説明

車両の車体構造

【課題】ラテラルロッドブラケットのリペア性を向上することができると共に、ラテラルロッドの配置を比較的容易に調整することができる車両の車体構造を提供する。
【解決手段】車両の前後方向に延設された一対のサイドメンバ21と、車両の車幅方向に延設されて一対のサイドメンバ21に固定されるクロスメンバ22と、を有する車体フレーム20に、ラテラルロッドブラケット60を介してラテラルロッド54の一端が連結され、ラテラルロッドブラケット60が、車体フレーム20に一体的に固定される支持部材61と、支持部材61に着脱可能に固定されてラテラルロッド54の一端が装着される艤装部材62と、で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の車体構造に関し、特に、リアサスペンションを構成するラテラルロッドの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両には、ラテラルロッドを備えるリアサスペンションが装備されているものがある。ラテラルロッドの一端は、ラテラルロッドブラケットを介してサイドメンバやクロスメンバ等の車体フレームに連結されている。このラテラルロッドブラケットは、ラテラルロッドの一端を支持するものであるため、その剛性はできるだけ高いことが好ましい。このため、一般的には、ラテラルロッド(ラテラルリンク)の一端を支持するラテラルロッドブラケット(車体側取付ブラケット)は、例えば、溶接等によって車両フレームに一体的に固定されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これにより、ラテラルロッドブラケットの剛性は比較的高くなるため、車両の乗り心地が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−165518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ラテラルロッドブラケットには、ラテラルロッドを介して比較的大きい荷重が入力されることがあるため、例えば、長期間の使用等によっては修理が必要になることがある。例えば、電気自動車、ハイブリッド車両等の電動車両には、走行用モータに電力を供給する複数の駆動用バッテリを備えるバッテリユニットがフロア下に取り付けられているものがある。このバッテリユニットはかなり重いため、例えば、車両の後方にバッテリユニットが取り付けられていると、ラテラルロッドブラケットにさらに大きな荷重が入力される虞もある。このため、電動車両においては、ラテラルロッドブラケットの修理の必要性が高くなる。例えば、ラテラルロッドブラケットを車体フレームに対して着脱可能に固定すれば、ラテラルロッドブラケットのリペア性を高めることはできる。ただし、ラテラルロッドブラケットの剛性が低下してしまい、車両の乗り心地が悪くなってしまう虞がある。
【0006】
またラテラルロッドの配置は車両の乗り心地に影響する。このため、必要に応じてラテラルロッドの配置を調整することが好ましいが、ラテラルロッドの配置の調整については考慮されていないのが現状である。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ラテラルロッドブラケットのリペア性を向上することができると共に、ラテラルロッドの配置を比較的容易に調整することができる車両の車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、車両の前後方向に延設された一対のサイドメンバと、車両の車幅方向に延設されて一対の前記サイドメンバに固定されるクロスメンバと、を有する車体フレームに、ラテラルロッドブラケットを介してラテラルロッドの一端が連結される車両の車体構造であって、前記ラテラルロッドブラケットが、前記車体フレームに一体的に固定される支持部材と、該支持部材に着脱可能に固定されて前記ラテラルロッドの一端が装着される艤装部材と、で構成されていることを特徴とする車両の車体構造にある。
【0009】
本発明の第2の態様は、前記艤装部材は前記ラテラルロッドが挿入される挿入溝を有して開断面構造を備える一方、前記支持部材は閉断面構造を備えることを特徴とする第1の態様の車両の車体構造にある。
【0010】
本発明の第3の態様は、前記艤装部材は、前記支持部材よりも剛性が低いことを特徴とする第1又は2の態様の車両の車体構造にある。
【0011】
本発明の第4の態様は、前記艤装部材は、前記支持部材に、前記車両の車幅方向及び前後方向から締結部材によって締結されていることを特徴とする第1〜3の何れか一つの態様の車両の車体構造にある。
【発明の効果】
【0012】
かかる本発明では、ラテラルロッドブラケットの剛性の低下を抑制しつつ、そのリペア性を向上することができる。また、艤装部材の支持部材に対する取付位置を変更することでラテラルロッドの配置を調整でき、車両の乗り心地を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態に係る車両の概略構成を示す図である。
【図2】一実施形態に係るリアサスペンションの概略構成を示す図である。
【図3】一実施形態に係るラテラルロッドの連結部分を示す概略斜視図である。
【図4】一実施形態に係るラテラルロッドの連結部分を示す概略平面図である。
【図5】一実施形態に係る艤装部材を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る車両10は、例えば、電気自動車等の電動車両であり、車体11の下部の骨格をなす車体フレーム20と、この車体フレーム20に固定されたバッテリユニット30とをフロア(車室)下に備えている。
【0016】
車体フレーム20は、車両10の前後方向に延設される一対のサイドメンバ21と、車両10の車幅方向(左右方向)に延設される複数本(本実施形態では、3本)のクロスメンバ22とを備えている。各クロスメンバ22は、サイドメンバ21の所定位置に溶接によって固定されている。バッテリユニット30は、このような構成の車体フレーム20に下方側から着脱可能に固定されている。
【0017】
また車両10の前輪40は、図示しないフロントサスペンションによって車体11に支持されている。後輪41は、図2に示すようなトレーリング式のリアサスペンション50によって車体11に支持されている。このリアサスペンション50は、車体11とリアアクスル51との間に懸架ばね52、ショックアブソーバ53、ラテラルロッド54等が装備されている。ラテラルロッド54は、その前端部(一端側)が車体側に連結され、その後端部がリアアクスル51に連結されている。なお車両10の前後方向に延びる一対のトレーリングアーム55(55A,55B)も、その前端部(一端側)が車体側に連結され、その後端部がリアアクスル51に連結されている。
【0018】
ここで、リアサスペンション50を構成するラテラルロッド54の一端側は、図3及び図4に示すように、車体フレーム20に固定されたラテラルロッドブラケット60に支持されている。ラテラルロッドブラケット60は、車体フレーム20に一体的に固定される支持部材61と、支持部材61に着脱可能に固定されてラテラルロッド54の一端が装着される艤装部材62と、で構成されている。
【0019】
支持部材61は、最後方のクロスメンバ22に対向して車幅方向に沿って配されている(図1参照)。本実施形態では、支持部材61は、下端部側から異なる方向に延設される第1の延設部63と第2の延設部64とを有する。第1の延設部63は、略鉛直方向に延設されてその先端部がサイドメンバ21に溶接等で一体的に固定されている。第2の延設部64は、第1の延設部63とは交差する方向に延設されてその先端部がクロスメンバ22に溶接等で一体的に固定されている。支持部材61の形状は、車体フレーム20に対して強固に固定可能な形状であれば特に限定されるものではない。また支持部材61は、閉断面構造を備えていることが好ましい。本実施形態に係る支持部材61は二つの部材を溶接することによって形成されており閉断面構造を備えている。これにより、支持部材61自体の剛性を高めることができる。
【0020】
一方、艤装部材62は、このような支持部材61の下端部に着脱可能に固定されている。艤装部材62は、車両10の内側が開口して開断面構造を備える。すなわち艤装部材62は、図5に示すように、断面略コ字状に形成されて溝部65を画成する。そして艤装部材62は、この溝部65の上部側に支持部材61が係合された状態で、ボルト等の締結部材66によって支持部材61に着脱可能に固定されている。締結部材66によって艤装部材62を固定する位置は、特に限定されないが、本実施形態では、艤装部材62が、締結部材66によって支持部材61の交差する面にそれぞれ固定されている。具体的には、艤装部材62は支持部材61に車両10の車幅方向及び前後方向から締結部材66によって締結されている。また溝部65の下部は、ラテラルロッド54が挿入される挿入溝として機能し、ラテラルロッド54の一端はこの溝部(挿入溝)65に挿入された状態で、ボルト等によって上下方向に回動可能に保持されている。
【0021】
以上説明したように本実施形態では、リアサスペンション50を構成するラテラルロッド54を車体フレーム20に連結するためのラテラルロッドブラケット60が支持部材61と艤装部材62とで構成されるようにした。
【0022】
これにより、ラテラルロッドブラケット60の剛性の低下を抑制しつつ、そのリペア性を向上することができる。
【0023】
例えば、一部材で構成されるラテラルロッドブラケットを車体フレームに対して着脱可能に固定することで、そのリペア性を向上することはできる。ただし、ラテラルロッドブラケットの剛性が低下するため、入力される荷重の影響を受けて操縦安定性や乗り心地が低下してしまう虞がある。
【0024】
これに対し、本発明では、支持部材61は車体フレーム20に対して一体的に固定されているため所望の剛性を確保することができ、艤装部材62を支持部材61に着脱可能に固定しているためリペア性も向上することができる。つまりラテラルロッドブラケット60の一部を構成する艤装部材62のみを着脱可能とすることで、操縦安定性や乗り心地の低下を抑制しつつ、リペア性を向上することができる。
【0025】
また本実施形態の構成では、艤装部材62の支持部材61に対する取付位置を調整することで、ラテラルロッド54の配置を調整することもできる。これにより、操縦安定性、或いは乗り心地をさらに向上することができる。例えば、バッテリユニット30が車両10の後方に配置されていると、車両10はオーバーステアの傾向になりやすい。しかしながら、艤装部材62の取付位置を調整して、ラテラルロッド54を水平な状態に近づけることで、車両10のオーバーステアの傾向は抑制され、操縦安定性や乗り心地を向上することができる。
【0026】
またラテラルロッド54を支持するラテラルロッドブラケット60には、あらゆる方向から荷重が入力されるが、ラテラルロッドブラケット60が支持部材61と艤装部材62とを備えていることで、この荷重を良好に分散させることができる。本実施形態では、上述のように支持部材61が閉断面構造を備えるのに対し、艤装部材62は開断面構造を備えており、艤装部材62の剛性は支持部材61よりも低い。例えば、艤装部材62の板厚を支持部材61の板厚より薄くすることや、艤装部材62と支持部材61との材料を変えることにより艤装部材62の剛性を支持部材61よりも低くすることができる。このため、艤装部材62に入力された荷重を支持部材61に良好に分散させることができる。
【0027】
また本実施形態では、艤装部材62が、締結部材66によって支持部材61の交差する複数の面に固定されている。これにより、艤装部材62を支持部材61に対して比較的強固に固定することができ、艤装部材62に荷重が入力された際に、艤装部材62の位置ずれや、脱落等の発生を抑制することができる。
【0028】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、勿論、このような実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能なものである。
【0029】
例えば、上述の実施形態では、電気自動車等の電動車両を一例として本発明を説明したが、本発明は、エンジン(内燃機関)によって走行する自動車等の車両にも、勿論、適用することができるものである。
【符号の説明】
【0030】
10 車両
11 車体
20 車体フレーム
21 サイドメンバ
22 クロスメンバ
30 バッテリユニット
40 前輪
41 後輪
50 リアサスペンション
51 リアアクスル
52 懸架ばね
53 ショックアブソーバ
54 ラテラルロッド
55 トレーリングアーム
60 ラテラルロッドブラケット
61 支持部材
62 艤装部材
63 第1の延設部
64 第2の延設部
65 溝部
66 締結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向に延設された一対のサイドメンバと、車両の車幅方向に延設されて一対の前記サイドメンバに固定されるクロスメンバと、を有する車体フレームに、ラテラルロッドブラケットを介してラテラルロッドの一端が連結される車両の車体構造であって、
前記ラテラルロッドブラケットが、前記車体フレームに一体的に固定される支持部材と、該支持部材に着脱可能に固定されて前記ラテラルロッドの一端が装着される艤装部材と、で構成されている
ことを特徴とする車両の車体構造。
【請求項2】
前記艤装部材は前記ラテラルロッドが挿入される挿入溝を有して開断面構造を備える一方、前記支持部材は閉断面構造を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の車体構造。
【請求項3】
前記艤装部材は、前記支持部材よりも剛性が低い
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の車体構造。
【請求項4】
前記艤装部材は、前記支持部材に、前記車両の車幅方向及び前後方向から締結部材によって締結されている
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の車両の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−240587(P2012−240587A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114055(P2011−114055)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】