説明

車両用サスペンションシステム

本発明の目的は、液圧回路を含むロール抑制装置の異常を検出することである。 前輪側の液圧シリンダ30と後輪側の液圧シリンダ60との互いに対応する液圧室同士が液通路72、74によって接続される場合において、車両の横加速度に対応して決まる液圧に対して実際の液圧が低い場合には、液漏れが生じたとすることができる。車両のローリング状態と液圧との関係に基づけば、異常を検出することができるのである。異常が検出された場合に、電磁開閉弁100,102が閉状態にされれば、2つの液圧シリンダ30,60が遮断される。液漏れが生じた一方の液圧シリンダまたは液通路の一部から他方の液圧シリンダを遮断することができる。他方の液圧シリンダにおいては、車両のローリング状態に応じた液圧差を発生させることができ、スタビライザバーに弾性力を発生させることができる。2つの液圧シリンダの両方が作用不能になる場合に比較して、ロール抑制効果の低下を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は車両のローリングを抑制可能な車両用サスペンションシステムに関するものである。
【背景技術】
特表平11−510761号公報には、前輪側のスタビライザバーの弾性力を制御する液圧シリンダと、後輪側のスタビライザバーの弾性力を制御する液圧シリンダと、これら2つの液圧シリンダにおいて、ピストンによって仕切られた2つの液圧室の互いに対応する液圧室同士をそれぞれ接続する2つの液通路と、これら2つの液通路を互いに連通させる状態と遮断する状態とに切り換え可能な連通制御弁とを含む車両用サスペンションシステムが記載されている。
特表2002−541015号公報には、前輪側と後輪側との各々において、右側輪と左側輪とについて、車輪側部材と車体側部材との間にそれぞれ設けられた液圧シリンダと、これら4つの液圧シリンダにおいて、ピストンによって仕切られた2つの液圧室の互いに対応する液圧室同士をそれぞれ接続する2系統の液通路と、それら2系統の液通路を互いに連通させる状態と遮断する状態とに切り換え可能な連通制御弁とを含む車両用サスペンションシステムが記載されている。
【発明の開示】
本発明の課題は、上記公報に記載の車両用サスペンションシステムの異常を検出可能とすることである。この課題は、車両用サスペンションシステムを下記各態様の構成のものとすることによって解決される。各態様は、請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまで、本明細書に記載の技術の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組み合わせが以下の各項に限定されると解釈されるべきではない。また、1つの項に複数の事項が記載されている場合、常に、すべての事項を一緒に採用しなければならないものではなく、一部の事項のみを取り出して採用することも可能である。
(1)(a)ハウジングの内部を2つの流体圧室に仕切るピストンを有する流体圧シリンダであって、前輪側と後輪側との各々において車輪側部材と車体側部材との間に少なくとも1つずつ設けられ、左側輪と右側輪との少なくとも一方の車体に対する上下方向の相対移動によって、前記2つの流体圧室の間に流体圧差を発生させるものと、(b)前記流体圧シリンダ各々の前記2つの流体圧室の互いに対応する流体圧室同士を接続する2系統の流体通路とを含む流体圧回路と、
前記2系統の流体通路の少なくとも一方の系統の流体通路の流体圧に基づいて、前記流体圧回路の異常を検出する異常検出装置と
を含むことを特徴とする車両用サスペンションシステム。
本項に記載の車両用サスペンションシステムにおいては、前輪側、後輪側のそれぞれにおいて少なくとも1つの流体圧シリンダが設けられる。本車両用サスペンションシステムは、少なくとも2つの流体圧シリンダを含むことになり、それら2つの流体圧シリンダ各々の2つの流体圧室の互いに対応する流体圧室同士がそれぞれ流体通路によって接続される。対応する流体圧室同士は1つの流体通路によって接続される場合や複数の流体通路によって接続される場合がある。いずれにしても、対応する流体圧室同士を接続する1つ以上の流体通路を1系統の流体通路と称する。
『互いに対応する流体圧室』は、機能が互いに同じである流体圧室である。例えば、車体がロールした時に、流体圧が高くなる流体圧室同士、低くなる流体圧室同士である。流体圧シリンダは、ピストンロッドが車体側部材に取り付けられてもよく、車輪側部材に取り付けられても良い。この取付形態は前輪側と後輪側とで逆にされてもよく、そのため『互いに対応する流体圧室』がロッド側室同士あるいはヘッド側室同士になるとは限らない。
流体圧回路においては、前後左右輪のうち互いに対角位置にある一対の車輪と他の対角位置にある別の一対の車輪とで、車体に対する上下方向の相対移動の向きが逆である場合に、流体通路に流体圧室間の作動流体の流れが生じてその相対移動を許容する。この場合には、流体通路における作動流体の流れにより、流体圧シリンダ各々において、2つの流体圧室の間に実質的な流体圧差が生じることはない。それに対して、車両がロール状態になろうとする場合には、流体通路に流体圧室間の作動流体び流れが生じないことにより、前輪側、後輪側各々における左側輪、右側輪の車体に対する上下方向の相対移動の差が抑制されて、車両のロール状態が抑制される。流体通路に作動流体が流れないことにより、流体圧シリンダ各々において2つの流体圧室の間に流体圧差が生じ、その流体圧差に応じた力が左側輪、右側輪に付与されて、これらの間の上下方向の相対移動の差が抑制されるのである。換言すれば、左側輪、右側輪には、これらの間の相対移動の差を抑制する力がそれぞれ付与されるのである。
流体圧室間の作動流体の流れは、流体通路で接続される複数の流体圧室の流体圧差に起因する作動流体の流れをいう。複数の流体圧室のうちの2つにおいて、一方の流体圧室の流体圧が高くなり、他方の流体圧室の流体圧が低くなった場合には、これらの間で作動流体が流れる。それに対して、例えば、流体通路にアキュムレータ等が設けられ、流体通路の流体圧が過大になったり、負圧になったりしないように、流体通路とアキュムレータとの間で作動流体の授受が行われ、それによって作動流体が流れることがあるが、これは本明細書にいう流体圧室間の流れではない。
流体圧シリンダにおける2つの流体圧室の間の流体圧差は、流体通路において作動流体が流れないことに起因して生じる場合やピストンの2つの流体圧室各々に対する受圧面積が異なることに起因して生じる場合等がある。左側輪と右側輪との間の相対移動の差を抑制する力は前者の作動流体が流れないことによって生じる力であり、後者のように予め流体圧差が生じることが予定されている場合には、これらの流体圧より大きい流体圧差をいう。
また、流体圧回路の異常が、異常検出装置によって少なくとも一方の系統の流体通路の流体圧に基づいて検出される。異常は、2系統の流体通路の両方の流体圧に基づいて検出されるようにしても、いずれか一方の系統の流体通路の流体圧に基づいて検出されるようにしてもよい。例えば、流体圧差に基づいて検出されるようにしたり、高い方の流体圧に基づいて検出されるようにしたりできるのである。
さらに、本項に記載の車両用サスペンションシステムは、流体として液体を利用したり、気体を利用したりすることができる。気体を利用する場合には、高圧縮性のものを利用することが望ましい。
(2)前記異常検出装置が、(a)前記車両のロール状態に関連するロール状態関連量を検出するロール状態関連量検出装置と、(b)前記2系統の流体通路の少なくとも一方の流体圧を検出する流体圧検出装置と、(c)その流体圧検出装置によって検出された流体圧と、前記ロール状態関連量検出装置によって検出されたロール状態関連量との関係に基づいて、前記流体圧回路が異常であるかどうかを判定する異常判定部とを含む(1)項に記載の車両用サスペンションシステム。
流体圧回路に流体の漏れ等の異常がない状態では、流体圧シリンダにおいてピストンに加えられる力と少なくとも一方の系統の流体通路の流体圧との間には予め定められた関係が成立する。そのため、実際にピストンに加えられる力と、上記関係とに基づけば、異常が生じていない場合の流体通路の流体圧を推定することができる。そこで、例えば、実際の流体圧がその推定された流体圧に対して小さい場合には、流体の漏れが生じている可能性があると推定することができる。
ピストンに加えられる力を実際に検出することは容易ではないが、例えば、車両のロール状態に関連するロール状態関連量に基づいて取得(演算ないし推定)することができる。ロール状態関連量には、ロール角、ローリング速度(ロールレイト)、ローリング加速度等が該当する。これらロール状態関連量は、車両の走行状態において取得されても、車両の停止状態において取得されてもよい。換言すれば、動的なロール状態に限らず静的なロール状態も含まれる。
ロール状態関連量は、各輪毎に設けられた車高センサによる検出値、ロールレイトセンサ、ロール角センサによる検出値等に基づいて取得することができるが、車両の走行状態においては、車両の旋回状態に基づいて取得することができる。
ロール状態関連量検出装置は、車両の姿勢検出装置と称することもできる。車両の姿勢のうちの前後方向に延びる軸線回りの回動姿勢が検出されるのである。
(3)前記ロール状態関連量検出装置が、前記車両に加わる遠心力に関連する遠心力関連量を取得する遠心力関連量取得装置を含む(2)項に記載の車両用サスペンションシステム。
遠心力関連量によれば、ピストンに加えられる力を容易に推定することができる。遠心力関連量には、遠心力自体、遠心力と等価な物理量、遠心力を求める際に基礎となる物理量等が該当する。例えば、横加速度や、旋回半径(ないし操舵角度)と走行速度との組合わせ等がある。
(4)前記ロール状態関連量検出装置が、前記車両の横加速度を検出する横加速度検出装置を含む(2)項または(3)項に記載の車両用サスペンションシステム。
(5)前記異常検出装置が、(a)前記車両の走行状態を検出する走行状態検出装置と、(b)前記2系統の流体通路の少なくとも一方の流体圧を検出する流体圧検出装置と、(c)その流体圧検出装置によって検出された流体圧と、前記走行状態検出装置によって検出された走行状態との関係に基づいて、前記流体圧回路が異常であるかどうかを判定する異常判定部とを含む(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
走行状態検出装置は、車両の旋回状態を検出するものとすることが望ましい。例えば、横加速度、旋回半径(ないし操舵角度)と走行速度との組合わせ、ヨーレイト等を検出するものとすることができる。走行状態検出装置を、横加速度センサを含むものとしたり、操舵角センサおよび車速センサを含むものとしたり、ヨーレイトセンサを含むものとしたりすることができるのである。旋回半径はステアリングホイールの操舵角度に基づいて取得したり、前輪または後輪舵角に基づいて取得したりすることができる。なお、走行状態は、これら物理量のうちの2つ以上に基づいて取得することもできる。
(6)前記異常検出装置が、(a)前記2系統の流体通路の少なくとも一方の流体圧を検出する流体圧検出装置と、(b)その流体圧検出装置によって検出された流体圧に基づいて前記流体圧回路の異常を検出する異常判定部とを含む(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
2系統の流体通路のうちの少なくとも一方の流体圧に基づけば流体の漏れが生じているか否かを検出することができる。例えば、流体圧が通常あり得ない程度に低い場合には、流体の漏れが生じたとすることができる。
(7)前記異常検出装置によって、前記流体圧回路の異常が検出された場合には、その流体圧回路を2つの部分に分割する流体圧回路分割装置を含む(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の車両用サスペンションシステムにおいては、異常時に、流体圧回路が分割され、一方が他方から遮断される。そのため、分割された流体圧回路のいずれか一方に異常が生じても他方により車両のローリングを抑制することができる。流体圧回路は、分割された2つの部分のうちのいずれの部分によってもロール抑制効果を奏し得る状態で分けられる。そのため、2つの部分のうちのいずれか一方に異常が生じても他方によって車両のロールを抑制することができるのである。
例えば、後述するように、流体圧回路が、前輪側の流体圧シリンダと後輪側の流体圧シリンダとの2つを含む場合には、流体圧回路のうちの前輪側の流体圧シリンダを含む部分と後輪側の流体圧シリンダを含む部分とに分けることができる。また、流体圧シリンダが各輪毎に設けられている場合には、右側の前輪と後輪とのいずれか一方に対応して設けられた流体圧シリンダと左側の前輪と後輪とのいずれか一方に対応する流体圧シリンダとを含む部分と残りの2つの流体圧シリンダを含む部分とに分けることができる。
(8)前記車輪側部材が前輪側、後輪側にそれぞれ設けられたスタビライザバーであり、前記流体圧シリンダが前輪側、後輪側のそれぞれにおいて、スタビライザバーと車体側部材との間に設けられたものであり、前記2系統の流体通路が前輪側、後輪側の流体圧シリンダ各々の前記2つの流体圧室の互いに対応する流体圧室同士をそれぞれ接続する2つの流体通路である(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
例えば、流体圧シリンダのピストンに設けられたピストンロッドと流体圧シリンダの本体とのいずれか一方がスタビライザバーに係合させられ、いずれか他方が車体側部材に取り付けられるようにすることができる。
流体圧シリンダは、スタビライザバーの弾性力を制御可能な状態で設けられるのであり、スタビライザバーの長手方向の中央部より、端部に隔たった位置に設けられる。
(9)前記2つの流体通路を遮断する状態と連通させる状態とに切り換え可能な遮断装置を含む(8)項に記載の車両用サスペンションシステム。
遮断装置は、2つの流体通路を共通に連通させたり遮断したりする。遮断装置は、2つの流体通路にそれぞれ対応して設けられた2つの遮断弁を含むものとすることができる。2つの遮断弁は、別個に制御可能なものであっても、共通に制御可能なものであってもよい。遮断装置によって2つの流体通路が遮断されれば、流体圧回路において、前輪側の流体圧シリンダを含む部分が後輪側の流体圧シリンダを含む部分から遮断される。
(10)前記遮断装置を、前記異常検出装置によって異常が検出された場合に、遮断状態とする遮断装置制御装置を含む(9)項に記載の車両用サスペンションシステム。
遮断装置によって2つの流体通路が共に遮断されれば、2つの流体圧シリンダを遮断することができる。それにより、例えば、一方の流体圧シリンダまたは流体通路の一部において流体の漏れが生じても、その影響が他方の流体圧シリンダに及ぶことを防止することができる。前輪側と後輪側とのいずれか一方においては流体圧シリンダが正常に作用可能となるため、両方の作用が異常になる場合に比較して、ロール抑制効果の低減を抑制することができる。
(11)前記2つの流体通路に、それぞれアキュムレータを設けるとともに、これら流体通路とアキュムレータとの間にそれぞれ制御弁を設けた(8)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
流体通路にアキュムレータを設ければ、流体通路の液圧が過大になったり、負圧になったりすることを回避することができる。一方、旋回中に、流体通路からアキュムレータに流入することによって、充分にロール抑制効果が得られないことがある。その場合には、制御弁により流体通路からアキュムレータへの作動液の流入が阻止されることが望ましい。制御弁は、2つの流体通路の間の差圧が大きい場合に閉状態とされ、差圧が小さい場合に開状態とされるものとすることが望ましく、例えば、パイロット弁としたり、電磁弁としたりすることができる。
(12)前記流体圧シリンダが、前輪側、後輪側の各々において、左側輪、右側輪のそれぞれについて、車輪側部材と車体側部材との間に設けられたものであり、前記2系統の流体通路が、これら4つの流体圧シリンダの互いに対応する流体圧室同士をそれぞれ接続するものである(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の車両用サスペンションシステムにおいては、車両に設けられる複数の車輪の各々に対して、車輪側部材と車体側部材との間に流体圧シリンダが設けられる。車輪側部材としては、例えば、車輪を揺動可能に保持するサスペンションアームとしたり、アクスルハウジングとしたりすることができる。アクスルハウジングとの間に設けられる場合には、アクスルハウジングの中央より車輪側寄りの部分と車体側部材との間に設けられるようにすることが望ましい。いずれにしても、車両用サスペンションシステムが適用されるサスペンション装置は、独立懸架式であっても、車軸懸架式であってもよいのである。
例えば、車両が前後左右の4つの車輪を含み、前後左右の車輪にそれぞれ対応して流体圧シリンダが4つ、車両の上下方向に延びた姿勢で設けられる場合には、右前輪、右後輪のピストンの上方の流体圧室と左前輪、左後輪のピストンの下方の流体圧室とが互いに対応する流体圧室であり、右前輪、右後輪のピストンの下方の流体圧室と左前輪、左後輪のピストンの上方の流体圧室とが互いに対応する流体圧室である。これら互いに対応する流体圧室同士を接続する1つ以上の流体通路が1系統の流体通路である。
車両に6つ以上の車輪が設けられる場合も同様である。
(13)前記異常検出装置によって、前記流体圧回路の異常が検出された場合に、右側に位置する前輪と後輪とのいずれか一方と左側に位置する前輪と後輪とのいずれか一方とについてそれぞれ設けられた2つの流体圧シリンダを含む第1流体圧回路と、残りの2つの流体圧シリンダを含む第2流体圧回路とを遮断する異常時遮断装置を含む(12)項に記載の車両用サスペンションシステム。
流体圧回路に異常が検出された場合に、流体圧回路が2つに分離される。一方の流体圧回路は、他方の流体圧回路から遮断されるため、一方の流体圧回路に流体漏れ等の異常が生じても、他方の流体圧回路は正常に作動し、他方の流体圧回路の作動により、車両のローリングが抑制される。
例えば、一方の流体圧回路を、右前輪の流体圧シリンダと左前輪の流体圧シリンダとを含むものとし、他方の流体圧回路を、右後輪の流体圧シリンダと左後輪の流体圧シリンダとを含むものとすることができる。また、一方の流体圧回路を、右前輪の流体圧シリンダと左後輪の流体圧シリンダとを含むものとし、他方の流体圧回路を、右後輪の流体圧シリンダと左前輪の流体圧シリンダとを含むものとすることができる。
(14)前記1系統の流体通路が、右側に位置する前輪と後輪とのいずれか一方と左側に位置する前輪と後輪とのいずれか一方とについてそれぞれ設けられた流体圧シリンダの互いに対応する流体圧室間を接続する第1流体通路と、残りの2つの流体圧シリンダの互いに対応する流圧室間を接続する第2流体通路と、これら第1流体通路と第2流体通路とを接続する第3流体通路とを含み、前記異常時遮断装置が、前記第3流体通路を遮断する流体通路遮断装置を含む(13)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の車両用サスペンションシステムにおいては、第1流体通路と第2流体通路とが第3流体通路を遮断することによって遮断される。それによって、第1流体通路によって接続された流体圧室を有する流体圧シリンダを含む流体圧回路と、第2流体通路によって接続された流体圧室を有する流体圧シリンダを含む流体圧回路とが互いに遮断される。換言すれば、第1流体通路を含む流体圧回路と第2流体通路を含む流体圧回路とが遮断されることになる。
(15)前記流体圧回路が、(a)前記2系統の流体通路を互いに接続する接続通路と、(b)その接続通路に設けられた連通制御弁とを含み、当該車両用サスペンションシステムが、前記連通制御弁を車両の走行状態に基づいて制御する連通制御弁制御装置を含む(1)項ないし(14)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の車両用サスペンションシステムにおいては、連通制御弁の開閉により、接続通路が連通させられる状態と遮断される状態とに切り換えられる。連通制御弁の連通状態においては2系統の流体通路が連通させられ、遮断状態においては、2系統の流体通路が遮断され、各々の流体圧シリンダにおいて、ピストンで仕切られた2つの流体圧室が遮断される。
したがって、連通制御弁が車両の走行状態に基づいて開閉されるようにすれば、各流体圧室の流体圧を、車両の走行状態に応じた大きさにすることができる。例えば、車両の直進状態において流体圧差(例えば、ピストンの受圧面積の相異に起因する流体圧差等予め流体圧差が生じることが予定されている場合には、この予定されている流体圧差より大きい流体圧差をいう)が生じ、車両の姿勢が傾くことを回避することができるのであり、直進時に車両の姿勢がほぼ水平でないことに起因して運転者が感じる違和感を軽減させることができる。
車両の走行状態は走行状態検出装置によって検出される。走行状態検出装置は車両の姿勢を推定可能な走行状態を検出するものとすることが望ましい。例えば、直進状態であるか旋回状態であるかを検出するものとすることができる。直進状態にあるか旋回状態にあるかを直接検出するものであっても、運転者による運転操作部材の操作状態に基づいて推定するものであってもよい。前者の場合には、例えば、ヨーレイトセンサ、横Gセンサ等の少なくとも1つを含むものとすることができ、後者の場合には、操舵角センサを含むものとすることができる。
車両が旋回状態にある場合に連通制御弁が遮断状態にされるようにする。流体圧シリンダにおいて2つの流体圧室の間に流体圧差が生じ得る状態にあるのであり、車両がロールしようとする場合に、流体圧差により右側車輪と左側車輪との間の車体に対する上下方向の相対移動の差が抑制される。前述の異常検出は、連通制御弁の遮断状態において行われる。
(16)前記連通制御弁制御装置が、車両が直進状態にある場合に、前記連通制御弁を制御することによって、各流体圧室の流体圧を、ロール抑制効果が生じない大きさにする流体圧制御部を含む(15)項に記載の車両用サスペンションシステム。
車両の直進状態においては、流体圧シリンダそれぞれの、ピストンに対する互いに逆向きの力が釣り合った状態となって、ロール抑制効果が生じないようにされるのが普通である。
この場合において、ピストンの2つの流体圧室に対向するそれぞれの受圧面積が同じ場合には、2つの流体圧室の流体圧が等しい場合に互いに逆向きの力が釣り合う。それに対して、ピストンのそれぞれの流体圧室に対向する受圧面積が異なる場合には、流体圧室の流体圧と受圧面積とを掛けた値が同じになる状態で釣り合う。この状態においては、受圧面積が大きい方の流体圧室の流体圧が受圧面積が小さい方の流体圧室の流体圧より小さくなる。
(17)(a)ハウジングの内部を2つの流体圧室に仕切るピストンを有する流体圧シリンダであって、前輪側と後輪側との各々において車輪側部材と車体側部材との間に少なくとも1つ設けられ、左側輪と右側輪との少なくとも一方の車体に対する上下方向の相対移動によって、前記2つの流体圧室の間に流体圧差を発生させるものと、(b)前記流体圧シリンダ各々の前記2つの流体圧室の互いに対応する流体圧室同士を接続する2系統の流体通路とを含む流体圧回路と、
前記流体圧回路を、2つの部分に分割可能な分割装置と、
その分割装置を、前記2系統の流体通路の少なくとも一方の流体圧に基づいて制御する分割装置制御装置と
を含むことを特徴とする車両用サスペンションシステム。
本項に記載の車両用サスペンションシステムにおいては、分割装置が2系統の流体通路のうちの少なくとも一方の流体圧に基づいて制御される。
本項に記載の車両用サスペンションシステムには、(1)項ないし(16)項のいずれか1つに記載の技術的特徴を採用することができる。例えば、流体圧回路の異常が検出された場合に分割装置が制御されて、流体圧回路が分割されるようにすることができる。
(18)前記分割装置制御装置が、(a)前記2つの流体通路の少なくとも一方の流体圧を検出する流体圧検出装置と、(b)その流体圧検出装置によって検出された流体圧に基づいて前記分割装置を制御する分割装置制御部とを含む(17)項に記載の車両用サスペンションシステム。
分割装置は、2つの流体通路のうちの高い方に基づいて制御されるようにしたり、流体圧差に基づいて制御されるようにしたりすることができる。
(19)前記分割装置制御装置が、(c)前記車両のロール状態に関連するロール状態関連量を検出するロール状態関連量検出装置と、(d)そのロール状態関連量検出装置によって検出されたロール状態関連量と、前記2系統の流体通路の少なくとも一方の系統の流体通路の流体圧との間の関係に基づいて前記分割装置を制御するロール状態対応制御部とを含む(17)項または(18)項に記載の車両用サスペンションシステム。
(20)前記流体圧シリンダにおけるピストンの両側にそれぞれピストンロッドが設けられ、そのピストンロッドの一方に前記車輪側部材が係合させられた(1)ないし(19)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の一実施形態である車両用サスペンションシステムを概念的に示す図である。
図2は、上記車両用サスペンションシステムのロール抑制装置の液圧回路図である。
図3は、上記ロール抑制装置の流通制御ユニットを概念的に示す図である。
図4は、上記流通制御ユニットのROMに格納されたバルブ制御プログラムを表すフローチャートである。
図5は、上記流通制御ユニットのROMに格納されたテーブルを表すマップである。
図6は、上記ロール抑制装置の別の流通制御ユニットの一部を概念的に示す図である。
図7は、上記ロール抑制装置のさらに別の流通制御ユニットの一部を概念的に示す図である。
図8は、上記ロール抑制装置の別の流通制御ユニットの一部を概念的に示す図である。
図9は、上記ロール抑制装置に含まれる液圧シリンダの別の態様を示す図である。
図10は、本発明の別の一実施形態である車両用サスペンションシステムを概念的に示す図である。
図11は、上記車両用サスペンションシステムのロール抑制装置の液圧回路図である。
図12は、上記ロール抑制装置の流通制御ユニットを概念的に示す図である。
図13は、液圧制御ユニットのROMに格納されたバルブ制御プログラムを表すフローチャートである。
図14は、本発明の別の一実施形態である車両用サスペンションシステムのロール抑制装置の液圧回路を示す図である。
発明を実施するための形態
本発明の一実施形態である車両用サスペンションシステムについて図面に基づいて詳細に説明する。この車両用サスペンションシステムは、スタビライザバーを備えたものであり、ロール抑制装置を含む。
図1において、車両の前輪側と後輪側とにそれぞれスタビライザバー10,12が設けられる。スタビライザバー10,12は、それぞれ、ねじれにより弾性を有する部材であり、概してコの字型を成したものである。スタビライザバー10,12は、中間部の車両の幅方向に延びた中間ロッド部14と、中間ロッド部14と一体的に設けられ、それの両側の車両のほぼ長手方向に延びた左右アーム部16、18とを有する。
前輪側において、ロアアーム20は車輪を揺動可能に保持するとともに、連結部22において図示しない車体側部材に揺動可能に保持される。スタビライザバー10は、左右アーム部16,18(左アーム部16については図示しない)の端部に設けられ、ゴムブッシュまたはボールジョイントを含む連結部19においてロアアーム20の中間部に相対回動可能に支持される。また、中間ロッド部14の中央より右寄りの部分において液圧シリンダ30を介して車体側部材に支持され、左寄りの部分において連結ロッド32を介して車体側部材に支持される。
液圧シリンダ30は、図2に示すように、ハウジング36と、それにシール部材37を介して液密かつ摺動可能に嵌合されたピストン38とを含み、ピストン38の一方の側にピストンロッド40が設けられる。ピストンロッド40の端部のボールジョイントまたはゴムブッシュを含む連結部41において中間ロッド部14に軸線回りに回動可能かつ軸線に対して傾き可能に取り付けられ、ハウジング36のピストンロッド40が延びる側とは反対側に設けられた連結部42において車体側部材に相対回動可能かつ傾き可能に取り付けられる。このように、液圧シリンダ30が、車両の上下方向に延びた姿勢で、ピストンロッド40が中間ロッド14に連携させられた状態で設けられる。
連結ロッド32は、一端部の連結部において中間ロッド部14に軸線回りに回転可能かつ軸線に対して傾き可能な状態で取り付けられ、他端部の連結部において車体側部材に相対回動可能かつ傾き可能に取り付けられる。
後輪側において、スタビライザバー12は、左右アーム部16,18の端部のボールジョイントまたはゴムブッシュを含む連結部48において、リヤアクスルハウジング50に相対回動可能かつ軸線に対して傾き可能に取り付けられる。リヤアクスルハウジング50は、図示しない駆動源の駆動トルクをデファレンシャル52を介して左右後輪54に伝達する車軸を保持する。
また、中間ロッド部14の中央より右寄りの部分において液圧シリンダ60を介して車体側部材に支持され、左寄りの部分において連結ロッド62を介して車体側部材に支持される。液圧シリンダ60は、液圧シリンダ30と同様に、ハウジング66、ハウジング66にシール部材67を介して液密かつ摺動可能に嵌合されたピストン68、ピストンロッド70等を含むものであり、ピストンロッド70の連結部71aにおいてスタビライザバー12に連携させられ、ハウジング66の連結部71bにおいて車体側部材に取り付けられる。液圧シリンダ60は、車両の上下方向に延びた姿勢で設けられる。
このように、本実施形態においては、前輪側および後輪側のそれぞれにおいて、スタビライザバー10,12の中間ロッド部14の車両の幅方向における同じ側に、それぞれ、液圧シリンダ30,60が上下方向に延びた姿勢で、ピストンロッド40,70がスタビライザバー10,12に連携させられた状態で設けられる。そして、これら液圧シリンダ30,60における互いに対応する液圧室同士が液通路72,74によって接続される。液圧シリンダ30,60および液通路72,74等によって液圧回路76が構成される。
液通路72によって、液圧シリンダ30、60の、それぞれのピストン38、68のピストンロッド40、70とは反対側の液圧室80、82が接続され、液通路74によって、液圧シリンダ30,60の、それぞれのピストン38,68のピストンロッド側の液圧室84,86が接続される。液圧室80および82、液圧室84および86は、それぞれ、互いに対応する室であり、同じ機能を有する室、すなわち、ローリング時に液圧が高くなる室または低くなる室である。これら液通路72,74は接続通路88によって接続される。以下、液圧室80,82が上側に位置し、液圧室84,86が下側に位置するために、液圧室80,82を上側液圧室と称し、液圧室84,86を下側液圧室と称する。
本実施形態においては、液通路72,74および接続通路88における作動液の流通状態を制御する流通制御ユニット90が設けられる。流通制御ユニット90は、制御部、複数のバルブA〜E、アキュムレータ等を含む。
液通路72,74には、バルブA,Bである電磁開閉弁100,102がそれぞれ設けられる。電磁開閉弁100,102は、ソレノイドに電流が供給されない場合に開状態にある常開弁である。
接続通路88には、バルブCである電磁開閉弁104が設けられる。電磁開閉弁104はソレノイドに電流が供給されない場合に閉状態にある常閉弁である。
液通路72,74には、また、アキュムレータ106,108がそれぞれ設けられる。アキュムレータ106,108は、液通路72,74の液圧が過大になった場合に、その作動液を吸収し、液通路72,74の液圧が過小になった場合に作動液を補うものである。本実施形態においては、アキュムレータ106,108が液通路72,74の電磁開閉弁100,102より後輪側の部分に設けられる。また、アキュムレータ106,108と液通路72,74との間に、バルブD、Eである電磁開閉弁110,112が設けられる。電磁開閉弁110,112は、ソレノイドに電流が供給されない場合に開状態にある常開弁である。
流通制御ユニット90には、液圧センサ114,116も含まれる。液圧センサ112は液通路72に設けられ、液圧センサ114は液通路74に設けられる。液圧センサ114,116は、電磁開閉弁100,102,104の図示する状態において、それぞれ、上側液圧室80,82、下側液圧室84,86の液圧を検出する。
流通制御ユニット90は、コンピュータを主体とする制御部130を含む。制御部は、図3に示すように、CPU132,ROM134,RAM136,入出力部138等を含む。入出力部138には、上述の液圧センサ114,116、ロール状態取得装置140等が接続される。ロール状態取得装置140は、車両の横方向の加速度を検出する横Gセンサ142を含む。ROM134には、図4のフローチャートで表されるバルブ制御プログラム、図5のマップで表されるテーブル等が記憶される。入出力部138には、駆動回路150を介してバルブA〜E(電磁開閉弁100,102,104,110,112)が接続されるとともに警報装置152等が接続される。警報装置152はランプを含むものであっても、音声出力装置を含むものであっても、ディスプレイを含むもの等であってもよい。ランプの点灯や点滅、音声出力、ディスプレイにおける表示等により、運転者に異常が知らされる。
車両が直進状態にある場合には、各電磁開閉弁100,102,104,110,112(バルブA〜E)は図示する原位置にある。
液圧センサ114による検出液圧、液圧センサ116による検出液圧は、ほぼ予め定められた値Pc,Pdである。ここで、液圧センサ114によって検出される上側液圧室80,82の液圧Pcは、液圧センサ116によって検出される下側液圧室84,86の液圧Pdより低い。ピストン38,68においては、上側液圧室80,82に対向する受圧面積の方が下側液圧室84,86に対向する受圧面積より大きいため、車両の直進状態(ピストン38,68に外力が加えられない状態)において、下側液圧室84,86の液圧の方が高くなるようにされるのである。液圧シリンダ30,60の各々においてピストン38,68に対する互いに逆向きの力が釣り合った状態にされるのであり、スタビライザバー10,12にねじれが生じることがなく、車両の姿勢がほぼ水平に保たれる。
車両が旋回状態にある場合には、電磁開閉弁100,102(バルブA,B)が開状態に、電磁開閉弁104,110,112(バルブC、D、E)が閉状態にされる。
車両の右旋回状態においては、遠心力によって車両は旋回外側(左側)が下がる状態に傾く。前輪側および後輪側において、液圧シリンダ30,60の上側の液圧室80,82の液圧が低くなり、下側の液圧室84,86の液圧が高くなる。これら上側の液圧室80,82同士が液通路72によって接続され、下側の液圧室84,86同士が液通路74によって接続されるが、これら液圧室80,82の液圧がほぼ同じで、液圧室84,86の液圧がほぼ同じであるため、これらの間に作動液の流通は殆ど生じない。スタビライザバー10,12において中間ロッド部14の傾きが抑制されて、ねじれが生じ、弾性力が発生させられる。その弾性力、すなわち、復元力によって左側の車輪と車体との間には両者を離間させる向きの力が、右側の車輪と車体との間には両者を接近させる向きの力がそれぞれ加えられ、車両の傾きが抑制される。
この場合の上側の液圧室80,82の液圧と下側の液圧室84,86の液圧との差は車両を傾かせる力、すなわち、液圧シリンダ30,60のピストン38,68に加えられる力が大きいほど大きくなる。例えば、遠心力が大きいほど液圧差が大きくなるのであり、遠心力と液圧差との関係は予め決まっている。また、上側の液圧室80,82の液圧と下側の液圧室84,86の液圧との間にもほぼ一定の関係が成り立つため、上側の液圧室80,82と下側の液圧室84,86とのいずれか一方の液圧と、遠心力(車両を傾かせる力)との間にもほぼ一定の関係が成立する。したがって、本実施形態においては、遠心力関連量としての横Gと液通路72,74のうちの高い方の液圧との間の関係がテーブル化されて記憶されている。
車両の左旋回状態においては、遠心力によって車両は旋回外側である右側が下がるように傾く。液圧シリンダ30,60において、下側の液圧室84,86の液圧が低くなり、上側の液圧室80,82の液圧が高くなる。液通路72,74における作動液の流通が抑制され、液圧シリンダ30,60においてピストン38,68の移動が抑制される。スタビライザバー10,12がねじられて弾性力が発生させられる。
本実施形態においては、車両が旋回状態である場合にローリング状態にあるとされ、液圧シリンダ30,60に液圧差が生じ得る状態とされるのである。
この場合において、液通路72,74の高い方の液圧が横Gに対して決まる液圧より低い場合には、液通路72,74あるいは液圧シリンダ30,60の少なくとも1つにおいて液漏れが生じたと推定することができる。そこで、液漏れが生じたと推定された場合に電磁開閉弁100,102の両方が閉状態に切り換えられる。その結果、液漏れが生じた一方の液圧シリンダあるいは液通路の液漏れが生じた部分から他方の液圧シリンダを遮断することができるのであり、液圧回路78が2つの部分に分けられる。他方の液圧シリンダにおいては、ピストンで仕切られた2つの液圧室の間に液圧差が生じ得る。前輪側と後輪側とのいずれか一方の側において、スタビライザバー10,12に弾性力が発生させられ、車両の傾きが抑制される。前輪側と後輪側との両方の液圧シリンダが作用不能となる場合に比較して、いずれか一方の液圧シリンダが作用可能となれば、車両のロール抑制効果の低下を抑制することができる。
また、例えば、車両が凹凸の大きい路面を走行している場合において、右前輪および左後輪が上方に左前輪および右後輪が下方に位置する状態においては、前輪側の液圧シリンダ30の下側液圧室84の液圧が低く、後輪側の液圧シリンダ60の下側液圧室86の液圧が高くなり、液圧シリンダ30の上側液圧室80の液圧が高く、液圧シリンダ60の上側液圧室82が低くなる。液通路72,74における作動液の流通が許容される。スタビライザバー10,12の自由な傾きが許容され、ねじれが生じることはない。
さらに、車両の直進状態においては、前述のように、上側液圧室の液圧、下側液圧室の液圧、すなわち、液通路72,74の液圧はそれぞれ予め決まった大きさにあるはずである。
それに対して、車両の旋回状態において液圧シリンダ30,60の液圧室80,84の間、液圧室82,86の間に大きな液圧差が生じた場合あるいはシール不良が生じた場合等には、ピストン38,68のシール部材37,67を経て作動液が、高圧側の液圧室から低圧側の液圧室に向かって漏れることがある。そのため、車両が直進状態に戻った場合に、液通路72,74の液圧がそれぞれ設定値Pc、Pdとは異なる大きさとなる。車両が直進状態にあるにもかかわらず、スタビライザバーに弾性力が発生させられ、それによって、車両が傾くことがある。そこで、本実施形態においては、車両が直進状態にある場合、すなわち、車両がほぼ水平な姿勢にあるはずであると推定された場合において、液通路74の液圧が液通路72の液圧より設定圧以上高い場合に、電磁開閉弁104が開状態に切り換えられて、液通路72,74の液圧が予め定められた設定圧Pc、Pdになるように制御される。
ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)において、旋回状態であるか否かが判定される。本実施形態においては、横Gセンサ142によって検出された検出値が設定値Gsより大きいか否かが判定される。設定値Gsは例えば、比較的小さい値とすることができる。設定値Gsは、旋回状態であるか直進状態であるかを検出し得る値であればよい。
実際の横Gが設定値Gsより大きい場合には、S2において電磁開閉弁104,110,112(バルブC〜E)が閉状態にされる。そして、S3において、液圧センサ114,116の液圧が検出されて、S4において、横Gが検出され、これら横Gと高い方の液圧との関係が図5のマップの正常な領域にあるかフェール領域にあるかが判定される。正常な領域にある場合には、S4における判定がNOとなり、S5において、電磁開閉弁100,102(バルブA,B)が開状態にされ、フェール領域にある場合には、S4における判定がYESとなって、S6において、電磁開閉弁100,102が閉状態にされ、電磁開閉弁110,112が開状態とされる。液圧シリンダ30,60が互いに独立とされ、前輪側と後輪側とのいずれか一方の側において、スタビライザバーがねじられて、液漏れが生じてもローリングが抑制される。
なお、フェール領域にある場合には、警報装置152が作動させられる。それによって、フェール状態であることを運転者に知らせることができる。
実際の横Gが設定値Gs以下であり、車両がほぼ直進状態にあると判定された場合には、S1における判定がNOとなり、S7において、電磁開閉弁100,102,110,112が開状態にされる。S8において、電磁開閉弁104(バルブC)が開状態にあるか否かが判定される。電磁開閉弁104が閉状態にある場合には判定がNOとなって、S9において、液通路74の液圧をP2,液通路72の液圧をP1とし、液圧シリンダ30におけるピストン38の液圧室80,84に対する受圧面積のちがい(液圧シリンダ60におけるピストン68の液圧室82、86に対する受圧面積のちがい)に基づく中立位置における液通路72,74の液圧差をΔP0とした場合に、絶対値|P2−P1−ΔP|が設定値αより大きいか否かが判定される。
設定値αより大きい場合には、判定がYESとなり、S10において、電磁開閉弁104が開状態に切り換えられる。液圧が高い方の液圧室から低い方の液圧室へ作動液が流れ、これらの液圧差が小さくなる。液通路72,74の液圧が予め定められた設定圧Pc,Pdになるまで、電磁開閉弁104は開状態に保たれる。液通路72,74の液圧が設定圧Pc,Pdに達すると、S11における判定がYESとなって、S12において、電磁開閉弁104が閉状態に切り換えられる。上述のΔP0は、設定圧の差(Pd−Pc)に応じた値である。
これによって、液通路72,74の液圧が車両の姿勢がほぼ水平になる大きさとされ、車両が傾くことが防止される。
なお、上記実施形態においては、横Gと液圧との関係に基づいて異常が検出されたが、液圧とヨーレイトとの関係、液圧と操舵角との関係、液圧と車両の姿勢との関係等に基づいて検出されるようにすることもできる。ここで、車両の姿勢は、各輪毎に設けられた得た車高センサによる検出値に基づいて取得することができる。また、車高センサによる検出値の微分値、2回微分値等に基づけば、姿勢の変化速度、変化加速度を取得することができ、これらと液圧との関係に基づいて異常を検出することもできるのである。
それに対応して、ロール状態取得装置140は、図6に示すように、車輪毎に設けられた車高センサ152を含むものとしたり、図7に示すように、ヨーレイトセンサ154を含むものとしたり、図8に示すように、ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサ156と車速センサ158とを含むものとしたりすることができる。その他、操舵角センサ156を含むものとしたり、ロールレイトセンサを含むものとしたり、ロール値(回転角度)を検出するセンサを含むものとしたりすることができ、これらの複数のセンサの2つ以上を含むものとすることもできる。ロールレイトを積分することによってロール値を求めることができ、ロールレイトを微分することによってロール加速度を求めることができる。
それに対応して、制御部130の記憶部には、ヨーレイトγと液圧との関係が記憶されるようにしたり、操舵角や前輪または後輪の舵角と液圧との関係、車両の姿勢と液圧との関係が記憶されるようにすることもできる。ステアリングホイールの操舵角θや舵角が大きく(旋回半径が小さく)車速が大きいほど遠心力が大きくなり、液圧が高くなる。走行中の車両の姿勢は、上述のように、操舵角、前輪舵角、ヨーレイト等に基づいて推定することができるが、停止中の姿勢は、各輪毎に設けられた車高センサ152による検出値に基づいて推定することができる。
それに対応して、旋回状態にあるか直進状態にあるかは、ヨーレイト、ステアリングホイールの操舵角、前輪または後輪の舵角等に基づいて判定されるようにすることもできる。
また、上記実施形態においては、2つの液通路72,74の液圧のうちの高い方の液圧と横Gとの関係に基づいて異常であるか否かが判定されるようにされていたが、2つの液通路72,74の液圧差と横Gとの関係に基づいて異常が検出されるようにすることができる。このことは、ヨーレイトとの関係、舵角との関係、ロール姿勢との関係等についても同様に適用することができる。
さらに、直進状態において、車高センサ152による検出値に基づいて、液通路72,74の液圧差が設定値以上であるとされた場合に(車両の姿勢が水平でないとされた場合に)、電磁開閉弁104が開状態に切り換えられるようにすることもできる。
また、液圧シリンダ30,60において、ピストンロッド40,70の直径がピストン38,68の直径に対して小さい場合には、車両の姿勢が水平である場合に、ピストン38,68の両側の液圧室の液圧がほぼ同じであると考えることができる。この場合には、車両の直進状態において、常に電磁開閉弁104が開状態に切り換えられるようにすることができる。直進状態にある間中開状態にすることも可能であり、その場合には、電磁開閉弁104を常開弁としてもよい。
さらに、液圧シリンダにおいて、ピストンの両側にピストンロッドが設けられるようにすることができる。例えば、図9において、液圧シリンダ180のハウジング182にピストン184が液密かつ摺動可能に嵌合されるのであるが、ピストン184の両側にそれぞれピストンロッド186,188が設けられている。ピストンロッド186はハウジング182から突出して、スタビライザバーに連結部190において連結させられ、ピストンロッド188は、ハウジング182の内部に設けられた摺動部192において液密に摺動可能とされており、ハウジング182から突出することはない。ハウジング182の連結部194において車体側部材に取り付けられる。
また、スタビライザバー10,12は前輪側と後輪側とで同じ状態で取り付けられるようにすることができる。さらに、液圧シリンダは、上下方向でなく、水平方向に延びた姿勢で設けられるようにすることもできる。いずれにしても、スタビライザバー10,12と、それが保持される車体側部材との相対位置関係によって決まるのであり、それぞれ対応する液圧室同士が液通路によって接続されるようにする。
さらに、上記実施形態においては、バルブA〜Eが供給電流のON/OFFにより開閉させられる電磁開閉弁であったが、バルブA〜Eの少なくとも1つを前後の差圧を供給電流に応じた大きさに制御可能な電磁制御弁とすることもできる。バルブA〜Eは、少なくとも作動液の流通許容状態と遮断状態とをとり得るものであればよいのである。
また、バルブA〜C(電磁開閉弁100,102,104)の少なくとも1つは、電磁弁でなくてもよい。例えば、電磁開閉弁100,102(バルブA,B)は、液通路72,74の間の差圧で作動させられるパイロット式のバルブとすることができる。差圧が設定値以上である場合に開状態とされるものであり、常閉弁であっても、常開弁であってもよい。
さらに、アキュムレータ106,108と電磁開閉弁110.112(バルブD,E)との間にも液圧センサを設けることもできる。
また、上記実施形態においては、5つの電磁開閉弁100,102,104,110,112が設けられていたが、これらすべてを設ける必要は必ずしもない。電磁開閉弁100,102が設けられれば(電磁開閉弁104が設けられなくても、液漏れ検出時のロール抑制効果の低下を抑制することができる。電磁開閉弁104が設けられれば電磁開閉弁100,102が設けられなくても、車両の直進状態における運転者の違和感を軽減させることができる。電磁開閉弁110,112も不可欠ではない。旋回状態において、液圧の変動に応じてアキュムレータ106,108と液通路72,74との間で作動液の多少の出入りが生じ、液圧シリンダ30,60においてピストン38,68が移動するが、その移動量は互いにほぼ等しく、かつ、比較的小さい場合には、スタビライザバー10,12において中間ロッド部14の傾きが抑制されて、ねじれが生じ、弾性力が発生させられる。
さらに、上記実施形態においては、アキュムレータ106,108が液通路72,74の電磁開閉弁100,102より後輪側の部分に設けられていたが、電磁開閉弁100,102より前輪側の部分にも設けられることができる。前輪側にもアキュムレータを設ければ、電磁開閉弁100,102の遮断状態において、前輪側の液圧シリンダ30のピストン38に過大な力が加わることを回避することができる。また、アキュムレータ106,108自体を設けることも不可欠ではない。
さらに、上記実施形態においては、ロール抑制装置が液圧により作動させられるものであったが、高圧縮性の気体(例えば、高圧のエア)により作動させられるものとすることもできる。
次に本発明の別の一実施形態である車両用サスペンションシステムについて説明する。本実施形態における車両用サスペンション装置は、スタビライザバーを備えていないものであり、ロール抑制装置を含む。なお、サスペンションシステムは多くの構成要素を含むものであるが、以下、本実施形態と関係がない部分についての説明は省略する。
図10,11において、右前輪200、左前輪202、について、サスペンションアームとしてのロアアーム204、206と図示しない車体側部材との間に液圧シリンダ210,212が設けられる。ロアアーム204,206は車体側部材に連結部214,216において揺動可能に保持される。
また、右後輪220,左後輪222について、アクスルハウジング224と車体側部材との間に、それそれ液圧シリンダ226,228が設けられる。
なお、符号229aはエアチャンバを示し、符号229bはトーションバーを示す。トーションバー229bは、一端部において前記連結部214,216に支持され、他端部において車体側部材に支持される。トーションバー229bのねじれにより弾性力が発生し、車両のローリングが抑制され得る。また、トーションバー229bを設けることは不可欠ではない。さらに、トーションバー229bを左右輪を連結する状態で設け、スタビライザバーとして機能させることもできる。また、前輪側だけでなく後輪側にも設けることができる。
これら液圧シリンダ210,212,226,228は、車両の上下方向に延びたものであり、ハウジング230と、そのハウジング230の内部を2つの液圧室232、234に仕切るピストン236とを含む。本実施形態においては、ハウジング230が車体側部材に連結され、ピストン236のピストンロッドがそれぞれ車輪側部材(前輪側においては、ロアアーム204,206に、後輪側においては、アクスルハウジング224)に連結される。また、液圧シリンダ210,212,226,228のそれぞれにおいて、ピストン236の上方に位置する液圧室が液圧室232であり、ピストン236の下方に位置する液圧室が液圧室234である。
本実施形態においては、2つの液圧室232,234の互いに対応するもの同士が液通路によって接続される。対応する液圧室同士は、車両がローリングした場合に液圧が高くなる方の液圧室同士または低くなる方の液圧室同士をいう。右前輪の液圧シリンダ210、右後輪の液圧シリンダ226の上方の液圧室232と左前輪の液圧シリンダ212,左後輪の液圧シリンダ228の下方の液圧室234が互いに対応する液圧室であり、これら液圧室は液通路250によって接続される。同様に、右前輪の液圧シリンダ210、右後輪の液圧シリンダ226の下方の液圧室234と左前輪の液圧シリンダ212,左後輪の液圧シリンダ228の上方の液圧室232とが互いに対応する液圧室であり、これら液圧室は液通路252によって接続される。これら液通路250,252は接続通路254によって接続される。
液通路250,252は、それぞれ、左右前輪の液圧シリンダ210,212の互いに対応する液圧室同士を接続する第1液通路260,262と、左右後輪の液圧シリンダ226,228の互いに対応する液圧室同士を接続する第2液通路264,266と、これら第1液通路260,262と第2液通路264,266とを接続する第3液通路270,272とを含む。
第3液通路270,272には、それぞれ、遮断弁274,276が設けられ、接続通路254には連通制御弁280が設けられる。本実施形態においては、液圧シリンダ210,212,226,228、液通路250,252,254、遮断弁274,276、連通制御弁280等により液圧回路281が構成される。
遮断弁274,276,連通制御弁280は電磁弁であり、図2におけるバルブA,B,Cに対応する。バルブA〜Cは、ソレノイドへの供給電流のON・OFFにより、開・閉させられる電磁開閉弁であり、遮断弁274,276の閉状態において、液圧回路281が、液圧シリンダ210,212を含む部分(前輪側の部分)と液圧シリンダ226,228を含む部分(後輪側の部分)とに分けられて、遮断される。連通制御弁280については、開状態において2つの液通路250,252が連通させられ、閉状態において2つの液通路250,252が遮断される。
液通路260,262にはそれぞれアキュムレータ290,292が設けられ、液通路264,266にはそれぞれキュムレータ291,293が設けられる。アキュムレータ290〜293と液通路250,252との間において、作動液の授受が行われ、液通路250,252の液圧が過大になったり、負圧になったりすることが回避される。
アキュムレータ290〜293と液通路250,252との間には、それぞれ、ダンパ弁294が設けられ、液通路250,252と液圧シリンダ210,212,226,228の液圧室234との接続部付近にも、それぞれ、ダンパ弁296が設けられる。ダンパ弁294,296は、絞り機能を有するものであり、作動液の流れに抗した減衰力が発生させられ、振動減衰効果が得られる。
なお、ダンパ弁294,296は絞りの機能を有するものであれば、どのような構造のものであってもよい。例えば、絞りの程度が固定のものであっても、絞りの程度が可変である電磁弁であってもよい。電磁弁である場合には、供給電流のON・OFFにより開閉させられる電磁開閉弁であっても、絞りの程度(流路面積)を供給電流に応じた大きさに制御可能な電磁制御弁であってもよい。また、液通路250,252と、アキュムレータ290,292,液圧室234との間の作動液の流れの、いずれか一方向の作動液の流れにおいて絞り機能を有し、他方の流れにおいて絞り機能を有しないものとしたり、両方向の流れにおいて絞り機能を有するものとしたりすることができる。さらに、ダンパ弁は、液圧室232に対応して設けることもできる。
本サスペンション装置は、上記実施形態における場合と同様に、流通制御ユニット300を含む。流通制御ユニット300は、CPU302,ROM304,RAM306,入出力部308等を含む制御部310、バルブA,B,C、駆動回路312、液圧センサ320,322,ロール状態取得装置324等を含む。液圧センサ320,322は、液通路250,252にそれぞれ設けられたものであり、ロール状態取得装置324は、上記実施形態における場合と同様に、横Gセンサ340を含むものである。また、制御部310には、連通制御弁280(バルブC),遮断弁274,276(バルブA,B)が駆動回路312を介して制御部310に接続されるとともに警報装置342が接続される。
ROM304には、上記実施形態における図5と同様のマップで表されるテーブル、図13のフローチャートで表されるバルブ制御プログラム等が記憶される。
遮断弁274,276が連通状態にあり、連通制御弁280が遮断状態にある場合において、4輪のうちの1輪が車体に対して上下方向に相対移動した場合には、その車輪の液圧シリンダの2つの液圧室の各々と、それの近傍に位置するアキュムレータ(その車輪が前輪である場合には、アキュムレータ290,292、後輪である場合には、アキュムレータ291,293)との間で作動液の授受が行われる。それによって、その車輪の上下方向の相対移動が許容される。他の車輪への影響は非常に小さい。この場合には、ダンパ弁294,296等により振動減衰効果が得られる。連通制御弁280が連通状態にある場合には、その1つの液圧シリンダにおける2つの液圧室が、液通路250,252,接続通路254を介して連通させられ、これらの間で作動液の授受が行われる。この場合においても他の車輪への影響は非常に小さい。
左右前輪200,202または左右後輪220,222が同様にバウンシングした場合には、液圧シリンダ210,212の間において、または、液圧シリンダ226,228の間において作動液の授受が行われる。そのため、他の車輪の動きに影響を与えることなく、バウンシングが許容される。この場合には、ダンパ弁296により振動減衰効果が得られる。
車両がロール状態にある場合には、連通制御弁280は遮断状態にある。例えば、左旋回状態においては、右側の2つの液圧シリンダ210,226において上方の液圧室232の液圧が高くなり、左側の2つの液圧室212,228において下方の液圧室234の液圧が高くなる。これら液圧室は、液通路250によって互いに接続されている。同様に、液通路252によって互いに接続された液圧室は液圧が低い方の液圧室である。換言すれば、液圧が高い方の液圧室同士が液通路250によって接続され、液圧が低い方の液圧室同士が液通路252によって接続される一方、接続通路254が遮断状態にある。そのため、液圧が高い方の液通路250から低い方の液通路252へ作動液が流れることがない。
液通路250においてアキュムレータ290,291との間で作動液の授受が僅かに行われ、液通路252においてアキュムレータ292,293との間で作動液の授受が僅かに行われるのみである。その結果、右側の車輪200,220については、車体との間の距離を大きくする力が加えられ、左側の車輪202,222については車体との間の距離を小さくする力が加えられ、それによって、車両のローリングが抑制される。
それに対して、連通制御弁280(バルブC)が遮断状態にあり、かつ、車両がローリング状態にあるにも係わらず、液通路250,252のうちの液圧が高い方の液通路の液圧が設定値以下である場合等には、上記実施形態における場合と同様に液圧回路281に異常が生じたと判定される。
図13のフローチャートで表されるプログラムの実行に従って、旋回中である場合に異常判定が行われ、バルブA〜Cの制御が行われる。本実施形態におけるバルブの制御と上記実施形態におけるバルブの制御とでは、本実施形態においては、電磁開閉弁110,112に対応する弁の制御が行われない点について異なるだけで、その他については同様であるため、説明を省略する。
液圧回路281において液漏れが生じたとされた場合には、S106において、2つの遮断弁274,276(バルブA,B)がともに遮断状態にされる。それによって、液圧シリンダ210,212が液圧シリンダ226,228から遮断される。液圧回路281が前輪側の部分と後輪側の部分とに分けられるのであり、いずれか一方の側の部分において液漏れが生じても他方の側の部分が作動し、それによって車両のローリングが抑制される。液圧回路全体が作動不能となる場合より、ローリング抑制効果の低下を低減することができるのである。
なお、液圧回路の構造は、上記実施形態における場合に限らない。例えば、図14に示す回路とすることができる。本実施形態においては、右前輪、右後輪の液圧シリンダ210,226の上方の液圧室232,左前輪、左後輪の液圧シリンダ212,228の下方の液圧室234が液通路350によって接続され、右側の液圧シリンダ210,226の下方の液圧室234,左側の液圧シリンダ212,228の上方の液圧室232が液通路352によって接続され、これら液通路350,352が接続通路354によって接続される。接続通路354には連通制御弁356が設けられる。
また、液通路350,352は、右側の2つの液圧シリンダ210,226の互いに対応する液圧室同士を接続する第1液通路360,362と、左側の2つの液圧シリンダ212,228の互いに対応する液圧室同士を接続する第2液通路364,366、これら第1液通路360,362と第2液通路364,366とを接続する第3液通路368,370とを含む。また、液通路350,352には、それぞれ液圧センサ372,374が設けられるとともに、アキュムレータ376,378が設けられる。
本実施形態においても、同様に、液圧センサ372,374の少なくとも一方による検出液圧と車両のロール状態との関係に基づいて、液圧回路380の異常が検出される。連通制御弁356の遮断状態において、車両のロール状態の程度に対して液通路350,352の液圧の高い方またはこれらの液圧差が小さい場合には、液圧回路380に液漏れが生じたとすることができるのである。
その他、本発明は、前記(発明の開示)の項に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ハウジングの内部を2つの流体圧室に仕切るピストンを有する流体圧シリンダであって、前輪側と後輪側との各々において車輪側部材と車体側部材との間に少なくとも1つずつ設けられ、左側輪と右側輪との少なくとも一方の車体に対する上下方向の相対移動によって、前記2つの流体圧室の間に流体圧差を発生させるものと、(b)前記流体圧シリンダ各々の前記2つの流体圧室の互いに対応する流体圧室同士を接続する2系統の流体通路とを含む流体圧回路と、
前記2系統の流体通路の少なくとも一方の系統の流体通路の流体圧に基づいて、前記流体圧回路の異常を検出する異常検出装置と
を含むことを特徴とする車両用サスペンションシステム。
【請求項2】
前記異常検出装置が、(a)前記車両のロール状態に関連するロール状態関連量を検出するロール状態関連量検出装置と、(b)前記2系統の流体通路の少なくとも一方の流体圧を検出する流体圧検出装置と、(c)その流体圧検出装置によって検出された流体圧と、前記ロール状態関連量検出装置によって検出されたロール状態関連量との関係に基づいて、前記流体圧回路が異常であるかどうかを判定する異常判定部とを含む請求項1に記載の車両用サスペンションシステム。
【請求項3】
前記ロール状態関連量検出装置が、前記車両に加わる遠心力に関連する遠心力関連量を取得する遠心力関連量取得装置を含む請求項2に記載の車両用サスペンションシステム。
【請求項4】
前記ロール状態関連量検出装置が、前記車両の横加速度を検出する横加速度検出装置を含む請求項2または3に記載の車両用サスペンションシステム。
【請求項5】
前記異常検出装置が、(a)前記車両の走行状態を検出する走行状態検出装置と、(b)前記2系統の流体通路の少なくとも一方の流体圧を検出する流体圧検出装置と、(c)その流体圧検出装置によって検出された流体圧と、前記走行状態検出装置によって検出された走行状態との関係に基づいて、前記流体圧回路が異常であるかどうかを判定する異常判定部とを含む請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
【請求項6】
前記異常検出装置が、(a)前記2系統の流体通路の少なくとも一方の流体圧を検出する流体圧検出装置と、(b)その流体圧検出装置によって検出された流体圧に基づいて前記流体圧回路の異常を検出する異常判定部とを含む請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
【請求項7】
前記異常検出装置によって、前記流体圧回路の異常が検出された場合には、その流体圧回路を2つの部分に分割する流体圧回路分割装置を含む請求項1ないし6のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
【請求項8】
前記車輪側部材が前輪側、後輪側にそれぞれ設けられたスタビライザバーであり、前記流体圧シリンダが前輪側、後輪側のそれぞれにおいて、スタビライザバーと車体側部材との間に設けられたものであり、前記2系統の流体通路が前輪側、後輪側の流体圧シリンダ各々の前記2つの流体圧室の互いに対応する流体圧室同士をそれぞれ接続する2つの流体通路である請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
【請求項9】
前記2つの流体通路を遮断する状態と連通させる状態とに切り換え可能な遮断装置を含む請求項8に記載の車両用サスペンションシステム。
【請求項10】
前記遮断装置を、前記異常検出装置によって異常が検出された場合に、遮断状態とする遮断装置制御装置を含む請求項9に記載の車両用サスペンションシステム。
【請求項11】
前記2つの流体通路に、それぞれアキュムレータを設けるとともに、これら流体通路とアキュムレータとの間にそれぞれ制御弁を設けた請求項8ないし10のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
【請求項12】
前記流体圧シリンダが、前輪側、後輪側の各々において、左側輪、右側輪のそれぞれについて、車輪側部材と車体側部材との間に設けられたものであり、前記2系統の流体通路が、これら4つの流体圧シリンダの互いに対応する流体圧室同士をそれぞれ接続するものである請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
【請求項13】
前記異常検出装置によって、前記流体圧回路の異常が検出された場合に、右側に位置する前輪と後輪とのいずれか一方と左側に位置する前輪と後輪とのいずれか一方とについてそれぞれ設けられた2つの流体圧シリンダを含む第1流体圧回路と、残りの2つの流体圧シリンダを含む第2流体圧回路とを遮断する異常時遮断装置を含む請求項12に記載の車両用サスペンションシステム。
【請求項14】
前記1系統の流体通路が、右側に位置する前輪と後輪とのいずれか一方と左側に位置する前輪と後輪とのいずれか一方とについてそれぞれ設けられた流体圧シリンダの互いに対応する流体圧室間を接続する第1流体通路と、残りの2つの流体圧シリンダの互いに対応する流圧室間を接続する第2流体通路と、これら第1流体通路と第2流体通路とを接続する第3流体通路とを含み、前記異常時遮断装置が、前記第3流体通路を遮断する流体通路遮断装置を含む請求項13に記載の車両用サスペンションシステム。
【請求項15】
前記流体圧回路が、(a)前記2系統の流体通路を互いに接続する接続通路と、(b)その接続通路に設けられた連通制御弁とを含み、当該車両用サスペンションシステムが、前記連通制御弁を車両の走行状態に基づいて制御する連通制御弁制御装置を含む請求項1ないし14のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
【請求項16】
前記連通制御弁制御装置が、車両が直進状態にある場合に、前記連通制御弁を制御することによって、各流体圧室の流体圧を、ロール抑制効果が生じない大きさにする流体圧制御部を含む請求項15に記載の車両用サスペンションシステム。
【請求項17】
(a)ハウジングの内部を2つの流体圧室に仕切るピストンを有する流体圧シリンダであって、前輪側と後輪側との各々において車輪側部材と車体側部材との間に少なくとも1つ設けられ、左側輪と右側輪との少なくとも一方の車体に対する上下方向の相対移動によって、前記2つの流体圧室の間に流体圧差を発生させるものと、(b)前記流体圧シリンダ各々の前記2つの流体圧室の互いに対応する流体圧室同士を接続する2系統の流体通路とを含む流体圧回路と、
前記流体圧回路を、2つの部分に分割可能な分割装置と、
その分割装置を、前記2系統の流体通路の少なくとも一方の流体圧に基づいて制御する分割装置制御装置と
を含むことを特徴とする車両用サスペンションシステム。
【請求項18】
前記分割装置制御装置が、(a)前記2つの流体通路の少なくとも一方の流体圧を検出する流体圧検出装置と、(b)その流体圧検出装置によって検出された流体圧に基づいて前記分割装置を制御する分割装置制御部とを含む請求項17に記載の車両用サスペンションシステム。
【請求項19】
前記分割装置制御装置が、(c)前記車両のロール状態に関連するロール状態関連量を検出するロール状態関連量検出装置と、(d)そのロール状態関連量検出装置によって検出されたロール状態関連量と、前記2系統の流体通路の少なくとも一方の系統の流体通路の流体圧との間の関係に基づいて前記分割装置を制御するロール状態対応制御部とを含む請求項17または18に記載の車両用サスペンションシステム。
【請求項20】
前記流体圧シリンダにおけるピストンの両側にそれぞれピストンロッドが設けられ、そのピストンロッドの一方に前記車輪側部材が係合させられた請求項1ないし19のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。

【国際公開番号】WO2004/080735
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−569342(P2004−569342)
【国際出願番号】PCT/JP2003/002912
【国際出願日】平成15年3月12日(2003.3.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】