路側装置、制御方法及びプログラム
【課題】タウンカーライフマルチコンテンツデータ形式での路車間通信に対応する路側装置15において、嗜好データテーブルのバージョン変更に対して、適切なデフォルト値を設定して、ユーザの入力の手間を軽減する。
【解決手段】路側装置15は、旧版の嗜好データテーブルの項目のユーザ嗜好情報を受け継がせる新版の嗜好データテーブルの項目があった場合の対応表を備える。該対応表は、例えば旧版の嗜好データテーブルの項目番号"52","53","62","63"が新版の嗜好データテーブルの項目番号"52","53","62","63"に対応付けられる。ITS車載器17は、新版の嗜好データテーブルの送信先のユーザに対して、その項目番号に対応付けられている旧版の項目番号の項目についての該ユーザの嗜好データを新版の該項目のデフォルト値にしてから、該ユーザのITS車載器17へ送信する。
【解決手段】路側装置15は、旧版の嗜好データテーブルの項目のユーザ嗜好情報を受け継がせる新版の嗜好データテーブルの項目があった場合の対応表を備える。該対応表は、例えば旧版の嗜好データテーブルの項目番号"52","53","62","63"が新版の嗜好データテーブルの項目番号"52","53","62","63"に対応付けられる。ITS車載器17は、新版の嗜好データテーブルの送信先のユーザに対して、その項目番号に対応付けられている旧版の項目番号の項目についての該ユーザの嗜好データを新版の該項目のデフォルト値にしてから、該ユーザのITS車載器17へ送信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DSRC(Dedicated Short Range Communication:狭域通信)等の路車間通信を利用して嗜好データテーブルに係る情報を送受する路側装置、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1はDSRCを利用する路車間通信システムを開示する(特許文献1の図1)。該路車間通信システムでは、路側機の通信エリア内に進入した自動車の車載器は、路側機から広告情報を電波で受信して、ナビ部のディスプレイに表示するようにしている(特許文献1の段落0024)。また、車載器では、広告情報に含まれる位置情報、URL及び電話番号に基づき自動的に目的地設定、HP接続及びダイヤルが実施されるようになっている(特許文献1の図4のS12,S14,S16)。
【0003】
特許文献2は、車載情報端末装置が情報センタから広告情報と共に、該広告情報に対応付けられた地域情報及び時間帯情報を電波で受信し(特許文献2の図1)、該広告情報(特許文献2の図4)を該地域情報に係る地域及び該時間帯情報に係る時間帯に表示することを開示する(特許文献2の図5のS14〜S16)。
【0004】
特許文献3はDSRCを利用した広告配信ステムを開示する(特許文献3の図1)。該広告配信システムでは、嗜好情報が車載器から路側装置へ通知され(特許文献3の段落0017)、路側装置は該嗜好情報に基づき選別した広告情報を車載器へ送信し、車載器がこれを再生するようになっている(特許文献3の段落0028,0029)。
【特許文献1】特開2001−101578号公報
【特許文献2】特開2004−279509号公報
【特許文献3】特開2005−134707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
データ形式のデータは、基本的には5.8GHz帯DSRC通信における個別通信によるプッシュ型情報配信方式で配信され、ダウンリンク情報には嗜好データテーブルが含められているとともに、アップリンク情報には該嗜好データテーブルに対するユーザの回答結果としてのユーザ嗜好情報が含められている。路側装置は、ユーザ嗜好情報に基づきユーザごとに適切な広告情報を選別し、これを車載器へ送信する。
【0006】
嗜好データテーブルは、サービス事業者の都合により改訂されることがある。嗜好データテーブルにおいて、ユーザが自分の嗜好の有無を入力しなければならない項目は計96個あり、ユーザはそのすべてを一々、入力すると、大変な手間になる。新版の嗜好データテーブルの項目には、改訂のなかった項目も含まれ、それらについては、旧版の嗜好データテーブルのユーザ嗜好情報をそのままデフォルト値を設定して、ユーザの手間を軽減することができるが、改訂項目についてのデフォルト値設定は適切な対策が望まれる。
【0007】
特許文献1〜3は、新版の嗜好データテーブルに対するユーザ入力の手間を改善する技術についてはなんら示唆していない。
【0008】
本発明の目的は、新版の嗜好データテーブルの項目に適切なデフォルト値を付与することができる路側装置、制御方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、旧版の嗜好データテーブルに対するユーザ嗜好情報を記憶装置に保存しておき、新版の嗜好データテーブルの項目と、それがデフォルト値として受け継ぐユーザ嗜好情報をもつ旧版嗜好データテーブルの項目との項目対応関係が登録される。そして、ユーザに新版の嗜好データテーブルの項目にデフォルト値を付けて送る場合には、項目対応関係に基づき旧版嗜好データテーブルの対応項目に対する該ユーザの嗜好情報を求め、該求めた嗜好情報を新版の嗜好データテーブルの該項目のデフォルト値にする。
【0010】
本発明の路側装置は、無線通信エリア内に進入した車載器へ嗜好データテーブルの情報をそのバージョン情報と共に送信するとともに、前記車載器からは該嗜好データテーブルに対するユーザ嗜好情報を含むアップリンク情報を受信するのであって、次のものを備えている。
旧版の嗜好データテーブルに対するユーザ嗜好情報を記憶装置に保存させる保存手段、
新版の嗜好データテーブルの項目の内、旧版から改訂のあった項目を探索する改訂項目探索手段、
旧版の嗜好データテーブルの項目と該項目に対するユーザ嗜好情報を受け継ぐ新版の嗜好データテーブルの項目との対応関係に基づき新版の嗜好データテーブルの改定項目のデフォルト値を旧版の嗜好データテーブルの対応項目のユーザ嗜好情報に設定するデフォルト値設定手段、及び
デフォルト値を設定した新版の嗜好データテーブルの情報を含む送信情報を前記車載器へ送信する送信情報送信手段。
【0011】
本発明の制御方法は、無線通信エリア内に進入した車載器へ嗜好データテーブルの情報をそのバージョン情報と共に送信するとともに、前記車載器からは該嗜好データテーブルに対するユーザ嗜好情報を含むアップリンク情報を受信する路側装置のものであって、次のステップを備えている。
旧版の嗜好データテーブルに対するユーザ嗜好情報を記憶装置に保存させる保存ステップ、
新版の嗜好データテーブルの項目の内、旧版から改訂のあった項目を探索する改訂項目探索ステップ、
旧版の嗜好データテーブルの項目と該項目に対するユーザ嗜好情報を受け継ぐ新版の嗜好データテーブルの項目との対応関係に基づき新版の嗜好データテーブルの改定項目のデフォルト値を旧版の嗜好データテーブルの対応項目のユーザ嗜好情報に設定するデフォルト値設定ステップ、及び
デフォルト値を設定した新版の嗜好データテーブルの情報を含む送信情報を前記車載器へ送信する送信情報送信ステップ。
【0012】
本発明のプログラムは、本発明の前述の路側装置の各手段としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、新旧の嗜好データテーブルの項目対応関係に基づき新版の嗜好データテーブルの改訂項目について適切なデフォルト値を設定して、新版の嗜好データテーブルに対するユーザの入力の手間を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1はタウンカーライフナビマルチコンテンツ形式のデータに基づく路車間DSRCシステム10の概略図である。路側機11は、サーバ12と共に路側装置15を構成し、有線又は無線でサーバ12へ接続されている。サーバ12は、さらに、インタネット等のネットワークを介して別のサーバとデータを送受自在になっている。路側機11は、長さが数m〜30mのエリアに存在する自動車13に搭載されているITS車載器17とは5.8GHz 帯の電波を使ってデータを送受する。路側機11及びサーバ12は路側装置15を構成する。ITS車載器17はDSRC部18及びナビ部19を有している。
【0015】
図2はデータ伝送態様の説明図である。ダウンリンクでは、データをその種類に応じて分類し、分類ごとにIDコード"00","01","02",〜を割り振っている。マルチコンテンツ形式のデータ伝送では、データが情報グループを単位に括られ、各情報グループは先頭にID="00"の分類データをもつ。ID="00"の分類データは、その情報グループに含まれているIDにはどのようなものがあるかの構成情報となっている。
【0016】
図3はダウンリンクで使用する各IDに割り当てる分類表である。ID=00は構成ID情報(データを構成するIDを記述する領域)の分類となっている。ID=01は事業者の分類となっており、サービス事業者コード(サービス事業者を特定できる事業者コード)、サービス事業者表示テキスト(ナビ表示用サービス事業社名(サービス名)テキスト情報)、及びサービス事業者表音文字列(ナビ発話用サービス事業社名(サービス名)表音文字列情報)が含まれる。
【0017】
ID=02はコンテンツの分類となっており、企業コード(コンテンツの情報提供元を特定できるコード)、企業表示テキスト(ナビ表示用情報提供企業名テキスト情報)、企業表音文字列(ナビ発話用情報提供企業名表音文字列情報)、情報コード(コンテンツを特定できる情報コード)、情報表示テキスト(ナビ表示用コンテンツ内容テキスト情報)、情報表音文字列(ナビ発話用コンテンツ内容表音文字列情報)、及び嗜好データカテゴリー(情報が該当する情報カテゴリーを示すカテゴリーコード)が含まれる。
【0018】
ID=03は、ID=02と同様に、コンテンツの分類となっており、即時再生/蓄積コード(受信後のコンテンツ再生動作を表すコード)、及び再生条件コード(情報提供エリアでのコンテンツ再生条件を示すコード)が含まれる。
【0019】
ID=04は、有効期限の分類となっており、開始年月日時分秒(コンテンツの有効期限)、及び終了年月日時分秒(コンテンツの有効期限)が含まれる。ID=05は、提供時間の分類となっており、営業時間(コンテンツ提供元の営業時間)、及び情報提供時間(コンテンツ提供時間)が含まれる。
【0020】
ID=10は、対象地点の分類となっており、対象地点座標(サービス提供可能な地点の緯度経度情報)、対象地点表示用テキスト(サービス名称(店舗名称等))、提携駐車場情報(対象地点以外の提携駐車場情報)、アイコン表示画像データ(サービス提供可能な場所を表すアイコンのデータ)、表示用文字データ(サービスの説明用テキスト情報)、表示画像データ(サービスを表す静止画情報)、表音文字列データ(サービスを表す表音文字列情報)、圧縮音声データ(圧縮音声データ情報)、音声再生順(表音文字列と圧縮音声の再生順序を表す)、ビデオデータ(ビデオデータ情報)、及びURL(サービスを表すURL情報)が含まれる。
【0021】
ID=20は、情報提供地点の分類となっており、計5個の情報提供地点について、情報提供中心座標(ポップアップ情報を再生する緯度経度情報)、情報提供エリア(ポップアップ情報を再生するエリアを定義する中心座標からの半径情報)、情報提供方向コード(ポップアップ情報を再生する情報提供方向情報)、情報提供道路種別(ポップアップ情報を再生する道路種別情報)、表示画像データ(ポップアップ再生する静止画のデータ)、表音文字列データ(ポップアップ再生する表音文字列情報)、圧縮音声データポップアップ再生する圧縮音声のデータ)、及び音声再生順(ポップアップ再生する音声データの再生順番を表すコード)が含まれる。
【0022】
ID=30は、遷移情報の分類となっており、計8個の次再生情報コード( 画面遷移情報)が含まれる。ID=40は、詳細情報の分類となっており、計8個の各詳細情報について、表示用文字データ(ナビ表示用詳細情報テキスト情報)、及び発話用表音文字列(ナビ発話用詳細情報表音文字列情報)が含まれる。
【0023】
ID=50は、駐車場情報の分類となっており、計127個の駐車情報について、駐車場ID(駐車場を特定できるID)、詳細情報(駐車場の動的詳細情報)、特記事項(駐車場の特記事項)、及び特記事項表音文字列(ナビ発話用特記事項表音文字列)が含まれる。ID=60は、運転支援の分類であり、運転支援画像データ(運転支援画像情報)、運転支援表音文字列(データ運転支援表音文字列情報)、運転支援圧縮音声(データ運転支援圧縮音声情報)、及び音声再生順(表音文字列と圧縮音声の再生順序を表す)が含まれる。
【0024】
ID=80は、嗜好データの分類であり、計127個の各嗜好データのテーブルについて、嗜好データバージョン(嗜好データのテーブルのバージョン情報)、嗜好データテーブル( 嗜好データのテーブルの表示用テキスト情報)、表音文字列(嗜好データのテーブルの発話用表音文字列情報)、及び詳細情報(嗜好データのテーブルの詳細情報)が含まれる。
【0025】
図4は路側装置15−ITS車載器17間のトランザクションで実施される各機器間の通信及び処理を示している。路側機11及びサーバ12は路側装置15を構成する。ITS車載器17はDSRC部18及びナビ部19を有している。時間順に説明する。なお、路側機11−DSRC部18間の通信はDSRCの電波で行われ、路側機11−サーバ12間及びDSRC部18−ナビ部19間の通信は通常、無線又は有線で行われる。
【0026】
図5はITS車載器17から路側装置15へ送られるアップリンク情報のデータ概説明略図である。アップリンク情報は、複数のタグで送られる。タグ1には、サービス事業者コード、目的地(緯度経度)、経由地(緯度経度)1〜5、累計走行距離、嗜好ジャンルデータバージョン、嗜好ジャンルデータ、会員情報1〜8が含められる。タグ2には、サービス事業者コード、過去立寄り地(緯度経度)1〜41が含められる。タグ3には、サービス事業者コード、過去立寄り地(緯度経度)42〜82が含められる。
【0027】
タグ4には、サービス事業者コード、受信/再生履歴(受信情報コード及び再生識別フラグ)1〜123が含められる。タグ5には、サービス事業者コード、受信/再生履歴(受信情報コード及び再生識別フラグ)124〜246が含められる。
【0028】
ITS車載器17において電源が投入されるのに伴い、S10では、ナビ部19からDSRC部18へクライアントインフォメーションデータが書き込まれる。ITS車載器17を搭載する自動車13が路側機11との通信可能な距離(例:約30m)の電波到達エリアに進入するのに伴い、S11では、路側機11−DSRC部18間でDSRC接続処理が実施される。
【0029】
S11のDSRC接続処理が終了すると、S12,S13でDSRC接続通知が行われる。S12の接続通知は路側機11からサーバ12へのものであり、S13の接続通知はDSRC部18からナビ部19へのものである。S14では、クライアントインフォメーションがDSRC部18から路側機11を経てサーバ12へ通知される。
【0030】
サーバ12は、DSRC部18の一意に付番された車載器IDを読み取りITS車載器17のユーザが会員か非会員かを判別したり、通信確立後にDSRC部18から通知されるクライアントインフォメーションに基づき、ITS車載器17でコンテンツを適正に再生するためのITS車載器17のハードウェア情報を知得する。S18では、サーバ12から路側機11及びDSRC部18を経てナビ部19へWelcome画面等のコンテンツを送信する。該コンテンツはマルチコンテンツフォーマットで編成されている。ナビ部19は、マルチコンテンツフォーマットからサービス事業者を判断する。
【0031】
サーバ12は、S18後、ナビ部19がアップリンク情報をDSRC部18に書き込むまで、S19でDSRC部18に対して定期的にポーリングを行う。S20では、ナビ部19は、ITS車載器17のユーザが該サービス事業者の会員と判断すると、アップリンク情報をDSRC部18に書き込むのに対し、会員でなければ、何もしない。
【0032】
S24では、サーバ12は、路側機11及びDSRC部18を経由してデフォルトのコンテンツ(例:公共サービス情報等)をナビ部19へ送る。S29では、サーバ12は、DSRC部18に対してメモリアクセスポーリングを実施する。これに対して、S30では、DSRC部18は、ユーザが会員であれば、アップリンク情報をサーバ12へ通知する。
【0033】
S33では、サーバ12は、アップリンク情報から取得した会員情報に基づき会員趣向に適した蓄積型コンテンツをマルチコンテンツフォーマット(図2)で編成してITS車載器17へ配信する。S34では、蓄積型コンテンツの配信終了を通知する。ITS車載器17を搭載する自動車13は、配信終了に伴い路側機11との通信エリアから退出する。
【0034】
図6は路側装置15からITS車載器17へ送信する嗜好データテーブルの一例を示す。嗜好データテーブルは図4のS18で路側装置15からITS車載器17へ送信される。嗜好データテーブルの項目はデータ番号=0〜127の計128個存在し、各データ番号に対応付けて表示用テキスト、表示用ネスト、対象識別子、デフォルト値等が存在する。表示用ネスト=0はトップの階層を意味し、数値の増大に連れて下の階層となる。対象識別子とは、各データ番号の項目がユーザによる嗜好の有無登録の対象になっているか否かを示すフラグであり、後述の図7から分かるように、対象識別子=1,0は該項目がそれぞれユーザによる嗜好の有無登録の対象及び非対象となっていることを意味する。デフォルト値=0,1はそれぞれユーザが項目について嗜好無し及び嗜好有りを意味している。図6では、対象識別子=1の"洋画"及び"邦画"のデフォルト値は0となっている。
【0035】
図7は図6の嗜好データテーブルに基づきITS車載器17において生成された嗜好データテーブルである。図6との対比から分かるように、表示用ネストの値が大きくなるほど、小分類となる。また、対象識別子=1となっていた表示テキストのみが嗜好データとしてユーザによる嗜好の有無登録の対象になる。図6では、"洋画"及び"邦画"共にデフォルト値=0となっているので、最初の嗜好データでは、"洋画"及び"邦画"共に0(該0は実際の画面例では四角の欄にチェック無しで表示される。)になっている。それに対して、図7では、ユーザが"洋画"について嗜好有りのチェックを付け、嗜好データ=1とされている。なお、図7では、ユーザは、一番下の階層の項目についてのみ、嗜好の有無を登録するようになっているが、対象識別子=1をそれより上の階層の項目に付ければ、大分類、中分類の項目についても嗜好の有無を登録することができるようになっている。
【0036】
図8は新旧のバージョンの嗜好データテーブルを対比して示す図である。(a)の嗜好データテーブルは旧版であり、(b)の嗜好データテーブルは新版である。旧版の"道北"、"道南"、"西欧"及び"東欧"が新版ではそれぞれ"稚内"、"函館"、"西ヨーロッパ"及び"東ヨーロッパ"に改訂されている。また、路側装置15は、旧版の嗜好データテーブルに対して、ユーザごとに該ユーザが入力して前回のエリアイン時に受信したアップリンク情報を記憶装置に記憶している。すなわち、図8(a)の旧版の"道北"、"道南"、"西欧"及び"東欧"には、いずれもチェックが付けられているが、路側装置15はこのユーザ嗜好情報を記憶装置に記憶している。
【0037】
路側装置15のサービス事業者は、配信する嗜好データテーブルのバージョンを変更する場合、新旧の両版とも自分か作成したものであるから、新版の嗜好データテーブルにおける改訂項目が旧版の嗜好データテーブルにおけるどの項目に同一又は類似するものであって、旧版のユーザ嗜好情報を新版へ引継ぎ可能となっているかを判断できる。なお、「類似」には、実質的な内容が同一であっても、半角と全角のテキストが違っている場合、漢字と平仮名との表記が違っている場合を含み、「同一」とはテキストの完全同一とする。
【0038】
路側装置15は、旧版の嗜好データテーブルの項目のユーザ嗜好情報を受け継がせる新版の嗜好データテーブルの項目があった場合の対応表を備える。該対応表における新旧の版の嗜好データテーブルの項目対応関係は、新旧の版の嗜好データテーブルの項目の内容が同一又は類似の関係にあるものである。該対応表は通常、全部のユーザに共通とされる。具体的には、新版の嗜好データテーブルの各改訂項目の項目番号に対し、該改訂項目に対応する旧版の嗜好データテーブルの項目の項目番号を対応付ける。図8の例では、対応表は、旧版の嗜好データテーブルの項目番号"32","33","52","53"が新版の嗜好データテーブルの項目番号"32","33","52","53"に対応付けられる。この例では、新旧の嗜好データテーブルの対応番号同士の数値が同一であるが、相違していてもかまわないし、一般には相違している。
【0039】
路側装置15は、アップリンク情報に含まれるユーザIDに基づきその送信元のITS車載器17のユーザを識別し、該ユーザの旧版の嗜好データテーブルのユーザ嗜好情報を検索してから、該ユーザについて、対応表に基づき新版の各項目番号のデフォルト値を、旧版の嗜好データテーブルの対応項目番号の嗜好データとする。図8の例では、旧版バージョンの項目"道北"、"道南"、"西欧"及び"東欧"の嗜好データはそれぞれ"1","1","1","1"であるので、路側装置15は、新版の"稚内"、"函館"、"西ヨーロッパ"及び"東ヨーロッパ"のデフォルト値をそれぞれ"1","1","1","1"に設定する。
【0040】
図9は路側装置15が自動車13のエリアイン時に自動車13の路側装置15からアップリンク情報に含めて受信する自動車13の立寄り地点情報を路側装置15が整理した後の情報を示す。図9において、"オートフロンツ"、"OK堂"及び"丸八屋"はそれぞれカー用品販売、レンタルビデオ及び釣具業の業者名を仮定している。この自動車13は、各業者の店へ図9に示す回数、立寄っている。路側装置15は、各立寄り地点について最後に立寄った時間の情報は入手しなくてもよい。
【0041】
路側装置15は、実際には、これら立寄り地の具体的名前をアップリンク情報から知るのではなく、アップリンク情報の立寄り地情報は例えば緯度経度で取得する。したがって、路側装置15は、これら緯度経度を地図データと照合して、立寄り地の具体的な店名を知ることになる。
【0042】
図10は路側装置15が、設定している立寄り地点と嗜好データとの関係を示している。路側装置15は、図9のデータから所定回数、例えば3回以上の立寄り実績のある業者を選別する。図9の場合、"オートフロンツ"と"丸八屋"が選別される。なお、路側装置15は、ITS車載器17から入手した立寄り地の緯度経度を自分の地図データと照合して、該緯度経度の地点がオートフロンツ"であるかとか"丸八屋"であるとかを把握する。そして、路側装置15のサービス事業者は、選別した各業者に関係して自分の今回の新版の嗜好データテーブルの表示用テキストとして使っている語句を嗜好データとして選出する。
【0043】
路側装置15は、図9の情報元のユーザの新版嗜好データテーブルのデフォルト値設定では、新版の嗜好データテーブルにおいて図10の選出語句と同一となっている表示用テキストの項目のデフォルト値を"1"、すなわち、嗜好有りとする。こうして、デフォルト値を付けた嗜好データテーブルの情報がバージョン情報と共に情報元のユーザのITS車載器17へ送信される。ITS車載器17では、該嗜好データテーブルがナビ部19の画面に表示されて、ユーザは、変更の必要のない項目については入力無しで済ませつつ、変更の必要な項目のみについて、チェックを付けたり(嗜好有りとしたり)、チェックを外したり(嗜好無しとしたり)する。
【0044】
図11は路側装置15が新版の嗜好データテーブルにおける改訂項目について特別の情報をITS車載器17へ送信した場合にITS車載器17で表示される新旧の版の嗜好データテーブルの表示例を示している。図(a)の嗜好データテーブルは旧版であり、(b)の嗜好データテーブルは新版である。図8に関連して説明したように、路側装置15は、旧版の嗜好データテーブルの項目のユーザ嗜好情報をデフォルト値として受け継ぐ新版の嗜好データテーブルの項目について旧版及び新版の項目対応表を装備している。図11の例では、該対応表には、新版の"札幌・室蘭"の項目番号52は旧版の"道央"の項目番号52に対応付けられ、新版の"イギリス"及び"フランス"の項目番号62,63は旧版の"西欧"の項目番号62に対応付けられていると仮定する。
【0045】
路側装置15は、該対応表に基づき新版の嗜好データテーブルの所定項目に旧版の嗜好データテーブルの対応項目の嗜好データの値を付けるとともに、新版の嗜好データテーブルにおける改訂項目がどれかがITS車載器17のユーザに分からせるようにするための情報を該新版の嗜好データテーブルの情報と共に送信する。具体例としては、嗜好データテーブルの表示用テキスト(図6参照)に特定のテキスト(例:※)を特定の場所(例:先頭)に挿入する(例:※イギリス)。なお、嗜好データテーブルの表示用テキストは、嗜好データテーブルの各項目に対して1:1に対応している。図8の例では、新版の嗜好データテーブルの項目番号52,62,63に改訂項目である旨の情報を嗜好データテーブルの情報に付加して、路側装置15からITS車載器17へ送られる。
【0046】
これに対して、ITS車載器17は、該特定のテキストが特定の場所に存在する項目については、該特定のテキストを削除して、残りのテキストだけをナビ部19の画面に表示するとともに、該特定のテキストが挿入されていた項目のテキストを色付きや斜体等でナビ部19の画面に表示する。この結果、ユーザは新版の嗜好データテーブルの改定項目を一目で理解し、そのデフォルト値を重点的に調べて、嗜好データの維持、又は変更を行うことになる。
【0047】
図12は路側装置50のブロック図である。路側装置50は、無線通信エリア内に進入した車載器へ嗜好データテーブルの情報をそのバージョン情報と共に送信するとともに、車載器からは該嗜好データテーブルに対するユーザ嗜好情報を含むアップリンク情報を受信する。路側装置50は、車載器とDSRCでデータを送受するものに限定されない。路側装置50は、保存手段51、改訂項目探索手段52、デフォルト値設定手段53及びダウンリンク情報送信手段54を備えている。
【0048】
保存手段51は、旧版の嗜好データテーブルに対するユーザ嗜好情報を記憶装置58に保存させる。改訂項目探索手段52は、新版の嗜好データテーブルの項目の内、旧版から改訂のあった項目を探索する。デフォルト値設定手段53は、旧版の嗜好データテーブルの項目と該項目に対するユーザ嗜好情報を受け継ぐ新版の嗜好データテーブルの項目との対応関係に基づき新版の嗜好データテーブルの改定項目のデフォルト値を、旧版の嗜好データテーブルの対応項目に対する今回の新版送信先ユーザの嗜好情報に設定する。ダウンリンク情報送信手段54は、デフォルト値を設定した新版の嗜好データテーブルの情報を含むダウンリンク情報を車載器へ送信する。
【0049】
嗜好データテーブルは、通常、サービス事業者が作成するので、旧版の嗜好データテーブルの項目と該項目に対するユーザ嗜好情報を受け継ぐ新版の嗜好データテーブルの項目との対応関係は該サービス事業者により支障なく作成される。旧版の嗜好データテーブルの項目と該項目に対するユーザ嗜好情報を受け継ぐ新版の嗜好データテーブルの項目との対応関係は、全ユーザに共通にしてもよいが、性別、年齢別、所得層別等、ユーザごとにきめ細かく用意することもできる。路側装置50は、新版の嗜好データテーブルの送信先のユーザが誰であるかは、それに先立ち受信したユーザIDにより把握することができる。ユーザは、旧版で入力した自分の嗜好情報に沿ったデフォルト値を設定された嗜好データテーブルを路側装置50から受けることができ、新版の嗜好データテーブルに対する入力の手間を軽減される。
【0050】
好ましくは、デフォルト値設定手段53は、対応関係からデフォルト値を設定できなかった改訂項目については、アップリンク情報に基づきデフォルト値を設定する。デフォルト値は、例えばアップリンク情報に含まれる立寄り地情報、目的地や経由地の情報に基づきが設定される。この具体例は、図9及び図10に関連して説明した実施例である。
【0051】
典型的には、ダウンリンク情報送信手段54は、どれが改訂項目であるかを示す情報を新版の嗜好データテーブルの情報とともにダウンリンク情報に含めて送信する。どれが改訂項目であるかを示す情報は、タウンカーライフナビマルチコンテンツのフォーマットでは、例えば嗜好データテーブルの表示用テキストに挿入する。車載器は、該情報を識別して、改訂項目のテキストを色付きや斜体等、改訂のあったことをユーザに容易に分からせる態様で表示することができる。
【0052】
図13は路側装置制御方法60のフローチャートである。路側装置制御方法60は路側装置50(図12)に適用される。S61では、旧版の嗜好データテーブルに対するユーザ嗜好情報を記憶装置58に保存させる。S62では、新版の嗜好データテーブルの項目の内、旧版から改訂のあった項目を探索する。S63では、旧版の嗜好データテーブルの項目と該項目に対するユーザ嗜好情報を受け継ぐ新版の嗜好データテーブルの項目との対応関係に基づき新版の嗜好データテーブルの改定項目のデフォルト値を旧版の嗜好データテーブルの対応項目のユーザ嗜好情報に設定する。S64では、デフォルト値を設定した新版の嗜好データテーブルの情報を含むダウンリンク情報を車載器へ送信する。
【0053】
S61〜S64の処理は、路側装置50(図12)の保存手段51〜ダウンリンク情報送信手段54の機能にそれぞれ対応している。したがって、保存手段51〜ダウンリンク情報送信手段54の機能について述べた具体的態様はS61〜S64の処理についての具体的態様としても適用可能である。
【0054】
本発明を適用したプログラムは、コンピュータを路側装置50の各手段として機能させる。本発明を適用した別のプログラムは、路側装置制御方法60の各ステップをコンピュータに実行させる。
【0055】
本明細書は様々な範囲及びレベルの発明を開示している。それら発明は、本明細書で説明した様々な技術的範囲及び具体的レベルの各装置及び各方法だけでなく、当業者の自明の範囲内で、各装置及び各方法から独立の作用、効果を奏する1つ又は複数の要素を抽出したものや、1つ又は複数の要素を自明の範囲で変更したものや、さらに、各装置間及び各方法間で1つ又は複数の要素の組合せを入れ換えたものを含む。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】タウンカーライフナビマルチコンテンツ形式のデータに基づく路車間DSRCシステムの概略図である。
【図2】タウンカーライフナビマルチコンテンツ形式のデータ伝送態様の説明図である。
【図3】ダウンリンクで使用する各IDに割り当てる分類表である。
【図4】路側装置−ITS車載器間のトランザクションで実施される各機器間の通信及び処理を示す図である。
【図5】ITS車載器から路側装置へ送られるアップリンク情報のデータ概説明略図である。
【図6】路側装置からITS車載器へ送信する嗜好データテーブルの一例を示す図である。
【0057】
【図7】図6の嗜好データテーブルに基づきITS車載器において生成された嗜好データテーブルである。
【図8】新旧のバージョンの嗜好データテーブルを対比して示す図である。
【図9】路側装置が自動車のエリアイン時に自動車の路側装置からアップリンク情報に含めて受信する自動車の立寄り地点情報を路側装置が整理した後の情報を示す図である。
【図10】路側装置が設定している立寄り地点と嗜好データとの関係を示す図である。
【図11】路側装置が新版の嗜好データテーブルにおける改訂項目について特別の情報をITS車載器へ送信した場合にITS車載器で表示される新旧の版の嗜好データテーブルの表示例を示す図である。
【図12】路側装置のブロック図である。
【図13】路側装置制御方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
50:路側装置、51:保存手段、52:改訂項目探索手段、53:デフォルト値設定手段、54:ダウンリンク情報送信手段、58:記憶装置、60:路側装置制御方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、DSRC(Dedicated Short Range Communication:狭域通信)等の路車間通信を利用して嗜好データテーブルに係る情報を送受する路側装置、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1はDSRCを利用する路車間通信システムを開示する(特許文献1の図1)。該路車間通信システムでは、路側機の通信エリア内に進入した自動車の車載器は、路側機から広告情報を電波で受信して、ナビ部のディスプレイに表示するようにしている(特許文献1の段落0024)。また、車載器では、広告情報に含まれる位置情報、URL及び電話番号に基づき自動的に目的地設定、HP接続及びダイヤルが実施されるようになっている(特許文献1の図4のS12,S14,S16)。
【0003】
特許文献2は、車載情報端末装置が情報センタから広告情報と共に、該広告情報に対応付けられた地域情報及び時間帯情報を電波で受信し(特許文献2の図1)、該広告情報(特許文献2の図4)を該地域情報に係る地域及び該時間帯情報に係る時間帯に表示することを開示する(特許文献2の図5のS14〜S16)。
【0004】
特許文献3はDSRCを利用した広告配信ステムを開示する(特許文献3の図1)。該広告配信システムでは、嗜好情報が車載器から路側装置へ通知され(特許文献3の段落0017)、路側装置は該嗜好情報に基づき選別した広告情報を車載器へ送信し、車載器がこれを再生するようになっている(特許文献3の段落0028,0029)。
【特許文献1】特開2001−101578号公報
【特許文献2】特開2004−279509号公報
【特許文献3】特開2005−134707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
データ形式のデータは、基本的には5.8GHz帯DSRC通信における個別通信によるプッシュ型情報配信方式で配信され、ダウンリンク情報には嗜好データテーブルが含められているとともに、アップリンク情報には該嗜好データテーブルに対するユーザの回答結果としてのユーザ嗜好情報が含められている。路側装置は、ユーザ嗜好情報に基づきユーザごとに適切な広告情報を選別し、これを車載器へ送信する。
【0006】
嗜好データテーブルは、サービス事業者の都合により改訂されることがある。嗜好データテーブルにおいて、ユーザが自分の嗜好の有無を入力しなければならない項目は計96個あり、ユーザはそのすべてを一々、入力すると、大変な手間になる。新版の嗜好データテーブルの項目には、改訂のなかった項目も含まれ、それらについては、旧版の嗜好データテーブルのユーザ嗜好情報をそのままデフォルト値を設定して、ユーザの手間を軽減することができるが、改訂項目についてのデフォルト値設定は適切な対策が望まれる。
【0007】
特許文献1〜3は、新版の嗜好データテーブルに対するユーザ入力の手間を改善する技術についてはなんら示唆していない。
【0008】
本発明の目的は、新版の嗜好データテーブルの項目に適切なデフォルト値を付与することができる路側装置、制御方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、旧版の嗜好データテーブルに対するユーザ嗜好情報を記憶装置に保存しておき、新版の嗜好データテーブルの項目と、それがデフォルト値として受け継ぐユーザ嗜好情報をもつ旧版嗜好データテーブルの項目との項目対応関係が登録される。そして、ユーザに新版の嗜好データテーブルの項目にデフォルト値を付けて送る場合には、項目対応関係に基づき旧版嗜好データテーブルの対応項目に対する該ユーザの嗜好情報を求め、該求めた嗜好情報を新版の嗜好データテーブルの該項目のデフォルト値にする。
【0010】
本発明の路側装置は、無線通信エリア内に進入した車載器へ嗜好データテーブルの情報をそのバージョン情報と共に送信するとともに、前記車載器からは該嗜好データテーブルに対するユーザ嗜好情報を含むアップリンク情報を受信するのであって、次のものを備えている。
旧版の嗜好データテーブルに対するユーザ嗜好情報を記憶装置に保存させる保存手段、
新版の嗜好データテーブルの項目の内、旧版から改訂のあった項目を探索する改訂項目探索手段、
旧版の嗜好データテーブルの項目と該項目に対するユーザ嗜好情報を受け継ぐ新版の嗜好データテーブルの項目との対応関係に基づき新版の嗜好データテーブルの改定項目のデフォルト値を旧版の嗜好データテーブルの対応項目のユーザ嗜好情報に設定するデフォルト値設定手段、及び
デフォルト値を設定した新版の嗜好データテーブルの情報を含む送信情報を前記車載器へ送信する送信情報送信手段。
【0011】
本発明の制御方法は、無線通信エリア内に進入した車載器へ嗜好データテーブルの情報をそのバージョン情報と共に送信するとともに、前記車載器からは該嗜好データテーブルに対するユーザ嗜好情報を含むアップリンク情報を受信する路側装置のものであって、次のステップを備えている。
旧版の嗜好データテーブルに対するユーザ嗜好情報を記憶装置に保存させる保存ステップ、
新版の嗜好データテーブルの項目の内、旧版から改訂のあった項目を探索する改訂項目探索ステップ、
旧版の嗜好データテーブルの項目と該項目に対するユーザ嗜好情報を受け継ぐ新版の嗜好データテーブルの項目との対応関係に基づき新版の嗜好データテーブルの改定項目のデフォルト値を旧版の嗜好データテーブルの対応項目のユーザ嗜好情報に設定するデフォルト値設定ステップ、及び
デフォルト値を設定した新版の嗜好データテーブルの情報を含む送信情報を前記車載器へ送信する送信情報送信ステップ。
【0012】
本発明のプログラムは、本発明の前述の路側装置の各手段としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、新旧の嗜好データテーブルの項目対応関係に基づき新版の嗜好データテーブルの改訂項目について適切なデフォルト値を設定して、新版の嗜好データテーブルに対するユーザの入力の手間を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1はタウンカーライフナビマルチコンテンツ形式のデータに基づく路車間DSRCシステム10の概略図である。路側機11は、サーバ12と共に路側装置15を構成し、有線又は無線でサーバ12へ接続されている。サーバ12は、さらに、インタネット等のネットワークを介して別のサーバとデータを送受自在になっている。路側機11は、長さが数m〜30mのエリアに存在する自動車13に搭載されているITS車載器17とは5.8GHz 帯の電波を使ってデータを送受する。路側機11及びサーバ12は路側装置15を構成する。ITS車載器17はDSRC部18及びナビ部19を有している。
【0015】
図2はデータ伝送態様の説明図である。ダウンリンクでは、データをその種類に応じて分類し、分類ごとにIDコード"00","01","02",〜を割り振っている。マルチコンテンツ形式のデータ伝送では、データが情報グループを単位に括られ、各情報グループは先頭にID="00"の分類データをもつ。ID="00"の分類データは、その情報グループに含まれているIDにはどのようなものがあるかの構成情報となっている。
【0016】
図3はダウンリンクで使用する各IDに割り当てる分類表である。ID=00は構成ID情報(データを構成するIDを記述する領域)の分類となっている。ID=01は事業者の分類となっており、サービス事業者コード(サービス事業者を特定できる事業者コード)、サービス事業者表示テキスト(ナビ表示用サービス事業社名(サービス名)テキスト情報)、及びサービス事業者表音文字列(ナビ発話用サービス事業社名(サービス名)表音文字列情報)が含まれる。
【0017】
ID=02はコンテンツの分類となっており、企業コード(コンテンツの情報提供元を特定できるコード)、企業表示テキスト(ナビ表示用情報提供企業名テキスト情報)、企業表音文字列(ナビ発話用情報提供企業名表音文字列情報)、情報コード(コンテンツを特定できる情報コード)、情報表示テキスト(ナビ表示用コンテンツ内容テキスト情報)、情報表音文字列(ナビ発話用コンテンツ内容表音文字列情報)、及び嗜好データカテゴリー(情報が該当する情報カテゴリーを示すカテゴリーコード)が含まれる。
【0018】
ID=03は、ID=02と同様に、コンテンツの分類となっており、即時再生/蓄積コード(受信後のコンテンツ再生動作を表すコード)、及び再生条件コード(情報提供エリアでのコンテンツ再生条件を示すコード)が含まれる。
【0019】
ID=04は、有効期限の分類となっており、開始年月日時分秒(コンテンツの有効期限)、及び終了年月日時分秒(コンテンツの有効期限)が含まれる。ID=05は、提供時間の分類となっており、営業時間(コンテンツ提供元の営業時間)、及び情報提供時間(コンテンツ提供時間)が含まれる。
【0020】
ID=10は、対象地点の分類となっており、対象地点座標(サービス提供可能な地点の緯度経度情報)、対象地点表示用テキスト(サービス名称(店舗名称等))、提携駐車場情報(対象地点以外の提携駐車場情報)、アイコン表示画像データ(サービス提供可能な場所を表すアイコンのデータ)、表示用文字データ(サービスの説明用テキスト情報)、表示画像データ(サービスを表す静止画情報)、表音文字列データ(サービスを表す表音文字列情報)、圧縮音声データ(圧縮音声データ情報)、音声再生順(表音文字列と圧縮音声の再生順序を表す)、ビデオデータ(ビデオデータ情報)、及びURL(サービスを表すURL情報)が含まれる。
【0021】
ID=20は、情報提供地点の分類となっており、計5個の情報提供地点について、情報提供中心座標(ポップアップ情報を再生する緯度経度情報)、情報提供エリア(ポップアップ情報を再生するエリアを定義する中心座標からの半径情報)、情報提供方向コード(ポップアップ情報を再生する情報提供方向情報)、情報提供道路種別(ポップアップ情報を再生する道路種別情報)、表示画像データ(ポップアップ再生する静止画のデータ)、表音文字列データ(ポップアップ再生する表音文字列情報)、圧縮音声データポップアップ再生する圧縮音声のデータ)、及び音声再生順(ポップアップ再生する音声データの再生順番を表すコード)が含まれる。
【0022】
ID=30は、遷移情報の分類となっており、計8個の次再生情報コード( 画面遷移情報)が含まれる。ID=40は、詳細情報の分類となっており、計8個の各詳細情報について、表示用文字データ(ナビ表示用詳細情報テキスト情報)、及び発話用表音文字列(ナビ発話用詳細情報表音文字列情報)が含まれる。
【0023】
ID=50は、駐車場情報の分類となっており、計127個の駐車情報について、駐車場ID(駐車場を特定できるID)、詳細情報(駐車場の動的詳細情報)、特記事項(駐車場の特記事項)、及び特記事項表音文字列(ナビ発話用特記事項表音文字列)が含まれる。ID=60は、運転支援の分類であり、運転支援画像データ(運転支援画像情報)、運転支援表音文字列(データ運転支援表音文字列情報)、運転支援圧縮音声(データ運転支援圧縮音声情報)、及び音声再生順(表音文字列と圧縮音声の再生順序を表す)が含まれる。
【0024】
ID=80は、嗜好データの分類であり、計127個の各嗜好データのテーブルについて、嗜好データバージョン(嗜好データのテーブルのバージョン情報)、嗜好データテーブル( 嗜好データのテーブルの表示用テキスト情報)、表音文字列(嗜好データのテーブルの発話用表音文字列情報)、及び詳細情報(嗜好データのテーブルの詳細情報)が含まれる。
【0025】
図4は路側装置15−ITS車載器17間のトランザクションで実施される各機器間の通信及び処理を示している。路側機11及びサーバ12は路側装置15を構成する。ITS車載器17はDSRC部18及びナビ部19を有している。時間順に説明する。なお、路側機11−DSRC部18間の通信はDSRCの電波で行われ、路側機11−サーバ12間及びDSRC部18−ナビ部19間の通信は通常、無線又は有線で行われる。
【0026】
図5はITS車載器17から路側装置15へ送られるアップリンク情報のデータ概説明略図である。アップリンク情報は、複数のタグで送られる。タグ1には、サービス事業者コード、目的地(緯度経度)、経由地(緯度経度)1〜5、累計走行距離、嗜好ジャンルデータバージョン、嗜好ジャンルデータ、会員情報1〜8が含められる。タグ2には、サービス事業者コード、過去立寄り地(緯度経度)1〜41が含められる。タグ3には、サービス事業者コード、過去立寄り地(緯度経度)42〜82が含められる。
【0027】
タグ4には、サービス事業者コード、受信/再生履歴(受信情報コード及び再生識別フラグ)1〜123が含められる。タグ5には、サービス事業者コード、受信/再生履歴(受信情報コード及び再生識別フラグ)124〜246が含められる。
【0028】
ITS車載器17において電源が投入されるのに伴い、S10では、ナビ部19からDSRC部18へクライアントインフォメーションデータが書き込まれる。ITS車載器17を搭載する自動車13が路側機11との通信可能な距離(例:約30m)の電波到達エリアに進入するのに伴い、S11では、路側機11−DSRC部18間でDSRC接続処理が実施される。
【0029】
S11のDSRC接続処理が終了すると、S12,S13でDSRC接続通知が行われる。S12の接続通知は路側機11からサーバ12へのものであり、S13の接続通知はDSRC部18からナビ部19へのものである。S14では、クライアントインフォメーションがDSRC部18から路側機11を経てサーバ12へ通知される。
【0030】
サーバ12は、DSRC部18の一意に付番された車載器IDを読み取りITS車載器17のユーザが会員か非会員かを判別したり、通信確立後にDSRC部18から通知されるクライアントインフォメーションに基づき、ITS車載器17でコンテンツを適正に再生するためのITS車載器17のハードウェア情報を知得する。S18では、サーバ12から路側機11及びDSRC部18を経てナビ部19へWelcome画面等のコンテンツを送信する。該コンテンツはマルチコンテンツフォーマットで編成されている。ナビ部19は、マルチコンテンツフォーマットからサービス事業者を判断する。
【0031】
サーバ12は、S18後、ナビ部19がアップリンク情報をDSRC部18に書き込むまで、S19でDSRC部18に対して定期的にポーリングを行う。S20では、ナビ部19は、ITS車載器17のユーザが該サービス事業者の会員と判断すると、アップリンク情報をDSRC部18に書き込むのに対し、会員でなければ、何もしない。
【0032】
S24では、サーバ12は、路側機11及びDSRC部18を経由してデフォルトのコンテンツ(例:公共サービス情報等)をナビ部19へ送る。S29では、サーバ12は、DSRC部18に対してメモリアクセスポーリングを実施する。これに対して、S30では、DSRC部18は、ユーザが会員であれば、アップリンク情報をサーバ12へ通知する。
【0033】
S33では、サーバ12は、アップリンク情報から取得した会員情報に基づき会員趣向に適した蓄積型コンテンツをマルチコンテンツフォーマット(図2)で編成してITS車載器17へ配信する。S34では、蓄積型コンテンツの配信終了を通知する。ITS車載器17を搭載する自動車13は、配信終了に伴い路側機11との通信エリアから退出する。
【0034】
図6は路側装置15からITS車載器17へ送信する嗜好データテーブルの一例を示す。嗜好データテーブルは図4のS18で路側装置15からITS車載器17へ送信される。嗜好データテーブルの項目はデータ番号=0〜127の計128個存在し、各データ番号に対応付けて表示用テキスト、表示用ネスト、対象識別子、デフォルト値等が存在する。表示用ネスト=0はトップの階層を意味し、数値の増大に連れて下の階層となる。対象識別子とは、各データ番号の項目がユーザによる嗜好の有無登録の対象になっているか否かを示すフラグであり、後述の図7から分かるように、対象識別子=1,0は該項目がそれぞれユーザによる嗜好の有無登録の対象及び非対象となっていることを意味する。デフォルト値=0,1はそれぞれユーザが項目について嗜好無し及び嗜好有りを意味している。図6では、対象識別子=1の"洋画"及び"邦画"のデフォルト値は0となっている。
【0035】
図7は図6の嗜好データテーブルに基づきITS車載器17において生成された嗜好データテーブルである。図6との対比から分かるように、表示用ネストの値が大きくなるほど、小分類となる。また、対象識別子=1となっていた表示テキストのみが嗜好データとしてユーザによる嗜好の有無登録の対象になる。図6では、"洋画"及び"邦画"共にデフォルト値=0となっているので、最初の嗜好データでは、"洋画"及び"邦画"共に0(該0は実際の画面例では四角の欄にチェック無しで表示される。)になっている。それに対して、図7では、ユーザが"洋画"について嗜好有りのチェックを付け、嗜好データ=1とされている。なお、図7では、ユーザは、一番下の階層の項目についてのみ、嗜好の有無を登録するようになっているが、対象識別子=1をそれより上の階層の項目に付ければ、大分類、中分類の項目についても嗜好の有無を登録することができるようになっている。
【0036】
図8は新旧のバージョンの嗜好データテーブルを対比して示す図である。(a)の嗜好データテーブルは旧版であり、(b)の嗜好データテーブルは新版である。旧版の"道北"、"道南"、"西欧"及び"東欧"が新版ではそれぞれ"稚内"、"函館"、"西ヨーロッパ"及び"東ヨーロッパ"に改訂されている。また、路側装置15は、旧版の嗜好データテーブルに対して、ユーザごとに該ユーザが入力して前回のエリアイン時に受信したアップリンク情報を記憶装置に記憶している。すなわち、図8(a)の旧版の"道北"、"道南"、"西欧"及び"東欧"には、いずれもチェックが付けられているが、路側装置15はこのユーザ嗜好情報を記憶装置に記憶している。
【0037】
路側装置15のサービス事業者は、配信する嗜好データテーブルのバージョンを変更する場合、新旧の両版とも自分か作成したものであるから、新版の嗜好データテーブルにおける改訂項目が旧版の嗜好データテーブルにおけるどの項目に同一又は類似するものであって、旧版のユーザ嗜好情報を新版へ引継ぎ可能となっているかを判断できる。なお、「類似」には、実質的な内容が同一であっても、半角と全角のテキストが違っている場合、漢字と平仮名との表記が違っている場合を含み、「同一」とはテキストの完全同一とする。
【0038】
路側装置15は、旧版の嗜好データテーブルの項目のユーザ嗜好情報を受け継がせる新版の嗜好データテーブルの項目があった場合の対応表を備える。該対応表における新旧の版の嗜好データテーブルの項目対応関係は、新旧の版の嗜好データテーブルの項目の内容が同一又は類似の関係にあるものである。該対応表は通常、全部のユーザに共通とされる。具体的には、新版の嗜好データテーブルの各改訂項目の項目番号に対し、該改訂項目に対応する旧版の嗜好データテーブルの項目の項目番号を対応付ける。図8の例では、対応表は、旧版の嗜好データテーブルの項目番号"32","33","52","53"が新版の嗜好データテーブルの項目番号"32","33","52","53"に対応付けられる。この例では、新旧の嗜好データテーブルの対応番号同士の数値が同一であるが、相違していてもかまわないし、一般には相違している。
【0039】
路側装置15は、アップリンク情報に含まれるユーザIDに基づきその送信元のITS車載器17のユーザを識別し、該ユーザの旧版の嗜好データテーブルのユーザ嗜好情報を検索してから、該ユーザについて、対応表に基づき新版の各項目番号のデフォルト値を、旧版の嗜好データテーブルの対応項目番号の嗜好データとする。図8の例では、旧版バージョンの項目"道北"、"道南"、"西欧"及び"東欧"の嗜好データはそれぞれ"1","1","1","1"であるので、路側装置15は、新版の"稚内"、"函館"、"西ヨーロッパ"及び"東ヨーロッパ"のデフォルト値をそれぞれ"1","1","1","1"に設定する。
【0040】
図9は路側装置15が自動車13のエリアイン時に自動車13の路側装置15からアップリンク情報に含めて受信する自動車13の立寄り地点情報を路側装置15が整理した後の情報を示す。図9において、"オートフロンツ"、"OK堂"及び"丸八屋"はそれぞれカー用品販売、レンタルビデオ及び釣具業の業者名を仮定している。この自動車13は、各業者の店へ図9に示す回数、立寄っている。路側装置15は、各立寄り地点について最後に立寄った時間の情報は入手しなくてもよい。
【0041】
路側装置15は、実際には、これら立寄り地の具体的名前をアップリンク情報から知るのではなく、アップリンク情報の立寄り地情報は例えば緯度経度で取得する。したがって、路側装置15は、これら緯度経度を地図データと照合して、立寄り地の具体的な店名を知ることになる。
【0042】
図10は路側装置15が、設定している立寄り地点と嗜好データとの関係を示している。路側装置15は、図9のデータから所定回数、例えば3回以上の立寄り実績のある業者を選別する。図9の場合、"オートフロンツ"と"丸八屋"が選別される。なお、路側装置15は、ITS車載器17から入手した立寄り地の緯度経度を自分の地図データと照合して、該緯度経度の地点がオートフロンツ"であるかとか"丸八屋"であるとかを把握する。そして、路側装置15のサービス事業者は、選別した各業者に関係して自分の今回の新版の嗜好データテーブルの表示用テキストとして使っている語句を嗜好データとして選出する。
【0043】
路側装置15は、図9の情報元のユーザの新版嗜好データテーブルのデフォルト値設定では、新版の嗜好データテーブルにおいて図10の選出語句と同一となっている表示用テキストの項目のデフォルト値を"1"、すなわち、嗜好有りとする。こうして、デフォルト値を付けた嗜好データテーブルの情報がバージョン情報と共に情報元のユーザのITS車載器17へ送信される。ITS車載器17では、該嗜好データテーブルがナビ部19の画面に表示されて、ユーザは、変更の必要のない項目については入力無しで済ませつつ、変更の必要な項目のみについて、チェックを付けたり(嗜好有りとしたり)、チェックを外したり(嗜好無しとしたり)する。
【0044】
図11は路側装置15が新版の嗜好データテーブルにおける改訂項目について特別の情報をITS車載器17へ送信した場合にITS車載器17で表示される新旧の版の嗜好データテーブルの表示例を示している。図(a)の嗜好データテーブルは旧版であり、(b)の嗜好データテーブルは新版である。図8に関連して説明したように、路側装置15は、旧版の嗜好データテーブルの項目のユーザ嗜好情報をデフォルト値として受け継ぐ新版の嗜好データテーブルの項目について旧版及び新版の項目対応表を装備している。図11の例では、該対応表には、新版の"札幌・室蘭"の項目番号52は旧版の"道央"の項目番号52に対応付けられ、新版の"イギリス"及び"フランス"の項目番号62,63は旧版の"西欧"の項目番号62に対応付けられていると仮定する。
【0045】
路側装置15は、該対応表に基づき新版の嗜好データテーブルの所定項目に旧版の嗜好データテーブルの対応項目の嗜好データの値を付けるとともに、新版の嗜好データテーブルにおける改訂項目がどれかがITS車載器17のユーザに分からせるようにするための情報を該新版の嗜好データテーブルの情報と共に送信する。具体例としては、嗜好データテーブルの表示用テキスト(図6参照)に特定のテキスト(例:※)を特定の場所(例:先頭)に挿入する(例:※イギリス)。なお、嗜好データテーブルの表示用テキストは、嗜好データテーブルの各項目に対して1:1に対応している。図8の例では、新版の嗜好データテーブルの項目番号52,62,63に改訂項目である旨の情報を嗜好データテーブルの情報に付加して、路側装置15からITS車載器17へ送られる。
【0046】
これに対して、ITS車載器17は、該特定のテキストが特定の場所に存在する項目については、該特定のテキストを削除して、残りのテキストだけをナビ部19の画面に表示するとともに、該特定のテキストが挿入されていた項目のテキストを色付きや斜体等でナビ部19の画面に表示する。この結果、ユーザは新版の嗜好データテーブルの改定項目を一目で理解し、そのデフォルト値を重点的に調べて、嗜好データの維持、又は変更を行うことになる。
【0047】
図12は路側装置50のブロック図である。路側装置50は、無線通信エリア内に進入した車載器へ嗜好データテーブルの情報をそのバージョン情報と共に送信するとともに、車載器からは該嗜好データテーブルに対するユーザ嗜好情報を含むアップリンク情報を受信する。路側装置50は、車載器とDSRCでデータを送受するものに限定されない。路側装置50は、保存手段51、改訂項目探索手段52、デフォルト値設定手段53及びダウンリンク情報送信手段54を備えている。
【0048】
保存手段51は、旧版の嗜好データテーブルに対するユーザ嗜好情報を記憶装置58に保存させる。改訂項目探索手段52は、新版の嗜好データテーブルの項目の内、旧版から改訂のあった項目を探索する。デフォルト値設定手段53は、旧版の嗜好データテーブルの項目と該項目に対するユーザ嗜好情報を受け継ぐ新版の嗜好データテーブルの項目との対応関係に基づき新版の嗜好データテーブルの改定項目のデフォルト値を、旧版の嗜好データテーブルの対応項目に対する今回の新版送信先ユーザの嗜好情報に設定する。ダウンリンク情報送信手段54は、デフォルト値を設定した新版の嗜好データテーブルの情報を含むダウンリンク情報を車載器へ送信する。
【0049】
嗜好データテーブルは、通常、サービス事業者が作成するので、旧版の嗜好データテーブルの項目と該項目に対するユーザ嗜好情報を受け継ぐ新版の嗜好データテーブルの項目との対応関係は該サービス事業者により支障なく作成される。旧版の嗜好データテーブルの項目と該項目に対するユーザ嗜好情報を受け継ぐ新版の嗜好データテーブルの項目との対応関係は、全ユーザに共通にしてもよいが、性別、年齢別、所得層別等、ユーザごとにきめ細かく用意することもできる。路側装置50は、新版の嗜好データテーブルの送信先のユーザが誰であるかは、それに先立ち受信したユーザIDにより把握することができる。ユーザは、旧版で入力した自分の嗜好情報に沿ったデフォルト値を設定された嗜好データテーブルを路側装置50から受けることができ、新版の嗜好データテーブルに対する入力の手間を軽減される。
【0050】
好ましくは、デフォルト値設定手段53は、対応関係からデフォルト値を設定できなかった改訂項目については、アップリンク情報に基づきデフォルト値を設定する。デフォルト値は、例えばアップリンク情報に含まれる立寄り地情報、目的地や経由地の情報に基づきが設定される。この具体例は、図9及び図10に関連して説明した実施例である。
【0051】
典型的には、ダウンリンク情報送信手段54は、どれが改訂項目であるかを示す情報を新版の嗜好データテーブルの情報とともにダウンリンク情報に含めて送信する。どれが改訂項目であるかを示す情報は、タウンカーライフナビマルチコンテンツのフォーマットでは、例えば嗜好データテーブルの表示用テキストに挿入する。車載器は、該情報を識別して、改訂項目のテキストを色付きや斜体等、改訂のあったことをユーザに容易に分からせる態様で表示することができる。
【0052】
図13は路側装置制御方法60のフローチャートである。路側装置制御方法60は路側装置50(図12)に適用される。S61では、旧版の嗜好データテーブルに対するユーザ嗜好情報を記憶装置58に保存させる。S62では、新版の嗜好データテーブルの項目の内、旧版から改訂のあった項目を探索する。S63では、旧版の嗜好データテーブルの項目と該項目に対するユーザ嗜好情報を受け継ぐ新版の嗜好データテーブルの項目との対応関係に基づき新版の嗜好データテーブルの改定項目のデフォルト値を旧版の嗜好データテーブルの対応項目のユーザ嗜好情報に設定する。S64では、デフォルト値を設定した新版の嗜好データテーブルの情報を含むダウンリンク情報を車載器へ送信する。
【0053】
S61〜S64の処理は、路側装置50(図12)の保存手段51〜ダウンリンク情報送信手段54の機能にそれぞれ対応している。したがって、保存手段51〜ダウンリンク情報送信手段54の機能について述べた具体的態様はS61〜S64の処理についての具体的態様としても適用可能である。
【0054】
本発明を適用したプログラムは、コンピュータを路側装置50の各手段として機能させる。本発明を適用した別のプログラムは、路側装置制御方法60の各ステップをコンピュータに実行させる。
【0055】
本明細書は様々な範囲及びレベルの発明を開示している。それら発明は、本明細書で説明した様々な技術的範囲及び具体的レベルの各装置及び各方法だけでなく、当業者の自明の範囲内で、各装置及び各方法から独立の作用、効果を奏する1つ又は複数の要素を抽出したものや、1つ又は複数の要素を自明の範囲で変更したものや、さらに、各装置間及び各方法間で1つ又は複数の要素の組合せを入れ換えたものを含む。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】タウンカーライフナビマルチコンテンツ形式のデータに基づく路車間DSRCシステムの概略図である。
【図2】タウンカーライフナビマルチコンテンツ形式のデータ伝送態様の説明図である。
【図3】ダウンリンクで使用する各IDに割り当てる分類表である。
【図4】路側装置−ITS車載器間のトランザクションで実施される各機器間の通信及び処理を示す図である。
【図5】ITS車載器から路側装置へ送られるアップリンク情報のデータ概説明略図である。
【図6】路側装置からITS車載器へ送信する嗜好データテーブルの一例を示す図である。
【0057】
【図7】図6の嗜好データテーブルに基づきITS車載器において生成された嗜好データテーブルである。
【図8】新旧のバージョンの嗜好データテーブルを対比して示す図である。
【図9】路側装置が自動車のエリアイン時に自動車の路側装置からアップリンク情報に含めて受信する自動車の立寄り地点情報を路側装置が整理した後の情報を示す図である。
【図10】路側装置が設定している立寄り地点と嗜好データとの関係を示す図である。
【図11】路側装置が新版の嗜好データテーブルにおける改訂項目について特別の情報をITS車載器へ送信した場合にITS車載器で表示される新旧の版の嗜好データテーブルの表示例を示す図である。
【図12】路側装置のブロック図である。
【図13】路側装置制御方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
50:路側装置、51:保存手段、52:改訂項目探索手段、53:デフォルト値設定手段、54:ダウンリンク情報送信手段、58:記憶装置、60:路側装置制御方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信エリア内に進入した車載器へ嗜好データテーブルの情報をそのバージョン情報と共に送信するとともに、前記車載器からは該嗜好データテーブルに対するユーザ嗜好情報を含むアップリンク情報を受信する路側装置において、
旧版の嗜好データテーブルに対するユーザ嗜好情報を記憶装置に保存させる保存手段、
新版の嗜好データテーブルの項目の内、旧版から改訂のあった項目を探索する改訂項目探索手段、
旧版の嗜好データテーブルの項目と該項目に対するユーザ嗜好情報を受け継ぐ新版の嗜好データテーブルの項目との対応関係に基づき新版の嗜好データテーブルの改定項目のデフォルト値を旧版の嗜好データテーブルの対応項目のユーザ嗜好情報に設定するデフォルト値設定手段、及び
デフォルト値を設定した新版の嗜好データテーブルの情報を含む送信情報を前記車載器へ送信する送信情報送信手段、
を備えることを特徴とする路側装置。
【請求項2】
前記デフォルト値設定手段は、前記対応関係からデフォルト値を設定できなかった改訂項目については、アップリンク情報に基づきデフォルト値を設定することを特徴とする請求項1記載の路側装置。
【請求項3】
前記送信手段は、どれが改訂項目であるかを示す情報を新版の嗜好データテーブルの情報とともに送信情報に含めて送信することを特徴とする請求項1又は2記載の路側装置。
【請求項4】
無線通信エリア内に進入した車載器へ嗜好データテーブルの情報をそのバージョン情報と共に送信するとともに、前記車載器からは該嗜好データテーブルに対するユーザ嗜好情報を含むアップリンク情報を受信する路側装置の制御方法であって、
旧版の嗜好データテーブルに対するユーザ嗜好情報を記憶装置に保存させる保存ステップ、
新版の嗜好データテーブルの項目の内、旧版から改訂のあった項目を探索する改訂項目探索ステップ、
旧版の嗜好データテーブルの項目と該項目に対するユーザ嗜好情報を受け継ぐ新版の嗜好データテーブルの項目との対応関係に基づき新版の嗜好データテーブルの改定項目のデフォルト値を旧版の嗜好データテーブルの対応項目のユーザ嗜好情報に設定するデフォルト値設定ステップ、及び
デフォルト値を設定した新版の嗜好データテーブルの情報を含む送信情報を前記車載器へ送信する送信情報送信ステップ、
を備えることを特徴とする制御方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の路側装置の各手段としてコンピュータを機能させるプログラム。
【請求項1】
無線通信エリア内に進入した車載器へ嗜好データテーブルの情報をそのバージョン情報と共に送信するとともに、前記車載器からは該嗜好データテーブルに対するユーザ嗜好情報を含むアップリンク情報を受信する路側装置において、
旧版の嗜好データテーブルに対するユーザ嗜好情報を記憶装置に保存させる保存手段、
新版の嗜好データテーブルの項目の内、旧版から改訂のあった項目を探索する改訂項目探索手段、
旧版の嗜好データテーブルの項目と該項目に対するユーザ嗜好情報を受け継ぐ新版の嗜好データテーブルの項目との対応関係に基づき新版の嗜好データテーブルの改定項目のデフォルト値を旧版の嗜好データテーブルの対応項目のユーザ嗜好情報に設定するデフォルト値設定手段、及び
デフォルト値を設定した新版の嗜好データテーブルの情報を含む送信情報を前記車載器へ送信する送信情報送信手段、
を備えることを特徴とする路側装置。
【請求項2】
前記デフォルト値設定手段は、前記対応関係からデフォルト値を設定できなかった改訂項目については、アップリンク情報に基づきデフォルト値を設定することを特徴とする請求項1記載の路側装置。
【請求項3】
前記送信手段は、どれが改訂項目であるかを示す情報を新版の嗜好データテーブルの情報とともに送信情報に含めて送信することを特徴とする請求項1又は2記載の路側装置。
【請求項4】
無線通信エリア内に進入した車載器へ嗜好データテーブルの情報をそのバージョン情報と共に送信するとともに、前記車載器からは該嗜好データテーブルに対するユーザ嗜好情報を含むアップリンク情報を受信する路側装置の制御方法であって、
旧版の嗜好データテーブルに対するユーザ嗜好情報を記憶装置に保存させる保存ステップ、
新版の嗜好データテーブルの項目の内、旧版から改訂のあった項目を探索する改訂項目探索ステップ、
旧版の嗜好データテーブルの項目と該項目に対するユーザ嗜好情報を受け継ぐ新版の嗜好データテーブルの項目との対応関係に基づき新版の嗜好データテーブルの改定項目のデフォルト値を旧版の嗜好データテーブルの対応項目のユーザ嗜好情報に設定するデフォルト値設定ステップ、及び
デフォルト値を設定した新版の嗜好データテーブルの情報を含む送信情報を前記車載器へ送信する送信情報送信ステップ、
を備えることを特徴とする制御方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の路側装置の各手段としてコンピュータを機能させるプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−199371(P2009−199371A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40734(P2008−40734)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]