説明

車両管理装置

【課題】車両の使用者がコンタクトレンズを装着しているかを確実に識別することを可能とする車両使用管理装置を提供する。
【解決手段】カード読込み書込み部11は、電子運転免許証2から車両運転の条件を示す運転条件情報を取得する。目画像取得部12aは、車両使用希望者の目画像を撮影して目画像データを取得し、顔画像取得部12bは、車両使用希望者の少なくとも目周辺の顔画像を撮影して目周辺の顔画像データを取得する。制御部14は、目画像データから抽出した虹彩情報と、記憶部13に記憶された虹彩情報との対比処理を含む使用者認証処理と、運転条件情報に基づく運転可否判別処理と、目画像データに基づいて車両使用希望者がコンタクトレンズを装着しているかどうかを識別するコンタクトレンズ識別処理を行う。コンタクトレンズ識別処理は、目画像データから円形エッジを抽出し、抽出した円形エッジの数及び大きさに基づいてコンタクトレンズの装着を識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の使用管理を行う車両管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子免許証に記憶された情報や虹彩等の生体情報を用いて車両の使用を管理する技術が各種提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1に記載された認証装置は、電子免許証に記憶された情報と生体情報を入力し、予め登録された免許証情報及び生体情報との比較結果に応じて、車両のドアの施錠及び開錠、車両のエンジンの始動等の車両の動作を制御するものである。なお、虹彩を生体として利用する場合、虹彩画像から得た虹彩コードを認証に利用することができる(例えば、特許文献2参照)。しかし、特許文献1の技術は、免許証に記載された事項を使用者の認証に利用するものである。
【0003】
特許文献3に記載された運転支援システムは、運転免許証に記載された運転条件(例えば、眼鏡等使用、初心者・高齢者マークの貼付)を読み取って記憶しておき、運転者の状態(例えば、眼鏡やコンタクトレンズを使用しているかどうか)、又は車両の状態(例えば、初心者・高齢者マークが貼り付けられているかどうか)に基いて、エンジンの作動をさせない等の処理を行うものである。具体的には、画像認識手段により車両の使用希望者の顔面や車両のボンネット等を撮影し、得られる情報に基づいて運転条件を満たしているかどうかを判断し、エンジンの始動を禁止するものである。しかし、顔面画像情報に基いて運転希望者がコンタクトレンズを装着しているかどうかを判断することは難しく、確実な運転管理ができない。
【0004】
【特許文献1】特開2005−248445号公報
【特許文献2】特表平8−504979号公報
【特許文献3】特開2005−1643号公報(請求項23、段落[0062]、[0063]、[0180]〜[0191]、図27、30)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、車両の使用者がコンタクトレンズを装着しているかを確実に識別することを可能とする車両管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両管理装置は、車両の使用管理を行う車両管理装置であって、前記車両を使用する車両使用者の目画像データを取得する目画像取得部と、前記目画像取得部で取得した目画像データに基づいて、前記車両使用者のコンタクトレンズの装着を識別するコンタクトレンズ識別部とを備え、前記コンタクトレンズ識別部は、前記目画像データから円形エッジを抽出する処理を含み、抽出した前記円形エッジの数に基づいてコンタクトレンズの装着を識別するものである。
【0007】
本発明によれば、目画像データのエッジ抽出処理によって抽出したエッジの形状の分析のみでコンタクトレンズの装着を識別するので、簡単な画像処理でコンタクトレンズを識別することができ、車両の使用者がコンタクトレンズを装着しているかを確実に識別することが可能となる。
【0008】
本発明の車両管理装置は、前記円形エッジが、少なくとも瞳孔の外形エッジ及び虹彩の外形エッジを含むものを含む。本発明によれば、瞳孔の外形エッジと虹彩の外形エッジを識別することにより、他の円形エッジの有無及び大きさに基づき、コンタクトレンズの装着の有無を識別することができる。
【0009】
本発明の車両管理装置は、さらに、前記車両を使用する車両使用者の目周辺の顔画像データを取得する顔画像取得部と、前記顔画像取得部で取得した顔画像データに基づいて、前記車両使用者の眼鏡の装着を識別する眼鏡識別部とを備えるものを含む。本発明によれば、車両使用者の眼鏡の装着も識別することができ、眼鏡等の装着の有無を確実に識別することができるので、運転免許の制限事項に基づく車両の使用管理をさらに確実に行うことが可能となる。
【0010】
本発明の車両管理装置は、さらに、車両使用許可者の虹彩情報を含む認証情報を記憶する認証情報記憶部と、前記目画像データから抽出した虹彩情報と、前記認証情報記憶部に記憶された虹彩情報との対比処理を含む使用者認証処理を行う認証処理部と、電子運転免許証に記憶された、車両運転の条件を示す運転条件情報を含むデータを取得するデータ取得部と、前記車両使用者による当該車両の運転の可否を判断する運転可否判別部とを備え、前記運転可否判別部は、前記データ取得部を介して取得した前記車両使用者の前記運転条件情報が眼鏡等の使用を示している場合、前記コンタクトレンズ識別部及び前記眼鏡識別部の少なくとも一方の識別結果と、前記認証処理部の使用者認証処理結果に基づいて、当該車両の運転の可否を判断するものを含む。本発明によれば、虹彩情報を使用者認証処理とコンタクトレンズ識別処理の一部を共用できるので、車両の使用管理処理の負担を全体として軽減することができる。
【0011】
本発明の車両管理装置は、前記コンタクトレンズ識別部が、前記認証処理部の認証処理に先立ってコンタクトレンズの装着の識別を行うものを含む。
【0012】
本発明の車両管理装置は、コンタクトレンズ識別部が、前記眼鏡識別部が眼鏡の装着を識別できない場合にコンタクトレンズの装着の識別を行うものを含む。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、車両の使用者がコンタクトレンズを装着しているかを確実に識別することを可能とする車両管理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態の車両使用管理装置の概略機能ブロック図である。図1の車両使用管理装置1は、カード読込み書込み部11、目画像取得部12a、顔画像取得部12b、記憶部13、制御部14、出力部15、操作部16、車両側インタフェース17を含んで構成され、電子運転免許証2のデータの読取り書込みが可能となっているとともに、車両状態検出部3、車両制御部4と接続されている。
【0016】
カード読込み書込み部11は、電子運転免許証2との間でデータの読取り書込みを行うものであり、電子運転免許証2に記憶された、車両運転の条件を示す運転条件情報を含むデータを取得するデータ取得部としての機能を有する。カード読込み書込み部11は、車両を使用しようとする車両使用希望者の電子運転免許証との間のデータの読取り書込みが行える位置に配置される。カード読込み書込み部11は、接触方式でも非接触方式でもよく、電子運転免許証2の種類に応じて選択する。例えば、電子運転免許証2が接触型ICで構成される場合は、接触型ICカードリーダーライターを含んで構成され、非接触型ICカードで構成される場合は、非接触型ICカードリーダーライターを含んで構成される。また、カード読込み書込み部11として無線通信を行うものを採用し、通信部の設置位置から運転席の周辺までの通信可能な方式を採用することにより、車両使用希望者が所持したままで通信が可能となるようにしてもよい。
【0017】
目画像取得部12aは、車両を使用しようとする車両使用希望者の目画像を撮影し、目画像データを取得するものであり、運転席に着座した人間の目の撮影が可能な位置に配置されたカメラ(図1では図示せず)と、そのカメラの撮影領域を照明する近赤外照明部材(図1では図示せず)を含んで構成される。カメラの撮影解像度は、撮影した画像データから虹彩が識別できる程度とする。
【0018】
顔画像取得部12bは、車両を使用しようとする車両使用希望者の少なくとも目周辺の顔画像を撮影し、目周辺の顔画像データを取得するものであり、運転席に着座した人間の目の撮影が可能な位置に配置されたカメラ(図1では図示せず)を含んで構成される。必要ならそのカメラの撮影領域を照明する適宜の照明部材(図1では図示せず)が設けられる。カメラの撮影解像度は、撮影した目周辺の顔画像データから眼鏡を装着しているかどうかの識別できる程度とする。なお、目画像取得部12aを構成するカメラと顔画像取得部12bを構成するカメラを兼用してもよい。その場合、目周辺の顔画像データから虹彩が識別できる程度に高解像度の画像が取得できるカメラを用いることにより、1つの画像データから虹彩と眼鏡の識別を行うことができる。また、ズーム機能を備えるカメラを利用し、目画像と目周辺の顔画像を別々に撮影してもよい。
【0019】
図8に、顔画像及び目画像取得の様子を模式的に示す。図8(a)は、2つのカメラを利用する場合であり、撮影範囲21aの画像を撮影する目画像撮影用カメラ21と、撮影範囲22aの画像を撮影する顔画像撮影用カメラ22を備える。近赤外照明装置30は、目画像撮影用カメラ21の動作時に運転者20の目周辺を照明する。図8(b)は、1台のカメラを利用する場合である。顔画像撮影用カメラ23は、ズーム機能を有し、撮影範囲23aの画像を撮影することにより、顔画像を撮影する。また、撮影範囲23bの画像を撮影することにより、目画像を撮影する。目画像撮影時には、図8(a)と同様に、近赤外照明装置30により、運転者20の目周辺を照明する。なお、撮影範囲23aの画像が虹彩を識別できる程度に高解像度の画像である場合には、ズーム機能は、不要である。
【0020】
記憶部13は、その車両の使用が許可される者(車両使用許可者)の認証情報を含む各種情報を記憶するものである。認証情報には、虹彩情報が含まれ、車両使用許可者の虹彩情報が予め記憶される。記憶される虹彩情報は、例えば特許文献2に示される虹彩コードである。虹彩コードは、車両使用許可者を識別するID情報(電子運転免許証のIDを利用してもよい。)に対応付けて記載してもよいし、単にシリアル番号に対応付けて記憶してもよい。
【0021】
制御部14は、画像取得部12、通信部11の制御を含む車両の使用管理処理の制御、及び車両使用管理装置1全体の動作制御を行うもので、所定のプログラムによって動作するプロセッサを含んで構成される。使用管理処理には、目画像取得部12aで取得した車両使用希望者の目画像データから抽出した虹彩情報と、記憶部13に記憶された虹彩情報との対比処理を含む使用者認証処理(認証処理部としての機能)、カード読込み書込み部11を介して取得した車両使用希望者の電子運転免許証2に記憶された運転条件情報等に基づいて、その車両使用希望者による車両の運転の可否を判断する運転可否判別処理(運転可否判別部としての機能)、目画像取得部12aで取得した目画像データに基づいて、車両使用希望者がコンタクトレンズを装着しているかどうかを識別するコンタクトレンズ識別処理(コンタクトレンズ識別部としての機能)、顔画像取得部12bで取得した顔画像データに基づいて、車両使用希望者が眼鏡を装着しているかどうかを識別する眼鏡識別処理(眼鏡識別部としての機能)が含まれる。これらの処理の詳細は、後述する。なお、電子運転免許証2に記憶される車両運転の条件を示す運転条件情報には、「眼鏡等」が含まれ、「眼鏡等」が運転条件となっている場合、眼鏡やコンタクトレンズの装着が車両運転の条件となる。
【0022】
出力部15は、車両使用管理装置1の動作状態、使用管理処理に伴う使用可否の判断結果、車両使用管理装置1の操作時のガイダンス情報の出力等を行うもので、表示装置、スピーカ等である。操作部16は、使用者が車両使用管理装置1の操作を行うためのもので、各種スイッチ、キー等である。
【0023】
車両側インタフェース17は、車両使用管理装置1と、機能的にまとめて示した車両状態検出部3及び車両制御部4との間の情報の授受を行うためのものである。車両状態検出部3は、車両各部の状態を検出するものである。例えば、車両の電源状態、エンジンの状態、ドアの開閉状態、始動スイッチの動作状態、運転席の着座状態等を検出する。車両制御部4は、車両各部の状態を制御するもので、例えば、エンジンの起動停止を制御する。
【0024】
以上説明した車両使用管理装置1は、各機能ブロックを構成する要素を専用に設けてもよいが、他の車載機器を兼用してもよい。たとえば、記憶部13、出力部15、操作部16等は、兼用が可能である。
【0025】
次に図1の車両使用管理装置1の動作を、図2〜図4のフロー図を用いて説明する。図2は基本動作を示す図であり、図3は眼鏡等の識別動作を示す図であり、図4は虹彩認証動作を示す図である。これらの動作は、基本的に制御部14によって制御される。
【0026】
車両使用管理装置1は、車両の使用開始がされる前に電源オンとなり、動作可能となっている。例えば、ドア開等がされると、電源オンとなり、起動条件が成立するのを待っている。起動条件は、例えば、運転席への着座検出(車両状態検出3からの着座信号に基づいて判断する。)である。なお、起動条件としては、着座検出だけでなく更に別の条件(エンジン始動スイッチの押下等)を加えることができる。また、起動条件は、ドア開とし、その後連続で目画像データ及び顔画像データを取得してもよい。目画像を自動的に確実に取得するためには、着座検出を条件とするのが好ましい。また、車両使用管理装置1の電源は、常時オンにしておいてもよい。これにより、起動条件が成立した後の制御開始時間を短くすることができる。
【0027】
ステップS101で起動条件成立と判断すると、ステップS102で、運転席に着座している使用希望者が所持している電子運転免許証2との通信を開始する。そして、電子運転免許証2に記載された事項(免許証情報)を取得する。取得する事項には、少なくとも電子運転免許証2に記憶された運転の条件を示す情報が含まれる。運転の条件を示す情報は、例えば「眼鏡等」であり、「眼鏡等」が記憶されている場合、運転者は、運転時に眼鏡やコンタクトレンズを装着する必要がある。
【0028】
ステップS103では、免許証情報を取得することができたかどうかを判断する。電子運転免許証2との通信ができなった場合、及び通信ができても免許証情報が受信できない場合は、Noを判断し、ステップS111に移り、報知1を出力部15から出力して終了する。報知1は、例えば、免許証情報が取得できない旨の表示出力又は音声出力、及び電子運転免許証の所持の確認を求める表示出力又は音声出力である。
【0029】
免許証情報が取得できた場合は、ステップS104で、目画像データ及び顔画像データの取得を行う。目画像データの取得は、目画像取得部12aを動作させて行い、顔画像データの取得は、顔画像取得部12bを動作させて行う。ここで取得する目画像データは、目の虹彩部分全体を少なくとも含むものであり、顔画像データは、少なくとも眼鏡装着領域を含む目の周辺を含むものである。なお、図8(b)に示すように、目画像取得部12aを構成するカメラと顔画像取得部12bを構成するカメラを兼用する場合は、ズーム機能によって撮影範囲を変更し、眼鏡を含む範囲の画像と虹彩部分のみの画像との2種類の画像を取得する。また、1台のカメラが、高解像度の画像データを取得できる場合は、眼鏡装着領域を含む目の周辺の画像データを取得するだけでもよい。このような顔画像データを取得すると、後述するように、眼鏡装着の識別、コンタクトレンズ装着の識別、及び虹彩情報の取得を同一の画像データを利用して行うことができる。
【0030】
続いて、電子運転免許証2から取得した免許証情報の運転条件に「眼鏡等」が含まれているかどうかを判断する。「眼鏡等」が含まれていない場合は、眼鏡等の装着の有無を判別する必要がないので、ステップS108に移って虹彩認証を行う。「眼鏡等」が含まれている場合は、ステップS106で、眼鏡等使用の識別を行う。
【0031】
眼鏡等使用の識別処理について、図3に基づいて説明する。ステップS201では、ステップS104で取得した目画像データ及び顔画像データに対して輪郭強調処理を施す。輪郭強調処理自体は周知であるので説明を省略する。輪郭強調処理を行うことにより、眼鏡を装着している場合は眼鏡の輪郭が強調される。また、瞳孔を中心に、瞳孔と虹彩の境界、及び虹彩の外形が強調される。
【0032】
ステップS202では、輪郭強調された顔画像中に眼鏡形状があるかどうかを判断し、ある場合は、眼鏡を装着していると判断し、眼鏡等を使用している旨出力する(ステップS208)。輪郭強調された画像中に眼鏡形状がないと判断された場合、ステップS203以降で、輪郭強調された目画像データを利用してコンタクトレンズの装着の有無を判別する(コンタクトレンズ識別処理)。なお、ステップS104で共通の顔画像データを取得した場合は、共通の顔画像データに対して輪郭強調された顔画像データを利用して眼鏡形状の有無、コンタクトレンズの装着の有無を判断する。この場合、眼鏡形状の有無を判断するための輪郭強調処理と、コンタクトレンズの装着の有無を判断するための輪郭強調処理とを別々に行ってもよい。
【0033】
ステップS203では、輪郭強調された目画像から円形の境界(円形エッジ)を抽出する。既述のように、虹彩部分の強調画像では、瞳孔と虹彩の境界、及び虹彩の外形が円形エッジとして抽出されるとともに、コンタクトレンズが撮影されている場合はその輪郭も円形エッジとして抽出される。
【0034】
輪郭強調された目画像は、模式的には図5に示すようなものとなる。図5(a)は、コンタクトレンズを装着していない場合の例であり、2つの円形エッジ51、52を有する。一方、コンタクトレンズを装着している場合、図5(b)、(c)に示すように、コンタクトレンズの外形に対応する円形エッジ53、54を有する。図5(b)は、ハードコンタクトレンズの例であり、円形エッジ53は、虹彩外形を示す円形エッジ51より小さいものとなる。また、図5(c)は、ソフトコンタクトレンズの例であり、円形エッジ53は、虹彩外形を示す円形エッジ51と同じかそれ以上の大きさとなる。
【0035】
ステップS204では、抽出された円形エッジの数が3以上かどうかを判断する。コンタクトレンズを使用していない場合は、円形形状は、瞳孔と虹彩の境界と、虹彩の外形だけであるので、円形エッジの数が3以上でない場合、コンタクトレンズが写っていないと判断できる。したがって、円形エッジの数が3以上でない場合は、眼鏡等を装着していないと判断し、眼鏡等を使用していない旨出力する(ステップS209)。
【0036】
円形エッジの数が3以上である場合、抽出された円形エッジの中にコンタクトレンズの外形に対応する円形エッジが含まれるかどうかを調べ、コンタクトレンズの装着の有無を識別する。ステップS205では、抽出した円形エッジのうち、虹彩外形に対応する円形エッジと瞳孔外形(瞳孔と虹彩の境界)に対応する円形エッジを抽出する。具体的には、中心を同一とする2つの円形エッジ間に虹彩模様がある場合、外側の円形エッジを虹彩外形と、内側の円形エッジを瞳孔外形と判断する。
【0037】
ステップS206では、虹彩外形及び瞳孔外形に対応する円形エッジ以外の円形エッジがコンタクトレンズの外形に対応する円形エッジかどうかを判断するために、それらの円形エッジの大きさを検出する。コンタクトレンズは、虹彩の大きさに対して所定の範囲の大きさに作成するので、円形エッジの大きさを検出することにより、コンタクトレンズに対応するものかどうかを識別できる。一般に、ハードコンタクトレンズは虹彩外形に対して0.5〜1.1倍の大きさに作成し、ソフトコンタクトレンズは虹彩外形に対して1.0〜1.5倍の大きさに作成する。したがって、虹彩外形に対して0.5〜1.5倍の大きさの円形エッジはコンタクトレンズに対応する円形エッジと判断することができる。
【0038】
したがって、ステップS207において、虹彩外形及び瞳孔外形に対応する円形エッジ以外の円形エッジの大きさが、規定範囲内(例えば、虹彩外形に対して0.5〜1.5倍)である場合、コンタクトレンズを装着していると判断し、眼鏡等を使用している旨出力する(ステップS208)。一方、規定範囲内でない場合は、検出された虹彩外形及び瞳孔外形以外の円形エッジがコンタクトレンズに対応するものでないと考えられるので、コンタクトレンズを装着していないと判断し、眼鏡等を使用していない旨出力する(ステップS209)。なお、コンタクトレンズの装着状態が、虹彩外形又は瞳孔外形と一致する状態も考えられるが、このような状態となる期間は少ないので、再度目画像の取得を行うようにすれば問題は生じない。
【0039】
図2に戻って、ステップS106の処理結果を参照し(ステップS107)、眼鏡等を使用していない場合は、ステップS112に移り、報知2を出力部15から出力して終了する。報知2は、例えば、眼鏡等を使用していない旨の表示出力又は音声出力、及び眼鏡等の使用を求める表示出力又は音声出力である。眼鏡等を使用している場合は、ステップS108に移り、ステップS104で取得した目画像データを利用して虹彩認証を行う。
【0040】
目画像データを利用した虹彩認証について、図4に基づいて説明する。ステップS301では、ステップS104で取得した目画像データに対して輪郭強調処理を施す。輪郭強調処理自体は周知であるので説明を省略する。輪郭強調処理を行うことにより、瞳孔を中心に、瞳孔と虹彩の境界、及び虹彩の外形が強調される。なお、この処理は、コンタクトレンズ識別処理を行っている場合、ステップS201で取得した輪郭強調処理画像を利用することにより、省略可能である。
【0041】
ステップS302では、輪郭強調された画像から円形の境界(円形エッジ)を抽出する。既述のように、虹彩部分の強調画像では、瞳孔と虹彩の境界、及び虹彩の外形が円形エッジとして抽出されるとともに、コンタクトレンズが撮影されている場合はその輪郭も円形エッジとして抽出される。この処理も、コンタクトレンズ識別処理を行っている場合、ステップS203で抽出した円形エッジを利用することにより、省略可能である。
【0042】
ステップS303では、抽出した円形エッジのうち、虹彩外形に対応する円形エッジと瞳孔外形(瞳孔と虹彩の境界)に対応する円形エッジを抽出する。具体的には、円形エッジの中に虹彩模様がある場合、その円形エッジを虹彩外形に対応するものと判断し、虹彩外形に対応する円形エッジ中心部にある円形エッジを瞳孔外形に対応する円形エッジと判断する。この処理も、コンタクトレンズ識別処理を行っている場合、ステップS205で抽出した虹彩外形に対応する円形エッジと瞳孔外形に対応する円形エッジを利用することにより、省略可能である。
【0043】
ステップS304では、虹彩関連円形エッジ以外の円形エッジを除去して目画像の虹彩模様に基づいて虹彩コードを抽出する。虹彩コードの抽出は、虹彩外形と瞳孔外形間の領域の虹彩模様を、コード化することにより行う。そして、ステップS305では、ステップS304で抽出した虹彩コードと、記憶部13に記憶された車両使用許可者の虹彩コードとを比較する。ステップS303の虹彩コード抽出処理及びステップS305の虹彩コードの比較処理の詳細は、特許文献2に示されているので詳細な説明は省略する。
【0044】
ステップS306において、虹彩コードが一致していると判断される場合、認証が成功である旨出力する(ステップS307)。一方、虹彩コードが一致していると判断されない場合は、認証が失敗である旨出力する(ステップS308)。
【0045】
図2に戻って、ステップS108の処理結果を参照し(ステップS109)、認証失敗である場合は、ステップS113に移り、報知3を出力部15から出力して終了する。報知3は、虹彩認証が失敗である旨の表示出力又は音声出力である。認証成功である場合は、ステップS110に移り、エンジン始動許可を車両側インタフェース17を介して車両制御部4に出力する。
【0046】
以上の説明では、虹彩認証処理を眼鏡等の識別処理の後に行っているが、先に行ってもよい。また、眼鏡等使用の識別処理において、眼鏡の装着の有無の判断を先に行い、眼鏡の装着していない判断された場合にコンタクトレンズの装着の有無の判断を行うようにしたが、先にコンタクトレンズの装着の有無の判断を行ってもよい。
【0047】
虹彩認証処理を先に行い、コンタクトレンズの装着の有無の判断を先に行う場合の動作を、図6、図7を用いて説明する。
【0048】
図6のステップS301、S302、S303、及びS311は、図2のステップS101、S102、S103、及びS111と同様の処理であるので、説明を省略する。ステップS303で、免許証情報が取得できた場合は、ステップS304で、目画像データの取得を行う。目画像データの取得は、目画像取得部12aを動作させて行う。そして、ステップS304で取得した目画像データを利用して虹彩認証を行う(ステップS305)。虹彩認証処理は、図4に示した手順で行う。
【0049】
続いて、ステップS305の処理結果を参照し(ステップS306)、認証失敗である場合は、ステップS312に移り、報知3を出力部15から出力して終了する。報知3は、虹彩認証が失敗である旨の表示出力又は音声出力である。認証成功である場合は、ステップS307に移り、電子運転免許証2から取得した免許証情報の運転条件に「眼鏡等」が含まれているかどうかを判断する。「眼鏡等」が含まれていない場合は、眼鏡等の装着の有無を判別する必要がないので、ステップS310に移り、エンジン始動許可を車両側インタフェース17を介して車両制御部4に出力する。免許証情報の運転条件に「眼鏡等」が含まれている場合は、ステップS308で、眼鏡等使用の識別を行う。
【0050】
眼鏡等使用の識別処理は、図7に示す手順で行う。ステップS401では、ステップS304で取得した目画像データに対して輪郭強調処理を施す。輪郭強調処理を行うことにより、瞳孔を中心に、瞳孔と虹彩の境界、及び虹彩の外形が強調される。そして、ステップS402で、輪郭強調された目画像から円形の境界(円形エッジ)を抽出する。既述のように、虹彩部分の強調画像では、瞳孔と虹彩の境界、及び虹彩の外形が円形エッジとして抽出される。なお、ステップS401、S402の処理は、虹彩認証処理における輪郭抽出処理(ステップS301)及び円形エッジの抽出処理(ステップS302)の結果を利用することにより、省略可能である。
【0051】
ステップS404では、抽出された円形エッジの数が3以上かどうかを判断する。コンタクトレンズを使用していない場合は、円形形状は、瞳孔と虹彩の境界と、虹彩の外形だけであるので、円形エッジの数が3以上でない場合、コンタクトレンズが写っていないと判断できる。したがって、円形エッジの数が3以上でない場合は、コンタクトレンズを装着していないと判断し、ステップS408に移る。
【0052】
円形エッジの数が3以上である場合、抽出された円形エッジの中にコンタクトレンズの外形に対応する円形エッジが含まれるかどうかを調べ、コンタクトレンズの装着の有無を識別する。ステップS404では、抽出した円形エッジのうち、虹彩外形に対応する円形エッジと瞳孔外形(瞳孔と虹彩の境界)に対応する円形エッジを抽出する。具体的には、中心を同一とする2つの円形エッジ間に虹彩模様がある場合、外側の円形エッジを虹彩外形と、内側の円形エッジを瞳孔外形と判断する。
【0053】
ステップS405では、虹彩外形及び瞳孔外形に対応する円形エッジ以外の円形エッジがコンタクトレンズの外形に対応する円形エッジかどうかを判断するために、それらの円形エッジの大きさを検出する。コンタクトレンズは、虹彩の大きさに対して所定の範囲の大きさに作成するので、円形エッジの大きさを検出することにより、コンタクトレンズに対応するものかどうかを識別できる。一般に、ハードコンタクトレンズは虹彩外形に対して0.5〜1.1倍の大きさに作成し、ソフトコンタクトレンズは虹彩外形に対して1.0〜1.5倍の大きさに作成する。したがって、虹彩外形に対して0.5〜1.5倍の大きさの円形エッジはコンタクトレンズに対応する円形エッジと判断することができる。
【0054】
したがって、ステップS406において、虹彩外形及び瞳孔外形に対応する円形エッジ以外の円形エッジの大きさが、規定範囲内(例えば、虹彩外形に対して0.5〜1.5倍)である場合、コンタクトレンズを装着していると判断し、眼鏡等を使用している旨出力する(ステップS407)。一方、規定範囲内でない場合は、コンタクトレンズを装着していないと判断し、ステップS408に移る。
【0055】
ステップS408では、顔画像データに対して輪郭強調を施す。そして、輪郭強調された顔画像中に眼鏡形状があるかどうかを判断し、ある場合は、眼鏡を装着していると判断し、眼鏡等を使用している旨出力する(ステップS407)。輪郭強調された画像中に眼鏡形状がないと判断された場合、眼鏡等を装着していないと判断し、眼鏡等を使用していない旨出力する(ステップS410)。
【0056】
図6に戻って、ステップS308の処理結果を参照し(ステップS309)、眼鏡等を使用していない場合は、ステップS313に移り、報知2を出力部15から出力して終了する。報知2は、例えば、眼鏡等を使用していない旨の表示出力又は音声出力、及び眼鏡等の使用を求める表示出力又は音声出力である。眼鏡等を使用している場合は、ステップS310に移り、エンジン始動許可を車両側インタフェース17を介して車両制御部4に出力する。
【0057】
以上の説明から明らかなように、虹彩認証処理を先に行い、コンタクトレンズの装着の有無の判断を先に行うようにすると、免許証情報の運転条件に「眼鏡等」が含まれている場合、及び車両使用者がコンタクトレンズを装着している場合、車両使用者の顔画像データの取得及び画像処理を省略することができ、車両の運転の可否を判断を迅速に行うことができる。
【0058】
また、虹彩認証処理を先に行い、眼鏡の装着の有無の判断を先に行うようにしてもよいし、虹彩認証処理を後に行い、コンタクトレンズの装着の有無の判断を先に行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、目画像データから円形エッジを抽出し、抽出した円形エッジの数及び大きさに基づいてコンタクトレンズの装着を識別するので、車両の使用者がコンタクトレンズを装着しているかを確実に識別することを可能とする車両使用管理装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態の車両使用管理装置の概略機能ブロック図
【図2】本発明の実施の形態の車両使用管理装置の基本動作を示すフロー図
【図3】本発明の実施の形態の車両使用管理装置における眼鏡等の識別動作を示すフロー図
【図4】本発明の実施の形態の車両使用管理装置における虹彩認証動作を示すフロー図
【図5】本発明の実施の形態の車両使用管理装置における輪郭強調された目画像の一例を模式的に示す図
【図6】本発明の実施の形態の車両使用管理装置の基本動作の他の例を示すフロー図
【図7】本発明の実施の形態の車両使用管理装置における眼鏡等の識別動作の他の例を示すフロー図
【図8】本発明の実施の形態の車両管理装置における顔画像及び目画像取得の様子を模式的に示す図
【符号の説明】
【0061】
1・・・車両使用管理装置
2・・・電子運転免許証
3・・・車両状態検出部
4・・・車両制御部
11・・・カード読込み書込み部
12a・・・目画像取得部
12b・・・顔画像取得部
13・・・記憶部
14・・・制御部
15・・・出力部
16・・・操作部
17・・・車両側インタフェース
20・・・運転者
21・・・目画像撮影用カメラ
22、23・・・顔画像撮影用カメラ
21a、22a、23a、23b・・・撮影範囲
30・・・近赤外照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の使用管理を行う車両管理装置であって、
前記車両を使用する車両使用者の目画像データを取得する目画像取得部と、
前記目画像取得部で取得した目画像データに基づいて、前記車両使用者のコンタクトレンズの装着を識別するコンタクトレンズ識別部とを備え、
前記コンタクトレンズ識別部は、前記目画像データから円形エッジを抽出する処理を含み、抽出した前記円形エッジの数に基づいてコンタクトレンズの装着を識別する車両管理装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両管理装置であって、
前記円形エッジは、少なくとも瞳孔の外形エッジ及び虹彩の外形エッジを含む車両管理装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両管理装置であって、
前記車両を使用する車両使用者の目周辺の顔画像データを取得する顔画像取得部と、
前記顔画像取得部で取得した顔画像データに基づいて、前記車両使用者の眼鏡の装着を識別する眼鏡識別部とを備える車両管理装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両管理装置であって、
車両使用許可者の虹彩情報を含む認証情報を記憶する認証情報記憶部と、
前記目画像データから抽出した虹彩情報と、前記認証情報記憶部に記憶された虹彩情報との対比処理を含む使用者認証処理を行う認証処理部と、
電子運転免許証に記憶された、車両運転の条件を示す運転条件情報を含むデータを取得するデータ取得部と、
前記車両使用者による当該車両の運転の可否を判断する運転可否判別部とを備え、
前記運転可否判別部は、前記データ取得部を介して取得した前記車両使用者の前記運転条件情報が眼鏡等の使用を示している場合、前記コンタクトレンズ識別部及び前記眼鏡識別部の少なくとも一方の識別結果と、前記認証処理部の使用者認証処理結果に基づいて、当該車両の運転の可否を判断する車両管理装置。
【請求項5】
請求項4記載の車両管理装置であって、
コンタクトレンズ識別部は、前記認証処理部の認証処理に先立ってコンタクトレンズの装着の識別を行う車両管理装置。
【請求項6】
請求項5記載の車両管理装置であって、
コンタクトレンズ識別部は、前記眼鏡識別部が眼鏡の装着を識別できない場合にコンタクトレンズの装着の識別を行う車両管理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−246031(P2007−246031A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−75244(P2006−75244)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】