説明

車両のシフト制御装置

【課題】車両が運転者の意思とは異なる駆動状態となることが防止できる車両のシフト制御装置を提供する。
【解決手段】所謂シフトバイワイヤ方式のシフト装置を備えた車両のシフト制御装置において、パーキングポジション切換操作が検出された際に、アクセル操作量Acc、ブレーキ操作量B、およびステアリング操作速度Nに基づいて予め定められた関係から上記パーキングポジション切換操作の誤操作を判定する誤操作判定手段148と、上記誤操作が有ると判定された場合には、上記パーキングポジション切換操作を受け付けないリジェクト手段150とを含むことから、検出されたパーキングポジション切換操作が運転者の意図しない操作である場合にはシフトポジションがニュートラルポジション等へ切り換わらずに現在のシフトポジションが維持されるので、車両が運転者の意思とは異なる駆動状態となることが防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータを介してシフトポジションを切り換える車両のシフト制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運転者に操作される操作体を有し、該操作体のシフトポジション切換操作に応じてシフトポジション指令信号を発生するシフト操作装置と、該シフトポジション指令信号に従って作動するアクチュエータによりシフトポジションを切り換えるシフト切換機構とを備えた車両が知られている。所謂シフトバイワイヤ方式のシフト装置を備えた車両がそれである。このような装置は、動力伝達機構とシフト操作装置との間の機械的な連携が不要であることから、シフト操作装置の配設位置が自由であるため、操作性に一層優れた位置を選択できたり、車室内における意匠やデザインを向上させることができる。たとえば、特許文献1または特許文献2に記載されたものがそれである。
【特許文献1】特開2005−69407号公報
【特許文献2】特開平5−280637号公報
【0003】
上記特許文献1に記載の車両のシフト制御装置によれば、パーキングポジション切換操作が検出されてから駐車ロック機構がロックされるまでの間は、シフトポジションが動力伝達機構の動力伝達を遮断状態とするニュートラルポジションへ切り換えられることから、前進走行ポジションからパーキングポジションへの移行中にアクセルペダルを踏んでも車両が動き出すことがないので、円滑にパーキングポジションに移行することができる。また、上記特許文献2に記載の車両のシフト制御装置によれば、車速が比較的高い車速である第1車速以上であるときはパーキングポジションへの切り換えを禁止し、車速が略停止状態の車速である第2車速以上且つ第1車速以下であるときにパーキングポジションへの切り換えが検出された場合は、警告を行ってからパーキングポジションへの切り換えを許可することから、運転者はパーキングポジションへ切り換えられたときの不意のショックに備えることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなシフト制御装置を備えた車両においては、その車両が走行状態であるときにシフトポジションがパーキングポジションへ切り換わる、あるいは前後進のシフトポジションが入れ換わると、駐車ロック機構を含む動力伝達機構の損傷や急激なショックによる乗り心地の低下などが発生する。これに対して、車両が走行状態であるときにシフトポジション切換操作が検出された場合には、シフトポジションを一律にニュートラルポジションへ切り換える制御を行うことが考えられる。しかし、上記制御を行うシフト制御装置においては、検出されたシフトポジション切換操作が誤操作等の運転者の意図しない操作である場合であってもシフトポジションがニュートラルポジションへ切り換えられるため、車両が運転者の意思とは異なる駆動状態となる不都合があった。
【0005】
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、アクチュエータを介してシフトポジションが切り換えられる車両において運転者の意思とは異なる駆動状態となることが防止できるシフト制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、運転者に操作される操作体を有し、該操作体のシフトポジション切換操作に応じてシフトポジション指令信号を発生するシフト操作装置と、該シフトポジション指令信号に従って作動するアクチュエータによりシフトポジションを切り換えるシフト切換機構とを備えた車両のシフト制御装置であって、前記シフトポジション切換操作が為された際に、該シフトポジション切換操作以外の前記運転者の操作に基づいて該シフトポジション切換操作の誤操作を判定する誤操作判定手段と、該誤操作判定手段において誤操作が有ると判定された場合には、前記シフト切換機構のシフトポジションを切り換えるための信号として前記シフトポジション指令信号を受け付けない指令拒否手段とを、含むことにある。
【0007】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、前記誤操作判定手段は、前記シフト操作装置におけるパーキングポジション切換操作が検出された際に、アクセル操作量、ブレーキ操作量、またはステアリング操作速度の少なくとも1つに基づいて予め定められた関係から該パーキングポジション切換操作の誤操作を判定するものであることにある。
【0008】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項1または2に係る発明において、前記誤操作判定手段は、車速が予め設定された第1車速を超える場合には前記シフトポジション切換操作以外の運転者の操作に基づく判定にかかわらず該シフトポジション切換操作が誤操作であると判定するものであることにある。
【0009】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至3のいずれか1に係る発明において、前記誤操作判定手段は、車速が前記第1車速より低く予め設定された第2車速未満の場合には前記シフトポジション切換操作以外の運転者の操作に基づく判定にかかわらず該シフトポジション切換操作が誤操作ではないと判定するものであることにある。
【0010】
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至4のいずれか1に係る発明において、前記指令拒否手段は、車速が前記第2車速以上且つ前記第1車速以下であるときに前記誤操作判定手段により前記シフトポジション切換操作が誤操作ではないと判定された場合には、前記シフト切換機構のシフトポジションを車両の動力伝達経路を遮断するニュートラルポジションへ切り換えるものであることにある。
【発明の効果】
【0011】
請求項1にかかる車両のシフト制御装置によれば、運転者に操作される操作体を有し、該操作体のシフトポジション切換操作に応じてシフトポジション指令信号を発生するシフト操作装置と、該シフトポジション指令信号に従って作動するアクチュエータによりシフトポジションを切り換えるシフト切換機構とを備えた車両のシフト制御装置であって、前記シフトポジション切換操作が為された際に、該シフトポジション切換操作以外の前記運転者の操作に基づいて該シフトポジション切換操作の誤操作を判定する誤操作判定手段と、該誤操作判定手段において誤操作が有ると判定された場合には、前記シフト切換機構のシフトポジションを切り換えるための信号として前記シフトポジション指令信号を受け付けない指令拒否手段とを、含むことから、検出されたシフトポジション切換操作が運転者の意図しない操作である場合にはシフトポジションがニュートラルポジション等へ切り換わらずに現在のシフトポジションが維持されるので、車両が運転者の意思とは異なる駆動状態となることが防止できる。また、誤操作によりシフトポジションが切り換わった後、運転者がシフトポジションを元に戻すための操作を行う手間が生じないという利点もある。
【0012】
また、請求項2にかかる車両のシフト制御装置によれば、前記誤操作判定手段は、前記シフト操作装置におけるパーキングポジション切換操作が検出された際に、アクセル操作量、ブレーキ操作量、またはステアリング操作速度の少なくとも1つに基づいて予め定められた関係から該パーキングポジション切換操作の誤操作を判定するものであることから、検出されたパーキングポジション切換操作が運転者の意図しない操作である場合にはシフトポジションがパーキングポジションへ切り換わらずに現在のシフトポジションが維持されるので、車両が運転者の意思とは異なる駆動状態となることが防止できる。
【0013】
また、請求項3にかかる車両のシフト制御装置によれば、前記誤操作判定手段は、車速が予め設定された第1車速を超える場合には前記シフトポジション切換操作以外の運転者の操作に基づく判定にかかわらず該シフトポジション切換操作が誤操作であると判定するものであることから、車両が走行状態である場合にはシフトポジションが要求されたポジションへ切り換わらずに現在のシフトポジションが維持されるので、駐車ロック機構を含む動力伝達機構の損傷や、急激なショックによる乗り心地の低下などの発生が防止できる。また、車両が走行状態である場合には前記検出されたパーキングポジション切換操作が運転者の意図しない操作である可能性が高いので、車両が運転者の意思とは異なる駆動状態となることが好適に防止される。
【0014】
また、請求項4にかかる車両のシフト制御装置によれば、前記誤操作判定手段は、車速が前記第1車速より低く予め設定された第2車速未満の場合には前記シフトポジション切換操作以外の運転者の操作に基づく判定にかかわらず該シフトポジション切換操作が誤操作ではないと判定するものであることから、検出されたシフトポジション切換操作が運転者の意図しない操作である場合であっても車両が略停止状態であるので、車両が運転者の意思とは異なる駆動状態となることが防止できる。
【0015】
また、請求項5にかかる車両のシフト制御装置によれば、前記指令拒否手段は、車速が前記第2車速以上且つ前記第1車速以下であるときに前記誤操作判定手段により前記シフトポジション切換操作が誤操作ではないと判定された場合には、前記シフト切換機構のシフトポジションを車両の動力伝達経路を遮断するニュートラルポジションへ切り換えるものであることから、検出されたシフトポジション切換操作が運転者の意図する操作であっても車両が準停止状態である場合にはシフトポジションが要求されたポジションへ切り換わらないので、駐車ロック機構を含む動力伝達機構の損傷や、急激なショックによる乗り心地の低下などの発生が防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明が適用された車両の自動変速機(動力伝達機構)6の構成を説明する骨子図である。本実施例における上記車両は、縦置き型の自動変速機6を有するものであってFR(フロントエンジン・リアドライブ)型の駆動方式を採用するものであり、走行用の動力源としてエンジン8を備えている。内燃機関にて構成されるエンジン8の出力は、流体伝動装置として機能するトルクコンバータ10、自動変速機6、図示しない差動歯車装置および一対の車軸などを介して図示しない左右の駆動輪へ伝達されるようになっている。
【0018】
図1において、自動変速機6は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース(以下、ケースと表す)11内において、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置16およびダブルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体として構成されている第2変速部20とを共通の軸心C上に備え、入力軸22の回転を変速して出力軸24から出力する。入力軸22は、走行用の動力源であるエンジン8によって回転駆動されるトルクコンバータ10のタービン軸でもある。出力軸24は、上述のようにたとえば図示しない差動歯車装置や一対の車軸等を順次介して左右の駆動輪を回転駆動する。なお、自動変速機6は、出力軸24の軸心すなわち上記共通の軸心Cに対して略対称的に構成されており、図1の骨子図においてはその軸心Cの下半分が省略されている。
【0019】
上記第1遊星歯車装置12は、サンギヤS1、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP1、そのピニオンギヤP1を自転及び公転可能に支持するキャリヤCA1、ピニオンギヤP1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を備えている。また、第2遊星歯車装置16は、サンギヤS2、ピニオンギヤP2、そのピニオンギヤP2を自転及び公転可能に支持するキャリヤCA2、ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を備えている。また、第3遊星歯車装置18は、サンギヤS3、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP2及びP3、そのピニオンギヤP2及びP3を自転及び公転可能に支持するキャリヤCA3、ピニオンギヤP2及びP3を介してサンギヤS3と噛み合うリングギヤR3を備えている。
【0020】
図1におけるクラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2(以下特に区別しない場合はクラッチC、ブレーキBと記載する)は、油圧シリンダから成る油圧アクチュエータとその油圧アクチュエータに供給される油圧により係合或いは解放される多板式のクラッチあるいはブレーキとを備える油圧式摩擦係合装置である。第1回転要素RM1(サンギヤS2)は、ブレーキB1を介してケース11に選択的に連結されて回転停止され、クラッチC3を介して中間出力部材である第1遊星歯車装置12のリングギヤR1すなわち第2中間出力経路PA2に選択的に連結され、さらにクラッチC4を介して第1遊星歯車装置12のキャリヤCA1すなわち第1中間出力間接経路PA1bに選択的に連結されるようになっている。
【0021】
また、第2回転要素RM2(キャリヤCA2およびCA3)は、ブレーキB2を介してケース11に選択的に連結されて回転停止され、クラッチC2を介して入力軸22すなわち第1中間出力直結経路PA1aに選択的に連結されるようになっている。また、第3回転要素RM3(リングギヤR2およびR3)は、出力軸24に一体的に連結されて回転を出力するようになっている。また、第4回転要素RM4(サンギヤS3)は、クラッチC1を介してリングギヤR1に連結されるようになっている。
【0022】
また、第2回転要素RM2とケース11との間には、第2回転要素RM2の正回転(入力軸22と同じ回転方向)を許容しつつ逆回転を阻止する一方向クラッチF1がブレーキB2と並列に設けられている。また、第3回転部材RM3の外周側には、後述の駐車ロック機構としても機能するシフト切換機構105の一部を構成し、後述の図6に示すパーキングロックポール108と噛み合うことにより出力軸24の回転を阻止するパーキングギヤ106が固設されている。
【0023】
図2は、図1に示す自動変速機6において変速比の異なる複数の変速段を成立させる際の前記クラッチC、ブレーキB、一方向クラッチF1を含む各係合要素の作動状態を説明する図表であり、「○」は係合状態を、「(○)」はエンジンブレーキ時のみの係合状態を、空欄は解放状態をそれぞれ表している。図2に示すように、本実施例の自動変速機6は、上記各係合要素が選択的に係合させられることにより変速比(自動変速機6の入力軸回転数を出力軸回転数で除した値)が異なる前進8段を含む複数の変速段が成立するようになっている。なお、各変速段の変速比は、第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、および第3遊星歯車装置18の各ギヤ比によって適宜定められる。
【0024】
図3は、図1に示すクラッチCおよびブレーキBにそれぞれ設けられた油圧アクチュエータACT1〜ACT6の作動を制御するリニアソレノイドバルブSL1〜SL6等に関する油圧制御回路25の要部を示す回路図である。
【0025】
図3において、油圧供給装置26は、エンジン8によって回転駆動される機械式のオイルポンプ27(図1参照)から発生する油圧を元圧として第1ライン油圧PL1を調圧する例えばリリーフ型のプライマリレギュレータバルブ(第1調圧弁)28と、そのプライマリレギュレータバルブ28から排出される油圧を元圧として第2ライン油圧PL2を調圧するセカンダリレギュレータバルブ(第2調圧弁)29と、アクセル操作量(アクセル開度)Acc或いはスロットル弁開度θTHで表されるエンジン負荷等に応じた第1ライン油圧PL1および第2ライン油圧PL2が調圧されるためにプライマリレギュレータバルブ28およびセカンダリレギュレータバルブ29へ信号圧PSLTを供給するリニアソレノイドバルブSLTと、第1ライン油圧PL1を元圧としてモジュレータ油圧Pを一定値に調圧するモジュレータバルブ30とを備えている。また、油圧供給装置26は、後述の図4に示すシフトレバー(操作体)38およびパーキングスイッチ(操作体)40の操作すなわちシフトポジション切換操作に基づいて出力される電気的駆動指令信号Sに従って駆動する電動アクチュエータ(アクチュエータ)34により油路が切り換えられ、シフトレバー38が予め定められた操作位置のうちのドライブポジション指令位置(前進走行指令位置)Dへ操作されたときには、入力された第1ライン油圧PL1をドライブポジション油圧Pとして出力し、シフトレバー38がリバースポジション指令位置(後進走行指令位置)Rへ操作されたときには、入力された第1ライン油圧PL1をリバースポジション油圧Pとして出力し、シフトレバー38がニュートラルポジション指令位置(動力伝達遮断指令位置)Nへ操作されるか、あるいはパーキングスイッチ40がパーキングポジション指令位置(駐車指令位置)Pへ操作されるすなわちパーキングポジション切換操作が行われたときには、油圧の出力を遮断するマニュアルバルブ(シフトポジション切換弁)31を備えている。油圧供給装置26は、第1ライン油圧PL1、第2ライン油圧PL2、モジュレータ油圧P、ドライブポジション油圧P、およびリバースポジション油圧Pを出力するようになっている。
【0026】
前記クラッチCおよびブレーキBにそれぞれ設けられた油圧シリンダから成る油圧アクチュエータACT1〜ACT6には、リニアソレノイドバルブSL1〜SL6(以下特に区別しない場合はリニアソレノイドバルブSLと記載する)がそれぞれ設けられている。油圧アクチュエータACT1、ACT2、ACT5、ACT6には、それぞれ対応するリニアソレノイドバルブSL1、SL2、SL5、SL6により、油圧供給装置26からそれぞれ供給されたドライブポジション油圧Pが調圧されて供給される。また、各油圧アクチュエータACT3、ACT4には、それぞれ対応するリニアソレノイドバルブSL3、SL4により、油圧供給装置26からそれぞれ供給されたリバースポジション油圧Pが調圧されて供給される。なお、ブレーキB2の油圧アクチュエータACT6には、リニアソレノイドバルブSL6の出力油圧またはリバースポジション油圧Pのどちらかがシャトル弁33を介して供給されるようになっている。
【0027】
ここで、上記リニアソレノイドバルブSL1〜SL6は、基本的には何れも同じ構成であり、それぞれ独立に励磁、非励磁や電流制御がなされて各油圧アクチュエータACT1〜ACT6へ供給される油圧を独立に調圧制御し、各クラッチCおよびブレーキBの係合圧をそれぞれ制御するものである。そして、自動変速機6は、例えば図2の係合作動表に示すように予め定められた係合要素が係合されることによって各変速段が成立させられる。例えば、図2の係合作動表に示すように第5変速段から第4変速段へのダウンシフトに際しては、クラッチC2が解放されると共にクラッチC4が係合され、変速ショックを抑制するようにクラッチC2の解放過渡油圧とクラッチC4の係合過渡油圧とが適切に制御される。
【0028】
図4は、後述のシフト切換機構105のシフトポジションを切り換えるためのシフトポジション切換操作の入力装置として機能するシフト操作装置36を示す斜視図である。図4において、シフト操作装置36は、例えば運転席の近傍に配設されて運転者により操作され、車両前後方向に配列された3つの操作位置すなわちドライブポジション指令位置D、リバースポジション指令位置R、ニュートラルポジション指令位置Nへ操作されるシフトレバー38と、駐車する際に押圧操作されることでパーキングポジション指令位置Pへ位置させられる押釦式のパーキングスイッチ40とを備えている。上記シフトレバー38は、図示しないスプリングの付勢力に従って、非操作時には図4に示す位置すなわち原位置(ホームポジション)に自動的に復帰させられるモーメンタリータイプ(自動復帰型)である。また、シフトレバー38は、上記原位置からニュートラルポジション指令位置Nを通過してドライブポジション指令位置Dまたはリバースポジション指令位置Rへ操作されるようになっている。また、シフト操作装置36は、シフトレバー38の操作位置を検出してその操作位置を示すシフトレバー位置信号PSHを後述の電子制御装置46に供給するシフトレバーポジションセンサ42と、P操作スイッチ94が押圧操作されてパーキングポジション指令位置Pへ位置させられたことを示す駐車指令信号Sを後述の電子制御装置46に供給するパーキングポジションセンサ44とをさらに備えている。シフト操作装置36は、シフトレバー38およびパーキングスイッチ40の操作すなわちシフトポジション切換操作を電気的に検出し、そのシフトポジション切換操作に応じてシフトポジション指令信号に相当する上記シフトレバー位置信号PSHおよび駐車指令信号Sを発生するものである。
【0029】
ここで、上記ドライブポジション指令位置Dは、シフトポジションを車両が前進走行させられるドライブポジションに切り換えるための操作位置であって、図2に示す第1速ギヤ段「1st」〜第8速ギヤ段「8th」のいずれか1が成立させられる。
【0030】
また、リバースポジション指令位置Rは、シフトポジションを車両が後進走行させられるリバースポジションに切り換えるための操作位置であって、図2に示す第1後進ギヤ段「Rev1」または第2後進ギヤ段「Rev2」が成立させられる。
【0031】
また、ニュートラルポジション指令位置Nは、シフトポジションを自動変速機6の動力伝達経路が遮断状態にされるニュートラルポジションに切り換えるための操作位置である。
【0032】
また、パーキングポジション指令位置Pは、シフトポジションを自動変速機6の動力伝達経路が遮断状態にされ、且つ後述のシフト切換機構105によって自動変速機6の出力軸24の回転が機械的に固定されるパーキングポジションに切り換えるための操作位置である。
【0033】
図5は、図1に示す自動変速機6やエンジン8などを制御するために車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。図5において、電子制御装置46は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン8の出力制御や自動変速機6の変速制御やシフトポジションを切り換えるシフトポジション切換制御等を実行する。なお、この電子制御装置46は、必要に応じて出力制御用や変速制御用やシフトポジション切換制御用などに分けて構成されるものであり、本実施例では、上記シフトポジション切換制御を行うシフトバイワイヤ用電子制御装置としてのSBW−ECU48を含んで構成されている。
【0034】
図5に示すように、電子制御装置78には、車速V[km/h]を検出する車速センサ58、アクセルペダル60の操作量すなわちアクセル操作量Acc[%]を検出するアクセル操作量センサ62、常用ブレーキであるフットブレーキ64の操作量すなわちブレーキ操作量B[%]を検出するフットブレーキ操作量センサ66、シフトレバー38の操作位置を検出してシフトレバー位置信号PSHを出力するするシフトレバーポジションセンサ42、パーキングスイッチ40がパーキングポジション指令位置Pへ操作されたことを検出して駐車指令信号Sを出力するパーキングポジションセンサ44、ステアリング76の操作速度すなわちステアリング操作速度N[m/s]を検出するステアリング操作速度センサ78、電動アクチュエータ34に設けられ、その電動アクチュエータ34の作動位置すなわちアクチュエータ作動位置PACT[°]を検出するロータリーエンコーダ80等から、車速V、アクセル操作量Acc、ブレーキ操作量B、シフトレバー位置信号PSH、駐車指令信号S、ステアリング操作速度N、アクチュエータ作動位置PACTなどを表す信号が供給される。
【0035】
また、電子制御装置46からは、シフトレバー位置信号PSHが変更されたことや駐車指令信号Sが供給されたことに応じてマニュアルバルブ31の油路や後述の駐車ロック機構の切り換えを行うことによりシフトポジションを切り換えるために、電動モータやソレノイド等からなる電動アクチュエータ34へ駆動指令信号Sが出力される。また、後述のリジェクト手段(指令拒否手段)150によってシフトポジション切換操作が受け付けられなかったことを運転者に知らせるためのリジェクト音を鳴らすために、リジェクトブザー82へ作動指令信号Sが出力される。本実施例では、シフトレバー38やパーキングスイッチ44の操作すなわちシフトポジション切換操作に従って電動アクチュエータ34が駆動されることによりシフトポジションが切り換えられるようになっている。なお、本実施例のSBW−ECU48は、ロータリーエンコーダ80から出力されるアクチュエータ作動位置PACTを取得して上記電動モータの実際の回転状況を検出し、指令位置となるまで電動アクチュエータ34を駆動するフィードバック制御を行うようになっている。
【0036】
図6は、自動変速機6の出力軸24の回転を機械的に固定するパーキングロックを行う駐車ロック機構としても機能し、シフトレバー位置信号PSHまたは駐車指令信号Sに従って作動する電動アクチュエータ34によりシフトポジションを切り換えるシフト切換機構105の構成を示す斜視図である。
【0037】
図6において、シフト切換機構105は、自動変速機6の出力軸24に固定されたパーキングギヤ106と、パーキングギヤ106に噛み合う噛合位置へ回動可能に設けられて選択的にパーキングギヤ106に噛み合わされることにより出力軸24を軸心Cまわりの回転不能に固定するパーキングロックポール108と、パーキングロックポール108に係合するテーパ部材110に挿し通されてそのテーパ部材110を一端部において支持するパーキングロッド112と、パーキングロッド112に設けられてテーパ部材110をその小径方向へ付勢するスプリング114と、パーキングロッド112の他端部に回動可能に接続されて節度機構により少なくともパーキングポジションに対応する位置決め位置に位置決めされるディテントプレート116と、ディテントプレート116に固設されて一軸心まわりに回転可能に支持されたシャフト118と、シャフト118を回転駆動させる電動アクチュエータ34と、電動アクチュエータ34のアクチュエータ作動位置PACTすなわちシャフト118の回転位置を検出するロータリーエンコーダ80と、ディテントプレート116の回転に節度を与えてそのディテントプレート116を各シフトポジションに対応する位置決め位置に固定するディテントスプリング120およびその先端部に設けられた係合部122とを、備えている。
【0038】
ディテントプレート116には、マニュアルバルブ31のスプール弁子124の一端がディテントプレート116に設けられたピン126を介してそのピン126まわりに回動可能且つディテントプレート116に対してシャフト118とピン126とを結ぶ直線方向に相対移動可能に設けられており、シャフト118の回転すなわちディテントプレート116のシャフト118の軸心まわりの回動に伴ってマニュアルバルブ31のスプール弁子124がそのスプール弁子124の軸心方向に摺動させられるようになっている。上記スプール弁子124を摺動可能に収容するバルブボデー125内には、油圧制御回路25を構成する油路の一部が設けられている。また、ディテントプレート116は、シャフト118を介して電動アクチュエータ34の駆動軸に作動的に連結されており、パーキングロッド112、ディテントスプリング120、係合部122などと共に電動アクチュエータ34により駆動されてシフトポジションが切り換わる際のシフトポジション位置決め部材として機能する。
【0039】
ディテントプレート116の頂部には、図7に示すように一対の内壁面128および130の間においてパーキングポジション指令位置P、リバースポジション指令位置R、ニュートラルポジション指令位置N、ドライブポジション指令位置Dにそれぞれ対応して設けられた4つの凹部が形成されており、それらのうちの端に位置する凹部132がパーキングポジション指令位置Pに対応している。
【0040】
図6は、シフトポジションがパーキングポジションであるときすなわちシフト切換機構105がパーキングロックされた状態を示している。この状態では、パーキングロックポール108がパーキングギヤ106を回転不能に固定しており、車両の出力軸24の回転が阻止されている。この状態から、電子制御装置46から作動のための駆動指令信号Sを受けた電動アクチュエータ34によりシャフト118が図6に示す矢印Aの方向に回転されると、ディテントプレート116を介してパーキングロッド112が図6に示す矢印Cの方向に移動され、パーキングロッド112の先端に設けられたテーパ部材110の移動によりパーキングロックポール108が図6に示す矢印Dの方向に移動可能となるとともに、マニュアルバルブ31のスプール弁子124が図6に示す矢印Eの方向すなわちスプール弁子124の軸心方向に摺動させられる。
【0041】
上記電動アクチュエータ34の作動すなわちディテントプレート116の回転に伴って、図7に示すディテントプレート116の頂部に設けられた4つの凹部(谷)のうちの端に位置する凹部132にあったディテントスプリング120の係合部122が、凸部134を乗り越えて他方の谷のいずれか、すなわち図7に示す連凹部136へ移動させられる。係合部122は、その軸心まわりに回転可能にディテントスプリング120に設けられている。係合部122が連凹部136に到達するまでディテントプレート116が矢印Aの方向へ回転させられたときには、パーキングロックポール108がパーキングギヤ106と噛み合うことのない位置まで矢印Dの方向へ押し下げられる。これにより、出力軸24およびこれに連結された車両の駆動輪が機械的に固定されなくなる。そして、その切り換えられた連凹部136に対応する箇所に位置決めされたスプール弁子124によりマニュアルバルブ31の油路が切り換えられるようになっている。
【0042】
一方、電動アクチュエータ34によりシャフト118が矢印Bの方向に回転させられると、上述とは逆の作動によりシフトポジションがパーキングポジションに切り換えられるとともにマニュアルバルブ31の油路がパーキングポジションに対応する状態に切り換えられるようになっている。すなわち、本実施例のシフト切換機構105では、シフト操作装置36から出力されるシフトレバー位置信号PSHおよび駐車指令信号Sに応じてSBW−ECU48により電動アクチュエータ34が制御されてシャフト118がその軸心まわりに回転させられることによって、ディテントプレート116を介してマニュアルバルブ31のスプール弁子124が機械的に一直線方向へ移動させられ、そのスプール弁子124が4つのシフトポジションすなわちドライブポジション、リバースポジション、ニュートラルポジション、またはパーキングポジションのうちの1つに対応する位置に位置決めされることにより油圧制御回路25の油路が切り換えられるようになっている。
【0043】
前記電子制御装置46のSBW−ECU48は、運転者によるシフトポジション切換操作を検出して電動アクチュエータ34を駆動することによりシフトポジションを切り換えるシフトポジション切換制御を行うシフト制御装置として機能している。図8は、SBW−ECU48の制御機能の要部すなわち運転者のシフト要求に対するリジェクト制御を含む制御機能を説明する機能ブロック線図である。
【0044】
図8において、目標シフトポジション決定手段144は、後述のシフトポジション制御手段152が行うシフト切換機構105のシフトポジション切り換えの際の目標シフトポジションPmを決定するものであり、シフトポジション切換操作検出手段146、誤操作判定手段148、およびリジェクト手段(指令拒否手段)150を含むものである。
【0045】
上記シフトポジション切換操作検出手段146は、シフト操作装置36から駐車指令信号Sが供給されたか否かに基づいて、シフト操作装置36におけるパーキングポジション切換操作が行われたか否かを検出する。
【0046】
上記誤操作判定手段148は、シフトポジション切換操作検出手段146においてシフト操作装置36におけるパーキングポジション切換操作が行われたことが検出された場合に、アクセル操作量Acc、ブレーキ操作量B、およびステアリング操作速度Nに基づいて、予め定められた関係であってアクセル操作量Accが所定アクセル操作量Acc_f以下であり且つブレーキ操作量Bが所定ブレーキ操作量B_f以上であり且つステアリング操作速度Nが所定ステアリング操作速度N_f以下であるか否かという関係から、上記パーキングポジション切換操作が誤操作ではないか否かを判定する。なお、上記予め定められた関係である、アクセル操作量Accが所定アクセル操作量Acc_f以下であり且つブレーキ操作量Bが所定ブレーキ操作量B_f以上であり且つステアリング操作速度Nが所定ステアリング操作速度N_f以下であるという関係が否定される場合には、上記パーキングポジション切換操作は誤操作であると判定される。また、上記所定アクセル操作量Acc_fは、例えばアクセル60を全開で操作しているときのアクセル操作量Accの5%値に設定される。また、上記所定ブレーキ操作量B_fは、例えばフットブレーキ64を全開で操作しているときのブレーキ操作量Bの5%値に設定される。また、上記所定ステアリング操作速度N_fは、例えばステアリング76を最も速やかに操作しているときのステアリング操作速度Nの5%値に設定される。これらの所定アクセル操作量Acc_f、所定ブレーキ操作量B_f、および所定ステアリング操作速度N_fは、上記以外の値にも適宜設定され得る。
【0047】
また、誤操作判定手段148は、車速Vが予め設定された第1車速V1を超える場合には、前記アクセル操作量Acc、ブレーキ操作量B、およびステアリング操作速度Nに基づく判定を行わずに、シフトポジション切換操作検出手段146において検出されたパーキングポジション切換操作は誤操作であると判定し、車速Vが上記第1車速V1より低く予め設定された第2車速V2未満の場合には、前記アクセル操作量Acc、ブレーキ操作量B、およびステアリング操作速度Nに基づく判定を行わずに、上記パーキングポジション切換操作は誤操作ではないと判定して目標シフトポジションPmをパーキングポジションとする。なお、上記第1車速V1は、例えば10[km/h]に設定される。この値は、運転者が車両は走行中であると認識可能であって、車両の駐車を意図してパーキングスイッチ40を操作することが無いとする値を下回る車速Vの上限値であり、上記以外の値にも適宜設定され得る。また、上記第2車速V2は、例えば4[km/h]に設定される。この値は、シフト切換機構105を含む自動変速機6が損傷することなくパーキングロックを行うことが可能である値を上回る車速Vの下限値であり、上記以外の値にも適宜設定され得る。
【0048】
上記リジェクト手段150は、誤操作判定手段148において前記パーキングポジション切換操作が誤操作であると判定された場合には、シフト切換機構105のシフトポジションを切り換えるための信号として駐車指令信号Sを受け付けない、すなわち目標シフトポジションPmを上記シフトポジション切換操作直前のシフトポジションとする。また、リジェクト手段150は、車速Vが第2車速V2以上且つ前記第1車速V1以下であるときに、誤操作判定手段148において前記シフトポジション切換操作が誤操作ではないと判定された場合には、目標シフトポジションPmを車両の動力伝達経路を遮断するニュートラルポジションとし、運転者の注意喚起のためのリジェクト音を鳴らすためにリジェクトブザー82に作動指令信号Sを出力する。
【0049】
シフトポジション制御手段152は、シフト切換機構105のシフトポジションが目標シフトポジション決定手段144において決定された目標シフトポジションPmと一致するように、その目標シフトポジションPmに応じて電動アクチュエータ34を駆動する。具体的には、シフトポジション制御手段152は、ロータリーエンコーダ80から出力されるアクチュエータ作動位置PACTを取得して電動アクチュエータ34の作動状況を検出し、電動アクチュエータ34が上記目標シフトポジションPmに応じた作動位置となるまで駆動指令信号Sを出力して電動アクチュエータ34を駆動するフィードバック制御を行う。
【0050】
図9は、SBW−ECU48の信号処理によって実行される前記シフト制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートである。すなわち、このフローチャートは、所謂シフトバイワイヤ方式のシフト装置を備えた車両において、パーキングポジション切換操作が検出されて電動アクチュエータ34が駆動されることによりシフト切換機構105のシフトポジションをパーキングポジションへ切り換えるためのパーキングポジション切換制御の一連の手順であって、たとえば数msec〜数十msecの所定の周期ごとに繰り返し実行される。
【0051】
図9において、先ず、目標シフトポジション決定手段144のうちのシフトポジション切換操作検出手段146に対応するステップS1(以下、ステップを省略する)では、シフトポジション切換操作のうちのパーキングポジション切換操作が行われたか否かが判断される。
【0052】
S1の判断が否定された場合には、本ルーチンは終了させられるが、肯定された場合には、目標シフトポジション決定手段144のうちの誤操作判定手段148に対応するS2において、車速Vに基づいて現在の車両状態が3つの場合すなわちCASE1、CASE2、またはCASE3のいずれかであるかが判断される。すなわち、車速Vが予め設定された第1車速V1を超える場合にはCASE1、車速Vが予め設定された第2車速V2以上且つ第1車速V1以下である場合にはCASE2、車速Vが第2車速V2未満である場合にはCASE3であると判断される。
【0053】
S2においてCASE1であると判断されたときには、リジェクト手段152およびシフトポジション制御手段152に対応するS3において、先ず、リジェクト手段152に対応して、S1において検出されたパーキングポジション切換操作すなわち駐車指令信号Sが受け付けられず、シフト切換機構105の目標シフトポジションPmが上記パーキングポジション切換操作直前のシフトポジションすなわち現在の実際のシフトポジションとされる。そして、シフトポジション制御手段152に対応して、シフト切換機構105のシフトポジションが目標シフトポジションPmと一致するように電動アクチュエータ34が制御させられて、本ルーチンが終了させられる。実際は、目標ポジションPmが現在の実際のシフトポジションに一致しているために電動アクチュエータ34が駆動されることはなく、現在のシフトポジションが保持される。
【0054】
S2においてCASE3であると判断されたときには、誤操作判定手段148およびシフトポジション制御手段152に対応するS4において、先ず、誤操作判定手段148に対応して、目標シフトポジションPmがパーキングポジションとされる。そして、シフトポジション制御手段152に対応して、シフトポジションが目標シフトポジションPmすなわちパーキングポジションに一致するように電動アクチュエータ34が駆動させられて、本ルーチンが終了させられる。
【0055】
S2においてCASE2であると判断されたときには、誤操作判定手段148に対応するS5において、予め定められた関係であってアクセル操作量Accが所定アクセル操作量Acc_f以下であり且つブレーキ操作量Bが所定ブレーキ操作量B_f以上であり且つステアリング操作速度Nが所定ステアリング操作速度N_f以下であるか否かが判定される。
【0056】
S5の判断が肯定された場合には、リジェクト手段150およびシフトポジション制御手段152に対応するS6において、先ず、リジェクト手段150に対応して、シフト切換機構105の目標シフトポジションPmが車両の動力伝達経路が遮断されるニュートラルポジションとされ、運転者の注意喚起のためのリジェクト音を鳴らすために、リジェクトブザー82に作動指令信号Sが出力される。そして、シフトポジション制御手段152に対応して、シフト切換機構105のシフトポジションが目標シフトポジションPmすなわちニュートラルポジションに一致するように電動アクチュエータ34が駆動させられて、本ルーチンが終了させられる。
【0057】
S5の判断が否定された場合には、リジェクト手段152およびシフトポジション制御手段152に対応するS7において、先ず、リジェクト手段152に対応して、S1において検出されたパーキングポジション切換操作すなわち駐車指令信号Sが受け付けられず、シフト切換機構105の目標シフトポジションPmが上記パーキングポジション切換操作直前のシフトポジションすなわち現在の実際のシフトポジションとされる。そして、シフトポジション制御手段152に対応して、シフト切換機構105のシフトポジションが目標シフトポジションPmと一致するように電動アクチュエータ34が制御されて、本ルーチンが終了させられる。実際は、目標ポジションPmが現在の実際のシフトポジションに一致しているために電動アクチュエータ34が駆動されることはなく、現在のシフトポジションが保持される。
【0058】
上述のように、本実施例の車両のシフト制御装置によれば、運転者に操作されるパーキングスイッチ40を有し、そのパーキングスイッチ40のパーキングポジション切換操作に応じて駐車指令信号Sを発生するシフト操作装置36と、その駐車指令信号Sに従って作動する電動アクチュエータ34によりシフトポジションを切り換えるシフト切換機構105とを備えた車両のシフト制御装置であって、前記パーキングポジション切換操作が為された際に、そのパーキングポジション切換操作以外の前記運転者の操作であるアクセル操作量Acc、ブレーキ操作量B、およびステアリング操作速度Nに基づいてそのパーキングポジション切換操作の誤操作を判定する誤操作判定手段148と、誤操作判定手段148において誤操作が有ると判定された場合には、シフト切換機構105のシフトポジションを切り換えるための信号として駐車指令信号Sを受け付けないリジェクト手段150とを含むことから、検出されたパーキングポジション切換操作が運転者の意図しない操作である場合にはシフトポジションがニュートラルポジション等へ切り換わらずに現在のシフトポジションが維持されるので、車両が運転者の意思とは異なる駆動状態となることが防止できる。また、誤操作によりシフトポジションが切り換わった後、運転者がシフトポジションを元に戻すための操作を行う手間が生じないという利点もある。
【0059】
また、本実施例の車両のシフト制御装置によれば、誤操作判定手段148は、シフト操作装置36におけるパーキングポジション切換操作が検出された際に、アクセル操作量Acc、ブレーキ操作量B、およびステアリング操作速度Nに基づいて、予め定められた関係であってアクセル操作量Accが所定アクセル操作量Acc_f以下であり且つブレーキ操作量Bが所定ブレーキ操作量B_f以上であり且つステアリング操作速度Nが所定ステアリング操作速度N_f以下であるか否かという関係から、上記パーキングポジション切換操作が誤操作ではないか否かを判定するものであることから、検出されたパーキングポジション切換操作が運転者の意図しない操作である場合にはシフトポジションがパーキングポジションへ切り換わらずに現在のシフトポジションが維持されるので、車両が運転者の意思とは異なる駆動状態となることが防止できる。
【0060】
また、本実施例の車両のシフト制御装置によれば、誤操作判定手段148は、車速Vが予め設定された第1車速V1を超える場合には前記検出されたパーキングポジション切換操作以外の運転者の操作すなわちアクセル操作量、ブレーキ操作量、およびステアリング操作速度に基づく判定を行わずに上記パーキングポジション切換操作が誤操作であると判定するものであることから、車両が走行状態である場合にはシフトポジションが要求されたポジションへ切り換わらずに現在のシフトポジションが維持されるので、シフト切換機構105を含む自動変速機6の損傷や、急激なショックによる乗り心地の低下などの発生が防止できる。また、車両が走行状態である場合には前記検出されたパーキングポジション切換操作が運転者の意図しない操作である可能性が高いので、車両が運転者の意思とは異なる駆動状態となることが好適に防止される。
【0061】
また、本実施例の車両のシフト制御装置によれば、誤操作判定手段148は、車速が予め設定された第2車速未満の場合には前記検出されたパーキングポジション切換操作以外の運転者の操作すなわちアクセル操作量、ブレーキ操作量、およびステアリング操作速度に基づく判定を行わずに上記パーキングポジション切換操作が誤操作ではないと判定するものであることから、検出されたシフトポジション切換操作が運転者の意図しない操作である場合であっても車両が略停止状態であるので、車両が運転者の意思とは異なる駆動状態となることが防止できる。
【0062】
また、本実施例の車両のシフト制御装置によれば、リジェクト手段150は、車速Vが第2車速V2以上且つ第1車速V1以下であるときに前記誤操作判定手段148によりパーキングポジション切換操作が誤操作ではないと判定された場合には、注意喚起のためのリジェクト音を鳴らし、前記シフト切換機構105のシフトポジションを車両の動力伝達経路を遮断するニュートラルポジションへ切り換えるものであることから、検出されたパーキングポジション切換操作が運転者の意図する操作であっても車両が車両が準停止状態の第2車速V2以上で走行中である場合には、シフトポジションが要求されたパーキングポジションへ切り換わらないので、シフト切換機構105を含む自動変速機6等の損傷や、急激なショックによる乗り心地の低下などの発生が防止できる。
【0063】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
【0064】
たとえば、前述の実施例において、誤操作判定手段148は、パーキングポジション切換操作が検出された場合に、予め定められた関係であってアクセル操作量Accが所定アクセル操作量Acc_f以下であり且つブレーキ操作量Bが所定ブレーキ操作量B_f以上であり且つステアリング操作速度Nが所定ステアリング操作速度N_f以下であるか否か、という関係から上記パーキングポジション切換操作が誤操作ではないか否かを判定するものであったが、これに限らず、上記アクセル操作量Acc、ブレーキ操作量B、またはステアリング操作速度Nの少なくとも1つに基づいて上記パーキングポジション切換操作が誤操作ではないか否かを判定するものであってもよい。また、操作判定手段148は、上記アクセル操作量Acc、ブレーキ操作量B、またはステアリング操作速度Nに限らず、検出されたパーキングポジション切換操作以外の運転者の操作であれば、その操作に基づいて予め定められた関係からそのパーキングポジション切換操作の誤操作を判定するものであってもよい。
【0065】
また、前述の実施例において、シフトポジション切換操作検出手段146は、シフトレバー位置信号PSHが変更されたかあるいは駐車指令信号Sが供給されたか否かに基づいて、シフトポジション切換操作が行われたか否かを検出するものであってもよく、また、誤操作判定手段148は、上記シフトポジション切換操作が検出された際に、そのシフトポジション切換操作以外の運転者の操作に基づいて予め定められた関係からそのシフトポジション切換操作の誤操作を判定するものであってもよい。そして、リジェクト手段150は、誤操作判定手段148において上記シフトポジション切換操作が誤操作であると判定された場合には、シフト切換機構105シフトポジションを切り換えるための信号として上記シフトレバー位置信号PSHあるいは駐車指令信号Sを受け付けないものであってもよい。
【0066】
また、前述の実施例において、シフト操作装置36は、その一例が開示されたものであり、例えばパドル型や押釦型等のスイッチタイプ等の他の構成でも実現されることができる。
【0067】
また、前述の実施例において、シフトポジション切換操作に応じてシフトポジションを切り換えるために駆動されるアクチュエータは、電動アクチュエータ34であったが、これに限らず、例えば油圧アクチュエータや空圧アクチュエータ等であってもよい。
【0068】
また、前述の実施例では、動力伝達機構としての有段式の自動変速機6が用いられていたが、例えば、手動変速機、無段変速機(CVT)、たとえばTHS等の電動モータを含むハイブリッドタイプ等その他の形式の動力伝達装置が設けられていてもよい。要するに、電動アクチュエータ34を介してシフトポジションまたはパーキングロックが切り換えられるシフトバイワイヤ方式のシフト制御装置または駐車制御装置が備わっていれば本発明は適用され得る。また、有段式の自動変速機6が用いられる場合にも、変速機の構造は前述の実施例のものに限定されず、遊星歯車装置の数や変速段数、およびクラッチC、ブレーキBの数が遊星歯車装置のどの要素と選択的に連結されているか等に特に限定はない。
【0069】
また、前述の実施例において、本発明の一実施例が適用された車両は、縦置き型の自動変速機6を有するFR型であって、走行用の駆動力源としてエンジン7を備えているものであったが、これに限られない。たとえば、内燃機関にて構成されるエンジン8の他に電動機等が設けられて駆動輪が駆動される例えばTHS等のハイブリッド車両、あるいは電動機だけが設けられて駆動輪が駆動される電気自動車等の車両にも適用されうる。また、たとえば、FF型あるいはその他の駆動形式の車両にも適用されうる。
【0070】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明が適用された車両の動力伝達機構すなわち自動変速機の構成を説明する骨子図である。
【図2】図1に示す自動変速機において変速比の異なる複数の変速段を成立させる際の複数の油圧式摩擦係合装置の作動状態を説明する図表である。
【図3】図1に示すクラッチおよびブレーキの各油圧アクチュエータの作動を制御するリニアソレノイドバルブに関する油圧制御回路の要部を示す回路図である。
【図4】シフトポジションを切り換えるためのシフトポジション切換操作の入力装置として機能するシフト操作装置を示す斜視図である。
【図5】図1に示す自動変速機やエンジンなどを制御するために車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。
【図6】図5に示すSBW−ECUに供給されるシフトレバー位置信号または駐車指令信号に従って作動する電動アクチュエータによりシフトポジションを切り換えるシフト切換機構の構成を示す斜視図である。
【図7】図6のシフト切換機構のディテントプレートを説明する図である。
【図8】車両のシフト制御装置として機能する図5に示すSBW−ECUの制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図9】図8のSBW−ECUの信号処理によって実行される制御作動であって、シフト制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0072】
6:自動変速機(動力伝達機構)
34:電動アクチュエータ(アクチュエータ)
36:シフト操作装置
38:シフトレバー(操作体)
48:SBW−ECU
105:シフト切換機構(駐車ロック機構)
148:誤操作判定手段
150:リジェクト手段(指令拒否手段)
Acc:アクセル操作量(アクセル開度)
B:ブレーキ操作量
:ステアリング操作速度
SH:シフトレバー位置信号(シフトポジション指令信号)
:駐車指令信号(シフトポジション指令信号)
V:車速
V1:第1車速
V2:第2車速

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者に操作される操作体を有し、該操作体のシフトポジション切換操作に応じてシフトポジション指令信号を発生するシフト操作装置と、該シフトポジション指令信号に従って作動するアクチュエータによりシフトポジションを切り換えるシフト切換機構とを備えた車両のシフト制御装置であって、
前記シフトポジション切換操作が為された際に、該シフトポジション切換操作以外の前記運転者の操作に基づいて該シフトポジション切換操作の誤操作を判定する誤操作判定手段と、
該誤操作判定手段において誤操作が有ると判定された場合には、前記シフト切換機構のシフトポジションを切り換えるための信号として前記シフトポジション指令信号を受け付けない指令拒否手段と
を、含むことを特徴とする車両のシフト制御装置。
【請求項2】
前記誤操作判定手段は、前記シフト操作装置におけるパーキングポジション切換操作が検出された際に、アクセル操作量、ブレーキ操作量、またはステアリング操作速度の少なくとも1つに基づいて予め定められた関係から該パーキングポジション切換操作の誤操作を判定するものであることを特徴とする請求項1の車両のシフト制御装置。
【請求項3】
前記誤操作判定手段は、車速が予め設定された第1車速を超える場合には前記シフトポジション切換操作以外の運転者の操作に基づく判定にかかわらず該シフトポジション切換操作が誤操作であると判定するものであることを特徴とする請求項1または2の車両のシフト制御装置。
【請求項4】
前記誤操作判定手段は、車速が前記第1車速より低く予め設定された第2車速未満の場合には前記シフトポジション切換操作以外の運転者の操作に基づく判定にかかわらず該シフトポジション切換操作が誤操作ではないと判定するものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1の車両のシフト制御装置。
【請求項5】
前記指令拒否手段は、車速が前記第2車速以上且つ前記第1車速以下であるときに前記誤操作判定手段により前記シフトポジション切換操作が誤操作ではないと判定された場合には、前記シフト切換機構のシフトポジションを車両の動力伝達経路を遮断するニュートラルポジションへ切り換えるものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1の車両のシフト制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−270689(P2009−270689A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124097(P2008−124097)
【出願日】平成20年5月10日(2008.5.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】