説明

車両におけるボンネット支持装置

【課題】 ボンネット後部の不用意な持ち上がりを有効に防止した車両におけるボンネット支持装置を提供する。
【解決手段】 ボンネット支持機構14は、互いに枢支連結される長尺リンク部材20と短尺リンク部材18とを備える。長尺リンク部材20および短尺リンク部材18は可撓性を有し、互いの第2枢支連結部分Bよりも上方位置で、長尺リンク部材20および短尺リンク部材18の他端部がそれぞれ車体側に連結支持される。長尺リンク部材20の第3枢支連結部分Cの回動中心23aが、第2枢支連結部分Bの回動中心19aと第1枢支連結部分Aの回動中心17aとを結ぶ線上よりも外側方に偏倚して配置される。長尺リンク部材20にボンネット12の車両後方側が枢支連結される。エアバッグの展開力で第2枢支連結部分Bが、第1枢支連結部分Aで、かつ内側方に回動されてボンネット12の後部が持ち上げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者に対する衝撃緩和を図るための歩行者用エアバッグ装置が搭載された車両におけるボンネット支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走行中の車両が歩行者等に衝突した場合、その歩行者等は衝突時の衝撃により跳ね上げられ、車両前部のボンネットやフロントガラスやフロントピラー等に2次衝突するおそれがある。
【0003】
そこで、このような2次衝突による衝撃を吸収して緩和するため、いわゆる歩行者用エアバッグ装置が提案されている。
【0004】
例えば、フロントウィンドウ部の下方で僅かに前方に位置する車体シャーシ側に、エアバッグ装置を配置し、歩行者に衝突した際には、エアバッグの展開力によりボンネットの後部が上方に持ち上げられて、ボンネットの後部とフロントウィンドウ部との相互間の隙間部からフロントガラスやフロントピラーの前方に展開して、歩行者の2次衝突による衝撃を吸収して緩和する構造のものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−264146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に開示の装置によれば、ボンネットの後部は車体側にリンク機構を介して上下動可能に連結され、リンク機構におけるボンネット側の回動軸とリンク機構における車体側の回動軸との互いに対向する対向面部分に、互いに係合する凹部と凸部とが備えられた構造とされている。
【0007】
そして、通常走行時においては、凹部と凸部との係合によりボンネットの後部は上方に持ち上がらないように構成されている。そして、衝突時等における歩行者用エアバッグの展開時に、エアバッグの展開力により所定値以上の荷重が作用して凹部と凸部との係合が解除され、リンク機構の作動下、ボンネットの後部が持ち上げられてフロントウィンドウ部の前方にエアバッグが展開される構造とされている。
【0008】
しかしながら、ボンネット後部の下降位置で保持する機構が、両回動軸の対向面部分に備えられた凹部と凸部との係合によるものであるため、対向面に沿った面方向のあらゆる方向に係合が解除可能な構造となっているため、例えば、ボンネットの後部上に腰を乗せる等の車両外部からの予期しない負荷により不用意に凹部と凸部との係合が解除され、通常の走行時等においてボンネットの後部が不用意に持ち上がるおそれや、衝突時等においてエアバッグの展開力で円滑にボンネットの後部を持ち上げることができない事態を招くおそれがあった。
【0009】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、ボンネット後部の不用意な持ち上がりを有効に防止した車両におけるボンネット支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための技術的手段は、ボンネットの車両後方側を車体側に連結すると共に上下動可能に支持するボンネット支持機構を備え、エアバッグの展開力でボンネット支持機構が作動されボンネットの後部が持ち上げられて生じる隙間部から、フロントウィンドウ部の前方にエアバッグを展開可能とする車両におけるボンネット支持装置において、前記ボンネット支持機構は、互いに枢支連結される第1リンク部材と第2リンク部材とを備えると共に、第1リンク部材もしくは第2リンク部材の少なくともいずれか一方が可撓性を有し、第1リンク部材もしくは第2リンク部材のいずれか一方に前記ボンネットの車両後方側が枢支連結され、第1リンク部材は前記互いの枢支連結部分から第1の距離離れた位置で前記車体側に連結支持されると共に、第2リンク部材は前記互いの枢支連結部分から前記第1の距離よりも短い第2の距離離れた位置で車体側に連結支持され、前記第1リンク部材における車体側の連結支持部分が、前記互いの枢支連結部分と前記第2リンク部材における車体側の連結支持部分とを結ぶ線上よりも一側方に偏倚して配置され、前記エアバッグの展開力で前記互いの枢支連結部分が、前記車体側の連結支持部分回りで、かつ前記一側方と反対側に回動されて前記ボンネットの後部が持ち上げられる点にある。
【0011】
また、前記第1リンク部材もしくは前記第2リンク部材のいずれかで前記ボンネットの車両後方側に枢支連結された方の前記車体側の連結支持部分が上方に開放可能に連結支持されると共に、前記互いの枢支連結部分が、前記車体側の連結支持部分回りで、かつ前記一側方への回動を規制するストッパ部が備えられている構造としてもよい。
【0012】
さらに、前記第1リンク部材もしくは前記第2リンク部材のいずれか一方に、前記互いの枢支連結部分を前記一側方と反対側に回動させるための前記エアバッグの展開力を受承する展開力受け面が備えられている構造としてもよい。
【0013】
また、前記ボンネット支持機構は、前記エアバッグと該エアバッグにガスを供給するインフレータとを備えたモジュール構造とされている構造としてもよい。
【0014】
さらに、ボンネットの車両後方側を車体側に連結すると共に上下動可能に支持するボンネット支持機構を備え、エアバッグの展開力でボンネット支持機構が作動されボンネットの後部が持ち上げられて生じる隙間部から、フロントウィンドウ部の前方にエアバッグを展開可能とする車両におけるボンネット支持装置において、前記ボンネット支持機構は、互いに枢支連結される第1リンク部材と第2リンク部材とを備えると共に、前記車体側に固定される可撓性を有する取付ブラケットを備え、第1リンク部材もしくは第2リンク部材のいずれか一方に前記ボンネットの車両後方側が枢支連結され、第1リンク部材は前記互いの枢支連結部分から第1の距離離れた位置で前記取付ブラケット側に枢支連結されると共に、第2リンク部材は前記互いの枢支連結部分から前記第1の距離よりも短い第2の距離離れた位置で取付ブラケット側に枢支連結され、前記第1リンク部材における取付ブラケット側の枢支連結部分が、前記互いの枢支連結部分と前記第2リンク部材における取付ブラケット側の枢支連結部分とを結ぶ線上よりも一側方に偏倚して配置され、前記エアバッグの展開力で前記互いの枢支連結部分が、前記取付ブラケット側の枢支連結部分回りで、かつ前記一方側と反対側に回動されて前記ボンネットの後部が持ち上げられる構造としてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両におけるボンネット支持装置によれば、ボンネット支持機構は、互いに枢支連結される第1リンク部材と第2リンク部材とを備えると共に、第1リンク部材もしくは第2リンク部材の少なくともいずれか一方が可撓性を有し、第1リンク部材もしくは第2リンク部材のいずれか一方に前記ボンネットの車両後方側が枢支連結され、第1リンク部材は前記互いの枢支連結部分から第1の距離離れた位置で車体側に連結支持されると共に、第2リンク部材は前記互いの枢支連結部分から前記第1の距離よりも短い第2の距離離れた位置で車体側に連結支持され、第1リンク部材における車体側の連結支持部分が、前記互いの枢支連結部分と第2リンク部材における車体側の連結支持部分とを結ぶ線上よりも一側方に偏倚して配置され、エアバッグの展開力で前記互いの枢支連結部分が、車体側の連結支持部分回りで、かつ前記一側方と反対側に回動されてボンネットの後部が持ち上げられる構造とされており、第1リンク部材もしくは第2リンク部材の撓み変形下に、互いの枢支連結部分が前記一側方と反対側に回動されることによりボンネットの後部が持ち上げられる方式であり、ボンネット支持機構におけるボンネット後部の下降位置の保持状態を解除させる際の作用力の方向が制限されているため、従来のようにボンネットの後部上に腰を乗せる等の車両外部からの予期しない負荷が作用した場合であっても、ボンネット後部の下降位置保持状態が何ら解除されず、エアバッグの未展開時におけるボンネット後部の不用意な持ち上がりを有効に防止でき、衝突時等における必要時に円滑に作動させることができる。
【0016】
また、第1リンク部材もしくは第2リンク部材のいずれかでボンネットの車両後方側に枢支連結された方の車体側の連結支持部分が上方に開放可能に連結支持されると共に、前記互いの枢支連結部分が、車体側の連結支持部分回りで、かつ前記一側方への回動を規制するストッパ部が備えられている構造とすれば、ボンネット後部の持ち上げ量を大きく取ることができる。
【0017】
さらに、第1リンク部材もしくは第2リンク部材のいずれか一方に、前記互いの枢支連結部分を前記一側方と反対側に回動させるためのエアバッグの展開力を受承する展開力受け面が備えられている構造とすれば、効率よくボンネット後部を持ち上げることができる。
【0018】
また、ボンネット支持機構は、エアバッグとエアバッグにガスを供給するインフレータとを備えたモジュール構造とすれば、車種の異なる車両であってもモジュール化されたボンネット支持機構を取付けるスペースがあれば、容易にそれらの車両に組み付けることができることができる。
【0019】
さらに、ボンネット支持機構は、互いに枢支連結される第1リンク部材と第2リンク部材とを備えると共に、車体側に固定される可撓性を有する取付ブラケットを備え、第1リンク部材もしくは第2リンク部材のいずれか一方に前記ボンネットの車両後方側が枢支連結され、第1リンク部材は前記互いの枢支連結部分から第1の距離離れた位置で取付ブラケット側に枢支連結されると共に、第2リンク部材は前記互いの枢支連結部分から前記第1の距離よりも短い第2の距離離れた位置で取付ブラケット側に枢支連結され、第1リンク部材における取付ブラケット側の枢支連結部分が、前記互いの枢支連結部分と第2リンク部材における取付ブラケット側の枢支連結部分とを結ぶ線上よりも一側方に偏倚して配置され、エアバッグの展開力で前記互いの枢支連結部分が、取付ブラケット側の枢支連結部分回りで、かつ前記一方側と反対側に回動されてボンネットの後部が持ち上げられる構造とすれば、取付ブラケットの撓み変形下に、互いの枢支連結部分が前記一側方と反対側に回動されることによりボンネットの後部が持ち上げられる方式であり、ボンネット支持機構におけるボンネット後部の下降位置の保持状態を解除させる際の作用力の方向が制限されているため、従来のようにボンネットの後部上に腰を乗せる等の車両外部からの予期しない負荷が作用した場合であっても、ボンネット後部の下降位置保持状態が何ら解除されず、エアバッグの未展開時におけるボンネット後部の不用意な持ち上がりを有効に防止でき、衝突時等における必要時に円滑に作動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の第1の実施形態を図面に基づいて説明すると、図1ないし図7に示される如く、車両11におけるボンネット12の後部内方部分に対応した位置に、歩行者用エアバッグ装置13が装着された構造とされている。なお、図7に示されるように、本実施形態においては、エアバッグ装置13は、フロントウィンドウ部15における両側部のフロントピラー15a前方とその近傍のフロントガラス15b前方を、それぞれ別体構造で覆うピラー用のエアバッグ装置13とされている。
【0021】
前記ボンネット12は、その車両後方側の左右両側部でそれぞれボンネット支持機構14を介して上下に移動可能に構成されており、通常は、ボンネット12の前部側を上下に開閉操作可能とすべく、ボンネット12の後部が閉じた下降位置で横軸回りに回動自在に支持されている。なお、図2ないし図5は、ボンネット12の後部下部の右側に配置されたボンネット支持機構14を示しており、左側に配置されたボンネット支持機構14は、右側のボンネット支持機構14と対称な構造とされている。
【0022】
そして、前記各ボンネット支持機構14は、車両11の車体側に取付け固定される車体取付ブラケット16と、該車体取付ブラケット16の下方延設状に備えられた支持片部16aに、一端部が支軸17を介して前後方向の軸心回りに回動自在に枢支連結された第2リンク部材としての短尺リンク部材18と、該短尺リンク部材18の他端部に、一端部が支軸19を介して前後方向の軸心回りに回動自在に枢支連結された第1リンク部材としての長尺リンク部材20と、該長尺リンク部材20の他端部に支軸21を介して左右方向の軸心回りに回動自在に枢支連結されたボンネット取付ブラケット22とを備えている。
【0023】
また、これら短尺リンク部材18や長尺リンク部材20は撓み変形可能な可撓性を有する鋼板等からなり、図2や図3に示されるように、適宜形状に折曲形成された構造とされている。
【0024】
そして、車体取付ブラケット16が車体側、例えば車体フレームに取付け固定され、ボンネット取付ブラケット22がボンネット12の下面側に取付け固定されている。この際、短尺リンク部材18における車体側の連結支持部分となる枢支連結された支軸17による第1枢支連結部分Aよりも下方位置に、短尺リンク部材18と長尺リンク部材20との互いの枢支連結部分としての支軸19による第2枢支連結部分Bが配置された構造とされ、長尺リンク部材20の他端部は短尺リンク部材18よりも上方に延設されて、車体取付ブラケット16の上方位置でボンネット12を支軸21回りに回動自在に支持する構造とされている。
【0025】
また、長尺リンク部材20の高さ方向中間部には、前後方向の軸心を有する枢支軸部23が切り起こし構造や溶接等により一体的に備えられており、車体取付ブラケット16の上面側に一体もしくは別体により備えられた上方開放状の軸受部16bに相対回動自在に嵌合された状態で支持されている。
【0026】
この際、長尺リンク部材20における車体側の連結支持部分としての軸受部16bに枢支軸部23が嵌合支持された第3枢支連結部分Cは、その回動中心23aが、前記第2枢支連結部分Bの回動中心19aと前記第1枢支連結部分Aの回動中心17aとを結ぶ線上よりも一側方、即ち本実施形態では、外側方に偏倚して配置された構造とされている。そして、短尺リンク部材18における第1枢支連結部分Aと第2枢支連結部分Bとの相互間の回動中心17a,19a間距離(第2の距離)、いわゆる回動径よりも、長尺リンク部材20における第3枢支連結部分Cと第2枢支連結部分Bとの相互間の回動中心23a,19a間距離(第1の距離)、いわゆる回動径の方が長い構造とされている。
【0027】
また、支持片部16aには、短尺リンク部材18の外側方に接離自在に当接して、前記第2枢支連結部分Bの前記第1枢支連結部分A回りで、かつ外側方への回動を規制するストッパ部16cが備えられている。
【0028】
さらに、車体取付ブラケット16には、短尺リンク部材18の側方位置に対応してガスを発生させるインフレータ25と、そのガスにより膨張されて、図6や図7に示されるように、車両11のフロントウィンドウ部15における両側の左右のフロントピラー15a前方やフロントガラス15b前方に展開される折り畳み状態のエアバッグ26とを備えた前記エアバッグ装置13が取付け配置されている。前記インフレータ25は、歩行者衝突検出センサからの作動信号を受けて動作する構造とされ、歩行者衝突検出センサは車体前部のフロントバンパ等に装着されて車両11走行時に歩行者との衝突を検出するように構成されている。
【0029】
また、短尺リンク部材18における前記ストッパ部16cが当接される側と反対側の端縁には、エアバッグ26の展開方向前側に位置して、エアバッグ26の膨張時における展開力を受承する展開力受け面18aが延設状に備えられている。
【0030】
なお、図1や図6において、28はエンジンルームと車室内とを仕切るダッシュパネル、29はフロントウィンドウ部15とボンネット12との間で車幅方向に沿って車体シャーシを構成する樋状のカウルパネル、30はワイパーを駆動させるワイパーユニット、31はエアバッグ26の展開方向をガイドする展開ガイドであり、展開ガイド31は例えば、車体取付ブラケット16等に取付け固定されている。また、図1、図2、図4および図7における32はフェンダパネルである。
【0031】
そして、ボンネット支持機構14の初期状態においては、図2や図3に示されるように、短尺リンク部材18がストッパ部16cに当接された状態とされている。この状態においては、短尺リンク部材18における第1枢支連結部分A回りの外側方への回動はストッパ部16cにより規制され、短尺リンク部材18と長尺リンク部材20との互いの回動径が異なるため、第1枢支連結部分A回りの内側方への回動も規制されており、ボンネット12は下降位置で安定した保持状態とされている。
【0032】
また、短尺リンク部材18に第1枢支連結部分A回りの内側方への力が作用した場合であっても、所定値以上の荷重が作用しない限りは、第2枢支連結部分Bの回動中心17aと第3枢支連結部分Cの回動中心23aを結ぶ線上を超えて第2枢支連結部分Bが回動されず、初期位置に戻されて保持される。
【0033】
そして、走行中に車両11が歩行者に衝突した場合には、歩行者衝突検出センサにより歩行者との衝突が検出され、所定値以上の衝突荷重を検出すると各エアバッグ装置13のインフレータ25にそれぞれ作動信号が出力される。
【0034】
このインフレータ25の作動によりガスが発生してエアバッグ26が膨張して展開される。このエアバッグ26の展開初期において、短尺リンク部材18の展開力受け面18aが矢印Pで示されるようにエアバッグ26の展開力を受承し、所定値以上の荷重の作用により、短尺リンク部材18は第1枢支連結部分A回りで内側方に強制回動される。この際、長尺リンク部材20も第3枢支連結部分C回りで内側方に強制回動される。この短尺リンク部材18および長尺リンク部材20の強制回動により、短尺リンク部材18もしくは長尺リンク部材20あるいは双方のリンク部材18,20が適宜撓み変形して、第2枢支連結部分Bが第2枢支連結部分Bの回動中心17aと第3枢支連結部分Cの回動中心23aを結ぶ線上を超えて回動される。
【0035】
ここに、ボンネット支持機構14によるボンネット12の下降位置保持状態が解除される。その後、エアバッグ26の展開に伴ってエアバッグ26の展開力により、図4および図5に示されるように、第3枢支連結部分Cにおいて、軸受部16bより枢支軸部23が上方に離脱して、ボンネット12の後部が上に押し上げられ、そのボンネット12後部の所定高さまで持ち上げられた状態で、ボンネット12とフロントウィンドウ部15との相互間に構成された隙間部34よりフロントウィンドウ部15の各フロントピラー15a方向に向けてエアバッグ26がそれぞれ展開する。
【0036】
従って、車両11と衝突した歩行者が跳ね上げられてボンネット12、フロントピラー15a等に衝突するような場合であっても、ボンネット12の後部が上に押し上げられ、フロントピラー15a前方やフロントガラス15b前方が膨張展開されたエアバッグ26で覆われるため、エアバッグ26で押し上げられたボンネット12やエアバッグ26により2次衝突における衝撃を有効に緩和することができる。
【0037】
本実施形態は以上のように構成されており、短尺リンク部材18や長尺リンク部材20の撓み変形下に、互いの枢支連結部分である第2枢支連結部分Bが、第1枢支連結部分Aや第3枢支連結部分C回りで内側方に回動されることによりボンネット12の後部が持ち上げられる方式であり、ボンネット支持機構14におけるボンネット12後部の下降位置の保持状態を解除させる際の作用力の方向が制限されているため、従来のようにボンネット12の後部上に腰を乗せる等の車両11外部からの予期しない負荷が作用した場合であっても、ボンネット12後部の下降位置保持状態が何ら解除されず、エアバッグ26の未展開時におけるボンネット12後部の不用意な持ち上がりを有効に防止でき、衝突時等における必要時に円滑にボンネット12の後部を持ち上げ作動させることができる利点がある。
【0038】
また、長尺リンク部材20の車体側連結支持部分としての第3枢支連結部分Cが上方に開放可能に連結支持された構造とされているため、長尺リンク部材20の上方移動が許容され、ボンネット12後部の持ち上げ量を大きく取ることができる。この際、短尺リンク部材18側でなく、長尺リンク部材20側を上方に開放可能に連結した構造としているため、ボンネット12後部の持ち上げ量をより大きく取ることができる。
【0039】
さらに、短尺リンク部材18に、エアバッグ26の展開力を受承する展開力受け面18aが備えられているため、エアバッグ26の展開時に、第2枢支連結部分Bを効率よく内側方に回動させることができ、従って、効率よくボンネット12後部を持ち上げることができる。
【0040】
また、互いの枢支連結部分である第2枢支連結部分Bが、短尺リンク部材18の車体側連結支持部分である第1枢支連結部分Aの鉛直線上よりも外側方寄りに配置されているため、ボンネット12に上下方向や前後方向の予期しない負荷が作用した場合であっても、エアバッグ26の展開時以外におけるボンネット12後部の持ち上がりを確実に防止できる。
【0041】
さらに、ボンネット支持機構14にエアバッグ装置13を組み付けたモジュール構造とすることにより、車両11に対して別途、エアバッグ装置13を取付けるため取付けブラケットや取付け構造が不要で、車種の異なる車両11であってもモジュール化されたボンネット支持機構14を取付けるスペースがあれば、容易に異なる車種の車両11にも組み付けることができ、汎用性に優れる利点がある。
【0042】
図8は第2の実施形態を示しており、前記第1の実施形態と同様構成部分は同一符号を付し、その説明を省略する。
【0043】
即ち、第1の実施形態においては、短尺リンク部材18に展開力受け面18aが備えられた構造とされているが、本実施形態においては、長尺リンク部材20にエアバッグ26の展開力を受承する展開力受け面20aが備えられた構造とされている。そして、その他の構造は第1の実施形態と同様に構成されている。
【0044】
従って、本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0045】
図9は第3の実施形態を、図10は第4の実施形態をそれぞれ示しており、前記第2の実施形態と同様構成部分は同一符号を付し、その説明を省略する。
【0046】
即ち、第1の実施形態や第2の実施形態においては、互いの枢支連結部分である第2枢支連結部分Bが、短尺リンク部材18の車体側連結支持部分である第1枢支連結部分Aの鉛直線上よりも外側方寄りに配置された構造を示しているが、第3の実施形態や第4の実施形態においては、第2枢支連結部分Bが第1枢支連結部分Aの鉛直線上よりも内側方寄りに配置された構造とされている。そして、その他の構造は第2の実施形態と同様に構成されている。
【0047】
従って、これら各実施形態においても、第1の実施形態や第2の実施形態と同様の効果を奏する。
【0048】
また、このような第3の実施形態や第4の実施形態においては、エアバッグ26の展開力でボンネット12の後部を直接、上方に押し上げる構造とすることによっても、ボンネット支持機構14におけるボンネット12後部の下降位置保持状態を解除可能な構造とされており、従って、エアバッグ26の展開力でボンネット12の後部自体を持ち上げる構造とすることもできる。
【0049】
図11は第5の実施形態を示しており、第1の実施形態と同様構成部分は同一符号を付し、その説明を省略する。
【0050】
即ち、第1の実施形態においては、フロントウィンドウ部15におけるフロントピラー15aを前方を覆うピラー用のエアバッグ装置13を示しているが、本実施形態においては、展開されるエアバッグ26によりフロントウィンドウ部15におけるフロントガラス15b前方の下半部を車幅方向全域にわたって覆うと共に、両側のフロントピラー15a前方をも覆う構造とされている。
【0051】
この際、両側に配置されるボンネット支持機構14間にわたってエアバッグ26の展開力を受承する展開力受け面を備え、車幅方向中央部に配置されたエアバッグ装置13のエアバッグ26の展開時に、各ボンネット支持機構14間の展開力受け面を押動することにより、前記同様、ボンネット12後部を持ち上げる構造とすればよい。また、各ボンネット支持機構14を第3の実施形態や第4の実施形態のような第2枢支連結部分Bの配置構造とすれば、エアバッグ26によりボンネット12後部を直接押し上げることによりボンネット12後部を持ち上げることができる。
【0052】
そして、本実施形態においても、第1の実施形態と略同様の効果を奏することができる。
【0053】
図12は第6の実施形態を示しており、第1の実施形態や第2の実施形態と同様構成部分は同一符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
即ち、本実施形態においては、短尺リンク部材18や長尺リンク部材20の車体側連結支持部分である第1枢支連結部分Aや第3枢支連結部分C、および短尺リンク部材18と長尺リンク部材20との第2枢支連結部分Bの各回動軸心が、左右方向とされた構造とされている。そして、その他の構造は第1の実施形態と同様に構成されている。
【0055】
従って、本実施形態においても、第1の実施形態と略同様の効果を奏する。
【0056】
図13および図14は第7の実施形態を示しており、第1の実施形態と同様構成部分は同一符号を付し、その説明を省略する。
【0057】
即ち、上記各実施形態においては、第3枢支連結部分Cが上方に開放可能に連結された構造を示しているが、本実施形態においては、第3枢支連結部分Cが開放不能な構造とされている。この場合、短尺リンク部材18もしくは長尺リンク部材20の撓み変形により、ボンネット12後部が持ち上げ可能な構造とされている。
【0058】
また、図15および図16は第8の実施形態を示しており、第7の実施形態と同様構成部分は同一符号を付し、その説明を省略する。
【0059】
即ち、本実施形態においては、短尺リンク部材18や長尺リンク部材20が取付けられる車体取付ブラケット16が可撓性を有する構造とされており、第1枢支連結部分Aと第3枢支連結部分Cとの相互間における車体取付ブラケット16の撓み変形部16dの撓み変形により、ボンネット12後部が持ち上げ可能な構造とされている。
【0060】
そして、第7の実施形態や第8の実施形態においても、前述のようなエアバッグ26の展開力を利用したボンネット12後部を持ち上げるための構造を適宜採用すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す車両の前部側面図である。
【図2】ボンネット支持機構の正面図である。
【図3】同左側面図である。
【図4】ボンネット支持機構の動作説明図である。
【図5】ボンネット支持機構の動作説明図である。
【図6】エアバッグ展開状態の断面側面図である。
【図7】エアバッグ展開状態の平面図である。
【図8】第2の実施形態におけるボンネット支持機構の正面図である。
【図9】第3の実施形態におけるボンネット支持機構の正面図である。
【図10】第4の実施形態におけるボンネット支持機構の正面図である。
【図11】第5の実施形態におけるエアバッグ展開状態の平面図である。
【図12】第6の実施形態におけるボンネット支持機構の動作説明図である。
【図13】第7の実施形態におけるボンネット支持機構の概略説明図である。
【図14】第7の実施形態におけるボンネット支持機構の概略説明図である。
【図15】第8の実施形態におけるボンネット支持機構の概略説明図である。
【図16】第8の実施形態におけるボンネット支持機構の概略説明図である。
【符号の説明】
【0062】
11 車両
12 ボンネット
13 エアバッグ装置
14 ボンネット支持機構
15 フロントウィンドウ部
16 車体取付ブラケット
17 支軸
18 短尺リンク部材
18a 展開力受け面
19 支軸
20 長尺リンク部材
20a 展開力受け面
22 ボンネット取付ブラケット
23 枢支軸部
25 インフレータ
26 エアバッグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンネットの車両後方側を車体側に連結すると共に上下動可能に支持するボンネット支持機構を備え、エアバッグの展開力でボンネット支持機構が作動されボンネットの後部が持ち上げられて生じる隙間部から、フロントウィンドウ部の前方にエアバッグを展開可能とする車両におけるボンネット支持装置において、
前記ボンネット支持機構は、互いに枢支連結される第1リンク部材と第2リンク部材とを備えると共に、第1リンク部材もしくは第2リンク部材の少なくともいずれか一方が可撓性を有し、第1リンク部材もしくは第2リンク部材のいずれか一方に前記ボンネットの車両後方側が枢支連結され、
第1リンク部材は前記互いの枢支連結部分から第1の距離離れた位置で前記車体側に連結支持されると共に、第2リンク部材は前記互いの枢支連結部分から前記第1の距離よりも短い第2の距離離れた位置で車体側に連結支持され、前記第1リンク部材における車体側の連結支持部分が、前記互いの枢支連結部分と前記第2リンク部材における車体側の連結支持部分とを結ぶ線上よりも一側方に偏倚して配置され、
前記エアバッグの展開力で前記互いの枢支連結部分が、前記車体側の連結支持部分回りで、かつ前記一側方と反対側に回動されて前記ボンネットの後部が持ち上げられることを特徴とする車両におけるボンネット支持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両におけるボンネット支持装置において、
前記第1リンク部材もしくは前記第2リンク部材のいずれかで前記ボンネットの車両後方側に枢支連結された方の前記車体側の連結支持部分が上方に開放可能に連結支持されると共に、前記互いの枢支連結部分が、前記車体側の連結支持部分回りで、かつ前記一側方への回動を規制するストッパ部が備えられていることを特徴とする車両におけるボンネット支持装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両におけるボンネット支持装置において、
前記第1リンク部材もしくは前記第2リンク部材のいずれか一方に、前記互いの枢支連結部分を前記一側方と反対側に回動させるための前記エアバッグの展開力を受承する展開力受け面が備えられていることを特徴とする車両におけるボンネット支持装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の車両におけるボンネット支持装置において、
前記ボンネット支持機構は、前記エアバッグと該エアバッグにガスを供給するインフレータとを備えたモジュール構造とされていることを特徴とする車両におけるボンネット支持装置。
【請求項5】
ボンネットの車両後方側を車体側に連結すると共に上下動可能に支持するボンネット支持機構を備え、エアバッグの展開力でボンネット支持機構が作動されボンネットの後部が持ち上げられて生じる隙間部から、フロントウィンドウ部の前方にエアバッグを展開可能とする車両におけるボンネット支持装置において、
前記ボンネット支持機構は、互いに枢支連結される第1リンク部材と第2リンク部材とを備えると共に、前記車体側に固定される可撓性を有する取付ブラケットを備え、第1リンク部材もしくは第2リンク部材のいずれか一方に前記ボンネットの車両後方側が枢支連結され、
第1リンク部材は前記互いの枢支連結部分から第1の距離離れた位置で前記取付ブラケット側に枢支連結されると共に、第2リンク部材は前記互いの枢支連結部分から前記第1の距離よりも短い第2の距離離れた位置で取付ブラケット側に枢支連結され、前記第1リンク部材における取付ブラケット側の枢支連結部分が、前記互いの枢支連結部分と前記第2リンク部材における取付ブラケット側の枢支連結部分とを結ぶ線上よりも一側方に偏倚して配置され、
前記エアバッグの展開力で前記互いの枢支連結部分が、前記取付ブラケット側の枢支連結部分回りで、かつ前記一方側と反対側に回動されて前記ボンネットの後部が持ち上げられることを特徴とする車両におけるボンネット支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−15427(P2007−15427A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196074(P2005−196074)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】