車両乗降支援システム
【課題】客による車両の乗降を支援する。
【解決手段】ユーザ端末4は、ユーザUによる入力操作に対応して希望の路線ID及び目的地IDを取得し、記憶する(S701)。次に、ユーザUによる指示操作に対応して、ユーザUがバス停Sまでの誘導を要求するバス停誘導要求(希望路線ID及び希望目的地IDを含む)を基地局3に送信する(S702)。ユーザ端末4から最寄の基地局3は、ユーザ端末4からバス停誘導要求を受信する(S703)。そして、当該基地局3の設置されたバス停SがユーザUの希望条件に合えば(S704のY)、基地局3は、ユーザ端末4との相対位置を計算し(S705)、ユーザ端末4を携帯するユーザUがバス停Sに到達するために進むべき方向及び距離を含むバス停誘導情報を作成(S706)し、ユーザ端末4に送信する(S708)。ユーザ端末4は、バス停誘導情報を受信し(S709)、出力する(S710)。
【解決手段】ユーザ端末4は、ユーザUによる入力操作に対応して希望の路線ID及び目的地IDを取得し、記憶する(S701)。次に、ユーザUによる指示操作に対応して、ユーザUがバス停Sまでの誘導を要求するバス停誘導要求(希望路線ID及び希望目的地IDを含む)を基地局3に送信する(S702)。ユーザ端末4から最寄の基地局3は、ユーザ端末4からバス停誘導要求を受信する(S703)。そして、当該基地局3の設置されたバス停SがユーザUの希望条件に合えば(S704のY)、基地局3は、ユーザ端末4との相対位置を計算し(S705)、ユーザ端末4を携帯するユーザUがバス停Sに到達するために進むべき方向及び距離を含むバス停誘導情報を作成(S706)し、ユーザ端末4に送信する(S708)。ユーザ端末4は、バス停誘導情報を受信し(S709)、出力する(S710)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両利用客の乗降支援システムに関し、特に車両運行状態の把握が困難な利用客に対するものに関する。
【背景技術】
【0002】
バス等の公共交通機関(以下、簡単に「バス」という)の運行位置、バスの停留所(以下、簡単に「バス停」という)にいる利用客の有無を把握する監視システムにつき、例えば以下の従来技術がある。
【0003】
特許文献1に記載のバス運行システムでは、各バス停に待ち客がいるか否かをバス停毎に設置された監視カメラ等が検知し、その結果を遠隔の監視所に送信する。監視所では、検知結果を受信し、バス停毎の待ち客の有無を判断し、待ち客がいるバス停で停車する指示を走行中のバスに無線送信する。
【0004】
特許文献2に記載の移動体位置確認システムでは、予め定められた複数のバス停を移動するバスが、その現在位置を表す移動体位置データをGPS(Global Positioning System)衛星からの信号を基に算出する。さらにバスの扉が開いていることが検出されたときにバスが到着したとして運行監視装置に到着信号を送信する。
【0005】
特許文献3に記載の運行バスの位置監視システムでは、運行バスの全路線に設けられる複数のバス停の緯度及び経度を予め決定し、この緯度及び経度を運行バスの車載サーバで記憶すると共に、運行バスが複数のバス停の所定エリア内に入ったことにより、この運行バスに搭載する測位システムによる実測位置データをバス停到着位置情報として運行バス管理センタへ自動的に送信し、運行バス管理センタは、運行バスからのバス停到着位置情報を受けて、その時の運行バスの位置を監視する。
【0006】
特許文献4に記載の位置標定システムは、複数の無線マーカを利用して方向、距離、位置又はこれらの組合せの標定を行うシステムであり、第1の無線マーカのサービスエリアから第2の無線マーカのサービスエリアへのハンドオーバを制御する。この位置標定システムでは、携帯端末が第1のマーカのサービスエリア内のどの位置に居るかが正確に標定できることから、第1のマーカのサービスエリアから逸脱することが判明した時点で、即座に、第2のマーカのサービスエリアを選択し、当該選択した第2のマーカを利用して位置の標定を継続して行うことができるため、ハンドオーバの制御が簡単であり、ハンドオーバに要する時間を短縮することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−63697号公報
【特許文献2】特開2003−233891号公報
【特許文献3】特開2003−44986号公報
【特許文献4】特開2008−199589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、特許文献1ないし3は、いずれもバスの運行又は管理をする側の視点からみた技術である。すなわち、バスがバス停へ到着したか否か、バス停に待ち客がいるか否かを検知することにより、バスの円滑な運行を行うことを主眼とする。従って、利用客がバス停に到着するまでの案内、バス乗降のタイミング、利用客の希望目的地等は考慮されていない。
【0009】
しかし、バスの利用客の視点から見ると、例えば利用客が視覚障害者や高齢者等(以下、「視覚障害者等」という)であれば、バスの利用全般に亘って健常者と比べて不便を来たすことがある。具体的には、バス停が比較的狭い範囲に点在しているバスターミナルからバスを利用する場合や、一つのバス停に複数の路線系統のバスが停車する場合に、視覚障害者等が的確に目的地を通るバスやバス停を見つけること、バスの乗降の際に必要な細かい位置状態(例えば段差等)を把握すること、バス乗車中にも現在の走行情報や降車タイミングを把握することのそれぞれに困難を生じる。
【0010】
これらの困難性に対して、従来技術では解決することはできない。それは、位置情報の取得にGPS衛星や定点監視カメラを使用するため、視覚障害者等の乗降支援に必要な精細な位置情報や行動を把握することができないからである。また、従来技術は、そもそも視覚障害者等の乗車前から降車時までのプロセスを把握することを目的としていない。
【0011】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、客による車両の乗降を支援することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、車両乗降支援システムであって、車両の利用客に携帯されるユーザ端末と、前記車両に搭載される車両端末と、前記車両が停車する停車場に設置され、前記ユーザ端末の位置及び前記車両端末の位置を測定する高精度位置測定機能を有する情報処理装置である基地局と、を備え、前記基地局が、前記ユーザ端末の位置に基づいて、前記利用客が前記停車場にいないと判断した場合に、前記停車場に到達するために前記利用客が進むべき方向及び距離を含む停車場誘導情報を作成し、前記ユーザ端末に送信し、前記ユーザ端末が、前記基地局から前記停車場誘導情報を受信し、前記利用客に出力することを特徴とする。
この構成によれば、基地局は、ユーザ端末の位置を正確に測定できるので、正確な停車場誘導情報を作成することができる。これによれば、利用者を停車場に確実に誘導することができる。
【0013】
また、本発明は、車両乗降支援システムであって、前記ユーザ端末が、当該利用者の車両の運行に関する希望条件を記憶し、前記基地局が、当該停車場に停車する車両の運行に関する停車車両条件を記憶し、前記ユーザ端末が、前記希望条件を前記基地局に送信し、前記基地局が、前記ユーザ端末から前記希望条件を受信し、前記停車車両条件が前記希望条件を満たすときに、前記バス停誘導情報を作成し、前記ユーザ端末に送信することを特徴とする。
この構成によれば、停車場によって停車する車両の路線や行き先等が異なるが、希望条件と、停車車両条件とを比較、照合することにより、利用客の希望に該当する停車場だけからバス停誘導情報を送信することができる。
【0014】
また、本発明は、車両乗降支援システムであって、前記ユーザ端末が、各情報を前記利用客に出力する手段として、音声出力装置又は電子点字表示装置を備えることを特徴とする。
この構成によれば、利用客が視覚障害者や高齢者等であっても各情報を認識できるので、視覚障害者や高齢者等を含めて円滑な車両の乗降を行うことができる。
【0015】
その他、本願が開示する課題及びその解決方法は、発明を実施するための最良の形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、客による車両の乗降を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】車両乗降支援システム1の構成を示す図である。
【図2】基地局サーバ2のハードウェア構成を示す図である。
【図3】基地局3のハードウェア構成を示す図である。
【図4】ユーザ端末4のハードウェア構成を示す図である。
【図5】車両端末5のハードウェア構成を示す図である。
【図6】基地局3、ユーザ端末4及び車両端末5の各記憶部に記憶されるデータの構成を示す図であり、(a)は基地局3の記憶部35に記憶される基地局情報36の構成を示し、(b)はユーザ端末4の記憶部45に記憶されるユーザ情報46の構成を示し、(c)は車両端末5の記憶部55に記憶される車両情報56の構成を示す。
【図7】ユーザUをバス停Sまで誘導する処理を示すフローチャートである。
【図8】バス停SにいるユーザUのバス乗車を支援する処理を示すフローチャートである。
【図9】バスBの車内においてユーザUに情報を提供する処理を示すフローチャートである。
【図10】ユーザUがバスBから降車するのを支援する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態を説明する。本発明の実施の形態に係る車両乗降支援システムは、停車場に設置された基地局と、車両の利用客に携帯されたユーザ端末及び車両に搭載された車両端末とが相互に無線通信し、基地局が高精度位置測定機能を用いてユーザ端末の位置及び車両端末の位置を特定することによって、視覚障害者等を含む利用客の乗降支援を確実に実施するものである。なお、高精度位置測定機能を実現するために、特許文献4に記載の位置標定システムを適用する。
【0019】
≪システムの構成と概要≫
図1は、車両乗降支援システム1の構成を示す図である。車両乗降支援システム1は、基地局サーバ2、基地局3、ユーザ端末4及び車両端末5を備える。基地局サーバ2は、バスの路線やバス停に関する情報を管理し、適宜提供するサーバ用コンピュータであり、バス会社の管理センタ等に設置される。基地局3は、ユーザ端末4や車両端末5と無線通信する通信基地局を備えることにより、バスBの利用客であるユーザUの乗降支援を行う情報処理装置であり、バス停Sに固定的に設置される。基地局サーバ2と、各基地局3とは、ネットワーク6を介して通信可能である。なお、車両乗降支援に関する情報処理は、基地局サーバ2で行ってもよいし、基地局3で行ってもよい。
【0020】
ユーザ端末4は、ユーザU(利用客)が携帯する携帯端末(例えば、携帯電話等)であり、視覚障害者等、通常はバスの乗降に不自由する人(ユーザU)が利用することより、ユーザUの円滑なバス乗降を支援する。車両端末5は、バスBの運転席に搭載され、運転手が利用する携帯端末であり、適宜ユーザUに関する情報を出力する。ユーザ端末4と、車両端末5とは、原則として基地局3を介して通信し、基地局3は、ユーザ端末4及び車両端末5の高精度な位置情報を取得するが、それを実現する位置標定システムの詳細については特許文献4を参照のこと。
【0021】
≪装置の構成≫
図2は、基地局サーバ2のハードウェア構成を示す図である。基地局サーバ2は、通信部21、表示部22、入力部23、処理部24及び記憶部25を備える。通信部21は、ネットワーク6を介して基地局3とIP(Internet Protocol)通信を行う部分であり、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。表示部22は、処理部24からの指示によりデータを表示する部分であり、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等によって実現される。入力部23は、管理者がデータ(例えば、バス路線やバス停に関する情報)を入力する部分であり、例えば、キーボードやマウス等によって実現される。処理部24は、各部間のデータの受け渡しを行うととともに、基地局サーバ2全体の制御を行うものであり、CPU(Central Processing Unit)が所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部25は、処理部24からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりするものであり、例えば、フラッシュメモリやハードディスク装置等の不揮発性記憶装置によって実現される。
【0022】
図3は、基地局3のハードウェア構成を示す図である。基地局3は、通信部31、表示部32、入力部33、処理部34及び記憶部35を備える。通信部31は、ネットワークを介して基地局サーバ2や携帯端末(ユーザ端末4、車両端末5)とIP通信を行う部分であり、例えば、NIC等によって実現される。表示部32は、処理部34からの指示によりデータを表示する部分であり、例えば、液晶ディスプレイ等によって実現される。入力部33は、管理者がデータ(例えば、路線やバス停に関する情報)を入力する部分であり、例えば、キーボードやマウス等によって実現される。処理部34は、各部間のデータの受け渡しを行うととともに、基地局3全体の制御を行うものであり、CPUが所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部35は、処理部34からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりするものであり、例えば、フラッシュメモリやハードディスク装置等の不揮発性記憶装置によって実現される。
【0023】
図4は、ユーザ端末4のハードウェア構成を示す図である。ユーザ端末4は、通信部41、出力部42、入力部43、処理部44及び記憶部45を備える。通信部41は、主として基地局3と無線通信を行う部分であり、例えば、NIC等によって実現される。出力部42は、処理部44からの指示によりデータを出力する部分であり、例えば、液晶ディスプレイ等によって実現される。入力部43は、ユーザUがデータ(例えば、希望の路線や目的地のバス停に関する情報)を入力する部分であり、例えば、操作ボタン等によって実現される。処理部44は、各部間のデータの受け渡しを行うととともに、ユーザ端末4全体の制御を行うものであり、CPUが所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部45は、処理部44からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりするものであり、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置によって実現される。
【0024】
なお、入力部43は、バス停誘導要求ボタン431及び乗車誘導要求ボタン432を備えていてもよい。バス停誘導要求ボタン431は、ユーザUがバス停Sまでの誘導情報を取得したいときに押すボタンである。乗車誘導要求ボタン432は、ユーザUがバス停SからバスBに乗車するまでの誘導情報を取得したいときに押すボタンである。
【0025】
図5は、車両端末5のハードウェア構成を示す図である。車両端末5は、通信部51、出力部52、入力部53、処理部54及び記憶部55を備える。通信部51は、主として基地局3と無線通信を行う部分であり、例えば、NIC等によって実現される。出力部52は、処理部54からの指示によりデータを出力する部分であり、例えば、液晶ディスプレイ等によって実現される。入力部53は、バスBの運転手がデータ(例えば、バスBの路線や目的地のバス停に関する情報)を入力する部分であり、例えば、操作ボタン等によって実現される。処理部54は、各部間のデータの受け渡しを行うととともに、車両端末5全体の制御を行うものであり、CPUが所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部55は、処理部54からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりするものであり、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置によって実現される。
【0026】
なお、入力部53は、路線選択ボタン531、接近通告ボタン532及び到着通告ボタン533を備えていてもよい。路線選択ボタン531は、運転手がバスBを発進する前にこれから走行する予定の路線を選択するときに押すボタンである。接近通告ボタン532は、バスBの運転手がバス停Sへの接近を通告したいときに押すボタンである。到着通告ボタン533は、バスBの運転手がバス停Sへの到着を通告したいときに押すボタンである。
【0027】
≪データの構成≫
図6は、基地局3、ユーザ端末4及び車両端末5の各記憶部に記憶されるデータの構成を示す図である。
【0028】
図6(a)は、基地局3の記憶部35に記憶される基地局情報36の構成を示す。基地局情報36は、基地局3や基地局3が設置されているバス停Sに関する情報であり、基地局ID361、バス停ID362、基地局位置363、路線情報364、希望路線ID365及びユーザ端末ID366を含む。基地局ID361は、基地局3に固有の情報であり、例えば、基地局サーバ2や携帯端末との通信において基地局3を特定するIPアドレスが設定される。バス停ID362は、基地局3が設置されているバス停Sに固有の情報であり、ユーザUの希望目的地やバスBの現在地や目的地を特定する場合にも用いられる。基地局位置363は、基地局3の絶対位置であり、予めGPS等により測定された位置が固定的に設定される。路線情報364は、基地局3が設置されているバス停Sに停車するバスBの運行に関する停車車両条件として、当該バスBの路線に関する情報であり、路線に固有の情報である路線IDごとに、バスBの通る順番にバス停IDが設定される。
【0029】
希望路線ID365及びユーザ端末ID366は、相互に対応付けられたオプション情報であり、基地局3が車両端末5からバス接近情報及びバス到着情報を受信した場合に、受信した情報を当該路線希望のユーザUのユーザ端末4だけに送信するために用いられる。希望路線ID365は、基地局3がユーザ端末4から受信した希望路線IDであり、1の基地局情報36に複数設定されていてもよい。ユーザ端末ID366は、当該希望路線ID365を送信したユーザ端末4のIDであり、1の希望路線ID365に対応して複数設定されていてもよい。
【0030】
図6(b)は、ユーザ端末4の記憶部45に記憶されるユーザ情報46の構成を示す。ユーザ情報46は、ユーザ端末4やユーザ端末4を携帯するユーザUに関する情報であり、ユーザ端末ID461、ユーザ端末位置462、乗車バス停ID463、希望路線ID464、希望目的地ID465及び料金情報466を含む。ユーザ端末ID461は、ユーザ端末4に固有の情報であり、例えば、基地局3等との通信においてユーザ端末4を特定するIPアドレスが設定される。ユーザ端末位置462は、ユーザ端末4の絶対位置であり、基地局3の絶対位置及び基地局3からの相対位置によって求められ、随時更新される。乗車バス停ID463は、ユーザUがバスBに乗車した際のバス停SのIDであり、ユーザ端末4が基地局3から乗車誘導情報を受信したときに、その乗車誘導情報に含まれるバス停IDが設定される。
【0031】
希望路線ID464は、ユーザUが希望するバス路線のIDである。希望目的地ID465は、ユーザUが希望する目的地のバス停IDである。希望路線ID464及び希望目的地ID465は、バスBの運行に関するユーザUの希望条件であり、予めユーザUによってユーザ端末4の記憶部45に設定され、ユーザ端末4から基地局3に送信されるバス停誘導要求や乗車誘導要求のデータに設定される。料金情報466は、バスBの乗車料金を示す情報であり、例えば、乗るバス停IDの行及び降りるバス停IDの列からなる行列になっていて、行及び列が交差する欄に乗るバス停から降りるバス停までの料金が設定されたテーブルである。
【0032】
図6(c)は、車両端末5の記憶部55に記憶される車両情報56の構成を示す。車両情報56は、車両端末5が搭載されたバスBに関する情報であり、車両端末ID561、車両端末位置562、車両路線ID563、車両目的地ID564、路線情報565及び料金情報566を含む。車両端末ID561は、車両端末5に固有の情報であり、例えば、基地局3等との通信において車両端末5を特定するIPアドレスが設定される。車両端末位置562は、車両端末5の絶対位置であり、基地局3の絶対位置及び基地局3からの相対位置によって求められ、随時更新されるが、GPSによる測定結果が設定されることもある。車両路線ID563は、バスBが走行する路線のIDである。車両目的地564は、バスBが向かう目的地のバス停IDである。車両路線ID563及び車両目的地ID564は、バスBの運行に関する車両条件であり、バスBが発進する前に運転手によって車両端末5の記憶部55に設定される。路線情報565は、バスBに係るバス路線に関する情報であり、路線IDごとに、バスBの通る順番にバス停IDが掲載されている。料金情報566は、バスBの乗車料金を示す情報であり、料金情報466と同様の形式である。
【0033】
≪システムの処理≫
続いて、車両乗降支援システム1の処理について説明する。本処理は、ユーザUがバス停Sに到着するまで、バス停SからバスBに乗車するまで、バスBに乗車している間、目的地に到着したバスBから降車するまでの各局面を支援する処理である。なお、各局面の支援処理では、一連の処理として情報を共有してもよいし、それぞれ独立した処理として情報を個別に管理してもよい。
【0034】
図7は、ユーザUをバス停Sまで誘導する処理を示すフローチャートである。まず、ユーザ端末4は、ユーザUによる入力部43への入力操作に対応して希望の路線ID及び目的地IDを取得し、記憶部45のユーザ情報46内の希望路線ID464及び希望目的地ID465に記憶する(S701)。そして、ユーザUによる入力部43の操作(例えば、バス停誘導要求ボタン431の押下)に対応して、ユーザUがバス停Sまでの誘導を要求するバス停誘導要求を基地局3に送信する(S702)。バス停誘導要求のデータには、記憶部45に記憶された希望路線ID464及び希望目的地ID465が含まれる。
【0035】
ユーザ端末4から最寄の基地局3は、ユーザ端末4からバス停誘導要求を受信する(S703)。そして、当該基地局3の設置されたバス停SがユーザUの希望条件に合うか否かを判定する(S704)。詳細には、記憶部35の基地局情報36内の路線情報364に、バス停誘導要求内の希望路線ID及び希望目的地IDが含まれるか否かを判定する。バス停Sが希望条件に合えば(S704のY)、基地局3は、ユーザ端末4との相対位置を計算し(S705)、ユーザ端末4を携帯するユーザUがバス停Sに到達するために進むべき方向及び距離を含むバス停誘導情報を作成する(S706)。この場合、ユーザ端末4の位置情報に基づいてユーザUがバス停Sにいないと判断したときに、バス停誘導情報を作成するようにしてもよい。
【0036】
バス停Sが希望条件に合わなければ(S704のN)、基地局3は、当該基地局3がユーザUの希望条件に合わない旨を示すエラー情報を作成する(S707)。この場合、基地局3は、基地局サーバ2に問い合わせて希望条件に合う他のバス停Sの位置情報を取得し、ユーザUが当該他のバス停Sに到達するために進むべき方向及び距離をエラー情報に設定するようにしてもよい。
【0037】
基地局3は、作成したバス停誘導情報又はエラー情報をユーザ端末4に送信する(S708)。それに対して、ユーザ端末4は、いずれかの情報を受信し(S709)、出力する(S710)。バス停誘導情報又はエラー情報の出力は、表示装置、音声出力装置、電子点字表示装置等によって行われる(以下、ユーザ端末4による情報出力について同様とする)。表示装置ではなく、音声出力装置や電子点字表示装置を用いることによって、ユーザUが視覚障害者等であってもバス停誘導情報を認識して、希望条件に合うバス停Sまで行き着くことができる。
【0038】
図8は、バス停SにいるユーザUのバス乗車を支援する処理を示すフローチャートである。まず、ユーザ端末4は、ユーザUによる入力部43への入力操作に対応して希望の路線ID及び目的地IDを取得し、記憶部45のユーザ情報46内の希望路線ID464及び希望目的地ID465に記憶する(S801)。そして、ユーザUによる入力部43の操作(例えば、乗車誘導要求ボタン432の押下)に対応して、ユーザUがバス乗車の誘導を要求する乗車誘導要求を基地局3に送信する(S802)。乗車誘導要求のデータには、記憶部45に記憶された希望路線ID464及び希望目的地ID465が含まれる。
【0039】
ユーザ端末4から所定距離内にある最寄の基地局3は、ユーザ端末4から乗車誘導要求を受信する(S803)。そして、その基地局3の設置されたバス停SがユーザUの希望条件に合うか否かを判定する(S804)。詳細には、記憶部35の基地局情報36内の路線情報364に、乗車誘導要求内の希望路線ID及び希望目的地IDが含まれるか否かを判定する。バス停Sが希望条件に合えば(S804のY)、基地局3は、記憶部35の基地局情報36内のバス停ID352及び希望条件(希望路線ID及び希望目的地ID)を含む利用客待ち情報を、車両端末5の位置情報に基づいて当該基地局3から所定距離内にあり、当該基地局3に接近しつつあると判断される車両端末5に送信する(S805)。この場合、上記判断に加えてさらにユーザ端末4の位置情報に基づいてユーザUがバス停Sにいると判断したときに、利用客待ち情報を車両端末5に送信するようにしてよい。
【0040】
車両端末5は、当該車両端末5から所定距離内にある基地局3(バスBが接近しつつあるバス停Sに設置された基地局3)から利用客待ち情報を受信する(S806)。そして、当該バスBが利用客待ち情報に含まれるバス停ID及び希望条件に合うか否かを判定する(S807)。詳細には、記憶部55の車両情報56内の車両路線ID563が、希望路線IDと一致し、かつ、車両目的地ID564が、希望目的地IDと一致するか、希望目的地IDより先にあるか否かを判定し、さらに路線情報565に基づいてバスBがバス停IDのバス停Sに停車する車両か否かを判定する。バスBが条件に合えば(S807のY)、利用客が最寄のバス停Sで待っている旨をバスBの運転手に向けて出力する(S808)。この出力は、表示装置や音声出力装置等によって行われる。バスBが条件に合わなければ(S807のN)、何も処理しない(S809)。
【0041】
これによれば、バスBの運転手は、接近しているバス停Sに待っている利用客が当該バスBに乗車するか否かが分かるので、必要な停車だけを行うことで、無駄な停車を減らすことができる。特に、ユーザUを視覚障害者等に限定すれば、運転手は視覚障害者等がバス停Sで待っていることを知ることができる。
【0042】
バス停Sが希望条件に合わなければ(S804のN)、基地局3は、当該基地局3がユーザUの希望条件に合わない旨を示すエラー情報を作成し、ユーザ端末4に送信する(S810)。この場合、基地局3は、基地局サーバ2に問い合わせて希望条件に合う他のバス停Sの位置情報を取得し、ユーザUが当該他のバス停Sに到達するために進むべき方向及び距離をエラー情報に設定するようにしてもよい。ユーザ端末4は、基地局3からエラー情報を受信し、出力する(S811)。
【0043】
一方、バス停Sの基地局3は、ユーザ端末4及び車両端末5と随時通信することにより、ユーザUの位置情報及びバスBの位置情報を正確に算出する(S821)。そして、バスBの位置情報に基づいてバスBがバス停Sに停車中か否かを判定し、かつ、ユーザUの位置情報に基づいてユーザUがバス停Sにいるか否かを判定する(S822)。詳細には、例えば、ユーザ端末4及び車両端末5が基地局3から所定方向の所定距離内にあり、かつ、それらの位置が所定時間変化しないか否かを判定する。
【0044】
バスBが停車中かつユーザUがバス停Sにいれば(S822のY)、基地局3は、ユーザ端末4が希望の路線ID及び目的地IDを送信する(S823)のを受け、また、車両端末5が車両の路線ID及び目的地IDを送信する(S824)のを受け、それらのデータを受信する(S825)。そして、当該車両端末5の搭載されたバスBがユーザUの希望条件に合うか否かを判定する(S826)。詳細には、車両路線IDが希望路線IDと一致し、かつ、車両目的地IDが希望目的地IDと一致するか、希望目的地IDより先にあるか否かを判定する。
【0045】
当該バスBが希望条件に合えば(S826のY)、基地局3は、ユーザUの位置情報及びバスBの位置情報に基づいて、目的のバスBが到着した旨を示すとともに、バスBの乗車口に到達するためにユーザUが進むべき方向及び距離、バス停IDを含む乗車誘導情報を作成し、ユーザ端末4に送信する(S827)。ユーザ端末4は、基地局3から乗車誘導情報を受信し、ユーザUに向けて出力する(S828)。例えば、「○○行きのバスが到着しました。」、「こちらのバスにお乗りください。」等のメッセージを音声案内や電子点字でユーザUに知らせる。これによれば、ユーザUは、ユーザ端末4から出力される乗車誘導情報を認識し、その示す方向及び距離に従って進むことによって、バスBの乗車口に到達することができる。そして、乗車誘導情報に含まれるバス停IDを、記憶部45のユーザ情報46内の乗車バス停ID463に記憶する(S829)。これによれば、後になっても、ユーザUがバスBに乗車したバス停を特定できるので、料金計算が可能になる。
【0046】
なお、バスBがバス停Sに停車中でない若しくはユーザUがバス停Sにいない場合(S822のN)又はバスBがユーザUの希望条件に合わない場合(S826のN)には、基地局3は、ユーザU及びバスBの位置情報の算出を行う(S821)。
【0047】
図9は、バスBの車内においてユーザUに情報を提供する処理を示すフローチャートである。まず、ユーザUが携帯するユーザ端末4は、記憶部45のユーザ情報46内の料金情報466等からユーザUの乗車料金を計算し、出力する(S901)。乗車料金の計算では、料金情報466のうち、希望路線ID464の料金テーブルを参照し、乗車バス停ID463から希望目的地ID465までの料金を特定する。そして、例えば、「料金は、○○円です。」等のメッセージを音声案内や電子点字でユーザUに知らせる。
【0048】
バス停Sの基地局3は、車両端末5の位置情報を測定することにより、車両端末5の搭載されたバスBの位置情報を正確に算出する(S902)。そして、バスBの位置情報に基づいてバスBがバス停Sから所定の距離内にあるか否かを判定することにより、当該バスBがバス停Sを通過中又はバス停Sに停車中か否かを判定する(S903)。バスBが通過中か、停車中であれば(S903のY)、基地局3は、記憶部35の基地局情報36内のバス停ID362をユーザ端末4に送信する(S904)。バスBの車内にあるユーザ端末4は、バス停Sの基地局3からバス停IDを受信し、運行区間としてバス停IDのバス停S付近をバスBが走行中であることを出力する(S905)。例えば、「現在、○○に到着したところです。」等のメッセージを音声案内や電子点字でユーザUに知らせる。これによれば、ユーザUは、視覚障害者等であっても、バスBの運行区間を正確に知ることができる。なお、バスBが通過中でもないし、停車中でもなければ(S903のN)、バスBの位置情報の算出を再度行う(S902)。
【0049】
バスBに搭載された車両端末5は、GPSにより検知された当該車両端末5の位置情報を乗車中のユーザUが携帯するユーザ端末4に送信する(S906)。ユーザ端末4は、車両端末5から位置情報を受信し、バスBの運行区間として出力する(S907)。例えば、「現在、○○〜△△を運行中です。」等のメッセージを音声案内や電子点字でユーザUに知らせる。なお、当該車両端末5の位置情報は、ユーザ端末4又は車両端末5において地図情報に基づいてバスBの運行区間(例えば、最寄のバス停、バス停A及びバス停Bの間等)に変換されるものとする。これによれば、基地局3が設置されたバス停Sがない箇所をバスBが走行中であっても、おおよその運行区間を特定し、ユーザUに通知することができる。
【0050】
図10は、ユーザUがバスBから降車するのを支援する処理を示すフローチャートである。バス停Sの基地局3は、ユーザ端末4及び車両端末5と随時通信することにより、ユーザUの位置情報及びバスBの位置情報を正確に算出する(S1001)。そして、バスBの位置情報に基づいて、バスBがバス停Sに停車中か否かを判定する(S1002)。これは、例えば、車両端末5が基地局3から所定方向の所定距離内にあり、かつ、車両端末5の位置が所定時間変化しないか否かを判定する。
【0051】
バスBが停車中であれば(S1002のY)、ユーザ端末4が希望の目的地IDを送信する(S1003)のに対応して、希望の目的地IDを受信する(S1004)。そして、当該基地局3の設置されたバス停Sのバス停ID(基地局情報36内のバス停ID362)が希望目的地IDと一致するか否かを判定する(S1005)。
【0052】
バス停IDが一致すれば(S1005のY)、バスBの位置情報に基づいて、目的のバス停Sに到着した旨を示すとともに、バスBの降車口からバス停S又はその付近の歩道(停車場の所定位置)に到達するためにユーザUが進むべき方向及び距離を含む降車誘導情報を作成し、ユーザ端末4に送信する(S1006)。この場合、上記判断に加えてさらに、ユーザ端末4の位置情報に基づいてユーザUがバスBの車内にいると判断したときに、降車誘導情報を作成し、ユーザ端末4に送信するようにしてもよい。ユーザ端末4は、基地局3から降車誘導情報を受信し、ユーザUに向けて出力する(S1007)。例えば、「バス停はこちらです。」等のメッセージを音声案内や電子点字でユーザUに知らせる。なお、降車誘導情報は、車内の移動を支援するためにバスBの降車口の位置(前、中間、後ろ)を含むものとする。以上によれば、ユーザUは、視覚障害者等であっても、バスBの車内を降車口まで移動し、降車してから安全な場所まで誘導されるので、安心である。
【0053】
以上本発明の実施の形態について説明したが、図1に示すサーバ、各基地局や各端末を機能させるために、処理部で実行されるプログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録し、その記録したプログラムをコンピュータに読み込ませ、実行させることにより、本発明の実施の形態に係る車両乗降支援システム1が実現されるものとする。なお、プログラムをインターネット等のネットワーク経由でコンピュータに提供してもよいし、プログラムが書き込まれた半導体チップ等をコンピュータに組み込んでもよい。
【0054】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、視覚障害者等が車両を利用するにあたり、乗車前、乗車時、移動中、降車時における困難さや煩雑さを軽減できる。特に、比較的狭いエリア内に複数のバス停が設置され、多くのバスが停車するバスターミナルでは、有効なシステムである。そして、安全確実な輸送システムを提供することにより、バリアフリー社会の実現や障害者等による積極的な社会活動を促進することが可能となる。さらに、観光客、外国人等、その土地に不案内な人たちの道案内や観光案内に応用することが可能である。
【0055】
≪その他の実施の形態≫
以上、本発明を実施するための最良の形態について説明したが、上記実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。例えば、以下のような実施の形態が考えられる。
【0056】
(1)隣接するバス停S間をバスBが走行している場合、車両端末5にGPS機能がなければ、バスBの車両端末5は正確な位置が分からない。そこで、基地局3を電柱(例えば、車道沿いの約50m間隔に設置されている)に設けて、バスBが電柱の基地局3の付近を通過した時に、車両端末5がその基地局3の絶対位置や路線上の位置(バス停Sの区間等)を逐次取得し、自らの位置を把握するようにしてもよい。
【0057】
(2)図7のバス停誘導要求(S702)や図8の乗車誘導要求(S802)のように、ユーザ端末4が明示的に誘導を要求しなくても、基地局3がユーザ端末4との距離に応じてバス停誘導が必要なのか、乗車誘導が必要(バス待ち)なのかを判断し、その判断結果に即した誘導情報をユーザ端末4に送信するようにしてもよい。
【0058】
(3)同じバス停Sに2台以上のバスBが停車することがある。この場合、目的のバスBを特定するために、ユーザUが2台のユーザ端末4を携帯する(例えば、ユーザUの両肩に設ける)ことにより、ユーザUの向きを精度よく把握し、高精度な乗車誘導情報を作成し、目的のバスBの乗車口まで誘導するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 車両乗降支援システム
2 基地局サーバ
3 基地局
34 処理部
35 記憶部
362 バス停ID(停車場識別情報)
364 路線情報(停車車両条件)
4 ユーザ端末
42 出力部
44 処理部
45 記憶部
464 希望路線ID(希望条件)
465 希望目的地ID(希望条件、希望目的地識別情報)
5 車両端末
52 出力部
54 処理部
55 記憶部
563 車両路線ID(車両条件)
564 車両目的地ID(車両条件)
B バス(車両)
S バス停(停車場)
U ユーザ(利用客)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両利用客の乗降支援システムに関し、特に車両運行状態の把握が困難な利用客に対するものに関する。
【背景技術】
【0002】
バス等の公共交通機関(以下、簡単に「バス」という)の運行位置、バスの停留所(以下、簡単に「バス停」という)にいる利用客の有無を把握する監視システムにつき、例えば以下の従来技術がある。
【0003】
特許文献1に記載のバス運行システムでは、各バス停に待ち客がいるか否かをバス停毎に設置された監視カメラ等が検知し、その結果を遠隔の監視所に送信する。監視所では、検知結果を受信し、バス停毎の待ち客の有無を判断し、待ち客がいるバス停で停車する指示を走行中のバスに無線送信する。
【0004】
特許文献2に記載の移動体位置確認システムでは、予め定められた複数のバス停を移動するバスが、その現在位置を表す移動体位置データをGPS(Global Positioning System)衛星からの信号を基に算出する。さらにバスの扉が開いていることが検出されたときにバスが到着したとして運行監視装置に到着信号を送信する。
【0005】
特許文献3に記載の運行バスの位置監視システムでは、運行バスの全路線に設けられる複数のバス停の緯度及び経度を予め決定し、この緯度及び経度を運行バスの車載サーバで記憶すると共に、運行バスが複数のバス停の所定エリア内に入ったことにより、この運行バスに搭載する測位システムによる実測位置データをバス停到着位置情報として運行バス管理センタへ自動的に送信し、運行バス管理センタは、運行バスからのバス停到着位置情報を受けて、その時の運行バスの位置を監視する。
【0006】
特許文献4に記載の位置標定システムは、複数の無線マーカを利用して方向、距離、位置又はこれらの組合せの標定を行うシステムであり、第1の無線マーカのサービスエリアから第2の無線マーカのサービスエリアへのハンドオーバを制御する。この位置標定システムでは、携帯端末が第1のマーカのサービスエリア内のどの位置に居るかが正確に標定できることから、第1のマーカのサービスエリアから逸脱することが判明した時点で、即座に、第2のマーカのサービスエリアを選択し、当該選択した第2のマーカを利用して位置の標定を継続して行うことができるため、ハンドオーバの制御が簡単であり、ハンドオーバに要する時間を短縮することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−63697号公報
【特許文献2】特開2003−233891号公報
【特許文献3】特開2003−44986号公報
【特許文献4】特開2008−199589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、特許文献1ないし3は、いずれもバスの運行又は管理をする側の視点からみた技術である。すなわち、バスがバス停へ到着したか否か、バス停に待ち客がいるか否かを検知することにより、バスの円滑な運行を行うことを主眼とする。従って、利用客がバス停に到着するまでの案内、バス乗降のタイミング、利用客の希望目的地等は考慮されていない。
【0009】
しかし、バスの利用客の視点から見ると、例えば利用客が視覚障害者や高齢者等(以下、「視覚障害者等」という)であれば、バスの利用全般に亘って健常者と比べて不便を来たすことがある。具体的には、バス停が比較的狭い範囲に点在しているバスターミナルからバスを利用する場合や、一つのバス停に複数の路線系統のバスが停車する場合に、視覚障害者等が的確に目的地を通るバスやバス停を見つけること、バスの乗降の際に必要な細かい位置状態(例えば段差等)を把握すること、バス乗車中にも現在の走行情報や降車タイミングを把握することのそれぞれに困難を生じる。
【0010】
これらの困難性に対して、従来技術では解決することはできない。それは、位置情報の取得にGPS衛星や定点監視カメラを使用するため、視覚障害者等の乗降支援に必要な精細な位置情報や行動を把握することができないからである。また、従来技術は、そもそも視覚障害者等の乗車前から降車時までのプロセスを把握することを目的としていない。
【0011】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、客による車両の乗降を支援することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、車両乗降支援システムであって、車両の利用客に携帯されるユーザ端末と、前記車両に搭載される車両端末と、前記車両が停車する停車場に設置され、前記ユーザ端末の位置及び前記車両端末の位置を測定する高精度位置測定機能を有する情報処理装置である基地局と、を備え、前記基地局が、前記ユーザ端末の位置に基づいて、前記利用客が前記停車場にいないと判断した場合に、前記停車場に到達するために前記利用客が進むべき方向及び距離を含む停車場誘導情報を作成し、前記ユーザ端末に送信し、前記ユーザ端末が、前記基地局から前記停車場誘導情報を受信し、前記利用客に出力することを特徴とする。
この構成によれば、基地局は、ユーザ端末の位置を正確に測定できるので、正確な停車場誘導情報を作成することができる。これによれば、利用者を停車場に確実に誘導することができる。
【0013】
また、本発明は、車両乗降支援システムであって、前記ユーザ端末が、当該利用者の車両の運行に関する希望条件を記憶し、前記基地局が、当該停車場に停車する車両の運行に関する停車車両条件を記憶し、前記ユーザ端末が、前記希望条件を前記基地局に送信し、前記基地局が、前記ユーザ端末から前記希望条件を受信し、前記停車車両条件が前記希望条件を満たすときに、前記バス停誘導情報を作成し、前記ユーザ端末に送信することを特徴とする。
この構成によれば、停車場によって停車する車両の路線や行き先等が異なるが、希望条件と、停車車両条件とを比較、照合することにより、利用客の希望に該当する停車場だけからバス停誘導情報を送信することができる。
【0014】
また、本発明は、車両乗降支援システムであって、前記ユーザ端末が、各情報を前記利用客に出力する手段として、音声出力装置又は電子点字表示装置を備えることを特徴とする。
この構成によれば、利用客が視覚障害者や高齢者等であっても各情報を認識できるので、視覚障害者や高齢者等を含めて円滑な車両の乗降を行うことができる。
【0015】
その他、本願が開示する課題及びその解決方法は、発明を実施するための最良の形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、客による車両の乗降を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】車両乗降支援システム1の構成を示す図である。
【図2】基地局サーバ2のハードウェア構成を示す図である。
【図3】基地局3のハードウェア構成を示す図である。
【図4】ユーザ端末4のハードウェア構成を示す図である。
【図5】車両端末5のハードウェア構成を示す図である。
【図6】基地局3、ユーザ端末4及び車両端末5の各記憶部に記憶されるデータの構成を示す図であり、(a)は基地局3の記憶部35に記憶される基地局情報36の構成を示し、(b)はユーザ端末4の記憶部45に記憶されるユーザ情報46の構成を示し、(c)は車両端末5の記憶部55に記憶される車両情報56の構成を示す。
【図7】ユーザUをバス停Sまで誘導する処理を示すフローチャートである。
【図8】バス停SにいるユーザUのバス乗車を支援する処理を示すフローチャートである。
【図9】バスBの車内においてユーザUに情報を提供する処理を示すフローチャートである。
【図10】ユーザUがバスBから降車するのを支援する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態を説明する。本発明の実施の形態に係る車両乗降支援システムは、停車場に設置された基地局と、車両の利用客に携帯されたユーザ端末及び車両に搭載された車両端末とが相互に無線通信し、基地局が高精度位置測定機能を用いてユーザ端末の位置及び車両端末の位置を特定することによって、視覚障害者等を含む利用客の乗降支援を確実に実施するものである。なお、高精度位置測定機能を実現するために、特許文献4に記載の位置標定システムを適用する。
【0019】
≪システムの構成と概要≫
図1は、車両乗降支援システム1の構成を示す図である。車両乗降支援システム1は、基地局サーバ2、基地局3、ユーザ端末4及び車両端末5を備える。基地局サーバ2は、バスの路線やバス停に関する情報を管理し、適宜提供するサーバ用コンピュータであり、バス会社の管理センタ等に設置される。基地局3は、ユーザ端末4や車両端末5と無線通信する通信基地局を備えることにより、バスBの利用客であるユーザUの乗降支援を行う情報処理装置であり、バス停Sに固定的に設置される。基地局サーバ2と、各基地局3とは、ネットワーク6を介して通信可能である。なお、車両乗降支援に関する情報処理は、基地局サーバ2で行ってもよいし、基地局3で行ってもよい。
【0020】
ユーザ端末4は、ユーザU(利用客)が携帯する携帯端末(例えば、携帯電話等)であり、視覚障害者等、通常はバスの乗降に不自由する人(ユーザU)が利用することより、ユーザUの円滑なバス乗降を支援する。車両端末5は、バスBの運転席に搭載され、運転手が利用する携帯端末であり、適宜ユーザUに関する情報を出力する。ユーザ端末4と、車両端末5とは、原則として基地局3を介して通信し、基地局3は、ユーザ端末4及び車両端末5の高精度な位置情報を取得するが、それを実現する位置標定システムの詳細については特許文献4を参照のこと。
【0021】
≪装置の構成≫
図2は、基地局サーバ2のハードウェア構成を示す図である。基地局サーバ2は、通信部21、表示部22、入力部23、処理部24及び記憶部25を備える。通信部21は、ネットワーク6を介して基地局3とIP(Internet Protocol)通信を行う部分であり、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。表示部22は、処理部24からの指示によりデータを表示する部分であり、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等によって実現される。入力部23は、管理者がデータ(例えば、バス路線やバス停に関する情報)を入力する部分であり、例えば、キーボードやマウス等によって実現される。処理部24は、各部間のデータの受け渡しを行うととともに、基地局サーバ2全体の制御を行うものであり、CPU(Central Processing Unit)が所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部25は、処理部24からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりするものであり、例えば、フラッシュメモリやハードディスク装置等の不揮発性記憶装置によって実現される。
【0022】
図3は、基地局3のハードウェア構成を示す図である。基地局3は、通信部31、表示部32、入力部33、処理部34及び記憶部35を備える。通信部31は、ネットワークを介して基地局サーバ2や携帯端末(ユーザ端末4、車両端末5)とIP通信を行う部分であり、例えば、NIC等によって実現される。表示部32は、処理部34からの指示によりデータを表示する部分であり、例えば、液晶ディスプレイ等によって実現される。入力部33は、管理者がデータ(例えば、路線やバス停に関する情報)を入力する部分であり、例えば、キーボードやマウス等によって実現される。処理部34は、各部間のデータの受け渡しを行うととともに、基地局3全体の制御を行うものであり、CPUが所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部35は、処理部34からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりするものであり、例えば、フラッシュメモリやハードディスク装置等の不揮発性記憶装置によって実現される。
【0023】
図4は、ユーザ端末4のハードウェア構成を示す図である。ユーザ端末4は、通信部41、出力部42、入力部43、処理部44及び記憶部45を備える。通信部41は、主として基地局3と無線通信を行う部分であり、例えば、NIC等によって実現される。出力部42は、処理部44からの指示によりデータを出力する部分であり、例えば、液晶ディスプレイ等によって実現される。入力部43は、ユーザUがデータ(例えば、希望の路線や目的地のバス停に関する情報)を入力する部分であり、例えば、操作ボタン等によって実現される。処理部44は、各部間のデータの受け渡しを行うととともに、ユーザ端末4全体の制御を行うものであり、CPUが所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部45は、処理部44からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりするものであり、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置によって実現される。
【0024】
なお、入力部43は、バス停誘導要求ボタン431及び乗車誘導要求ボタン432を備えていてもよい。バス停誘導要求ボタン431は、ユーザUがバス停Sまでの誘導情報を取得したいときに押すボタンである。乗車誘導要求ボタン432は、ユーザUがバス停SからバスBに乗車するまでの誘導情報を取得したいときに押すボタンである。
【0025】
図5は、車両端末5のハードウェア構成を示す図である。車両端末5は、通信部51、出力部52、入力部53、処理部54及び記憶部55を備える。通信部51は、主として基地局3と無線通信を行う部分であり、例えば、NIC等によって実現される。出力部52は、処理部54からの指示によりデータを出力する部分であり、例えば、液晶ディスプレイ等によって実現される。入力部53は、バスBの運転手がデータ(例えば、バスBの路線や目的地のバス停に関する情報)を入力する部分であり、例えば、操作ボタン等によって実現される。処理部54は、各部間のデータの受け渡しを行うととともに、車両端末5全体の制御を行うものであり、CPUが所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部55は、処理部54からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりするものであり、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置によって実現される。
【0026】
なお、入力部53は、路線選択ボタン531、接近通告ボタン532及び到着通告ボタン533を備えていてもよい。路線選択ボタン531は、運転手がバスBを発進する前にこれから走行する予定の路線を選択するときに押すボタンである。接近通告ボタン532は、バスBの運転手がバス停Sへの接近を通告したいときに押すボタンである。到着通告ボタン533は、バスBの運転手がバス停Sへの到着を通告したいときに押すボタンである。
【0027】
≪データの構成≫
図6は、基地局3、ユーザ端末4及び車両端末5の各記憶部に記憶されるデータの構成を示す図である。
【0028】
図6(a)は、基地局3の記憶部35に記憶される基地局情報36の構成を示す。基地局情報36は、基地局3や基地局3が設置されているバス停Sに関する情報であり、基地局ID361、バス停ID362、基地局位置363、路線情報364、希望路線ID365及びユーザ端末ID366を含む。基地局ID361は、基地局3に固有の情報であり、例えば、基地局サーバ2や携帯端末との通信において基地局3を特定するIPアドレスが設定される。バス停ID362は、基地局3が設置されているバス停Sに固有の情報であり、ユーザUの希望目的地やバスBの現在地や目的地を特定する場合にも用いられる。基地局位置363は、基地局3の絶対位置であり、予めGPS等により測定された位置が固定的に設定される。路線情報364は、基地局3が設置されているバス停Sに停車するバスBの運行に関する停車車両条件として、当該バスBの路線に関する情報であり、路線に固有の情報である路線IDごとに、バスBの通る順番にバス停IDが設定される。
【0029】
希望路線ID365及びユーザ端末ID366は、相互に対応付けられたオプション情報であり、基地局3が車両端末5からバス接近情報及びバス到着情報を受信した場合に、受信した情報を当該路線希望のユーザUのユーザ端末4だけに送信するために用いられる。希望路線ID365は、基地局3がユーザ端末4から受信した希望路線IDであり、1の基地局情報36に複数設定されていてもよい。ユーザ端末ID366は、当該希望路線ID365を送信したユーザ端末4のIDであり、1の希望路線ID365に対応して複数設定されていてもよい。
【0030】
図6(b)は、ユーザ端末4の記憶部45に記憶されるユーザ情報46の構成を示す。ユーザ情報46は、ユーザ端末4やユーザ端末4を携帯するユーザUに関する情報であり、ユーザ端末ID461、ユーザ端末位置462、乗車バス停ID463、希望路線ID464、希望目的地ID465及び料金情報466を含む。ユーザ端末ID461は、ユーザ端末4に固有の情報であり、例えば、基地局3等との通信においてユーザ端末4を特定するIPアドレスが設定される。ユーザ端末位置462は、ユーザ端末4の絶対位置であり、基地局3の絶対位置及び基地局3からの相対位置によって求められ、随時更新される。乗車バス停ID463は、ユーザUがバスBに乗車した際のバス停SのIDであり、ユーザ端末4が基地局3から乗車誘導情報を受信したときに、その乗車誘導情報に含まれるバス停IDが設定される。
【0031】
希望路線ID464は、ユーザUが希望するバス路線のIDである。希望目的地ID465は、ユーザUが希望する目的地のバス停IDである。希望路線ID464及び希望目的地ID465は、バスBの運行に関するユーザUの希望条件であり、予めユーザUによってユーザ端末4の記憶部45に設定され、ユーザ端末4から基地局3に送信されるバス停誘導要求や乗車誘導要求のデータに設定される。料金情報466は、バスBの乗車料金を示す情報であり、例えば、乗るバス停IDの行及び降りるバス停IDの列からなる行列になっていて、行及び列が交差する欄に乗るバス停から降りるバス停までの料金が設定されたテーブルである。
【0032】
図6(c)は、車両端末5の記憶部55に記憶される車両情報56の構成を示す。車両情報56は、車両端末5が搭載されたバスBに関する情報であり、車両端末ID561、車両端末位置562、車両路線ID563、車両目的地ID564、路線情報565及び料金情報566を含む。車両端末ID561は、車両端末5に固有の情報であり、例えば、基地局3等との通信において車両端末5を特定するIPアドレスが設定される。車両端末位置562は、車両端末5の絶対位置であり、基地局3の絶対位置及び基地局3からの相対位置によって求められ、随時更新されるが、GPSによる測定結果が設定されることもある。車両路線ID563は、バスBが走行する路線のIDである。車両目的地564は、バスBが向かう目的地のバス停IDである。車両路線ID563及び車両目的地ID564は、バスBの運行に関する車両条件であり、バスBが発進する前に運転手によって車両端末5の記憶部55に設定される。路線情報565は、バスBに係るバス路線に関する情報であり、路線IDごとに、バスBの通る順番にバス停IDが掲載されている。料金情報566は、バスBの乗車料金を示す情報であり、料金情報466と同様の形式である。
【0033】
≪システムの処理≫
続いて、車両乗降支援システム1の処理について説明する。本処理は、ユーザUがバス停Sに到着するまで、バス停SからバスBに乗車するまで、バスBに乗車している間、目的地に到着したバスBから降車するまでの各局面を支援する処理である。なお、各局面の支援処理では、一連の処理として情報を共有してもよいし、それぞれ独立した処理として情報を個別に管理してもよい。
【0034】
図7は、ユーザUをバス停Sまで誘導する処理を示すフローチャートである。まず、ユーザ端末4は、ユーザUによる入力部43への入力操作に対応して希望の路線ID及び目的地IDを取得し、記憶部45のユーザ情報46内の希望路線ID464及び希望目的地ID465に記憶する(S701)。そして、ユーザUによる入力部43の操作(例えば、バス停誘導要求ボタン431の押下)に対応して、ユーザUがバス停Sまでの誘導を要求するバス停誘導要求を基地局3に送信する(S702)。バス停誘導要求のデータには、記憶部45に記憶された希望路線ID464及び希望目的地ID465が含まれる。
【0035】
ユーザ端末4から最寄の基地局3は、ユーザ端末4からバス停誘導要求を受信する(S703)。そして、当該基地局3の設置されたバス停SがユーザUの希望条件に合うか否かを判定する(S704)。詳細には、記憶部35の基地局情報36内の路線情報364に、バス停誘導要求内の希望路線ID及び希望目的地IDが含まれるか否かを判定する。バス停Sが希望条件に合えば(S704のY)、基地局3は、ユーザ端末4との相対位置を計算し(S705)、ユーザ端末4を携帯するユーザUがバス停Sに到達するために進むべき方向及び距離を含むバス停誘導情報を作成する(S706)。この場合、ユーザ端末4の位置情報に基づいてユーザUがバス停Sにいないと判断したときに、バス停誘導情報を作成するようにしてもよい。
【0036】
バス停Sが希望条件に合わなければ(S704のN)、基地局3は、当該基地局3がユーザUの希望条件に合わない旨を示すエラー情報を作成する(S707)。この場合、基地局3は、基地局サーバ2に問い合わせて希望条件に合う他のバス停Sの位置情報を取得し、ユーザUが当該他のバス停Sに到達するために進むべき方向及び距離をエラー情報に設定するようにしてもよい。
【0037】
基地局3は、作成したバス停誘導情報又はエラー情報をユーザ端末4に送信する(S708)。それに対して、ユーザ端末4は、いずれかの情報を受信し(S709)、出力する(S710)。バス停誘導情報又はエラー情報の出力は、表示装置、音声出力装置、電子点字表示装置等によって行われる(以下、ユーザ端末4による情報出力について同様とする)。表示装置ではなく、音声出力装置や電子点字表示装置を用いることによって、ユーザUが視覚障害者等であってもバス停誘導情報を認識して、希望条件に合うバス停Sまで行き着くことができる。
【0038】
図8は、バス停SにいるユーザUのバス乗車を支援する処理を示すフローチャートである。まず、ユーザ端末4は、ユーザUによる入力部43への入力操作に対応して希望の路線ID及び目的地IDを取得し、記憶部45のユーザ情報46内の希望路線ID464及び希望目的地ID465に記憶する(S801)。そして、ユーザUによる入力部43の操作(例えば、乗車誘導要求ボタン432の押下)に対応して、ユーザUがバス乗車の誘導を要求する乗車誘導要求を基地局3に送信する(S802)。乗車誘導要求のデータには、記憶部45に記憶された希望路線ID464及び希望目的地ID465が含まれる。
【0039】
ユーザ端末4から所定距離内にある最寄の基地局3は、ユーザ端末4から乗車誘導要求を受信する(S803)。そして、その基地局3の設置されたバス停SがユーザUの希望条件に合うか否かを判定する(S804)。詳細には、記憶部35の基地局情報36内の路線情報364に、乗車誘導要求内の希望路線ID及び希望目的地IDが含まれるか否かを判定する。バス停Sが希望条件に合えば(S804のY)、基地局3は、記憶部35の基地局情報36内のバス停ID352及び希望条件(希望路線ID及び希望目的地ID)を含む利用客待ち情報を、車両端末5の位置情報に基づいて当該基地局3から所定距離内にあり、当該基地局3に接近しつつあると判断される車両端末5に送信する(S805)。この場合、上記判断に加えてさらにユーザ端末4の位置情報に基づいてユーザUがバス停Sにいると判断したときに、利用客待ち情報を車両端末5に送信するようにしてよい。
【0040】
車両端末5は、当該車両端末5から所定距離内にある基地局3(バスBが接近しつつあるバス停Sに設置された基地局3)から利用客待ち情報を受信する(S806)。そして、当該バスBが利用客待ち情報に含まれるバス停ID及び希望条件に合うか否かを判定する(S807)。詳細には、記憶部55の車両情報56内の車両路線ID563が、希望路線IDと一致し、かつ、車両目的地ID564が、希望目的地IDと一致するか、希望目的地IDより先にあるか否かを判定し、さらに路線情報565に基づいてバスBがバス停IDのバス停Sに停車する車両か否かを判定する。バスBが条件に合えば(S807のY)、利用客が最寄のバス停Sで待っている旨をバスBの運転手に向けて出力する(S808)。この出力は、表示装置や音声出力装置等によって行われる。バスBが条件に合わなければ(S807のN)、何も処理しない(S809)。
【0041】
これによれば、バスBの運転手は、接近しているバス停Sに待っている利用客が当該バスBに乗車するか否かが分かるので、必要な停車だけを行うことで、無駄な停車を減らすことができる。特に、ユーザUを視覚障害者等に限定すれば、運転手は視覚障害者等がバス停Sで待っていることを知ることができる。
【0042】
バス停Sが希望条件に合わなければ(S804のN)、基地局3は、当該基地局3がユーザUの希望条件に合わない旨を示すエラー情報を作成し、ユーザ端末4に送信する(S810)。この場合、基地局3は、基地局サーバ2に問い合わせて希望条件に合う他のバス停Sの位置情報を取得し、ユーザUが当該他のバス停Sに到達するために進むべき方向及び距離をエラー情報に設定するようにしてもよい。ユーザ端末4は、基地局3からエラー情報を受信し、出力する(S811)。
【0043】
一方、バス停Sの基地局3は、ユーザ端末4及び車両端末5と随時通信することにより、ユーザUの位置情報及びバスBの位置情報を正確に算出する(S821)。そして、バスBの位置情報に基づいてバスBがバス停Sに停車中か否かを判定し、かつ、ユーザUの位置情報に基づいてユーザUがバス停Sにいるか否かを判定する(S822)。詳細には、例えば、ユーザ端末4及び車両端末5が基地局3から所定方向の所定距離内にあり、かつ、それらの位置が所定時間変化しないか否かを判定する。
【0044】
バスBが停車中かつユーザUがバス停Sにいれば(S822のY)、基地局3は、ユーザ端末4が希望の路線ID及び目的地IDを送信する(S823)のを受け、また、車両端末5が車両の路線ID及び目的地IDを送信する(S824)のを受け、それらのデータを受信する(S825)。そして、当該車両端末5の搭載されたバスBがユーザUの希望条件に合うか否かを判定する(S826)。詳細には、車両路線IDが希望路線IDと一致し、かつ、車両目的地IDが希望目的地IDと一致するか、希望目的地IDより先にあるか否かを判定する。
【0045】
当該バスBが希望条件に合えば(S826のY)、基地局3は、ユーザUの位置情報及びバスBの位置情報に基づいて、目的のバスBが到着した旨を示すとともに、バスBの乗車口に到達するためにユーザUが進むべき方向及び距離、バス停IDを含む乗車誘導情報を作成し、ユーザ端末4に送信する(S827)。ユーザ端末4は、基地局3から乗車誘導情報を受信し、ユーザUに向けて出力する(S828)。例えば、「○○行きのバスが到着しました。」、「こちらのバスにお乗りください。」等のメッセージを音声案内や電子点字でユーザUに知らせる。これによれば、ユーザUは、ユーザ端末4から出力される乗車誘導情報を認識し、その示す方向及び距離に従って進むことによって、バスBの乗車口に到達することができる。そして、乗車誘導情報に含まれるバス停IDを、記憶部45のユーザ情報46内の乗車バス停ID463に記憶する(S829)。これによれば、後になっても、ユーザUがバスBに乗車したバス停を特定できるので、料金計算が可能になる。
【0046】
なお、バスBがバス停Sに停車中でない若しくはユーザUがバス停Sにいない場合(S822のN)又はバスBがユーザUの希望条件に合わない場合(S826のN)には、基地局3は、ユーザU及びバスBの位置情報の算出を行う(S821)。
【0047】
図9は、バスBの車内においてユーザUに情報を提供する処理を示すフローチャートである。まず、ユーザUが携帯するユーザ端末4は、記憶部45のユーザ情報46内の料金情報466等からユーザUの乗車料金を計算し、出力する(S901)。乗車料金の計算では、料金情報466のうち、希望路線ID464の料金テーブルを参照し、乗車バス停ID463から希望目的地ID465までの料金を特定する。そして、例えば、「料金は、○○円です。」等のメッセージを音声案内や電子点字でユーザUに知らせる。
【0048】
バス停Sの基地局3は、車両端末5の位置情報を測定することにより、車両端末5の搭載されたバスBの位置情報を正確に算出する(S902)。そして、バスBの位置情報に基づいてバスBがバス停Sから所定の距離内にあるか否かを判定することにより、当該バスBがバス停Sを通過中又はバス停Sに停車中か否かを判定する(S903)。バスBが通過中か、停車中であれば(S903のY)、基地局3は、記憶部35の基地局情報36内のバス停ID362をユーザ端末4に送信する(S904)。バスBの車内にあるユーザ端末4は、バス停Sの基地局3からバス停IDを受信し、運行区間としてバス停IDのバス停S付近をバスBが走行中であることを出力する(S905)。例えば、「現在、○○に到着したところです。」等のメッセージを音声案内や電子点字でユーザUに知らせる。これによれば、ユーザUは、視覚障害者等であっても、バスBの運行区間を正確に知ることができる。なお、バスBが通過中でもないし、停車中でもなければ(S903のN)、バスBの位置情報の算出を再度行う(S902)。
【0049】
バスBに搭載された車両端末5は、GPSにより検知された当該車両端末5の位置情報を乗車中のユーザUが携帯するユーザ端末4に送信する(S906)。ユーザ端末4は、車両端末5から位置情報を受信し、バスBの運行区間として出力する(S907)。例えば、「現在、○○〜△△を運行中です。」等のメッセージを音声案内や電子点字でユーザUに知らせる。なお、当該車両端末5の位置情報は、ユーザ端末4又は車両端末5において地図情報に基づいてバスBの運行区間(例えば、最寄のバス停、バス停A及びバス停Bの間等)に変換されるものとする。これによれば、基地局3が設置されたバス停Sがない箇所をバスBが走行中であっても、おおよその運行区間を特定し、ユーザUに通知することができる。
【0050】
図10は、ユーザUがバスBから降車するのを支援する処理を示すフローチャートである。バス停Sの基地局3は、ユーザ端末4及び車両端末5と随時通信することにより、ユーザUの位置情報及びバスBの位置情報を正確に算出する(S1001)。そして、バスBの位置情報に基づいて、バスBがバス停Sに停車中か否かを判定する(S1002)。これは、例えば、車両端末5が基地局3から所定方向の所定距離内にあり、かつ、車両端末5の位置が所定時間変化しないか否かを判定する。
【0051】
バスBが停車中であれば(S1002のY)、ユーザ端末4が希望の目的地IDを送信する(S1003)のに対応して、希望の目的地IDを受信する(S1004)。そして、当該基地局3の設置されたバス停Sのバス停ID(基地局情報36内のバス停ID362)が希望目的地IDと一致するか否かを判定する(S1005)。
【0052】
バス停IDが一致すれば(S1005のY)、バスBの位置情報に基づいて、目的のバス停Sに到着した旨を示すとともに、バスBの降車口からバス停S又はその付近の歩道(停車場の所定位置)に到達するためにユーザUが進むべき方向及び距離を含む降車誘導情報を作成し、ユーザ端末4に送信する(S1006)。この場合、上記判断に加えてさらに、ユーザ端末4の位置情報に基づいてユーザUがバスBの車内にいると判断したときに、降車誘導情報を作成し、ユーザ端末4に送信するようにしてもよい。ユーザ端末4は、基地局3から降車誘導情報を受信し、ユーザUに向けて出力する(S1007)。例えば、「バス停はこちらです。」等のメッセージを音声案内や電子点字でユーザUに知らせる。なお、降車誘導情報は、車内の移動を支援するためにバスBの降車口の位置(前、中間、後ろ)を含むものとする。以上によれば、ユーザUは、視覚障害者等であっても、バスBの車内を降車口まで移動し、降車してから安全な場所まで誘導されるので、安心である。
【0053】
以上本発明の実施の形態について説明したが、図1に示すサーバ、各基地局や各端末を機能させるために、処理部で実行されるプログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録し、その記録したプログラムをコンピュータに読み込ませ、実行させることにより、本発明の実施の形態に係る車両乗降支援システム1が実現されるものとする。なお、プログラムをインターネット等のネットワーク経由でコンピュータに提供してもよいし、プログラムが書き込まれた半導体チップ等をコンピュータに組み込んでもよい。
【0054】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、視覚障害者等が車両を利用するにあたり、乗車前、乗車時、移動中、降車時における困難さや煩雑さを軽減できる。特に、比較的狭いエリア内に複数のバス停が設置され、多くのバスが停車するバスターミナルでは、有効なシステムである。そして、安全確実な輸送システムを提供することにより、バリアフリー社会の実現や障害者等による積極的な社会活動を促進することが可能となる。さらに、観光客、外国人等、その土地に不案内な人たちの道案内や観光案内に応用することが可能である。
【0055】
≪その他の実施の形態≫
以上、本発明を実施するための最良の形態について説明したが、上記実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。例えば、以下のような実施の形態が考えられる。
【0056】
(1)隣接するバス停S間をバスBが走行している場合、車両端末5にGPS機能がなければ、バスBの車両端末5は正確な位置が分からない。そこで、基地局3を電柱(例えば、車道沿いの約50m間隔に設置されている)に設けて、バスBが電柱の基地局3の付近を通過した時に、車両端末5がその基地局3の絶対位置や路線上の位置(バス停Sの区間等)を逐次取得し、自らの位置を把握するようにしてもよい。
【0057】
(2)図7のバス停誘導要求(S702)や図8の乗車誘導要求(S802)のように、ユーザ端末4が明示的に誘導を要求しなくても、基地局3がユーザ端末4との距離に応じてバス停誘導が必要なのか、乗車誘導が必要(バス待ち)なのかを判断し、その判断結果に即した誘導情報をユーザ端末4に送信するようにしてもよい。
【0058】
(3)同じバス停Sに2台以上のバスBが停車することがある。この場合、目的のバスBを特定するために、ユーザUが2台のユーザ端末4を携帯する(例えば、ユーザUの両肩に設ける)ことにより、ユーザUの向きを精度よく把握し、高精度な乗車誘導情報を作成し、目的のバスBの乗車口まで誘導するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 車両乗降支援システム
2 基地局サーバ
3 基地局
34 処理部
35 記憶部
362 バス停ID(停車場識別情報)
364 路線情報(停車車両条件)
4 ユーザ端末
42 出力部
44 処理部
45 記憶部
464 希望路線ID(希望条件)
465 希望目的地ID(希望条件、希望目的地識別情報)
5 車両端末
52 出力部
54 処理部
55 記憶部
563 車両路線ID(車両条件)
564 車両目的地ID(車両条件)
B バス(車両)
S バス停(停車場)
U ユーザ(利用客)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の利用客に携帯されるユーザ端末と、
前記車両に搭載される車両端末と、
前記車両が停車する停車場に設置され、前記ユーザ端末の位置及び前記車両端末の位置を測定する高精度位置測定機能を有する情報処理装置である基地局と、
を備え、
前記基地局は、
前記ユーザ端末の位置に基づいて、前記利用客が前記停車場にいないと判断した場合に、前記停車場に到達するために前記利用客が進むべき方向及び距離を含む停車場誘導情報を作成し、前記ユーザ端末に送信し、
前記ユーザ端末は、前記基地局から前記停車場誘導情報を受信し、前記利用客に出力する
ことを特徴とする車両乗降支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両乗降支援システムであって、
前記ユーザ端末は、当該利用者の車両の運行に関する希望条件を記憶し、
前記基地局は、当該停車場に停車する車両の運行に関する停車車両条件を記憶し、
前記ユーザ端末は、前記希望条件を前記基地局に送信し、
前記基地局は、前記ユーザ端末から前記希望条件を受信し、前記停車車両条件が前記希望条件を満たすときに、前記バス停誘導情報を作成し、前記ユーザ端末に送信する
ことを特徴とする車両乗降支援システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両乗降支援システムであって、
前記ユーザ端末は、各情報を前記利用客に出力する手段として、音声出力装置又は電子点字表示装置を備える
ことを特徴とする車両乗降支援システム。
【請求項1】
車両の利用客に携帯されるユーザ端末と、
前記車両に搭載される車両端末と、
前記車両が停車する停車場に設置され、前記ユーザ端末の位置及び前記車両端末の位置を測定する高精度位置測定機能を有する情報処理装置である基地局と、
を備え、
前記基地局は、
前記ユーザ端末の位置に基づいて、前記利用客が前記停車場にいないと判断した場合に、前記停車場に到達するために前記利用客が進むべき方向及び距離を含む停車場誘導情報を作成し、前記ユーザ端末に送信し、
前記ユーザ端末は、前記基地局から前記停車場誘導情報を受信し、前記利用客に出力する
ことを特徴とする車両乗降支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両乗降支援システムであって、
前記ユーザ端末は、当該利用者の車両の運行に関する希望条件を記憶し、
前記基地局は、当該停車場に停車する車両の運行に関する停車車両条件を記憶し、
前記ユーザ端末は、前記希望条件を前記基地局に送信し、
前記基地局は、前記ユーザ端末から前記希望条件を受信し、前記停車車両条件が前記希望条件を満たすときに、前記バス停誘導情報を作成し、前記ユーザ端末に送信する
ことを特徴とする車両乗降支援システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両乗降支援システムであって、
前記ユーザ端末は、各情報を前記利用客に出力する手段として、音声出力装置又は電子点字表示装置を備える
ことを特徴とする車両乗降支援システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−14730(P2012−14730A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207285(P2011−207285)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【分割の表示】特願2009−15833(P2009−15833)の分割
【原出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【分割の表示】特願2009−15833(P2009−15833)の分割
【原出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
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