説明

車両可動領域検出装置

【課題】探索対象の屋内空間に、ランドマークとみなすことが可能な特定形状の物体や図柄が無く、大量の椅子やパイプで構成された構造物のような複雑形状の物体が置いてある場合、正確な位置取得ができない。そこで、無人車両に未知の建物内部を走行させた場合に、建物内部の広さや配置物の形状によらず、自己位置を取得し地図を構築することができる装置を提供する。
【解決手段】画像データから画像の輝度変化を用いて、無人車両が走行可能な範囲である可動領域データを検出する可動領域検出手段を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無人車両を移動させて、屋内を撮影し、同時に無人車両の稼働領域を検出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無人車両が未知空間内を移動するには、未知空間における自己位置取得と地図作成が必要となる。
無人車両が未知空間において自己位置を取得する方式として、無人車両に搭載したステレオカメラを用いて撮影した画像からドア、コーナー、照明、換気口を認識し、これをランドマークとみなす研究がなされている。
また、自己位置取得と地図構築を同時に行う方式としてSLAM(simultaneous localization and mapping)の研究がなされている。SLAMの位置取得には、無人車両が2地点でレーザースキャナを用いて観測した環境地図を照合し,2地点間の位置,姿勢の変化を計算するスキャンマッチング手法の研究がなされている。環境地図とは、例えば無人車両に搭載したレーザースキャナから一定の高さの水平面の全周方向を計測して求められる周辺配置物までの距離を、平面図上に記した点群の座標データである。
さらに、全方位カメラを用いて、移動体に搭載された全方位カメラからの画像に基づき、柱、壁などの垂直成分エッジのある方向を順次抽出することで得られるエッジマップ(地図)を自動的に作成記憶し、エッジマップから探索することで自己位置を同定する技術などがある。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−155195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のランドマークを観測して自己位置を取得する方式はランドマークとする対象物が検知困難な場所では自己位置を取得できないという問題があった。
また、従来のスキャンマッチング手法には、周辺環境を取得困難な広い場所や周辺形状が複雑な形状で照合が困難な場合に正確な位置取得ができないという問題がある。
例えば、複雑な形状の一例として、机や椅子、パイプで構成されたさまざまな構造物が挙げられる。これらは、レーザースキャナを配置した高さが低い場合、机や椅子の脚、構造物のパイプが多量に観測でき、これらの脚やパイプが細い場合は、レーザースキャナの計測間隔によっては計測できず、正確な形状取得ができないことから地図が正しく構築できないという問題があった。
全方位カメラを用いて垂直成分を検出することでエッジマップを自動的に作成し、自己位置を同定する方式についても、スキャンマッチング手法と同様に、周辺形状が複雑な形状で照合が困難な場合に正確な位置取得ができないという問題があった。
【0005】
そこで、この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、探索対象の屋内空間に、ランドマークとみなすことが可能な特定形状の物体や図柄が無く、大量の椅子やパイプで構成された構造物のような複雑形状の物体が置いてある場合であっても、無人車両の自己位置推定と地図構築を行うことができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、所定の地点において撮影された画像データを入手する撮影手段と、画像データから画像の輝度変化を用いて、無人車両が走行可能な範囲である可動領域データを検出する可動領域検出手段と、無人車両が複数の地点で撮影した画像データをもとに検出した可動領域データから、前回の撮影地点の座標系を基準として、移動後の撮影地点の可動領域データから位置変位データを決定する位置推定手段と、複数の可動領域データと複数の位置変異データとから、より広域の可動領域となる地図データを生成する地図作成手段と、位置変位データから特定される現在位置と地図データとから、経路計画を行う経路計画手段と、経路計画に基づいて無人車両に対して移動量の指示を行う移動制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、無人車両に未知の建物内部を走行させた場合に、建物内部の広さや配置物の形状によらず、自己位置を取得し地図を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1における車両可動領域検出装置を構成する無人車両の外観図
【図2】実施の形態1における車両可動領域検出装置の処理装置を構成する構成図
【図3】実施の形態1における全方位カメラ110が撮影した画像データと実空間との関係図
【図4】図3において、A地点での全方位カメラ110が撮影した画像データを稼働領域データに変換する過程を示す図
【図5】図4における探索の開始点を決定する過程を示す図
【図6】図3におけるA地点からC地点まで移動したときの各々の画像データと検出された可動領域データを示す図
【図7】図6にて検出された可動領域データを用いて位置変位データを求める過程を示す図
【図8】図7にて得られた位置変位データと可動領域データとから地図データとして生成される過程を示した図
【図9】実施の形態1における経路計画手段125が計画する経路の決定例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における車両可動領域検出装置を構成する無人車両の外観図である。
車両可動領域検出装置は、無人車両100に全方位カメラ110と処理装置120とを搭載して自走可能な車両として構成されている。
【0010】
無人車両100は、図1においては、無人車両100を主に前後及び回転移動させる左右駆動輪と無人車両の姿勢を安定させる支えの機能を有する1輪を装備している。
処理装置120と無人車両100は有線または無線の通信手段を用いて通信が可能であり、処理装置120からの通信による信号により無人車両100を制御することができる。処理装置120からの制御により,無人車両100は、駆動輪を任意速度で任意時間回転させて移動する。左右駆動輪の回転速度,及び回転方向の制御により,前後移動および旋回が可能である。
他の場合としては、無人車両100を主に前後に移動させる左右駆動輪と無人車両の姿勢を安定させる支えの機能を有し、無人車両100の進行方向を決定する1輪を装備している場合でもよい。
【0011】
処理装置120と全方位カメラ110は有線または無線の通信手段を用いて通信が可能であり、全方位カメラ110が撮像した画像を処理装置120が受信することができる。
全方位カメラ110は、例えば地上高1m程度の高さから真下(無人車両の足元方向)を撮影する位置に設置されている。全方位カメラ110は、水平方向の全方位に対して撮影することが可能であり、全方位カメラ110から真下方向を0度とすると0度から180度(水平方向)を超えて上側に数十度レベルまでの広角を撮影することが可能である。
【0012】
次に処理装置120の詳細について説明する。
図2は、実施の形態1における車両可動領域検出装置の処理装置を構成する構成図を示す。
処理装置120は、全方位カメラ110へ撮影指示を送信し、送信された画像データを入手する撮影手段121と、画像データから無人車両100が走行可能な範囲である可動領域データを検出する可動領域検出手段122と、無人車両100が複数の地点で撮影した画像データをもとに検出した可動領域データから、各地点の位置データを求めるとともに、移動前の地点の座標系を基準として、移動後の座標系の原点と座標と、座標系が方位方向に回転している場合の回転角度データで示される位置変位データを推定する位置推定手段123と、複数の可動領域データと位置変異データとから、より広域の稼働領域となる地図データを生成する地図作成手段124と、位置変位データから特定される現在位置と地図データとから経路計画を行う経路計画手段125と、経路計画に基づいて無人車両100に対して移動量の指示を行う移動制御手段126とを備えている。
また、処理手段は、様々なデータを記憶する記憶装置127も備えており、それぞれ画像データを記憶する画像データ記憶手段127a、可動領域データを記憶する可動領域データ記憶手段127b、位置変位データを記憶する位置変位データ記憶手段127cと、地図データを記憶する地図データ記憶手段127dを備えている。
【0013】
動作及び各手段の詳細について、図2における撮影手段121から移動制御手段126までのループ順に説明する。
撮影手段121は、全方位カメラ110に対し、撮影指示を出す。
全方位カメラ110は、画像データを記録する。このとき、無人車両は停止しているものとする。
全方位カメラ110は、画像データを撮影手段112に送信し、撮影手段121は、画像データ記憶手段127aに画像データを記憶させる。
図3は、実施の形態1における全方位カメラ110が撮影した画像データと実空間との関係図である。
無人車両100は画面手前から奥行き方向(図3中のZ方向)を進行方向としてA地点からB地点、C地点へと進むものとする。無人車両100の右方向をX方向とする。Yは高さ方向である。
全方位カメラ110が撮影した画像データは円形に写る。画面上の点の位置を、円の中心から円の上方向(Z方向)を基準として時計周りの角度であるθと、円の中心からの画素距離であるrを用いて点(θ,r)と表現することとする。また、円の中心から円の端までの画素数をrMAXとする。図3の例では、全方位カメラから真下方向を基準とした仰角をαとすると、0度から110度までの範囲のαについて、画像データに写る。このとき、取得画像中の点(θ,r)には、全方位カメラから方位角を、Z軸方向を基準とした時計回りにθ、仰角α=110×(r/rMAX)の方向の色が写るとする。取得画像の点(0rMAX)の色は実空間における全方位カメラの進行方向かつ床面と水平な面を基準として仰角20度上方向の実空間を写した色である。取得画像の点(0,0)は実空間における全方位カメラの真下の画像である。
【0014】
次に、可動領域検出手段122が画像データから無人車両100が走行可能な範囲である可動領域データを検出する過程について説明する。
図4は、図3において、A地点での全方位カメラ110が撮影した画像データから可動領域データを検出する過程を示す図である。
【0015】
可動領域検出手段122は、はじめに、図3におけるA地点での画像データに対しエッジ抽出処理をかける。これは、画像データに対するフィルタ処理として、SOBELフィルタまたはラプラシアンフィルタを用いる。エッジ抽出後の画像データは、元の画像データの画素のうち、輝度や色が周辺の画素と異なる部分(画像の見た目に変化がある部分)だけ高輝度(白に近い)色の画素となり、変化の少ない部分は黒い色の画素となる。
【0016】
次に図4の右上に示すように、エッジ抽出後の画像データを探索することにより、可動領域範囲を検出する。
探索をスタートする画素の決定方法は図5を用いて後述する。
探索によって決定された画素が図4右上のエッジ抽出結果の床面を表現する黒い画素(輝度が一定閾値以下)であった場合、ここから探索をスタートする。
探索は、図中矢印で示したように画像の中心から、黒い画素が示す領域の中で最も距離の大きい画素から、距離が同じ画素を時計周りに調べ、白い画素(輝度が一定閾値以上)にあたるまでの画素(黒い画素)を1つの画素グループとする。次に、その画素グループと接しかつ画像の中心に1画素近い画素をスタート地点として画像の中心からの距離が同じ画素を左右に調べて白い画素(輝度が一定閾値以上)にあたるまでの画素(黒い画素)を新たな画素グループとする。同様にして、画素グループの内側(画像の中心に近い側)に画素グループに接した黒い画素がなくなるまで繰りかえす。これにより生成した画素グループが可動領域範囲である。
【0017】
また、別の方法として、探索は、黒い画素が示す領域の中で最も距離の小さい画素から、距離が同じ画素を時計周りに調べ、白い画素(輝度が一定閾値以上)にあたるまでの画素(黒い画素)を1つの画素グループとする。次に、その画素グループと接しかつ画像の中心に1画素遠い画素をスタート地点として画像の中心からの距離が同じ画素を左右に調べて白い画素(輝度が一定閾値以上)にあたるまでの画素(黒い画素)を新たな画素グループとする。同様にして、画素グループの外側(画像の中心に遠い側)に画素グループに接した黒い画素がなくなるまで繰りかえしてもよい。
【0018】
また、さらに別の方法として、可動領域検出手段122が、エッジ抽出前の、探索対象画像を図4左上のカラーの画像データを用いて、無人車両に至近の1点でかつ、直前の可動領域検出手段122による床面算出結果と移動制御手段126による移動制御により床面が見えている方向の点を、床面の開始点として探索を開始する。このとき、開始点の画素に含まれる赤、青、緑の輝度成分を読み込み、その点を含む周辺の9画素の画素値と比較し、それぞれの色の輝度成分との差が、予め定めた閾値範囲内の場合、その画素も床面であると判断する。新たに床面と判断した画素を中心として、その周辺の画素も同様に床面かどうかを判断する。これを繰り返して床面の画素を増やすことができなくなった時点で床面全体を選択したこととする。すなわち、この方法によると、エッジ抽出をせずとも、可動領域範囲を生成することができる。
以上のいずれの探索方式の場合も、探索開始点は1点ではなく、無人車両の周囲で床面が見えている複数の点から開始してもよい。
【0019】
そして、可動領域範囲を直交座標系に変換したものが可動領域データとなる。可動領域範囲を直交座標系に変換する方法についても図5を用いて後述する。
可動領域範囲を直交座標系に変換する方法は、図3に示すように取得画像中の点(θ,r)は、全方位カメラから方位角を、Z軸方向を基準とした時計回りにθ、仰角α=110×(r/rMAX)の方向の色が写るので、以下のように計算する。全方位カメラと点X1の距離をDとする。カメラの高さをhとすると、h=D×cosαなので、D=h/cosαとなる。D×sinθがXZ直交座標の原点0からX1までの距離である。つまり、実空間上の位置をθとrを用いて表現可能である。このθとrから、可動領域外周の画素のXZ座標系上の座標を求めて可動領域データとすることができる。但し、仰角αの算出方法は、山澤らの著書論文「移動ロボットのナビゲーションのための全方位視覚センサHyperOmni Visionの提案」(電子情報通信学会論文誌D−11 Vol.J79−D−11 No.5 PP698−PP707)における図5中のOc−Om−Pのなす角度と同じ手法で、画像データ上の画素位置から求めるものとし、画像を直交座標とみなした場合の縦、横の画素の順番、すなわち本明細書の図3におけるZ方向、X方向の順番にて求めるものとする。
【0020】
可動領域検出手段122は、このように画像データから、無人車両が走行可能な範囲である可動領域データを得る。図4のように、画像データ中の走行可能領域(太線で囲んだ部分)を、画像データの下に記した変換後の領域形状に変換して可動領域データ記憶装置127bに記録する。
また、得られた可動領域データのうち、撮影位置から一定以上距離のある地点の領域については、正確な距離が不明なため、図4の点線のように未確定の線とする。
【0021】
可動領域データは、無人車両100の現在位置を中心として、進行方向をZ、右手方向をXとした直交座標系における領域のデータである。領域の表現としては、複数点の座標からなり、これによる折れ線によって囲まれた領域である。
【0022】
最初に探索を開始する画素の決定方法を図5に示す。
図5は、図4における探索の開始点を決定する過程を示す図である。
移動前に無人車両100がいた地点を図中A地点、移動後の目的地をB地点とする。移動前のA地点、すなわち可動領域データが全くない時点で、最初に探索を開始する場合、まず、A地点について、撮影手段121の指示のもとに、全方位カメラ110が撮影を行う。そして得られた画像データ、または可動領域検出手段122によって得られたエッジ抽出後の画像データを、図3には図示していない、処理装置120に備えらえている別の通信装置によって監視者が見る遠隔地のコンピュータなどにおくられる。その監視者が可動領域を含む座標または領域を指定して遠隔地のコンピュータから処理装置120に指示する。監視者が送信した可動領域を受信した可動領域検出手段122は、可動領域を含む座標または領域と、エッジ抽出後の画像データとから、黒い画素が示す領域の中で最も距離の大きい、または小さい画素を開始点と指定することで探索を開始することができる。
または、エッジ抽出後の画像データから、黒い画素が示す領域の中で最も距離の小さい画素(図3における中心rからZ方向にrMINの距離の地点)が最も初期設定時に稼働領域である確率が高いことから、この点を開始点と指定してもよい。
そして探索結果、得られた可動領域データが、図5bにおける、左側のA地点によって得られた可動領域データである。
移動後に、B地点を中心とし、移動前であるA地点で判明していた可動領域データを表示すると図5の右上側のようになる。この可動領域中の未探索領域(可動領域かどうかわからない部分に接する領域(図中点線の四角の中)の点)の中で、最も距離の大きい、または小さい画素を最初に探索をはじめる点とすることができる。
【0023】
そして探索により、図5の右下側の図の線に囲まれたような可動領域が検出できる。この線に囲まれた部分を直交座標系へ射影し、追加の可動領域データとなる。
【0024】
位置推定手段123は、無人車両100が複数の地点で撮影された画像データをもとに検出した可動領域データから、各地点の位置データを求めるものである。
図6は、図3におけるA地点からC地点まで移動したときの各々の画像データと検出された可動領域データを示す図である。
位置推定手段123は、図6のA地点から検出した可動領域データと、B地点から検出した可動領域データから、A地点とB地点との位置変位データを求め、同様にB地点から検出した可動領域データと、C地点から検出した可動領域データとから、B地点とC地点との位置変位データを求める。
位置変位データは、2地点間の一方を基準とした場合の距離と角度である。よって、A地点とB地点との位置変位データは、移動前のA地点の座標系を基準として、移動後のB地点の座標系の原点を座標で表現したデータと、B地点の座標系が方位方向に回転している場合の回転角度データで表現される。
同様にB地点とC地点との位置変位データは、移動前のB地点の座標系を基準として、移動後のB地点の座標系の原点を座標で表現したデータと、C地点の座標系が方位方向に回転している場合の回転角度データで表現される。
例えば、画像データを撮影した地点数が10箇所ある場合、位置変位データは9つの電子ファイルとなる。
【0025】
次に、位置推定手段123における、2地点間の位置変位データの求め方について説明する。図7は、図6にて検出された可動領域データを用いて位置変位データを求める過程を示す図である。
図7の上段には、図6にて求められた可動領域データ、すなわち無人車両100が移動しながら、連続した地点であるA地点、B地点、C地点において全方位カメラ110による撮影を行ったうえで、フィルタ処理や探索が行われた後の、それぞれ可動領域データが検出されている。
地点Aの可動領域データは、A地点を中心としたX-Z直交座標系上の点として表現されている。地点Bの可動領域データは、B地点を中心としたX-Z直交座標系上の点として表現されている。ここで、無人車両100がA地点にいる時点で、経路計画手段125が、次に移動する移動先をB地点の位置に計画したとする。そして移動制御手段126により、A地点からB地点へ向かうように無人車両100を制御した結果、無人車両はB地点付近に到達する。但し、移動量に誤差が生じる場合があるため、正確にB地点に到達したといえない。そこでA地点を原点とした直行座標系において、実際に無人車両が位置するB地点付近の座標を求める。以下の繰り返し処理1〜3を実施する。
【0026】
繰り返し処理1:B地点付近においてB地点付近を原点として撮影、処理されたX-Z座標系の可動領域データを、経路計画手段125が計画したB地点に所定の補正量を加算したB+α地点での可動領域データとする。
所定のαについては、X座標をプラスマイナス20(単位をcmとし、ステップを1cmとする)、Z座標をプラスマイナス20(単位をcmとし、ステップを1cmとする)、B地点における可動領域を示す座標系の回転を360度(1度単位とする)変化させることができる。
繰り返し処理2:B+α地点を原点とする可動領域データとB+α地点を、A地点を原点とした直交座標系に射影する。
繰り返し処理3:A地点の可動領域データとB+α地点の可動領域データの重複する面積を求める。
【0027】
繰り返し処理1〜3のうち、αの値を変化して処理1〜3の繰り返し処理を実施し、この結果面積が最大となるαの値(並行移動値(X,Z)および回転角度差)がA地点を基準として実際のB地点までの距離及び方位角となる。図7の中段左側に示されたものである。これらのデータをA地点と実際のB地点の位置変位データとして記録する。同様に、実際のB地点に対して、C地点の距離と方位角度を実際のB地点を求めた場合と同様に求める。結果は図7の中段右側に示されている。
【0028】
よって、図7の中段に示すように求められたA地点から実際のB地点の位置変位データ、実際のB地点から実際のC地点への位置変位データが図7の下段に示されることとなる。
【0029】
地図作成手段124は、多地点で取得した可動領域と、位置変位データから、全域の可動領域データを合成した電子データとして出力するものである。
【0030】
図8は、図7にて得られた位置変位データと可動領域データとから地図データとして生成される過程を示した図である。
地図作成手段124は、それまでに取得した、A地点から実際のB地点の位置変位データ、実際のB地点から実際のC地点への位置変位データから、図8の左側に記すような撮影位置の変位図を生成する。この変位図は最初に取得した地点がA地点とすると、A地点を中心とした直交座標系上にA地点に対する実際のB地点の撮影地点を表示する。A地点を中心とした直交座標系上の実際のB地点を中心として、実際のB地点において取得した可動領域データを射影する。このとき、実際のB地点における位置変位データに方位角度の変位のデータがあった場合、この回転を加えてから射影する。
【0031】
同様にして、実施のC地点にて取得した可動領域データもA地点を中心とした直交座標系上に射影する。このとき、実際のC地点にて取得した可動領域データに対して、実際のB地点に対する実際のC地点の移動変位量の並行移動と回転を加えて実際のB地点を中心とした直交座標系上に射影し、次に実際のB地点中心の座標系に射影した可動領域データに対して、A地点に対する実際のB地点の移動変位量の並行移動と回転を加えてA地点を中心とした直交座標系上に射影する。
このようにして、多地点で取得した可動領域を1つの座標系上に射影する。結果として、
図8の右側に示すような可動領域データの合成結果が地図データとなる。可動領域と撮影位置を合成した地図データは、実際のC地点まで進んでいれば、実際の地点までに取得した地図として記録しておく。
また、無人車両100に図示しないが表示装置を載せて地図を表示してもよいし、無人車両100の処理装置120に備えられている別の通信装置によって処理装置120から遠隔地のコンピュータに地図データと取得したパノラマ画像を伝送し、これを表示してもよい。
【0032】
経路計画手段125は、位置変位データから現在の位置を特定し、地図データから無人車両100が移動可能な領域を把握して、これらの情報から次に無人車両100が走行すべき方向を見つけて経路を決定する手段である。
【0033】
経路計画手段125は、図9を用いて説明する。
図9は実施の形態1における経路計画手段125が計画する経路の決定例を示す図である。無人車両100はD地点、E地点と進み、現在、F地点にいるとする。無人車両がそれまでに収集した可動領域を全て実線で表示した範囲である。また、D地点からE地点を経てF地点へ進む間で可動領域として取得できなかった限界範囲は点線で示した範囲であるとする。最も近い未探索領域へ進むこととし、G地点を目的地とした経路を計画する。このとき、G地点は必ず可動領域内部に限定するとともに、E地点からF地点へ向かう直線が長い場合は、予め決めた一定距離だけ進む計画をたてることとする。また、現地点から未探索領域までの経路設定が直線でなしえない場合は、折れ線により可動可能範囲内を移動して経路を計画することとする。
【0034】
移動制御手段126は、経路計画手段125が計画した経路に従い無人車両を移動する手段である。
【0035】
移動制御手段126においては、現在までに取得した最新の地図データを読み込み、かつ現在の位置、方向から、経路計画手段125が計画した次の目的地へ移動をする。無人車両100の両輪、または必要に応じて進行方向を決定する1輪の方向を駆動、制御することにより、その場で無人車両の向きを目的方向へ向け、駆動輪の回転量を制御して、目的の距離を走行して目的地と思われる地点で停止する。
【0036】
よって図2に示す処理フローを繰り返し、目的地が設定できなくなったところで、探索終了となる。
【0037】
従って、全方位カメラ110へ撮影指示を送信し、送信された画像データを入手する撮影手段121と、画像データから画像の輝度変化を用いて、無人車両100が走行可能な範囲である可動領域データを検出する可動領域検出手段122と、無人車両100が複数の地点で撮影した画像データをもとに検出した可動領域データから、各地点の位置データを求めるとともに、移動前の地点の座標系を基準として、移動後の座標系の原点と座標と、座標系が方位方向に回転している場合の回転角度データで示される位置変位データを推定する位置推定手段123と、複数の可動領域データと位置変異データとから、より広域の稼働領域となる地図データを生成する地図作成手段124と、位置変位データから特定される現在位置と地図データとから経路計画を行う経路計画手段125と、経路計画に基づいて無人車両100に対して移動量の指示を行う移動制御手段126とを備えたので、広い空間や、複雑な配置物があっても、無人車両100の移動可能な領域を検出し、無人車両の自己位置推定と地図構築を行うことができる。
【0038】
尚、本実施の形態においては、全方位カメラ110を用いて説明したが、部分方位カメラであっても、ある地点での撮影に方角を分けて複数回撮影したものを合成して画像データとして扱っても、本実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0039】
尚、本実施の形態においては、可動領域検出手段により可動領域データを検出しているが、撮影手段により撮影した画像データに映っている絵は全てを直交座標系に変換した画像を仮の可動領域データとみなしてもよい。この場合、例えば無人車両から半径10メートル以内の円形の画像を仮の可動領域データとする。2地点で得られる円形の仮の可動領域データについて、上記に記した繰り返し処理1〜3を実施する。この場合の繰り返し処理3における重複する部分とは、画素の色相を数値化した値の差異が予め定めた閾値以下の画素を重複する画素とみなす。また、それぞれの仮の可動領域データの中心から重複する部分が連続している場合は重複面積の計算対象とするが、仮の可動領域データの中心から一定距離以上離れた位置に孤立した重複部分は重複面積の対象としなくてもよい。これにより、床以外の設置物の色の一致を除外することができる。これらにより、同じ色の床部分の重なる重複が最大となる2地点の位置変位データが求まり、本実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0040】
100 無人車両
110 全方位カメラ
120 処理装置
121 撮影手段
122 可動領域検出手段
123 位置推定手段
124 地図作成手段
125 経路計画手段
126 移動制御手段
127 記憶手段
127a 画像データ記憶手段
127b 可動領域データ記憶手段
127c 位置変位データ記憶手段
127d 地図データ記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の地点において撮影された画像データを入手する撮影手段と、
画像データから画像の輝度変化を用いて、無人車両が走行可能な範囲である可動領域データを検出する可動領域検出手段と、
無人車両が複数の地点で撮影した画像データをもとに検出した可動領域データから、前回の撮影地点の座標系を基準として、移動後の撮影地点の可動領域データから位置変位データを決定する位置推定手段と、
複数の可動領域データと複数の位置変異データとから、より広域の可動領域となる地図データを生成する地図作成手段と、
位置変位データから特定される現在位置と地図データとから、経路計画を行う経路計画手段と、
経路計画に基づいて無人車両に対して移動量の指示を行う移動制御手段と
を備えたことを特徴とする車両可動領域検出装置。
【請求項2】
前記可動領域検出手段は、前記画像データに対してSOBELフィルタまたはラプラシアンフィルタを用いて画像データの隣接画素との輝度変化に応じて輝度が高くなるよう処理することを特徴とする請求項1に記載の車両可動領域検出装置。
【請求項3】
前記可動領域検出手段は、画像データの隣接画素との輝度変化に応じて輝度が高くなるよう処理されたエッジ抽出後の画像データに対し、輝度の低い部分の領域を可動領域範囲とすることを特徴とする請求項2に記載の車両可動領域検出装置。
【請求項4】
前記位置推定手段は、移動後の撮影地点の可動領域データから位置変位データを決定する際、無人車両の移動誤差に対して、移動前後の可動領域データが重なる面積が最大となる移動後の位置を、前記移動後の位置として決定することを特徴とする請求項1乃至3に記載の車両可動領域検出装置。
【請求項5】
前記経路計画手段は、最も近い未探索領域がある方向であって、移動後の地点が探索済みである可動領域となるような地点を次の移動地として計画することを特徴とする請求項1乃至4に記載の車両可動領域検出装置。
【請求項6】
前記撮影手段は、全方位カメラであることを特徴とする請求項1乃至5に記載の車両可動領域検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−39968(P2011−39968A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189126(P2009−189126)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】