説明

車両用シート

【課題】着座者の腰部に局部的な刺激を付与する装置の破損を懸念することなく、着座者の腰部を支持する機能を低下させることがない車両用シートを提供することである。
【解決手段】車両用シート1のシートバック12には、保持体40と、バイブレーション装置50と、エアマッサージ装置60と、ランバーサポート装置70とが設けられている。ランバーサポート装置70は、シートバック12の受け面の突出量を変化させるための進退動作が可能なロッド72を備えている。このロッド72は、自身の進出動作に伴って保持体40を押し出すと共にエアマッサージ装置60を配置しているパッド部材26を押し出すことでシートバック12の受け面を突出させることができるように、保持体40とバイブレーション装置50との間に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、詳しくは、着座者の腰部に局部的な刺激を付与するバイブレーション装置と、着座者の背中部を局部的に押圧するエアマッサージ装置とを備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着座者をリフレッシュさせるために各種の装置を備えた車両用シートが既に知られている。ここで、下記特許文献1には、着座者の腰部に局部的な刺激を付与するバイブレーション装置と、着座者の背中部を局部的に押圧するエアマッサージ装置とを備えた車両用シートが開示されている。これらの装置を作動せることにより、着座者をリラックスさせることができるため、着座者の長時間の着座による疲労の度合いを減少させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−198070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1では、例えば、着座者の腰部を支持するロッドをバックフレームに対して回動させるタイプのランバーサポート装置をバイブレーション装置の後ろに設けた場合、ロッドがバイブレーション装置を押し出す格好となるため、この押し出しによってバイブレーション装置が破損してしまう恐れがあった。このことを防止するため、バイブレーション装置を避けた位置にランバーサポート装置を設けることも考えられるが、その場合、着座者の腰部を支持する機能が低下してしまう恐れがあった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、着座者の腰部に局部的な刺激を付与する装置の破損を懸念することなく、着座者の腰部を支持する機能を低下させることがない車両用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、パッド部材を介した着座者の背凭れ荷重を受け止めることができるようにバックフレームに組み付けられている保持体と、着座者の腰部に局部的な刺激を付与するように、保持体の後側に組み付けられているバイブレーション装置と、着座者の背中部を局部的に押圧するように、パッド部材の厚み方向に形成された貫通孔に配置されているエアマッサージ装置と、着座者の腰部に対するシートバックの受け面の突出量を変化させることができるランバーサポート装置とを備えた車両用シートであって、ランバーサポート装置は、シートバックの受け面の突出量を変化させるための進退動作が可能なロッドを備えており、ロッドは、自身の進出動作に伴って保持体を押し出すと共にエアマッサージ装置を配置しているパッド部材を押し出すことでシートバックの受け面を突出させることができるように、保持体とバイブレーション装置との間に配置されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、バイブレーション装置を作動させて着座者の腰部に局部的な刺激を付与することができると共に、ランバーサポート装置を作動させて(ランバーサポート装置のロッドを回動させて)着座者の腰部を支持することもできる。このとき、ロッドを回動させても、ロッドがバイブレーション装置を押し出すことはないため(ロッドの後方にバイブレーション装置が配置されているため)、バイブレーション装置が破損してしまう恐れはない。したがって、バイブレーション装置の破損を懸念することなく、ランバーサポート装置の機能を低下させることなく使用することができる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シートであって、保持体は、ワイヤ部材と、このワイヤ部材に引っ掛けられた板状部材とから構成されており、ランバーサポート装置は、ロッドが板状部材の背面を押し当て可能に配置されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、ロッドは着座者の腰部に対して板状部材を介した面接触で押圧する格好となっている。したがって、ロッドが着座者の腰部を強く押圧することを防止することができる。また、着座者からの背凭れ荷重をエアマッサージ装置が受けても、その受けた荷重をワイヤ部材によって受け止めることができる。したがって、弾性的に受け止めることができるため、着座者の座り心地を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施例に係る車両用シートにおけるシートバックの骨格の分解斜視図である。
【図2】図2は、図1を組み付け状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、図2のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を図1〜3を用いて説明する。なお、図1〜2では、車両用シート1の内部構造を分かり易く示すために、これらのクッション構造(パッド部材26)および表皮構造を省略し、内部のフレーム構造のみを示している。これと同様に、図3では、表皮構造を省略し、内部のクッション構造およびフレーム構造を示している。また、以下の説明にあたって、上、下、前、後、左、右とは、上述した各図に記載した、上、下、前、後、左、右の方向、すなわち、車両用シート1を基準にしたときの上、下、前、後、左、右の方向を示している。
【0010】
まず、図1〜3を参照して、本発明の実施例に係る車両用シート1の構成を説明する。この車両用シート1は、例えば、自動車等の運転席であり、シートクッション10、シートバック12およびヘッドレスト(図示しない)から構成されている。
【0011】
これらシートクッション10、シートバック12およびヘッドレストのうち、シートバック12の内部構造について詳述すると、シートバック12の内部構造は、シートバック12の輪郭を形成する略コ字状のバックフレーム20と、このバックフレーム20の両自由端(図1において、両下端)を橋渡す格好のロアフレーム22と、これと平行して、バックフレーム20の高さ方向における略中央を橋渡す格好のミドルフレーム24とから構成されている。なお、シートクッション10およびヘッドレストの内部構造は、公知の構造であるため、その詳細な説明は省略することとする。
【0012】
バックフレーム20には、その左右を橋渡す格好の支持ワイヤ28がミドルフレーム24の上方位置に組み付けられている。このバックフレーム20の下側の左右にも支持ワイヤ30、30がそれぞれ組み付けられている。これら支持ワイヤ28、30により、パッド部材26を介した着座者の背凭れ荷重を弾性的に受け止めることができる。また、このバックフレーム20の左右には、後述するランバーサポート装置70を組み付けるための取付ブラケット32、32が固着されている。
【0013】
このシートバック12には、保持体40と、バイブレーション装置50と、エアマッサージ装置60と、ランバーサポート装置70とが設けられている。以下に、これら40、50、60、70を個別に説明する。
【0014】
はじめに、保持体40を説明する。保持体40は、左右に対を成すように形成された略S字状の屈曲ばね42、42と、この両屈曲ばね42の一端(図1において、下端)にそれぞれ引っ掛けられた保持プレート44とから構成されている。この保持プレート44の背面には、略矩形状の保持ワイヤ44aが引っ掛けられている。
【0015】
この両屈曲ばね42の他端(図1において、上端)は、ミドルフレーム24に固着されている左右のフック24a、24aにそれぞれ引っ掛けられている。この保持体40によって、着座者の背凭れ荷重(特に、着座者の腰部からの背凭れ荷重)を受け止めることができる。保持体40は、このように構成されている。
【0016】
次に、バイブレーション装置50を説明する。バイブレーション装置50は、主として、振動を発生させる公知のバイブレーションユニット52から構成されている。このバイブレーションユニット52は、ケーブル54を介して制御装置(図示しない)と電気的に接続されている。そして、このバイブレーションユニット52は、保持体40の保持プレート44の背面にビス56を介して組み付けられている。
【0017】
このように組み付けたバイブレーションユニット52を作動させることにより、着座者の腰部に局部的な刺激を付与することができる。なお、このバイブレーションユニット52は、着座者からのスイッチ(図示しない)操作によって制御装置を介して作動するように電気的に構成されている。バイブレーション装置50は、このように構成されている。
【0018】
次に、エアマッサージ装置60を説明する。エアマッサージ装置60は、主として、伸縮可能な公知のエア袋62と、このエア袋62を取り付ける公知のベースプレート64とから構成されている。このベースプレート64は、エア袋62がパッド部材26の厚み方向を貫通するように形成されている貫通孔26aに配置されるように、フック66を介してバックフレーム20側に組み付けられている。
【0019】
そして、このエア袋62にホース68を介して接続されているエア供給吸引装置(図示しない)から供給されるエアによってエア袋62を伸長させると、この伸長圧力によって着座者の背中を押圧することができる。これとは逆に、エア袋62内のエアを吸引させることによってエア袋62を収縮させると、着座者の背中への押圧を解除することができる。この供給吸引を繰り返すことで、上述した押圧状態と押圧を解除した状態とを繰り返すことができ、着座者の背中をマッサージすることができる。なお、この供給および吸引は、着座者からのスイッチ(図示しない)操作によって制御装置を介して作動するように電気的に構成されている。
【0020】
この実施例では、エアマッサージ装置60は、1組のエア袋62a、62bを取り付けた第1のベースプレート64aと、縦に3組のエア袋62c、62d、62e、62f、62g、62hを取り付けた第2のベースプレート64bとから構成されている。この第1のベースプレート64aは、左右のフック66a、66bを介して、支持ワイヤ28に引っ掛けられている。これと同様に、第2のベースプレート64bも、四隅のフック66c、66d、66e、66fを介して、左右の支持ワイヤ30、30と保持ワイヤ44aに引っ掛けられている。エアマッサージ装置60は、このように構成されている。
【0021】
最後に、ランバーサポート装置70を説明する。ランバーサポート装置70は、主として、略クランク状に形成された押圧部72aを有する公知のロッド72と、このロッド72の一端(図1において、左端)が機械的に連結された公知の駆動ユニット74とから構成されている。この駆動ユニット74には、駆動源であるモータ(図示しない)と、このモータの駆動力をロッド72へ伝達する減速機(図示しない)とが備えられている。このモータは、ケーブル(図示しない)を介して制御装置と電気的に接続されている。
【0022】
このランバーサポート装置70は、そのロッド72の他端(図1において、右端)が右側の取付ブラケット32に差し込まれるように、その駆動ユニット74が左側の取付ブラケット32にボルト76、76を介して固着されるように、バックフレーム20側に組み付けられている。これにより、ロッド72をバックフレーム20に対して回動自在に支持することができる。このとき、このランバーサポート装置70は、ロッド72が保持体40の保持プレート44を前方へ押し出し可能となるように、保持体40とバイブレーション装置50との間に配置された状態で、バックフレーム20側に組み付けられている。
【0023】
そして、モータを駆動させてロッド72を回動させると(図3において、ロッド72が実線に示される状態から想像線に示される状態になると)、その押圧部72aからの回動圧力によって着座者の腰部(特に、骨盤部分)を押圧することができる。すなわち、モータを駆動させてロッド72を回動させると、その押圧部72aが保持体40の保持プレート44を押し出すと共にエアマッサージ装置60を配置しているパッド部材26を押し出すことでシートバック12の受け面の突出させることができる。
【0024】
これとは逆に、ロッド72の回動が戻されると(図3において、ロッド72が想像線に示される状態から実線に示される状態になると)、着座者の腰部への押圧を解除することができる。すなわち、ロッド72の回動が戻されると、シートバック12の受け面の突出を解除することができる。このようにランバーサポート装置70を作動させることで、着座者の腰部を支持する(腰部への負担と疲労を減少させる)ことができる。
【0025】
これらの記載が、特許請求の範囲に記載の「ランバーサポート装置は、シートバックの受け面の突出量を変化させるための進退動作が可能なロッドを備えており」に相当する。なお、この回動は、着座者からのスイッチ(図示しない)操作によって制御装置を介して作動するように電気的に構成されている。ランバーサポート装置70は、このように構成されている。
【0026】
本発明の実施例に係る車両用シート1は、上述したように構成されている。この構成によれば、バイブレーション装置50を作動させて着座者の腰部に局部的な刺激を付与することができると共に、ランバーサポート装置70を作動させて(ランバーサポート装置70のロッド72を回動させて)着座者の腰部を支持することもできる。このとき、ロッド72を回動させても、ロッド72がバイブレーション装置50を押し出すことはないため(ロッド72の後方にバイブレーション装置50が配置されているため)、バイブレーション装置50が破損してしまう恐れはない。したがって、バイブレーション装置50の破損を懸念することなく、ランバーサポート装置の機能を低下させることなく使用することができる。
【0027】
また、この構成によれば、ランバーサポート装置70を作動させると、ロッド72は保持体40の保持プレート44の背面を押圧する格好となっている。そのため、ロッド72は着座者の腰部に対して保持プレート44を介した面接触で押圧する格好となっている。したがって、ロッド72が着座者の腰部を強く押圧することを防止することができる。また、着座者からの背凭れ荷重をエアマッサージ装置60が受けても、その受けた荷重を両屈曲ばね42によって受け止めることができる。したがって、弾性的に受け止めることができるため、着座者の座り心地を良くすることができる。
【0028】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、車両用シートの例として、自動車等の運転席を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、助手席、後部座席等であっても構わない。
【符号の説明】
【0029】
1 車両用シート
12 シートバック
20 バックフレーム
26 パッド部材
26a 貫通孔
40 保持体
42 屈曲ばね(ワイヤ部材)
44 保持プレート(板状プレート)
50 バイブレーション装置
60 エアマッサージ装置
70 ランバーサポート装置
72 ロッド



【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッド部材を介した着座者の背凭れ荷重を受け止めることができるようにバックフレームに組み付けられている保持体と、
着座者の腰部に局部的な刺激を付与するように、保持体の後側に組み付けられているバイブレーション装置と、
着座者の背中部を局部的に押圧するように、パッド部材の厚み方向に形成された貫通孔に配置されているエアマッサージ装置と、
着座者の腰部に対するシートバックの受け面の突出量を変化させることができるランバーサポート装置と、を備えた車両用シートであって、
ランバーサポート装置は、シートバックの受け面の突出量を変化させるための進退動作が可能なロッドを備えており、
ロッドは、自身の進出動作に伴って保持体を押し出すと共にエアマッサージ装置を配置しているパッド部材を押し出すことでシートバックの受け面を突出させることができるように、保持体とバイブレーション装置との間に配置されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
保持体は、ワイヤ部材と、このワイヤ部材に引っ掛けられた板状部材とから構成されており、
ランバーサポート装置は、ロッドが板状部材の背面を押し当て可能に配置されていることを特徴とする車両用シート。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−67258(P2011−67258A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218925(P2009−218925)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】