似姿勢指令生成器の制御パラメータを、姿勢制御器の制御パラメータとは独立して調整することができるため、制御パラメータの調整が容易となる。従って、システム全体の制御パラメータの調整を迅速かつ容易に行うことができ、さらには、ロバスト性の高い制御系を容易に実現することができる。
【0013】
また、前記本体と前記複数の車輪との相対角度を検出する車輪角度検出手段と、前記検出した前記複数の車輪の車輪角度と、前記姿勢検出手段で検出する姿勢角度とに基づいて、前記車両の車両位置を検出する車両位置検出手段と、を更に備え、前記擬似姿勢指令生成手段は、前記検出した姿勢情報と、前記車両速度検出手段で検出した車両速度と、前記車両位置検出手段で検出した車両位置と、前記入力する姿勢情報指令と、前記入力する車両速度指令と、入力する車両位置指令とに基づいて、前記本体の擬似姿勢情報指令を生成するようにしてもよい。これにより、車両速度指令に加えて車両位置指令に基づいて擬似姿勢指令を生成することで、車両を加速又は減速する場合に、より良好に走行装置の駆動を制御することができる。
【0014】
さらにまた、ブレーキレバーと、前記車両の車両速度指令を設定する車両速度指令設定手段と、を更に備え、前記車両速度指令設定手段は、前記ブレーキレバーが操作された場合には、前記ブレーキレバーの操作量と前記車両速度検出手段で検出した車両速度とに応じて、前記設定した車両速度指令を変更するようにしてもよい。これによりさらに、同一の制御系により、通常走行時における走行制御と、ブレーキレバーの操作に応じた車両速度制御をと同時に成立させることができ、より良好に走行装置の駆動を制御することができる。
【0015】
また、前記入力する車両速度指令を、前記車両速度検出手段で検出した車両速度が所定の速度制限範囲を超えた場合には、前記車両速度検出手段で検出した車両速度に応じて変更するようにしてもよい。これにより、さらに、速度制限範囲を超えた場合の車両速度制御を同時に成立させることができ、より良好に走行装置の駆動を制御することができる。
【0016】
さらにまた、前記複数の車輪を駆動するためのトルク指令を生成する速度制御手段を更に備え、前記姿勢制御手段は、前記検出した姿勢情報と前記入力する姿勢情報指令とに基づいて、前記駆動ユニットの車輪角速度指令を生成し、前記速度制御手段は、前記姿勢制御手段で生成した車輪角速度指令と前記車輪角速度検出手段で検出した車輪角速度とに基づいて、前記複数の車輪のトルク指令を生成し、前記生成したトルク指令に応じて前記駆動ユニットのモータを駆動して走行するようにしてもよい。これにより、安価に高速化が可能な速度制御手段による制御系を、姿勢制御手段による制御系の内側の制御ループに有する構成とすることで、システム全体のコストを低下させつつ、より性能の高い制御を実現することができる。さらには、進行方向の安定性が向上し、走行中に片輪が浮いた場合であっても安定することができる。
【0017】
また、入力する旋回情報指令に基づいて前記走行装置の旋回速度指令を生成する旋回制御手段を更に備え、前記姿勢制御手段は、前記検出した姿勢情報と前記入力する姿勢情報指令とに基づいて、前記駆動ユニットの姿勢速度指令を生成し、前記姿勢制御手段で生成した姿勢速度指令と、前記旋回制御手段で生成した旋回速度指令とを加算又は減算して前記走行装置の車輪角速度指令として前記速度制御手段に入力し、前記速度制御手段は、前記車輪角速度検出手段で検出した車輪角速度が、前記生成した車輪角速度指令に追従するように速度制御を行うようにしてもよい。これにより、システム全体のコストを低下させつつ、姿勢制御と、速度制御と、旋回制御とを同時に成立させることができ、より性能の高い制御を実現することができる。
【0018】
さらにまた、前記複数の車輪を駆動するためのトルク指令を生成するトルク制御手段を更に備え、前記姿勢制御手段は、前記検出した姿勢情報と前記入力する姿勢情報指令とに基づいて、前記駆動ユニットの第1トルク指令を生成し、前記トルク制御手段は、前記姿勢制御手段で生成した第1トルク指令に基づいて、前記複数の車輪のトルク指令を生成し、前記生成したトルク指令に応じて前記駆動ユニットのモータを駆動して走行するようにしてもよい。
【0019】
また、前記走行装置の旋回情報としての旋回角度及び旋回角速度の少なくとも一つを検出する旋回検出手段と、入力する旋回情報指令に基づいて前記走行装置の第2トルク指令を生成する旋回制御手段と、を更に備え、前記姿勢制御手段で生成した第1トルク指令と、前記旋回制御手段で生成した第2トルク指令とを加算又は減算して前記走行装置のトルク指令として前記トルク制御手段に入力し、前記旋回制御手段は、前記旋回検出手段で検出した旋回情報が、前記入力する旋回情報指令に追従するようにトルク制御を行うようにしてもよい。
【0020】
本発明に係る走行装置の制御方法は、同軸上に配置された複数の車輪を独立に駆動し、前記複数の車輪を連結する本体の姿勢情報としての姿勢角度及び姿勢角速度の少なくとも一つを検出し、前記複数の車輪を駆動するための駆動指令を生成して、前記生成した駆動指令に応じて前記複数の車輪を駆動して走行する走行装置の制御方法であって、車両を加速又は減速させる場合に、前記本体と前記複数の車輪との相対角速度を検出する車輪角速度検出ステップと、前記姿勢角速度を検出し、前記検出した姿勢角速度と、前記検出した前記複数の車輪の車輪角速度とに基づいて、車両の速度を検出する車両速度検出ステップと、前記車両の車両速度指令を設定する車両速度指令設定ステップと、前記検出した姿勢情報と、前記検出した車両速度と、前記入力する姿勢情報指令と、前記車両速度指令設定手段で設定した車両速度指令とに基づいて、前記本体の擬似姿勢情報指令としての擬似姿勢角度指令及び擬似姿勢角速度指令の少なくとも一つを生成する擬似姿勢指令生成ステップと、前記姿勢検出手段で検出した姿勢情報が、前記擬似姿勢指令生成手段で生成した前記本体の擬似姿勢情報指令に追従するように姿勢制御を行う姿勢制御ステップと、を有するものである。
【0021】
このように、車両の姿勢制御を行う姿勢制御ステップに加えて、姿勢制御ステップで使用する指令を生成する擬似姿勢指令生成ステップをさらに設け、車両を加速又は減速させる場合に、擬似姿勢指令生成ステップにおいて車両速度指令に基づいて擬似姿勢指令を生成することで、姿勢制御ステップにおいて使用する姿勢制御器の制御パラメータの調整は、特に正確なモデルを必要とせずに比較的簡単に行なうことができ、また、負荷変動などに対する高いロバスト性を実現することができる。また、擬似姿勢指令生成ステップにおいて使用する擬似姿勢指令生成器の制御パラメータを、姿勢制御器の制御パラメータとは独立して調整することができるため、制御パラメータの調整が容易となる。従って、システム全体の制御パラメータの調整を迅速かつ容易に行うことができ、さらには、ロバスト性の高い制御系を容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、制御パラメータの調整を迅速かつ容易に行うことができ、さらには、ロバスト性の高い制御系を容易に実現可能な走行装置及びその制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
発明の実施の形態1.
以下、図面を参照しながら本発明について説明する。図1は、本発明に係る実施の形態1として、本発明に係る走行装置の一実施形態の構成を示す図である。尚、図1のAは正面図を示し、図1のBは側面図を示す。図1において、本実施の形態1に係る走行装置は、乗員が立つ部分である本体1に対して、同軸芯線上に平行に車輪3A、3Bを有する同軸二輪車である。
【0024】
尚、以下の説明で用いる同軸二輪車の車両の全体に対する各座標系を、図中に記載のように、車軸に対して垂直方向をX軸、車軸方向をY軸、鉛直方向をZ軸、車軸周り(Y軸周り)をピッチ軸、車両上面視においてX−Y平面上の回転方向をヨー軸とする。
【0025】
本実施の形態1に係る走行装置は、本体1と、本体1に同軸上に取り付けられた1対の駆動ユニット2A及び2Bと、駆動ユニット2A及び2Bによりそれぞれ回転駆動される車輪3A及び3Bと、乗員がつかまるT字型のハンドル4と、本体1の前後(Y軸周り)の傾きを検出する姿勢検出装置4と、旋回操作を指示するための旋回操作装置6と、ハンドル4の端部にブレーキレバー7と、ブレーキレバー7の操作情報(操作量、操作速度)を検出するブレーキ検出装置9と、を備えている。また、本体1には、図示しないが、後述する車両の制御を行う制御装置が設けられている。尚、本体1には乗員の乗車を識別するセンサ、或いはスイッチ(図示せず)を内蔵していてもよい。
【0026】
図2は、ブレーキレバー7の周りの構造例を示す図である。尚、図2のAは上面図を示し、図2のBは側面図を示す。図2に示すように、ハンドル4にブレーキレバー7が取り付けられ、このブレーキレバー7の操作量や、操作速度を、ブレーキ検出装置8としてのポテンショメータ、或いはロータリーエンコーダによって検出する。さらに、ブレーキレバー7には戻りバネ9が設けられており、これらブレーキ検出装置8と戻りバネ9とはブラケット10に納められている。
【0027】
図3は、本実施の形態1に係る同軸二輪車の車両制御の構成を示すブロック図である。姿勢検出装置5は、本体1の姿勢情報を検出する。本体1の姿勢情報は、姿勢角度(車両ピッチ角度)及び姿勢角速度(車両ピッチ角速度)の少なくとも一つを含む。また、本体1の姿勢情報指令が制御装置11に入力される。本体1の姿勢情報指令は、姿勢角度指令(車両ピッチ角度指令)及び姿勢角速度指令(車両ピッチ角速度指令)の少なくとも一つを含む。
【0028】
旋回操作装置6は、旋回情報指令としての車両の旋回角度指令及び旋回角速度指令を生成する。旋回操作装置6は、生成した旋回角度指令及び旋回角速度指令の少なくとも1つを制御装置11に出力する。以下では、少なくとも旋回角速度指令を制御装置11に出力するものとして説明する。旋回操作装置6は、車両の旋回角度指令及び旋回角速度指令を生成する。旋回操作装置6は、例えば、乗員によるハンドル4の操作や、乗員による旋回ハンドル(不図示)の操作などを受け、これら操作量に応じた旋回角度指令及び旋回角速度指令を生成する。また、旋回操作装置6としては、本出願人が既に提案している、乗員の重心移動により傾斜した車両のロール角度に応じて旋回指令を入力する技術(特許文献2)を適用するようにしてもよい。尚、以下では、旋回角速度指令をヨー角速度指令として説明する。
【0029】
制御装置11は、車両を目標値である車両ピッチ角度指令と、車両ピッチ角速度指令と、車両速度指令と、ヨー角速度指令とに、安定に追従するように制御する。即ち、制御装置11は、これら目標値と姿勢検出装置5及び旋回操作装置6とから入力される情報とに基づいて、全体系を倒れないように安定化させるのに必要な駆動トルクを計算し、駆動ユニット2A、2Bの各モータを駆動する。駆動ユニット2A、2Bの各モータの回転に伴う車輪3A、3Bの車輪角度及び車輪角速度が制御装置11にフィードバックされる。このような車両制御の構成により、同軸二輪車は、乗員が重心を前後にずらすことで前進後退を行い、乗員が旋回操作装置6を操作することで左右旋回を行う。
【0030】
走行中に乗員によりブレーキレバー7が操作された場合には、ブレーキ検出装置8は、乗員が操作したブレーキレバー7の操作量と操作速度とを検出する。車両速度検出手段としての車両速度検出装置12は、駆動ユニット2A及び2Bで検出された本体1と車輪との相対角速度である車輪角速度と、姿勢検出装置5で検出された車両ピッチ角速度とから、現在の車両速度を求める。そして、車両速度指令設定手段としての車両速度指令設定装置13は、ブレーキ検出装置8と車両速度検出装置12との出力から減速度を決定し、車両速度指令を決定する。即ち、上述した処理によって、車両速度指令設定装置23はブレーキ操作量とブレーキ操作速度の大きさによって、減速度を適切に調節する。これにより、制御装置11は、車両ピッチ角度指令(=0、即ち水平に保つ)と、車両ピッチ角速度指令(=0、即ち現在の角度に保つ)と、車両速度指令と、ヨー角速度指令とに、車両を安定的に追従させる。
【0031】
尚、車両速度指令設定装置13は、乗員によりブレーキレバー7が操作された場合に限らず、車両速度検出装置12で検出した車両速度が所定の速度制限範囲を超えた場合においても、車両速度検出装置12で検出した車両速度に応じて、設定した車両速度指令を変更するようにしてもよい。また、車両速度指令設定装置13は、通常走行時には、車両速度検出装置12で検出した車両速度を車両速度指令として設定することで、通常走行時の走行制御とブレーキレバーの操作に応じた速度制御とを、同一の制御系により同時に両立させることができる。
【0032】
以下、図4〜図7を参照して、車両の動作制御について詳細に説明する。図4は、本実施の形態1に係る同軸二輪車の動作制御系を示す制御ブロック図である。図5は、減速時に設定される車両速度指令の一例を示す図である。図6は、図4に示す制御器のより詳細な構成を示す制御ブロック図である。図7は、減速時に設定される擬似車両ピッチ角度指令及び擬似車両ピッチ角速度指令の一例を示す図である。図8は、図4に示す動作制御系を、各駆動ユニット2A、2Bと車輪3A、3Bとについてより詳細に説明する図である。
【0033】
まず、以下の説明に用いる変数について説明する。βは車両ピッチ角度を示し、β′は車両ピッチ角速度を示す。xは車両位置を示し、x′は車両速度を示す。これら車両ピッチ角度β、車両ピッチ角速度β′、車両位置x、車両速度x′は検出値を示す。また、βは車両ピッチ角度指令を示し、β′は車両ピッチ角速度指令を示す。xは車両位置指令を示し、x′は車両速度指令を示す。γ′は車両のヨー角速度指令を示す。これら車両ピッチ角度指令β、車両ピッチ角速度指令β′、車両位置指令x、車両速度指令x′、ヨー角速度指令γ′は目標値である指令値を示す。即ち、下添え文字にrが付いている変数は指令値を示し、rが付いていない変数は検出値を示す。また、2Lはトレッド幅を示し、Rは車輪半径を示す。また、以下の説明において、変数上のドットは時間微分を意味する。例えば車両の位置xに関する一回微分を、車両速度x´として、又は、変数"x"上にドット"・"を付して示す。尚、本実施の形態1においては、ブレーキレバー操作や速度制限に応じて車両速度を減速させる場合における動作制御について説明するため、制御器14に対して、少なくとも車両ピッチ角度指令、車両ピッチ角速度指令、車両速度指令が入力される。
【0034】
図4において、駆動ユニット2は、同軸上に配置された複数の車輪3を独立に駆動する。駆動ユニット2は、各車輪3を駆動するためのモータとアンプを含み、入力されるトルク指令を受けてトルク制御を行う。モータの回転に伴い車輪3にはトルクが加えられる。また、モータの回転に伴い車両本体1に対してトルクの反力が加わると共に、車輪3の回転に伴い車両本体1に対して地面からの反力としての力が加えられる。
【0035】
図示しない車輪角速度検出手段により、本体1と複数の車輪3との相対角度及び相対角速度としての車輪角度及び車輪角速度を検出する。車輪角速度検出手段は、例えば、モータの回転軸に設けられたエンコーダ情報から、車輪角度及び車輪角速度を検出する。
【0036】
姿勢検出装置5は、本体1の車両ピッチ角度及び車両ピッチ角速度を検出する。姿勢検出装置5は、ジャイロセンサや加速度センサを用いて車両ピッチ角度及び車両ピッチ角速度を検出する。
【0037】
車両速度検出装置12は、車輪角速度検出手段で検出された車輪角速度と、姿勢検出装置5で検出された車両ピッチ角速度とから、現在の車両速度を求める。現在の車両速度は、車両ピッチ角速度と車輪角速度との差(又は和)に車輪径を掛けることにより計算する。車両速度指令設定装置13は、ブレーキ検出装置8と車両速度検出装置12との出力からある関数fに従って減速度指令(aVref=f(B、B′、x′))を決定し、車両速度指令(今回のx′=前回のx′−aVref)を設定する。関数fは、例えばf(B、B′、x′)=LB+LB′+Lx′に示すような形式であり、ブレーキ操作量Bと、ブレーキ操作速度B′と、車両本体x′の速度とが大きいときは大きな減速度指令を算出するように係数L、L、L決める。図5は、減速度指令が異なる場合の車両速度指令の時間変化を示す図である。図5において、x′は、減速開始時の車両速度を示し、減速度指令がそれぞれ異なる3つの車両速度指令x′(A)、x′(B)、x′(C)を示している。尚、関数fの決め方によっては、車両本体の速度が小さいときに大きな減速度指令を算出するというような、異なる性質を持たせることもできる。また、車両速度指令が0または負になった場合には、車両速度指令は0とする。
【0038】
制御器14は、姿勢検出装置5で検出した車両ピッチ角度及び車両ピッチ角速度と車両速度検出装置12で検出した車両速度とが、入力する車両ピッチ角度指令及び車両ピッチ角速度指令と車両速度指令設定装置13で決定した車両速度指令とに追従するように姿勢制御を行う。即ち、制御器14は、姿勢検出装置5で検出した車両ピッチ角度及び車両ピッチ角速度と車両速度検出装置12で検出した車両速度と、入力する車両ピッチ角度指令及び車両ピッチ角速度指令と車両速度指令設定装置13で決定した車両速度指令とに基づいて、駆動ユニット2の姿勢速度指令を生成し、姿勢速度指令についての制御を行う。
【0039】
より具体的には、図6に示すように、制御器14は、擬似姿勢指令生成手段としての擬似姿勢指令生成器17と、姿勢制御手段としての姿勢制御器18とを備えている。擬似姿勢指令生成器17は、車両を加速又は減速させる場合に、入力される車両ピッチ角度指令β、車両ピッチ角速度指令β′、車両速度指令x′と、検出した車両ピッチ角度β、車両ピッチ角速度β′、車両速度x′とに基づいて、擬似車両ピッチ角度指令βsr及び擬似車両ピッチ角速度指令β′srを生成する。尚、下添え文字にsrが付いている変数は、擬似姿勢指令生成器17により生成される擬似的な指令値を示す。擬似姿勢指令生成器17は、以下の数1及び数2を用いて、擬似車両ピッチ角度指令及び擬似車両ピッチ角速度指令を計算する。数1において、Kはゲインを示す。
【数1】

【数2】

【0040】
通常走行時には、擬似姿勢指令生成器17に対して、車両ピッチ角度指令β及び車両ピッチ角速度指令β′の値を共に0として入力し、現在の車両速度x′を車両速度指令x′として入力する。従って、数1より、βsr=β+K(x′−x′)=β=0となり、数2より、β´sr=dβsr/dt=0となるため、後述する姿勢制御器18は、乗員の重心移動によって生じる車両ピッチ角度β及び車両ピッチ角速度β′を0に保つように姿勢制御を行う。
【0041】
車両を加速又は減速させる場合には、擬似姿勢指令生成器17は、入力される車両速度指令x′に応じて、0ではない値を擬似車両ピッチ角度指令βsr及び擬似車両ピッチ角速度指令β′srとして生成する。例えば減速時には、擬似姿勢指令生成器17に対して、現在の車両速度x′よりも小さな車両速度指令x′が入力され、擬似姿勢指令生成器17は、車両ピッチ角度指令β及び車両ピッチ角速度指令β′の値として、車両を後傾させるような指令値を生成する。
【0042】
図7は、減速時に設定される擬似車両ピッチ角度指令及び擬似車両ピッチ角速度指令の時間変化を示す図である。図7において、擬似姿勢指令生成器17は、時間t=0において車両の減速を開始した後、入力される車両ピッチ角度指令β及び車両速度指令x′と、検出した車両速度x′とを数1に代入して、擬似車両ピッチ角度指令βsrを計算する。そして、計算した擬似車両ピッチ角度指令βsrを数2に代入して、擬似車両ピッチ角速度指令β′srを計算する。図7に示す例では、擬似車両ピッチ角度指令βsrは負の値として計算される(即ち、車両を後傾させるような値として計算される)。そして、時間t=0からt=T1にかけて、車両速度指令x′と車両速度x′との差が拡大することにより、擬似車両ピッチ角速度指令β′srの値は負の方向に大きくなる(即ち、車両ピッチ角度を水平状態から後傾させるように擬似車両ピッチ角速度指令を生成する)。時間t=T1からt=T2にかけて、車両速度指令x′と車両速度x′との差が均衡することにより、擬似車両ピッチ角速度指令β′srの値は略一定となり、車両ピッチ角度を後傾させるように保持される。そして、時間t=T2からt=T3にかけて、車両速度指令x′と車両速度x′との差が縮小することにより、擬似車両ピッチ角速度指令β′srの値は再び正の方向へと大きくなる(即ち、車両ピッチ角度を後傾させた状態から水平状態へと戻すように擬似車両ピッチ角速度指令を生成する)。後述するように、姿勢制御器18は生成した擬似車両ピッチ角度指令及び擬似車両ピッチ角速度指令に追従するように制御を行うため、車両ピッチ角度を後傾させた状態から水平状態へと戻す際には、同時に、車両速度が減速してゆく。従って、車両を減速させる場合に、擬似姿勢指令生成器17により車両を一旦後傾させるような指令を生成することで、結果として転倒回避を実現しながら車両を減速させることができる。
【0043】
姿勢制御器18は、通常走行時には、検出した車両ピッチ角度指令β及び車両ピッチ角速度指令β′が、車両ピッチ角度指令β及び車両ピッチ角速度指令β′に追従するように姿勢制御を行う。そして、車両を加速又は減速させる場合には、検出した車両ピッチ角度指令β及び車両ピッチ角速度指令β′が、擬似姿勢指令生成器17で生成した擬似車両ピッチ角度指令βsr及び擬似車両ピッチ角速度指令β′srに追従するように姿勢制御を行う。即ち、入力される擬似車両ピッチ角度指令βsr及び擬似車両ピッチ角速度指令β′srと、検出した車両ピッチ角度β及び車両ピッチ角速度β′との差を取り、差を0に収束させるようにPID(比例・積分・微分)制御を行う。姿勢制御器18は、以下の数3を用いて姿勢速度指令を計算する。数3において、Kpp、Kdp、Kipはゲインを示す。
【数3】

これらの制御ゲインによって、モータが擬似車両ピッチ角度指令βsr及び擬似車両ピッチ角速度指令β′srに対して応答する追従性が変化する。例えば、モータロータは、ゲインKppを小さくすると、ゆっくりとした追従遅れをもって動くようになり、ゲインKppを大きくすると、高速に追従するようになる。このように、制御ゲインを変化させることにより、擬似車両ピッチ角度指令βsr及び擬似車両ピッチ角速度指令β′srに、実際に検出した車両ピッチ角度β及び車両ピッチ角速度β′との誤差の大きさや応答時間を調整することが可能となる。尚、姿勢制御器18では、PID(比例・積分・微分)制御に限定されず、H∞制御や、ファジィ制御などを用いて制御を行うようにしてもよい。
【0044】
旋回制御手段としての旋回制御器16は、入力するヨー角速度指令に基づいて旋回速度指令を生成する。ヨー角速度指令は、上述した旋回操作装置6により入力する。旋回制御器16は、車両のトレッド幅2Lと車輪Rとを用いて、入力されるヨー角速度指令γ′を各車輪3への旋回速度指令に分解する。旋回制御器16は、以下の数4を用いて旋回速度指令を計算する。
【数4】

【0045】
姿勢制御器14で生成した姿勢速度指令と、旋回制御器16で生成した旋回速度指令とを加算器により加算して(又は減算器により減算)、車輪角速度指令として速度制御器13に入力する。図8に示すように左右の車輪3A、3Bに対して車輪角速度指令を生成する場合には、数3で計算した姿勢速度指令と、数4で計算した旋回速度指令とから、以下の数5及び数6を用いて左右の車輪の角速度指令を計算する。
(数5)
左車輪角速度指令=姿勢速度指令−旋回速度指令
(数6)
右車輪角速度指令=姿勢速度指令+旋回速度指令
【0046】
速度制御手段としての速度制御器15は、入力される車輪角速度指令と、車輪角速度検出手段で検出した車輪角速度との差を取り、差を0に収束させるようにPI(比例・微分)制御を行い、検出値が指令値に一致するように速度制御を行う。即ち、速度制御器15は、入力される車輪角速度指令と、車輪角速度検出手段で検出した車輪角速度とに基づいて、複数の車輪3のトルク指令を生成し、駆動ユニット2へと出力する。速度制御器15は、モータのエンコーダ情報に基づいた単純なPI制御やPD制御を行なうので、安価なCPUにより十分高速な制御周期を実現することができる。
【0047】
以上の制御系により、乗員の体重移動に応じた姿勢制御と、乗員の操作や体重移動による旋回制御と、さらには、乗員のブレーキ操作に応じた車両速度制御と、車両速度制限を越えた場合の速度制御とを両立することができる。
【0048】
発明の実施の形態2.
図9は、本実施の形態2に係る同軸二輪車の車両制御の構成を示すブロック図である。尚、駆動ユニット2と、姿勢検出装置5と、旋回操作装置6と、車両速度検出装置12と、は上述した実施の形態1で説明した各装置と同一であり、ここではその詳細な説明を省略する。
【0049】
制御装置21は、車両を目標値である車両ピッチ角度指令と、車両ピッチ角速度指令と、車両速度指令と、車両位置指令と、旋回角速度指令とに、安定に追従するように制御する。即ち、制御装置21は、これら目標値と姿勢検出装置5及び旋回操作装置6とから入力される情報とに基づいて、全体系を倒れないように安定化させるのに必要な駆動トルクを計算し、駆動ユニット2A、2Bの各モータを駆動する。駆動ユニット2A、2Bの各モータの回転に伴う車輪3A、3Bの車輪角度及び車輪角速度が制御装置11にフィードバックされる。このような車両制御の構成により、同軸二輪車は、乗員が重心を前後にずらすことで前進後退を行い、乗員が旋回操作装置6を操作することで左右旋回を行う。
【0050】
車両速度指令設定装置22は、車両速度指令に関する入力指令と車両速度検出装置12との出力から減速度を決定し、車両速度指令を決定する。車両位置検出装置23は、駆動ユニット2A及び2Bで検出された本体1と車輪3A及び3Bとの相対角度と、姿勢検出装置5で検出された車両ピッチ角度とから、現在の車両位置を求める。現在の車両位置は、車両ピッチ角度と車輪角度との差に車輪径を掛けることにより計算する。そして、車両位置指令設定装置24は車両位置指令に関する入力指令と車両位置検出装置23との出力から車両位置指令を決定する。これにより、制御装置21は、車両ピッチ角度指令(=0、即ち水平に保つ)と、車両ピッチ角速度指令(=0、即ち現在の角度に保つ)と、車両速度指令と、車両位置指令と、旋回角速度指令とに、車両を安定的に追従させる。
【0051】
ここで、上述した目標値である車両ピッチ角度指令と、車両ピッチ角速度指令と、車両速度指令と、車両位置指令と、旋回角速度指令とは、様々な手段により生成・入力することができる。例えば、同軸二輪車を操作するためのジョイスティックを備え、乗員が同軸二輪車に搭載されたジョイスティックを操作することにより、制御装置21に上述した指令を入力するようにしてもよい。この場合には、ジョイスティックの操作桿の操作量や操作速度に応じて、車両速度指令に関する操作信号が車両速度指令設定装置22に出力される。同時に、ジョイスティックの操作桿の操作量や操作方向に応じて、車両位置指令に関する操作信号が車両位置指令設定装置24に出力される。また、ジョイスティックなどの指令入力手段を用いずに、制御装置21に対する上述した指令を、乗員の搭乗の有無に関わらず、無線などの手段により外部から入力するようにしてもよい。さらには、同軸二輪車の走行軌道の軌道計画を行い、計画した軌道計画に基づいて、上述した指令を生成・入力するようにしてもよい。即ち、所望の車両制御動作に対して予め所定の動作パターンを定め、当該動作パターンに応じた車両速度指令を決定する。そして、決定した車両速度指令を積分することにより、車両位置指令を生成することができる。
【0052】
以下、図10〜図12を参照して、車両の動作制御について詳細に説明する。図10は、本実施の形態2に係る同軸二輪車の動作制御系を示す制御ブロック図である。図11は、図10に示す制御器のより詳細な構成を示す制御ブロック図である。図12は、図10に示す動作制御系を、各駆動ユニット2A、2Bと車輪3A、3Bとについてより詳細に説明する図である。以下の説明に用いる変数については上述した実施の形態1で説明した変数と同一であり、ここではその詳細な説明を省略する。尚、本実施の形態2においては、制御器25に対して少なくとも車両ピッチ角度指令、車両ピッチ角速度指令、車両速度指令、車両位置指令が入力される。
【0053】
図10において、制御器25は、姿勢検出装置5で検出した車両ピッチ角度及び車両ピッチ角速度と、車両速度検出装置12で検出した車両速度と、車両位置検出装置23で検出した車両位置とが、入力する車両ピッチ角度指令及び車両ピッチ角速度指令と、車両速度指令設定装置22で決定した車両速度指令と、車両位置指令設定装置23で決定した車両位置とに追従するように姿勢制御を行う。即ち、制御器25は、姿勢検出装置5で検出した車両ピッチ角度及び車両ピッチ角速度と、車両速度検出装置12で検出した車両速度と、車両位置検出装置23で検出した車両位置と入力する車両ピッチ角度指令及び車両ピッチ角速度指令と、車両速度指令設定装置22で決定した車両速度指令と、車両位置指令設定装置23で決定した車両位置とに基づいて、駆動ユニット2の姿勢速度指令を生成し、姿勢速度指令についての制御を行う。
【0054】
より具体的には、図11に示すように、制御器25は、擬似姿勢指令生成器28と、姿勢制御器29とを備えている。擬似姿勢指令生成器28は、車両を加速又は減速させる場合に、入力される車両ピッチ角度指令β、車両ピッチ角速度指令β′、車両速度指令x′、車両位置指令xと、検出した車両ピッチ角度β、車両ピッチ角速度β′、車両速度x′、車両位置xとに基づいて、擬似車両ピッチ角度指令βsr及び擬似車両ピッチ角速度指令β′srを生成する。
【0055】
以下、擬似姿勢指令生成器28による擬似車両ピッチ角度指令βsr及び擬似車両ピッチ角速度指令β′srの生成方法について説明する。まず、乗員が搭乗している場合に、車両+乗員の物理モデルを求める。ここで、車両としては設計時の各種パラメータを用い、乗員としては身長と体重の平均的な値を想定するものとして、運動方程式を立てる。この運動方程式を線形化近似することで、以下の数7に示すシステム(車両+乗員)の状態表現を得る。尚、zは状態変数を示し、uは制御入力を示す。また、Aは4×4の行列を示し、Bは4×1の行列を示す。また、乗員が搭乗していない場合には、乗員を除いた物理モデルに基づいて擬似車両ピッチ角度指令βsr及び擬似車両ピッチ角速度指令β′srを求めることができる。
【数7】

このシステムに対して、以下の数8に示す状態フィードバック制御を行うことで、システムを安定化させることができる。尚、Kはフィードバックゲイン行列を示す。
【数8】

これによりシステムを以下の数9に示すクローズドループシステムとして実現することができる。
【数9】

数9において、状態変数zの指令zを含めることにより以下の数10を得る。これにより、指令に対して安定的に追従する制御を行うことができる。
【0056】
Δt秒後における状態変数zはz+z´Δtにより計算することができる。即ち、状態変数zの初期値をzとした場合に、数9を用いて、状態変数zを以下に示すように順次計算する。尚、zr1,zr2・・・はそれぞれの時点における状態変数の指令zを示し、上述した手段により入力される。即ち、物理モデルと実際の測定値に基づいたシミュレーション上の状態zを求めることができる。

=z+z´Δt=z+(A−BK)(zr1−z
=z+z´Δt=z+(A−BK)(zr2−z
=z+z´Δt=z+(A−BK)(zr3−z



このようにして求めた状態変数zの要素のうち、車両ピッチ角度β及び車両ピッチ角速度β´を、それぞれ擬似車両ピッチ角度指令βsr及び擬似車両ピッチ角速度β´srとして出力する。つまり、車両に所望の動作を行わせるために必要な車両ピッチ角度及び車両ピッチ角速度を擬似姿勢指令として生成することにより、姿勢制御器29では、これら生成した擬似姿勢指令に追従するように制御を行うため、結果的に、車両が所望の挙動を行うことになる。このとき、想定する物理モデルと実際のシステムとの誤差が大きな場合には、シミュレーションにより求められた状態変数zを擬似姿勢指令として用いることに問題が生じる。しかし、制御器25が行う制御に関して、姿勢制御と位置・速度制御とを分割して、それぞれ姿勢制御器29と擬似姿勢指令生成器28とを用いて行う構成としたことで、姿勢制御パラメータと位置・速度制御パラメータとをそれぞれ独立に調整すれば足り、制御パラメータの調整を多少の試行錯誤により簡単に行うことができる。
【0057】
姿勢制御器29は、検出した車両ピッチ角度β及び車両ピッチ角速度β′が、車両ピッチ角度指令β及び車両ピッチ角速度指令β′に追従するように姿勢制御を行う。そして、車両を加速又は減速させる場合には、検出した車両ピッチ角度β及び車両ピッチ角速度β′が、擬似姿勢指令生成器28で生成した擬似車両ピッチ角度指令βsr及び擬似車両ピッチ角速度指令β′srに追従するように姿勢制御を行う。旋回制御器27は、入力するヨー角速度指令に基づいて旋回速度指令を生成する。ヨー角速度指令は、上述した旋回操作装置6により入力する。姿勢制御器29で生成した姿勢速度指令と、旋回制御器27で生成した旋回速度指令とを加算器により加算して(又は減算器により減算)、車輪角速度指令として速度制御器26に入力する。図12に示すように左右の車輪3A、3Bに対して車輪角速度指令を生成する場合には、姿勢制御器29で計算した姿勢速度指令と、旋回制御器27で計算した旋回速度指令とから、左右の車輪の角速度指令を計算する。速度制御器26は、入力される車輪角速度指令と、車輪角速度検出手段で検出した車輪角速度との差を取り、差を0に収束させるようにPI(比例・微分)制御を行い、検出値が指令値に一致するように速度制御を行う。尚、姿勢制御器29と、旋回制御器27と、速度制御器27とが行う制御は、上述した実施の形態1における姿勢制御器18と、旋回制御器16と、速度制御器15とが行う制御と同一であり、ここではその詳細な説明を省略する。
【0058】
ここで、乗員が乗車した場合と空車の場合のそれぞれにおける制御について、より詳細に説明する。後に説明する物理モデルのM(車両本体の質量)とJ(車両本体の慣性モーメント)として、乗車時は、車両+乗員の合成質量と合成慣性モーメントを用いて線形化を行い、空車時は、車両のみの質量と慣性モーメントを用いて線形化までを行う。この物理モデルは、数10に示すいわゆるシステムの状態表現(xは状態変数、uは制御入力を示し、AとBは行列を示す。)を用いて、以下の数11に示す状態表現により表すことができる。尚、θは車輪の角度を示し、θは車両本体の角度を示す。θ′は車輪の角速度を示し、θ′は車両本体の角速度を示す。下付文字のwは車輪に関する変数を示し、Bは車両本体に関する変数を示す。
【数10】

【数11】

【0059】
ここで、以下の数12に示すように、制御入力uをトルクτとした場合の以下の状態フィードバックを行うことにより、システムを安定化させることができる。即ち、ゲインKは、(A−BK)の極配置や、最適レギュレータなどの手法により求めることができる。
【数12】

【0060】
次に、図14を用いて、一般的な車輪型倒立振子の物理モデルについて説明する。まず、以下の説明に用いる変数について説明する。Mはシステム(車両+乗員)の質量[kg]を示す。乗員の乗車時は、Mは車両+乗員の合成質量を示し、空車時は、車両のみの質量を示す。Jはシステムに加わる慣性モーメント[kgm]を示す。乗員の乗車時は、Jは車両+乗員の合成慣性モーメントを示し、空車時は、車両のみの慣性モーメントを示す。xは原点からの水平位置[m]を示す。yは車軸からの垂直位置[m]を示す。θは角度[rad]を示す。lは車軸からステップボード(車両本体)の重心までの距離[m]を示す。rはホイール半径(車輪径)[m]を示す。gは重力加速度[m/s]を示す。Dθはステップボードとホイールとの間の粘性摩擦係数(走行抵抗)[Nms]を示す。Dθwはホイールと路面の間の粘性摩擦係数(走行抵抗)[Nms]を示す。尚、添え字wはホイールについて、Bはステップボードについての変数であることを示す。
【0061】
まず、ホイールの運動エネルギーとポテンシャルエネルギーについて、以下の数13及び数14を得る。
【数13】

【数14】

【0062】
次に、ステップボードの運動エネルギーとポテンシャルエネルギーについて、以下の数15及び数16を得る。
【数15】

【数16】

【0063】
ここで、
【数17】

として、以下の数18に示すラグラジアンLを、ホイールとステップボードそれぞれについて得る。
【数18】

従って、以下の数19〜数21に示す運動方程式を得る。
【0064】
【数19】

【数20】

【数21】

【0065】
さらに、
【数22】

として、上述した運動方程式を以下の数23〜数25に示すように線形化することができる。
【数23】

【数24】

【数25】

【0066】
以上の制御系により、姿勢制御と、旋回制御と、車両速度制御と、車両位置制御とを両立することができる。
【0067】
その他の実施の形態.
上述した実施の形態1及び実施の形態2では、姿勢制御器はPID制御による速度制御を行うものとして説明したが本発明はこれに限定されない。即ち、姿勢制御器では、状態フィードバックによるトルク指令を生成することで制御を行う構成としてもよいし、又は、ZMP(Zero Moment Point)規範に基づく位置指令を生成することで制御を行う構成としてもよい。
【0068】
図13は、姿勢制御器がトルク指令を生成する場合の、同軸二輪車の動作制御系を示す制御ブロック図である。制御器64は、擬似姿勢指令生成器67と姿勢制御器68とを備える。擬似姿勢指令生成器67は、上述したようにして、擬似車両ピッチ角度指令及び擬似車両ピッチ角速度指令を生成する。姿勢制御器68では、擬似車両ピッチ角度指令、擬似車両ピッチ角速度指令、車両位置指令、車両速度指令などが入力され、検出器63で検出された車両ピッチ角度、車両ピッチ角速度、車両位置、車両速度などとの偏差に基づいた制御が行われる。即ち、姿勢制御器68で生成した第1トルク指令と、旋回制御器66で生成した第2トルク指令とを加算又は減算してトルク指令とし、モータアンプからなるトルク制御器65にトルク指令を出力することで、車輪62の駆動制御を行う。姿勢制御器68の制御としては、PID制御、H∞制御、ファジィ制御などが用いられる。旋回制御器66では、ヨー角速度指令などが入力され、図示しないモータのエンコーダ情報に基づいて検出された車両ヨー角速度などとの偏差に基づいた制御が行われる。旋回制御器66の制御としては、PD制御やPID制御などが用いられる。
【0069】
以上説明したように、本発明によれば、車両の姿勢制御を行う姿勢制御手段に加えて、姿勢制御手段に入力する指令を生成する擬似姿勢指令生成手段をさらに設け、車両を加速又は減速させる場合に、擬似姿勢指令生成手段で車両速度指令に基づいて擬似姿勢指令を生成することで、システム全体の制御パラメータの調整を迅速かつ容易に行うことができ、さらには、ロバスト性の高い制御系を容易に実現することができる。これは、姿勢制御手段における姿勢制御器の制御パラメータの調整は、特に正確なモデルを必要とせずに比較的簡単に行なうことができ、また、負荷変動などに対する高いロバスト性を実現することができるためである。また、擬似姿勢指令生成手段における擬似姿勢指令生成器の制御パラメータを、姿勢制御器の制御パラメータとは独立して調整することができるため、制御パラメータの調整が容易となるためである。
【0070】
尚、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、既に述べた本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態1に係る走行装置の一実施形態の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る走行装置の要部の構成を示す図である。
【図3】本実施の形態1に係る同軸二輪車の車両制御の構成を示す制御ブロック図である。
【図4】本実施の形態1に係る同軸二輪車の動作制御系の構成を示す制御ブロック図である。
【図5】本実施の形態1に係る減速時に設定される車両速度指令の一例を示す図である。
【図6】図4に示す制御器のより詳細な構成を示す制御ブロック図である。
【図7】本実施の形態1に係る減速時に設定される擬似車両ピッチ角度指令及び擬似車両ピッチ角速度指令の一例を示す図である。
【図8】本実施の形態1に係る同軸二輪車の動作制御系の構成を示す制御ブロック図である。
【図9】本実施の形態2に係る同軸二輪車の車両制御の構成を示す制御ブロック図である。
【図10】本実施の形態2に係る同軸二輪車の動作制御系の構成を示す制御ブロック図である。
【図11】図9に示す制御器のより詳細な構成を示す制御ブロック図である。
【図12】本実施の形態2に係る同軸二輪車の動作制御系の構成を示す制御ブロック図である
【図13】本実施の形態2に係る同軸二輪車の一般的な車輪型倒立振子の物理モデルを説明するための図である。
【図14】他の実子の形態に係る同軸二輪車の車両制御の構成を示す制御ブロック図である。
【図15】従来の同軸二輪車の制御系の構成を示す制御ブロック図である。
【符号の説明】
【0072】
1 本体、2A、B 駆動ユニット、3A、B 車輪、4 ハンドル、
5 姿勢検出装置、6 旋回操作装置、
7 ブレーキ、8 ブレーキ検出装置、9 戻りバネ、10 ブラケット、
11 制御装置、12 車両速度検出装置、13 車両速度指令設定装置、
14 制御器、15A、B 速度制御器、16 旋回制御器、
17 擬似姿勢指令生成器、18 姿勢制御器、

21 制御装置、22 車両速度指令設定装置、23 車両位置検出装置、
24 車両位置指令設定装置、25 制御器、26A、B 速度制御器、
27 旋回制御器、28 擬似姿勢指令生成器、29 姿勢制御器、

61 車両、62 車輪、63 検出器、64 制御器、65 トルク制御器、
66 旋回制御器、67 擬似姿勢指令生成器、68 姿勢制御器、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸上に配置された複数の車輪を独立に駆動する駆動ユニットと、前記複数の車輪を連結する本体と、前記本体の姿勢情報としての姿勢角度及び姿勢角速度の少なくとも一つを検出する姿勢検出手段と、前記本体の擬似姿勢情報指令としての擬似姿勢角度指令及び擬似姿勢角速度指令の少なくとも一つを生成する擬似姿勢指令生成手段と、前記駆動ユニットの駆動指令を生成する姿勢制御手段と、前記本体と前記複数の車輪との相対角速度を検出する車輪角速度検出手段と、前記検出した前記複数の車輪の車輪角速度と、前記姿勢検出手段で検出する姿勢角速度とに基づいて、車両の速度を検出する車両速度検出手段と、を備え、前記姿勢制御手段で生成した駆動指令に応じて前記駆動ユニットのモータを駆動して走行する走行装置であって、
車両を加速又は減速させる場合に、
前記擬似姿勢指令生成手段は、前記検出した姿勢情報と、前記検出した車両速度と、入力する姿勢情報指令と、入力する車両速度指令とに基づいて、前記本体の擬似姿勢情報指令を生成し、
前記姿勢制御手段は、前記姿勢検出手段で検出した姿勢情報が、前記擬似姿勢指令生成手段で生成した前記本体の擬似姿勢情報指令に追従するように姿勢制御を行う
ことを特徴とする走行装置。
【請求項2】
前記本体と前記複数の車輪との相対角度を検出する車輪角度検出手段と、前記検出した前記複数の車輪の車輪角度と、前記姿勢検出手段で検出する姿勢角度とに基づいて、前記車両の車両位置を検出する車両位置検出手段と、を更に備え、
前記擬似姿勢指令生成手段は、前記検出した姿勢情報と、前記車両速度検出手段で検出した車両速度と、前記車両位置検出手段で検出した車両位置と、前記入力する姿勢情報指令と、前記入力する車両速度指令と、入力する車両位置指令とに基づいて、前記本体の擬似姿勢情報指令を生成する
ことを特徴とする請求項1記載の走行装置。
【請求項3】
ブレーキレバーと、前記車両の車両速度指令を設定する車両速度指令設定手段と、を更に備え、
前記車両速度指令設定手段は、前記ブレーキレバーが操作された場合には、前記ブレーキレバーの操作量と前記車両速度検出手段で検出した車両速度とに応じて、前記設定した車両速度指令を変更する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の走行装置。
【請求項4】
前記入力する車両速度指令を、前記車両速度検出手段で検出した車両速度が所定の速度制限範囲を超えた場合に、前記車両速度検出手段で検出した車両速度に応じて変更する
ことを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の走行装置。
【請求項5】
前記複数の車輪を駆動するためのトルク指令を生成する速度制御手段を更に備え、
前記姿勢制御手段は、前記検出した姿勢情報と前記入力する姿勢情報指令とに基づいて、前記駆動ユニットの車輪角速度指令を生成し、
前記速度制御手段は、前記姿勢制御手段で生成した車輪角速度指令と前記車輪角速度検出手段で検出した車輪角速度とに基づいて、前記複数の車輪のトルク指令を生成し、前記生成したトルク指令に応じて前記駆動ユニットのモータを駆動して走行する
ことを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の走行装置。
【請求項6】
入力する旋回情報指令に基づいて前記走行装置の旋回速度指令を生成する旋回制御手段を更に備え、
前記姿勢制御手段は、前記検出した姿勢情報と前記入力する姿勢情報指令とに基づいて、前記駆動ユニットの姿勢速度指令を生成し、
前記姿勢制御手段で生成した姿勢速度指令と、前記旋回制御手段で生成した旋回速度指令とを加算又は減算して前記走行装置の車輪角速度指令として前記速度制御手段に入力し、
前記速度制御手段は、前記車輪角速度検出手段で検出した車輪角速度が、前記生成した車輪角速度指令に追従するように速度制御を行う
ことを特徴とする請求項5項記載の走行装置。
【請求項7】
前記複数の車輪を駆動するためのトルク指令を生成するトルク制御手段を更に備え、
前記姿勢制御手段は、前記検出した姿勢情報と前記入力する姿勢情報指令とに基づいて、前記駆動ユニットの第1トルク指令を生成し、
前記トルク制御手段は、前記姿勢制御手段で生成した第1トルク指令に基づいて、前記複数の車輪のトルク指令を生成し、前記生成したトルク指令に応じて前記駆動ユニットのモータを駆動して走行する
ことを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の走行装置。
【請求項8】
前記走行装置の旋回情報としての旋回角度及び旋回角速度の少なくとも一つを検出する旋回検出手段と、入力する旋回情報指令に基づいて前記走行装置の第2トルク指令を生成する旋回制御手段と、を更に備え、
前記姿勢制御手段で生成した第1トルク指令と、前記旋回制御手段で生成した第2トルク指令とを加算又は減算して前記走行装置のトルク指令として前記トルク制御手段に入力し、
前記旋回制御手段は、前記旋回検出手段で検出した旋回情報が、前記入力する旋回情報指令に追従するようにトルク制御を行う
ことを特徴とする請求項7記載の走行装置。
【請求項9】
同軸上に配置された複数の車輪を独立に駆動し、前記複数の車輪を連結する本体の姿勢情報としての姿勢角度及び姿勢角速度の少なくとも一つを検出し、前記複数の車輪を駆動するための駆動指令を生成して、前記生成した駆動指令に応じて前記複数の車輪を駆動して走行する走行装置の制御方法であって、
車両を加速又は減速させる場合に、
前記本体と前記複数の車輪との相対角速度を検出する車輪角速度検出ステップと、
前記姿勢角速度を検出し、前記検出した姿勢角速度と、前記検出した前記複数の車輪の車輪角速度とに基づいて、車両の速度を検出する車両速度検出ステップと、
前記車両の車両速度指令を設定する車両速度指令設定ステップと、
前記検出した姿勢情報と、前記検出した車両速度と、前記入力する姿勢情報指令と、前記車両速度指令設定手段で設定した車両速度指令とに基づいて、前記本体の擬似姿勢情報指令としての擬似姿勢角度指令及び擬似姿勢角速度指令の少なくとも一つを生成する擬似姿勢指令生成ステップと、
前記姿勢検出手段で検出した姿勢情報が、前記擬似姿勢指令生成手段で生成した前記本体の擬似姿勢情報指令に追従するように姿勢制御を行う姿勢制御ステップと、を有する
ことを特徴とする走行装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−35330(P2010−35330A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194845(P2008−194845)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】