説明

車両の下部車体構造

【課題】前後方向がコンパクトで、かつ低全高のコンパクトなボディにおいて燃料タンク容量の確保と、乗員の居住性確保との両立を図る車両の下部車体構造を提供する。
【解決手段】キックアップ部3を第1キックアップ部4と、第1キックアップ部4に対し車幅方向に並設され、かつ高さ方向でより高い第2キックアップ部5とから構成し、第2キックアップ部5の下方に燃料タンク48を配設し、第1キックアップ部4の上方に第1乗員用シートを配設し、第2キックアップ部5の上方には、小型の第2乗員用シートを配設したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室の下面(床面)を形成するフロアパネルの後方に上方へ段上げされたキックアップ部が設けられ、該キックアップ部上に乗員用シートが配設されたような車両の下部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述例の車両の下部車体構造としては、図15に平面図で、図16に運転席側の側面図で、図17に助手席側の側面図でそれぞれ示す構造のものがある。
すなわち、車室の下面を形成するフロアパネル100を設け、このフロアパネル100の前部に運転席シート101と助手席シート102とを左右に並設する一方、フロアパネル100の後方には上方へ段上げされた左右同一高さのキックアップ部103を設け、このキックアップ部103上には左右の乗員用シートとしてのリヤシート104,105を並設し、さらに、上述のキックアップ部103の車幅方向中間部において、その車外側下方には車両補機としての燃料タンク106を配設した構造である。
【0003】
一方、特許文献1には、フロアパネルに対して、湾曲部と、この湾曲部をそのまま上方に延長させた延長部とを備えて成る左右同一高さのキックアップ部を段上げ形成し、このキックアップ部の車外側前部と車外側後部とに車幅方向に延びるクロスメンバをそれぞれ設ける一方、上記キックアップ部上にはリヤシートを配設し、キックアップ部の車外側下方において上記前後の各クロスメンバ間には、その上面が上述の湾曲部および延長部に沿う形状の燃料タンク(車両補機)を配設したものが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、車室の下面を形成するフロアパネルの後方に段部を介してキックアップフロア部を連設し、このキックアップフロア部にリヤキックアップ部を介してリヤフロアを連設し、これら段部、キックアップフロア部、リヤキックアップ部、リヤフロアを左右同一高さに設定すると共に、上述のキックアップフロア部およびリヤキックアップ部上に乗員用シートとしてのリヤシートを配設する一方、上述の段部、キックアップフロア部、リヤキックアップ部およびリヤフロアの車外側下方には、これら各要素の連続形状に沿う構造の燃料タンク(車両補機)を配設したものが開示されている。
【0005】
しかしながら、上述の各特許文献1、2には、車幅方向においてキックアップ部の大きさ(高さ)を異ならせるという技術思想は何等開示されていない。
ところで、前後方向がコンパクトで、かつ低全高のコンパクトな車両を構成する要請があり、この場合、乗員の居住性を確保すると共に、燃料タンクの容量を確保する必要がある。
【特許文献1】特開平6−211169号公報
【特許文献2】特開平5−627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、フロアパネル後方に上方へ段上げされたキックアップ部を設け、このキックアップ部を、第1キックアップ部と、この第1キックアップ部に対して車幅方向で並設され、かつ、高さ方向で第1キックアップ部より高い第2キックアップ部とで構成し、この第2キックアップ部の下方に燃料タンクを配設する一方、第1キックアップ部の上方に第1乗員用シートを配設し、また第2キックアップ部の上方には小型の第2乗員用シートを配設することで、前後方向がコンパクトで、かつ低全高のコンパクトなボディにおいて燃料タンク容量の確保と、乗員の居住性確保との両立を図ることができる車両の下部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による車両の下部車体構造は、車室の下面を形成するフロアパネルの後方に、上方に段上げされたキックアップ部が設けられ、該キックアップ部上に乗員用シートが配設された車両の下部車体構造であって、上記キックアップ部は第1キックアップ部と、該第1キックアップ部に対し車幅方向に並設され、かつ高さ方向でより高い第2キックアップ部とから成り、上記第2キックアップ部の下方に燃料タンクが配設されると共に、上記第1キックアップ部の上方に第1乗員用シートが配設され、上記第2キックアップ部の上方には、第1乗員用シートより小型の第2乗員用シートが配設されたものである。
上述のキックアップ部上の乗員用シートは、第1キックアップ部に対応して大人の着座が許容される大型のシートに設定し、高さが高い第2キックアップ部に対応して子供専用の小型のシートに設定してもよい。
上記構成によれば、高さが高い第2キックアップ部の下方(車外側)に燃料タンクを配設し、この第2キックアップ部の上方には第1乗員用シートよりも小型の第2乗員用シートを配設し、高さが低い第1キックアップ部の上方には第1乗員用シートを配設したので、前後方向がコンパクトで、かつ低全高のコンパクトなボディにおいて、燃料タンク容量の確保と、乗員の居住性確保との両立を図ることができる。
【0008】
この発明の一実施態様においては、上記第1乗員用シートの前方に運転席シートが配設され、上記第2乗員用シートの前方には、運転席シートと車幅方向で並設された助手席シートが配設されたものである。
上記構成によれば、運転席シートと助手席シートとを車両の前後方向にオフセットさせなくても、前席乗員の居住空間を確保することができる。
【0009】
この発明の一実施態様においては、上記第2キックアップ部にはクロスメンバが前後に複数並設されたものである。
上記構成によれば、並設した複数のクロスメンバにより、車体剛性を確保することができ、また側突に対する剛性の向上を図ることができ、特に、小型の第2乗員用シートが配設される側の充分な強度を確保することができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記第2キックアップ部は、フロアパネルから立上がる前面壁部と、該前面壁部より後方に延びるキックアップフロア部とから成り、上記前面壁部に前部クロスメンバが配設されたものである。
上記構成によれば、フロアパネルの形状が変化する部位(応力が集中する部位)に前部クロスメンバを設けたので、車体剛性を確保することができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記第2キックアップ部はフロアパネルから立上がる前面壁部と、該前面壁部より後方に延びるキックアップフロア部とから成り、上記前面壁部とキックアップフロア部との角部に中間クロスメンバが配設されたものである。
上記構成によれば、第2キックアップ部の前面壁部とキックアップフロア部との角部、すなわち、フロアパネルの形状が変化する部位(応力が集中する部位)に中間クロスメンバを設けたので、車体剛性を確保することができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記第2キックアップ部のクロスメンバは第1キックアップ部のクロスメンバと車幅方向中央のトンネル部で連結されたものである。
上述の第2キックアップ部のクロスメンバは、前部クロスメンバまたは/および中間クロスメンバとすることができる。
上記構成によれば、車体の全体剛性、ねじり剛性の向上を図ることができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記第2キックアップ部のクロスメンバは着脱可能に設けられたものである。
上記構成によれば、クロスメンバの取外し時にメンテナンス性、サービス性を確保することができる。つまり、第2キックアップ部の下方には燃料タンクが配設されているので、このクロスメンバを取外した時、燃料タンクに対するサービス性を確保することができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記第2キックアップ部のクロスメンバの閉断面内に補機が配設されたものである。
上述の補機は、燃料ポンプに設定してもよい。
上記構成によれば、第2キックアップ部のクロスメンバの閉断面内に補機を配設するので、この第2キックアップ部の下方に配設する燃料タンクの容量増大を図ることができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、車幅方向中央のトンネル部には、上記燃料タンクのサービスホールが形成されたものである。
上記構成によれば、サービスホールの形成により、燃料タンクのサービス性を確保することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記第1キックアップ部のキックアップフロア部は凹設された凹部を備え、該凹部に第1乗員用シートが配設されたものである。
上記構成によれば、凹部に配設される第1乗員用シートとルーフ部との間の上下方向のスペースが確保できるので、低全高のコンパクトな車両であっても該シートに着座する後席乗員の居住空間を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、フロアパネル後方に上方へ段上げされたキックアップ部を設け、このキックアップ部を、第1キックアップ部と、この第1キックアップ部に対して車幅方向で並設され、かつ、高さ方向で第1キックアップ部より高い第2キックアップ部とで構成し、この第2キックアップ部の下方に燃料タンクを配設する一方、第1キックアップ部の上方に第1乗員用シートを配設し、また第2キックアップ部の上方には小型の第2乗員用シートを配設したので、前後方向がコンパクトで、かつ低全高のコンパクトなボディにおいて燃料タンク容量の確保と、乗員の居住性確保との両立を図ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
前後方向がコンパクトで、かつ低全高のコンパクトなボディにおいて、燃料タンク容量の確保と、乗員の居住性確保との両立を図るという目的を、車室の下面を形成するフロアパネルの後方に、上方に段上げされたキックアップ部を設け、該キックアップ部上に乗員用シートを配設した車両の下部車体構造であって、上記キックアップ部は第1キックアップ部と、該第1キックアップ部に対し車幅方向に並設され、かつ高さ方向でより高い第2キックアップ部とで構成し、上記第2キックアップ部の下方に燃料タンクを配設すると共に、上記第1キックアップ部の上方に第1乗員用シートを配設し、上記第2キックアップ部の上方には、第1乗員用シートより小型の第2乗員用シートを配設するという構成にて実現した。
【実施例】
【0019】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
(実施例1)
図面は車両の下部車体構造を示し、図1(斜視図)、図2(底面図)、図3(運転席側の側面図)、図4(助手席側の側面図)において、エンジンルームと車室とを前後方向に仕切るダッシュロアパネル(ダッシュパネル)1を設け、ダッシュロアパネル1の下端後部には、後方に向けてほぼ水平に延びるフロアパネル2を連設し、このフロアパネル2で車室の下面つまり床面を構成している。
【0020】
上述のフロアパネル2の後部には上方へ段上げされたキックアップ部3を設けるが、このキックアップ部3は運転席側(車両の左側参照)の第1キックアップ部4と、この第1キックアップ部4に対して車幅方向で並設された助手席側(車両の右側参照)の第2キックアップ部5とを備えている。
【0021】
しかも、第2キックアップ部5は第1キックアップ部4よりも高さ方向でより一層高く形成されている。この実施例では、第2キックアップ部5の高さは第1キックアップ部4の高さの2倍以上に設定されている。
【0022】
ここで、上述の第1キックアップ部4は、図3に示すように、フロアパネル2から上方に立上がる前面壁部4aと、この前面壁部4aから後方に延びるキックアップフロア部4bとを有するが、このキックアップフロア部4bの中間は下方に凹状に窪むように凹設され、凹部4cを備えている。
【0023】
また、上述の第2キックアップ部5は、図4に示すように、フロアパネル2から上方に立上がる前面壁部5aと、この前面壁部5aから後方に向けて略水平に延びるキックアップフロア部5bとを有し、第2キックアップ部5の前面壁部5aの立上り量は第1キックアップ部4の前面壁部4aの立上り量よりも大きく設定されている。
【0024】
上述のキックアップ部3における各キックアップフロア部4b,5bのさらに後方には、図1に示すように、キックアップ量が小さいリヤキックアップ部6を介して、リヤフロア7を連設している。
【0025】
一方、フロアパネル2の中央部には車室内方へ突出して、車両の前後方向に延びるトンネル部8を形成している。このトンネル部8はダッシュロアパネル1とリヤキックアップ部6との間において車両の前後方向に延びるように形成されると共に、このトンネル部8の上部には該トンネル部8との間に2つの閉断面9,9(図5参照)を形成するトンネルメンバ10(いわゆるハイマウントバックボーンフレーム)を接合している。
【0026】
上述のトンネルメンバ10はトンネル部8の上部に沿って、ダッシュロアパネル1とリヤキックアップ部6との間において車両の前後方向に延びる車体剛性部材(強度部材)であり、このトンネルメンバ10によりフロア剛性および車体剛性の向上を図っている。
【0027】
また、フロアパネル2の車幅方向両側部には車両の前後方向に延びるサイドシルを接合固定している。
このサイドシルは、サイドシルアウタパネルとサイドシルインナパネル11とサイドシルレインフォースメントとを接合して、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面をもった車体剛性部材である。
【0028】
図1、図3、図4に示すように、フロアパネル2の前後方向中間部には、トンネル部8とサイドシルインナパネル11とを連結して車幅方向に延びる左右一対のクロスメンバ12(No.2クロスメンバ)を設け、このクロスメンバ12とフロアパネル2の上面との間には閉断面13を形成している。
【0029】
図4に示すように、第2キックアップ部5の前面壁部5aにおける背面下部には車幅方向に延びる前部クロスメンバとしてのクロスメンバロア14A(No.3クロスメンバ)を接合固定し、このクロスメンバロア14Aと前面壁部5aとの間には車幅方向に延びる閉断面15Aを形成している。
【0030】
図3に示すように、上記クロスメンバロア14Aと車幅方向で対向するように、第1キックアップ部4の前面壁部4aにおける背面下部には車幅方向に延びるクロスメンバロア14Bを接合固定し、このクロスメンバロア14Bと前面壁部4aとの間には車幅方向に延びる閉断面15Bを形成している。
【0031】
図1、図4に示すように、第2キックアップ部5における前面壁部5aとキックアップフロア部5bの角部の下部には、車幅方向に延びる中間クロスメンバとしてのクロスメンバアッパ16(No.3クロスメンバアッパ)を接合固定し、このクロスメンバアッパ16と各部5a,5bのコーナ部との間には車幅方向に延びる閉断面17を形成している。
【0032】
このクロスメンバアッパ16は助手席側と対応する第2キックアップ部5側に存在し、運転席側と対応する第1キックアップ部4側には存在しない。
【0033】
図1に斜視図で示すように、第2キックアップ部5の各クロスメンバ14A,16は、第1キックアップ部4のクロスメンバ14Bと車幅方向中央のトンネル部8で連結されている。
【0034】
図4に示すように、第2キックアップ部5におけるキックアップフロア部5b直後のリヤキックアップ部6の下面には、車幅方向に延びる後部クロスメンバとしてのリヤクロスメンバ18(No.4クロスメンバ)を接合固定し、このリヤクロスメンバ18とリヤキックアップ部6下面との間には、車幅方向に延びる閉断面19を形成している。
【0035】
図3に示すように、このリヤクロスメンバ18は第1キックアップ部4のキックアップフロア部4b直後のリヤキックアップ部6下面に向けて延長して配設され、第1キックアップ部4側においてもリヤキックアップ部6の下面とリヤクロスメンバ18との間には、車幅方向に延びる閉断面19が形成されている。
【0036】
上述のリヤクロスメンバ18は運転席側および助手席側におけるリヤキックアップ部6の車幅方向ほぼ全幅にわたって一体かつ連続して設けられた車体剛性部材である。
【0037】
要するに、図4に示すように、第2キックアップ部5には複数のクロスメンバ(クロスメンバアッパ16、クロスメンバロア14A参照)が車両の前後方向に離間して並設されたものである。
【0038】
また、図4に示すように、第2キックアップ部5には閉断面15A,17,19を形成して車幅方向に延びるクロスメンバ14A,16,18が配設されたものであり、これらの各クロスメンバ14A,16,18により車体剛性の向上と、側突に対する耐力の向上を図るように構成している。
【0039】
ここで、上述のクロスメンバロア14Aとクロスメンバアッパ16とは車両の上下方向にも離間しており、これにより、第2キックアップ部5には車幅方向に延びるクロスメンバ14A,16が上下に複数並設されていることになる。
【0040】
一方、図1、図2に示すように、フロアパネル2の下面において、サイドシルインナパネル11とトンネル部8との間の中間部を、車両の前後方向に延びる左右一対のフロアフレーム20,20を設け、このフロアフレーム20とフロアパネル2の下面との間には、同方向に延びる閉断面21を形成している。
【0041】
このフロアフレーム20はフロアパネル2に接合固定された車体剛性部材である。
また、キックアップフロア部4b,5bおよびリヤフロア7の側部下面には、左右一対のリヤサイドフレーム22を設けるが、図2のA−A線矢視断面図を図5に示すように、上述のキックアップフロア部4b,5bおよびリヤフロア7の左右の側端部には、リヤサイドインナパネル23,23が接合されており、図5に示すように運転席と対応する車両左側にあっては、リヤサイドインナパネル23とキックアップフロア部4bとの間に、リヤサイドフレームロア24を接合固定している。
【0042】
また図5に示すように、助手席と対応する車両右側にあっては、キックアップフロア部5bとリヤサイドインナパネル23との間に、リヤフロアフレーム25を接合固定して、車両の前後方向に延びる閉断面26を形成すると共に、このリヤフロアフレーム25とリヤサイドインナパネル23との間には、リヤサイドフレームアッパ27およびリヤサイドフレームロア28を接合して、車両の前後方向に延びる閉断面29を形成している。
【0043】
ところで、図2にボディ底面を示すように、トンネル部8の車外側下部空間内には、トランスミッション30を配設し、このトランスミッション30の出力をプロペラシャフト31を介してリヤディファレンシャル装置32に伝達し、リヤディファレンシャル装置32の差動出力を左右の後輪ドライブシャフト33,33を介して、左右の後輪34,34に伝達すべく構成している。なお、左右の各後輪34,34はダブルウィッシュボーン型のリヤサスペンション装置35,35により左右独立して懸架されている。
【0044】
また、上述のトランスミッション30のミッションケースと、リヤディファレンシャル装置32のデフケースとの間には、断面略Z字状で、車両の前後方向に延びるパワープラントフレーム36(いわゆるPPF)を設けている。
【0045】
このパワープラントフレーム36はエンジン駆動系からのロール方向の動きを許容しつつ、リヤディファレンシャル装置32のワインドアップ振動を抑制するためのものである。
【0046】
次に、車両の補機配設構造について説明する。
図2に示すように、エンジンの排気系には、フロントエキゾーストパイプ37、キャタリスト38、ミドルエキゾーストパイプ39、プリサイレンサ40、リヤエキゾーストパイプ41、メインサイレンサ42、テールパイプ43,43から成る排気通路44を接続し、この排気通路44をブラケット45を介してボディ側に支持すると共に、フロントエキゾーストパイプ37、キャタリスト38、ミドルエキゾーストパイプ39は、トンネル部8の車外側下部空間内に位置させ、ミドルエキゾーストパイプ39の下流側の一部およびプリサイレンサ40は、図5に示す如く、上述の第2キックアップ部5の車外側の下方空間46に配設している。
【0047】
加えて、上述の第2キックアップ部5の車外側の下方空間46には、同図に示すように、大型の車両補機として、フュエルポンプ47を備えた燃料タンク48を配設している。
【0048】
ここで、図5に示すように、上述の燃料タンク48におけるプロペラシャフト31、パワープラントフレーム36、プリサイレンサ40と対応する部分には、凹部48aが形成されており、下方空間46における上記凹部48aと対応する部分にはパワープラントフレーム36、プロペラシャフト31、プリサイレンサ40を配設している。
【0049】
つまり、第2キックアップ部5の下方空間46には複数の車両補機として燃料タンク48と、プリサイレンサ40およびミドルエキゾーストパイプ39の一部とが車幅方向に並列に配設されている。
【0050】
また、上述の燃料タンク48は図4に示すように、クロスメンバロア14Aとリヤクロスメンバ18との間にボルト、ナット等の締結部材49を用いて取付けられるタンクバンド50により車体側に支持されるものである。
【0051】
なお、図3、図4において、51はインストルメントパネル、52はメータフード、53はステアリングホイールであり、図5において54はトンネルメンバ10の上部に設けられたセンタコンソールである。
【0052】
次に図3、図4、図6を参照して、シートの配設構造について説明する。
前述の第1キックアップ部4のキックアップフロア部4b上には大人の乗員が着座可能な大型の第1乗員用シートとしてのリヤシート60を配設している。このリヤシート60はシートクッション61と、シートバック62と、ヘッドレスト63とを有し、上述のシートクッション61は、図3に示すように、キックアップフロア部4b中間の凹部4cに沿うように配置され、この構造により該リヤシート60に着座する後席乗員の上下方向のスペース拡大を図るように構成している。
【0053】
また、図4、図6に示すように、第2キックアップ部5のキックアップフロア部5b上には第1乗員用シート(リヤシート60参照)より小型の第2乗員用シートとしての子供用シート64(以下、単にチャイルドシートと略記する)を配設している。このチャイルドシート64はシートクッション65と、シートバック66とを備えている。
【0054】
上述のリヤシート60、チャイルドシート64から成る後列シートの前方には前列シートがそれぞれ配設されるが、第1乗員用シートとしてのリヤシート60の前方には運転席シート67(図3参照)が配設され、第2乗員用シートとしてのチャイルドシート64の前方には助手席シート68(図4参照)が配設されていて、これらの前列シートは車幅方向に並設されている。
【0055】
ここで、運転席シート67は、図3、図6に示すように、シートクッション69と、シートバック70と、ヘッドレスト71とを有し、同様に助手席シート68も、図4、図6に示すように、シートクッション72と、シートバック73と、ヘッドレスト74とを有する。
【0056】
図7はシートの配設構造を示す概略平面図、図8は車両左側の運転席側のシート配設構造を示す概略側面図、図9は車両右側の助手席側のシート配設構造を示す概略側面図であって、第1キックアップ部4上に図8に示す如く大型のリヤシート60を配設し、第2キックアップ部5上に図9に示す如く小型のチャイルドシート64を配設し、これら各シート60,64の前方においてフロントシートを配置する際、チャイルドシート64の前方に助手席シート68(図9参照)を、またリヤシート60の前方に運転席シート67(図8参照)を配設することにより、ドライバD、パッセンジャP、後席乗員(大人)R、後席乗員(子供)Cの大人3人および子供1人の居住性を確保しつつ、これら各乗員D,P,R,Cの多人数乗車を達成すべく構成したものである。
【0057】
また、図9に示すように、第1キックアップ部4よりもその高さが高い第2キックアップ部5の車外側下部空間46には大型の車両補機としての燃料タンク48を配設し、この燃料タンク48の充分な容量確保を図るように構成している。
【0058】
特に、図7、図8、図9は従来構造を示した図15、図16、図17との対比用の図面である。
図10は図4の要部拡大図であり、図5、図10に示すように、第2キックアップ部5のクロスメンバアッパ16は着脱可能に構成されている。
【0059】
すなわち、第2キックアップ部5の前面壁部5aを兼ねる前面壁部75aと、キックアップフロア部5bを兼ねるキックアップフロア部75bとを備えたリッド75(フロアパネルの一部)を設ける一方、図5に示すように、チャイルドシート64のシートクッション65下部における車幅方向の中間に対応するパーティングライン76,77にてクロスメンバアッパ16を車幅方向に分割して、着脱可能な分割部16aを形成している。
【0060】
この分割部16aにおいてクロスメンバアッパ16の前後の接合部16b,16cは図10に示すようにリッド75の下面に接合固定されている。また該リッド75の周囲には段差状の当接フランジ部75cが一体形成されている。
【0061】
さらに、上述のクロスメンバアッパ16の分割部16aには、補機としてのフュエルポンプ47に対応して開口部16dが形成されており、この開口部16dを介して第2キックアップ部5のクロスメンバアッパ16の分割部16aにおける閉断面17内には、上述のフュエルポンプ47が臨設され、この構造により燃料タンク48の容量増大を図るように構成している。
【0062】
そして、メンテナンス時、サービス時には一旦、チャイルドシート64の少なくともシートクッション65を取外した後に、上述のリッド75および分割部16aを一体的に取外すと、燃料タンク48サービス用のサービスホール78が開口形成され、この開口されたサービスホール78から燃料タンク48のサービスを行なうことができるように構成している。
【0063】
このように、図1〜図10で示した実施例の車両の下部車体構造は、車室の下面を形成するフロアパネル2の後方に、上方に段上げされたキックアップ部3が設けられ、該キックアップ部3上に乗員用シート60,64が配設された車両の下部車体構造であって、上記キックアップ部3は第1キックアップ部4と、該第1キックアップ部4に対し車幅方向に並設され、かつ高さ方向でより高い第2キックアップ部5とから成り、上記第2キックアップ部5の下方に燃料タンク48が配設されると共に、上記第1キックアップ部4の上方に第1乗員用シート(リヤシート60参照)が配設され、上記第2キックアップ部5の上方には、第1乗員用シートより小型の第2乗員用シート(チャイルドシート64参照)が配設されたものである。
この実施例では、上述のキックアップ部3上の乗員用シートは、第1キックアップ部4に対応して大人の着座が許容される大型のシート60に設定し、高さが高い第2キックアップ部5に対応して子供用の小型のシート64に設定されている。
この構成によれば、高さが高い第2キックアップ部5の下方(車外側)に燃料タンク48を配設し、この第2キックアップ部5の上方には第1乗員用シート(リヤシート60参照)よりも小型の第2乗員用シート(チャイルドシート64参照)を配設し、高さが低い第1キックアップ部4の上方には第1乗員用シート(リヤシート60参照)を配設したので、前後方向がコンパクトで、かつ低全高のコンパクトなボディにおいて、燃料タンク48の容量の確保と、後席乗員の居住性確保との両立を図ることができる。
【0064】
また、上記第1乗員用シート(リヤシート60参照)の前方に運転席シート67が配設され、上記第2乗員用シート(チャイルドシート64参照)の前方には、運転席シート67と車幅方向で並設された助手席シート68が配設されたものである。
この構成によれば、運転席シート67と助手席シート68とを車両の前後方向にオフセットさせなくても、前席乗員の居住空間を確保することができる。
【0065】
さらに、上記第2キックアップ部5にはクロスメンバ14A,16が前後に複数並設されたものである。
この構成によれば、並設した複数のクロスメンバ14A,16により、車体剛性を確保することができ、また側突に対する剛性の向上を図ることができ、特に、小型の第2乗員用シート(チャイルドシート64参照)が配設される側の充分な強度を確保することができる。
【0066】
加えて、上記第2キックアップ部5は、フロアパネル2から立上がる前面壁部5aと、該前面壁部5aより後方に延びるキックアップフロア部5bとから成り、上記前面壁部5aに前部クロスメンバ(クロスメンバロア14A参照)が配設されたものである。
この構成によれば、フロアパネル2の形状が変化する部位(応力が集中する部位)に前部クロスメンバ(クロスメンバロア14A)を設けたので、車体剛性を確保することができる。
【0067】
また、上記第2キックアップ部5はフロアパネル2から立上がる前面壁部5aと、該前面壁部5aより後方に延びるキックアップフロア部5bとから成り、上記前面壁部5aとキックアップフロア部5bとの角部に中間クロスメンバ(クロスメンバアッパ16参照)が配設されたものである。
この構成によれば、第2キックアップ部5の前面壁部5aとキックアップフロア部5bとの角部、すなわち、フロアパネル2の形状が変化する部位(応力が集中する部位)に中間クロスメンバ(クロスメンバアッパ16)を設けたので、車体剛性を確保することができる。
【0068】
しかも、上記第2キックアップ部5の各クロスメンバ14A,16は図1で示したように、第1キックアップ部4のクロスメンバ14Bと車幅方向中央のトンネル部8で連結されたものである。
この構成によれば、車体の全体剛性、ねじり剛性の向上を図ることができる。
【0069】
また、上記第2キックアップ部5のクロスメンバ(クロスメンバアッパ16参照)は着脱可能に設けられたものである。
この構成によれば、クロスメンバ(クロスメンバアッパ16の分割部16a参照)の取外し時にメンテナンス性、サービス性を確保することができる。つまり、第2キックアップ部5の下方には燃料タンク48が配設されているので、このクロスメンバ(クロスメンバアッパ16の分割部16a参照)を取外した時、燃料タンク48に対するサービス性を確保することができる。
【0070】
さらに、上記第2キックアップ部5のクロスメンバ16の閉断面17内に補機(フュエルポンプ47参照)が配設されたものである。
この構成によれば、第2キックアップ部5のクロスメンバ16の閉断面17内に補機(フュエルポンプ47参照)を配設するので、この第2キックアップ部5の下方に配設する燃料タンク48の容量増大を図ることができる。
【0071】
加えて、上記第1キックアップ部4のキックアップフロア部4bは凹設された凹部4cを備え、該凹部4cに第1乗員用シート(リヤシート60参照)が配設されたものである。
この構成によれば、凹部4cに配設される第1乗員用シート(リヤシート60)とルーフ部との間の上下方向のスペースが確保できるので、低全高のコンパクトな車両であっても該シート60に着座する後席乗員R(図8参照)の居住空間を確保することができる。
【0072】
(実施例2)
図11〜図14は車両の下部車体構造の他の実施例を示すものである。
この実施例においては燃料タンク48上部のフュエルポンプ47が車幅方向中央のトンネル部8およびトンネルメンバ10の後方側に対応して設けられたタイプの燃料タンク48を用いるものである。
【0073】
図11のB−B線矢視断面図を図12に示し、図12の要部拡大図を図13に示すように、トンネル部8のフュエルポンプ47と対向する部分には該トンネル部8の分割部80を形成すると共に、この分割部80と上下方向に対向すべくトンネルメンバ10にも分割部81を形成し、これら両分割部80,81を接合して、着脱可能なリッド82を構成すると共に、このリッド82の取外し時には、フュエルポンプ47および燃料タンク48とアクセスが可能となるサービスホール83を形成している。
また、トンネルメンバ10における分割部81の周囲には段差状の当接フランジ部81aが一体形成されている。
【0074】
ここで、図13に示す構造に代えて、図14に示すようにトンネルメンバ10における分割部81の周囲の段差状の当接フランジ部81aに加えて、トンネル部8の分割部80の周囲にも段差状の当接フランジ部80aを一体形成し、上下の各当接フランジ部81a,80aによる上下2重構造にて、車室内と車外側とのシール性向上を図るように構成してもよい。
【0075】
このように、図11〜図14で示した実施例においては、車幅方向中央のトンネル部8には、上記燃料タンク48のサービスホール83が形成されたものである。
この構成によれば、サービスホール83の形成により、燃料タンク48のサービス性を確保することができる。
【0076】
なお、図11〜図14で示した実施例においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例と同様であるから、図11〜図14において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0077】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の第1乗員用シートは、実施例のリヤシート60に対応し、
以下同様に、
第2乗員用シートは、チャイルドシート64に対応し、
第2キックアップ部のクロスメンバは、クロスメンバロア14A、クロスメンバアッパ16に対応し、
前部クロスメンバは、クロスメンバロア14Aに対応し、
中間クロスメンバは、クロスメンバアッパ16に対応し、
補機は、燃料タンク48上部に位置するフュエルポンプ47に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0078】
例えば、上記第2乗員用シートは第1乗員用シート(リヤシート60)に対して小型であればよく、チャイルドシート64に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の車両の下部車体構造を示す斜視図
【図2】車両の要部底面図
【図3】運転席側の構成を示す側面図
【図4】助手席側の構成を示す側面図
【図5】図2のA−A線矢視断面図
【図6】シートの配設構造を示す平面図
【図7】補機およびシートの配設構造を示す概略平面図
【図8】運転席側の乗員着座状態を示す概略側面図
【図9】助手席側の乗員着座状態を示す概略側面図
【図10】図4の要部拡大側面図
【図11】車両の下部車体構造の他の実施例を示す斜視図
【図12】図11のB−B線に沿う説明図
【図13】図12の要部拡大図
【図14】リッド構造の他の実施例を示す拡大図
【図15】従来の補機およびシートの配設構造を示す概略平面図
【図16】図15の運転席側の側面図
【図17】図15の助手席側の側面図
【符号の説明】
【0080】
2…フロアパネル
3…キックアップ部
4…第1キックアップ部
4b…キックアップフロア部
4c…凹部
5…第2キックアップ部
5a…前面壁部
5b…キックアップフロア部
8…トンネル部
14A…クロスメンバロア(前部クロスメンバ)
14B…クロスメンバ
16…クロスメンバアッパ(中間クロスメンバ)
17…閉断面
47…フュエルポンプ(補機)
48…燃料タンク
60…リヤシート(第1乗員用シート)
64…チャイルドシート(第2乗員用シート)
67…運転席シート
68…助手席シート
83…サービスホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の下面を形成するフロアパネルの後方に、上方に段上げされたキックアップ部が設けられ、
該キックアップ部上に乗員用シートが配設された車両の下部車体構造であって、
上記キックアップ部は第1キックアップ部と、該第1キックアップ部に対し車幅方向に並設され、
かつ高さ方向でより高い第2キックアップ部とから成り、
上記第2キックアップ部の下方に燃料タンクが配設されると共に、
上記第1キックアップ部の上方に第1乗員用シートが配設され、
上記第2キックアップ部の上方には、第1乗員用シートより小型の第2乗員用シートが配設された
車両の下部車体構造。
【請求項2】
上記第1乗員用シートの前方に運転席シートが配設され、
上記第2乗員用シートの前方には、運転席シートと車幅方向で並設された助手席シートが配設された
請求項1記載の車両の下部車体構造。
【請求項3】
上記第2キックアップ部にはクロスメンバが前後に複数並設された
請求項1または2記載の車両の下部車体構造。
【請求項4】
上記第2キックアップ部は、フロアパネルから立上がる前面壁部と、該前面壁部より後方に延びるキックアップフロア部とから成り、
上記前面壁部に前部クロスメンバが配設された
請求項3記載の車両の下部車体構造。
【請求項5】
上記第2キックアップ部はフロアパネルから立上がる前面壁部と、該前面壁部より後方に延びるキックアップフロア部とから成り、
上記前面壁部とキックアップフロア部との角部に中間クロスメンバが配設された
請求項3または4記載の車両の下部車体構造。
【請求項6】
上記第2キックアップ部のクロスメンバは第1キックアップ部のクロスメンバと車幅方向中央のトンネル部で連結された
請求項3〜5の何れか1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項7】
上記第2キックアップ部のクロスメンバは着脱可能に設けられた
請求項3〜6の何れか1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項8】
上記第2キックアップ部のクロスメンバの閉断面内に補機が配設された
請求項3〜7の何れか1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項9】
車幅方向中央のトンネル部には、上記燃料タンクのサービスホールが形成された
請求項3〜8の何れか1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項10】
上記第1キックアップ部のキックアップフロア部には凹設された凹部を備え、
該凹部に第1乗員用シートが配設された
請求項1〜9の何れか1に記載の車両の下部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−13078(P2008−13078A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187316(P2006−187316)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】