説明

車両用舵角推定装置及びそれを搭載した電動パワーステアリング装置

【課題】ステアリング機構で検出したSAT検出値(推定値)と、演算で求めたSAT演算値とを比較し、4輪だけでなく、2輪の回転速度のみからでもステアリング特性の変化を検知し、誤推定がなく、精度良く舵角若しくは絶対舵角を出力することができる車両用舵角推定装置を提供する。
【解決手段】車両の左右車輪の回転速度を検出する車輪回転速度センサを備える車両用舵角推定装置であり、車輪回転速度センサで検出した車輪回転速度に基づいて車輪からハンドルに作用する物理量を演算して出力する物理量演算部と、前記物理量及びSAT検出値若しくはSAT推定値に基づいて推定舵角を出力する推定舵角出力部とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪(4輪又は2輪)の回転速度(車輪速)、セルフアライニングトルク(SAT)及びモータの回転角度に基づいて舵角を推定する車両用舵角推定装置及びそれを搭載した電動パワーステアリング装置に関し、特に車両のステアリング特性の変化を検知することができ、車輪が舵角の推定に相応しくない状態を検知することにより、舵角の誤推定を防止し、精度良く実舵角を推定することができる車両用舵角推定装置及びそれを搭載した電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリング装置をモータの回転力で補助負荷付勢する電動パワーステアリング装置は、モータの駆動力を減速機を介してギア又はベルト等の伝達機構により、ステアリングシャフト或いはラック軸に補助負荷付勢するようになっている。かかる従来の電動パワーステアリング装置は、アシストトルク(操舵補助力)を正確に発生させるため、モータ電流のフィードバック制御を行っている。フィードバック制御は、電流指令値とモータ電流検出値との差が小さくなるようにモータ印加電圧を調整するものであり、モータ印加電圧の調整は、一般的にPWM(パルス幅変調)制御のデュ−ティ比の調整で行っている。
【0003】
ここで、電動パワーステアリング装置の一般的な構成を図15に示して説明すると、ハンドル1のコラム軸2は減速ギア3、ユニバーサルジョイント4a及び4b、ピニオンラック機構5を経て操向車輪のタイロッド6に連結されている。コラム軸2には、ハンドル1の操舵トルクを検出するトルクセンサ10が設けられており、ハンドル1の操舵力を補助するモータ20が、減速ギア3を介してコラム軸2に連結されている。パワーステアリング装置を制御するコントロールユニット30には、バッテリ14から電力が供給されると共に、イグニッションキー11を経てイグニッション信号が入力され、コントロールユニット30は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクThと車速センサ12で検出された車速Vとに基づいてアシスト指令の操舵補助指令値Iの演算を行い、演算された操舵補助指令値Iに基づいてモータ20に供給する電流を制御する。
【0004】
ステアリング機構は図16に示すような構成になっており、モータ20は減速ギア(ウォームギア)3を経てコラム軸2に回転力(アシストトルク)を付与するようになっており、モータ20に取り付けられたモータ回転角センサ21の出力、コラム軸2に取り付けられたトルクセンサ10の出力がコントロールユニット30に入力される。そして、コントロールユニット30がモータ20を駆動制御するようになっている。
【0005】
コントロールユニット30は主としてCPU(MPUやMCUを含む)で構成されるが、そのCPU内部においてプログラムで実行される一般的な機能を示すと図17のようになる。
【0006】
図17を参照してコントロールユニット30の機能及び動作を説明すると、トルクセンサ10で検出された操舵トルクThは操舵補助指令値演算部32に入力され、車速センサ12で検出された車速Vも操舵補助指令値演算部32に入力される。操舵補助指令値演算部32は、入力された操舵トルクTh及び車速Vに基づいて、メモリ33に記憶されているアシストマップを参照してモータ20に供給する電流の制御目標値である操舵補助指令値Iを決定する。操舵補助指令値Iは減算部30Aに入力されると共に、応答速度を高めるためのフィードフォワード系の微分補償部34に入力され、減算部30Aの偏差(I−i)は比例演算部35に入力されると共に、フィードバック系の特性を改善するための積分演算部36に入力され、その比例出力は加算部30Bに入力される。微分補償部34及び積分補償部36の出力も加算部30Bに加算入力され、加算部30Bでの加算結果である電流制御値Eが、モータ駆動信号としてモータ駆動回路37に入力される。モータ駆動回路37にはバッテリ14から電力が供給され、モータ20のモータ電流値iはモータ電流検出部38で検出され、モータ電流値iは減算部30Aに入力されてフィードバックされる。
【0007】
このような電動パワーステアリング装置では、操舵の状態を把握する必要から操舵角(舵角)を検出若しくは推定する必要があり、舵角センサを設けて検出すれば正確に舵角を検出することができるが、舵角センサ分だけコストアップになる。そのため、従来は車輪回転速度から舵角を推定する手法が種々提案されている。実際、車両の幾何的関係のみから舵角を推定すると、操舵や路面状態などにより推定誤差が生じたり、誤推定してしまったりする恐れがある。
【0008】
かかる問題を解決するものとして、例えば特開2005−98827号公報(特許文献1)に車両用操舵角推定装置が提案されている。この特許文献1に開示されている装置は、4輪それぞれに車輪回転速度センサを具備し、各車輪回転速度センサからの車輪回転速度に基づいて車両の操舵角を推定する車両用操舵角推定装置であり、前後左右2輪ずつの車輪回転速度の関係を比較することによって、前記4輪のスリップを検知するようになっている。
【特許文献1】特開2005−98827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示の車両用操舵角推定装置では、4輪の回転速度が必要であり、2輪(前輪又は後輪)の回転速度しか得られない車種に対しては対応できないという問題がある。
【0010】
本発明は上述のような事情によりなされたものであり、本発明の目的は、ステアリング機構で検出若しくは推定したSAT検出値若しくはSAT推定値と、演算で求めたSAT演算値とを比較し、4輪だけでなく、2輪の回転速度のみからでもステアリング特性の変化を確実に検知し、誤推定がなく、精度良く舵角若しくは絶対舵角を出力することができる車両用舵角推定装置を提供することにある。また、上記車両用舵角推定装置を搭載した電動パワーステアリング装置を提供することも、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、車両の左右車輪の回転速度を検出する車輪回転速度センサを備える車両用舵角推定装置に関し、本発明の上記目的は、前記車輪回転速度センサで検出した車輪回転速度に基づいて車輪からハンドルに作用する物理量を演算して出力する物理量演算部と、前記物理量及びSAT検出値若しくはSAT推定値に基づいて推定舵角2を出力する推定舵角出力部とを設けることにより達成され、更に前記物理量がハンドル舵角に相当する推定舵角1であって、前記推定舵角出力部を、前記推定舵角1に基づいてSAT演算値を求めるSAT演算手段と、前記SAT演算値及び前記SAT検出値若しくはSAT推定値の差の絶対値を所定値1と比較する比較判定手段と、前記比較判定手段の結果に基づいて、前記推定舵角1の前記推定舵角2としての出力をオンオフする切替手段とで構成することにより、或いは前記物理量が路面から前記車輪に作用するSATに相当するSAT演算値であって、前記SAT演算値に基づいて推定舵角1を求める舵角演算手段と、前記推定舵角出力部が、前記SAT演算値及び前記SAT検出値若しくはSAT推定値の差の絶対値を所定値1と比較する比較判定手段と、前記比較判定手段の結果に基づいて、前記推定舵角1の前記推定舵角2としての出力をオンオフする切替手段とで構成されていることにより、或いは前記物理量1が舵角に相当する推定舵角1であって、前記推定舵角出力部を、前記SAT検出値若しくはSAT推定値に基づいて演算舵角3を求める舵角演算手段と、前記推定舵角1及び前記演算舵角3の差の絶対値を所定値2と比較する比較判定手段と、前記比較判定手段の結果に基づいて、前記推定舵角1の前記推定舵角2としての出力をオンオフする切替手段とで構成することにより、或いは前記比較判定手段が、前記SAT差の絶対値が前記所定値1以下であり、かつ所定時間以上継続した場合に、前記切替手段を介して前記推定舵角1を前記推定舵角2として出力するようになっていることにより、或いは前記比較判定手段が、前記SAT差の絶対値が前記所定値1よりも大きい場合には、前記推定舵角1を前記推定舵角2として出力しないようになっていることにより、或いは前記比較判定手段が、前記舵角差の絶対値が前記所定値2以下であり、かつ所定時間以上継続した場合に、前記切替手段を介して前記推定舵角1を前記推定舵角2として出力するようになっていることにより、或いは前記比較判定手段が、前記舵角差の絶対値が前記所定値2よりも大きい場合には、前記推定舵角1を前記推定舵角2として出力しないようになっていることにより達成される。
【0012】
また、本発明は、車両の操舵系に操舵補助力を付与するモータのモータ回転角を検出するモータ回転角センサと、車両の左右車輪の回転速度を検出する車輪回転速度センサを備える車両用舵角推定装置に関し、本発明の上記目的は、前記車輪回転速度センサで検出した車輪回転速度から推定舵角1を推定して出力する舵角推定部と、前記推定舵角1に基づいてSAT演算値を求め、前記SAT演算値及びSAT検出値若しくはSAT推定値の差の絶対値を求め、前記SAT差の絶対値により推定舵角2を出力する推定舵角出力部と、前記推定舵角1及び2、前記SAT差の絶対値、前記モータ回転角を前記操舵系の減速比で除算した相対舵角により絶対舵角1を出力する絶対舵角推定部とを設けることにより、或いは前記車輪回転速度センサで検出した車輪回転速度から推定舵角1を推定して出力する舵角推定部と、SAT検出値若しくはSAT推定値に基づいて演算舵角3を求め、前記演算舵角3及び前記推定舵角1の差の絶対値を求め、前記舵角差の絶対値により推定舵角2を出力する推定舵角出力部と、前記推定舵角1及び2、前記舵角差の絶対値、前記モータ回転角を前記操舵系の減速比で除算した相対舵角により絶対舵角1を出力する絶対舵角推定部とを設けることにより達成される。
【0013】
更に、本発明の上記目的は、前記絶対舵角推定部を、前記推定舵角2及び前記相対舵角に基づいて絶対舵角2を算出する絶対舵角算出部と、前記SAT差の絶対値若しくは舵角差の絶対値が前記所定値1以下で所定時間1を経過したときに、前記絶対舵角2を補正した絶対舵角1を出力する補正出力部とで構成することにより、或いは前記推定舵角出力部を、前記推定舵角1に基づいてSAT演算値を求めるSAT演算手段と、前記SAT演算値及びSAT検出値若しくはSAT推定値の差の絶対値を所定値2と比較する比較判定手段と、前記比較判定手段の結果に基づいて、前記推定舵角1の前記推定舵角2としての出力をオンオフする切替手段とで構成することにより、或いは前記推定舵角出力部を、前記SAT検出値若しくはSAT推定値に基づいて演算舵角3を求める舵角演算手段と、前記推定舵角1及び前記演算舵角3の差の絶対値を所定値3と比較する比較判定手段と、前記比較判定手段の結果に基づいて、前記推定舵角1の前記推定舵角2としての出力をオンオフする切替手段とで構成することにより、或いは前記比較判定手段が、前記SAT差の絶対値が前記所定値2以下であり、かつ所定時間2以上継続した場合に、前記切替手段を介して前記推定舵角1を前記推定舵角2として出力するようになっていることにより、或いは前記比較判定手段が、前記SAT差の絶対値が前記所定値2よりも大きい場合には、前記推定舵角1を前記推定舵角2として出力しないようになっていることにより、或いは前記比較判定手段が、前記舵角差の絶対値が前記所定値3以下であり、かつ所定時間3以上継続した場合に、前記切替手段を介して前記推定舵角1を前記推定舵角2として出力するようになっていることにより、或いは前記比較判定手段が、前記舵角差の絶対値が前記所定値3よりも大きい場合には、前記推定舵角1を前記推定舵角2として出力しないようになっていることにより達成される。
【0014】
更にまた、本発明は、車両の操舵系に操舵補助力を付与するモータのモータ回転角を検出するモータ回転角センサと、車両の左右車輪の回転速度を検出する車輪回転速度センサを備える車両用舵角装置に関し、本発明の上記目的は、前記車輪回転速度センサで検出した車輪回転速度から推定舵角1を演算して出力する舵角推定部と、前記モータ回転角を前記操舵系の減速比で除算した相対舵角を求め、SAT検出値若しくはSAT推定値の相対舵角に対する変化率と所定値1との差である変化率差絶対値により推定舵角2を出力する推定舵角出力部と、前記推定舵角1及び2、前記変化率差絶対値、相対舵角により絶対舵角1を出力する絶対舵角推定部とを設けることにより達成され、更に前記絶対舵角推定部を、前記推定舵角2及び前記相対舵角に基づいて絶対舵角2を算出する絶対舵角算出部と、前記SAT変化率差絶対値を所定値2と比較し、前記変化率差絶対値が前記所定値2以下で所定時間1を経過したときに、前記絶対舵角2を補正した前記絶対舵角1を出力する補正出力部とで構成することにより、或いは前記推定舵角出力部を、前記SAT変化率の絶対値を前記所定値1と比較する比較判定手段と、前記比較判定手段の結果に基づいて、前記推定舵角1の前記推定舵角2としての出力をオンオフする切替手段とで構成することにより、或いは前記比較判定手段が、前記SAT変化率差の絶対値が前記所定値1以下であり、かつ所定時間2以上継続した場合に、前記切替手段を介して前記推定舵角1を前記推定舵角2として出力するようになっていることにより、或いは前記比較判定手段が、前記SAT変化率差の絶対値が前記所定値1よりも大きい場合には、前記推定舵角1を前記推定舵角2として出力しないようになっていることにより達成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用舵角推定装置によれば、車両のステアリング特性の変化を検知すると共に、車輪がスリップなどの舵角推定に相応しくない状態を検知するようにしているので、常に舵角の誤推定を防止でき、精度良く舵角若しくは絶対舵角を推定して利用することができる。また、本発明は、4輪又は2輪の車輪回転速度信号から舵角を推定して出力しているので、対応できる車種に制限はなくなる。
【0016】
本発明の車両用舵角推定装置を電動パワーステアリング装置に搭載すれば、車輪がスリップした場合などでも、より精度の高い操舵制御を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る車両用舵角推定装置は、ステアリング機構で検出若しくは推定したSAT検出値若しくはSAT推定値(以下、単に「SAT検出値」とするが、SAT推定値を含む。)と、物理量として演算で求めたSAT演算値とを比較し、4輪だけでなく、2輪の回転速度(車輪速)のみからでもステアリング特性の変化を確実に検知し、車輪が舵角の推定に相応しい状態のときに、舵角若しくは絶対舵角を精度良く推定し、更に補正して出力するようにしている。このため、4輪だけでなく、2輪であっても誤推定なく、精度良く舵角若しくは絶対舵角を推定して出力することができる。
【0018】
このような精度の良い車両用舵角推定装置を電動パワーステアリング装置に搭載することにより、車輪がスリップした場合などにおいても、より高い精度での操舵制御を実現することができる
以下に本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
先ず、車両の操舵角(舵角)と車輪回転速度(車輪速)の関係について説明する。
【0020】
図1に示すように4輪fl、fr、rl、rrの各旋回半径をRfl,Rfr,Rrl,Rrrとし、前輪fl、frの舵角を便宜的にα,αとし、車両の車軸距離をLとし、車幅(左右輪の中心間距離)をEとする。また、前輪車軸中央の旋回半径をRfとし、後輪車軸中央の旋回半径をRrとする。そして、各車輪fl、fr、rl、rrの車輪回転速度(車輪角速度)として左前輪をωfl、右前輪をωfr、左後輪をωrl、右後輪をωrrとすると、車体中心の舵角α(図2参照)と各車輪回転速度ωfl、ωfr、ωrl、ωrrは、前輪の舵角αfront及び後輪の舵角αrearはそれぞれ下記数1及び数2の関係を有することが知られている。
【0021】
【数1】

【0022】
【数2】

上記数1の舵角αfront及び上記数2の舵角αrearは、本発明における推定舵角θest1に相当しており、車輪回転速度から舵角を推定できることが分かる。
【0023】
なお、舵角推定部の演算は上記数1及び数2をCPU等で演算しても良いし、(ωfl−ωfr)/(ωfl+ωfr)及び(ωrl−ωrr)/(ωrl+ωrr)を入力するルックアップテーブルで構成しても良い。また、車輪回転速度はABS(anti-lock brake system)を備えた車両には既に存在しているのでそのまま利用でき、車輪回転速度に基づいて舵角を演算(推定)することができる。
【0024】
本発明では、CPU等で演算されたSAT演算値と、ステアリング機構により検出されたSAT検出値(SAT推定値を含む)とに基づいて舵角を推定しているので、次にSATについて説明する。
【0025】
SATはハンドルを元の位置に戻そうとする力であり、図3に示すように運転者がハンドルを操舵することによって操舵トルクThが発生し、その操舵トルクThに従ってモータMがアシストトルクTmを発生する。その結果、前輪が転舵され、反力としてSATが発生する。その際、モータMの慣性とステアリング機構部の慣性を併せた等価慣性J及び摩擦トルクFrによってハンドル操舵の抵抗となるトルクが生じ、これらの力の釣合を考えると、下記数3の運動方程式が得られる(例えば特開2002−369565号公報)。なお、数3におけるωはモータMの角速度、ωは角加速度である。
(数3)
SAT=Th+Tm−J・ω−Fr・sign(ω)

本発明の実施形態では、上記数3で推定されるSAT推定値をSAT検出値SAT2として用いるが、SATセンサで検出したSAT値をSAT検出値SAT2として用いても良い。
【0026】
以下に、本発明の具体的な実施形態を図に示して説明する。
【0027】
先ず本発明に係る車両用舵角推定装置の第1実施形態を図4に示して、前輪車輪回転速度ωfl及びωfrしか利用できない場合について説明する。
【0028】
本発明の車両用舵角推定装置は、前輪車輪回転速度ωfl及びωfrに基づいて推定舵角θest1を推定する舵角推定部100と、推定舵角θest1及びSATセンサ或いはSAT推定部等からのSAT検出値SAT2に基づいて推定舵角θest2を出力する推定舵角出力部110とで構成されている。そして、 推定舵角出力部110は、車両モデル関数G(s)によって推定舵角θest1からSATを演算して求める車両モデル(G(s)))111と、車両モデル111で演算されたSAT演算値SAT1からSAT検出値SAT2を減算して差ΔSAT(=SAT1−SAT2)を求める減算部112と、減算部112で得られたSATの差ΔSATの絶対値|ΔSAT|を求める絶対値化部113と、絶対値|ΔSAT|と予め設定されている閾値ΔSATthとを比較すると共に、所定時間の経過を計測して切替信号SW1を出力する比較判定部114と、切替信号SW1によって推定舵角θest1の出力をオンオフする切替部115とで構成されている。
【0029】
ここで、車両モデル(G(s))111が、舵角θ(推定舵角θest1)からSAT(SAT演算値SAT1)を演算できることを説明する。
【0030】
車両の運動方程式は、a11,a12,a22,b11,b21を数5の係数として、下記数4で表される。
【0031】
【数4】

【0032】
【数5】

ただし、mは車両質量、Iは車両慣性モーメント、lは車両重心点と前軸間の距離 、lは車両重心点と後軸間の距離、Kは前輪タイヤのコーナリングパワー、K は後輪タイヤのコーナリングパワー、Vは車速、Nはオーバーロール操舵比、δは 実舵角(δ=θ/N)、βは車両重心点の横すべり角、γはヨーレートである。
【0033】
上記数4及び数5より、舵角θとSATの関係は下記数7のように求められる。
【0034】
また、SATの方程式は下記数6で表される。
【0035】
【数6】

ただし、εをトレールとして、係数c11=−2εK、c12=−2εK /V、d11=2εKである。

(数7)
SAT=G(s)×θ

上記数7より、舵角θと車両モデルG(s)よりSATを求めることができる。なお、車両モデルG(s)は車速の関数であり、数4及び数5より計算することができるが、実験によって車両毎の特性値を測定してから、車両運動モデルを用いてシミュレーションによって求めても良い。また、数6から、車両逆モデルG−1(s)に基づいてSATより舵角θを求めることができる。車両逆モデルG−1(s)は、車両モデルG(s)と同様に測定で求めても良い。
【0036】
このような構成において、舵角推定部100は、入力される前輪車輪回転速度ωfl及びωfrに基づいて前記数1を演算し、推定舵角θest1を出力する。この演算はルックアップテーブルを用いても良い。推定舵角θest1は車両モデル111及び切替部115に入力され、車両モデル111は推定舵角θest1に基づいてSATを演算する。車両モデル111で演算されたSAT演算値SAT1は減算部112に入力され、SAT検出値SAT2との差ΔSATの絶対値|ΔSAT|を絶対値化部113で求める。比較判定部114には閾値として設定値ΔSATthが予め入力されており、比較判定部114は絶対値|ΔSAT|が設定値ΔSATth以下となり、かつ所定時間が経過したか否かの判定を行っており、差の絶対値|ΔSAT|が設定値ΔSATth以下となり、かつ所定時間が経過したときに切替信号SW1を出力し、切替部115をオンする。これにより、舵角推定部100で推定された推定舵角θest1が推定舵角θest2として出力される。即ち、差の絶対値|ΔSAT|が設定値ΔSATthを超えたときはステアリング特性が変化したとして、推定舵角θest1が信用できないと判断し、推定舵角θest1を舵角として出力せず、差の絶対値|ΔSAT|が設定値ΔSATth以下となり、かつその状態が所定時間経過したときは、推定舵角θest1が信用できると判断し、推定舵角θest1を推定舵角θest2として出力する。
【0037】
ここで、2車輪の車輪速ωfl、ωfrよりSAT演算値SAT1を演算するSAT1算出部140の構成例を、図5に示して説明する。
【0038】
SAT1算出部140は、前輪の車輪回転速度センサから入力される車輪回転速度ωfl、ωfrに基づいてSAT初期推定値SATiを推定するSAT初期推定部143と、SAT初期推定部143で推定したSAT初期推定値SATiのノイズを除去するローパスフィルタ(LPF)144と、入力される車輪回転速度ωfl、ωfrを加算する加算部141と、車輪回転速度ωfl、ωfrの加算値の1/2を算出して車速相当値Vs’を算出する平均値算出部142と、平均値算出部142で算出された車速相当値Vs’に基づいてローパスフィルタ144から出力されるノイズ除去されたSAT初期推定値SAT’の位相補正を行ってSAT演算値SAT1を出力する位相補補正部145とで構成されている。
【0039】
SAT初期推定部143は入力される車輪回転速度ωfl、ωfrに基づいて下記数8の演算を行って、車速に応じた左右の車輪回転速度差Δωを算出する。
(数8)
Δω=(ωfl−ωfr)/{(ωfl+ωfr)/2}

SAT初期推定部143は左右の車輪回転速度差Δωを基に、図6に示すようなSAT初期推定値算出マップを参照してSAT初期推定値SATiを算出する。SAT初期推定値算出マップは、図6に示すように左右車輪回転速度差Δωがゼロの状態、つまり直進走行状態ではSAT初期推定値SATiが“0”であり、左右車輪回転速度差Δωが正負各方向に大きくなるに従って増加すると共に、その増加率が小さくなるような特性に設定されている。
【0040】
本発明は、ステアリング機構で検出したSAT検出値SAT2と上述のように車輪の回転速度から算出したSAT演算値SAT1とを比較して、4車輪だけでなく、2車輪の回転速度のみからでもステアリング特性の変化を検知し、誤推定がなく、精度良く舵角若しくは絶対舵角を推定する。
【0041】
前輪車輪速しかとれない車種を例(第2実施形態)として、図7に舵角推定装置の構成例を示して説明する。
【0042】
ステアリング機構において、SAT1算出部140で上述のように車輪の回転速度ωfl、ωfrから図6の関係を基にSAT演算値SAT1を算出する。SAT演算値SAT1は推定舵角出力部150内の車両逆モデル151及び減算部152に入力され、車両逆モデル151が算出した推定舵角θest1は切替部155に入力される。推定舵角出力部150内の減算部152では、算出したSAT演算値SAT1と測定部で検出(推定)したSAT検出値SAT2との差を求め、その差の絶対値|ΔSAT|(=|SAT1−SAT2|)を絶対値化部153で求め、差の絶対値|ΔSAT|を比較判定部154で予め設定されている閾値ΔSATthと比較し、その比較結果及び時間に従って切替部155をオンオフする切替信号SW0を出力する。即ち、差の絶対値|ΔSAT|が閾値ΔSATthを超えたときはステアリング特性が変わったとし、舵角が誤推定され、推定舵角θest1が信用できないと判断し、推定舵角θest1を推定舵角θest2として出力しないように切替部155をオフする。また、その差の絶対値|ΔSAT|が閾値ΔSATth以下で且つ一定時間継続したときには、推定舵角θest1が信用できると判断して切替部155をオンし、推定舵角θest1を推定舵角θest2として出力する。
【0043】
なお、この実施形態では、車輪速からSAT演算値SAT1を演算する例を説明したが、本発明は、車輪速からSATを推定するのではなく、車輪速から操舵トルクを推定し、この推定操舵トルクと実操舵トルク(トルクセンサの検出値)とを比較することによって、推定舵角を出力するようにしても良い。つまり、SATに代えて、操舵トルクに基づいて舵角の出力を制御しても良い。
【0044】
図8は車輪速から操舵トルクを推定する装置例を示しており、車輪回転速度ωfl及びωfrよりSAT推定部161で上述のようなSATの推定(検出)を行い、推定されたSATeをゲイン部162でゲインK倍することにより推定操舵電流指令値Iref、つまり推定操舵トルクを得ることができる。実操舵トルクはトルクセンサより検出される。
【0045】
上記第1及び第2実施形態ではSATの比較に基づいて推定舵角θest2を出力しているが、舵角θの比較に基づいて推定舵角θest2を出力するようにしても良い。
【0046】
図9はかかる第3実施形態を図4に対応させて示しており、SAT検出値SAT2を数6で示される車両逆モデル(G−1(s))111Aを介して演算舵角θを求め、減算部112で推定舵角θest1から減算し、その差Δθの絶対値|Δθ|を絶対値化部113で求める。差Δθの絶対値|Δθ|は比較判定部114に入力され、比較判定部114は、閾値として予め入力されている設定値Δθthと比較する。そして、差Δθの絶対値|Δθ|が設定値Δθth以下となり、かつ所定時間が経過したときに切替信号SW2を出力し、切替部115をオンする。差Δθの絶対値|Δθ|が設定値Δθthよりも大きい場合には推定舵角θest2を出力しない。

次に、本発明に係る車両用舵角推定装置の第4実施形態を図10に示して、前輪車輪回転速度ωfl及びωfrしか利用できない場合について説明する。図4の第1実施形態と同一部材には同一符号を付している。
【0047】
第4実施形態の車両用舵角推定装置は、前輪車輪回転速度ωfl及びωfrに基づいて推定舵角θest1を推定する舵角推定部100と、推定舵角θest1及びSAT検出値SAT2に基づいて推定舵角θest2を出力すると共に、差の絶対値|ΔSAT|を出力する推定舵角出力部110と、推定舵角θest1及びθest2、差の絶対値|ΔSAT|及び相対舵角θに基づいて絶対舵角θを演算して出力する絶対舵角推定部120とで構成されている。相対舵角θは、モータ回転角度センサ等からのモータ回転角を操舵系の減速比で除算した相対舵角である。
【0048】
絶対舵角推定部120は図11に示すような構成となっており、相対舵角θを入力して初期値を記憶する初期値記憶部121と、相対舵角θと初期値記憶部121の出力θm0との差の舵角変化量θd1を求める減算部122と、推定舵角θest2と舵角変化量θd1とを加算して絶対舵角θd2を出力する加算部122と、推定舵角θest1より絶対舵角θd2を減算する減算部124と、減算部124で求められた舵角変化量θd3を入力して最大値を制限するリミッタ125と、固定値0を設定する設定部126と、差の絶対値|ΔSAT|と予め設定されている閾値ΔSATth1とを比較すると共に、所定時間の経過を計測して切替信号SWaを出力する比較判定部129と、設定部126からの固定値0をa接点に、リミッタ125からの舵角変化量θd4をb接点にそれぞれ入力され、切替信号SWaによって接点a,bを切替えられる切替部127と、切替部127の出力及び絶対舵角θd2を加算することにより補正して絶対舵角θaを出力する加算部128とで構成されている。
【0049】
初期値記憶部121、減算部122及び124、加算部123で絶対舵角算出部を構成し、比較判定部129、切替部127、リミッタ125、加算部128で補正出力部を構成している。
【0050】
このような構成において、舵角推定部100からの推定舵角θest1は車両モデル111及び切替部115に入力されると共に、絶対舵角推定部120に入力される。また、絶対値化部113で求められた差ΔSATの絶対値|ΔSAT|は比較判定部114に入力されると共に、絶対舵角推定部120に入力される。比較判定部114の動作は上記第1実施形態と同様であり、差の絶対値|ΔSAT|が設定値ΔSATth以下となり、かつ所定時間が経過したときのみ切替信号SW3を出力し、切替部115をオンして推定舵角θest1を推定舵角θest2として絶対舵角推定部120に入力する。差の絶対値|ΔSAT|が設定値ΔSATthを超えたときはステアリング特性が変化したとして、舵角が誤推定され、推定舵角が信用できないとして切替信号SW3を出力せず、切替部115をオフして推定舵角θest1を推定舵角θest2として絶対舵角推定部120に入力しない。
【0051】
絶対舵角推定部120では、相対舵角θ及び初期値記憶部121に記憶された初期値θm0の減算結果である舵角変化量θd1と、切替部115からの推定舵角θest2とを加算部123で加算し、その加算結果である絶対舵角θd2を減算部124に減算入力すると共に、加算部128に入力する。減算部124で求められた推定舵角θest1と絶対舵角θd2との差である舵角変化量θd3はリミッタ125に入力され、リミッタ125で制限された舵角変化量θd4が切替部127の接点bに入力される。
【0052】
一方、比較判定部129には閾値として設定値ΔSATth1が予め入力されており、比較判定部129は差の絶対値|ΔSAT|が設定値ΔSATth1以下となり、かつ所定時間が経過したか否かの判定を行っており、差の絶対値|ΔSAT|が設定値ΔSATth1以下となり、かつ所定時間が経過したときに切替信号SWaを出力し、切替部127の接点を“b”とする。これにより、リミッタ125からの舵角変化量θd4が絶対舵角θd2に加算され、絶対舵角θd2が補正され、この補正されたより精度の高い舵角が絶対舵角θaとして出力される。差の絶対値|ΔSAT|が設定値ΔSATth1を超えているときは切替部127の接点は“a”になっており、設定部126からの固定値“0”が加算部128に入力され、絶対舵角θd2の補正を行わないようになっている。
【0053】
上記第4実施形態ではSATの比較に基づいて推定舵角θest2の出力と絶対舵角の補正をしているが、舵角θの比較に基づいて推定舵角θest2の出力と絶対舵角の補正をするようにしても良い。
【0054】
図12はかかる第5実施形態を図10に対応させて示しており、SAT検出値SAT2を数7で示される車両逆モデル(G−1(s))111Aを介して演算舵角θを求め、減算部112で推定舵角θest1から減算し、その差Δθの絶対値|Δθ|を絶対値化部113で求める。差Δθの絶対値|Δθ|は比較判定部114に入力され、比較判定部114は、閾値として予め入力されている設定値Δθthと比較する。そして、差の絶対値|Δθ|が設定値Δθth以下となり、かつ所定時間が経過したときに切替信号SW4を出力し、切替部115をオンする。差の絶対値|Δθ|が設定値Δθthよりも大きい場合には、切替信号SW4を出力せず推定舵角θest2を出力しない。
【0055】
本第5実施形態における絶対舵角推定部120Aは第4実施形態における絶対舵角推定部120とほぼ同様な構成であるが、図13に示すように比較判定部129Aは差の絶対値|Δθ|が設定値Δθth1以下となり、かつ所定時間が経過したか否かの判定を行っており、差の絶対値|Δθ|が設定値Δθth1以下となり、かつ所定時間が経過したときに切替信号SWbを出力し、切替部127の接点を“b”とする。これにより、リミッタ125からの舵角変化量θd4が絶対舵角θd2に加算され、絶対舵角θd2が補正され、この補正されたより精度の高い舵角が絶対舵角θaとして出力される。差の絶対値|Δθ|が設定値Δθth1を超えているときは切替部127の接点は“a”になっており、設定部126からの固定値“0”が加算部128に入力され、絶対舵角θd2の補正を行わないようになっている。

次に、第6実施形態の車両用舵角推定装置を、図10に対応させた図14に示して説明する。第6実施形態の推定舵角出力部110Aは、相対舵角θに対するSAT検出値SAT2の変化率の絶対値|ΔSAT2/Δθ|を求める変化率算出部116と、変化率絶対値|ΔSAT1/Δθ|から車速によって設定された所定値S(Vspd)を減算して変化率差ΔSを求める減算部112と、変化率差ΔSの絶対値|ΔS|を出力する絶対値化部113と、変化率差ΔSの絶対値|ΔS|を閾値として設定された所定値ΔSthと比較すると共に、所定時間の経過を計測して切替信号SW5を出力する比較判定部117と、比較判定部117からの切替信号SW5でオンオフする切替部115とで構成されている。
【0056】
第6実施形態の絶対舵角推定部120Bは図11に示す絶対舵角推定部120Aに対応しており、差の絶対値|ΔSAT|の代わりに変化率差ΔSの絶対値|ΔS|が入力されている。つまり、図11に示す差の絶対値|ΔSAT|の代わりに変化率差ΔSの絶対値|ΔS|が比較判定部129に入力され、比較判定部129は変化率差ΔSの絶対値|ΔS|が設定値ΔSth1以下となり、かつ所定時間が経過したか否かの判定を行い、変化率差ΔSの絶対値|ΔS|が設定値ΔSth1以下となり、かつ所定時間が経過したときに、切替信号SW5を出力して切替部127の接点を“b”として絶対舵角θd2を補正する。
【0057】
このような構成において、舵角推定部100からの推定舵角θest1は絶対舵角推定部120B及び切替部115に入力され、変化率算出部116はSAT検出値SAT2及び相対舵角θに基づいて相対舵角θに対するSAT検出値SAT2の変化率の絶対値|ΔSAT2/Δθ|を求める。変化率算出部116で算出された変化率絶対値|ΔSAT1/Δθ|は減算部112に入力され、減算部112において、車速によって設定された所定値S(Vspd)との差である変化率差ΔSが求められる。変化率差ΔSは絶対値化部113で変化率差ΔSの絶対値|ΔS|とされ、変化率差ΔSの絶対値|ΔS|は比較判定部117に入力されると共に、絶対舵角推定部120Bに入力される。比較判定部117の動作は上記各実施形態と同様であり、変化率差ΔSの絶対値|ΔS|が設定値ΔSth以下となり、かつ所定時間が経過したときのみ切替信号SW5を出力し、推定舵角θest1を推定舵角θest2として絶対舵角推定部120Bに入力する。変化率差ΔSの絶対値|ΔS|が設定値ΔSthを超えたときはステアリング特性が変化したとして、舵角が誤推定され、推定舵角が信用できないと判断して切替信号SW5を出力せず、推定舵角θest1を推定舵角θest2として絶対舵角推定部120Bに入力しない。
【0058】
絶対舵角推定部120Bは第4実施形態における絶対舵角推定部120Aと同様な動作を行い、変化率差ΔSの絶対値|ΔS|が設定値ΔSth1以下となり、かつ所定時間が経過したときのみ補正を行って絶対舵角θbを出力する。変化率差ΔSの絶対値|ΔS|が設定値ΔSth1を超えているときは固定値“0”を付加し、補正を行わないで絶対舵角θbを出力する。
【0059】
なお、上述の第1実施形態〜第6実施形態ではいずれも前輪車輪回転速度ωfl及びωfrしか利用できない例を挙げて説明したが、後輪車輪回転速度ωrl及びωrrしか利用できない車種に応用でき、この場合には前記数2に基づいて舵角を推定する。また、4輪車輪回転速度の場合にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】車輪速差を説明するための模式図である。
【図2】車輪速差を説明するための模式図である。
【図3】路面からステアリングまでに発生するトルクの様子を示す模式図である。
【図4】本発明の第1実施形態の構成例を示すブロック図である。
【図5】SAT検出値を算出する構成例を示すブロック図である。
【図6】SATの初期推定値算出マップの一例を示す特性線図である。
【図7】本発明の第2実施形態の構成例を示すブロック図である。
【図8】車輪速より操舵トルク(操舵電流指令値)を算出する装置の構成例を示すブロック図である。
【図9】本発明の第3実施形態の構成例を示すブロック図である。
【図10】本発明の第4実施形態の構成例を示すブロック図である。
【図11】本発明の第4実施形態の絶対舵角推定部の構成例を示すブロック図である。
【図12】本発明の第5実施形態の構成例を示すブロック図である。
【図13】本発明の第5実施形態の絶対舵角推定部の構成例を示すブロック図である。
【図14】本発明の第6実施形態の構成例を示すブロック図である。
【図15】従来のステアリング装置の構成例を示す図である。
【図16】ステアリング機構の要部の一例を示す図である。
【図17】従来のステアリング装置のコントロールユニットの構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0061】
1 ハンドル
2 コラム軸
10 トルクセンサ
12 車速センサ
20 モータ
30 コントロールユニット
32 操舵補助指令値演算部
37 モータ駆動回路
100 舵角推定部
110、110A 推定舵角出力部
111 車両モデル
111A,151 車両逆モデル
113,153 絶対値化部
114、117、129、129A,154 比較判定部
115、127、155 切替部
120、120A、120B 絶対舵角推定部
121 初期値記憶部
140 SAT1算出部
142 平均値算出部
143 SAT初期推定部
145 位相補正部
150 推定舵角出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左右車輪の回転速度を検出する車輪回転速度センサを備える車両用舵角推定装置において、前記車輪回転速度センサで検出した車輪回転速度に基づいて車輪からハンドルに作用する物理量を演算して出力する物理量演算部と、前記物理量及びSAT検出値若しくはSAT推定値に基づいて推定舵角2を出力する推定舵角出力部とを具備したことを特徴とする車両用舵角推定装置。
【請求項2】
前記物理量がハンドル舵角に相当する推定舵角1であって、前記推定舵角出力部が、前記推定舵角1に基づいてSAT演算値を求めるSAT演算手段と、前記SAT演算値及び前記SAT検出値若しくはSAT推定値の差の絶対値を所定値1と比較する比較判定手段と、前記比較判定手段の結果に基づいて、前記推定舵角1の前記推定舵角2としての出力をオンオフする切替手段とで構成されている請求項1に記載の車両用舵角推定装置。
【請求項3】
前記物理量が路面から前記車輪に作用するSATに相当するSAT演算値であって、前記SAT演算値に基づいて推定舵角1を求める舵角演算手段と、前記推定舵角出力部が、前記SAT演算値及び前記SAT検出値若しくはSAT推定値の差の絶対値を所定値1と比較する比較判定手段と、前記比較判定手段の結果に基づいて、前記推定舵角1の前記推定舵角2としての出力をオンオフする切替手段とで構成されている請求項1に記載の車両用舵角推定装置。
【請求項4】
前記物理量が舵角に相当する推定舵角1であって、前記推定舵角出力部が、前記SAT検出値若しくはSAT推定値に基づいて演算舵角3を求める舵角演算手段と、前記推定舵角1及び前記演算舵角3の差の絶対値を所定値2と比較する比較判定手段と、前記比較判定手段の結果に基づいて、前記推定舵角1の前記推定舵角2としての出力をオンオフする切替手段とで構成されている請求項1に記載の車両用舵角推定装置。
【請求項5】
前記比較判定手段が、前記SAT差の絶対値が前記所定値1以下であり、かつ所定時間以上継続した場合に、前記切替手段を介して前記推定舵角1を前記推定舵角2として出力するようになっている請求項1乃至3のいずれかに記載の車両用舵角推定装置。
【請求項6】
前記比較判定手段が、前記SAT差の絶対値が前記所定値1よりも大きい場合には、前記推定舵角1を前記推定舵角2として出力しないようになっている請求項1乃至3のいずれかに記載の車両用舵角推定装置。
【請求項7】
前記比較判定手段が、前記舵角差の絶対値が前記所定値2以下であり、かつ所定時間以上継続した場合に、前記切替手段を介して前記推定舵角1を前記推定舵角2として出力するようになっている請求項1又は4に記載の車両用舵角推定装置。
【請求項8】
前記比較判定手段が、前記舵角差の絶対値が前記所定値2よりも大きい場合には、前記推定舵角1を前記推定舵角2として出力しないようになっている請求項1又は4に記載の車両用舵角推定装置。
【請求項9】
車両の操舵系に操舵補助力を付与するモータのモータ回転角を検出するモータ回転角センサと、車両の左右車輪の回転速度を検出する車輪回転速度センサとを備える車両用舵角推定装置において、前記車輪回転速度センサで検出した車輪回転速度から推定舵角1を推定して出力する舵角推定部と、前記推定舵角1に基づいてSAT演算値を求め、前記SAT演算値及びSAT検出値若しくはSAT推定値の差の絶対値を求め、前記SAT差の絶対値により推定舵角2を出力する推定舵角出力部と、前記推定舵角1及び2、前記SAT差の絶対値、前記モータ回転角を前記操舵系の減速比で除算した相対舵角により絶対舵角1を出力する絶対舵角推定部とを具備したことを特徴とする車両用舵角推定装置。
【請求項10】
車両の操舵系に操舵補助力を付与するモータのモータ回転角を検出するモータ回転角センサと、車両の左右車輪の回転速度を検出する車輪回転速度センサとを備える車両用舵角推定装置において、前記車輪回転速度センサで検出した車輪回転速度から推定舵角1を推定して出力する舵角推定部と、SAT検出値若しくはSAT推定値に基づいて演算舵角3を求め、前記演算舵角3及び前記推定舵角1の差の絶対値を求め、前記舵角差の絶対値により推定舵角2を出力する推定舵角出力部と、前記推定舵角1及び2、前記舵角差の絶対値、前記モータ回転角を前記操舵系の減速比で除算した相対舵角により絶対舵角1を出力する絶対舵角推定部とを具備したことを特徴とする車両用舵角推定装置。
【請求項11】
前記絶対舵角推定部が、前記推定舵角2及び前記相対舵角に基づいて絶対舵角2を算出する絶対舵角算出部と、前記SAT差の絶対値若しくは舵角差の絶対値が前記所定値1以下で所定時間1を経過したときに、前記絶対舵角2を補正した絶対舵角1を出力する補正出力部とで構成されている請求項9又は10に記載の車両用舵角推定装置。
【請求項12】
前記推定舵角出力部が、前記推定舵角1に基づいてSAT演算値を求めるSAT演算手段と、前記SAT演算値及びSAT検出値若しくはSAT推定値の差の絶対値を所定値2と比較する比較判定手段と、前記比較判定手段の結果に基づいて、前記推定舵角1の前記推定舵角2としての出力をオンオフする切替手段とで構成されている請求項9又は11に記載の車両用舵角推定装置。
【請求項13】
前記推定舵角出力部が、前記SAT検出値若しくはSAT推定値に基づいて演算舵角3を求める舵角演算手段と、前記推定舵角1及び前記演算舵角3の差の絶対値を所定値3と比較する比較判定手段と、前記比較判定手段の結果に基づいて、前記推定舵角1の前記推定舵角2としての出力をオンオフする切替手段とで構成されている請求項10又は11に記載の車両用舵角推定装置。
【請求項14】
前記比較判定手段が、前記SAT差の絶対値が前記所定値2以下であり、かつ所定時間2以上継続した場合に、前記切替手段を介して前記推定舵角1を前記推定舵角2として出力するようになっている請求項9、11又は12のいずれかに記載の車両用舵角推定装置。
【請求項15】
前記比較判定手段が、前記SAT差の絶対値が前記所定値2よりも大きい場合には、前記推定舵角1を前記推定舵角2として出力しないようになっている請求項9、11又は12のいずれかに記載の車両用舵角推定装置。
【請求項16】
前記比較判定手段が、前記舵角差の絶対値が前記所定値3以下であり、かつ所定時間3以上継続した場合に、前記切替手段を介して前記推定舵角1を前記推定舵角2として出力するようになっている請求項10、11又は13のいずれかに記載の車両用舵角推定装置。
【請求項17】
前記比較判定手段が、前記舵角差の絶対値が前記所定値3よりも大きい場合には、前記推定舵角1を前記推定舵角2として出力しないようになっている請求項10、11又は13のいずれかに記載の車両用舵角推定装置。
【請求項18】
車両の操舵系に操舵補助力を付与するモータのモータ回転角を検出するモータ回転角センサと、車両の左右車輪の回転速度を検出する車輪回転速度センサとを備える車両用舵角推定装置において、前記車輪回転速度センサで検出した車輪回転速度から推定舵角1を演算して出力する舵角推定部と、前記モータ回転角を前記操舵系の減速比で除算した相対舵角を求め、SAT検出値若しくはSAT推定値の相対舵角に対する変化率と所定値1との差である変化率差絶対値により推定舵角2を出力する推定舵角出力部と、前記推定舵角1及び2、前記変化率差絶対値、相対舵角により絶対舵角1を出力する絶対舵角推定部とを具備したことを特徴とする車両用舵角推定装置。
【請求項19】
前記絶対舵角推定部が、前記推定舵角2及び前記相対舵角に基づいて絶対舵角2を算出する絶対舵角算出部と、前記SAT変化率差絶対値を所定値2と比較し、前記変化率差絶対値が前記所定値2以下で所定時間1を経過したときに、前記絶対舵角2を補正した前記絶対舵角1を出力する補正出力部とで構成されている請求項18に記載の車両用舵角推定装置。
【請求項20】
前記推定舵角出力部が、前記SAT変化率の絶対値を前記所定値1と比較する比較判定手段と、前記比較判定手段の結果に基づいて、前記推定舵角1の前記推定舵角2としての出力をオンオフする切替手段とで構成されている請求項18又は19に記載の車両用舵角推定装置。
【請求項21】
前記比較判定手段が、前記SAT変化率差の絶対値が前記所定値1以下であり、かつ所定時間2以上継続した場合に、前記切替手段を介して前記推定舵角1を前記推定舵角2として出力するようになっている請求項18乃至20のいずれかに記載の車両用舵角推定装置。
【請求項22】
前記比較判定手段が、前記SAT変化率差の絶対値が前記所定値1よりも大きい場合には、前記推定舵角1を前記推定舵角2として出力しないようになっている請求項18乃至20のいずれかに記載の車両用舵角推定装置。
【請求項23】
請求項1乃至22のいずれかに記載の車両用舵角推定装置を搭載したことを特徴とする電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−62036(P2009−62036A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199296(P2008−199296)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】