説明

車両の運転支援装置

【課題】前方障害物との衝突を回避するために、ドライバが旋回操作で障害物との衝突を回避できたと感じた場合に、障害物とドアミラーとの接触も確実に防止して、障害物、ドアミラー等の破損を確実に防止する。
【解決手段】制御ユニット10は、自車両と前方障害物との衝突の可能性があるか否かを判定し、衝突の可能性がある場合には、旋回操作があるか否かを判定し、旋回操作が行われない場合には、そのまま制動力を設定してブレーキ駆動部20に出力する一方、旋回操作が行われた場合には、ドアミラー電動格納機構33にドアミラー格納信号を出力して左右の電動ドアミラー本体30を後方に回動させて車体側面に沿って格納すると共に、制動力を設定してブレーキ駆動部20に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の前方障害物を検出し、前方障害物との衝突を回避する車両の運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自車両の前方障害物を検出し、前方障害物との衝突を回避する様々な車両の運転支援装置が提案されている。一般に、前方障害物との衝突を回避するためには、制動操作及び旋回操作が行われるが、特に、旋回操作で障害物との衝突を回避する場合、ドライバが障害物との衝突を回避できたと感じた場合においても、車両の側面から車幅方向に突出したドアミラーが、障害物と接触し、障害物及びドアミラー等の破損を招く虞がある。例えば、特開2003−341429号公報(以下、特許文献1)では、ドアミラーが使用位置にある状態でドアミラーに折り畳み方向への回動荷重が作用したとき、ドアミラーがドアガラスに当たるのを阻止し、且つ格納操作時に阻止状態を解除可能なストッパを設けた技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−341429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に開示される技術は、あくまでも、障害物とドアミラーとが接触した際に、ドアガラスを保護する技術であり、障害物及びドアミラーを保護することができないという問題がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、前方障害物との衝突を回避するために、ドライバが旋回操作で障害物との衝突を回避できたと感じた場合に、障害物とドアミラーとの接触も確実に防止して、障害物、ドアミラー等の破損を確実に防止することができる車両の運転支援装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両の運転支援装置の一態様は、車体側面から車幅方向に突出して設け、電動で後方に回動させて上記車体側面に沿って格納自在な車両後方確認のための電動ドアミラーと、自車両の前方障害物情報を検出する前方障害物情報検出手段と、上記前方障害物を回避するための制動操作と旋回操作とが行われた際に、上記電動ドアミラーを格納させるドアミラー格納手段とを備えた。
【発明の効果】
【0007】
本発明による車両の運転支援装置によれば、前方障害物との衝突を回避するために、ドライバが旋回操作で障害物との衝突を回避できたと感じた場合に、障害物とドアミラーとの接触も確実に防止して、障害物、ドアミラー等の破損を確実に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の一形態に係る、車両運転支援装置の機能構成図である。
【図2】本発明の実施の一形態に係る、車両運転支援装置における衝突防止制御プログラムのフローチャートである。
【図3】本発明の実施の一形態に係る、電動ドアミラー本体の内部構造説明図である。
【図4】本発明の実施の一形態に係る、障害物を回避するために旋回制動が行われたときの電動ドアミラーの動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1において、符号1は、障害物との衝突を防止する衝突防止機能を備えた車両運転支援装置を示し、この車両運転支援装置1は、制御ユニット10に、前方障害物情報を検出する画像認識装置11と、(自)車速Vを検出する車速センサ12と、ハンドル角θHを検出するハンドル角センサ13とが接続されて構成され、前方障害物との衝突を防止する制動力をブレーキ駆動部20に出力し、また、必要に応じてドアミラーを格納する信号をドアミラー電動格納機構33に出力するように構成されている。
【0010】
画像認識装置11には、車室内の天井前方に一定の間隔を持って取り付けられ、車外の対象を異なる視点からステレオ撮像し、撮像した画像情報を出力する電荷結合素子(CCD)等の固体撮像素子を用いた左右1組のCCDカメラ(図示せず)から画像情報が入力されるとともに車速センサ12から自車速V等が入力される。そして、これらの情報に基づき、画像認識装置11は、ステレオカメラからの画像情報に基づいて自車両前方の立体物データや白線データ等の前方情報を認識し、これら認識情報等に基づいて自車走行路を推定する。更に、画像認識装置11は、自車走行路上に立体物が存在するか否かを調べ、存在する場合には、直近のものを制動による衝突防止制御の制御対象の障害物として認識する。
【0011】
ここで、画像認識装置11は、ステレオカメラからの画像情報の処理を、例えば以下のように行う。先ず、ステレオカメラで自車進行方向を撮像した1組のステレオ画像対に対し、対応する位置のずれ量から三角測量の原理によって距離情報を生成する。そして、この距離情報に対して周知のグルーピング処理を行い、グルーピング処理した距離情報を予め設定しておいた三次元的な道路形状データや立体物データ等と比較することにより、白線データ、道路に沿って存在するガードレール、縁石等の側壁データ、車両等の立体物データ等を抽出する。更に、画像認識装置11は、白線データや側壁データ、推定される自車進行路等に基づいて自車走行路を推定し、自車走行路前方に存在する直近の立体物を衝突防止制御の制御対象の障害物として抽出(検出)する。そして、障害物を検出した場合には、その障害物情報として、自車両と障害物との相対距離d、障害物の移動速度Vf(=(相対距離dの変化の割合)+自車速V))、障害物の減速度af(=障害物の移動速度Vfの微分値)、障害物と自車両との幅方向のラップ率Rr(=自車両1の幅が障害物の幅に重なっている自車両1の幅に対する割合)等を演算する。このように、本実施形態において、画像認識装置11は、前方障害物情報検出手段としての機能を有している。尚、本実施の形態では、前方障害物情報の検出を、ステレオカメラからの画像情報を基に、認識するようになっているが、他に、単眼カメラからの画像情報を基に認識するようにしても良い。
【0012】
ブレーキ駆動部20は、ドライバのブレーキペダルの踏み込み量に応じたブレーキ圧を発生する一方、制御ユニット10からの制動力信号の他、図示しないABS(Anti-lock Brake System)や、横すべり防止制御装置等からの信号により、自動でブレーキ圧を所定の車輪に発生させる、各車輪のホイールシリンダに対して、それぞれ独立にブレーキ圧を導入自在に形成された、加圧源、減圧弁、増圧弁等を備えたハイドロリックユニットで構成されている。
【0013】
ドアミラー電動格納機構33は、車両の左右のサイドドアに、それぞれ対称形状の左右のステー31を介して車体側面から車幅方向に突出して取り付けられる左右の電動ドアミラー本体30内にそれぞれ設けられている。
【0014】
図3は、右側の電動ドアミラー本体30を示し、左側の電動ドアミラー本体30の構造については、右側の電動ドアミラー本体30と対称構造であるので説明は省略する。
【0015】
電動ドアミラー本体30は、ケース32内に、ドアミラー電動格納機構33とリモコンミラー部34とが設けられ、リモコンミラー部34には、図示しない鏡面が固設されており、鏡面がリモコンミラー部34により上下左右方向の角度調節が自在で、この鏡面を利用してドライバが後方を確認できるようになっている。
【0016】
ドアミラー電動格納機構33は、電動モータ33aと減速機構部33bとクラッチ機構部33cとから主要に構成されている。そして、現在の電動ドアミラー本体30の位置(車体側面から車幅方向に突出した復帰位置、及び、車体側面に沿って格納した位置)を検出して、入力信号に応じ、電動モータ33aの回転を減速して電動ドアミラー本体30を復帰位置と格納位置との間で回動自在に構成されている。
【0017】
そして、制御ユニット10は、後述の衝突防止制御プログラムに従って、自車両と前方障害物との衝突の可能性があるか否かを判定し、衝突の可能性がある場合には、旋回操作があるか否かを判定し、旋回操作が行われない場合には、そのまま制動力を設定してブレーキ駆動部20に出力する一方、旋回操作が行われた場合には、ドアミラー電動格納機構33にドアミラー格納信号を出力して左右の電動ドアミラー本体30を後方に回動させて車体側面に沿って格納すると共に、制動力を設定してブレーキ駆動部20に出力するように構成されている。このように、制御ユニット10は、ドアミラー格納手段、衝突防止制御手段としての機能を有して構成されている。
【0018】
次に、上述の制御ユニット10で、前方障害物が検出されて実行される衝突防止制御を、図2のフローチャートで説明する。
まず、ステップ(以下、「S」と略称)101で、必要パラメータ、すなわち、障害物情報(車両1と障害物との相対距離d、障害物の移動速度Vf、障害物の減速度af、障害物と自車両1とのラップ率Rr等)、自車速V、ハンドル角θH、を読み込む。
【0019】
次に、S102に進み、自車両が障害物に対して衝突するまでの衝突予測時間TTC(Time To Collision:自車両と障害物との相対距離dを相対速度で除した値)を算出する。
【0020】
次いで、S103に進み、衝突予測時間TTCと予め設定しておいた閾値Tcaとを比較して、衝突予測時間TTCが予め設定しておいた閾値Tca以上の場合(TTC≧Tcaの場合)は、障害物と自車両とが衝突する可能性が低いと判断して、そのままプログラムを抜ける。
【0021】
逆に、衝突予測時間TTCが予め設定しておいた閾値Tcaより短い場合(TTC<Tcaの場合)は、障害物と自車両とが衝突する可能性が高いと判断して、S104に進む。
【0022】
S104では、ハンドル角θHとハンドル角閾値θc(予め設定しておいた低い角度)との比較が行われ、ハンドル角θHがハンドル角閾値θcを越えている場合(θH>θcの場合)は、ドライバによる旋回操作が行われていると判定して、S105に進み、ドアミラー電動格納機構33にドアミラー格納信号を出力して左右の電動ドアミラー本体30を後方に回動させて車体側面に沿って格納してS106に進む。
【0023】
また、S104の判定の結果、ハンドル角θHがハンドル角閾値θ以下の場合(θH≦θcの場合)は、ドライバによる旋回操作は行われていないと判定して、S106へとジャンプする。
【0024】
そして、S104、或いは、S105からS106に進むと、(予め設定しておいた一定値、或いは、予め設定しておいた車速Vに応じたマップ参照により)制動力を設定してブレーキ駆動部20に出力して、プログラムを抜ける。
【0025】
このように本発明の実施の形態によれば、自車両と前方障害物との衝突の可能性があるか否かを判定し、衝突の可能性がある場合には、旋回操作があるか否かを判定し、旋回操作が行われない場合には、そのまま制動力を設定してブレーキ駆動部20に出力する一方、旋回操作が行われた場合には、ドアミラー電動格納機構33にドアミラー格納信号を出力して左右の電動ドアミラー本体30を後方に回動させて車体側面に沿って格納すると共に、制動力を設定してブレーキ駆動部20に出力する。このため、図4に示すように、前方障害物との衝突を回避するためにドライバが旋回操作した場合には、左右の電動ドアミラー本体30を後方に回動させて車体側面に沿って格納するので、前方障害物との衝突を回避するために、ドライバが旋回操作で障害物との衝突を回避できたと感じた場合に、障害物とドアミラーとの接触も確実に防止して、障害物、ドアミラー等の破損を確実に防止することが可能となる。
【0026】
尚、本実施の形態では、衝突予測時間TTCを用いた衝突可能性の判定を用いた例を説明したが、他の衝突可能性の判定を用いた例(例えば、車間時間や、車間距離や、速度や、様々な補正(路面μ、路面勾配等)を加えて衝突の可能性を判定を行う技術)においても本発明の実施の形態が適用できることは言うまでもない。
【0027】
また、本発明の実施の形態では、障害物を検出して実行される衝突防止制御の作動の際に旋回操作が行われた際に、左右の電動ドアミラー本体30を格納させるようになっているが、単に、障害物が検出されて、ドライバが実行する急制動操作(設定値以上のブレーキ圧の制動操作)が行われた際に旋回操作が行われた際に、左右の電動ドアミラー本体30を格納させるようにするものであっても良い。
【符号の説明】
【0028】
1 車両運転支援装置
10 制御ユニット(ドアミラー格納手段、衝突防止制御手段)
11 画像認識装置(前方障害物情報検出手段)
12 車速センサ
13 ハンドル角センサ
20 ブレーキ駆動部
30 電動ドアミラー本体
33 ドアミラー電動格納機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側面から車幅方向に突出して設け、電動で後方に回動させて上記車体側面に沿って格納自在な車両後方確認のための電動ドアミラーと、
自車両の前方障害物情報を検出する前方障害物情報検出手段と、
上記前方障害物を回避するための制動操作と旋回操作とが行われた際に、上記電動ドアミラーを格納させるドアミラー格納手段と、
を備えたことを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項2】
上記制動操作は、上記自車両と上記前方障害物との衝突可能性が高いと判定した場合、上記前方障害物との衝突を防止する衝突防止制御手段が実行する制動操作であることを特徴とする請求項1記載の車両の運転支援装置。
【請求項3】
上記制動操作は、ドライバが実行する急制動操作であることを特徴とする請求項1記載の車両の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−192777(P2012−192777A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56803(P2011−56803)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】