車両走行制御装置及びその方法
【課題】アンダステア抑制制御中の車両のタックインの発生に起因する制動力制御が運転者に違和感を与えてしまうのを防止する。
【解決手段】車両走行制御装置は、アンダステア抑制制御中のアクセルペダルの操作状態を基に、車両のタックインの発生を推定するタックイン推定部16と、タックイン推定部16がタックインが発生すると推定したとき、アンダステア抑制制御による前後輪の制動力を減少させて前後輪の制動力の付与を解除する減少勾配算出部17及びブレーキ液圧算出部18と、を有し、減少勾配算出部17及びブレーキ液圧算出部18は、前後輪の制動力配分を後輪寄りに設定して前後輪の制動力を減少させる。
【解決手段】車両走行制御装置は、アンダステア抑制制御中のアクセルペダルの操作状態を基に、車両のタックインの発生を推定するタックイン推定部16と、タックイン推定部16がタックインが発生すると推定したとき、アンダステア抑制制御による前後輪の制動力を減少させて前後輪の制動力の付与を解除する減少勾配算出部17及びブレーキ液圧算出部18と、を有し、減少勾配算出部17及びブレーキ液圧算出部18は、前後輪の制動力配分を後輪寄りに設定して前後輪の制動力を減少させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のアンダステア傾向を抑制するアンダステア抑制制御の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両旋回時に旋回内輪の制動力制御により車両のアンダステア傾向を抑制するアンダステア抑制制御と、車両旋回時に旋回外輪の制動力制御により車両のオーバステア傾向を抑制するオーバステア抑制制御とを備える車両の挙動制御装置がある(例えば特許文献1参照)。
このような装置では、アンダステア抑制制御中にアクセルペダルが戻されて(ONからOFFになると)、車両にタックインが発生すると、オーバステア抑制制御が介入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−88583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、オーバステア抑制制御が操舵輪となる前輪の制動力制御をすると、操舵特性に変化を及ぼし、その車両挙動が運転者に違和感を与えてしまう恐れがある。
本発明の目的は、アンダステア抑制制御中の車両のタックインの発生に起因する制動力制御が運転者に違和感を与えてしまうのを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は、アンダステア抑制制御中のアクセルペダルの操作状態を基に車両のタックインの発生を推定し、タックインが発生すると推定したとき、アンダステア抑制制御による前後輪の制動力を減少させて前後輪の制動力の付与を解除する。そして、その解除では、前後輪の制動力配分を後輪寄りに設定して前後輪の制動力を減少させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、タックインが発生すると推定したとき、アンダステア抑制制御による前後輪への制動力の付与の解除の際の前後輪の制動力配分を後輪寄りに設定することで、後輪側の制動力を多く働かせることができる。
これにより、前輪側への荷重移動を抑制してタックインによる旋回内側へのヨーレイト変化を抑制でき、タックインの発生に起因する制動力制御の作動を抑制できる。
【0007】
よって、アンダステア抑制制御中の車両のタックインの発生に起因する制動力制御が運転者に違和感を与えてしまうのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態の車両走行制御装置の構成を示す図である。
【図2】車両制御コントローラの構成例を示すブロック図である。
【図3】信号処理部の構成例を示す図である。
【図4】目標ヨーレイト算出部の構成例を示す図である。
【図5】タックイン推定部の処理例を示すフローチャートである。
【図6】推定横G値Ygestの絶対値|Ygest|、アクセル開度acc、及びタックイン推定フラグFlag_OSの関係を時間軸上で示す特性図である。
【図7】減少勾配算出部の処理例を示すフローチャートである。
【図8】旋回内側の前輪の制動力が旋回内側の後輪の制動力よりも大きい前後配分率の場合のブレーキ圧減少勾配の設定を説明する図である。
【図9】旋回内側の前輪の制動力と旋回内側の後輪の制動力とが等しい前後配分率の場合のブレーキ圧減少勾配の設定を説明する図である。
【図10】旋回内側の前輪の制動力が旋回内側の後輪の制動力よりも小さい前後配分率の場合のブレーキ圧減少勾配の設定を説明する図である。
【図11】前輪の制動力の解除が先に完了した場合の後輪の制動力の減少勾配の設定を説明する図である。
【図12】推定横Gの絶対値と前後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_F、BRKDN_Rとの関係を示す特性図である。
【図13】ブレーキ液圧減少時(解除時)のブレーキ液圧算出部の処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(構成)
本実施形態は、車両走行制御装置である。
図1は、車両に搭載された車両走行制御装置の構成を示す。
図1に示すように、車両走行制御装置は、車輪速センサ1FL、1FR、1RL、1RR、操舵角センサ2、VDC(Vehicle Dynamics Control)コントローラ3、エンジンコントローラ4、及び車両制御コントローラ10を有する。
【0010】
車輪速センサ1FL〜1RRは、各車輪100FL、100FR、100RL、100RRの速度を検出する。車輪速センサ1FL〜1RRは、その検出信号を車両制御コントローラ10に出力する。
操舵角センサ2は、ステアリングホイール101の操舵角を検出する。操舵角センサ2は、その検出信号を車両制御コントローラ10に出力する。
【0011】
エンジンコントローラ4は、CAN等の通信手段を利用して、パワートレイン関係の情報(ドライバ要求エンジントルク、アクセル開度及びギア位置等)を車両制御コントローラ10に送信する。
車両制御コントローラ10は、車両挙動を制御する。すなわち、車両制御コントローラ10は、CAN(Controller Area Network)等の通信手段を利用して、各車輪100FL〜100RRの車輪速センサ1FL〜1RR及び操舵角センサ2の検出信号、並びにドライバ要求エンジントルク、アクセル開度及びギア位置を受信する。そして、車両制御コントローラ10は、これらの値を基に算出した各車輪100FL〜100RRのブレーキ圧指令値をCAN等の通信手段を利用してVDCコントローラ3に送信する。
【0012】
VDCコントローラ3は、各車輪100FL〜100RRのブレーキ圧を制御する。すなわち、VDCコントローラ3は、車両制御コントローラ10から各車輪100FL〜100RRのブレーキ圧指令値を受信し、各車輪100FL〜100RRのブレーキ圧を制御する。
図2は、車両制御コントローラ10の構成例を示す。
【0013】
図2に示すように、車両制御コントローラ10は、信号処理部11、操舵角比例目標ヨーレイト算出部12、推定横G算出部13、推定前後G算出部14、目標ヨーモーメント算出部15、タックイン推定部16、減少勾配算出部17、及びブレーキ液圧算出部18を有する。
【0014】
信号処理部11は、CAN等の通信手段を介して車輪速センサ1の検出信号を受信する。信号処理部11は、受信した車輪速センサ1の検出信号を基に、自車両の速度(車速)を算出する。信号処理部11は、算出した車速を操舵角比例目標ヨーレイト算出部12及び推定横G算出部13に出力する。
【0015】
操舵角比例目標ヨーレイト算出部12は、CAN等の通信手段を介して操舵角センサ2の検出信号も受信している。操舵角比例目標ヨーレイト算出部12は、受信した操舵角センサ2の検出信号及び信号処理部11からの車速を基に、操舵角比例目標ヨーレイトを算出する。操舵角比例目標ヨーレイト算出部12は、算出した操舵角比例目標ヨーレイトを推定横G算出部13及び推定前後G算出部14に出力する。
【0016】
推定横G算出部13は、入力された操舵角比例目標ヨーレイト及び車速を基に、横Gの推定値を算出する。推定横G算出部13は、算出した推定横Gを目標ヨーモーメント算出部15及びタックイン推定部16に出力する。
【0017】
推定前後G算出部14は、CAN等の通信手段を介してエンジンコントローラ4からドライバ要求エンジントルク及びギア位置信号を受信する。推定前後G算出部14は、受信したドライバ要求エンジントルク及びギア位置信号を基に、前後Gの推定値を算出する。推定前後G算出部14は、算出した推定前後Gを目標ヨーモーメント算出部15に出力する。
【0018】
目標ヨーモーメント算出部15は、入力された推定横G及び推定前後Gを基に、目標ヨーモーメントを算出する。目標ヨーモーメント算出部15は、算出した目標ヨーモーメントをブレーキ液圧算出部18に出力する。
【0019】
タックイン推定部16は、CAN等の通信手段を介してアクセル開度も受信している。タックイン推定部16は、受信したアクセル開度及び推定横G算出部13からの推定横Gを基に、車両のタックインの発生を推定し、タックイン推定フラグを算出する。タックイン推定部16は、算出したタックイン推定フラグを減少勾配算出部17に出力する。
【0020】
減少勾配算出部17は、入力されたタックイン推定フラグを基に、アンダステア抑制制御を解除(その制動力の付与を解除)する際の前輪及び後輪のブレーキ圧減少勾配を算出する。減少勾配算出部17は、算出した前輪及び後輪の各ブレーキ圧減少勾配をブレーキ液圧算出部18に出力する。
【0021】
ブレーキ液圧算出部18は、入力された目標ヨーモーメント、前後配分率、並びに前輪及び後輪のブレーキ圧減少勾配を基に、各輪のブレーキ指令圧を算出する。具体的には、ブレーキ液圧算出部18は、自車両に目標ヨーモーメントのヨーモーメントを発生させるために、各車輪100FL〜100RRでブレーキ圧差(制動力差)を発生させるブレーキ指令圧を算出する。ブレーキ液圧算出部18は、算出したブレーキ指令圧をCAN等の通信手段を介してVDCコントローラ3に送信する。
【0022】
以上のような車両制御コントローラ10の各構成部をさらに詳述する。
図3は、信号処理部11の構成例を示す。
図3に示すように、信号処理部11は、加算部21、乗算部22、及びローパスフィルタ(LPF)23を有する。
【0023】
加算部21は、従動輪100RL、100RRの車輪速センサ1RL、1RRの検出信号を加算し、その加算値を乗算部22に出力する。乗算部22は、入力された加算値に0.5を乗じ、その乗算値をローパスフィルタ23に出力する。ローパスフィルタ23は、入力された乗算値に対して、ノイズ除去のために予め設定されたカットオフ周波数でノイズ除去を行う。
【0024】
このような構成により、信号処理部11は、従動輪100RL、100RRの二輪平均値を算出し、算出した二輪平均値からノイズ除去して車速を算出する。そして、信号処理部11は、算出した車速を操舵角比例目標ヨーレイト算出部12及び推定横G算出部13に出力する。
【0025】
操舵角比例目標ヨーレイト算出部12は、下記(1)式を基に、操舵角比例目標ヨーレイトγrefを算出する。
γref=v/(1+A・v2)・δ/(N・L)
A=m/(2・l2)・((lf・Kf−lr・Kr)/(Kf・Kr))
Kf=Cf/2
Kr=Cr/2
・・・(1)
【0026】
ここで、δは、入力される操作角(操舵角センサ2の検出値)である。vは、入力される車速(信号処理部11が算出した車速)である。また、N、L、Cf、Cr、lf、lr、mは、それぞれ車両諸元である。ここで、Nはステアリングギア比である。Lはホイールベースである(L=lf+lr)。Cfはフロントコーナリングフォースである。Crはリアコーナリングフォースである。lfは、重心点からのフロント接地点までの長さである。lrは、重心点からのリア接地点までの長さである。mは重量である。
【0027】
このように、操舵角比例目標ヨーレイト算出部12は、操舵角センサ2が検出した操舵角δ及び信号処理部11が算出した車速vを入力変数として操舵角比例目標ヨーレイトγrefを算出する。そして、操舵角比例目標ヨーレイト算出部12は、算出した操舵角比例目標ヨーレイトγrefを推定横G算出部13に出力する。
【0028】
推定横G算出部13は、入力された操舵角比例ヨーレイトγref及び車速vを基に、下記(2)式により推定横G値Ygestを算出する。
Ygest=γref・v ・・・(2)
【0029】
推定横G算出部13は、算出した推定横G値Ygestを目標ヨーモーメント算出部15及びタックイン推定部16に出力する。
なお、推定横G算出部13は、横Gとして推定値を用いるのではなく、実横Gを用いることもできる。
【0030】
推定前後G算出部14は、受信したドライバ要求エンジントルクETQDR(>0)及びギア位置信号GEARを基に、下記(3)式により推定前後G値Xgestを算出する。
Xgest=ETQDR・GEAR/TIRE_R/W ・・・(3)
【0031】
ここで、TIRE_Rはタイヤ半径である。また、Wは車両重量である。
推定前後G算出部14は、算出した推定前後G値Xgestを目標ヨーモーメント算出部15に出力する。
【0032】
図4は、目標ヨーレイト算出部15の構成例を示す。
図4に示すように、目標ヨーレイト算出部15は、絶対値演算部31、横Gゲイン演算部32、符号演算部(符号関数部)33、乗算部34,35、及び前後G成分演算部36を有する。
【0033】
絶対値演算部31は、入力された推定横Gの絶対値を算出し、その絶対値を横Gゲイン演算部32に出力する。横Gゲイン演算部32は、その絶対値を基に、横Gゲインを算出し、その横Gゲインを乗算部34に出力する。具体的には、横Gゲイン演算部32は、その絶対値が大きいほど大きくなる横Gゲインを算出する。また、符号演算部(符号関数部)33は、入力された推定横Gを基に得た符号を乗算部34に出力する。乗算部34は、入力された横Gゲインと符号とを乗算して横G成分を算出し、その横G成分を後段の乗算部35に出力する。一方、前後G成分演算部36は、入力された推定前後Gを基に、前後G成分を算出し、その前後G成分を乗算部35に出力する。具体的には、前後G成分演算部36は、推定前後Gが大きいほど大きくなる前後G成分を算出する。乗算部35は、入力された横G成分と前後G成分とを乗算して目標ヨーモーメントを算出する。
【0034】
目標ヨーレイト算出部15は、以上のように、推定横Gを基に横Gゲインを算出し、算出した横Gゲインを基に、目標ヨーモーメントを算出するための横G成分を算出している。ここで、推定横Gの絶対値が大きいほど、横Gゲインが大きくなり、目標ヨーモーメントも大きくなる傾向となる。また、目標ヨーモーメントは、常に回頭側に付加されるように、推定横Gの符号関数により方向が決定される。このようにして、US(アンダステア)を抑制するための目標ヨーモーメントを大きくしている。
【0035】
また、目標ヨーレイト算出部15は、推定前後Gを基に、目標ヨーモーメントを算出するための前後G成分を算出している。ここで、ドライバ要求エンジントルクが大きいほど、前後G成分が大きくなるため、目標ヨーモーメントも大きくなる傾向となる。そして、運転者がアクセルペダルを踏み込み、ドライバ要求エンジントルクがある程度の値になっているときに、目標ヨーモーメントを発生させるようにしている。また、アクセルペダルのOFF時には、ドライバ要求エンジントルクが零であり、目標ヨーモーメントを零にしている。
【0036】
目標ヨーモーメント算出部15は、以上のようにして算出した目標ヨーモーメントをブレーキ液圧算出部18に出力する。
【0037】
図5は、タックイン推定部16の処理例を示すフローチャートである。
図5に示すように、先ずステップS1において、タックイン推定部16は、推定横G値Ygestの絶対値|Ygest|が予め設定した第1横Gしきい値Yg_th1よりも大きいか否かを判定する。タックイン推定部16は、絶対値|Ygest|が第1横Gしきい値Yg_th1よりも大きいと判定すると(|Ygest|>Yg_th1)、ステップS2に進む。また、タックイン推定部16は、絶対値|Ygest|が第1横Gしきい値Yg_th1以下と判定すると(|Ygest|≦Yg_th1)、ステップS4に進む。
【0038】
ステップS2では、タックイン推定部16は、アクセル開度accが予め設定したアクセル開度しきい値acc_thよりも大きいか否かを判定する。タックイン推定部16は、アクセル開度(アクセル開度の今回値)accがアクセル開度しきい値acc_thよりも大きいと判定すると(acc>acc_th)、ステップS3に進む。また、タックイン推定部16は、アクセル開度accがアクセル開度しきい値acc_th以下と判定すると(acc≦acc_th)、ステップS6に進む。
【0039】
ステップS3では、タックイン推定部16は、アクセル開度についての前回値acc_z1と今回値accとの差分値(acc_z1−acc)が予め設定したしきい値ACCDNよりも大きいか否かを判定する。タックイン推定部16は、差分値(acc_z1−acc)がしきい値ACCDNよりも大きいと判定すると(acc_z1−acc>ACCDN)、ステップS5に進む。タックイン推定部16は、差分値(acc_z1−acc)がしきい値ACCDN以下と判定すると(acc_z1−acc≦ACCDN)、ステップS6に進む。
【0040】
ステップS4では、タックイン推定部16は、推定横G値Ygestの絶対値|Ygest|が予め設定した第2横Gしきい値Yg_th2よりも小さいか否かを判定する。ここで、第2横Gしきい値Yg_th2は、第1横Gしきい値Yg_th1未満の値である(Yg_th2<Yg_th1)。タックイン推定部16は、絶対値|Ygest|が第2横Gしきい値Yg_th2よりも小さいと判定すると(|Ygest|<Yg_th2)、ステップS7に進む。また、タックイン推定部16は、絶対値|Ygest|が第2横Gしきい値Yg_th2以上と判定すると(|Ygest|≧Yg_th2)、ステップS8に進む。
【0041】
ステップS5では、タックイン推定部16は、タックイン推定フラグFlag_OSをONに設定する(Flag_OS=ON)。そして、タックイン推定部16は、ステップS9に進む。
ステップS6では、タックイン推定部16は、タックイン推定フラグFlag_OSを前回値に保持する(Flag_OS=前回値)。そして、タックイン推定部16は、ステップS9に進む。
【0042】
ステップS7では、タックイン推定部16は、タックイン推定フラグFlag_OSをOFFに設定する(Flag_OS=OFF)。そして、タックイン推定部16は、ステップS9に進む。
ステップS8では、タックイン推定部16は、タックイン推定フラグFlag_OSを前回値に保持する(Flag_OS=前回値)。そして、タックイン推定部16は、ステップS9に進む。
【0043】
ステップS9では、タックイン推定部16は、アクセル開度の前回値acc_z1にアクセル開度の今回値accを設定する。そして、タックイン推定部16は、該図5に示す処理を終了する。
【0044】
タックイン推定部16は、以上のような処理により、推定横G値Ygestの絶対値|Ygest|が第1横Gしきい値Yg_h1よりも大きくなったとき、アクセル開度を基にタックイン推定フラグFlag_OSを設定する。具体的には、タックイン推定部16は、アクセル開度の今回値accが、アクセル開度しきい値acc_thよりも大きく且つアクセル開度の前回値acc_z1に対して急激に変化(acc_z1−acc>ACCDN)したとき、タックイン推定フラグFlag_OSをONに設定する。そして、タックイン推定部16は、タックイン推定フラグFlag_OSがONになった以降では、推定横G値Ygestの絶対値|Ygest|が第2横Gしきい値Yg_h2よりも小さくなるまでONに維持し、その後OFFにする。タックイン推定部16は、このようにして車両のタックインの発生を推定している。
【0045】
図6は、推定横G値Ygestの絶対値|Ygest|、アクセル開度acc、及びタックイン推定フラグFlag_OSの関係を時間軸上で示す。
図6に示すように、推定横G値Ygestの絶対値|Ygest|が第1横Gしきい値Yg_h1よりも大きく、且つアクセル開度の今回値accが、アクセル開度しきい値acc_thよりも大きく且つアクセル開度の前回値acc_z1に対して急激に変化(acc_z1−acc>ACCDN)すると、タックイン推定フラグFlag_OSがONになる。そして、推定横G値Ygestの絶対値|Ygest|が第2横Gしきい値Yg_h2よりも小さくなるまでタックイン推定フラグFlag_OSがONに維持される。
【0046】
タックイン推定部16は、以上のようにして設定(算出)したタックイン推定フラグFlag_OSを減少勾配算出部17に出力する。
【0047】
図7は、減少勾配算出部17の処理例を示すフローチャートである。
図7に示すように、先ずステップS21において、減少勾配算出部17は、タックイン判断フラグFlag_OSがONか否かを判定する。減少勾配算出部17は、タックイン判断フラグFlag_OSがONであると判定すると、ステップS22に進む。また、減少勾配算出部17は、タックイン判断フラグFlag_OSがOFFであると判定すると、ステップS23に進む。
【0048】
ステップS22では、減少勾配算出部17は、前輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_FにBRKDN1_Fを設定し、後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_RにBRKDN1_Rを設定する(BRKDN_F=BRKDN1_F、BRKDN_R=BRKDN1_R)。ここで、BRKDN1_F、BRKDN1_Rは、緩やかにブレーキ圧が減少するように設定されたブレーキ圧減少勾配(減少速度が小さいブレーキ圧減少勾配)である。そして、減少勾配算出部17は、該図7に示す処理を終了する。
【0049】
ステップS23では、減少勾配算出部17は、前輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_FにBRKDN0_Fを設定し、後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_RにBRKDN0_Rを設定する(BRKDN_F=BRKDN0_F、BRKDN_R=BRKDN0_R)。そして、減少勾配算出部17は、該図7に示す処理を終了する。
また、減少勾配算出部17は、前後配分率(車両に目標ヨーモーメントに応じたヨーモーメントを発生させるときの前後輪の制動力配分率)に応じたブレーキ圧減少勾配の設定も行っている。
【0050】
図8乃至図10は、その設定を説明する図である。
図8は、前後配分率が、旋回内側の前輪の制動力が旋回内側の後輪の制動力よりも大きい場合である(フロント過多配分の場合である)。この場合、図8に示すように、減少勾配算出部17は、タックイン判断フラグFlag_OS=ONのときには、タックイン判断フラグFlag_OS=OFFのときに設定するBRKDN0_F(破線の減少勾配)よりも大きいBRKDN1_F(一点鎖線の減少勾配)を前輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Fに設定する。また、減少勾配算出部17は、タックイン判断フラグFlag_OS=OFFのときに設定するBRKDN0_R(破線の減少勾配)よりも小さいBRKDN1_R(一点鎖線の減少勾配)を後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Rに設定する。
【0051】
また、図9は、前後配分率が、旋回内側の前輪の制動力と旋回内側の後輪の制動力とが等しい場合である(50:50配分の場合である)。この場合、図9に示すように、減少勾配算出部17は、タックイン判断フラグFlag_OS=ONのときには、タックイン判断フラグFlag_OS=OFFのときに設定するBRKDN0_F(破線の減少勾配)と同じBRKDN1_F(一点鎖線の減少勾配)を前輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Fに設定する。また、減少勾配算出部17は、タックイン判断フラグFlag_OS=OFFのときに設定するBRKDN0_R(破線の減少勾配)よりも小さいBRKDN1_R(一点鎖線の減少勾配)を後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Rに設定する。
【0052】
また、図10は、前後配分率が、旋回内側の前輪の制動力が旋回内側の後輪の制動力よりも小さい場合である(リア過多配分の場合である)。この場合、図10に示すように、減少勾配算出部17は、タックイン判断フラグFlag_OS=ONのときには、タックイン判断フラグFlag_OS=OFFのときに設定するBRKDN0_F(破線の減少勾配)と同じBRKDN1_F(一点鎖線の減少勾配)を前輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Fに設定する。また、減少勾配算出部17は、タックイン判断フラグFlag_OS=OFFのときに設定するBRKDN0_R(破線の減少勾配)よりも小さいBRKDN1_R(一点鎖線の減少勾配)を後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Rに設定する。
【0053】
ここで、タックイン判断フラグFlag_OS=OFFのときにBRKDN1_F、BRKDN1_Rを設定しているが、その設定をするタックイン判断フラグFlag_OS=OFFのときとは、通常の解除時である。具体的には、車両のアンダステア傾向が無くなるときであり、例えば、アクセルペダルが戻されて目標ヨーモーメントが零になったときなどである。このように通常の解除時に設定されるBRKDN1_F、BRKDN1_Rは、図8乃至図10に示すように、前後配分率にかかわらず、解除の完了時点が一致するような値として設定されている。
【0054】
また、減少勾配算出部17は、前輪の制動力の解除が先に完了した場合には後輪の制動力の減少勾配の設定を変更している。
【0055】
図11は、その設定の変更を説明する図である。図11に示すように、減少勾配算出部17は、前輪の制動力がその解除の完了となる予め設定した所定のブレーキ圧(例えば零)になったとき、後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_R(BRKDN1_R)を、前輪の制動力の解除が完了する前の後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_R(BRKDN1_R)よりも大きい値に設定する。
【0056】
また、減少勾配算出部17は、推定横Gに基づいたブレーキ圧減少勾配の設定も行っている。
【0057】
図12は、推定横Gの絶対値と前後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_F、BRKDN_Rとの関係を示す。
図12に示すように、減少勾配算出部17は、後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Fを後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Rよりも小さくする設定をする。さらに、減少勾配算出部17は、推定横Gの絶対値が大きいほど前輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Fを小さくする設定をする(図11参照)。
【0058】
減少勾配算出部17は、以上のようにして算出した前後輪の各ブレーキ圧減少勾配BRKDN_F、BRKDN_Rをブレーキ液圧算出部18に出力する。
ブレーキ液圧算出部18は、入力された目標ヨーモーメントM及び前後配分率βを基に、下記(4)式により前輪ブレーキ液圧Pf0(Mpa)及び後輪ブレーキ液圧Pr0(Mpa)を算出する。
【0059】
Pf0(Mpa)=β/((1−β)・Kr+β・Kf)・M
Pr0(Mpa)=(1−β)/((1−β)・Kr+β・Kf)・M
Kf=Tf・μf・Af・(Rfr/Rft)・10.197・9.8
Kr=Tr・μr・Ar・(Rrr/Rrt)・10.197・9.8
・・・(4)
【0060】
ここで、Tf、Trは前後各輪のトレッドである。また、μf、μrは前後各輪のパッドμである。また、Af、Arは前後各輪のキャリパシリンダ面積(cm2)である。また、Rfr、Rrrは前後各輪のロータ有効半径(mm)である。また、Rft、Rrtは前後各輪のタイヤ半径(mm)である。
【0061】
図13は、ブレーキ液圧減少時(アンダステア抑制制御の解除時)のブレーキ液圧算出部18の処理例を示すフローチャートである。
図13に示すように、先ずステップS41において、ブレーキ液圧算出部18は、前輪ブレーキ液圧の前回値Pf0_z1と今回値Pf0との差分値(Pf0_z1−Pf0)が前輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Fよりも小さいか否かを判定する。ブレーキ液圧算出部18は、差分値(Pf0_z1−Pf0)が前輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Fよりも小さいと判定すると(Pf0_z1−Pf0<BRKDN_F)、ステップS42に進む。また、ブレーキ液圧算出部18は、差分値(Pf0_z1−Pf0)が前輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_F以上と判定すると(Pf0_z1−Pf0≧BRKDN_F)、ステップS43に進む。
【0062】
ステップS42では、ブレーキ液圧算出部18は、前輪ブレーキ液圧の前回値Pf0_z1から前輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Fを減じた減算値を最終的な前輪ブレーキ液圧Pfに設定する(Pf=Pf0_z1−BRKDN_F)。そして、ブレーキ液圧算出部18は、ステップS44に進む。
【0063】
ステップS43では、ブレーキ液圧算出部18は、前輪ブレーキ液圧の今回値Pf0を最終的な前輪ブレーキ液圧Pfに設定する(Pf=Pf0)。そして、ブレーキ液圧算出部18は、ステップS44に進む。
【0064】
ステップS44では、ブレーキ液圧算出部18は、前輪ブレーキ液圧の前回値Pf0_z1に前輪ブレーキ液圧の今回値Pf0を設定する(Pf0_z1=Pf0)。そして、ブレーキ液圧算出部18は、該図13に示す処理を終了する。
【0065】
一方、ステップS45において、ブレーキ液圧算出部18は、後輪ブレーキ液圧の前回値Pr0_z1と今回値Pr0との差分値(Pr0_z1−Pr0)が後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Rよりも小さいか否かを判定する。ブレーキ液圧算出部18は、差分値(Pr0_z1−Pr0)が後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Rよりも小さいと判定すると(Pr0_z1−Pr0<BRKDN_R)、ステップS46に進む。また、ブレーキ液圧算出部18は、差分値(Pr0_z1−Pr0)が後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_R以上と判定すると(Pr0_z1−Pr0≧BRKDN_R)、ステップS47に進む。
【0066】
ステップS46では、ブレーキ液圧算出部18は、後輪ブレーキ液圧の前回値Pr0_z1から後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Rを減じた減算値を最終的な後輪ブレーキ液圧Prに設定する(Pr=Pr0_z1−BRKDN_R)。そして、ブレーキ液圧算出部18は、ステップS48に進む。
【0067】
ステップS47では、ブレーキ液圧算出部18は、後輪ブレーキ液圧の今回値Pr0を最終的な後輪ブレーキ液圧Prに設定する(Pr=Pr0)。そして、ブレーキ液圧算出部18は、ステップS48に進む。
【0068】
ステップS48では、ブレーキ液圧算出部18は、後輪ブレーキ液圧の前回値Pr0_z1に後輪ブレーキ液圧の今回値Pr0を設定する(Pr0_z1=Pr0)。そして、ブレーキ液圧算出部18は、該図13に示す処理を終了する。
ブレーキ液圧算出部18は、以上のようにして算出した各輪のブレーキ液圧に対応する各輪のブレーキ指令圧をVDCコントローラ3に送信する。
【0069】
(動作、作用等)
車両走行制御装置は、運転者によりステアリングホイール101が操作されて車両が旋回状態にあるとき、車両のアンダステア傾向を抑制するアンダステア抑制制御を介入させている。このとき、車両走行制御装置は、車両の推定横Gの絶対値が大きいほど、又はドライバ要求エンジントルクが大きいほど、アンダステア抑制制御で自車両に付与するヨーモーメントの目標ヨーモーメントを大きくしている。
【0070】
そして、車両走行制御装置は、そのようなアンダステア抑制制御中に、アクセル開度を基に車両にタックインが発生すると推定すると、アンダステア抑制制御のための前後輪への制動力の付与を解除する。このとき、車両走行制御装置は、前後配分率に応じて、ブレーキ圧減少勾配BRKDN_F、BRKDN_Rを、通常の解除時に設定する値BRKDN0_F、BRKDN0_Rとは異なる値BRKDN1_F、BRKDN1_Rに設定する(図8乃至図11参照)。これにより、車両走行制御装置は、タックインが発生すると推定したとき、特に後輪については、通常の解除時の後輪の制動力の減少勾配BRKDN0_Rよりも小さい減少勾配減少勾配BRKDN1_Rをブレーキ圧減少勾配BRKDN_Rに設定している(図8乃至図11参照)。すなわち、車両走行制御装置は、後輪側の制動力を緩めに抜けるようにしている。
【0071】
なお、本実施形態では、タックイン推定手段としてタックイン推定部16を用いている。また、制動力解除手段として減少勾配算出部17及びブレーキ液圧算出部18を用いている。
【0072】
(本実施形態の効果)
(1)車両走行制御装置において、タックイン推定手段は、アンダステア抑制制御中のアクセルペダルの操作状態を基に、車両のタックインの発生を推定する。そして、制動力解除手段は、タックイン推定手段がタックインが発生すると推定したとき、アンダステア抑制制御による前後輪の制動力を減少させて前後輪の制動力の付与を解除する。さらに、制動力解除手段は、前後輪の制動力配分を後輪寄りに設定して前後輪の制動力を減少させる。(図8乃至図11参照)。
【0073】
これにより、車両走行制御装置は、タックインが発生すると推定したとき、アンダステア抑制制御による前後輪への制動力の付与の解除の際の前後輪の制動力配分を後輪寄りに設定することで、後輪側の制動力を多く働かせることができる。又は、車両走行制御装置は、解除の際の制動力を付与時間を後輪側の方を長くすることができる(図8乃至図11参照)。
【0074】
よって、車両走行制御装置は、前輪側への荷重移動を抑制してタックインによる旋回内側へのヨーレイト変化を抑制でき、タックインの発生に起因する制動力制御の作動を抑制できる。
【0075】
この結果、車両走行制御装置は、アンダステア抑制制御中の車両のタックインの発生に起因する制動力制御が運転者に違和感を与えてしまうのを防止できる。すなわち、車両走行制御装置は、後輪側へ制動配分をかけることで、タックインによるヨーレイト変化が起因する車両挙動が起こってから修正制御が入るような運転者への操舵に対する違和感をなくしスムーズな旋回走行を可能にすることができる。
【0076】
(2)制動力解除手段は、車両のアンダステア傾向が無くなると判定したとき、アンダステア抑制制御による前後輪の制動力を減少させて前後輪の制動力の付与を解除している。そして、制動力解除手段は、タックインが発生すると推定したときの後輪の制動力の減少勾配を、車両のアンダステア傾向が無くなると判定したときの後輪の制動力の減少勾配よりも小さくする(図8乃至図11参照)。
これにより、車両走行制御装置は、制動力の減少勾配を制御して後輪側に制動力配分をかけることができる。
【0077】
(3)制動力解除手段は、車両のアンダステア傾向が無くなると判定したとき、アンダステア抑制制御による前後輪の制動力を減少させて前後輪の制動力の付与を解除している。そして、制動力解除手段は、アンダステア抑制制御中の前後輪の制動力配分が前輪寄りの場合、タックインが発生すると推定したときの前輪の制動力の減少勾配を、車両のアンダステア傾向が無くなると判定したときの前輪の制動力の減少勾配よりも大きくする(図8参照)。
これにより、車両走行制御装置は、短時間で後輪側に制動力配分をかけることができる。
【0078】
(4)制動力解除手段は、前輪への制動力の付与の解除が完了しかつ後輪への制動力の付与の解除が完了していない場合、該後輪の制動力の減少勾配を前輪の制動力の付与の解除が完了していないときよりも大きくする(図11参照)。
これにより、車両走行制御装置は、不要な制動力を後輪に付与してしまうのを抑制できる。よって、例えば、燃費の悪化を防止できる。
【0079】
(5)減少勾配算出部17は、推定横Gの絶対値が大きいほど前輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Fを小さくする設定をする(図11参照)。
これにより、車両走行制御装置は、高い横Gの領域でも前輪への荷重移動を抑制することができる。
【符号の説明】
【0080】
3 VDCコントローラ、4 エンジンコントローラ、10 車両制御コントローラ、11 信号処理部、12 操舵角比例目標ヨーレイト算出部、13 推定横G算出部、14 推定前後G算出部、15 目標ヨーモーメント算出部、16 タックイン推定部、17 減少勾配算出部、18 ブレーキ液圧算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のアンダステア傾向を抑制するアンダステア抑制制御の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両旋回時に旋回内輪の制動力制御により車両のアンダステア傾向を抑制するアンダステア抑制制御と、車両旋回時に旋回外輪の制動力制御により車両のオーバステア傾向を抑制するオーバステア抑制制御とを備える車両の挙動制御装置がある(例えば特許文献1参照)。
このような装置では、アンダステア抑制制御中にアクセルペダルが戻されて(ONからOFFになると)、車両にタックインが発生すると、オーバステア抑制制御が介入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−88583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、オーバステア抑制制御が操舵輪となる前輪の制動力制御をすると、操舵特性に変化を及ぼし、その車両挙動が運転者に違和感を与えてしまう恐れがある。
本発明の目的は、アンダステア抑制制御中の車両のタックインの発生に起因する制動力制御が運転者に違和感を与えてしまうのを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は、アンダステア抑制制御中のアクセルペダルの操作状態を基に車両のタックインの発生を推定し、タックインが発生すると推定したとき、アンダステア抑制制御による前後輪の制動力を減少させて前後輪の制動力の付与を解除する。そして、その解除では、前後輪の制動力配分を後輪寄りに設定して前後輪の制動力を減少させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、タックインが発生すると推定したとき、アンダステア抑制制御による前後輪への制動力の付与の解除の際の前後輪の制動力配分を後輪寄りに設定することで、後輪側の制動力を多く働かせることができる。
これにより、前輪側への荷重移動を抑制してタックインによる旋回内側へのヨーレイト変化を抑制でき、タックインの発生に起因する制動力制御の作動を抑制できる。
【0007】
よって、アンダステア抑制制御中の車両のタックインの発生に起因する制動力制御が運転者に違和感を与えてしまうのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態の車両走行制御装置の構成を示す図である。
【図2】車両制御コントローラの構成例を示すブロック図である。
【図3】信号処理部の構成例を示す図である。
【図4】目標ヨーレイト算出部の構成例を示す図である。
【図5】タックイン推定部の処理例を示すフローチャートである。
【図6】推定横G値Ygestの絶対値|Ygest|、アクセル開度acc、及びタックイン推定フラグFlag_OSの関係を時間軸上で示す特性図である。
【図7】減少勾配算出部の処理例を示すフローチャートである。
【図8】旋回内側の前輪の制動力が旋回内側の後輪の制動力よりも大きい前後配分率の場合のブレーキ圧減少勾配の設定を説明する図である。
【図9】旋回内側の前輪の制動力と旋回内側の後輪の制動力とが等しい前後配分率の場合のブレーキ圧減少勾配の設定を説明する図である。
【図10】旋回内側の前輪の制動力が旋回内側の後輪の制動力よりも小さい前後配分率の場合のブレーキ圧減少勾配の設定を説明する図である。
【図11】前輪の制動力の解除が先に完了した場合の後輪の制動力の減少勾配の設定を説明する図である。
【図12】推定横Gの絶対値と前後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_F、BRKDN_Rとの関係を示す特性図である。
【図13】ブレーキ液圧減少時(解除時)のブレーキ液圧算出部の処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(構成)
本実施形態は、車両走行制御装置である。
図1は、車両に搭載された車両走行制御装置の構成を示す。
図1に示すように、車両走行制御装置は、車輪速センサ1FL、1FR、1RL、1RR、操舵角センサ2、VDC(Vehicle Dynamics Control)コントローラ3、エンジンコントローラ4、及び車両制御コントローラ10を有する。
【0010】
車輪速センサ1FL〜1RRは、各車輪100FL、100FR、100RL、100RRの速度を検出する。車輪速センサ1FL〜1RRは、その検出信号を車両制御コントローラ10に出力する。
操舵角センサ2は、ステアリングホイール101の操舵角を検出する。操舵角センサ2は、その検出信号を車両制御コントローラ10に出力する。
【0011】
エンジンコントローラ4は、CAN等の通信手段を利用して、パワートレイン関係の情報(ドライバ要求エンジントルク、アクセル開度及びギア位置等)を車両制御コントローラ10に送信する。
車両制御コントローラ10は、車両挙動を制御する。すなわち、車両制御コントローラ10は、CAN(Controller Area Network)等の通信手段を利用して、各車輪100FL〜100RRの車輪速センサ1FL〜1RR及び操舵角センサ2の検出信号、並びにドライバ要求エンジントルク、アクセル開度及びギア位置を受信する。そして、車両制御コントローラ10は、これらの値を基に算出した各車輪100FL〜100RRのブレーキ圧指令値をCAN等の通信手段を利用してVDCコントローラ3に送信する。
【0012】
VDCコントローラ3は、各車輪100FL〜100RRのブレーキ圧を制御する。すなわち、VDCコントローラ3は、車両制御コントローラ10から各車輪100FL〜100RRのブレーキ圧指令値を受信し、各車輪100FL〜100RRのブレーキ圧を制御する。
図2は、車両制御コントローラ10の構成例を示す。
【0013】
図2に示すように、車両制御コントローラ10は、信号処理部11、操舵角比例目標ヨーレイト算出部12、推定横G算出部13、推定前後G算出部14、目標ヨーモーメント算出部15、タックイン推定部16、減少勾配算出部17、及びブレーキ液圧算出部18を有する。
【0014】
信号処理部11は、CAN等の通信手段を介して車輪速センサ1の検出信号を受信する。信号処理部11は、受信した車輪速センサ1の検出信号を基に、自車両の速度(車速)を算出する。信号処理部11は、算出した車速を操舵角比例目標ヨーレイト算出部12及び推定横G算出部13に出力する。
【0015】
操舵角比例目標ヨーレイト算出部12は、CAN等の通信手段を介して操舵角センサ2の検出信号も受信している。操舵角比例目標ヨーレイト算出部12は、受信した操舵角センサ2の検出信号及び信号処理部11からの車速を基に、操舵角比例目標ヨーレイトを算出する。操舵角比例目標ヨーレイト算出部12は、算出した操舵角比例目標ヨーレイトを推定横G算出部13及び推定前後G算出部14に出力する。
【0016】
推定横G算出部13は、入力された操舵角比例目標ヨーレイト及び車速を基に、横Gの推定値を算出する。推定横G算出部13は、算出した推定横Gを目標ヨーモーメント算出部15及びタックイン推定部16に出力する。
【0017】
推定前後G算出部14は、CAN等の通信手段を介してエンジンコントローラ4からドライバ要求エンジントルク及びギア位置信号を受信する。推定前後G算出部14は、受信したドライバ要求エンジントルク及びギア位置信号を基に、前後Gの推定値を算出する。推定前後G算出部14は、算出した推定前後Gを目標ヨーモーメント算出部15に出力する。
【0018】
目標ヨーモーメント算出部15は、入力された推定横G及び推定前後Gを基に、目標ヨーモーメントを算出する。目標ヨーモーメント算出部15は、算出した目標ヨーモーメントをブレーキ液圧算出部18に出力する。
【0019】
タックイン推定部16は、CAN等の通信手段を介してアクセル開度も受信している。タックイン推定部16は、受信したアクセル開度及び推定横G算出部13からの推定横Gを基に、車両のタックインの発生を推定し、タックイン推定フラグを算出する。タックイン推定部16は、算出したタックイン推定フラグを減少勾配算出部17に出力する。
【0020】
減少勾配算出部17は、入力されたタックイン推定フラグを基に、アンダステア抑制制御を解除(その制動力の付与を解除)する際の前輪及び後輪のブレーキ圧減少勾配を算出する。減少勾配算出部17は、算出した前輪及び後輪の各ブレーキ圧減少勾配をブレーキ液圧算出部18に出力する。
【0021】
ブレーキ液圧算出部18は、入力された目標ヨーモーメント、前後配分率、並びに前輪及び後輪のブレーキ圧減少勾配を基に、各輪のブレーキ指令圧を算出する。具体的には、ブレーキ液圧算出部18は、自車両に目標ヨーモーメントのヨーモーメントを発生させるために、各車輪100FL〜100RRでブレーキ圧差(制動力差)を発生させるブレーキ指令圧を算出する。ブレーキ液圧算出部18は、算出したブレーキ指令圧をCAN等の通信手段を介してVDCコントローラ3に送信する。
【0022】
以上のような車両制御コントローラ10の各構成部をさらに詳述する。
図3は、信号処理部11の構成例を示す。
図3に示すように、信号処理部11は、加算部21、乗算部22、及びローパスフィルタ(LPF)23を有する。
【0023】
加算部21は、従動輪100RL、100RRの車輪速センサ1RL、1RRの検出信号を加算し、その加算値を乗算部22に出力する。乗算部22は、入力された加算値に0.5を乗じ、その乗算値をローパスフィルタ23に出力する。ローパスフィルタ23は、入力された乗算値に対して、ノイズ除去のために予め設定されたカットオフ周波数でノイズ除去を行う。
【0024】
このような構成により、信号処理部11は、従動輪100RL、100RRの二輪平均値を算出し、算出した二輪平均値からノイズ除去して車速を算出する。そして、信号処理部11は、算出した車速を操舵角比例目標ヨーレイト算出部12及び推定横G算出部13に出力する。
【0025】
操舵角比例目標ヨーレイト算出部12は、下記(1)式を基に、操舵角比例目標ヨーレイトγrefを算出する。
γref=v/(1+A・v2)・δ/(N・L)
A=m/(2・l2)・((lf・Kf−lr・Kr)/(Kf・Kr))
Kf=Cf/2
Kr=Cr/2
・・・(1)
【0026】
ここで、δは、入力される操作角(操舵角センサ2の検出値)である。vは、入力される車速(信号処理部11が算出した車速)である。また、N、L、Cf、Cr、lf、lr、mは、それぞれ車両諸元である。ここで、Nはステアリングギア比である。Lはホイールベースである(L=lf+lr)。Cfはフロントコーナリングフォースである。Crはリアコーナリングフォースである。lfは、重心点からのフロント接地点までの長さである。lrは、重心点からのリア接地点までの長さである。mは重量である。
【0027】
このように、操舵角比例目標ヨーレイト算出部12は、操舵角センサ2が検出した操舵角δ及び信号処理部11が算出した車速vを入力変数として操舵角比例目標ヨーレイトγrefを算出する。そして、操舵角比例目標ヨーレイト算出部12は、算出した操舵角比例目標ヨーレイトγrefを推定横G算出部13に出力する。
【0028】
推定横G算出部13は、入力された操舵角比例ヨーレイトγref及び車速vを基に、下記(2)式により推定横G値Ygestを算出する。
Ygest=γref・v ・・・(2)
【0029】
推定横G算出部13は、算出した推定横G値Ygestを目標ヨーモーメント算出部15及びタックイン推定部16に出力する。
なお、推定横G算出部13は、横Gとして推定値を用いるのではなく、実横Gを用いることもできる。
【0030】
推定前後G算出部14は、受信したドライバ要求エンジントルクETQDR(>0)及びギア位置信号GEARを基に、下記(3)式により推定前後G値Xgestを算出する。
Xgest=ETQDR・GEAR/TIRE_R/W ・・・(3)
【0031】
ここで、TIRE_Rはタイヤ半径である。また、Wは車両重量である。
推定前後G算出部14は、算出した推定前後G値Xgestを目標ヨーモーメント算出部15に出力する。
【0032】
図4は、目標ヨーレイト算出部15の構成例を示す。
図4に示すように、目標ヨーレイト算出部15は、絶対値演算部31、横Gゲイン演算部32、符号演算部(符号関数部)33、乗算部34,35、及び前後G成分演算部36を有する。
【0033】
絶対値演算部31は、入力された推定横Gの絶対値を算出し、その絶対値を横Gゲイン演算部32に出力する。横Gゲイン演算部32は、その絶対値を基に、横Gゲインを算出し、その横Gゲインを乗算部34に出力する。具体的には、横Gゲイン演算部32は、その絶対値が大きいほど大きくなる横Gゲインを算出する。また、符号演算部(符号関数部)33は、入力された推定横Gを基に得た符号を乗算部34に出力する。乗算部34は、入力された横Gゲインと符号とを乗算して横G成分を算出し、その横G成分を後段の乗算部35に出力する。一方、前後G成分演算部36は、入力された推定前後Gを基に、前後G成分を算出し、その前後G成分を乗算部35に出力する。具体的には、前後G成分演算部36は、推定前後Gが大きいほど大きくなる前後G成分を算出する。乗算部35は、入力された横G成分と前後G成分とを乗算して目標ヨーモーメントを算出する。
【0034】
目標ヨーレイト算出部15は、以上のように、推定横Gを基に横Gゲインを算出し、算出した横Gゲインを基に、目標ヨーモーメントを算出するための横G成分を算出している。ここで、推定横Gの絶対値が大きいほど、横Gゲインが大きくなり、目標ヨーモーメントも大きくなる傾向となる。また、目標ヨーモーメントは、常に回頭側に付加されるように、推定横Gの符号関数により方向が決定される。このようにして、US(アンダステア)を抑制するための目標ヨーモーメントを大きくしている。
【0035】
また、目標ヨーレイト算出部15は、推定前後Gを基に、目標ヨーモーメントを算出するための前後G成分を算出している。ここで、ドライバ要求エンジントルクが大きいほど、前後G成分が大きくなるため、目標ヨーモーメントも大きくなる傾向となる。そして、運転者がアクセルペダルを踏み込み、ドライバ要求エンジントルクがある程度の値になっているときに、目標ヨーモーメントを発生させるようにしている。また、アクセルペダルのOFF時には、ドライバ要求エンジントルクが零であり、目標ヨーモーメントを零にしている。
【0036】
目標ヨーモーメント算出部15は、以上のようにして算出した目標ヨーモーメントをブレーキ液圧算出部18に出力する。
【0037】
図5は、タックイン推定部16の処理例を示すフローチャートである。
図5に示すように、先ずステップS1において、タックイン推定部16は、推定横G値Ygestの絶対値|Ygest|が予め設定した第1横Gしきい値Yg_th1よりも大きいか否かを判定する。タックイン推定部16は、絶対値|Ygest|が第1横Gしきい値Yg_th1よりも大きいと判定すると(|Ygest|>Yg_th1)、ステップS2に進む。また、タックイン推定部16は、絶対値|Ygest|が第1横Gしきい値Yg_th1以下と判定すると(|Ygest|≦Yg_th1)、ステップS4に進む。
【0038】
ステップS2では、タックイン推定部16は、アクセル開度accが予め設定したアクセル開度しきい値acc_thよりも大きいか否かを判定する。タックイン推定部16は、アクセル開度(アクセル開度の今回値)accがアクセル開度しきい値acc_thよりも大きいと判定すると(acc>acc_th)、ステップS3に進む。また、タックイン推定部16は、アクセル開度accがアクセル開度しきい値acc_th以下と判定すると(acc≦acc_th)、ステップS6に進む。
【0039】
ステップS3では、タックイン推定部16は、アクセル開度についての前回値acc_z1と今回値accとの差分値(acc_z1−acc)が予め設定したしきい値ACCDNよりも大きいか否かを判定する。タックイン推定部16は、差分値(acc_z1−acc)がしきい値ACCDNよりも大きいと判定すると(acc_z1−acc>ACCDN)、ステップS5に進む。タックイン推定部16は、差分値(acc_z1−acc)がしきい値ACCDN以下と判定すると(acc_z1−acc≦ACCDN)、ステップS6に進む。
【0040】
ステップS4では、タックイン推定部16は、推定横G値Ygestの絶対値|Ygest|が予め設定した第2横Gしきい値Yg_th2よりも小さいか否かを判定する。ここで、第2横Gしきい値Yg_th2は、第1横Gしきい値Yg_th1未満の値である(Yg_th2<Yg_th1)。タックイン推定部16は、絶対値|Ygest|が第2横Gしきい値Yg_th2よりも小さいと判定すると(|Ygest|<Yg_th2)、ステップS7に進む。また、タックイン推定部16は、絶対値|Ygest|が第2横Gしきい値Yg_th2以上と判定すると(|Ygest|≧Yg_th2)、ステップS8に進む。
【0041】
ステップS5では、タックイン推定部16は、タックイン推定フラグFlag_OSをONに設定する(Flag_OS=ON)。そして、タックイン推定部16は、ステップS9に進む。
ステップS6では、タックイン推定部16は、タックイン推定フラグFlag_OSを前回値に保持する(Flag_OS=前回値)。そして、タックイン推定部16は、ステップS9に進む。
【0042】
ステップS7では、タックイン推定部16は、タックイン推定フラグFlag_OSをOFFに設定する(Flag_OS=OFF)。そして、タックイン推定部16は、ステップS9に進む。
ステップS8では、タックイン推定部16は、タックイン推定フラグFlag_OSを前回値に保持する(Flag_OS=前回値)。そして、タックイン推定部16は、ステップS9に進む。
【0043】
ステップS9では、タックイン推定部16は、アクセル開度の前回値acc_z1にアクセル開度の今回値accを設定する。そして、タックイン推定部16は、該図5に示す処理を終了する。
【0044】
タックイン推定部16は、以上のような処理により、推定横G値Ygestの絶対値|Ygest|が第1横Gしきい値Yg_h1よりも大きくなったとき、アクセル開度を基にタックイン推定フラグFlag_OSを設定する。具体的には、タックイン推定部16は、アクセル開度の今回値accが、アクセル開度しきい値acc_thよりも大きく且つアクセル開度の前回値acc_z1に対して急激に変化(acc_z1−acc>ACCDN)したとき、タックイン推定フラグFlag_OSをONに設定する。そして、タックイン推定部16は、タックイン推定フラグFlag_OSがONになった以降では、推定横G値Ygestの絶対値|Ygest|が第2横Gしきい値Yg_h2よりも小さくなるまでONに維持し、その後OFFにする。タックイン推定部16は、このようにして車両のタックインの発生を推定している。
【0045】
図6は、推定横G値Ygestの絶対値|Ygest|、アクセル開度acc、及びタックイン推定フラグFlag_OSの関係を時間軸上で示す。
図6に示すように、推定横G値Ygestの絶対値|Ygest|が第1横Gしきい値Yg_h1よりも大きく、且つアクセル開度の今回値accが、アクセル開度しきい値acc_thよりも大きく且つアクセル開度の前回値acc_z1に対して急激に変化(acc_z1−acc>ACCDN)すると、タックイン推定フラグFlag_OSがONになる。そして、推定横G値Ygestの絶対値|Ygest|が第2横Gしきい値Yg_h2よりも小さくなるまでタックイン推定フラグFlag_OSがONに維持される。
【0046】
タックイン推定部16は、以上のようにして設定(算出)したタックイン推定フラグFlag_OSを減少勾配算出部17に出力する。
【0047】
図7は、減少勾配算出部17の処理例を示すフローチャートである。
図7に示すように、先ずステップS21において、減少勾配算出部17は、タックイン判断フラグFlag_OSがONか否かを判定する。減少勾配算出部17は、タックイン判断フラグFlag_OSがONであると判定すると、ステップS22に進む。また、減少勾配算出部17は、タックイン判断フラグFlag_OSがOFFであると判定すると、ステップS23に進む。
【0048】
ステップS22では、減少勾配算出部17は、前輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_FにBRKDN1_Fを設定し、後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_RにBRKDN1_Rを設定する(BRKDN_F=BRKDN1_F、BRKDN_R=BRKDN1_R)。ここで、BRKDN1_F、BRKDN1_Rは、緩やかにブレーキ圧が減少するように設定されたブレーキ圧減少勾配(減少速度が小さいブレーキ圧減少勾配)である。そして、減少勾配算出部17は、該図7に示す処理を終了する。
【0049】
ステップS23では、減少勾配算出部17は、前輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_FにBRKDN0_Fを設定し、後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_RにBRKDN0_Rを設定する(BRKDN_F=BRKDN0_F、BRKDN_R=BRKDN0_R)。そして、減少勾配算出部17は、該図7に示す処理を終了する。
また、減少勾配算出部17は、前後配分率(車両に目標ヨーモーメントに応じたヨーモーメントを発生させるときの前後輪の制動力配分率)に応じたブレーキ圧減少勾配の設定も行っている。
【0050】
図8乃至図10は、その設定を説明する図である。
図8は、前後配分率が、旋回内側の前輪の制動力が旋回内側の後輪の制動力よりも大きい場合である(フロント過多配分の場合である)。この場合、図8に示すように、減少勾配算出部17は、タックイン判断フラグFlag_OS=ONのときには、タックイン判断フラグFlag_OS=OFFのときに設定するBRKDN0_F(破線の減少勾配)よりも大きいBRKDN1_F(一点鎖線の減少勾配)を前輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Fに設定する。また、減少勾配算出部17は、タックイン判断フラグFlag_OS=OFFのときに設定するBRKDN0_R(破線の減少勾配)よりも小さいBRKDN1_R(一点鎖線の減少勾配)を後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Rに設定する。
【0051】
また、図9は、前後配分率が、旋回内側の前輪の制動力と旋回内側の後輪の制動力とが等しい場合である(50:50配分の場合である)。この場合、図9に示すように、減少勾配算出部17は、タックイン判断フラグFlag_OS=ONのときには、タックイン判断フラグFlag_OS=OFFのときに設定するBRKDN0_F(破線の減少勾配)と同じBRKDN1_F(一点鎖線の減少勾配)を前輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Fに設定する。また、減少勾配算出部17は、タックイン判断フラグFlag_OS=OFFのときに設定するBRKDN0_R(破線の減少勾配)よりも小さいBRKDN1_R(一点鎖線の減少勾配)を後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Rに設定する。
【0052】
また、図10は、前後配分率が、旋回内側の前輪の制動力が旋回内側の後輪の制動力よりも小さい場合である(リア過多配分の場合である)。この場合、図10に示すように、減少勾配算出部17は、タックイン判断フラグFlag_OS=ONのときには、タックイン判断フラグFlag_OS=OFFのときに設定するBRKDN0_F(破線の減少勾配)と同じBRKDN1_F(一点鎖線の減少勾配)を前輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Fに設定する。また、減少勾配算出部17は、タックイン判断フラグFlag_OS=OFFのときに設定するBRKDN0_R(破線の減少勾配)よりも小さいBRKDN1_R(一点鎖線の減少勾配)を後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Rに設定する。
【0053】
ここで、タックイン判断フラグFlag_OS=OFFのときにBRKDN1_F、BRKDN1_Rを設定しているが、その設定をするタックイン判断フラグFlag_OS=OFFのときとは、通常の解除時である。具体的には、車両のアンダステア傾向が無くなるときであり、例えば、アクセルペダルが戻されて目標ヨーモーメントが零になったときなどである。このように通常の解除時に設定されるBRKDN1_F、BRKDN1_Rは、図8乃至図10に示すように、前後配分率にかかわらず、解除の完了時点が一致するような値として設定されている。
【0054】
また、減少勾配算出部17は、前輪の制動力の解除が先に完了した場合には後輪の制動力の減少勾配の設定を変更している。
【0055】
図11は、その設定の変更を説明する図である。図11に示すように、減少勾配算出部17は、前輪の制動力がその解除の完了となる予め設定した所定のブレーキ圧(例えば零)になったとき、後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_R(BRKDN1_R)を、前輪の制動力の解除が完了する前の後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_R(BRKDN1_R)よりも大きい値に設定する。
【0056】
また、減少勾配算出部17は、推定横Gに基づいたブレーキ圧減少勾配の設定も行っている。
【0057】
図12は、推定横Gの絶対値と前後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_F、BRKDN_Rとの関係を示す。
図12に示すように、減少勾配算出部17は、後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Fを後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Rよりも小さくする設定をする。さらに、減少勾配算出部17は、推定横Gの絶対値が大きいほど前輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Fを小さくする設定をする(図11参照)。
【0058】
減少勾配算出部17は、以上のようにして算出した前後輪の各ブレーキ圧減少勾配BRKDN_F、BRKDN_Rをブレーキ液圧算出部18に出力する。
ブレーキ液圧算出部18は、入力された目標ヨーモーメントM及び前後配分率βを基に、下記(4)式により前輪ブレーキ液圧Pf0(Mpa)及び後輪ブレーキ液圧Pr0(Mpa)を算出する。
【0059】
Pf0(Mpa)=β/((1−β)・Kr+β・Kf)・M
Pr0(Mpa)=(1−β)/((1−β)・Kr+β・Kf)・M
Kf=Tf・μf・Af・(Rfr/Rft)・10.197・9.8
Kr=Tr・μr・Ar・(Rrr/Rrt)・10.197・9.8
・・・(4)
【0060】
ここで、Tf、Trは前後各輪のトレッドである。また、μf、μrは前後各輪のパッドμである。また、Af、Arは前後各輪のキャリパシリンダ面積(cm2)である。また、Rfr、Rrrは前後各輪のロータ有効半径(mm)である。また、Rft、Rrtは前後各輪のタイヤ半径(mm)である。
【0061】
図13は、ブレーキ液圧減少時(アンダステア抑制制御の解除時)のブレーキ液圧算出部18の処理例を示すフローチャートである。
図13に示すように、先ずステップS41において、ブレーキ液圧算出部18は、前輪ブレーキ液圧の前回値Pf0_z1と今回値Pf0との差分値(Pf0_z1−Pf0)が前輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Fよりも小さいか否かを判定する。ブレーキ液圧算出部18は、差分値(Pf0_z1−Pf0)が前輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Fよりも小さいと判定すると(Pf0_z1−Pf0<BRKDN_F)、ステップS42に進む。また、ブレーキ液圧算出部18は、差分値(Pf0_z1−Pf0)が前輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_F以上と判定すると(Pf0_z1−Pf0≧BRKDN_F)、ステップS43に進む。
【0062】
ステップS42では、ブレーキ液圧算出部18は、前輪ブレーキ液圧の前回値Pf0_z1から前輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Fを減じた減算値を最終的な前輪ブレーキ液圧Pfに設定する(Pf=Pf0_z1−BRKDN_F)。そして、ブレーキ液圧算出部18は、ステップS44に進む。
【0063】
ステップS43では、ブレーキ液圧算出部18は、前輪ブレーキ液圧の今回値Pf0を最終的な前輪ブレーキ液圧Pfに設定する(Pf=Pf0)。そして、ブレーキ液圧算出部18は、ステップS44に進む。
【0064】
ステップS44では、ブレーキ液圧算出部18は、前輪ブレーキ液圧の前回値Pf0_z1に前輪ブレーキ液圧の今回値Pf0を設定する(Pf0_z1=Pf0)。そして、ブレーキ液圧算出部18は、該図13に示す処理を終了する。
【0065】
一方、ステップS45において、ブレーキ液圧算出部18は、後輪ブレーキ液圧の前回値Pr0_z1と今回値Pr0との差分値(Pr0_z1−Pr0)が後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Rよりも小さいか否かを判定する。ブレーキ液圧算出部18は、差分値(Pr0_z1−Pr0)が後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Rよりも小さいと判定すると(Pr0_z1−Pr0<BRKDN_R)、ステップS46に進む。また、ブレーキ液圧算出部18は、差分値(Pr0_z1−Pr0)が後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_R以上と判定すると(Pr0_z1−Pr0≧BRKDN_R)、ステップS47に進む。
【0066】
ステップS46では、ブレーキ液圧算出部18は、後輪ブレーキ液圧の前回値Pr0_z1から後輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Rを減じた減算値を最終的な後輪ブレーキ液圧Prに設定する(Pr=Pr0_z1−BRKDN_R)。そして、ブレーキ液圧算出部18は、ステップS48に進む。
【0067】
ステップS47では、ブレーキ液圧算出部18は、後輪ブレーキ液圧の今回値Pr0を最終的な後輪ブレーキ液圧Prに設定する(Pr=Pr0)。そして、ブレーキ液圧算出部18は、ステップS48に進む。
【0068】
ステップS48では、ブレーキ液圧算出部18は、後輪ブレーキ液圧の前回値Pr0_z1に後輪ブレーキ液圧の今回値Pr0を設定する(Pr0_z1=Pr0)。そして、ブレーキ液圧算出部18は、該図13に示す処理を終了する。
ブレーキ液圧算出部18は、以上のようにして算出した各輪のブレーキ液圧に対応する各輪のブレーキ指令圧をVDCコントローラ3に送信する。
【0069】
(動作、作用等)
車両走行制御装置は、運転者によりステアリングホイール101が操作されて車両が旋回状態にあるとき、車両のアンダステア傾向を抑制するアンダステア抑制制御を介入させている。このとき、車両走行制御装置は、車両の推定横Gの絶対値が大きいほど、又はドライバ要求エンジントルクが大きいほど、アンダステア抑制制御で自車両に付与するヨーモーメントの目標ヨーモーメントを大きくしている。
【0070】
そして、車両走行制御装置は、そのようなアンダステア抑制制御中に、アクセル開度を基に車両にタックインが発生すると推定すると、アンダステア抑制制御のための前後輪への制動力の付与を解除する。このとき、車両走行制御装置は、前後配分率に応じて、ブレーキ圧減少勾配BRKDN_F、BRKDN_Rを、通常の解除時に設定する値BRKDN0_F、BRKDN0_Rとは異なる値BRKDN1_F、BRKDN1_Rに設定する(図8乃至図11参照)。これにより、車両走行制御装置は、タックインが発生すると推定したとき、特に後輪については、通常の解除時の後輪の制動力の減少勾配BRKDN0_Rよりも小さい減少勾配減少勾配BRKDN1_Rをブレーキ圧減少勾配BRKDN_Rに設定している(図8乃至図11参照)。すなわち、車両走行制御装置は、後輪側の制動力を緩めに抜けるようにしている。
【0071】
なお、本実施形態では、タックイン推定手段としてタックイン推定部16を用いている。また、制動力解除手段として減少勾配算出部17及びブレーキ液圧算出部18を用いている。
【0072】
(本実施形態の効果)
(1)車両走行制御装置において、タックイン推定手段は、アンダステア抑制制御中のアクセルペダルの操作状態を基に、車両のタックインの発生を推定する。そして、制動力解除手段は、タックイン推定手段がタックインが発生すると推定したとき、アンダステア抑制制御による前後輪の制動力を減少させて前後輪の制動力の付与を解除する。さらに、制動力解除手段は、前後輪の制動力配分を後輪寄りに設定して前後輪の制動力を減少させる。(図8乃至図11参照)。
【0073】
これにより、車両走行制御装置は、タックインが発生すると推定したとき、アンダステア抑制制御による前後輪への制動力の付与の解除の際の前後輪の制動力配分を後輪寄りに設定することで、後輪側の制動力を多く働かせることができる。又は、車両走行制御装置は、解除の際の制動力を付与時間を後輪側の方を長くすることができる(図8乃至図11参照)。
【0074】
よって、車両走行制御装置は、前輪側への荷重移動を抑制してタックインによる旋回内側へのヨーレイト変化を抑制でき、タックインの発生に起因する制動力制御の作動を抑制できる。
【0075】
この結果、車両走行制御装置は、アンダステア抑制制御中の車両のタックインの発生に起因する制動力制御が運転者に違和感を与えてしまうのを防止できる。すなわち、車両走行制御装置は、後輪側へ制動配分をかけることで、タックインによるヨーレイト変化が起因する車両挙動が起こってから修正制御が入るような運転者への操舵に対する違和感をなくしスムーズな旋回走行を可能にすることができる。
【0076】
(2)制動力解除手段は、車両のアンダステア傾向が無くなると判定したとき、アンダステア抑制制御による前後輪の制動力を減少させて前後輪の制動力の付与を解除している。そして、制動力解除手段は、タックインが発生すると推定したときの後輪の制動力の減少勾配を、車両のアンダステア傾向が無くなると判定したときの後輪の制動力の減少勾配よりも小さくする(図8乃至図11参照)。
これにより、車両走行制御装置は、制動力の減少勾配を制御して後輪側に制動力配分をかけることができる。
【0077】
(3)制動力解除手段は、車両のアンダステア傾向が無くなると判定したとき、アンダステア抑制制御による前後輪の制動力を減少させて前後輪の制動力の付与を解除している。そして、制動力解除手段は、アンダステア抑制制御中の前後輪の制動力配分が前輪寄りの場合、タックインが発生すると推定したときの前輪の制動力の減少勾配を、車両のアンダステア傾向が無くなると判定したときの前輪の制動力の減少勾配よりも大きくする(図8参照)。
これにより、車両走行制御装置は、短時間で後輪側に制動力配分をかけることができる。
【0078】
(4)制動力解除手段は、前輪への制動力の付与の解除が完了しかつ後輪への制動力の付与の解除が完了していない場合、該後輪の制動力の減少勾配を前輪の制動力の付与の解除が完了していないときよりも大きくする(図11参照)。
これにより、車両走行制御装置は、不要な制動力を後輪に付与してしまうのを抑制できる。よって、例えば、燃費の悪化を防止できる。
【0079】
(5)減少勾配算出部17は、推定横Gの絶対値が大きいほど前輪のブレーキ圧減少勾配BRKDN_Fを小さくする設定をする(図11参照)。
これにより、車両走行制御装置は、高い横Gの領域でも前輪への荷重移動を抑制することができる。
【符号の説明】
【0080】
3 VDCコントローラ、4 エンジンコントローラ、10 車両制御コントローラ、11 信号処理部、12 操舵角比例目標ヨーレイト算出部、13 推定横G算出部、14 推定前後G算出部、15 目標ヨーモーメント算出部、16 タックイン推定部、17 減少勾配算出部、18 ブレーキ液圧算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両旋回時に旋回内側の前後輪に制動力を付与して車両のアンダステア傾向を抑制するアンダステア抑制制御を行う車両走行制御装置において、
前記アンダステア抑制制御中のアクセルペダルの操作状態を基に、車両のタックインの発生を推定するタックイン推定手段と、
前記タックイン推定手段がタックインが発生すると推定したとき、前記アンダステア抑制制御による前後輪の制動力を減少させて前後輪の制動力の付与を解除する制動力解除手段と、を有し、
前記制動力解除手段は、前後輪の制動力配分を後輪寄りに設定して前記前後輪の制動力を減少させることを特徴とする車両走行制御装置。
【請求項2】
前記制動力解除手段は、前記車両のアンダステア傾向が無くなると判定したとき、前記アンダステア抑制制御による前後輪の制動力を減少させて前後輪の制動力の付与を解除しており、
前記制動力解除手段は、前記タックインが発生すると推定したときの後輪の制動力の減少勾配を、前記車両のアンダステア傾向が無くなると判定したときの後輪の制動力の減少勾配よりも小さくすることを特徴とする請求項1に記載の車両走行制御装置。
【請求項3】
前記制動力解除手段は、前記車両のアンダステア傾向が無くなると判定したとき、前記アンダステア抑制制御による前後輪の制動力を減少させて前後輪の制動力の付与を解除しており、
前記制動力解除手段は、前記アンダステア抑制制御中の前後輪の制動力配分が前輪寄りの場合、前記タックインが発生すると推定したときの前輪の制動力の減少勾配を、前記車両のアンダステア傾向が無くなると判定したときの前輪の制動力の減少勾配よりも大きくすることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両走行制御装置。
【請求項4】
前記制動力解除手段は、前輪への制動力の付与の解除が完了しかつ後輪への制動力の付与の解除が完了していない場合、該後輪の制動力の減少勾配を前輪の制動力の付与の解除が完了していないときよりも大きくすることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両走行制御装置。
【請求項5】
車両旋回時に旋回内側の前後輪に制動力を付与して車両のアンダステア傾向を抑制するアンダステア抑制制御を行う車両走行制御方法において、
前記アンダステア抑制制御中のアクセルペダルの操作状態を基に車両のタックインの発生を推定し、
前記タックインが発生すると推定したとき、前記アンダステア抑制制御による前後輪の制動力を減少させて前後輪の制動力の付与を解除し、
前記解除では、前後輪の制動力配分を後輪寄りに設定して前記前後輪の制動力を減少させることを特徴とする車両走行制御方法。
【請求項1】
車両旋回時に旋回内側の前後輪に制動力を付与して車両のアンダステア傾向を抑制するアンダステア抑制制御を行う車両走行制御装置において、
前記アンダステア抑制制御中のアクセルペダルの操作状態を基に、車両のタックインの発生を推定するタックイン推定手段と、
前記タックイン推定手段がタックインが発生すると推定したとき、前記アンダステア抑制制御による前後輪の制動力を減少させて前後輪の制動力の付与を解除する制動力解除手段と、を有し、
前記制動力解除手段は、前後輪の制動力配分を後輪寄りに設定して前記前後輪の制動力を減少させることを特徴とする車両走行制御装置。
【請求項2】
前記制動力解除手段は、前記車両のアンダステア傾向が無くなると判定したとき、前記アンダステア抑制制御による前後輪の制動力を減少させて前後輪の制動力の付与を解除しており、
前記制動力解除手段は、前記タックインが発生すると推定したときの後輪の制動力の減少勾配を、前記車両のアンダステア傾向が無くなると判定したときの後輪の制動力の減少勾配よりも小さくすることを特徴とする請求項1に記載の車両走行制御装置。
【請求項3】
前記制動力解除手段は、前記車両のアンダステア傾向が無くなると判定したとき、前記アンダステア抑制制御による前後輪の制動力を減少させて前後輪の制動力の付与を解除しており、
前記制動力解除手段は、前記アンダステア抑制制御中の前後輪の制動力配分が前輪寄りの場合、前記タックインが発生すると推定したときの前輪の制動力の減少勾配を、前記車両のアンダステア傾向が無くなると判定したときの前輪の制動力の減少勾配よりも大きくすることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両走行制御装置。
【請求項4】
前記制動力解除手段は、前輪への制動力の付与の解除が完了しかつ後輪への制動力の付与の解除が完了していない場合、該後輪の制動力の減少勾配を前輪の制動力の付与の解除が完了していないときよりも大きくすることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両走行制御装置。
【請求項5】
車両旋回時に旋回内側の前後輪に制動力を付与して車両のアンダステア傾向を抑制するアンダステア抑制制御を行う車両走行制御方法において、
前記アンダステア抑制制御中のアクセルペダルの操作状態を基に車両のタックインの発生を推定し、
前記タックインが発生すると推定したとき、前記アンダステア抑制制御による前後輪の制動力を減少させて前後輪の制動力の付与を解除し、
前記解除では、前後輪の制動力配分を後輪寄りに設定して前記前後輪の制動力を減少させることを特徴とする車両走行制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−255780(P2011−255780A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131840(P2010−131840)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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