説明

車両用レバー装置

【課題】操作位置での操作レバーのロックが意図せず解除されてしまうのを回避することができる車両用レバー装置を提供する。
【解決手段】操作位置まで引っ張り操作可能とされた操作レバー1と、押圧操作により当該操作レバー1から突出可能な押圧操作部材2と、操作レバー1が操作位置とされ、且つ、押圧操作部材2が突出した状態で、押圧操作部材2の突出部で押圧されてオンされるマイクロスイッチ3とを具備し、当該マイクロスイッチ3がオンしたことを条件として車両のエンジン始動が可能とされた車両用レバー装置において、押圧操作部材2の突出部がマイクロスイッチ3を押圧した状態から操作レバー1を更に引っ張り操作しても当該押圧操作部材2の突出状態を維持するとともに、所定の操作により当該突出状態を解除して押圧操作部材2を初期位置とする保持手段4を具備したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が具備するハンドルバー先端側に設けられたブレーキレバー又はクラッチレバーから成り、操作ワイヤの付勢力に抗して初期位置からブレーキ操作又はクラッチ操作がなされる操作位置まで引っ張り操作可能とされた操作レバーを具備した車両用レバー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二輪車等の車両におけるハンドルバー先端側には、運転者が把持し得る把持グリップ、及び車両のブレーキを作動させて制動を図るためのブレーキレバー或いは車両のクラッチを操作するクラッチレバー等が形成されている。然るに、エンジン始動に際し、車両が不用意に発進してしまうのを防止すべく、従来より、ブレーキレバー又はクラッチレバー(以下、これらを操作レバーと称する。)が引っ張り操作された状態(ブレーキ操作又はクラッチ操作がなされた状態)を検出した場合に限り、エンジン始動が可能とされる車両用レバー装置が提案されるに至っている。
【0003】
かかる従来の車両用レバー装置は、引っ張り操作された状態で操作レバーをロックさせる操作子を有するとともに、その操作子によるロック状態にてマイクロスイッチを電気的にオンさせるよう構成されており、当該マイクロスイッチのオン信号が例えばECUに送信されるよう構成されていた。そして、当該オン信号がある場合に限り、エンジン始動が許可されるよう制御することにより、エンジン始動時における車両の不用意な発進を防止することができるのである。
【0004】
而して、エンジンを始動させた後、ロック状態の操作レバーを更に引っ張り操作することにより、当該操作レバーのロックを解除させ得るようになっている。当該係止が解除されると、操作ワイヤの付勢力(張力)により操作レバーが初期状態まで戻り、マイクロスイッチをオンさせることはない。これにより、本来のブレーキ操作又はクラッチ操作が可能とされる。尚、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の車両用レバー装置においては、ロック状態の操作レバーを更に引っ張り操作することにより、当該操作レバーのロックが解除されるよう構成されていたので、操作レバーに運転者の手や体等が不用意に当たって引っ張り操作がなされてしまった場合、操作レバーのロックが意図せず解除されてしまう虞があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、操作位置での操作レバーのロックが意図せず解除されてしまうのを回避することができる車両用レバー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、車両が具備するハンドルバー先端側に設けられたブレーキレバー又はクラッチレバーから成り、操作ワイヤの付勢力に抗して初期位置からブレーキ操作又はクラッチ操作がなされる操作位置まで引っ張り操作可能とされた操作レバーと、該操作レバーに形成され、押圧操作により当該操作レバーから突出可能な押圧操作部材と、該押圧操作部材を押圧操作方向と反対方向に常時付勢する付勢手段と、前記操作レバーが操作位置とされ、且つ、前記押圧操作部材が突出した状態で、当該押圧操作部材の突出部で押圧されて、電気的スイッチがオンされるスイッチ手段とを具備し、前記スイッチ手段がオンしたことを条件として車両のエンジン始動が可能とされた車両用レバー装置において、前記押圧操作部材の突出部が前記スイッチ手段を押圧した状態から前記操作レバーを更に引っ張り操作しても当該押圧操作部材の突出状態を維持するとともに、所定の操作により当該突出状態を解除して前記押圧操作部材を初期位置とする保持手段を具備したことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両用レバー装置において、前記保持手段は、前記操作レバーに形成されるとともに、係止位置と解除位置との間で揺動可能とされ、係止位置で前記押圧操作部材と係止して突出状態を維持し、解除位置で当該押圧操作部材から離間して突出状態が解除されることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の車両用レバー装置において、前記押圧操作部材は、その外周面に溝が形成されるとともに、前記保持手段は、係止位置で当該溝に係止して突出状態を維持し、解除位置で溝から離間して突出状態が解除されるものであることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の車両用レバー装置において、前記保持手段は、解除位置から係止位置に向かって常時付勢されるとともに、前記押圧操作部材が押圧操作により突出状態とされると、その外周面に形成された溝と合致して係止可能とされたことを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項2〜4の何れか1つに記載の車両用レバー装置において、前記保持手段における前記押圧操作部材との係止を解除させる操作は、前記操作レバーの引っ張り操作と略同一方向とされたことを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れか1つに記載の車両用レバー装置において、基端が所定の軸を中心に揺動可能とされ、先端が前記スイッチ手段と当接した板状部材を具備するとともに、前記押圧操作部材の突出部が当該板状部材の基端と先端の間を押圧して揺動させ、先端で前記スイッチ手段をオンさせ得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、押圧操作部材の突出部がスイッチ手段を押圧した状態から操作レバーを更に引っ張り操作しても当該押圧操作部材の突出状態を維持するとともに、所定の操作により当該突出状態を解除して押圧操作部材を初期位置とする保持手段を具備したので、操作位置での操作レバーのロックが意図せず解除されてしまうのを回避することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、保持手段は、操作レバーに形成されるとともに、係止位置と解除位置との間で揺動可能とされ、係止位置で押圧操作部材と係止して突出状態を維持し、解除位置で当該押圧操作部材から離間して突出状態が解除されるので、押圧操作部材における突出状態の維持及び解除を容易に行わせることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、保持手段は、係止位置で押圧操作部材の外周面に形成された溝に係止して突出状態を維持し、解除位置で溝から離間して突出状態が解除されるので、押圧操作部材に対する保持手段の係止をより確実に行わせることができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、保持手段は、解除位置から係止位置に向かって常時付勢されるとともに、押圧操作部材が押圧操作により突出状態とされると、その外周面に形成された溝と合致して係止可能とされたので、当該押圧操作部材を単に押圧操作するだけで、保持手段による係止が自動的に行われることとなり、操作性をより向上させることができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、保持手段における押圧操作部材との係止を解除させる操作は、操作レバーの引っ張り操作と略同一方向とされたので、保持手段の操作性を維持しつつより確実且つスムーズに当該保持手段による押圧操作部材の係止を解除させることができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、押圧操作部材の突出部が板状部材の基端と先端の間を押圧して揺動させ、先端でスイッチ手段をオンさせ得るので、操作レバーと共に押圧操作部材が僅かに移動しただけでも板状部材の先端側をそれより長い寸法だけ移動させることができ、スイッチ手段を確実にオンさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用レバー装置を示す全体正面図
【図2】同車両用レバー装置を示す全体背面図
【図3】同車両用レバー装置を示す側面図
【図4】同車両用レバー装置を示す断面図であって、押圧操作部材が押圧操作される過程を示す模式図
【図5】同車両用レバー装置を示す正面図であって、押圧操作部材が保持手段によりロック(突出状態の維持)された状態を示す模式図
【図6】同車両用レバー装置を示す断面図であって、押圧操作部材が保持手段によりロック(突出状態の維持)された状態を示す模式図
【図7】同車両用レバー装置を示す正面図であって、押圧操作部材の保持手段によるロックが解除された状態を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る車両用レバー装置は、二輪車等の車両が具備するハンドルバー先端側に設けられたものであり、図1〜4に示すように、操作レバー1と、押圧操作部材2と、スイッチ手段としてのマイクロスイッチ3と、保持手段4とから主に構成されている。尚、図中符号Hは、二輪車等の車両が具備するハンドルバーを示しており、符号Gは、ハンドルバーH先端に取り付けられた把持グリップを示している。
【0021】
ハンドルバーHには、レバーホルダ6が固定されており、当該レバーホルダ6に対して操作レバー1が揺動自在に取り付けられている。また、レバーホルダ6には、プレート8が固定されており、当該プレート8には、マイクロスイッチ3等が固定されている。尚、レバーホルダ6には、円環状の固定部6aが一体的に形成されており、かかる固定部6aにハンドルバーHを挿通させることにより、当該レバーホルダ6がハンドルバーHに固定されている。
【0022】
操作レバー1は、二輪車(車両)が具備するハンドルバーH先端側に設けられたブレーキレバー又はクラッチレバーから成り、操作ワイヤWの付勢力に抗して初期位置からブレーキ操作又はクラッチ操作がなされる操作位置まで(図1中a方向に)引っ張り操作可能とされたものである。尚、図中符号7は、操作レバー1を引っ張り操作するとオンするストップスイッチ又はクラッチスイッチを示している。また、操作ワイヤWは、一端が操作レバー1に接続され、操作レバー1が引っ張り操作されるのに伴い引っ張られ、他端側でブレーキ手段又はクラッチ手段(何れも不図示)と接続されたものである。
【0023】
かかる操作レバー1は、その先端側に位置し、運転者が把持グリップGを把持しつつ引っ張り操作可能な操作部1aと、基端側に位置し、後述する保持手段4等が形成された基部1bとを有しており、当該基部1bが揺動軸L1と接続されて揺動自在とされている。そして、操作レバー1が初期位置から操作位置まで引っ張り操作されると、基部1bに接続された操作ワイヤWが引っ張られ、ブレーキ操作又はクラッチ操作が可能とされているのである。而して、操作レバー1が引っ張り操作されると、操作ワイヤWの張力(テンション)や当該操作ワイヤWに接続されたブレーキ手段又はクラッチ手段の戻し作用にて当該操作レバー1に対して付勢力が付与されるようになっている。
【0024】
押圧操作部材2は、操作レバー1の基部1bに形成され、押圧操作により当該操作レバー1から突出可能なものである。より具体的には、押圧操作部材2は、図4に示すように、その頂部に操作部2aが形成されるとともに、当該操作部2aの近傍の外周面において周方向に溝2cが形成されたピン状部材から成る。また、押圧操作部材2は、図6に示すように、押圧操作により操作レバー1から突出される突出部2bを有して成るものである。
【0025】
更に、操作レバー1の基部1bには、押圧操作部材2を押圧操作方向と反対方向(図4、6における上方)に常時付勢する付勢手段としてのコイルバネ9が配設されている。これにより、押圧操作部材2は、押圧操作されると、コイルバネ9による付勢力に抗して下方へ押し込まれ、押圧する手を離すと、当該付勢力にて初期位置(突出部2bが没入する位置)まで戻るようになっている。尚、該コイルバネ9に代えて他の汎用的な付勢手段(板バネ等)を用いることができる。
【0026】
スイッチ手段は、操作レバー1が操作位置とされ、且つ、押圧操作部材2が突出した状態(突出部2bが図6の如く操作レバー1の裏面から突出した状態)で、当該押圧操作部材2の突出部2bで押圧されて、電気的スイッチがオンされるものであり、本実施形態においては、操作子3aを有したマイクロスイッチ3で構成されている。即ち、操作子3aが押圧されると電気的スイッチがオンし、オン信号を送信し得るよう構成されているのである。
【0027】
また、マイクロスイッチ3は、プレート8に固定されたケースC内に収容されているとともに、当該ケースCには、マイクロスイッチ3の他、板状部材Nが形成されている。かかる板状部材Nは、図2に示すように、基端Naが所定の軸L3を中心に揺動可能とされ、先端Nbがマイクロスイッチ3の操作子3aと当接して配設されたものであり、押圧操作部材2の突出部2bが当該板状部材Nの基端Naと先端Nbの間を押圧して揺動させ、先端Nbで操作子3aを押圧してマイクロスイッチ3をオンさせ得るものである。
【0028】
而して、操作レバー1は、既述の如く操作ワイヤWにより初期位置側へ付勢されているので、押圧操作部材2が押圧操作された状態(突出部2bが操作レバー1の裏面から突出した状態)では、突出部2bが板状部材Nを介して操作子3aを押圧し、マイクロスイッチ3をオンした状態とされる。即ち、操作レバー1が操作位置とされ、且つ、押圧操作部材2が突出した状態であると、マイクロスイッチ3がオンするよう構成されているのである。
【0029】
更に、マイクロスイッチ3のオン信号は、二輪車(車両)が具備するECUに送信され、マイクロスイッチ3(スイッチ手段)がオンしたことを条件として(即ち、マイクロスイッチ3がオンしているときに限って)車両のエンジン始動が可能とされている。これにより、エンジン始動時には、ブレーキ操作又はクラッチ操作がなされた状態となっており、不用意に車両が発進してしまうのを確実に防止することができる。
【0030】
ここで、本実施形態においては、操作レバー1の基部1bに保持手段4が配設されている。かかる保持手段4は、押圧操作部材2の突出部2bがマイクロスイッチ3の操作子3aを押圧した状態から操作レバー1を更に引っ張り操作しても当該押圧操作部材2の突出状態を維持するとともに、所定の操作(本実施形態においては揺動操作)により当該突出状態を解除して押圧操作部材2を初期位置とするものである。
【0031】
即ち、保持手段4は、揺動軸L2を中心に揺動自在な板状部4bから成り、その先端には操作する指を当てがうことができる操作部4aが形成されている。然るに、保持手段4は、係止位置(図6参照)と解除位置(図7参照)との間で揺動軸L2を中心として揺動可能とされ、係止位置で押圧操作部材2と係止して突出状態を維持(ロック)し、解除位置で当該押圧操作部材2から離間して突出状態が解除(ロックが解除)されるものである。
【0032】
より具体的には、既述の如く、押圧操作部材2の外周面には溝2cが形成されており、保持手段4は、係止位置で板状部4bのロック部4baが当該溝2cに嵌り込んで係止することにより突出状態を維持し、解除位置で板状部4bのロック部4baが溝2cから離間して突出状態が解除されるようになっている。尚、押圧操作部材2は、保持手段4により突出状態が解除されると、コイルバネ9の付勢力により初期位置まで上昇し、突出部2bが操作レバー1に対して没入することとなる。
【0033】
更に、保持手段4は、捩りばね5により解除位置から係止位置に向かって常時付勢されるとともに、押圧操作部材2が押圧操作により突出状態とされると、その外周面に形成された溝2cと合致して係止可能とされている。即ち、保持手段4のロック部4baは常時、押圧操作部材2の外周面に押圧されており(このとき、係止はなされていないため、押圧操作部材2の押圧操作は可能とされている)、当該押圧操作部材2が押圧操作されて溝2cがロック部4baまで至ると、当該溝2cにロック部4baが入り込み係止されるのである。
【0034】
尚、捩りばね5は、その一端が操作レバー1の基部1bに固定されるとともに、他端が保持手段4の揺動軸L2側に固定されたもので、他端側は、図1の符号5aで示すように、円環状(ループ状)に折り曲げ形成されており、運転者のグローブ等が触れてしまった場合であっても引っ掛からないようになっている。
【0035】
上記の如き構成により、押圧操作部材2の突出部2bがマイクロスイッチ3の操作子3aを押圧した状態から操作レバー1を更に引っ張り操作した場合、マイクロスイッチ3のオン状態は維持できないものの、当該押圧操作部材2の突出状態が維持されることとなり、その更なる引っ張り操作後に手を離せば、操作ワイヤWの付勢力で操作レバー1が自然と戻り、再びマイクロスイッチ3をオンさせることとなる。従って、本実施形態によれば、操作位置での操作レバー1のロック(押圧操作部材2の突出状態)が意図せず解除されてしまうのを回避することができる。
【0036】
一方、保持手段4による押圧操作部材2の係止を解除(ロックを解除)するには、操作部4aに指を当てがい、そのまま手前側へ引っ張り操作して当該保持手段4を揺動操作する。これにより、板状部4bのロック部4baが溝2cから離間して突出状態が解除され、コイルバネ9の付勢力により押圧操作部材2が初期位置に戻ることとなる。このように、保持手段4における押圧操作部材2との係止を解除させる操作は、操作レバー1の引っ張り操作と略同一方向(図1中符号a方向)とされたので、保持手段4の操作性を維持しつつより確実且つスムーズに当該保持手段4による押圧操作部材2の係止を解除させることができる。即ち、操作レバー1の操作と同様、把持グリップGを把持した指を延ばしつつ当該把持グリップGを握り込む方向に保持手段4を操作することにより当該保持手段4における押圧操作部材2との係止の解除がなされるので、より確実且つスムーズな操作が可能とされるのである。
【0037】
次に、本実施形態における作用について説明する。
二輪車を停車させる際(又はエンジン始動の際)、操作レバー1を初期位置から操作位置まで引っ張り操作した後、押圧操作部材2を押圧操作する。これにより、押圧操作部材2は、コイルバネ9の付勢力に抗して下降し、操作レバー1から下方に向かって突出した状態(突出状態)とされる(図4における二点鎖線参照)。
【0038】
そして、押圧操作部材2の押圧操作過程において、溝2cが保持手段4のロック部4baと対応した位置に達すると、捩りバネ5の付勢力により、当該溝2cにロック部4baが入り込んで係止される(図5、6参照)。これにより、押圧操作部材2が突出状態でロックされることとなり、操作レバー1と共に押圧操作部材2が操作ワイヤWの付勢力を受け、板状部材Nを介してマイクロスイッチ3の操作子3aを押圧し、当該マイクロスイッチ3をオンするようになっている。
【0039】
マイクロスイッチ3のオン信号は、例えば二輪車(車両)が具備するECUに送信され、当該マイクロスイッチ3(スイッチ手段)がオンしたことを条件として(即ち、マイクロスイッチ3がオンしているときに限って)車両のエンジン始動が可能とされている。然るに、押圧操作部材2が保持手段4にてロックされた状態では、操作レバー1を更に引っ張り操作しても、当該押圧操作部材2の突出状態が維持されることとなり、その更なる引っ張り操作後に手を離せば、操作ワイヤWの付勢力で操作レバー1が自然と戻り、再びマイクロスイッチ3をオンさせることとなる。
【0040】
エンジン始動後、保持手段4による押圧操作部材2の係止を解除(ロックを解除)する際には、操作部4aに指を当てがい、そのまま手前側(図7中の矢印参照)へ引っ張り操作して当該保持手段4を揺動操作する(図7参照)。これにより、板状部4bのロック部4baが溝2cから離間して突出状態が解除されロックが解除されるので、コイルバネ9の付勢力により押圧操作部材2が初期位置に戻ることとなる。而して、操作レバー1は、押圧操作部材2の突出部2bがマイクロスイッチ3と干渉することなく、操作ワイヤWの不勢力にて初期位置まで戻されることとなる。
【0041】
本実施形態によれば、押圧操作部材2の突出部2bがマイクロスイッチ3(スイッチ手段)を押圧した状態から操作レバー1を更に引っ張り操作しても当該押圧操作部材2の突出状態を維持するとともに、所定の操作(揺動操作)により当該突出状態を解除して押圧操作部材2を初期位置とする保持手段4を具備したので、操作位置での操作レバー1のロックが意図せず解除されてしまうのを回避することができる。
【0042】
また、保持手段4は、操作レバー1に形成されるとともに、係止位置と解除位置との間で揺動可能とされ、係止位置で押圧操作部材2と係止して突出状態を維持し、解除位置で当該押圧操作部材2から離間して突出状態が解除されるので、押圧操作部材2における突出状態の維持及び解除を容易に行わせることができる。更に、保持手段4は、そのロック部4baが係止位置で押圧操作部材2の外周面に形成された溝2cに係止して突出状態を維持し、解除位置で溝2cから離間して突出状態が解除されるので、押圧操作部材2に対する保持手段4の係止をより確実に行わせることができる。
【0043】
また更に、保持手段4は、捩りバネ5にて解除位置から係止位置に向かって常時付勢されるとともに、押圧操作部材2が押圧操作により突出状態とされると、その外周面に形成された溝2cと合致して係止可能とされたので、当該押圧操作部材2を単に押圧操作するだけで、保持手段4による係止が自動的に行われることとなり、操作性をより向上させることができる。
【0044】
また、押圧操作部材2の突出部2bが板状部材Nの基端Naと先端Nbの間を押圧して揺動させ、先端Nbでマイクロスイッチ3(スイッチ手段)をオンさせ得るので、操作レバー1と共に押圧操作部材2が僅かに移動しただけでも板状部材Nの先端Nb側をそれより長い寸法だけ移動させることができ、マイクロスイッチ3(スイッチ手段)を確実にオンさせることができる。
【0045】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば保持手段4の捩りバネ5による付勢を廃し、解除位置から係止位置の操作を手動による操作にて行わせるよう構成してもよい。また、保持手段4は、解除位置と係止位置との間を揺動するよう構成されているが、例えば直線状に摺動して解除位置と係止位置との間を動作可能としたものとしてもよい。尚、本実施形態においては、二輪車に適用しているが、ハンドルバー先端側にブレーキレバーが形成された他の車両に適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
押圧操作部材の突出部がスイッチ手段を押圧した状態から操作レバーを更に引っ張り操作しても当該押圧操作部材の突出状態を維持するとともに、所定の操作により当該突出状態を解除して押圧操作部材を初期位置とする保持手段を具備した車両用レバー装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 ブレーキレバー
2 押圧操作部材
2b 突出部
2c 溝
3 マイクロスイッチ(スイッチ手段)
4 保持手段
5 捩りバネ
6 レバーホルダ
7 ストップスイッチ又はクラッチスイッチ
8 プレート
9 コイルバネ(付勢手段)
N 板状部材
H ハンドルバー
G 把持グリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が具備するハンドルバー先端側に設けられたブレーキレバー又はクラッチレバーから成り、操作ワイヤの付勢力に抗して初期位置からブレーキ操作又はクラッチ操作がなされる操作位置まで引っ張り操作可能とされた操作レバーと、
該操作レバーに形成され、押圧操作により当該操作レバーから突出可能な押圧操作部材と、
該押圧操作部材を押圧操作方向と反対方向に常時付勢する付勢手段と、
前記操作レバーが操作位置とされ、且つ、前記押圧操作部材が突出した状態で、当該押圧操作部材の突出部で押圧されて、電気的スイッチがオンされるスイッチ手段と、
を具備し、前記スイッチ手段がオンしたことを条件として車両のエンジン始動が可能とされた車両用レバー装置において、
前記押圧操作部材の突出部が前記スイッチ手段を押圧した状態から前記操作レバーを更に引っ張り操作しても当該押圧操作部材の突出状態を維持するとともに、所定の操作により当該突出状態を解除して前記押圧操作部材を初期位置とする保持手段を具備したことを特徴とする車両用レバー装置。
【請求項2】
前記保持手段は、前記操作レバーに形成されるとともに、係止位置と解除位置との間で揺動可能とされ、係止位置で前記押圧操作部材と係止して突出状態を維持し、解除位置で当該押圧操作部材から離間して突出状態が解除されることを特徴とする請求項1記載の車両用レバー装置。
【請求項3】
前記押圧操作部材は、その外周面に溝が形成されるとともに、前記保持手段は、係止位置で当該溝に係止して突出状態を維持し、解除位置で溝から離間して突出状態が解除されるものであることを特徴とする請求項2記載の車両用レバー装置。
【請求項4】
前記保持手段は、解除位置から係止位置に向かって常時付勢されるとともに、前記押圧操作部材が押圧操作により突出状態とされると、その外周面に形成された溝と合致して係止可能とされたことを特徴とする請求項3記載の車両用レバー装置。
【請求項5】
前記保持手段における前記押圧操作部材との係止を解除させる操作は、前記操作レバーの引っ張り操作と略同一方向とされたことを特徴とする請求項2〜4の何れか1つに記載の車両用レバー装置。
【請求項6】
基端が所定の軸を中心に揺動可能とされ、先端が前記スイッチ手段と当接した板状部材を具備するとともに、前記押圧操作部材の突出部が当該板状部材の基端と先端の間を押圧して揺動させ、先端で前記スイッチ手段をオンさせ得ることを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載の車両用レバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−143789(P2011−143789A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5009(P2010−5009)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000213954)朝日電装株式会社 (184)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】