説明

車両の変速操作装置

【課題】複数の変速レンジのうちのいずれか1つを選択できるようにすると共に、特定の変速レンジにおいては、運転者の連続的な操作意志を追加的に表現できるようにし、運転者の連続的な操作意志に伴う制御が行えるようにした車両の変速操作装置を提供する。
【解決手段】メインシャフトと、メインシャフトに沿った摺動と回動とが可能なように設けられた変速レバーと、変速レバーが単一経路上を往復移動できるように、変速レバーの移動経路を規定すると共に、複数の変速レンジが前記移動経路上に並んで配置されたゲートパターンを備えたゲートプレートと、を含んで構成され、
ゲートパターンは、特定の1変速レンジを除いた残りの変速レンジと、特定の1つの変速レンジと、が互いに区分できるように形成され、特定の1つの変速レンジは、変速レバーがゲートプレートに対し連続的に変位するように設定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の変速操作装置に係り、より詳しくは、複数の変速レンジのうちのいずれか1つを選択すると共に、更に、特定の変速レンジにおいて連続的な操作による変位を検知し、各種装置の制御に活用できるようにした車両の変速操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両の変速操作装置は、運転者の変速意志を受けるために、変速レバーを備え、通常のP(駐車)レンジ、R(後進)レンジ、N(中立)レンジ、及びD(走行)からなるゲートパターンに沿って変速レバーを動かして、所望の変速レンジを選択できるように構成されている。運転者が変速レバーで、変速レンジのうちのいずれか1つを選択すると、それに応じて変速機を制御して車両が運行される。
【0003】
また、最近では、マニュアルモードに対するゲートパターンを更に追加し、変速レバーをM+やM−に操作することにより、変速機においてギア比を段階的に上げたり下げたりして変速できるようにした例もある(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
上記のような従来のゲートパターンは、ある特定の変速レンジを選択することはできるが、選択された特定の変速レンジ内における運転者の連続的な操作意志を受けることはできない。
【0005】
すなわち、運転者が、変速レバーを用いてP、R、N、Dレンジのような変速レンジを選択する場合、ある1つの変速レンジを選択すること以外の操作は不可能である。マニュアルモードの場合にも、運転者が、変速レバーを用いて、M+やM−を選択してその操作意志を表現できるだけであって、運転者の連続的な操作意志を受けることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−24756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、運転者の操作意志に応じて複数の変速レンジのうちのいずれか1つを選択できるようにすると共に、特定の変速レンジにおいては、運転者の連続的な操作意志を追加的に表現できるようにし、運転者の連続的な操作意志に伴う制御を行えるようにした車両の変速操作装置を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような目的を達成するための本発明に係る車両の変速操作装置は、メインシャフトと、メインシャフトに沿った摺動とメインシャフトを中心とした回動とが可能なように設けられた変速レバーと、変速レバーが摺動と回動とをしながら単一経路上を往復移動できるように、変速レバーの移動経路を規定すると共に、複数の変速レンジが移動経路上に並んで配置されたゲートパターンを備えたゲートプレートと、を含んで構成され、
ゲートパターンは、複数の変速レンジのうちの特定の1つの変速レンジと、複数の変速レンジのうちの特定の1つの変速レンジを除いた残りの変速レンジと、が互いに区分できるように形成され、
特定の1つの変速レンジは、変速レバーがゲートプレートに対し連続的に変位するように設定されていることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、ゲートパターンが、残りの変速レンジが順に間隔をおいて配置された第1区間と、第1区間と外れるように配置され、1つの変速レンジを形成する第2区間と、第1区間と第2区間との間を傾斜するように連結する連結区間と、を有する。
第2区間には車両の走行レンジであるDレンジが配置され、第1区間にはDレンジ以外の変速レンジが配置される。
【0010】
また本発明は、変速レバーが、運転者が手で把持して操作するノブ部と、ノブ部の下方に延伸され、ゲートプレートを貫通するレバー部と、レバー部の下側に、摺動と回動とが可能なようにメインシャフトを囲んで設けられたスライド部と、運転者のスイッチング操作を受けるように設けられたセーフティボタンと、を含んで構成される。
【0011】
また本発明は、変速レバーが第1区間から連結区間を通過して第2区間に移動する時に、変速レバーを連結区間に沿って回動させるために、変速レバーのスライド部の側面に突出して形成された案内翼と、案内翼がメインシャフトに沿って直線的に移動してくると、案内翼と接触してスライド部をメインシャフトを中心として回動させるように設けられた回動ガイドと、を更に含んで構成される。
案内翼及び回動ガイドそれぞれは、互いに対向して接触する傾斜面を備え、案内翼の傾斜面が回動ガイドの傾斜面に沿って移動する間に、変速レバーが連結区間を移動するように形成される。
【0012】
また本発明は、スライド部に備えられたセンシング要素と、変速レバーが第1区間を移動する時に第1区間に配置された各変速レンジの選択の有無をセンシング要素の位置によって検知するように備えられた複数の位置センサと、を更に含んで構成される。
センシング要素は磁石であり、複数の位置センサは磁石の接近を検知するように各変速レンジ別に配置された複数の磁気接近検知センサからなる。
【0013】
また本発明は、変速レバーが第2区間を移動するときに、スライド部の変位を連続的に検知するように備えられた連続検知手段を更に含んで構成される。
連続検知手段は、変速レバーが第2区間に進入した時に、スライド部と共にメインシャフトに沿って直線移動するように備えられたラックバーと、ラックバーに噛み合わされ、ラックバーの直線移動に応じて回転するように備えられた回転磁石と、回転磁石の回転を検知する磁気回転検知センサと、を含んで構成される。
【0014】
また本発明は、ラックバーに、スライド部に向かって突出した作動突起が一体に設けられ、スライド部に、作動突起が挿入されるラックバー作動溝が一体に設けられ、ラックバー作動溝は、変速レバーが第1区間を移動する間は作動突起と干渉せず、変速レバーが第2区間において移動する間に作動突起とスライド部とを一体化させるように形成される。
また本発明は、スライド部の側面から一体に突出して形成され、シフトロック機能を実現するシフトロック突起と、変速レバーが第1区間に配置された各変速レンジに位置する時、シフトロック突起の両側を遮断して、シフトロック突起がメインシャフトの長さ方向に沿って移動するのを規制する状態を転換できるように備えられた複数のシフトロックアクチュエータと、を更に含んで構成される。
【0015】
また本発明は、第1区間の両端部のうちの連結区間と反対側の端部には、駐車状態を選択するPレンジが配置され、第1区間のPレンジの外側には車両エンジンの始動を制御できる始動スイッチ手段が設けられる。
始動スイッチ手段は、使用者によってゲートプレートの上方から下方に加える圧力によって操作される第1始動スイッチと、変速レバーのレバー部からメインシャフトの長さ方向の前方に突出した始動突起と、変速レバーをメインシャフトの長さ方向の前方に押した時、始動突起によって操作される第2始動スイッチと、変速レバーがPレンジにある時にはシフトロック突起の移動を規制し、セーフティボタンを操作することによってシフトロック突起の移動を許容し、始動突起が第2始動スイッチを加圧できるようにするシフトロックアクチュエータと、を含んで構成される。
【0016】
また本発明は、変速レバーが第1区間の各変速レンジを選択した時に節度感を与えるために、スライド部の内側に備えられた第1ディテント磁石と、第1ディテント磁石と相互作用して節度感を与えるるように、メインシャフトに備えられた複数の第2ディテント磁石と、を更に含んで構成される。
変速レバーが第2区間を移動する時、第1区間から遠くなるに従って変速レバーを移動させるのに必要な力が徐々に変化するようにするために、第1ディテント磁石と相互作用し、スライド部の移動に必要な力が徐々に変化するようにメインシャフトに備えられた複数のエフォート磁石を更に含んで構成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の車両の変速装置は、運転者の操作意志に応じて複数の変速レンジのうちのいずれか1つを選択できるようにすると共に、特定の変速レンジにおいては運転者が連続的な操作意志を追加的に表現できるようにし、そのような連続的な操作意志を検出して、車両に搭載された変速装置と共に、その他の装置に運転者の連続的な操作意志を反映し、それに伴う制御がなされる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る車両の変速操作装置が設けられた状態を示す外観図である。
【図2】本発明に係る車両の変速操作装置とその内部構造を示す部分切り欠き斜視図である。
【図3】本発明に係る車両の変速操作装置を図2の反対側から見た部分詳細図である。
【図4】本発明に係る車両の変速操作装置を変速レバー側から見た図であって、変速レバーの移動経路を説明した図である。
【図5】本発明に係る車両の変速操作装置をメインシャフトに延長線上から見た図であって、変速レバーが連結区間において回動される構造を示す図である。
【図6】図2の装置の部分詳細図であって、変速レバーが連結区間において回動するようにガイドされるメカニズムを説明した図である。
【図7】図2の装置の部分詳細図である。
【図8】図2の装置の部分詳細図である。
【図9】図2の装置の部分詳細図である。
【図10】図2の装置の部分詳細図である。
【図11】本発明の車両の変速操作装置のシフトロック機能をゲートパターンと共に説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、添付した図面1〜11を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明に係る車両の変速操作装置が設けられた状態を示す外観図であり、図2は、本発明に係る車両の変速操作装置とその内部構造をを示す部分切り欠き斜視図である。
図1、2に示すように、本発明の車両の変速操作装置は、メインシャフト1と、メインシャフト1に沿った摺動とメインシャフトを中心とした回動とが可能なように設けられた変速レバー3と、変速レバー3が摺動と回動とをしながら単一経路上を往復移動できるように変速レバー3の移動経路を規定すると共に、複数の変速レンジが移動経路上に並んで配置されたゲートパターン5を備えたゲートプレート7と、を含んで構成される。
【0020】
ここで、ゲートプレート7のゲートパターン5は、複数の変速レンジのうちの特定の1つの変速レンジと、複数の変速レンジのうちの特定の1つの変速レンジを除いた残りの変速レンジと、が互いに区分できるように形成される。
1つの変速レンジは、変速レバー3がゲートプレート7に対し連続的に変位するように設定される。
【0021】
ゲートプレート7のゲートパターン5は、残りの変速レンジが順に間隔をおいて配置された第1区間9と、第1区間9から外れて配置され、1つの変速レンジを形成する第2区間11と、第1区間9と第2区間11との間を傾斜するように連結する連結区間13と、を有する。
【0022】
第2区間11には車両の走行レンジであるDレンジが配置され、第1区間9にはDレンジ以外の変速レンジが配置される。
すなわち、P、R、Nレンジは第1区間9に配置され、第2区間11にDレンジが配置される。変速レバー3を第1区間9内において移動させることによって、P、R、Nレンジの中の何れか1つを選択することができ、変速レバー3を第2区間11に移動させることによって、Dレンジを選択した状態で、更に変速レバー3の変位に応じて運転者の操作意図を伝達することができる。
【0023】
各変速レンジを選択することや、Dレンジ内で追加的な変速レバー3の変位によって提供される運転者の操作意図は、別途のコントローラによって適切に処理される。
【0024】
図2に示すように、変速レバー3は、運転者が手で把持して操作するノブ部15と、ノブ部15の下方に延伸され、ゲートプレート7を貫通するレバー部17と、レバー部17の下側に、摺動と回動とが可能なように、メインシャフト1を囲んで設けられたスライド部19と、運転者のスイッチング操作を受けるように設けられたセーフティボタン21と、を含んで構成される。
【0025】
運転者は、変速レバー3のノブ部15を把持してメインシャフト1の長さ方向に沿って前後に移動させる操作力を加えることによって、スライド部19をメインシャフト1に沿って摺動移動させながら各変速レンジを選択することができる。
【0026】
図4は、本発明に係る車両の変速操作装置を変速レバー側から見た図であって、変速レバーの移動経路を説明した図であり、図5は、本発明に係る車両の変速操作装置をメインシャフトの延長線上から見た図であって、変速レバーが連結区間において回動されされる構造を示す図である。
図4示すように、変速レバー3が第1区間9から連結区間13を通過して第2区間11に移動する時に、変速レバー3を連結区間13に沿って回動させるために、図5に示すように、変速レバー3のスライド部19の側面に突出して形成された案内翼23と、回動ガイド25とが備えられている。回動ガイド25は、案内翼23がメインシャフト1に沿って直線的に移動してくると、案内翼23と接触してスライド部19をメインシャフト1を中心として回動させるようにガイドする。
【0027】
図6は、図2の装置の部分詳細図であって、変速レバーが連結区間において回動するようにガイドされるメカニズムを説明した図である。図6に示すように、案内翼23と回動ガイド25は互いに対向して面接触する傾斜面27,29を備え、案内翼23の傾斜面27が回動ガイド25の傾斜面29に沿って移動する間に変速レバー3が連結区間13を移動するように形成される。
【0028】
変速レバー3が第1区間9から連結区間13に進入しはじめた時に、案内翼23と回動ガイド25の傾斜面27,29とが互いに接触しはじめる。変速レバー3が第2区間11側に更に移動した時、案内翼23の傾斜面27は、回動ガイド25の傾斜面29に乗って移動する。その結果、図5に示すように、スライド部19は、メインシャフト1を中心にして回動する。次に案内翼23の傾斜面27が回動ガイド25の傾斜面29から脱した時に、変速レバー3は、第2区間11に進入する。その後、変速レバー3は、第2区間11においてメインシャフト1に沿った直線的な摺動移動だけを行う。
【0029】
図7は、図2の装置の部分詳細図である。図7に示すように、スライド部19にはセンシング要素30が備えられ、変速レバー3が第1区間9を移動する間に、第1区間9に配置された各変速レンジを選択したか否かをセンシング要素30の位置によって検知できるよう複数の位置センサ31が配備されている。
【0030】
本実施形態において、センシング要素30が磁石であり、複数の位置センサ31が磁石の接近を検知するように各変速レンジ別に配置された複数の磁気接近検知センサである。
磁気接近検知センサは従来のホールセンサなどであってもよく、また、磁石が接近した時、非接触状態においても磁石の接近状態を確認できるいずれの種類のセンサも磁気接近検知センサとして使用することができる。
【0031】
図8は、図2の装置の部分詳細図である。図8に示すように、変速レバー3が第2区間11を移動する時、スライド部19の変位を連続的に検知する連続検知手段が備えられている。
【0032】
本実施形態において、連続検知手段は、変速レバー3が第2区間11に進入した時に、スライド部19と共にメインシャフト1に沿って直線移動するように備えられたラックバー33と、ラックバー33に噛み合わされ、ラックバー33の直線移動に応じて回転するように備えられた回転磁石35と、回転磁石35の回転を検知する磁気回転検知センサ37とを含んで構成される。
【0033】
磁気回転検知センサ37としては、従来のホールセンサなどのように回転磁石35が回転する回転角度を測定できるものであれば、任意の磁気センサを使用することができる。
【0034】
変速レバー3が第2区間11に進入した時に、スライド部19と共にメインシャフト1に沿って移動するように備えられたラックバー33が設けられる。
ラックバー33にはスライド部19に向かって突出した作動突起39が一体に設けられ、スライド部19には作動突起39が挿入されるラックバー作動溝41が一体に設けられる。ラックバー作動溝41は、変速レバー3が第1区間9を移動する間には作動突起39と干渉せず、変速レバー3が第2区間11を移動する間にだけ作動突起39とスライド部19とを共に一体化させるように配備される。
【0035】
したがって、変速レバー3が第1区間9を移動する間はラックバー33は動かず、変速レバー3が第2区間11を移動する時に作動突起39がラックバー作動溝41によって拘束され、スライド部19と共にメインシャフト1の長さ方向に沿って直線移動しする。このようなラックバー33の直線運動は回転磁石35を回転させ、磁気回転検知センサ37を介してラックバー33の変位、すなわち、変速レバー3のDレンジ内における変位を連続的に検出することができる。
【0036】
上記のように、磁気回転検知センサ37によって検出された変速レバー3の変位に対する情報及び複数の位置センサ31による変速レバー3の位置に対する情報は、別途に備えられたコントローラなどに提供され、運転者の操作意志を反映して変速機を制御するように処理されると共に、車両に取り付けられた他の装置を連続的に制御するのに活用することができる。
【0037】
図9は、図2の装置の部分詳細図である。
図9に示すように、本発明の実施形態は、シフトロック機能の実現のために、スライド部19の側面から一体に突出して形成されたシフトロック突起43と、複数のシフトロックアクチュエータ45と、を備えている。シフトロックアクチュエータ45は、変速レバー3が第1区間9に配置された各変速レンジに位置する時、シフトロック突起43の両側を遮断して、シフトロック突起43がメインシャフト1の長さ方向に沿って移動するのを規制している状態を転換できるように備えられている。
【0038】
シフトロックアクチュエータ45は、図示しないコントローラによって制御されており、変速レバー3がPレンジ又はRレンジにある場合と、NレンジからRレンジに移動しようとする場合と、には、シフトロック突起43がシフトロックアクチュエータ45によって規制され、変速レバー3を任意に移動できないようにする。運転者がセーフティボタン21を操作するなど、予め設定された条件が満たされた場合にのみ、コントローラがシフトロックアクチュエータ45を制御して、シフトロック突起43の規制を解除し、運転者が変速レバー3を所望の位置に移動させることを許可する。
【0039】
各変速レンジに対するシフトロックアクチュエータ45とシフトロック突起43によるシフトロック機能は、上記の実施形態とは異なるように構成することもできる。
【0040】
第1区間9の、両端部のうちの連結区間13と反対側の端部には、駐車状態を選択するPレンジが配置され、第1区間9のPレンジの外側には車両エンジンの始動を制御できる始動スイッチ手段が備えられる。
【0041】
本実施形態において、始動スイッチ手段は、第1始動スイッチ47と、始動突起49と、第2始動スイッチ51と、シフトロックアクチュエータ45と、を含んで構成される。
ここで、第1始動スイッチ47は使用者によってゲートプレート7の上方から下方に加える圧力によって操作され、始動突起49は変速レバー3のレバー部17からメインシャフト1の長さ方向の前方に突出し、第2始動スイッチ51は変速レバー3をメインシャフト1の長さ方向の前方に押した時、始動突起49によって操作され、シフトロックアクチュエータ45は変速レバー3がPレンジにある時はシフトロック突起43の移動を規制し、セーフティボタン21を操作することによって、シフトロック突起43の移動を許容して、始動突起49が第2始動スイッチ51を加圧できるようにする。
【0042】
すなわち、運転者がセーフティボタン21を押した状態で変速レバー3をメインシャフト1の長さ方向の前方、すなわち、図2を基準に左側方向に押すことによって、第1始動スイッチ47を直接手で操作して、第2始動スイッチ51を介して車両を始動させることができるように配備した。
【0043】
図10は、図2の装置の部分詳細図である。図10は、参考のために、シフトロックアクチュエータ45によって、変速レバー3の誤操作による第2始動スイッチ51の誤作動を防止することを説明したものである。
【0044】
変速レバー3が第1区間9の各変速レンジを選択した時の節度感を与えるために、スライド部19の内側に第1ディテント磁石53を備え、第1ディテント磁石53と相互作用して節度感を与えるるようにメインシャフト1に複数の第2ディテント磁石55を備える。
【0045】
運転者が、変速レバー3を第1区間9においてメインシャフト1の長さ方向の前後に移動させると、第1ディテント磁石53と第2ディテント磁石55は、相互の間に作用する磁力により、変速レバー3を、各変速レンジの指定された位置に節度感を持って位置させる。これによって運転者の変速レバー3の操作感及び便宜性を向上させることができる。
【0046】
また、変速レバー3が第2区間11を移動する時、第1区間9から遠くなるにつれて変速レバー3を移動させるのに必要な力が徐々に変化するようにするために、第1ディテント磁石53と相互作用し、スライド部19の移動に必要な力が徐々に変化するようにメインシャフト1に複数のエフォート磁石57を備えている。
【0047】
運転者が、変速レバー3を第2区間11内において移動させる時、変速レバー3が、第1区間9から遠くなるにつれて、変速レバー3を移動させる力が減少するように配備することにより、運転者は、目で確認しなくても手で操作する感覚だけで変速レバー3の位置を推定できるようになる。
【0048】
図3は、本発明に係る車両の変速操作装置を図2の反対側から見た部分詳細図である。図3に示すように、本実施形態においては、第1区間9から遠くなるほどエフォート磁石57の大きさが大きくなるように形成され、変速レバー3を第1区間9からより遠くまで操作するほど、より大きい力が必要になるように構成されている。
【0049】
但し、変速レバー3は、第2区間11内において、上記のような複数のエフォート磁石57と第1ディテント磁石53との相互作用により、任意の2つの磁石の間に停止することができずに移動して、柔軟な動きができず、断続的な動きを見せる場合もありうる。
【0050】
本発明において、「第2区間11における変速レバー3の連続的な変位」とは、任意の地点に連続的に移動して停止することで達成される変速レバー3の変位だけでなく、設定された複数の隔離された位置に移動しながら達成される変速レバー3の変位も含む。
【0051】
但し、複数の隔離れた位置は、従来のように、ある変速レンジを変えて選択するものではなく、特定の変速レンジ内において、その変速レンジに対して、若しくは車両に搭載された他の任意の制御対象に対して、運転者がその変速レンジ、又は制御対象を制御しようとするレベルを示すことができるように備えられた一連の値を示すのに用いられる。
【0052】
例えば、特定の変速レンジがDレンジである場合、変速レバー3の第2区間11内における変位を、第1区間9に近い側は車両の燃費を主にした変速パターン、即ち、エコーモードを選択し、変速レバー3が第1区間9から遠くなるにつれて車両の駆動力を主にした変速パターン、即ちスポーティモードをを選択するようにすることができ、これと同時に変速レバー3が第1区間9に近い側から遠い側に移動するにつれて、車両のサスペンションが柔軟な乗車感から次第にかたい乗車感に変化するように調節するようにすることができる。
【0053】
本発明の実施形態は、次のように表現することもできる。
変速レバー3と、
変速レバー3が分枝されない単一経路に沿って移動することにより、複数の変速レンジを順に選択することができ、複数の変速レンジのうちの特定の1つの変速レンジに対しては、変速レバー3の連続的な変位が形成できるように設定されたゲートパターン5を備えたゲートプレート7と、
変速レバー3がゲートプレート7のゲートパターン5に沿って移動できるようにガイドするガイド手段と、
変速レバー3がゲートパターン5に沿って移動するのを検知する検知手段と、を含んで構成される。
【0054】
ゲートプレート7のゲートパターン5は、
複数の変速レンジのうちの特定の1つの変速レンジを除いた残りの変速レンジが順に間隔をおいて配置された第1区間9と、
第1区間9から外れて配置され、特定の1つの変速レンジを形成する第2区間11と、
第1区間9と第2区間11との間を傾斜するように連結する連結区間13と、
からなる。
【0055】
ガイド手段は、
変速レバー3に備えられたスライド部19と、
スライド部19の内側に挿入され、変速レバー3の直線摺動運動及び回動運動ができるようにガイドするメインシャフト1と、
を含んで構成される。
【0056】
検知手段は、
スライド部19に備えられたセンシング要素30と、
変速レバー3が第1区間9を移動する間に、第1区間9に配置された各変速レンジが選択されたか否かをセンシング要素30の位置によって検知できるように備えられた複数の位置センサ31と、
変速レバー3が第2区間11において移動する時に、スライド部19の変位を連続的に検知するように設けられた連続検知手段と、
を含んで構成される。
【符号の説明】
【0057】
1 メインシャフト
3 変速レバー
5 ゲートパターン
7 ゲートプレート
9 第1区間
11 第2区間
13 連結区間
15 ノブ部
17 レバー部
19 スライド部
21 セーフティボタン
23 案内翼
25 回動ガイド
27、29 傾斜面
30 センシング要素
31 位置センサ
33 ラックバー
35 回転磁石
37 磁気回転検知センサ
39 作動突起
41 ラックバー作動溝
43 シフトロック突起
45 シフトロックアクチュエータ
47 第1始動スイッチ
49 始動突起
51 第2始動スイッチ
53 第1ディテント磁石
55 第2ディテント磁石
57 エフォート磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインシャフトと、
前記メインシャフトに沿った摺動と前記メインシャフトを中心とした回動とが可能なように設けられた変速レバーと、
前記変速レバーが前記摺動と前記回動とをしながら単一経路上を往復移動できるように、前記変速レバーの移動経路を規定すると共に、複数の変速レンジが前記移動経路上に並んで配置されたゲートパターンを備えたゲートプレートと、
を含んで構成され、
前記ゲートパターンは、複数の変速レンジのうちの特定の1つの変速レンジと、複数の変速レンジのうちの特定の1つの変速レンジを除いた残りの変速レンジと、が互いに区分できるように形成され、
前記1つの変速レンジは、前記変速レバーが前記ゲートプレートに対し連続的に変位するように設定されていることを特徴とする車両の変速操作装置。
【請求項2】
前記ゲートパターンは、
前記残りの変速レンジが順に間隔をおいて配置された第1区間と、
前記第1区間と外れるように配置され、前記1つの変速レンジを形成する第2区間と、
前記第1区間と前記第2区間との間を傾斜するように連結する連結区間と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の車両の変速操作装置。
【請求項3】
前記第2区間には車両の走行レンジであるDレンジが配置され、前記第1区間には前記Dレンジ以外の変速レンジが配置されることを特徴とする請求項2に記載の車両の変速操作装置。
【請求項4】
前記変速レバーは、
運転者が手で把持して操作するノブ部と、
前記ノブ部の下方に延伸され、前記ゲートプレートを貫通するレバー部と、
前記レバー部の下側に、前記摺動と前記回動とが可能なように、前記メインシャフトを囲んで設けられたスライド部と、
運転者のスイッチング操作を受けるように設けられたセーフティボタンと、
を含んで構成されることを特徴とする請求項2に記載の車両の変速操作装置。
【請求項5】
前記変速レバーが前記第1区間から前記連結区間を通過して前記第2区間に移動する時に、前記変速レバーを前記連結区間に沿って回動させるために、前記スライド部の側面に突出して形成された案内翼と、
前記案内翼が前記メインシャフトに沿って直線的に移動してくると、前記案内翼と接触して前記スライド部を前記メインシャフトを中心として回動させるように設けられた回動ガイドと、
を更に含んで構成されることを特徴とする請求項4に記載の車両の変速操作装置。
【請求項6】
前記案内翼及び前記回動ガイドそれぞれは、互いに対向して接触できる傾斜面を備え、前記案内翼の傾斜面が前記回動ガイドの傾斜面に沿って移動する間に、前記変速レバーが前記連結区間を移動するように形成されることを特徴とする請求項5に記載の車両の変速操作装置。
【請求項7】
前記スライド部に備えられたセンシング要素と、前記変速レバーが前記第1区間を移動する時に第1区間に配置された各変速レンジの選択の有無を前記センシング要素の位置によって検知するように備えられた複数の位置センサと、を更に含んで構成されることを特徴とする請求項4に記載の車両の変速操作装置。
【請求項8】
前記センシング要素が磁石であり、前記複数の位置センサが前記磁石の接近を検知するように前記各変速レンジ別に配置された複数の磁気接近検知センサからなることを特徴とする請求項7に記載の車両の変速操作装置。
【請求項9】
前記変速レバーが前記第2区間を移動するときに、前記スライド部の変位を連続的に検知するように備えられた連続検知手段を更に含んで構成されることを特徴とする請求項4に記載の車両の変速操作装置。
【請求項10】
前記連続検知手段は、前記変速レバーが前記第2区間に進入した時に、前記スライド部と共に前記メインシャフトに沿って直線移動するように備えられたラックバーと、前記ラックバーに噛み合わされ、前記ラックバーの直線移動に応じて回転するように備えられた回転磁石と、前記回転磁石の回転を検知する磁気回転検知センサと、を含んで構成されることを特徴とする請求項9に記載の車両の変速操作装置。
【請求項11】
前記ラックバーに、前記スライド部に向かって突出した作動突起が一体に設けられ、
前記スライド部に、前記作動突起が挿入されるラックバー作動溝が一体に設けられ、
前記ラックバー作動溝は、前記変速レバーが前記第1区間を移動する間は前記作動突起と干渉せず、前記変速レバーが前記第2区間を移動する間に前記作動突起と前記スライド部とを一体化させるように形成されることを特徴とする請求項10に記載の車両の変速操作装置。
【請求項12】
前記スライド部の側面から一体に突出して形成され、シフトロック機能を実現するシフトロック突起と、
前記変速レバーが前記第1区間に配置された各変速レンジに位置する時、前記シフトロック突起の両側を遮断して、前記シフトロック突起が前記メインシャフトの長さ方向に沿って移動するのを規制する状態を転換できるように備えられた複数のシフトロックアクチュエータと、
を更に含んで構成されることを特徴とする請求項4に記載の車両の変速操作装置。
【請求項13】
前記第1区間の両端部のうちの前記連結区間と反対側の端部には、駐車状態を選択するPレンジが配置され、前記第1区間の前記Pレンジの外側には車両エンジンの始動を制御できる始動スイッチ手段が備えられることを特徴とする請求項12に記載の車両の変速操作装置。
【請求項14】
前記始動スイッチ手段は、使用者によって前記ゲートプレートの上方から下方に加える圧力によって操作される第1始動スイッチと、前記変速レバーのレバー部から前記メインシャフトの長さ方向の前方に突出した始動突起と、前記変速レバーを前記メインシャフトの長さ方向の前方に押した時、前記始動突起によって操作される第2始動スイッチと、前記変速レバーがPレンジにある時には前記シフトロック突起の移動を規制し、前記セーフティボタンを操作することによって前記シフトロック突起の移動を許容し、前記始動突起が前記第2始動スイッチを加圧できるようにする前記シフトロックアクチュエータと、を含んで構成されることを特徴とする請求項13に記載の車両の変速操作装置。
【請求項15】
前記変速レバーが前記第1区間の各変速レンジを選択した時に節度感を与えるために、前記スライド部の内側に備えられた第1ディテント磁石と、前記第1ディテント磁石と相互作用して節度感を与えるるように前記メインシャフトに備えられた複数の第2ディテント磁石と、を更に含んで構成されることを特徴とする請求項14に記載の車両の変速操作装置。
【請求項16】
前記変速レバーが前記第2区間を移動する時、前記第1区間から遠くなるに従って前記変速レバーを移動させるのに必要な力が徐々に変化するようにするために、
前記第1ディテント磁石と相互作用し、前記スライド部の移動に必要な力が徐々に変化するように前記メインシャフトに備えられた複数のエフォート磁石を更に含んで構成されることを特徴とする請求項15に記載の車両の変速操作装置。
【請求項17】
変速レバーと、
前記変速レバーが分枝されない単一経路に沿って移動することにより、複数の変速レンジを順に選択することができ、前記複数の変速レンジのうちの特定の1つの変速レンジに対しては、前記変速レバーの連続的な変位が形成できるように設定されたゲートパターンを備えたゲートプレートと、
前記変速レバーが前記ゲートプレートのゲートパターンに沿って移動できるようにガイドするガイド手段と、
前記変速レバーが前記ゲートパターンに沿って移動するのを検知する検知手段と、
を含んで構成されることを特徴とする車両の変速操作装置。
【請求項18】
前記ゲートプレートのゲートパターンは、
前記複数の変速レンジのうちの特定の1つの変速レンジを除いた残りの変速レンジが順に間隔をおいて配置された第1区間と、
前記第1区間と外れるように配置され、前記特定の1つの変速レンジを形成する第2区間と、
前記第1区間と前記第2区間との間を傾斜するように連結する連結区間と、
からなることを特徴とする請求項17に記載の車両の変速操作装置。
【請求項19】
前記ガイド手段は、
前記変速レバーに備えられたスライド部と、
前記スライド部の内側に挿入され、前記変速レバーの直線摺動運動及び回動運動ができるようにガイドするメインシャフトと、
を含んで構成されることを特徴とする請求項18に記載の車両の変速操作装置。
【請求項20】
前記検知手段は、
前記スライド部に備えられたセンシング要素と、
前記変速レバーが前記第1区間を移動する間に、前記第1区間に配置された各変速レンジが選択されたか否かを前記センシング要素の位置によって検知できるように備えられた複数の位置センサと、
前記変速レバーが前記第2区間において移動する時に、前記スライド部の変位を連続的に検知するように設けられた連続検知手段と、
を含んで構成されることを特徴とする請求項18に記載の車両の変速操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−121551(P2012−121551A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150842(P2011−150842)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(507140276)エスエル株式会社 (13)
【Fターム(参考)】