説明

車両情報システム

【課題】車載システム(105)がセルラー電話システムのような無線通信リンク(110)を用いてサーバーシステム(120)と通信する車両情報システムによる交通情報の収集方法を提供する。
【解決手段】本発明の方法は、車両が道路網の複数の区分の各々を通過したことを検知して車両位置を追跡し、検知した各区分について、各区分上の車両速度に関連するデータを含む交通関連データを記録し、記録したデータをサーバーへ送信するステップを含む一組の車両から交通関連データを受信し、受信した交通関連データにより交通データベースを更新する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は車両用情報システムに関する。
【0002】
車両の運転者に種々のタイプの情報を提供する車両情報システム、特に、ナビゲーションシステムが開発されている。かかるナビゲーションシステムの一種である自律的ナビゲーションシステムは、通常、コンパクト光ディスク(たとえば、CD−ROM)のような取外し可能なメディアに記憶された搭載地図を利用する。ナビゲーションシステムは、搭載地図を用いて、出発点から車両の運転者が指示する目的地までのルートを設定する。例えば、情報の追加または補正のための自律的システムの地図の更新には、通常、取外し可能なメディアの交換が必要である。
【0003】
ナビゲーションシステムには、運転者が所望の目的地(システムによっては現在位置)を一字一字打ち込むことにより目的地を入力するものがある。また、ガソリンスタンドあるいはレストランのような興味ある施設の蓄積リストから運転者が選択を行うシステムもある。運転者が目的地を入力すると、システムがその目的地までのルートを道路網に沿って設定する。ルートは最短距離あるいは最短走行時間を与えるものとして設定するのが普通である。ルートの設定が完了すると、システムが運転者をそのルートに沿って誘導する。
【0004】
ルートに沿う誘導方式には種々のものがあるが、特に簡単な方式は、例えば一つの道路を曲がって次の道路へ移る交差点で個別の指示を次々に運転者に提供する方式である。運転者は、次の指示を待つ状態にあることを明示する。例えば、それらの指示は音声出力で提供され、運転者は次の指示を待つ状態になると「次」と発声する。
【0005】
ルートに沿う別の誘導方法には、設定ルートと自車位置を動的に表示する地図を用いるものがある。運転者は、設定ルートを辿るために何処で、また何時、方向転換を行うかの判断をこの地図を用いて行う。
【0006】
誘導方式には、車載センサーにより自車位置を推定するものがある。例えば、磁気コンパスにより走行方向を推定し、また速度センサーにより走行距離を推定する。さらに、全地球測位システム(GPS)により自車位置を推定することができる。GPSは、多数の衛星が発信する信号を車載GPS受信機が受信してその絶対位置を推定するものである。
【0007】
開発された車両情報システムには他のタイプのものもある。その中には、交通注意報のような交通関連情報を特殊な車載無線受信機へ放送するものがある。
【発明の概要】
【0008】
一般的に、本発明は、一つの側面で捉えると、車両情報システムである。車両情報システムは、車載システムと集中サーバーシステムとより成ることを特徴とする。車載システムは、無線通信リンクを介してサーバーシステムと交信する。
【0009】
一般的に、本発明は、別の側面で見ると、車両を出発点から道路網を経て目的地へ誘導する方法である。この方法は、例えば、道路の住所または興味ある地点の識別名を送信することにより、目的地の明細をサーバーに送信することを特徴とする。サーバーは、指定された目的地までのルートを設定してルートの明細を車両へ送信する。この方法はまた、道路網を経て目的地へ到達する設定ルートの明細をサーバーから受信するだけでなく、設定ルート近傍の道路網の明細を含む地図をサーバーから受信する。例えば、その地図は設定ルート上の特定地点の周りの1または2以上の領域に対応するか、設定ルート周辺の「
回廊」に対応するか、またはそのルート近傍の複雑な形状の領域である場合がある。設定ルートに、車両の運転者が実行する多くの運転操作の明細を含めることが可能であり、また各運転操作の明細にはその運転操作を行う地点も含まれる。その地図は、出発点の近傍又は指定された一つの運転操作を行う地点の近傍に関連する場合がある。その方法に、自車位置を追跡する特徴を含めるようにしてもよい。その方法には、受信した地図を設定ルート及び自車位置の表示と共に表示する特徴が含まれる場合がある。
【0010】
本発明の長所は、目的地までのルートを設定するにあたり予め蓄積した地図を車両が具備することを要しない点にある。また、本発明は、設定ルートの出発点または運転操作を必要とする中間の点の近傍の地図を表示する方法を提供するが、その際、地図を車両に予め蓄積する必要はない。表示される地図は、方向転換の指示を与える難しい運転操作の間に車両の運転者に有益な情報を提供することができる。
【0011】
一般的に、本発明は、別の側面で見ると、車両の追跡方法である。この方法は、測位システムからの基準信号を受信し、例えば、GPS衛星から信号を受信して、受信した基準信号により自車位置に関する位置データを計算することを特徴とする。例えば、位置データは、緯度及び経度の推定値かまたはGPS擬似レンジ測定値である場合がある。この方法はまた、位置データをサーバーに送信し、サーバーから位置補正データを受信することを特徴とする。例えば、位置補正データは、緯度及び経度の偏差であるか、またはGPS擬似レンジ測定値に適用される補正項であり得る。この方法はまた、受信基準信号から計算したデータと位置補正データとを組み合わせて車両の推定座標を求めることを特徴とする。
【0012】
この方法は、位置データを繰返し計算し、位置データと位置補正データとを組み合わせて推定座標を求めることを特徴とする。この方法は、時間インターバルの後に位置データを繰返し計算し、補正データを用いず位置データによって車両の推定座標を求めることを特徴とする。
【0013】
一般的に、本発明は、別の側面で見ると、車両の追跡方法である。この方法は第1の位置の緯度及び経度のような座標を含む第1の位置の明細を受信することを特徴とする。この方法は、車両が第1の位置またはその近傍にあるか若しくはその近傍を通過するかを検知するステップを含むことができる。この方法は、車両が第1の位置にあると検知された時点で測位システムから受信した基準信号により第1の位置データを計算するステップを含む。例えば、測位システムはGPS測位システムでよく、計算により求めた第1の位置データに、車両が第1の位置またはその近傍にあるとき受信するGPS衛星信号から得られる擬似レンジ測定値を含めることができる。
【0014】
この方法はさらに、第1の位置データ及び第1の位置の座標から位置補正データを計算するステップを含む。例えば、位置補正データの計算に、第1の位置の緯度及び経度と、車両が第1の位置かその近傍にあるとき受信するGPS衛星信号から得られる擬似レンジ測定値とから擬似レンジ補正データを計算するステップも含むことがある。この方法はさらに、車両が第1の位置で検知された時点のあとの第2の時点において測位システムから受信する基準信号から第2の位置データを計算した後、補正データと第2の位置データとを組み合わせて第2の時点における車両の座標を求めるステップを含む。
【0015】
この方法は、第1の位置で車両の運転者が行う運転操作の明細を第1の位置の明細中に含めるという特徴を有する。車両が第1の位置にあることを検知するステップは、車両が、例えばコンパス、加速度計、またはジャイロスコープのような車両センサーにより指定された運転操作を行う時点を検知することを含む。
【0016】
一般的に、本発明は、別の側面で見ると、車両が設定ルートから外れたことを検知する方法である。この方法は、例えば、GPS測位システムにより車両が測位システムから受信する信号を用いてその車両の第1の推定位置を追跡することを特徴とする。この方法はまた、設定ルートに沿う推定走行距離により車両の第2の推定位置を追跡することを特徴とする。第1の推定位置と第2の推定位置との差が少なくとも許容距離以上になると、車両は設定ルートから外れたと判断される。
【0017】
この方法は、車両が運転操作地点のような設定ルートの第1の地点にあるのを検知し、経路に沿う第1の地点からの走行距離を推定するステップを特徴として含むことができる。
【0018】
この方法はまた、許容距離を調整する特徴を有し、この調整には、車両が設定ルート上の第1の地点にあると検知されると許容距離を減少させ、車両が第1の地点からその経路に沿って走行するにつれこの許容距離を増加させることを含む。
【0019】
一般的に、本発明は、別の側面で見ると、設定ルートを辿る車両の運転者に時系列としての運転操作地点を含む誘導指示を与える方法である。この方法は、車両が第1の運転操作地点にあるときを検知し、第1の運転操作地点から設定ルートに沿って車両が走行する距離を追跡することを含む。追跡距離が設定ルートに沿う第1の操作地点と、後続の運転操作地点の間の距離の一部である所定の通報距離内に来ると、運転者は次の運転操作に関する通報を受ける。
【0020】
一般的に本発明は、別の側面で見ると、車両ナビゲーションシステムにおいて位置を指定する方法である。この方法は、車載システムへ車載地図データベースを提供することを特徴とする。車載データベースは、サーバーシステムのサーバー地図データベースにアクセスするための、有効な位置の明細に関するデータを含む。この方法は、運転者が車両のユーザーインターフェイスにより、例えば位置の明細を受取ることを特徴とする。このシステムは、車載地図データベースを用いて位置の明細を確認した後、確認した位置の明細をサーバーシステムへ送信する。
【0021】
この方法はまた、サーバーシステムにサーバー地図データベースを提供し、受信し確認された位置の明細を用いてこのサーバー地図データベースにアクセスすることを特徴とすることができる。さらに、この方法は、サーバー地図データベースにより指定した地点へのルートを設定し、この設定ルートを車載システムへ送信することを含むようにしてもよい。
【0022】
一般的に、本発明は、別の側面で見ると、自車位置の推定方法である。この方法は、測位システムにより時系列としての車両の位置を推定し、この車両の推定位置のそれぞれ記録することを含む。例えば、推定位置は車両が目的地に接近するに従って非揮発性メモリに記録される。この方法はさらに、例えば車両が目的地において或る時間駐車して出発した後、記録された時系列としての車両推定位置のうち最も最近の値を引き出すことにより自車位置を推定することを含む。
【0023】
本発明は、GPS衛星システムのような測位システムがレンジ外であっても、また測位システムの始動前であっても、車両の推定位置を得ることができるという利点を有する。
【0024】
一般的に、本発明は、別の側面で見ると、車両の誘導方法である。この方法は、車両が目的地までの設定ルートをサーバーから受信し、その設定ルートを車両に蓄積することを特徴とする。この方法はまた、蓄積された設定ルートにしたがって車両の運転者に指示を与える、例えば、そのルートに沿う一連の運転操作地点の各々において指示を与えること
を含む。この方法は、自車位置を追跡して車両が設定ルートから外れたか否かを検知することを含む。車両が設定ルートからはずれたことが検知されると、この方法は、目的地までの新しいルートを設定することを含む。新しいルートの設定は、サーバーとの通信を必ずしも必要としない。新しいルートの設定は、自車位置を求め、車両に蓄積された地図データベースにアクセスすることを含む。
【0025】
この方法はまた、サーバーとの無線通信チャンネルを始動し、この無線通信チャンネルを介して目的地の明細を送信し、その後設定ルートを受信して無線通信チャンネルを停止することを含むことができる。
【0026】
この方法の利点には、サーバーによるルート設定サービスを車両に提供して誘導及びルートの再設定を行うにあたりサーバーとの通信状態を常に保持する必要がない点が含まれる。
【0027】
一般的に、本発明は、別の側面で見ると、交通情報を収集する方法である。この方法は、自車位置の追跡ステップを含み、それには車両が道路網の複数の区分をそれぞれいつ通過するかを検知することが含まれる。通過が検知される各区分について、車両はその検知される区分上の車両速度に関するデータを集めることにより交通関連データを収集する。この方法はまた、収集したデータをサーバーへ送信することを含む。
【0028】
この方法は、車両による交通関連データの収集を可能にするためにサーバーから指示を受けることを特徴とすることができる。この方法はまた、収集データのサーバーへの送信を要求するリクエストを車両が受信することを特徴とすることができる。
【0029】
一般的に、本発明は、別の側面で見ると、交通情報の収集方法である。この方法は、自車位置の追跡を含み、それには道路網の一組の区分の各々を車両が通過するかを検知することを含む。通過を検知される各区分について、この方法は、その区分での車両速度をその区分につき蓄積された速度と比較し、もしその区分の車両速度が蓄積された速度から外れている場合はその区分を示す交通通報を車両に送信することを特徴とする。
【0030】
一般的に、本発明は、別の側面で見ると、交通情報の収集方法である。この方法は、一組の車両から交通関連データを受信し、受信した交通関連データにより交通データベースを更新することを含む。データベースの更新には、道路網における多数の道路区分に関連する速度情報の更新が含まれる。この方法はまた、道路区分に関する速度情報により道路網を介する出発点から目的地までのルートを設定することを特徴とする。
【0031】
この方法はまた、利用可能な調査用車両の集合のうち一つの部分集合が交通関連データを提供できるようにすることを特徴とし、さらに、例えば、或る地理的領域に対応する交通データベースの一部を目標にして更新することを特徴とする。調査用車両の部分集合が交通関連データを提供できるようにするために、目標とするデータベースの一部に従って調査用車両を作動可能にする。
【0032】
一般的に、本発明は、別の側面で見ると、車両ナビゲーションシステムに対して目的地を指定する方法である。この方法は、目的地の種類のリストにアクセスし、例えば、運転者が車載ユーザーインターフェイス上で選択を行うことによりこの種類のリストからの選択を受取ることを含む。この方法は、種類のリストからの選択をサーバーシステムへ送信し、その後サーバーシステムから選択した種類の目的地が含まれるリストを受信することを含む。
【0033】
この方法はさらに、目的地のリストからの選択を受取り、選択した目的地をサーバーシ
ステムへ送信することを含む。この方法はまた、自車位置に関するデータをサーバーシステムに送信することを特徴とすることができる。受信する目的地リストには車両の近傍の目的地が含まれる。
【0034】
一般的に、本発明は、別の側面でみると、車両ナビゲーションシステムを構成する方法である。この方法は、サーバー地図データベースをサーバーへ提供することを含む。サーバー地図データベースは、道路網にある複数の道路区分に関するデータを含む。この方法はまた、車両地図データベースを車載システムへ提供することを含む。この車両地図データベースは、共通の基準を満足するサーバー地図データベースの複数の道路区分の部分集合に関連するデータ、例えば、道路区分の道路等級に関するデータを含む。
【0035】
一般的に、本発明は、別の側面で見ると、車載地図データベースである。このデータベースは、蓄積された第1及び第2の表を含む。蓄積された第1の表は、各々が第2の表中の道路のベース名を含むレコードへの参照を含むフィールドと、接頭辞、接尾辞及び道路の種類を指定する第2のフィールドとを含む多数のレコードより成る。蓄積された第2の表は、各々が圧縮フォーマットで蓄積された道路のベース名を含む多数のレコードを含む。
【0036】
一般的に、本発明は、別の側面で見ると、ルートを車両ナビゲーションシステムへ送信する方法である。このルートには、各道路区分を連結する多数の中間点が含まれる。この方法は、中間点のうちの第1の地点の位置の明細を送信し、中間点のうちの第2の地点の位置と第1の中間点の位置との間の違いの明細を送信することを含む。この違いの明細は、割当てられたビット数よりも少ない数を使用できる。
【0037】
この方法はまた、初期ルートの設定を特徴とすることができる。この初期ルートは、道路区分を連結する多数の中間点の初期集合を含む。設定ルートは初期ルートから形成される。境界となる中間点の位置の違いが割当てられたビット数により特定できるものよりも大きい初期ルートの任意の道路区分について、この方法は、その道路区分上に別の中間点を挿入して隣接する中間点の位置間の違いがそれぞれ割当てられたビット数で特定できるようにすることを含む。
【0038】
一般的に、本発明は、別の側面で見ると、車両ナビゲーションシステムである。このシステムは、地図データベースの蓄積手段または記憶装置を含む車載コンピュータ、車載コンピュータと遠隔のサーバーとの間でデータを送受信する無線通信システム、車載コンピュータと車両の運転者との間のユーザーインターフェイスを提供する入出力装置、及び移動に関連する信号を車載コンピュータへ送る車両センサーを含む。この車載コンピュータは、無線通信システムを介してサーバーから設定ルートを受取り、車両センサーからの移動に関する信号により車両の第1の推定位置を維持し、設定ルートと第1の推定位置とを用い、入出力装置を介して誘導指示を運転者に与える機能を実行するようにプログラムされている。
【0039】
一般的に、本発明は、別の側面で見ると、車載ナビゲーションシステムの更新方法である。この方法は、車載システムに蓄積された情報に関するバージョン数を受信することを含む。車載システムに蓄積された情報のバージョン数がサーバーの情報のバージョン数よりも前である場合は、この方法はサーバーから車載システムへ更新情報を送信することを含む。車載システムに蓄積される情報に地図データまたはコンピュータ指示を含めることも可能である。
【0040】
この方法は、例えば、更新情報により表わされる地理的領域に従って更新情報を優先度で分類し、この更新情報を優先度順に送信することを特徴とすることができる。
【0041】
一般的に、本発明は、別の側面で見ると、車両情報サーバーシステムである。このシステムは、多数の車両と一組の情報システムとの間の無線データ通信を可能にする車両通信インターフェイスを含む。一組の情報システムには、車両からルートの設定を要求するリクエストを受信して設定ルートを通信インターフェイスを介して提供するナビゲーションシステムと、外部の情報システムに結合されて外部の情報システムからの情報を車両へ送信する通信システムとが含まれる。
【0042】
一般的に、本発明は、別の側面で見ると、交通関連情報をユーザーに提供する方法である。この方法は、道路網の1または2以上の道路区分より成るルートの明細をユーザーから受取り、道路網の道路区分に関連する交通データを受信することを特徴とする。受信した交通データが指定ルートに例外的な交通状況が存在することを指示する場合、ユーザーはこの交通状況についての通報を受ける。
【0043】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0044】
1 概観(図1及び図6―10)
1.1 構成(図1)
図1を参照して、車両情報システムは、ルート設定及び誘導(即ち、ナビゲーション)サービスを含む各種のサービスを、広い地理的領域を運転自在の多数の車両100の運転者へ提供する。車両の運転者へこれらのサービスを提供するために、車両情報システムは、固定位置の集中サーバー120にあるサーバーシステム125においていくつかの機能を実行するとともに、各車両100の車載システム105において他の機能を実行する。車両情報システムはまた、車両の絶対位置(それらの緯度及び経度)を推定するための基準を提供する。全地球測位(GPS)衛星140は特に、車両が受信すると車載システムがそれらの位置の推定を可能にする信号を送信する。
【0045】
サーバー125及び車載システム105により実行される機能を組み合わせて提供される車両情報システムのナビゲーションサービス全体が、車両の運転者による所望目的地の指定後、そのシステムによる目的地への誘導を可能にする。車載システム105は、車両が所望目的地へ走行する際の自車位置を追跡(すなわち反復して推定)し、所望目的地へ誘導するための指示を運転者に与える。例えば、車載システム105は、車両が直近の交差点に接近する際、その交差点で方向転換するための指示を与える。また、この車載システム105は、通常、運転者のミスにより車両が設定ルートを外れたか否かを判定する。車両がルートを外れた場合、車載システム105はかかるミスに拘らず車両を目的地へ引き続き案内するための指示を運転者に与える。
【0046】
サーバーシステム125は、車載システム105がサーバーシステム125へサービスの提供をリクエストするクライアント−サーバー方式により、この車載システム105へ種々のサービスを提供する。例えば、サーバーシステム125は、車載システム105からのリクエストに応答してルート設定機能を実行し、一方車載システム105はルート誘導機能を実行する。
【0047】
車載システム105は、無線通信リンクによりサーバーシステム125に結合されている。詳説すると、この車載システム105は、標準アナログセルラー電話システム(すなわち、最新式移動電話サービス(AMPS)標準)を介して送られる変調データ信号を用いて、サーバーシステム125と信号経路110を介して時々通信する。車載システム105は、通常、サーバーシステム125と最初に通信した後、自律モードで動作する。最
初の通信時、出発位置(または他の位置関連データ)、速度及び方向、並びに所望の目的地が車載システムからサーバーシステムへアップロードされ、その後、サーバーシステムから車載システムへ設定ルートがダウンロードされる。設定ルート情報がサーバーから車両へダウンロードされた後、車載システムは自律ルート誘導モードで動作するためサーバーシステムとさらに通信する必要はない。車載システムが自律ルート誘導モードにある間、車載システムは、サーバーシステムとの交信を必ずしも必要とせず、設定ルートから外れた場合でも元のルートへ復帰することができる。
【0048】
車載システム105は、GPS衛星140から無線周波数通信パス112を介して信号を受信する。サーバーシステム125も、無線周波数通信パス112を介してGPS衛星140から信号を受信する。以下にさらに詳説するように(章2.4を参照)、サーバーシステム125がGPS衛星140から受信した信号より取出したデータをサーバーシステム125と車載システム105が時々使用して、「異なる」GPSの計算を行うことにより、車両100の推定位置を改善する。
【0049】
引き続き図1を参照して、サーバーシステム125は、地図プロバイダ160(例えば、地図関連情報の販売者)に、相互に連結されて道路網を形成する道路区分の位置及び種類を含む道路網関連情報を提供させる。地図プロバイダ160または他の任意の外部情報プロバイダは、都市センター、レストラン及びガソリンスタンドのような代表的な興味ある場所のような他の地図関連情報を提供する。
【0050】
このシステムのいくつかのバージョンには、サーバーシステム125が外部情報システム130へのゲートウェイとして働くものがある。これらの外部システムはサーバーシステム125が使用する情報を提供するか、あるいは車載システム105へ直接送られる情報を提供する。例えば、外部情報システム130は、サーバーシステム125が出発点から目的地までの最速ルートの設定に使用する交通関連情報を提供することができる。別の例として、外部情報システム130は、呼出しサービスのような通信サービスを車両の運転者に提供することができる。
【0051】
車載システム105とサーバーシステム125との間には別の通信方式を用いることが可能である。標準アナログセルラー電話リンクは、かかるリンクのサポートに必要なインフラストラクチャの地理的範囲が北アメリカでは広大であるため有利である。世界の他の地域では、必要なインフラストラクチャがあればデジタルセルラーリンクの方がより適当であろう。かかるデジタル式のインフラストラクチャは北アメリカでも将来利用可能になると予想される。衛星を用いる通信システムは、サーバーシステムへの車載システムの接続に使用できる。また、他の無線データ通信システムを同様に利用して、車載システム105をサーバーシステム125に接続することが可能である。かかるシステム(例えば、ARDIS、RAM、CDPD、GSM)は北アメリカで現在利用されているが、その地理的利用可能な範囲は、このシステムをサポートし車両の運転者が広い地理的範囲で利用できるためには依然として適当なものではない。無線通信システムの多くは、短いメッセージを伝送可能な「ショートメッセージ」機能を含んでいる。かかるショートメッセージサービスを、車載システムとサーバーシステムの間のある種の通信に、例えば、例外的状況の通報に利用することが可能である。
【0052】
GPS衛星140からの信号によらずに、別の測位システムを利用することもできる。例えば、位置情報を車両に提供するために、路傍の光または無線周波数ビーコンシステムの利用が可能である。かかる路傍のビーコンシステムは北アメリカにおいては広く利用できる状態にない。一方、GPS方式は現在広い地理的範囲をカバーしている。
【0053】
集中サーバー120は、或る地理的領域に分散した車両に対して一つの場所でサービス
を提供するという意味で集中型である。この集中サーバーの位置は中心にある必要はなく、そのサーバーがサービスを提供する車両と同じ地理的領域にあればよい。また、このシステムを単一の集中サーバー120を利用するものとして説明するが、多数のサーバーを利用してもよい。多数のサーバーを用いる場合、車載システム105は全ての、あるいは特定種類のサービスリクエストに対して特定のサーバーへアクセスするように構成することができる。
【0054】
1.2 動作(図6―10)
車両情報システムのナビゲーションサービスの一般的な動作は、システムで使用される種々の例示的な地図及びルートを示す図6―11を参照すると理解できるであろう。これらの図は、図6に略示する共通の地理的領域に対応する。図示した地理的領域はナビゲーションサービスが通常サポートする領域の非常に小さい部分であり、これは米国またはヨーロッパの多数の国と同じくらいの大きさであってもよい。
【0055】
図6を参照して、図示の地図600は異なる線幅で示す3種の道路を示している。一般的に、道路はそれらの大きさまたは典型的な車両速度で分類される。例えば、ハイウェイ、アクセスが制限された道路、主要道路、及び側道に分類される。図6において、ハイウェイ610を垂直方向に延びる太い線で示す。中間の太さの線で示す一組の主要道路620、622、624、626はハイウェイと交差する道路網である。主要道路620、622はそれぞれ2つのランプ612、614でハイウェイ610に接続する。住宅地域を走る一組の道路(側道)630−636)がこれらの道路網を完成させる。
【0056】
この例では、運転者と車両は690で示す出発点Xにいる。運転者はこの図には図示しないが、ハイウェイ610によるアクセスが最も簡単な所望の目的地692へ行くことを望む。
【0057】
最初のステップとして、運転者は所望の目的地692の明細を車載システム105へ入力する。例えば、運転者は目的地住所の都市名、道路名、番地を入力する。目的地は、車載システムが、例えば、番地が指定した道路の許容範囲内にあるのを確認することにより、確認する。
【0058】
車載システム105は、目的地の明細を受取りそれを確認すると、セルラー電話リンク110を介してサーバーシステム125と通信セッションを開始し、目的地の明細をサーバーシステムへ送信する。車載システムはまた、サーバーシステムが車両の出発位置690を知ることができるようにする情報を送信する。例えば、車載システムは車両のGPS受信機から得られた推定緯度及び経度を送信するかまたはGPS受信機からの他の生の出力を送信する。
【0059】
図7を参照して、サーバーシステムは道路網700を詳示したものを記憶している。この道路網は一組のノードを有するグラフとして表示されるが、これらのノードは図では円で表わされ、道路の区分に対応するリンク(アーク)がこれらのノードを相互に接続する。グラフに示すリンクに関連して蓄積されたデータには、リンクにより表わされる道路の等級が含まれる。グラフの各ノードに関連するデータは、その緯度及び経度(または既知の位置である別のノードとの相対的位置と等価である)だけでなく、1つのリンクからそのノードで結合された別のリンクへ移るにあたり如何なる方向転換が可能であるかを示す他の情報を含む。リンクの両端部のノードを直線で結ぶことにより多くのリンクを近似する。ノード733と735、またはノード716と725を結ぶリンクのようないくつかのリンクは、曲線を含む道路区分を表わす。曲線状の道路区分を表わすために、リンクが陰影のある円780−785で表わされる1または2以上の「形成点」を含むようにしてもよい。各形成点は関連する位置データを有する。隣接する形成点間またはノードと隣接
する形成点との間の区分は直線で近似する。
【0060】
サーバーシステム125は、車載システムにより提供される車両690の位置に関連する情報に基づいて車両の出発点の緯度及び経度を求める。サーバーシステムは、車両の緯度及び経度、速度及び方向に基づいて、道路網700のグラフ表示において車両が出発するためのリンクを見つける。この例では、道路網におけるこの出発位置はノード753と763を結ぶリンク上にある。
【0061】
サーバーシステムはその後、目的地692への最善の経路を計算により求める。最善か否かの判断は、種々の基準、例えば全走行距離が最短であること、あるいは道路網のグラフのリンクに沿う推定走行速度に関する情報を用いて推定走行時間が最少であることなどの基準により行うことができる。この例では、この設定ルートを点線792で示す。再び図6を参照して、この設定ルートは車両が住宅地域の道路635を出発して最初に左折することにより住宅地域の道路632へ出る。その後、車両は右折して主要道路628に乗り、そして右折して主要道路620へ移る。主要道路620はハイウェイ610と合流する。車両はハイウェイ610を目的地692に向かって走行する。
【0062】
図8を参照して、ノードにより連結された一連のリンクとしての設定ルート800は、サーバーシステムから車載システムへダウンロードされる。ルートに沿う各ノード(出発点のノードは必ずしも含まない)は、サーバーの道路網700(図7)のノードに対応する。設定ルート800に沿うノードは、運転者が実行することを要する「運転操作」に対応する。例えば、ノート790における運転操作は「道路635への左折」(図6を参照)である。ルートに沿う各リンクには1または2以上の「中間地点」を有する。中間地点はサーバーの道路網700における形成点、または運転者にとって運転操作が不要な交差点であるノード、すなわち運転者が方向転換または何らかの他の運転操作をせずにただ直進すればよいサーバーの道路網700のノードに対応する。図8において、ノード733、780、781は運転操作点732と735を結ぶリンク上の中間地点である。
【0063】
原理について説明すると、運転者が指示に正確に従うと常に予想できる場合、運転者は所望の目的地へ到達するであろう。しかしながら、種々の要因により運転者は計画を変更しなくては所望の目的地へ到着できない場合がある。これらの要因として、例えば、側道間の距離が近すぎるため車両の最初の推定位置が不正確であること、指示が複雑である場合、特にルートの最初の出発部分で運転者が指示に従えないこと、例えば、予想していなかった道路工事により道路網のシステム地図にエラーがあること、車両の推定走行距離が不正確であったこと等がある。
【0064】
ルートの最初の部分に関連するエラーを考慮して、サーバーシステムは最初の位置690の周辺の「スポット地図」として知られる詳細な地図900を車載システムへダウンロードする。図9を参照して、出発位置690の周辺のノード及びリンクに関連する地図情報がダウンロードされる。スポット地図データベース900は、サーバーの道路網700と同様詳細なものであるが、例えば出発位置の2つのリンク内の全てのノードを含むという程度に地理的に限定されたものである。
【0065】
サーバーシステムは、1または2以上の運転操作点または目的地の周りのスポット地図もダウンロードすることができる。例えば、運転操作が特に複雑な場合、サーバーシステムはその運転操作点周辺のスポット地図をダウンロードする。
【0066】
設定ルート800及びスポット地図900を車両にダウンロードした後、車載システム105とサーバーシステム125の間の通信は通常は完了する。この時点で、運転者はルートを予め検討するかあるいは目的地への走行を開始することができる。運転者は、設定
ルートがダウンロードされる前に走行を開始してもよい。車載システムは、ダウンロードが開始されるとルートのダウンロードの完了を必ずしも待たずに、最初の誘導指示の提供及び出発位置周辺のスポット地図の表示を開始する。
【0067】
目的地への走行中、車載システムは自車位置を追跡しようとする。車載システムにより車両が各運転操作点に接近中であると判断される度に、その運転操作点でとるべき操作に関する指示が音声及びグラフィック形式で運転者へ提供される。その運転操作に関するスポット地図がダウンロードされる場合、車載システムはグラフィック形式の指示に加えて、またはその代わりにスポット地図を表示する。
【0068】
目的地へのルートの最初の部分、またはサーバーシステムがスポット地図を提供した運転操作点の周辺であって、車両がスポット地図900の領域内にある間、この車載システムはこのスポット地図を用いて運転者を設定ルートへ誘導する。さらに詳説すると、この車載システムは、スポット地図及び設定ルートの最初の部分を運転者に表示する。さらに、この車載システムはスポット地図と共に車両の追跡位置を表示する。このため、運転者は追跡位置が設定ルートに沿っていないことを発見し、スポット地図に示す道路から如何なる方向転換を行えば設定ルートへ復帰できるかを知ることによって、目的地へのルートの最初の部分で生じるエラーを補正することができる。
【0069】
車載システムはまた、予めロードされた主要道路網1000を有するが、これは主要道路及びそれより大きい道路(即ち、住宅地域の道路を除く)を含む地図を蓄積したバージョンである。図10は、主要道路網1000の一部を示す。主要道路網1000は、図示されたリンク数が少ない点を除き図7に示すサーバーの道路網700と同じ形態を有する。ちなみに、設定ルート792を点線で示す。
【0070】
目的地への走行中、車載システムは車両の推定位置を追跡する。運転者が指示に正しく従わない場合、車載システムにより車両が設定ルートから離れすぎていることが検知される。車両がルートから外れたことが検知されると、車両を最初の設定ルートへ戻すための補正ルートを図10の主要道路地図により設定する。
【0071】
図6に戻って、この例では、運転者は主要道路628から主要道路620へ右折せずに主要道路628を直進している。図10に帰って、車載システムは、車両が点732と735を結ぶリンク上にあるべきであるにも拘らずノード732と722を結ぶ主要道路区分上の点に対応する地点1010にあって、ルートから外れたことを検知する。車載システムは、この主要道路網1000を用いて一点鎖線1012で示す補正ルートを設定する。この再設定ルートは点725で最初の設定ルートとつながる。ルートから外れた後でルートを再設定するにあたり、車載システムは必ずしもサーバーシステムに接触する必要はなく、主要道路網1000により再設定を行う。
【0072】
従って、車載システムは、車両が設定ルートから外れたと判断されたとき、車両に予めロードされた主要道路網1000と、設定ルート800と共に車両にダウンロードされたスポット地図900とを組み合わせてルートを再設定する。
【0073】
システムの別の例では、最初の走行部分で設定ルートから外れた場合、スポット地図900により主要道路網1000を補充してルートを再設定する。
【0074】
上述のシステムの動作に関し、車両の運転者は、グラフィック形式による運転操作に関する指示、音声情報による運転操作の指示、スポット地図による指示を受ける。
【0075】
システムの別の例では、これら種々の形式の指示の一部を利用する。例えば、システム
一例では、音声情報による指示だけを利用する。別の例では、地図または音声による指示なしにグラフィック形式の運転操作指示を与えることができる。他の組み合わせまたは他の指示モードも同様に使用できる。さらに、システムの別の例では、使用する指示モードを車両の運転者が選択できるように、例えば運転者が地図による指示とグラフィック形式の指示モードとを切り替えることができるような例もある。
【0076】
2 ハードウェア及びソフトウェアのアーキテクチャ(図2―5)
2.1 車載システムの構成要素 (図2)
図2を参照して、各車載システム105は、車両の移動に関連する情報を提供するセンサー230、車両の運転者とナビゲーションシステムの間をインターフェイスする入出力(I/O)装置240、及びGPS衛星140からサーバーシステム125へ、またその逆方向の通信を行う通信システム250を含む構成要素の動作の協調させる車載コンピュータ210を有する。車載コンピュータ210は、ドアロックシステム272及びエアバッグシステム274を含む車両のシステム270にも結合されている。
【0077】
車載コンピュータ210は、その記憶容量及び処理能力が限られている。車載システムのこの例では、車載コンピュータ210はデータバス214を介して他の構成要素に結合されたプロセッサ212を有する。これらの他の構成要素には、プロセッサ212のための2MBの作業用記憶域を提供するダイナミックRAM(DRAM)220、4MBの非揮発性記憶域を提供する消去及びプログラム可能ROM(EPROM)218、システムの他の構成要素との間でシリアル通信を可能にするユニバーサル非同期型受信機−送信機(UART)216がある。別のハードウェア構成として、例えば記憶容量が大きいかまたは小さいものを用いることも可能である。
【0078】
プロセッサ212は、システム動作のためにコード及びデータを記憶する非揮発性メモリであるスタティクメモリ222にも結合されている。詳説すると、以下においてさらに説明するように、このスタティクメモリ222は主要道路網1000(図10)のような地図関連情報の記憶に使用されるが、この地図関連情報は車載コンピュータ212においてルートの設定及び誘導を行う際に使用される。スタティクメモリ222は、ディスク記憶装置をエミュレーションする取外し可能な40MBのフラッシュメモリシステムである。取外し可能なあるいは取外しができないディスク記憶装置及び半導体メモリを含む他のスタティク記憶装置を使用してもよい。
【0079】
センサー230は、速度信号を車載コンピュータ210へ与える速度センサー230を有する。この速度信号は、車両変速機の出力軸の1回転当たり一定数のパルスを発生させることにより、従って走行マイル当たり一定数のパルスを発生させることにより、車両の走行距離を符号化したものである。センサー230はまた、車両の走行方向を符号化する信号を車載コンピュータ210へ与える磁気コンパス234を備えている。システムの別の例では、速度信号だけを用いるため、磁気コンパス234は必ずしも備える必要はない。また、別の例として、車両の回転速度を測定するジャイロスコープまたは加速度計、あるいは車両の両側の車輪の相対速度を発生させて方向転換の際の回転半径を符号化する差速度センサーを含む車両の状態を測定する他のセンサーを含むものがある。
【0080】
入出力(I/O)デバイス240にはディスプレイ242が含まれる。グラフィック形式の指示だけを表示する車載システムの例において、このディスプレイ242は、車両の運転者へテキスト形式及び概略的なイメージ形式の指示を与える小型(例えば、テキストの高さがライン4−5本で、64×240個のピクセルより成る)の単色液晶ディスプレイ(LCT)である。スポット地図を運転者に表示する車載システムの例では、このディスプレイ242は、ほぼ200×200個のピクセルを有する対角線長が4乃至5インチのディスプレイであり、このディスプレイは、地図による指示を運転者に与えることが可
能な詳細地図表示に十分な大きさで高い解像度を有する。また、システムの別の例では、視覚によるフィードバックは必ずしも用いられず、代わりにシステムから運転者へ音声による指示だけが伝達される。
【0081】
入出力装置240は入力デバイス244も有する。この入力デバイス244はディスプレイ242に関連する多数の押しボタンを備えている。運転者はこれらの押しボタンによりディスプレイ242上に示される選択肢を選択するか、あるいは表示された選択肢のリストをスクロールする。システムの別の例には、車載コンピュータに結合された文字数字式キーボードを含むものがある。
【0082】
図2A−Cを参照して、一体型入力デバイス241は、ディスプレイ242と、入力デバイス244の一部である一組で4個の揺動スイッチを有する。1つの揺動スイッチには「メニュー」と「削除」の入力が割り当てられ、他の3つのスイッチは再構成可能である。図2Aを参照して、ディスプレイ242はテキスト形式の指示とグラフィック形式の指示の両方を表示するために用いる。図2B−Cを参照して、ディスプレイ242は情報入力する際運転者に視覚的フィードバックを与えるために用いる。図2Bはリストからの選択を行う態様を示し、図2Cは運転者がロータリースイッチにより文字を選択して入力ワードを設定する際のスペル入力の態様を示す。
【0083】
図2に戻って、入出力デバイス240は音声出力デバイス246も有する。この音声出力デバイス246は、例えば、圧縮波形あるいは連結波形若しくは音声合成器を用いて車載コンピュータに記憶されたかあるいは合成された音声による指示より成る音声出力を提供する。
【0084】
入出力デバイス240は、車載コンピュータ210に専用のものとするか、またはラジオのような別の車載装置の一部である場合がある。後者の場合、ディスプレイ242と入力デバイス244はそれぞれディスプレイと他の構成要素の入力ボタンである。多くの音声装置は、Ford Motor Company製の車両に使用されたACP(音声制御プロトコル)インターフェイスのような標準型制御インターフェイスを備えている。かかる場合、車載コンピュータ210は標準通信インターフェイスにより音声装置と通信可能である。音声出力は音声システムを介して運転者へ提供できるが、音声出力が専用の音声パスを通して与えられている間、車載コンピュータ210が音声システム出力を停止または減衰させるようにしてもよい。
【0085】
引き続き図2を参照して、通信システム250は、GPS衛星140から信号を受信するGPSアンテナ253に結合されたGPS受信機252を有する。GPS受信機252は、位置関連情報を、例えば1秒間隔で車載コンピュータ210へ送る。位置関連情報は緯度及び経度で表わした推定位置かあるいは推定位置の計算に使用できる他の生の測定値でありうる。GPS受信機252はまた、その生の測定値から高精度の推定位置を算定するための補正データを車載コンピュータ210から受信することができる。以下においてさらに述べるように、この補正データはサーバーシステム125から受信することが可能であり、GPS受信機252により提供される位置関連情報の精度を上げるために時として使用される。
【0086】
通信システム250はまた、セルラー電話アンテナ255に結合されたセルラートランシーバ254を有する。このセルラートランシーバ254は音声とデータの通信能力を運転者に提供する。車載コンピュータ210とセルラートランシーバ254との間にはモデム256が結合されている。セルラー電話ラインを介してサーバーシステム125との間で送受信されるデータは、モデム256を通過する。セルラートランシーバ254はハンドセット260にも結合されている。運転者はセルラートランシーバ254がサーバーシ
ステム125との通信に使用されていない間は、ハンドセット262により普通の通話が可能である。
【0087】
2.2 サーバーシステムの構成要素(図3)
図3を参照して、サーバーシステム125は車載システム105と通信するサーバーコンピュータ310を有する。サーバーシステム125は、個々の車載システム105とデータ伝送を行うべく通話するための電話インターフェイス320を有する。
【0088】
車載システム105は、サーバーシステムの電話番号にセルラー電話をかけることによってサーバーシステム125との通信を開始する。この電話はセルラー電話網350を介して公衆通信交換網(PSTN)340から電話インターフェイス320へ接続される。電話インターフェイス320はその電話に応答する。電話インターフェイス320は、電話をかける車両のモデム256(図2)とデータ接続を行うためにモデム機能を含んでいる。このシステムの別の例として、電話インターフェイス320がセルラー電話網350へ直接接続されたものがある。また、データ信号は、例えば電話網自身のサーバーシステムに到達する前に復調するようにしてもよい。
【0089】
サーバーシステムは車両の電話番号に電話をかけることによって特定の車両とのデータ伝送を同様に行うことも可能である。セルラートランシーバ254(図2)は、かかってきた電話がサーバーシステムからのデータコールかまたは車両の運転者との音声による通信のための音声コールかを判断する。データコールは電話インターフェイス320とモデム256との間のデータ接続を与えるモデム256(図2)へ接続される。
【0090】
サーバーシステム125もGPS受信機325を有する。GPS受信機325はGPS衛星140からの信号を受信する。集中サーバー120の既知の場所にあるサーバーシステム125は、その位置を求めるためにGPS受信機325に頼ることはない。その代わり、サーバーコンピュータ310は、その既知の位置(即ち、緯度及び経度)をGPS受信機325へ送る。衛星信号及びサーバーの既知の位置に基づき、GPS受信機325は、GPS補正データ、例えば海上サービスのための無線技術コミッション(RTCM)標準RTCMSC―104に従って提供される「差動」擬似レンジ補正データを代わりに送信する。この補正データは、章2.4にさらに詳説するように、車両100の推定位置精度の向上に使用される。
【0091】
サーバーコンピュータ310は、プロセッサ312、作業用メモリ及びスタティクメモリ316を有する。スタティクメモリ316は、サーバーシステムがルートの計算に用いる地図関連情報を記憶する記憶域を有する。
【0092】
サーバーコンピュータは外部の情報システム130に結合されている。例えば、外部情報システムとして、インターネットのようなデータネットワーク330を介してサーバーシステム125へ結合される他のコンピュータがある。
【0093】
サーバーシステム125は、光ディスク(例えば、CD−ROM)のような取外し可能なコンピュータのメディア360上に地図プロバイダ160からの地図情報を受信する。サーバーコンピュータ310は、この地図データを読取り、処理した地図情報をさらに利用するためにスタティクメモリ316に記憶させる。あるいは、地図プロバイダ160は何か他の方法、例えばデータネットワーク330を介してサーバーシステム125へ送ることにより、地図情報をサーバーシステムへ提供することができる。
【0094】
2.3 地図データベース
車載システム及びサーバーシステムは、地図プロバイダ160からコンピュータのメデ
ィア360(図3)上に供給される地図情報から取出したデータを利用する。地図プロバイダ160により提供される生の地図情報には、例えば米国の一部のような特定の地理的領域の道路網に関する種々の情報が含まれている。この領域内の情報は、図7に示すグラフのような道路網の表示を含む。グラフのリンクは道路網の区分、例えば、2つの交差点間の道路区分に対応する。グラフのノードは、2またはそれ以上のリンクが結合される交差点または他の点に対応する。2つのリンクだけを結合するノードは、例えば単一の道路が方向を変える場合は「形成点」として使用される。これにより、連続する直線区分に道路を十分に近似させることが可能になる。
【0095】
地図情報には、それらの緯度及び経度と等価な項で表わしたグラフ上のノード位置が含まれる。この地図情報には、道路名及びリンク並びにリンク上の番地の範囲のようなリンク情報も含まれる。リンクはまた、住宅地域の小さい道路からインターステートハイウェイまで、それらの大きさに従って分類されている。
【0096】
このシステムの地図プロバイダの一例として、Navigational Technologies, Inc. (NavTech) of Rosemont, Illinois がある。地図情報は国際標準フォーマットである地理的データファイル(GPF)フォーマットのように多数の取替え可能なフォーマットのうちの1つで提供される。GPFフォーマットの地図は、リンクとノード及びそれらの属性並びにグラフのノードとリンクの関係に関連するデータ構造を含む。NavTechは、道路のリンクが0から4の等級で分類され、0は住宅地域の道路(側道)、1は主要道路、2は幹線道路、3はフリーウェイ、4はインターステートハイウェイである地図を提供する。
【0097】
システムの別の例では、道路網のリンクとノードの表示に変換可能な形式の地図情報を用いることが可能である。
【0098】
2. 4GPS及び(D)GPSの補正
以上において略述したように、車載システムとサーバーシステムは共にGPS受信機を有する。GPSによる測位には、地球周りの正確に知られた軌道にある多数の衛星までの距離が使用される。ほぼ24個の衛星群は、かかる既知の地球軌道を回っている。地表またはその近くの任意の点にある受信機は、通常、3個またはそれ以上の衛星より成る部分集合のレンジ内にある。GPS受信機は、レンジ内の衛星の部分集合の各衛星までの距離またはレンジ(擬似レンジ測定値)の推定値を算定する。そして、擬似レンジ測定値を算定した部分集合の各衛星の既知の座標に関するその三次元座標を算定する。簡単な幾何学的計算(すなわち、球が交差する点)に基づき、受信機の座標を一義的に求めるには4つの擬似レンジ測定値で充分である。受信機が考えられる2つの点のうちの1つにある、通常は、そのうちのただ1つ点が合理的である(例えば、外宇宙よりも地表にある)と判断するには、3つの測定値で充分である。GPS受信機は、3つの擬似レンジ測定値から、ほぼ100メートルの精度で地表の2次元位置を求めることができる。
【0099】
しかしながら、擬似レンジ測定値はいくつかの要因により受信機から衛星までの距離を完全に正確に表わいたものではない。まず第1に、衛星からGPS受信機への信号伝播速度は大気圏の状態のばらつきにより変化する。また、送信される信号は、送信機において可変の時間遅延を導入することによって意図的に調整されているため、受信機における擬似レンジ測定値だけに基づく推定位置の精度には制約がある。
【0100】
擬似レンジ測定値の精度上の難点を克服する1つの方法として、差動GPS((D)GPS)を使用する。差動GPSは、既知の場所にある受信機でGPS衛星から信号を受信することより成る。衛星からその受信機への擬似レンジ測定値と、衛星の位置と受信機の位置との間の算定距離との間の差が、その衛星に関する擬似レンジ補正項である。各衛星について別々の擬似レンジ補正項を計算する。信号の伝播がゆっくりと変化するため、ま
た意図的に導入した遅延もゆっくりと変化するため、変化率に関し相対的に短い時間、例えば、1分間、1つの衛星に関する擬似レンジ補正項によりその衛星からの擬似レンジ測定値をさらに補正することができる。また、伝播速度のばらつきは地理的に見れば局所的でないため、擬似レンジ補正項を計算したGPS受信機とは異なる場所にあるGPS受信機においてこの擬似レンジ補正項を適用することができる。
【0101】
車両情報システムでは、差動GPS補正について3つのアプローチを使用する。第1のアプローチは一般的に「反転(D)GPS」として知られている。このアプローチは、車載システムが擬似レンジ測定値またはその擬似レンジ測定値に関連する他の生のGPSデータであって、GPS受信機からセルラー電話リンクを介してサーバーシステムへ送られたものを送信する。サーバーシステムは、前にそれ自身のGPS受信機から得た差動GPS補正項を車載システムから受信した受信擬似レンジ測定値に適用し、サーバーシステムがその車両に関する補正位置を計算する。
【0102】
GPSによる位置推定の第2のアプローチは、サーバーシステムが擬似レンジ補正データを車載システムへ送信する。車載システムは受信した補正データをそのGPS受信機へ送り、このGPS受信機がその生の擬似レンジ測定値及び擬似レンジ補正データに基づき精度が向上した推定位置を出力する。
【0103】
差動GPSをシステムで用いる第3の方法は、車載システムがそれ自身の推定位置に基づきそれ自身の擬似レンジ補正データを求めるアプローチである。例えば、車載システムにより車両が設定ルートに沿う既知の運転操作点にあることが検知されると、ダウンロードされたその運転操作点位置に基づき擬似レンジ補正データを計算する。運転操作点を通過した後、ある時間の間、この差動補正データを使用する。
【0104】
車載システムが計算したGPS推定位置の補正を行う別のモードは、擬似レンジ測定値の差ではなくて緯度及び経度の差で表わした補正データを使用する。例えば、サーバーシステムは、そのGPS受信機からの緯度及び経度の推定位置に車載システムが加算する緯度及び経度のオフセットを含むGPS補正データを提供することができる。この種のGPS補正方法を用いる場合、車載GPS受信機は差動GPS能力を備える必要はない。その理由は、位置の補正がGPS受信機における推定位置の計算プロセスの一部としてではなくGPS受信機の出力上で実行されるからである。
【0105】
2. 5車載ソフトウェアの構成要素(図4A−B)
図4A−Bを参照して、車載コンピュータ210(図2)で実行される車載システム105のソフトウェアの構成要素は、スタティクメモリ222に記憶された比較的スタティクなデータと、図2に示すDRAM220とEPROM218のある組み合わせより成る作業用メモリ410に記憶されたコードとを含む。
【0106】
スタティクデータは、車載データベース432及びソフトウェア436を含む。作業用メモリ410内のコードは、航法アプリケーション412、通信インターフェイス414及び車両インターフェイス416を含む。通信インターフェイス414は、航法アプリケーション412とGPS受信機252並びにセルラートランシーバ254の間のインターフェイスを提供する。車両インターフェイス416は、航法アプリケーション412、センサー230、車両システム270及びI/Oデバイス240の間のインターフェイスを提供する。
【0107】
2. 5.1車載データベース432(図11−14)
車載データベース432は、2つの主要な機能について車載システム105が利用しる。第1に、車載システム105は、データベースを用いて運転者に提示する選択肢を決定
する目的地指定過程において車載データベース432を利用し、運転者からの入力を確認する。第2に、車載システム105は、誘導過程において、車載システムにより車両がルートから外れたことが検知され、新しいルートの設定が必要であると判断された場合、車載データベース432を利用する。
【0108】
目的地を入力する過程について、データベース432は、既知の都市名、それらの都市の道路名(住宅地域の道路すなわち側道を含む)及びそれらの道路の有効な番地を求めるために車載システムが利用する表を含む。このデータベースはまた、興味ある地点の種類、自車位置の近傍または特定の都市における特定の種類の興味ある地点を示す表を含む。
【0109】
誘導過程につき、データベース432は、測位済み位置(緯度及び経度)から所望の目的地あるいは以前設定したルート上の中間点までのルートを設定するために車載システムが利用する別の表を含む。例えば、車載データベース432のデータ表には、主要道路網1000(図10)が蓄積される。
【0110】
図11を参照して、車載データベース432の住所/都市/州名表1110は、国名、州名、都市名の組み合わせを一連の道路、番地範囲の組み合わせと関連付ける一連のレコードを含む。住所/都市/州名表1110の典型的なレコード1112は、国名表1120の国名を参照する国名フィールド1114を含む。国名表1120は、米国またはカナダのような既知の国名のテキスト表示を保持する。レコード1112はまた、国名フィールド1114により参照される国名中の都市名及び州名のテキスト表示を求めるために利用される都市/州名表1130を参照する都市/州名フィールド1116を有する。レコード1112はまた、住所/道路名表1150のレコード範囲1158の第1のレコードを参照する住所/道路名フィールド1118を含む。住所/都市/州名表1110のレコード1112のすぐ後のレコード1113は、レコード範囲1158の後の次のレコード1153を参照する住所/道路名フィールド1119を含み、それにより範囲1158内のレコードが決まる。
【0111】
住所/道路名表1150の各レコードは、完全な道路名とその道路名の有効な番地範囲との組み合わせに関するものである。住所/道路名表1150の多数のレコードは、同一の道路名を有し、これにより有効な番地範囲全部が形成される。住所/道路名表1150の典型的なレコード1152は、道路名フィールド1154と番地範囲フィールド1156を含む。道路名フィールド1154は、道路名のテキスト表示を形成するための道路レコード表1160のレコードを参照する。番地範囲フィールド1156は、関連の道路の有効な番地範囲内の最も低い数値1184と最も高い数値1186のエントリーを含む番地範囲表1180のレコード1182を参照する。
【0112】
道路名レコード表1160は、ベースとなる道路名、オプションとしての接頭辞及び接尾辞、道路の種類により道路名を完全に指定するために使用される。例えば、「North Main Blvd.」はベースとなる道路名「Main」と接頭辞及び接尾辞の組み合わせ「North/-」と、道路の種類「Blvd.」とで表わされる。道路名レコード表1160における典型的なレコード1162は、道路名表1170に蓄積されたベースとなる道路名のテキスト表示を参照する道路名フィールド1164と、接頭辞/接尾辞の組み合わせの所定の集合への索引としての接頭辞/接尾辞の組み合わせの表示と、道路の種類のテキスト表示とを含む接辞タイプフィールド1166とを含む。
【0113】
住所/都市/州名表1110のレコード1112へ戻って、都市/州名フィールド11160は都市/州名表1130のレコード1132を参照する。レコード1132は、都市名のテキスト表示を符号化する都市名フィールド1134と、州名を符号化する州名表1140のレコード1142を参照する州名フィールド1136とを含む。
【0114】
図11に示すいくつかの表は、テキスト名のリストを蓄積したものである。これらには、国名表1120、道路名表1170、州名表1140及び都市/州名表1130が含まれる。図11において、レコードへの参照を、蓄積されたテキスト表示への直接アクセスを可能にするものとして示す。図12を参照して、典型的なテキスト表1200は、見出し1210と、圧縮テキスト領域1220とを含む。特定のレコードへの参照を、見出し1210のレコード1212に対するオフセットとして使用する。レコード1212は、起点フィールド1214と、長さフィールド1216とを含む。圧縮テキスト1220は、一連6ビットの文字表示として符号化される全てのテキスト表示群を含む。起点フィールド1214は、そのレコードの最初の6ビット文字の見出しである。車載コンピュータ210により実行される手順がそのテキスト部分をアクセスできるようにするため、その手順は先ずその見出しを蓄積された8ビットの最初のバイトの住所に変換し、その後、6ビットの文字表示を分解してそのレコードの標準8ビット文字表示を形成する。
【0115】
図14を参照して、別の組の表は「興味ある地点」(POI)としての目的地の入力をサポートする。興味ある地点は、「レストラン」、「ATM機」、「ガソリンスタンド」のような種類に分類されている。POIタイプ表1410は一連のレコードを含む。POIタイプ表1410の典型的なレコード1412は、POIタイプ表1420のレコード1422を参照するタイプフィールド1414を含む。レコード1422はPOIの種類のテキスト表示である。
【0116】
POIタイプ表1410のレコード1412は、POI名/都市名表1430のレコード範囲1444の第1のレコード1432を参照するオフセットフィールド1416を含む。POIタイプ表1410のレコード1412のすぐ後のレコード1413のオフセットフィールド1417は、POIタイプ表1410のレコード範囲1444のすぐ後のPOI名/都市名表1430のレコード1446を参照する。
【0117】
POI名/都市名表1430のレコード1432は、国名表1120(図11)のレコードを参照する国名フィールド1434、都市/州名表1130のレコードを参照する都市/州名フィールド1436、POI名フィールド1438、レコード1432に関連するPOIリスト表1450のレコード範囲1464の第1のレコードであるPOIリスト表1450のレコード1452を参照するオフセットフィールド1440を含む。都市/州名表1430のレコード1432のすぐ後のレコード1433のオフセットフィールド1440は、POIリスト表1450の範囲1464のすぐ後のレコード1466を参照する。
【0118】
POIリスト表1450のレコード1452は、道路名レコード表1160のレコードを参照する道路名フィールド1454と、興味ある地点の住所に関連する番地を符号化する住所フィールド1456と、興味ある地点の電話番号を符号化する電話番号フィールド1458と、興味ある地点の緯度及び経度を符号化する緯度/経度フィールド1460とを含む。
【0119】
車載データベース432には、目的地の明細の他の形式をサポートする別の表が含まれる。「イエローページ」(電話帳)形式で目的地の明細をサポートするシステムの例において、車載データベース432は、イエローページの職種をテキスト形式で表わした表を含む。交差する一対の道路により目的地の明細をサポートするシステムの例では、車載データベース432は、交差する道路の有効な組み合わせを表わす表を含む。交差する道路の組み合わせの表が含まれる場合、その表は主要道路の交差点だけを含むか、また別に、主要道路とそれよりも小さい住宅地域の道路との交差点、さらには住宅地域の道路同士の交差点を、車載システムの記憶容量に十分な空きがあれば含むことも可能である。
【0120】
車載データベース432の別の表を、車両がルートから外れたと判断されたとき誘導過程で利用する。詳説すると、これらの表は主要道路網1000(図10)を符号化したものである。図13Aを参照して、主要道路網1000の代表的なリンクは、ノードi1301とノードj1302とを連結する。リンクc1307は、ノードi1301とj1302とを連結する。リンクc1307は、2つの形成点1303及び1303を含んでいる。ノードi1301はまたリンクa1305とb1306とに連結され、ノードj1302はまたリンクd1308とe1309とに連結されている。
【0121】
図13Bを参照して、主要道路網1000を表わすためにいくつかの表を使用する。図13Aに示す代表的なリンクに関連するこれらの表のレコードを、図13Bに示す。マスターノード表1310は、道路網の各ノードについて長さが論理的に可変のレコードを含む。ノードi1301に関連する1312は、ノードi1301の位置を符号化する緯度/経度フィールド1314を含む。レコード1312はまた、1組のリンクフィールド1316を含み、各フィールドはノードi1301で連結された各リンクに対応するものである。各リンクフィールド1316は、そのノードにおいてそのリンクから他のリンクへの転換が可能な方向に関する情報と、そのリンクに関連するリンク区分表1330のレコードへの参照を含む。例えば、リンクc1307に関連するリンクフィールド1316はリンク区分表1330のレコード1332を参照する。
【0122】
リンク区分表1330のレコード1332は、道路名レコード表1160のレコードを参照する道路名フィールド1334と、マスターノード表1310のレコード1312及び1318をそれぞれ参照する基準ノードフィールド1336及び非基準ノードフィールド1338とを含む。レコード1332はまた、形成点情報表1350のレコード1352を参照する形成点情報フィールド1340を含む。形成点情報フィールド1340により参照されるレコードは、そのリンク上の形成点に関連する情報だけでなく、そのリンク上の標識に関連する情報も含む。レコード1332はまた、そのリンクの道路等級を符号化する等級フィールド1342と、1つが道路の各側に対応する住所範囲表1180の2つのレコードを参照する住所範囲フィールド1344とを含む。
【0123】
リンク形成点表1350のレコード1352は、形成点数フィールド1354と、標識数フィールド1356とを含む。各形成点につき、レコード1352は、前の形成点から、あるいは第1の形成点の基準ノードからの緯度及び経度の変化を符号化したものを含む。レコード1352はまた、リンクに沿って運転する者が見掛けるであろう標識を記載する標識情報フィールド1360を含む。
【0124】
2.6 サーバーのソフトウェア構成要素(図5)
図5を参照して、サーバーシステム125は、サーバーコンピュータ310(図3)上で実行されるソフトウェアを含む。このソフトウェアには、車載システムとの対話に使用する航法アプリケーション512が含まれる。航法アプリケーション512は、電話インターフェイス320(図3)との通信に使用される通信インターフェイス514に結合される。航法アプリケーションは、GPS受信機325(図3)に結合されるGPSインターフェイス516にも結合される。
【0125】
航法アプリケーション512も、データインターフェイス518を介してアクセスする多数のデータベースを利用する。サーバーシステム125は、完全な道路網700(図7)を含むサーバー地図データベース520を含む。このデータベースは、地図プロバイダ160により提供される地図情報360より取出される。この地図情報は、この情報を再フォーマットしてサーバー地図データベース520を形成する地図プロセッサ550により処理される。同じ地図情報は、車両の車載データベース432に蓄積される地図情報を取出すために使用される。地図プロセッサ550は、サーバーコンピュータ310上で実
行されるソフトウェアモジュールとして実現するか、または再フォーマットの仕事に割当てられる他のコンピュータ上で実行できる。同じ地図情報からサーバー地図データベースと車載地図データベースの両方を取出すことにより、車載データとサーバーのデータの間の一貫性が保証される。
【0126】
航法アプリケーション512もまた、イエローページデータベース522を利用して所望の目的地の電話番号を「逆方向」番号探索表の番地に変換する。イエローページデータベース522の構成に必要な情報は、電話会社または電話帳出版社のような外部情報システム130により提供される。
【0127】
航法アプリケーション512は、交通データベース524も利用する。交通データベース524の情報には、ルート設定に用いる典型的なリンクの速度が含まれている。この情報は、政府管理の交通監視局及び調査用車両(章3.5)から得られる記録データのような外部情報システム130を組み合わせることにより得られる。調査用車両を用いて交通情報を収集する場合、交通情報をサーバーシステムから外部の交通情報システムへ提供させることも可能である。
【0128】
3 システムの動作(図15A−B及び図16―18)
3. 1一般的手順
システムの動作には、車載システム105とサーバーシステム125(図1を参照)との協働が含まれる。車両の運転者が目的地の指定を開始してから車両が指定した目的地に到達するまでに従う手順を、図15A−B及び図16―18の擬似コードリストに示す。
【0129】
図15Aを参照して、運転者が所望の目的地の指定を開始する時から車載システムが運転者の目的地への誘導を開始できるときまでに車載システム105(図1、2)が従う手順を示す。車載システムはまず、運転者から目的地の明細を受取る(ライン1502)。これは、例えば、運転者が都市、その後道路及び番地を選択するように、運転者とのいくつかの対話動作を必要とする。以下においてさらに説明するように(章3.2.1)、このシステムは種々のタイプの目的地指定手順をサポートする。
【0130】
車載システムはまた、最初の自車位置またはその最初の自車位置に関するデータ、システムの別のバージョンでは車両の方向を求める(ライン1503)。位置または位置関連データには、(a)ナビゲーションリクエストが実行中の時得られるGPS推定位置または擬似レンジ測定値、(b)過去のGPS推定位置、(c)前のGPS推定位置または運転操作点からの推測航法位置のうちの1または2以上が含まれる。出発位置の推定については以下に述べる(章3.2.2)。
【0131】
運転者から目的地の明細及び車両の現在位置に関する位置データを受信すると、車載システムはサーバーシステムとの通信セッションを開始する(ライン1504)。車載システムは、セルラー電話によりサーバーシステムへ電話をかけ、次いでモデムによりサーバーシステムとのデータ伝送を開始することにより、通信セッションを開始する。
【0132】
車載システムはその後、位置データと目的地の明細をサーバーシステムへ送信する(ライン1505)。
【0133】
図15Bを参照して、サーバーシステムは車両からの通信セッションを受け入れて、位置データ及び目的地の明細を受信する(ライン1553)。
【0134】
サーバーシステムは、多数のGPS衛星140からの信号を受信し、各衛星についてGPS補正データを計算する(ライン1554)。その後、サーバーシステムはその車両の
位置を求める(ライン1555)。その車両の位置を求めるにあたり、車載システムが擬似レンジ測定値のような生のGPSデータをGPS衛星140へ提供する場合、サーバーシステムは計算したGPS補正データを車両が提供する生のGPSデータに適用してその車両の位置を計算する。
【0135】
サーバーシステムの別の例では、サーバーのGPS受信機(または少なくとも1つのGPSアンテナ)を必ずしも集中サーバーの所に設置する必要はない。例えば、集中サーバーは車両から多少離れた所にあってもよい。GPS受信機及びアンテナは集中サーバーよりも車両に近い所に設置される。この場合、サーバーシステムのGPS受信機がGPS推定位置を推定中の車両に近いため、GPS補正データがより正確なものになる。また、サーバーシステムは種々の場所で多数のGPS受信機を備えるようにしてもよい。その場合、サーバーシステムは補正データが提供される車両に最も近いGPS受信機を選択する。このようにすると、単一のサーバーシステムが、補正項の地理的ばらつきにより共通のGPS補正データを使用できない広い地理的領域に展開する車両にサービスを提供することが可能となる。
【0136】
受信されるある特定種類の目的地の明細、特にイエローページ形の目的地の明細については、この時点における目的地の指定は十分でない。この場合(ライン1556)、運転者はサーバーシステムにより提供される二次的明細データに応答してさらに入力を行う必要があろう。サーバーシステムは、二次的データを車両へ送信する(ライン1557)。例えば、運転者がイエローページの形式で目的地を指定する場合、サーバーシステムはその車両の位置近傍のその種類に属する特定のリストを有する二次データを提供する。
【0137】
図15Aへ戻って、車載システムは二次的な目的地明細データを受取る(ライン1507)。車載システムはこのデータを運転者へ提示し、運転者から例えば二次的明細データに含まれる目的地リストからの選択として二次的な目的地の明細を受取る。二次的な目的地の明細はサーバーへ送られる(ライン1509)。この時点において、サーバーシステムは完全に指定された目的地を有することになる。
【0138】
図15Bへ戻って、サーバーシステムはその車両の位置から指定された目的地までのルート(章3.2.4を参照)を設定する(ライン1561)。サーバーシステムはまた、車両へダウンロードする車両位置周辺のスポット地図を決定する。サーバーシステムはまた、運転操作の複雑さを考慮して運転操作点周辺のスポット地図をダウンロードすべきか否かを判断し、またこれらの運転操作点周辺のスポット地図を決定する。
【0139】
サーバーシステムは、設定したルート、スポット地図、GPS補正データを車載システムへ送信する(ライン1563)。
【0140】
図15Aに戻って、車載システムは、設定ルート、スポット地図、GPS補正データをサーバーシステムから受信し(ライン1512)、サーバーシステムとの通信セッションを停止する(ライン1513)。
【0141】
図16を参照すると、車両はここで、その初期位置から設定ルート上を走行するための出発時の運転操作につき運転者が誘導指示を待つ待機状態にある。最初に、車載システムはその推定位置を初期化する。サーバーシステムは、車載システムが提供するGPS補正データをそのGPS受信機へ送ることにより、GPS受信機により提供される推定位置の精度を向上させる。サーバーシステムが提供するGPS補正データは短時間の間有効であるにすぎない。GPS補正データをサーバーシステムがそのGPS受信機から得てから約一分のインターバルの後、車載システムはこの補正データの使用を停止し、その代わりに標準GPSを用いる。以下において詳説するように、GPS補正データは走行中他の時点
で得ることが可能であり、かかる場合、車載システムは、補正データがGPS受信機により発生された後の一定時間インターバルの間その補正データをそのGPS受信機へ提供する。
【0142】
車両が設定ルートを辿るようになるまでのその最初の走行部分である出発運転操作時、車載システムは、GPS補正データが古すぎた値になるまでは差動GPSによる推定位置を用いて自車位置を追跡し、その後は未補正GPS推定位置により車両を追跡する(ライン1604)。車載システムは、スポット地図を車両の推定位置及び設定ルートの表示と共に表示する(ライン1305)。車載システムにより車両が設定ルートを辿っていることが検知されると、出発時の運転操作部分が完了し、方向転換によりルートを辿る部分が開始される。
【0143】
図17を参照して、ルートを辿る手順は設定ルートに沿う各リンクを運転者に通報することにより実行される。ルートに沿って走行する間、車載システムはその車両の2つの推定位置を維持する。第1の推定位置は、GPSによる推定値、または現在のGPS補正データが利用可能な場合の(D)GPS推定値に基づくものである。第2の推定位置は、推測航法によるものである。この手順は車両が設定ルートを正しく辿っていると仮定する。推測航法は、設定ルートに沿う運転操作点及び中間地点ならびに車両のセンサー、特に速度センサーからの情報を用いて第2の推定位置を更新する。車両がルートを本当に辿っている場合、2つの推定値は互いに近いはずである。この推測航法は車両が設定ルートに沿って走行していると仮定するため、車両位置の追跡にあたり推定方向を利用しないことに注意されたい。
【0144】
リンクに沿う走行中、そのリンクの最初のノードで最初の運転操作をした後、車載システムはオフルート許容値を初期化する。この許容値はGPSによる推定位置と推測航法による推定位置の間の許容可能な差である。この許容値は、速度センサーによる計算の不正確さとGPS補正データの経時変化とにより推定位置の精度が低くなるのを補償するため、運転操作直後の初期値から増加する。オフルート許容値は150フィートに初期化されるが、100フィート走行するごとに約1フィートの割合で最大500フィートまで線形的に増加する。
【0145】
次の運転操作点(ライン1704でスタートするループ)まで走行する間、車両はそのオフルート許容値を増加させ(ライン1705)、その推測航法位置を追跡し(ライン1706)、そして現在のGPS補正データが利用可能であるか否かによるがそのGPSまたは(D)GPS位置を追跡する(ライン1707)。
【0146】
推測航法位置と(D)GPSによる位置との間の差が任意の時点においてオフルート許容値よりも大きくなると、オフルートルーチンが始動される(ライン1710)。
【0147】
リンクに沿って走行すると、車両は次の運転操作点近くの或る点に到達する。車両が次の運転操作点から見てある距離範囲内にあると推定されると、運転者は車載システムから次に行う運転操作につきグラフィック形式及び音声形式による通報を受ける。この通報範囲の大きさは走行中の道路の等級により左右されるが、これは運転者が通報を受ける運転操作を行うまでの時間に関係がある。例えば、ハイウェイ上で運転者がハイウェイ出口のような運転操作点の通報を受けるのは、住宅地域内での運転操作点の通報を受ける場合よりも、運転操作点のかなり前方である。
【0148】
リンクに沿って走行する間、車載システムは次の運転操作の正確な地点を検知しようとする。車両が次の運転操作点から見てある距離範囲内にある場合、車載システムはこの運転操作点を検知しようとする。例えば、その運転操作が右折である場合、磁気コンパスま
たはレートジャイロスコープからのような車載センサーからの信号が、または方向変化が検知されるGPS推定位置の時系列が運転操作点のあることを明確に指示する。
【0149】
運転操作点が検知されると(ライン1718)、車載システムはその運転操作点の位置に応じてその推測航法推定位置を更新する(ライン1719)。また、車載システムは、ダウンロードした運転操作点の位置を利用してそれ自身のGPS補正データを計算する(ライン1720)。即ち、車載システムは、運転操作点の緯度及び経度の偏差を計算し、これらの偏差値を、運転操作の後1分のインターバルの間そのGPS受信機から出力された緯度及び経度の推定位置に補正値として適用する。あるいは、車載システムは、運転操作点が検知されたときの運転操作点の位置及び車両のGPS受信機により得られた擬似レンジ測定値を用いて新しいGPS補正データを計算し、これらのGPS補正データは運転操作後1分のインターバルの間使用される。
【0150】
ここで、例えば、車両センサーでは正確に検知されないわずかな方向転換のような運転操作が検知されない場合があることに注意されたい。このような場合、車載システムは、車両がルート上にあると仮定して推測航法手順を継続する。かかる検知されない運転操作点は、車両の推測航法位置の追跡の観点から本質的に中間地点と同様な取り扱いをする。
【0151】
ルートを辿る手順は、目的地に到達するまでルートに沿って1つのリンクから次のリンクへと継続する(ライン1725)。
【0152】
図18を参照して、オフルートルーチンは先ず、推測航法による位置補正手順を含む(ライン1802−1810)。推定位置間の差が検出された後、例えば75フィートのインターバルの間走行方向が設定ルートにマッチする場合、推測航法位置は設定ルートに沿う(D)GPS推定位置に最も近い点に更新される。このようにすると、推定位置の偏差がルートに沿う距離の追跡が不正確なことによる場合でも、位置補正手順によりこのエラーが成功裏に解消するはずである。(D)GPS推定値と推測航法推定値の間の偏差がオフルート許容値よりも小さい場合、車載システムはルートを辿る手順に復帰する(ライン1808)。一方、設定ルート上の最も近い点でも(D)GPS位置からオフルート許容値以上離れている場合は、位置補正手順がうまく機能せず、ルートを再設定する手順が始動される。
【0153】
図18を参照して、ルート再設定手順は先ず、車両に蓄積された主要道路網1000上で車両位置(図10)推定する。GPS推定位置を用いて車両が走行中のリンクを見つける(ライン1811)。
【0154】
車両が主要道路網上にいることが分かった場合、車載システムは、以前設定したルートに沿う運転操作点または中間地点のうちの1つにつながる最良のルートを計算する(ライン1813)。
【0155】
前のルート上の運転停止点または中間地点までの新しい設定ルートは、前に設定したルートの残部と共に、前のルートにとって代わる新しい設定ルートとなる(ライン1815)。その後、リンクごとのルートを辿る手順に復帰する(ライン1816)。
【0156】
以下において、システムの一般的動作の或る特定の側面を説明する。これらの側面には、車上での目的地の明細を含むルートの設定だけでなくサーバーシステムでの最良ルートの計算が含まれる。これら側面には、車両システムが実行する誘導動作だけでなく車両がルートから外れたことが検知された場合に車載システムが実行するルート再設定動作も含まれる。加えて、車両の一団が交通関連データの収集に利用されるシステムの動作についても以下において説明する。
【0157】
3.2 ルートの設定(図15A−B)
ルートの設定には、図15A−Bで示すように幾つかのステップがある。ルートの設定動作を詳しく説明すると、目的地の指定(図15Aのライン1502)、出発位置の測位(図15Aのライン1503)、サーバーシステムへの照会(図15Aのライン1504−1510、図15Bのライン1552−1560)、ルートの設定(図15Bのライン1561)、ルート及びスポット地図のダウンロード(図15Bのライン1562−1563、及び図15Aのライン1512)が含まれる。
【0158】
これら各ステップにおいて車載システム及びサーバーシステムが実行する指定の動作を、以下の章に示す。
【0159】
3.2.1目的地の入力
図15A(ライン1502)で示すように、所望の目的地へのナビゲーションの最初のステップは車両の運転者による目的地の入力である。車載システム105(図1,2)は、多数の異なる方法による目的地の指定を可能にする。一般的に、車載システムは、車載データベース432(図4)を用いて、運転者が選択するリストをスクロールすることにより選択肢を選べるようにする。目的地の明細としては、以下のものから1つを選ぶとよい。
【0160】
道路の住所(例えば、都市、道路及び番地);
興味ある地点(例えば、都市、興味ある地点及びリストからの選択);
イエローページリスト(例えば、リストの種類及びリストからの選択);
目的地の電話番号;
交差する一対の道路;
最近指定した目的地のリストからの選択;
ユーザーの個人情報に含まれる前に選択した目的地のリストからの選択。
【0161】
システムとの最初の対話動作において、運転者はいずれの目的地入力方法を使用するか、例えば選択肢表示リストからの選択を選ぶかを指定する。
【0162】
3.2.1.1 道路の住所の指定
運転者が目的地を指定できる1つの方法は、目的地の番地による指定である。この場合の目的地の明細は、国名、州名、都市名、道路名及び番地の完全な組み合わせの指定より成る。ユーザーはこれらのフィールドをそれぞれ順番に入力する必要はない。例えば、現在の(即ち、以前使用した)国名及び州名をデフォルトとして使用できる。
【0163】
フィールドの指定を別の順番を行うこともできる。その1つは、最初に現在の国及び州の中の都市名リストをスクロールして都市を選択する。図11を参照して、有効な州名リストは都市/州名表1130から得られる。運転者が所望の都市を選択すると、車載システムはその都市の有効な道路名のスクロール自在なリストを提供する。有効な道路名リストは、住所/都市/州名表1100、及びその関連の住所/道路名表1150、道路レコード表1160、道路名表1170を用いて得られる。運転者は、所望の道路を選択した後、番地を入力する。車載システムは、住所/道路名表1150及び住所/範囲表1180を用いて番地を確認する。
【0164】
以上述べた手順において、有効な名前のリストからの選択を行うにあたり、別の方法を用いることができる。例えば、「UP」及び「DOWN」ボタンによりリストをスクロールしてその名前の接頭部分を変えることにより、最終的に完全な名前を一義的に指定するやり方がある。このシステムは、文字数字式キーボードを必ずしも備えていない。その場
合、運転者はカーソルを所望の文字または数字部分に移動させてその文字または数字を選択することにより、道路の住所名または数字を入力する。
【0165】
所望の目的地の都市名が分からない場合がある。その場合、都市名は最初は分からない状態のままでよい。車載システムにより運転者に提供される有効な道路名リストは、現在の州名に関連の全ての道路を含む。道路名を選択した場合、都市名が不明確であれば、運転者は可能性のある都市名リストから選択を行い、その後で番地を入力する。目的地の道路の番地を指定した後でその都市名が明確になることがある。
【0166】
3.2.1.2 興味ある地点の指定
目的地として興味ある地点(POI)を指定するにあたり、運転者は最初に興味ある地点の種類が掲載されたリストから選択を行う。POIの種類の例としては、銀行、ガソリンスタンド、病院及びレストランがある。図14を参照して、有効な種類名のリストは車載システムがPOI種類名表1420から得る。
【0167】
運転者は、選択したPOIの種類に該当する特定のPOIを多数の方法で選択できる。第1の方法において、運転者が次に行う選択は目的地としてのPOIのある都市の選択である。このシステムは、POI名/都市名表1430を用いて、選択された都市にある選択された種類のPOIの名前、住所及び電話番号のリストを表示する。その後、運転者は表示されたPOIリストから選択を行う。例えば、運転者がレストランのような目的地へ向かうか否かを決定する前にその目的地へ電話したい場合、電話番号があれば便利であろう。
【0168】
このシステムは、都市を指定するのでなくて、車両の現在位置に近いという理由でPOIを表示できる。選択したPOIの種類に該当するPOIにつき、GPSによる緯度及び経度の推定位置と、POIリスト表1450のレコードの緯度/経度フィールドとを比較する。その後、車載システムはアルファベット順でなくて現在位置に近い順にそれらのPOIを表示する。
【0169】
3.2.1.3 「イエローページ」
車載データベース432は、車載システムに対するイエローページリストによる目的地の指定をサポートするが、運転者がサーチする全ての可能なリストを蓄積するほどの容量を有していない。その代わり、例えば「宝石店」のような種類が掲載されたリストを含んでいる。車載システムは最初に、運転者が特定の種類を選択するための種類名リストを表示する。その後、運転者は特定の目的地の都市名を選択するか、または現在位置に近いものが掲載されたリストをリクエストする。車載システムはその種類のリストを運転者に提示し、運転者がそのリストから選択を行う。この時点では特定の目的地(即ち、道路の住所)は依然として指定されていないため、目的地の指定は完了していないことに注意されたい。
【0170】
サーバーとの通信セッションが開始されると、サーバーは、選択されたイエローページの種類または職種に該当する特定のリストを、選択された都市分だけ或いは車両位置に近い順に、車載システムへダウンロードする。その後、運転者はダウンロードされたリストから選択を行う。
【0171】
3.2.1.4 他の目的地の指定
目的地指定方法としての他のいくつかのオプションを、車載システムにサポートさせることができる。
【0172】
運転者は交差する一対の道路を選択することにより目的地を指定できる。交差する一対
の道路の選択をサポートするため、車載データベース432は、有効な主要道路の対、主要道路と側道或いは側道同士の可能な対を示す表を含む。運転者は第1の道路を選択した後、表示された交差する有効な道路名リストの中から1つの道路を選択する。
【0173】
番地による目的地の指定と同様、交差する道路の指定前に都市を指定しない場合、一方または両方の道路を選択した後で都市を指定する。
【0174】
運転者は、電話番号を指定して目的地を指定することができる。車載データベース432には完全な電話帳は蓄積されていないため、恐らく市外局番が正しいか否かの点は別として電話番号が正しいか否かは車載システムがサーバーシステムとの通信セッションを開始する前は検証されない。サーバーシステムは電話番号を受信した後、電話帳を逆方向にサーチして、目的地の道路の住所を得る。
【0175】
以下においてさらに説明するように、個々の運転者は車両に個人情報リストを蓄積することが可能であるが、サーバーシステム上にそれに対応する記憶領域を設けてもよい。この個人情報リストには、勤務先、家庭、空港など、運転者が特定の場所として指定した代表的な目的地を掲載させることができる。
【0176】
運転者は、最近指定したいくつかの場所から選択を行って目的地を指定することが可能である。例えば、運転者は最近訪れた仕事関連のサイトを再び訪れることがあろう。
【0177】
目的地を道路の住所で指定するシステムの別のバージョンがあるが、車載システムは指定された道路の住所の範囲を確認するデータを持ち合わせていない。例えば、車載システムは任意の番地を確認する能力を具備しない場合があり、また目的地が、住所範囲を示すデータが蓄積された地理的範囲外である場合がある。車載システムは、道路の住所を確認できない場合でも、サーバーコンピュータとの通信セッションを開始できる。サーバーコンピュータはこの確認手順を完了する。
【0178】
3.2.2出発位置の測位
車載システムは、その推定位置をサーバーシステムに送信するか、またはそのGPS受信機から生のGPSデータをサーバーシステムに送信し、そのデータからサーバーシステムが車両位置を計算する(図15Aのライン1503)
【0179】
車両がその出発位置でGPS衛星からの信号を受信できない状況が存在する。例えば、車両が地下ガレージにある場合などがあろう。この場合、車両は出発位置に到着する前にシステムが測位した推定位置を利用する。さらに、GPS受信機の電源を最初に投入した後、その受信機が推定位置を与えるまでかなりの時間インターバルがあることがある。例えば、GPS受信機は、レンジ内にある各衛星の位置を確かめ、軌道上のそれらの位置を計算する必要がある。
【0180】
従って、車載システムは、運転者がルートに沿って誘導される途中でなくてもGPSによる推定位置の履歴を恒常的に維持する。この履歴は、システムの電源を切るまでは車載システムの非揮発性メモリに蓄積される。従って、GPS信号を出発位置で受信できなくても、蓄積した履歴の最も最近のGPS推定位置を使用する。
【0181】
車載システムは、位置関連データをサーバーシステムに送信するだけでなく、速度及び方向に関連するデータを送信する。方向は、過去の連続するGPS推定位置から、或いは磁気コンパスから得ることができる。サーバーシステムは、速度及び方向に関する情報により、例えば近傍の多数の道路区分のうちどの部分上にいるかを、道路区分の等級及びそれら区分上の許容できる進行方向に基づいて明らかにできる。
【0182】
出発位置へ来る前車両が誘導を受けなかった場合、この出発位置は前に設定したルートに沿う推測航法により求めることができる。
【0183】
GPS補正データがサーバーシステムから車載システムに送信されると、この車載システムはGPS補正データによりその出発位置を更新する(図16のライン1602)。例えば、GPS補正データが擬似レンジ補正データである場合、車載システムはこの擬似レンジ補正データをそのGPS受信機へ送信し、GPS受信機から補正された推定位置を受信する。GPS補正データが緯度及び経度のオフセットである場合、車載システムはこれらのオフセットをそのGPS受信機から出力された推定位置に適用する。
【0184】
3.2.3サーバーへの照会
車載システムがサーバーシステムとの通信セッションを開始する際(図15Aのライン1504−1510)、このシステムは2つのステップでそれを行う。まず、車載システムはセルラー電話を介してサーバーシステムと接続し、その後セルラー電話回線により変調データを送受信する。
【0185】
第1のステップとして、このセルラー電話による接続は車載システムが指定番号をダイヤルしてサーバーシステムを呼出すことにより実行される。車載システムは、セルラー電話システムの到達区域外にある場合またはセルラー電話システムの容量がその呼出しを受付けない場合のようなアナログ式セルラー電話ネットワークに見られる代表的なエラー状態に対処できる。
【0186】
第2のステップとして、車載システムは、電話接続が成った後、サーバーシステムとのデータ接続を確立しようとする。代表的なモデムにより、互換性のある変調、圧縮及びエラー補正プロトコルを選択するためのやり取りが行なわれる。通信セッションを開始するに要する時間を節減するため、例えば全ての車両がサポートする「最低レベルの」共通プロトコルとして、特定のプロトコルセットを予め選択する。サーバーシステムは、この最低レベルのプロトコルを用いる通信を予想する。これにより、プロトコル選択のためのやり取りの完了を待たずにデータをできるだけ早く流すことが可能となる。伝送されるデータ量が比較的少ないため、最善のプロトコル選択のためのやり取りに要する時間は、予め選択したプロトコルでなくてこのやり取りの結果として選択されたプロトコルを用いてデータを送信することにより節減できる時間よりも恐らく大きいであろう。
【0187】
3.2.4ルートの設定
サーバーシステムにおけるルートの設定(図15Bのライン1561)には周知のルート発見方法を用いる。詳説すると、道路網700(図7)に関連して周知のA(「A―スター」)グラフ探索アルゴリズムを2例につき使用する。一例では、Aアルゴリズムは出発位置でスタートし、所望の目的地から「逆向きに」スタートする。Aアルゴリズムは「最良最初」探索法の一種である。そのアルゴリズム実行の任意の点において、最初のノードから1組の中間ノードへのグラフに沿う実距離は計算済みである。各中間ノードから最終ノードまでの距離の下限(アルゴリズムのバージョンによっては、推定値)を実距離に加算する。最も小さい和を有する中間ノードを延長する。その下限を用いる場合、このアルゴリズムは最初のノードから最終のノードまでの最短経路を与える。Aアルゴリズムを2例につき用いて、この2例に共通の中間ノードが存在すると最良の経路が選択される。
【0188】
ルート設定アルゴリズムとは別の方法を使用できる。例えば、ダイクストラのアルゴリズムまたは別種の「最良最初」アルゴリズムを使用可能である。
【0189】
ルートの設定は種々の基準に基づいて行うことができる。最短の合計距離として、道路網の各リンクの実距離を使用することによりその経路のコストを計算する。残りの経路の下限は、中間ノードと最終ノードの間の直線距離とすることができる。ルート設定は、最短の予想走行時間を基準にしてもよい。リンクに沿う走行時間は、種々の等級の道路の予想速度を基準とするか、或いは特定のリンクに関連してサーバーシステム上に蓄積した指定速度データを基準とすることも可能である。例えば、サーバーシステムは、或る特定のリンクは混雑状態にあるため、その等級の道路の予想速度よりも遅いことを知っていることがある。ルート設定アルゴリズムは、別のルートがあればこのような混雑状態のリンクを回避する傾向がある。
【0190】
サーバーシステム上において他のルート設定法を使用することができる。例えば、ルートを特定の道路区分を辿るように限定することが可能であり、ルートのコストに距離または予想走行時間とは別の要因、例えばそのルートの通行料を含めることも可能である。
【0191】
3.2.5ルートとスポット地図のダウンロード
図8及び9を参照して、サーバーシステムは運転操作点で連結される一連のリンクとしてのルートをダウンロードし、また出発位置または選択された運転操作点周辺の小さなグラフとしてスポット地図をダウンロードする(図15Bのライン1562−1563、図15Aのライン1512)。ダウンロードに要する時間を節減するため、このデータはコンパクトなデータ構造として表わされる。
【0192】
設定ルートは、ルートを構成する一連のリンクとして圧縮フォーマットを用いてダウンロードされる。設定ルートの各リンクにつき、ダウンロードされる情報には、
10-5度の単位で32ビットの整数として符号化されたリンクの出発ノード(運転操作点)の緯度及び経度;
「右折」、「左折」などのようなメッセージを表わす索引として符号化された方向転換情報;
現在の運転操作点における「分岐」数;
次の運転操作点に至る前の中間地点の数;及び このリンクに関連する道路区分の等級(例えば、道幅或いは等級)がある。
【0193】
さらに、各中間地点に対して、リンクのデータには、前の中間地点からの或いは第1の中間地点のための出発ノードからの、10-5度の単位で12ビットの整数として符号化された、緯度及び経度の変化が含まれる。
【0194】
緯度又は経度の変化を12ビットで符号化することにより、その変化がほぼ212x10-5=0.04°に制限されることに注意されたい。サーバーシステムにより設定されるルートの1区分が連続する運転操作点または中間地点間においてより大きな変化を含む場合、サーバーシステムは12ビットの大きさで変化を符号化できる充分近いさらに別の中間地点を挿入する。
【0195】
さらに、各リンクにつき、ダウンロードされるデータには、リンクに関連する道路名、及び次の運転操作点で方向転換することにより移る道路名並びに運転者に提示すべき任意の標識または他の特別な情報に関連するテキストフィールドの長さ;及びそのテキストフィールドそれ自体が含まれる。
【0196】
運転操作点の各「分岐」について、ダウンロードされるデータには、運転操作点で連結される道路の交差角度に関連するデータが含まれるため、運転操作の比較的正確なグラフィック表示を運転者に提供することが可能となる。
【0197】
このルートをダウンロードするフォーマットは、サーバーから車両へ迅速にダウンロード可能なコンパクトな表示を提供する。そのシステムの別のバージョンは、例えば、蓄積された道路名を参照するか或いは車両に既に蓄積された主要道路網のノードへの参照を利用することにより、車載データベースのデータを利用してデータ量をさらに減少することが可能である。このシステムの別のバージョンはまた、リンクに関連するさらに別の情報を含むことができる。例えば、サーバーがリンクが例外的混雑状態にあることを知っている場合、リンクの走行速度をダウンロードすることができる。
【0198】
ルートをダウンロードする別の方法には、車載システムに蓄積済みの予め設定された一連の道路区分を使用するものがある。サーバーシステムは、一連の道路区分、運転操作点及び中間地点の代わりに、予め設定され蓄積済みのこれらの一連の点への参照を利用する。このようにすると、例えばハイウエイに沿う通常の走行ルートは特にダウンロードする必要はない。サーバーシステムは、車両に蓄積されたこれらの点が連続するものを定期的に更新してそれらの車両が普通リクエストするルートとすることができる。或いは、車載システムに以前ダウンロードしたルートを記憶させ、サーバーが新しく設定したルートをダウンロードする際にこれらのルートの一部を参照できるようにすればよい。
【0199】
3.3 誘導
運転者を所望の目的地へ誘導する過程には、車載システムの動作の幾つかの側面が関連する。これらの側面には、出発時の運転操作(図16);
推測航法による位置の追跡(図17のライン1706);
GPSによる位置の追跡及びルートを外れたことの検知(図17のライン1707−1710);及び
運転操作の通報及び検知(図17のライン1712−1722);
が含まれる。
【0200】
これらの側面を以下の章で説明する。
【0201】
3.3.1出発時の運転操作
幾つかの理由で、運転者がルートの最初の部分を辿ることができない場合がある。その1つは、車両の出発位置が不正確な場合である。例えば、GPSは実際は近くの駐車場または隣接する道路上にあるが、別の道路上にあると指示される場合がある。また、車両が道路上でサーバーシステムの予想とは反対の方向に向いている場合、車両は最初の段階でルートを外れる傾向がある。また、例えば、側道の間隔が狭い、道路標識が不適切、注意が散漫、混雑状況にある等の理由によりルートの出発時指示に従うのが困難な場合がある。
【0202】
上記及び他の理由により、システムは、最初の出発位置から運転者がミスをしないことに期待を掛けられない。そのため、出発位置に基づいてスポット地図を決定し、これを車両へダウンロードする。このスポット地図は、通常、出発位置から任意の方向にある2または3つの交差点だけをカバーする。設定ルートを、車両の(D)GPSによる位置のように、スポット地図と共に図示する。運転者はこの地図を用いて設定ルートに乗る。
【0203】
車両が設定ルートの1区分に乗り、正しい方向に走行し始めると、方向転換による誘導過程が開始される。
【0204】
3.3.2推測航法による位置の追跡
車載システムは、方向転換によりルートを辿る誘導過程に入ると、その車両の推測航法による推定位置を維持する。一般的に、車載システムは、運転者が指示に従うように努力していると仮定して車両を追跡する。推測航法は、速度センサー232からの信号と、設
定ルートに沿う運転操作点または中間地点間のリンクの直線近似とを更新された位置に変換することをその基本とする。さらに詳説すると、車載システムが車両が既知の運転操作点にあると仮定する場合、車両が速度信号に従って測定される距離を走行すると、車載システムは車両位置を運転操作点から一連のリンクに沿って測定された距離の点と推定する。各リンクの端部のノード位置は車載システムにとって既知であるため、車載システムはリンクの方向に基づき、車両が運転操作点を過ぎてそのルート上の後続リンクを走行する際の車両の走行方向を推定する。
【0205】
推測航法は、速度信号と走行距離との間の既知の対応関係に基づくものである。この対応関係に影響を与える幾つかの要因として温度により変化するタイヤ圧があり、このタイヤ圧はタイヤの周長を変化させる。走行距離を速度信号から推定する際の精度を向上させるため、恒常的な較正手順がサポートされている。車載システムは、運転操作を検知すると、速度センサーによる推定距離と地図による推定距離とを比較する。車載システムは、速度信号パルスの数を走行距離に関連付けるスケール係数を調整することにより、速度センサーによる走行距離の推定値と地図による推定値がマッチするようにする。
【0206】
3.3.3GPSによる位置の追跡及びルートを外れたことの検知
運転者が設定ルートに沿って運転操作点を次々に通過する間、車載システムはGPS衛星信号を受信しながらそのGPSによる推定位置を継続的に更新する。加えて、例えば、差動補正モードによってGPS推定位置の精度を向上させるために、車載システムがGPS受信機に送信する現在のGPS補正データをその車載システムが保持するインターバルがある。
【0207】
GPS補正データは、設定ルートがダウンロードされると、車載システムがサーバーシステムから受信する。このシステムの別のバージョンには、サーバーが差動補正データを提供する別の時、例えば、別の目的で開始された通信セッションが行われている間があるであろう。
【0208】
車載システムはまた、その位置を正確に知ると、それ自身のGPS補正データを計算することができる。車載システムは、設定ルートがダウンロードされると各運転操作点の正確な位置がサーバーシステムにダウンロードされるため、運転者が設定された運転操作を実行するのを検知する時その位置を非常に正確に推定する。
従って、設定ルートを走行時、車載システムはGPSまたは(D)GPSによる推定位置の時系列を受信する。この推定位置の時系列は、車載システムによっても維持される推測航法による推定位置と恒常的に比較される。
【0209】
車両の運転操作が実行された後、特に、運転操作点の位置及び車両が運転操作点を通過するとき記録された生のGPSデータに基づいてGPS補正データ計算されると、GPSによる位置及び推測航法による位置とがマッチするはずである。車両が設定リンクに沿って正しく走行する際、推測航法位置とGPS位置とが幾つかの理由により幾分異なることが予想される。これらの理由にとしては、GPSによる推定誤差が大きいこと及び地図に誤差のある可能性があることが考えられる。
【0210】
GPS補正データは、運転操作後約1分の間GPS受信機へ送られる。そのインターバルの間、補正データの有効性は徐々に低下する。即ち、(D)GPSによる推定位置の誤差は徐々に増加する。GPS補正データをもはや使用しなくなった後、GPSの誤差は固定レンジ内にあると予想される。
【0211】
推測航法による推定位置の誤差は、主として、リンクに沿う走行距離の推測誤差に起因して増加する。リンクの長さと中間地点または運転操作点の位置の両方について地図に誤
差があるため、推測航法の位置の誤差が増加することがある。
【0212】
2つの項の各々につき誤差が増加するが、これらの誤差の組合わせは、車載システムがそれを越えるとルートを外れた状態と判断する許容値を大きくすることにより補償される。この許容値は150フィートからスタートする。この許容値は500フィートになるまで走行距離100フィートごとに1フィートの割合で増加する。
【0213】
任意の地点において2つの推定位置間の差が許容値を越えた場合、車載システムは車両がルートを外れたと判断して推測航法による推定位置を補正しようとし、もしそれがうまく行かなければ、ルートを再設定する手順を実行する(章3.4を参照)。
【0214】
3.3.4運転操作の通報及び検知
運転操作の通報及び検知は共に推測航法による推定位置を利用する。さらに詳説すると、前に検知した運転操作点からの設定ルートに沿うスカラー量としての走行距離の推測航法による推定値を利用する。
【0215】
車載システムは、車両が次の運転操作を実行すると予想する時点以前において操作点から離れた地点で運転者に指示を与える。これは、運転者に必要な反応時間と、次の運転操作点までの距離のシステムによる推定値が不正確であることの両方を考慮してのことである。運転者が指示に応答して操作するに要する時間または距離にばらつきがあるのを考慮して、住宅地域の小さな道路上よりもハイウエイのような高速リンク上において、次の運転操作点からより遠く離れた所で指示が与えられる。各道路の等級には、それに応じた、次の指示を与える次の運転操作点までの一定距離がある。
【0216】
車載システムはまた、車両が通報範囲内に入ると音声プロンプトを与える。グラフィック形式及びテキスト形式のプロンプト及び指示は、かかる通報範囲内に車両が入ると、少なくともその地点から表示されるが、それよりも早く表示されるようにしてもよい。
【0217】
車載システムが次の運転操作点であると予想する地点周辺の或る距離範囲を画定する「窓」の中で、車載システムは運転操作が行われる正確な位置を検知しようとする。例えば、運転操作が右折を伴うものであれば、車載磁気コンパスの出力またはGPSによる推定方向を用いることにより運転操作点を高い信頼性で検知する。また、料金収納ブースで停止するようなある特定の運転操作を検知するため車両速度が検知される。
【0218】
運転操作のなかには、高精度で検知できないものがある。例えば、磁気コンパスからの信号では、動きがあまりも遅すぎて検知できない方向転換があろう。車両が運転操作検知「窓」を通過したが、予想された運転操作を検知できなかった場合、車載システムは次の運転操作が検知されるまでただ推測航法位置を継続して更新する。
【0219】
3.3.4.1 ディスプレイ及び音声による指示
音声による指示を受けるだけでなく、車載システムのディスプレイ上には運転操作に関する通報及び指示が提示される。このディスプレイには、
次の運転操作点までの距離のグラフィック形式による表示、例えばリンクを辿るにつれて棒の長さが増加するバーチャート;
例えば、マイル数またはフィート数で表わした残りの距離のデジタル表示;
例えば、次の交差点における全ての道路の交差角度を示す、次の運転操作点における道路の幾何学的形状のグラフィック表示;及び
次の運転操作点において視覚により感知できる道路標識のテキスト;
が含まれる。
【0220】
音声による指示には、運転者に次の運転操作点を通報する指示、及び指示が与えられる点で運転操作をするように運転者に指示する命令を含む予め蓄積された種々の指示が含まれる。
【0221】
3.4 ルートの再設定
車載システムは、車両が設定ルートから外れたことを検知すると、ルート再設定手順(図18)を実行する。第1のステップでは、車両が車載データベース432に蓄積された主要道路網1000上のどこを走行しているかを測位する。
【0222】
車載システムは、GPSまたは(D)GPSによる緯度及び経度の予想値を用いてマスターノード表1310中のノードリストをサーチする。一連のGPS推定位置または磁気コンパスの出力を用いて、隣接するノードを連結するリンクに沿う走行方向を求める。従って、これにより、リンク区分表1330中のいずれのリンク上を車両が走行しているか、及びリンクに沿う走行方向が分かる。
【0223】
その後、車載システムは、そのリンクからスタートして設定ルートに沿う運転操作点または中間地点のうちの1つの点に至る最短経路を求めるサーチを実行する(例えば、Aサーチ)。最後の運転操作点の両側の多数の点または全ての点を、再設定されたルートが前に設定したルートと接続する点として使用する。例えば、最後に検知した運転操作点の前後にある10個の点を使用することができる。点の数を制限すると、ルートの再設定に必要な計算量(時間及びメモリ)を節減することができる。10個よりも少ない点が残っている場合、実際の所望の目的地は再設定されたルートが設定ルートに繋がる点の1つである。
【0224】
サーバーシステムによるルート設定方法と同様、車載システムはAアルゴリズムを用いてルートを設定する。出発位置は、上述したように、マスターノード表1310を走査して求める。中間ノードはAサーチで考慮されるため、所望の位置への距離の下限は、中間地点から運転操作点または中間地点までの直線距離にその運転操作点または中間地点から所望の目的地までの前に算定した距離を加えた和の最後に検知された運転操作点近傍の運転操作点及び中間地点に亘って最小である。このようにして、前に設定したルートを再び結合する最良の点を見つける。
【0225】
サーバーシステムによるルートの設定のように、リンク上を走行するコストは、リンク長、リンクの道路等級に基づくそのリンクの推定走行時間、またはリンクに関連する特定の道路速度情報に基づくそのリンクの推定走行時間に基づく。
【0226】
3.5 遊動車両によるデータの収集
図19を参照して、サーバーシステム125の一部である航法アプリケーション512は、予想走行時間に基づいてルートを設定する際交通データベース524を利用する。上述のシステムの説明では、例えば、政府管理の交通監視局のような外部情報システム130から提供される交通情報を用いて交通データベース524が形成される。
【0227】
サーバーシステム125は、外部から提供される交通情報だけでなく、幾つかのまたは全ての車両100を、交通情報を収集する調査用車両として利用する。航法アプリケーション512は、調査用車両から交通情報を受信し、収集した交通情報を交通データベース524へフィードバックする。さらに、サーバーシステムは、オプションとして、更新した交通情報を外部情報システムへ送信する。このようにして、車両のナビゲーションシステムは外部情報システム130からの交通情報を利用するだけでなく、それに代わる交通情報の供給源となり得る。
【0228】
データの収集には2つのモードが使用される。第1のモードでは、調査用車両の車載システムが現在の交通状況データを収集する。これら調査用車両は、時々、それらが収集したデータをサーバーシステムへアプロードし、サーバーシステムがアプロードされた情報に基づいてその交通データベースを更新する。第2のモードでは、調査用車両の車載システムが、走行中の道路の等級に基づいて、或いは車両に蓄積され予想速度と走行中の道路区分とを関連づける交通関連データに基づいて、車両の速度が予想よりも著しく遅い場合を検知する。車載システムにより車両速度が予想よりも遅い、即ち、予想される交通状況から見ると何らかの例外的状況の存在することが検知されると、車載システムはその例外的状況をサーバーシステムに報告して、サーバーシステムがその交通データベース524を更新することにより予想されなかった交通状況が反映されるようにする。
【0229】
3.5.1交通情報の収集
交通データ収集の第1のモードにおいて、調査用車両の車載システム105の航法アプリケーション412は、主要道路網のリンク上の車両の走行速度(或いは等価的にリンク上の走行時間)の履歴(状況)を継続的に収集する。車載システムは誘導機能とは無関係に交通状況データを収集する。即ち、交通状況データを収集するためには、車両はナビゲーションシステムによって誘導される必要はない。航法アプリケーションは、リンク速度ログ1920にその日の時間及び各リンク上の走行速度を蓄積する。
【0230】
リンク速度ログ1920を形成するため、車載システムは車載データベース432に蓄積された主要道路網1000上の車両の位置を追跡する。車載システムは、このシステムがそのGPS受信機から受信するGPS推定位置を用いて、車両が主要道路網の道路区分(リンク)を辿っていることを検知する。車載システムは、車両がそのリンクの一方の端部から他方の端部まで走行するに要する時間を記録し、リンク速度ログにそのリンク、その日の時間、そのリンクに沿う走行速度への参照を蓄積する。車両が主要道路網の多数のリンク上を走行するにつれて一連の走行時間が記録されるが、その各々の記録は走行したリンクに関連する。
【0231】
時として、例えば車両が主要道路網から定期的に、例えば毎日離れる場合、車載システムは、リンク速度ログ1920に蓄積してある記録された状況情報を、車載システムがサーバーシステムとのセルラー電話接続によって始動するデータ回線によりサーバーシステムに送信する。車載システムは、情報を送信した後そのリンク速度ログをクリアする。
【0232】
車両の運転者は、車載システムのユーザーインターフェイスを介していずれかのデータ収集モードを作動関係或いは非作動関係にするオプションを有する。サーバーシステムはまた、いずれかのタイプのデータ収集を作動状態(またはリクエスト状態)にすることができる。例えば、サーバーシステムは、より多くのデータが必要であればより多くの車両を利用できるようにし、必要以上のデータを受信中であれば幾つかの車両によるデータの収集を停止させることができる。
【0233】
サーバーシステムにおいて、航法アプリケーション512は多数の調査用車両から記録された速度情報を受信する。航法アプリケーションは、この収集した情報を用いて交通データベース524を更新する。例えば、航法アプリケーションは、特定のリンクにつき報告された速度をその交通データベースに蓄積されたそのリンクの平均速度に取り込む。オプションとして、サーバーシステムは更新した交通情報を外部情報システム130へ提供する。
【0234】
サーバーシステム上において、交通データベース524は、各リンクの(両方向の)平均リンク速度だけでなく、朝及び夕方のラッシュアワー(混雑期間)の開始及び終了時間を含む。これらの各混雑期間について、この交通データベースはその期間の平均速度を含
む。
【0235】
インターバルとして種々の値を使用できる。例えば、同じ5分のインターバルを使用できるし、また夜間は一時間、一般的に混雑する期間は5分の不等インターバルを使用してもよい。
【0236】
オプションとして、サーバーシステムの交通データベース524に蓄積された平均リンク速度は、各車両の車載システムにダウンロードされてそのリンク速度データベース1910に蓄積される。このリンク速度データベースは、例えば、最短予想走行時間に基づいてルートを設定する際、車載システムにより利用される。
【0237】
3.5.2例外的状況の報告
交通データ収集の第2のモードにおいて、車載システムはそのリンク速度データベース1910の情報を利用するが、この情報には主要道路網100の全てのリンクの予想走行速度が含まれる。例えば、朝と夕方の混雑期間によるばらつきを考慮して、各リンクにつき多数の走行時間が蓄積されている。各リンクについて、以下の情報が記録される。
代表的な予想速度;
朝の混雑期間の開始及び終了時間;
朝の混雑期間の予想速度;
夕方の混雑期間の開始及び終了時間;
夕方の混雑期間の間の予想速度。
【0238】
或いは、速度情報を蓄積するために他の種類のインターバルを用いることも可能である。また、車載システムは、リンクの特定の速度情報によらずに、そのリンクの代表的な予想速度をそのリンクの等級に基づいて決定することもできる。例えば、等級4(ハイウエイ)上のリンクは一般的に速度制限(例えば、55MPH)に近いと予想できる。
【0239】
状況データ収集モードにおけるように、調査用車両の車載システムは主要道路網もリンクを走行中GPS推定位置によって車両位置を追跡し、主要道路網の特定リンクを車両が通過するときを検知する。車載システムは、リンクに沿う走行速度が一日のその時間におけるそのリンクの予想速度(例えば、予想速度の75%またはそれより遅い速度)よりも実質的に遅いか或いは速い場合に例外的交通状況が発生したと判断する。
【0240】
例外的交通状況が発生すると、車載システムはサーバーシステムをセルラー電話で呼出すことによりサーバーシステムとの通信セッションを開始する。車載システムは、この例外的状況を符号化し、そのリンクと走行速度を示す短いデータメッセージをサーバーシステムへ送信する。
【0241】
例外的交通状況の報告を行う別の方法として、車両は例外的交通状況メッセージを送信するか否かを確率により選択する。この例では、例外的交通状況に遭遇する全ての車両がサーバーシステムへの送信を行う訳でないため、サーバーシステムにかかる通信負荷が減少する。
【0242】
サーバーシステムは、車載システムから例外的交通状況メッセージを受信する。サーバーシステムは交通データベース524を更新し、このデータベースにより、調査用車両から受信する例外的交通状況メッセージに基づいてルートを設定する。道路網上の調査用車両の「密度」が充分に高い場合、サーバーシステムは通常、多数の調査用車両から例外的交通状況メッセージを受信する。従って、オプションとして、サーバーシステムは、その交通データベースを更新する前に2または3台以上の調査用車両が例外的交通状況を報告する(即ち、例外的交通状況が他の車両により確認される)のを必要条件とすることがで
きる。
【0243】
サーバーシステムは、例外的交通状況が報告されたリンクの予想速度を、それらのリンクについて調査用車両が例外的交通状況を報告しなくなった時からある時間経過した後、リセットする。
【0244】
例外的交通状況データ収集モードの作動には、運転者の介入は必ずしも必要ではない。調査用車両の運転者は、この例外的交通状況の報告モードを作動状態したり非作動状態したりすることができる。また、例外的交通状況に関する情報をサーバーシステムに送る前に運転者がその状況の確認を求められるように車載システムを構成可能である。例えば、車載システムは例外的交通状況メッセージを運転者に表示することが可能であり、また運転者はサーバーシステムへの送信前にそのメッセージの有効性を確認したことを示すボタンを押す必要がある。この確認方式により、交通状況とは無関係の理由、例えば、リンクに沿うガソリンスタンドでの停止のように速度が減少したとき、車両が例外的交通状況の存在を報告するのを防止することができる。
【0245】
このシステムの別のバージョンでは、例外的交通状況はサーバーシステムに直ちに報告されずに、記録される。車載システムはその後、例外的交通状況を記録した交通状況データを、個人情報をアップロードすると同じ態様でサーバーシステムへアップロードする。
【0246】
3.6 サーバーの制御
システムの別のバージョンにおいて、このシステムは、例えば調査用車両からデータを受取る速度を制限するか或いは特定の領域または道路に関連するデータを受信するように、車両データの収集を制御する。データ収集を制御する別の方法として、以下のものがある。
【0247】
第1の選択肢として、調査用車両はサーバーシステムから照会を受けるまで記録した速度データを送信しない。サーバーシステムは、記録した速度データを受信するために車両に対してポーリング(問合せ)を行う。1つのアプローとして、サーバーシステムは車両が通常走行する地理的領域に基づき車両をポーリングする。例えば、サーバーシステムに、ある領域の道路に関する最新データがない場合、その領域を通常走行中の車両をポーリングする。車両をポーリングするために、サーバーシステムはセルラー電話を利用するか或いはその車両の車載システムへ通報する。車載システムは、電話を受けると、記録した速度データをサーバーへ送信する。例えば、電話回線の利用とは別の方法として、商業ラジオ放送の側波帯上の放送チャンネルを利用して多数の車両にメッセージを放送することがある。この方法とは別に、サーバーシステムは、設定ルートを最近提供しそれらのルートの道路区分につき記録された速度データを保持していると予想する車両をポーリングする。
【0248】
別の例として、車載システムが記録した速度データを転送するためにサーバーシステムに電話をかけるが、サーバーシステムはその電話を何時かけるかの指示を以前車載システムに与えている場合がある。例えば、サーバーシステムが設定ルートを車載システムに提供する際、設定ルートと共に、車両が指定の道路区分を通過した後サーバーシステムに電話をかけるように命じる指示を提供する。
【0249】
別の方法として、車載システムがサーバーシステムへ電話をかけるときは必ず、サーバーシステムは、オプションとして、車両の記録した速度データをリクエストする。車両がルート設定サービスを要求する場合、所望の目的地のアップロードと設定ルートのダウンロード開始との間のインターバルの間、或いは車両からサーバーシステムへのデータ伝送に使用されない任意の他のインターバルの間にデータ伝送を行う。
【0250】
別の方法として、サーバーシステムが設定ルートを車載システムに提供する際、設定ルートに、サーバーシステムの持つ最新の予想リンク時間(即ち、リンク時間は最近受信した調査用車両のデータを反映する)が含まれるようにする。この選択肢では、1つの道路区分における例外的交通状況は、サーバーシステムがルート設定時にその例外的交通状況を既に知っている場合はそのサーバーに報告されない。
【0251】
3.7 データの融合
システムの別のバージョンにおいて、サーバーシステムは外部情報サービスから交通関連情報を受信する。例えば、サーバーシステムは、偶発事件の報告(例えば、故障レポート)を受信し、調査用車両からのそれら道路区分に関するデータの受信を待たずに、その報告に基づいて走行速度が遅くなるのを予測する。同様に、サーバーシステムは、イベント(例えば、スポーツ行事)に関する情報を受信し、それに基づいてリンク速度を予測する。サーバーシステムは、最短予想走行時間基準に従って車載システムのための新しいルートを計算する際、これらの予測されたリンク速度と調査用車両により報告されるリンク速度とを組み合わせる。
【0252】
4 車両の更新(図20A−C)
上述したシステムにおいて、車載システム及びサーバーシステムは、一貫した状態に保たれるデータを有する。例えば、車載システムに蓄積される主要道路網は、サーバーシステム上においてそれら道路網の部分集合を含む。データが一貫している場合、車載システムにより確認される目的地の明細はサーバーシステムにとっても有効であろう。
【0253】
全ナビゲーションシステムにより使用される情報は、時々更新される。例えば、地図プロバイダは、道路網を定期的に更新して、前のエラーを補正するか或いは新しい道路の追加のような道路網の変化が反映されるようにする。
【0254】
このシステムの別のバージョンは、車載データベース及びシステムデータベースが一貫した状態に維持されるように、車載システムを更新する1または2以上のアプローチを用いる。これらのデータベースが一貫している場合、車載システムにより確認される目的地の明細は、サーバーシステムがその目的地へのルートを設定しようとするときサーバーシステムによって無効であると判断されない。逆に言えば、これらのデータベースに一貫性があれば、車載システムは、例えば、新しい道路が道路網に追加されたと言う理由で、サーバーシステムが有効であると判断する目的地の明細を除外しないであろう。
【0255】
このシステムはまた、車載システムのデータに加えてソフトウエアを更新する手段を含む。例えば、既存の機能のためのユーザーインターフェイスを、新しいコードをダウンロードすることにより変更できる。また、全く新しい機能をダウンロードすることも可能である。この新しいまたは変更された機能には、オペレータとのインターフェイスに使用する変更したメニューやグラフィック表示を含まれるであろう。
【0256】
新しいソフトウエア及びインターフェイスは、幾つかのよく知られた選択肢のうちの1つを用いて車載システムに一体化される。例えば、新しいソフトウエアモジュールは、車載システムの既存のソフトウエアモジュールからアクセスされる予め定義した入力点を提供できる。新しいソフトウエアモジュールへのインターフェイスを記載したデータは、そのモジュールを実現するコードと共にダウンロードすることができる。ユーザーインターフェイスは、ディスプレイ上でピクセルを操作する低レベルコードを用いることにより実現可能であり、またはマークアップ言語(例えば、HTML)を用いるようなハイレベルの説明を使用できる。
【0257】
ナビゲーションシステムは、車載システムを更新する以下の選択的アプローチのうちの1または2以上のものを使用する。
車載システムのスタティックメモリを物理的に交換する;
例えば、ディーラまたは他のサービスセンターにおいて高速データリンクにより更新を行う;
セルラー電話によるデータリンクを介して更新する。
【0258】
これらの各アプローチを以下の章において説明する。
【0259】
4.1 メモリの物理的交換
図20Aを参照して、第1のアプローチでは、車載システム105の車載コンピュータ210のスタティックメモリ222は取外し可能な装置である。例えば、スタティックメモリ222はとして、磁気ディスクを収容するPCMCIAカードまたはフラッシュメモリシステムがあろう。
【0260】
車載システムの更新には、メモリ222をデータベースの更新済みバージョンを予めロードした別のメモリ222aと交換することが含まれる。これにより、例えば、主要道路網を異なる地理的領域に対応するように更新する必要がある場合、データベース全体の迅速な更新が可能となる。
【0261】
4.2 高速データリンクによる更新
図20Bを参照して、車載システムを更新する第2のアプローチには、高速(例えば、最大1メガビット/秒)のデータ回線を介する車載システムへのデータの転送が含まれる。この車載システムは、車載システム105の車載コンピュータ210に接続されたデータインターフェイス2020を含む。更新データのソースはデータインターフェイスに接続されている。例えば、高速接続手段2010は、FordのSCPまたはSAE J1850プロトコルのような業界標準通信プロトコルを用いて更新された情報をダウンロードするディーラまたはサービスセンターのサービス装置2030に接続可能である。或いは、車両の所有者は、パソコン2031(ラップトップコンピュータのようなもの)を車載システムに接続できる。車載システムの更新情報は、CD−ROMのような記録メディア2040上に或いはインターネットを介して所有者が手に入れるであろう。パソコンと車載システムとの間の接続2011には赤外線リンクのような無線接続を利用できる。
【0262】
図20Cを参照して、車載システムを更新するさらに別の選択的アプローチでは、有線の電話回線を利用する。このアプローチにおいて、車載システムは、中位速度のモデム2050(例えば、毎秒56キロビットのモデム)及び電話コネクタを有する。所有者は、電話コネクタから公衆電話ネットワーク(PSTN)340へ物理的な接続2052を行う。車載システムは、サーバーシステムあるいはデータ更新用の別のサーバーへ電話をかけ、この電話回線を介して中位速度でデータをダウンロードする。
【0263】
4.3 無線リンクによる更新
車載データベースを更新する第3のアプローチでは、車載システムとサーバーシステムとの間のセルラー電話回線のような無線データ回線を利用する。合理的な時間(例えば、一時間以下)で送信可能なデータ量は、かかる回線により達成可能な比較的遅いデータ伝送速度による制約を受ける。一般的に、無線データ回線では、データはデータベースの新しいコピー全体がダウンロードされるのではなくて、少しづつ更新される。
【0264】
サーバーシステムと接続する無線データ回線によるデータベースの更新を開始させるには、幾つかの選択的アプローチのうち1つを利用する。その第1のものは、運転者が車載システムのユーザーインターフェイスを介して更新を明示的にリクエストする。第2のア
プローチは、車載システムが前の更新からの経過時間に基づいて更新をリクエストできる。第3のアプローチでは、車載システムがサーバーシステムとの通信セッションを開始した後、設定ルートをダウンロードする前に、またはその後で、データベース編集分をダウンロードすることができる。第4のアプローチとして、サーバーシステムは各車両に電話をかけて各車両に編集した更新情報を順番に「押し込む」。
【0265】
車載データとサーバーシステムのデータとの間の一貫性を維持するために、データベースのデータはあるバージョン数のものである。サーバーシステムがそのデータを更新するたびに、バージョン数を更新する。車両がルートをリクエストすると、車両はまたそのルートの目的地の明細を確認するために使用されたデータのバージョン数情報を与える。サーバーシステムは、受信したバージョン数情報を用いて電話をかけてきた車両へいずれの更新情報が依然としてダウンロードされてないかをチェックする。
【0266】
サーバーは、1つのセッションで全ての更新情報を必ずしもダウンロードする必要はない。その代わり、更新情報を少しずつ送信する。この少しずつ送信するアプローチでは、最も関連ある更新情報を最初に送信する。例えば、サーバーシステムは、別の都市の更新情報をダウンロードする前に、車両が通常走行する都市の主要道路網を更新する。
【0267】
車載システムのデータベースが旧ければ、車載システムがサーバーシステムへ送信する確認済みの目的地明細情報は道路網が変化しているため無効であろう。例えば、道路名が変更されている場合がある。従って、サーバーシステムが車載システムから受信する目的地の明細情報が有効でない場合、サーバーシステムは車載システムに通報し、車載システムが運転者に通報する。その後、運転者は別の住所を指定するか、或いはサーバーシステムから車両へ更新された情報がダウンロードされるのを待つことができる。
【0268】
5 付加的サービス
車両情報システムの別のバージョンは、ナビゲーションサービスを提供するだけでなく、路傍における支援、遠隔操作による車両の制御、交通情報及び通信関連サービスのような付加的なサービスを提供する。
【0269】
5.1 緊急時及び路傍における支援サービス
緊急時及び路傍における支援サービスは、車両の運転者へ支援施設に接触して車両位置を知らせるための方法を提供する。図21Aを参照して、運転者が開始する対話動作では、運転者が車載システムのユーザーインターフェイス上で緊急時及び路傍における支援サービスのオプションを選択する。車両が、サーバーシステムか、またはかかるリクエストを取扱うために車載システムが電話をかけるよう構成された別のサーバーへ、セルラー電話回線で電話をかける。電話がつながると、車載システムは通話先のサーバーへのデータ接続をする。車載システムはサーバーへ車両のIDを送信する。サーバーはこのIDを用いて車両の製造者、モデル及び色のような情報にアクセスするが、これは派遣されるサービス車両が運転者の車両を発見する際役に立つであろう。車載システムはまた、その推定位置または生のGPSデータと、そのGPS測定値に基づく最も最近の走行方向とを送信する。サーバーシステムは、GPS補正データを車両の推定位置または生のGPSデータへ適用して、補正された推定位置を計算する。車載システムがサーバーへのデータ伝送を完了すると、運転者は車両の電話のハンドセットを用いてサーバーの所の電話オペレータ2010と通話することができる。これにより、運転者は支援を行う車両を急派するにあたり役に立つ詳細な情報を提供することができる。
【0270】
運転者からの支援を求めるリクエストとは別に、車載システムは、エアバッグシステムの作動或いは緊急事態を示す何か他の信号により支援を求めるリクエストが自動的に発信されるモードを含む。このモードは、例えば、車両が衝突事故に巻き込まれて運転者が支
援を求める電話をかけられないか或いはかけることを思い付かない場合に利用されるであろう。
【0271】
5.2 車両の遠隔制御
さらに別のサービスとして、車両の遠隔制御がある。車載システムは、ドアロックサブシステムのような車両のサブシステム或いは車両制御サブシステムに結合されている。この結合により、Ford社により製造される車両にあるSCP(全社標準プロトコル)のような現在多くの車両に使用されている標準車両データ通信インフラストラクチュアを利用できる。
【0272】
5.2.1ドアのロック解除
図21Bを参照して、遠隔操作によるドアロックの解除は遠隔操作による車両制御サービスの一例である。運転者がキーを車両内に残して自動車をロックしてしまった場合、例えば、サーバーシステムへのアクセスできる電話オペレータへ電話をかけることによってサーバーシステムに接触する。電話オペレータによる適当な認証完了後、電話オペレータはサーバーシステムにより実行される遠隔ドアロック解除手順を始動させる。
【0273】
運転者が車両を離れているとき、車両のセルラー電話の受信機は、バッテリーの消耗を減少するために通常「オン」の状態になっていない。従って、サーバーシステムはドアのロックを解除するために車載システムに電話をかけることができないのが普通である。
【0274】
明確なスケジュールに従って、車載システムは、セルラー電話受信機の電源を繰返し投入することにより、その時点で電話がかかってきていないか否かをチェックする。例えば、車載システムは、15分ごとにこのサイクルを繰返す。車載システムが電話がかかってきていないことを検知すると、次の予定チェック時間まで電話受信機の電源を「オフ」にする。
【0275】
車両のスケジュールはサーバーシステムに蓄積されており、車載システムとサーバーシステムは、例えばGPS信号に基づく共通の時間ベースを共有する。サーバーシステムは、ロックされた車両の次の予定チェック時間まで待ってセルラー電話をかけることにより、車載システムとのデータ伝送チャンネルを開始させる。データ回線がつながると、サーバーシステムは車載システムにドアのロックを解除する命令を送信する。
【0276】
車両の運転者が電話オペレータへドアロック解除サービスをリクエストすると、電話オペレータは車両の運転者にドアのロックが解除される時間を通報するが、これは車両のチェック時間のスケジュールが電話オペレータに分かっているからである。
【0277】
5.2.2車両の不動化
車両の不動化サービスには、ドアロック解除サービスと同様な方式を用いる。車両の運転者は、集中サーバーの電話オペレータに電話して、車両が盗難にあったことを通報する。サーバーシステムは、車両の電話受信機の電源が投入状態にあれば直ちに車載システムに電話をかけるか或いは上述したドアロック解除機能に使用される予定電源投入モードを利用する。
【0278】
いずれの場合でも、車載システムとサーバーシステムとが通信を行うと、車載システムが車両位置をサーバーシステムに送信し、サーバーシステムが車載システムに車両を非作動状態にする命令を送信する。その後、車載システムは車両のシステムにこの車両を非作動命令を送る。
【0279】
5.3 交通情報
交通情報サービスでは、指定された少数の選択的「トリップ」に関連する交通状況のレポートを運転者に提供する。例えば、運転者には自宅から仕事場へ行くのに3つの選択的なルートとしての選択肢がある。運転者は、そのトリップを開始しようとするとき、車載システムと対話して、それらのトリップに関する交通情報をリクエストする。車載システムはサーバーシステムに接触し、サーバーシステムは各トリップについて現在の交通状況に関する情報を運転者へ提供する。
【0280】
運転者がトリップを指定する1つの方法として、1組のトリップ区分を示す車載の表を利用する。これらの区分は通常、道路網の多くの道路区分を含む。例えば、2つの交差するハイウエイ間の主要なハイウエイの一部がトリップ区分であろう。運転者は、トリップ区分の部分集合を選択することにより個人的なトリップを計画する。運転者の個人的トリップに関する交通状況をチェックするために車載システムがサーバーシステムに接触する場合、車載システムは運転者の選択されたトリップ区分をサーバーシステムへ転送する。
【0281】
サーバーシステムは、道路網の道路区分上の現在のリンク速度を含むその交通データベースから、運転者のトリップに関連する現在の交通状況を知ろうとする。交通状況の表示には種々の選択肢が考えられる。このシステムのこのバージョンでは、交通状況は、「普通」、「混雑」、「極端に混雑」の少数のカテゴリーに分類され、各カテゴリーが異なるアイコンにより運転者にグラフィック表示される。
【0282】
システムの別のバージョンでは、ユーザーが前に指定したトリップのうちの1つに例外的交通状況が存在する場合、サーバーシステムは積極的にユーザーに接触する。例えば、サーバーシステムは、車載システムに電話することによりその情報を送信するか、または呼出しメッセージを送信するか、または電子メールを送るか、もしくはユーザーに電話することにより、例外的状況を通報する。
【0283】
別の例では、ユーザーは幾つかの選択肢となるトリップを指定する。サーバーシステムによりユーザーが指定したトリップのうちの1つに例外的交通状況が存在するのが検知されると、サーバーシステムは選択肢であるトリップに関連する交通情報を積極的にダウンロードする。このようにすると、ユーザーは車載システムがサーバーシステムに電話するのを待たずに、ルートを再設定できる。
【0284】
6 拡張可能なサーバーアーキテクチュア(図22)
図22を参照して、別の例のサーバーシステム125aは、上述のサーバーシステム125の機能と共に車両に他のサービスを提供するための拡張可能なアーキテクチュアを提供する。サーバーシステム125aは、LAN2205を介して結合される多数のサーバーコンピュータを有する。別の例として、これらのサーバーコンピュータの機能は、少数のコンピュータ上で、或いはこれら全ての機能を実行する単一のコンピュータ上で実現可能である。
【0285】
サーバーシステム125aは、電話インターフェイス320に結合されたゲートウエイシステム2210を含む。ゲートウエイシステム2210は、車両100とサーバーシステム125aのサーバーコンピュータとの間の通信ゲートウエイを提供するために使用され、車載システムから受信した情報が適当なサーバーコンピュータに送られるようにメッセージルーチング機能を実現する。ゲートウエイシステム2210は、サーバーシステムと車両との間を行き交うデータの内容を解釈する必要は必ずしもない。
【0286】
サーバーコンピュータは、上述の航法アプリケーションを実行するナビゲーションシステム2250を含む。車載システムがサーバーシステム125aと通信セッションを開始することによりルート設定サービスをリクエストすると、ゲートウエイシステム2210
は通信セッションにおいて車載システムにより提供される情報を用いてこのセッションをナビゲーションシステム2250に接続すべきか否かを判断する。例えば、車載システムはデータの流れの最初の部分においてナビゲーションサービスを指定する。或いは、サーバーシステム125aにより実現される種々のサービスは電話インターフェイス320に割当てられたそれぞれ異なる電話番号を有し、ゲートウエイシステム2210が車載システムがダイヤルする電話番号に基づいて適当なサーバーコンピュータへの接続を行う。
【0287】
ナビゲーションシステム2250は、図5に示すようにサーバーシステム125の機能を実現する。即ち、GPS受信機325へのインターフェイスを有し、サーバー地図データベース520、イエローページデータベース522及び交通データベース524を含んでいる。ナビゲーションシステム2250は、地図プロバイダ2252及び交通情報システム2254に結合されている。
【0288】
サーバーシステム125aにより提供される別のサービスは、通信システム2260により実現される。この通信システム2260は、電子メールシステム2262及び呼出しシステム2264を含む外部の通信システムに結合されている。これら外部の通信システムは、特定の車両に向けられたメッセージを通信システム2260へ送信する。通信システム2260は、ゲートウエイシステム2210へ特定の車両とのデータ通信チャンネルを開始するよう要求するリクエストを発信し、データと命令を車載システムに送信する。
【0289】
車両の車載システムは、サーバーシステムにより提供されるサービスに対応するソフトウエアモジュールを有する。例えば、通信システム2260から車載システムへ送られる通信情報は、受信するデータ及び命令を解釈する通信モジュールが受信される。例えば、メッセージ通信モジュールは、車載システムのディスプレイ上に呼出しメッセージまたは電子メールメッセージを表示するか、或いはそれらを合成音声メッセージとして提供する。
【0290】
ニュースシステム2270は、特定の車両の運転者にとって興味あるニュースに対応するデータを車両に送信するサービスを提供する。ニュースは外部のニュースサービス2272により提供される。
【0291】
サーバーシステム125aはまた、LAN2205とインターネットに結合された遠隔構成システム2230を有する。ナビゲーションシステムのユーザーは、この遠隔構成システムを用いることにより、サーバーシステムに蓄積されたユーザーの個人情報2232のうち彼等のレコードを変更することができる。ユーザーの個人情報は、そのユーザーの車両の車載システムへサーバーシステムからダウンロードするか、或いはサーバーシステム上に蓄積することができる。ユーザーの個人情報に含まれる情報に、車載システムに対して目的地を指定する際ユーザーが選択する蓄積された目的地を含む種々の情報を含めることができる。例えば、ユーザーはインターネットを介してしばしば訪れる目的地のリストを指定した後、車両内で車載システムによりそのリストを表示して選択を行うことにより、特定の目的地を選択することができる。
【0292】
ユーザーの個人情報の別の側面には、交通情報サービスに関連するものがある。ユーザーは、車載インターフェイスにより一組のトリップを決定する必要はなく、グラフィック形式の地図によるインターフェイスを用いてトリップを選択すればよい。例えば、ハイウエイシステムまたは主要道路網の全体地図を表示させる。ユーザーは連続するトリップ区分をいくつか選択することによりグラフ上でいくつかの経路を選択する。これらのトリップは、ユーザーの車両へダウンロードするかサーバーシステムに蓄積すればよい。サーバーシステムに蓄積された場合、ユーザーが車両内で交通情報をリクエストすると、車載システムは必ずしも運転者のトリップ明細を伝送せずに、運転者の名前を指定し、サーバー
システムが運転者が蓄積したトリップを探索する。
【0293】
ユーザーの個人情報に、ユーザーが使いたくない特定の道路のような好みを入れるようにしてもよい。ユーザーの個人情報には、ユーザーが使いたくない道路を使った場合節約できる時間を含めることもできる。
【0294】
ユーザーはまた、ルート設定リクエストを入力するために遠隔構成システム2230を利用する。例えば、ユーザーは遠隔構成システムに目的地の明細を送り、サーバーシステムがユーザーが車両に乗り込む前に目的地までの設定ルートをダウンロードする。ユーザーは、インターネット、サーバーにある自動音声認識装置と対話する音声電話回線を含む種々のメディアを介して、この遠隔構成システムにアクセスできる。ユーザーは、目的地を指定するだけでなく、目的地に特定の時間に到着するためトリップを開始する必要のある時間を教えてくれるようなリクエストを行うこともできる。この出発時間の教示は、電話、呼出しサービス或いは種々の他の通報方式により可能である。
【0295】
サーバーシステム125aへの新しいサービスの追加は、サーバーコンピュータを追加し、そのサービスのための通信が新しいサーバーコンピュータに差し向けられるようにゲートウエイシステム2210を更新し、各車載システムに対応のソフトウエアモジュールを追加して車載システムを更新することにより行う。車載システムは、上述したように(章4を参照)、セルラー電話回線或いは物理的な接続により更新される。
【0296】
このシステムの別のバージョンには、上述した全ての特徴を必ずしも具備しないものもある。例えば、交通情報システムは、運転者が指定したトリップを含むようにしてもよい。車載システムは、それらトリップのための交通情報を得るためにサーバーシステムに接触する。車載システムは、GPS受信機または地図データベース、或いはこれらの特徴部分だけをサポートする他の装置を必要としない。
【0297】
別の例では、車載システムは必ずしも自律的なルート再設定をサポートしない。車載システムは、車両がルートから外れたと判断した場合、サーバーに接触してルートを再設定するか、或いは再設定に用いる地図を提供することができる。
【0298】
このシステムの別のバージョンは回り道を行う能力を提供する。詳説すると、運転者は設定ルートから除外すべき道路区分を指定し、車載システムはその主要道路データベースを用いてその道路区分を迂回する回り道を設定する。
【0299】
システムの別のバージョンにおいて、サーバーシステムは幾つかのルート、例えば最短時間、最短距離などの異なる基準で選んだルートを設定し、ダウンロードする。車載システムは、選択肢の属性(例えば、時間、距離)を表示し、運転者がその1つを選択する。サーバーが全てのルートをまだダウンロードしていなければ、選択したルートを引き続きダウンロードする。
【0300】
システムの別の例では、サーバーシステムはそのルートと共に別のデータをダウンロードする。例えば、交通情報をダウンロードして運転者に表示する。また、ルートに沿うレストランに関する広告情報をダウンロードして運転者に表示し、車両がそのルートに沿って進行する。
【0301】
別の例として、例えば、運転者が指定した一組のトリップに従って車両に交通情報をダウンロードする。交通情報は道路網の地図と共に表示する。交通情報は、テキストによる解説、アイコン及び色を含む種々の形式の1つを用いて表示する。
【0302】
別の例では、サーバーシステムは車載システムにスポット地図をダウンロードしない。車載システムは、出発点からの方向転換の指示を与える。例えば、第1の指示は、道路Xの方向を示す矢印を含む「道路Xへ進む」であろう。
【0303】
別の例では、車載システムは、自律的ルート再設定のための主要道路網を有するが、道路の住所を確認するための住所範囲データは含まない。その代わり、車載システムは、サーバーシステムを利用して運転者が指定する番地を確認する。このようにして、車載システムは住所を部分的に確認し、サーバーシステムを利用してこの確認作業を完了する。
【0304】
同一のサーバーシステムは、上述した種々の選択的能力のような種々の能力を有する車載システムを同時にサポートできる。
【0305】
別のバージョンは、運転者が一連の目的地を指定するのを可能にする。例えば、第1の目的地はガソリンスタンド、第2の目的地は運転者の仕事場である場合がある。一連の目的地の全て、車載システムがサーバーシステムに接触する前に確認する。サーバーシステムは、出発位置から第1の目的地までのルートを設定した後、第1の目的地から次の目的地までのルートを設定する。サーバーシステムは、設定したルート全体を車載システムにダウンロードする。
【0306】
以上の説明は例示を目的とし、頭書の特許請求の範囲により決定される本発明の技術的範囲を限定するものではないことを理解されたい。他の実施例もその特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0307】
【図1】車両ナビゲーションシステムのブロック図。
【図2】該システムの車載装置のブロック図。
【図2A】一体型入出力装置を示す図。
【図2B】一体型入出力装置を示す図。
【図2C】一体型入出力装置を示す図。
【図3】サーバーシステムの構成要素を示すブロック図。
【図4A】車載システムのソフトウエアアーキテクチュアを示す図。
【図4B】車載システムのソフトウエアアーキテクチュアを示す図。
【図5】サーバーシステムのソフトウエアアーキテクチュアを示す図。
【図6】例示的領域の道路網を示す概略的な地図。
【図7】例示的領域の道路網を示すグラフ。
【図8】サーバーシステムから車両へダウンロードされる設定ルートの一例を示す図。
【図9】サーバーシステムから車両へダウンロードされるスポット地図の一例を示す図。
【図10】車両に予めロードされる主要道路地図。
【図11】車載データベースのデータ構造を示す図。
【図12】車載データベースのテキスト表の構造を示す図。
【図13A】主要道路網の代表的なリンクを示す図。
【図13B】主要道路網を符号化する車載データベースのデータ構造を示す図。
【図14】興味ある地点の情報を符号化する車載データベースの要素を示す図。
【図15A】車載システムのルート設定手順の擬似コードリスト。
【図15B】サーバーのルート設定手順の擬似コードリスト。
【図16】出発時運転操作手順の擬似コードリスト。
【図17】ルートを辿る手順の擬似コードリスト。
【図18】ルート再設定手順の擬似コードリスト。
【図19】拡張可能なサーバーアーキテクチュアを示す図。
【図20A】車載システムの更新方法を示す図。
【図20B】車載システムの更新方法を示す図。
【図20C】車載システムの更新方法を示す図。
【図21A】サーバーシステムにより提供される付加的情報サービスを示す図。
【図21B】サーバーシステムにより提供される付加的情報サービスを示す図。
【図22】拡張可能なサーバーシステムのブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通情報を収集する方法であって、
車両が道路網の複数の区分の各々を通過したことを検知して車両位置を追跡し、
検知した各区分について、各区分上の車両速度に関連するデータを含む交通関連データを記録し、
記録したデータをサーバーへ送信するステップを含む方法。
【請求項2】
交通関連データの記録を可能にするためサーバーから命令を受信するステップをさらに含む請求項1の方法。
【請求項3】
記録したデータをサーバーへ送信するリクエストを受信するステップをさらに含む請求項1の方法。
【請求項4】
交通情報を収集する方法であって、
車両が道路網の複数の区分の各々を通過したことを検知して車両位置を追跡し、
検知した各区分について、各区分上の車両速度をその区分につき蓄積した速度と比較し、
車両速度が蓄積速度と異なっている場合その区分を識別する交通情報をサーバーへ送信するステップよりなる交通情報収集方法。
【請求項5】
交通情報を収集する方法であって、
複数の車両から交通関連データを受信し、
道路網の複数の道路区分に関連する速度情報を更新することにより受信した交通関連データを用いて交通データベースを更新し、
道路区分に関連する速度情報を用いて道路網を介する出発位置から目的地までのルートを設定するステップよりなる交通情報収集方法。
【請求項6】
調査用車両の利用可能な集合のうちの部分集合を交通関連データを提供できるようにするステップをさらに含む請求項5の方法。
【請求項7】
交通データベースのうちの更新対象部分を決定するステップをさらに含み、調査用車両の部分集合を交通関連データを提供できるようにするステップは調査用車両を交通データベースの更新対象部分につき情報を提供できるようにするステップを含む請求項6の方法。
【請求項8】
データベースの更新対象とされる部分は地理的領域に対応し、調査用車両を交通関連データを提供できるようにするステップは調査用車両がその地理的領域内にある可能性に従って実行されることを含む請求項7の方法。
【請求項9】
交通関連情報をユーザーに提供する方法であって、
道路網の1または2以上の道路区分よりなる経路の明細をユーザーから受取り、
道路網の道路区分に関連する交通データを受取り、
受取った交通データにより指定経路に例外的交通状況が存在すること分かるとユーザーにその交通状況を通報するステップよりなる方法。
【請求項10】
経路の明細を受取るステップは車載システムが経路の明細を受取るステップを含み、該方法はさらに車載システムからサーバーシステムへその明細を送信するステップよりなる請求項9の方法。
【請求項11】
経路の明細を受取るステップは通信ネットワークを介して明細を受取るステップを含む請求項9の方法。
【請求項12】
交通データを受信するステップは複数の調査用車両から交通データを受信するステップを含む請求項9の方法。
【請求項13】
ユーザーに通報するステップは例外的交通状況を回避する指定経路とは別の経路を提示することを含む請求項9の方法。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−191975(P2010−191975A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71421(P2010−71421)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【分割の表示】特願2000−509994(P2000−509994)の分割
【原出願日】平成10年8月19日(1998.8.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(595065334)シーメンス ヴィディーオー オートモーティヴ コーポレイション (55)
【氏名又は名称原語表記】Siemens VDO Automotive Corporation
【住所又は居所原語表記】2400 Executive Hills Boulevard, Auburn Hills, Michigan 48326−2980,USA
【Fターム(参考)】