説明

走行速度操作装置

【課題】変速操作機構、クルーズ操作機構及びブレーキ操作機構を備えた走行速度操作装置において、走行ブレーキ装置のブレーキ作動状態とHSTの出力状態とが同時に生じることを防止する。
【解決手段】ブレーキ操作部材に連動するブレーキ連動アームと、変速操作部材に連動する変速連動アームとを備え、変速連動アームには変速連動用カム部及びブレーキ連動用カム部が設けられる。変速操作部材に連動する変速作動部材には変速連動用カム部と係合する一対の傾斜部を含む変速連動用カム面が設けられる。ブレーキ連動アームには、さらに、ブレーキ操作部材がブレーキ作動位置に位置する際にブレーキ連動用カム部が係入されることで、変速連動アームを中立位置に保持する中立溝が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行系伝動経路にHSTが介挿されたトラクタ等の作業車輌に適用される走行速度操作装置に関し、詳しくは、前記HSTを操作する為の変速操作機構と、前記変速操作機構を任意の変速位置に保持してHST出力を一定に保持するクルーズ状態及び前記クルーズ状態が解除されたクルーズ解除状態を切り換えるクルーズ操作機構と、前記作業車輌に備えられた走行ブレーキ装置におけるブレーキアクチュエータを操作する為のブレーキ操作機構とを備えた走行速度操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行系伝動経路に介挿されたHSTにおける出力調整部材を操作する変速操作機構と、前記変速操作機構を任意の操作位置に保持し得るクルーズ操作機構と、走行ブレーキ装置におけるブレーキアクチュエータを操作する為のブレーキ操作機構とを備え、前記クルーズ操作機構によるクルーズ状態が、前記クルーズ操作機構への解除操作に加えて、前記変速操作機構における変速操作部材への変速操作又は前記ブレーキ操作機構におけるブレーキ操作部材へのブレーキ操作によっても解除されるように構成された走行速度操作装置は、従来から公知である(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
前記従来の走行速度操作装置は、作業車輌が前記クルーズ操作機構によってクルーズ状態(定速走行状態)に保持されている状態において、前記変速操作機構を介して走行速度を変更、又は、前記ブレーキ操作機構を介して走行速度を減速させる際に、前記クルーズ操作機構を操作することなく、クルーズ状態を解除できる点で有用である。
【0004】
しかしながら、前記従来の走行速度操作装置においては、前記変速操作機構及び前記ブレーキ操作機構が完全に独立している為、前記HSTの出力動作と前記走行ブレーキ装置のブレーキ動作とが同時に生じる恐れがあった。
即ち、前記従来の走行速度操作装置においては、前記ブレーキ操作機構を介して前記走行ブレーキ装置を作動させている状態であっても、前記変速操作機構を増速側へ操作することが可能である為、前記走行ブレーキ装置の作動時に何らかの原因で前記変速操作機構が増速側へ操作されると、前記走行ブレーキ装置によって走行系伝動系路に制動力が付加されている状態で前記HSTによって前記走行系伝動系路に駆動力が出力されることになる。
このような操作状態は、前記走行ブレーキ装置及び/又は前記HSTの摩耗及び損傷を招く恐れがある。
【特許文献1】特開2007−55281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、変速操作機構、クルーズ操作機構及びブレーキ操作機構を備えた走行速度操作装置において、走行ブレーキ装置のブレーキ作動状態とHSTの出力状態とが同時に生じることを防止し得る走行速度操作装置の提供を、一の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するために、HSTの出力調整部材を操作する為の変速操作機構であって、人為操作可能な変速操作部材と、前記変速操作部材への人為操作に応じて軸線回りに回転する変速操作軸と、前記変速操作軸に相対回転不能に支持された変速作動部材と、前記変速作動部材及び前記出力調整部材を作動連結するHST操作リンクとを有する変速操作機構と、前記変速操作機構を所定の操作位置に保持するクルーズ状態又は前記クルーズ状態が解除されたクルーズ解除状態を切り替える為のクルーズ操作機構であって、人為操作可能なクルーズ操作部材と、前記変速作動部材に設けられた複数のラチェット歯と、前記クルーズ操作部材への人為操作に応じてクルーズ軸回りに前記ラチェット歯と係合するクルーズ位置又は前記ラチェット歯との係合が解除されたクルーズ解除位置をとり得るクルーズ部材と、前記クルーズ部材を作動的にクルーズ解除位置へ向けて付勢するクルーズ解除付勢部材とを有するクルーズ操作機構と、走行ブレーキ装置のブレーキアクチュエータを操作する為のブレーキ操作機構であって、人為操作可能なブレーキ操作部材と、前記ブレーキ操作部材への人為操作に応じて軸線回りに回転するブレーキ操作軸と、前記ブレーキ操作軸に相対回転不能に支持されたブレーキ作動部材と、前記ブレーキ作動部材及び前記ブレーキアクチュエータを作動連結するブレーキリンクと、前記ブレーキ作動部材を作動的にブレーキ解除位置へ向けて付勢するブレーキ解除付勢部材とを有するブレーキ操作機構とを備えた走行速度操作装置であって、前記ブレーキ操作軸に相対回転不能に支持されたブレーキ連動アームであって、前記ブレーキ操作部材のブレーキ解除位置からブレーキ作動位置への操作に応じて、クルーズ位置に位置する前記クルーズ部材を前記クルーズ軸回りにクルーズ解除位置へ向けて押動するクルーズ解除アーム部を備えたブレーキ連動アームと、前記変速操作軸と平行な枢支軸回り揺動可能に支持された変速連動アームであって、変速連動用カム部及びブレーキ連動用カム部が設けられた変速連動アームとを備えた走行速度操作装置を提供する。
前記変速作動部材には、さらに、前記変速操作軸に最も近接する最深部を挟んで前記変速操作軸を基準にして周方向一方側及び他方側へ行くに従って前記変速操作軸から離間され、前記変速操作部材が非中立位置に位置する際に前記変速連動用カム部と係合する一対の傾斜部を含む変速連動用カム面が設けられている。
前記変速連動アームは、前記変速連動用カム部が前記変速連動用カム面と係合する方向へ変速連動アーム付勢部材によって前記枢支軸回りに付勢されている。
前記ブレーキ連動アームには、さらに、前記ブレーキ操作部材がブレーキ作動位置に位置する際に前記ブレーキ連動用カム部が係入されることで、前記変速連動アームを中立位置に保持する中立溝が設けられている。
【0007】
好ましくは、前記変速連動用カム部及び前記ブレーキ連動用カム部は同軸上に配置される。
又、好ましくは、前記ブレーキ連動アームには、前記変速操作部材が非中立位置に位置する状態で前記ブレーキ操作部材がブレーキ解除位置からブレーキ作動位置へ操作される際に、前記ブレーキ連動用カム部を前記中立溝へ案内するガイド面が設けられる。
【0008】
前記種々の構成において、好ましくは、前記HSTの中立状態を検出する中立スイッチを備え得る。
前記中立スイッチは、前記変速連動アームが中立位置に位置するか否かを検出するように構成される。
【0009】
前記種々の構成において、好ましくは、第1端部が前記ブレーキ作動部材に連結され且つ第2端部がデフロック機構を操作する為に前記ブレーキ操作軸と平行なデフロック操作軸回り回転自在とされたデフロック操作部材に作動連結された剛性のリンク部材を備え得る。
前記ブレーキ作動部材には、前記デフロック操作部材に近接する側の近接端部と、前記デフロック操作部材から離間された側の離間端部と、前記近接端部及び離間端部の間を連通する中間部とを有する長孔が設けられている。
前記リンク部材は、前記ブレーキ作動部材がブレーキ解除位置に位置された状態で前記デフロック操作部材がデフロック解除位置に位置されている際には前記第1端部が前記長孔の前記近接端部に位置し且つ前記ブレーキ作動部材がブレーキ解除位置に位置されている状態で前記デフロック操作部材がデフロック位置に位置されている際には前記第1端部が前記長孔の前記離間端部に位置するように構成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る走行速度操作装置には、前述の通り、ブレーキ操作部材に連動するブレーキ連動アームと、変速操作部材に連動する変速連動アームとが備えられている。変速連動アームには変速連動用カム部及びブレーキ連動用カム部が設けられている。変速操作部材に連動する変速作動部材には変速連動用カム部と係合する一対の傾斜部を含む変速連動用カム面が設けられている。ブレーキ連動アームには、さらに、ブレーキ操作部材がブレーキ作動位置に位置する際にブレーキ連動用カム部が係入されることで、変速連動アームを中立位置に保持する中立溝が設けられている。
従って、前記ブレーキ操作機構を介して前記走行ブレーキ装置がブレーキ作動状態とされているにも拘わらず、前記変速操作機構を介して前記HSTが出力状態になることを有効に防止でき、前記HST及び前記走行ブレーキ装置の摩耗及び損傷を有効に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施の形態に係る走行速度操作装置100が適用された作業車輌1の側面図を示す。
又、図2及び図3に、本実施の形態に係る走行速度操作装置100の前方斜視図を示す。なお、図2及び図3は、それぞれ、車輌前進方向を基準にして左側及び右側から視た斜視図である。
【0012】
図1〜図3に示すように、前記作業車輌1は、車輌フレーム10と、前記車輌フレーム10の前方側に配置された駆動源20と、前記駆動源20に作動連結されたHST30と、車輌フレーム10の後方側に連結されたミッションケース40と、前記ミッションケース40内に設けられた走行ブレーキ装置(図示せず)とを備えている。
【0013】
前記HST30は、図2及び図3に示すように、前記駆動源10に作動連結されるポンプ軸31と、前記ポンプ軸31に相対回転不能に支持された油圧ポンプ本体(図示せず)と、前記油圧ポンプ本体に流体接続された油圧モータ本体(図示せず)と、前記油圧モータ本体を相対回転不能に支持するモータ軸32と、前記油圧ポンプ本体及び前記油圧モータ本体を一体又は個別に収容するHSTケース33とを備えている。
【0014】
前記HST30においては、前記油圧ポンプ本体及び前記油圧モータ本体は少なくとも一方が可変容積型とされており、可変容積型とされた前記油圧ポンプ本体及び/又は前記油圧モータ本体(以下、可変容積部材という)の吸引/吐出量を変化させることによって、前記ポンプ軸31への入力回転数に対する前記モータ軸31からの出力回転数が変化するようになっている。
従って、前記HST30は、前記構成に加えて、前記可変容積部材の吸引/吐出量を変化させる出力調整部材を備えている。
前記出力調整部材は、例えば、前記可変容積部材の容積量を変化させる可動斜板(図示せず)と、前記可動斜板を傾転させる制御軸35とを有し得る。
【0015】
なお、図示の形態においては、前記油圧ポンプ本体及び前記油圧モータ本体の双方共に可変容積型とされている。
従って、前記HST30は、前記出力調整部材として、ポンプ側出力調整部材及びモータ側出力調整部材を備えている。
【0016】
前記ポンプ側出力調整部材は、前記油圧ポンプ本体の吸引/吐出量をゼロとさせる中立状態と、前記油圧ポンプ本体の吸引/吐出量を前記作業車輌の前進方向において変化させる前進状態と、前記油圧ポンプ本体の吸引/吐出量を前記作業車輌の後進方向において変化させる後進状態とをとり得るように構成されている。
一方、前記モータ側出力調整部材は、前記油圧ポンプ本体からの所定作動油量に対して前記油圧モータ本体を高速回転させる高速状態と、前記所定作動油量に対して前記油圧モータ本体を低速回転させる低速状態とをとり得るように構成されている。
【0017】
さらに、前記作業車輌1は、前記走行速度操作装置100を備えている。
前記走行速度操作装置100は、図2及び図3に示すように、前記HST30を操作する為の変速操作機構200と、前記変速操作機構200を任意の変速位置に保持してHSTの出力を一定に保持するクルーズ状態及び前記クルーズ状態が解除されたクルーズ解除状態を切り換えるクルーズ操作機構300と、前記走行ブレーキ装置におけるブレーキアクチュエータ(図示せず)を操作する為のブレーキ操作機構400とを備えている。
【0018】
まず、前記変速操作機構200について説明する。
前記変速操作機構200は、人為操作可能な変速操作部材210と、前記変速操作部材210への人為操作に応じて軸線回りに回転する変速操作軸220と、前記変速操作軸220に相対回転不能に支持された変速作動部材230と、前記変速作動部材230及び前記出力調整部材を作動連結するHST操作リンク240とを備えている。
なお、本実施の形態においては、前記変速操作機構200は、前記出力調整部材のうち,前進状態,中立状態又は後進状態をとり得るように構成された前記ポンプ側出力調整部材を人為操作するように構成されている。
【0019】
図4に、前記走行速度操作装置100の部分拡大斜視図を示す。
図2〜図4に示すように、前記変速操作軸220は、車輌幅方向に沿った状態で軸線回り回転自在に支持されている。
本実施の形態においては、前記走行速度操作装置100は、前記車輌フレーム10に直接又は間接的に固定支持される固定プレート15を有しており、前記変速操作軸220は、前記固定プレート15に支持された筒状部材16に軸線回り回転自在に内挿されている。
【0020】
前述の通り、前記変速操作機構200は、前進状態、中立状態又は後進状態をとり得る前記ポンプ側出力調整部材を操作するように構成されている。
従って、前記変速操作部材210は、前記ポンプ側出力調整部材を前進側及び後進側へ操作し得るように構成されている。
【0021】
具体的には、前記変速操作部材210は、図2及び図3に示すように、前進側操作部材として作用する前進ペダル210Fと、後進側操作部材として作用する後進ペダル210Rと、下端部が前記変速操作軸220に相対回転不能に支持され且つ上端部において前記前進ペダル210F及び前記後進ペダル210Rを支持する変速アーム211とを有している。
斯かる構成により、前記前進ペダル210Fを踏み込み操作すると、前記変速アーム211を介して前記変速操作軸220が軸線回り一方側(左側面視において反時計回り方向)へ回転し、前記後進ペダル210Rを踏み込み操作すると、前記変速アーム211を介して前記変速操作軸220が軸線回り他方側(左側面視において時計回り方向)へ回転するようになっている。
なお、図示の形態においては、前記変速操作部材210は、前記前進ペダル210F及び前記後進ペダル210Rが一体形成されたシーソーペダルを有している。
【0022】
前記変速作動部材230は、前記変速操作軸220に相対回転不能に支持された径方向内方領域231と、前記径方向内端部231から径方向外方へ延びる径方向外方領域232とを有している。
本実施の形態においては、図4に示すように、前記変速作動部材230はプレート状部材とされている。
【0023】
前記HST操作リンク240は、一端部が前記変速作動部材230の前記径方向外方領域232に連結され且つ他端部が前記ポンプ側出力調整部材の制御軸35(図3参照)に作動連結されている。
本実施の形態においては、図3に示すように、前記ポンプ側出力調整部材は、前記可動斜板及び前記制御軸35に加えて、前記制御軸35の外端部に相対回転不能に支持された制御アーム36を有しており、前記HST操作リンク240の前端他端部は前記制御アーム36に連結されている。
【0024】
前記変速操作機構200は以下のように作動する。
前記HST操作部材210への人為操作を行わない状態では、前記変速操作機構200は、前記走行速度操作装置100に備えられる下記操作側中立戻し機構、及び/又は、前記HST30の出力調整部材(本実施の形態においては前記ポンプ側出力調整部材)に付随的に備えられるHST側中立戻し機構(図示せず)によって、中立状態に保持される。
【0025】
前記変速操作部材210を前記操作側中立戻し機構及び/又は前記HST側中立戻し機構の付勢力に抗して前進側へ操作すると、前記変速操作軸220が軸線回り一方側へ回転し、これに伴い、前記変速作動部材230が前記変速操作軸220の軸線回りに一方側(前進側)へ回転する。斯かる前記変速作動部材230の前進側への回転動作によって、前記HST操作リンク240が軸線方向一方側へ移動し、これにより、前記制御アーム36を介して前記制御軸35が軸線回りに前進方向へ回転する。
【0026】
これとは逆に、前記変速操作部材210を前記操作側中立戻し機構及び/又は前記HST側中立戻し機構の付勢力に抗して後進側へ操作すると、前記変速操作軸220が軸線回り他方側へ回転し、これに伴い、前記変速作動部材230が前記変速操作軸220の軸線回りに他方側(後進側)へ回転する。斯かる前記変速作動部材230の後進側への回転動作によって、前記HST操作リンク240が軸線方向他方側へ移動し、これにより、前記制御アーム36を介して前記制御軸35が軸線回りに後進方向へ回転する。
【0027】
次に、前記クルーズ操作機構300について説明する。
前記クルーズ操作機構300は、人為操作可能なクルーズ操作部材310への操作に応じて、前記変速操作機構200を所定の速度状態に保持するクルーズ状態と、前記クルーズ状態が解除されたクルーズ解除状態とをとり得るように構成されている。
【0028】
具体的には、前記クルーズ操作機構300は、図2〜図4に示すように、前記クルーズ操作部材310と、前記変速操作軸220の軸線を基準にして径方向外方を向くように前記変速作動部材230に設けられた複数のラチェット歯320と、前記複数のラチェット歯320のうちの一のラチェット歯と選択的に係合可能なロック爪331を有し、クルーズ軸335回りに前記ロック爪331が前記ラチェット歯320と係合するクルーズ位置及び前記ロック爪331が前記ラチェット歯320から離間されたクルーズ解除位置をとり得るクルーズ部材330と、前記クルーズ部材330を前記クルーズ軸335回りにクルーズ解除位置へ向けて付勢するクルーズ解除付勢部材340と、前記クルーズ操作部材310及び前記クルーズ部材330を作動連結するクルーズリンク350とを備えている。
【0029】
前記クルーズ操作機構300は以下のように作動する。
前記変速操作機構200を介して前記HST30を前進領域(作業車輌を前進走行させる領域)において変速させている際に、前記クルーズ操作部材310を介して前記クルーズ解除付勢部材340の付勢力に抗して前記クルーズ部材330をクルーズ位置に位置させると、前記ロック爪331が対応するラチェット歯320と係合し、これにより、前記変速作動部材230の前記変速操作軸220回りの位置が固定され、前記作業車輌1がクルーズ状態(定速走行状態)に保持される。
【0030】
なお、前記クルーズ操作部材310を前記クルーズ解除付勢部材340の付勢力に抗してクルーズ位置に位置させた後に、前記クルーズ操作部材310への人為操作力を解除しても、前記クルーズ部材330は下記理由によって前記クルーズ解除付勢部材340の付勢力に抗してクルーズ位置に保持される。
【0031】
図5に、前記ラチェット歯近傍の拡大側面図を示す。
前記複数のラチェット歯320が設けられた前記変速作動部材230は、前述の通り、前記操作側中立戻し機構及び/又は前記HST側中立戻し機構によって、中立側へ付勢されている。
従って、前記変速作動部材230が前記変速操作軸220回り前進側へ回動されている状態においては、前記複数のラチェット歯320は中立側(図5の矢印N方向)へ付勢されている。
ここで、前記ラチェット歯320は、図5に示すように、前記変速作動部材230が前進側へ回動されている状態を基準にして、前記変速操作軸220の軸線回りに関し中立側を向く第1面321と、前進側を向く第2面322とを有している。
【0032】
前記第1面321は、前進側へ回動された前記変速作動部材230が前記操作側中立戻し機構及び/又は前記HST側中立戻し機構によって中立側へ戻ろうとする際に、前記ロック爪331と係合する。
一方、前記第2面322は、前記第1面321が前記ロック爪331と係合している状態において前記ロック爪331から前記変速操作軸220を基準にして周方向中立側へ離間されている。
即ち、前記第1面321が前記ロック爪331と係合している状態において、前記第2面322と前記ロック爪331との間には間隙が存在している。
【0033】
斯かる構成によれば、前記変速操作機構200を介して前記HST30を前進領域において変速させている際に、前記クルーズ操作部材310を介して前記クルーズ解除付勢部材340の付勢力に抗して前記クルーズ部材330をクルーズ位置に位置させると、前記ロック爪331が対応する前記ラチェット歯320に係合する。
この状態において、前記変速操作機構200への人為操作を解除すると、前記変速作動部材230は前記操作側中立戻し機構及び/又は前記HST側中立戻し機構によって前記変速操作軸220回りに中立側へ付勢され、前記第1面321が前記変速操作軸220回り中立側へ付勢された状態で前記ロック爪331に当接する。
斯かる第1面321及びロック爪331の当接によって、前記クルーズ部材330が前記クルーズ解除付勢部材340の付勢力によって前記クルーズ軸335回りにクルーズ解除位置へ向けて回動する動きに対する摩擦抵抗が生じる。
従って、前記クルーズ操作部材310を前記クルーズ解除付勢部材340の付勢力に抗してクルーズ位置に位置させた後に、前記クルーズ操作部材310への人為操作力を解除しても、前記クルーズ部材330はクルーズ位置に保持される。
【0034】
一方、前記クルーズ部材330がクルーズ位置に位置されている際に、前記クルーズ操作部材310を解除方向へ操作すると、前記クルーズ部材330が前記クルーズ軸335回りにクルーズ解除位置へ向けて回動され、前記ロック爪331と対応する前記ラチェット歯320の前記第1面321との係合が解除される。従って、前記クルーズ部材330は前記クルーズ解除付勢部材340の付勢力によってクルーズ解除位置に位置される。
【0035】
斯かる構成の本実施の形態においては、前記変速操作部材210を操作することによっても、クルーズ状態が解除される。
即ち、前記変速操作部材210を介して前記HST30を前進領域において変速させている状態で前記クルーズ操作部材310を介して前記クルーズ解除付勢部材340の付勢力に抗して前記クルーズ部材330をクルーズ位置に位置させた後に、前記変速操作部材210への人為操作を解除すると、前述の通り、前記第1面321及び前記ロック爪331の間の摩擦抵抗によって前記クルーズ部材330がクルーズ位置に保持される。
この際、前記第2面322と前記ロック爪331との間には、前述の通り、前記変速作動部材230が前記変速操作軸220回り前進側へ回動することを許容する前記間隙が存在する。
【0036】
つまり、前記クルーズ部材330がクルーズ位置に保持されている状態において、前記第2面332及び前記ロック爪331の間の前記間隙に相当する距離だけ前記変速操作部材210を前進側へ操作することが可能となっている。
そして、クルーズ状態において、前記変速操作部材210を前進側へ操作すると、前記第1面321と前記ロック爪331との係合が解除され、前記クルーズ部材330は前記クルーズ解除付勢部材340の付勢力によってクルーズ解除位置へ戻される。
【0037】
次に、前記ブレーキ操作機構400について説明する。
前記ブレーキ操作機構400は、図2及び図3に示すように、人為操作可能なブレーキ操作部材410と、前記ブレーキ操作部材410への人為操作に応じて軸線回りに回転するブレーキ操作軸420と、前記ブレーキ操作軸420に相対回転不能に支持されたブレーキ作動部材430と、前記ブレーキ作動部材430及び前記ブレーキアクチュエータを作動連結するブレーキリンク440と、前記ブレーキ作動部材430を作動的にブレーキ解除位置へ向けて付勢するブレーキ解除付勢部材450とを有している。
【0038】
図2及び図3に示すように、前記ブレーキ操作軸420は、車輌幅方向に沿った状態で軸線回り回転自在に支持されている。
【0039】
前記ブレーキ操作部材410は、前記ブレーキ操作軸420に相対回転不能に連結されている。
本実施の形態においては、前記ブレーキ操作部材410は、図2及び図3に示すように、ブレーキペダルとされている。
前記ブレーキペダルは、基端部が前記ブレーキ操作軸420に相対回転不能に連結され且つ自由端部に運転者が押し踏み操作可能な押踏部を有している。
【0040】
前記ブレーキ作動部材430は、図4に示すように、前記ブレーキ操作軸420に相対回転不能に支持された径方向内方領域431と、前記径方向内方領域431から径方向外方へ延びる径方向外方領域432とを有している。
本実施の形態においては、図2〜図4に示すように、前記ブレーキ作動部材430はプレート状部材とされている。
【0041】
前記ブレーキリンク440は、一端部が前記ブレーキ作動部材430の前記径方向外方領域432に連結され且つ他端部が前記ブレーキアクチュエータに直接又は間接的に連結されている。
【0042】
前記ブレーキ解除付勢部材450は、前記ブレーキ作動部材430をブレーキ解除位置へ向けて付勢するように、一端部が前記車輌フレーム10等の固定部材に連結され且つ他端部が前記ブレーキ作動部材430の径方向外方領域432に連結されている。
【0043】
斯かる構成の前記ブレーキ操作機構400は以下のように作動する。
前記ブレーキ操作部材410への人為操作を行わない状態では、前記ブレーキ解除付勢部材450の付勢力によって前記ブレーキ作動部材430が前記ブレーキ操作軸420回りにブレーキ解除位置に位置され、前記ブレーキリンク440を介して前記ブレーキアクチュエータが非作動状態とされる。
【0044】
これに対し、前記ブレーキ解除付勢部材450の付勢力に抗して前記ブレーキ操作部材410をブレーキ位置へ操作すると、前記ブレーキ操作軸420が軸線回り一方側のブレーキ作動方向へ回転し、これに伴い、前記ブレーキ作動部材430が前記ブレーキ操作軸420回りにブレーキ作動位置に位置される。
斯かる前記ブレーキ作動部材430の回動によって、前記ブレーキリンク440を介して前記ブレーキアクチュエータが作動状態とされる。
【0045】
なお、本実施の形態においては、前記作業車輌1は、前記HST30からの出力を前記走行ブレーキ装置が作用する側の一対の駆動輪(本実施の形態においては一対の後輪)に差動伝達するディファレンシャルギヤ機構(図示せず)と、前記ディファレンシャルギヤ機構による差動伝達をロックするデフロック機構(図示せず)と、前記デフロック機構を人為操作するデフロック操作機構500(図2及び図3参照)とを備えており、前記ブレーキ操作機構400は、前記ブレーキ操作部材410への操作の有無に拘わらず前記デフロック操作機構500の単独操作を許容しつつ、前記ブレーキ操作部材410を介して前記走行ブレーキ装置をブレーキ解除状態からブレーキ作動状態へ移行させる際には前記デフロック操作機構500が連動してデフロック状態へ移行させるブレーキ・デフロックリンク構造を有している。
【0046】
図6に、前記走行速度操作装置100及び前記ミッションケース40の左側面図を示す。又、図7に、前記ブレーキ・デフロックリンク構造の斜視図を示す。
図6及び図7に示すように、前記デフロック操作機構500は、車輌幅方向に沿ったデフロック操作軸515回り回転自在に支持されたデフロック操作部材510(本実施の形態においてはデフロックペダル)と、前記デフロック操作部材510をデフロック解除位置へ向けて付勢するデフロック解除付勢部材520と、一端部が前記デフロック操作部材510に連結され且つ他端部が前記デフロック機構に作動連結されたデフロックリンク530とを備えており、前記デフロック解除付勢部材520の付勢力に抗して前記デフロック操作部材510をデフロック解除位置からデフロック位置に操作することにより、前記デフロック機構がデフロック解除状態からデフロック状態へ移行するように構成されている。
【0047】
前記ブレーキ・デフロックリンク構造は、図4,図6及び図7に示すように、前記ブレーキ作動部材430に形成された長孔560と、第1端部が前記長孔560を介して前記ブレーキ作動部材430に連結され且つ第2端部が前記デフロック操作部材510に連結された剛性のリンク部材570とを有している。
前記長孔560は、前記デフロック操作部材510に近接する側の近接端部561(本実施の形態においては後端部)と、前記デフロック操作部材510から離間された側の離間端部562と、前記近接端部561及び離間端部562の間を連通する中間部563とを有している。
【0048】
前記リンク部材570は、前記ブレーキ作動部材430がブレーキ解除位置に位置された状態で前記デフロック操作部材510がデフロック解除位置に位置されている際には前記第1端部が前記長孔560の前記近接端部561に位置し、且つ、前記ブレーキ作動部材430がブレーキ解除位置に位置されている状態で前記デフロック操作部材510がデフロック位置に位置されている際には前記第1端部が前記長孔560の前記離間端部562に位置するように、構成されている。
【0049】
前記ブレーキ・デフロックリンク構造は以下のように作動する。
前記ブレーキ操作部材410を操作していない状態(即ち、前記走行ブレーキ装置の非作動状態)において前記デフロック操作部材510をデフロック解除位置からデフロック位置へ操作させると、前記デフロックリンク530を介して前記デフロック機構がデフロック解除状態からデフロック状態へ移行する。
この際、前記リンク部材570の前記第1端部は前記長孔560内において前記近接端部561から前記離間端部562へ移動するから、前記デフロック操作部材510のデフロック解除位置からデフロック位置への操作によっては、前記ブレーキ作動部材430は移動しない。従って、前記走行ブレーキ装置はブレーキ非作動状態に維持されたままで、前記デフロック機構がデフロック状態へ移行する。
【0050】
次に、前記デフロック操作部材510を操作していない状態(即ち、前記デフロック機構のデフロック解除状態)において前記ブレーキ操作部材410がブレーキ解除位置からブレーキ作動位置へ操作される場合について説明する。
この場合には、前記ブレーキ操作部材410への前記操作に連動して、前記ブレーキ作動部材430が前記ブレーキ操作軸420回り一方側(前記長孔460が前記デフロック操作部材510から離間する方向であり、図4,図6及び図7においては反時計回り方向)へ回動する。
【0051】
前述の通り、前記ブレーキ操作機構400及び前記デフロック操作機構500の双方共が非操作状態の際には前記リンク部材570の前記第1端部は前記長孔560の前記近接端部561に位置しているから、前記ブレーキ作動部材430が前記ブレーキ操作軸420回り一方側へ回動されると前記デフロック操作部材510は前記リンク部材570を介してデフロック解除位置からデフロック位置へ回動される。
従って、前記ブレーキ操作部材410を介して前記走行ブレーキ装置をブレーキ解除状態からブレーキ作動状態へ移行する際には、前記デフロック操作機構500を操作することなく、前記デフロック機構が自動的にデフロック解除状態からデフロック状態へ移行する。
【0052】
本実施の形態に係る走行速度操作装置100は、図2,図4,図5及び図7等に示すように、前記構成に加えて、前記ブレーキ操作軸420に相対回転不能に支持されたブレーキ連動アーム600を備えており、前記クルーズ操作部材310又は前記変速操作部材210への操作に加えて、前記ブレーキ操作部材410への操作によってもクルーズ状態が解除されるようになっている。
【0053】
図8に、前記クルーズ操作機構300がクルーズ状態(前記クルーズ操作部材310をクルーズ位置に操作している状態)とされ、且つ、前記ブレーキ操作機構400がブレーキ解除状態(前記ブレーキ操作部材410への人為操作が行われていない初期状態)とされている場合の前記走行速度操作装置100の部分側面図を示す。
図9に、前記クルーズ操作機構300がクルーズ状態とされており、且つ、前記ブレーキ操作機構400がブレーキ解除状態からブレーキ作動状態への移行途中の場合の前記走行速度操作装置100の部分側面図を示す。
さらに、図10に、前記ブレーキ操作機構400がブレーキ作動状態の場合の前記走行速度操作装置100の部分側面図を示す。
【0054】
前記ブレーキ連動アーム600は、図8〜図10に示すように、前記ブレーキ操作部材410のブレーキ解除位置からブレーキ作動位置への操作に応じて、クルーズ位置に位置する前記クルーズ部材330を前記クルーズ軸335回りにクルーズ解除位置へ向けて押動するクルーズ解除アーム部610を備えている。
【0055】
即ち、前記ブレーキ連動アーム600は、前記ブレーキ操作部材410に対するブレーキ解除位置からブレーキ作動位置への操作に応じて、前記ブレーキ操作軸420と共に該ブレーキ操作軸420の軸線回り一方側のブレーキ作動方向(図8〜図10においては反時計回り方向)へ回動する。
前記クルーズ解除アーム部610は、前記ブレーキ連動アーム600がブレーキ解除位置に位置する際にはクルーズ位置に位置する前記クルーズ部材330とは離間されており(図8参照)、前記ブレーキ連動アーム600がブレーキ解除位置から前記ブレーキ操作軸420の軸線回り一方側へ回動するとクルーズ位置に位置する前記クルーズ部材330と係合する(図9参照)。
【0056】
そして、前記ブレーキ連動アーム600が図9に示す位置からさらに前記ブレーキ操作軸420の軸線回り一方側へ回動されると、前記クルーズ解除アーム部610が前記クルーズ部材330を前記クルーズ軸335回りにクルーズ解除方向へ向けて押動する。
前記クルーズ解除アーム部610による押動力によって前記クルーズ部材330は前記ラチェット歯320との係合が解除され、前記クルーズ解除付勢部材340による付勢力によってクルーズ解除位置へ回動される(図10参照)。
【0057】
さらに、本実施の形態に係る走行速度操作装置100は、前記変速操作部材210への人為操作が解除されると、前記変速操作機構200を中立状態へ復帰させる前記操作側中立戻し機構を備えている。
【0058】
図11〜図13に、それぞれ、前記ブレーキ作動部材430及び前記クルーズ部材330を削除した状態の図8〜図10に対応した側面図を示す。
図8〜図13に示すように、前記走行速度操作装置100は、前記構成に加えて、前記変速操作軸220と平行な枢支軸705回り揺動可能に支持された変速連動アーム700を備えている。
【0059】
前記操作側中立戻し機構は、図11〜図13に示すように、前記変速連動アーム700に設けられた変速連動用カム部650と、前記変速連動用カム部650と係合するように前記変速作動部材230に設けられた変速連動用カム面660と、前記変速連動用カム部650が前記変速連動用カム面660と係合する方向に前記変速連動アーム700を前記枢支軸705回りに付勢する変速連動アーム付勢部材670とを備えている。
【0060】
前記変速連動用カム部650は、前記枢支軸705から径方向外方へ離間された位置において前記枢支軸705と平行な方向に延びている。
本実施の形態においては、図11〜図13に示すように、前記変速連動用カム部650は、前記変速連動アーム700に設けられた支持軸706に相対回転自在に支持されたベアリング部材とされている。
【0061】
前記変速連動用カム面660は、図11〜図13に示すように、前記変速操作軸220の軸線を基準にして径方向最内端に位置する最深部661を挟んで前記変速操作軸220の軸線を基準にして周方向一方側及び他方側へ行くに従って前記変速操作軸220の軸線を基準にして径方向外方に位置する一対の傾斜部662F,662Fを含んでいる。
前記一対の傾斜部662F,662Fは、前記変速作動部材230が前記変速操作軸220回りに前進側及び後進側へ回動される際に前記変速連動用カム部650とそれぞれ係合する前進側傾斜部662F及び後進側傾斜部662Rを含んでいる。
【0062】
前記変速作動部材230は、前記変速操作軸220の軸線を基準にして径方向外方を向く外周面を有している。
本実施の形態においては、前記変速連動用カム面660は、図11〜図13に示すように、前記変速作動部材230の前記外周面に形成されている。
なお、前記複数のラチェット歯320も前記外周面に形成されている。
【0063】
前記変速連動アーム付勢部材670は、前記変速連動用カム部650が前記変速連動用カム面660と係合する方向に前記変速連動アーム700を付勢すべく、一端部が前記変速連動アーム700に連結され且つ他端部が車輌フレーム10等の固定部材(図示せず)に直接又は間接的に連結されている。
【0064】
斯かる操作側中立戻し機構は以下のように作動する。
前述の通り、前記変速操作部材210を前進側へ操作すると、前記変速作動部材230は前記変速操作軸220回りに前進側(図11〜図13においては反時計回り方向)へ回動する。この際、前記変速作動部材230は、前記前進側カム面662Fが前記変速連動用カム部650を押動することで、前記変速連動アーム700を前記変速連動アーム付勢部材670の付勢力に抗して非中立位置へ回動させる(図11参照)。
【0065】
図11に示す状態から前記変速操作部材210への人為操作を解除すると、前記変速連動アーム付勢部材670の付勢力によって前記変速連動用カム部650が前記前進側カム面662Fを押動し(図12参照)、最終的には、前記変速作動部材230が非中立位置から中立位置に戻される(図13参照)。
この際、前記変速連動用カム部650は、前記変速連動用カム面660によって前記最深部661に対応した位置に保持され、これにより、前記変速作動部材230及び前記変速連動アーム700が共に中立位置に保持される。
【0066】
図14に、前記変速操作部材210が後進側へ操作されている状態の図11に対応した側面図を示す。
前記変速操作部材210が後進側へ操作されると、前記変速作動部材230は前記変速操作軸220回り後進側(図14において時計回り方向)へ回動する。この際、前記変速作動部材230は、前記後進側カム面662Rが前記変速連動用カム部650を押動することで、前記変速連動アーム700を前記変速連動アーム付勢部材670の付勢力に抗して中立位置から非中立位置へ回動させる。
なお、前記変速操作部材210を後進側へ操作する場合においても前記変速連動アーム700は、前記枢支軸705回りに前記変速操作部材210を前進側へ操作する場合と同一方向に回動する(図11及び図14参照)。
【0067】
前記変速操作部材210が後進側へ操作されている状態から前記変速操作部材210への人為操作を解除すると、前記変速連動アーム付勢部材670の付勢力によって前記変速連動用カム部650が前記後進側カム面662Rを押動することで、前記変速作動部材230及び前記変速連動アーム700が共に非中立位置から中立位置に戻される(図13参照)。
【0068】
本実施の形態に係る前記走行速度操作装置100は、さらに、前記走行ブレーキ装置が作動状態の際に前記HST30が出力状態となることを防止するブレーキ時HST中立戻し機構を備えている。
【0069】
前記ブレーキ時HST中立戻し機構は、図8〜図10に示すように、前記変速連動アーム700に設けられたブレーキ連動用カム部750と、前記ブレーキ連動アーム600に設けられた中立溝630とを備えている。
【0070】
前記ブレーキ連動用カム部750は、前記枢支軸335から径方向外方へ離間された位置において前記枢支軸705と平行な方向に延びている。
本実施の形態においては、図8〜図14に示すように、前記ブレーキ連動用カム部750は、前記変速連動用カム部650と同軸上に設けられている。
即ち、本実施の形態においては、前記変速連動用カム部650として作用する前記ベアリング部材を支持する前記支持軸706が前記ブレーキ用カム部750として作用している。
【0071】
前記ブレーキ時HST中立戻し機構は、図10に示すように、前記ブレーキ操作部材410のブレーキ作動位置への操作に連動して前記ブレーキ連動アーム600がブレーキ作動位置に位置すると、前記ブレーキ連動用カム部750が前記中立溝630内に係入されるように構成されており、前記ブレーキ連動用カム部750及び前記中立溝630は、前記ブレーキ連動用カム部750が前記中立溝630に係入されている状態においては前記変速連動アーム700が中立位置に位置するように、構成されている。
【0072】
詳しくは、前記中立溝630は、図8〜図10に示すように、前記変速連動アーム700の回動中心である前記枢支軸705に近接する側の第1端部631と、前記枢支軸705から離間する側の第2端部632と、前記第1端部631及び前記第2端部632を連通する中間部633とを有しており、前記第1端部631が開口端部とされている。
即ち、前記中立溝630は前記変速連動アーム700の回動中心である前記枢支軸705の軸線から径方向に略沿って延びており、従って、前記変速連動アーム700に設けられた前記ブレーキ連動用カム部750が前記中立溝630に係入されると、前記変速連動アーム700は中立位置において前記枢支軸705回り回動不能に保持される。
【0073】
好ましくは、前記ブレーキ時HST中立戻し機構には、前記変速操作部材210が非中立位置に位置する状態(即ち、前記変速操作部材210が前進側領域又は後進側領域において操作されている状態)において、前記ブレーキ操作部材410のブレーキ解除位置からブレーキ作動位置への操作に連動して前記ブレーキ連動アーム600が前記ブレーキ操作軸420回りにブレーキ解除位置からブレーキ作動位置へ移行する際に、前記ブレーキ連動用カム部750を前記中立溝630へ案内するガイド面640が設けられる。
本実施の形態においては、前記ガイド面640は、図8〜図10に示すように、前記ブレーキ連動アーム600に設けられている。
【0074】
詳しくは、前記ガイド面640は、前記ブレーキ操作軸420の軸線を基準にして径方向内方及び外方に位置する径方向内端部641及び径方向外端部と、前記径方向内端部641及び径方向外端部642の間に延びる傾斜面643とを有している。
前記径方向内端部641は、前記中立溝630の前記開口端部に連接されている。
前記傾斜面643は、前記ブレーキ連動アーム600が前記ブレーキ操作軸420回りにブレーキ作動位置からブレーキ解除位置へ回動する際に前記ブレーキ連動用カム部750を前記径方向外端部642の側から前記径方向内端部641の側へ案内するように、傾斜されている。
【0075】
前記ブレーキ時HST中立戻し機構は以下のように作動する。
前記変速操作部材210が前進側へ操作され且つ前記ブレーキ操作部材410への操作が行われていない走行状態(図8参照)において、前記ブレーキ操作部材410がブレーキ解除位置からブレーキ作動位置へ向けて操作され始めると、前記ブレーキ連動アーム600が前記ブレーキ操作軸420回りにブレーキ解除位置からブレーキ作動位置へ向けて(図8において反時計回り方向へ)回動し、前記ガイド面640が前記ブレーキ連動用カム部750と係合する(図9参照)。
この状態から前記ブレーキ操作部材410がさらにブレーキ作動位置へ向けて操作されると、前記ブレーキ連動アーム600も前記ブレーキ操作軸420回りにさらにブレーキ作動方向へ回動する。斯かるブレーキ連動アーム600の回動動作によって、前記ブレーキ連動用カム部750は前記ガイド面640によって案内されつつ前記中立溝630内に係入され、これにより、前記変速連動アーム700は中立位置において回動不能に保持される(図10参照)。
【0076】
前述の通り、前記変速連動アーム700が中立位置に位置する際には、前記変速連動用カム部650及び前記変速連動用カム面660の作用によって、前記変速作動部材230も中立位置に保持される(図13参照)。
従って、前記変速作動部材230に作動連結された前記HST30は中立状態に保持される。
【0077】
このように、本実施の形態に係る走行速度操作装置100においては、前記ブレーキ操作機構400を介して前記走行ブレーキ装置がブレーキ作動状態へ移行されている場合には、前記変速操作機構200は中立状態において操作不能とされる。
従って、前記走行ブレーキ装置の作動時に前記HST30から走行駆動力が出力される事態を確実に防止することができ、これにより、前記走行ブレーキ装置及び/又は前記HST30の摩耗及び損傷を有効に防止することができる。
【0078】
さらに、本実施の形態に係る走行速度操作装置100は、前記構成に加えて、前記HST30の中立状態を検出する中立スイッチ800を備えている。
前記中立スイッチは、図11〜図14に示すように、前記変速連動アーム700が中立位置に位置するか否かを検出するように構成されている。
前述の通り、前記変速作動部材230が中立位置から前進方向へ回動する際の前記変速連動アーム700の前記枢支軸705回りの回動方向(図11参照)と、前記変速作動部材230が中立位置から後進方向へ回動される際の前記変速連動アーム700の前記枢支軸705回りの回動方向(図14参照)とは、同一とされている。
従って、前記変速連動アーム700の中立位置を前記中立スイッチ800によって検出することで前記HST30の中立状態を検知するように構成することで、HST中立検出構造の簡略化を図ることができる。
なお、本実施の形態においては、前記中立スイッチ800として接触式スイッチを用いている。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態に係る走行速度操作装置が適用されたトラクタの左側面図である。
【図2】図2は、前記走行速度操作装置を前側且つ左側から視た斜視図である。
【図3】図3は、前記走行速度操作装置を前側且つ右側から視た斜視図である。
【図4】図4は、前記走行速度操作装置の部分拡大斜視図である。
【図5】図5は、前記走行速度操作装置におけるクルーズ操作機構のラチェット歯近傍の拡大側面図である。
【図6】図6は、前記走行速度操作装置及び前記作業車輌におけるミッションケースの左側面図である。
【図7】図7は、前記走行速度操作装置におけるブレーキ・デフロックリンク構造の斜視図である。
【図8】図8は、前記クルーズ操作機構がクルーズ状態とされ、且つ、前記走行速度操作装置におけるブレーキ操作機構がブレーキ解除状態とされている場合の前記走行速度操作装置の部分側面図である。
【図9】図9は、前記クルーズ操作機構がクルーズ状態とされ、且つ、前記ブレーキ操作機構がブレーキ解除状態からブレーキ作動状態への移行途中の場合の前記走行速度操作装置の部分側面図である。
【図10】図10は、前記ブレーキ操作機構がブレーキ作動状態の場合の前記走行速度操作装置の部分側面図である。
【図11】図11は、前記クルーズ操作機構におけるクルーズ部材及び前記ブレーキ操作機構におけるブレーキ作動部材を削除した状態の図8に対応した側面図である。
【図12】図12は、前記クルーズ部材及び前記ブレーキ作動部材を削除した状態の図9に対応した側面図である。
【図13】図13は、前記クルーズ部材及び前記ブレーキ作動部材を削除した状態の図10に対応した側面図である。
【図14】図14は、前記クルーズ部材及び前記ブレーキ作動部材を削除した状態の前記走行速度操作装置の側面図であり、前記変速操作機構が後進側へ操作されている状態を示している。
【符号の説明】
【0080】
30 HST
100 走行速度操作装置
200 変速操作機構
210 変速操作部材
220 変速操作軸
230 変速作動部材
240 HST操作リンク
300 クルーズ操作機構
310 クルーズ操作部材
320 ラチェット歯
330 クルーズ部材
340 クルーズ解除付勢部材
400 ブレーキ操作機構
410 ブレーキ操作部材
420 ブレーキ操作軸
430 ブレーキ作動部材
440 ブレーキリンク
450 ブレーキ解除付勢部材
510 デフロック操作部材
560 長孔
561 近接端部
562 離間端部
563 中間部
570 リンク部材
600 ブレーキ連動アーム
610 クルーズ解除アーム部
630 中立溝
640 ガイド面
650 変速連動用凸部
660 変速連動用カム面
670 変速連動アーム付勢部材
700 変速連動アーム
705 枢支軸
750 ブレーキ連動用凸部
800 中立スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HSTの出力調整部材を操作する為の変速操作機構であって、人為操作可能な変速操作部材と、前記変速操作部材への人為操作に応じて軸線回りに回転する変速操作軸と、前記変速操作軸に相対回転不能に支持された変速作動部材と、前記変速作動部材及び前記出力調整部材を作動連結するHST操作リンクとを有する変速操作機構と、前記変速操作機構を所定の操作位置に保持するクルーズ状態又は前記クルーズ状態が解除されたクルーズ解除状態を切り替える為のクルーズ操作機構であって、人為操作可能なクルーズ操作部材と、前記変速作動部材に設けられた複数のラチェット歯と、前記クルーズ操作部材への人為操作に応じてクルーズ軸回りに前記ラチェット歯と係合するクルーズ位置又は前記ラチェット歯との係合が解除されたクルーズ解除位置をとり得るクルーズ部材と、前記クルーズ部材を作動的にクルーズ解除位置へ向けて付勢するクルーズ解除付勢部材とを有するクルーズ操作機構と、走行ブレーキ装置のブレーキアクチュエータを操作する為のブレーキ操作機構であって、人為操作可能なブレーキ操作部材と、前記ブレーキ操作部材への人為操作に応じて軸線回りに回転するブレーキ操作軸と、前記ブレーキ操作軸に相対回転不能に支持されたブレーキ作動部材と、前記ブレーキ作動部材及び前記ブレーキアクチュエータを作動連結するブレーキリンクと、前記ブレーキ作動部材を作動的にブレーキ解除位置へ向けて付勢するブレーキ解除付勢部材とを有するブレーキ操作機構とを備えた走行速度操作装置であって、
前記ブレーキ操作軸に相対回転不能に支持されたブレーキ連動アームであって、前記ブレーキ操作部材のブレーキ解除位置からブレーキ作動位置への操作に応じて、クルーズ位置に位置する前記クルーズ部材を前記クルーズ軸回りにクルーズ解除位置へ向けて押動するクルーズ解除アーム部を備えたブレーキ連動アームと、
前記変速操作軸と平行な枢支軸回り揺動可能に支持された変速連動アームであって、変速連動用カム部及びブレーキ連動用カム部が設けられた変速連動アームとを備え、
前記変速作動部材には、さらに、前記変速操作軸に最も近接する最深部を挟んで前記変速操作軸を基準にして周方向一方側及び他方側へ行くに従って前記変速操作軸から離間され、前記変速操作部材が非中立位置に位置する際に前記変速連動用カム部と係合する一対の傾斜部を含む変速連動用カム面が設けられ、
前記変速連動アームは、前記変速連動用カム部が前記変速連動用カム面と係合する方向へ変速連動アーム付勢部材によって前記枢支軸回りに付勢されており、
前記ブレーキ連動アームには、さらに、前記ブレーキ操作部材がブレーキ作動位置に位置する際に前記ブレーキ連動用カム部が係入されることで、前記変速連動アームを中立位置に保持する中立溝が設けられていることを特徴とする走行速度操作装置。
【請求項2】
前記変速連動用カム部及び前記ブレーキ連動用カム部は同軸上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の走行速度操作装置。
【請求項3】
前記ブレーキ連動アームには、前記変速操作部材が非中立位置に位置する状態で前記ブレーキ操作部材がブレーキ解除位置からブレーキ作動位置へ操作される際に、前記ブレーキ連動用カム部を前記中立溝へ案内するガイド面が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の走行速度操作装置。
【請求項4】
前記HSTの中立状態を検出する中立スイッチを備え、
前記中立スイッチは、前記変速連動アームが中立位置に位置するか否かを検出することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の走行速度操作装置。
【請求項5】
第1端部が前記ブレーキ作動部材に連結され且つ第2端部がデフロック機構を操作する為に前記ブレーキ操作軸と平行なデフロック操作軸回り回転自在とされたデフロック操作部材に作動連結された剛性のリンク部材を備え、
前記ブレーキ作動部材には、前記デフロック操作部材に近接する側の近接端部と、前記デフロック操作部材から離間された側の離間端部と、前記近接端部及び離間端部の間を連通する中間部とを有する長孔が設けられており、
前記リンク部材は、前記ブレーキ作動部材がブレーキ解除位置に位置された状態で前記デフロック操作部材がデフロック解除位置に位置されている際には前記第1端部が前記長孔の前記近接端部に位置し且つ前記ブレーキ作動部材がブレーキ解除位置に位置されている状態で前記デフロック操作部材がデフロック位置に位置されている際には前記第1端部が前記長孔の前記離間端部に位置するように構成されていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の走行速度操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−73216(P2009−73216A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241388(P2007−241388)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】