説明

車両用の電源装置

【課題】回路構成を極めて簡単にしながら、熱暴走を確実に防止する。
【解決手段】車両用の電源装置は、複数の電池1と温度検出回路2と異常温度上昇阻止回路3を備える。温度検出回路2は、複数の温度センサー4の電気抵抗の変化を電圧変換回路5で検出して、電圧変換回路5の出力電圧をA/Dコンバータ6でデジタル信号に変換し、温度信号として制御回路7に入力する。異常温度上昇阻止回路3は、温度検出回路3の電圧変換回路5から出力される出力電圧を基準電圧21と比較して、電池1が設定温度に上昇すると異常温度信号を出力するコンパレータ8と、このコンパレータ8に接続されて、コンパレータ8の異常温度信号を検出して電池1の電流を遮断する強制電流遮断回路10とを備える。電源装置は、制御回路7と異常温度上昇阻止回路3が電池1の温度を監視して、電池1の電流を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッドカーや電気自動車等の車両を走行させるモーターを駆動する走行用バッテリを備える車両用又は負荷を駆動する電気機器の電源装置に関し、とくに、電池の電池温度を検出する温度検出回路を備える電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を駆動するモーターに電力を供給する走行用バッテリは、二次電池である多数の素電池を直列に接続して出力電圧を高くしている。自動車を走行させるために、モーターが大きな出力を必要とするからである。この電源装置は、自動車をモーターで急加速して大電流で放電させるとき、あるいは長い坂道を回生制動しながら走行して素電池が大電流で満充電近くまで充電されるときに、あるいは外気温度が異常に高くなって、環境温度が高くなるとき等に、素電池の温度が高くなる。
【0003】
さらに、車両用の電源装置は、出力電圧を例えば200〜400Vと高くするために、100個以上と極めて多数の素電池を直列に接続している。多数の素電池を直列に接続して充放電させると、全ての素電池に同じ電流が流れる。しかしながら、全ての素電池が均一に劣化するわけではない。いずれか特定の素電池のみが劣化することがある。製造工程におけるバラツキ、使用される温度等の外的環境の相違等で、各々の素電池は全く同じようには劣化しない。いずれかの素電池が劣化して、実質的に満充電できる容量が小さくなると、他の素電池と同じように充放電されても、過充電あるいは過放電された状態となって、電池温度が高くなり、さらに劣化が進行する。
【0004】
走行用バッテリの素電池には、例えば、ニッケル水素電池が使用されるが、いずれの二次電池も、温度が高くなると電気特性が低下し、さらに温度が高くなると熱暴走して急激に劣化する。この弊害を防止するために、車両用の電源装置は、各々の素電池の温度を検出している。いずれかの素電池の温度が、例えば80℃よりも高くなると、熱暴走を起こすと判定して、走行用バッテリの出力側に接続しているコンタクターをオフに切り換えて電流を遮断して、温度上昇による弊害を防止している。
【0005】
このことを実現するために、従来の電源装置は、各々の素電池の表面に、温度センサーであるPTCを接触するように固定している(特許文献1参照)。各々の素電池に固定している多数のPTCは互いに直列に接続されて、温度検出回路の入力側に接続される。PTCは、設定温度よりも高温になると電気抵抗が急激に大きくなる。このため、温度検出回路は、多数のPTCを直列に接続している直列回路のトータルの電気抵抗を検出して、いずれかの素電池の温度がPTCの設定温度よりも高くなったことを検出できる。素電池の温度が設定温度よりも高くなると、PTCの直列回路の電気抵抗が大きくなるからである。
【特許文献1】特開平10−270094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしなから、多数のPTCを直列に接続して、その電気抵抗を検出する温度検出回路は、素電池の温度を正確に検出できない。それは、全てのPTCの温度特性を均一に揃えることが難しいからである。たとえば、電気抵抗が急激に増加する設定温度の誤差が10%であるPTCを多数使用して、各々の素電池の温度を検出する回路は、全ての素電池の温度が、正確に設定温度を越えたことを検出できない。さらに、多数のPTCを直列に接続して、そのトータルの電気抵抗を検出する温度検出回路は、直列に接続するPTCの個数が増加するほど、正確に素電池の温度を検出するのが難しくなる。それは、いずれかのPTCの電気抵抗が増加しても、電気抵抗が増加する割合が少なくなるからである。
【0007】
本出願人は、このような従来の欠点を解決することを目的に、図1に示す回路構成の電源装置を開発した(特願2004−77318)。この電源装置は、負荷を駆動する電池91と、この電池91の温度を検出する温度検出回路92とを備える。電池91は、互いに直列又は並列に接続している複数の素電池93を備えている。温度検出回路92は、素電池93に熱結合するように配設されて、電池温度が高くなると電気抵抗が減少する複数の温度センサー94と、各々の温度センサー94に一端を接続して他端を電源99に接続して、温度センサー94の電気抵抗で接続点96の電圧を変化させる直列抵抗95と、各々の温度センサー94の接続点96に接続している第1ダイオード98とを備えている。第1ダイオード98は、接続点96に向かって通電する方向に接続している。この電源装置は、いずれかの電池温度が設定温度よりも高くなると、この電池に熱結合している温度センサー94の電気抵抗が低くなって接続点96の電圧が降下する。このため、接続点96の電圧が設定値よりも低くなると、電池が熱暴走するとして電流を遮断する。
【0008】
この図の電源装置は、電池の温度を高い精度で検出して電池の熱暴走を防止できる。また、温度センサーの個数が増加しても、各々の電池の温度を検出する精度を低下させることなく正確に検出できる。しかしながら、この電源装置は、電池の熱暴走を防止するために、専用の回路を必要とする。このため、熱暴走を阻止するための回路のコストが高くなる欠点がある。
【0009】
本発明は、さらにこの欠点を解決することを目的に開発されたもので、本発明の大切な目的は、電池の熱暴走を阻止するための回路構成を極めて簡単にしながら、熱暴走を確実に防止できる車両用の電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の車両用の電源装置は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
車両用の電源装置は、モーター19を駆動する複数の電池1と、電池1の温度を検出する温度検出回路2と、電池1の異常温度上昇を阻止する異常温度上昇阻止回路3を備える。温度検出回路2は、電池1に熱結合するように配設されて、電池温度で電気抵抗を変化させる複数の温度センサー4と、各々の温度センサー4の電気抵抗の変化を電圧変化に変換する電圧変換回路5と、電圧変換回路5の出力電圧をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ6と、このA/Dコンバータ6から出力される温度信号が入力される制御回路7とを備える。異常温度上昇阻止回路3は、温度検出回路3の電圧変換回路5から出力される出力電圧を基準電圧21と比較して、電池1が設定温度に上昇すると異常温度信号を出力するコンパレータ8と、このコンパレータ8に接続されて、コンパレータ8の異常温度信号を検出して電池1の電流を遮断する強制電流遮断回路10とを備える。電源装置は、制御回路7と異常温度上昇阻止回路3が電池1の温度を監視して、電池1の電流を遮断する。
【0011】
本発明の車両用の電源装置は、通常の状態では、温度検出回路2の制御回路7が、A/Dコンバータ6を介して電圧変換回路5から出力されるデジタル信号で以って電池温度を検出し、制御回路7が正常でないときは、電池温度が設定温度よりも高くなると、異常温度上昇阻止回路3のコンパレータ8が異常温度信号を出力することができる。
【0012】
本発明の車両用の電源装置は、異常温度信号が出力されると強制電流遮断回路10が電池1の電流を遮断することができる。
【0013】
本発明の車両用の電源装置は、異常温度上昇阻止回路3が、電池1の異常温度を検出するコンパレータ8と、温度センサー回路15の短絡を検出して、温度センサー回路15が短絡すると短絡信号を出力する短絡コンパレータ9を備えることができる。コンパレータ8と短絡コンパレータ9は、強制電流遮断回路10に接続される。強制電流遮断回路10は、コンパレータ8から異常温度信号が入力され、かつ短絡コンパレータ9から短絡信号が入力されない状態では電池1の電流を遮断し、短絡コンパレータ9から強制電流遮断回路10に短絡信号が出力されると、電池1の電流を遮断しないようにする。
【0014】
コンパレータ8は、電池1が設定温度以上になると”High”の異常温度信号を出力し、短絡コンパレータ9は温度センサー回路15が短絡すると”Low”の短絡信号を出力するコンパレータとすることができる。コンパレータ8と短絡コンパレータ9の出力はAND回路23を介して強制電流遮断回路10に入力され、AND回路23が強制電流遮断回路10に”High”を出力する状態で、電池1の電流を遮断する。
【0015】
温度センサー4は、電池温度が高くなると電気抵抗が小さくなる温度素子とすることができる。
【0016】
電圧変換回路5は、温度センサー4と直列に接続された直列抵抗12と、この直列抵抗12と温度センサー4との直列回路に電圧を供給する電源13とで構成することができる。
【0017】
さらに、本発明の車両用の電源装置は、温度検出回路2を複数個備えて、各温度検出回路2に1対となるコンパレータ8及び短絡コンパレータ9を備えることができる。この電源装置は、短絡コンパレータ9から短絡信号が判定されていない1ないし複数の温度検出回路2のコンパレータ8の判定のうち、少なくとも1回路が設定以上に達した場合に電池の電流を遮断することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車両用の電源装置は、電池の熱暴走を阻止するための回路構成を極めて簡単にしながら、熱暴走を確実に防止できる特長がある。それは、本発明の電源装置が、電池の温度を検出する温度検出回路と、電池の熱暴走を阻止する異常温度上昇阻止回路とを備えており、温度検出回路が、電池に配設された複数の温度センサーの電気抵抗の変化を電圧変換回路で電圧変化に変換して温度信号として入力される制御回路を備えると共に、異常温度上昇阻止回路が、温度検出回路の電圧変換回路から出力される出力電圧をコンパレータで基準電圧と比較して、電池が設定温度に上昇するとコンパレータの異常温度信号を検出して電池の電流を遮断する強制電流遮断回路を備えており、制御回路と異常温度上昇阻止回路が電池の温度を監視して、電池の電流を遮断するからである。この構造の電源装置は、異常温度上昇阻止回路が、温度検出回路に既存の温度センサーを利用して、電池の異常温度を検出して電池の電流を遮断するので、電池の熱暴走を検出するための専用の温度検出回路を必要とせず、簡単な回路構成としながら、温度検出回路の制御回路と異常温度上昇阻止回路の両方で電池温度を監視して電池の熱暴走を確実に防止できる。
【0019】
さらに、本発明の請求項4の車両用の電源装置は、異常温度上昇阻止回路が、電池の異常温度を検出するコンパレータと、温度センサー回路の短絡を検出する短絡コンパレータとを備えており、温度センサー回路の短絡を検出して、温度センサー回路が短絡するときには、電池の電流を遮断しないように制御するので、温度検出回路が故障したときに電池の電流を遮断するのを確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための電源装置を例示するものであって、本発明は電源装置を以下のものに特定しない。
【0021】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0022】
図2に示す電源装置は、ハイブリッドカーに搭載されて、自動車を駆動するモーターに電力を供給する。ただし、本発明の電源装置は、電気自動車や電動フォークリフト、あるいは室内を走行して荷物を搬送する車両等の電源に使用される。図の電源装置は、車両を走行させるモーター19を駆動する走行用の電池体11と、この走行用の電池体11の温度を検出する温度検出回路2と、電池体11の熱暴走を阻止する異常温度上昇阻止回路3を備える。
【0023】
電池体11は、互いに直列又は並列に接続している複数の電池1を備えている。電池1は、素電池であってもいいし、複数の素電池を直列または並列に接続した電池モジュールであってもいい。
【0024】
温度検出回路2は、電池1に熱結合するように配設されて、電池温度で電気抵抗を変化させる複数の温度センサー4と、各々の温度センサー4の電気抵抗の変化を電圧変化に変換する電圧変換回路5と、電圧変換回路5の出力電圧をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ6と、このA/Dコンバータ6から出力される温度信号で電池1の充放電をコントロールする制御回路7とを備えている。
【0025】
温度センサー4は、各々の電池1に熱結合するように配設される。温度センサー4は、全ての電池1の表面に、あるいは複数の電池1のいずれかに直接に接触して、あるいは熱伝導の優れた接着材、たとえばシリコン系の接着材等を介して熱結合するように配設される。たとえば、温度センサー4は、電池1の表面に接着して固定され、あるいは熱収縮チューブと電池1との間に配設されて、熱収縮チューブで電池1の表面に固定される。温度センサー4は、理想的には、ひとつの温度センサー4でひとつの電池1の温度を検出するように、全ての電池1に温度センサー4を熱結合して配設する。ただ、全ての電池の表面に温度センサーを配設することなく、温度センサーを電池の間に配設して、ひとつの温度センサーでふたつの電池の温度を検出することができる。また、熱伝導プレートを介して複数の電池にひとつの温度センサーを熱結合するように連結して、ひとつの温度センサーで複数の電池の温度を検出することもできる。
【0026】
温度センサー4は、熱結合している電池1の温度が高くなると電気抵抗が減少するサーミスタ等の素子である。サーミスタは、素子のばらつきが極めて少なくなるように製造が可能である。このため、温度センサー4をサーミスタとする電源装置は、電池1の温度を極めて高い精度で正確に検出できる。温度センサー4は、温度が高くなると電気抵抗が減少する素子であって、サーミスタ以外の素子も使用できる。
【0027】
電圧変換回路5は、温度センサー4と直列に接続された直列抵抗12と、この直列抵抗12と温度センサー4との直列回路に電圧を供給する電源13とで構成される。各直列抵抗12は、一端を温度センサー4に、他端を電源13に接続している。直列抵抗12と温度センサー4は直列に接続されているので、電池温度が高くなって温度センサー4の電気抵抗が減少すると、接続点14の電圧は低下する。たとえば、電源電圧を5Vとし、電池温度が低い状態における温度センサー4の電気抵抗と直列抵抗12の電気抵抗が等しいとき、接続点14の電圧は2.5Vとなる。電池温度が高くなって、温度センサー4の電気抵抗が小さくなると、接続点14の電圧は低下する。したがって、接続点14の電圧を検出して、温度センサー4の電気抵抗、すなわち、電池温度を検出できる。
【0028】
図の温度検出回路2は、各々の温度センサー4の出力信号を時分割に切り換えてデジタル信号に変換するために、A/Dコンバータ6の入力側にマルチプレクサ16を接続している。マルチプレクサ16は、各々の接続点14を順番に切り換えてA/Dコンバータ6に接続して、各々の接続点14の電圧をA/Dコンバータ6に入力する。この温度検出回路2は、マルチプレクサ16で、接続点14を切り換えるので、ひとつのA/Dコンバータ6で複数の接続点14の電圧をデジタル信号に変換できる。このマルチプレクサ16は、制御回路7にコントロールされて入力を順番に切り換える。温度検出回路は、図示しないが、各々の接続点にA/Dコンバータを接続して、各々のA/Dコンバータで各々の接続点の電圧をデジタル信号に変換することもできる。
【0029】
制御回路7は、A/Dコンバータ6から入力される温度信号で電池1の充放電をコントロールする。たとえば、制御回路7は、電池1の温度が高くなるにしたがって、あるいは低くなるにしたがって、電池1の充放電電流の最大値を小さく制限するようにコントロールする。高温の電池、あるいは低温の電池が大電流で充放電されると、電気性能が低下するからであるが、このコントロールは、省略することもできる。さらに、制御回路7は、電池1の温度が設定温度まで上昇し、継続して充放電させて熱暴走に至らしめるような状態になると、電池1の充放電を、制御し、停止する。たとえば、制御回路7は、いずれかの電池1の温度が設定温度(例えば、80℃)よりも高くなるときに、電池1が異常温度であるとして、電流を抑制(たとえば、電流を低下させて温度上昇を低下させる抑制制御)して、電池の熱暴走を防止する。それでも、電池1の温度上昇が続くなら、電池1の出力側に接続しているコンタクター18をオフに切り換えて電流を遮断して、電池1の熱暴走を未然に防止する。
【0030】
制御回路7は、メモリに記憶しているソフトウエアにしたがって動作して、電池1の充放電をコントロールする。制御回路7が正常に動作するかぎり、電池1の充放電は正常にコントロールされ、安全に、しかも電池1の劣化を防止しながら充放電できる。しかしながら、ソフトウエアで動作する制御回路7は、暴走し、あるいはフリーズして正常に動作しなくなることがある。この状態になると、電池1の充放電は正常にコントロールされなくなる。このように、制御回路7が正常に動作しないとき、以下の異常温度上昇阻止回路3が機能して、電池1の電流を遮断する。
【0031】
異常温度上昇阻止回路3は、制御回路7が正常に動作しないときに、電池1の温度が異常温度の所定温度である温度まで上昇すると電流を強制的に遮断して、熱暴走を防止する。この所定温度は、前述の制御回路7において、電池の異常温度である設定温度よりも、1〜5℃、好ましくは2〜4℃高い温度に設定される。高く設定することにより、通常、制御回路7が正常に機能する場合は、電池1が熱暴走する異常温度となったとき、異常温度上昇阻止回路3が動作して機能するより前に、制御回路7にて異常温度を検出して電流を抑制(電流を低下させて温度上昇を低下させる抑制制御)して、電池の熱暴走を防止する。
そして、制御回路7は、上述のように、電流を低下させて抑制しても、電池1の温度上昇が続くなら、次の電流制御として、コンタクター18をオフに切り換えて電流を遮断する。
制御回路7が正常に機能しない場合、例えば、マイコンを備える制御回路7でのソフト制御が失敗(マイコン暴走も含む)したときは、制御回路7での設定温度では制御されないことより、ハード機構である異常温度上昇阻止回路3で所定温度にて、電流制御として、コンタクター18を開いて電流を遮断する。
【0032】
この異常温度上昇阻止回路3は、温度検出回路2の電圧変換回路5から出力される出力電圧を基準電圧21に比較して、電池1が設定温度に上昇すると異常温度信号を出力するコンパレータ8と、このコンパレータ8に接続されて、コンパレータ8の異常温度信号を検出して電池1の電流を遮断する強制電流遮断回路10とを備えている。図の異常温度上昇阻止回路3は、コンパレータ8を備える複数の比較処理回路20を備えている。
【0033】
図2の電源装置は、複数の温度センサー4を備えるので、各々の温度センサー4で検出される電池温度で充放電を制御する。したがって、異常温度上昇阻止回路3は、各々の温度センサー4に接続している複数回路の比較処理回路20、図の装置にあっては8回路の比較処理回路20を備える。
【0034】
各々の比較処理回路20は、コンパレータ8の入力側を、電圧変換回路5の出力、すなわち温度センサー4と直列抵抗12との接続点14に接続している。図の電圧変換回路5は、接続点14から出力側に保護用の入力抵抗17(1kΩ)を接続しているが、この入力抵抗17は、必ずしも接続する必要はない。
【0035】
さらに、図2の異常温度上昇阻止回路3は、電池1の異常温度を検出するコンパレータ8に加えて、温度センサー回路15の短絡を検出して、温度センサー回路15が短絡すると短絡信号を出力する短絡コンパレータ9を備える。図に示す異常温度上昇阻止回路3は、各々の比較処理回路20にコンパレータ8と短絡コンパレータ9とを備えている。
【0036】
コンパレータ8は反転側の入力端子を接続点14に接続して、非反転側の入力端子には第1基準電圧21を入力している。このコンパレータ8は、電池1の温度が設定温度まで上昇して温度センサー4の電気抵抗が小さくなり、接続点14の電圧が第1基準電圧21よりも低くなると、出力を”Low”から”High”に切り換える。第1基準電圧21は、出力を”High”に切り換える温度、すなわち電池1の判定温度を決定する。第1基準電圧21を低くすると、コンパレータ8が異常温度信号を出力する判定温度の設定値が高くなる。それは、電池1の判定温度が高くなって温度センサー4の電気抵抗の小さくなり、接続点14の電圧が低くなるまで異常温度信号を出力しなくなるからである。したがって、電池1の充放電電流を遮断する判定温度は、第1基準電圧21で最適値に設定できる。このコンパレータ8は、電池1の温度が判定温度よりも低いときに、”Low”を出力する。電池1の温度が判定温度よりも高くなると”High”を出力する。したがって、このコンパレータ8は、異常温度信号として”High”を出力する。
【0037】
第1基準電圧21は、たとえば電池温度が異常温度の所定温度である最高温度(例えば、80℃)になったときに、コンパレータ8が異常温度信号を出力する電圧に設定している。第1基準電圧21は、ソフトウエアで動作する制御回路7が電池1の電流を遮断する温度よりも電池温度が高くなるときに、コンパレータ8が異常温度信号を出力するように設定される。たとえば、制御回路7が電流を遮断する電池温度よりも、1〜5℃、好ましくは2〜4℃高い温度で、コンパレータ8が異常温度信号を出力する電圧に設定される。
【0038】
温度センサー4等に短絡が発生した場合や、温度センサー回路15にオープン状態が発生した場合は、接続点14の異常な電圧を制御回路7が検出している。異常温度上昇阻止回路3において、短絡コンパレータ9は、温度センサー回路15が短絡していないことを検出する。つまり、短絡コンパレータ9は、上述のコンパレータ8にて異常を検出する場合において、短絡していない、正常な接続点14の電圧を測定していることを検出する。短絡コンパレータ9は、プラス側の入力端子を接続点14に接続して、マイナス側の入力端子を第2基準電圧22に接続している。第2基準電圧22は、第1基準電圧21よりも低い電圧に設定している。温度センサー回路15が短絡するときの接続点14の電圧が、電池温度が設定温度になるときの電圧よりも低くなるからである。図の短絡コンパレータ9は、温度センサー回路15の短絡を検出すると、出力を”High”から”Low”に切り換える。したがって、短絡信号として”Low”を出力する。
【0039】
コンパレータ8と短絡コンパレータ9の出力は、AND回路23を介して強制電流遮断回路10に入力される。AND回路23は、コンパレータ8と短絡コンパレータ9の両方から”High”が入力されるときに、”High”を出力して強制電流遮断回路10に入力する。強制電流遮断回路10は”High”が入力されるときに、電池1の電流を遮断する。コンパレータ8は異常温度信号として”High”を出力し、短絡コンパレータ9は短絡信号として”Low”を出力する。したがって、AND回路23が”High”を出力して電池1の電流を遮断するのは、コンパレータ8が異常温度信号を出力し、かつ短絡コンパレータ9が短絡信号ではない”High”を出力するときに限られる。コンパレータ8が異常温度信号として”High”を出力しても、短絡コンパレータ9が”Low”の短絡信号を出力すると、AND回路23の出力は”Low”となる。したがって、短絡コンパレータ9が短絡信号を出力するときは、たとえコンパレータ8が異常温度信号の”High”を出力しても、強制電流遮断回路10は電池1の電流を遮断しない。
【0040】
図2に示す電源装置は、温度センサー回路15の短絡を検出して、温度センサー回路15が短絡するときには、異常温度上昇阻止回路3において、電池1の電流遮断を無視するように制御するが、温度センサー4等に開放及び短絡が発生した場合は、接続点14の異常な電圧を、制御回路が検出している。ただし、本発明の電源装置は、必ずしも短絡コンパレータを装備する必要はなく、コンパレータの出力で強制電流遮断回路を制御することもできる。
【0041】
強制電流遮断回路10は、入力側にOR回路24を備える。OR回路24は、入力側に各々の比較処理回路20の出力を接続している。各々の比較処理回路20の出力はAND回路23を介してOR回路24に入力される。強制電流遮断回路10は、いずれかの比較処理回路20から異常温度信号の”High”がOR回路24に入力されると、電池体11と負荷であるモーター19との間に接続しているコンタクター18をオフに切り換えて電池1の電流を遮断する。
【0042】
本発明の電源装置は、異常温度上昇阻止回路を図2の回路構成には特定しない。たとえば、図3に示すように、コンパレータ38のプラス側に第1基準電圧31を入力し、短絡コンパレータ39のプラス側に第2基準電圧32を入力することもできる。図3の異常温度上昇阻止回路33は、短絡コンパレータ39の出力側に反転回路35を接続して、”High”と”Low”を反転して、AND回路33に入力する。
【0043】
さらに、図4の異常温度上昇阻止回路40は、コンパレータ48の出力側に、温度センサー回路の短絡を検出するとオフに切り換えられるスイッチ45を接続している。この異常温度上昇阻止回路40は、短絡コンパレータ49が温度センサー回路の短絡を検出して、短絡信号を出力すると、この短絡信号でスイッチ45をオフに切り換える。したがって、温度センサー回路が短絡すると、コンパレータ48が異常温度信号の”High”を出力しても、強制電流遮断回路は電池の電流を遮断しない。
【0044】
さらに、車両用の電源装置は、図5に示すように、複数の温度検出回路52を備えて、電池体511の複数の電池51を複数のブロックに分割して監視することができる。なお、この実施例において、前述の図2に示す電源装置と同じ構成要素については、上1桁を除く下桁に、図2の実施例と同符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0045】
図5に示す電源装置は、電池体511を2つのブロックに分けて、各ブロックに温度検出回路52を設けている。各温度検出回路52は、電池51に熱結合するように配置された温度センサー54の電気抵抗の変化を電圧変換回路55で電圧変化に変換して、電圧変換回路55の出力電圧をA/Dコンバータ56でデジタル信号に変換して制御回路57に出力している。さらに、各温度検出回路52の電圧変換回路55は、それぞれ異常温度上昇阻止回路53に接続している。各異常温度上昇阻止回路53は、電圧変換回路55の出力を、1対となるコンパレータ58及び短絡コンパレータ59に入力している。コンパレータ58と短絡コンパレータ59は強制電流遮断回路510に接続されており、短絡コンパレータ59から短絡信号が判定されていない状態で、コンパレータ58から異常温度信号が出力されると、強制電流遮断回路510が電池51の電流を遮断する。この電源装置は、1ないし複数のコンパレータ58の判定のうち、少なくとも1回路が設定以上に達した場合に電池の電流を遮断する。以上の電源装置は、複数の温度検出回路52の制御回路57と複数の異常温度上昇阻止回路53の両方で電池51を監視して、いずれかの回路が異常温度を検出すると、電池51の電流を遮断する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本出願人が先に出願した電源装置の回路図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる車両用の電源装置の回路図である。
【図3】異常温度上昇阻止回路の他の一例を示す回路図である。
【図4】異常温度上昇阻止回路の他の一例を示す回路図である。
【図5】本発明の他の実施例にかかる車両用の電源装置の回路図である。
【符号の説明】
【0047】
1…電池
2…温度検出回路
3…異常温度上昇阻止回路
4…温度センサー
5…電圧変換回路
6…A/Dコンバータ
7…制御回路
8…コンパレータ
9…短絡コンパレータ
10…強制電流遮断回路
11…電池体
12…直列抵抗
13…電源
14…接続点
15…温度センサー回路
16…マルチプレクサ
17…入力抵抗
18…コンタクター
19…モーター
20…比較処理回路
21…基準電圧
22…基準電圧
23…AND回路
24…OR回路
30…異常温度上昇阻止回路
31…基準電圧
32…基準電圧
33…AND回路
35…反転回路
38…コンパレータ
39…短絡コンパレータ
40…異常温度上昇阻止回路
41…基準電圧
42…基準電圧
45…スイッチ
48…コンパレータ
49…短絡コンパレータ
91…電池
92…温度検出回路
93…素電池
94…温度センサー
95…直列抵抗
96…接続点
98…第1ダイオード
99…電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーター(19)を駆動する複数の電池(1)と、電池(1)の温度を検出する温度検出回路(2)と、電池(1)の異常温度上昇を阻止する異常温度上昇阻止回路(3)を備える車両用の電源装置であって、
温度検出回路(2)は、電池(1)に熱結合するように配設されて、電池温度で電気抵抗を変化させる複数の温度センサー(4)と、各々の温度センサー(4)の電気抵抗の変化を電圧変化に変換する電圧変換回路(5)と、電圧変換回路(5)の出力電圧をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ(6)と、このA/Dコンバータ(6)から出力される温度信号が入力される制御回路(7)とを備えており、
異常温度上昇阻止回路(3)は、温度検出回路(2)の電圧変換回路(5)から出力される出力電圧を基準電圧(21)と比較して、電池(1)が設定温度に上昇すると異常温度信号を出力するコンパレータ(8)と、このコンパレータ(8)に接続されて、コンパレータ(8)の異常温度信号を検出して電池(1)の電流を遮断する強制電流遮断回路(10)とを備えており、
制御回路(7)と異常温度上昇阻止回路(3)が電池(1)の温度を監視して、電池(1)の電流を制御するようにしてなる車両用の電源装置。
【請求項2】
通常の状態では、温度検出回路(2)の制御回路(7)が、A/Dコンバータ(6)を介して電圧変換回路(5)から出力されるデジタル信号で以って電池温度を検出し、
制御回路(7)が正常でないときは、電池温度が設定温度よりも高くなると、異常温度上昇阻止回路(3)のコンパレータ(8)が異常温度信号を出力する請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項3】
異常温度信号が出力されると強制電流遮断回路(10)が電池(1)の電流を遮断するようにしてなる請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項4】
異常温度上昇阻止回路(3)が、電池(1)の異常温度を検出するコンパレータ(8)と、温度センサー回路(15)の短絡を検出して、温度センサー回路(15)が短絡すると短絡信号を出力する短絡コンパレータ(9)を備えており、コンパレータ(8)と短絡コンパレータ(9)は強制電流遮断回路(10)に接続され、
強制電流遮断回路(10)は、コンパレータ(8)から異常温度信号が入力され、かつ短絡コンパレータ(9)から短絡信号が入力されない状態では電池(1)の電流を遮断するが、
短絡コンパレータ(9)から強制電流遮断回路(10)に短絡信号が出力されると、電池(1)の電流を遮断しない請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項5】
コンパレータ(8)は、電池(1)が設定温度以上になると”High”の異常温度信号を出力し、短絡コンパレータ(9)は温度センサー回路(15)が短絡すると”Low”の短絡信号を出力するコンパレータで、コンパレータ(8)と短絡コンパレータ(9)の出力がAND回路(23)を介して、強制電流遮断回路(10)に入力され、AND回路(23)が強制電流遮断回路(10)に”High”を出力する状態で、電池(1)の電流が遮断される請求項4に記載される車両用の電源装置。
【請求項6】
温度センサー(4)が電池温度が高くなると電気抵抗が小さくなる温度素子である請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項7】
電圧変換回路(5)が、温度センサー(4)と直列に接続された直列抵抗(12)と、この直列抵抗(12)と温度センサー(4)との直列回路に電圧を供給する電源(13)とである請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項8】
温度検出回路(2)を複数個備え、各温度検出回路(2)に1対となるコンパレータ(8)及び短絡コンパレータ(9)を備え、短絡コンパレータ(9)から短絡信号が判定されていない1ないし複数の温度検出回路(2)のコンパレータ(8)の判定のうち、少なくとも1回路が設定以上に達した場合に電池の電流を遮断するようにしてなる請求項1に記載される車両用の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−18826(P2007−18826A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198076(P2005−198076)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】