説明

車両用表示装置

【課題】 使用時の視認性と衝突時の安全性の両立が考慮された表示装置を提供すること。
【解決手段】 表示部5を駆動する駆動手段15を備えた車両用表示装置であって、車両と障害物との衝突を検知する衝突検知手段又は衝突を予測する衝突予測手段と、を有し、衝突検知手段により衝突が検知された場合、又は、衝突予測手段により衝突が予測された場合、駆動手段15は、表示部5を安全形態に駆動する、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関し、特に、表示部の視認性と衝突時の安全性とが両立された車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用の電子機器として液晶などフラットパネルディスプレイを用いた表示装置が利用されている。表示装置の表示部には、ナビゲーションシステムの道路地図やテレビジョン放送、文字情報、カラオケの映像等の画像情報が表示され、運転者はこれら種々の視覚情報を視認できる。
【0003】
表示装置は、乗降時に乗員と干渉したり、車両の進行方向の視界をふさぐことのないよう、非使用時には表示装置の収納や折りたたみが可能な表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1記載の表示装置は、非使用時に畳み込まれ車両前方の視界を確保することができる。
【特許文献1】特開平9−224202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両が走行中、車両が障害物に接触すると車両に生じる前後加速度やヨーレート等の影響を受けて乗員が動き、表示部と乗員が接触する場合がある。表示装置は、通常、四角形など角部を有する形状をしているため、表示装置と乗員が干渉することは好ましくない。
【0005】
特許文献1記載の表示装置は、使用時に表示部を所望の位置に縦立させ良好な視認性を提供することが可能であるが、車両が障害物と接触した場合については記載されておらず乗員との接触を低減することは考慮されていない。すなわち、これまでの表示装置では、使用時の視認性と衝突時の安全性の両立を図ることは困難であった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、使用時の視認性と衝突時の安全性の両立が考慮された表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、表示部を駆動する駆動手段を備えた車両用表示装置であって、車両と障害物との衝突を検知する衝突検知手段又は衝突を予測する衝突予測手段と、を有し、衝突検知手段により衝突が検知された場合、又は、衝突予測手段により衝突が予測された場合、記駆動手段は、表示部を安全形態に駆動する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、使用時の視認性と衝突時の安全性の両立が考慮された表示装置を提供することができる。
【0009】
また、本発明の一形態において、安全形態は、表示部の非使用時の形態であり、衝突検知手段により衝突が検知された場合、又は、前記衝突予測手段により衝突が予測された場合、駆動手段は表示部を非使用時の形態に駆動する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、車両が障害物に接触すると生じる前後加速度やヨーレート等の影響により、表示部と乗員が接触することを低減できる。
【0011】
また、本発明の一形態において、衝突検知手段により衝突が検知された場合、又は、衝突予測手段により衝突が予測された場合、駆動手段は表示部の表示面の角度を駆動する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、表示部の角度を駆動するので表示部と乗員の接触を低減することができ、また、乗員の被傷を防止できる。
【0013】
また、本発明の一形態において、衝突予測手段により衝突が予測された場合、駆動手段は表示部を第1の安全形態に駆動し、衝突検知手段により衝突が検知された場合、駆動手段は表示部を第2の安全形態に駆動する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、段階的に表示部を安全形態に退避することができる。第1の安全形態とは、例えば、表示部の表示角度を駆動した形態をいい、第2の安全形態とは、表示部を非使用状態に収納した形態を言う。
【発明の効果】
【0015】
使用時の視認性と衝突時の安全性の両立が考慮された表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。図1は、車載用表示装置を搭載した車室内の前席周辺の斜視図を示す。
【0017】
車両用表示装置は、表示内容を制御する表示制御部と映像情報を表示する表示部5を有し、表示制御部はダッシュボード2の内側に、また、表示部5は運転席と助手席の略中央のスピードメータ等のメータ類3と同程度の高さかやや下方に備えられる。図1では一例としてエアコン吹き出し口4の下部に設けた。表示部5の下方には表示部5と一体の操作部5aを有する。車載用表示装置は、テレビ機能、ラジオ機能およびナビゲーション機能等を有しており、表示部5にこれらの画像を表示し、また、スピーカから音声を出力する。ルームミラー7又はその周辺には撮影手段8が備えられており車内を撮影することができる。なお、表示部5や操作部5a、撮影手段8の位置は図1の例に限られるものではない。
【0018】
図2は、車両用表示装置1のブロック図の一例を示す。ナビゲーション装置11とテレビ/ラジオ装置12からの映像出力は、表示制御部10に出力される。また、表示制御部10には、操作部5a、アイポイントセンサ12及び乗員検知センサ13からの信号出力が入力され、これらから入力される信号に応じて表示部5及び駆動手段15を制御する。また、表示制御部10には障害物との衝突が予測された場合に生成されるプリクラッシュ信号、車両が障害物に衝突してエアバッグが展開された場合に生成されるエアバッグ信号が入力されるようになっている。
【0019】
表示制御部10は、プログラムを格納したROM、プログラムの実行やワークエリアとなるRAM、各種装置との通信装置、及び、プログラムを実行するCPUとを有し、表示部5の表示内容や表示角度を制御する。例えば、ナビゲーション装置11とテレビ/ラジオ装置12からの映像・音声を切り替えて表示部5に出力し、また、輝度や色調、音量など乗員の好みの設定を保持し、設定に応じた画像を生成する。また、例えば、表示制御部10は、ナビゲーションの道路地図を表示する場合、コントラストは小さくかつ色を薄めに画像を調整し、DVDの画像を表示する場合、コントラストを大きくかつ赤色が強くなるように画像を調整する。また、例えば、夜間の場合は輝度を低くし、日中の場合は輝度を大きくするように画像を調整する。
【0020】
ナビゲーション装置11は、GPS(Grobal Positioning System)航法及び自律航法による位置推定に、マップマッチング法による補正を加えながら現在位置を推定する。複数(3個以上)のGPS衛星から発信される電波をGPS受信機により受信し、電波の到達時間及びGPS衛星の位置情報に基づきGPS航法により車両の現在位置を推定する。また、ナビゲーション装置11には、車速センサ、ジャイロセンサからの情報に基づいて車両の走行経路を累積し自律航法により車両の現在位置を推定する。また、ナビゲーション装置11は道路地図データベースを有し、推定された現在位置に対して、道路地図DBから抽出した道路地図情報の道路と車両の位置とを対応づけるマップマッチング法により最終的に現在位置を精度よく推定する。
【0021】
ナビゲーション装置11は、推定された現在位置の道路地図を道路地図DBから抽出しその映像を表示制御部10に出力する。また、操作部5a等から目的地が入力されると、推定された走行位置から目的地までのルートを周知の方法で探索し、当該ルートを含む道路地図の映像を表示制御部10に出力する。
【0022】
テレビ/ラジオ装置12は、地上放送や衛星放送のテレビ用の電波を受信し映像及び音声を出力する。地上放送であれば、VHF帯やUHF帯の所定の周波数の電波から乗員に指定された電波を選択して受信する。なお、アナログ放送又はデジタル放送の別は問わない。衛星放送であれば、HEO(Highly Elliptical Orbit)衛星デジタルテレビ放送を受信し、デジタルテレビ放送の番組を受信する。なお、HEO衛星を用いた衛星デジタル放送は、3機の衛星を地球の自転に合わせて切り替えながら運用することで衛星を常に天頂位置に配することができ、車両のような移動体に好適なシステムである。BS(Broadcasting Satellite)放送やCS(communications satellite)放送を受信してもよい。
【0023】
また、テレビ/ラジオ装置12は、AM放送やFM放送の電波から乗員に指定された電波を選択して受信する。デジタル放送やHEO衛星デジタル音声放送を受信してもよい。なお、ラジオ放送に映像信号が含まれていた場合、該映像を表示制御部10に出力する。また、テレビ/ラジオ装置12は、DVDに記録された映像や音声を再生して出力することも可能である。
【0024】
操作部5aは、押下式のキーボード又はボタンとして構成され、これらの操作内容に応じてナビゲーション装置11やテレビ/ラジオ装置12等、車両用表示装置1が操作される。操作部5aは、車両用表示装置1の入力装置の一例であるので、赤外線リモコンを用いて操作してもよいし、表示部5にタッチパネル機能が備えられている場合、表示部5から操作してもよい。また、操作部5aにマイクを備え運転者の発する音声を音声認識回路で認識して操作を入力してもよい。
【0025】
表示部5及び駆動手段15について説明する。表示部5は、液晶パネルや有機ELパネル、電子ペーパ等を使用して表示制御部10の制御により操作メニューや道路地図、テレビ等の映像を表示する。運転席からの視角と助手席からの視角とで別の内容を表示可能なパネルであってもよい。また、駆動手段15は表示部5の位置や表示面の角度を駆動するモータ及びモータ制御装置である。
【0026】
図3は表示部5の斜視図を示す。図3(a)は使用時の状態を、図3(b)は収納部20に収納された状態を示す。すなわち、表示部5は非使用時にはエアコン吹き出し口4の下部に設けられた凹部を収納部20として車両のセンタークラスタから突出しないように収納されている。そして、乗員がナビゲーション装置11やテレビ/ラジオ装置12を使用するために車両用表示装置1の電源をオンにすると駆動手段15が、表示部5を保持する支持台21を駆動して、図3(a)のような予め定めた位置に表示部5を駆動する。また、車両用表示装置1の電源がオフにされたり乗員が操作すると、駆動手段15が支持台21を駆動して図3(b)のような予め定めた位置に表示部5を収納する。
【0027】
同様に、図4は表示部5の別の一態様を示す。図4(a)は使用時の状態を、図4(b)は収納部20に収納された状態を示す。すなわち、表示部5は非使用時にはエアコン吹き出し口4の下部に設けられた凹部を収納部20として、表示部5のY方向を車両後方向に倒した状態で収納されている。収納部20は例えば、1DIN又は2DIN(1DINが50mm×178mm)の大きさである。したがって、非使用時には、表示部5はセンタークラスタから突出しない。そして、乗員がナビゲーション装置11やテレビ/ラジオ装置12を使用するために車両用表示装置1の電源をオンにすると、駆動手段15が支持台21を駆動すると共に表示部5を縦立させ、図4(a)のような予め定めた位置に表示部5を駆動する。また、車両用表示装置1の電源がオフにされたり乗員が操作すると、駆動手段15が支持台21を駆動すると共に表示部5を倒し、図4(b)のような予め定めた位置に表示部5を収納する。
【0028】
表示部5は駆動手段15により表示面をチルト方向又は左右方向に制御され、乗員に対する表示面の表示角度を変動できる。図5(a)は使用時における表示部5の平面図を、図5(b)は表示部5の右側面図をそれぞれ示す。
【0029】
表示部5の表示角度は、適切な視角となるように又は後述のように衝突した場合や衝突が予測された場合に表示制御部10の制御により調整される。表示部5は支持台21の端部に設けられた回転台21aに設置されており、モータM1が回転すると回転方向に応じて右又は左に表示部5が駆動される。また、表示部5は、回転台21aと回動部21bを介して設置されており、モータM2が回転すると回転方向に応じて回動部21bが駆動されチルト方向(上下方向)に表示部5が駆動される。
【0030】
車両用表示装置1の使用時には、表示部の表示角度は道路地図を利用したりテレビ等を視聴している乗員が視認性に優れた方向に調整されることが望ましいが、表示部5が液晶パネルで構成されている場合、視角に応じてコントラスト特性が大きく異なる場合がある。図6は、チルト方向の視角θとコントラスト比CRの関係の一例を示す図である。図6によれば視角が約5度の場合にコントラストが最大となり、視角が大きくなるにつれコントラスト比が減少している。コントラスト比が減少すると色つぶれが生じ、表示部5に表示された画像の視認性が低下する。したがって、乗員のアイポイントに対する表示部5の表示角度が例えば、例えば、コントラスト比が300以上になるように調整されていることが望ましい。
【0031】
本実施の形態の車両用表示装置1は、乗員検知センサ13により乗員を検知して、乗員の検知された座席の乗員のアイポイントをアイポイント検知センサ14により検知して表示角度を調整する。
【0032】
図6のような表示装置のコントラスト特性は、予め車両用表示装置1に設定されているので、車両用表示装置1はコントラスト特性及びアイポイントに基づき最適な視角となるように表示角度を調整する。
【0033】
アイポイントに基づく表示部5の表示角度の調整について説明する。まず、乗員検知センサ13は、運転席、助手席、後席等の各座席に乗員が着座している場合にこれを検知する。乗員検知センサ13は、乗員が着座している場合の体重を検出し乗員の着座を検出してもよいし、乗員の赤外線を検出したり乗員の着座による遮光に基づき乗員の着座を検出してもよい。室内を撮影するカメラを設け、人の顔のパターンマッチングにより乗員の有無を検出してもよい。
【0034】
アイポイント検知センサ14は、撮影手段8により撮影された画像から乗員の目元の画像をパターンマッチング等により検出し、検出されたアイポイントの画像に基づき乗員のアイポイントの位置を取得する。図7(a)は撮影された車内の画像一例を、図7(b)は、画像を解析して抽出された目元の画像の一例を示す。撮影手段8がオートフォーカス機能を有するか又はステレオカメラであればアイポイントまでの距離情報が得られるので、撮影された画像の大きさ、焦点距離に基づき、アイポイントの位置が算出される。なお、撮影手段8の位置は固定されているか、少なくとも、撮影位置に関する情報は既知である。表示部5の位置は制御されて既知であるので、アイポイントの位置が算出されれば、表示面と乗員のアイポイントとの相対位置が求められる。なお、乗員が、みずからの身長を入力してもよい。
【0035】
図8はアイポイントと表示部5の表示面との関係を示す図である。図8(a)は車両正面視におけるアイポイント31と表示部5の表示角度αを、図8(b)は車両側面視におけるアイポイント31と表示部5との表示角度βをそれぞれ示す。表示制御部10は、表示角度αに基づき、表示角度αが低減するように駆動手段15にモータM1を駆動させ、また、表示角度βに基づき表示角度βが低減するように駆動手段15にモータM2を駆動させる。以上のような制御により、アイポイントと表示部5とが所定以内の視角となるように視認性を確保できる。
【0036】
以上のような制御により、車両用表示装置1を使用している際、視認性が良好となるように表示部5の表示角度が調整されるが、そのような状態で車両が障害物と衝突すると、車両に生じる前後加速度やヨーレート等の影響を受けて乗員が動き、表示部5と乗員が接触する場合がある。本実施の形態の車両用表示装置1は、衝突を検知又は予測して表示部5を安全な形態に駆動し、乗員の被傷を防止する。
【0037】
車両の障害物との衝突は、例えばエアバッグが展開されたことを示すエアバッグ信号に基づき検出される。エアバッグ装置は、加速度センサが検出した加速度データを積分して減速度を演算し、演算された減速度が予め定めた所定値を越えた場合にインフレータに点火電流を流してエアバッグ を展開 するようになっている。したがって、エアバッグが展開された場合、車両が障害物と衝突したものと判定できる。なお、加速度センサの検出値を直接表示制御部10に入力し、加速度データを解析して衝突を検知してもよい。
【0038】
衝突の予測は例えばプリクラッシュ信号の検出に基づき行う。プリクラッシュ信号は、プリクラッシュ センサにより生成される。プリクラッシュセンサは、車両前方に設けられたレーザレーダ、ミリ波レーダ又は音波の送信機と、障害物からの反射波を受信する受信機とにより構成される。プリクラッシュセンサは、レーダ等の送信角度を変えながら反射波を受信する。プリクラッシュセンサは、受信波の強度や位相に基づき、障害物との相対距離及び相対速度を算出し、また、受信波の反射方向から障害物の位置を検出できる。そして、障害物との相対距離若しくは相対速度又はその両方が予め定めた条件を満たした場合、障害物と衝突するおそれがあること予測し、プリクラッシュ信号を送出する。
【0039】
表示制御部10は、エアバッグ信号又はプリクラッシュ信号が入力されると、駆動手段15を制御して表示部5を安全な形態に駆動する。安全な形態とは、例えば、図3(b)又は図4(b)に示した表示部5がセンタークラスタに収納された状態である。表示部5が収納されていれば、乗員と表示部5とが接触して乗員が被傷することが防止できる。
【0040】
車両がエアバッグとプリクラッシュセンサの両方を備えている場合、プリクラッシュ信号が先に検出される場合が多い。しかしながら、プリクラッシュ信号は衝突の可能性があることを予測して運転者に報知し衝突の回避を促すものであるため、プリクラッシュ信号が検出された状態で表示部5を収納したのでは運転者が不便である。このため、例えば、プリクラッシュ信号が検出された段階では、表示部5の表示角度を乗員の被傷が防止される角度に駆動することで安全な形態としてもよい。
【0041】
例えば、図4のように表示部5が使用時に縦立する形態である場合、プリクラッシュ信号が検出された段階で表示部5を倒した状態に駆動する。図9(a)は表示部5を車両後方に倒した状態の表示部5の側面図を示す。図9(a)のように表示部5が車両前後方向に倒れた状態であれば、表示部5の角部5bと運転者との距離が遠くなるため、使用時の状態よりも安全な形態となる。
【0042】
また、図9(b)はプリクラッシュ信号が検出され、表示部5の表示角度を駆動した別の形態の平面図を示す。表示制御部10は、プリクラッシュ信号が検出されると車幅方向に対し45度の角度となるように表示部5を駆動する。図9(b)のように表示部5の表示面が運転席方向に駆動されると、運転者と表示部5が角部5b、5cで接触することが低減されるので、使用状態よりも安全な形態とすることができる。
【0043】
また、図9(c)に示すように、プリクラッシュ信号が検出された場合、表示部5の表示角度を車両前後方向に駆動してもよい。表示制御部10は、プリクラッシュ信号が検出されると表示部5の表示面が車幅方向を向くように表示部5を駆動する。図7(c)のように表示部5の表示面が駆動されると、運転者と表示部5との距離が大きくなり接触することが低減されるので、使用状態よりも安全な形態とすることができる。
【0044】
なお、助手席に乗員が検出されている場合、例えば、図9(b)のように表示部5の表示面が運転席方向に駆動されると、助手席の乗員と表示部5の角部5cとの距離が接近するため好ましくない。したがって、表示制御部10は助手席に乗員が検出されている場合、運転者及び助手席の乗員を表示部5で被傷させないように、図9(a)又は図9(c)のように駆動することが好適となる。表示部5はセンタークラスタにあるので、図9(a)又は図9(c)の駆動形態であれば、運転者及び助手席の乗員の双方にとって安全な形態となる。
【0045】
プリクラッシュ信号に続いてエアバッグ信号が検出された場合、表示制御部10は、図7(a)又は(b)の状態から表示部5を収納部20へ収納するが、エアバッグが展開されるのでエアバッグが収縮するまで運転者が表示部5に接触するおそれは少なく、エアバッグが収縮されるまでの間に表示部5を収納部20に収納できる。
【0046】
なお、図9(a)ないし(c)に示した安全な形態は一例に過ぎず、図9(b)又は(c)の形態において、表示部5をチルト方向に駆動してもよい。図9(b)又は(c)の形態で、表示部5を上方向にチルトすれば角部5b又は5cと運転者との距離が大きくなるのでより安全な形態となる。
【0047】
ところで、これまでは車両の前席に表示部5が備えられているとしたが、表示部5は後席の乗員が視聴するように後席側に備えられていてもよい。図10は、後席側のシーリングに設けられた表示部5の一例を示す。
【0048】
図10(a)はシーリングに設けられた車両用表示装置1の収納状態を、図10(b)は使用時の表示部5をそれぞれ示す。表示部5は非使用時(収納時)には表示面をシーリングと略平行に収納して車両のシーリングから突出しないように収納されている。
【0049】
収納部20には操作部5aが設けられており、乗員によりオン/オフやテレビ・ラジオの選局、輝度やコントラスト等が操作される。なお、操作部5aに操作ボタンを設けず、操作部5aをリモコン装置の受光部としてもよい。
【0050】
後席の乗員がテレビ/ラジオ装置12を使用するために車両用表示装置1の電源をオンにすると、駆動手段15が表示部5を駆動して、図10(b)のように予め定めた位置に表示部5を駆動する。乗員は、表示部5の開度を調整することができる。
【0051】
車両用表示装置1は、表示部5が前席にある場合と同様に、アイポイント検知センサ14により後席の乗員のアイポイントを検知し、乗員の視角が所定の範囲となるように表示部5の表示角度を調整して、表示部5を駆動する。後席側に複数の乗員が検知された場合、各乗員の平均の視角に基づいて表示角度を調整してもよいし、入力された重み付けに従い重み付けの大きい座席の乗員の視角に適切となるように表示角度を調整してもよい。
【0052】
図10のような車両用表示装置の場合、チルト方向は表示部5の収納(又はオープン方向)方向と同じであるので、収納に使用する駆動手段と同じ駆動手段15によりチルト角度を調整できる。また、左右方向については、収納部20と一体に左右に駆動される。したがって、後席の車両用表示装置も乗員に対し適切な視角となるように表示角度を駆動できる。
【0053】
そして、車両用表示装置が使用されている場合に、プリクラッシュ信号又はエアバッグ信号が検出された場合、表示部5が速やかに収納部20に収納されるので、車両が障害物と衝突した場合、乗員が表示部5と接触して被傷することを防止できる。
【0054】
以上のように、本実施の形態の車両用表示装置は、乗員のアイポイントを検知して適切な視角となるように表示部5を駆動すると共に、車両が障害物と衝突した場合又は衝突が予測された場合に、表示部5を安全な形態に駆動することができる。なお、図示した車両用表示装置は一例に過ぎないので、図10のような車両用表示装置が前席のシーリング部に設けられていてもよい。また、図3又は図4のような車両用表示装置が、運転席又は助手席の背面に設けられ、後席の乗員の表示装置として提供されてもよい。
【0055】
続いて、本実施の形態の車両用表示装置1が表示角度を駆動する処理の流れを図11のフローチャート図に基づき説明する。なお、本実施の形態では、前席側と後席側に1台ずつ表示部5が備えられたいわゆる3列シートの車両であるとする。
【0056】
いずれかの乗員が車両用表示装置1をオンにすると図11のフローチャート図に基づく処理がスタートする。まず、車両用表示装置1は乗員検知センサ13による検知に基づき、車両の座席に着座した乗員を検出する(S11〜14)。本実施の形態では、運転席と2列目の左右の席及び3列目の右席に乗員が検知された。また、乗員が検知された座席について、アイポイント検知センサ14が各乗員のアイポイントを検知する(S11〜S14)。
【0057】
次いで、車両用表示装置1は表示部5の駆動位置を決定する(S15)。前席の表示部5については、運転者のみが乗員として検知されたので、運転者のアイポイントに基づき適切な視角が得られるように表示部5の表示角度が決定される。後席の表示部5については2列目及び3列目の3人の乗員のアイポイントの平均位置に対し適切な視角となるように決定される。
【0058】
なお、前席又は後席に複数人の乗員が検出された場合、表示内容によって表示角度を調整することが好適である。例えば、ナビゲーション装置11の画像を表示している場合、運転者が画像を視認することが多いため、表示制御部10は前席の表示部5を運転者のアイポイントに基づき適切な表示角度に決定する。また、テレビやDVDの画像を表示している場合、運転者が視聴することを禁止するため、助手席の乗員のアイポイントに基づき適切な表示角度に決定する。
【0059】
また、表示部5の表示角度は、予め運転者等に設定された方針にもとづき決定されてもよい。運転者は予め「ドライバー重視」や「後席左重視」といった表示角度の決定方針を設定しておき、表示制御部10は、決定方針を参照して重み付けされた、表示角度を決定する。
【0060】
表示角度が決定されると表示制御部10は駆動手段15を制御して前席及び後席の表示部5の表示角度を駆動する(S16)。
【0061】
車両の走行中、車両用表示装置1はプリクラッシュ信号が検出されたか否かの判定を繰り返す(S17)。プリクラッシュ信号が検出された場合(ステップS17のYes)、表示制御部10は前席及び後席の表示部5を安全な形態に駆動する。
【0062】
そして、表示制御部10はエアバッグ信号が検出されたか否かを判定して(S19)、エアバッグ信号が検出された場合、表示部5を更に安全な形態に駆動する。なお、プリクラッシュ信号が検出された段階で表示部5を最も安全な形態、例えば収納部20に収納してもよい。
【0063】
また、プリクラッシュ信号が検出されてから所定時間経過してもエアバッグ信号が検出されない場合、乗員のアイポイントに基づき適切な視角となるよう表示部5を再度駆動する。
【0064】
以上のように、本実施の形態の車両用表示装置では、使用時の視認性と衝突時の安全性を両立できる。すなわち、乗員のアイポイントを検知して適切な視角となるように表示部5を駆動すると共に、車両が障害物と衝突した場合又は衝突が予測された場合に、表示部5を安全な形態に駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】車載用表示装置を搭載した車室内の前席周辺の斜視図である。
【図2】車両用表示装置のブロック図の一例である。
【図3】表示部の斜視図の一例である。
【図4】表示部の斜視図の一例である。
【図5】使用時における表示部の平面図及び右側面図である。
【図6】チルト方向の視角とコントラストの関係の一例を示す図である。
【図7】車内の画像及び目元の画像の一例である。
【図8】アイポイントと表示部の表示面との関係を示す図である。
【図9】表示部を車両後方に倒した状態の表示部の側面図である。
【図10】シーリングに設けられた表示部の一例である。
【図11】車両用表示装置が表示部の表示角度を駆動する処理の流れを示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0066】
2 ダッシュボード
3 メータ類
4 エアコン吹き出し口
5 表示部
8 撮影手段
10 表示制御部
13 乗員検知センサ
14 アイポイント検知センサ
15 駆動手段
20 収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部を駆動する駆動手段を備えた車両用表示装置であって、
車両と障害物との衝突を検知する衝突検知手段又は衝突を予測する衝突予測手段と、を有し、
前記衝突検知手段により衝突が検知された場合、又は、前記衝突予測手段により衝突が予測された場合、前記駆動手段は、前記表示部を安全形態に駆動する、
ことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記安全形態は、前記表示部の非使用時の形態であり、
前記衝突検知手段により衝突が検知された場合、又は、前記衝突予測手段により衝突が予測された場合、前記駆動手段は前記表示部を非使用時の形態に駆動する、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記衝突検知手段により衝突が検知された場合、又は、前記衝突予測手段により衝突が予測された場合、前記駆動手段は前記表示部の表示面の角度を駆動する、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記衝突予測手段により衝突が予測された場合、前記駆動手段は前記表示部を第1の安全形態に駆動し、
前記衝突検知手段により衝突が検知された場合、前記駆動手段は前記表示部を第2の安全形態に駆動する、
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−38851(P2007−38851A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225396(P2005−225396)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】