説明

車両用通信装置

【課題】信号機から車両に情報を送信するとともに、その情報を受け取った車両は後続車両へと情報の伝達を行なう場合に、各車両において適正な情報を受け取ることが可能な車両用通信装置を提供すること。
【解決手段】光の発光源が、信号機10の信号灯15であるか、前方車両のテールランプであるかを認識して識別する。そして、信号機10の信号灯15からの光と前方車両のテールランプからの光をともに受光する状況においては、信号機10の信号灯15からの光に重畳された信号に基づいて、報知部28における報知及びテールランプ27の発光を行なわせるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号機の信号灯からの光に変調をかけることにより、当該信号灯の光に重畳された信号によって示される情報を車両に送信し、当該車両がその情報を後続車両に伝達する車両用通信システムに用いられる車両用通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、信号機の信号灯、車両のヘッドランプやテールランプが発生する光に、変調器によって信号を重畳し、その変調光を車両側の受光器によって受光させ、デコーダによって復調して表示パネルに表示する車両用通信装置が記載されている。
【特許文献1】特開2004−13401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した特許文献1では、信号機と車両との通信、及び車両間における通信がそれぞれ独立したものとして説明されており、信号機からの情報を受け取った車両が後続車両等に、その情報を伝達することに関する具体的な手法は記載されていない。
【0004】
ここで、信号機が、信号灯からの光に重畳させた信号により、例えば、その信号機の信号灯の切り換えまでの時間を含む信号灯の状態を、車両に対して送信する例について検討する。この場合、その情報が有効であるのは、これからその信号機に達しようとしている車両のみである。換言すれば、その信号機の手前の信号機などに差し掛かっている車両にとっては、そのような情報を受信すると、かえって混乱を招くことにもなりかねない。
【0005】
また、信号機から、その周辺の交通状況や事故状況に関する情報、交通規制に関する情報などを送信する場合であっても、その信号機からあまりに離れた場所に存在する車両にとっては、必ずしも有効な情報とはなりえない場合も考えられる。
【0006】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、信号機から車両に情報を送信するとともに、その情報を受け取った車両は後続車両へと情報の伝達を行なう場合に、各車両において適正な情報を受け取ることが可能な車両用通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の車両用通信装置は、
信号機の信号灯からの光に変調をかけることにより、当該信号灯の光に重畳された信号を車両に送信し、当該車両がその信号によって示される情報を後続車両に伝達する車両用通信システムに用いられるものであって、
信号機の信号灯による光及び前方車両のテールランプの光を受光すべく、自車両に設けられた受光手段と、
受光手段によって受光された光に重畳された信号を復調する復調手段と、
復調手段によって復調された信号によって示される情報を車両の乗員に報知する報知手段と、
復調された信号によって示される情報を後続車両に伝達すべく、その情報を示す信号によって変調された光を自車両のテールランプから発光させる発光手段とを備えた車両用通信装置において、
受光手段にて受光する光の発光源が、信号機の信号灯であるか、前方車両のテールランプであるかを識別する識別手段と、
受光手段が信号機の信号灯からの光と前方車両のテールランプの光をともに受光する場合、信号機の信号灯からの光に重畳された信号に基づいて、報知手段における報知及び発光手段による発光を行なわせる制御手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
例えば自車両が、ある信号機に差し掛かった状況において、その信号機を通過済みの前方車両のテールランプからの光と、信号機の信号灯からの光をともに受光する場合、前方車両は、後続車両である自車両に対して、自車両が接近しつつある信号機以外の信号機から得られた情報を送信している可能性が高い。そのため、前方車両からの情報を受け取って、自車両の後続車両に伝達してしまうと、かえって混乱を招くおそれが生じる。
【0009】
そのため、請求項1に記載の車両用通信装置では、光の発光源が、信号機の信号灯であるか、前方車両のテールランプであるかを識別するとともに、信号機の信号灯からの光と前方車両のテールランプからの光をともに受光する状況においては、信号機の信号灯からの光に重畳された信号に基づいて、報知手段における報知及び発光手段による発光を行なわせるようにした。これにより、直前の信号機よりも遠方に位置する信号機からの情報が、前方車両から後続車両へと順番に伝達されている状況であっても、信号機の信号灯からの光と前方車両のテールランプからの光をともに受光する車両が起点となって、その車両の直前に位置する信号機からの情報を取得するとともに、その情報を後続車両に伝達することができる。これにより、各車両において、適切な情報を受け取ることが可能になる。
【0010】
請求項2に記載したように、受光手段は、信号機の信号灯及び前方車両のテールランプを撮像範囲に含む撮像手段からなり、識別手段は、撮像手段によって撮像された画像データに基づいて、光の発光源が、信号機の信号灯であるか、前方車両のテールランプであるかを認識しつつ、各々の発光源からの光を受光するように構成することができる。
【0011】
撮像手段によって撮像された画像データが得られれば、その画像データに対して、例えば、テンプレートマッチング法などを適用することにより、信号機の信号灯及び/又は前方車両のテールランプが映し出されているかを認識することができる。そして、信号機の信号灯が映し出されている場合には、その信号灯の光を受光した画像信号(受光信号)を取り出して復調手段に出力することにより、光に重畳された信号を抽出することができる。
【0012】
請求項3に記載したように、信号機の信号灯からの光に重畳される信号には、その信号の送信元が信号機であることを示す送信元コードが含まれ、前方車両のテールランプからの光に重畳される信号には、その信号の送信元が車両であることを示す送信元コードが含まれるものであり、識別手段は、復調された信号に含まれる送信元コードに基づいて、光の発光源が、信号機の信号灯であるか、前方車両のテールランプであるかを識別するように構成しても良い。この場合、受光手段として、撮像手段以外にも、単に光を受光したときに、その受光量に応じた信号を出力するものを用いることができる。
【0013】
請求項4に記載したように、信号機の信号灯からの光に重畳される信号は、信号機の信号灯の状態に関する情報を示すものであっても良い。この種の情報を信号機から車両に送信する場合には、その情報が有益となるのは、その信号機を通過しようとしている車両のみである。本発明によれば、信号機から送信される情報の伝達範囲を、ほぼ、そのような車両のみに制限することが可能になる。
【0014】
ただし、信号機の間隔が非常に長い場合には、信号を送信した信号機から遠方に存在する車両にも情報が伝達される可能性が生じる。信号機から遠方に存在する車両にとって、その信号機からの情報は、有益なものではないこともある。
【0015】
このような問題に対し、請求項5や請求項6に記載の構成を採用すれば、信号機の間隔が非常に長い場合であっても、情報の伝達範囲を所望の範囲に制限することができる。すなわち、請求項5に記載の発明では、信号機の信号灯からの光に重畳される信号が、信号の発生元である信号機の地点情報を含み、自車両の位置を検出する位置検出手段と、信号に含まれる地点情報と自車両の位置とに基づいて、自車両が信号発生元の信号機から所定距離以上離れていると判断したとき、発光手段による前記テールランプの発光を禁止する禁止手段とを備える。また、請求項6に記載の発明では、信号機の信号灯からの光に重畳される信号は、その信号が前記送信機から送信されたときの時刻情報を含み、信号に含まれる時刻情報と現在の時刻とに基づいて、信号が送信機から送信されてから所定時間以上経過していると判断したとき、発光手段によるテールランプの発光を禁止する禁止手段とを備える。いずれの場合であっても、情報の伝達範囲を、その情報が有効であるとみなされる範囲に制限することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1実施形態)
次に、本発明の好ましい実施形態について、図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による車両用通信装置の構成、及びその車両用通信装置と通信を行なうための信号機の構成を示すブロック図である。
【0017】
まず、信号機10の構成について説明する。図1に示すように、信号機10は、信号灯制御回路11、駆動信号発生回路12、変調回路13、情報信号発生回路14、及び信号灯15などから構成される。
【0018】
信号灯制御回路11は、予め定められた時間間隔で、信号灯15の点灯を切り替えるべく、駆動信号発生回路12に対して発光させる信号灯15を指示する指示信号を出力する。駆動信号発生回路12は、信号灯制御回路11によって指示された信号灯15を発光させるため、その信号灯15を発光駆動する駆動信号を発生する。この駆動信号は変調回路13に入力される。変調回路13には、さらに情報信号発生回路14によって発生される情報信号も入力される。
【0019】
情報信号発生回路14は、例えば、信号機10周辺の交通量を検出する検出器や、交通情報を管理する管理センターからの送信信号を受信する受信機などからの信号に基づいて、信号機10付近の交通量、車線規制などに関する情報を取得する。また、情報信号発生回路14には、信号機10における右左折レーンの有無、右折禁止など、信号機10における道路情報や通行規制情報が予め記憶されている。さらに、情報信号発生回路14には、信号灯制御回路11から、現在点灯している信号灯15の情報や、その信号灯15が切り替えられるまでの残り時間に関する情報も入力される。
【0020】
情報信号発生回路14は、上述した情報に基づいて、それらの情報を示す情報信号を発生する。この情報信号は、定期的、もしくは必要時に変調回路13に出力される。
【0021】
変調回路13は、情報信号発生回路14から情報信号が入力された場合、駆動信号発生回路12から入力された駆動信号を、情報信号に基づいて変調する。なお、変調回路13には、例えば、ASK(Amplitude shift keying)、FSK(Frequency shift keying)、PSK(Phase shift keying)などの公知のデジタル変調方式を採用できる。
【0022】
信号灯15は、例えば赤色、黄色、青色の3つの信号灯を有し、変調回路13から出力される変調がかけられた変調駆動信号によって、いずれか1つの信号灯15が発光される。これにより、信号灯15からは、信号機10の周辺の交通状況、道路状態、信号灯15の状態などを示す情報信号が重畳された光が発光される。なお、この信号灯15としては、長寿命で、応答性に優れる発光ダイオード(LED)を用いることが好ましい。
【0023】
次に、車両20に搭載される車両用通信装置の構成について説明する。図1に示すように、車両用通信装置は、受光手段としてのカメラ21と、画像認識処理部23、復調部24、制御部25、変調部26などを有するECU22と、発光駆動されるテールランプ27と、受信した情報を車両の乗員に報知する報知部28とから構成される。
【0024】
カメラ21は、信号機10の信号灯15と、前方車両のテールランプとを撮像範囲に含むように、例えばルームミラーの裏側に設けられる。このカメラ21は、所定間隔で繰り返し車両の前方を撮像し、撮像した画像データをECU22に出力する。
【0025】
ECU22は、カメラ21によって得られた画像データに基づいて、受光した光から重畳された信号を復調するとともに、その信号によって示される情報の報知処理、さらには後続車両への情報の伝達処理などを実施する。
【0026】
図1においては、ECU22が実施する各機能を機能ブロックとして記載している。各々の機能ブロックについて、以下に説明する。
【0027】
まず、画像認識処理部23は、カメラ21によって得られた画像データに基づいて、光の発光源が、信号機の信号灯であるか、前方車両のテールランプであるかを認識する。例えば、画像データに対して、テンプレートマッチング法などを適用することにより、その画像において、信号機10の信号灯15及び/又は前方車両のテールランプが映し出されているかを認識することができる。そして、信号機の信号灯や前方車両のテールランプが映し出されている場合には、その部分の画像信号を受光信号として抽出して、復調部24に出力する。
【0028】
復調部24は、画像認識処理部23から出力された受光信号を時系列に並べて復調処理を施すことにより、光に重畳された信号を復調する。制御部25は、予め定められた規則等に従って、抽出した信号を対応する情報に変換し、報知部28に出力する。報知部28は、音声出力装置や表示装置などを備え、制御部25から入力された情報を、音声や画面表示によって車両の乗員に報知する。また、制御部25は、復調部24から入力された信号によって示される情報を後続車両に伝達するため、その信号もしくは変換した情報に基づく信号を変調部26に出力する。変調部26は、その信号によって変調された変調駆動信号を発生し、テールランプ27を発光駆動する。従って、後続車両がそのテールランプからの光を受光して、上述したと同様の処理を実施することにより、前方車両から後続車両へと順に信号機から送信された情報を伝達することができる。
【0029】
ただし、例えば、車両20がある信号機10に差し掛かった状況において、その信号機10を通過済みの前方車両のテールランプからの光と、信号機10の信号灯15からの光をともに受光する場合、前方車両は、後続車両である車両20に対して、車両20が接近しつつある信号機10以外の信号機から得られた情報を送信している可能性がある。そのため、前方車両からの情報を受け取って、車両20の後続車両に伝達してしまうと、かえって混乱を招くおそれが生じる。
【0030】
そこで、本実施形態においては、ECU22において、光の発光源が、信号機10の信号灯15であるか、前方車両のテールランプであるかを認識して識別する。そして、信号機10の信号灯15からの光と前方車両のテールランプからの光をともに受光する状況においては、信号機10の信号灯15からの光に重畳された信号に基づいて、報知部28における報知及びテールランプ27の発光を行なわせるようにする。これにより、直前の信号機10よりも遠方に位置する信号機からの情報が、前方車両から後続車両へと順番に伝達されている状況であっても、その直前の信号機10の信号灯15からの光と前方車両のテールランプからの光をともに受光する車両20が起点となって、その車両20の直前に位置する信号機10からの情報を取得し、かつ、その情報を後続車両に伝達することができる。これにより、各車両において、適切な情報を受け取ることが可能になる。
【0031】
このように、信号機10の信号灯15からの光と前方車両のテールランプからの光をともに受光する状況において、信号機10の信号灯15からの光に重畳された信号を優先して処理するための車両用通信装置における通信制御処理について、図2のフローチャートに基づいて説明する。
【0032】
まず、ステップS100では、カメラ21によって撮像された画像データを取り込む。続くステップS110では、取り込まれた画像データに基づいて、画像内に信号機10の信号灯15及び前方車両のテールランプが映し出されているか確認するために、それらの認識処理を実行する。
【0033】
ステップS120では、ステップS110における認識処理結果に基づいて、まず信号機10の信号灯15が認識されたか否かを判断する。このステップS120の判定処理において、画像内に信号灯15は認識されていないと判定されると、ステップS150に進み、前方車両のテールランプが認識されたか否かを判断する。
【0034】
このように、図2のフローチャートでは、まず、信号灯15が認識されたか否かを判断し、信号灯15が認識されていないと判定されたときのみ、前方車両のテールランプが認識されたか否かを判断する。従って、信号機10の信号灯15と前方車両のテールランプの両方が認識された場合、必ず、信号機10の信号灯15の認識結果が優先され、その信号灯15からの光に重畳された信号に基づいて処理が実行されることになる。
【0035】
ステップS120において信号機10の信号灯15が認識されたと判定されると、ステップS130に進み、信号機10の信号灯15を映し出している部分の画像信号を受光信号として抽出して保存する。続くステップS140では、ステップS130の処理により保存された受光信号を時系列に並べて復調処理を施すことにより、光に重畳された信号を抽出する。
【0036】
一方、ステップS120において信号灯が認識されていないと判定され、かつステップS150において前方車両のテールランプが認識されたと判定されると、ステップS160及びステップS170の処理に進む。このステップS160及びステップS170の処理では、前方車両のテールランプを映し出している部分の画像信号を受光信号とする以外は、上述したステップS130及びステップS140の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0037】
ステップS180では、抽出した信号から、その信号によって示される情報を求め、報知部28に出力する。さらに、ステップS190では、抽出した信号、もしくは、その信号によって示される情報に基づいて、テールランプ27を発光駆動する駆動信号に変調をかけた変調駆動信号を生成し、その変調駆動信号によってテールランプ27の発光処理を実施する。
【0038】
以上、説明したように、本実施形態の車両通信装置によれば、信号機10の信号灯15からの光に重畳された信号を優先的に処理するようにしているので、その車両の直前に位置する信号機10からの情報を確実に取得して、その情報を後続車両に伝達することができる。これにより、各車両において、適切な情報を受け取ることが可能になる。
【0039】
(変形例)
上述した第1実施形態は、本発明の好ましい実施形態ではあるが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々、変形して実施することが可能である。
【0040】
例えば、上述した第1実施形態では、信号機10の信号灯15からの光や前方車両のテールランプからの光を受光する受光手段としてカメラ21を用いたが、それに限らず、例えば、受光量に応じた信号を出力するフォトダイオードなどを用いることもできる。受光手段としてフォトダイオード31を用いた場合の、車両用通信装置の構成を図3に示す。
【0041】
受光手段としてフォトダイオード31を用いると、カメラ21のように、取得した画像データに基づいて、信号機10の信号灯15と前方車両のテールランプとを識別することができない。そのため、図3に示すように、フォトダイオード31が出力する受光信号は、第1実施形態のように画像認識処理部を介することなく直接、ECU32の復調部34に与えられる。
【0042】
但し、信号機10の信号灯15からの光と前方車両のテールランプからの光をともに受光するときに、信号機10の信号灯15からの光を優先的に処理するには、光の発光源(信号の送信元)の種類(信号灯かテールランプか)を識別することが必要である。そこで、信号機なり前方車両なりが、光に重畳して信号を送信する場合には、その信号に、光の発光源の種類を示す送信元コードを含めるようにする。
【0043】
すなわち、信号機10における情報信号発生回路14は、信号の送信元が信号機10であることを示す送信元コードを含む情報信号を発生させる。また、車両30の制御部35は、送信元が車両であることを示す送信元コードを含む信号を変調部36に与える。従って、フォトダイオード31において、信号が重畳された光を受光した場合には、その信号に含まれる送信元コードに基づいて、光の発生源の種類を識別することが可能になる。
【0044】
図4は、受光手段としてフォトダイオード31を用いた場合の、車両用通信装置において実施される通信制御処理を示すフローチャートである。まず、ステップS210では、フォトダイオード31が受光信号を出力したか否かを判定する。この判定処理において肯定的な判定がなされると、ステップS220においてその受光信号に対して復調処理が実施される。
【0045】
ステップS230では、復調された信号に含まれる送信元コードに基づいて、送信元が信号機10の信号灯15であるか前方車両のテールランプであるか判定される。なお、送信元コードが不明である場合には、ステップS210の処理に戻る。
【0046】
ステップS230において、送信元は信号灯であると判定されると、ステップS240に進み、タイマによるカウントをスタートさせる。その後、ステップS270及びステップS280において、信号機10の信号灯15からの光に重畳された信号に基づいて、放置処理や後続車両への情報伝達のためのテールランプ発光処理が実行される。
【0047】
上述したタイマのカウント値は、ステップS230にて送信元がテールランプと判定された際に実行されるステップS250の処理において、所定時間と比較される。この所定時間は、車両が信号機10を通過するのに要すると推定される時間に基づいて設定される。そして、タイマのカウント値が所定時間未満であると判定されると、ステップS210の処理に戻る。
【0048】
つまり、フォトダイオード31が、一度でも信号機10の信号灯15からの光を受光した場合には、その後、所定時間の間は、前方車両のテールランプからの光を受光しても、その光に重畳された信号に基づいて何ら処理を実行せずに待機する。これにより、車両が信号機10に接近して、信号機10の信号灯15からの光を受光できる状況となったときには、信号機10の信号灯15からの光に重畳された信号が優先的に処理されるようにすることができる。
【0049】
なお、タイマのカウント値が所定時間以上となると、ステップS250においてタイマのカウントが停止される。従って、その後、送信元が信号機10の信号灯15であると判定されない限り、ステップS250の判定は継続して「Yes」となり、前方車両のテールランプからの光に重畳された信号に基づいて、ステップS270及びステップS280の処理が実施される。
【0050】
また、上述した実施形態において、さらに、信号機10から情報が伝達される範囲を適正範囲に制限するための構成を追加しても良い。
【0051】
例えば、上述した実施形態による車両通信装置を用いた場合、信号機10の間隔が非常に長ければ、信号が重畳された光を発した信号機10から遠方に存在する車両にも、その信号による情報が伝達される可能性が生じる。信号機10から遠方に存在する車両にとって、その信号機10からの情報は、有益なものではないこともある。
【0052】
このような問題に対し、信号機10の信号灯15からの光に重畳される信号が、信号の発生元である信号機10の地点情報や、その信号が信号機10から送信されたときの時刻情報を含むように構成するとともに、各車両が現在位置や現在時刻を取得するための構成(例えばナビゲーション装置)を備えることにより、情報の伝達範囲を適正範囲に制限することが可能になる。
【0053】
この場合の車両用通信装置における制御処理の一例を図5のフローチャートに示す。図5のフローチャートは、図2及び図4のフローチャートにおけるテールランプ発光処理の詳細を示すものである。
【0054】
この発光処理において、まずステップS310では、ナビゲーション装置などから自車両の現在位置情報を取得したり、内蔵時計やGPS信号に基づいて現在時刻を取得したりする。続くステップS320において、信号を送信した信号機10と自車両との距離が所定距離以上離れているか、又は信号の送信時刻と現在時刻との差が所定時間以上であるか否かを判定する。この判定処理において「Yes」と判定された場合、受信した信号によって示される情報は、当該車両にとって、及びその後続車両にとって有益とはならない可能性が高い。このため、ステップS330のテールランプの発光処理をスキップし、その車両にて、後続車両への情報の伝達を終了させる。なお、この場合、テールランプの発光処理をスキップするのと同時に、情報の報知処理をスキップすることが好ましい。
【0055】
このような構成を採用することにより、信号機10から発せられた情報の伝達範囲を、その情報が有効であるとみなされる範囲に制限することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施形態による車両用通信装置の構成、及びその車両用通信装置と通信を行なうための信号機の構成を示すブロック図である。
【図2】車両用通信装置における通信制御処理を示すフローチャートである。
【図3】実施形態の変形例による車両用通信装置の構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示す車両用通信装置における通信制御処理を示すフローチャートである。
【図5】実施形態の他の変形例による車両用通信装置の通信制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
10…信号機、11…信号灯制御回路、12…駆動信号発生回路、13…変調回路、14…情報信号発生回路、15…信号灯、20…車両、21…カメラ、22…ECU、23…画像認識処理部、24…復調部、25…制御部、26…変調部、27…テールランプ、28…報知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号機の信号灯からの光に変調をかけることにより、当該信号灯の光に重畳された信号を車両に送信し、当該車両がその信号によって示される情報を後続車両に伝達する車両用通信システムに用いられる車両用通信装置であって、
前記信号機の信号灯による光及び前方車両のテールランプの光を受光すべく、自車両に設けられた受光手段と、
前記受光手段によって受光された光に重畳された信号を復調する復調手段と、
前記復調手段によって復調された信号によって示される情報を車両の乗員に報知する報知手段と、
前記復調された信号によって示される情報を後続車両に伝達すべく、その情報を示す信号によって変調された光を自車両のテールランプから発光させる発光手段とを備えた車両用通信装置において、
前記受光手段にて受光する光の発光源が、前記信号機の信号灯であるか、前記前方車両のテールランプであるかを識別する識別手段と、
前記受光手段が前記信号機の信号灯からの光と前記前方車両のテールランプの光をともに受光する場合には、前記信号機の信号灯からの光に重畳された信号に基づいて、前記報知手段における報知及び前記発光手段による発光を行なわせる制御手段とを備えることを特徴とする車両用通信装置。
【請求項2】
前記受光手段は、前記信号機の信号灯及び前記前方車両のテールランプを撮像範囲に含む撮像手段からなり、
前記識別手段は、前記撮像手段によって撮像された画像データに基づいて、前記光の発光源が、前記信号機の信号灯であるか、前記前方車両のテールランプであるかを認識しつつ、各々の発光源からの光を受光することを特徴とする請求項1に記載の車両用通信装置。
【請求項3】
前記信号機の信号灯からの光に重畳される信号には、その信号の送信元が信号機であることを示す送信元コードが含まれ、前記前方車両のテールランプからの光に重畳される信号には、その信号の送信元が車両であることを示す送信元コードが含まれるものであり、
前記識別手段は、復調された信号に含まれる送信元コードに基づいて、前記光の発光源が、前記信号機の信号灯であるか、前記前方車両のテールランプであるかを識別することを特徴とする請求項1に記載の車両用通信装置。
【請求項4】
前記信号機の信号灯からの光に重畳される信号は、前記信号機の信号灯の状態に関する情報を示すものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の車両用通信装置。
【請求項5】
前記信号機の信号灯からの光に重畳される信号は、信号の発生元である信号機の地点情報を含み、
前記自車両の位置を検出する位置検出手段と、
前記信号に含まれる地点情報と自車両の位置とに基づいて、自車両が、信号発生元の信号機から所定距離以上離れていると判断したとき、前記発光手段による前記テールランプの発光を禁止する禁止手段とを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の車両用通信装置。
【請求項6】
前記信号機の信号灯からの光に重畳される信号は、その信号が前記送信機から送信されたときの時刻情報を含み、
前記信号に含まれる時刻情報と現在の時刻とに基づいて、前記信号が前記送信機から送信されてから所定時間以上経過していると判断したとき、前記発光手段による前記テールランプの発光を禁止する禁止手段とを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の車両用通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−192000(P2008−192000A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27185(P2007−27185)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】