超音波送受波器および水中探知装置
【課題】円筒部と半球部とからなる送受波器において、振動子の配列を工夫することにより、垂直方向のグレーティングローブを抑制するとともに、指向性偏差を最小限とする。
【解決手段】円筒部1Aでは、1つの振動子に隣接する6個の振動子が正6角形8の各頂点に位置するように振動子10aを配置し、また、正6角形8の対向する一組の辺9が鉛直方向を向くように配置する。半球部1Bでは、半球部1Bの球面に内接する正12面体を構成する正5角形を球面上に投影して得られる図形を球面5角形5としたとき、球面5角形5の構成要素をなす球面3角形6の頂点と、球面3角形6の各辺を等分割した点と、これらの等分割点を結ぶ円弧により形成される小さな球面3角形の重心とにそれぞれ振動子10bを配置する。
【解決手段】円筒部1Aでは、1つの振動子に隣接する6個の振動子が正6角形8の各頂点に位置するように振動子10aを配置し、また、正6角形8の対向する一組の辺9が鉛直方向を向くように配置する。半球部1Bでは、半球部1Bの球面に内接する正12面体を構成する正5角形を球面上に投影して得られる図形を球面5角形5としたとき、球面5角形5の構成要素をなす球面3角形6の頂点と、球面3角形6の各辺を等分割した点と、これらの等分割点を結ぶ円弧により形成される小さな球面3角形の重心とにそれぞれ振動子10bを配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の魚群等を探知するために用いられる超音波送受波器および水中探知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
魚群等の水中情報を広域にわたって探知する超音波機器として、従来からスキャニングソナーが用いられている。スキャニングソナーは、水中の所定方向に超音波ビームを送信すると共に水中の標的で反射したエコーを受信する超音波送受波器(以下、単に「送受波器」という。)を備えている。この送受波器には、図10〜図12に示したような各種のものがある。
【0003】
図10は、全周スキャン型のスキャニングソナーに用いられる円筒形の送受波器50を示している。送受波器50は、円筒の側面に周方向および軸方向に分割して配置された多数の超音波振動子51を有している。これらの超音波振動子51から所定のティルト角で傘型の超音波ビームを水平全方位(360°)に一斉に送信した後、探知領域を全周スキャンしてエコーを受信する。この送受波器50の場合、ティルト角を電子的に制御することにより、広範囲の探知を行うことができるが、超音波振動子51が送受波器50の側面のみに設けられるため、船の真下方向の探知ができないという欠点がある。
【0004】
図11は、半周スキャン型のスキャニングソナーに用いられる半円筒形の送受波器60を示している。送受波器60は、一部が切り欠かれた半円筒の側面に周方向に分割して配置された多数の縦長の超音波振動子61を有している。これらの超音波振動子61から扇型の超音波ビームを半周(180°)の領域に一斉に送信した後、探知領域を半周スキャンしてエコーを受信する。62はベアリング機構であって、図示しないモータの駆動によりa方向へ回転することで、送受波器60を水平方向へ動かし超音波ビームのベアリング角を制御する。63はティルト機構であって、図示しないモータの駆動によりb方向へ回転することで、送受波器60を垂直方向へ動かし超音波ビームのティルト角を制御する。この送受波器60の場合、ベアリング角とティルト角を機械的に制御することにより、船の真下方向を含めた広範囲の探知を行うことができるが、超音波振動子61が垂直方向に分割されていないため、スキャン面と直交する方向のウエイト(重み付け)制御によるビーム幅やサブレベルの調整ができないという欠点がある。
【0005】
図10の全周スキャン用の送受波器50と、図11の半周スキャン用の送受波器60の両方を船体に装備すれば、上述した問題を解決することが可能であるが、2台の送受波器を装備することはコストおよび設置スペースの点で問題があり、特に小型の船舶では設置が困難である。そこで、最近では、全周スキャンと半周スキャンの両機能を備えた球形の送受波器が開発され、これを用いたスキャニングソナーが実用化されている。球形の送受波器については、たとえば後掲の特許文献1、特許文献2に記載されている。
【0006】
図12は、上述した球形の送受波器70を示している。送受波器70は、球体の表面に分割して配置された多数の超音波振動子71を有しており、これらの振動子71から所定方向へ超音波ビームを送信した後、探知領域をスキャンしてエコーを受信する。この送受波器70の場合、球体の側部と底部に超音波振動子71が設けられるため、1台の送受波器で船の真下方向を含む広範囲の探知を行えるとともにウエイト制御も可能となる。しかしながら、円筒形の送受波器(図10)のように振動子が垂直方向に一直線状に配列されておらず、球体の上部および下部へ行くほど振動子71のビーム放射面の向きが水平方向から離れるため、水平ビームの強度が弱くなって水平方向の探知距離が大きくとれないとともに、垂直方向の分解能も劣るという欠点がある。
【0007】
そこで、これらの問題点を解決するための手段として、送受波器を円筒部と半球部とから構成することが考えられる。特許文献1には、上部が円筒部で下部が半球部である送受波器について言及されている(段落番号0040参照)。このような送受波器を用いれば、図10に示した円筒形の送受波器50と、図12に示した球形の送受波器70のそれぞれの長所を生かして、水平方向の探知距離と垂直方向の分解能とを犠牲にすることなく、1台の送受波器で船の真下方向を含めた広範囲の探知を行うことができる。
【0008】
【特許文献1】特開2001−343450号公報(段落番号0015〜0017、図1)
【特許文献2】特開2000−162308号公報(段落番号0029〜0053、図1〜図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したような円筒部と半球部とからなる送受波器を製作する場合、円筒部と半球部のそれぞれにおける振動子の配列を工夫する必要がある。たとえば、水平スキャン時に垂直方向に発生するグレーティングローブを抑制するには、超音波振動子の垂直方向のピッチを最小にする必要があり、また、超音波ビームの指向性偏差を最小限に抑えるためには、円筒部と半球部における振動子の配列に連続性を持たせることが必要となる。特許文献1は、このような振動子の配列に関しては何ら言及していない。一方、特許文献2には、球面に内接する正多面体の頂点に振動子を配置するとともに、この頂点に配置した各振動子に対して、さらに、実質的に等間隔とみなされる間隔位置に振動子を配置することにより、探知範囲で振動子を均一・緻密に配置して、水面下全方向を緻密かつ高速に探知することが記載されているが、本文献の送受波器は球形であって、円筒部での振動子配置や、円筒部と半球部の振動子配列の連続性については全く言及されていない。このため、円筒部と半球部において振動子をどのように配列すればグレーティングローブや指向性偏差を最小にできるかが問題となる。
【0010】
本発明は、円筒部と半球部とからなる送受波器の振動子配列を工夫することにより、垂直方向のグレーティングローブを抑制した送受波器を提供することを目的とする。本発明の他の目的は、円筒部と半球部における振動子の配列に連続性を持たせることで、指向性偏差を最小限とした送受波器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る送受波器は、上部に円筒部、下部に円筒部と連続する半球部を有し、円筒部および半球部のそれぞれに超音波振動子が設けられた超音波送受波器であって、円筒部の超音波振動子を、1つの超音波振動子に隣接する6個の超音波振動子が正6角形の各頂点にそれぞれ位置するように、また、正6角形の対向する一組の辺が円筒部の軸方向と平行となるように配置したものである。
【0012】
円筒部の超音波振動子をこのように配置すると、振動子の垂直方向のピッチを最も小さくすることができるため、水平スキャン時に垂直方向に発生するグレーティングローブを抑制することができる。なお、円筒部の表面は曲面であって厳密には正6角形を配置することができないから、上記でいう正6角形とは、円筒を展開した場合の平面における正6角形を意味する。
【0013】
また、本発明の送受波器においては、半球部の球面に内接する正多面体を構成する正多角形を球面上に投影して得られる図形を球面多角形としたとき、半球部の超音波振動子を、球面多角形の構成要素をなす球面3角形の頂点と、球面3角形の各辺を等分割した点と、これらの等分割点を結ぶ円弧により形成される小さな球面3角形の重心とにそれぞれ配置する。
【0014】
半球部の超音波振動子をこのように配置すると、半球部の球面上に超音波振動子をほぼ等間隔で配列することができるとともに、円筒部から半球部にかけて超音波振動子を連続性を持たせて配列することができる。このため、円筒部と半球部との境界付近で振動子の配列が不連続となることによる指向性偏差を最小限に抑えることが可能となる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態においては、半球部の球面に内接する正多面体は正12面体であり、また、球面多角形は、正12面体の1つの面が鉛直下方に向くように配置した状態で、当該正12面体を構成する正5角形を球面上に投影して得られる球面5角形である。正多面体として正12面体を用いることで、円筒部と半球部の振動子配列の連続性を保ちつつ、円筒部における振動子の垂直方向のピッチを最小とする設計を容易に行うことができる。
【0016】
次に、本発明に係る水中探知装置は、複数の超音波振動子を有し、これらの超音波振動子から水中の所定方位に超音波ビームを送信するとともに、水中の標的で反射したエコーを超音波振動子で受信する超音波送受波器と、超音波振動子を駆動して超音波ビームを送信させるための送信信号を出力する送信制御手段と、超音波振動子が受信したエコーに基づく受信信号を処理して水中情報を得る受信制御手段と、この受信制御手段で得られた水中情報を表示する表示手段とを備えた水中探知装置であって、超音波送受波器が上述した振動子配列を有する送受波器から構成される。超音波送受波器は、水中の全方位に傘型の超音波ビームを送信して全周スキャンを行い、また、水中の半周領域に扇型の超音波ビームを送信して、半周スキャンを行う。
【0017】
この水中探知装置は、円筒部と半球部とからなる送受波器を用いているため、円筒形送受波器と球形送受波器のそれぞれの長所を生かして、水平方向の探知距離と垂直方向の分解能とを犠牲にすることなく、1台の送受波器で船の真下方向を含めた広範囲の探知を行うことができる。また、円筒部の超音波振動子を前記のように配列することにより、振動子の垂直方向のピッチを最小にして、水平スキャン時に垂直方向に発生するグレーティングローブを抑制することができる。さらに、半球部の超音波振動子を前記のように配列することにより、円筒部と半球部の振動子の配列に連続性を持たせ、指向性偏差を最小限に抑えることができる。
【0018】
本発明の水中探知装置においては、超音波送受波器の円筒部において、振動子の水平方向のピッチが垂直方向のピッチに比べて大きくなることから、水平スキャン時に水平方向に発生するグレーティングローブが問題となるが、これに対しては、例えば、方位別に異なる周波数の信号を用いて送受信を行う方式を採用することで、水平方向のグレーティングローブの影響を低減することができる。この場合、水中探知装置の送信制御手段は、方位別に異なる周波数帯域の超音波ビームを送信するように超音波振動子を駆動し、受信制御手段は、方位別に周波数を選択して所定方位の受信信号を得る。
【0019】
また、本発明の水中探知装置においては、全周スキャンを行う場合と半周スキャンを行う場合とで信号周波数を異ならせ、1回の送受信で全周スキャンと半周スキャンとを同時に行うようにしてもよい。この場合、水中探知装置の送信制御手段は、互いに異なる周波数f1,f2の送信信号を生成し、全周スキャンを行う場合は、周波数f1の送信信号により超音波振動子を駆動し、半周スキャンを行う場合は、周波数f2の送信信号により超音波振動子を駆動する。また、受信制御手段は、上記異なる周波数f1,f2に対応した周波数成分を受信信号として抽出する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、水平方向の探知距離と垂直方向の分解能とを犠牲にすることなく、1台の送受波器で船の真下方向を含めた広範囲の探知を行えるとともに、コスト削減と省スペース化によって小型船にも搭載することが可能となる。また、円筒部の振動子配列を工夫したことで振動子の垂直方向のピッチを最小にして、水平スキャン時に垂直方向に発生するグレーティングローブを抑制することができる。さらに、半球部の振動子配列を工夫したことで円筒部と半球部の振動子の配列に連続性を持たせ、指向性偏差を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明に係る送受波器の実施形態を示す正面外観図である。送受波器1は、上部の円筒部1Aと、この円筒部1Aに連続する下部の半球部1Bとから構成されている。Kは信号を送受するためのケーブルである。円筒部1Aは、後述する配列方法に従って配列された多数の超音波振動子10aを有しており、半球部1Bも、後述する配列方法に従って配列された多数の超音波振動子10bを有している。各超音波振動子10a,10bは、円形の超音波放射面を有する振動子から構成されている。
【0022】
図2は、円筒部1Aにおける超音波振動子10aの配列方法を説明する図である。図2を円筒部1Aを展開した平面と考えた場合、各超音波振動子10aは、1つの振動子に隣接する6個の振動子が正6角形8の各頂点にそれぞれ位置するように配置されている。そして、正6角形8の対向する一組の辺9,9は、円筒部1Aの軸方向Yと平行となるように、すなわち鉛直方向を向くように配置されている。αは振動子10aの垂直方向(Y方向)のピッチ、βは振動子10aの水平方向(X方向)のピッチである。αとβとは、α<βの関係にある。これらのピッチα,βは、メインローブに対して90°の方向に生じるグレーティングローブを抑えるために、いずれも超音波の波長より短い寸法に設定される。以上のような配列アルゴリズムに従って超音波振動子10aを円筒部1Aに配列すると、振動子10aの垂直方向のピッチαが最小となり、また、円筒部1Aの表面に振動子10aをほぼ等間隔に敷き詰めて配列することができる。
【0023】
図3〜図5は、半球部1Bにおける超音波振動子10bの配列方法を説明する図である。図3において、2は半球部1Bを2つ合わせた場合の球面、3はこの球面2に内接する正12面体、4は正12面体3の各面を構成する正5角形である。なお、この図3は、正12面体3の1つの面が鉛直下方(紙面に対して直交方向)に向くように配置した状態で正12面体3を真上からみた図である。5は正12面体3を構成する正5角形4を球面2上に投影して得られる球面5角形を表している。半球部1Bにおいては、この球面5角形5を用いて超音波振動子10bを配列する。以下、この配列アルゴリズムについて説明する。
【0024】
図4(a)に示すように、球面5角形5の頂点をA〜E、重心をFとしたとき、球面5角形5は、これの構成要素をなす5つの球面3角形6(△FAB、△FBC、△FCD、△FDE、△FEA)に分割することができる。これらの球面3角形は、正確には球面2等辺3角形である。球面5角形5や球面3角形6は、正12面体3を球面2に投影して得られる図形であるから、それらの面は平面ではなく曲面となっていることは言うまでもない。振動子の配列にあたっては、まず、図4(a)に示した球面5角形5の頂点A〜Eと重心Fにそれぞれ振動子を配置する。次に、図4(b)に示すように、球面3角形6(ここでは△FCDを例示)の各辺(円弧)を4等分した点G〜I、J〜L、M〜Oにそれぞれ振動子を配置する。なお、ここでの4等分は一例であって、分割数は任意に選定できる。さらに、これらの等分割点を線分(円弧)で結ぶと、3個の小さな球面3角形zができるので、図4(c)に示すように、これらの球面3角形zの重心位置P,Q,Rにそれぞれ振動子を配置する。他の球面3角形6についても、図4(a),(b)と同じ手順に従って振動子を配置する。この結果、図5に示すような超音波振動子10bの配列が得られ、半球部1Bの表面に振動子10bをほぼ等間隔に配列することができる。
【0025】
このように、正多面体の各面をなす正多角形を球面上に投影して得られる球面多角形を用い、この球面多角形の頂点および重心と、球面多角形の構成要素である球面3角形の各辺を等分割した点と、これらの等分割点を結ぶ円弧により形成される小さな球面3角形の重心とにそれぞれ素子を配置する方法を、「窓重心法」という。窓重心法の詳細については、Magnus J. Wenninger:Spherical Models, DOVER PUBLICATIONS, INC., Mineola, New York (November 1999), pp79-124に記載されている。
【0026】
なお、図3〜図5では、正12面体を基礎として振動子を配列する手順を示したが、図4(a)からわかるように、正12面体の各面に対応する球面5角形5は、5つの球面3角形6に分割できるから、この球面3角形6に着目すると、5×12=60個の2等辺3角形から構成される60面体を基礎として、各球面3角形6につき図4(b),(c)の手順を踏んでいるのと同じ結果となる。すなわち、60面体を基礎とした場合は、球面3角形6の頂点と、球面3角形6の各辺を等分割した点と、これらの等分割点を結ぶ円弧により形成される小さな球面3角形zの重心とにそれぞれ振動子が配置されることになる。このことから、正12面体に代えて20個の正3角形から構成される正20面体を基礎とし、図4(b),(c)の手順で振動子を配列することも可能である。但し、正20面体の場合、円筒部1Aの振動子配列との連続性を持たせるためには、正20面体の頂点を鉛直方向に向ける必要があり、これによって円筒部1Aにおける振動子の垂直ピッチが水平ピッチより大きくなる(正12面体の場合と逆の関係となる)。したがって、垂直ピッチを最小にするという点からは、正12面体を基礎とするのが好ましい。
【0027】
図6は、上述した配列アルゴリズムにより得られた円筒部1Aおよび半球部1Bの振動子配列を示した図である。円筒部1Aの振動子10aは、前述のように1つの振動子に隣接する6個の振動子が正6角形8の各頂点にそれぞれ位置するように配置され、かつ、正6角形8の対向する一組の辺9,9が鉛直方向を向くように配置されている。この結果、垂直方向のピッチαが最小となるので、水平スキャン時に垂直方向に発生するグレーティングローブを抑制することができる。一方、半球部1Bの振動子10bは、前述のように球面3角形6の頂点と、球面3角形6の各辺を等分割した点と、これらの等分割点を結ぶ円弧により形成される小さな球面3角形の重心とにそれぞれ配置されている。なお、図6において、Aの位置は円筒部1A側の正6角形の中心であって、厳密には半球部1B側の球面5角形5の頂点位置と完全には一致しないが、前記配列アルゴリズムによれば、両者の位置をほぼ一致させることができる。円筒部1Aと半球部1Bの振動子10a,10bを以上のように配列すると、図6から分かるように、円筒部1Aから半球部1Bにかけて、超音波振動子10a,10bの配列を連続的なものとすることができ、円筒部1Aと半球部1Bとの境界W付近での素子密度のばらつきが少なくなる。このため、円筒部1Aと半球部1Bに跨るような開口で超音波ビームを送受信した場合でも、振動子配列の不連続に基因する指向性偏差(信号レベルの変動)を最小限に抑えて、良好な指向特性を得ることができる。
【0028】
以上のような超音波送受波器1を用いて超音波ビームを送信する場合、全チャンネルについて独立して送信信号を制御できるPDM(Pulse Duration Modulation)またはPWM(Pulse Width Modulation)方式を用いて、全周スキャン用の傘型ビーム、および半周スキャン用の扇型ビームを形成する。また、エコー受信時には、ビームの方位別に所定の開口内の超音波振動子10に対して、チャンネルごとに独立してウエイト制御および位相制御を行い、マルチビーム形成処理を行う。
【0029】
ところで、図1のような円筒部1Aと半球部1Bとからなる送受波器1の場合、送受波器1の下部にも超音波振動子10bが存在する。このため、全周スキャン・半周スキャンのいずれの場合にも、ティルト角によっては、真下方向のサイドローブ信号のレベルが上昇し、海底からのエコーが表示画面上で偽像として現れやすいという問題がある。これに対しては、送信・受信ともにビーム面と直交する海底方向の開口長を短くしたり、あるいは、ウエイトを調整することにより、真下方向のサイドローブ信号のレベルを低減することができる。図7は、円筒部1Aの全域と半球部1Bの一部を使って傘型ビームを送信する場合に、ウエイト関数としてガウス関数を用いて重み付けを行う場合の例を示している。
【0030】
また、半周スキャンの場合は、略180°のスキャン範囲で無指向性のビーム送信を行うが、ビーム面の開口範囲で図8(a)に示した台形のウエイト関数による重み付けを行うことにより、図8(b)に示すような滑らかな指向特性が得られ、矩形のウエイト関数を用いた場合に比べて、スキャン範囲の端部(−90°および+90°)付近における指向性偏差を低減することができる。
【0031】
図9は、上述した送受波器1を用いたスキャニングソナーSのブロック回路図を示している。図9において、10は前述の超音波振動子(10aまたは10b)であって、1つの振動子10ごとに1つの送受信チャンネル100(100a,100b,100c…)が設けられている。各送受信チャンネルの構成は同じなので、以下では送受信チャンネル100aについて説明する。送受信チャンネル100aにおいて、11は送信と受信の動作を切り替える送受切替回路、12は超音波振動子10に送信信号を与える送信アンプ、13は送信アンプ12を駆動するドライバ回路、14は振動子10が受信した信号を増幅するプリアンプ、15はプリアンプ14の出力信号のうち所定周波数帯域の信号のみを通過させる帯域フィルタ、16は帯域フィルタ15を通過した信号をデジタル信号に変換するA/D変換器、17は後段の回路との間で信号の授受を行うためのインターフェースである。
【0032】
ドライバ回路13は、インターフェース20,17を介して、後述する送信ビーム形成部26から与えられた2値化駆動コードを、送信アンプ12のFETを駆動するためのドライブ信号にデコードする。送信アンプ12は、フルブリッジ型のPDM(Pulse Duration Modulation)送信アンプからなり、パルス幅変調された送信信号を出力する。この信号により、送受切替回路11を介して振動子10が駆動される。送受切替回路11は、送信期間に送信アンプ12の出力信号を振動子10へ導き、受信期間に振動子10が出力した信号を受信信号としてプリアンプ14へ導く。プリアンプ14はこの受信信号を増幅し、帯域フィルタ15で所定周波数帯域以外のノイズ成分が除去された受信信号は、A/D変換器16において所定のサンプリング周期でサンプリングされ、デジタルデータに変換される。
【0033】
26はプログラマブル送信ビーム形成部(以下、「送信ビーム形成部」という。)であって、送信信号生成部21、波形メモリ24および送信DSP(Digital Signal Processor)25から構成される。送信信号生成部21は、たとえばFPGA(Field Programmable Gate Array)からなり、タイミング信号発生回路22と係数テーブル23とを備えている。タイミング信号発生回路22は、送信信号の生成タイミングの基準となる信号を発生する。送信DSP25は、送信信号を生成するためのデジタル信号処理回路であり、パルス幅変調波形を生成するための2値化された基準駆動コードを、各方位に対して所定種類のウェイトについて計算し、波形メモリ24へ書き込む。また、送信DSP25は、送信周期ごとに、送信ビーム形成のための各チャンネルの遅延量、ウェイト値および方位角を計算し、係数テーブル23に書き込む。送信信号生成回路21は、各チャンネルの方位角に対応する基準駆動コードに基づき、各チャンネルのウェイト値と遅延量に応じた駆動コードを生成する。
【0034】
27はバッファメモリであって、インターフェース20を介して各チャンネル100からの受信データを一時的に記憶するメモリである。28はプログラマブル受信ビーム形成部(以下、「受信ビーム形成部」という。)であり、受信DSP29、係数テーブル30および受信ビーム形成演算部31から構成される。受信ビーム形成演算部31は、FPGAからなる。受信DSP29は、各受信ビームごとに各振動子10から出力された受信信号の位相およびウエイトを計算し、これらを係数テーブル30へ書き込む。受信ビーム形成演算部31は、各振動子10からの受信信号に対して係数テーブル30に書き込まれた位相とウエイトの計算を行い、各信号を合成することにより合成受信信号を得る。この合成受信信号をビーム毎の時系列データとして求め、これをバッファメモリ32へ書き込む。
【0035】
33はプログラマブルフィルタであり、フィルタDSP34、係数テーブル35およびフィルタ演算部36から構成される。このプログラマブルフィルタ33は、ビーム毎に所定の帯域制限とパルス圧縮とを行う機能を備えている。フィルタDSP34は、ビーム毎に所定の帯域フィルタ特性を得るためのフィルタ係数を計算し、これを係数テーブル35へ書き込む。フィルタ演算部36は、係数テーブル35の係数を基にしてFIR(Finite Impulse Response)フィルタとしての演算を行い、帯域処理済受信信号を求める。このフィルタ演算部36は、FPGAからなる。
【0036】
40はエンベロープ検出部であって、各受信ビームの帯域処理済受信信号のエンベロープ(包絡線)を検出する。具体的には、時間波形の実数成分の2乗と虚数成分の2乗との和の平方根を求めることにより、エンベロープが検出される。
【0037】
41はイメージ処理部であって、各受信ビームの各距離における受信信号強度をイメージ情報化して表示部42へ出力する。これにより表示部42に探知領域における魚群等の水中情報の映像が表示される。
【0038】
37は操作部であって、この操作部37に設けられたキーを操作してビームのティルト角等の入力を行う。操作部37からの出力は、インターフェース38を介して制御部であるホストCPU39へ送られ、ホストCPU39は操作部37における入力内容に基づいて上述した各部の制御を行う。
【0039】
なお、図9には図示されていないが、スキャニングソナーSが搭載される船舶には、船体のローリングやピッチングを検出する検出装置が装備されており、送信DSP25は、当該検出装置の出力に基づいて、船舶の動揺にかかわらず常に所定方位に送信ビームを形成するように、係数テーブル23に書き込むべき係数を計算する。また、同様に受信DSP29も、上記検出装置の出力に基づいて、船舶の動揺にかかわらず常に所定方位に受信ビームを形成するように、係数テーブル30に書き込むべき係数を計算する。
【0040】
ところで、上記のスキャニングソナーSにおいては、前述したように、超音波送受波器1の円筒部1Aにおいて、振動子10aの水平方向のピッチβが垂直方向のピッチαに比べて大きくなることから、水平スキャン時に水平方向に発生するグレーティングローブが問題となる。この問題に対しては、方位別に異なる周波数の信号を用いて送受信を行う方位別周波数送受信法が有効な手段となる。方位別周波数送受信法については、特開2003−337171号公報に記載されている。この方式を採用した場合は、送信ビーム形成部26、ドライバ回路13、送信アンプ12などからなる送信制御手段によって、方位別に異なる周波数帯域の送信信号が生成され、この送信信号により送受波器1の各超音波振動子10が駆動されて、各方位ごとに周波数の異なる超音波ビームが送信される。また、エコーの受信時には、受信ビーム形成部28、プログラマブルフィルタ33などからなる受信制御手段が、方位別に周波数を選択して所定方位の受信信号を得る。このように、方位別に異なる周波数で送受信を行い、受信すべき方位に応じた周波数の信号を選択的に受信することにより、他の方位からの信号の影響を受けにくくして、水平方向のグレーティングローブを20dB程度低減することができる。
【0041】
本発明は、以上述べた以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、スキャニングソナーSにおいて全周スキャンを行う場合と半周スキャンを行う場合とで、信号周波数を異ならせてもよい。このようにすれば、それぞれのスキャンに用いる信号が相互干渉しなくなるため、1回の送受信で全周スキャンと半周スキャンとを同時に行うことができる。このため、広範囲の探知を短時間で効率良く行うことが可能となる。この場合、送信制御手段を構成する送信ビーム形成部26は、互いに異なる周波数f1,f2の送信信号を生成し、ドライバ回路13および送信アンプ12は、全周スキャン時は周波数f1の送信信号により超音波振動子10を駆動し、半周スキャン時は周波数f2の送信信号により超音波振動子10を駆動する。また、受信制御手段を構成するプログラマブルフィルタ33は、上記の周波数f1,f2に対応した周波数成分を受信信号として抽出する。以上のような、同時並行スキャンの技術については、特開2003−202370号公報に記載されている。
【0042】
以上述べた実施形態においては、水中探知装置としてスキャニングソナーを例に挙げたが、本発明の超音波送受波器はスキャニングソナーに限らず、魚群探知機、測深機、潮流計などの水中探知装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る送受波器の実施形態を示す正面外観図である。
【図2】送受波器の円筒部における振動子の配列方法を説明する図である。
【図3】球面に内接する正12面体を示す図である。
【図4】送受波器の半球部における振動子の配列方法を説明する図である。
【図5】送受波器の半球部における振動子の配列状態を示す図である。
【図6】円筒部および半球部の振動子配列を示した図である。
【図7】サイドローブレベルの低減方法を説明する図である。
【図8】半周スキャンの場合のウエイト関数と指向特性を示す図である。
【図9】本発明に係る送受波器を用いたスキャニングソナーのブロック回路図である。
【図10】従来の円筒形の送受波器を示す外観図である。
【図11】従来の半円筒形の送受波器を示す外観図である。
【図12】従来の球形の送受波器を示す外観図である。
【符号の説明】
【0044】
1 超音波送受波器
1A 円筒部
1B 半球部
2 球面
3 正12面体
4 正5角形
5 球面5角形
6 球面3角形
8 正6角形
10,10a,10b 超音波振動子
11 送受切替回路
12 送信アンプ
13 ドライバ回路
14 プリアンプ
15 帯域フィルタ
16 A/D変換器
26 送信ビーム形成部
28 受信ビーム形成部
33 プログラマブルフィルタ
39 ホストCPU
40 エンベロープ検出部
41 イメージ処理部
42 表示部
S スキャニングソナー
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の魚群等を探知するために用いられる超音波送受波器および水中探知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
魚群等の水中情報を広域にわたって探知する超音波機器として、従来からスキャニングソナーが用いられている。スキャニングソナーは、水中の所定方向に超音波ビームを送信すると共に水中の標的で反射したエコーを受信する超音波送受波器(以下、単に「送受波器」という。)を備えている。この送受波器には、図10〜図12に示したような各種のものがある。
【0003】
図10は、全周スキャン型のスキャニングソナーに用いられる円筒形の送受波器50を示している。送受波器50は、円筒の側面に周方向および軸方向に分割して配置された多数の超音波振動子51を有している。これらの超音波振動子51から所定のティルト角で傘型の超音波ビームを水平全方位(360°)に一斉に送信した後、探知領域を全周スキャンしてエコーを受信する。この送受波器50の場合、ティルト角を電子的に制御することにより、広範囲の探知を行うことができるが、超音波振動子51が送受波器50の側面のみに設けられるため、船の真下方向の探知ができないという欠点がある。
【0004】
図11は、半周スキャン型のスキャニングソナーに用いられる半円筒形の送受波器60を示している。送受波器60は、一部が切り欠かれた半円筒の側面に周方向に分割して配置された多数の縦長の超音波振動子61を有している。これらの超音波振動子61から扇型の超音波ビームを半周(180°)の領域に一斉に送信した後、探知領域を半周スキャンしてエコーを受信する。62はベアリング機構であって、図示しないモータの駆動によりa方向へ回転することで、送受波器60を水平方向へ動かし超音波ビームのベアリング角を制御する。63はティルト機構であって、図示しないモータの駆動によりb方向へ回転することで、送受波器60を垂直方向へ動かし超音波ビームのティルト角を制御する。この送受波器60の場合、ベアリング角とティルト角を機械的に制御することにより、船の真下方向を含めた広範囲の探知を行うことができるが、超音波振動子61が垂直方向に分割されていないため、スキャン面と直交する方向のウエイト(重み付け)制御によるビーム幅やサブレベルの調整ができないという欠点がある。
【0005】
図10の全周スキャン用の送受波器50と、図11の半周スキャン用の送受波器60の両方を船体に装備すれば、上述した問題を解決することが可能であるが、2台の送受波器を装備することはコストおよび設置スペースの点で問題があり、特に小型の船舶では設置が困難である。そこで、最近では、全周スキャンと半周スキャンの両機能を備えた球形の送受波器が開発され、これを用いたスキャニングソナーが実用化されている。球形の送受波器については、たとえば後掲の特許文献1、特許文献2に記載されている。
【0006】
図12は、上述した球形の送受波器70を示している。送受波器70は、球体の表面に分割して配置された多数の超音波振動子71を有しており、これらの振動子71から所定方向へ超音波ビームを送信した後、探知領域をスキャンしてエコーを受信する。この送受波器70の場合、球体の側部と底部に超音波振動子71が設けられるため、1台の送受波器で船の真下方向を含む広範囲の探知を行えるとともにウエイト制御も可能となる。しかしながら、円筒形の送受波器(図10)のように振動子が垂直方向に一直線状に配列されておらず、球体の上部および下部へ行くほど振動子71のビーム放射面の向きが水平方向から離れるため、水平ビームの強度が弱くなって水平方向の探知距離が大きくとれないとともに、垂直方向の分解能も劣るという欠点がある。
【0007】
そこで、これらの問題点を解決するための手段として、送受波器を円筒部と半球部とから構成することが考えられる。特許文献1には、上部が円筒部で下部が半球部である送受波器について言及されている(段落番号0040参照)。このような送受波器を用いれば、図10に示した円筒形の送受波器50と、図12に示した球形の送受波器70のそれぞれの長所を生かして、水平方向の探知距離と垂直方向の分解能とを犠牲にすることなく、1台の送受波器で船の真下方向を含めた広範囲の探知を行うことができる。
【0008】
【特許文献1】特開2001−343450号公報(段落番号0015〜0017、図1)
【特許文献2】特開2000−162308号公報(段落番号0029〜0053、図1〜図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したような円筒部と半球部とからなる送受波器を製作する場合、円筒部と半球部のそれぞれにおける振動子の配列を工夫する必要がある。たとえば、水平スキャン時に垂直方向に発生するグレーティングローブを抑制するには、超音波振動子の垂直方向のピッチを最小にする必要があり、また、超音波ビームの指向性偏差を最小限に抑えるためには、円筒部と半球部における振動子の配列に連続性を持たせることが必要となる。特許文献1は、このような振動子の配列に関しては何ら言及していない。一方、特許文献2には、球面に内接する正多面体の頂点に振動子を配置するとともに、この頂点に配置した各振動子に対して、さらに、実質的に等間隔とみなされる間隔位置に振動子を配置することにより、探知範囲で振動子を均一・緻密に配置して、水面下全方向を緻密かつ高速に探知することが記載されているが、本文献の送受波器は球形であって、円筒部での振動子配置や、円筒部と半球部の振動子配列の連続性については全く言及されていない。このため、円筒部と半球部において振動子をどのように配列すればグレーティングローブや指向性偏差を最小にできるかが問題となる。
【0010】
本発明は、円筒部と半球部とからなる送受波器の振動子配列を工夫することにより、垂直方向のグレーティングローブを抑制した送受波器を提供することを目的とする。本発明の他の目的は、円筒部と半球部における振動子の配列に連続性を持たせることで、指向性偏差を最小限とした送受波器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る送受波器は、上部に円筒部、下部に円筒部と連続する半球部を有し、円筒部および半球部のそれぞれに超音波振動子が設けられた超音波送受波器であって、円筒部の超音波振動子を、1つの超音波振動子に隣接する6個の超音波振動子が正6角形の各頂点にそれぞれ位置するように、また、正6角形の対向する一組の辺が円筒部の軸方向と平行となるように配置したものである。
【0012】
円筒部の超音波振動子をこのように配置すると、振動子の垂直方向のピッチを最も小さくすることができるため、水平スキャン時に垂直方向に発生するグレーティングローブを抑制することができる。なお、円筒部の表面は曲面であって厳密には正6角形を配置することができないから、上記でいう正6角形とは、円筒を展開した場合の平面における正6角形を意味する。
【0013】
また、本発明の送受波器においては、半球部の球面に内接する正多面体を構成する正多角形を球面上に投影して得られる図形を球面多角形としたとき、半球部の超音波振動子を、球面多角形の構成要素をなす球面3角形の頂点と、球面3角形の各辺を等分割した点と、これらの等分割点を結ぶ円弧により形成される小さな球面3角形の重心とにそれぞれ配置する。
【0014】
半球部の超音波振動子をこのように配置すると、半球部の球面上に超音波振動子をほぼ等間隔で配列することができるとともに、円筒部から半球部にかけて超音波振動子を連続性を持たせて配列することができる。このため、円筒部と半球部との境界付近で振動子の配列が不連続となることによる指向性偏差を最小限に抑えることが可能となる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態においては、半球部の球面に内接する正多面体は正12面体であり、また、球面多角形は、正12面体の1つの面が鉛直下方に向くように配置した状態で、当該正12面体を構成する正5角形を球面上に投影して得られる球面5角形である。正多面体として正12面体を用いることで、円筒部と半球部の振動子配列の連続性を保ちつつ、円筒部における振動子の垂直方向のピッチを最小とする設計を容易に行うことができる。
【0016】
次に、本発明に係る水中探知装置は、複数の超音波振動子を有し、これらの超音波振動子から水中の所定方位に超音波ビームを送信するとともに、水中の標的で反射したエコーを超音波振動子で受信する超音波送受波器と、超音波振動子を駆動して超音波ビームを送信させるための送信信号を出力する送信制御手段と、超音波振動子が受信したエコーに基づく受信信号を処理して水中情報を得る受信制御手段と、この受信制御手段で得られた水中情報を表示する表示手段とを備えた水中探知装置であって、超音波送受波器が上述した振動子配列を有する送受波器から構成される。超音波送受波器は、水中の全方位に傘型の超音波ビームを送信して全周スキャンを行い、また、水中の半周領域に扇型の超音波ビームを送信して、半周スキャンを行う。
【0017】
この水中探知装置は、円筒部と半球部とからなる送受波器を用いているため、円筒形送受波器と球形送受波器のそれぞれの長所を生かして、水平方向の探知距離と垂直方向の分解能とを犠牲にすることなく、1台の送受波器で船の真下方向を含めた広範囲の探知を行うことができる。また、円筒部の超音波振動子を前記のように配列することにより、振動子の垂直方向のピッチを最小にして、水平スキャン時に垂直方向に発生するグレーティングローブを抑制することができる。さらに、半球部の超音波振動子を前記のように配列することにより、円筒部と半球部の振動子の配列に連続性を持たせ、指向性偏差を最小限に抑えることができる。
【0018】
本発明の水中探知装置においては、超音波送受波器の円筒部において、振動子の水平方向のピッチが垂直方向のピッチに比べて大きくなることから、水平スキャン時に水平方向に発生するグレーティングローブが問題となるが、これに対しては、例えば、方位別に異なる周波数の信号を用いて送受信を行う方式を採用することで、水平方向のグレーティングローブの影響を低減することができる。この場合、水中探知装置の送信制御手段は、方位別に異なる周波数帯域の超音波ビームを送信するように超音波振動子を駆動し、受信制御手段は、方位別に周波数を選択して所定方位の受信信号を得る。
【0019】
また、本発明の水中探知装置においては、全周スキャンを行う場合と半周スキャンを行う場合とで信号周波数を異ならせ、1回の送受信で全周スキャンと半周スキャンとを同時に行うようにしてもよい。この場合、水中探知装置の送信制御手段は、互いに異なる周波数f1,f2の送信信号を生成し、全周スキャンを行う場合は、周波数f1の送信信号により超音波振動子を駆動し、半周スキャンを行う場合は、周波数f2の送信信号により超音波振動子を駆動する。また、受信制御手段は、上記異なる周波数f1,f2に対応した周波数成分を受信信号として抽出する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、水平方向の探知距離と垂直方向の分解能とを犠牲にすることなく、1台の送受波器で船の真下方向を含めた広範囲の探知を行えるとともに、コスト削減と省スペース化によって小型船にも搭載することが可能となる。また、円筒部の振動子配列を工夫したことで振動子の垂直方向のピッチを最小にして、水平スキャン時に垂直方向に発生するグレーティングローブを抑制することができる。さらに、半球部の振動子配列を工夫したことで円筒部と半球部の振動子の配列に連続性を持たせ、指向性偏差を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明に係る送受波器の実施形態を示す正面外観図である。送受波器1は、上部の円筒部1Aと、この円筒部1Aに連続する下部の半球部1Bとから構成されている。Kは信号を送受するためのケーブルである。円筒部1Aは、後述する配列方法に従って配列された多数の超音波振動子10aを有しており、半球部1Bも、後述する配列方法に従って配列された多数の超音波振動子10bを有している。各超音波振動子10a,10bは、円形の超音波放射面を有する振動子から構成されている。
【0022】
図2は、円筒部1Aにおける超音波振動子10aの配列方法を説明する図である。図2を円筒部1Aを展開した平面と考えた場合、各超音波振動子10aは、1つの振動子に隣接する6個の振動子が正6角形8の各頂点にそれぞれ位置するように配置されている。そして、正6角形8の対向する一組の辺9,9は、円筒部1Aの軸方向Yと平行となるように、すなわち鉛直方向を向くように配置されている。αは振動子10aの垂直方向(Y方向)のピッチ、βは振動子10aの水平方向(X方向)のピッチである。αとβとは、α<βの関係にある。これらのピッチα,βは、メインローブに対して90°の方向に生じるグレーティングローブを抑えるために、いずれも超音波の波長より短い寸法に設定される。以上のような配列アルゴリズムに従って超音波振動子10aを円筒部1Aに配列すると、振動子10aの垂直方向のピッチαが最小となり、また、円筒部1Aの表面に振動子10aをほぼ等間隔に敷き詰めて配列することができる。
【0023】
図3〜図5は、半球部1Bにおける超音波振動子10bの配列方法を説明する図である。図3において、2は半球部1Bを2つ合わせた場合の球面、3はこの球面2に内接する正12面体、4は正12面体3の各面を構成する正5角形である。なお、この図3は、正12面体3の1つの面が鉛直下方(紙面に対して直交方向)に向くように配置した状態で正12面体3を真上からみた図である。5は正12面体3を構成する正5角形4を球面2上に投影して得られる球面5角形を表している。半球部1Bにおいては、この球面5角形5を用いて超音波振動子10bを配列する。以下、この配列アルゴリズムについて説明する。
【0024】
図4(a)に示すように、球面5角形5の頂点をA〜E、重心をFとしたとき、球面5角形5は、これの構成要素をなす5つの球面3角形6(△FAB、△FBC、△FCD、△FDE、△FEA)に分割することができる。これらの球面3角形は、正確には球面2等辺3角形である。球面5角形5や球面3角形6は、正12面体3を球面2に投影して得られる図形であるから、それらの面は平面ではなく曲面となっていることは言うまでもない。振動子の配列にあたっては、まず、図4(a)に示した球面5角形5の頂点A〜Eと重心Fにそれぞれ振動子を配置する。次に、図4(b)に示すように、球面3角形6(ここでは△FCDを例示)の各辺(円弧)を4等分した点G〜I、J〜L、M〜Oにそれぞれ振動子を配置する。なお、ここでの4等分は一例であって、分割数は任意に選定できる。さらに、これらの等分割点を線分(円弧)で結ぶと、3個の小さな球面3角形zができるので、図4(c)に示すように、これらの球面3角形zの重心位置P,Q,Rにそれぞれ振動子を配置する。他の球面3角形6についても、図4(a),(b)と同じ手順に従って振動子を配置する。この結果、図5に示すような超音波振動子10bの配列が得られ、半球部1Bの表面に振動子10bをほぼ等間隔に配列することができる。
【0025】
このように、正多面体の各面をなす正多角形を球面上に投影して得られる球面多角形を用い、この球面多角形の頂点および重心と、球面多角形の構成要素である球面3角形の各辺を等分割した点と、これらの等分割点を結ぶ円弧により形成される小さな球面3角形の重心とにそれぞれ素子を配置する方法を、「窓重心法」という。窓重心法の詳細については、Magnus J. Wenninger:Spherical Models, DOVER PUBLICATIONS, INC., Mineola, New York (November 1999), pp79-124に記載されている。
【0026】
なお、図3〜図5では、正12面体を基礎として振動子を配列する手順を示したが、図4(a)からわかるように、正12面体の各面に対応する球面5角形5は、5つの球面3角形6に分割できるから、この球面3角形6に着目すると、5×12=60個の2等辺3角形から構成される60面体を基礎として、各球面3角形6につき図4(b),(c)の手順を踏んでいるのと同じ結果となる。すなわち、60面体を基礎とした場合は、球面3角形6の頂点と、球面3角形6の各辺を等分割した点と、これらの等分割点を結ぶ円弧により形成される小さな球面3角形zの重心とにそれぞれ振動子が配置されることになる。このことから、正12面体に代えて20個の正3角形から構成される正20面体を基礎とし、図4(b),(c)の手順で振動子を配列することも可能である。但し、正20面体の場合、円筒部1Aの振動子配列との連続性を持たせるためには、正20面体の頂点を鉛直方向に向ける必要があり、これによって円筒部1Aにおける振動子の垂直ピッチが水平ピッチより大きくなる(正12面体の場合と逆の関係となる)。したがって、垂直ピッチを最小にするという点からは、正12面体を基礎とするのが好ましい。
【0027】
図6は、上述した配列アルゴリズムにより得られた円筒部1Aおよび半球部1Bの振動子配列を示した図である。円筒部1Aの振動子10aは、前述のように1つの振動子に隣接する6個の振動子が正6角形8の各頂点にそれぞれ位置するように配置され、かつ、正6角形8の対向する一組の辺9,9が鉛直方向を向くように配置されている。この結果、垂直方向のピッチαが最小となるので、水平スキャン時に垂直方向に発生するグレーティングローブを抑制することができる。一方、半球部1Bの振動子10bは、前述のように球面3角形6の頂点と、球面3角形6の各辺を等分割した点と、これらの等分割点を結ぶ円弧により形成される小さな球面3角形の重心とにそれぞれ配置されている。なお、図6において、Aの位置は円筒部1A側の正6角形の中心であって、厳密には半球部1B側の球面5角形5の頂点位置と完全には一致しないが、前記配列アルゴリズムによれば、両者の位置をほぼ一致させることができる。円筒部1Aと半球部1Bの振動子10a,10bを以上のように配列すると、図6から分かるように、円筒部1Aから半球部1Bにかけて、超音波振動子10a,10bの配列を連続的なものとすることができ、円筒部1Aと半球部1Bとの境界W付近での素子密度のばらつきが少なくなる。このため、円筒部1Aと半球部1Bに跨るような開口で超音波ビームを送受信した場合でも、振動子配列の不連続に基因する指向性偏差(信号レベルの変動)を最小限に抑えて、良好な指向特性を得ることができる。
【0028】
以上のような超音波送受波器1を用いて超音波ビームを送信する場合、全チャンネルについて独立して送信信号を制御できるPDM(Pulse Duration Modulation)またはPWM(Pulse Width Modulation)方式を用いて、全周スキャン用の傘型ビーム、および半周スキャン用の扇型ビームを形成する。また、エコー受信時には、ビームの方位別に所定の開口内の超音波振動子10に対して、チャンネルごとに独立してウエイト制御および位相制御を行い、マルチビーム形成処理を行う。
【0029】
ところで、図1のような円筒部1Aと半球部1Bとからなる送受波器1の場合、送受波器1の下部にも超音波振動子10bが存在する。このため、全周スキャン・半周スキャンのいずれの場合にも、ティルト角によっては、真下方向のサイドローブ信号のレベルが上昇し、海底からのエコーが表示画面上で偽像として現れやすいという問題がある。これに対しては、送信・受信ともにビーム面と直交する海底方向の開口長を短くしたり、あるいは、ウエイトを調整することにより、真下方向のサイドローブ信号のレベルを低減することができる。図7は、円筒部1Aの全域と半球部1Bの一部を使って傘型ビームを送信する場合に、ウエイト関数としてガウス関数を用いて重み付けを行う場合の例を示している。
【0030】
また、半周スキャンの場合は、略180°のスキャン範囲で無指向性のビーム送信を行うが、ビーム面の開口範囲で図8(a)に示した台形のウエイト関数による重み付けを行うことにより、図8(b)に示すような滑らかな指向特性が得られ、矩形のウエイト関数を用いた場合に比べて、スキャン範囲の端部(−90°および+90°)付近における指向性偏差を低減することができる。
【0031】
図9は、上述した送受波器1を用いたスキャニングソナーSのブロック回路図を示している。図9において、10は前述の超音波振動子(10aまたは10b)であって、1つの振動子10ごとに1つの送受信チャンネル100(100a,100b,100c…)が設けられている。各送受信チャンネルの構成は同じなので、以下では送受信チャンネル100aについて説明する。送受信チャンネル100aにおいて、11は送信と受信の動作を切り替える送受切替回路、12は超音波振動子10に送信信号を与える送信アンプ、13は送信アンプ12を駆動するドライバ回路、14は振動子10が受信した信号を増幅するプリアンプ、15はプリアンプ14の出力信号のうち所定周波数帯域の信号のみを通過させる帯域フィルタ、16は帯域フィルタ15を通過した信号をデジタル信号に変換するA/D変換器、17は後段の回路との間で信号の授受を行うためのインターフェースである。
【0032】
ドライバ回路13は、インターフェース20,17を介して、後述する送信ビーム形成部26から与えられた2値化駆動コードを、送信アンプ12のFETを駆動するためのドライブ信号にデコードする。送信アンプ12は、フルブリッジ型のPDM(Pulse Duration Modulation)送信アンプからなり、パルス幅変調された送信信号を出力する。この信号により、送受切替回路11を介して振動子10が駆動される。送受切替回路11は、送信期間に送信アンプ12の出力信号を振動子10へ導き、受信期間に振動子10が出力した信号を受信信号としてプリアンプ14へ導く。プリアンプ14はこの受信信号を増幅し、帯域フィルタ15で所定周波数帯域以外のノイズ成分が除去された受信信号は、A/D変換器16において所定のサンプリング周期でサンプリングされ、デジタルデータに変換される。
【0033】
26はプログラマブル送信ビーム形成部(以下、「送信ビーム形成部」という。)であって、送信信号生成部21、波形メモリ24および送信DSP(Digital Signal Processor)25から構成される。送信信号生成部21は、たとえばFPGA(Field Programmable Gate Array)からなり、タイミング信号発生回路22と係数テーブル23とを備えている。タイミング信号発生回路22は、送信信号の生成タイミングの基準となる信号を発生する。送信DSP25は、送信信号を生成するためのデジタル信号処理回路であり、パルス幅変調波形を生成するための2値化された基準駆動コードを、各方位に対して所定種類のウェイトについて計算し、波形メモリ24へ書き込む。また、送信DSP25は、送信周期ごとに、送信ビーム形成のための各チャンネルの遅延量、ウェイト値および方位角を計算し、係数テーブル23に書き込む。送信信号生成回路21は、各チャンネルの方位角に対応する基準駆動コードに基づき、各チャンネルのウェイト値と遅延量に応じた駆動コードを生成する。
【0034】
27はバッファメモリであって、インターフェース20を介して各チャンネル100からの受信データを一時的に記憶するメモリである。28はプログラマブル受信ビーム形成部(以下、「受信ビーム形成部」という。)であり、受信DSP29、係数テーブル30および受信ビーム形成演算部31から構成される。受信ビーム形成演算部31は、FPGAからなる。受信DSP29は、各受信ビームごとに各振動子10から出力された受信信号の位相およびウエイトを計算し、これらを係数テーブル30へ書き込む。受信ビーム形成演算部31は、各振動子10からの受信信号に対して係数テーブル30に書き込まれた位相とウエイトの計算を行い、各信号を合成することにより合成受信信号を得る。この合成受信信号をビーム毎の時系列データとして求め、これをバッファメモリ32へ書き込む。
【0035】
33はプログラマブルフィルタであり、フィルタDSP34、係数テーブル35およびフィルタ演算部36から構成される。このプログラマブルフィルタ33は、ビーム毎に所定の帯域制限とパルス圧縮とを行う機能を備えている。フィルタDSP34は、ビーム毎に所定の帯域フィルタ特性を得るためのフィルタ係数を計算し、これを係数テーブル35へ書き込む。フィルタ演算部36は、係数テーブル35の係数を基にしてFIR(Finite Impulse Response)フィルタとしての演算を行い、帯域処理済受信信号を求める。このフィルタ演算部36は、FPGAからなる。
【0036】
40はエンベロープ検出部であって、各受信ビームの帯域処理済受信信号のエンベロープ(包絡線)を検出する。具体的には、時間波形の実数成分の2乗と虚数成分の2乗との和の平方根を求めることにより、エンベロープが検出される。
【0037】
41はイメージ処理部であって、各受信ビームの各距離における受信信号強度をイメージ情報化して表示部42へ出力する。これにより表示部42に探知領域における魚群等の水中情報の映像が表示される。
【0038】
37は操作部であって、この操作部37に設けられたキーを操作してビームのティルト角等の入力を行う。操作部37からの出力は、インターフェース38を介して制御部であるホストCPU39へ送られ、ホストCPU39は操作部37における入力内容に基づいて上述した各部の制御を行う。
【0039】
なお、図9には図示されていないが、スキャニングソナーSが搭載される船舶には、船体のローリングやピッチングを検出する検出装置が装備されており、送信DSP25は、当該検出装置の出力に基づいて、船舶の動揺にかかわらず常に所定方位に送信ビームを形成するように、係数テーブル23に書き込むべき係数を計算する。また、同様に受信DSP29も、上記検出装置の出力に基づいて、船舶の動揺にかかわらず常に所定方位に受信ビームを形成するように、係数テーブル30に書き込むべき係数を計算する。
【0040】
ところで、上記のスキャニングソナーSにおいては、前述したように、超音波送受波器1の円筒部1Aにおいて、振動子10aの水平方向のピッチβが垂直方向のピッチαに比べて大きくなることから、水平スキャン時に水平方向に発生するグレーティングローブが問題となる。この問題に対しては、方位別に異なる周波数の信号を用いて送受信を行う方位別周波数送受信法が有効な手段となる。方位別周波数送受信法については、特開2003−337171号公報に記載されている。この方式を採用した場合は、送信ビーム形成部26、ドライバ回路13、送信アンプ12などからなる送信制御手段によって、方位別に異なる周波数帯域の送信信号が生成され、この送信信号により送受波器1の各超音波振動子10が駆動されて、各方位ごとに周波数の異なる超音波ビームが送信される。また、エコーの受信時には、受信ビーム形成部28、プログラマブルフィルタ33などからなる受信制御手段が、方位別に周波数を選択して所定方位の受信信号を得る。このように、方位別に異なる周波数で送受信を行い、受信すべき方位に応じた周波数の信号を選択的に受信することにより、他の方位からの信号の影響を受けにくくして、水平方向のグレーティングローブを20dB程度低減することができる。
【0041】
本発明は、以上述べた以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、スキャニングソナーSにおいて全周スキャンを行う場合と半周スキャンを行う場合とで、信号周波数を異ならせてもよい。このようにすれば、それぞれのスキャンに用いる信号が相互干渉しなくなるため、1回の送受信で全周スキャンと半周スキャンとを同時に行うことができる。このため、広範囲の探知を短時間で効率良く行うことが可能となる。この場合、送信制御手段を構成する送信ビーム形成部26は、互いに異なる周波数f1,f2の送信信号を生成し、ドライバ回路13および送信アンプ12は、全周スキャン時は周波数f1の送信信号により超音波振動子10を駆動し、半周スキャン時は周波数f2の送信信号により超音波振動子10を駆動する。また、受信制御手段を構成するプログラマブルフィルタ33は、上記の周波数f1,f2に対応した周波数成分を受信信号として抽出する。以上のような、同時並行スキャンの技術については、特開2003−202370号公報に記載されている。
【0042】
以上述べた実施形態においては、水中探知装置としてスキャニングソナーを例に挙げたが、本発明の超音波送受波器はスキャニングソナーに限らず、魚群探知機、測深機、潮流計などの水中探知装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る送受波器の実施形態を示す正面外観図である。
【図2】送受波器の円筒部における振動子の配列方法を説明する図である。
【図3】球面に内接する正12面体を示す図である。
【図4】送受波器の半球部における振動子の配列方法を説明する図である。
【図5】送受波器の半球部における振動子の配列状態を示す図である。
【図6】円筒部および半球部の振動子配列を示した図である。
【図7】サイドローブレベルの低減方法を説明する図である。
【図8】半周スキャンの場合のウエイト関数と指向特性を示す図である。
【図9】本発明に係る送受波器を用いたスキャニングソナーのブロック回路図である。
【図10】従来の円筒形の送受波器を示す外観図である。
【図11】従来の半円筒形の送受波器を示す外観図である。
【図12】従来の球形の送受波器を示す外観図である。
【符号の説明】
【0044】
1 超音波送受波器
1A 円筒部
1B 半球部
2 球面
3 正12面体
4 正5角形
5 球面5角形
6 球面3角形
8 正6角形
10,10a,10b 超音波振動子
11 送受切替回路
12 送信アンプ
13 ドライバ回路
14 プリアンプ
15 帯域フィルタ
16 A/D変換器
26 送信ビーム形成部
28 受信ビーム形成部
33 プログラマブルフィルタ
39 ホストCPU
40 エンベロープ検出部
41 イメージ処理部
42 表示部
S スキャニングソナー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に円筒部、下部に前記円筒部と連続する半球部を有し、前記円筒部および半球部のそれぞれに超音波振動子が設けられた超音波送受波器において、
前記円筒部の超音波振動子は、1つの超音波振動子に隣接する6個の超音波振動子が正6角形の各頂点にそれぞれ位置するように配置され、かつ、前記正6角形の対向する一組の辺が、前記円筒部の軸方向と平行となるように配置されていることを特徴とする超音波送受波器。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波送受波器において、
前記半球部の超音波振動子は、前記半球部の球面に内接する正多面体を構成する正多角形を球面上に投影して得られる図形を球面多角形としたとき、当該球面多角形の構成要素をなす球面3角形の頂点と、球面3角形の各辺を等分割した点と、これらの等分割点を結ぶ円弧により形成される小さな球面3角形の重心とにそれぞれ配置されていることを特徴とする超音波送受波器。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波送受波器において、
前記正多面体は、正12面体であり、
前記球面多角形は、前記正12面体の1つの面が鉛直下方に向くように配置した状態で、当該正12面体を構成する正5角形を前記球面上に投影して得られる球面5角形であることを特徴とする超音波送受波器。
【請求項4】
複数の超音波振動子を有し、前記超音波振動子から水中の所定方位に超音波ビームを送信するとともに、水中の標的で反射したエコーを前記超音波振動子で受信する超音波送受波器と、
前記超音波振動子を駆動して超音波ビームを送信させるための送信信号を出力する送信制御手段と、
前記超音波振動子が受信したエコーに基づく受信信号を処理して水中情報を得る受信制御手段と、
前記受信制御手段で得られた水中情報を表示する表示手段と、
を備えた水中探知装置において、
前記超音波送受波器が請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の超音波送受波器であることを特徴とする水中探知装置。
【請求項5】
請求項4に記載の水中探知装置において、
前記超音波送受波器より水中の全方位に傘型の超音波ビームを送信して、全周スキャンを行うことを特徴とする水中探知装置。
【請求項6】
請求項4に記載の水中探知装置において、
前記超音波送受波器より水中の半周領域に扇型の超音波ビームを送信して、半周スキャンを行うことを特徴とする水中探知装置。
【請求項7】
請求項4に記載の水中探知装置において、
前記送信制御手段は、方位別に異なる周波数帯域の超音波ビームを送信するように前記超音波振動子を駆動し、
前記受信制御手段は、方位別に周波数を選択して所定方位の受信信号を得ることを特徴とする水中探知装置。
【請求項8】
請求項4または請求項7に記載の水中探知装置において、
前記送信制御手段は、互いに異なる周波数f1,f2の送信信号を生成し、全周スキャンを行う場合は、周波数f1の送信信号により超音波振動子を駆動し、半周スキャンを行う場合は、周波数f2の送信信号により超音波振動子を駆動し、
前記受信制御手段は、前記異なる周波数f1,f2に対応した周波数成分を受信信号として抽出することを特徴とする水中探知装置。
【請求項1】
上部に円筒部、下部に前記円筒部と連続する半球部を有し、前記円筒部および半球部のそれぞれに超音波振動子が設けられた超音波送受波器において、
前記円筒部の超音波振動子は、1つの超音波振動子に隣接する6個の超音波振動子が正6角形の各頂点にそれぞれ位置するように配置され、かつ、前記正6角形の対向する一組の辺が、前記円筒部の軸方向と平行となるように配置されていることを特徴とする超音波送受波器。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波送受波器において、
前記半球部の超音波振動子は、前記半球部の球面に内接する正多面体を構成する正多角形を球面上に投影して得られる図形を球面多角形としたとき、当該球面多角形の構成要素をなす球面3角形の頂点と、球面3角形の各辺を等分割した点と、これらの等分割点を結ぶ円弧により形成される小さな球面3角形の重心とにそれぞれ配置されていることを特徴とする超音波送受波器。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波送受波器において、
前記正多面体は、正12面体であり、
前記球面多角形は、前記正12面体の1つの面が鉛直下方に向くように配置した状態で、当該正12面体を構成する正5角形を前記球面上に投影して得られる球面5角形であることを特徴とする超音波送受波器。
【請求項4】
複数の超音波振動子を有し、前記超音波振動子から水中の所定方位に超音波ビームを送信するとともに、水中の標的で反射したエコーを前記超音波振動子で受信する超音波送受波器と、
前記超音波振動子を駆動して超音波ビームを送信させるための送信信号を出力する送信制御手段と、
前記超音波振動子が受信したエコーに基づく受信信号を処理して水中情報を得る受信制御手段と、
前記受信制御手段で得られた水中情報を表示する表示手段と、
を備えた水中探知装置において、
前記超音波送受波器が請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の超音波送受波器であることを特徴とする水中探知装置。
【請求項5】
請求項4に記載の水中探知装置において、
前記超音波送受波器より水中の全方位に傘型の超音波ビームを送信して、全周スキャンを行うことを特徴とする水中探知装置。
【請求項6】
請求項4に記載の水中探知装置において、
前記超音波送受波器より水中の半周領域に扇型の超音波ビームを送信して、半周スキャンを行うことを特徴とする水中探知装置。
【請求項7】
請求項4に記載の水中探知装置において、
前記送信制御手段は、方位別に異なる周波数帯域の超音波ビームを送信するように前記超音波振動子を駆動し、
前記受信制御手段は、方位別に周波数を選択して所定方位の受信信号を得ることを特徴とする水中探知装置。
【請求項8】
請求項4または請求項7に記載の水中探知装置において、
前記送信制御手段は、互いに異なる周波数f1,f2の送信信号を生成し、全周スキャンを行う場合は、周波数f1の送信信号により超音波振動子を駆動し、半周スキャンを行う場合は、周波数f2の送信信号により超音波振動子を駆動し、
前記受信制御手段は、前記異なる周波数f1,f2に対応した周波数成分を受信信号として抽出することを特徴とする水中探知装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−208107(P2006−208107A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−18749(P2005−18749)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】
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