説明

車両の制御装置

【課題】二重フェールセーフによる干渉を防止し、ドライバビリティの悪化を防止することができる車両の制御装置を提供する。
【解決手段】クランク角センサの異常が検出され(ステップS11でYESと判定)、電子スロットル制御装置に対するフェールセーフ中である(ステップS12でNOと判定)場合には、クランク角センサに対するフェールセーフの実行を禁止し(ステップS14)、F/S用クランクカウンタを生成しないので、クランク角センサに対するフェールセーフ機能によって、スロットル制御装置に対するフェールセーフ機能により行われているエンジンの点火時期の補正に影響を与えることがないため、点火時期タイミングがずれず、狙い通りの点火時期制御を行うことができ、二重フェールセーフによる干渉を防止し、ドライバビリティの悪化を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェールセーフ機能を備えた車両の制御装置に関し、特に、電子スロットル制御装置およびクランク角センサに対するフェールセーフを行う車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンを備えた車両の制御装置は、ドライバーのアクセルペダルの操作量を検出し、この検出量に応じて電子スロットル制御装置を作動させて、エンジンに供給される空気量を調整することにより、エンジンの制御を行うようになっている。
【0003】
この電子スロットル制御装置は、車両の制御装置により指示された値によってスロットルモータを作動させ、エンジンの吸気管に設けられたスロットルバルブを開閉させて、エンジンに供給する空気量を調整するようになっている。また、電子スロットル制御装置は、スロットルセンサを備え、スロットルバルブの開閉量を検出するようになっている。
【0004】
このような車両の制御装置において、電子スロットル制御装置が故障してしまった場合、スロットルバルブの開閉ができず、エンジンの吸入空気量を調整することができなくなってしまう。そこで、電子スロットル制御装置が故障してしまった場合に、十分な走行性能を確保しながら、退避走行を円滑に行うことができるフェールセーフ機能を備えた車両の制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この車両の制御装置は、電子スロットル制御装置が故障してしまった場合、電子スロットル制御装置への通電を遮断し、スロットルバルブの開度をデフォルト開度に保持することによって、退避走行に必要な吸入空気量を供給するようにしている。そして、車両の制御装置は、アクセルペダルの開度を検出し、このアクセルペダルの開度に応じてエンジンの点火時期を補正することにより、エンジントルクを変更し、退避走行を円滑に行うことができるようにしている。
【0006】
また、車両は、エンジンのクランクシャフトの回転位置を検出するクランク角センサ、および、カムシャフトの回転位置を検出するカム角センサを備えている。車両の制御装置は、クランク角センサおよびカム角センサにより検出された情報により、エンジンの各気筒の燃焼サイクルに対応する基準タイミングを生成し、燃料供給制御処理および点火時期制御処理を実行するようになっている。
【0007】
このような車両の制御装置において、クランク角センサが故障し、検出が正常にできなくなってしまった場合には、カム角センサにより検出された情報に基づいて、エンジンの各気筒の燃焼サイクルに対応するタイミングを生成し、燃料供給制御処理および点火時期制御処理を継続実行することができるフェールセーフ機能を備えたものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
この車両の制御装置は、クランク角センサが故障した場合、カム角センサが検出したパルス発生間隔に基づきエンジンの各気筒の燃焼サイクルに対応する疑似基準タイミングを生成する。これにより、車両の制御装置は、クランク角センサが故障した場合であっても、疑似基準タイミングを用いて、エンジンに対する燃料供給制御処理および点火時期制御処理を継続実行でき、退避走行を行うことができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−155950号公報
【特許文献2】特開2001−342888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、カム角センサによるカムシャフトの回転位置を検出できる回転角度は、クランク角センサによるクランクシャフトの回転位置を検出できる回転角度よりも、大幅に大きなものである。このため、上記特許文献2に記載の発明のように、カム角センサの検出信号により生成した疑似基準タイミングは、実際のタイミングとずれてしまうおそれがある。特に、加速や減速時には、カムシャフトの回転位置の検出の間に、基準タイミングが変わり、このずれが大きくなってしまうという問題があった。
【0011】
したがって、電子スロットル制御装置とクランク角センサとの二重故障が万が一発生してしまった場合には、上記特許文献1に記載の発明のように、アクセルペダルの開度を検出して、このアクセルペダルの開度に応じてエンジンの点火時期を補正しようとしても、クランク角センサに対するフェールセーフ機能により、カム角センサの検出信号によって生成した疑似基準タイミングが正確性を欠くため、狙い通りの点火時期制御を行うことが困難であるという問題があった。
【0012】
このように、電子スロットル制御装置とクランク角センサとの二重故障が発生した場合、二重フェールセーフによる干渉が発生してしまい、ドライバビリティが悪化する虞があるという問題があった。なお、カム角センサの検出信号により生成する疑似基準タイミングの正確性を向上させるため、カム角センサによるカムシャフトの回転位置を検出できる回転角度を狭めることが考えられるが、このような方法は、通常走行時の制御の負荷が増大してしまうとともに、構造や制御の変更が大幅に伴うという問題がある。
【0013】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、二重フェールセーフによる干渉を防止し、ドライバビリティの悪化を防止することができる車両の制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る車両の制御装置は、上記課題を解決するため、(1)エンジンの吸入空気量を変更するスロットル制御装置を制御して、前記エンジンを制御する車両の制御装置において、前記エンジンのクランクシャフトの回転位置を検出するクランク角センサと、前記エンジンのカムシャフトの回転位置を検出するカム角センサと、前記クランク角センサの異常を検出するクランク角センサ異常検出手段と、前記クランク角センサ異常検出手段により前記クランク角センサの異常を検出したことを条件に、前記カム角センサにより検出された前記カムシャフトの回転位置に基づいて前記エンジンの燃焼サイクルを制御する疑似基準タイミングを生成する疑似タイミング生成手段と、前記疑似タイミング生成手段により生成された前記疑似基準タイミングを用い、前記クランク角センサ異常時における前記エンジンに対する燃料供給制御処理および点火時期制御処理を継続実行する継続制御手段と、前記スロットル制御装置の異常を検出するスロットル異常検出手段と、アクセルペダルの開度を検出するアクセル開度センサと、前記スロットル異常検出手段により前記スロットル制御装置の異常が検出されたことを条件に、前記スロットル制御装置の制御を中止し、前記アクセルペダルの開度に応じて前記エンジンの点火時期を補正する点火時期補正手段と、前記スロットル異常検出手段により前記スロットル制御装置の異常が検出され、かつ、前記クランク角センサ異常検出手段により前記クランク角センサの異常が検出されたことを条件に、前記疑似タイミング生成手段による前記疑似基準タイミングの生成を禁止するタイミング生成禁止手段と、を備えたことを特徴とした構成を有している。
【0015】
この構成により、スロットル制御装置の異常が検出され、かつ、クランク角センサの異常が検出された場合には、疑似基準タイミングの生成を禁止するので、クランク角センサに対するフェールセーフ機能によって、スロットル制御装置に対するフェールセーフ機能により行われているエンジンの点火時期の補正に影響を与えることがないため、点火時期タイミングがずれず、狙い通りの点火時期制御を行うことができ、二重フェールセーフによる干渉を防止し、ドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0016】
また、本発明に係る車両の制御装置は、上記(1)に記載の車両の制御装置において、(2)前記タイミング生成禁止手段は、前記点火時期補正手段による前記点火時期の補正が行われている最中に、前記クランク角センサ異常検出手段により前記クランク角センサの異常が検出されたことを条件に、前記疑似タイミング生成手段による前記疑似基準タイミングの生成を禁止することを特徴とした構成を有している。
【0017】
この構成により、点火時期の補正が行われている最中に、クランク角センサの異常が検出されたことを条件に、疑似基準タイミングの生成を禁止するので、スロットル制御装置に対するフェールセーフ機能の実行中に、クランク角センサに異常が発生しても、スロットル制御装置に対するフェールセーフ機能に影響をおよぼさず、ドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0018】
さらに、本発明に係る車両の制御装置は、上記(1)または(2)に記載の車両の制御装置において、(3)前記タイミング生成禁止手段は、前記疑似タイミング生成手段による前記疑似基準タイミングの生成が行われている最中に、前記スロットル異常検出手段により前記スロットル制御装置の異常が検出されたことを条件に、前記疑似タイミング生成手段による前記疑似基準タイミングの生成を禁止することを特徴とした構成を有している。
【0019】
この構成により、疑似基準タイミングの生成が行われている最中に、スロットル制御装置の異常が検出されたことを条件に、疑似基準タイミングの生成を禁止するので、クランク角センサに対するフェールセーフ機能の実行中に、スロットル制御装置の異常が発生した場合には、クランク角センサに対するフェールセーフ機能における疑似基準タイミングの生成を禁止して、スロットル制御装置に対するフェールセーフ機能を実行するため、クランク角センサに対するフェールセーフ機能がスロットル制御装置に対するフェールセーフ機能に干渉せず、ドライバビリティの悪化を防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、二重フェールセーフによる干渉を防止し、ドライバビリティの悪化を防止することができる車両の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態における制御装置を備えた車両の概略ブロック構成図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるエンジンの概略断面図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるエンジンの概略斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるクランクセンサプレートの正面図である。
【図5】本発明の実施の形態における吸気カムセンサプレートの正面図である。
【図6】本発明の実施の形態における吸気カムセンサプレートおよび排気カムセンサプレートの状態を表す遷移図である。
【図7】本発明の実施の形態における車両の制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
まず、本発明の実施の形態における車両の制御装置を備えた車両の構成について、図1に示す車両の概略ブロック構成図、図2に示すエンジンの概略断面図、および、図3に示すエンジンの概略斜視図を参照して、説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施の形態における車両10は、動力源としてのエンジン20と、エンジン20において発生した動力を伝達するとともに車両10の走行状態等に応じて変速比を変化させるトランスミッション30と、トランスミッション30から伝達された動力を駆動軸としてのドライブシャフト51L、51Rに分配するディファレンシャル機構40と、ドライブシャフト51L、51Rから伝達された動力により回転させられ、車両10を駆動させる駆動輪52L、52Rと、を備えている。
【0024】
また、車両10は、車両10全体を制御するための車両用電子制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)100と、トランスミッション30を油圧により制御する油圧制御装置120と、を備えている。さらに、車両10は、クランク角センサ131と、駆動軸回転数センサ132と、アクセル開度センサ133と、フットブレーキセンサ(以下、「FBセンサ」という)134と、吸入空気量センサ136と、吸入空気温度センサ137と、冷却水温センサ138と、吸気カム角センサ139と、排気カム角センサ140と、その他図示しない各種センサを備えている。上記車両10に備えられたそれぞれのセンサは、検出した検出信号を、ECU100に出力するようになっている。
【0025】
エンジン20は、内燃機関によって構成されており、特に本実施の形態においては、ピストン211(図2参照)が2往復する間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行う、所謂4サイクルのガソリンエンジンによって構成されているものとして説明する。また、本実施の形態におけるエンジン20は、直列4気筒のガソリンエンジンを採用したものとして説明するが、これに限らず、直列6気筒エンジン、V型6気筒エンジン、V型12気筒エンジン、水平対向6気筒エンジン等の種々の型式のエンジンを採用することができる。なお、エンジン20の詳細については、後述する。
【0026】
トランスミッション30は、複数の遊星歯車装置を備え、これらの遊星歯車装置に設けられた複数の摩擦係合要素としてのクラッチおよびブレーキの係合状態および解放状態の組み合わせに応じた変速段をとるようになっている。上記クラッチおよびブレーキは、油圧制御装置120により係合状態および解放状態を切り替えられるようになっている。また、油圧制御装置120は、アクセル開度Acc、車速V、エンジン回転数Ne等によって、ECU100に制御されるようになっている。すなわち、トランスミッション30は、ECU100によって制御され、変速段が切り替えられるようになっている。
【0027】
このような構成により、トランスミッション30は、エンジン20の動力として入力されるクランクシャフト213の回転力すなわちトルクを、所定の変速比γで減速あるいは増速して、ディファレンシャル機構40に出力する有段式の変速機であり、走行状態に応じた変速段を構成し、各変速段に応じた速度変換を行うようになっている。なお、トランスミッション30は、無段階に変速段を切り替えることができる無段変速機(以下、CVTという)によって構成されるものであってもよい。
【0028】
ディファレンシャル機構40は、カーブ等を走行する場合に、駆動輪52Lと駆動輪52Rとの回転数の差を許容するものである。ディファレンシャル機構40は、トランスミッション30から入力されたトルクを、ドライブシャフト51L、51Rに分配して、出力するようになっている。なお、ディファレンシャル機構40は、ドライブシャフト51L、51Rを同一回転とし、駆動輪52Lと駆動輪52Rとの回転数の差を許容しないデフロック状態をとることができるものであってもよい。
【0029】
ECU100は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)100a、固定されたデータの記憶を行うROM(Read Only Memory)100b、一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)100c、書き換え可能な不揮発性のメモリからなるEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)100dおよび入出力インターフェース回路(I/Fと図示)100eを備え、車両10の制御を統括するようになっている。
【0030】
また、後述するように、ECU100は、クランク角センサ131、駆動軸回転数センサ132、アクセル開度センサ133等と接続されている。ECU100は、これらのセンサから出力された検出信号により、エンジン回転数Ne、車速V(車両10の走行速度)、アクセル開度Acc等を検出するようになっている。
【0031】
また、ECU100は、内部時計を有し、時刻を計測することができるようになっている。
さらに、ECU100は、油圧制御装置120を制御し、トランスミッション30の各部の油圧を制御するようになっている。これにより、ECU100は、トランスミッション30の変速比を変化させることができるようになっている。
【0032】
また、ECU100のROM100bには、スロットル開度制御マップ、変速線図、車両10の諸元値、車両制御を実行するためのプログラム等が記憶されている。
【0033】
スロットル開度制御マップは、アクセル開度Accに基づいて、スロットル開度θthを求めるためのマップである。また、スロットル開度制御マップは、複数のモードを有し、走行状態、走行路等に応じて、モードを切り替えるようにしてもよい。ECU100は、スロットル開度制御マップにおけるモードの選択を、走行状態、走行路等に応じて、自動で切り替えるようにしてもよいし、ドライバーによる選択に応じて切り替えるようにしてもよい。
【0034】
また、変速線図は、車速Vおよびスロットル開度θthに基づいて、自動変速を行う場合の変速段を決定するマップである。例えば、同一のスロットル開度θthで車速Vが上昇し、アップシフト用変速線を超えて車速Vが大きくスロットル開度θthが小さい領域に移行した場合には、その領域に応じた変速段にアップシフトする。一方、同一のスロットル開度θthで車速Vが下降し、ダウンシフト用変速線を超えて車速Vが小さくスロットル開度θthが大きい領域に移行した場合には、その領域に応じた変速段にダウンシフトする。また、同様に、同一の車速Vでスロットル開度θthが上昇し、ダウンシフト用変速線を超えて車速Vが小さくスロットル開度θthが大きい領域に移行した場合にも、その領域に応じた変速段にダウンシフトする。
ここで、ECU100のCPU100aは、変速線図に基づいて、車速Vおよびスロットル開度θthに応じて決定した変速段を、RAM100cに記憶しておく。
【0035】
また、車両10の諸元値には、全幅・全高等の車両寸法、車両重量、エンジン総排気量、最小回転半径、車両10のタイヤ径(駆動輪52L、52Rの直径)等が含まれている。
また、ECU100のROM100bに記憶された車両制御を実行するためのプログラムについては、後述する。
【0036】
油圧制御装置120は、電磁弁としての複数のソレノイドバルブを備え、ECU100によって制御されることにより、各ソレノイドバルブにより油圧回路の切り替えおよび油圧制御が行われ、トランスミッション30の各部を動作させるようになっている。
【0037】
クランク角センサ131は、ECU100によって制御されることにより、クランクシャフト213の回転数を検出して、検出した回転数に応じた検出信号をECU100に出力するようになっている。より詳しくは、クランク角センサ131は、クランクシャフト213に設けられたクランクセンサプレート254(図3参照)によりクランク回転信号を検出し、クランク位置およびクランク角速度の検出を行うようになっている。また、ECU100は、クランク角センサ131から出力された検出信号からクランクシャフト213の回転数を算出し、エンジン回転数Neとして取得するようになっている。なお、クランク角センサ131の詳細については、後述する。
【0038】
駆動軸回転数センサ132は、ECU100によって制御されることにより、ドライブシャフト51L(または51R)の回転数を検出して、検出した回転数に応じた検出信号をECU100に出力するようになっている。また、ECU100は、駆動軸回転数センサ132から出力された検出信号が表すドライブシャフト51L(または51R)の回転数を、駆動軸回転数Ndとして取得するようになっている。さらに、ECU100は、駆動軸回転数センサ132から取得した駆動軸回転数Ndに基づいて、車速Vを算出するようになっている。
【0039】
アクセル開度センサ133は、ECU100によって制御されることにより、アクセルペダルが踏み込まれた踏み込み量(以下、ストロークという)を検出して、検出したストロークに応じた検出信号をECU100に出力するようになっている。また、ECU100は、アクセル開度センサ133から出力された検出信号が表すアクセルペダルのストロークから、アクセル開度Accを算出するようになっている。
【0040】
FBセンサ134は、ECU100によって制御されることにより、フットブレーキペダルが踏み込まれた踏み込み量(以下、ストロークという)を検出して、検出したストロークに応じた検出信号をECU100に出力するようになっている。また、ECU100は、FBセンサ134から出力された検出信号が表すフットブレーキペダルのストロークから、フットブレーキ踏力Bfを算出するようになっている。
【0041】
吸入空気量センサ136は、ECU100によって制御されることにより、エンジン20の吸気バルブ223(図2参照)から吸入される空気量を検出して、検出した空気量に応じた検出信号をECU100に出力するようになっている。また、ECU100は、吸入空気量センサ136から出力された検出信号から、エンジン20の吸入空気量Qarを取得するようになっている。
【0042】
吸入空気温度センサ137は、ECU100によって制御されることにより、エンジン20の吸気バルブ223から吸入される空気の温度を検出して、検出した温度に応じた検出信号をECU100に出力するようになっている。また、ECU100は、吸入空気温度センサ137から出力された検出信号から、エンジン20の吸入空気温度Tarを取得するようになっている。
【0043】
冷却水温センサ138は、ECU100によって制御されることにより、エンジン20のシリンダブロック210(図2参照)を冷却する冷却水(以下、単にエンジン20の冷却水という)の温度を検出して、検出した温度に応じた検出信号をECU100に出力するようになっている。また、ECU100は、冷却水温センサ138から出力された検出信号から、エンジン20の冷却水温Twを取得するようになっている。
【0044】
吸気カム角センサ139は、ECU100によって制御されることにより、吸気カムシャフト241(図3参照)の回転数を検出して、検出した回転数に応じた検出信号をECU100に出力するようになっている。より詳しくは、吸気カム角センサ139は、吸気カムシャフト241に設けられた吸気カムセンサプレート255(図3参照)の所定の位置、すなわち、所定の回転角を検出し、吸気カムシャフト241の回転角の検出を行うようになっている。なお、吸気カム角センサ139の詳細については、後述する。
【0045】
排気カム角センサ140は、吸気カム角センサ139と同様に、ECU100によって制御されることにより、排気カムシャフト242(図3参照)の回転数を検出して、検出した回転数に応じた検出信号をECU100に出力するようになっている。より詳しくは、排気カム角センサ140は、排気カムシャフト242に設けられた排気カムセンサプレート256(図3参照)の所定の位置、すなわち、所定の回転角を検出し、排気カムシャフト242の回転角の検出を行うようになっている。なお、排気カム角センサ140の詳細については、後述する。
【0046】
次に、エンジン20の詳細について、説明する。なお、図2においては、直列に配置された4つの気筒のうちの1つについて説明する。
図2に示すように、エンジン20は、エンジン本体部21を有し、エンジン本体部21は、シリンダブロック210と、シリンダブロック210の上部に固定されたシリンダヘッド220と、オイルパン230と、を備えている。
【0047】
シリンダブロック210には、ピストン211が往復動可能に設けられている。ピストン211は、コネクティングロッド212と連結されている。コネクティングロッド212は、クランクシャフト213と連結されている。そして、ピストン211の往復動は、コネクティングロッド212を介して、クランクシャフト213の回転運動に変換されるようになっている。
【0048】
また、エンジン本体部21においては、シリンダブロック210とシリンダヘッド220とピストン211とによって、燃焼室201が形成されている。
エンジン20は、燃焼室201において燃料と空気との混合気を所望のタイミングで燃焼させることによりピストン211を往復動させ、コネクティングロッド212を介してクランクシャフト213を回転させることにより、トランスミッション30にトルクを出力するようになっている。なお、エンジン20に用いられる燃料は、ガソリンあるいは軽油等の炭化水素系の燃料や、エタノール等のアルコールとガソリンとを混合したアルコール燃料であってもよい。
【0049】
シリンダヘッド220は、エアクリーナ312を通過して車外から流入した空気を燃焼室201に導入するための吸気管311と、燃焼室201における混合気の燃焼によって発生した排気ガスを触媒コンバータ322に通じさせて車外へ排出するための排気管321と、が連結されている。
【0050】
なお、エアクリーナ312は、例えば、内部に収容した紙または合成繊維の不織布のフィルターにより、吸入空気中の異物を除去するようになっている。チリやホコリといった空気中の異物には硬いものもあり、このような硬い異物が燃焼室201に入り込むと、研磨剤として働いてしまい、シリンダブロック210の内壁面やピストン211を磨耗させる原因ともなり得る。したがって、エアクリーナ312は、これらの異物を除去して、吸入空気を清浄化するようになっている。
【0051】
また、吸気管311には、エンジン20に供給される空気量を制御する電子スロットル制御装置160が備えられている。この電子スロットル制御装置160は、スロットルバルブ161と、スロットルモータ162と、スロットル開度センサ163と、を有している。
【0052】
スロットルバルブ161は、吸気管311の内部に薄い円板状の弁体として設けられ、弁体の中央にシャフトを備えている。また、スロットルバルブ161は、このシャフトが回動させられることによって弁体が回動し、吸気管311内の空気が流通する断面積を変更し、吸気管311における空気の流量を変更するようになっている。
【0053】
スロットルモータ162は、スロットルバルブ161のシャフトを回動させることにより、弁体を回動させるようになっている。また、スロットルモータ162は、ECU100によって制御され、アクセルペダルの踏み込み量であるアクセル開度Accに応じたスロットル開度となるように、スロットルバルブ161を回動させるようになっている。
【0054】
スロットル開度センサ163は、ECU100によって制御されることにより、スロットルモータ162により駆動されるスロットルバルブ161の開度を検出して、検出した開度に応じた検出信号をECU100に出力するようになっている。また、ECU100は、スロットル開度センサ163から出力された検出信号が表すスロットルバルブ161の開度を、スロットル開度θthとして取得するようになっている。
【0055】
さらに、電子スロットル制御装置160は、ECU100によるスロットルモータ162の制御が中止されると、スロットルバルブ161に設けられたバネにより、所定の中立位置に復帰されるようになっている。
【0056】
また、触媒コンバータ322は、一般に、排気ガスに含まれる未燃炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)および窒素酸化物(NOx)といった有害物質を効率的に除去することができる三元触媒を備えている。この三元触媒は、好ましくはNOx含有率の高い排気ガスからでも、NOxを効率的に除去する機能を有するものが用いられる。
【0057】
さらに、シリンダヘッド220は、吸気管311と燃焼室201とを連通させる吸気ポート221と、燃焼室201と排気管321とを連通させる排気ポート222と、が形成され、吸気管311から燃焼室201への燃焼用空気の導入を制御するための吸気バルブ223と、燃焼室201から排気管321への排気ガスの排出を制御するための排気バルブ224と、燃料を燃焼室201内へ噴射するためのインジェクタ225と、燃焼室201内の混合気に点火するための点火プラグ226と、が取り付けられている。
【0058】
吸気バルブ223は、上端に後述する吸気カムシャフト241(図3参照)に設けられた吸気カム243が当接されており、吸気カム243の回転により、吸気ポート221と燃焼室201との間を開閉するようになっている。
【0059】
排気バルブ224は、上端に後述する排気カムシャフト242(図3参照)に設けられた吸気カム244が当接されており、排気カム244の回転により、燃焼室201と排気ポート222との間を開閉するようになっている。
【0060】
インジェクタ225は、ECU100により制御されるソレノイドコイルおよびニードルバルブを有している。また、インジェクタ225には、所定の圧力で燃料が供給されている。したがって、インジェクタ225は、ECU100によってソレノイドコイルに所望のタイミングで通電されると、ニードルバルブを開いて、燃焼室201に燃料を噴射するようになっている。
【0061】
点火プラグ226は、プラチナやイリジウム合金製の電極を有する公知の点火プラグである。点火プラグ226は、ECU100によって所望のタイミングで上記電極に通電されて放電を発生させることにより、燃焼室201内の混合気に点火するようになっている。
【0062】
さらに、図3に示すように、エンジン20は、シリンダヘッド220の上部に、吸気カムシャフト241および排気カムシャフト242が、回転可能に設けられている。
【0063】
吸気カムシャフト241には、吸気バルブ223の上端に当接する吸気カム243が設けられている。これにより、吸気カムシャフト241が回転すると、吸気カム243により吸気バルブ223が開閉駆動されるようになっている。
【0064】
排気カムシャフト242には、排気バルブ224の上端に当接する排気カム244が設けられている。これにより、排気カムシャフト242が回転すると、排気カム244により排気バルブ224が開閉駆動されるようになっている。
【0065】
吸気カムシャフト241の一端部には、吸気カムシャフト241を吸気カムスプロケット245に対して回転させる吸気側回転位相コントローラ247が設けられている。また、排気カムシャフト242の一端部には、排気カムシャフト242を排気カムスプロケット246に対して回転させる排気側回転位相コントローラ248が設けられている。一方、駆動側回転軸であるクランクシャフト213には、クランクスプロケット249が取り付けられている。
【0066】
なお、吸気側回転位相コントローラ247は、ECU100に制御されることにより、吸気カムシャフト241を吸気カムスプロケット245に対して回転させ、遅角制御を行うことができるようになっている。また、排気側回転位相コントローラ248は、ECU100に制御されることにより、排気カムシャフト242を排気カムスプロケット246に対して回転させ、遅角制御を行うことができるようになっている。
【0067】
これら吸気カムスプロケット245、排気カムスプロケット246およびクランクスプロケット249には、タイミングベルト250が巻き掛けられている。これにより、タイミングベルト250によって、クランクスプロケット249の回転が、吸気カムスプロケット245および排気カムスプロケット246に伝達される。すなわち、駆動側回転軸としてのクランクシャフト213の回転が、タイミングベルト250を介して、従動側回転軸としての吸気カムシャフト241および排気カムシャフト242に伝達されることで、これら吸気カムシャフト241および排気カムシャフト242に駆動される吸気バルブ223および排気バルブ224が、クランクシャフト213に同期して吸気ポート221および排気ポート222を開閉するようになっている。
【0068】
また、タイミングベルト250は、テンショナ251およびアイドラプーリ252によって経路が規制されている。さらに、タイミングベルト250は、テンショナ251によって適度なテンションが与えられ、吸気カムスプロケット245、排気カムスプロケット246およびクランクスプロケット249から外れることが防止されている。
【0069】
上記のように、タイミングベルト250は、エンジン20の出力軸であるクランクシャフト213の回転力を、吸気バルブ223および排気バルブ224を駆動する吸気カムシャフト241および排気カムシャフト242に伝達するようになっている。
【0070】
次に、クランク角センサ131、吸気カム角センサ139および排気カム角センサ140について、説明する。
クランクシャフト213には、クランクシャフト213とともに回転し、クランク角センサ131の被検出部となるクランクセンサプレート254が設けられている。
【0071】
図4に、クランクセンサプレート254を示す。図4に示すように、クランクセンサプレート254は、外周に10°ごとに信号歯が設けられ、上死点検出用に2歯欠歯した部分が1箇所あり、全周で34歯の信号歯が設けられている。
【0072】
クランク角センサ131は、電磁ピックを有し、クランクセンサプレート254の信号歯の突起により、クランクシャフト213が回転すると、コイル部を通過する磁束が増減し、起電力が発生される。この発生電圧は、クランクセンサプレート254の突起部がクランク角センサ131に近づくときと離れるときとでは逆向きになるため、交流電流として現れる。また、クランク角センサ131は、この信号を矩形波に整形して、Ne信号としてECU100に出力するようになっている。
【0073】
したがって、クランク角センサ131は、クランクセンサプレート254により、クランクシャフト213の回転角を10°ごとに検出することができるとともに、クランクセンサプレート254の欠歯した箇所により、クランクシャフト213の位置、すなわち、回転位置を検出することができるようになっている。
【0074】
さらに、ECU100は、クランク角センサ131により検出されたクランクシャフト213の10°ごとの検出信号の3つ分をまとめて、すなわち、クランクシャフト213の30°で1つとなるクランクカウンタccrnkを生成する。このクランクカウンタccrnkは、所定の気筒、例えば、タイミングベルト250に最も近い側の気筒(以下、第1気筒という)におけるピストン211の上死点から次の上死点までを、クランクカウンタccrnk0〜クランクカウンタccrnk23とする。
【0075】
また、吸気カムシャフト241および排気カムシャフト242は、クランクシャフト213が2周する間に1周するようになっている。したがって、角度の記載を統一するため、吸気カムシャフト241および排気カムシャフト242に関する記載についても、クランクシャフト213の角度を示すクランクアングル(以下、CAと記載する)を用いるものとする。
【0076】
吸気カムシャフト241には、吸気カムシャフト241とともに回転し、吸気カム角センサ139の被検出部となる吸気カムセンサプレート255が設けられている。また、排気カムシャフト242には、排気カムシャフト242とともに回転し、排気カム角センサ140の被検出部となる排気カムセンサプレート256が設けられている。
【0077】
図5に、吸気カムセンサプレート255を示す。図5に示すように、吸気カムセンサプレート255は、外周に山と谷が設けられている。吸気カムセンサプレート255は、順に60°CAの谷、180°CAの山、180°CAの谷、60°CAの山、120°CAの谷、120°CAの山が設けられている。
【0078】
吸気カム角センサ139は、磁気抵抗素子(MRE:Magnetic Resistance Element)を有し、吸気カムセンサプレート255に設けられた山と谷により、吸気カムシャフト241が回転すると、吸気カム角センサ139にかかる磁界の方向、すなわち、磁気ベクトルが変化し、内部抵抗値が変化する。吸気カム角センサ139は、この抵抗値変化を電圧に変換した上で出力される波形と、しきい値との大小比較で、ハイ(図中ではHighと記載)とロー(図中ではLowと記載)の矩形波に整形し、Nci信号としてECU100に出力するようになっている。
【0079】
排気カムセンサプレート256は、吸気カムセンサプレート255と同様のものであり、吸気カムセンサプレート255と比較して60°CAずれた状態で、排気カムシャフト242に設けられている。
【0080】
排気カム角センサ140は、吸気カム角センサ139と同様に磁気抵抗素子を有し、排気カムシャフト242が回転すると、排気カムセンサプレート256に設けられた山と谷に対応する矩形波を、Nco信号としてECU100に出力するようになっている。
【0081】
ECU100は、吸気カム角センサ139から入力したNci信号および排気カム角センサ140から入力したNco信号と、クランク角センサ131から入力したNe信号と、を比較し、吸気カムシャフト241および排気カムシャフト242の実際の回転角を検出するとともに、気筒判別を行うようになっている。
【0082】
さらに、ECU100は、吸気カム角センサ139から入力したNci信号および排気カム角センサ140から入力したNco信号と、クランクカウンタccrnkと、から180°CAごとのカムカウンタccamを生成する。このカムカウンタccamは、クランクカウンタccrnk2〜7をカムカウンタccam0とし、クランクカウンタccrnk8〜13をカムカウンタccam1とし、クランクカウンタccrnk14〜19をカムカウンタccam2とし、クランクカウンタccrnk20〜23およびクランクカウンタccrnk0〜1をカムカウンタccam3とする。
【0083】
次に、電子スロットル制御装置160が故障した場合のフェールセーフ機能について、説明する。電子スロットル制御装置160の故障とは、例えば、スロットルモータ162が正常に動作できなくなった場合、スロットルモータ162は正常に動作するが、スロットルバルブ161が動作しなくなった場合、スロットル開度センサ163が正常にスロットル開度θthを検出できない場合、スロットル開度センサ163が不正な値を出力する場合等がある。なお、ECU100は、電子スロットル制御装置160を監視し、電子スロットル制御装置160が故障した場合には、電子スロットル制御装置160の異常検出信号を受信するようになっている。
【0084】
また、ECU100は、電子スロットル制御装置160に対するフェールセーフを実行する際、電スロFS実行禁止フラグを確認し、この電スロFS実行禁止フラグが立っている場合には、電子スロットル制御装置160に対するフェールセーフの実行を中止する。さらに、ECU100は、電子スロットル制御装置160に対するフェールセーフの実行中は、電スロFS中フラグを立てる。なお、電スロFS実行禁止フラグとは、電子スロットル制御装置160に対するフェールセーフの実行を禁止するか否か、すなわち、許可するか否かを判定するためのフラグである。また、電スロFS中フラグとは、電子スロットル制御装置160に対するフェールセーフの実行中であるか否かを判定するためのフラグである。
【0085】
ECU100は、電子スロットル制御装置160の異常を検出すると、電子スロットル制御装置160の制御を中止し、アクセル開度Accに基づいて、エンジン20の駆動気筒数および点火時期を調整するようになっている。
【0086】
具体的には、ECU100は、電子スロットル制御装置160の異常を検出すると、スロットルモータ162の制御を中止する。電子スロットル制御装置160は、スロットルモータ162の駆動が停止されると、スロットルバルブ161がバネにより所定の中立位置に復帰される。このスロットルバルブ161の中立位置は、例えば、スロットル開度が7°の位置であり、エンジン20に吸入される吸入空気量が固定された空気量となる。
次に、ECU100は、アクセル開度Accが20°以上の場合には、全気筒を運転し、点火時期も通常時、すなわち、遅角制御を行わない状態で、エンジン20を制御する。
【0087】
また、ECU100は、アクセル開度Accが10°以上20°未満の場合には、全気筒を運転し、所定の点火遅角制御を行って、エンジン20を制御する。これにより、ECU100は、アクセル開度Accが20°以上の場合よりも、エンジン20の出力を抑制させることができる。
【0088】
また、ECU100は、アクセル開度Accが10°未満の場合には、運転気筒数を半分とし、さらに、所定の点火遅角制御を行って、エンジン20を制御する。これにより、ECU100は、アクセル開度Accが10°以上20°未満の場合よりも、エンジン20の出力を抑制させることができる。
【0089】
したがって、ECU100は、電子スロットル制御装置160が故障してしまった場合であっても、アクセルペダルの踏み込み量に応じて、ある程度エンジン20の出力量を変化させて、車両10を走行させるフェールセーフを行うことができる。
【0090】
次に、クランク角センサ131が故障した場合のフェールセーフ機能について、説明する。また、図6に、正常時のクランクカウンタccrnkと、吸気カムセンサプレート255および排気カムセンサプレート256の状態を表す遷移図を示す。
【0091】
また、ECU100は、電子スロットル制御装置160に対するフェールセーフの実行と同様に、クランク角センサ131に対するフェールセーフを実行する際、NeセンサFS実行禁止フラグを確認し、このNeセンサFS実行禁止フラグが立っている場合には、クランク角センサ131に対するフェールセーフの実行を中止する。さらに、ECU100は、クランク角センサ131に対するフェールセーフの実行中は、NeセンサFS中フラグを立てる。なお、NeセンサFS実行禁止フラグとは、クランク角センサ131に対するフェールセーフの実行を禁止するか否か、すなわち、許可するか否かを判定するためのフラグである。また、NeセンサFS中フラグとは、クランク角センサ131に対するフェールセーフの実行中であるか否かを判定するためのフラグである。
【0092】
ECU100は、クランク角センサ131の異常を検出すると、吸気カム角センサ139から入力したNci信号および排気カム角センサ140から入力したNco信号に基づいて、クランクカウンタccrnkの代わりに、フェールセーフ用クランクカウンタ(以下、F/S用クランクカウンタという)を生成するようになっている。
【0093】
例えば、ECU100は、クランク角センサ131の異常を検出すると、吸気カムシャフト241および排気カムシャフト242の遅角を中止して、吸気カムシャフト241および排気カムシャフト242を基準位置に戻す。そして、ECU100は、カムカウンタccam3の範囲内にあるときには、吸気カム角センサ139から入力したNci信号がハイからローへの切り替わりを検出する。以下、信号のハイからローへの切り替わりを、信号の立ち下がりといい、信号のローからハイへの切り替わりを、信号の立ち上がりという。
【0094】
ECU100は、カムカウンタccam3の範囲内において、Nci信号の立ち下がりを検出すると、前回のNci信号の立ち下がり時間から今回のNci信号の立ち下がり時間までの間隔を6等分して、F/S用クランクカウンタccrnk2〜7の開始時間を決定して、F/S用クランクカウンタccrnk2〜7を生成する。すなわち、ECU100は、吸気カムシャフト241が直前の180°CAを回転するのに擁した時間を6等分して、30°CAごとのF/S用クランクカウンタccrnkを生成する。なお、F/S用クランクカウンタccrnk7の終了は、吸気カム角センサ139から入力したNci信号の立ち上がりの検出とする。
【0095】
また、ECU100は、カムカウンタccam0の範囲内にあるときには、吸気カム角センサ139から入力したNci信号の立ち上がりを検出する。ECU100は、カムカウンタccam0の範囲内において、Nci信号の立ち上がりを検出すると、前回のNci信号の立ち下がり時間から今回のNci信号の立ち上がり時間までの間隔を6等分して、F/S用クランクカウンタccrnk8〜13を生成する。なお、F/S用クランクカウンタccrnk13の終了は、吸気カム角センサ139から入力したNci信号の立ち下がりの検出とする。
【0096】
また、ECU100は、カムカウンタccam1の範囲内にあるときには、吸気カム角センサ139から入力したNci信号の立ち下がりを検出する。ECU100は、カムカウンタccam1の範囲内において、Nci信号の立ち下がりを検出すると、前回のNci信号の立ち上がり時間から今回のNci信号の立ち下がり時間までの間隔を6等分して、F/S用クランクカウンタccrnk14〜19を生成する。なお、F/S用クランクカウンタccrnk19の終了は、吸気カム角センサ139から入力したNci信号の立ち下がりの検出とする。
【0097】
また、ECU100は、カムカウンタccam2の範囲内にあるときには、吸気カム角センサ139から入力したNci信号の立ち下がりを検出する。ECU100は、カムカウンタccam2の範囲内において、Nci信号の立ち下がりを検出すると、前回のNci信号の立ち下がり時間から今回のNci信号の立ち下がり時間までの間隔を6等分して、F/S用クランクカウンタccrnk20〜1を生成する。なお、F/S用クランクカウンタccrnk1の終了は、吸気カム角センサ139から入力したNci信号の立ち下がりの検出とする。
【0098】
また、ECU100は、排気カム角センサ140から入力したNco信号に基づいても、吸気カム角センサ139から入力したNci信号に基づいたF/S用クランクカウンタccrnkの生成と同様に、F/S用クランクカウンタccrnkを生成することができる。
【0099】
さらに、ECU100は、吸気カム角センサ139から入力したNci信号および排気カム角センサ140から入力したNco信号の双方に基づいて、F/S用クランクカウンタccrnkを生成することにより、より正確にF/S用クランクカウンタccrnkを生成することができる。
【0100】
なお、上記説明においては、カムカウンタccamを利用して、F/S用クランクカウンタccrnkを生成するようにしたが、これに限らず、Nci信号の立ち下がり検出の時間間隔に基づいてF/S用クランクカウンタccrnkを生成する等、他の方法を用いてF/S用クランクカウンタccrnkを生成するようにしてもよい。
【0101】
以上のように、ECU100は、クランク角センサ131が故障してしまった場合であっても、吸気カム角センサ139から入力したNci信号および排気カム角センサ140から入力したNco信号に基づいて、F/S用クランクカウンタccrnkを生成して、フェールセーフを行うことができる。
【0102】
ところが、このようなクランク角センサ131の故障時のフェールセーフ機能においては、クランク角センサ131による検出間隔よりも長い検出間隔によって入力した検出信号を基に、F/S用クランクカウンタccrnkを生成している。例えば、ECU100は、直前の180°CA間隔の時間を6等分して、30°CAのF/S用クランクカウンタccrnkを生成している。したがって、クランク角センサ131におけるフェールセーフの実行時のF/S用クランクカウンタccrnkは、クランク角センサ131によって10°CAごとに検出し、3回分の検出値により30°CAのクランクカウンタccrnkを生成している場合よりも、正確ではない。
【0103】
このため、電子スロットル制御装置160の故障と、クランク角センサ131の故障とが、重なってしまった場合に、双方のフェールセーフ機能を実行してしまうと、制御の正確性が担保されなくなってしまう。すなわち、電子スロットル制御装置160の故障時のフェールセーフ機能によって実行している遅角制御が、クランク角センサ131の故障時のフェールセーフ機能によって生成したF/S用クランクカウンタccrnkを使用するため、遅角タイミングにずれが生じる虞がある。
【0104】
そこで、本実施の形態における車両の制御装置は、電子スロットル制御装置160の故障と、クランク角センサ131の故障との二重故障が発生してしまった場合には、クランク角センサ131の故障時のフェールセーフ機能の実行を禁止するようにした。
【0105】
以下、本発明の実施の形態における車両の制御装置を備えた車両10の特徴的な構成について、説明する。
【0106】
ECU100は、クランク角センサ131の異常を検出するようになっている。すなわち、ECU100は、本発明におけるクランク角センサ異常検出手段を構成している。
【0107】
さらに、ECU100は、クランク角センサ131の異常を検出したことを条件に、吸気カム角センサ139および排気カム角センサ140により検出された吸気カムシャフト241および排気カムシャフト242の回転位置に基づいてエンジン20の燃焼サイクルを制御するF/S用クランクカウンタを生成するようになっている。すなわち、ECU100は、本発明における疑似タイミング生成手段を構成している。
【0108】
さらに、ECU100は、生成したF/S用クランクカウンタを用い、クランク角センサ131が異常時におけるエンジン20に対する燃料供給制御処理および点火時期制御処理を継続実行するようになっている。すなわち、ECU100は、本発明における継続制御手段を構成している。
【0109】
さらに、ECU100は、電子スロットル制御装置160の異常を検出するようになっている。すなわち、ECU100は、本発明におけるスロットル異常検出手段を構成している。
【0110】
さらに、ECU100は、電子スロットル制御装置160の異常を検出したことを条件に、電子スロットル制御装置160の制御を中止し、アクセル開度Accに応じてエンジン20の点火時期を補正するようになっている。すなわち、ECU100は、本発明における点火時期補正手段を構成している。
【0111】
さらに、ECU100は、電子スロットル制御装置160の異常が検出され、かつ、クランク角センサ131の異常が検出されたことを条件に、F/S用クランクカウンタの生成を禁止するようになっている。また、ECU100は、エンジン20の点火時期の補正が行われている最中に、クランク角センサ131の異常が検出されたことを条件に、F/S用クランクカウンタの生成を禁止するようになっている。また、ECU100は、F/S用クランクカウンタの生成が行われている最中に、電子スロットル制御装置160の異常が検出されたことも条件に、F/S用クランクカウンタの生成を禁止するようになっている。すなわち、ECU100は、本発明におけるタイミング生成禁止手段を構成している。
【0112】
次に、本実施の形態における車両の制御処理の動作について、図7に示すフローチャートを参照して、説明する。
【0113】
なお、図7に示すフローチャートは、ECU100のCPU100aによって、RAM100cを作業領域として実行される車両の制御処理のプログラムの実行内容を表す。この車両の制御処理のプログラムは、ECU100のROM100bに記憶されている。また、この車両の制御処理は、ECU100のCPU100aによって、イグニッションのオンからオフまでの間に、予め定められた時間間隔で実行されるようになっている。
【0114】
図7に示すように、まず、ECU100のCPU100aは、クランク角センサ131が異常であるか否かの判定を行う(ステップS11)。具体的には、ECU100のCPU100aは、クランク角センサ131の異常検出信号を受信したか否かを判定する。
【0115】
ECU100のCPU100aは、クランク角センサ131が異常でない、すなわち、クランク角センサ131が正常に動作している場合には(ステップS11でNOと判定)、クランク角センサ131に対するフェールセーフの実行を禁止して(ステップS14)、本車両の制御処理を終了する。具体的には、ECU100のCPU100aは、NeセンサFS実行禁止フラグを立てる。
【0116】
一方、ECU100のCPU100aは、クランク角センサ131が異常であると判定した場合には(ステップS11でYESと判定)、電子スロットル制御装置160に対するフェールセーフ中でないか否かの判定を行う(ステップS12)。具体的には、ECU100のCPU100aは、電スロFS中フラグが立っているか否かを判定する。
【0117】
ECU100のCPU100aは、電子スロットル制御装置160に対するフェールセーフ中である、すなわち、電スロFS中フラグが立っている場合には(ステップS12でNOと判定)、クランク角センサ131に対するフェールセーフの実行を禁止して(ステップS14)、本車両の制御処理を終了する。
【0118】
一方、ECU100のCPU100aは、電子スロットル制御装置160に対するフェールセーフ中でない、すなわち、電スロFS中フラグが立っていない場合には(ステップS12でYESと判定)、クランク角センサ131に対するフェールセーフの実行を許可して(ステップS13)、本車両の制御処理を終了する。具体的には、ECU100のCPU100aは、NeセンサFS実行禁止フラグをクリアする。
【0119】
また、上記実施の形態においては、ECU100のCPU100aは、クランク角センサ131に対するフェールセーフの実行中に、電子スロットル制御装置160の異常が検出された場合には、クランク角センサ131に対するフェールセーフを中止し、電子スロットル制御装置160に対するフェールセーフを実行する。具体的には、ECU100のCPU100aは、電子スロットル制御装置160の異常が検出された際、NeセンサFS中フラグが立っていたら、クランク角センサ131に対するフェールセーフを中止し、F/S用クランクカウンタの生成を禁止して、電子スロットル制御装置160に対するフェールセーフを実行する。
【0120】
以上のように、本実施の形態における車両の制御装置は、電子スロットル制御装置160の異常が検出され、かつ、クランク角センサ131の異常が検出された場合には、F/S用クランクカウンタの生成を禁止するので、クランク角センサ131に対するフェールセーフ機能によって、電子スロットル制御装置160に対するフェールセーフ機能により行われているエンジン20の点火時期の補正に影響を与えることがないため、点火時期タイミングがずれず、狙い通りの点火時期制御を行うことができ、二重フェールセーフによる干渉を防止し、ドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0121】
また、本実施の形態における車両の制御装置は、点火時期の補正が行われている最中に、クランク角センサ131の異常が検出されたことを条件に、F/S用クランクカウンタの生成を禁止するので、電子スロットル制御装置160に対するフェールセーフ機能の実行中に、クランク角センサ131に異常が発生しても、電子スロットル制御装置160に対するフェールセーフ機能に影響をおよぼさず、ドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0122】
さらに、本実施の形態における車両の制御装置は、F/S用クランクカウンタの生成が行われている最中に、電子スロットル制御装置160の異常が検出されたことを条件に、F/S用クランクカウンタの生成を禁止するので、クランク角センサ131に対するフェールセーフ機能の実行中に、電子スロットル制御装置160の異常が発生した場合には、クランク角センサ131に対するフェールセーフ機能におけるF/S用クランクカウンタの生成を禁止して、電子スロットル制御装置160に対するフェールセーフ機能を実行するため、クランク角センサ131に対するフェールセーフ機能が電子スロットル制御装置160に対するフェールセーフ機能に干渉せず、ドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0123】
なお、上述した実施の形態においては、1つのECUを有するものとして説明したが、これに限らず、複数のECUによって構成されるものであってもよい。例えば、エンジン20の燃焼制御を実行するE−ECU、トランスミッション30の変速制御を実行するT−ECU等の複数のECUによって、本実施の形態のECU100が構成されるものであってもよい。この場合、各ECUは、必要な情報を相互に入出力する。
【0124】
以上説明したように、本発明に係る車両の制御装置は、二重フェールセーフによる干渉を防止し、ドライバビリティの悪化を防止することができるという効果を有し、電子スロットル制御装置およびクランク角センサに対するフェールセーフを行う車両の制御装置等として有用である。
【符号の説明】
【0125】
10 車両
20 エンジン
100 ECU(クランク角センサ異常検出手段、疑似タイミング生成手段、継続制御手段、スロットル異常検出手段、点火時期補正手段、タイミング生成禁止手段)
131 クランク角センサ
132 駆動軸回転数センサ
133 アクセル開度センサ
139 吸気カム角センサ(カム角センサ)
140 排気カム角センサ(カム角センサ)
160 電子スロットル制御装置(スロットル制御装置)
161 スロットルバルブ
162 スロットルモータ
163 スロットル開度センサ
201 燃焼室
210 シリンダブロック
211 ピストン
213 クランクシャフト
220 シリンダヘッド
221 吸気ポート
222 排気ポート
223 吸気バルブ
224 排気バルブ
241 吸気カムシャフト
242 排気カムシャフト
243 吸気カム
244 排気カム
245 吸気カムスプロケット
246 排気カムスプロケット
247 吸気側回転位相コントローラ
248 排気側回転位相コントローラ
249 クランクスプロケット
250 タイミングベルト
251 テンショナ
252 アイドラプーリ
254 クランクセンサプレート
255 吸気カムセンサプレート
256 排気カムセンサプレート
311 吸気管
321 排気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの吸入空気量を変更するスロットル制御装置を制御して、前記エンジンを制御する車両の制御装置において、
前記エンジンのクランクシャフトの回転位置を検出するクランク角センサと、
前記エンジンのカムシャフトの回転位置を検出するカム角センサと、
前記クランク角センサの異常を検出するクランク角センサ異常検出手段と、
前記クランク角センサ異常検出手段により前記クランク角センサの異常を検出したことを条件に、前記カム角センサにより検出された前記カムシャフトの回転位置に基づいて前記エンジンの燃焼サイクルを制御する疑似基準タイミングを生成する疑似タイミング生成手段と、
前記疑似タイミング生成手段により生成された前記疑似基準タイミングを用い、前記クランク角センサ異常時における前記エンジンに対する燃料供給制御処理および点火時期制御処理を継続実行する継続制御手段と、
前記スロットル制御装置の異常を検出するスロットル異常検出手段と、
アクセルペダルの開度を検出するアクセル開度センサと、
前記スロットル異常検出手段により前記スロットル制御装置の異常が検出されたことを条件に、前記スロットル制御装置の制御を中止し、前記アクセルペダルの開度に応じて前記エンジンの点火時期を補正する点火時期補正手段と、
前記スロットル異常検出手段により前記スロットル制御装置の異常が検出され、かつ、前記クランク角センサ異常検出手段により前記クランク角センサの異常が検出されたことを条件に、前記疑似タイミング生成手段による前記疑似基準タイミングの生成を禁止するタイミング生成禁止手段と、
を備えたことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記タイミング生成禁止手段は、前記点火時期補正手段による前記点火時期の補正が行われている最中に、前記クランク角センサ異常検出手段により前記クランク角センサの異常が検出されたことを条件に、前記疑似タイミング生成手段による前記疑似基準タイミングの生成を禁止することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記タイミング生成禁止手段は、前記疑似タイミング生成手段による前記疑似基準タイミングの生成が行われている最中に、前記スロットル異常検出手段により前記スロットル制御装置の異常が検出されたことを条件に、前記疑似タイミング生成手段による前記疑似基準タイミングの生成を禁止することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−220166(P2011−220166A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88707(P2010−88707)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】