説明

車両用ナビゲーション装置

【課題】車両用ナビゲーション装置の筐体内部温度の上昇を適切に抑制すること。
【解決手段】車両用ナビゲーション装置の筐体20に冷却ファン13を設け、車両が現在又は将来走行する道路が規定高度以上の高度を持つ高地道路である場合には、筐体20の内部温度に対する冷却ファン13の回転数の傾きがより急峻となるように設定して、この設定した傾きに従って、冷却ファン13の回転数を制御する。これにより、筐体20の内部温度の上昇に対して、高地及び平地それぞれの冷却ファン13の排熱性能に見合った回転数にて、筐体内部の空気を外部に排気できる。従って、車両用ナビゲーション装置を搭載した車両道路が高地を走行した場合であっても、筐体内部の温度上昇を適切に抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路地図上の現在位置を測定して報知するための演算処理を行なう演算処理装置を備えた車両用ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ナビゲーション装置は、一般的に、GPSなどの位置情報検出手段や、地図データの記憶装置を備えている。そして、位置情報検出手段によって検出された車両の現在位置に基づいて、その車両周辺の地図データを記憶装置から読み出し、車両の現在位置を示す自車両マークとともに、周辺地図をディスプレイに表示する。この地図データの記憶装置の記憶媒体として、ハードディスクが用いられることが多くなってきた。しかし、車両用ナビゲーション装置において、ハードディスクを記憶媒体として用いる場合には、ハードディスクの破損に注意する必要がある。
【0003】
特許文献1に記載されているように、ハードディスクは、ディスクの回転により発生する空気の流れによる風圧で、磁気ヘッドをディスクから浮上させる構造となっている。このため、気圧が低くなると風圧が下がり、磁気ヘッドとディスクとの間隔が維持できなくなってしまう。この場合、読み書きエラーが発生したり、最悪の場合、ディスクが損傷したりするおそれが生じる。
【0004】
そのため、特許文献1に記載のナビゲーション装置では、ハードディスクの使用標高や使用気圧を、GPS信号から算出した標高、気圧センサからの検出気圧などによって判定する。そして、車両が所定の標高(例えば3000m)を超える道路を走行する場合には、ハードディスクの地図データをデータメモリに保存して参照可能とすることにより、ハードディスクにはアクセスしないようにしている。
【特許文献1】特開2007−26620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、ハードディスクを記憶媒体として用いた車両用ナビゲーション装置では、車両が高地を走行する場合、気圧の低下から、ハードディスクの損傷に注意することが必要となる。
【0006】
しかしながら、高地では、記憶媒体の種類によらず、車両用ナビゲーション装置としてその他にも注意すべき点がある。車両用ナビゲーション装置において使用される演算処理装置は、近年、処理能力が飛躍的に向上し、種々の演算処理を高速に実行することが可能である。その反面、演算処理装置の動作時の発熱量も増加する傾向にある。さらに、車両用ナビゲーション装置の筐体内には、演算処理装置以外にも発熱源となる機器(モータやハードディスクなど)が収容されることも多い。
【0007】
このような車両用ナビゲーション装置を搭載した車両が高地を走行した場合、高地では空気密度が低くなるため、空気を介しての熱伝導が行われにくくなり、排熱性能が低下する。その結果、筐体内部の温度が上昇して、筐体に収容されている機器の劣化を早めてしまう可能性が生じる。
【0008】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたもので、車両用ナビゲーション装置の筐体内部温度の上昇を適切に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の車両用ナビゲーション装置は、
道路地図上の現在位置を測定して報知するための演算処理を行なう演算処理装置を備えた車両用ナビゲーション装置において、
演算処理装置を内部に収納する筐体と、
筐体に取り付けられ、筐体内の空気を外部に排気する冷却ファンと、
筐体内部の温度を検出する温度検出手段と、
車両が現在又は将来走行する道路が、所定の規定高度以上の高度に位置するか否かを判定する判定手段と、
判定手段によって車両が現在又は将来走行する道路が、所定の規定高度以上の高度に位置すると判定された場合、所定の規定高度よりも低い高度に位置すると判定された場合に比較して、筐体内部の同一温度に対する冷却ファンの回転数が高くなるように、冷却ファンの回転数を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
筐体内の空気を外部に排気する冷却ファンを設け、筐体内部の温度の上昇に応じて冷却ファンの回転数を高めることにより、筐体内部の温度上昇をある程度抑えることはできる。
【0011】
しかし、高地では、平地に比較して空気密度が低下する。このため、高地では、冷却ファンによる排熱性能が低下し、平地と同様の冷却ファン回転数制御を行っただけでは、筐体内部の温度上昇を効果的に抑制することは困難である。
【0012】
そこで、請求項1に記載の車両用ナビゲーション装置では、車両が現在又は将来走行する道路が、所定の規定高度以上の高度に位置すると判定された場合、所定の規定高度よりも低い高度に位置すると判定された場合に比較して、筐体内部の同一温度に対する冷却ファンの回転数が高くなるように、冷却ファンの回転数を制御するようにした。これにより、筐体内部の温度上昇に対して、高地及び平地それぞれの冷却ファンの排熱性能に見合った回転数にて、筐体内部の空気を外部に排気できる。従って、車両用ナビゲーション装置を搭載した車両が高地を走行した場合であっても、筐体内部の温度上昇を適切に抑制することができる。
【0013】
請求項2に記載したように、制御手段は、筐体内部温度と冷却ファン回転数との予め定められた関係に従って、冷却ファンの回転数を制御するものであって、その筐体内部温度と冷却ファン回転数との関係は、少なくとも高地用と平地用の2種類の関係が用意され、高地用の関係は、平地用の関係よりも同一の筐体内部温度に対して冷却ファン回転数が高くなるように設定されており、判定手段の判定結果に応じて、高地用の関係と平地用の関係とのいずれかを選択して、冷却ファンの回転数制御に用いることが好ましい。このようにすれば、車両が高地を走行する場合と平地を走行する場合とで、簡単に冷却ファンの回転数制御の特性を切り替えることができる。
【0014】
請求項3に記載したように、車両用ナビゲーション装置は、道路の高度情報を含む道路地図データを記憶した記憶装置を備え、判定手段は、車両が走行する道路の高度情報から、車両が現在走行する道路の高度が規定高度以上か判定することができる。これにより、車両が走行する道路の正確な高度を取得して、それが規定高度以上か判定することができる。また、請求項4に記載したように、気圧を計測する気圧計測手段を設け、判定手段は、気圧計測手段によって計測された気圧から、車両が現在走行する道路の高度が前記規定高度以上か判定するようにしても良い。気圧と高度とは相関関係を有するためである。
【0015】
請求項5に記載したように、車両用ナビゲーション装置は、道路の高度情報を含む道路地図データを記憶した記憶装置を備え、かつ目的地が設定されたときに、当該目的地に到達するための案内経路を探索し、その案内経路に従って経路案内を行うものであって、判定手段は、案内経路が設定されているとき、道路の高度情報から、当該案内経路に含まれる道路の高度が規定高度以上であるとみなされるとき、車両が将来走行する道路の高度は、規定高度以上と判定することが好ましい。車両用ナビゲーション装置は、通常、経路案内機能を備えている。この経路案内機能による案内対象となっている経路は、車両が将来走行することが予定されている道路である。そのため、案内経路が設定されている場合には、その案内経路に基づいて、車両が将来走行する道路の高度が規定高度以上か判定することができる。
【0016】
請求項6に記載したように、判定手段は、案内経路において、所定の規定時間以内に、車両の走行予定道路の高度が規定高度以上となるときに、車両が将来走行する道路は、規定高度以上であると判定することが好ましい。案内経路が規定高度以上の高度を持つ道路を含んでいても、その道路は現在値からかなり遠方にある場合、即座に高地用の制御特性で冷却ファンの回転数制御を実行する必要はないためである。
【0017】
請求項7に記載したように、制御手段は、案内経路に含まれる道路の内、規定高度以上の高度を有する道路に関して、その高度を、該当する道路を走行するために要する時間で積分した積分値を算出し、当該積分値が大きくなるほど、筐体内部の同一温度に対する冷却ファンの回転数が高くなるように、冷却ファンの回転数を制御することが好ましい。これにより、車両が走行する道路の高度が高くなるほど、また、規定高度以上の高度を持つ道路を走行する時間が長くなると予想されるときほど、同一筐体内部温度に対して冷却ファンの回転数が高められることになる。換言すれば、上述した積分値を用いることにより、車両が将来走行する予定の道路における、冷却ファンの排熱性能の悪化を包括的に見込んだ回転数制御を行うことができる。
【0018】
請求項8に記載したように、筐体に取り付けられ、筐体内部に空気を送り込む吸気ファンを備え、制御手段は、冷却ファンの回転数を所定回転数以上に上昇させたとき、吸気ファンの回転を開始することが好ましい。例えば冷却ファンの回転数が最高回転数付近まで上昇すると、冷却ファンのみでは更なる排熱性能の向上を図ることは困難になる。そのため、冷却ファンに加えて吸気ファンを設け、冷却ファンの回転数が所定回転数以上に上昇したときには、吸気ファンを回転させる。これにより、吸気ファンが強制的に筐体内部に空気を送り込むため、冷却ファンによる排気空気を十分に確保することができ、実質的に、冷却ファンの排熱性能を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態における車両用ナビゲーション装置に関して、図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係わる車両用ナビゲーション装置の概略構成を示すブロック図である。
【0020】
図1において、演算処理装置8は、通常のコンピュータとして構成されており、内部には周知のCPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスラインが備えられている。ROMには、演算処理装置8が種々の機能を実行するためのプログラム等が書き込まれており、このプログラムに従ってCPU等が所定の演算処理を実行する。なお、図1では、演算処理装置8が実行する主な機能を、それぞれブロックにより表している。具体的には、演算処理装置8は、ナビ制御部9、車両用ナビゲーション装置の筐体20の内部温度を検出する内部温度検出部10、冷却ファン13の回転数を制御する回転数制御部12、及び吸気ファン15をオン又はオフするオン/オフ制御部14としての機能を果たす。なお、各機能ブロックについては後に詳しく説明する。
【0021】
ジャイロスコープ1は、図示しない車両に作用する角速度を検出するものである。車速センサ2は、車両の走行速度に応じた車速信号を発生する。GPS受信機3は、GPS衛星からの電波を受信し、車両の位置(緯度、経度、高度)を測定する。これらジャイロスコープ1、車速センサ2、及びGPS受信機3からの出力信号は、それぞれ演算処理装置8に入力される。
【0022】
地図データ記憶装置4は、道路地図データを表示するための道路地図データを記憶した記憶媒体を備えており、演算処理装置8によって要求された道路地図データを読み出して演算処理装置8に出力する。なお、記憶媒体としては、DVD−ROMやハードディスクを用いることが一般的であるが、その他の種類の記憶媒体を用いることも可能である。
【0023】
ここで、記憶媒体に記憶される道路地図データに関して説明する。道路地図データは、道路地図を描画するための地図描画データ、及び各種の施設等の位置を検索するための索引データを備えている、地図描画データは、主に、自然地形や線路など道路地図を表示する際の背景となる背景データ、地図上に地名や各種の施設名などを表示するための文字データ、実際の道路に即して道路を表示するための道路データからなる。また、索引データは、目的地等が、住所、施設名、電話番号などで入力されたとき、その位置を検索するためのものである。このため、索引データは、住所、施設名、電話番号などと、それに対応する地図上の座標を関連付けたデータからなる。
【0024】
地図描画データにおける道路データは、リンク情報とノード情報とによって構成される。このリンクとは、地図上の各道路を、交差点、分岐点、合流点などを示すノードにより複数に分割し、2つのノード間をリンクとして規定したものである。リンク情報は、リンクを特定する固有番号(リンクID)、リンクの長さを示すリンク長、リンクの始端及び終端ノード座標(緯度・経度)、道路名称、道路種別、道路幅員、標高(高度)、車線数、右折・左折専用車線の有無とその専用車線の数、及び制限速度等の各データから構成される。また、ノード情報は、ノード毎に固有の番号を付したノードID、ノード座標、ノード名称、ノードに接続するリンクのリンクIDを記述した接続リンクID、交差点種類等の各データから構成される。
【0025】
この道路データは、地図を表示する以外に、目的地までの案内経路を検索する際に用いられたり、マップマッチング処理を行う際の道路の形状を与えるために用いられたりすることが可能である。ただし、案内経路の検索に関しては、別途、案内経路探索のために用いるべき各道路の接続関係を示す道路ネットワークデータを用意し、そのネットワークデータを用いて検索するようにしても良い。
【0026】
このように、道路データにおけるリンク情報に、各リンクの高度情報が含まれているので、車両の現在位置等から車両の走行している道路を特定することにより、車両が現在走行している道路の標高(高度)を求めることができる。また、後述するナビ制御部9によって案内経路が設定され、その案内経路に従う経路案内が行われる場合、案内経路に含まれる道路の高度情報から、車両が将来走行する道路の高度を求めることができる。
【0027】
操作盤5は、後述する表示器6の表示画面に各種のスイッチが表示されたときに、その表示画面のタッチ位置を検出するタッチパネル、もしくは表示器6の周囲に配置されたメカニカルなスイッチ等から構成される。この操作盤5は、例えば、地図表示に関する各種の設定を行ったり、経路案内における出発地、目的地、通過点など決定したりするために使用される。
【0028】
表示器6は、例えば、車両のインストルメントパネルに設けられた液晶ディスプレイによって構成される。この表示器6には、車両の現在位置及び進行方向を示す自車両マーク、及び、地図データ記憶装置4から入力された地図データによって生成される車両周辺の道路地図が表示される。さらに、目的地に達する案内経路が設定された場合、その案内経路が道路地図上に重ねて表示される。
【0029】
通信インターフェース(I/F)7は、ローカルエリアネットワークを介して接続された他の制御機器(例えば、車両の運行状況を表示制御するドライブコンピュータ)が気圧センサを備えている場合に、その他の制御機器から気圧情報を取得するためのものである。
演算処理装置8が、気圧情報を取得することにより、気圧と高度とは相関関係を有するため、道路地図データから高度が得られない場合であっても、車両が現在走行する道路のおおよその高度を算出することができる。
【0030】
車両用ナビゲーション装置の筐体20内には、演算処理装置8が収容される他、地図データ記憶装置4なども収容される。さらに、車両用ナビゲーション装置は、オーディオ装置と一体化される場合があり、その場合には、オーディオ回路におけるパワーアンプ等も筐体20内に収容される。演算処理装置8、地図データ記憶装置4、及びパワーアンプ等は、動作時の発熱量が大きいため、継続使用されることにより、筐体20の内部温度は上昇する。この筐体20内部温度が過度に上昇すると、筐体20内に収容されている機器に悪影響を及ぼす。
【0031】
そのため、車両用ナビゲーション装置の筐体20には、図2(a),(b)に示すように、筐体20内部の加熱された空気を外部に排気する冷却ファン13が設けられている。さらに、冷却ファン13が排気する空気を十分に確保するために、筐体20には、外部から筐体内部へと空気を吸引する吸気ファン15が設けられている。
【0032】
温度検出器11は、例えばサーミスタからなり、車両用ナビゲーション装置の筐体20の内部の温度に応じた温度信号を発生して、演算処理装置8に出力する。演算処理装置8は、温度検出器11によって検出された内部温度に基づいて、冷却ファン13の回転数を制御するとともに、吸気ファン15の回転駆動をオンオフ制御する。
【0033】
ここで、車両用ナビゲーション装置の演算処理装置8が実行する各種の機能について説明する。
【0034】
まず、演算処理装置8のナビ制御部9は、各種のナビゲーション動作を実行するものである。具体的には、ナビ制御部9は、各種のセンサ等に基づいて車両の現在位置を求める現在値算出処理を行なう。この現在値算出処理では、ジャイロスコープ1と車速センサ2との検出信号に基づいて、自立航法における車両の現在位置及び進行方向を算出するとともに、GPS受信機3によって得られる電波航法による現在位置を勘案して、最終的な現在位置を算出する。例えば、原則として、常時算出可能な自立航法から車両の現在位置を求めつつ、電波航法による現在位置が得られている場合には、両位置を比較し、その差が所定距離以上である場合、車両の現在位置として、電波航法による現在位置を採用する。これにより、連続的に車両現在位置を算出しつつ、自立航法におけるセンサの誤差の影響を排除することができる。あるいは、電波航法による現在位置が得られている場合には、その電波航法による現在位置を最終的な現在位置とし、電波航法による現在位置が得られていない場合には、自立航法による現在位置を最終的な現在位置としても良い。
【0035】
また、車両の現在位置を求める際に、マップマッチング処理を実施しても良い。このマップマッチング処理は、例えば、以下のようにして実行される。まず、算出された車両現在位置と所定距離以内の道路、もしくは既に道路上にマッチングされている場合には、そのマッチング道路に接続された道路を車両が走行する可能性のある道路として抽出する。そして、過去に算出された複数個の車両位置と最新の車両位置とを連結して、車両の走行軌跡の形状データを算出する。その走行軌跡の形状データと、車両が走行する可能性のある道路の形状とを比較して、最も相関の高い道路を車両が走行している道路として決定する。このようなマップマッチング処理を実施することで、より車両の現在位置を精度良く求めることができる。
【0036】
このようにして車両の現在位置が算出されると、ナビ制御部9は、その現在位置周辺の道路地図データを地図データ記憶装置4から読み出して、車両の現在位置及び進行方向を示す自車位置マーク及びその周辺地図を表示器6に表示する。また、ナビ制御部9は、上述したマップマッチング処理において、車両が走行している道路を決定した場合、その道路の高度を求めて、後述する回転数制御部12に与える。さらに、ナビ制御部9は、GPS受信機3において、車両の現在位置に対応する緯度、経度に加えて高度も算出することができた場合、その高度も、回転数制御部12に与える。
【0037】
また、ナビ制御部9は、操作盤5によって出発地、目的地、通過点などが入力されると、出発地から通過点を経由して目的地に至る案内経路を探索する経路探索処理を行なう。なお、案内経路における出発地は、通常、車両の現在位置に設定されるが、操作盤5の操作により、任意の地点を出発地として設定することも可能である。さらに、ユーザによって案内開始が指示されると、設定された案内経路に従って、車両が走行すべき経路を案内する経路案内処理を実行する。この経路案内処理では、車両が車が分岐や合流、あるいは右左折すべき地点(交差点等の案内地点)に接近する場合、案内地点における車両の進行方向を案内するための拡大地図を表示する。さらに、図示しないスピーカから、案内地点までの距離や進行方向を指示する音声を出力したりする。
【0038】
演算処理装置8は、上述したナビ制御部9のほかに、内部温度検出部10、回転数制御部12、及びオン/オフ制御部14としての機能を果たす。内部温度検出部10は、温度検出器11が発生する温度信号に基づいて、筐体20内部の温度を検出する。その検出結果は回転数制御部12に与えられる。
【0039】
回転数制御部12は、車両の現在位置における高度、又は車両が将来走行する道路の高度に基づいて、冷却ファン13の回転数と筐体内部温度との関係(傾き)を定め、その定めた傾きに従って、筐体内部温度に応じた回転数となるように、冷却ファン13の回転数を制御する。なお、冷却ファン13には、回転数を検出するセンサが設けられており、その検出回転数が目標回転数に一致するようにフィードバック制御される。
【0040】
以下、冷却ファン13の回転数と筐体内部温度との関係である傾きの設定方法について詳細に説明する。この傾きの設定方法は、案内経路が設定されている場合と、案内経路が設定されていない場合とに大別される。
【0041】
案内経路が設定され、その案内経路に従って経路案内が行われる場合、案内対象となっている経路は、車両が将来走行することが予定されている道路である。そのため、案内経路が設定されている場合には、その案内経路に含まれる道路を、車両が将来走行する道路であるとみなすことができる。
【0042】
ここで、その案内経路に所定の規定高度(例えば2000m)以上の高度を持った道路が含まれている場合、車両がその道路を走行する間、空気密度の低下によって、冷却ファン13による排熱性能が低下し、筐体内部の温度上昇を効果的に抑制することが困難になる虞が生じる。そのため、本実施形態では、図3に示すように、筐体20内部温度に対する冷却ファン13回転数の傾きを、車両が案内経路を走行したときの冷却ファン13による排熱性能の低下度合に応じて変更する。具体的には、排熱性能の低下度合が大きくなるほど、同じ内部温度に対して冷却ファン回転数が高くなるように、筐体20の内部温度に対する冷却ファン13の回転数の傾きを定める。これにより、冷却ファン13の排熱性能の低下に係らず、筐体20の内部温度の上昇を適切に抑制することができる。
【0043】
車両が案内経路を走行したときの冷却ファン13による排熱性能の低下度合は、図4(a),(b)に示すように、案内経路に含まれる道路の内、規定高度以上の高度を有する道路に関して、その高度を、該当する道路を走行するために要する時間で積分した積分値(図4(a)、(b)における面積Sに相当)を算出することによって評価する。このようにして算出する積分値(面積S)は、車両が将来走行する道路の高度が高くなるほど、また、規定高度以上の高度を持つ道路を走行する時間が長くなると予想されるときほど、大きくなる。従って、この積分値(面積S)は、冷却ファン13の排熱性能の低下度合を適切に示す指標となりえるものであり、このような積分値(面積S)を用いることにより、車両が将来走行する予定の道路における、冷却ファン13の排熱性能の悪化を包括的に見込んだ回転数制御を行うことができる。
【0044】
算出された積分値(面積S)は、筐体20の内部温度に対する冷却ファン13の回転数の傾きを算出するために用いられる。具体的には、規定高度未満の平地に対応する傾きSに、算出した積分値(面積S)を加算し、さらに所定の係数Cを乗算した値を、最終的な傾きとして求める(後述する、図5のフローチャートのステップS160参照)。このようにして傾きを求めることにより、積分値(面積S)が大きくなるほど、つまり冷却ファン13の排熱性能の低下度合が大きくなるほど、急峻となるように傾きを定めることができ、筐体20の内部温度が同一であっても、冷却ファン13の回転数はより高い回転数となるように制御される。
【0045】
なお、案内経路が規定高度以上の高度を持った道路を含む場合であっても、その道路がかなり遠方にある場合には、即座に筐体20の内部温度に対する冷却ファン13の回転数の傾きを変更する必要はない。このため、本実施形態では、このような場合、図4(a)に示すように、所定の規定時間以内に、車両が規定高度以上の高度を持った道路を開始することを条件として、平地用の傾きから上述した手法で算出される傾きに変更する。これにより、冷却ファン13による排熱性能の低下が予測される適切なタイミングで、筐体20の内部温度に対する冷却ファン13の回転数の傾きを変更することができる。
【0046】
また、車両が規定高度以上の高度を持つ道路の走行を開始した場合には、図4(b)に示すように、現時点以降に走行する規定高度以上の高度を持つ道路を対象として、その道路を走行する時間で積分を繰り返し行い、積分値(面積S)を随時更新していく。現時点以降の冷却ファン13の排熱性能の低下度合は、車両が今後走行する道路の高度及び走行時間に依存し、過去に走行した道路には依存しないためである。
【0047】
次に、案内経路が設定されていない場合の、冷却ファン13の回転数と筐体内部温度との関係である傾きの設定方法について説明する。この場合、車両が、将来的にどのような高度の道路を走行するかを予測することは困難であるため、車両の現在位置の高度に応じて、筐体20の内部温度に対する冷却ファン13の回転数の傾きを定める。
【0048】
なお、車両の現在位置の高度は、ナビ制御部9から与えられる、道路データから得られた高度、GPS受信機3の測位結果から得られた高度、及び他の制御機器からの気圧情報から得られる高度のいずれか、それらを組み合わせて、車両の現在の高度を求めれば良い。そして、筐体20の内部温度に対する冷却ファン13の回転数の傾きとして、予め規定高度以下の平地用と、規定高度以上の高地用との少なくとも2種類の傾きを定めておく。そして、車両の現在位置の高度が、規定高度以上が否かによって、平地用の傾きと高地用の傾きとのいずれかを選択して、冷却ファン13の回転数制御に用いる。このようにすれば、車両の現在位置の高度に応じて、簡単に冷却ファン13の回転数制御の特性を切り替えることができる。
【0049】
なお、高地用の傾きは、一種類のみでなく、高度範囲に応じて複数の傾きを設定しても良い。例えば、高度が上がるほど、数百メータの範囲ごとに、より急峻となる傾きを設定しておき、車両の現在位置の高度がいずれの高度範囲に属するかに応じて、対応する高地用の傾きを選択しても良い。
【0050】
オン/オフ制御部14は、筐体20の内部に空気を吸引する吸気ファン15を所定回転数で駆動したり、その駆動を停止させたりするものである。このオン/オフ制御部14は、回転数制御部12によって制御される冷却ファン13の回転数に応じて、吸気ファン15の駆動(オン)、停止(オフ)を切り換える。より具体的には、オン/オフ制御部14は、冷却ファン13が例えば最高回転数に達したとみなされる回転数以上の回転数となったとき、吸気ファン15の回転駆動を開始する。冷却ファン13の回転数が最高回転数付近まで上昇すると、冷却ファン13のみでは更なる排熱性能の向上を図ることができず、筐体20の内部温度の上昇を抑えることが困難になる。そのため、冷却ファン13に加えて吸気ファン15も駆動することが好ましい。吸気ファン15を駆動することにより、空気が強制的に筐体20の内部に送り込まれるので、冷却ファン13による排気空気を十分に確保することができ、実質的に、冷却ファン13の排熱性能を向上することができる。
【0051】
図5は、本実施形態による冷却ファン13の回転数制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、このフローチャートに基づいて、冷却ファン13の回転数制御について詳細に説明する。なお、図3に示すフローチャートは、車両のイグニッションスイッチがオンされると開始される。
【0052】
まず、ステップS100では、冷却ファン13の制御特性としての、筐体20の内部温度に対する冷却ファン13の回転数の傾きを、予め定めた平地用の傾きに設定する。続くステップS110では、車両用ナビゲーション装置において、案内経路が設定され、その案内経路に従って経路案内が行われている最中であるか否かを判定する。
【0053】
ステップS110において経路案内中であると判定されると、ステップS120に進み、車両が現在走行中の道路の高度が規定高度以上であるか否かを判定する。このステップS120の判定処理において規定高度未満であると判定された場合には、ステップS130の処理に進み、規定高度以上であると判定された場合にはステップS150の処理に進む。
【0054】
ステップS130では、車両が、規定時間以内に規定高度以上の高度を持つ道路の走行を開始するか否か判定する。案内経路には規定高度以上の高度を持つ道路が含まれているが、その道路の走行を開始するまでに規定時間以上かかる場合や、そもそも案内経路に規定高度以上の高度を持つ道路が含まれていない場合、ステップS130の判定は“No”となり、ステップS100の処理に戻る。一方、ステップS130の判定が“Yes”となった場合には、ステップS140の処理に進む。
【0055】
ステップS140では、車両が規定高度以上の高度を持った道路の走行を開始する前であるため、図4(a)に示すように、規定高度以上の高度を持つ道路全体を対象として、その道路を走行する時間で積分を行い、積分値(面積S)を算出する。なお、規定高度以上の高度を持つ道路(高地道路)が、途中の平地を挟んで、案内経路において複数個所に現れる場合、分離された高地道路全体の積分値を算出するのではなく、車両が最初に走行する高地道路のみを対象として積分値(面積S)を算出することが好ましい。後に車両が走行する高地道路は、最初の高地道路における冷却ファン13の排熱性能の低下に何ら影響を与えるものではないためである。
【0056】
ただし、最初の高地道路と次の高地道路との間に存在する平地道路の距離が所定距離未満である場合には、平地道路によって分離された2つの高地道路をまとめて、それらの高地道路に対する積分値を算出しても良い。この場合、2つの高地道路は実質的に連続しているとみなすことができるためである。
【0057】
一方、ステップS150では、車両が高地道路の走行を既に開始しているので、図4(b)に示すように、現時点以降に車両が走行する高地道路のみを対象として、積分値(面積S)を算出する。
【0058】
ステップS160では、ステップS140又はS150にて算出された積分値(面積S)を用いて、冷却ファン13の制御特性としての傾きを算出する。そしてステップS170において、冷却ファン13の制御特性を更新し、新たに設定された傾きに従って、冷却ファン13の回転数を制御する。
【0059】
ステップS110において経路案内中ではないと判定された場合には、ステップS180に進み、車両が現在走行している道路の高度は規定高度以上であるか否かを判定する。このステップS180の判定処理において走行中道路の高度は規定高度以上であると判定されると、ステップS190に進んで、冷却ファン13の制御特性(傾き)を、予め定めてある高地用の傾きに設定する。一方、ステップS180にて、走行中道路の高度は規定高度未満であると判定されると、ステップS200に進んで、冷却ファン13の制御特性(傾き)を、予め定めてある平地用の傾きに設定する。
【0060】
次に、図6のフローチャートに基づいて、吸気ファン15の駆動、停止制御について説明する。
【0061】
まず、初期状態として、吸気ファン15を停止した状態に維持すべく、ステップS300において、吸気ファン15に対して駆動信号の出力を停止したままとする。次にステップS310にて、冷却ファン13の回転数が[最高回転数−所定値]以上であって、実質的に冷却ファン13が最高回転数で回転しているとみなせるか否かを判定する。なお、冷却ファン13の回転数として、センサによって検出された検出回転数を用いても良いし、演算処理装置8の回転数制御部12が指示する目標回転数を用いても良い。
【0062】
ステップS310における判定処理において“Yes”と判定された場合には、ステップS320に進み、冷却ファン13による排気空気を十分に確保すべく、吸気ファン15を回転駆動する。一方、ステップS320において“No”と判定された場合には、ステップS330に進んで、冷却ファンの駆動信号を停止したままとする。
【0063】
以上説明したように、本実施形態によれば、車両用ナビゲーション装置の筐体20に冷却ファン13を設け、車両が現在又は将来走行する道路が規定高度以上の高度を持つ高地道路である場合には、筐体20の内部温度に対する冷却ファン13の回転数の傾きがより急峻となるように設定して、この設定した傾きに従って、冷却ファン13の回転数を制御することとした。これにより、筐体20の内部温度の上昇に対して、高地及び平地それぞれの冷却ファン13の排熱性能に見合った回転数にて、筐体内部の空気を外部に排気できる。従って、車両用ナビゲーション装置を搭載した車両道路が高地を走行した場合であっても、筐体内部の温度上昇を適切に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係わる、車両用ナビゲーション装置の概要構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は、冷却ファンのみが回転駆動された場合の空気の流れを示す説明図であり、(b)は冷却ファン及び吸気ファンが回転駆動された場合の空気の流れを示す説明図である。
【図3】冷却ファンの制御特性としての、筐体20内部温度に対する冷却ファン13回転数の関係を示す傾きの変更を説明するためのグラフである。
【図4】(a)、(b)は、冷却ファンの排熱性能の低下度合を評価する指標として、案内経路に含まれる道路の内、規定高度以上の高度を有する道路に関して、その高度を、該当する道路を走行するために要する時間で積分した積分値(面積S)について説明するための説明図である。
【図5】冷却ファンの回転数制御を示すフローチャートである。
【図6】吸気ファンの駆動、停止制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
1…ジャイロスコープ、2…車速センサ、3…GPS受信機、4…地図データ記憶装置、5…操作盤、6…表示器、7…通信インターフェース、8…演算処理装置、11…温度検出器、13…冷却ファン、15…吸気ファン、20…筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路地図上の現在位置を測定して報知するための演算処理を行なう演算処理装置を備えた車両用ナビゲーション装置において、
前記演算処理装置を内部に収納する筐体と、
前記筐体に取り付けられ、前記筐体内の空気を外部に排気する冷却ファンと、
前記筐体内部の温度を検出する温度検出手段と、
前記車両が現在又は将来走行する道路が、所定の規定高度以上の高度に位置するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記車両が現在又は将来走行する道路が、所定の規定高度以上の高度に位置すると判定された場合、所定の規定高度よりも低い高度に位置すると判定された場合に比較して、前記筐体内部の同一温度に対する前記冷却ファンの回転数が高くなるように、前記冷却ファンの回転数を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする車両用ナビゲーション装置。
【請求項2】
前記制御手段は、筐体内部温度と冷却ファン回転数との予め定められた関係に従って、前記冷却ファンの回転数を制御するものであって、その筐体内部温度と冷却ファン回転数との関係は、少なくとも高地用と平地用の2種類の関係が用意され、高地用の関係は、平地用の関係よりも同一の筐体内部温度に対して冷却ファン回転数が高くなるように設定されており、前記判定手段の判定結果に応じて、高地用の関係と平地用の関係とのいずれかを選択して、前記冷却ファンの回転数制御に用いることを特徴とする請求項1に記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記車両用ナビゲーション装置は、道路の高度情報を含む道路地図データを記憶した記憶装置を備え、前記判定手段は、前記車両が走行する道路の高度情報から、前記車両が現在走行する道路の高度が前記規定高度以上か判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項4】
前記車両用ナビゲーション装置は、気圧を計測する気圧計測手段を備え、前記判定手段は、気圧計測手段によって計測された気圧から、前記車両が現在走行する道路の高度が前記規定高度以上か判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項5】
前記車両用ナビゲーション装置は、道路の高度情報を含む道路地図データを記憶した記憶装置を備え、かつ目的地が設定されたときに、当該目的地に到達するための案内経路を探索し、その案内経路に従って経路案内を行うものであって、前記判定手段は、前記案内経路が設定されているとき、前記道路の高度情報から、当該案内経路に含まれる道路の高度が前記規定高度以上であるとみなされるとき、前記車両が将来走行する道路の高度は、前記規定高度以上と判定することを特徴とする請求項1に記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記案内経路において、所定の規定時間以内に、車両の走行予定道路の高度が前記規定高度以上となるときに、前記車両が将来走行する道路は、前記規定高度以上であると判定することを特徴とする請求項5に記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記案内経路に含まれる道路の内、前記規定高度以上の高度を有する道路に関して、その高度を、該当する道路を走行するために要する時間で積分した積分値を算出し、当該積分値が大きくなるほど、前記筐体内部の同一温度に対する前記冷却ファンの回転数が高くなるように、前記冷却ファンの回転数を制御することを特徴とする請求項5又は6に記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項8】
前記筐体に取り付けられ、前記筐体内部に空気を送り込む吸気ファンを備え、前記制御手段は、前記冷却ファンの回転数を所定回転数以上に上昇させたとき、前記吸気ファンの回転を開始することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の車両用ナビゲーション装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−128314(P2009−128314A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306447(P2007−306447)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】