説明

車両用構造部材及びその製造方法

【課題】パイプを主体とする構造部材と比べて同等以上の剛性が得られ、かつ、軽量化及び低コスト化を図ることができる車両用構造部材及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】帯状金属素材100を断面略コ字状とする予備曲げ工程と、円弧状に成形して管状本体部とする本体曲げ工程とを有する。本体曲げ工程は、第1凹型51と第1凸型52とを用い、帯状金属素材100のカール片部12を第1凸型52側に位置させた状態で、帯状金型素材100を第1凹部510と第1凸部520との間に挟むことによって、略円弧状を呈する管状本体部11を成形する第1本体曲げ工程を有する。第1本体曲げ工程に用いる第1凸型52は、第1凸部520の表面に長手方向に沿って伸びる第1突出角部523を平行に複数設けてなる。第1本体曲げ工程の実施により、管状本体部11の内面に第1突出角部523に押圧された圧痕181を長手方向に沿って複数形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に用いられる構造部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のドアには、側面から衝突された際の剛性を高めるための部材として、インパクトビームと呼ばれる補強部材が取り付けられている。また、自動車の車体の構造そのもについても、剛性を高めるための様々な工夫が行われている。上記補強部材を含め、車両の剛性向上を図るための構造部材は、その部材そのものの剛性向上と共に、軽量化及び低コスト化を図ることが求められている。
【0003】
上記構造部材としてインパクトビームを例に取れば、従来のものは、円管状のパイプを本体部として、その両端に支持ブラケットを取り付けたものが一般的である(例えば特許文献1参照)。また、その他の構造部材についても、パイプを主体とし、これを加工して構成したものが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−239764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のパイプを主体とした構造部材は、パイプそのものが同じ重量の帯状素材(板状素材)に比べて割高であり、素材コストの低減に限界がある。一方、帯状素材を用いて単純に管状やU字状に加工した場合には、パイプの場合よりも剛性が劣ってしまうという問題があった。
【0006】
このため、パイプの素材よりも高剛性の帯状金属素材を用いて管状に成形することにより、素材重量を増加させることなく高剛性化することが考えられる。しかしながら、例えば超高張力鋼板に代表されるような非常に強度の高い素材を用いた場合には、管状に成形すること自体が困難である。
また、管状に成形した後に、溶接等を行う必要があれば、パイプの場合よりも高コスト化するおそれもあるので、管状部については成形したままの状態で十分にパイプと同等以上の剛性を発揮しうる形状の採用も望まれる。
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであり、従来のパイプを主体とする構造部材と比べて同等以上の剛性が得られ、かつ、軽量化及び低コスト化を図ることができる車両用構造部材及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、内部を中空部とした管状形状を呈する管状部を有する車両用構造部材を製造する方法であって、
平板帯状の帯状金属素材の幅方向両側端部を折り曲げて起立させたカール片部を形成し、断面略コ字状とする予備曲げ工程と、
上記カール片部が存在する側の面が内面となるように上記帯状金属素材を円弧状に成形して管状本体部とすると共に、上記カール片部の曲げ起点部分同士を近接させることによって上記カール片部を上記管状本体部の中空部内に配置する本体曲げ工程とを有し、
該本体曲げ工程は、略円弧状の凹部であって上記管状本体部の最終形状の曲率半径よりも大きい曲率半径の第1凹部を有する第1凹型と、該第1凹部に対応する第1凸部を有する第1凸型とを用い、上記帯状金属素材の上記カール片部を上記第1凸型側に位置させた状態で、該帯状金型素材を上記第1凹部と上記第1凸部との間に挟むことによって、上記最終形状の曲率半径より大きい曲率半径の略円弧状を呈する上記管状本体部を成形する第1本体曲げ工程と、
略円弧状の凹部であって上記管状本体部の最終形状の曲率半径よりも小さい曲率半径の第2凹部を有する第2凹型と、該第2凹部に対応すると共に該第2凹部の開口幅よりも小さい幅寸法の第2凸部を有する第2凸型とを用い、上記カール片部を上記第2凸型側に位置させた状態で、上記管状本体部を上記第2凹部と上記第2凸部との間に挟むことによって、上記管状本体部の中央底部近傍を上記最終形状の曲率半径より小さい曲率半径の略円弧状に成形する第2本体曲げ工程と、
略円弧状の凹部であって上記管状本体部の最終形状の曲率半径と同等の曲率半径の第3凹部及び第4凹部をそれぞれ有する第3凹型及び第4凹型とを用い、上記カール片部を上記第4凹部に収容するように位置させた状態で、上記管状本体部を上記第3凹部と上記第4凹部との間に挟むことによって、上記管状本体部を所望の管状形状に成形する第3本体曲げ工程とを有し、
かつ、上記第1本体曲げ工程に用いる上記第1凸型は、上記第1凸部の表面に長手方向に沿って伸びる第1突出角部を平行に複数設けてなり、上記第1本体曲げ工程の実施により、上記管状本体部の内面に上記第1突出角部に押圧された圧痕を長手方向に沿って複数形成することを特徴とする車両用構造部材の製造方法にある(請求項1)。
【0009】
第2の発明は、内部を中空部とした管状形状を呈する管状部を有する車両用構造部材であって、
上記管状部は、帯状金属素材を用いて円弧状に成形された管状本体部と、上記帯状金属素材の幅方向両側端部を曲げ返してなるカール片部とを有し、該カール片部の曲げ起点部分同士を近接させると共に、上記カール片部を上記中空部内に配置してなり、
第1の発明の車両用構造部材の製造方法により製造してなることを特徴とする車両用構造部材にある(請求項4)。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明の車両用構造部材の製造方法においては、平板帯状の上記帯状金属素材を準備して、これに上記予備曲げ工程と上記本体曲げ工程とを実施する。また、上記本体曲げ工程は、上述したごとく、少なくとも、第1本体曲げ工程、第2本体曲げ工程及び第3本体曲げ工程という3回の曲げ工程を含むものとする。さらに、上記第1本体曲げ工程に用いる上記第1凸型は、上記のごとく、上記第1凸部の表面に長手方向に沿って伸びる第1突出角部を平行に複数設けてなるものを用いる。
【0011】
このような特殊な形状の第1凸型を積極的に用いることにより、上記第1本体曲げ工程の実施によって、上記管状本体部の内面に上記第1突出角部に押圧された圧痕を長手方向に沿って複数形成することができる。そして、この圧痕が形成されることにより、第1本体曲げ工程での成形性、及びその後の第2、第3本体曲げ工程での成形性を向上させることができ、精度の高い成形が可能となる。この成形性向上効果は、上記帯状金属素材の強度が低い場合でも有効であるが、特に上記帯状金属素材が、超高張力鋼のような高い強度を有しているものについては非常に有効である。超高張力鋼のような高強度材は、一般的に成形が困難であって管状にすること自体がなしえないこともあるところ、上記圧痕の形成による成形性向上によって管状への成形が可能となる。
【0012】
つまり、本発明によって、従来のパイプの素材よりも格段に高強度の板素材を用いても上記管状部を成形可能となる。そのため、車両用構造部材の用途に合わせて上記帯状金属素材として非常に高強度なものを採用したとしても、容易に製造できる。それ故、本発明によれば、従来のパイプを主体とする構造部材と比べて同等以上の剛性が得られ、かつ、軽量化及び低コスト化を図ることができる車両用構造部材の製造方法を提供することができる。
【0013】
第2の発明の車両用構造部材は、上記中空部を備えた上記管状部を有している。そして、上記管状部は、帯状金属素材を用いて成形してある。そのため、従来のパイプを用いた場合よりも素材の低コスト化を図ることができる。また、上記管状部は、上記カール片部を備え、これを円弧状の管状本体部の内周側に位置させると共に、上記折り返し起点同士を近接させるという特殊な形状を有している。これにより、上記管状部は、単純に帯状素材を管状に成形した場合よりも剛性が大きく向上し、従来のパイプの場合と同等以上の剛性特性を得ることができる。さらに、この形状の工夫による剛性向上によって、上記カール片部の曲げ起点部分間を溶接等で構造的に接合する必要性が少ないので、加工コストも低コストに抑えることが可能となる。
【0014】
さらに、上記車両用構造部材は、上記第1の発明の製造方法によって製造する。これにより、上記帯状金属素材が非常に高強度なものでも優れた形状精度が得られる。したがって、上記帯状金属素材の材質の選択の自由度が非常に大きくなり、超高張力鋼のような非常に高強度の素材の採用も可能となり、さらなる高強度化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1における、車両用構造部材の(a)平面図、(b)背面図、(c)側面図。
【図2】実施例1における、図1のA−A線矢視断面図。
【図3】実施例1における、図1のB−B線矢視断面図。
【図4】実施例1における、図1のC−C線矢視断面図。
【図5】実施例1における、拡開端部近傍を示す斜視図。
【図6】実施例1における、管状部の(a)成形前、(b)予備曲げ工程後、(c)第1本体曲げ工程後、(d)第2本体曲げ工程後、(e)第3本体曲げ工程後の断面形状を示す説明図。
【図7】実施例1における、予備曲げ工程で使用する(a)予備凹型、(b)予備凸型を示す斜視図。
【図8】実施例1における、予備曲げ工程での管状部の(a)帯状金属素材をセットした状態、(b)成形完了した状態を示す説明図。
【図9】実施例1における、予備曲げ工程での拡開端部の(a)帯状金属素材をセットした状態、(b)成形完了した状態を示す説明図。
【図10】実施例1における、第1本体曲げ工程で使用する(a)第1凹型、(b)第2凸型を示す斜視図。
【図11】実施例1における、第1本体曲げ工程での管状部の(a)帯状金属素材をセットした状態、(b)成形完了した状態を示す説明図。
【図12】実施例1における、第2本体曲げ工程で使用する(a)第2凹型、(b)第2凸型を示す斜視図。
【図13】実施例1における、第2本体曲げ工程での管状部の(a)帯状金属素材をセットした状態、(b)成形完了した状態を示す説明図。
【図14】実施例1における、第2本体曲げ工程での拡開端部の(a)帯状金属素材をセットした状態、(b)成形完了した状態を示す説明図。
【図15】実施例1における、第3本体曲げ工程で使用する(a)第2凹型、(b)第2凸型を示す斜視図。
【図16】実施例1における、第3本体曲げ工程での管状部の(a)帯状金属素材をセットした状態、(b)成形完了した状態を示す説明図。
【図17】実施例1における、第3本体曲げ工程での拡開端部の(a)帯状金属素材をセットした状態、(b)成形完了した状態を示す説明図。
【図18】実施例2における、車両用構造部材の底面図。
【図19】実施例2における、図18のD−D線矢視断面図。
【図20】実施例3における、車両用構造部材の底面図。
【図21】実施例3における、図20のE−E線矢視断面図。
【図22】実施例4における、車両用構造部材の管状部の断面図。
【図23】実施例5における、車両用構造部材の管状部の断面図。
【図24】実施例6における、車両用構造部材の端部構造の別例を示す斜視図。
【図25】実施例6における、車両用構造部材の端部構造の別例を示す斜視図。
【図26】実施例6における、車両用構造部材の端部構造の別例を示す斜視図。
【図27】実施例7における、車両用構造部材の端部近傍を示す斜視図。
【図28】実施例8における、実験結果を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の車両用構造部材の製造方法においては、上記第1本体曲げ工程だけでなく、上記第2本体曲げ工程に用いる凸型も特殊な形状とすることがより好ましい。
即ち、上記第2本体曲げ工程に用いる上記第2凸型は、上記第2凸部の表面に長手方向に沿って伸びる第2突出角部を平行に複数設けてなり、上記第2本体曲げ工程の実施により、上記管状本体部の内面に上記第2突出角部に押圧された圧痕を長手方向に沿って複数形成することが好ましい(請求項2)。この場合には、上記の特殊な形状の第2凸型を積極的に用いることにより、上記第2本体曲げ工程の実施によって、上記管状本体部の内面に上記第2突出角部に押圧された圧痕を長手方向に沿って複数形成することができる。そして、この圧痕が形成されることにより、第2本体曲げ工程での成形性、及びその後の第3本体曲げ工程での成形性を向上させることができ、精度の高い成形が可能となる。この成形性向上は、上記と同様に、帯状金属素材の強度が低い場合はもとより、超高張力鋼のような高い強度を有しているものについては非常に有効である。
【0017】
したがって、本発明の製造方法を採用する限り、上記帯状金属素材は、引張強さが1GPa以上の超高張力鋼とすることができる(請求項3)。上記超高張力鋼を用いる場合には、帯状素材を管状に成形することが非常に困難であるが、本発明の製造方法によって容易に成形を実現できる。そして、得られた車両用構造部材は、高い剛性を有するものとなり、従来よりも軽量化を図ることが容易となる。
【0018】
また、本発明で製造する上記車両用構造部材は、上記管状部のみによって構成することができる。この場合には、別途準備したブラケット部材を上記管状部に接合し、当該ブラケット部材を介して他の部材に接合する構成を取ることができる。
また、上記車両用構造部材は、上記管状部の長手方向の一端又は両端に他の部材に接続するためのブラケット部を一体的に備える構造とすることもできる。ブラケット部としては、後述する拡開端部のように上記管状部と同じ素材から延設した構造を採用してもよいし、別途準備したブラケット部材を溶接等によって一体化させた構造を採用することもできる。ブラケット部材としては、パイプ状、平板状、その他の公知の様々な形状のものを採用できる。
【0019】
また、上記管状部の上記カール部の曲げ起点部分同士は、両者が接触するまで近接していることが好ましい。これにより、上記管状部の構造安定性がより向上する。
また、上記カール片部同士は、管状形状の内部においてその先端同士が互いに離れた形状とすることが好ましい。これにより、形状安定性が向上する。
【0020】
また、上記管状本体部の断面外形に接する輪郭が、長手方向の少なくとも一部において略真円形状であることが好ましい(請求項5)。上記管状本体部の断面外形に接する輪郭の形状が略真円形状(幾何学上定義される真円形状にかがらず、一般的に真円形状であると認識される形状を含む)である場合には、どの方向から応力が加えられてもほぼ均一な剛性特性を発揮させることができる。そのため、上記管状部においては、その全長をそのようなほぼ均一な剛性特性のものとしたい場合には、全長の上記輪郭形状を略真円形状とすることが好ましく、一部分のみそのようにしたい場合には、全長のうち一部の輪郭形状のみを略真円形状としてもよい。
【0021】
また、上記管状本体部の断面外形に接する輪郭が、長手方向の少なくとも一部において略楕円形状であってもよい(請求項6)。上記管状本体部の輪郭形状が略楕円形状(幾何学上定義される楕円形状に限らず、長径部と短径部とを有する一般的に楕円形状であると認識される形状を含む)の場合には、楕円形状の長径方向における曲げ剛性をさらに向上させることができる。この楕円形状の部分も、上記管状部の全長に設けてもよいし、一部のみに設けてもよい。
【0022】
また、上記管状部の長手方向端部の少なくとも一方には、上記曲げ起点部分間の間隔を拡げて幅寸法を上記管状部の外径寸法より大きくした拡開端部が形成されていることが好ましい(請求項7)。この場合には、上記拡開端部を他の部材と接合するためのブラケット部として用いることができる。また、上記拡開端部自体をブラケット部とせず、上記拡開端部を介して他部品よりなるブラケット部材を溶接等によって一体化させる構造をとることもできる。
上記拡開端部自体をブラケット部として用いる場合には、上記拡開端部には、他部品との接続固定を行うための貫通穴が形成されていることが好ましい(請求項8)。これにより、他部品との接続固定を容易に行うことができる。
【0023】
また、上記管状部は、長手方向の少なくとも一部において、上記管状本体部を内方に窪ませて形成したビード部を有する構造をとることもできる(請求項9)。この場合には、上記ビード部の存在によって、さらに剛性を高めることができる。
【0024】
また、上記ビード部は、窪んだ両壁部分を密着させた密着部を有していることが好ましい(請求項10)。この場合には、上記ビード部による剛性向上効果をさらに高めることができる。
【0025】
また、上記車両用構造部材の具体的な用途としては、代表的には、自動車のドア等に配設されるインパクトビームがある。さらに、センターピラー、フロントピラー、フロアサイドメンバー、フロントサイドメンバー、カウルパネル、ロッカパネルなどの自動車の車体骨格部品、サスペンション部品、その他の部品の一部を本発明の車両用構造部材に置き換えたり、あるいは追加して補強したりする用途がある。また、二輪車においては、フロントフォーク等の車体骨格部品の一部を本発明の車両用構造部材に置き換えたり、あるいは追加して補強したりする用途がある。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
本発明の実施例に係る車両用構造部材及びその製造方法につき、図1〜図17を用いて説明する。
本例の車両用構造部材1は、図1〜図5に示すごとく、内部を中空部19(図2)とした管状形状を呈する管状部10を有する車両用構造部材である。
管状部10は、帯状金属素材100(図6(a))を用いて円弧状に成形された管状本体部11と、上記帯状金属素材100の両側端部を曲げ返してなるカール片部12(図2)とを有する。カール片部12の曲げ起点部分15同士を近接させると共に、カール片部12を中空部19内に配置してなる。
【0027】
図1、図2に示すごとく、上記管状部10の管状本体部11は、断面外形に接する輪郭形状が、その全長においてほぼ真円に近い円形状となっている。もちろんカール片部12近傍は、真円から外れる形状を呈している。
カール片部12は、曲げ起点部分15近傍から略180°反転するように曲げ返されている。そして、2つのカール片部12の先端同士は互いに離れ、それぞれ管状本体部11の内周面に近づくように成形されている。このカール片部12の形状は、後述するごとく、本体曲げ工程の実施によって形成される。
【0028】
また、図1、図3〜図5に示すごとく、管状部10の長手方向両端には、他部品との接続固定を行うためのブラケットとなる拡開端部2が、管状部10と同じ帯状金属素材100から形成されている。拡開端部2は、管状部10の長手方向端部において、それぞれの曲げ起点部分25(24)間の間隔を徐々に拡げて幅寸法を管状部10の外径寸法より大きくしたものである。そのため、拡開端部2は、上記管状本体部11に連なって平板状となった平面部21と、その両端において上記カール片部12から連なる端部カール片部22とによって構成されている。
また、本例の拡開端部2は、他部品との接続固定を行うための貫通穴25が上記平面部21に設けられている。
【0029】
次に、車両用構造部材1の製造方法について説明する。
本例では、図6(a)に示すごとく、上記管状部10及び両端の拡開端部2を形成するに当たっては、超高張力鋼よりなる平板帯状の上記帯状金属素材100を準備する。そして、予備曲げ工程S1と本体曲げ工程S21〜S23とを行う。
予備曲げ工程S1は、図6(b)に示すごとく、帯状金属素材100の両側の曲げ起点部分15からカール片部12を折り曲げて起立させて断面略コ字状とする工程である。
本体曲げ工程S21〜S23は、図6(c)〜(e)に示すごとく、カール片部12が存在する側の面101が内面となるように帯状金属素材100を円弧状に成形して管状本体部11とすると共に、曲げ起点部分15同士を近接させる工程であり、後述する3つの工程から構成してある。
【0030】
上記予備曲げ工程S1は、図7、図8に示すごとく、略コ字状の成形面を有する予備凹部410を備えた予備凹型41と、予備凹部410に対応する予備凸部420を有する予備凸型42とを用いて行う。予備凹部410及び予備凸部420は、上記管状部10を成形する役割を果たす。図7、図9に示すごとく、予備凹型41は、上記予備凹部410に連ねて、最終的に拡開端部2となる部位を成形するための端部用予備凹部412を有している。この端部用予備凹部412は、コ字状の両側の起立部分が徐々に拡開するよう傾斜した凹部形状を呈している。また、予備凸型42は、予備凸部420に連ねて、拡開端部2形成用の端部用予備凸部422を有しいる。この端部用予備凸部422は、端部用予備凹部412に対応してコ字状の両側の起立部分が傾斜した凸状形状を呈している。
【0031】
予備曲げ工程S1を行うに当たっては、図8(a)及び図9(a)に示すごとく、予備凹型41と予備凸型42との間に間隙を空けておき、その間隙に平板状の帯状金属素材100を配置する。次いで、図8(b)に示すごとく、管状部10の成形部位においては、予備凸型42を相対的に予備凹型42に近づけることにより、予備凹部410と予備凸部420によって帯状金属素材100を挟み込み、その両側の曲げ起点部分15からカール片部12を折り曲げて起立させて断面略コ字状とする加工を実施する。これと同時に、図9(b)に示すごとく、拡開端部2の成形部位においては、予備凸型42を相対的に予備凹型42に近づけることにより、端部用予備凹部412と端部用予備凸部422によって帯状金属素材100を挟み込み、その両側の曲げ起点部分251から端部カール片部22を折り曲げて斜めに起立させて徐々に拡開するような断面略コ字状とする加工を実施する。
【0032】
次に、上記本体曲げ工程において第1番目に行う第1本体曲げ工程S21は、図10、図11に示すごとく、略円弧状の凹部であって管状本体部11の最終形状の曲率半径R1(図2)よりも大きい曲率半径の第1凹部510を有する第1凹型51と、第1凹部510に対応する第1凸部520を有する第1凸型52とを用いる。第1凹部510及び第1凸部520は、管状部10を成形する役割を果たす。図10に示すごとく、凹型51は、第1凹部510に連ねて、最終的に拡開端部2となる部位を成形するための端部用凹部512を有している。この端部用凹部512は、上述した予備凹型41の端部用予備凹部412と同じ形状を有している。また、第1凸型52は、第1凸部520に連ねて、拡開端部2形成用の端部用予備凸部522を有しいる。この端部用凸部522は、端部用予備凸部422と同じ形状を有している。
【0033】
図10、図11に示すごとく、第1凹部510は、滑らかな曲面形状を呈している。また、同図に示すごとく、第1凸部520は、全体的に第1凹部510の曲面形状に対応する形状となっているが、断面で見れば、直線を順次屈曲させた多角形の一部のような形状を呈している。そして、その屈曲部が第1突出角部523であり、これが長手方向に沿って平行に複数存在する。
【0034】
そして、第1本体曲げ工程S21は、まず、図11(a)に示すごとく、帯状金属素材100のカール片部12を第1凸型52側に位置させた状態で、第1凹型51と第1凸型52との間の間隙に帯状金属素材100を配置する。次いで、図11(b)に示すごとく、両型を近接させ、帯状金型素材100を第1凹部510と第1凸部520との間に挟むことによって、最終形状の曲率半径より大きい曲率半径の略円弧状を呈する途中形状の管状本体部11を成形する。また、このとき、管状本体部11の内面には、第1突出角部523に押圧された圧痕181が長手方向に沿って複数形成される。この圧痕181は、第1本体曲げ工程S21での曲げ加工性及び後述する第2、第3本体曲げ工程S22、S23での曲げ加工性を向上させる役割を果たす。
また、上記管状部10の成形と同時に、帯状金型素材100を端部用第1凹部512と端部用第1凸部522との間に挟むことによって、拡開端部2形成部位は、予備曲げ工程S1での形状がそのまま維持される。
【0035】
次に、上記本体曲げ工程において第2番目に行う第2本体曲げ工程S22は、図12、図13に示すごとく、略円弧状の凹部であってその中央底面部分が管状本体部11の最終形状の曲率半径R1(図2)よりも小さい曲率半径である第2凹部610を有する第2凹型61と、第2凹部610の中央底面部分に対応する形状の先端部分を有すると共に第2凹部610の開口幅よりも小さい幅寸法の第2凸部620を有する第2凸型62とを用いる。第2凹部610及び第2凸部620は、管状部10を成形する役割を果たす。図12、図14に示すごとく、第2凹型61は、第2凹部610に連ねて、最終的に拡開端部2となる部位を成形するための端部用第2凹部612を有している。この端部用予備凹部612は、コ字状の幅が予備凹型41及び第1凹型51の場合よりも狭い凹部形状を呈している。また、第2凸型62は、第2凸部620に連ねて、拡開端部2形成用の端部用第2凸部622を有しいる。この端部用第2凸部622は、その先端側が端部用第2凹部612に対応しており、その基端側の幅寸法を小さくした特殊形状としてある。
【0036】
図13に示すごとく、第2凹部610は、その中央底面部分近傍が、管状本体部11の最終形状の曲率半径R1(図2)よりも小さい曲率半径の滑らかな曲面形状となっており、開口部側は曲率半径が大きく、斜めのほぼ直線状となって、開口部に近づくほど拡開している。
また、第2凸部620は、その先端部が第2凹部610の中央底面部分の曲面形状に対応する形状となっているが、断面で見れば、直線を順次屈曲させた多角形の一部のような形状を呈している。そして、その屈曲部が第2突出角部623であり、これが長手方向に沿って平行に複数存在する。
【0037】
そして、第2本体曲げ工程S22は、まず、図13(a)及び図14(a)に示すごとく、カール片部12を第2凸型62側に位置させた状態で、第2凹型61と第2凸型62との間の間隙に帯状金属素材100を配置する。次いで、図13(b)に示すごとく、両型を近接させ、管状本体部11を第2凹部610と第2凸部620との間に挟むことによって、管状本体部11の中央底部近傍を最終形状の曲率半径R1(図2)より小さい曲率半径の略円弧状に成形する。また、このとき、管状本体部11の内面には、第2突出角部623に押圧された圧痕182が長手方向に沿って複数形成される。この圧痕182は、第2本体曲げ工程S22での曲げ加工性及び後述する第3本体曲げ工程S23での曲げ加工性を向上させる役割を果たす。
【0038】
また、図14(b)に示すごとく、上記管状本体部11の成形と同時に、途中形状の拡開端部2を端部用第2凹部612と端部用第2凸部622との間に挟むことによって、端部カール片部22をより広い領域として最終形状に近づけた途中形状の拡開端部2を成形する。
【0039】
次に、上記本体曲げ工程において第3番目に行う第3本体曲げ工程S23は、図15、図16に示すごとく、略円弧状の凹部であって管状本体部11の最終形状の曲率半径R1(図2)と同等の曲率半径の第3凹部710及び第4凹部720をそれぞれ有する第3凹型71及び第4凹型72とを用いる。第3凹部710及び第4凹部720は、管状部10を成形する役割を果たす。図15、図17に示すごとく、第3凹型71および第4凹型72には、その両端に拡開端部形成用の端部用第3凹部712および端部用第4凹部722をそれぞれ第3凹部710および第4凹部720と連ねて備えている。
【0040】
図15(b)、図16に示すごとく、第3凹部710は、略半円状であって、その曲率半径が上記のごとく管状本体部11の最終形状の曲率半径R1(図2)と同等である。また、第3凹部710の側方は、幅方向外側から内側に近づくにしたがって徐々に山状に盛り上がる山形状となるように、一対のテーパ部713が形成されている。
【0041】
図15(a)、図16に示すごとく、第4凹部720は、略半円状であって、その曲率半径が上記のごとく管状本体部11の最終形状の曲率半径R1(図2)と同等である。また、第4凹部720の側方は、幅方向外側から内側に近づくにしたがって徐々に谷状に窪む谷形状となるように、一対のテーパ部723が形成されている。
【0042】
図15(b)、図17に示すごとく、端部用第3凹部712は、拡開端部2の平面部21の最終形状の幅寸法と同じ凹部を有している。また、端部用第3凹部712の側方は、幅方向外側から内側に近づくにしたがって徐々に山状に盛り上がる山形状となるように、一対のテーパ部714が形成されている。
【0043】
図15(b)、図17に示すごとく、端部用第4凹部722は、拡開端部2の端部カール片部22に対応する2つの凹所を持つ形状を有している。また、端部用第4凹部722の側方は、幅方向外側から内側に近づくにしたがって徐々に谷状に窪む谷形状となるように、一対のテーパ部724が形成されている。
【0044】
そして、第3凹型71と第4凹型72とは、両者を組み合わせたときに、第3凹部710と第4凹部720の側方のテーパ部713とテーパ部723とが当接し、また、端部用第3凹部712と端部用第4凹部722の側方のテーパ部714とテーパ部724とが当接するよう構成されている。また、その状態で、第3凹部710と第4凹部720がほぼ真円を形作り、端部用第3凹部712と端部用第4凹部722が拡開端部2の輪郭に沿った形状を形作るよう構成されている。また、テーパ部713とテーパ部723及びテーパ部714とテーパ部724の傾斜角度は、両型のプレス方向に対して45°傾斜した角度とした。
【0045】
第3本体曲げ工程S23は、まず、図16(a)、図17(a)に示すごとく、カール片部12を第4凹部720に収容するように位置させた状態で、第3凹型71と第4凹型72との間の間隙に帯状金属素材100を配置する。次いで、図16(b)に示すごとく、両型を近接させ、管状本体部11を第3凹部710と第4凹部720との間に挟むことによって、管状本体部11を所望の管状形状に成形する。同時に、図17(a)(b)に示すごとく、途中形状の拡開端部2を端部用第3凹部712と端部用第4凹部722との間に挟むことによって、所望形状の拡開端部2を成形する。
【0046】
管状部10は、図16(a)の状態から図16(b)の状態に成形される途中で、カール片部12の曲げ起点部分15近傍が第4凹型72のテーパ部723に当接し、これに沿って両側のものが互いに近づくよう変形する。また、その変形途中で、カール片部12が互いに先端側から当接し、成形が進むにつれてカール片部12自体も変形していく。そして、最終的に、図16(b)に示すごとく、カール片部12は、曲げ起点部分15近傍から略180°反転するように曲げ返され、2つのカール片部12の先端同士は互いに離れ、それぞれ管状本体部11の内周面に近づくように成形される。
【0047】
その後、拡開端部2の平面部21に貫通穴25を形成することによって、本例の車両用構造部材1が完成する。
【0048】
このようにして製造された本例の車両用構造部材1は、上述したごとく、内部を中空部19とした管状形状を呈する管状部10を有する。そして、この管状部10は、帯状金属素材100を用いて成形してあるので、従来のパイプを用いた場合よりも素材の低コスト化を図ることができる。
【0049】
また、管状部10は、円弧状に成形された管状本体部11と上記カール片部12とを有し、カール片部12の曲げ起点部分15同士を近接させると共に、カール片部12を中空部19内に配置するという特殊な形状を有している。これにより、管状部10は、単純に帯状素材を管状に成形した場合よりも剛性が大きく向上し、従来のパイプの場合と同等以上の剛性特性を得ることができる。
【0050】
また、車両用構造部材1は、管状部10の長手方向両端に、上記拡開端部2を管状部10と同じ素材から一体的に成形してなる。そのため、別途ブラケット部材を準備する場合よりも総合的なコストを低減することが可能となる。また、ブラケット部材となる拡開端部2が管状部10と同じ素材から一体的に成形されているので、組み付け安定性も高い。
【0051】
また、上記製造方法においては、平板帯状の上記帯状金属素材100を準備して、これに予備曲げ工程S1と第1〜第3の本体曲げ工程S21〜S23とを実施する。予備曲げ工程S1を実施してカール片部12を事前に形成し、その後本体曲げ工程S21〜S23を行う。そして、特に注目すべきことは、本例では、第1本体曲げ工程S21と第2本体曲げ工程S22とにおいて、第1突出角部523及び第2突出角部を有する金型によって、管状本体部11の内面に圧痕181、圧痕182を複数形成することである。これにより、本例のように帯状金属素材100が超高張力鋼のような高強度材料であっても、曲げ加工を容易化することができ、精度よく管状部10を成形することができる。
【0052】
(実施例2)
本例の車両用構造部材102は、実施例1の車両用構造部材1の管状部10の形状を変更したものである。
即ち、図18、図19に示すごとく、本例の車両用構造部材102の管状部10は、長手方向の一部において、管状本体部10を内方に窪ませて形成したビード部3を有する。ビード部3は、同図に示すごとく、管状部10の周方向における位置については、カール片部12の曲げ起点部分15と反対側の位置に形成されている。ビード部3の長手方向おける位置については、中央部と、両端近傍の3箇所に分かれている。
また、ビード部3の断面形状は、窪んだ両壁35の間に空隙がある略U字状の形状である。
【0053】
このようなビード部3を形成するに当たっては、前述した実施例1における第1本体曲げ工程S21を行う前に、ビード成形工程を実施する(図示略)。ビード成形工程は、2つの成形工程より行い、まずは、最終のビード形状よりも緩やかな突出形状の凸型及び凹型を用いて張り出し成形を行い、その後、最終のビード形状に近い突出形状の凸型及び凹型を用いてさらに張り出し形状を行ってビード部を形成する。
その後、本体曲げ工程では、各凸型の頂点部分に、ビード部3と干渉しないように削った窪み部を設けて実施する。本体曲げ工程自体は、実施例1と同様である。
【0054】
得られた車両用構造部材102は、上記ビード部3の存在によって、これがない場合に比べてさらに剛性を高めることができる。その他は、実施例1と同様の作用効果が得られる。
【0055】
(実施例3)
本例の車両用構造部材103も、実施例1の車両用構造部材1の管状部10の形状を変更したものである。
即ち、図20、図21に示すごとく、本例の車両用構造部材103の管状部10は、長手方向ほぼ全長において、管状本体部10を内方に窪ませて形成したビード部32を有する。ビード部32は、同図に示すごとく、管状部10の周方向における位置については、カール片部12の曲げ起点部分15と反対側の位置に形成されている。ビード部32のの断面形状は、窪んだ両壁325部分を密着させた密着部を有している。
【0056】
このようなビード部32を形成するに当たっては、基本的に実施例2と同様であるが、最終的に窪んだ両壁325が密着するようにしごき加工ができるような金型を用いる(図示略)。
【0057】
得られた車両用構造部材103は、上記ビード部32の存在によって、これがない場合に比べてさらに剛性を高めることができる。その他は、実施例1と同様の作用効果が得られる。
【0058】
(実施例4)
本例の車両用構造部材104も、実施例1の車両用構造部材1の管状部10の形状を変更したものである。
即ち、図22に示すごとく、本例の車両用構造部材104の管状部10は、長手方向ほぼ全長において、管状本体部11の断面外形に接する輪郭が、略楕円形状である。本例の管状本体部11の楕円形状は、カール片部12の曲げ起点部分15の位置する部分を長径部とし、これに直交する部分を短径部とした、いわば縦型楕円形状である。
【0059】
このような管状本体部11の縦型楕円形状を得るに当たっては、実施例1における第3本体曲げ工程S23で用いる第3凹型71及び第4凹型72の第3凹部710及び第4凹部720を、所望の縦型楕円形状に対応する形状にとする。
【0060】
得られた車両用構造部材104は、管状部10が上記のごとく縦型楕円形状であるので、その長径部方向からの応力に対する剛性をさらに高めることができる。その他は、実施例1と同様の作用効果が得られる。
【0061】
(実施例5)
本例の車両用構造部材105も、実施例1の車両用構造部材1の管状部10の形状を変更したものである。
即ち、図23に示すごとく、本例の車両用構造部材105の管状部10は、長手方向ほぼ全長において、管状本体部11の断面外形に接する輪郭が、略楕円形状である。本例の管状本体部11の楕円形状は、カール片部12の曲げ起点部分15の位置する部分を短径部とし、これに直交する部分を長径部とした、いわば横型楕円形状である。
【0062】
このような管状本体部11の横型楕円形状を得るに当たっては、実施例1における第3本体曲げ工程S23で用いる第3凹型71及び第4凹型72の第3凹部710及び第4凹部720を、所望の横型楕円形状に対応する形状にとする。
【0063】
得られた車両用構造部材105は、管状部10が上記のごとく横型楕円形状であるので、その長径部方向からの応力に対する剛性をさらに高めることができる。その他は、実施例1と同様の作用効果が得られる。
【0064】
(実施例6)
本例では、実施例1の車両用構造部材1の両端または一端の拡開端部2の構成の変更あるいは他のブラケット部材への変更例を示す。
まず、図24に示す例は、実施例1の拡開端部2と基本形状を同じとした拡開端部202の例である。拡開端部202は、貫通穴26を1つ設け、その開口部周縁に円筒状のリブ部265を形成し、さらに、リブ部265の周囲に位置する端部カール片部22に円弧状に切り欠きを設けた構造を有している。その他は、実施例1と同様である。
【0065】
図25に示す例は、実施例1とほぼ同様の拡開端部の先端に平板状の接合板部27を連ねたタイプの拡開端部203の例である。接合板部27は、車両用構造部材の素材の一部を成形せずに平板状に残すことによって容易に得ることができる。接合板部27は、溶接によって他部材と接合可能である。また、接合板部27に貫通穴を設けてボルト等の連結部材によって他部材と接合することも可能である。その他は、実施例1と同様である。
【0066】
図26に示す例は、実施例1のような拡開端部を成形することなく、管状部10の端部に筒状のブラケット部材204を溶接により接合した例である。その他は、実施例1と同様である。
【0067】
以上のように、本発明の車両用構造部材における長手方向の両端部は、様々な構造を採用することができ、車両用構造部材の用途に応じて最適な接合方法を選択することが可能である。
【0068】
(実施例7)
本例の車両用構造部材107は、実施例1の車両用構造部材1における管状部10のみで構成したものである。すなわち、図27に示すごとく、車両用構造部材107の長手方向端面は、管状部10の形状のままであり、円弧状に成形された管状本体部11と、曲げ返してなるカール片部12とを有し、カール片部12の曲げ起点部分15同士を近接させると共に、カール片部12を中空部19内に配置した形状を呈している。
この場合には、別部材のブラケット部材を準備して、車両用構造部材107(管状部10)に取り付けることにより、他部材との接合を行うことができる。そして、このような、管状部10のみからなる車両用構造部材107は、ある程度長尺に設けておけば、用途に応じて切断して最適な長さとすることができ、汎用性に優れる。その他は、実施例1と同様の作用効果が得られる。
【0069】
(実施例8)
本例では、実施例1の車両用構造部材1の優れた剛性を定量的に評価するための実験を行った。
実験に供する試料としては、本発明の例として3種類(試料E1〜E3)、従来例として1種類(試料C4)準備した。
【0070】
試料E1は、実施例1と同形状であって、管状部11の外径が31.8mm、肉厚が2.0mmであり、長手方向端部に上述した拡開端部2を有するものである。全長は、210mmである。
素材材質は、引張強さが1180MPaの超高張力鋼である。
【0071】
試料E2は、実施例1と同形状の管状部11のみからなるものであって、外径が31.8mm、肉厚が2.0mmであり、長手方向端部に上述した拡開端部2を持たず、全長は、210mmである。
素材材質は、引張強さが1180MPaの超高張力鋼である。
【0072】
試料E3は、実施例1と同形状の管状部11のみからなるものであって、外径が28.0mm、肉厚が2.0mmであり、長手方向端部に上述した拡開端部2を持たず、全長は、210mmである。
素材材質は、引張強さが1180MPaの超高張力鋼である。
【0073】
試料C4は、丸パイプであって、外径が31.8mm、肉厚が2.0mmであり、長手方向端部の何も設けず、全長は、210mmである。
素材材質は、引張強さが1180MPaの高周波焼き入れ鋼である。
【0074】
実験は、アムスラー式試験機を用いて、試験子R13、加圧支点間距離200mmという条件で行い、その曲げ剛性を測定した。
【0075】
実験の結果は、図28に示す。同図は、横軸に試験子のストローク(mm)を取り、縦軸に試験子に与える荷重(kN)を取った。同図に、試料E1〜E3は、符号E1〜E3で示し、試料C4は符号C4で示した。
【0076】
同図から知られるごとく、本発明の実施例である試料E1、試料E2は、同等のサイズの従来例の試料C4に比べ、その曲げ剛性が大きく向上していることがわかる。また、本発明の実施例である試料E3は、従来例の試料C4に比べてサイズが小さくてもほぼ同等の曲げ剛性が得られることがわかる。
【0077】
以上の結果から、本発明の車両用構造部材は、従来のパイプを主体とする構造部材と比べて同等以上の剛性が得られ、かつ、軽量化及び低コスト化を図ることができることがわかる。
【符号の説明】
【0078】
1、102〜105、107 車両用構造部材
10 管状部
11 管状本体部
12 カール片部
15 曲げ起点部分
2 拡開端部
41 予備凹型
410 予備凹部
42 予備凸型
420 予備凸部
51 第1凹型
510 第1凹部
52 第1凸型
520 第1凸部
61 第2凹型
610 第2凹部
62 第2凸型
620 第2凸部
71 第3凹型
710 第3凹部
72 第4凹型
720 第4凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を中空部とした管状形状を呈する管状部を有する車両用構造部材を製造する方法であって、
平板帯状の帯状金属素材の幅方向両側端部を折り曲げて起立させたカール片部を形成し、断面略コ字状とする予備曲げ工程と、
上記カール片部が存在する側の面が内面となるように上記帯状金属素材を円弧状に成形して管状本体部とすると共に、上記カール片部の曲げ起点部分同士を近接させることによって上記カール片部を上記管状本体部の中空部内に配置する本体曲げ工程とを有し、
該本体曲げ工程は、略円弧状の凹部であって上記管状本体部の最終形状の曲率半径よりも大きい曲率半径の第1凹部を有する第1凹型と、該第1凹部に対応する第1凸部を有する第1凸型とを用い、上記帯状金属素材の上記カール片部を上記第1凸型側に位置させた状態で、該帯状金型素材を上記第1凹部と上記第1凸部との間に挟むことによって、上記最終形状の曲率半径より大きい曲率半径の略円弧状を呈する上記管状本体部を成形する第1本体曲げ工程と、
略円弧状の凹部であって上記管状本体部の最終形状の曲率半径よりも小さい曲率半径の第2凹部を有する第2凹型と、該第2凹部に対応すると共に該第2凹部の開口幅よりも小さい幅寸法の第2凸部を有する第2凸型とを用い、上記カール片部を上記第2凸型側に位置させた状態で、上記管状本体部を上記第2凹部と上記第2凸部との間に挟むことによって、上記管状本体部の中央底部近傍を上記最終形状の曲率半径より小さい曲率半径の略円弧状に成形する第2本体曲げ工程と、
略円弧状の凹部であって上記管状本体部の最終形状の曲率半径と同等の曲率半径の第3凹部及び第4凹部をそれぞれ有する第3凹型及び第4凹型とを用い、上記カール片部を上記第4凹部に収容するように位置させた状態で、上記管状本体部を上記第3凹部と上記第4凹部との間に挟むことによって、上記管状本体部を所望の管状形状に成形する第3本体曲げ工程とを有し、
かつ、上記第1本体曲げ工程に用いる上記第1凸型は、上記第1凸部の表面に長手方向に沿って伸びる第1突出角部を平行に複数設けてなり、上記第1本体曲げ工程の実施により、上記管状本体部の内面に上記第1突出角部に押圧された圧痕を長手方向に沿って複数形成することを特徴とする車両用構造部材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用構造部材の製造方法において、上記第2本体曲げ工程に用いる上記第2凸型は、上記第2凸部の表面に長手方向に沿って伸びる第2突出角部を平行に複数設けてなり、上記第2本体曲げ工程の実施により、上記管状本体部の内面に上記第2突出角部に押圧された圧痕を長手方向に沿って複数形成することを特徴とする車両用構造部材の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用構造部材の製造方法において、上記帯状金属素材は、引張強さが1GPa以上の超高張力鋼よりなることを特徴とする車両用構造部材の製造方法。
【請求項4】
内部を中空部とした管状形状を呈する管状部を有する車両用構造部材であって、
上記管状部は、帯状金属素材を用いて円弧状に成形された管状本体部と、上記帯状金属素材の幅方向両側端部を曲げ返してなるカール片部とを有し、該カール片部の曲げ起点部分同士を近接させると共に、上記カール片部を上記中空部内に配置してなり、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用構造部材の製造方法により製造してなることを特徴とする車両用構造部材。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用構造部材において、上記管状本体部の断面外形に接する輪郭が、長手方向の少なくとも一部において略真円形状であることを特徴とする車両用構造部材。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の車両用構造部材において、上記管状本体部の断面外形に接する輪郭が、長手方向の少なくとも一部において略楕円形状であることを特徴とする車両用構造部材。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の車両用構造部材において、上記管状部の長手方向端部の少なくとも一方には、上記曲げ起点部分間の間隔を拡げて幅寸法を上記管状部の外径寸法より大きくした拡開端部が形成されていることを特徴とする車両用構造部材。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用構造部材において、上記拡開端部には、他部品との接続固定を行うための貫通穴が形成されていることを特徴とする車両用構造部材。
【請求項9】
請求項4〜8のいずれか1項に記載の車両用構造部材において、上記管状部は、長手方向の少なくとも一部において、上記管状本体部を内方に窪ませて形成したビード部を有することを特徴とする車両用構造部材。
【請求項10】
請求項9に記載の車両用構造部材において、上記ビード部は、窪んだ両壁部分を密着させた密着部を有していることを特徴とする車両用構造部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2011−104603(P2011−104603A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259527(P2009−259527)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(599121746)株式会社 富士ワールド (7)
【Fターム(参考)】