説明

車両制御装置

【課題】 交差点を安全且つ必要最低限の減速でスムーズに通過できるようにする車両制御装置を提供すること。
【解決手段】 車両において制動制御を行う車両制御装置が、自車両前方交差点において自車両と交錯可能性を有する他車両(交錯車両)が検出されたときに、該交差点の通過に関して自車両及び該他車両に優先度を設定し、自車両が該他車両に対して非優先の場合(優先度が相対的に低い場合)、該他車両が上記交差点を通過してから自車両が該交差点を通過するように自車両の制動制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、車両において制動制御を行う車両制御装置に係り、特に、交差点を安全且つ必要最低限の減速でスムーズに通過できるようにする車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日に至るまでの車両の交通を円滑にするための交通管制は、例えば、交差点に設置された信号機や、道路沿い等に設置された交通標識や、道路上に描かれた一時停止線などを利用して、インフラ側から各車両(の運転者)に規制内容を伝達し、規制の尊守を促すことによって行われている。この交通管制が機能するには、各車両の運転者が標識の意味等の一般的な交通規則を記憶・理解した上で、その規制に従って各運転者が車両を運転・操作することが必要となる。
【0003】
このような交通管制が実施されているにもかかわらず交通事故が発生し得る場合としては、大きく分けると、1)運転者がインフラ側から指示された交通規制を守らなかった(守れなかった)場合と、2)交通管制のためのインフラ(信号機等)が整っておらず、交通規制内容が運転者にとって不明確であるために事実上無管制状態となっている場合と、が挙げられる。
【0004】
1)の場合に対しては、従来、車車間通信や路車間通信などを利用して取得した情報に基づき、速度超過や交錯可能性のある車両の存在を運転者に警告する手法や、場合によっては車両側から自動的に減速制御を行うなどの運転者の運転操作を支援する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−140799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたような従来手法によれば、相互に交錯可能性を有すると判断された車両間に交差点進入に関する何らかのルール(規則)・基準・取り決めが設定されていない限り、これら交差点進入車両の双方に減速制御が与えられ、交差点での車両走行が円滑でなくなる可能性がある。
【0006】
また、上述のようなインフラに依存した交通管制によれば、大規模な交差点から住宅街の小さい交差点まであらゆる規模のすべての交差点に信号機や一時停止線等を具備させるのは非常に困難であって非現実的であり、上記2)のように何らの交通管制も実施されない交差点を必然的に産み出してしまう。
【0007】
このような交通管制が行われない交差点では、交差点進入についての優先/非優先が不明確であって、交通の制御は交差点に進入してきている運転者の判断(譲り合い等)という不確定な要素に委ねられることになる。現に、交通事故の多くは、信号機も一時停止線もない細街路交差点での出会い頭事故である。
【0008】
また、上述のようなインフラに依存した交通管制の別の課題点は、制御内容が固定的であって、交通量の変化等に動的に適応できない点である。一部では、曜日や時間帯によって異なる交通管制内容を示す標識が存在したり、信号機の各色の点灯時間を変えたりといった手法も現に実現されているが、狭い範囲内での制御に過ぎず、交通管制内容を動的に(リアルタイムに)変えているとまでは言い難い。
【0009】
上述のように、インフラを利用した交通管制では、信号機や標識等により提示された交通管制内容が各車両によって尊守されることを大前提としている。このようなインフラ依存の交通管制において管制内容が固定的であると、交錯車両が存在しない場合であっても赤信号や一時停止線で無駄に一時停止しなければならないこととなり、円滑な交通の妨げとなる。
【0010】
このように、今日まで当たり前のものとして使われてきたインフラ依存の交通管制には、a)すべての交差点を管制することが事実上不可能であると共に、b)交通量が少ないときであっても不要な一時停止や減速を要求するため交通の流れを悪くする、という2つの問題がある。
【0011】
信号機や標識や一時停止線などを利用せずに、且つ、2次元平面上では交錯し得る位置関係の車両同士を少なくとも一方を減速又は一時停止させず且つ円滑に交錯地点を通過させるには、交差する道路を立体交差させるのが理想的ではある。しかし、当然ながら、すべての交差点を立体交差にすることは現実的には不可能である。
【0012】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、交差点を安全且つ必要最低限の減速でスムーズに通過できるようにする車両制御装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、車両において制動制御を行う車両制御装置であって、自車両前方交差点において自車両と交錯可能性を有する他車両(交錯車両)が検出されたときに、該交差点の通過に関して自車両及び該他車両に優先度を設定し、自車両が該他車両に対して非優先の場合(優先度が相対的に低い場合)、該他車両が上記交差点を通過してから自車両が該交差点を通過するように自車両の制動制御を実行する、車両制御装置である。
【0014】
この第1の態様において、上記車両制御装置は、例えば、無線通信装置を利用して車車間通信や路車間通信により周辺車両の位置及び速度を取得し、これら取得した他車両に関する情報に基づいて自車両及び他車両の優先度を設定する。
【0015】
また、この第1の態様において、上記車両制御装置は、自車両が上記他車両に対して非優先の場合、具体的には、例えば、1)該他車両の位置を自車両と同じ車線を同じ方向に進行する先行車両となる仮想位置へ座標変換し、座標変換後の該他車両に対して所定の車間距離が確保されるように自車両の制動制御を実行する、或いは、2)該他車両が上記交差点を通過するまで該交差点より第一の所定距離手前の位置を目標停止位置として制動制御を実行すると共に、該他車両が上記交差点を通過したときに制動制御を解除する。
【0016】
また、この第1の態様においては、例えば、A)交差点までの距離に着目し、自車両が上記交差点から第二の所定距離手前に到達したときに上記交錯可能性を有する他車両から該交差点までの距離が該第二の所定距離よりも短い場合に、自車両が該他車両に対して非優先とされてもよく、及び/又は、B)交差点到達までに掛かる時間に着目し、自車両が上記交差点から第三の所定距離手前に到達したときに上記交錯可能性を有する他車両が該交差点に到達するまでの所要時間が自車両が該交差点に到達するまでの所要時間よりも短い場合に、自車両が該他車両に対して非優先とされてもよい。
【0017】
この第1の態様によれば、自車両及び前方交差点において交錯可能性を有する他車両にそれぞれ優先度が設定され、交錯車両が自車両に対して優先であると判断された場合には、優先車両である交錯車両が何ら制約を受けることなく交差点を通過できるように非優先車両である自車両を制動制御するため、安全を確保しつつ、各交差点通過車両の減速を必要最小限に抑えた円滑な交通が実現される。
【0018】
上記目的を達成するための本発明の第2の態様は、上記第1の態様に係る車両制御装置であって、自車両が上記交差点から第四の所定距離手前に到達するまでに設定された上記優先度は自車両が該交差点を通過するまで変更されない、車両制御装置である。
【0019】
この第2の態様によれば、交差点にある程度まで接近した場合にはもはや優先度設定が変更されず、固定されるため、制御が複雑化・不安定化するのを防ぐことができる。
【0020】
なお、この第2の態様において、自車両が上記交差点から上記第四の所定距離手前に到達するまで優先車両は存在しなかったが、その後、自車両が該交差点により接近してから該交差点において自車両と交錯可能性を有する他車両(以下、「途中出現車両」と称す)が新たに検出された場合には、安全のため、この新たに検出された他車両(途中出現車両)に対して自車両を非優先とし、制動制御を実行することが好ましい。
【0021】
また、この第2の態様において、上記交錯可能性を有する他車両のうち、自車両が上記交差点から上記第四の所定距離手前に到達するまでは優先車両に設定されなかったが、自車両が該交差点から該第四の所定距離手前に到達したときに該交差点から第五の所定距離範囲内に位置し、且つ、搭載された現在位置検出装置(例えば、GPSやRTK−GPSなど)の位置認識精度が自車両のものより低い車両が存在した場合には、安全のため、この位置認識精度が低い他車両に対して自車両を非優先とすることが好ましい。但し、この場合であっても、上記位置認識精度が自車両より低い他車両の位置認識精度が所定水準以上の場合には、該他車両が自車両を正しく認識していると判断して、該他車両に対して自車両を優先としてもよい。
【0022】
上記目的を達成するための本発明の第3の態様は、上記第1又は第2の態様に係る車両制御装置であって、上記交錯可能性を有する他車両に対して自車両が非優先車両に設定された後、該他車両及び自車両の双方の車速が所定の速度を下回ったとき、自車両が該他車両に対して左方車両である場合のみ、自車両の制動制御を解除する、車両制御装置である。
【0023】
この第3の態様によれば、自車両が優先車両に設定した他車両が自車両を優先車両に設定していたなどの理由により交差点に進入しようとしている車両双方に相手(交錯)車両を先に交差点通過させるための制動制御が掛かって交差点交通に滞留が生じてしまうという事態の発生を防止することができる。
【0024】
なお、この第3の態様においては、上記のような優先度の認識違いを理由として自車両の制動制御が解除されるのは例外的な場合と言えるため、車両乗員を驚かせないように、自車両の制動制御が解除されるときに自車両乗員に(例えば音声アナウンスなどによって)注意喚起することが好ましい。
【0025】
上記目的を達成するための本発明の第4の態様は、上記第1〜第3の態様のうちいずれか一態様に係る車両制御装置であって、自車両が上記他車両(交錯車両)に対して非優先であるときに上記交差点に信号機の存在を検出した場合、自車両の制動制御を解除する車両制御装置である。
【0026】
この第4の態様において、自車両が上記他車両(交錯車両)に対して非優先であるときに上記交差点に信号機の存在が検出されなければ、自車両の制動制御が継続される。
【0027】
この第4の態様によれば、信号機が存在する場合には自律的な制動制御よりも運転者による信号機の指示に従った運転操作を優先させることによって、運転者に違和感を与えないようにすることができる。
【0028】
なお、この第4の態様において、自車両が上記他車両(交錯車両)に対して非優先であるときに上記交差点に信号機の存在を検出し、且つ、該信号機が赤色の場合には、制動制御によって自車両を該交差点の停止線で一時停止させてから制動制御を解除してもよい。
【0029】
また、この第4の態様において、信号機の存在及び現在の点灯色は、例えば、路車間通信や、車載カメラを利用した画像認識などによって検出される。
【0030】
上記目的を達成するための本発明の第5の態様は、上記第1〜第4の態様のうちいずれか一態様に係る車両制御装置であって、通信を利用して、自車両において設定された上記優先度情報を上記交錯可能性を有する他車両に送信すると共に、該他車両において設定された上記優先度情報を該他車両から取得する車両制御装置である。
【0031】
この第5の態様において、上記通信とは、主として無線通信であって、車車間通信による直接的な通信であってもよく、或いは、路車間通信を経由した間接的な通信であってもよい。
【0032】
この第5の態様によれば、自車両と交錯可能性を有する他車両との間で優先度情報が交換されるため、各車両は周辺車両が設定した優先度を知ることができる。これにより、自車両において設定された各交差点進入車両の優先度と他車両において設定された優先度とが一致するか否かを確認することができるため、優先度認識違いの発生が回避され、優先度に基づく本制御の安全性が一層向上する。
【0033】
なお、この第5の態様において、自車両が上記交差点から第六の所定距離に到達するまでに上記交錯可能性を有する他車両から上記優先度情報が取得できなかった場合、安全のため、該他車両に対して自車両を非優先とすることが好ましい。
【0034】
また、この第5の態様において、例えば自車両が細い道路から大きい道路へ進入又は合流しようとしているが、大きい道路の交通量が多く、途切れないために、なかなか大きい道路に入れない場合などにおいて、所定時間以上継続して自車両に対する優先車両が検出され且つ自車両の車速がゼロのとき、自車両を強制的に優先車両とするために、自車両を優先車両とする上記優先度情報を上記交錯可能性を有する他車両に一斉送信する(ブロードキャストする)ことが好ましい。
【0035】
また、この第5の態様において、上記交差点において自車両と交錯可能性を有する緊急車両が検出されたとき、該緊急車両に対して自車両を非優先とすることが好ましい。
【0036】
さらに、この第5の態様において、上記交錯可能性を有する他車両との間で交換される上記優先度は、自車両の車両情報又は運転者情報を考慮して設定されることが好ましい。ここで、車両情報とは、例えば、優先されるための(優先車両としての扱いを受けるための)料金支払い状況又はポイント獲得状況などであり、運転者情報とは、例えば、優良ドライバであることなどである。
【0037】
上記目的を達成するための本発明の第6の態様は、上記第1〜第5の態様のうちいずれか一態様に係る車両制御装置であって、上記交差点を右折しようとする右折車両が自車両に対する優先車両に設定された後、自車両が該交差点から第七の所定距離まで到達したときに該右折車両がいまだ該交差点を右折通過していないとき、該右折車両に対する優先度設定を取り消し、自車両を該他車両に対して優先車両とする車両制御装置である。
【0038】
この第6の態様によれば、自車両の方が交差点から遠かった等の理由により自車両に対して優先車両に設定された右折車両が、自車両が交差点に接近してもなお右折にもたついており、依然として右折待ちの状態であった場合に、自車両を安全且つ円滑に交差点通過させるために、自車両を優先車両に切り替えて自車両が制限なく交差点を通過できるようにすると共に、右折車両には自車両交差点通過後に右折してもらうようにすることができる。
【0039】
なお、上記第1〜第6の態様に係る車両制御装置は、位置検出誤差を吸収するために、上記交錯可能性を判定する際に用いられる自車両及び他車両の車両位置を2次元領域(すなわち、車両占有領域)として定義してもよい。このような車両占有領域について、現在の領域及び将来の予測領域は、例えば、ア)車両基準点の位置及び速度、イ)車両方位・車両四隅の基準点からの相対位置、ウ)運動予測位置、及び/又は、エ)進路予測位置、から定義することができる。
【0040】
また、上記第1〜第6の態様に係る車両制御装置は、建物などの遮蔽物による影響を受けずに車車間通信が行われるように交差点に中継局が設置されている場合、この中継局を経由して位置及び速度に関する情報を交換するための無線通信を周辺車両と行ってもよい。
【0041】
さらに、上記第1〜第6の態様において、上記第一〜第七の所定距離は、それぞれ独立したパラメータであり互いに異なる値を採り得るが、互いに等しい値を採るものが存在してもよい。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、交差点を安全且つ必要最低限の減速でスムーズに通過できるようにする車両制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0044】
図1〜4を用いて、本発明の一実施例に係る車両制御装置について説明する。本実施例に係る車両制御装置100は、本発明に係る交通管制実現のために、各走行車両に搭載される。
【0045】
まず、図1を用いて、本実施例に係る車両制御装置100の構成について説明する。図1は、本実施例に係る車両制御装置100の概略構成を示すブロック図である。
【0046】
車両制御装置100は、自車両の現在位置を検出する位置検出部101を有する。本発明の実施に際しては、各車両が自車両位置を精度良く検出できることが望ましいため、本実施例において、位置検出部101は、例えばRTK−GPS(リアルタイム・キネマチック全地球測位システム)などの高精度GPSを備えるものとする。なお、位置検出部101は、車両制御装置100外の例えばナビゲーションシステムなどの車載システムと兼用であってもよい。
【0047】
車両制御装置100は、更に、特に自車両前方交差点について、信号機の存在の有無及び存在する場合にはその現在の点灯色(赤/青/黄)を検出する信号検出部102を有する。本実施例において、信号検出部102は、例えば、a)無線通信機能を備え、路車間通信によりインフラ側から信号機に関する情報を取得することによって信号機の存在及び現在の点灯色を検出してもよく、或いは、b)前方撮像カメラを備え、このカメラにより撮像された動画又は静止画を画像解析処理することによって信号機の存在及び現在の点灯色を検出してもよい。
【0048】
車両制御装置100は、更に、自車両周辺の車両と直接的に又は中継局を介して間接的に無線通信を行う車車間通信部103を有する。アンテナの性能や形状並びに通信に利用する方式や周波数帯域などについては、特段の制限はなく、任意でよい。車車間通信については、様々な手法や装置構成が既に提案されており、車車間通信部103のより具体的な詳細については、当業者には明らかである。
【0049】
車両制御装置100は、更に、車両制御装置100による制動制御について、必要に応じて、ユーザ(特に自車両の運転者)に音響的に、視覚的に、及び/又は触覚的に通知するユーザ通知部104を有する。ユーザ通知部104の機能については、後に詳述する。
【0050】
車両制御装置100は、更に、例えばアクチュエータを利用してアクセルペダルに任意の大きさの操作反力を発生させてアクセルペダル反力を制御するアクセルペダル反力制御部105を有する。アクセルペダル反力制御部105がアクセルペダルに任意の操作反力を発生させる具体的な構造・機構については、既に様々な提案がなされており、当業者には既知であるため、説明を省略する。本実施例では、任意の構造・機構を採用することができる。
【0051】
車両制御装置100は、更に、運転者によるブレーキ操作とは別に補助的なアシスト制動力を発生させる制動力制御部106を有する。制動力制御部106がアシスト制動力を発生させる具体的な構造・機構については、既に様々な提案がなされており、当業者には既知であるため、説明を省略する。本実施例では、任意の構造・機構を採用することができる。
【0052】
なお、制動力制御部106は、主として自車両の減速を実現させるためのものであり、運転者による操作を一切無視し、無効とするものではない。例えば、アシスト制動力を発生させているときに、例えば前方障害物を発見した運転者が更にブレーキを踏み込んだ場合、制動力制御部106が発生させるアシスト制動力以上の制動力が発揮されるべきである。
【0053】
車両制御装置100は、更に、本実施例に係る交通管制規則をデータ及びアルゴリズムとして保持する記憶部107を有する。また、記憶部107は、道路情報も保持する。道路情報は、通信を利用して、最新のものに適宜更新されることが好ましい。さらに、記憶部107は、車両に関するデータ及び/又は運転者に関するデータを含むデータベースを保持する。詳しくは後述する。記憶部107は、例えばメモリやハードディスクなどの記憶媒体である。媒体の種類や記憶方式、記憶容量などについては特段の制限はなく任意でよい。なお、道路情報については、車両制御装置100外の例えばナビゲーションシステムなどの車載システムと兼用であってもよい。
【0054】
車両制御装置100は、更に、車両制御装置100の各構成要素の作動を統括的に制御する制御部108を有する。制御部108は、例えばECU(Electronic Control Unit;電子制御装置)であり、具体的な種類や演算能力については特段の制限はなく任意でよい。
【0055】
このような構成の車両制御装置100において、制御部108は、位置検出部101によって取得した自車両現在位置を、車車間通信部103を利用して、自車両周辺の他車両に例えばブロードキャストで送信する。この自車両現在位置情報と共に、図示しない車速検出部によって検出された自車両の車速が一緒に送信されてもよい。車速情報が送信されない場合、他車両から車両位置情報を受信した車両は、車両位置情報発信元車両の車速を当該位置情報の時間変化から演算して取得する。この車両位置情報(及び車速)のブロードキャスト送信は、固定局又は移動局である中継局(例えば、すべての交差道路上の車両が中継局として利用できるように交差点中心付近に配置された中継局など)を介して周辺車両によって受信されてもよい。
【0056】
また、位置検出誤差を吸収するために、上記車両位置情報は2次元領域(すなわち、車両占有領域)として定義されてもよい。このような車両占有領域について、現在の領域及び将来の予測領域は、例えば、ア)車両基準点の位置及び速度、イ)車両方位・車両四隅の基準点からの相対位置、ウ)運動予測位置、及び/又は、エ)進路予測位置、から定義することができる。
【0057】
また、制御部108は、車車間通信部103によって、自車両周辺の他車両から車両位置情報を取得する。また、車両位置情報発信元車両の車速を、上記のように、取得又は算出する。
【0058】
制御部108は、取得した周辺他車両の現在位置情報を記憶部107に記憶された道路情報の上に載せて、道路上での自車両と他車両との相対的位置関係を把握する。そして、この認識した相対的位置関係(前方交差点までの距離や車速など)に基づいて、当該他車両と自車両とが交差点で交錯する可能性を判定する。どのような場合に交錯可能性があると判定するか、並びに、どのような相対的位置関係のときに交錯可能性がどの程度の高さであるかの判定手法や判定基準については様々なものが提案されており、当業者には既知であるため、詳しい説明を省略する。
【0059】
制御部108は、更に、自車両と交錯可能性があると判定された周辺車両について、相対的位置関係を記憶部107に記憶された優先度設定アルゴリズムに照らして、当該交錯車両と自車両の優先度を求め、いずれの車両に前方交差点の優先的な通過(すなわち、制約されない通過)が許容されるかを判定する。
【0060】
例えば、自車両が交差点から所定の距離手前に到達した時点での交差点までの距離又は該距離を車速で除算した交差点への到達予想時間を自車両及び交錯車両間で比較し、交差点までの距離が短い方又は交差点に早く到達すると予想される方を優先車両とし、そうでない方を非優先車両とする、ことが1つの判定手法として考えられる。
【0061】
制御部108は、設定された交錯車両の優先度が自車両の優先度に比して相対的に高い場合、すなわち、当該交錯車両が自車両に対して相対的に優先されるべき車両であり、自車両は当該交錯車両に対して非優先車両であると判定された場合、アクセルペダル反力制御部105及び/又は制動力制御部106に指示して、当該交錯車両が前方交差点を通過してから自車両が当該交差点に進入するように、自車両を減速させる。
【0062】
具体的には、例えば、優先車両を自車両と同じ車線を同じ方向へ進行する先行車両となる仮想位置へ座標変換し、座標変換後の優先車両に対して所定の車間距離(余裕/マージン距離)が確保されるように、交差点手前の所定の位置を目標停止位置として自車両を制動制御し、優先車両が交差点を通過した時点で当該制動制御を解除する。
【0063】
他方、制御部108は、自車両が交錯車両に対して優先車両であると判定された場合、何ら減速のための制御を実施せず、運転者の操作に従って自車両を交差点通過させる。この場合、交錯車両においては、当該交錯車両が非優先車両であるという判定がなされ、この判定に基づいて減速制御が行われることになる。
【0064】
なお、優先車両であることは、本実施例に係る非優先車両用の減速制御を伴わず、運転者の運転操作に従った任意の走行が許容されることを意味しており、運転者の操作を無視して優先車両を強制的に制御し、優先車両を前方交差点を非優先車両よりも先に通過させるものではない。すなわち、前方交差点通過のための運転操作はあくまで運転者次第であり、例えば運転者が減速操作などを行えば、当然、その結果として当該車両は前方交差点を優先的に通過しないことになり得る。
【0065】
次いで、自車両が交錯車両に対して非優先車両の場合、すなわち自車両に対して優先車両である交錯車両に前方交差点を先に通過させる場合における車両制御装置100の動作について図2を用いて詳述する。
【0066】
制御部108は、交錯車両が優先車両、自車両が非優先車両と判定すると、交錯車両に前方交差点を先に通過させるために必要な自車両の減速の程度及びそのために必要な制動力を計算する。
【0067】
まず、制御部108は、交錯車両が優先車両であると判定された時点から当該交錯車両が前方交差点を通過するまでに要すると推定される優先車両交差点通過推定時間Tを算出する。Tは、図2に示すように、優先度判定時点での交錯車両の前端から交差点出口(後端)までの距離Dpと、交錯車両全長Lvpと、交錯車両車速Vpと、余裕(マージン)距離Dm(=車速Vpの関数)とに基づいて、
=(Lvp+Dm+Dp)/Vp
として計算される。ここで、交錯車両の全長Lvpは、例えば、1)車両現在位置や車速と共に車車間通信で伝達されてもよく、或いは、2)車両現在位置や車速と共に車車間通信で伝達された車両型式を自車両が予め保持するデータベースに照らして求めてもよい。
【0068】
また、制御部108は、自車両が非優先車両であると判定された時点から交差点に進入するまでに要すると推定される非優先車両交差点到達推定時間Tを算出する。Tは、図2に示すように、優先度判定時点での自車両の前端から交差点入口(前端)までの距離Diと、自車両の車速Viとに基づいて、
=Di/Vi
として計算される。
【0069】
非優先車両と判定された自車両の制御部108は、自車両の車速Viを制御して、優先車両である交錯車両が前方交差点を通過してから非優先車両である自車両が前方交差点に進入するように、すなわちT<Tとなるように、非優先車両である自車両に発生させるべき制動力Fbrakeを計算する。
【0070】
ここで、T<0の場合、上記Tの定義より、これは優先車両である交錯車両が既に交差点を通過していることを意味するため、非優先車両である自車両に必要な制動力Fbrake=0となる。
【0071】
他方、T≧0の場合、制動力を発生させて非優先車両である自車両を減速させることが必要となり、本実施例では、発生させる制動力Fbrake
brake=K/(T
と定義する。ここで、Kは適切に設定された正の定数、Tは推定時間Tと推定時間Tの和(T=T+T)、nは正の実数である。すなわち、本実施例では、優先車両交差点通過推定時間T及び/又は非優先車両交差点到達推定時間Tが大きいほど非優先車両に必要と判断される制動力Fbrakeを小さくするものとする。
【0072】
このように、本実施例では、上記のように定義された推定時間和Tに反比例する制動力Fbrakeを非優先車両に発生させると共に、優先車両が交差点を通過してTが正の値から負の値に変化すると、非優先車両で発生させていた制動力Fbrakeを緩やかに(滑らかに)ゼロまで減少させ、優先車両通過後はそれまで非優先車両だった自車両が何らの減速制御も受けずに運転者の操作に従った交差点通過が許容されるようになる。
【0073】
本実施例において、T<Tとなるように非優先車両を減速させるのに必要とされる上記制動力Fbrakeは、アクセルペダル反力付与及びアシスト制動力付与によって実現される。具体的には、1)必要とされる制動力Fbrakeが比較的小さい場合には、アクセルペダル反力制御部105によってアクセルペダル反力を増加させて運転者がアクセルペダルを踏み込めない(又は、踏み込みにくい)ようにすることによって必要とされる制動力Fbrakeを実現させ、2)必要とされる制動力Fbrakeが比較的大きい場合には、アクセルペダル反力制御部105によってアクセスペダル反力を増加させて運転者がアクセルペダルを踏み込めない(又は、踏み込みにくい)ようにすると共に、制動力制御部106によってアシスト制動力を発生させることによって必要とされる制動力Fbrakeを実現させる。
【0074】
付与するアクセルペダル反力及びアシスト制動力の大きさは任意でよいが、当業者には明らかなように、非優先車両に制動力Fbrakeを発生させる際には、まずアクセルペダル反力の増加によるべきであり、アシスト制動力の付与はそれを補充する目的で使用されることが好ましい。逆に、優先車両が交差点を通過してT<0となったときに制動力Fbrakeを徐々にゼロとする際には、まずアシスト制動力の付与をゼロとしてから次にアクセルペダル反力の付与を徐々に減少させるようにするべきである。
【0075】
このような優先度設定及び設定された優先度に基づく上述のような非優先車両への減速制御を円滑に実行するために、一旦設定された優先度は、原則して、非優先車両が交差点を通過するまで変更されないものとすることが好ましい。
【0076】
しかしながら、一旦設定された優先度に固定してしまうことによって不都合を生じる場合もあり得る。例えば、A)優先車両が何らかの理由により減速し、これに伴って優先車両に交差点を先に通過させるべく非優先車両もそれ以上に減速した場合、両車両が交差点手前に滞留し、円滑な交差点交通が実現されない可能性がある。また、例えば、B)優先車両に設定すべき車両が新たに検出された場合、優先度設定を再度やり直す必要が生じる。
【0077】
前者A)の場合とは、例えば、優先度設定の行き違い(自車両が優先車両だと設定した交錯車両が、GPS精度などに起因して、当該交錯車両自体を非優先車両に設定していた場合など)や、前方障害物の回避や道路沿いの駐車場への進入などのために運転者の自主的な操作によって減速した場合である。優先車両前方に割り込み車両が生じた場合は後者B)に当てはまる。後者B)の場合とは、例えば、道路沿いの駐車場から優先車両前方に第三の車両が割り込んできた場合や、救急車、消防車、又はバトカーなどの緊急車両が優先車両を追い越して交差点に進入しようとする場合などであり、以下、このような優先度設定後に現れた優先車両とすべき車両を総称的に「途中出現車両」と称す。
【0078】
本実施例においては、前者A)の場合に備えた対策として、例えば、優先車両及び非優先車両の双方の車速が所定速度以下になった場合には、自車両を非優先車両と設定した車両が優先車両と設定した交錯車両に対して左方の場合に限り、左方優先の原則を適用して、非優先車両用の減速制御を解除して、自車両を非優先車両だと設定していた車両の制約のない交差点通過を許容するようにしてもよい。
【0079】
ただし、この場合、通常の制御とは異なる制御となるため、本実施例に係る非優先車両での減速制御は自律的制御であって車両乗員への案内は不要であるところ、例外的にユーザ通知部104を利用して車両乗員(特に運転者)に制動制御(非優先制御)が解除されたことを通知するようにすることが好ましい。
【0080】
本実施例において、ユーザ通知部104は、上記の制御解除について、視覚的に通知するためのディスプレイや、音響的に(すなわち、音声アナウンスなどで)通知するためのスピーカや、ハンドルやシートを振動させることによって通知・伝達するための振動発生器などを有する。ユーザ通知部104がディスプレイを備える場合、そのディスプレイは、車両制御装置100外のナビゲーションシステムと兼用のディスプレイでもよく、ホログラム虚像を利用したオーバーヘッド・ディスプレイでもよく、或いは、インパネの一部として埋め込まれたディスプレイであってもよい。
【0081】
他方、本実施例においては、後者B)の場合に備えた対策として、例えば、B−1)当該途中出現車両を含めて再度優先度設定をやり直すようにしてもよく、或いは、B−2)交差点進入が近づいていることを考慮し、安全のため、特段の演算なしにあらゆる途中出現車両をすべて自車両に対する優先車両とし、自車両に非優先車両としての減速制御を行うようにしてもよい。
【0082】
また、このような優先度設定の行き違いや途中出現車両の出現などを未然に回避するために、例えば、車両現在位置と共にその現在位置の検出(認識)精度(例えば、GPS精度)も車車間通信によって周辺車両に伝達されるようにしておくことによって、各車両は、自車両と交錯可能性を有する車両のうち自車両よりも車両位置検出精度の低い車両に関しては、安全のため、常に自車両に対する優先車両に設定するようにしてもよい。
【0083】
さらに、この場合、自車両より位置検出精度が低い交錯車両でもあっても、伝達されたその検出精度が所定レベル以上であれば、その車両位置を信頼できるものとして当該交錯車両を常に優先車両とせず、通常通りの優先度判定を行うものとしてもよい。
【0084】
あるいは、優先度設定の行き違いや途中出現車両の出現などを未然に回避するために、例えば、各車両において優先度が設定された後で、交錯可能性を有する各車両が車車間通信を利用して各車両において設定された優先度に関する情報を相互に情報交換するようにしてもよい。
【0085】
このように優先度設定情報を交換するようにすれば、各車両は、自車両において設定された優先度と交錯車両において設定された優先度とが一致するか否かを確認することができ、交錯可能性を有する車両同士がそれぞれ自車両を優先車両に設定していた又は非優先車両に設定していた、といった優先度設定の行き違いが生じることを未然に防ぐことができる。なお、優先度情報を交換した結果、交錯可能性を有する車両間でそれぞれ設定された優先度が相矛盾するものであった場合、例えば、設定をやり直したり、位置検出精度が低い方が高い方が設定した優先度に合わせて変更したり、といった手法により優先度設定を矛盾のないものへ調整することが考えられる。
【0086】
また、この場合、自車両が交差点手前の所定距離まで接近したにもかかわらず依然として交錯車両から優先度設定情報が受信できなかった場合、安全のため、当該交錯車両を優先車両とし、自車両を非優先車両とすることが好ましい。
【0087】
また、このように優先度設定情報が車両間で交換される場合、交錯可能性を有する車両間の相対的位置関係(交差点までの距離や車速など)に代えて又は加えて、記憶部1077にデータベースの形で記憶された車両情報及び/又は運転者情報に基づいて設定された優先度が用いられても又は加味されてもよい。
【0088】
ここで、車両情報とは、例えば、当該車両が緊急車両(例えば、救急車、消防車、バトカー、など)であることを示し得る。例えば、交錯車両から受信された車両情報が当該交錯車両が緊急車両であることを示していた場合、交差点までの距離などの他の条件を検討することなく、当該交錯車両を優先車両とし、自車両を非優先車両とすることが好ましい。
【0089】
ここで言う車両情報及び運転者情報は、自車両が所望の交差点通過について優先的に又は強制的に優先車両となることができるような優先度を自車両に設定し、この設定された優先度情報を周辺車両に車車間通信で送信するためのものであって、緊急車両であるか否かに加えて、例えば、イ)優先的に優先車両となるための料金を支払い済みであるという情報、ロ)過去に通常であれば自車両が優先車両となるべき交差点通過において急いでいる交錯車両に優先車両の地位を譲った回数に関する情報、又は、ハ)過去の所定期間中に事故や交通違反を犯していない優良運転者であるという情報、などを含み得る。上記イ)は、所定の料金を事前又は事後に支払うことによって自車両を優先的に優先車両とすることができる有料サービスであり、急いでいるユーザには有用と思われる。また、上記ロ)は、譲り合いの精神に基づくいわばポイント制のサービスであり、自分が急いでないときに他人に優先車両の地位(又は、優先車両となる権利)を譲渡することによってポイントが貯まり、自分が急いでいるときには貯まっているポイントを使うことによって優先的に優先車両となれるようにするものである。
【0090】
以上の説明は、図2に示すような十字路交差点に略直交する方向から進入する車両間での本制御の実施を主として説明したが、当業者には明らかなように、本実施例はこのような状況に限らず、図3に示すように十字路交差点において右折車両と直進車両とが交錯可能性を有する場合や、比較的細い道路から比較的大きい道路へ進入・合流しようとする場合にも適用可能である。
【0091】
図3に示すような自車両が右折車両の場合、自車両が非優先車両であれば必ず一時停止するように非優先車両用の減速制御を行う必要がある。その他の点は上述の略直交する場合と同じであり、何らかの理由で直進車両が減速又は一時停止した場合などには、自車両が先に右折できるような対応がとられる。
【0092】
一時停止から右折発進する場合に非優先車両である自車両に掛けられる制動力Fbrakeの変化の一例を図4に示す。図4は、TとFbrakeとの関係の一例を示すグラフである。図示するように、T<0のとき、優先車両である直進車両は既に交差点を通過しているため、Fbrake=0とし、非優先車両は減速制御を伴わない交差点右折が許容される状態となる。T≧0のとき、Tが所定の値になるまでは発進できないような制動力Fbrakeが掛けられ、該所定の値を超えたところで制動力Fbrakeは徐々に弱められ、Tがある値以上となると、優先車両は交差点から十分に遠いと判断され、Fbrake=0となる。
【0093】
なお、このように交差点で右折する場合又は細い道路から大きい道路へ合流する場合、対向直進車両又は大きい道路の交通量が多く、非優先車両がなかなか右折又は合流できない状況に備えて、上述の優先度設定情報を交換する手法を用い、自車両の車速がゼロで且つ右折待ち又は合流待ちの状態が所定時間以上継続したときには自車両を強制的に優先車両とする優先度設定情報を周辺車両に一斉送信する(ブロードキャストする)ことが好ましい。
【0094】
また、いずれの状況においても、前方交差点に信号機が設置されていることが信号検出部102により検出された場合、運転者に違和感を与えないために、優先度設定を実施せずに又は設定された優先度を解除して、運転者が信号機に従った運転を実施できるようにすることが好ましい。この場合、換言すれば、自車両が非優先車両であって、且つ、信号機の存在が検出されなかったときには、上述のような非優先車両に対する制動制御が実施される。
【0095】
また、ここで、自車両が非優先車両であるときに自車両が信号検出部102によって信号機の存在が検出され、且つ、その色が赤であった場合には、直ちに制動制御を解除せずに、自車両への非優先車両用制動制御によって自車両を交差点の停止線で一時停止させてから制動制御を解除することが好ましい。
【0096】
このように、本実施例によれば、交差点通過時に本実施例に係る車両制御装置を搭載した各車両は、自律的に、自車両及び自車両と交錯可能性を有する周辺車両の交差点通過に関する優先度を設定し、この優先度の高い順に交差点を通過するように、非優先となった車両においては減速制御が実施されるため、各車両が信号機などのインフラによる交通管制に依存せずに安全に交差点を通過できると共に、非優先となった車両も必要最低限の減速で済み、不必要な信号待ちの一時停止がなくなり、比較的スムーズに交差点を通過できるため、交差点交通を安全且つ円滑なものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、車両において制動制御を行う車両制御装置に利用できる。搭載される車両の外観、重量、サイズ、走行性能等は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の一実施例に係る車両制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】自車両が前方交差点を直進する場合の本発明の一実施例に係る車両制御装置の動作を説明するための図である。
【図3】自車両が前方交差点を右折する場合の本発明の一実施例に係る車両制御装置の動作を説明するための図である。
【図4】本発明の一実施例に係る車両制御装置によるアクセルペダル反力制御の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0099】
100 車両制御装置
101 位置検出部
102 信号検出部
103 車車間通信部
104 ユーザ通知部
105 アクセルペダル反力制御部
106 制動力制御部
107 記憶部
108 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両において制動制御を行う車両制御装置であって、
自車両前方交差点において自車両と交錯可能性を有する他車両が検出されたときに、該交差点の通過に関して自車両及び該他車両に優先度を設定し、
自車両が前記他車両に対して非優先の場合、該他車両が前記交差点を通過してから自車両が該交差点を通過するように自車両の制動制御を実行する、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両制御装置であって、
自車両が前記他車両に対して非優先の場合、該他車両の位置を自車両と同じ車線を同じ方向に進行する先行車両となる仮想位置へ座標変換し、座標変換後の該他車両に対して所定の車間距離が確保されるように自車両の制動制御を実行する、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両制御装置であって、
自車両が前記他車両に対して非優先の場合、該他車両が前記交差点を通過するまで該交差点より第一の所定距離手前の位置を目標停止位置として制動制御を実行すると共に、該他車両が前記交差点を通過したときに制動制御を解除する、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項記載の車両制御装置であって、
自車両が前記交差点から第二の所定距離手前に到達したときに、前記交錯可能性を有する他車両から該交差点までの距離が該第二の所定距離よりも短い場合、自車両を該他車両に対して非優先とする、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項記載の車両制御装置であって、
自車両が前記交差点から第三の所定距離手前に到達したときに、前記交錯可能性を有する他車両が該交差点に到達するまでの所要時間が自車両が該交差点に到達するまでの所要時間よりも短い場合、自車両を該他車両に対して非優先とする、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項記載の車両制御装置であって、
自車両が前記交差点から第四の所定距離手前に到達するまでに設定された前記優先度は、自車両が該交差点を通過するまで変更されない、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項7】
請求項6記載の車両制御装置であって、
自車両が前記交差点から前記第四の所定距離手前に到達するまで優先車両は存在しなかったが、その後、自車両が該交差点により接近してから該交差点において自車両と交錯可能性を有する他車両が新たに検出された場合、この新たに検出された他車両に対して自車両を非優先とし、制動制御を実行する、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項8】
請求項6記載の車両制御装置であって、
前記交錯可能性を有する他車両のうち、自車両が前記交差点から前記第四の所定距離手前に到達するまでは優先車両に設定されなかったが、自車両が該交差点から該第四の所定距離手前に到達したときに該交差点から第五の所定距離範囲内に位置し、且つ、搭載された現在位置検出装置の位置認識精度が自車両のものより低い車両が存在した場合、この位置認識精度が低い他車両に対して自車両を非優先とする、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項9】
請求項8記載の車両制御装置であって、
前記位置認識精度が自車両より低い他車両の位置認識精度が所定水準以上の場合、該他車両に対して自車両を優先とする、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項記載の車両制御装置であって、
前記交錯可能性を有する他車両に対して自車両が非優先車両に設定された後、該他車両及び自車両の双方の車速が所定の速度を下回ったとき、自車両が該他車両に対して左方車両である場合のみ、自車両の制動制御を解除する、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項11】
請求項10記載の車両制御装置であって、
自車両の制動制御が解除されるときに自車両乗員に注意喚起する、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項記載の車両制御装置であって、
自車両が前記他車両に対して非優先であるときに前記交差点に信号機の存在を検出した場合、自車両の制動制御を解除する、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項13】
請求項12記載の車両制御装置であって、
自車両が前記他車両に対して非優先であるときに前記交差点に信号機の存在を検出し、且つ、該信号機が赤色の場合、制動制御によって自車両を該交差点の停止線で一時停止させてから制動制御を解除する、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項記載の車両制御装置であって、
自車両が前記他車両に対して非優先であるときに前記交差点に信号機の存在を検出しない場合、自車両の制動制御を継続する、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項記載の車両制御装置であって、
通信を利用して、自車両において設定された前記優先度情報を前記交錯可能性を有する他車両に送信すると共に、該他車両において設定された前記優先度情報を該他車両から取得する、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項16】
請求項15記載の車両制御装置であって、
自車両が前記交差点から第六の所定距離に到達するまでに前記交錯可能性を有する他車両から前記優先度情報が取得できなかった場合、該他車両に対して自車両を非優先とする、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項17】
請求項15又は16記載の車両制御装置であって、
所定時間以上継続して自車両に対する優先車両が検出され且つ自車両の車速がゼロのとき、自車両を優先車両とする前記優先度情報を前記交錯可能性を有する他車両に一斉送信する、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項18】
請求項15乃至17のいずれか一項記載の車両制御装置であって、
前記交差点において自車両と交錯可能性を有する緊急車両が検出されたとき、該緊急車両に対して自車両を非優先とする、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項19】
請求項15乃至18のいずれか一項記載の車両制御装置であって、
前記交錯可能性を有する他車両との間で交換される前記優先度は、自車両の車両情報又は運転者情報を考慮して設定される、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれか一項記載の車両制御装置であって、
前記交差点を右折しようとする右折車両が自車両に対する優先車両に設定された後、自車両が該交差点から第七の所定距離まで到達したときに該右折車両がいまだ該交差点を右折通過していないとき、該右折車両に対する優先度設定を取り消し、自車両を該他車両に対して優先車両とする、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれか一項記載の車両制御装置であって、
前記交錯可能性を判定する際に用いられる自車両及び他車両の車両位置を2次元領域として定義する、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項22】
請求項1乃至21のいずれか一項記載の車両制御装置であって、
交差点に設置された中継局を経由して周辺車両と通信を行う、ことを特徴とする車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−45350(P2007−45350A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233171(P2005−233171)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】