説明

車両用駆動装置

【課題】係合装置への油路及び係合装置用の油圧制御弁の配置及び構成を行う際に、設計及び製造コストの増加を抑制できる車両用駆動装置が求められる。
【解決手段】回転電機に連結される入力部材の回転を変速して車輪に連結される出力部材に伝達する変速装置と、入力部材を内燃機関に選択的に連結する係合装置と、を備えた車両用駆動装置であって、変速装置の油圧制御弁が設けられた第一油圧制御装置と、第一油圧制御装置とは分離して第一油圧制御装置の上端部よりも下方に配置され、係合装置の油圧制御弁が設けられた第二油圧制御装置と、油貯留部と、油圧ポンプと、を備え、第一油圧制御装置は、油貯留部に収容され、第二油圧制御装置は、油密室に収容され、係合装置から油密室への第一排出油路と、油密室から油貯留部への第二排出油路と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、前記入力部材の回転を変速して前記出力部材に伝達する変速装置と、前記入力部材を内燃機関に選択的に駆動連結する係合装置と、を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関及び回転電機を駆動力源として備えるハイブリッド車両用の車両用駆動装置として、例えば、下記の特許文献1に記載された装置が既に知られている。特許文献1に記載されたハイブリッド車両の車両用駆動装置には、内燃機関を動力伝達機構に選択的に駆動連結する係合装置が備えられている。そして、回転電機のみの駆動力で車両を駆動できるように、係合装置に供給する油圧を制御することにより係合装置を解放して、内燃機関を動力伝達機構から分離できるように構成されている。すなわち、特許文献1の技術では、ハイブリッド車両化に伴い、内燃機関と動力伝達系とを油圧制御により選択的に駆動連結することができる係合装置が設けられている。そして、係合装置に供給する油圧を制御するための電磁式油圧制御弁及び油圧回路が備えられている。
【0003】
このため、車両用駆動装置内に、係合装置への油圧の供給油路及び係合装置に供給した油の排出油路、並びに係合装置用の油圧制御弁を設ける必要があり、これらの配置及び構成が、設計及び製造コストの面から問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−35241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、内燃機関を動力伝達機構に選択的に駆動連結するための係合装置への油路及び係合装置用の油圧制御弁の配置及び構成を行う際に、設計及び製造コストの増加を抑制できる車両用駆動装置が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る、回転電機に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、前記入力部材の回転を変速して前記出力部材に伝達する変速装置と、前記入力部材を内燃機関に選択的に駆動連結する係合装置と、を備えた車両用駆動装置の特徴構成は、前記変速装置に供給する油圧を制御する油圧制御弁が設けられた第一油圧制御装置と、前記第一油圧制御装置とは分離して前記第一油圧制御装置の上端部よりも下方に配置され、前記係合装置に供給する油圧を制御する油圧制御弁が設けられた第二油圧制御装置と、前記第一油圧制御装置及び前記第二油圧制御装置に供給する油を貯留する油貯留部と、前記油貯留部に貯留された油を吸引して油圧を生じさせ、前記第一油圧制御装置及び前記第二油圧制御装置に供給する油圧ポンプと、を備え、前記第一油圧制御装置は、前記油貯留部に収容され、前記第二油圧制御装置は、前記油貯留部の外部に油密状に形成された油密室に収容され、前記係合装置から排出された油を前記油密室へ送るための油密状の第一排出油路と、前記油密室から排出された油を前記油貯留部へ送るための油密状の第二排出油路と、を備える点にある。
【0007】
なお、本願において「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
また、本願において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合要素、例えば摩擦クラッチや噛み合い式クラッチ等が含まれていてもよい。
【0008】
上記のように、係合装置が備えられることにより、係合装置用の油圧制御系が必要になる。上記の特徴構成によれば、係合装置用の油圧制御弁を、変速装置用の油圧制御弁が設けられた第一油圧制御装置と分離して、第二油圧制御装置に設けているので、係合装置用の油圧制御装置の取り付けスペースを確保することが容易になる。そして、係合装置用の油圧制御弁と変速装置用の油圧制御弁とを第一油圧制御装置に統合化して設ける場合に比べて、従来からある内燃機関のみを駆動力源とする車両の油圧制御装置の設計変更を要しないため、油圧制御装置の設計及び製造コストの増加を抑制できる。また、上記の特徴構成によれば、第一油圧制御装置及び第二油圧制御装置に共通の油貯留部及び油圧ポンプを備えているので、それぞれに専用の油貯留部及び油圧ポンプを設ける場合に比べて、製造コストの増加を抑制できる。
【0009】
このように、第一油圧制御装置及び第二油圧制御装置に共通の油貯留部及び油圧ポンプが備えられることにより、第二油圧制御装置から係合装置に供給された油、及び第二油圧制御装置からドレインされた油を、共通の油貯留部へ排出して、油圧ポンプにより油を再循環させる必要が生じる。上記の特徴構成によれば、係合装置から排出された油を油密室へ送るための油密状の第一排出油路と、油密室から排出された油を油貯留部へ送るための油密状の第二排出油路と、を備えているため、係合装置から油貯留部までの排出油路は、油密状にされている。よって、第二油圧制御装置から係合装置に供給された油は、その供給圧に応じた圧で第一排出油路を通って油密室へ排出され、油密室から第二排出油路を通って、油貯留部まで送出される。また、第二油圧制御装置は、油密室に収容されているため、第二油圧制御装置からドレインされた油も、油密室に排出され、上記の供給圧及びドレイン圧により、油密状の第二排出油路を通って油貯留部まで送出される。従って、係合装置から排出された油の排出油路と、第二油圧制御装置からドレインされた油の排出油路とを、油密室及び第二排出油路により共通化することができ、製造コストを低減できる。そして、係合装置から排出された油、及び第二油圧制御装置からドレインされた油を、油密状の油路により、供給圧及びドレイン圧を利用して、油貯留部まで送ることができる。よって、油を送るための専用の油圧ポンプを備える必要性がなく、製造コストの増加を抑制できる。
【0010】
また、上記の特徴構成のように、第二油圧制御装置が、第一油圧制御装置の上端部より下方に配置されていると、第二油圧制御装置を収容している油密室の油を、第一油圧制御装置を収容している油貯留部へ送るためには、所定の高低差分だけ上方に油を送る必要が生じ、当該高低差分だけ上方に送る油圧が必要になる。上記の特徴構成によれば、油密状の排出油路により、供給圧及びドレイン圧を利用して、高低差分以上の油圧で油密室から油貯留部に油を送ることができる。よって、前記所定の高低差がある場合にも、油を送るための専用の油圧ポンプを備える必要性がなく、製造コストの増加を抑制できる。
【0011】
ここで、前記変速装置を収容する第一ケースと、前記回転電機及び前記係合装置を収容する第二ケースと、を更に備え、前記第一油圧制御装置は、前記第一ケースの下部に取り付けられ、前記第二油圧制御装置は、前記第二ケースの下部に取り付けられ、前記第一排出油路は前記第二ケース内に設けられ、前記第二排出油路は前記第二ケースから前記第一ケースに亘って設けられている構成とすると好適である。
【0012】
この構成のように、油密室が、油貯留部の油面及び第二排出油路の油貯留部側の開口部のいずれか上方に位置するものよりも下方に配置されると、油密室は、その上部まで油で満たされることとなる。そして、油密室に満たされた油の上部が、油面及び開口部のいずれか上方に位置するものよりも、下方に位置することとなり、油密室に満たされた油の上部と、油貯留部の油面及び第二排出油路の油貯留部側の開口部のいずれか上方に位置するものと、の間に高低差が生じる。よって、油密室の油を、この高低差分だけ上方に送る必要があり、この高低差分に対応する油圧より大きい油圧が必要になる。上記のような構成によれば、油密状の排出油路により、前記供給圧及びドレイン圧を利用することによって、前記高低差に対応する油圧より大きい油圧を生じさせることができ、専用の油圧ポンプを備えることなく、油密室から油貯留部に油を送ることができる。
【0013】
ここで、前記変速装置を収容する第一ケースと、前記回転電機及び前記係合装置を収容する第二ケースと、を更に備え、前記第一油圧制御装置は、前記第一ケースの下部に取り付けられ、前記第二油圧制御装置は、前記第二ケースの下部に取り付けられ、前記第一排出油路は前記第二ケース内に設けられ、前記第二排出油路は前記第二ケースから前記第一ケースに亘って設けられていると好適である。
【0014】
この構成のように、変速装置用の第一油圧制御装置が、当該変速装置を収容する第一ケースの下部に取り付けられ、係合装置用の第二油圧制御装置が、当該係合装置を収容する第二ケースの下部に取り付けられることにより、変速装置と第一油圧制御装置との間、及び係合装置と第二油圧制御装置との間を近接して配置することができ、これらの間に形成される油路を短くできるとともに、単純化することができ、製造コストを低減できる。
【0015】
また、上記の構成によれば、第一排出油路は、第二油圧制御装置が取り付けられている第二ケース内に設けられているので、第二油圧制御装置の取り付け部付近から第二ケース内に、当該ケースを有効利用して、第一排出油路を設けることができる。よって、油路の形成のための部品点数を減らすことができる。また、第二ケース内に油路が形成されているので、油密性を容易に確保することができる。
また、上記の構成によれば、第二排出油路は、第二油圧制御装置が取り付けられている第二ケースから、第一油圧制御装置が取り付けられている第一ケースに亘って、第二ケース及び第一ケース内に設けられているので、第二油圧制御装置の取り付け部付近から第一油圧制御装置の取り付け部付近まで、第二ケース及び第一ケースに亘って、当該ケースを有効利用して、第二排出油路を設けることができる。よって、油路の形成のための部品点数を減らすことができる。また、第二ケース及び第一ケース内に油路が形成されているので、第二ケースと第一ケースとの接合部の密閉性を確保しさえすれば、油密性を容易に確保することができる。
【0016】
また、前記変速装置を収容する第一ケースと、前記回転電機及び前記係合装置を収容する第二ケースと、を更に備え、前記油貯留部は、前記第一ケースと前記第一ケースの下部に取り付けられた第一オイルパンとに囲まれて構成され、前記油密室は、前記第二ケースと前記第二ケースの下部に取り付けられた第二オイルパンとに囲まれて構成されていると好適である。
【0017】
この構成によれば、油貯留部を、第一ケースを有効利用して形成することができる。また、油貯留部を第一ケースに隣接させることができるので、油貯留部と、第一ケースに設けられる第二排出油路と、の間の連通を容易に実現することができる。また上記の構成によれば、油密室を、第二ケースを有効利用して形成することができる。また、油密室を第二ケースに隣接させることができるので、油密室と、第二ケースに設けられる第一排出油路及び第二排出油路と、の間の連通を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用駆動装置の駆動伝達系の概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両用駆動装置の油圧制御系の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両用駆動装置の断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車両用駆動装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第一の実施形態〕
本発明に係る車両用駆動装置1(以下、駆動装置1と称す)の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る駆動装置1の概略構成を示す模式図である。この図に示すように、本実施形態に係る駆動装置1は、概略的には、内燃機関IE及び回転電機MGを駆動力源として備え、これらの駆動力源の駆動力をトルクコンバータTC及び変速装置TMを介して車輪へ伝達する構成となっている。駆動装置1は、回転電機MGに駆動連結される入力軸Iと、車輪に駆動連結される出力軸Oと、入力軸Iの回転を変速して出力軸Oに伝達する変速装置TMと、入力軸Iを内燃機関IEに選択的に駆動連結する係合装置としての内燃機関分離クラッチC1と、を備えている。本実施形態に係わる駆動装置1は、回転電機MGと変速装置TMとの間の動力伝達経路上に、トルクコンバータTCを備えている。なお、入力軸Iが、本発明における「入力部材」であり、出力軸Oが、本発明における「出力部材」である。
【0020】
このような構成において、図1及び図2に示すように、駆動装置1は、変速装置TMに供給する油圧を制御する油圧制御弁としての変速装置油圧制御弁90が設けられた第一油圧制御装置VB1と、第一油圧制御装置VB1とは分離して第一油圧制御装置VB1の上端部83よりも下方に配置され、内燃機関分離クラッチC1に供給する油圧を制御する油圧制御弁としての係合装置油圧制御弁93が設けられた第二油圧制御装置VB2と、第一油圧制御装置VB1及び第二油圧制御装置VB2に供給する油を貯留する油貯留部OT1と、油貯留部OT1に貯留された油を吸引して油圧を生じさせ、第一油圧制御装置VB1及び第二油圧制御装置VB2に供給する油圧ポンプOPと、を備えている。
【0021】
そして、第一油圧制御装置VB1は、油貯留部OT1に収容され、第二油圧制御装置VB2は、油貯留部OT1の外部に油密状に形成された油密室OT2に収容され、駆動装置1は、内燃機関分離クラッチC1から排出された油を油密室OT2へ送るための油密状の第一排出油路PE1と、油密室OT2から排出された油を油貯留部OT1へ送るための油密状の第二排出油路PE2と、を備える点に特徴を有している。なお、本発明において上下は、駆動装置1が車両に搭載された状態における鉛直方向の上下を意味し、図1〜図4における上下は、当該鉛直方向の上下に対応している。以下、本実施形態に係る駆動装置1について、詳細に説明する。
【0022】
1.駆動装置の駆動伝達系の構成
まず、本実施形態に係る駆動装置1の駆動伝達系の構成について説明する。図1に示すように、駆動装置1は、車両駆動用の駆動力源として内燃機関IE及び回転電機MGを備え、これらの内燃機関IEと回転電機MGとが直列に駆動連結されるパラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置となっている。本実施形態では、駆動装置1は、トルクコンバータTCと変速装置TMとを備えており、当該トルクコンバータTC及び変速装置TMにより、駆動力源としての内燃機関IE及び回転電機MGの回転速度を変速すると共にトルクを変換して出力軸Oに伝達する。本実施形態に係わる駆動装置1では、内燃機関IEと回転電機MGとトルクコンバータTCと変速装置TMとが同軸上に配置されていると共に、内燃機関IE側から軸方向に沿ってこの順に配列されている。また、内燃機関連結軸EC、入力軸I、及び出力軸Oも、これと同軸上に配置されている。ここでは、これらの同軸上に配置された駆動装置1の各部材の軸心を装置軸心X1とする。また、実施形態の説明において、単に軸方向、径方向、周方向という場合には、この装置軸心X1を基準とした方向を指すものとする。
【0023】
内燃機関IEは、燃料の燃焼により動力を出力する原動機であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの公知の各種内燃機関を用いることができる。本例では、内燃機関IEのクランクシャフト等の出力回転軸が、内燃機関連結軸EC及び内燃機関分離クラッチC1を介して入力軸Iに駆動連結される。これにより、内燃機関分離クラッチC1は、入力軸Iを内燃機関IEに選択的に駆動連結する。この内燃機関分離クラッチC1は、第二油圧制御装置VB2から供給される油圧により、係合又は解放する摩擦係合要素である。このような摩擦係合要素としては、例えば湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキ等が好適に用いられる。なお、内燃機関IEの出力回転軸が、内燃機関連結軸ECと一体的に駆動連結され、或いはダンパ等の他の部材を介して駆動連結された構成としても好適である。
【0024】
回転電機MGは、第二ケースCS2に固定されたステータStと、このステータStの径方向内側に回転自在に支持されたロータRoと、を有している。この回転電機MGのロータRoは、入力軸Iと一体回転するように駆動連結されている。すなわち、本実施形態においては、入力軸Iに内燃機関IE及び回転電機MGの双方が駆動連結される構成となっている。回転電機MGは、蓄電装置としてのバッテリ(不図示)に電気的に接続されている。そして、回転電機MGは、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能と、を果たすことが可能とされている。すなわち、回転電機MGは、バッテリからの電力供給を受けて力行し、或いは内燃機関IEや車輪から伝達される回転駆動力により発電した電力をバッテリに蓄電する。なお、バッテリは蓄電装置の一例であり、キャパシタなどの他の蓄電装置を用い、或いは複数種類の蓄電装置を併用することも可能である。
【0025】
本実施形態では、回転電機MGと変速装置TMとの間の動力伝達経路上に、トルクコンバータTCが備えられている。トルクコンバータTCは、駆動力源としての内燃機関IE及び回転電機MGの回転駆動力を、変速装置TM(入力軸I)に伝達する装置である。このトルクコンバータTCは、回転電機MGに駆動連結された入力側回転部材としてのポンプインペラ11と、変速装置TM(入力軸I)に駆動連結された出力側回転部材としてのタービンランナ12と、これらの間に設けられ、ワンウェイクラッチを備えたステータ14と、を備えている。そして、トルクコンバータTCは、内部に充填された油を介して、駆動側のポンプインペラ11と従動側のタービンランナ12との間で駆動力の伝達を行う。
【0026】
トルクコンバータTCは、ロックアップ用の摩擦係合要素として、ロックアップクラッチC2を備えている。このロックアップクラッチC2は、ポンプインペラ11とタービンランナ12との間の回転速度差(滑り)を無くして伝達効率を高めるために、ポンプインペラ11とタービンランナ12とを一体回転させるように連結するクラッチである。従って、トルクコンバータTCは、ロックアップクラッチC2が係合されている場合は、油を介さずに、駆動力源の駆動力を直接、変速装置TM(入力軸I)に伝達する。本実施形態では、トルクコンバータTCには、第一油圧制御装置VB1により調圧された油が供給され、ロックアップクラッチC2は、第一油圧制御装置VB1から供給される油圧により、係合又は解放する。
【0027】
また、駆動装置1は、トルクコンバータTCの入力側回転部材(ポンプインペラ11)側に駆動連結された油圧ポンプOPを備えている。油圧ポンプOPは、駆動力源から伝達された回転駆動力により駆動されて、油貯留部OT1に貯留された油を吸引して油圧を生じさせ、第一油圧制御装置VB1及び第二油圧制御装置VB2に供給する。
【0028】
トルクコンバータTCの出力軸としての入力軸Iには、変速装置TMが駆動連結されている。本実施形態では、変速装置TMは、変速比の異なる複数の変速段を有する有段の自動変速装置である。変速装置TMは、これら複数の変速段を形成するため、遊星歯車機構等の歯車機構と複数の摩擦係合要素とを備えている。本例では、複数の摩擦係合要素は、それぞれ摩擦材を有して構成されるクラッチやブレーキ等の係合要素である。これらの複数の摩擦係合要素のそれぞれには、第一油圧制御装置VB1により調圧された油が供給されて、係合又は解放される。このような摩擦係合要素としては、例えば湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキ等が好適に用いられる。変速装置TMから出力軸Oへ伝達されたトルクは、出力用差動歯車機構を介して左右二つの車輪に分配されて伝達される。
【0029】
2.駆動装置のケース
回転電機MG、トルクコンバータTC、変速装置TM、及び入力軸I等の駆動装置1の各構成部品は、概略円筒状のケース内に収容されている。本実施形態では、図1に示すように、駆動装置1のケースは、主に変速装置TM、及びトルクコンバータTCを収容する第一ケースCS1と、この第一ケースCS1に対して内燃機関IE側に連結され、主に回転電機MG、内燃機関分離クラッチC1、及び内燃機関連結軸ECを収容する第二ケースCS2と、を有して構成されている。
【0030】
第一ケースCS1は、概略円筒状の第一周壁21aと、軸方向におけるトルクコンバータTCと変速装置TMとの間に設けられた中間隔壁21bと、軸方向における変速装置TMより出力軸O側(図1における右側)に設けられた出力側端部隔壁21cと、を有している。
【0031】
第二ケースCS2は、概略円筒状の第二周壁22aと、軸方向における回転電機MGより内燃機関IE側(図1における左側)に設けられた入力側端部隔壁22bと、入力側端部隔壁22bの径方向中心部から軸方向に突出する筒状突出部22cと、を有している。駆動装置1のケース内における入力側端部隔壁22bと中間隔壁21bとの間の空間に、回転電機MG、内燃機関分離クラッチC1、及びトルクコンバータTCが収容され、中間隔壁21bと出力側端部隔壁21cとの間の空間に、変速装置TMが収容されている。
【0032】
なお、後述するように、第一ケースCS1の下部に第一油圧制御装置VB1及び第一オイルパン51が取り付けられ、第二ケースCS2の下部に第二油圧制御装置VB2及び第二オイルパン52が取り付けられている。ここで、第二油圧制御装置VB2は、第一油圧制御装置VB1とは分離して第一油圧制御装置VB1の上端部83よりも下方に配置されている。また、第二ケースCS2の壁面内に油密状の第一排出油路PE1が設けられ、第二ケースCS2から第一ケースCS1に亘って、それらの壁面内に油密状の第二排出油路PE2が設けられている。
【0033】
3.油圧制御系
次に、駆動装置1の油圧制御系の構成について図2を参照して説明する。上記したように、駆動装置1は、変速装置TMに供給する油圧を制御する変速装置油圧制御弁90が設けられた第一油圧制御装置VB1と、第一油圧制御装置VB1とは分離して第一油圧制御装置VB1の上端部83よりも下方に配置され、内燃機関分離クラッチC1に供給する油圧を制御する係合装置油圧制御弁93が設けられた第二油圧制御装置VB2と、を備えている。そして、駆動装置1は、第一油圧制御装置VB1及び第二油圧制御装置VB2に供給する油を貯留する油貯留部OT1と、油貯留部OT1に貯留された油を吸引して油圧を生じさせ、第一油圧制御装置VB1及び第二油圧制御装置VB2に供給する油圧ポンプOPと、を備えている。
【0034】
第一油圧制御装置VB1は、油貯留部OT1に収容され、第二油圧制御装置VB2は、油貯留部OT1の外部に油密状に形成された油密室OT2に収容されている。駆動装置1は、内燃機関分離クラッチC1から排出された油を油密室OT2へ送るための油密状の第一排出油路PE1と、油密室OT2から排出された油を油貯留部OT1へ送るための油密状の第二排出油路PE2と、を備えている。
【0035】
本実施形態のように、ハイブリッド化に伴い、内燃機関分離クラッチC1が備えられることにより、内燃機関分離クラッチC1用の油圧制御系が必要になる。この内燃機関分離クラッチC1用の油圧制御系を、本実施形態とは異なり、変速装置TM等の油圧制御系と統合して、一体的な油圧制御装置を構成する場合、油圧制御装置が大型化する。変速装置TM等用の油圧制御装置が取り付けられている駆動装置1のケースの下部の空間は限られているため、油圧制御装置を内燃機関分離クラッチC1用の油圧制御系のために大型化させることは容易でない。また、内燃機関分離クラッチC1用の油圧制御系を変速装置TM等の油圧制御系に統合する場合、油圧制御装置が複雑化し、設計及び製造コストが増加する恐れがある。内燃機関分離クラッチC1用の油圧制御系のみを設計変更するような場合に、統合化されていることにより、変速装置TM用の油圧制御系を含めて設計する必要があり、設計及び製造コストが増加する恐れがある。
【0036】
また、本実施形態では、上記のように、油密室OT2は、油貯留部OT1の外部に油密状に形成されている。従って、油貯留部OT1内に第一油圧制御装置VB1及び第二油圧制御装置VB2を収容した構成に比べて油貯留部OT1が装置軸心X1方向に長くなることを抑制できる。これにより、車両の加減速により、油貯留部OT1内の油が大きく移動して、油圧ポンプOPが適正に油を吸引できなくなることを抑制できる。
【0037】
本実施形態では、上記のように、内燃機関分離クラッチC1用の係合装置油圧制御弁93を、変速装置TM用の第一油圧制御装置VB1と分離して、第二油圧制御装置VB2に設けるように構成しているので、内燃機関分離クラッチC1用の油圧制御装置の取り付けスペースを確保することが容易になり、統合化する場合に比べて、油圧制御装置の設計及び製造コストの増加を抑制できる。
【0038】
このように、内燃機関分離クラッチC1用の係合装置油圧制御弁93を、第一油圧制御装置VB1と分離して、第二油圧制御装置VB2に設けるように構成した場合、本実施形態とは異なり、油を貯留する油貯留部、及び油圧の供給源となる油圧ポンプを2セット備えることが考えられる。第二油圧制御装置VB2側に備える油圧ポンプの駆動力源を確保するために、入力軸I等から駆動力源を得る場合は、駆動力の伝達機構を構成することは容易でなく、あるいは電動モータを備える場合は、高コストとなる。
本実施形態では、第一油圧制御装置VB1及び第二油圧制御装置VB2に共通の油貯留部OT1及び油圧ポンプOPを備えているので、製造コストの増加を抑制できる。
【0039】
このように、共通の油貯留部OT1及び油圧ポンプOPを備えることにより、第二油圧制御装置VB2から内燃機関分離クラッチC1に供給された後、内燃機関分離クラッチC1から排出された油、及び第二油圧制御装置VB2からドレインされた油を、共通の油貯留部OT1へ排出し、油を循環させる必要が生じる。
【0040】
本実施形態では、上記のように、内燃機関分離クラッチC1から排出された油を油密室OT2へ送るための油密状の第一排出油路PE1と、油密室OT2から排出された油を油貯留部OT1へ送るための油密状の第二排出油路PE2と、を備えているため、内燃機関分離クラッチC1から油貯留部OT1までの排出油路は、油密状にされている。当然ながら、第二油圧制御装置VB2から内燃機関分離クラッチC1までの供給油路も油密状にされている。よって、第二油圧制御装置VB2から内燃機関分離クラッチC1に供給された油は、その供給圧に応じた圧で第一排出油路PE1を通って油密室OT2へ排出され、油密室OT2から第二排出油路PE2を通って、油貯留部OT1まで送出される。
また、第二油圧制御装置VB2は、油密室OT2に収容されているため、第二油圧制御装置VB2からドレインされた油は、油密室OT2に排出され、上記の供給圧及びドレイン圧により、油密状の第二排出油路PE2を通って油貯留部OT1まで送出される。
【0041】
ここで、上記の供給圧に応じた圧は、内燃機関分離クラッチC1から排出された油の圧であるため、少なくともドレイン圧より低くなる。このため、油密室OT2内に作用する当該供給圧に応じた圧によって、係合装置油圧制御弁93のドレイン油路を油が逆流することを防止できる。
【0042】
これにより、内燃機関分離クラッチC1から排出された油の排出油路と、第二油圧制御装置VB2からドレインされた油の排出油路とを、油密室OT2及び第二排出油路PE2により共通化することができ、製造コストを低減できる。そして、内燃機関分離クラッチC1から排出された油、及び第二油圧制御装置VB2からドレインされた油を、油密状の油路により、供給圧及びドレイン圧を利用して、油貯留部OT1まで送ることができる。よって、油を送るための油圧ポンプを備える必要性がなく、製造コストの増加を抑制できる。
【0043】
本実施形態のように、第二油圧制御装置VB2が、第一油圧制御装置VB1の上端部83より下方に配置されている場合、通常は、第二油圧制御装置VB2を収容している油密室OT2の油を、第一油圧制御装置VB1を収容している油貯留部OT1へ送るためには、所定の高低差分だけ上方に油を送る必要が生じ、当該高低差分より大きい油圧が必要になる。本実施形態によれば、上記のように、油密状の排出油路により、供給圧及びドレイン圧を利用することができるので、高低差分の油圧を生じさせることができ、油密室OT2から油貯留部OT1に油を送ることができる。よって、前記高低差が生じたとしても、油を送るための油圧ポンプを備える必要性がなく、製造コストの増加を抑制できる。
【0044】
本実施形態では、油密室OT2は、油貯留部OT1に貯留された油の油面80及び第二排出油路PE2の油貯留部OT1側の開口部81のいずれか上方に位置するものよりも下方に配置されている。図2に示す例では、第二排出油路PE2の開口部81は、油面80よりも上方に位置しており、油密室OT2の全体が、第二排出油路PE2の開口部81よりも下方に配置されている。ここで、油面80は、サービスマニュアルなどで推奨されている規定量の油が駆動装置1に充填されている状態における油面である。
あるいは、油密室OT2が、少なくとも第二排出油路PE2の開口部81よりも下方に配置される構成であってもよい。この場合、油面80が、開口部81の上方又は下方のいずれにあってもよい。また、第二排出油路PE2の開口部81が、油面80よりも下方に配置されるような構成であってもよい。この場合は、油密室OT2は、油面80よりも下方に配置される。
【0045】
本実施形態のように、油密室OT2が、油貯留部OT1の油面80及び第二排出油路PE2の油貯留部OT1側の開口部81のいずれか上方に位置するものよりも下方に配置されると、油密室OT2は、その上部まで油で満たされることとなる。そして、油密室OT2に満たされた油の上部が、油面80及び開口部81のいずれか上方に位置するものよりも、下方に位置することとなり、油密室OT2に満たされた油の上部と油面80及び開口部81のいずれか上方に位置するものとの間に高低差が生じる。よって、油密室OT2の油を、この高低差分だけ上方に送る必要があり、この高低差分より大きい油圧が必要になる。上記のように、本実施形態によれば、油密状の排出油路により、供給圧及びドレイン圧を利用することができるので、前記高低差分だけ上方に油を送るための油圧を生じさせることができ、油密室OT2から油貯留部OT1に油を送ることができる。
【0046】
また、図2に示す例のように、高低差が、油密室OT2に満たされた油の上部と開口部81との間に生じる場合は、ハードウエアの構成により規定される所定の高低差となるため、第二排出油路PE2に作用する油圧が安定し、第二排出油路PE2を流れる油の流量の変動を抑制することができる。よって、内燃機関分離クラッチC1用の油圧制御系を循環する油の流量の変動を抑制することができる。これにより、例えば、内燃機関分離クラッチC1の摩擦部材100の冷却性能の変動を抑制したり、内燃機関分離クラッチC1の係合圧の変動を抑制したりすることができる。
【0047】
本実施形態では、上記したように、第一油圧制御装置VB1は、変速装置TMを収容する第一ケースCS1の下部に取り付けられ、第二油圧制御装置VB2は、回転電機MG及び内燃機関分離クラッチC1を収容する第二ケースCS2の下部に取り付けられている。また、第一排出油路PE1は、第二ケースCS2内に設けられ、第二排出油路PE2は第二ケースCS2から第一ケースCS1に亘って、第二ケースCS2及び第一ケースCS1内に設けられている。本実施形態では、第一排出油路PE1及び第二排出油路PE2は、第一ケースCS1及び第二ケースCS2の壁面内に管状に形成されて、油密状の油路とされている。
【0048】
このように変速装置TM用の第一油圧制御装置VB1は、変速装置TMを収容する第一ケースCS1の下部に取り付けられ、内燃機関分離クラッチC1用の第二油圧制御装置VB2は、内燃機関分離クラッチC1を収容する第二ケースCS2の下部に取り付けられる。これにより、変速装置TMと第一油圧制御装置VB1との間、及び内燃機関分離クラッチC1と第二油圧制御装置VB2との間を近接して配置することができ、これらの間に形成される油路を短くすることができるとともに、単純化することができる。
また、第一排出油路PE1は、第二油圧制御装置VB2が取り付けられている第二ケースCS2内に設けられているので、第二油圧制御装置VB2の取り付け部付近から第二ケースCS2内に、当該ケースを有効利用して、第一排出油路PE1を設けることができ、油路の形成のための部品点数を減らすことができる。また、第二ケースCS2内に油路が形成されているので、油密性を容易に確保することができる。
第二排出油路PE2は、第二油圧制御装置VB2が取り付けられている第二ケースCS2から、第一油圧制御装置VB1が取り付けられている第一ケースCS1に亘って、第二ケースCS2及び第一ケースCS1内に設けられているので、第二油圧制御装置VB2の取り付け部付近から第一油圧制御装置VB1の取り付け部付近まで、第二ケースCS2及び第一ケースCS1に亘って、当該ケースを有効利用して、第二排出油路PE2を設けることができ、油路の形成のための部品点数を減らすことができる。また、第二ケースCS2及び第一ケースCS1内に油路が形成されているので、油密性を容易に確保することができる。
【0049】
また、第二油圧制御装置VB2は、回転電機MGが収容された第二ケースCS2の下部に配置されているので、回転電機MGの径方向の幅分、装置軸心X1から離間して配置されている。また、第一油圧制御装置VB1は、変速装置TMの径方向の幅分、装置軸心X1から離間して配置されている。ここで、回転電機MGの外径は、変速装置TMの外径よりも大径となっている。このため、第二油圧制御装置VB2は、第一油圧制御装置VB1の上端部83よりも下方に配置されている。このような場合でも、上記のように、油圧ポンプを備えることなく、油密室OT2から油貯留部OT1に油を送ることができる。また、上記のように高低差を許容できるので、第二油圧制御装置VB2の配置のために、回転電機MGの径方向の幅等の寸法設計が制約されることを抑制することができる。
【0050】
また、駆動装置1は、第二油圧制御装置VB2で調圧された油を内燃機関分離クラッチC1の摩擦部材等が収容された第一油室96へ送るための油密状の第一供給油路PI1と、第二油圧制御装置VB2で調圧された油を内燃機関分離クラッチC1の油圧シリンダ97へ送るための油密状の第三供給油路PI3と、を備えている。また、駆動装置1は、油圧ポンプOPにより昇圧された油を第二油圧制御装置VB2へ送るための油密状の第二供給油路PI2を備えている。
本実施形態では、第一供給油路PI1及び第三供給油路PI3は、第一排出油路PE1と同様に、第二ケースCS2内に設けられ、第二供給油路PI2は、第二排出油路PE2と同様に、第二ケースCS2から第一ケースCS1に亘って、第二ケースCS2及び第一ケースCS1内に設けられている。本実施形態では、第一供給油路PI1、第二供給油路PI2及び第三供給油路PI3は、第一ケースCS1又は第二ケースCS2の壁面内に管状に形成されて、油密状の油路とされている。
【0051】
これにより、第一供給油路PI1及び第三供給油路PI3は、第一排出油路PE1と同様に、第二油圧制御装置VB2の取り付け部から第二ケースCS2内に、当該ケースを有効利用して、第一供給油路PI1及び第三供給油路PI3を設けることができ、油路の形成のための部品点数を減らすことができる。また、第二ケースCS2内に油路が形成されているので、油密性を容易に確保することができる。
また、第二供給油路PI2は、第二排出油路PE2と同様に、第二油圧制御装置VB2が取り付けられている第二ケースCS2から、第一油圧制御装置VB1が取り付けられている第一ケースCS1に亘って、第二ケースCS2及び第一ケースCS1内に設けられているので、当該ケースを有効利用して、第二供給油路PI2を設けることができ、油路の形成のための部品点数を減らすことができる。また、第二ケースCS2及び第一ケースCS1内に油路が形成されているので、油密性を容易に確保することができる。
【0052】
本実施形態では、油貯留部OT1は、第一ケースCS1と、第一ケースCS1の下部に取り付けられた第一オイルパン51と、に囲まれて構成されている。油密室OT2は、第二ケースCS2と第二ケースCS2の下部に取り付けられた第二オイルパン52とに囲まれて構成されている。
【0053】
これにより、油貯留部OT1を、第一ケースCS1を有効利用して形成することができる。また、油貯留部OT1を第一ケースCS1に隣接させることができるので、油貯留部OT1と第一ケースCS1に設けられる第二排出油路PE2との間の連通を容易に実現することができる。同様に、油密室OT2を、第二ケースCS2を有効利用して形成することができる。また、油密室OT2を第二ケースCS2に隣接させることができるので、油密室OT2と第二ケースCS2に設けられる第一排出油路PE1及び第二排出油路PE2との間の連通を容易に実現することができる。
【0054】
また、油貯留部OT1を構成する第一オイルパン51と、油密室OT2を構成する第二オイルパン52と、が別体で構成されているので、車両の加減速により、第一オイルパン51内の油の移動が大きくなり、油圧ポンプOPが適正に油を吸引できなくなることを抑制できる。
【0055】
本実施形態では、駆動装置1は、トルクコンバータTCに供給する油圧を制御するコンバータ油圧制御弁91を備えている。コンバータ油圧制御弁91は、第一油圧制御装置VB1に設けられている。なお、コンバータ油圧制御弁91は、単数又は複数の油圧制御弁などから構成されている。
【0056】
また、本実施形態では、駆動装置1は、油圧ポンプOPの出力圧であるライン圧を調圧するプレッシャーレギュレータバルブ92を備えている。プレッシャーレギュレータバルブ92は、第一油圧制御装置VB1に設けられている。
【0057】
油圧ポンプOPの出力圧であるライン圧は、第一油圧制御装置VB1に設けられた変速装置油圧制御弁90、及びコンバータ油圧制御弁91に供給される。
変速装置油圧制御弁90は、ライン圧を減圧して、変速装置TMに供給する油圧を制御する。変速装置油圧制御弁90から変速装置TMに供給された油は、変速装置TMが備える摩擦係合要素などの油圧サーボ機構の作動及び摩擦係合要素の冷却に用いられると共に、変速装置TMが備える歯車機構や軸受等の潤滑及び冷却等にも用いられる。そして、変速装置TMに供給された油は、不図示の油路を介して油貯留部OT1に排出される。なお、変速装置油圧制御弁90は、各油圧供給要素に対応し、単数又は複数の油圧制御弁などから構成されている。
コンバータ油圧制御弁91は、ライン圧を減圧して、トルクコンバータTCに供給する油圧を制御する。コンバータ油圧制御弁91からトルクコンバータTCに不図示の油路を介して供給された油は、トルクコンバータTCのロックアップクラッチC2の作動及び冷却に用いられると共に、トルクコンバータTCにおける駆動力伝達のための油として用いられる。そして、トルクコンバータTCに供給された油は、不図示の油路を介して油貯留部OT1に排出される。
【0058】
また、油圧ポンプOPの出力圧であるライン圧の油は、第二供給油路PI2により、係合装置油圧制御弁93が設けられた第二油圧制御装置VB2へ送られる。図2に示す例では、第二供給油路PI2は、第一油圧制御装置VB1から第二油圧制御装置VB2に、ライン圧の油を送る油路とされている。なお、第二供給油路PI2は、第一油圧制御装置VB1を介さずに、油圧ポンプOPから第二油圧制御装置VB2に、ライン圧の油を直接送る油路とされるようにしてもよい。
【0059】
本実施形態では、係合装置油圧制御弁93は、図2に示すように、内燃機関分離クラッチC1の油圧シリンダ97に供給する油圧を制御するシリンダ油圧制御弁94と、内燃機関分離クラッチC1の摩擦部材等が収容された第一油室96に供給する油圧を制御する循環油圧制御弁95と、を有している。
【0060】
シリンダ油圧制御弁94は、ライン圧を減圧して、内燃機関分離クラッチC1の油圧シリンダ97に供給する油圧を制御(調圧)する。そして、シリンダ油圧制御弁94により調圧された油は、第三供給油路PI3により、内燃機関分離クラッチC1の油圧シリンダ97へ送られる。なお、第三供給油路PI3は、内燃機関分離クラッチC1の油圧シリンダ97に供給された油の排出油路ともなる。シリンダ油圧制御弁94からドレインされる油は、油密室OT2に直接排出される。図2に示す例では、シリンダ油圧制御弁94として、ソレノイドと調圧弁(減圧弁)との機能を合わせ持った油圧制御弁であるリニアソレノイド弁が用いられている。なお、シリンダ油圧制御弁94として、ソレノイドの機能と調圧弁(減圧弁)の機能とが分離された、DUTYソレノイド弁と調圧弁(減圧弁)とが用いられるようにしてもよい。
【0061】
循環油圧制御弁95は、ライン圧を減圧して、内燃機関分離クラッチC1の第一油室96に供給する油圧を制御(調圧)する。そして、循環油圧制御弁95により調圧された油は、第一供給油路PI1により、内燃機関分離クラッチC1の第一油室96へ送られる。第一油室96は、内燃機関分離クラッチC1の摩擦部材100等が収容され、油密状に形成されている。また、第一油室96は、第一油室96の供給口98に供給された油が、第一油室96内の所定経路(循環路)を流れ(循環し)、第一油室96の排出口99から排出されるように構成されている。第一油室96の循環路は、摩擦部材100に沿って油が流れるように構成されている。よって、第一油室96に供給された油は、第一油室96内を循環して、摩擦部材100を冷却する。第一油室96内を循環して、第一油室96から排出された油は、第一排出油路PE1により、油密室OT2へ送られる。また、循環油圧制御弁95からドレインされる油は、油密室OT2に直接排出される。図2に示す例では、循環油圧制御弁95として、元圧からの油路の開閉とドレインへの油路の開閉とを同時に行うタイプの調圧弁(減圧弁)が用いられている。なお、循環油圧制御弁95として、ドレインへの油路の開閉のみを行うタイプの調圧弁(減圧弁)が用いられるようにしてもよい。
【0062】
4.駆動装置の詳細構成
次に、本実施形態に係る駆動装置1の各部の詳細な構成について、図3及び図4を参照して説明する。なお、図3及び図4には、装置軸心X1より下側であって、変速装置TMより内燃機関IE側の部分の略鉛直方向の断面を示している。図3は、内燃機関分離クラッチC1又は第二油圧制御装置VB2からの排出油路を示しており、図4は、内燃機関分離クラッチC1又は第二油圧制御装置VB2への供給油路を示している。図3及び図4に示している構成は、こられの油路の構成以外は同じである。以下では、主に図3を用いて、駆動装置1の各部の詳細な構成を説明する。
【0063】
上記のとおり、駆動装置1は、回転電機MG、トルクコンバータTC、変速装置TM、内燃機関分離クラッチC1、ロックアップクラッチC2、内燃機関連結軸EC、入力軸I、及び出力軸Oを備えている。本実施形態では、内燃機関分離クラッチC1は、回転電機MGの径方向内側に配置されており、ロックアップクラッチC2は、トルクコンバータTCのハウジング13内に配置されている。そして、内燃機関IE側から軸方向に沿って、回転電機MG、内燃機関分離クラッチC1、トルクコンバータTC、及び変速装置TMの順に配置されている。また、内燃機関連結軸EC、入力軸I、及び出力軸Oについては、内燃機関IE側から軸方向に沿ってこの順に配置されている。これらの各部品は、非回転部材としての駆動装置のケース内に収容されている。以下、この駆動装置1の各部の構成について詳細に説明する。
【0064】
4−1.駆動装置のケース
4−1−1.第二ケース
第二ケースCS2は、上記のとおり、概略的に、円筒状の第二周壁22aと、内燃機関IE側に設けられた入力側端部隔壁22bと、入力側端部隔壁22bの径方向中心部から軸方向に突出する筒状突出部22cと、を有している。
入力側端部隔壁22bは、少なくとも径方向に延びる形状を有し、ここでは径方向及び周方向に延びる略平坦な円板状の壁部とされている。また、入力側端部隔壁22bの径方向中心部には、軸方向にトルクコンバータTC側へ突出する筒状突出部22cが設けられている。本例では、筒状突出部22cは、入力側端部隔壁22bの径方向内側端部からトルクコンバータTC側へ突出する円筒状のボス部とされている。筒状突出部22cの径方向中心部には、軸方向に貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔に内燃機関連結軸ECが挿通されている。本実施形態では、筒状突出部22cの内周面と内燃機関連結軸ECとの間に第三軸受67が配置されている。内燃機関連結軸ECは、この第三軸受67により、第二ケースCS2に対して回転可能に支持されている。本実施形態では、第三軸受67としてニードルベアリングを用いている。筒状突出部22cの内周面と内燃機関連結軸ECとの間の空間は、内燃機関IE側で、オイルシール68により円環状の蓋をされ、油密状態にされている。
【0065】
第二ケースCS2の壁面内には、上記のように、油密室OT2又は第二油圧制御装置VB2と、内燃機関分離クラッチC1と、の間を油密状の油路で連通するように、第一排出油路PE1、第一供給油路PI1、及び第三供給油路PI3が形成されている。
図3に示す例では、第一排出油路PE1は、内燃機関分離クラッチC1と油密室OT2との間を油路で連通するように、入力側端部隔壁22b及び筒状突出部22cの壁面内に管状に形成されている。具体的には、図3の矢印で示すように、第一油室96の排出口99から排出された油は、内燃機関連結軸ECの内部に形成された油路110を通った後、筒状突出部22c及び入力側端部隔壁22bの壁面内に形成された第一排出油路PE1を通り、第一排出油路PE1に連通した油密室OT2に送出される。
【0066】
図4に示す例では、第一供給油路PI1は、内燃機関分離クラッチC1と第二油圧制御装置VB2との間を油路で連通するように、第二周壁22a、入力側端部隔壁22b及び筒状突出部22cの壁面内に管状に形成されている。第一供給油路PI1は、筒状突出部22c及び入力側端部隔壁22b内において、第一排出油路PE1とは異なる周方向の位置に配置されている。
具体的には、図4の矢印で示すように、第二油圧制御装置VB2から送出された油は、第二周壁22a、入力側端部隔壁22b、及び筒状突出部22cの壁面内に形成された第一供給油路PI1を通った後、筒状突出部22cの端部から第一油室96の供給口98に供給される。第一供給油路PI1は、入力側端部隔壁22bの壁面内に形成された第一供給油路PI1の下端部と、第二油圧制御装置VB2との間を連通するように、第二周壁22aの下側外壁面に、下側に開口して形成されている。この油路が形成された第二周壁22aの下側には、第二油圧制御装置VB2が取り付けられて、第二油圧制御装置VB2の上端面により第一供給油路PI1の下側開口部が覆われて油密状の油路が形成されている。
【0067】
第三供給油路PI3は、図3及び図4には図示されていないが、第一供給油路PI1と同様に、内燃機関分離クラッチC1の油圧シリンダ97と第二油圧制御装置VB2との間を油路で連通するように、第二周壁22a、入力側端部隔壁22b及び筒状突出部22cの壁面内に管状に形成されている。
【0068】
また、第二ケースCS2の壁面内には、油密室OT2又は第二油圧制御装置VB2と、油貯留部OT1又は第一油圧制御装置VB1とを、第一ケースCS1及び第二ケースCS2に亘って、油密状の油路で連通するように、第二排出油路PE2、第二供給油路PI2が形成されている。
【0069】
図3に示す例では、第二排出油路PE2は、油密室OT2と油貯留部OT1との間を油路で連通するように、第二周壁22aの壁面内に管状に形成されている。具体的には、第一排出油路PE1は、油密室OT2が配置されている第二周壁22aの下面から第二周壁22aの壁面内を軸方向に第一ケースCS1側に延びるように形成されている。
【0070】
図4に示す例では、第二供給油路PI2は、第二油圧制御装置VB2と第一油圧制御装置VB1との間を油路で連通するように、第二周壁22aの壁面内に管状に形成されている。具体的には、第二供給油路PI2は、第一ケースCS1側から第二油圧制御装置VB2が配置されている第二周壁22aの下面まで第二周壁22aの壁面内を軸方向に延びるように形成されている。
【0071】
4−1−2.第一ケース
第一ケースCS1は、上記のとおり、概略的に、円筒状の第一周壁21aと、軸方向におけるトルクコンバータTCと変速装置TMとの間に設けられた中間隔壁21bと、軸方向における変速装置TMより出力軸O側に設けられた出力側端部隔壁21c(図1、図2参照)と、を有している。
中間隔壁21bは、少なくとも径方向に延びる形状を有し、ここでは径方向及び周方向に延びる略平坦な円板状の壁部とされている。また、本実施形態では、中間隔壁21bは、第一周壁21aとは別部材として構成されており、ボルト等の締結部材により第一周壁21aの内周面に形成された段差部に締結固定されている。そして、中間隔壁21bに油圧ポンプOPが設けられている。ここでは、中間隔壁21bのトルクコンバータTC側の面に油圧ポンプカバー41が取り付けられている。そして、中間隔壁21bと油圧ポンプカバー41との間に、油圧ポンプロータ42を収容する油圧ポンプ室43が形成されている。これらの油圧ポンプロータ42及び油圧ポンプ室43により油圧ポンプOPが構成されている。油圧ポンプカバー41は、中間隔壁21bに対してトルクコンバータTC側から当接した状態で、ボルト等の締結部材により中間隔壁21bに締結固定されている。中間隔壁21b及び油圧ポンプカバー41の径方向中心部には、軸方向に貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔に入力軸Iが挿通されている。また、この貫通孔には、油圧ポンプ駆動軸46及びステータ支持軸16も挿通されている。油圧ポンプ駆動軸46は、トルクコンバータTCのハウジング13と一体回転する円筒状の軸部であって、入力軸Iの径方向外側に配置され、油圧ポンプロータ42に駆動連結されている。ステータ支持軸16は、中間隔壁21bに固定されてトルクコンバータTCのステータ14を支持する円筒状の軸部であって、径方向における入力軸Iと油圧ポンプ駆動軸46との間に配置されている。また、中間隔壁21b及び油圧ポンプカバー41には、油圧ポンプOPの吸入油路である第一吸入油路L1及び吐出油路である第一吐出油路L2(図2参照)が形成されている。
【0072】
油圧ポンプOPの油圧ポンプロータ42は、スプライン係合等により油圧ポンプ駆動軸46に駆動連結されている。よって、油圧ポンプロータ42は、トルクコンバータTCのポンプインペラ11及び回転電機MGのロータRoと一体回転するように構成されている。本実施形態においては、油圧ポンプOPは、油圧ポンプロータ42としてインナロータとアウタロータとを有する内接型のギヤポンプとされている。また、油圧ポンプOPは、回転電機MG、トルクコンバータTC、及び変速装置TMと同軸上に配置されており、インナロータがその径方向中心部でトルクコンバータTCのポンプインペラ11と一体回転するように連結されている。従って、ポンプインペラ11の回転に伴い、油圧ポンプOPは油を吐出して油圧を生じさせ、第一油圧制御装置VB1及び第二油圧制御装置VB2に供給する。
【0073】
油圧ポンプOPは、図2に示すように、油貯留部OT1からストレーナ(不図示)及び第一吸入油路L1を介して油を吸引し、第一吐出油路L2に吐出する。油圧ポンプOPから吐出された油は、第一吐出油路L2を介して第一油圧制御装置VB1へ送られる。そして、第一油圧制御装置VB1に設けられたプレッシャーレギュレータバルブ92は、油圧ポンプOPの出力圧であるライン圧を調圧する。よって、油圧ポンプOPの吐出口と連通している第一吐出油路L2などの各油路の油圧は、プレッシャーレギュレータバルブ92によりライン圧として調圧される。そして、ライン圧の油が、各油路を介して、第一油圧制御装置VB1に設けられた変速装置油圧制御弁90、及び第二油圧制御装置VB2に供給される。
【0074】
また、第一ケースCS1の壁面内には、油密室OT2又は第二油圧制御装置VB2と、油貯留部OT1又は第一油圧制御装置VB1とを、第一ケースCS1及び第二ケースCS2に亘って、油密状の油路で連通するように、第二排出油路PE2及び第二供給油路PI2が形成されている。
【0075】
図3に示す例では、第二排出油路PE2は、油密室OT2と油貯留部OT1との間を油路で連通するように、第一周壁21aの壁面内に管状に形成されている。
具体的には、第二排出油路PE2は、第一周壁21aの第二ケースCS2側の端部から第一周壁21aの壁面内を油貯留部OT1へ向かって延びるように形成されている。第二排出油路PE2は、油貯留部OT1側で開口しており、油貯留部OT1側の開口部81が形成されている。図3に示す例では、第二排出油路PE2の開口部81は、油面80よりも上方に位置しており、油密室OT2は、第二排出油路PE2の開口部81よりも下方に配置されている。
【0076】
図4に示す例では、第二供給油路PI2は、第二油圧制御装置VB2と第一油圧制御装置VB1との間を油路で連通するように、第一周壁21aの壁面内に管状に形成されている。具体的には、第二供給油路PI2は、第一油圧制御装置VB1から第一周壁21aの第二ケースCS2側の端部まで第一周壁21aの壁面内を油密室OT2側へ向かって延びるように形成されている。
【0077】
4−2.回転電機
図3に示すように、回転電機MGは、トルクコンバータTCよりも内燃機関IE側に配置されている。本実施形態では、回転電機MGは、軸方向における入力側端部隔壁22bとトルクコンバータTCとの間に配置されている。また、回転電機MGは、内燃機関連結軸EC及び内燃機関分離クラッチC1に対して径方向外側に配置されている。回転電機MGのステータStは、第二ケースCS2に固定されている。ロータRoは、回転可能な状態で第二ケースCS2に支持されている。また、ロータRoは、ロータ支持部材62を介してトルクコンバータTCのポンプインペラ11及びハウジング13と一体回転するように連結されている。ロータ支持部材62は、少なくとも径方向に延びてロータRoを支持するように設けられた部材である。本実施形態では、ロータ支持部材62の径方向内側端部に円筒状のボス部62aが設けられており、当該ボス部62aの内周面と第二ケースCS2の筒状突出部22cとの間に第一軸受61が配置されている。ロータRo及びロータ支持部材62は、この第一軸受61により、第二ケースCS2に対して回転可能に支持されている。本実施形態では、第一軸受61としてボールベアリングを用いている。また、軸方向におけるロータ支持部材62と入力側端部隔壁22bとの間であって、ボス部62aの径方向外側に、回転センサ63が配置されている。この回転センサ63は、回転電機MGのロータRoの回転位置を検出するセンサであり、レゾルバ等を好適に用いることができる。ここでは、入力側端部隔壁22bに回転センサ63のセンサステータ63aが固定され、ロータ支持部材62のボス部62aに回転センサ63のセンサロータ63bが固定されている。
【0078】
4−3.入力クラッチ
図3に示すように、内燃機関分離クラッチC1は、回転電機MGの径方向内側であって、回転電機MGの径方向に見て回転電機MGと重複する部分を有する位置に配置されている。また、内燃機関分離クラッチC1は、ロータ支持部材62に対して軸方向でトルクコンバータTC側に配置されている。内燃機関分離クラッチC1は、内燃機関連結軸ECと回転電機MG及びトルクコンバータTCのポンプインペラ11とを選択的に駆動連結するための係合装置である。本実施形態では、内燃機関分離クラッチC1は、摩擦係合装置とされている。内燃機関分離クラッチC1の入力側部材である入力クラッチハブ71は、内燃機関連結軸ECと一体的に設けられている。具体的には、入力クラッチハブ71は、内燃機関連結軸ECと一体的に形成され、当該内燃機関連結軸ECの変速装置TM側端部から径方向外側に延びる円板状部材とされている。また、内燃機関分離クラッチC1の出力側部材である入力クラッチドラム72は、トルクコンバータTCのハウジング13及び回転電機MGのロータ支持部材62と一体的に回転するように連結されている。具体的には、入力クラッチドラム72は、ロータ支持部材62のボス部62aの内周面に接合されているとともに、トルクコンバータTCのハウジング13における径方向中間部分に形成された段差部13bの外周面に接合されている。入力クラッチドラム72は、内燃機関分離クラッチC1のハウジングを兼ねており、内側に入力クラッチハブ71、ピストン75、摩擦部材100等を収容している。そして、入力クラッチドラム72は、内部のオイルが外に漏れないように他の部材との接合部が密閉され、内部を油密状態としている。
【0079】
内燃機関分離クラッチC1の油圧シリンダ97は、シリンダとして機能する入力クラッチドラム72と、ピストン75とにより囲まれて構成されている。油圧シリンダ97は、シール材により油密状に形成されている。
内燃機関分離クラッチC1の第一油室96は、内燃機関分離クラッチC1の摩擦部材100等が収容され、油密状に形成されている。第一油室96は、上記したように、第一油室96の供給口98に供給された油が、第一油室96内の所定経路(循環路)を流れ(循環し)、第一油室96の排出口99から排出されるように構成されている。本実施形態では、第一油室96の供給口98は、入力クラッチハブ71と入力クラッチドラム72の径方向内側端部との隙間により形成されている。供給口98に供給された油は、ピストン75と入力クラッチハブ71との間に形成された径方向に広がる空間(循環路)を、径方向外側に流れる。そして、径方向外側に向かって流れた油は、複数の摩擦部材100に沿って形成された隙間(循環路)を流れる。この際、摩擦部材100が冷却される。その後、摩擦部材100に沿って流れた油は、入力クラッチハブ71とトルクコンバータTCの第一ハウジング部材66との間に形成された径方向に広がる空間(循環路)を、径方向内側に向かって流れる。そして、第一油室96の排出口99から油が排出される。排出口99は、入力クラッチハブ71と第一ハウジング部材66との間に形成された空間において、径方向内側において間隔が狭くなっている(絞られている)隙間である。この排出口99の隙間が、オリフィスとして働き、第一油室96内の油圧は、第二油圧制御装置VB2で調圧された油圧となる。
【0080】
第一油室96から排出された油は、第二ケースCS2の筒状突出部22c及び入力側端部隔壁22bの壁面内に設けられた油密状の第一排出油路PE1により、油密室OT2へ送られる。図3に示す例では、第一油室96の排出口99から排出された油は、内燃機関連結軸ECと第一ハウジング部材66との間の油密空間、内燃機関連結軸EC内に設けられた油密状の油路110、内燃機関連結軸ECと第二ケースCS2の筒状突出部22cとの間の油密状の隙間、及び第一排出油路PE1と筒状突出部22cの内周面とを連通する連通口111を順に流れて、第一油室96から第一排出油路PE1に排出される。
【0081】
一方、第二油圧制御装置VB2で調圧された油は、図4に示すように、第二ケースCS2の第二周壁22a、入力側端部隔壁22b、及び筒状突出部22cの壁面内に設けられた油密状の第一供給油路PI1により、第一油室96へ送られる。図4に示す例では、第二油圧制御装置VB2で調圧された油は、第一供給油路PI1を通り、筒状突出部22cの軸方向端部に開口する第一供給油路PI1の開口端部から出て、筒状突出部22cと入力クラッチハブ71との間の油密状の隙間を流れ、第一油室96に供給される。
【0082】
4−4.トルクコンバータ
図3に示すように、トルクコンバータTCは、軸方向における回転電機MGと変速装置TMとの間に配置されている。トルクコンバータTCは、ポンプインペラ11、タービンランナ12、ステータ14、及びこれらを収容するハウジング13を備えている。また、本実施形態では、ハウジング13内に、ロックアップクラッチC2及びダンパ15も収容されている。ハウジング13は、ポンプインペラ11と一体回転するように構成されている。ここでは、ポンプインペラ11は、ハウジング13の内側に一体的に設けられている。
【0083】
本実施形態では、ハウジング13は、回転電機MG側の第一ハウジング部材66と、変速装置TM側の第二ハウジング部材65とを接合して構成されている。第一ハウジング部材66は、トルクコンバータTCの回転電機MG側を覆うように形成された円筒状部材であり、本例では径方向中間部分に段差部13bが形成された段付円筒状部材とされている。この段差部13bの外周面には入力クラッチドラム72の内周面が接合されており、これによりハウジング13が内燃機関分離クラッチC1の入力クラッチドラム72と一体的に回転するように連結されている。また、段差部13bの径方向内側にはロックアップクラッチC2が収容されている。第二ハウジング部材65は、トルクコンバータTCの変速装置TM側を覆うように形成されたカバー部材であり、本例では、径方向中間部分が変速装置TM側に向かって膨出した円弧状の断面形状を有する環状部材とされている。第二ハウジング部材65の径方向内側の端部には、軸方向に変速装置TM側へ延びる油圧ポンプ駆動軸46が一体的に設けられている。油圧ポンプ駆動軸46は、トルクコンバータTCのハウジング13と一体回転する円筒状の軸部であって、入力軸Iと同軸に入力軸Iの径方向外側に配置されている。油圧ポンプ駆動軸46の外周面と油圧ポンプカバー41の貫通孔の内周面との間に第二軸受64が配置されている。油圧ポンプ駆動軸46及びトルクコンバータTCのハウジング13は、この第二軸受64により、第一ケースCS1に対して回転可能に支持されている。本実施形態では、第二軸受64としてニードルベアリングを用いている。油圧ポンプ駆動軸46の変速装置TM側の端部は、油圧ポンプOPの油圧ポンプロータ42と一体回転するように連結されている。油圧ポンプ駆動軸46と油圧ポンプロータ42との連結は、ここではスプライン係合により行われている。
【0084】
第一ハウジング部材66と第二ハウジング部材65とは、溶接等により一体的に接合されている。また、駆動装置1全体として見れば、一体的に回転する回転電機MGのロータRo、トルクコンバータTCのハウジング13、及び内燃機関分離クラッチC1の入力クラッチドラム72は、内燃機関連結軸EC側において第一軸受61を介して駆動装置1のケースに回転可能に支持され、変速装置TM側において第二軸受64を介して第二ケースCS2に回転可能に支持されている。
【0085】
トルクコンバータTCのタービンランナ12は、ハウジング13の内部におけるポンプインペラ11の回転電機MG側に、ポンプインペラ11と対向して配置されている。このタービンランナ12は、入力軸Iと一体回転するように連結されており、ここでは、タービンランナ12の径方向内側端部が、入力軸Iとスプライン係合されている。トルクコンバータTCのステータ14は、軸方向におけるポンプインペラ11とタービンランナ12との間に配置されている。このステータ14は、一方向クラッチを介してステータ支持軸16に支持されている。上記のように、ステータ支持軸16は、円筒状の軸部であって変速装置TM側において中間隔壁21bに固定されている。このトルクコンバータTCは、ハウジング13の内部に充填されたオイルを介して、駆動側のポンプインペラ11と従動側のタービンランナ12との間のトルクの伝達を行うことが可能となっている。
【0086】
図3に示すように、ロックアップクラッチC2は、ハウジング13の段差部13bの径方向内側であって、タービンランナ12に対して軸方向で回転電機MG側に配置されている。ロックアップクラッチC2は、ポンプインペラ11とタービンランナ12とを係合することにより、オイルを介した駆動力の伝達を止めてこれらを直結状態(ロックアップ状態)とするための係合装置である。本実施形態では、ロックアップクラッチC2は、摩擦係合装置とされている。ロックアップクラッチC2の入力側部材であるロックアップクラッチハブ73は、ハウジング13と一体回転するように設けられている。具体的には、ロックアップクラッチハブ73は、径方向内側においてハウジング13の第一ハウジング部材66が有するボス部にスプライン係合して連結されている。また、ロックアップクラッチC2の出力側部材であるロックアップクラッチドラム74は、ダンパ15を介してタービンランナ12及び入力軸Iに駆動連結されている。具体的には、ロックアップクラッチドラム74は、ダンパ15の入力側部材15aと一体的に形成されている。なお、ロックアップクラッチC2のピストン及び摩擦板等も、段差部13bの径方向内側の空間に収容されている。また、本実施形態では、ロックアップクラッチC2は、第一ハウジング部材66を挟んで内燃機関分離クラッチC1と軸方向に隣接して配置されている。
【0087】
ダンパ15は、軸方向におけるロックアップクラッチC2とタービンランナ12との間に配置されている。このダンパ15は、ロックアップクラッチC2の係合状態で、ポンプインペラ11とタービンランナ12との間で伝達される駆動力の振動を吸収するために設けられている。本実施形態では、ダンパ15は、周方向に相対移動可能に構成された入力側部材15a及び出力側部材15bと、これら入力側部材15aと出力側部材15bとの間に設けられた振動吸収用のばね等を有している。そして、ダンパ15の入力側部材15aはロックアップクラッチC2のロックアップクラッチドラム74と一体回転するように連結されている。また、ダンパ15の出力側部材15bはタービンランナ12及び入力軸Iと一体回転するように連結されている。
【0088】
4−5.変速機構
図3では省略しているが、中間隔壁21bの出力軸O側、すなわち中間隔壁21bを挟んでトルクコンバータTCとは反対側(図3における右側)に、変速装置TMが配置されている。本実施形態では、変速装置TMは、変速比の異なる複数の変速段を有する有段の自動変速装置である。
【0089】
4−6.第一油圧制御装置、第一オイルパン
第一油圧制御装置VB1は、変速装置TMに供給する油圧を制御する変速装置油圧制御弁90を設けている。本実施形態では、第一油圧制御装置VB1は、図2で示したように、ライン圧を調圧するプレッシャーレギュレータバルブ92と、ライン圧を減圧して変速装置TMに供給する油圧を制御(調圧)する変速装置油圧制御弁90と、ライン圧を減圧してトルクコンバータTCに供給する油圧を制御(調圧)するコンバータ油圧制御弁91と、を設けている。第一油圧制御装置VB1は、蟻の巣のように張り巡らされた溝(油路)を備えたバルブボディと、バルブボディ内に取り付けられたスプール、スプリング、及びソレノイド等からなる各油圧制御弁と、オリフィス等で構成されている。第一油圧制御装置VB1は、油貯留部OT1に収容されている。油貯留部OT1は、第一油圧制御装置VB1及び第二油圧制御装置VB2に供給する油を貯留する。
【0090】
本実施形態では、図3に示すように、変速装置TMを収容した第一ケースCS1の下部(第一周壁21aの下面)に、第一油圧制御装置VB1が取り付けられている。この第一油圧制御装置VB1の下側及び周囲を覆うように、第一ケースCS1の下部(第一周壁21aの下面)に第一オイルパン51が取り付けられている。すなわち、油貯留部OT1は、第一ケースCS1(第一周壁21a)と第一オイルパン51とに囲まれて構成されており、第一油圧制御装置VB1は、油貯留部OT1に収容されている。また、第一オイルパン51の内部に貯留された油が外部に漏れ出すことを防止するために、第一オイルパン51の上面と第一ケースCS1(第一周壁21a)の下面との接合面には、シール部材が介装されている。上記のように、第一油圧制御装置VB1の変速装置油圧制御弁90から変速装置TMに供給された油は、変速装置TMが備える複数の係合要素の作動及び冷却に用いられると共に、変速装置TMが備える歯車機構や軸受等の潤滑及び冷却にも用いられる。そして、このような役割を終えて変速装置TMから流れ出た油は、重力によって下方へ流れ、変速装置TMの下方に配置された第一オイルパン51内の油貯留部OT1に回収される。また、第一油圧制御装置VB1の各油圧制御弁からドレインした油は、油貯留部OT1に直接排出される。
【0091】
4−7.第二油圧制御装置、第二オイルパン
第二油圧制御装置VB2は、第一油圧制御装置VB1とは分離して第一油圧制御装置VB1の上端部83よりも下方に配置され、内燃機関分離クラッチC1に供給する油圧を制御する係合装置油圧制御弁93を設けている。第二油圧制御装置VB2の上端部(ここでは上面)が、第二油圧制御装置VB2の搭載面であり、第二ケースCS2の下端部に接している。また、第一油圧制御装置VB1の上端部83(ここでは上面)が、第一油圧制御装置VB1の搭載面であり、第一ケースCS1の下端部に接している。そして、本実施形態では、第二油圧制御装置VB2の搭載面は、第一油圧制御装置VB1の搭載面よりも下方に配置されている。
【0092】
本実施形態では、第二油圧制御装置VB2は、図2に示したように、係合装置油圧制御弁93として、内燃機関分離クラッチC1の油圧シリンダ97に供給する油圧を制御するシリンダ油圧制御弁94と、内燃機関分離クラッチC1の摩擦部材100等が収容された第一油室96に供給する油圧を制御する循環油圧制御弁95と、を設けている。第二油圧制御装置VB2は、蟻の巣のように張り巡らされた溝(油路)を備えたバルブボディと、バルブボディ内に取り付けられたスプール、スプリング、及びソレノイド等からなる各油圧制御弁と、オリフィス等で構成されている。第二油圧制御装置VB2は、油貯留部OT1の外部に油密状に形成された油密室OT2に収容されている。
本実施形態では、図3に示すように、回転電機MGを収容した第二ケースCS2の下部(第二周壁22aの下面)に、第二油圧制御装置VB2が取り付けられている。この第二油圧制御装置VB2の下側及び周囲を覆うように、ボルト等の締結部材により第二ケースCS2の下部(第二周壁22aの下面)に第二オイルパン52が取り付けられている。すなわち、油密室OT2は、第二ケースCS2(第二周壁22a)と第二オイルパン52とに囲まれて構成されており、第二油圧制御装置VB2は、油密室OT2に収容されている。また、第二オイルパン52の上面と第二ケースCS2(第二周壁22a)の下面との接合面には、シール部材55が介装されている。第二オイルパン52は、回転電機MGの下方に設けられている。すなわち、第二オイルパン52は、回転電機MGに対して径方向外側であって、径方向に見て回転電機MGと重複する部分を有する位置に配置されている。
【0093】
5.その他の実施形態
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0094】
(1)上記の実施形態では、第一排出油路PE1、第二排出油路PE2、第一供給油路PI1、第二供給油路PI2、及び第三供給油路PI3が、第一ケースCS1又は第二ケースCS2の壁内に備えられる場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、第一排出油路PE1、第二排出油路PE2、第一供給油路PI1、第二供給油路PI2、及び第三供給油路PI3の全部又は一部が、第一ケースCS1又は第二ケースCS2の内側又は外側に油密状に設けられるように構成されてもよく、例えば、各油路の全部又は一部が、管状部材などにより形成されてもよい。
【0095】
(2)上記の実施形態では、油圧ポンプOPが、機械式ポンプにより構成される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、油圧ポンプOPは、機械式ポンプ及び電動式ポンプの一方又は双方から構成されてもよい。
【0096】
(3)上記の実施形態では、駆動装置1に、トルクコンバータTCが備えられ、第一油圧制御装置VB1にコンバータ油圧制御弁91が設けられている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、駆動装置1に、トルクコンバータTCが備えられず、トルクコンバータTCを介さずに回転電機MGと入力軸Iとが連結されている構成としてもよく、これに伴い、第一油圧制御装置VB1にコンバータ油圧制御弁91が設けられていない構成としてもよい。
また、駆動装置1に、トルクコンバータTCの代わりに、摩擦係合装置などの第二係合装置が備えられるようにしてもよく、この第二係合装置に供給する油圧を制御する油圧制御弁は、第一油圧制御装置VB1又は第二油圧制御装置VB2に設けられるようにしてもよい。
【0097】
(4)上記の実施形態においては、変速装置TMが有段の自動変速装置である場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、変速装置TMが、連続的に変速比を変更可能な無段の自動変速装置である場合など、有段の自動変速装置以外の変速装置である場合も本発明の好適な実施形態の一つである。この場合においても、変速装置油圧制御弁90は、変速装置TMに備えられた油圧サーボ機構などに油圧を供給する。
【0098】
(5)上記の実施形態では、駆動装置1は、駆動装置1のケースとして、第一ケースCS1と第二ケースCS2とを備える場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、駆動装置1は、第一ケースCS1と第二ケースCS2とが一体化したケースを備えるように構成してもよく、3つ以上に分割されたケースを備えるようにしてもよい。
いずれの場合も、第一油圧制御装置VB1は、変速装置TMの下方であって、駆動装置1のケースの下部に取り付けられ、第二油圧制御装置VB2は、回転電機MG及び内燃機関分離クラッチC1の一方又は双方の下方であって、駆動装置1のケースの下部に取り付けられるように構成される。また、第一排出油路PE1、第二排出油路PE2、第一供給油路PI1、第二供給油路PI2、及び第三供給油路PI3は、いずれのケース内(壁面内)に設けられるように構成してもよい。また、油貯留部OT1は、いずれのケースと、そのケースの下部に取り付けられた第一オイルパン51とに囲まれて構成されてもよく、油密室OT2は、いずれのケースと、そのケースの下部に取り付けられた第二オイルパン52とに囲まれて構成されるようにしてもよい。
【0099】
(6)上記の実施形態では、第一油圧制御装置VB1は、第一ケースCS1の下部に取り付けられ、第二油圧制御装置VB2は、第二ケースCS2の下部に取り付けられている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、第一油圧制御装置VB1は、第一ケースCS1の下部以外の箇所に取り付けられ、第二油圧制御装置VB2は、第二ケースCS2の下部以外の箇所に取り付けられるように構成してもよく、例えば、第一ケースCS1又は第二ケースCS2の側方に取り付けられるようにしてもよい。
【0100】
(7)上記の実施形態では、油密室OT2が、第二ケースCS2と第二ケースCS2の下部に取り付けられた第二オイルパン52とに囲まれて構成され、油貯留部OT1が、第一ケースCS1と第一ケースCS1の下部に取り付けられた第一オイルパン51とに囲まれて構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、油密室OT2が、第二ケースCS2の内部に設けられた室により構成され、油貯留部OT1が、第一ケースCS1の内部に設けられた室により構成されるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、回転電機に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、前記入力部材の回転を変速して前記出力部材に伝達する変速装置と、前記入力部材を内燃機関に選択的に駆動連結する係合装置と、を備えた車両用駆動装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0102】
MG:回転電機
IE:内燃機関
TM:変速装置
TC:トルクコンバータ
I:入力部材(入力軸)
O:出力部材(出力軸)
EC:内燃機関連結軸
C2:ロックアップクラッチ
C1:エンジン分離クラッチ(係合装置)
VB1:第一油圧制御装置
VB2:第二油圧制御装置
OT1:油貯留部
OT2:油密室
OP:油圧ポンプ
PE1:第一排出油路
PE2:第二排出油路
PI1:第一供給油路
PI2:第二供給油路
PI3:第三供給油路
L1:第一吸入油路
L2:第一吐出油路
CS1:第一ケース
CS2:第二ケース
21a:第一周壁(第一ケース)
21b:中間隔壁(第一ケース)
21c:出力側端部隔壁(第一ケース)
22a:第二周壁(第二ケース)
22b:入力側端部隔壁(第二ケース)
22c:筒状突出部(第二ケース)
1:車両用駆動装置
11:ポンプインペラ(トルクコンバータ)
12:タービンランナ(トルクコンバータ)
14:ステータ(トルクコンバータ)
51:第一オイルパン
52:第二オイルパン
80:油貯留部の油面
81:第二排出油路の油貯留部側の開口部
83:第一油圧制御装置の上端部
90:変速装置油圧制御弁
91:コンバータ油圧制御弁
92:プレッシャーレギュレータバルブ
93:係合装置油圧制御弁
94:シリンダ油圧制御弁(係合装置油圧制御弁)
95:循環油圧制御弁(係合装置油圧制御弁)
96:第一油室
97:油圧シリンダ
98:第一油室の供給口
99:第一油室の排出口
100:エンジン分離クラッチの摩擦材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、前記入力部材の回転を変速して前記出力部材に伝達する変速装置と、前記入力部材を内燃機関に選択的に駆動連結する係合装置と、を備えた車両用駆動装置であって、
前記変速装置に供給する油圧を制御する油圧制御弁が設けられた第一油圧制御装置と、
前記第一油圧制御装置とは分離して前記第一油圧制御装置の上端部よりも下方に配置され、前記係合装置に供給する油圧を制御する油圧制御弁が設けられた第二油圧制御装置と、
前記第一油圧制御装置及び前記第二油圧制御装置に供給する油を貯留する油貯留部と、
前記油貯留部に貯留された油を吸引して油圧を生じさせ、前記第一油圧制御装置及び前記第二油圧制御装置に供給する油圧ポンプと、を備え、
前記第一油圧制御装置は、前記油貯留部に収容され、
前記第二油圧制御装置は、前記油貯留部の外部に油密状に形成された油密室に収容され、
前記係合装置から排出された油を前記油密室へ送るための油密状の第一排出油路と、前記油密室から排出された油を前記油貯留部へ送るための油密状の第二排出油路と、を備える車両用駆動装置。
【請求項2】
前記油密室が、前記油貯留部の油面及び前記第二排出油路の前記油貯留部側の開口部のいずれか上方に位置するものよりも下方に配置されている請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記変速装置を収容する第一ケースと、前記回転電機及び前記係合装置を収容する第二ケースと、を更に備え、
前記第一油圧制御装置は、前記第一ケースの下部に取り付けられ、
前記第二油圧制御装置は、前記第二ケースの下部に取り付けられ、
前記第一排出油路は前記第二ケース内に設けられ、前記第二排出油路は前記第二ケースから前記第一ケースに亘って設けられている請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記変速装置を収容する第一ケースと、前記回転電機及び前記係合装置を収容する第二ケースと、を更に備え、
前記油貯留部は、前記第一ケースと前記第一ケースの下部に取り付けられた第一オイルパンとに囲まれて構成され、
前記油密室は、前記第二ケースと前記第二ケースの下部に取り付けられた第二オイルパンとに囲まれて構成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−171371(P2012−171371A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31994(P2011−31994)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】