車両のシート装置
【課題】クロスメンバにより車体剛性の向上を図り、かつシートの折畳み時に、シートクッションを前方かつ下方に移動させて、後方に配設された荷室スペースを犠牲にすることなく荷室容量の拡大を図る車両のシート装置を提供する。
【解決手段】シート30は、シートバック32を前倒した時、シートクッション31をクロスメンバ9と前後方向にオーバラップさせつつ前方に移動させると共に、シートクッション31の少なくとも一部をクロスメンバ9の上面より下方に移動させる移動手段41を備えたことを特徴とする。
【解決手段】シート30は、シートバック32を前倒した時、シートクッション31をクロスメンバ9と前後方向にオーバラップさせつつ前方に移動させると共に、シートクッション31の少なくとも一部をクロスメンバ9の上面より下方に移動させる移動手段41を備えたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のシート装置に関し、詳しくは、フロアパネルから車室内に突出して車幅方向にわたって配設されたクロスメンバと、フロアパネル上に配設されたシートクッションと該シートクッション上に前倒可能に支持されたシートバックとを有するシートとを備え、該シートが上記クロスメンバよりも上方で、かつ、上記フロアパネルから離間する位置に配設され、シートの後方には荷室が形成されたような車両のシート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の後部車体剛性の向上、特に、リヤサスペンションの荷重入力によるリヤホイールハウスの内倒れを防止することを目的として、左右のリヤホイールハウス間に車幅方向にわたって車室内へ突出する大型のクロスメンバを配設する場合がある。
また、ステーションワゴンやミニバンにおいては、車両後部に可及的広い荷室スペースを確保することが望ましい。
【0003】
しかし、上述のような大型のクロスメンバを車室内に突出させ車幅方向にわたって配設した時、この大型のクロスメンバの上部にシートが配設されると、荷室スペースを広くしたい際に該シートを折畳んでも荷室の上下方向の高さが充分に確保できず、乗員のニーズを満たすことができない問題点があった。
【0004】
一方、特許文献1には、リヤフロアに後部縦壁を立設固定し、この後部縦壁にリヤシートのシートバックを前倒可能に枢支すると共に、上記リヤフロアにリンクを介してリヤシートのシートクッションを支持し、該シートクッションのシートクッションフレーム後部をシートバックの下部に連結し、シートバックを起立状態から前方へ折畳んだ時、上記リンクを介してシートクッションが前方かつ下方に移動するように構成したものが開示されている。
しかしながら、該特許文献1には、シートの折畳み時に、クロスメンバを回避しつつシートクッションを前方に移動させる構成については全く開示されていない。
【0005】
また、特許文献2には、リヤフロアにブラケットを立設固定し、このブラケットにリヤシートのシートバックを前倒可能に枢支すると共に、上記リヤフロアには複数のリンクを介してリヤシートのシートクッションを支持し、複数のリンクのうち、クロスメンバと対応する前側のリンクは該クロスメンバを跨ぐようにコ字状に屈曲形成し、シートバックを起立状態から前方へ折畳んだ時、クロスメンバとの干渉を回避しつつシートクッションが下方かつ後方に移動するように構成したものが開示されている。
【0006】
しかしながら、該特許文献2に開示されたものは、シートの折畳み時にシートクッションが下方かつ後方に移動するので、荷室の後方スペースが狭くなる問題点がある。
また、この特許文献2においても、シートの折畳み時に、クロスメンバを回避しつつシートクッションを前方に移動させるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−114792号公報
【特許文献2】特開2003−220869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、シートバックを前倒した時、シートクッションをクロスメンバと前後方向にオーバラップさせつつ前方に移動させると共に、該シートクッションの少なくとも一部を上記クロスメンバの上面より下方に移動させる移動手段を設けることで、上記クロスメンバにより車体剛性の向上を図ることができ、しかも、シートの折畳み時に、シートクッションを前方かつ下方に移動させて、後方に配設された荷室スペースを犠牲にすることなく荷室容量の拡大を図ることができる車両のシート装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による車両のシート装置は、車室の底面を形成するフロアパネルと、該フロアパネルから車室内に突出して車幅方向にわたって配設されたクロスメンバと、上記フロアパネル上に配設されたシートクッションと該シートクッション上に前倒可能に支持されたシートバックとを有するシートとを備え、上記シートが上記クロスメンバより上方かつ、上記フロアパネルから離間する位置に配設されると共に、該シートの後方に荷室が形成された車両のシート装置であって、上記シートはシートバックを前倒した時、上記シートクッションを上記クロスメンバと前後方向にオーバラップさせつつ前方に移動させると共に、該シートクッションの少なくとも一部を上記クロスメンバの上面より下方に移動させる移動手段を備えたものである。
上述のクロスメンバは、大型のクロスメンバが望ましい。
上記構成によれば、フロアパネルから車室内に突出して車幅方向にわたって配設されたクロスメンバを設けたので、このクロスメンバにより車体剛性、特に車体のねじり剛性の向上を図ることができる。
【0010】
しかも、上述の移動手段は、シートバックを前倒した時、上記シートクッションをクロスメンバと前後方向にオーバラップさせつつ前方に移動させると共に、該シートクッションの少なくとも一部を上記クロスメンバの上面よりも下方に移動させるので、シートの折畳み時に、シートクッションを前方に移動させつつ、少なくとも一部を上記クロスメンバより下方に移動させて、後方に配設された荷室スペースの前後幅と上下幅を犠牲にすることなく荷室容量の拡大を図ることができる。
換言すれば、シートの後方に配設された荷室を犠牲にすることなくシートの移動ができるものである。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記シートクッションは、上記移動手段によりシートクッション後部よりもシートクッション前部が上方に位置するように移動するものである。
上記構成によれば、シートの折畳み時に、シートが後傾して配設されるため、荷物を積み下ろしする際、容易に行なうことができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記移動手段は、上記シートクッションの前端を上記クロスメンバより前方に案内する前側リンクと、該シートクッションの後部を上記クロスメンバの上面より下方に案内する後側リンクと、を備えたものである。
上記構成によれば、上述の移動手段、特に前側リンクでシートクッションの前端をクロスメンバより前方に移動させるので、シートの後方に可及的広い荷室空間を確保することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記シートクッションの下面には、シート折畳み時に、上記クロスメンバと対応する位置に上方へ凹設する凹設部が設けられたものである。
上記構成によれば、上述の凹設部により折畳み時のシートクッションを可及的下方に移動させることができ、この結果、広い荷室スペースを確保することができる。特に、荷室スペースの上下方向の空間拡大を図ることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記フロアパネルおよび荷室の側部には前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレームが車室内に突出して配設され、着座状態のシートクッションは平面視で上記リヤサイドフレームとオーバラップする位置に配設されると共に、シートの折畳み時には上記シートクッション下面がリヤサイドフレーム上面より下方に移動するものである。
上記構成によれば、シートクッションが着座状態の位置にある時には、シートクッション幅(車幅方向の幅)を広く確保して、乗員の座り心地向上を図り、シートの折畳み状態では、シートクッション下面をリヤサイドフレーム上面よりも低い位置に移動させて、荷室スペースを確保することができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記シートクッションの側部には、該シートクッションと上記シートバックとを連結する連結部が設けられ、該連結部は上記リヤサイドフレームの車幅方向内側に配設されたものである。
上記構成によれば、連結部をリヤサイドフレームの車幅方向内側に配設したので、シートの折畳み時にリヤサイドフレームとの干渉を防止して、荷室容量を確保することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記シートの折畳み時に、上記シートバックの背面と荷室の底面を形成する荷室フロアとが連続して荷室面を形成するものである。
上記構成によれば、シートを折畳み状態と成した時、シートバック背面と荷室フロアとが連続して荷室面(望ましくは段差がない荷室面)を形成するので、荷物の積載性向上を図ることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記クロスメンバは、車体側壁から車室内に膨出する左右のリヤホイールハウス間に配設されたものである。
上記構成によれば、クロスメンバをリヤホイールハウス間に配設したので、リヤホイールハウス周りの車体剛性向上を図り、該リヤホイールハウスの内倒れ防止を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、シートバックを前倒した時、シートクッションをクロスメンバと前後方向にオーバラップさせつつ前方に移動させると共に、該シートクッションの少なくとも一部を上記クロスメンバの上面より下方に移動させる移動手段を設けたので、上記クロスメンバにより車体剛性の向上を図ることができ、しかも、シートの折畳み時に、シートクッションを前方に移動させつつ、少なくとも一部を上記クロスメンバより下方に移動させて、後方に配設された荷室スペースの前後幅と上下幅を犠牲にすることなく荷室容量の拡大を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の車両のシート装置を示す側面図
【図2】図1の要部の平面図
【図3】図1の要部拡大側面図
【図4】車両のシート装置を示す斜視図
【図5】シート折畳み時の平面図
【図6】シート折畳み時の側面図
【図7】図6のA−A線矢視断面図
【図8】図6のB−B線矢視断面図
【図9】図6のC−C線矢視断面図
【図10】車両のシート装置の他の実施例を通常着座状態にて示す側面図
【図11】シート折畳み時の側面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
クロスメンバにより車体剛性の向上を図り、かつシートの折畳み時に、シートクッションを前方かつ下方に移動させて、後方の荷室スペースを犠牲にすることなく荷室容量の拡大を図るという目的を、車室の底面を形成するフロアパネルと、該フロアパネルから車室内に突出して車幅方向にわたって配設されたクロスメンバと、上記フロアパネル上に配設されたシートクッションと該シートクッション上に前倒可能に支持されたシートバックとを有するシートとを備え、上記シートが上記クロスメンバより上方かつ、上記フロアパネルから離間する位置に配設されると共に、該シートの後方に荷室が形成された車両のシート装置であって、上記シートはシートバックを前倒した時、上記シートクッションを上記クロスメンバと前後方向にオーバラップさせつつ前方に移動させると共に、該シートクッションの少なくとも一部を上記クロスメンバの上面より下方に移動させる移動手段を備えるという構成にて実現した。
【実施例1】
【0021】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両のシート装置を示すが、まず、図1、図2を参照して、車体構造について説明する。
【0022】
車室1の底面を形成するフロアパネル2(詳しくは、リヤフロア)を設け、このフロアパネル2の後端部にはリヤエンドパネル3を立設固定している。
上述のリヤエンドパネル3の背面側にはリヤエンドメンバ4を接合固定して、リヤエンドパネル3とリヤエンドメンバ4との間には、車幅方向に延びるリヤエンド閉断面5を形成し、後部車体剛性の向上を図るように構成している。そして、上述のリヤエンドメンバ4のリヤ側にはリヤバンパ6を配設している。
【0023】
また、車体側壁から車室1内に膨出する左右のリヤホイールハウス7,7(但し、図面では右側のリヤホイールハウス7のみを示す)を設けると共に、上述のフロアパネル2の一部を構成する前低後高状のキックアップ部8を設け、このキックアップ部8から車室1内に突出して車幅方向にわたって配設された大型のクロスメンバ(いわゆるNo.4クロスメンバ)9を設け、このクロスメンバ9を上記左右のリヤホイールハウス7,7間に配設して、下部車体剛性、ねじり剛性の向上を図ると共に、リヤホイールハウス7の内倒れを防止すべく構成している。
上述の大型のクロスメンバ9とフロアパネルとしてのキックアップ部8との間には、車幅方向に延びる閉断面10を形成している。
【0024】
このクロスメンバ9が接合固定されたキックアップ部8の下部には、クロスメンバ9の配設位置と上下に対応するようにロアクロスメンバ11を配設し、キックアップ部8とロアクロスメンバ11との間には、車幅方向に延びる閉断面12を形成し、キックアップ部8を隔てて上下に対向する2つの閉断面10,12により、下部車体剛性、ねじり剛性のさらなる向上を図るように構成している。
上述のキックアップ部8とリヤエンドパネル3との車両前後方向中間位置に対応して、上述のフロアパネル2の下部には、車幅方向に延びるリヤクロスメンバ13を接合固定し、このリヤクロスメンバ13とフロアパネル2との間には、車幅方向に延びる閉断面14を形成して、下部車体剛性の向上を図るように構成している。
【0025】
一方、ルーフパネル15の後端下部には、リヤヘッダ16を接合固定し、このリヤヘッダ16とルーフパネル15の後端下部との間には、車幅方向に延びるヘッダ閉断面17を形成して、上部車体剛性の向上を図るように構成している。
【0026】
後述するシート30の後方において、ルーフパネル15とフロアパネル2との間には荷室18を形成すると共に、この荷室18の後部開口を開閉可能に覆うリフトゲート19を設けている。
このリフトゲート19は、ゲートアウタパネル20と、ゲートインナパネル21と、リヤウインドガラス22とを有し、上述のリヤヘッダ16の後部を支点として開閉するものである。
【0027】
図2、図7に示すように、上述のフロアパネル2および荷室18の側部には、車両の前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレームとしてのリヤサイドフレームアッパ23(但し、図面では車両右側のリヤサイドフレームアッパ23のみを示す)が車室1内に突出して配設されている。
上述のリヤサイドフレームアッパ23と上下方向に対応するようにリヤサイドフレームアンダ24を設け、リヤサイドフレームアッパ23とリヤサイドフレームアンダ24との間には、車両の前後方向に延びるリヤサイド閉断面25を形成して、側部車体剛性の向上を図るように構成している。
【0028】
図7に示すように、上述のリヤサイドフレームアンダ24は正面から見た断面形状が略凹状に形成されており、このリヤサイドフレームアンダ24はリヤホイールハウス7とフロアパネル2の下面との間に接合固定されている。
また、上述のリヤサイドフレームアッパ23は、リヤサイドフレームアンダ24の車外側片の上端部内側と、フロアパネル2の上面との間に接合固定されている。
なお、図1において、26はリヤサイドガラスである。
【0029】
次に車両のシート装置について詳述する。
この実施例では、3列シート車における3列目のシート装置について示している。また、以下の説明においては左右に分割されたセパレートシートのうち、車両右側に位置するセパレートシートのシート装置について説明するが、車両左側に位置するセパレートシートのシート装置も右側のそれと同様に構成されるものである。
【0030】
図3は図1の要部拡大側面図、図4は車両のシート装置を示す斜視図、図5はシート折畳み時の平面図(但し、図5においては図示の便宜上、シートバックを点線で示している)、図6は図5の側面図で、図1〜図6に示すように、フロアパネル2上にはシート30を配設している。
【0031】
このシート30は、フロアパネル2上に配設され、乗員の着座面を構成するシートクッション31と、このシートクッション31上に前倒可能に支持され、乗員の背もたれ面を構成するシートバック32とを備えている。
【0032】
図1、図3に示すように、該シート30は上述のクロスメンバ9よりも上方で、かつ上述のフロアパネル2から上方に離間する位置に配設されると共に、このシート30の後方には前述の荷室18が形成されている。
【0033】
また、図4にシート30の通常着座状態を斜視図にて示すように、シートクッション31後部の幅狭部側部と、シートバック32下部の幅狭部側部との間は左右一対の連結部33,33で連結されており、図2、図5に平面図で示すように、該連結部33はリヤサイドフレームアッパ23に対して車幅方向内側に配設されている。
【0034】
図3、図4に示すように、上述のシートクッション31は左右一対のブラケット34,34と、これら各ブラケット34,34の前後に設けられたそれぞれの前側リンク35,35および後側リンク36,36を介して、フロアパネル2上に配設されている。
上述のブラケット34は、前側突片34aと後側突片34bとを備えた縦片34cと、取付け片34dとを一体形成したもので、取付け片34dをフロアパネル2上面に固定し、前側突片34a,34aの対向面には枢支軸としてのピン37を介して前側リンク35の下部を連結している。上述の前側リンク35の上部は枢支軸としてのピン38を介してシートクッション31に連結されている。上述の後側突片34b,34bの対向面には枢支軸としてのピン39を介して後側リンク36を連結している。この後側リンク36の上部は枢支軸としてのピン40を介して連結部33の上部に連結されている。
【0035】
上述の合計4本のリンク35,35,36,36は、移動手段41を構成するもので、この移動手段41は、図6に示すように、シートバック32を前倒した時、上述のシートクッション31をクロスメンバ9と前後方向にオーバラップさせつつ前方に移動させると共に、該シートクッション31の少なくとも一部(シートクッション31の後部参照)をクロスメンバ9の上面より下方に移動させるものである。
【0036】
また、この実施例では、図6に示すように、シート30の折畳み時において、シートクッション31は、上述の移動手段41により、シートクッション31の後部よりも、シートクッション31の前部が上方に位置するように移動すべく構成されており、シート折畳み時に、シートクッション31の前部はクロスメンバ9上面に当接し、シートクッション31の後部はフロアパネル2上面に当接するように構成されている。
【0037】
ここで、上述の移動手段41を構成する前側リンク35は、シート折畳み時に、シートクッション31の前端を上述のクロスメンバ9よりも前方に案内し、移動手段41を構成する後側リンク36は、シート折畳み時に、シートクッション31の後部を上述のクロスメンバ9の上面よりも下方に案内するものである。
【0038】
また、図3に示すように、通常の着座状態において、シート30に着座する乗員の荷重を受けるために、前側リンク35、後側リンク36は共に前低後高状にスラント配置されている。
さらに、前側リンク35のリンク長は、後側リンク36のリンク長よりも長く設定されると共に、後側リンク36の下部枢支軸としてのピン39の上下方向の位置は、前側リンク35のピン37,38の上下方向の中間位置に設定されている。
【0039】
加えて、この実施例では図3と図6との間のリンク35,36の回動角度は、前側リンク35の回動角度が87〜89度に設定され、後側リンク36の回動角度が104〜106度に設定されている。
【0040】
図7は図6のA−A線矢視断面図、図8は図6のB−B線矢視断面図、図9は図6のC−C線矢視断面図であって、図7〜図9は何れもシート折畳み時の正面図である。
【0041】
図2に平面図で示すように、通常の着座状態においてシートクッション31は平面視で上述のリヤサイドフレームアッパ23とオーバラップする位置に配設されると共に、シート30の折畳み時には図7、図8に示すように、シートクッション31の下面がリヤサイドフレームアッパ23の上面(トップデッキ面)よりも下方に移動するように構成されている。
この下方移動を可能とするために、図8に示すように、シートクッション31における車幅方向外側の端部には、車幅方向内側に向けて幅狭となるテーパ面31Tが形成されている。
【0042】
ところで、図3に示すように、着座状態のシートバック32を所定の起立状態に係止保持するために、リヤホイールハウス7の後部からシートバック32の車幅方向外側部に向けてブラケット42を取付け、このブラケット42にはストライカ43を設けている。
また、シートバック32には上述のストライカ43を係合するラッチ44を設けると共に、シートバック32の上端部に設けたロック解徐部材45と上記ラッチ44との間をワイヤ46で連結し、ロック解徐部材45の押下げ操作時に、ラッチ44によるストライカ43の係合を解徐するように構成している。
【0043】
通常の着座状態においては、ボディ側のストライカ43とシートバック32側のラッチ44とが係合し、該シートバック32を所定の起立状態に係止保持するものである。
また、シート30の折畳み時には、ロック解徐部材45を押下げ操作して、ラッチ44によるストライカ43の係合を解徐すると、シートバック32をシートクッション31上に前倒させることができる。
【0044】
一方、図1に示すように、荷室18の底面を構成するフロアパネル2はリヤフロア2Rとなり、このリヤフロア2Rの上方部には荷室ボード50が略水平に配設されている。
この実施例では、該荷室ボード50はブラケット34の後側突片34b上部と、リヤエンドパネル3の段差部との間に、略水平状かつ取外し可能に搭載されている。
【0045】
また、上述の荷室ボード50の前端部には、図3、図6に示すように、ヒンジ51を介して、バタフライボード52を取付けている。上述のバタフライボード52は図示しない付勢手段により、常時シートバック32に当接するように付勢されている。
このため、図3に示す通常の着座状態から図6に示すようにシート30を折畳むと、シートバック32の背面と荷室18の底面を形成する荷室フロア(荷室ボード50参照)とが前後方向に連続して荷室面αを形成するように構成したものである。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印INは車両内方を示し、矢印OUTは車両外方を示す。
【0046】
図示実施例は上記の如く構成するものにして、以下作用を説明する。
図3に示す通常着座状態のシート30を折畳むには、まず、ロック解徐部材45を押下げ操作し、ワイヤ46を介してラッチ44をアンロック状態と成す。
その後、シートバック32を前方へ倒すと、シートクッション31は前後の各リンク35,36の回動軌跡により、クロスメンバ9と前後方向にオーバラップしつつ前方に移動し、該シートクッション31の後部がクロスメンバ9の上面より下方に移動して、図6に示す状態となる。
【0047】
図6に示すように、シート30の折畳み時には、シートクッション31の後部に対してシートクッション31の前部は上方に位置し、かつ、シートクッション31の前端はクロスメンバ9よりも前方に位置し、さらに、このように移動したシートクッション31上にシートバック32が前倒して重合し、この前倒したシートバック32の背面に対してバタフライボード52が付勢手段の付勢力で当接するので、シートバック32の背面と荷室18の底面を形成する荷室フロアとしての荷室ボード50が前後方向に連続して荷室面αを形成する。
【0048】
このように、図1〜図9で示した実施例1の車両のシート装置は、車室1の底面を形成するフロアパネル2と、該フロアパネル2から車室1内に突出して車幅方向にわたって配設された大型のクロスメンバ9と、上記フロアパネル2上に配設されたシートクッション31と該シートクッション31上に前倒可能に支持されたシートバック32とを有するシート30とを備え、上記シート30が上記クロスメンバ9より上方かつ、上記フロアパネル2から離間する位置に配設されると共に、該シート30の後方に荷室18が形成された車両のシート装置であって、上記シート30はシートバック32を前倒した時、上記シートクッション31を上記クロスメンバ9と前後方向にオーバラップさせつつ前方に移動させると共に、該シートクッション31の少なくとも一部(シートクッション31の後部参照)を上記クロスメンバ9の上面より下方に移動させる移動手段41を備えたものである(図3、図6参照)。
この構成によれば、フロアパネル2から車室1内に突出して車幅方向にわたって配設された大型のクロスメンバ9を設けたので、このクロスメンバ9により車体剛性、特に車体のねじり剛性の向上を図ることができる。
【0049】
しかも、上述の移動手段41は、シートバック32を前倒した時、上記シートクッション31をクロスメンバ9と前後方向にオーバラップさせつつ前方に移動させると共に、該シートクッション31の少なくとも一部を上記クロスメンバ9の上面よりも下方に移動させるので、シート30の折畳み時に、シートクッション31を前方に下方に移動させつつ、少なくとも一部を上記クロスメンバより下方に移動させて、後方に配設された荷室スペースの前後幅と上下幅を犠牲にすることなく荷室容量の拡大を図ることができる。
換言すれば、シート30の後方に配設された荷室18を犠牲にすることなくシート30の移動ができるものである。
【0050】
また、上記シートクッション31は、上記移動手段41によりシートクッション31後部よりもシートクッション31前部が上方に位置するように移動するものである(図6参照)。
この構成によれば、シート30の折畳み時に、シート30が後傾して配設されるため、荷物を積み下ろしする際、容易に行なうことができる。
【0051】
さらに、上記移動手段41は、上記シートクッション31の前端を上記クロスメンバ9より前方に案内する前側リンク35と、該シートクッション31の後部を上記クロスメンバ9の上面より下方に案内する後側リンク36と、を備えたものである(図6参照)。
この構成によれば、上述の移動手段41、特に前側リンク35でシートクッション31の前端をクロスメンバ9より前方に移動させるので、シート30の後方に可及的広い荷室空間を確保することができる。
【0052】
加えて、上記フロアパネル2および荷室18の側部には前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレーム(リヤサイドフレームアッパ23参照)が車室1内に突出して配設され、着座状態のシートクッション31は平面視で上記リヤサイドフレーム(リヤサイドフレームアッパ23参照)とオーバラップする位置に配設されると共に、シート30の折畳み時には上記シートクッション31下面がリヤサイドフレーム(リヤサイドフレームアッパ23参照)上面より下方に移動するものである(図2、図5、図6、図7参照)。
この構成によれば、シートクッション31が着座状態の位置にある時には、シートクッション幅(車幅方向の幅)を広く確保して、乗員の座り心地向上を図り、シート30の折畳み状態では、シートクッション31下面をリヤサイドフレーム(リヤサイドフレームアッパ23参照)の上面よりも低い位置に移動させて、荷室スペースを確保することができる。
【0053】
また、上記シートクッション31の側部には、該シートクッション31と上記シートバック32とを連結する連結部33が設けられ、該連結部33は上記リヤサイドフレーム(リヤサイドフレームアッパ23参照)の車幅方向内側に配設されたものである(図2、図5参照)。
この構成によれば、連結部33をリヤサイドフレーム(リヤサイドフレームアッパ23参照)の車幅方向内側に配設したので、シート30の折畳み時にリヤサイドフレーム(リヤサイドフレームアッパ23参照)との干渉を防止して、シートを下方に移動させることができるため、荷室容量を確保することができる。
【0054】
さらに、上記シート30の折畳み時に、上記シートバック32の背面と荷室18の底面を形成する荷室フロア(荷室ボード50参照)とが連続して荷室面αを形成するものである(図6参照)。
この構成によれば、シート30を折畳み状態と成した時、シートバック32背面と荷室フロア(荷室ボード50参照)とが連続して荷室面αを形成するので、荷物の積載性向上を図ることができる。なお、リヤフロア2Rと荷室ボード50との間の空間部には、スペアタイヤを格納してもよく、スペアタイヤレスの場合には工具などの他の物品を格納してもよい。
【0055】
さらにまた、上記クロスメンバ9は、車体側壁から車室1内に膨出する左右のリヤホイールハウス7,7間に配設されたものである(図1参照)。
この構成によれば、クロスメンバ9をリヤホイールハウス7,7間に配設したので、リヤホイールハウス7周りの車体剛性向上を図り、該リヤホイールハウス7の内倒れ防止を図ることができる。
【実施例2】
【0056】
図10、図11は車両のシート装置の他の実施例を示し、図10は通常着座状態の側面図、図11はシート折畳み時の側面図である。
この実施例2においてはシートクッション31の下面に、シート折畳み時において上述のクロスメンバ9と対応する位置に上方へ凹設する凹設部31Aを形成したものである。
【0057】
この凹設部31Aはクロスメンバ9の形状とも対応して、シートクッション31の下面において車幅方向全幅にわたって形成されたものである。
ここで、該実施例2においては、図10に示すように、通常の着座状態において、シート30に着座する乗員の荷重を受けるために、後側リンク36は前低後高状にスラント配置される一方、前側リンク35は略垂直状に配置されている。
【0058】
また、この実施例においても、前側リンク35のリンク長は、後側リンク36のリンク長よりも長く設定されると共に、後側リンク36の下部枢支軸としてのピン39の上下方向の位置は、前側リンク35のピン37,38の上下方向の中間位置に設定されている。
さらに、この実施例では図10と図11との間のリンク35,36の回動角度は、前側リンク35の回動角度が86〜88度に設定され、後側リンク36の回動角度が104〜106度に設定されている。
【0059】
このように、図10、図11で示した実施例2においては、上記シートクッション31の下面には、シート30折畳み時に、上記クロスメンバ9と対応する位置に上方へ凹設する凹設部31Aが設けられたものである(図10、図11参照)。
この構成によれば、上述の凹設部31Aにより折畳み時のシートクッション31を可及的下方に移動させることができ、この結果、広い荷室スペースを確保することができる。特に、荷室スペースの上下方向の空間拡大を図ることができる。
【0060】
図10、図11で示すこの実施例2においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例1と同様であるから、図10、図11において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0061】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のリヤサイドフレームは、実施例のリヤサイドフレームアッパ23に対応し、
以下同様に、
荷室フロアは、荷室ボード50に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上記実施例においては、3列シート車両の3列目シートに適用したが、2列シート車両の2列目シートに適用し、シートバックをリクライニング可能に構成してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…車室
2…フロアパネル
7…リヤホイールハウス
9…クロスメンバ
18…荷室
23…リヤサイドフレームアッパ(リヤサイドフレーム)
30…シート
31…シートクッション
31A…凹設部
32…シートバック
33…連結部
35…前側リンク
36…後側リンク
41…移動手段
50…荷室ボード(荷室フロア)
α…荷室面
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のシート装置に関し、詳しくは、フロアパネルから車室内に突出して車幅方向にわたって配設されたクロスメンバと、フロアパネル上に配設されたシートクッションと該シートクッション上に前倒可能に支持されたシートバックとを有するシートとを備え、該シートが上記クロスメンバよりも上方で、かつ、上記フロアパネルから離間する位置に配設され、シートの後方には荷室が形成されたような車両のシート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の後部車体剛性の向上、特に、リヤサスペンションの荷重入力によるリヤホイールハウスの内倒れを防止することを目的として、左右のリヤホイールハウス間に車幅方向にわたって車室内へ突出する大型のクロスメンバを配設する場合がある。
また、ステーションワゴンやミニバンにおいては、車両後部に可及的広い荷室スペースを確保することが望ましい。
【0003】
しかし、上述のような大型のクロスメンバを車室内に突出させ車幅方向にわたって配設した時、この大型のクロスメンバの上部にシートが配設されると、荷室スペースを広くしたい際に該シートを折畳んでも荷室の上下方向の高さが充分に確保できず、乗員のニーズを満たすことができない問題点があった。
【0004】
一方、特許文献1には、リヤフロアに後部縦壁を立設固定し、この後部縦壁にリヤシートのシートバックを前倒可能に枢支すると共に、上記リヤフロアにリンクを介してリヤシートのシートクッションを支持し、該シートクッションのシートクッションフレーム後部をシートバックの下部に連結し、シートバックを起立状態から前方へ折畳んだ時、上記リンクを介してシートクッションが前方かつ下方に移動するように構成したものが開示されている。
しかしながら、該特許文献1には、シートの折畳み時に、クロスメンバを回避しつつシートクッションを前方に移動させる構成については全く開示されていない。
【0005】
また、特許文献2には、リヤフロアにブラケットを立設固定し、このブラケットにリヤシートのシートバックを前倒可能に枢支すると共に、上記リヤフロアには複数のリンクを介してリヤシートのシートクッションを支持し、複数のリンクのうち、クロスメンバと対応する前側のリンクは該クロスメンバを跨ぐようにコ字状に屈曲形成し、シートバックを起立状態から前方へ折畳んだ時、クロスメンバとの干渉を回避しつつシートクッションが下方かつ後方に移動するように構成したものが開示されている。
【0006】
しかしながら、該特許文献2に開示されたものは、シートの折畳み時にシートクッションが下方かつ後方に移動するので、荷室の後方スペースが狭くなる問題点がある。
また、この特許文献2においても、シートの折畳み時に、クロスメンバを回避しつつシートクッションを前方に移動させるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−114792号公報
【特許文献2】特開2003−220869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、シートバックを前倒した時、シートクッションをクロスメンバと前後方向にオーバラップさせつつ前方に移動させると共に、該シートクッションの少なくとも一部を上記クロスメンバの上面より下方に移動させる移動手段を設けることで、上記クロスメンバにより車体剛性の向上を図ることができ、しかも、シートの折畳み時に、シートクッションを前方かつ下方に移動させて、後方に配設された荷室スペースを犠牲にすることなく荷室容量の拡大を図ることができる車両のシート装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による車両のシート装置は、車室の底面を形成するフロアパネルと、該フロアパネルから車室内に突出して車幅方向にわたって配設されたクロスメンバと、上記フロアパネル上に配設されたシートクッションと該シートクッション上に前倒可能に支持されたシートバックとを有するシートとを備え、上記シートが上記クロスメンバより上方かつ、上記フロアパネルから離間する位置に配設されると共に、該シートの後方に荷室が形成された車両のシート装置であって、上記シートはシートバックを前倒した時、上記シートクッションを上記クロスメンバと前後方向にオーバラップさせつつ前方に移動させると共に、該シートクッションの少なくとも一部を上記クロスメンバの上面より下方に移動させる移動手段を備えたものである。
上述のクロスメンバは、大型のクロスメンバが望ましい。
上記構成によれば、フロアパネルから車室内に突出して車幅方向にわたって配設されたクロスメンバを設けたので、このクロスメンバにより車体剛性、特に車体のねじり剛性の向上を図ることができる。
【0010】
しかも、上述の移動手段は、シートバックを前倒した時、上記シートクッションをクロスメンバと前後方向にオーバラップさせつつ前方に移動させると共に、該シートクッションの少なくとも一部を上記クロスメンバの上面よりも下方に移動させるので、シートの折畳み時に、シートクッションを前方に移動させつつ、少なくとも一部を上記クロスメンバより下方に移動させて、後方に配設された荷室スペースの前後幅と上下幅を犠牲にすることなく荷室容量の拡大を図ることができる。
換言すれば、シートの後方に配設された荷室を犠牲にすることなくシートの移動ができるものである。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記シートクッションは、上記移動手段によりシートクッション後部よりもシートクッション前部が上方に位置するように移動するものである。
上記構成によれば、シートの折畳み時に、シートが後傾して配設されるため、荷物を積み下ろしする際、容易に行なうことができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記移動手段は、上記シートクッションの前端を上記クロスメンバより前方に案内する前側リンクと、該シートクッションの後部を上記クロスメンバの上面より下方に案内する後側リンクと、を備えたものである。
上記構成によれば、上述の移動手段、特に前側リンクでシートクッションの前端をクロスメンバより前方に移動させるので、シートの後方に可及的広い荷室空間を確保することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記シートクッションの下面には、シート折畳み時に、上記クロスメンバと対応する位置に上方へ凹設する凹設部が設けられたものである。
上記構成によれば、上述の凹設部により折畳み時のシートクッションを可及的下方に移動させることができ、この結果、広い荷室スペースを確保することができる。特に、荷室スペースの上下方向の空間拡大を図ることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記フロアパネルおよび荷室の側部には前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレームが車室内に突出して配設され、着座状態のシートクッションは平面視で上記リヤサイドフレームとオーバラップする位置に配設されると共に、シートの折畳み時には上記シートクッション下面がリヤサイドフレーム上面より下方に移動するものである。
上記構成によれば、シートクッションが着座状態の位置にある時には、シートクッション幅(車幅方向の幅)を広く確保して、乗員の座り心地向上を図り、シートの折畳み状態では、シートクッション下面をリヤサイドフレーム上面よりも低い位置に移動させて、荷室スペースを確保することができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記シートクッションの側部には、該シートクッションと上記シートバックとを連結する連結部が設けられ、該連結部は上記リヤサイドフレームの車幅方向内側に配設されたものである。
上記構成によれば、連結部をリヤサイドフレームの車幅方向内側に配設したので、シートの折畳み時にリヤサイドフレームとの干渉を防止して、荷室容量を確保することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記シートの折畳み時に、上記シートバックの背面と荷室の底面を形成する荷室フロアとが連続して荷室面を形成するものである。
上記構成によれば、シートを折畳み状態と成した時、シートバック背面と荷室フロアとが連続して荷室面(望ましくは段差がない荷室面)を形成するので、荷物の積載性向上を図ることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記クロスメンバは、車体側壁から車室内に膨出する左右のリヤホイールハウス間に配設されたものである。
上記構成によれば、クロスメンバをリヤホイールハウス間に配設したので、リヤホイールハウス周りの車体剛性向上を図り、該リヤホイールハウスの内倒れ防止を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、シートバックを前倒した時、シートクッションをクロスメンバと前後方向にオーバラップさせつつ前方に移動させると共に、該シートクッションの少なくとも一部を上記クロスメンバの上面より下方に移動させる移動手段を設けたので、上記クロスメンバにより車体剛性の向上を図ることができ、しかも、シートの折畳み時に、シートクッションを前方に移動させつつ、少なくとも一部を上記クロスメンバより下方に移動させて、後方に配設された荷室スペースの前後幅と上下幅を犠牲にすることなく荷室容量の拡大を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の車両のシート装置を示す側面図
【図2】図1の要部の平面図
【図3】図1の要部拡大側面図
【図4】車両のシート装置を示す斜視図
【図5】シート折畳み時の平面図
【図6】シート折畳み時の側面図
【図7】図6のA−A線矢視断面図
【図8】図6のB−B線矢視断面図
【図9】図6のC−C線矢視断面図
【図10】車両のシート装置の他の実施例を通常着座状態にて示す側面図
【図11】シート折畳み時の側面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
クロスメンバにより車体剛性の向上を図り、かつシートの折畳み時に、シートクッションを前方かつ下方に移動させて、後方の荷室スペースを犠牲にすることなく荷室容量の拡大を図るという目的を、車室の底面を形成するフロアパネルと、該フロアパネルから車室内に突出して車幅方向にわたって配設されたクロスメンバと、上記フロアパネル上に配設されたシートクッションと該シートクッション上に前倒可能に支持されたシートバックとを有するシートとを備え、上記シートが上記クロスメンバより上方かつ、上記フロアパネルから離間する位置に配設されると共に、該シートの後方に荷室が形成された車両のシート装置であって、上記シートはシートバックを前倒した時、上記シートクッションを上記クロスメンバと前後方向にオーバラップさせつつ前方に移動させると共に、該シートクッションの少なくとも一部を上記クロスメンバの上面より下方に移動させる移動手段を備えるという構成にて実現した。
【実施例1】
【0021】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両のシート装置を示すが、まず、図1、図2を参照して、車体構造について説明する。
【0022】
車室1の底面を形成するフロアパネル2(詳しくは、リヤフロア)を設け、このフロアパネル2の後端部にはリヤエンドパネル3を立設固定している。
上述のリヤエンドパネル3の背面側にはリヤエンドメンバ4を接合固定して、リヤエンドパネル3とリヤエンドメンバ4との間には、車幅方向に延びるリヤエンド閉断面5を形成し、後部車体剛性の向上を図るように構成している。そして、上述のリヤエンドメンバ4のリヤ側にはリヤバンパ6を配設している。
【0023】
また、車体側壁から車室1内に膨出する左右のリヤホイールハウス7,7(但し、図面では右側のリヤホイールハウス7のみを示す)を設けると共に、上述のフロアパネル2の一部を構成する前低後高状のキックアップ部8を設け、このキックアップ部8から車室1内に突出して車幅方向にわたって配設された大型のクロスメンバ(いわゆるNo.4クロスメンバ)9を設け、このクロスメンバ9を上記左右のリヤホイールハウス7,7間に配設して、下部車体剛性、ねじり剛性の向上を図ると共に、リヤホイールハウス7の内倒れを防止すべく構成している。
上述の大型のクロスメンバ9とフロアパネルとしてのキックアップ部8との間には、車幅方向に延びる閉断面10を形成している。
【0024】
このクロスメンバ9が接合固定されたキックアップ部8の下部には、クロスメンバ9の配設位置と上下に対応するようにロアクロスメンバ11を配設し、キックアップ部8とロアクロスメンバ11との間には、車幅方向に延びる閉断面12を形成し、キックアップ部8を隔てて上下に対向する2つの閉断面10,12により、下部車体剛性、ねじり剛性のさらなる向上を図るように構成している。
上述のキックアップ部8とリヤエンドパネル3との車両前後方向中間位置に対応して、上述のフロアパネル2の下部には、車幅方向に延びるリヤクロスメンバ13を接合固定し、このリヤクロスメンバ13とフロアパネル2との間には、車幅方向に延びる閉断面14を形成して、下部車体剛性の向上を図るように構成している。
【0025】
一方、ルーフパネル15の後端下部には、リヤヘッダ16を接合固定し、このリヤヘッダ16とルーフパネル15の後端下部との間には、車幅方向に延びるヘッダ閉断面17を形成して、上部車体剛性の向上を図るように構成している。
【0026】
後述するシート30の後方において、ルーフパネル15とフロアパネル2との間には荷室18を形成すると共に、この荷室18の後部開口を開閉可能に覆うリフトゲート19を設けている。
このリフトゲート19は、ゲートアウタパネル20と、ゲートインナパネル21と、リヤウインドガラス22とを有し、上述のリヤヘッダ16の後部を支点として開閉するものである。
【0027】
図2、図7に示すように、上述のフロアパネル2および荷室18の側部には、車両の前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレームとしてのリヤサイドフレームアッパ23(但し、図面では車両右側のリヤサイドフレームアッパ23のみを示す)が車室1内に突出して配設されている。
上述のリヤサイドフレームアッパ23と上下方向に対応するようにリヤサイドフレームアンダ24を設け、リヤサイドフレームアッパ23とリヤサイドフレームアンダ24との間には、車両の前後方向に延びるリヤサイド閉断面25を形成して、側部車体剛性の向上を図るように構成している。
【0028】
図7に示すように、上述のリヤサイドフレームアンダ24は正面から見た断面形状が略凹状に形成されており、このリヤサイドフレームアンダ24はリヤホイールハウス7とフロアパネル2の下面との間に接合固定されている。
また、上述のリヤサイドフレームアッパ23は、リヤサイドフレームアンダ24の車外側片の上端部内側と、フロアパネル2の上面との間に接合固定されている。
なお、図1において、26はリヤサイドガラスである。
【0029】
次に車両のシート装置について詳述する。
この実施例では、3列シート車における3列目のシート装置について示している。また、以下の説明においては左右に分割されたセパレートシートのうち、車両右側に位置するセパレートシートのシート装置について説明するが、車両左側に位置するセパレートシートのシート装置も右側のそれと同様に構成されるものである。
【0030】
図3は図1の要部拡大側面図、図4は車両のシート装置を示す斜視図、図5はシート折畳み時の平面図(但し、図5においては図示の便宜上、シートバックを点線で示している)、図6は図5の側面図で、図1〜図6に示すように、フロアパネル2上にはシート30を配設している。
【0031】
このシート30は、フロアパネル2上に配設され、乗員の着座面を構成するシートクッション31と、このシートクッション31上に前倒可能に支持され、乗員の背もたれ面を構成するシートバック32とを備えている。
【0032】
図1、図3に示すように、該シート30は上述のクロスメンバ9よりも上方で、かつ上述のフロアパネル2から上方に離間する位置に配設されると共に、このシート30の後方には前述の荷室18が形成されている。
【0033】
また、図4にシート30の通常着座状態を斜視図にて示すように、シートクッション31後部の幅狭部側部と、シートバック32下部の幅狭部側部との間は左右一対の連結部33,33で連結されており、図2、図5に平面図で示すように、該連結部33はリヤサイドフレームアッパ23に対して車幅方向内側に配設されている。
【0034】
図3、図4に示すように、上述のシートクッション31は左右一対のブラケット34,34と、これら各ブラケット34,34の前後に設けられたそれぞれの前側リンク35,35および後側リンク36,36を介して、フロアパネル2上に配設されている。
上述のブラケット34は、前側突片34aと後側突片34bとを備えた縦片34cと、取付け片34dとを一体形成したもので、取付け片34dをフロアパネル2上面に固定し、前側突片34a,34aの対向面には枢支軸としてのピン37を介して前側リンク35の下部を連結している。上述の前側リンク35の上部は枢支軸としてのピン38を介してシートクッション31に連結されている。上述の後側突片34b,34bの対向面には枢支軸としてのピン39を介して後側リンク36を連結している。この後側リンク36の上部は枢支軸としてのピン40を介して連結部33の上部に連結されている。
【0035】
上述の合計4本のリンク35,35,36,36は、移動手段41を構成するもので、この移動手段41は、図6に示すように、シートバック32を前倒した時、上述のシートクッション31をクロスメンバ9と前後方向にオーバラップさせつつ前方に移動させると共に、該シートクッション31の少なくとも一部(シートクッション31の後部参照)をクロスメンバ9の上面より下方に移動させるものである。
【0036】
また、この実施例では、図6に示すように、シート30の折畳み時において、シートクッション31は、上述の移動手段41により、シートクッション31の後部よりも、シートクッション31の前部が上方に位置するように移動すべく構成されており、シート折畳み時に、シートクッション31の前部はクロスメンバ9上面に当接し、シートクッション31の後部はフロアパネル2上面に当接するように構成されている。
【0037】
ここで、上述の移動手段41を構成する前側リンク35は、シート折畳み時に、シートクッション31の前端を上述のクロスメンバ9よりも前方に案内し、移動手段41を構成する後側リンク36は、シート折畳み時に、シートクッション31の後部を上述のクロスメンバ9の上面よりも下方に案内するものである。
【0038】
また、図3に示すように、通常の着座状態において、シート30に着座する乗員の荷重を受けるために、前側リンク35、後側リンク36は共に前低後高状にスラント配置されている。
さらに、前側リンク35のリンク長は、後側リンク36のリンク長よりも長く設定されると共に、後側リンク36の下部枢支軸としてのピン39の上下方向の位置は、前側リンク35のピン37,38の上下方向の中間位置に設定されている。
【0039】
加えて、この実施例では図3と図6との間のリンク35,36の回動角度は、前側リンク35の回動角度が87〜89度に設定され、後側リンク36の回動角度が104〜106度に設定されている。
【0040】
図7は図6のA−A線矢視断面図、図8は図6のB−B線矢視断面図、図9は図6のC−C線矢視断面図であって、図7〜図9は何れもシート折畳み時の正面図である。
【0041】
図2に平面図で示すように、通常の着座状態においてシートクッション31は平面視で上述のリヤサイドフレームアッパ23とオーバラップする位置に配設されると共に、シート30の折畳み時には図7、図8に示すように、シートクッション31の下面がリヤサイドフレームアッパ23の上面(トップデッキ面)よりも下方に移動するように構成されている。
この下方移動を可能とするために、図8に示すように、シートクッション31における車幅方向外側の端部には、車幅方向内側に向けて幅狭となるテーパ面31Tが形成されている。
【0042】
ところで、図3に示すように、着座状態のシートバック32を所定の起立状態に係止保持するために、リヤホイールハウス7の後部からシートバック32の車幅方向外側部に向けてブラケット42を取付け、このブラケット42にはストライカ43を設けている。
また、シートバック32には上述のストライカ43を係合するラッチ44を設けると共に、シートバック32の上端部に設けたロック解徐部材45と上記ラッチ44との間をワイヤ46で連結し、ロック解徐部材45の押下げ操作時に、ラッチ44によるストライカ43の係合を解徐するように構成している。
【0043】
通常の着座状態においては、ボディ側のストライカ43とシートバック32側のラッチ44とが係合し、該シートバック32を所定の起立状態に係止保持するものである。
また、シート30の折畳み時には、ロック解徐部材45を押下げ操作して、ラッチ44によるストライカ43の係合を解徐すると、シートバック32をシートクッション31上に前倒させることができる。
【0044】
一方、図1に示すように、荷室18の底面を構成するフロアパネル2はリヤフロア2Rとなり、このリヤフロア2Rの上方部には荷室ボード50が略水平に配設されている。
この実施例では、該荷室ボード50はブラケット34の後側突片34b上部と、リヤエンドパネル3の段差部との間に、略水平状かつ取外し可能に搭載されている。
【0045】
また、上述の荷室ボード50の前端部には、図3、図6に示すように、ヒンジ51を介して、バタフライボード52を取付けている。上述のバタフライボード52は図示しない付勢手段により、常時シートバック32に当接するように付勢されている。
このため、図3に示す通常の着座状態から図6に示すようにシート30を折畳むと、シートバック32の背面と荷室18の底面を形成する荷室フロア(荷室ボード50参照)とが前後方向に連続して荷室面αを形成するように構成したものである。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印INは車両内方を示し、矢印OUTは車両外方を示す。
【0046】
図示実施例は上記の如く構成するものにして、以下作用を説明する。
図3に示す通常着座状態のシート30を折畳むには、まず、ロック解徐部材45を押下げ操作し、ワイヤ46を介してラッチ44をアンロック状態と成す。
その後、シートバック32を前方へ倒すと、シートクッション31は前後の各リンク35,36の回動軌跡により、クロスメンバ9と前後方向にオーバラップしつつ前方に移動し、該シートクッション31の後部がクロスメンバ9の上面より下方に移動して、図6に示す状態となる。
【0047】
図6に示すように、シート30の折畳み時には、シートクッション31の後部に対してシートクッション31の前部は上方に位置し、かつ、シートクッション31の前端はクロスメンバ9よりも前方に位置し、さらに、このように移動したシートクッション31上にシートバック32が前倒して重合し、この前倒したシートバック32の背面に対してバタフライボード52が付勢手段の付勢力で当接するので、シートバック32の背面と荷室18の底面を形成する荷室フロアとしての荷室ボード50が前後方向に連続して荷室面αを形成する。
【0048】
このように、図1〜図9で示した実施例1の車両のシート装置は、車室1の底面を形成するフロアパネル2と、該フロアパネル2から車室1内に突出して車幅方向にわたって配設された大型のクロスメンバ9と、上記フロアパネル2上に配設されたシートクッション31と該シートクッション31上に前倒可能に支持されたシートバック32とを有するシート30とを備え、上記シート30が上記クロスメンバ9より上方かつ、上記フロアパネル2から離間する位置に配設されると共に、該シート30の後方に荷室18が形成された車両のシート装置であって、上記シート30はシートバック32を前倒した時、上記シートクッション31を上記クロスメンバ9と前後方向にオーバラップさせつつ前方に移動させると共に、該シートクッション31の少なくとも一部(シートクッション31の後部参照)を上記クロスメンバ9の上面より下方に移動させる移動手段41を備えたものである(図3、図6参照)。
この構成によれば、フロアパネル2から車室1内に突出して車幅方向にわたって配設された大型のクロスメンバ9を設けたので、このクロスメンバ9により車体剛性、特に車体のねじり剛性の向上を図ることができる。
【0049】
しかも、上述の移動手段41は、シートバック32を前倒した時、上記シートクッション31をクロスメンバ9と前後方向にオーバラップさせつつ前方に移動させると共に、該シートクッション31の少なくとも一部を上記クロスメンバ9の上面よりも下方に移動させるので、シート30の折畳み時に、シートクッション31を前方に下方に移動させつつ、少なくとも一部を上記クロスメンバより下方に移動させて、後方に配設された荷室スペースの前後幅と上下幅を犠牲にすることなく荷室容量の拡大を図ることができる。
換言すれば、シート30の後方に配設された荷室18を犠牲にすることなくシート30の移動ができるものである。
【0050】
また、上記シートクッション31は、上記移動手段41によりシートクッション31後部よりもシートクッション31前部が上方に位置するように移動するものである(図6参照)。
この構成によれば、シート30の折畳み時に、シート30が後傾して配設されるため、荷物を積み下ろしする際、容易に行なうことができる。
【0051】
さらに、上記移動手段41は、上記シートクッション31の前端を上記クロスメンバ9より前方に案内する前側リンク35と、該シートクッション31の後部を上記クロスメンバ9の上面より下方に案内する後側リンク36と、を備えたものである(図6参照)。
この構成によれば、上述の移動手段41、特に前側リンク35でシートクッション31の前端をクロスメンバ9より前方に移動させるので、シート30の後方に可及的広い荷室空間を確保することができる。
【0052】
加えて、上記フロアパネル2および荷室18の側部には前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレーム(リヤサイドフレームアッパ23参照)が車室1内に突出して配設され、着座状態のシートクッション31は平面視で上記リヤサイドフレーム(リヤサイドフレームアッパ23参照)とオーバラップする位置に配設されると共に、シート30の折畳み時には上記シートクッション31下面がリヤサイドフレーム(リヤサイドフレームアッパ23参照)上面より下方に移動するものである(図2、図5、図6、図7参照)。
この構成によれば、シートクッション31が着座状態の位置にある時には、シートクッション幅(車幅方向の幅)を広く確保して、乗員の座り心地向上を図り、シート30の折畳み状態では、シートクッション31下面をリヤサイドフレーム(リヤサイドフレームアッパ23参照)の上面よりも低い位置に移動させて、荷室スペースを確保することができる。
【0053】
また、上記シートクッション31の側部には、該シートクッション31と上記シートバック32とを連結する連結部33が設けられ、該連結部33は上記リヤサイドフレーム(リヤサイドフレームアッパ23参照)の車幅方向内側に配設されたものである(図2、図5参照)。
この構成によれば、連結部33をリヤサイドフレーム(リヤサイドフレームアッパ23参照)の車幅方向内側に配設したので、シート30の折畳み時にリヤサイドフレーム(リヤサイドフレームアッパ23参照)との干渉を防止して、シートを下方に移動させることができるため、荷室容量を確保することができる。
【0054】
さらに、上記シート30の折畳み時に、上記シートバック32の背面と荷室18の底面を形成する荷室フロア(荷室ボード50参照)とが連続して荷室面αを形成するものである(図6参照)。
この構成によれば、シート30を折畳み状態と成した時、シートバック32背面と荷室フロア(荷室ボード50参照)とが連続して荷室面αを形成するので、荷物の積載性向上を図ることができる。なお、リヤフロア2Rと荷室ボード50との間の空間部には、スペアタイヤを格納してもよく、スペアタイヤレスの場合には工具などの他の物品を格納してもよい。
【0055】
さらにまた、上記クロスメンバ9は、車体側壁から車室1内に膨出する左右のリヤホイールハウス7,7間に配設されたものである(図1参照)。
この構成によれば、クロスメンバ9をリヤホイールハウス7,7間に配設したので、リヤホイールハウス7周りの車体剛性向上を図り、該リヤホイールハウス7の内倒れ防止を図ることができる。
【実施例2】
【0056】
図10、図11は車両のシート装置の他の実施例を示し、図10は通常着座状態の側面図、図11はシート折畳み時の側面図である。
この実施例2においてはシートクッション31の下面に、シート折畳み時において上述のクロスメンバ9と対応する位置に上方へ凹設する凹設部31Aを形成したものである。
【0057】
この凹設部31Aはクロスメンバ9の形状とも対応して、シートクッション31の下面において車幅方向全幅にわたって形成されたものである。
ここで、該実施例2においては、図10に示すように、通常の着座状態において、シート30に着座する乗員の荷重を受けるために、後側リンク36は前低後高状にスラント配置される一方、前側リンク35は略垂直状に配置されている。
【0058】
また、この実施例においても、前側リンク35のリンク長は、後側リンク36のリンク長よりも長く設定されると共に、後側リンク36の下部枢支軸としてのピン39の上下方向の位置は、前側リンク35のピン37,38の上下方向の中間位置に設定されている。
さらに、この実施例では図10と図11との間のリンク35,36の回動角度は、前側リンク35の回動角度が86〜88度に設定され、後側リンク36の回動角度が104〜106度に設定されている。
【0059】
このように、図10、図11で示した実施例2においては、上記シートクッション31の下面には、シート30折畳み時に、上記クロスメンバ9と対応する位置に上方へ凹設する凹設部31Aが設けられたものである(図10、図11参照)。
この構成によれば、上述の凹設部31Aにより折畳み時のシートクッション31を可及的下方に移動させることができ、この結果、広い荷室スペースを確保することができる。特に、荷室スペースの上下方向の空間拡大を図ることができる。
【0060】
図10、図11で示すこの実施例2においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例1と同様であるから、図10、図11において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0061】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のリヤサイドフレームは、実施例のリヤサイドフレームアッパ23に対応し、
以下同様に、
荷室フロアは、荷室ボード50に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上記実施例においては、3列シート車両の3列目シートに適用したが、2列シート車両の2列目シートに適用し、シートバックをリクライニング可能に構成してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…車室
2…フロアパネル
7…リヤホイールハウス
9…クロスメンバ
18…荷室
23…リヤサイドフレームアッパ(リヤサイドフレーム)
30…シート
31…シートクッション
31A…凹設部
32…シートバック
33…連結部
35…前側リンク
36…後側リンク
41…移動手段
50…荷室ボード(荷室フロア)
α…荷室面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の底面を形成するフロアパネルと、
該フロアパネルから車室内に突出して車幅方向にわたって配設されたクロスメンバと、
上記フロアパネル上に配設されたシートクッションと該シートクッション上に前倒可能に支持されたシートバックとを有するシートとを備え、
上記シートが上記クロスメンバより上方かつ、上記フロアパネルから離間する位置に配設されると共に、該シートの後方に荷室が形成された車両のシート装置であって、
上記シートはシートバックを前倒した時、上記シートクッションを上記クロスメンバと前後方向にオーバラップさせつつ前方に移動させると共に、
該シートクッションの少なくとも一部を上記クロスメンバの上面より下方に移動させる移動手段を備えたことを特徴とする
車両のシート装置。
【請求項2】
上記シートクッションは、上記移動手段によりシートクッション後部よりもシートクッション前部が上方に位置するように移動する
請求項1記載の車両のシート装置。
【請求項3】
上記移動手段は、上記シートクッションの前端を上記クロスメンバより前方に案内する前側リンクと、
該シートクッションの後部を上記クロスメンバの上面より下方に案内する後側リンクと、を備えた
請求項1または2記載の車両のシート装置。
【請求項4】
上記シートクッションの下面には、シート折畳み時に、上記クロスメンバと対応する位置に上方へ凹設する凹設部が設けられた
請求項1または2記載の車両のシート装置。
【請求項5】
上記フロアパネルおよび荷室の側部には前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレームが車室内に突出して配設され、
着座状態のシートクッションは平面視で上記リヤサイドフレームとオーバラップする位置に配設されると共に、
シートの折畳み時には上記シートクッション下面がリヤサイドフレーム上面より下方に移動する
請求項1〜4の何れか1に記載の車両のシート装置。
【請求項6】
上記シートクッションの側部には、該シートクッションと上記シートバックとを連結する連結部が設けられ、
該連結部は上記リヤサイドフレームの車幅方向内側に配設された
請求項5記載の車両のシート装置。
【請求項7】
上記シートの折畳み時に、上記シートバックの背面と荷室の底面を形成する荷室フロアとが連続して荷室面を形成する
請求項1〜6の何れか1に記載の車両のシート装置。
【請求項8】
上記クロスメンバは、車体側壁から車室内に膨出する左右のリヤホイールハウス間に配設された
請求項1〜7の何れか1に記載の車両のシート装置。
【請求項1】
車室の底面を形成するフロアパネルと、
該フロアパネルから車室内に突出して車幅方向にわたって配設されたクロスメンバと、
上記フロアパネル上に配設されたシートクッションと該シートクッション上に前倒可能に支持されたシートバックとを有するシートとを備え、
上記シートが上記クロスメンバより上方かつ、上記フロアパネルから離間する位置に配設されると共に、該シートの後方に荷室が形成された車両のシート装置であって、
上記シートはシートバックを前倒した時、上記シートクッションを上記クロスメンバと前後方向にオーバラップさせつつ前方に移動させると共に、
該シートクッションの少なくとも一部を上記クロスメンバの上面より下方に移動させる移動手段を備えたことを特徴とする
車両のシート装置。
【請求項2】
上記シートクッションは、上記移動手段によりシートクッション後部よりもシートクッション前部が上方に位置するように移動する
請求項1記載の車両のシート装置。
【請求項3】
上記移動手段は、上記シートクッションの前端を上記クロスメンバより前方に案内する前側リンクと、
該シートクッションの後部を上記クロスメンバの上面より下方に案内する後側リンクと、を備えた
請求項1または2記載の車両のシート装置。
【請求項4】
上記シートクッションの下面には、シート折畳み時に、上記クロスメンバと対応する位置に上方へ凹設する凹設部が設けられた
請求項1または2記載の車両のシート装置。
【請求項5】
上記フロアパネルおよび荷室の側部には前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレームが車室内に突出して配設され、
着座状態のシートクッションは平面視で上記リヤサイドフレームとオーバラップする位置に配設されると共に、
シートの折畳み時には上記シートクッション下面がリヤサイドフレーム上面より下方に移動する
請求項1〜4の何れか1に記載の車両のシート装置。
【請求項6】
上記シートクッションの側部には、該シートクッションと上記シートバックとを連結する連結部が設けられ、
該連結部は上記リヤサイドフレームの車幅方向内側に配設された
請求項5記載の車両のシート装置。
【請求項7】
上記シートの折畳み時に、上記シートバックの背面と荷室の底面を形成する荷室フロアとが連続して荷室面を形成する
請求項1〜6の何れか1に記載の車両のシート装置。
【請求項8】
上記クロスメンバは、車体側壁から車室内に膨出する左右のリヤホイールハウス間に配設された
請求項1〜7の何れか1に記載の車両のシート装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−116224(P2011−116224A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275036(P2009−275036)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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