説明

車両の車室後部構造

【課題】荷室高さを拡大することが出来る車両の車室後部構造を提供する。
【解決手段】本発明は、シートクッション(22、62)及び前倒可能なシートバック(20、60)を有する後部シート(6)と、このシートの後方の荷室(8)と、を有する車両の車室後部構造であって、シートクッションを、シートバックの前方側にある着座位置と、シートバックの後方側且つ着座位置より下方側にある格納位置との間で案内するシートクッション用スライド機構(26、66)を有し、シートクッションが格納位置にあり且つシートバックが前倒されたとき、シートクッションとシートバックとがほぼ同じ高さで水平に車体前後方向に隣接して配置され、このように配置されたシートクッション及びシートバックの上面部分が車体前後方向にほぼ連続した荷室フロア面として形成されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車室後部構造に係り、特に、シートクッション及び前倒可能なシートバックを有する後部シートと、このシートの後方の荷室と、を有する車両の車室後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シート前倒し時に、シートバック背面と荷室フロアとが同一高さで連続するようにして荷室を低床化するようにしたシート機構が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−118456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたシート前倒し装置では、シートバックとシートクッションを車体上下方向に重ねており、十分に荷室を低床化し且つ十分な荷室高さを得ることが出来ないものであった。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、荷室高さを拡大することが出来る車両の車室後部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために本発明は、シートクッション及び前倒可能なシートバックを有する後部シートと、このシートの後方の荷室と、を有する車両の車室後部構造であって、シートクッションを、シートバックの前方側にある着座位置と、シートバックの後方側且つ着座位置より下方側にある格納位置との間で案内するシートクッション用スライド機構を有し、シートクッションが格納位置にあり且つシートバックが前倒されたとき、シートクッションとシートバックとがほぼ同じ高さで水平に車体前後方向に隣接して配置され、このように配置されたシートクッション及びシートバックの上面部分が車体前後方向にほぼ連続した荷室フロア面として形成されるようになっていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、シートクッションとシートバックを前後に隣接させて、車体上下方向の厚みを最小限としたシートの格納状態が得られる。それにより、荷室を低床化して、荷室高を拡大することが出来る。さらに、シートクッション及びシートバックのいずれも、通常の着座位置からは、下方に向けて格納位置に移動させるので、格納するための操作力が少なくて済む。
【0007】
また、本発明において、好ましくは、車体前後方向にほぼ連続した荷室フロア面は、シートクッションの表面部及びシートバックの背面部により形成されている。
このように構成された本発明においては、シートクッション用スライド機構によりシートクッションをほぼ水平方向に移動させてシートクッションの表面部を荷室フロア面とすると共にシートバックを前倒してその背面部を荷室フロア面とすれば良く、簡易な構成で、車体上下方向の厚みを最小限としたシートの格納状態が得られる。
【0008】
また、本発明において、好ましくは、シートクッション用スライド機構が、シートクッションの左右両側部に設けられたスライド部材と、車室後部の両壁部に設けられスライド部材が係合すると共にスライド部材を摺動可能に支持する左右一対のスライドレール部と、を有する。
このように構成された本発明においては、スライドレール部を、車室後部の車室側壁部を有効に利用して形成しており、スペース効率を高めてシート幅を確保することが出来る。
【0009】
また、本発明において、好ましくは、シートクッションが格納位置にあるとき、乗員が着座するためのシートクッションの表面部が上方を向き、さらに、シートバックの背面部に設けられたボード部材を有し、シートクッションが格納位置にあるとき、ボード部材がシートクッションの表面部を覆うようになっている。
このように構成された本発明においては、シートクッションの表面部を痛めることがない。さらに、よりフラットな荷室フロア面を構成することが出来る。
【0010】
また、本発明において、好ましくは、ボード部材が、シートバックが前倒された状態でのその背面部の後端部に回動可能に支持され、回動してシートクッションの表面部を覆うようになっている。
このように構成された本発明においては、ボード部材を回動するようになっているのでラゲッジボードの操作性が良い。
【0011】
また、本発明において、好ましくは、ボード部材が、シートバックの背面部にスライド可能に取り付けられ、スライドしてシートクッションの表面部を覆うようになっている。
このように構成された本発明においては、ボード部材をスライドするようになっているのでラゲッジボードの操作性が良い。
【0012】
また、本発明において、好ましくは、シートバックが起立した着座位置にあるときには、ボード部材が、荷室を上下方向に仕切るようになっている。
このように構成された本発明においては、荷物の種類に応じて上部空間或いは下部空間にそれぞれ収納させるようにして、荷室の利便性を高めることが出来る。
【0013】
また、本発明において、好ましくは、さらに、少なくとも車室後部の車体上下方向の中間の位置でほぼ水平方向に延び、シートバックをスライド可能に支持するシートバックスライドレール部を有し、シートバックは、このシートバックスライドレール部により、車室後部の車体上下方向の中間の位置でシートバックの背面部が上部となるようにほぼ水平方向に延びる水平位置に配置されるようになっている。
このように構成された本発明においては、シートバックを利用して、より簡易な構成でトノカバーの機能を得ることが出来る。また、シートバックをシートバックスライドレール部に沿って摺動させれば良く、複雑な操作が求められることなく、操作性が確保される。
【発明の効果】
【0014】
本発明による車両の車室後部構造によれば、荷室高さを拡大することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態による車両の車室後部構造が適用された車両を示す図である。車両1は、1列目シート2、2列目シート4、3列目シート6、荷室8、リアフロアパネル10、車室側壁部12及びバックドア14を有する。以下では、3列目シート6の周囲の車室(車室後部)に本発明の実施形態による車両の車室後部構造を適用した場合について説明する。なお、2列目シートの後方に荷室を有する場合に、その2列目シートの周囲の車室に本発明の実施形態による車両の車室後部構造を適用しても良い。
【0016】
先ず、図2乃至図6により本発明の第1実施形態による車両の車室後部構造を説明する。図2は、本発明の第1実施形態による車両の車室後部構造が適用された車両の後部シートの第1の状態を示す側面図であり、図3は、図2のIII-III線に沿って見た車両の車室後部構造であり、図4は、本発明の第1実施形態による車両の車室後部構造が適用された車両の後部シートの第2の状態を示す側面図であり、図5は、本発明の第1実施形態による車両の車室後部構造が適用された車両の後部シートの第3の状態を示す側面図であり、図6は、本発明の第1実施形態による車両の車室後部構造が適用された車両の後部シートの第4の状態を示す側面図である。
【0017】
図2に示すように、3列目シート6は、シートバック20、シートクッション22及びラゲッジボード24を有する。ラゲッジボード24は、通常の状態ではシートバック20の背面に固定されているが、図2に示すように後方に回動させて荷室を上部空間A及び下部空間Bに仕切るようにすることが出来る。
この第1実施形態では、シートクッション22は、シートクッション22の移動用のシートスライドレール機構26により移動可能に構成されている。スライドレール機構26は、シートクッション22の前側用及び後側用にそれぞれ設けられている。図2に示す位置は、シートクッション22がシートバック20の前方側且つ下方側に位置する通常の着座位置である。
【0018】
図3に示すように、これらのシートスライドレール機構26は、それぞれ、シートクッション22の左右両側に取り付けられた係合ピン部材(スライド部材)28と、この係合ピン部材28が係合すると共に係合ピン部材28を摺動可能に支持する左右一対のスライドレール部30とで構成されている。スライドレール部30は、図3に示すように車室側壁部12に凹状に形成されており、図2に示すように、前方側から後方側に向けて下方に若干突出するように湾曲しながら傾斜して延びている。
【0019】
シートクッション22は、スライドレール機構26により、図2に示す位置から図4に示す格納位置まで移動する。シートクッション22は、リアフロアパネル10のシートバック20の後方側の位置且つ着座位置(図2)より下方側に形成された空間に格納される。これが格納位置となる。この格納位置でも、シートクッション22は、乗員が着座する表面部22aが、そのまま上方に向くように、図2に示す位置から図4に示す位置までほぼ平行に移動する。
【0020】
次に、シートバック20が、図4に示す位置から、図5に示す格納位置まで移動する。つまり、シートバック20は、支軸(回動軸)32を中心にして前方に回動して、図5に示す格納位置まで前倒しされる。従って、この格納位置では、シートバック20の背面部20aが、上方に向くように配置される。
【0021】
そして、図5に示すように、シートクッション22が格納位置にあり且つシートバック20が前倒されたとき、シートクッション22とシートバック20とがほぼ水平状態で車体前後方向に隣接して配置される。そして、シートクッション22及びシートバック20の上面部(シートクッション22の表面部22a及びシートバック20の背面部20aにより形成される上面部分)に車体前後方向にほぼ連続した荷室フロア面が形成されるようになる。
【0022】
さらに、図5に示す状態からラゲッジボード24を下方に回動させて図6に示す位置に配置することによって、シートクッション22の表面部22aを覆うようにすることが出来る。さらに、平らなラゲッジボード24が、完全に平らではなく何かしらの形状を有しているシートクッション22の表面部22aを覆うので、このラゲッジボード24と、前方側のシートバック20の背面部20aとにより、前後方向にわたってほぼ平らな荷室が形成されるようになっている。なお、ラゲッジボード24をシートバック20の背面部20aにスライド可能に取り付けて、スライドさせることにより、シートバック20の背面部20aを覆うようにしても良い。
【0023】
次に、第1実施形態の作用効果を説明する。
先ず、本発明の第1実施形態によれば、シートクッション22をシートバック20の前方側にある着座位置と、シートバック20の後方側且つ着座位置より下方側にある格納位置との間で移動可能に案内するシートスライドレール機構(シートクッション用スライド機構)26を有し、シートクッション22が格納位置にあり且つシートバック20が前倒されたとき、シートクッション22とシートバック20とがほぼ水平状態で車体前後方向に隣接して配置され、シートクッション22の表面部22a及びシートバック20の背面部20aにより、これらのシートクッション22及びシートバック20の上部に車体前後方向にほぼ連続した荷室フロア面が形成されるようになっている。
【0024】
従って、シートクッション22とシートバック20を前後に隣接させて、車体上下方向の厚みを最小限としたシート6の格納状態が得られる。つまり、荷室8を低床化して、荷室高を拡大することが出来る。さらに、シートクッション22及びシートバック20のいずれも、通常の着座位置からは、下方に向けて格納位置に移動させるので、格納するための操作力が少なくて済む。
【0025】
次に、本発明の第1実施形態によれば、シートスライドレール機構(シートクッション用スライド機構)26が、シートクッション22の左右両側部に設けられた係合ピン部材(スライド部材)28と、車室後部の車室側壁部12に設けられ係合ピン部材28が係合すると共に係合ピン部材28を摺動可能に支持する左右一対のスライドレール部30と、を有する。
このような構成によれば、シートスライドレール機構26を、車室後部の車室側壁部を有効に利用して形成しており、スペース効率を高めてシート幅を確保することが出来る。
【0026】
次に、本発明の第1実施形態によれば、シートバック20が格納位置にあるとき、乗員が着座するためのシートクッション22の表面部22aが、荷室フロア面を構成するようになり、シートクッション20が格納位置にあるとき、ラゲッジボード24が、シートクッション22の表面部22aを覆うようになっている。
このような構成によれば、シートクッション22の表面部22aを痛めることがない。さらに、よりフラットな荷室フロア面を構成することが出来る。
【0027】
次に、本発明の第1実施形態によれば、ラゲッジボード24が、シートバック20の背面部20aにおいてシートバック20が前倒された状態における後端部に回動可能に取り付けられている。そして、回動することによりシートクッション22の表面部22aを覆うようになっているので、ラゲッジボード24の操作性が良い。
なお、ラゲッジボード24をシートバック20の背面部20aにスライド可能に取り付けて、スライドさせることにより、シートバック20の背面部20aを覆うようにすることも可能である。この場合もラゲッジボード24の操作性が良くなる。
【0028】
次に、本発明の第1実施形態によれば、シートバック20が起立した着座位置にあるとき、ラゲッジボード24が荷室8を上下方向に上部空間A及び下部空間Bに仕切ることが可能となっている。これにより、荷物の種類に応じて上部空間A或いは下部空間Bにそれぞれ収納させるようにして、荷室の利便性を高めることが出来る。
【0029】
次に、図7乃至図12により本発明の第2実施形態による車両の車室後部構造を説明する。図7は、本発明の第2実施形態による車両の車室後部構造が適用された車両の後部シートの第1の状態を示す側面図であり、図8は、図7のVIII-VIII線に沿って見た車両の車室後部構造であり、図9は、図7のIX-IX線に沿って見た車両の車室後部構造であり、図10は、本発明の第2実施形態による車両の車室後部構造が適用された車両の後部シートの第2の状態を示す側面図であり、図11は、本発明の第2実施形態による車両の車室後部構造が適用された車両の後部シートの第3の状態を示す側面図であり、図12は、本発明の第2実施形態による車両の車室後部構造が適用された車両の後部シートの第4の状態を示す側面図である。
【0030】
図7に示すように、3列目シート6は、シートバック60、シートクッション62及びラゲッジボード64を有する。ラゲッジボード64は、通常の状態ではシートバック60の背面部60aに固定されているが、図7に示すように後方に回動させて荷室を上部空間A及び下部空間Bに仕切るようにすることが出来る。
【0031】
この第2実施形態では、第1実施形態と同様に、シートクッション62は、シートクッション62の移動用のシートスライドレール機構66により移動可能に構成されている。スライドレール機構66は、シートクッション62の前側用及び後側用のスライドレール機構の2組設けられている。図7に示す位置は、シートクッション62がシートバック60の前方側且つ下方側に位置する通常の着座位置である。
【0032】
図8に示すように、これらのシートスライドレール機構66は、それぞれ、シートクッション62の左右両側に取り付けられた係合ピン部材(スライド部材)68と、この係合ピン部材68が係合すると共に係合ピン部材68を摺動可能に支持する左右一対のスライドレール部70とで構成されている。スライドレール部70は、図8に示すように車室側壁部12に凹状に形成されており、図7に示すように、前方側から後方側に向けて下方に若干突出するように湾曲しながら傾斜して延びている。
【0033】
この第2実施形態では、シートバック60は、シートバック60の移動用のシートスライドレール機構72により移動可能に構成されている。図7及び図9に示すように、シートスライドレール機構72は、それぞれ、シートバック60の左右両側の下方部分に取り付けられたブラケット74と、このブラケット74に取り付けられた下方係合ピン部材(スライド部材)76と、シートバック40の左右両側の上方部分に取り付けられた上方係合ピン部材(スライド部材)78と、これらの係合ピン部材76、78が係合すると共に係合ピン部材76、78を摺動可能に支持する左右一対のスライドレール部80とで構成されている。スライドレール部80は、図9に示すように車室側壁部12に凹状に形成されている。
【0034】
図7に示すように、このスライドレール部80は、シートバック60とシートクッション62との連結部近傍から斜め上方に、シートバック60が延びる角度とほぼ同じ角度で延び、その後、シートバック60の上方端部の近傍で前方に向けて湾曲し、その後、車室後部の車体上下方向の中間の位置でほぼ水平方向に延びている。
【0035】
シートクッション62は、スライドレール機構66により、図7に示す位置から図10に示す格納位置まで移動する。シートクッション62は、リアフロアパネル10のシートバック60の後方側の位置且つ着座位置(図7)より下方側に形成された空間に格納される。これが格納位置となる。この格納位置でも、シートクッション62は、乗員が着座する表面部62aが、そのまま上方に向くように、図7に示す位置から図10に示す位置までほぼ平行に移動する。
【0036】
シートバック60は、スライドレール機構72により移動する。即ち、各係合ピン部材76、78がスライドレール部80に沿って移動する。そして、図10に示す着座位置から上方に向けて移動し、最終的に図11に示す水平位置まで移動する。
次に、ラゲッジボード64は、シートバック60の背面部60aにおいてシートバック60がほぼ水平状態にされた状態における後端部に回動可能に取り付けられている。そして、図11に示すようにラゲッジボード64を矢印Tのように回動させることにより、荷室8の上部を覆うようになっている。そして、このシートバック60の背面部60aと、ラゲッジボード64とがほぼ連続して、リアフロアパネル10の上方で、トノボード(2つ目の荷室フロア面)として利用することが出来る。なお、ラゲッジボード64をスライド可能にシートバック60の背面部60aに取り付けて、矢印Sのようにスライドさせて、荷室8の上部を覆うようにしても良い。
【0037】
一方、第2実施形態では、図11に示すような状態の他、図12に示すように、シートバック60が前倒して格納されるようにもなっている。
つまり、シートバック60が、図10に示す位置から、図12に示す格納位置まで移動する。この第2実施形態では、シートバック60は、上述したシートバック60の移動用のシートスライドレール機構72の下方係合ピン部材(スライド部材)76(図9、図10及び図11参照)を利用している。つまり、シートバック60は、下方係合ピン部材76を中心にして前方に回動して、図12に示す格納位置まで前倒しされる。従って、この格納位置では、シートバック60の背面部60aが、上方に向くように配置される。なお、この場合、上方係合ピン部材78をスライドレール部80との係合から解放するため、開口部をスライドレール部80に設けたり、上方係合ピン部材78をシートバック60側に没入可能に設ける等の構造変更を行うことになる。
【0038】
そして、図12に示すように、シートクッション62が格納位置にあり且つシートバック60が前倒されたとき、シートクッション62とシートバック60とがほぼ水平状態で車体前後方向に隣接して配置される。そして、シートクッション62及びシートバック60の上面部(シートクッション62の表面部62a及びシートバック60の背面部60aにより形成される上面部分)に車体前後方向にほぼ連続した荷室フロア面が形成されるようになる。
【0039】
さらに、図12に示すように、ラゲッジボード64を上方で後方に向けて回動させることによって、シートバック60の背面部60aを覆うようにすることが出来る。さらに、平らなラゲッジボード64が、平らではなく何かしらの形状を有しているシートクッション62の表面部62aを覆うので、このラゲッジボード64と、前方側のシートバック60の背面部60aとにより、前後方向にわたってほぼ平らな荷室が形成されるようになっている。なお、ラゲッジボード64をシートバック60の背面部60aにスライド可能に取り付けて、スライドさせることにより、シートバック60の背面部60aを覆うようにしても良い。
【0040】
次に、第2実施形態の作用効果を説明する。
【0041】
先ず、本発明の第2実施形態によれば、少なくとも車室後部の車体上下方向の中間の位置でほぼ水平方向に延びるスライドレール部80(ほぼ水平に延びる部分を図11において符号80aで示す)を有し、シートバック60は、このスライドレール部80により、このシートバック60が起立した着座位置より上方側でシートバック60の背面部60aが上部となるように車室後部の車体上下方向の中間の位置でほぼ水平方向に延びる水平位置にすることが出来、シートバック60がこの水平位置にされた状態におけるシートバック60の後端部と、バックドア14との間にわたって設けられ、荷室8の上部を覆うラゲッジボード64を有する。
【0042】
従って、シートバック60及びこのシートバック60に取り付けられたラゲッジボード64を利用して、より簡易な構成でトノカバーの機能を得ることが出来る。また、シートバック60をスライドレール部80に沿って上方に摺動させ、さらに、ラゲッジボード64を回動させ或いはスライドさせれば良く、複雑な操作が求められることなく、操作性が確保される。
【0043】
次に、ラゲッジボード64が、シートバック60の背面部60aにおいてシートバック60が水平状態にされた状態における後端部に回動可能に取り付けられている。そして、回動することにより荷室8の上部を覆うようになっているので、ラゲッジボード64の操作性が良い。
次に、ラゲッジボード64が、シートバック60の背面部60aにスライド可能に取り付けられて、シートバック60が水平状態にされた状態でスライドさせることにより荷室8の上部を覆うようになっているので、ラゲッジボード64の操作性が良い。
【0044】
次に、ラゲッジボード64が、シートバック60の背面部60aにおいてシートバック60が起立した着座位置での下端部に回動可能に取り付けられて、回動することにより荷室8を上部空間A及び下部空間Bに仕切ることが可能となっている。これにより、荷物の種類に応じて上部空間A或いは下部空間Bにそれぞれ収納させるようにして、荷室の利便性を高めることが出来る。
【0045】
次に、本発明の第2実施形態によれば、シートクッション62をシートバック60の前方側にある着座位置と、シートバック60の後方側且つ着座位置より下方側にある格納位置との間で移動可能に案内するシートスライドレール機構(シートクッション用スライド機構)66を有し、シートクッション62が格納位置にあり且つシートバック60が前倒されたとき、シートクッション62とシートバック60とがほぼ水平状態で車体前後方向に隣接して配置され、シートクッション62の表面部62a及びシートバック60の背面部60aにより、これらのシートクッション62及びシートバック60の上部に車体前後方向にほぼ連続した荷室フロア面が形成されるようになっている。
【0046】
従って、シートクッション62とシートバック60を前後に隣接させて、車体上下方向の厚みを最小限としたシート6の格納状態が得られる。つまり、荷室8を低床化して、荷室高を拡大することが出来る。さらに、シートクッション62及びシートバック60のいずれも、通常の着座位置からは、下方に向けて格納位置に移動させるので、格納するための操作力が少なくて済む。
【0047】
次に、本発明の第2実施形態によれば、シートスライドレール機構(シートクッション用スライド機構)66が、シートクッション62の左右両側部に設けられた係合ピン部材(スライド部材)68と、車室後部の車室側壁部12に設けられ係合ピン部材68が係合すると共に係合ピン部材68を摺動可能に支持する左右一対のスライドレール部70と、を有する。
このような構成によれば、シートスライドレール機構66を、車室後部の車室側壁部を有効に利用して形成しており、スペース効率を高めてシート幅を確保することが出来る。
【0048】
次に、本発明の第2実施形態によれば、シートバック60が前倒して格納位置にあるとき、このシートバック60の背面部60aと、シートクッション62の表面部62aとが荷室フロア面を構成するようにる。このような構成によれば、フラットな荷室フロア面を構成することが出来る。
【0049】
次に、本発明の第2実施形態によれば、ラゲッジボード64が、シートバック60の背面部60aにおいてシートバック60が前倒された状態における後端部に回動可能に取り付けられている。そして、回動することによりシートクッション62の表面部62aを覆うようになっているので、シートクッション62の表面部62aを痛めることがない。さらに、ラゲッジボード64の操作性が良い。
なお、ラゲッジボード64をシートバック60の背面部60aにスライド可能に取り付けて、スライドさせることにより、シートバック60の背面部60aを覆うようにすることも可能である。この場合もラゲッジボード64の操作性が良くなる。
【0050】
次に、本発明の第2実施形態によれば、シートバック60が起立した着座位置にあるとき、ラゲッジボード64が荷室8を上下方向に上部空間A及び下部空間Bに仕切ることが可能となっている。これにより、荷物の種類に応じて上部空間A或いは下部空間Bにそれぞれ収納させるようにして、荷室の利便性を高めることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態による車両の車室後部構造が適用された車両を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態による車両の車室後部構造が適用された車両の後部シートの第1の状態を示す側面図である。
【図3】図2のIII-III線に沿って見た車両の車室後部構造である。
【図4】本発明の第1実施形態による車両の車室後部構造が適用された車両の後部シートの第2の状態を示す側面図である。
【図5】本発明の第1実施形態による車両の車室後部構造が適用された車両の後部シートの第3の状態を示す側面図である。
【図6】本発明の第1実施形態による車両の車室後部構造が適用された車両の後部シートの第4の状態を示す側面図である。
【図7】本発明の第2実施形態による車両の車室後部構造が適用された車両の後部シートの第1の状態を示す側面図である。
【図8】図7のVIII-VIII線に沿って見た車両の車室後部構造である。
【図9】図7のIX-IX線に沿って見た車両の車室後部構造である。
【図10】本発明の第2実施形態による車両の車室後部構造が適用された車両の後部シートの第2の状態を示す側面図である。
【図11】本発明の第2実施形態による車両の車室後部構造が適用された車両の後部シートの第3の状態を示す側面図である。
【図12】本発明の第2実施形態による車両の車室後部構造が適用された車両の後部シートの第4の状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0052】
6 3列目シート
8 荷室
10 リアフロアパネル
10a 荷室の下方の部分
10b 後部シートの下方の部分
12 車室側壁部
14 バックドア
20、60 シートバック
20a、60a 背面部
22、62 シートクッション
22a、62a 表面部
24、64 ラゲッジボード
26、66 シートクッションのシートスライドレール機構
28、68 係合ピン部材(スライド部材)
30、70 スライドレール部
46 支軸(回動軸)
48、72 シートバックのシートスライドレール機構
52、76 下方係合ピン部材(スライド部材)
54、78 上方係合ピン部材(スライド部材)
56、80 スライドレール部
56a、80a スライドレール部の水平に延びる部分
B 下部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッション及び前倒可能なシートバックを有する後部シートと、このシートの後方の荷室と、を有する車両の車室後部構造であって、
上記シートクッションを、上記シートバックの前方側にある着座位置と、上記シートバックの後方側且つ上記着座位置より下方側にある格納位置との間で案内するシートクッション用スライド機構を有し、
上記シートクッションが上記格納位置にあり且つ上記シートバックが前倒されたとき、上記シートクッションと上記シートバックとがほぼ同じ高さで水平に車体前後方向に隣接して配置され、このように配置されたシートクッション及びシートバックの上面部分が車体前後方向にほぼ連続した荷室フロア面として形成されるようになっていることを特徴とする車両の車室後部構造。
【請求項2】
上記車体前後方向にほぼ連続した荷室フロア面は、上記シートクッションの表面部及び上記シートバックの背面部により形成されている請求項1に記載の車両の車室後部構造。
【請求項3】
上記シートクッション用スライド機構が、上記シートクッションの左右両側部に設けられたスライド部材と、上記車室後部の両壁部に設けられ上記スライド部材が係合すると共に上記スライド部材を摺動可能に支持する左右一対のスライドレール部と、を有する請求項1又は請求項2に記載の車両の車室後部構造。
【請求項4】
上記シートクッションが格納位置にあるとき、乗員が着座するためのシートクッションの表面部が上方を向き、
さらに、上記シートバックの背面部に設けられたボード部材を有し、上記シートクッションが上記格納位置にあるとき、上記ボード部材が上記シートクッションの表面部を覆うようになっている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両の車室後部構造。
【請求項5】
上記ボード部材が、上記シートバックが前倒された状態でのその背面部の後端部に回動可能に支持され、回動して上記シートクッションの表面部を覆うようになっている請求項4に記載の車両の車室後部構造。
【請求項6】
上記ボード部材が、上記シートバックの背面部にスライド可能に取り付けられ、スライドして上記シートクッションの表面部を覆うようになっている請求項4に記載の車両の車室後部構造。
【請求項7】
上記シートバックが起立した着座位置にあるときには、上記ボード部材が、上記荷室を上下方向に仕切るようになっている請求項4又は請求項5に記載の車両の車室後部構造。
【請求項8】
さらに、少なくとも上記車室後部の車体上下方向の中間の位置でほぼ水平方向に延び、上記シートバックをスライド可能に支持するシートバックスライドレール部を有し、上記シートバックは、このシートバックスライドレール部により、上記車室後部の車体上下方向の中間の位置で上記シートバックの背面部が上部となるようにほぼ水平方向に延びる水平位置に配置されるようになっている請求項1乃至7のいずれか1項に記載の車両の車室後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−40249(P2009−40249A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208021(P2007−208021)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】