説明

車両制御装置およびそれを備えた車両

【課題】携帯機を使用できない非常時に、車両を使用可能な状態にする暗証番号の入力作業を簡素化することが可能な車両制御装置を提供する。
【解決手段】スマートキー50を用いた通信システムにより自動二輪車の使用許可認証を行う車両制御装置70であって、非常時に、スマートキー50を用いることなく自動二輪車1の使用許可認証を行うための暗証番号を入力する際に点滅するシステム表示部10と、システム表示部10が点滅する回数により、暗証番号を入力するハザードスイッチ6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両制御装置およびそれを備えた車両に関し、特に、車両の使用許可認証用の携帯機に対して信号を送受信可能な車両制御装置およびそれを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の使用許可認証用の送信機(携帯機)に対して信号を送受信可能な車両用盗難防止装置(車両制御装置)が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示された車両用盗難防止装置では、送信機のバッテリーが放電したり、送信機自体が故障したりする場合などに、送信機を用いずに警戒状態(車両電源OFFの状態)を解除する方法が開示されている。この警戒状態を解除するための方法としては、車両に既に設けられている所定の第1スイッチおよび第2スイッチの接点の断続信号により4桁の暗証番号を入力する。具体的には、第1スイッチを入力することにより暗証番号の入力開始点と桁の区切り点との入力が行われ、第2スイッチを入力する回数により各桁の数値の入力が行われることにより、4桁の暗証番号が入力される。そして、これを車両用盗難防止装置に予め記録されている正規コードと比較し、その結果が一致する場合に、警戒状態を解除してエンジンの始動が可能になるように構成されている。
【特許文献1】特開平10−176445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1では、暗証番号を入力する際には、第1スイッチを入力した後に第2スイッチを暗証番号の数字に対応した所定の回数入力するという1桁分の動作を4回(4桁分)繰り返す必要があるため、暗証番号の入力作業が煩雑であるという問題点がある。
【0004】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、携帯機を使用できない非常時に、車両を使用可能な状態にする暗証番号の入力作業を簡素化することが可能な車両制御装置およびそれを備えた車両を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0005】
この発明の第1の局面による車両制御装置は、携帯機を用いた通信システムにより車両の使用許可認証を行う車両制御装置であって、非常時に、携帯機を用いることなく車両の使用許可認証を行うための暗証番号を入力する際に点滅する表示部と、表示部が点滅する回数により、暗証番号を入力する暗証番号入力部とを備える。
【0006】
この第1の局面による車両制御装置では、上記のように、非常時に、携帯機を用いることなく車両の使用許可認証を行うための暗証番号を入力する際に、表示部が点滅する回数により、暗証番号を入力する暗証番号入力部を設けることによって、表示部が点滅する回数を数えるとともに、暗証番号に対応する所定の回数が点滅した際に、入力完了の指示を1回するだけで1桁分の入力が完了するため、スイッチを暗証番号の数字に対応する回数分入力する場合に比べて、入力する回数を減少させることができる。これにより、携帯機を使用できない非常時に、車両を使用可能な状態にする暗証番号の入力作業を簡素化することができる。
【0007】
上記第1の局面による車両制御装置において、好ましくは、暗証番号入力部は、第1スイッチを含み、暗証番号を入力する場合に、第1スイッチのオンおよびオフの操作により、暗証番号に対応する表示部の点滅回数を決定する。このように構成すれば、所定のスイッチにより、容易に、暗証番号に対応する表示部の点滅回数を決定することができる。
【0008】
上記所定のスイッチのオンおよびオフの操作により暗証番号に対応する表示部の点滅回数を決定する車両制御装置において、好ましくは、第1スイッチは、オンおよびオフのそれぞれの状態において操作力を解除しても、それぞれの状態を維持するように構成されている。このように構成すれば、点滅の間に第1スイッチから手を離すことができるので、暗証番号の入力作業をさらに簡素化することができる。
【0009】
上記第1の局面による車両制御装置において、好ましくは、表示部を一定の間隔で点滅させるための点滅制御部をさらに備える。このように構成すれば、点滅制御部により、表示部が一定の間隔で点滅されるので、使用者は、容易に、表示部の点滅回数を数えることができる。
【0010】
上記第1の局面による車両制御装置において、好ましくは、表示部として、通信システムの状態を表示させるシステム表示部を用いる。このように構成すれば、携帯機が使用できない非常時に使用するためだけの表示部を別途設ける必要がないため、構造が煩雑になるのを抑制することができる。
【0011】
上記第1の局面による車両制御装置において、好ましくは、暗証番号が記憶されている記憶部と、入力された暗証番号と記憶部に記憶されている暗証番号とを照合するための照合部とをさらに備える。このように構成すれば、照合部により、容易に、入力された暗証番号と記憶部に記憶されている暗証番号とを照合することができる。
【0012】
上記所定のスイッチのオンおよびオフの操作により暗証番号に対応する表示部の点滅回数を決定する車両制御装置において、好ましくは、車両には、車両の操舵を行うためのハンドルグリップ部がさらに設けられ、ハンドルグリップ部の近傍には、暗証番号入力部が設けられている。このように構成すれば、使用者は、ハンドルグリップ部を把持しながら暗証番号の入力作業を行うことができるので、車両が安定した状態で暗証番号の入力作業を行うことができる。
【0013】
上記ハンドルグリップ部の近傍には暗証番号入力部が設けられている車両制御装置において、好ましくは、車両には、ハザードランプがさらに設けられ、暗証番号入力部は、ハザードランプを点滅させるためのハザードスイッチを含む。このように構成すれば、携帯機が使用できない非常時に使用するためだけの暗証番号入力部を別途設ける必要がないため、構造が複雑になるのを抑制することができる。
【0014】
上記暗証番号入力部がハザードランプを点滅させるためのハザードスイッチを含む車両制御装置において、好ましくは、暗証番号の入力時には、ハザードスイッチのオン時に、ハザードランプを点滅させずに表示部を点滅させるように制御する。このように構成すれば、暗証番号の入力時にハザードランプが点滅することに起因して暗証番号が第3者に知られるという不都合が発生するのを防止することができる。
【0015】
上記第1の局面による車両制御装置において、好ましくは、車両には、第2スイッチが設けられ、第2スイッチが所定の時間内に複数回に渡って操作されることによって、暗証番号が入力可能な状態になるように構成されている。このように構成すれば、容易に、暗証番号が入力できる状態にならないので、誤って暗証番号を入力可能な状態にしてしまうのを抑制することができる。
【0016】
上記第2スイッチが設けられている車両制御装置において、好ましくは、第2スイッチは、車両に設けられている所定の開閉部の開閉状態を検出する検出スイッチを含み、開閉部を所定の時間内に複数回に渡って開閉することによって、暗証番号が入力可能な状態になるように構成されている。このように構成すれば、容易に、所定の開閉により暗証番号が入力可能な状態にすることができる。
【0017】
上記所定の開閉部を開閉することによって暗証番号が入力可能な状態になる車両制御装置において、好ましくは、開閉部は、トランク部を含み、トランク部を所定の時間内に複数回に渡って開閉することによって、暗証番号が入力可能な状態になるように構成されている。このように構成すれば、容易に、トランク部の開閉により暗証番号が入力可能な状態にすることができる。
【0018】
上記トランク部を開閉することによって暗証番号が入力可能な状態になる車両制御装置において、好ましくは、トランク部は、トランク部を施錠するための施錠部を含む。このように構成すれば、実質的に施錠するためのキーを所持する人だけが暗証番号を入力可能な状態にすることができるので、車両が盗難されるのをより抑制することができる。
【0019】
上記所定の開閉部を開閉することによって暗証番号が入力可能な状態になる車両制御装置において、好ましくは、車両に取り付けられ、第2スイッチの操作に先立って、非常時に押圧することにより、非常時における暗証番号入力動作モードを開始させるための入力動作モード開始スイッチをさらに備える。このように構成すれば、実質的に入力動作モード開始スイッチを押圧した時だけに、暗証番号入力動作モードを開始させる待機状態にすることができるので、車両を使用しない時に電力を使用するのを抑制することができる。これにより、車両のバッテリーが消耗するのを抑制することができる。
【0020】
上記入力された暗証番号と記憶部に記憶されている暗証番号とを照合するための照合部をさらに備える車両制御装置において、好ましくは、照合部により、入力された暗証番号が記憶部に記憶されている暗証番号に照合された際に、表示部が照合の結果を表示するように構成されている。このように構成すれば、使用者は、使用者が入力した暗証番号が、記憶部に記憶されている暗証番号に照合された結果を容易に確認することができる。
【0021】
上記表示部が照合の結果を表示する車両制御装置において、好ましくは、表示部は、照合の結果としての一致と不一致とを異なる点灯パターンにて表示するように構成されている。このように構成すれば、照合の結果を表示する表示部を、一致の場合および不一致の場合のそれぞれを設ける必要がないため、構造が複雑になるのを抑制することができる。
【0022】
この発明の第2の局面による車両は、上記のいずれかの構成に記載の車両制御装置を備える。このように構成すれば、容易に、携帯機を使用できない非常時に、車両を使用可能な状態にするための暗証番号の入力作業を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態による自動二輪車の全体構造を示した側面図である。図2〜図8は、図1に示した一実施形態による自動二輪車の車両制御装置の構成を説明するための図である。なお、第1実施形態では、本発明の車両の一例として、自動二輪車について説明する。図中、矢印FWDは、自動二輪車の走行方向の前方を示している。以下、図1〜図8を参照して、本発明の一実施形態による自動二輪車1の構造および車両制御装置70の構成について説明する。
【0025】
本発明の一実施形態による自動二輪車1では、図1に示すように、ヘッドパイプ2の後方には、メインフレーム3が配置されている。このメインフレーム3は、メインフレーム3の本体部分を形成するフレーム本体部3aと、フレーム本体部3aの上部2点を支持する支持部3bとを有している。これらのヘッドパイプ2およびメインフレーム3によって、車体フレームが構成されている。
【0026】
ここで、本実施形態では、ヘッドパイプ2の上方には、ハンドル4が配置されている。このハンドル4の両端部には、使用者が自動二輪車1の操舵を行うためのハンドルグリップ部5が設けられている。また、図3に示すように、右側のハンドルグリップ部5には、ハザードスイッチ6が設けられている。なお、ハザードスイッチ6は、本発明の「暗証番号入力部」および「所定のスイッチ」の一例である。このハザードスイッチ6は、図2に示すように、後述する制御部7(図2参照)に接続されるとともに、制御部7には、ハザードランプ8(図1参照)が接続されている。また、制御部7には、スイッチング素子9を介して、後述するシステム表示部10(図2および図8参照)が接続されている。このスイッチング素子9により、システム表示部10は、1秒周期の点滅をするのが可能になる。なお、システム表示部10は、本発明の「表示部」の一例であり、スイッチング素子9は、本発明の「点滅制御部」の一例である。また、制御部7は、本発明の「照合部」の一例である。また、システム表示部10は、通常時には、後述するスマートキー50との通信システムの状況を使用者に知らせるために設けられているとともに、非常時には、暗証番号入力用の表示部としても機能する。また、ハザードランプ8は、後述するスマートキー50が使用できない非常時に行う処理の際には、ハザードスイッチ6をオン状態にした場合にも、点滅しないように構成されている。また、図1に示すように、ヘッドパイプ2の前方には、ヘッドパイプ2の前方を覆うフロントカウル11が設けられている。また、フロントカウル11の下方には、前輪12と、前輪12の上方に配置されるフロントフェンダ13とが配置されている。この前輪12は、一対のフロントフォーク14の下部に回転可能に取り付けられている。
【0027】
また、メインフレーム3の後方の上部には、荷物などを収納するためのトランク15が設けられている。このトランク15の上部には、図7に示すように、トランク15を開閉可能にするシート16が配置されている。また、シート16を開いた際に、トランク15の内部に設けられたトランク用ランプ17を点灯させるシート開閉センサ18(図2参照)が設けられている。これら、トランク15、シート16、トランク用ランプ17およびシート開閉センサ18(図2参照)により、トランク部19が構成されている。なお、トランク部19は、本発明の「所定の開閉部」の一例である。また、トランク部19の後方下部には、メカニカルキー20(図4参照)によりトランク部19を施錠および開錠可能なメカニカルロック部21が設けられている。これにより、実質的にメカニカルキー20(図4参照)を所持する者だけが、トランク部19のシート16を開閉することが可能なように構成されている。なお、メカニカルロック部21は、本発明の「施錠部」の一例である。また、メインフレーム3の後端部の下方には、後輪22が回転可能に配置されている。
【0028】
また、本実施形態では、図1に示すように、ヘッドパイプ2の後方には、制御ユニット23が設けられている。この制御ユニット23には、図2に示すように、上記制御部7と、制御部7にそれぞれ接続された上記スイッチング素子9、記憶部24、点滅カウンタ25、送受信回路26および開閉カウンタ27とが設けられている。また、記憶部24には、後述するスマートキー50が使用できない非常時の際に使用する所定の6桁の暗証番号(たとえば935588)に対応する暗証コード60と、スマートキー50が使用可能な通常時に使用するスマートキー50が有する個体識別コードとが記憶されている。また、スマートキー50には、図示しない電池が内蔵されているとともに、スマートキー50が自動二輪車1に対応しているか否かを判断するための個体識別コードが記録されている。なお、スマートキー50は、本発明の「携帯機」の一例である。
【0029】
また、制御部7は、シート16(図1参照)の下方に配置されたECU(エンジンコントロールユニット)28と、ハンドル4(図1参照)の幅方向の中心部の下方に配置されたメインスイッチ29(図1参照)と、自動二輪車1の不使用時にハンドル4(図1参照)を施錠する機能を有するステアリングロック部30に設けられているアクチュエータ31と、フロントカウル10の上方のハンドル4側に配置されたメータ部32(図1および図8参照)に設けられている上記システム表示部10と、上記ハザードランプ8と、上記トランク用ランプ17と、上記シート開閉センサ18とに接続されている。なお、メインスイッチ29は、スマートキー50が使用できる通常時には、後述するスマートキー50に個体識別要求信号を送信するためのシステムをオンまたはオフ状態にするために用いられる。また、メインスイッチ29は、スマートキー50が使用できない非常時には、暗証番号入力開始前に押圧されることに基づいて、暗証番号を入力するための入力動作モードを開始させる機能を有するとともに、暗証番号入力後に押圧されることに基づいて、ステアリングロック部30を解除して自動二輪車1を使用可能な状態にする機能を有する。このメインスイッチ29は、本発明の「入力動作モード開始スイッチ」の一例である。また、制御部7と、ECU28、アクチュエータ31とは、図示しないSCI(シリアル・コミュニケーション・インターフェイス)を用いて、シリアル通信されるように構成されている。また、ECU28は、右側のハンドルグリップ部5(図3参照)の近傍に取り付けられたスタータスイッチ33(図3参照)に接続されている。なお、ハザードランプ8と、制御ユニット23と、ECU28と、ステアリングロック部30と、メータ部32と、スマートキー50とから、車両制御装置70が構成されている。
【0030】
また、制御部7は、スマートキー50を使用できる通常時に、メインスイッチ29がオンされた場合、送受信回路26と自動二輪車1の使用許可認証用のスマートキー50との通信を行うように構成されており、スマートキー50が自動二輪車1に対応するスマートキーであると判断された場合、自動二輪車1を使用可能な状態にする機能を有する。具体的には、送受信回路26は、メインスイッチ29およびスタータスイッチ33などが使用者により押された際に、制御部7により個体識別コード要求信号がスマートキー50に送信されるように構成されている。また、送受信回路26は、スマートキー50から受信した個体識別コード信号を制御部7に伝達する機能を有する。
【0031】
また、本実施形態では、制御部7は、スマートキー50を使用できない非常時に、所定の6桁の暗証番号(たとえば935588)が入力された場合、入力された6桁の暗証番号(935588)と、記憶部24が記憶している暗証コード60とが一致するか否かを判断するように構成されている。
【0032】
また、本実施形態では、図5に示すように、スマートキー50の内部には、上記メカニカルロック部21のメカニカルキー20と同型のメカニカルキー80が取り外し可能に装着されている。これにより、スマートキー50を使用できない非常時には、メカニカルキー80を使用するとともに、後述する手順によって、自動二輪車1を使用することが可能になるように構成されている。また、スマートキー50は、メカニカルキー80がスマートキー50に取り外し可能に装着されることによって、自動二輪車1の使用者が普段からメカニカルキー20をスマートキー50と一緒に携帯する必要がないように構成されている。また、図6に示すように、通常時、メカニカルキー80がスマートキー50に装着されていることにより隠れているスマートキー50のメカニカルキー80によって覆われている部分には、上記した自動二輪車1に対応する所定の6桁の暗証番号(935588)が記載されている。これにより、自動二輪車1の使用者は、普段、実質的に使用することがない暗証番号を第三者に読取られないように構成されている。また、図4に示すように、メカニカルキー20にも、暗証番号(935588)が記載されているタグ40が取り付けられている。
【0033】
また、本実施形態では、システム表示部10は、制御部7を介して点滅カウンタ25に接続されているため、システム表示部10が点滅している回数を計数することが可能なように構成されている。また、シート開閉センサ18は、制御部7を介して開閉カウンタ27に接続されているため、シート16を開閉した回数を計数することが可能なように構成されている。
【0034】
次に、図2〜図8を参照して、本実施形態による暗証番号の入力方法について説明する。
【0035】
まず、図7に示すように、使用者は、スマートキー50(図2および図5参照)が使用できない非常時に、メインスイッチ29(図2参照)をオンした後、15秒以内に、メカニカルキー20(図4参照)またはメカニカルキー80(図5参照)を使用してメカニカルロック部21を解除するとともに、シート16を3回開閉させる。
【0036】
そして、使用者は、シート16を3回開閉させた後、10秒以内に本実施形態の6桁の暗証番号(935588)(図6参照)の入力作業を開始する。具体的には、まず、6桁の暗証番号の1桁目である「9」を入力する。この場合、使用者は、シート16を3回開閉させた後、10秒以内にハザードスイッチ6(図3参照)をオンにして、システム表示部10(図8参照)の点滅を開始させる。そして、システム表示部10が9回点滅した時点でハザードスイッチ6をオフにする。これにより、1桁目の数値は、「9」として決定される。なお、この際、使用者は、ハザードスイッチ6を「9」の暗証番号に対応する回数押す必要がなく、一度、ハザードスイッチ6をオンの状態にするとともに、システム表示部10が点滅するのを計数して、所定の回数を計数した時点でハザードスイッチ6をオフにすればよい。その後、使用者により、同様の手順で、2桁目に「3」、3桁目に「5」と、各桁の入力動作が繰り返されて、6桁の暗証番号のうちの全ての桁数である6桁分入力されることによって、暗証番号の入力が完了する。
【0037】
そして、6桁分の正しい暗証番号(935588)(図6参照)が入力されると、システム表示部10(図8参照)が点灯する。これにより、使用者は、暗証番号が正しく入力されたことを知ることが可能になる。また、使用者は、システム表示部10が点灯している間(10秒間)に、メインスイッチ29(図2参照)をオン状態にすることによって、ステアリングロック部30(図2参照)が解除される。これにより、自動二輪車1が使用可能な状態になる。
【0038】
図9は、図1に示した一実施形態による車両制御装置側の処理フローを示したフローチャートである。次に、図2および図9を参照して、自動二輪車1を使用可能な状態にする際の本実施形態による車両制御装置70側の処理フローについて詳細に説明する。
【0039】
図9に示したステップS1において、メインスイッチ29(図2参照)がオンされたか否かが判断される。ステップS1において、メインスイッチ29がオンされていないと判断された場合には、ステップS1の判断が繰り返される。また、ステップS1において、メインスイッチ29がオンされたと判断された場合には、メインスイッチ29がオンされたことが制御部7(図2参照)に伝達されてステップS2に進む。そして、ステップS2において、送受信回路26(図2参照)から個体識別コード要求信号がスマートキー50(図2参照)に送信される。このとき、スマートキー50が制御ユニット23(送受信回路26)近傍の通信可能な範囲(約1m)内に位置している場合は、送受信回路26からの個体識別コード要求信号がスマートキー50に受信されるとともに、スマートキー50から個体識別コード信号が送受信回路26に送信される。
【0040】
その後、ステップS3において、個体識別コード信号が送受信回路26により受信されたか否かが判断される。ステップS3において、個体識別コード信号が受信されていないと判断された場合には、ステップS6に進む。また、ステップS3において、個体識別コード信号が受信されたと判断された場合には、ステップS4に進む。
【0041】
その後、ステップS4において、受信した個体識別コード信号が制御部7に伝達されるとともに、制御部7により、スマートキー50から受信した個体識別コード信号に対応する個体識別コードと、記憶部24(図2参照)に予め記録された個体識別コードとが一致するか否かが判断される。ステップS4において、スマートキー50から受信した個体識別コード信号に対応する個体識別コードと、記憶部24に予め記録された個体識別コードとが一致すると判断された場合には、ステップS5に進む。そして、ステップS5において、アクチュエータ31(図2参照)により、ステアリングロック部30(図2参照)が解除されて、自動二輪車1が使用可能な状態にされることにより、処理が終了される。また、ステップS4において、スマートキー50から受信した個体識別コード信号に対応する個体識別コードと、記憶部24に予め記録された個体識別コードとが一致しないと判断された場合には、ステップS6に進む。
【0042】
そして、ステップS6において、15秒以内にシート16(図7参照)が3回以上開閉されることによって、シート開閉センサ18(図2参照)が3回オンオフされたか否かが、開閉カウンタ27により計数されるとともに、制御部7により判断される。ステップS6において、15秒以内にシート開閉センサ18が3回オンオフされていないと判断された場合には、ステップS1に戻る。また、ステップS6において、15秒以内にシート開閉センサ18が3回オンオフされたと判断された場合には、ステップS7に進む。そして、ステップS7において、10秒間の暗証番号入力待ち状態になり、ステップS8に進む。
【0043】
そして、ステップS8において、シート開閉センサ18が3回オンオフされた後、6桁の暗証番号のうちの1桁目を入力するために、10秒以内にハザードスイッチ6(図3参照)がオンされたか否かが判断される。ステップS8において、10秒以内にハザードスイッチ6がオンされていないと判断された場合には、ステップS1に戻る。また、ステップS8において、10秒以内にハザードスイッチ6がオンされたと判断された場合には、ステップS9に進む。そして、ステップS9において、システム表示部10が点滅する回数を点滅カウンタ25により計数を開始して、ステップS10に進む。この時、ハザードスイッチ6がオンされることによって、スイッチング素子9(図2参照)を介してシステム表示部10(図2参照)が1秒周期で点滅を開始するので、使用者は、目視にて、システム表示部10が点滅している回数を確認することができる。また、この場合、スマートキー50が使用できない非常時に行っている処理なので、ハザードランプ8(図1参照)は、点滅しないように制御されている。
【0044】
その後、ステップS10において、システム表示部10が点滅した回数が9回以内に、ハザードスイッチ6がオフされたか否かが判断される。ステップS10において、システム表示部10が点滅した回数が9回以内に、ハザードスイッチ6がオフされていないと判断された場合には、ステップS7に進み、メインスイッチ29がオフされて、ステップS1に戻る。また、ステップS10において、システム表示部10が点滅した回数が9回以内に、ハザードスイッチ6がオフされていると判断された場合には、ステップS11に進む。そして、ステップS11において、システム表示部10が点滅した回数が、6桁の暗証番号(935588)1つの桁(1桁目)の数値として決定される。その後、ステップS12に進む。
【0045】
そして、ステップS12において、制御部7により、6桁の暗証番号(935588)のうち、全ての桁数である6桁分入力されたか否かが判断される。ステップS12において、6桁の暗証番号のうち、全ての桁数である6桁分入力されていないと判断された場合には、ステップS7に戻って6桁の暗証番号のうち、先に入力された桁の、次の桁の入力待ち状態になる。また、ステップS12において、6桁の暗証番号のうち、全ての桁数である6桁分入力されたと判断された場合には、ステップS13に進む。
【0046】
そして、ステップS13において、入力された6桁の暗証番号が、記憶部24に記憶されている暗証コード60に対応する暗証番号であるか否かが、制御部7により判断される。ステップS13において、入力された6桁の暗証番号が、記憶部24に記憶されている暗証コード60に対応しない暗証番号であると判断された場合には、ステップS1に戻る。また、ステップS13において、入力された6桁の暗証番号が、記憶部24に記憶されている暗証コード60に対応する暗証番号であると判断された場合には、ステップS14に進む。そして、ステップS14において、10秒間のメインスイッチ29のオン操作待ち状態になるとともに、システム表示部10が点灯して、ステップS15に進む。なお、この際、システム表示部10が点灯しているので、使用者は、6桁の暗証番号が正しく入力されたことを確認することができる。
【0047】
そして、ステップS15において、10秒間のメインスイッチ29のオン操作待ち状態の間に、メインスイッチ29がオンされたか否かが、制御部7により判断される。ステップS15において、10秒間のメインスイッチ29のオン操作待ち状態の間に、メインスイッチ29がオンされていないと判断された場合には、ステップS1に戻る。また、ステップS15において、10秒間のメインスイッチ29のオン操作待ち状態の間に、メインスイッチ29がオンされていると判断された場合には、ステップS5に進む。そして、ステップS5において、アクチュエータ31により、ステアリングロック部30が解除されて、自動二輪車1を使用可能な状態にすることにより、処理が終了される。
【0048】
本実施形態では、上記のように、非常時に、スマートキー50を用いることなく自動二輪車1の使用許可認証を行うための6桁の暗証番号を入力する際に、システム表示部10が点滅する回数により、暗証番号を入力するハザードスイッチ6を設けることによって、システム表示部10が点滅する回数を数えるとともに、6桁の暗証番号のうち、所定の桁の数字に対応する所定の回数が点滅した際に、ハザードスイッチ6をオフにするだけで1桁分の入力が完了するため、スイッチを暗証番号に対応する回数分入力する場合に比べて、入力する回数を減少させることができる。これにより、スマートキー50を使用できない非常時に、自動二輪車1を使用可能な状態にする暗証番号の入力作業を簡素化することができる。
【0049】
また、本実施形態では、非常時に、メインスイッチ29をオンした後に、自動二輪車1に設けられているトランク部19のシート開閉センサ18を15秒以内に3回以上開閉することによって、暗証番号が入力可能な状態になるように構成されているので、容易に、暗証番号が入力できる状態にならない。これにより、誤って暗証番号を入力可能な状態にしてしまうのを抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態では、トランク部19は、メカニカルキー20およびメカニカルロック部21によって施錠することができるので、実質的にメカニカルキー20を所持する人だけが暗証番号を入力可能な状態にすることができるので、自動二輪車1が盗難されるのをより抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態では、メインスイッチ29をオンした後に、非常時における暗証番号入力動作モードを開始するように構成することによって、メインスイッチ29を押圧した時だけに、暗証番号入力動作モードを開始させる待機状態にすることができるので、自動二輪車1を使用しない時に電力が使用されるのを抑制することができる。これにより、自動二輪車1のバッテリーが消耗するのを抑制することができる。
【0052】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0053】
たとえば、上記実施形態では、携帯機(スマートキー)を用いる車両制御装置を備えた車両の一例として自動二輪車を示したが、本発明はこれに限らず、携帯機(スマートキー)を用いる車両制御装置を備えた車両であれば、自転車、三輪車、ATV(All Terrain Vehicle;不整地走行車両)などの他の車両にも適用可能である。
【0054】
また、上記実施形態では、6桁の暗証番号に対応する暗証コードを照合することによって車両を使用可能にする例について示したが、本発明はこれに限らず、6桁以外の桁数の暗証番号でもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、暗証番号を計数する際に点滅させる場所に、システム表示部を使用している例を示したが、本発明はこれに限らず、ハザードランプを使用してもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、システム表示部が点滅する回数を計数することによって暗証番号を入力できるようにしている例を示したが、本発明はこれに限らず、システム表示部が点滅するのに合わせて、車両に設けられている警笛部が発する音の回数を計数することによって、暗証番号を入力するようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、暗証番号の入力部としてハザードスイッチを使用する例を示したが、本発明はこれに限らず、メインスイッチまたはスタータスイッチを使用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態による自動二輪車の全体構造を示した側面図である。
【図2】図1に示した一実施形態による自動二輪車の車両制御装置の構成を説明するための図である。
【図3】図1に示した一実施形態による自動二輪車の右ハンドルグリップ部近傍の詳細構造を説明するための斜視図である。
【図4】図1に示した一実施形態による自動二輪車のメカニカルキーを説明するための正面図である。
【図5】図1に示した一実施形態による車両制御装置のスマートキーおよびメカニカルキーを説明するための正面図である。
【図6】図1に示した一実施形態による車両制御装置のスマートキーを説明するための図である。
【図7】図1に示した一実施形態による自動二輪車の構造を詳細に説明するための図である。
【図8】図1に示した一実施形態による自動二輪車のメーター部を説明するための図である。
【図9】図1に示した一実施形態による車両制御装置の処理フローを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
1 自動二輪車(車両)
5 ハンドルグリップ部
6 ハザードスイッチ(暗証番号入力部、スイッチ)
7 制御部(照合部)
8 ハザードランプ
9 スイッチング素子(点滅制御部)
10 システム表示部(表示部)
18 トランク部(開閉部)
21 メカニカルロック部(施錠部)
24 記憶部
29 メインスイッチ(入力動作モード開始スイッチ)
50 スマートキー(携帯機)
70 車両制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯機を用いた通信システムにより車両の使用許可認証を行う車両制御装置であって、
非常時に、前記携帯機を用いることなく前記車両の使用許可認証を行うための暗証番号を入力する際に点滅する表示部と、
前記表示部が点滅する回数により、前記暗証番号を入力する暗証番号入力部とを備える、車両制御装置。
【請求項2】
前記暗証番号入力部は、第1スイッチを含み、
前記暗証番号を入力する場合に、前記第1スイッチのオンおよびオフの操作により、前記暗証番号に対応する前記表示部の点滅回数を決定する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記第1スイッチは、オンおよびオフのそれぞれの状態において操作力を解除しても、それぞれの状態を維持するように構成されている、請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記表示部を一定の間隔で点滅させるための点滅制御部をさらに備える、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記表示部として、前記通信システムの状態を表示させるシステム表示部を用いる、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記暗証番号が記憶されている記憶部と、
入力された暗証番号と前記記憶部に記憶されている前記暗証番号とを照合するための照合部とをさらに備える、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記車両には、前記車両の操舵を行うためのハンドルグリップ部がさらに設けられ、
前記ハンドルグリップ部の近傍には、前記暗証番号入力部が設けられている、請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記車両には、ハザードランプがさらに設けられ、
前記暗証番号入力部は、前記ハザードランプを点滅させるためのハザードスイッチを含む、請求項7に記載の車両制御装置。
【請求項9】
前記前記暗証番号の入力時には、前記ハザードスイッチのオン時に、前記ハザードランプを点滅させずに前記表示部を点滅させるように制御する、請求項8に記載の車両制御装置。
【請求項10】
前記車両には、第2スイッチが設けられ、前記第2スイッチが所定の時間内に複数回に渡って操作されることによって、前記暗証番号が入力可能な状態になるように構成されている、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項11】
前記第2スイッチは、前記車両に設けられている所定の開閉部の開閉状態を検出する検出スイッチを含み、前記開閉部を前記所定の時間内に複数回に渡って開閉することによって、前記暗証番号が入力可能な状態になるように構成されている、請求項10に記載の車両制御装置。
【請求項12】
前記開閉部は、トランク部を含み、
前記トランク部を所定の時間内に複数回に渡って開閉することによって、前記暗証番号が入力可能な状態になるように構成されている、請求項11に記載の車両制御装置。
【請求項13】
前記トランク部は、前記トランク部を施錠するための施錠部を含む、請求項12に記載の車両制御装置。
【請求項14】
前記車両に取り付けられ、前記第2スイッチの操作に先立って、非常時に押圧することにより、前記非常時における暗証番号入力動作モードを開始させるための入力動作モード開始スイッチをさらに備える、請求項10に記載の車両制御装置。
【請求項15】
前記照合部により、前記入力された暗証番号が前記記憶部に記憶されている暗証番号に照合された際に、前記表示部は前記照合の結果を表示するように構成されている、請求項6に記載の車両制御装置。
【請求項16】
前記表示部は、前記照合の結果としての一致と不一致とを異なる点灯パターンにて表示するように構成されている、請求項15に記載の車両制御装置。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の車両制御装置を備える、車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−37182(P2008−37182A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−211332(P2006−211332)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】