説明

車両の荷物積載構造

【課題】外部に開放された車室とその後方の車体上方の空間とが連続する車両において、車室の後方の車体上方の空間を利用して大型の荷物を積載する場合に、荷物を固定可能な荷物積載構造を提供する。
【解決手段】車室3の後方の車体上面2aにロールバー8を設けると共に、前記車室3の後方の車体上方の空間を荷物積載空間として利用可能とし、前記ロールバー8に、該空間に積載される荷物を固定する荷物固定部材61(荷物固定手段)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部に開放された車室とその後方の車体上方の空間とが連続するオープンカータイプの車両の荷物積載構造に関し、車両の車体構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
例えば、セダンタイプや、スポーツカータイプの車両においては、車体の後部に、上面に設けられた開口部がトランクリッドにより開閉可能とされたトランクルームが設けられる場合があるが、このようなタイプの車両においては、例えば車体のデザインや、車体の大きさ等の理由から、トランクルームの大きさを大型の荷物を収容可能な程度に十分確保できない場合がある。その一方で、このようなタイプの車両においても、近年、例えばレジャーの際に自転車等の大型の荷物を積載可能なユーティリティ性が求められている。
【0003】
例えば特許文献1には、前記タイプの車両において、大型の荷物として自転車を積載可能なように、車室ルーフ部から車体後部の上方に左右一対のレール部材及びその支持部材を配設すると共に、該レール部材上で走行可能な台車を準備しておき、必要に応じて該台車に自転車をセットしてレール部材に装着することにより、該自転車を車室ルーフ部の上方等に積載可能とした荷物積載装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−245735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の荷物積載装置は、車室のルーフ部を有するセタンタイプの車両であるので適用することができるが、外部に開放された車室とその後方の車体上方の空間とが連続するオープンカータイプの車両には適用することはできない。そこで、オープンカータイプの車両においては車室の後方の車体上方の空間を利用して大型の荷物を積載することが考えられるが、如何に荷物を固定するかについて検討が必要である。
【0006】
そこで、本発明は、外部に開放された車室とその後方の車体上方の空間とが連続する車両において、車室の後方の車体上方の空間を利用して大型の荷物を積載する場合に、荷物を固定可能な荷物積載構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0008】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、外部に開放された車室とその後方の車体上方の空間とが連続する車両の荷物積載構造であって、前記車室の後方の車体上面にロールバーが設けられていると共に、前記車室の後方の車体上方の空間が荷物積載空間として利用可能とされており、前記ロールバーに、該空間に積載される荷物を固定する荷物固定手段が設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の車両の荷物積載構造において、前記車室の後方において、前記ロールバーの前方または後方に第2の荷物固定手段が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載の車両の荷物積載構造において、前記ロールバーに設けられた荷物固定手段と前記第2の荷物固定手段とのうちの前方に位置する固定手段に、所定以上の荷重の作用時に前記荷物の固定を解除させる固定解除手段が設けられている共に、後方に位置する固定手段は、車幅方向に延びる軸を有し、前記荷物を、該軸を中心として回動可能なように支持することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両の荷物積載構造において、前記車室の後方に、上面に設けられた開口部がトランクリッドにより開閉可能とされたトランクルームが設けられており、該トランクルームを開閉するトランクリッドが、前端部を中心として回動して裏面が略上方を向く開放状態に開放可能に構成されていると共に、該トランクリッドを、前記開放状態で支持する支持手段が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
次に、本発明の効果について説明する。
【0013】
まず、請求項1に記載の発明によれば、車室の後方の車体上方の空間を利用して荷物を積載することができる。その場合に、前記車室の後方の車体上面に設けられたロールバーに、荷物を固定する荷物固定手段が設けられているから、荷物を安全に積載することができる。
【0014】
ここで、外部に開放された車室とその後方の車体上方の空間とが連続する車両においては、ロールバーは、ロールオーバ時等における乗員の保護のため一般に当初から配設されるので、このロールバーを利用して荷物固定部材を設けることができる。また、ロールバーは、前記目的達成のために剛性が高くされているので、荷物を堅固に支持することができる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記車室の後方において、前記ロールバーの前方または後方に第2の荷物固定手段が設けられているから、荷物を前後二点で固定することができる。したがって、荷物の固定状態が安定する。特に、前後に長い荷物を支持するような場合に、大きな効果が発揮されることとなる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明によれば、前記ロールバーに設けられた荷物固定手段と前記第2の荷物固定手段とのうちの前方に位置する固定手段に、所定以上の荷重の作用時に前記荷物の固定を解除させる固定解除手段が設けられているから、該荷重の作用時に、前方に位置する固定手段による荷物の固定が解除される。一方、後方に位置する固定手段は、前記荷物を、該支持軸を中心として回動可能なように支持しているから、前部側の固定手段による固定が解除されると、前記荷物が支持軸を中心として回動することとなる。仮に、固定解除手段が設けられていないとすると、後方に位置する固定手段のみが破損したときに、荷物の後部側が車室側に移動する虞があるが、本発明によれば、これが防止されることとなる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明によれば、前記車室の後方に、トランクルームが設けられているから、荷物をトランクルーム内へ収容することも可能となる。その場合に、トランクリッドが、前端部を中心として回動して裏面が略上方を向く開放状態に開放可能に構成されているから、トランクルーム内に収容し切れないような大型の荷物でも積載することができる。また、トランクリッドを前記開放状態で車両が走行可能なように支持する支持手段が設けられているので、走行中に振動が発生しても、トランクリッドがばたついて車体に悪影響が発生するのが防止されると共に、積載時の安全性が十分に確保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る車両の荷物積載構造について説明する。
【0019】
本実施の形態に係る車両の荷物積載構造は、図1に示す車両1に適用されている。この車両1は、車体2の前後方向略中間に車室3が設けられると共に該車室3の上部が開閉可能とされたオープンカータイプの車両である。
【0020】
この車両1の車体2の後部側、詳しくは車室3の後端と車体1の後端との間の部分の後部側には、上面に設けられた開口部4がトランクリッド5により開閉可能とされたトランクルーム6が設けられている。
【0021】
また、本車両1は、前述のようにオープンカータイプの車両であるが、このような車両におけるロールオーバー時の乗員保護のため、車室3とトランクリッド5との間の車体2の上面2aには、車室3内に配設された左右のシート7,7の後方においてそれぞれロールバー8,8が設けられている。各ロールバー8は、図2(図1のA矢視図)に示すように、車体前後方向視で門形状をしている。
【0022】
前記トランクリッド5は、図1に示すように該リッド5の前端部の左右両端側に設けられた一対のヒンジ10,10を介して、車体2に支持されている。その場合に、本実施の形態においては、該トランクリッド5は、図3に示すように、前記ヒンジ10,10により、前端側を中心として回動して裏面が略上方を向く開放状態まで開放可能とされている。
【0023】
ヒンジ10は、図4に示すように、車体2に固定された支持ブラケット11と、該支持ブラケット11の上端部に設けられた支持軸12を介して回動可能に支持された半円弧形状のスワンネック型の回動アーム13とを有すると共に、支持軸12はトランクリッド5の上面及び車体2の上面2aよりも高い位置に設けられており、これにより、仮想線で示すように、リッド5が車室3後方の車体上面2aと干渉することなく、裏面が略上方を向いてほぼ水平となる開放状態に開放可能とされている。
【0024】
また、ヒンジ10の前後位置やトランクリッド5の前後長は、図3からわかるように、トランクリッド5をほぼ水平となる開放状態まで開放させても、ロールバー8と干渉しないように設定されている。また、車体2の上面2aには、図1からわかるように、回動アーム13との干渉を回避するために車体前後方向に延びる切欠2gが設けられている。
【0025】
また、本実施の形態においては、図1、図3に示すように、トランクリッド5を前記(図3の)開放状態で支持する支持機構20が設けられている。
【0026】
この支持機構20は、ロールバー8後方の車体上面に設けられた弾性材でなる支持部材21と、開放状態のトランクリッド5を固定するロック機構22とで構成されている。
【0027】
ロック機構22は、前記ロールバー8側方の車体上面2aに取り付けられた車体側部材30と、トランクリッド5の後壁5aに設けられたリッド側部材40とを有している。
【0028】
リッド側部材40は、図5に示すように、トランクリッド5の後壁5aの後面部に固定された支持ブラケット41と、一端部側が、該ブラケット41に支持された車幅方向に向く軸46を中心として回動可能なように支持された丸棒状の棒状部材42と、該棒状部材42の他端部に設けられた軸47を中心として回動可能に支持された操作部材43及び係合部材44とを有している。そして、棒状部材42は、ロック機構22の非使用時、トランクリッド5の後壁5aの後面部に固定された係止部材45の溝45a内に挟持されることにより係止されるように構成されている。
【0029】
一方、車体側部材30は、図6に示すように、車体上面2aに固定される基部30aと、該基部30aの左右の端部から立ち上がる一対の縦壁部30b,30bとを有し、これら30a,30b,30bで前記リッド側部材40の棒状部材42が嵌合可能な溝部30cを形成している。
【0030】
また、図5、図6に示すように、車体側部材30の縦壁部30b,30bの内面の前部側、及びリッド側部材40の係合部材44の上部側(図5における上下)に、互いに係合可能な係合凹部30d,30d及び係合突部44a,44aが形成されている。
【0031】
そして、図7に示すように、トランクリッド5を開放状態としてその後端部を支持部材21上に載置した状態で、操作部材43の操作部43aを持って棒状部材42を軸46を中心として前方へ回動させ、仮想線で示すように係合凹部30dと係合突部44aとを係合させる。そして、この係合部を支点として操作部材43及び係合部材44を回動させながら、棒状部材42を軸46を中心としてさらに回動させ、係合部材30の係合凹部30dと係合部材44の係合突部44aとを実線で示す係合状態とさせる。そして、この係合状態においては、操作部材43が操作されるまでの間、トグル機構の原理により、ロックされた状態が保持されることとなる。すなわち、図3のようにトランクリッド5を開放状態として車両1を走行させたとしても、走行中の振動等によりトランクリッド5がばたついたり、それに伴って車体に悪影響が生じたりするのが防止されることとなる。
【0032】
ここで、このようにトランクリッド5を開放状態として車両1を走行させると、雨天時等にトランクルーム6内に雨水が入ることとなるので、雨水等に対する対策を講じることが好ましい。
【0033】
そこで、本実施の形態においては、図3に示すように、トランクルーム6は、車体2の構成材で形成された凹部2bと、該凹部2bの上方から嵌め込まれ、樹脂製で耐水性を有する収納容器部材50(収納部)とで構成されている。
【0034】
この収納容器部材50は、図8、図9に示すように、上面が開口した(開口部4を形成する)箱状の本体部50aと、該本体部50aの上端縁に設けられたフランジ部50bとを有しており、該フランジ部50bが車体側の凹部2bの上端部に沿ってその外側に設けられた平面部2dに上方から当接することにより車体2側に支持されるようになっている。したがって、上方へ持ち上げれば、凹部2bから取り外すことができる。
【0035】
フランジ部50bの下面にはシール部材51が取り付けられており、収納容器部材50が凹部2b内に取り付けられた状態において、凹部2b内や、車体2における凹部2bに連続する部位に雨水等が侵入するのが防止されるようになっている。このように、本実施の形態においては、収納容器部材50が設けられているので、トランクルーム6の凹部2b内に水が溜まったり、車体2を構成するパネル類が水浸しになるような不具合が防止されることとなる。
【0036】
また、収納容器部材50の底面部50cには、図示しないキャップにより開閉可能なドレーン50d,50dが形成されている。これによれば、トランクリッド5を開放した状態で走行しているときに降雨があり、雨水が収納容器部材50内に溜まった場合、収納容器部材50を取り外して車外でキャップを外すことにより、水抜きを行うことができる。また、収納容器部材50が汚れた場合は、車体2から取り外した状態で水洗い清掃等を容易に行うことができる。
【0037】
また、収納容器部材50は、車体下面部近傍に至る深さを有している。これによれば、背の高い荷物をできるだけ上方に突出させず、かつ安定して積載することができる。
【0038】
例えば、図10に示すように、トランクルーム6の深さよりも背の高い荷物L1であっても積載することができる。
【0039】
また、図11に示すように、上部側がトランクルーム6の開口部4よりも前後に広がった形状の植木等の荷物L2であっても積載することができる。
【0040】
また、本実施の形態においては、図12に示すように、トランクリッド5及びトランクルーム6の開口部4の上方の空間に、荷物固定部材61及び支持ブラケット62を介して自転車L3を積載可能に構成されている。
【0041】
荷物固定部材61は、図12からわかるように、自転車L3の前部側を支持するもので、ロールバー8に設けられている。
【0042】
荷物固定部材61は、図2に示すように、非使用状態において、ロールバー8に収容可能に構成されている。詳しくは、ロールバー8の上辺部8a及び左右の側辺部8b,8bの後面部には、ロールバー8を収容可能な凹部8cが設けられていると共に、荷物固定部材61は、前記ロールバー8の上辺部8aに設けられた車幅方向に延びる支軸60を中心として、図に実線で示す下方位置(収容位置)と、仮想線で示す上方位置との間で回動可能に構成されている。
【0043】
また、荷物固定部材61は、前記支軸60が挿通される基部61aと、該基部61aから下方に延びる左右の荷物固定部61b,61bとを有し、車体前後方向視で略逆Y字状をしている。荷物固定部61b,61bの先端側にはそれぞれ自転車固定用ボルトを挿通可能なボルト挿通孔61c,61cが形成されている。
【0044】
ロールバー8の上辺部8aには、荷物固定部材61が上方位置にあるときに前記基部61aが嵌合可能な溝部8dが形成されており、この上方位置にあるときに、基部61aの上面61dと溝部8dの底面8eとが当接するように構成されている。また、このとき、荷物固定部材61の基部61aの後面61eとロールバー8の前面側に固定されたストッパ部材8fとが当接するように構成されており、これにより、荷物固定部材61が上方位置を越えて前方に移動するのが規制されるようになっている。
【0045】
また、荷物固定部材61及びロールバー8には、上方位置にある荷物固定部材61をロールバー8に固定するロック機構65が設けられている。なお、このロック機構65としては、前述したロック機構22等を適用可能であり、具体構造の説明は省略する。
【0046】
そして、図13(a)に示すように、自転車のフロントフォークFFの下端部の前輪軸受部Fa(溝部や孔部)と、荷物固定部材61の荷物固定部61bの貫通孔61cとに、ハンドル付ボルトLBを挿通し、該ボルトLBの先端側にハンドル付ナットLNを螺合させ、これにより、自転車の前部側を、荷物固定部材61に固定する。
【0047】
一方、支持ブラケット62は、前記図12からわかるように、自転車L3の後部側を支持するもので、トランクリッド5を開放した状態において、車体2の後端部に取り付け可能に構成されている。
【0048】
詳しくは、支持ブラケット62は、図14に示すように、左右一対のボルト挿通孔62a,62aが設けられた基部62bと、該基部62bに立設され、上端部に溝62c,62cが設けられた左右一対の立設部62d,62dとを有している。
【0049】
そして、図13(b)に示すように、蝶ボルトBBを、車体2の凹部2b上端周囲の平面部2dの下面に設けられたナットWNに、基部62bのボルト挿通孔62a,62a、収納容器部材50のフランジ部50bのボルト挿通孔50h,50h、及び前記平面部2dに設けられたボルト挿通孔2h,2hを介して螺合させ、これにより、支持ブラケット62を車体2側に固定する。また、自転車L3の後輪軸ボルトBR(請求項3における支持軸に相当する)の両端側を、左右の立設部62d,62dの溝62cに上方から挿入すると共に、該ボルトBRの左右の端部にハンドル付ナットLNを螺合させ、これにより、自転車の後部側を、後側の支持ブラケット62に固定する。
【0050】
このように、本実施の形態によれば、車室3の後方の車体2上方の空間を利用して自転車L3(荷物)を積載することができる。その場合に、前記車室3の後方の車体上面2aに設けられたロールバー8に、自転車L3を固定する荷物固定部材61が設けられているから、自転車L3を安全に積載することができる。
【0051】
また、外部に開放された車室3とその後方の車体2上方の空間とが連続する本願のようなオープンカータイプの車両1においては、ロールバー8は、ロールオーバ時等における乗員の保護のため一般に当初から配設されるので、このロールバー8を利用して荷物固定部材61を設けることができる。また、ロールバー8は、前記目的達成のために剛性が高くされているので、自転車L3を堅固に支持することができる。
【0052】
また、自転車L3は、前後二点で固定されるので、自転車L3の固定状態が安定する。特に、自転車L3のように前後に長い荷物を支持する場合に、大きな効果が発揮されることとなる。
【0053】
ところで、外部に開放された車室3とその後方の車体上方の空間とが連続するオープンカータイプの車両においては、車室3の後方の車体上方の空間を利用して荷物を積載する場合、車体2への衝撃荷重の作用時に、自転車L3が車室3側に移動するのを防止する必要がある。
【0054】
そこで、本実施の形態においては、荷物固定部材61の方が、支持ブラケット62よりも自転車L3(荷物)を支持する剛性が弱くされている。詳しくは、支持ブラケット62は、変形や破断等が生じないように金属製とされているのに対し、荷物固定部材61は破断可能なように樹脂製とされている(請求項3における固定解除手段に相当する)。
【0055】
したがって、例えば前述のように自転車L3を積載した状態で車両1が走行中に、例えば後突等が発生して荷物固定部材61及び支持ブラケット62に所定以上の荷重が加わった場合、図15に示すように、支持ブラケット62は変形や破断等が生じないが、荷物支持部材61は破断することとなり、その結果、自転車L3は、後方に位置する支持ブラケット62の上部を中心として、例えば(自転車L3の)前部側が上方へ、回動することとなる。仮に、これらの部材61,62の支持剛性の設定が、逆とされ、あるいは支持剛性について配慮がなされていないものとすると、支持ブラケット62のみが破断し、自転車L3が、荷物固定部材61の上部を中心として、その(自転車L3の)後部側が上方ひいては前方にまで回動する、すなわち車室3側に移動する虞があるが、本実施の形態においては、前述のように、荷物固定部材61の方が、支持ブラケット62よりも自転車L3(荷物)を支持する剛性が弱くされているから、車室3側へ移動するのが防止されることとなる。
【0056】
なお、本実施の形態においては、支持ブラケット62を金属製に、荷物固定部材61を樹脂製とすることにより、荷物固定部材61のみが破断可能なように構成したが、請求項3に記載の発明はこれに限られるものではなく、例えば、両部材61,62とも樹脂で形成するものの、荷物固定部材61の断面積を支持ブラケット62の断面積よりも小さくすることにより、荷物固定部材61の支持剛性の方が弱くなるようにしてもよい。また、両部材61,62とも樹脂で形成し、かつ両部材61,62の断面積を同じとするものの、荷物固定部材61にのみ、破断を誘起させる溝部等を形成し、これにより、荷物固定部材61の支持剛性の方が弱くなるようにしてもよい。
【0057】
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0058】
第2の実施の形態に係る車両101においては、ロールバー108は、第1の実施の形態とは異なり、例えばデザイン上等の理由により、図16に示すようにヒンジ110とほぼ同じ前後位置に設けられている。また、トランクリッド105の前端部には、切欠部105eが設けられている。
【0059】
この切欠部105eの幅は、左側のロールバー108の左端と右側のロールバー108の右端との間の距離よりも大きく、深さ(前後方向長)は、切欠部105eの前端の移動軌跡βがロールバー108の上端を越えて通過可能なように設定されている。したがって、トランクリッド105を裏面がほぼ上方を向く状態となるまで回動させるに際して、トランクリッド105とロールバー108とが干渉するのが防止される。なお、本実施の形態においても、トランクリッド105を開放状態で支持する支持機構が設けられているが、その構造は、第1の実施の形態と同様であり、説明は省略する。
【0060】
そして、本実施の形態においては、図17に示すように、トランクリッド105及びトランクルーム106の開口部104の上方の空間に、第1支持ブラケット161,荷物固定部材162,第2支持ブラケット163を介して自転車L4を積載可能に構成されている。
【0061】
第1支持ブラケット161は、図18に示すように、左右一対のボルト挿通孔161a,161aが設けられた基部161bと、該基部161bに立設され、上端部にボルト挿通孔161c,161cが設けられた左右一対の立設部161d,161dとを有している。また、図19に示すように、トランクリッド105の裏面(例えばインナパネル)には、第1支持ブラケット161の基部161bが固定される取付部105b,105bが設けられている。
【0062】
そして、図20(a)に示すように、蝶ボルトBBを、トランクリッド105裏面の取付部10bの内面に設けられたナットWNに、基部161bのボルト挿通孔161a、161a及びトランクリッド5裏面の取付部105bに設けられたボルト挿通孔105h,105hを介して螺合させることにより固定する。また、自転車のフロントフォークFFの下端部の前輪軸受部Fa(溝部や孔部)と、前側の支持ブラケット161の立設部161dの貫通孔161cとに、ハンドル付ボルトLBを挿通する。そして、該ボルトLBの先端側にハンドル付ナットLNを螺合させ、これにより、自転車L4の前部側を、前側の支持ブラケット161に固定する。
【0063】
荷物固定部材162は、前記図17からわかるように、自転車L4の前後方向中間部分を支持するもので、ロールバー108に設けられている。なお、ロールバー108及び荷物固定部材162の構造は、第1の実施の形態とほぼ同様であり、説明は省略する。
【0064】
そして、図20(b)に示すように、この荷物固定部材162のボルト挿通孔162c,162c、及び自転車L4のペダル軸受部PFにボルトB(請求項3における支持軸に相当する)を挿通し、その両端側にハンドル付きナットLN,LNを螺合させ、これにより、自転車L4前後方向中間部分を、荷物固定部材162に固定する。
【0065】
第2支持ブラケット163は、前記図17からわかるように、自転車L4の後部側を支持するもので、トランクリッド105を開放した状態において、車体2の後端部に取り付け可能に構成されている。なお、第2支持ブラケット163は、第1の実施の形態の支持ブラケット62とほぼ同様の構造であると共に、車体102への固定、及び自転車の固定の構造は同一であり、説明は省略する。
【0066】
このように本実施の形態によれば、車室103の後方で、トランクリッド105及びトランクルーム106の開口部104の上方の空間に自転車L4を積載し、車体102側に固定することができる。
【0067】
ところで、本実施の形態においては、第1、第2支持ブラケット161,163の方が、荷物固定部材162よりも荷物を支持する剛性が弱くされている。詳しくは、荷物固定部材162は金属製であるのに対し、第1、第2支持ブラケット161,163は樹脂製であり、所定の荷重が作用したときに、荷物固定部材162は変形や破断等が生じないように構成される一方で、第1、第2支持ブラケット161,162は破断可能なように構成されている(請求項3における固定解除手段に相当する)。
【0068】
したがって、自転車L4を積載した状態で車両101が走行中に、例えば後突等が発生して荷物固定部材162及び第1、第2支持ブラケット161,163に所定以上の荷重が加わった場合、図21に示すように、荷物固定部材162は変形や破断等が生じないが、第1、第2支持ブラケット161,163は破断することとなり、その結果、自転車L4は、荷物固定部材162の上部を中心として、例えば(自転車L4の)前部側が上方へ、回動することとなる。したがって、自転車L4が、車室103の存在する車両前方に移動するのが防止されることとなる。
【0069】
なお、前記第1、第2の実施の形態においては、ロールバーに設けられた荷物固定手段により自転車を固定する場合について説明したが、前記各発明は、自転車以外の荷物にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、外部に開放された車室とその後方の車体上方の空間とが連続する車両において、車室の後方の車体上方の空間を利用して大型の荷物を積載する場合に、ロールバーを利用して荷物を固定することができ、自動車産業に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態に係る車両の荷物積載構造が適用された車両の平面図((a図))及び側面図((b)図)である。
【図2】(a)図は図1のA矢視図(ロールバー部分の拡大図)、(b)図は(a)図の矢印P−Pによる断面図である。
【図3】トランクリッドを開放した状態における図1相当の図である。
【図4】図1の矢印B−Bによる拡大断面図(ヒンジ部分の拡大図)である。
【図5】(a)図は図1の矢印C−Cによる拡大断面図(ロック機構のリッド側部材部分の拡大図)、(b)図は(a)図の矢印D−Dによる断面図である。
【図6】(a)図は図1の矢印E−Eによる拡大断面図(ロック機構の車体側部材部分の拡大図)、(b)図は(a)図の矢印F−Fによる断面図である。
【図7】図3の矢印G−Gによる拡大断面図(ロック機構部分の拡大図)である。
【図8】図3の矢印H−Hによる拡大断面図(トランクルーム部分の拡大図)である。
【図9】収納容器部材の単品斜視図である。
【図10】荷物積載例である(その1、箱の場合)。
【図11】荷物積載例である(その2、植木の場合)
【図12】荷物積載例である(その3、自転車の場合)。
【図13】(a)図は図12の矢印J−Jによる拡大断面図、(b)図は図12の矢印K−Kによる拡大断面図である。
【図14】自転車固定用支持ブラケットの単品斜視図である。
【図15】第1の実施の形態の作用の説明図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係る係る車両の荷物積載構造が適用された車両の平面図((a図))及び側面図((b)図)である。
【図17】荷物積載例である(自転車の場合)。
【図18】自転車固定用支持ブラケット(第1支持ブラケット)の単品斜視図である。
【図19】トランクリッドを開放した状態における図16相当の図である。。
【図20】(a)図は図17の矢印M−Mによる拡大断面図、(b)図は図17の矢印N−Nによる拡大断面図である。
【図21】第2の実施の形態の作用の説明図である。
【符号の説明】
【0072】
1,101 車両
2,102 車体
3,103 車室
4,104 開口部
5,105 トランクリッド
6,106 トランクルーム
8,108 ロールバー
10,110 ヒンジ機構
20 支持機構(支持手段)
61,162 荷物固定部材(荷物固定手段、前方に位置する固定手段)
62 支持ブラケット(第2の荷物固定手段)
163 第2支持ブラケット(第2の荷物固定手段)
B 自転車L4のペダル軸受部PFに挿通されるボルト(支持軸)
BR 自転車L3の後輪軸ボルト(支持軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に開放された車室とその後方の車体上方の空間とが連続する車両の荷物積載構造であって、
前記車室の後方の車体上面にロールバーが設けられていると共に、
前記車室の後方の車体上方の空間が荷物積載空間として利用可能とされており、
前記ロールバーに、該空間に積載される荷物を固定する荷物固定手段が設けられていることを特徴とする車両の荷物積載構造。
【請求項2】
前記請求項1に記載の車両の荷物積載構造において、
前記車室の後方において、前記ロールバーの前方または後方に第2の荷物固定手段が設けられていることを特徴とする車両の荷物積載構造。
【請求項3】
前記請求項2に記載の車両の荷物積載構造において、
前記ロールバーに設けられた荷物固定手段と前記第2の荷物固定手段とのうちの前方に位置する固定手段に、所定以上の荷重の作用時に前記荷物の固定を解除させる固定解除手段が設けられている共に、
後方に位置する固定手段は、車幅方向に延びる軸を有し、前記荷物を、該軸を中心として回動可能なように支持することを特徴とする車両の荷物積載構造。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両の荷物積載構造において、
前記車室の後方に、上面に設けられた開口部がトランクリッドにより開閉可能とされたトランクルームが設けられており、
該トランクルームを開閉するトランクリッドが、前端部を中心として回動して裏面が略上方を向く開放状態に開放可能に構成されていると共に、
該トランクリッドを、前記開放状態で支持する支持手段が設けられていることを特徴とする車両の荷物積載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−214859(P2009−214859A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63728(P2008−63728)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】