説明

車両用補助暖房装置

【課題】 起動初期に、車室内の暖房の即暖性が良好な車両用補助暖房装置を提供する。
【解決手段】暖房運転状態では、四方弁8の切換により、冷媒流路14内の高圧側冷媒hが、室内側熱交換器6に熱を受け渡して、車室内空間へ供給される空気eが、暖められる。
エンジン15始動初期、熱供給を行うエンジン15からの排気ガスが排熱交換器20で圧縮機7の入口側7aに位置する低圧側冷媒を加熱して暖め、高圧側冷媒hに熱量を受け渡す。
高圧吐出側の冷媒温度Tdが、エンジン15を冷却する冷却水LLCの冷却水温Tweに到達すると、排気ガス供給停止弁19の閉塞と同時に、ON,OFF弁17が開放されて、排熱交換器20に冷却水LLCが供給され、温度を上昇させて、高圧側冷媒hに熱量を受け渡して暖房を継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駆動源の起動初期に、車室内の暖房を行うことが出来る車両用補助暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用補助暖房装置は、冷却水を利用した暖房装置および冷凍サイクルを利用した冷房装置に設けられているものが知られている。
【0003】
このうち、暖房装置では、車室内の暖房時に、冷却水を車室内空調用のヒーターコア(車室内側熱交換器)に循環させると共に、ヒーターコアを通過した空気を車室内の吹出口から吹き出して、車室内を暖房可能にするものが知られている。
【0004】
このような車両用暖房装置により車室内の暖房を行う場合、冷却水の水温が充分に上昇するまでは車室内に吹き出される空気の温度が低く、乗員が快適と感じるまで長い時間を要することがあった。
【0005】
このような冷間起動時の不快感の解消方法としては、外気温度が低い場合に冷房装置を作動させると共に、この冷房装置の圧縮機で圧縮される高圧冷媒の熱を利用して冷却水を加熱し、暖められた冷却水をヒーターコアに供給することにより、ヒーターコアで車室内の空気を暖める冷却水式の補助暖房装置を用いるものが知られている(例えば、特許文献1,2等参照)。
【0006】
このようなものでは、エンジン冷却水の温度が低い場合には、冷凍サイクルの高圧冷媒を熱源として、エンジン冷却水を加温する方式である。
【0007】
また、外気温度が低い場合におけるエンジン始動初期に冷房装置を作動させると共に、この冷房装置の圧縮機で圧縮される高圧冷媒の熱で車室内の空気を直接加熱するようにしたヒートポンプ式の暖房方法も考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−310227号公報
【特許文献2】特開2002−211234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように構成された従来の車両用補助暖房装置では、暖気運転の初期において、即暖性能が良好であるとは言い難いという問題があった。
【0010】
また、外気温度が低く、冷媒温度も低い冷間起動時に、冷媒圧力が低い場合があり、圧縮機の吸込側圧力が、負圧まで低下してしまうことがあり、このため、大気が冷媒に混入してしまう虞があった。
【0011】
そこで、本願発明は、起動初期に、車室内の暖房を行えて即暖性の良好な車両用補助暖房装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する為に、請求項1に記載されたものは、入口側の低圧冷媒を圧縮して、該圧縮された高圧側冷媒を冷媒流路内で循環させる圧縮機と、該冷媒流路内の冷媒と、車室内空間へ供給される空気との間で熱交換を行う熱交換器とを有して、前記高圧側冷媒の熱を車室内の暖房に用いる車両用補助暖房装置であって、車両駆動源の起動初期の状態では、該車両駆動源が発生する排熱を用いて、前記圧縮機の入口側の低圧側冷媒を暖める熱交換を行う車両用補助暖房装置を特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
このように構成された請求項1記載のものは、前記車両駆動源の起動初期の状態で、該車両駆動源によって生じる排熱が用いられて、前記圧縮機の入口側の低圧冷媒が加熱される。
【0014】
このため、前記車両駆動源が、起動した直後であっても、前記圧縮機の入口側の冷媒が暖められて、前記圧縮機の吸い込み圧力が負圧となる虞を減少させることが出来る。
【0015】
また、前記車両駆動源が発生させる排熱の温度は、早期に上昇する。
【0016】
このため、起動初期状態でも、前記熱交換器で熱交換される所望の熱量を、前記冷媒に与えることが出来、前記車室内空間へ供給される空気が暖められて、即暖性を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態の車両用補助暖房装置が適用された車両用空気調和装置で、冷房運転状態の冷凍サイクルを説明する模式的な回路図である。
【図2】この発明の実施の形態の車両用補助暖房装置が適用された車両用空気調和装置で、暖房運転状態のヒートポンプサイクルを説明する模式的な回路図である。
【図3】この発明の実施の形態の実施例1の車両用補助暖房装置で、全体の構成を説明する模式的な回路図である。
【図4】この発明の実施の形態の実施例1の車両用補助暖房装置に用いられる三重管排熱交換機で、図3中A−A線に沿った位置での断面図である。
【図5】この発明の実施の形態の実施例1の車両用補助暖房装置の回路構成を説明するブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態の車両用補助暖房装置で、各熱供給源の遮断のタイミングを説明するタイムチャート図である。
【図7】この発明の実施の形態の実施例2の車両用補助暖房装置で、全体の構成を説明する模式的な回路図である。
【図8】この発明の実施の形態の実施例3の車両用補助暖房装置で、全体の構成を説明する模式的な回路図である。
【図9】この発明の実施の形態の実施例4の車両用補助暖房装置で、全体の構成を説明する模式的な回路図である。
【図10】一般的な車両のエンジン始動から、車速V、排気温度Tg及びコンプレッサ入口側の冷媒温度Tsが、時間の経過と共に上昇する様子を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、この発明を実施するための実施の形態の車両用補助暖房装置について、図1乃至図10を用いて説明する。
【0019】
なお、前記従来例と同一乃至均等な部分については、一部説明を省略する。
【0020】
まず、図1及び図2に示すように、この実施の形態の車両用空気調和装置1では、車室内を、冷房運転状態とする場合に用いる冷凍サイクルと、暖房運転状態で用いるヒートポンプサイクルとを、一部共用された冷媒流路を有する循環回路で実現する為、車両2のエンジンルーム3内に、冷媒の流れる方向に応じて、放熱若しくは吸熱を行う室外側熱交換器4が設けられている。
【0021】
また、車室内へ冷暖房の空気を供給する空調ユニット5の内部には、冷媒の流れる方向に応じて、エバポレータ若しくはコンデンサとして機能する室内側熱交換器6が設けられている。
【0022】
これらの室外側熱交換器4及び室内側熱交換器6には、圧縮機7、四方弁8、アキュムレータ9、膨張弁10,11及び逆止弁12,13が、配管によって構成された冷媒流路14を各々介して接続されている。
【0023】
このうち、前記圧縮機7は、入口側7aの低圧冷媒を圧縮して、この圧縮された高圧側冷媒を、出口側7bから吐出することにより、前記冷媒流路14内で、循環されて、前記室外側熱交換器4又は、前記室内側熱交換器6の何れか一方で、圧縮冷媒の熱を外気若しくは、ブロワ6aの駆動によって車室内へ供給される空気に放熱するように構成されている。
【0024】
また、この圧縮機7の出口側7bに設けられている前記四方弁8は、切換により、図1に示すように、前記冷媒流路14内の冷媒の循環方向Cが形成されることで、前記冷房運転状態となって、前記室外側熱交換器4がコンデンサとして、また、前記室内側熱交換器6がエバポレータとして、機能するように構成されている。
【0025】
更に、この四方弁8は、図2に示すように切換えられると、前記冷媒流路14内の冷媒の循環方向Hが形成されることで、前記暖房運転状態となって、前記室外側熱交換器4がエバポレータとして、また、前記室内側熱交換器6がコンデンサとして、機能するように構成されている。
【0026】
この暖房運転状態では、前記冷媒流路14内の高圧側冷媒hが、前記室内側熱交換器6で熱を受け渡して、車室内空間へ供給される空気eが、暖められるように構成されている。
【0027】
また、このエンジンルーム3内には、車両駆動源として、走行に必要な動力を得ると共に、熱供給を行うエンジン15が設けられている。
【0028】
このエンジン15には、図示省略のウォータジャケットが設けられていて、内部の冷却水LLCが、ウォータポンプの駆動によって、ラジエータ等との間で循環されることにより、エンジン本体が、適温を超えて高温とならないように冷却されている。
【0029】
また、この実施の形態の冷却水LLCの一部は、排熱を運搬する熱媒体の一部として機能して、冷却水配管16の循環路中に排熱交換器20が接続されることにより、この冷却水配管16内の冷却水LLCが、この排熱交換器20内へ挿通されるように設けられている。
【0030】
この排熱交換器20の上流側に位置する冷却水配管16には、ON,OFF弁17が設けられていて、この排熱交換器20に前記冷却水LLCを供給及び停止可能とするように構成されている。
【0031】
更に、このエンジン15からは、車両2の後方に向けて配管された排気ガス通路18を介して、図示省略の排気管及びマフラーへ向けて、排気ガスが排出されるように構成されている。
【0032】
この実施の形態では、この排気ガス通路18には、内部を通過する排気ガスの温度を検出する排気ガス温度センサ18aが設けられている。
【0033】
そして、前記暖房運転状態では、前記エンジン始動時における前記圧縮機7の起動のタイミングを、この排気ガス温度センサ18aで検出される排気ガスの排気温度Tgが、40℃を越えた場合に行うように設定されている。
【0034】
また、この排気ガス通路18は、排気ガス供給停止弁19を介して、前記排熱交換器20に接続されている。
【0035】
そして、前記エンジン15から排出される排気ガスの一部若しくは全部は、エンジン15の排熱を運搬する熱媒体の一部として機能して、この排気ガス通路18及び排気ガス供給停止弁19を介して、前記排熱交換器20に導出されるように構成されている。
【0036】
この排熱交換器20の上流側に設けられた前記排気ガス供給停止弁19は、排気ガス通路18内を通過して、切換により前記排熱交換器20へ供給される排気ガスを、供給及び停止可能とするように構成されている。
【0037】
更に、この排気ガス供給停止弁19は、開放されることにより、前記排熱交換器20内へ排気ガスが、排気ガス通路18を介して送りこまれると、エンジン15の起動初期の状態で、発生する排熱が、この排気ガスから前記圧縮機7の入口側7aに位置する低圧側冷媒へ受け渡されて熱交換されて、この低圧側冷媒が暖められるように構成されている。
【0038】
また、この実施の形態では、この排熱交換器20は、前記圧縮機7の入口側7aの上流で、前記アキュムレータ9の下流側に介在されて、低圧側冷媒を挿通させる管路に、前記排気ガス通路18に連通される排気ガス通路を隣接配置させると共に、前記冷却水配管16が接続される冷却水通路にも、隣接されるように配置されている。
【0039】
そして、前記冷媒流路14内の低圧側冷媒に対して、前記排気ガス通路18から送られてくる排気ガスの排熱が、熱交換されて熱量を受け渡し可能であると共に、前記冷却水配管16内を循環する冷却水LLCの排熱が、受け渡し可能とされて、熱交換が、異なる熱媒体から、個別に可能となるように構成されている。
【0040】
この実施の形態では、前記圧縮機7の出口側7bに、冷媒温度Tdを検出する冷媒温度センサ18bが設けられている。
【0041】
そして、この冷媒温度センサ18bによって検出される圧縮機7の出口側7bの高圧側冷媒hの冷媒温度Tdが、前記エンジン15の起動初期では、低いので、前記エンジン15の排気ガスの排熱が用いられて、前記圧縮機7の入口側7aに位置する低圧側冷媒が加熱されて暖められる。
【0042】
一般に、図10に示す様に、車両2の走行初期では、エンジン15の始動された始動時点aから短い時間で、排気温度Tgが上昇することが知られている。また、圧縮機7の入口側7aの冷媒温度Tsは、この圧縮機7の起動により、一旦降下するが、その後、時間の経過と共に、徐々に上昇することが知られている。
【0043】
この実施の形態では、図6に示すように、前記エンジン15の冷却水LLCの冷却水温Tweが、前記エンジン15の起動初期の状態では、暖まらないので、前記ON,OFF弁17が閉塞されたままの状態として、前記エンジン15の冷却水LLCが、前記排熱交換器20へ供給されないように構成されている。
【0044】
また、エンジン15の始動時点aから、排気ガスの排気温度Tgが、一定温度(ここでは、約50℃)に至る時点bまで(ここでは、約30秒間)、前記圧縮機7が起動されないように構成されている。
【0045】
そして、この冷媒温度センサ18bで検出される出口側7bの高圧側冷媒hの冷媒温度Tdが、所定温度(ここでは、前記エンジン15を冷却する冷却水LLCの冷却水温Tweと同じ温度)に到達した場合(図6中時点c)、前記排気ガス供給停止弁19が閉じられて、前記排気ガスから、低圧側冷媒への熱量の供給が停止されるように構成されている。
【0046】
更に、この圧縮機7の出口側7bの高圧側の冷媒温度Tdが、一定温度(ここでは、冷却水LLCの冷却水温Twe)に到達した場合、前記排気ガス供給停止弁19の閉塞と同時に、前記ON,OFF弁17が開放される。
【0047】
そして、前記低圧側の冷媒に、エンジン15からの排熱が、前記冷却水LLCから前記排熱交換器20を介して供給されて、加熱することにより、入口側の低圧冷媒の冷媒温度Tsが上昇するように構成されている。
【0048】
更に、この実施の形態では、前記冷却水温Tweが、一定温度(ここでは、70℃)を越えた場合(図6中時点d1)、前記ON,OFF弁17が閉塞されて、前記エンジン15の冷却水LLCが、前記排熱交換器20への供給されないように構成されている。
【0049】
また、この実施の形態では、前記圧縮機7の入口側7aの低圧側の冷媒圧力Psが、一定圧力(ここでは、312kPa)を越えた場合(図6中時点d2)、前記ON,OFF弁17が閉塞されて、前記排熱交換器20への前記冷却水LLCの供給が遮断されるように構成されている。
【0050】
そして、この実施の形態では、冷媒過熱度(SH)が、一定温度(ここでは、10deg)を越えた場合(図6中時点d3)、前記ON,OFF弁17が閉塞されて、前記排熱交換器20への前記冷却水LLCの供給が遮断されるように構成されている。
【0051】
次に、この実施の形態の車両用補助暖房装置の作用効果について説明する。
【0052】
この実施の形態では、図1に示す冷房運転状態では、前記圧縮機7の出口側7bに設けられている前記四方弁8が切換られて、図1中矢印に示す前記冷媒流路14内の冷媒の循環方向Cが形成される。
【0053】
このため、前記冷房運転状態では、前記空調ユニット5の室外側熱交換器4がコンデンサとして、また、前記室内側熱交換器6がエバポレータとして、機能する。
【0054】
次に、図2に示す暖房運転状態では、前記四方弁8が、切換えられて、前記冷媒流路14内の冷媒の循環方向Hが形成される。
【0055】
即ち、前記暖房運転状態では、前記室外側熱交換器4がエバポレータとして、また、前記室内側熱交換器6がコンデンサとして、機能させることで、冷房運転状態とする場合に用いる冷凍サイクルの管路が、暖房運転状態で用いるヒートポンプサイクルと一部共用された循環回路として用いることが出来る。
【0056】
このヒートポンプサイクルとしての機能する暖房運転状態では、図6に示す様に、エンジン15の始動された始動時点aから、短い時間で排気温度Tgが上昇することを利用して、前記排気ガス供給停止弁19が開放されて、前記排気ガス通路18内の高温の排気ガスが、前記排熱交換器20内に導かれて、排出される。
【0057】
このため、前記排熱交換器20では、前記圧縮機7の入口側7aの冷媒が、この排気ガスによって加熱されて、この圧縮機7の吸い込み圧力が負圧となる虞が減少する。
【0058】
また、前記エンジン15が発生させる排熱の温度は、早期に上昇する。
【0059】
このため、起動初期状態でも、前記排熱交換器20で熱交換される所望の熱量を、前記冷媒に与えることが出来る。
【0060】
従って、冷間起動等、前記エンジン15の起動初期状態でも、前記冷媒通路14内を流れる冷媒が、前記空調ユニット5内に設けられた室内側熱交換器6を通過する空気eを暖めて、前記車室内空間方向へ供給出来、即暖性を向上させることが出来る。
【0061】
更に、この実施の形態では、図6に示すように、前記冷却水LLCの冷却水温Tweが、前記エンジン15の起動初期の状態では、暖まらないので、前記ON,OFF弁17が閉塞されて、前記エンジン15の冷却水LLCが、前記排熱交換器20へ供給されないように停止されている。
【0062】
このため、エンジン15の暖気運転の負荷を増大させることが無く、冷却水LLCの温度上昇が阻害される虞がない。
【0063】
エンジン15の始動時点aから、排気ガスの排気温度Tgが、一定温度(ここでは、約50℃)に至る時点bまで、約30秒間、前記圧縮機7は起動されない。
【0064】
そして、排気ガスの排気温度Tgが、約50℃に到達して、暖気運転が略完了したと判断される時点bで、前記圧縮機7が起動される。
【0065】
圧縮機7の起動により、入口側7aの冷媒温度Tsは、一旦降下すると共に、図6中に示すように、冷媒圧力Psも一旦下がるが、排気ガス通路18を介して導入されたエンジン排熱が、前記排熱交換器20によって熱交換されて、出口側7bの高圧側冷媒hの冷媒温度Tdが、冷媒圧力Psの上昇に伴って、比較的早期に上昇に転じる。
【0066】
この実施の形態では、冷却水LLCの冷却水温Tweに、前記出口側7bの高圧側冷媒hの冷媒温度Tdが到達した時点cで、前記排気ガス供給停止弁19が閉塞されて、前記排気ガスの前記排熱交換器20への供給が停止されることにより、低圧側冷媒との間の熱交換が行われなくなると共に、同時に前記ON,OFF弁17が開放される。
【0067】
この為、前記低圧側の冷媒に対して熱交換されていた前記エンジン15からの排気ガスによる排熱の熱量に代えて、この排気ガスよりも熱容量の大きい前記冷却水LLCから、前記排熱交換器20を介して、冷媒に対しての熱交換が行われ続ける。
【0068】
従って、入口側7aの低圧冷媒の冷媒温度Tsを更に、上昇若しくは保持させて暖房状態を継続することが出来る。
【0069】
更に、この実施の形態では、前記冷却水温Tweが、一定温度(ここでは、70℃)を越えた場合(図6中時点d1)、前記ON,OFF弁17が閉塞されて、前記冷却水LLCが、前記排熱交換器20への供給されないように構成されている。
【0070】
また、この実施の形態では、前記圧縮機7の入口側7aの低圧側の冷媒圧力Psが、一定圧力(ここでは、312kPa)を越えた場合(図6中時点d2)、前記ON,OFF弁17が閉塞されて、前記排熱交換器20への前記冷却水LLCの供給が遮断されるように構成されている。
【0071】
そして、この実施の形態では、冷媒過熱度(SH)が、一定温度(ここでは、10deg)を越えた場合(図6中時点d3)、前記ON,OFF弁17が閉塞されて、前記排熱交換器20への前記冷却水LLCの供給が遮断される。
【0072】
このように、何れかの時点d1,d2,d3で、排熱交換器20による熱交換が停止されるので、過負荷による前記圧縮機7の破損等から、圧縮機7を保護することが出来る。
【0073】
上述してきたように、この実施の形態では、前記エンジン15の起動初期の状態で、このエンジン15によって生じる排熱が用いられて、前記圧縮機7の入口側7aの低圧冷媒が加熱される。
【0074】
このため、前記エンジン15が、起動した直後であっても、前記圧縮機7の入口側7aの冷媒が暖められて、前記圧縮機7の吸い込み圧力が、負圧となる虞を減少させることができる。
【0075】
しかも、前記エンジン15の発生する排熱の温度は、早期に上昇するので、起動初期状態でも、前記排熱交換器20で、所望の熱量が冷媒によって、前記室内側熱交換器6へ供給される。
【0076】
このため、前記室内側熱交換器6を通過する空気eは、暖められて車室内空間へ送り出されることにより、即暖性を向上させることが出来る。
【実施例1】
【0077】
図3乃至図6は、この発明の実施の形態の実施例1の車両用補助暖房装置を示すものである。なお、前記実施の形態の車両用空気調和装置1と同一乃至均等な部分については同一符号を付して説明する。
【0078】
まず、構成上の相違点を中心に説明すると、この実施例1の車両用補助暖房装置では、図5に示す様なコントロールユニット21によって制御される空調ユニット25が、図示省略の車両に搭載されている。
【0079】
このうち、コントロールユニット21には、前記排気ガス温度センサ18a,冷媒温度センサ18b,前記圧縮機7の入口側7aの低圧側の冷媒圧力Psを測定する冷媒圧力センサ18c等、エンジン冷却水の温度及び冷媒の圧力等を検出して、このコントロールユニット21に送信する各種センサが接続されている。
【0080】
また、このコントロールユニット21には、前記圧縮機7,冷暖房切換弁44,ブロワ6a,排気ガス供給停止弁19,三方切換弁42及び内外気供給切換ドア26又は、エアミックスドア31等の各ドアアクチュエータが、接続されていて、このコントロールユニット21から出力される制御信号に応じて、各々切換及び駆動制御されるように構成されている。
【0081】
そして、前記空調ユニット25は、図3に示すように、ケース内部の空気が、車室内へ向けて、通風供給される方向に沿って、内外気供給切換ドア26,吸熱用室内側熱交換器27,ヒータコア28及び放熱用室内側熱交換器29が組み合わせられたヒータユニット30が設けられている
そして、このヒータユニット30の近傍には、各ドアアクチュエータの駆動制御によって、開閉塞可能となるエアミックスドア31等が、設けられていて、車室内側に供給される冷暖房風の風量の比率を調整可能とするように構成されている。
【0082】
また、この実施例1の車両用補助暖房装置では、前記吸熱用室内側熱交換器(エバポレータ)27には、減圧弁32が設けられると共に、この吸熱用室内側熱交換器27と前記圧縮機7の入口側7aとの間には、エンジン15の起動初期の状態で発生する排熱を用いて、前記圧縮機7の入口側に位置する低圧側冷媒を、加熱する排熱交換器としての多重管排熱交換器40が接続されて、設けられている。
【0083】
この多重管排熱交換器40は、図4に示す様に、円筒形状を呈して、内径寸法の異なる大径筒状部材34,中径筒状部材35,及び小径筒状部材36が、同軸状に配置されて、径内,外方向へ各壁面部が、所定間隔を開けて重ねられた状態で、放射状に連結する複数の固定リブ部材37…によって、各筒状部材34,35,36間が、相互に移動不能となるように固定されている。
【0084】
そして、この多重管排熱交換器40の内部には、前記中径筒状部材35と小径筒状部材36との間の空間部に、前記低圧側冷媒を循環させる冷媒通路38が、径方向水平断面形状で、円環状を呈するように形成されている。
【0085】
また、この多重管排熱交換器40では、この冷媒通路38の内側に、前記小径筒状部材36を介して隣接配置されて、前記エンジン15の冷却水LLCを導通することにより、前記低圧側冷媒及び、この冷却水LLCとの間で熱交換を行わせる熱媒体通路の一つとしての管状の冷却水通路39が形成されている。
【0086】
更に、この多重管排熱交換器40には、この冷媒通路38の外側に位置して、前記中径筒状部材35の内,外側面を介して隣接配置されることにより、挿通される排気ガス及び、前記低圧側冷媒との間で熱交換を行わせる熱媒体通路の一つとしての排気ガス通路33が、径方向水平断面形状で、円環状を呈するように形成されている。
【0087】
このため、前記中径筒状部材35及び小径筒状部材36の壁面部が、前記冷却水通路39及び排ガス通路33を、前記冷媒通路38を挟んで、径内外方向で隔離されることにより、冷媒通路38の内部を流通する冷媒に、冷却水LLC及び排気ガスが混合されることが無いように形成されている。
【0088】
そして、この多重管排熱交換器40の冷媒通路38には、前記圧縮機7の入口側7aが接続されていて、前記吸熱用室内側熱交換器27から送られてくる低圧側冷媒が、この入口側7aへ向けて送られるように構成されている。
【0089】
また、この多重管排熱交換器40の前記排気ガス通路33は、前記排気ガス供給停止弁19を介して、前記エンジン15の排気ガス通路18に連通されている。
【0090】
そして、前記排気ガス供給停止弁19の切換によって、この排気ガス通路18内を通過して、前記多重管排熱交換器40の前記排気ガス通路33へ供給される排気ガスが、供給及び停止可能となるように構成されている。
【0091】
更に、この多重管排熱交換器40の前記冷却水通路39は、一方向弁41及び三方切換弁42が設けられた冷却水配管43の支管43bを介して、前記エンジン15に設けられた図示省略のウォータジャケットに接続されている。
【0092】
また、この冷却水配管43には、前記ヒータコア28に、前記冷却水LLCを供給して循環させる本管43aが設けられていて、前記三方切換弁42によって、内部に導通される冷却水LLCの流通方向が、前記ヒータコア28方向のみとなるように切り替えられることにより、前記多重管排熱交換器40から、前記一方弁41及び支管43bを循環して戻る冷却水が、停止可能となるように構成されている。
【0093】
更に、この実施例1の前記圧縮機7の出口側7bの配管には、冷暖房切換弁44が設けられていて、前記圧縮機7から送られてくる高圧側の冷媒を、前記室外側熱交換器4方向或いは、放熱用室内側熱交換器29方向へ選択的に切換可能となるように構成されている。
【0094】
このうち、前記室外側熱交換器4側の配管には、リキッドタンク45及び一方向弁46が設けられていて、前記減圧弁32の上流側に接続される事により、前記冷暖房切換弁44の切換により、冷房運転状態が得られる冷凍サイクルが形成されている。
【0095】
また、前記放熱用室内側熱交換器29側の配管は、前記空調ユニット25内を通過する空気eを暖めることが可能となるように、前記放熱用室内側熱交換器29に直接接続されている。
【0096】
そして、前記冷暖房切換弁44の切換により、前記圧縮機7の出口側7bの高圧側冷媒が、この放熱用室内側熱交換器29方向へ循環されることにより、ヒートポンプサイクルが形成されて、車室内へ送風される空気を、前記ヒータコア28と共に暖める暖房運転状態とすることが出来るように構成されている。
【0097】
次に、この実施例1の車両用補助暖房装置の作用効果について説明する。
【0098】
このように構成された実施例1の車両用補助暖房装置では、図3及び図4に示すように、冷間運転等、エンジン15の起動初期の暖房運転状態では、前記排気ガス供給停止弁19が、開放されて、排気ガス通路18内の短時間で温度上昇した排気ガスが、前記多重管排熱交換器40の排気ガス通路33…内へ導かれて排出される。
【0099】
これらの排気ガス通路33…は、前記多重管排熱交換器40内の冷媒通路38…に隣接配置されているので、前記排気ガスの熱量が、前記冷媒通路38内を循環する冷媒に受け渡されて熱交換が行われる。
【0100】
このため、前記圧縮機7の入口側7aの低圧冷媒が加熱されて暖められることにより、この圧縮機7の吸い込み圧力が負圧となる虞を減少させることができる。
【0101】
更に、この実施の形態では、図3に示す三方切換弁42の切換によって、前記冷却水LLCの冷却水温Tweが上昇するまで、前記多重管排熱交換器40方向へ向けて、冷却水LLCが供給されない為、暖気運転に必要とされる冷却水LLCの温度上昇が阻害される虞がない。
【0102】
そして、図6に示すように、前記冷却水LLCの冷却水温Tweを、前記圧縮機7の出口側7bの高圧側冷媒hの冷媒温度Tdが超える時点cでは、前記排気ガス供給停止弁19が、閉塞されるのと同時に、図3に示す三方切換弁42の切換で、エンジン15で暖められた冷却水LLCが、前記多重管排熱交換器40の冷却水通路39方向に供給されて、前記支管43b内を循環する前記冷却水LLCの経路が形成される。
【0103】
このため、前記多重管排熱交換器40では、前記冷媒通路38を通過する低圧側冷媒と、この冷却水通路39を通過する冷却水LLCとの間で、前記筒状部材36の壁面部を介して熱交換が行われる。
【0104】
しかも、この実施例1の車両用補助暖房装置では、前記ヒータコア28に、放熱用室内側熱交換器29が一体となるように組み合わせられたヒータユニット30が、空調ユニット25内に配置されている。
【0105】
このため、前記冷暖房切換弁44の切換によって、放熱用室内側熱交換器29方向へ供給される高圧側冷媒が、この放熱用室内側熱交換器29を介して、車室内に送風される空気eを暖めることが出来る。
【0106】
更に、この実施例1のヒータユニット30では、放熱用室内側熱交換器29が、前記ヒータコア28に一体に組み合わせられている。
【0107】
このため、放熱面積が、前記放熱用室内側熱交換器29単独の場合に比して、拡大させることが出来るので、通過する空気eへの熱交換効率を向上させて、この点においても即暖性を良好なものとすることが出来る。
【0108】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【実施例2】
【0109】
図7は、この発明の実施の形態の実施例2の車両用補助暖房装置を示すものである。なお、前記実施の形態及び実施例1と同一乃至均等な部分については同一符号を付して説明する。
【0110】
まず、構成上の相違点から説明すると、この実施例2の車両用補助暖房装置では、前記実施例1の多重管排熱交換器40に代えて、排熱交換器がアキュムレータ内部に内蔵された交換器一体型アキュムレータ50が設けられている。
【0111】
この実施例2の交換器一体型アキュムレータ50では、アキュムレータ筐体50a内に、熱媒体通路の一つとしての排気ガスを通過させる排気ガス通路53と、熱媒体通路の一つとしての冷却水LLCを循環させる冷却水通路54とが一体に設けられている。
【0112】
この交換器一体型アキュムレータ50の内部を通過する低圧側冷媒Lは、前記排気ガス若しくは冷却水LLCとの間で、熱交換可能となるように構成されていて、前記圧縮機7の入口側7aに、出口側通路が接続されている。
【0113】
次に、この実施例2の車両用補助暖房装置の作用効果について説明する。
【0114】
このように構成された実施例2の車両用補助暖房装置では、前記実施の形態及び実施例1の作用効果に加えて、更に、前記圧縮機7の入口側7aへ向かう低圧側冷媒が、前記交換器一体型アキュムレータ50を通過する際に、前記排気ガス通路53内の排気ガス若しくは、前記冷却水通路54内の冷却水LLCとの間で熱交換されて、加熱されて暖められる。
【0115】
しかも、この実施例2では、前記交換器一体型アキュムレータ50が、前記圧縮機7の入口側7aの上流に設けられている。
【0116】
このため、前記冷暖房切換弁44の切換によって、暖房運転状態側に切り替えている状態で、この交換器一体型アキュムレータ50に回収された冷媒が、前記配管48を介して円滑に、前記ヒータユニット30の放熱用室内側熱交換器29へ向けて、循環供給される。
【0117】
このため、この点においても、この放熱用室内側熱交換器29を通過して車室内へ供給される空気eの温度を早期に上昇させて、更に即暖性を向上させることが出来る。
【0118】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【実施例3】
【0119】
図8は、この発明の実施の形態の実施例3の車両用補助暖房装置を示すものである。なお、前記実施の形態及び実施例1,2と同一乃至均等な部分については同一符号を付して説明する。
【0120】
まず、構成上の相違点から説明すると、この実施例3の車両用補助暖房装置には、前記冷房用の冷媒流路14の一部から導出されて、前記圧縮機7から送られた冷媒を、循環させるバイパス冷媒循環回路61が設けられている。
【0121】
このバイパス冷媒循環回路61には、車両駆動源としての熱供給を行うエンジン15の冷却水LLCを内部に挿通する外部熱交換器60が設けられている。
【0122】
また、前記圧縮機7の出口側7bには、バイパス切換弁49が設けられていて、このバイパス切換弁49の切換により、このバイパス冷媒循環回路61側に冷媒が供給されることにより、前記外部熱交換器60内を通過する高圧側冷媒の熱が、前記ヒータコア28へ循環される冷却水LLCに受け渡されて、熱交換が行われる。
【0123】
そして、このヒータコア28に供給される冷却水LLCによって、前記ヒータコア28を通過して車室方向へ向かう空気が暖められる。
【0124】
従って、前記バイパス冷媒循環回路61側に供給される冷媒の熱量が、前記冷却水LLCを介して間接的に、車室内空間へ供給される空気eとの間で、熱交換されて、車室内の暖房に用いられている。
【0125】
また、前記外部熱交換器60から、再びバイパス冷媒循環回路61を介して、冷媒用熱交換手段62を通過する冷媒は、一方向弁64を介して、アキュムレータ63に還流されて、前記圧縮機7の入口側7aへ戻される。
【0126】
この実施例3の車両用補助暖房装置の前記圧縮機7の入口側7aには、排熱交換器66が設けられている。
【0127】
この排熱交換器66には、冷媒通路38が設けられていて、前記圧縮機7の入口側7aに連通されていると共に、何れかの一方向弁64,65からの還流により、アキュムレータ63へ回収された低圧側の冷媒が、前記入口側7aに導出されるように接続されている。
【0128】
この排熱交換器66の冷媒通路38には、熱媒体通路としての排気ガス通路33が隣接配置されていて、前記排気ガス供給停止弁19から送られて来る排気ガスが、この排気ガス通路33内を通過する際に、前記低圧側の冷媒との間で、熱交換が行われるように構成されている。
【0129】
次に、この実施例3の車両用補助暖房装置の作用効果について説明する。
【0130】
このように構成された実施例3の車両用補助暖房装置では、前記実施の形態及び実施例1,2の作用効果に加えて、更に、エンジン15の始動初期の暖房運転状態では、前記圧縮機7の入口側7aに設けられた排熱交換器66によって、前記排気ガス通路33を通過する排気ガスが、冷媒通路38内の冷媒を加熱する。
【0131】
このため、前記入口側7aの冷媒が、暖められた状態で、前記バイパス切換弁49の切り替えで、前記バイパス冷媒循環回路61内へ循環される。
【0132】
前記外部熱交換器60内では、この高圧側冷媒の熱量が、前記ヒータコア28へ循環される冷却水LLCと熱交換されて、比較的早い時期に、暖められた冷却水LLCが、前記ヒータコア28に送られる。
【0133】
このため、即暖性を向上させることが出来ると共に、前記冷却水LLCをバイパス冷媒循環回路61内の高圧側冷媒を用いて加熱できるので、更に、前記エンジン15の暖気運転に必要とされる時間を短縮することが出来る。
【0134】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1,2と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【実施例4】
【0135】
図9は、この発明の実施の形態の実施例4の車両用補助暖房装置を示すものである。なお、前記実施の形態及び実施例1乃至3と同一乃至均等な部分については同一符号を付して説明する。
【0136】
まず、構成上の相違点から説明すると、この実施例4の車両用補助暖房装置では、実施例3の空調装置のアキュムレータ63及び排熱交換器66に代えて、アキュムレータ70aが内蔵されたアキュムレータ内蔵型の排熱交換器70が設けられている。
【0137】
また、熱供給源である車両駆動源としてのエンジン15と、ヒータコア28との間には、実施例3と略同様に外部熱交換器60が設けられている。
【0138】
次に、この実施例4の車両用補助暖房装置の作用効果について説明する。
【0139】
このように構成された実施例4の車両用補助暖房装置では、前記実施例3の車両用補助暖房装置の作用効果に加えて、更に、アキュムレータ70aが、前記排熱交換器70内に内蔵されているので、このアキュムレータ70aに回収された冷媒の温度を暖めて、入口側7aの低圧側冷媒の温度を早期に上昇させることが出来る。
【0140】
また、別途アキュムレータを設ける必要が無く、部品点数を減少させて省スペース化を図ることが出来る。
【0141】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1,2及び3と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【0142】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態の車両用補助暖房装置を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態の車両用補助暖房装置に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0143】
例えば、前記実施の形態では、車両駆動源の熱として、内燃機関であるエンジンの排気ガスの熱を用いたものを示して説明してきたが、特にこれに限らず、例えば、電動車両の駆動制御回路用のアンプや、モータ及びバッテリ等であっても、起動初期に発生する排熱を用いることができるものであれば、どのような車両駆動源を用いてもよい。
【0144】
また、この実施の形態の実施例1の排熱交換器は、多重管構造を呈しているが、特にこれに限らず、フィンチューブ形状等、一般のラジエータ等の熱交換器に用いられているような異なる熱媒体管で熱交換を行えるものであれば、通水管集合体等。どのような冷媒流路の形状、数量及び材質で形成されていてもよい。
【0145】
更に、前記実施例1の車両用補助暖房装置では、多重管排熱交換器40として、円筒形状を呈する内径寸法の異なる大径筒状部材34,中径筒状部材35,及び小径筒状部材36が、同軸状に配置された三重管が用いられているが、特にこれに限らず、例えば、二重管や四重以上の複数の層からなる多重管等、どのような形状、数量及び材質であっても、前記冷却水通路39又は排ガス通路33を、前記冷媒通路38を挟んで、径内外方向で隔離することにより、冷媒通路38の内部を流通する冷媒に、冷却水LLC又は排気ガスが混合されずに熱交換が行えるものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0146】
この実施の形態の車両用補助暖房装置は、補助暖房装置を有する車両に用いて好適で、特に、エンジンの回転駆動力を利用して、圧縮式冷凍サイクルを運転する車両に限らず、電動コンプレッサの回転駆動力を用いる圧縮式冷凍サイクルを採用する電動車若しくは、複数の動力源を有するハイブリッドカー等の空気調和装置に用いてもよいものである。
【符号の説明】
【0147】
6 車室側熱交換器
7 圧縮機
7a 入口側
7b 出口側
14 冷媒流路
15 エンジン(車両駆動源)
18 ヒータコア
19 排気ガス供給停止弁
20,70 排熱交換器
38 冷媒通路
39 冷却水通路
40 多重管排熱交換器
50 交換器一体型アキュムレータ(アキュムレータ)
60 外部熱交換器
70a アキュムレータ
LLC エンジン冷却水



【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口側の低圧冷媒を圧縮して、該圧縮された高圧側冷媒を冷媒流路内で循環させる圧縮機と、該冷媒流路内の冷媒と、車室内空間へ供給される空気との間で熱交換を行う熱交換器とを有して、前記高圧側冷媒の熱を車室内の暖房に用いる車両用補助暖房装置であって、
車両駆動源の起動初期の状態では、該車両駆動源が発生する排熱を用いて、前記圧縮機の入口側の低圧側冷媒を暖める熱交換を行うことを特徴とする車両用補助暖房装置。
【請求項2】
前記車両駆動源は、エンジンであると共に、前記排熱は、該エンジンの排気ガスの熱であることを特徴とする請求項1記載の車両用補助暖房装置。
【請求項3】
前記圧縮機の出口側の高圧側冷媒の温度が、所定温度に到達した場合、前記排気ガスの排熱の供給を停止する排気ガス供給停止弁を設けたことを特徴とする請求項2記載の車両用補助暖房装置。
【請求項4】
前記圧縮機の出口側の高圧側冷媒の温度が、所定温度に到達した場合、前記エンジンの冷却水を用いて、前記低圧側冷媒との間で熱交換を行うことを特徴とする請求項1乃至3のうち、何れか一項記載の車両用補助暖房装置。
【請求項5】
前記冷媒流路には、前記圧縮機から送られた冷媒を、循環させるバイパス冷媒循環回路が設けられていると共に、該バイパス冷媒熱循環回路は、該冷媒と、ヒータコアへ循環されて車室内の暖房に用いる冷却水との間で熱交換を行う外部熱交換器を有していることを特徴とする請求項1乃至4のうち、何れか一項記載の車両用補助暖房装置。
【請求項6】
前記車両駆動源からの熱は、前記圧縮機の入口側近傍に位置するアキュムレータによって、低圧側冷媒と熱交換されることを特徴とする請求項1乃至4のうち、何れか一項記載の車両用補助暖房装置。
【請求項7】
前記低圧側冷媒を循環させる冷媒通路と、車両駆動源からの排熱を運搬する熱媒体を通過させる熱媒体通路とを径内外方向で分離する多重管構造を呈してなる排熱交換器を有する請求項1乃至6のうち、何れか一項記載の車両用補助暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−1182(P2012−1182A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140628(P2010−140628)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】