説明

車両運動推定装置及び移動体検出装置

【課題】走行中の車両のヨー角変動などの姿勢変化を正確に認識または排除する。また、車両がヨーレートを有する場合にも、歩行者などと静止物とを正確に識別する。
【解決手段】グループ化手段210は、スキャン型のレーザーレーダ100Bを用いて得られた距離データ(距離と方位)を処理する。即ち、現時刻の全観測点の中から、互いに距離が近い観測点をまとめてグループ化する。対象物追跡手段221は、グループ化した物体をそれぞれ周知の追尾フィルタであるα−βフィルタを用いて追跡し、同一の測定対象物として同定された測定対象物の中から所定の範囲内の広がりwを示すものについてのみ、その運動を移動体変位量算定手段222に対して出力する。移動体変位量算定手段222では、車両運動推定装置100から得られた自車両の運動Yを、上記の測定対象物の見かけ上の運動から差し引く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の運動を推定する車両運動推定装置、及び自車両に対する周囲の移動体を検出する移動体検出装置に関する。本発明は、車両の事故防止システムやオートクルーズ制御システムに用いることができる。
【背景技術】
【0002】
走行車両と歩行者や自転車などとの衝突を回避するためには、走行前方の障害物を検出するだけでは不十分であり、走行車両の前方を横断する可能性のある状態を事前に予測することが必要となる。このために、走行車両の周辺に存在する歩行者や自転車などの物理的には小物体を、移動していることを手がかりに検出している。そして、走行車両の前方を横断しようとする歩行者や自転車や、走行車両と並行する歩行者や自転車などを検出した場合に、その状況に応じた警報を発したり、衝突を回避するために自動ブレーキによる減速や停止、ハンドル操作などを行うようにすることが提案されている。この移動物体を判読する時に問題となるのは、走行中の車両から前方の物体を撮像しているために、路面に対して静止している物体であっても、撮像データからは移動体として把握されることである。たとえば、路肩に沿って設置されているガードレールであっても、車両が走行しているために、車両の前方を横方向に横断する移動物体と認識される可能性がある。
【0003】
【特許文献1】特開平10−100820
【特許文献2】特開2000−247207
【特許文献3】特開平5−79850 上記の特許文献1に開示されている技術は、車両の進行方向の前方に侵入する横方向移動物体をガードレールと区別して判別できるようにしたものである。この方法は、物体前方までの距離を測定するものであるが、車両の進行方向の物体の観測される距離のバラツキが小さく、路面に平行で車両の進行方向に対して垂直な横方向(以下、単に、「横方向」という)の移動速度が所定値よりも大きい場合に、車両の進行方向前方に進入する可能性のある移動物体と認識するものである。
【0004】
また、上記の特許文献2に開示されている技術は、走行車両が旋回している時に、歩行者などの移動体の横方向の移動速度が所定値を越える時に移動体と判断すると、走行車両の旋回速度だけ、検出される移動体の横方向の移動速度に誤差が含まれるので、別に独立して設けたヨーレートセンサより、走行車両の旋回速度を検出して、移動体の横方向の移動速度を補正するようにしている。
【0005】
さらに、特許文献3に記載の技術は、歩行者などの移動体を検出する技術ではないが、走行車両のヨーレートを求めるのに、走行車両の前方の物体をステレオ画像として撮像し、左右の画像の相互相関関数を求め、異なる時刻間でのその相互相関関数のさらなる相互相関関数を求めている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、例えば特許文献1においては、測定画像を処理して走行車両の前方を横方向に移動する歩行者を検出するのに、車両が移動していることによる影響が考慮されていない。このため、検出される横方向の移動速度に誤差が含まれ、横方向に移動する歩行者を誤検出したり、歩行者を検出すべき時に検出しなかったりするという問題がある。
【0007】
また、特許文献2においては、走行車両が旋回しているときには、レーダでその前方を横方向に移動する移動体の横方向の移動速度を検出すると、その移動速度には大きな誤差が含まれるので、走行車両の旋回角をヨーレートセンサで物理的に検出して、対象物体の横方向の移動速度を補正しているが、進行方向の車両の時間的移動量は考慮されていないし、レーダの他にヨーレートを物理量として検出する別の独立したヨーレートセンサを必要とするという課題がある。
【0008】
また、特許文献3においては、ステレオ画像から撮像している車両のヨーレートを検出することが開示されているが、車両の進行方向の移動量は検出されていないし、レーダを用いて測定される距離データにおいて、車両の時間的移動量(移動ベクトル)を検出するものではない。したがって、特許文献3に記載の方法は、特許文献2に開示されているヨーレートセンサの代りに用いることができるが、その代りにステレオ画像を得るために2台のカメラを必要とするという問題がある。また、走行車両の進行方向の経時的な移動量が考慮されていないので、歩行者などの移動体を検出する精度が高くないという問題がある。
【0009】
また、いずれの文献においても、走行車両の周辺の得られた距離データの時刻間の相関から、路面に静止した物体を排除して移動体のみを精度良く求めるという思想はなく、本件発明は、この技術を実現したものである。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、走行車両の前方の物体の距離を測定するスキャンセンサを用いるだけで、走行車両の運動を推定できるようにすることである。
また、本発明の他の目的は、静止部と区別して移動体を精度良く抽出することである。 これらのことを実現することにより、歩行者や自転車などの移動体を精度良く検出できるようにすることを他の目的とする。
これらの発明の目的は、各発明が全ての目的を同時に達成すべきものと解釈されるべきではなく、各発明が、上記の各目的を達成するものと解するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するためには、以下の手段が有効である。
即ち、本発明の第1の手段は、走行する車両の周辺の物体の距離データを微小時間間隔で収得してそれらの距離データから車両の運動を推定する車載用の車両運動推定装置において、物体までの距離と方位を微小時間間隔で検出するレーダセンサと、このレーダセンサにより検出された物体までの距離を方位と対応付けて距離データとして記憶する距離データ記憶手段と、距離の変位量と方位の変位量を変動パラメータにして、距離データ記憶手段に記憶された相異なる2時刻の各距離データの間の相互相関を求める相関演算手段と、この相関演算手段により求められる相互相関が最も大きくなる照合状態におけるその2時刻の間の距離の変位量と方位の変位量を求める照合位置探索手段とを備えることである。
【0012】
上記の本発明の第1の手段における上記の距離データは、物体までの距離情報を含むデータであり、変数としては、車両の進行軸に対するレーダセンサ(例:レーザレーダやミリ波レーダなど)の照射軸の角度などが採用される。以下、照射軸と進行軸とで構成される平面を「基準平面」ともいう。したがって、距離データは、(距離、方位)を変数とするデータとなる。ただし、(距離、方位)は、レーダから直接的に得られる距離データであって、これを路面に平行なo−xy直交座標に変換した距離データであっても良い。さらに、他の座標平面に変換した画像や距離データであっても良い。
【0013】
また、上記の相互相関は、数学的な相関積分、相関積分の数値演算である積和演算、差分の絶対値和、差分の逆数の絶対値和、これらの値を正規化した値など、相関の概念が含まれる演算であれば、任意である。相関積分であれば、相関が大きい時に大きい値を示すが、差分の絶対値和では、相関が大きい程0に近い値となる。しかし、これらの評価式の定義に関係なく何れの場合においても、相互相関が最大の時に、2つの時刻における各距離データ間の相関が最も良くとれていると言える。
【0014】
なお、上記の構成や或いは以下の各本願発明においても、本発明の各装置の構成要件とされる距離データ収得手段がレーダセンサを用いて構成される場合には、障害物などの距離データは上記の基準平面上におけるスキャン角度θ(物体の方位)を引数とする1次元データ(:θに対する物体までの距離rのデータ)として取り扱うことができるが、それらの各場合においては、物体までの距離rと共にそのスキャン角度θに対するその物体からの反射強度などをも同時に、その他の測定データとして保持したり利用したりしても良い。
【0015】
また、本発明の第2の手段は、走行する車両の周辺の物体の距離データを微小時間間隔で収得してそれらの距離データから移動体を検出する車載用の移動体検出装置において、上記の本発明の第1の手段に基づいて構成された車両運動推定装置と、距離データ上において互いの距離が所定値以下に接近している観測点を連結体としてグループ化するグループ化手段と、このグループ化手段によって得られた2時刻における距離データ上の各連結体について、互いの距離が所定値以下に近接しておりかつ大きさの差異が所定値以下である2時刻間での連結体対を同一物として同定する対象物追跡手段と、この対象物追跡手段により同定される連結体の2時刻間の距離と方位の各変化量を、車両運動推定装置によって推定された距離の変位量と方位の変位量を用いて補正して、連結体の2時刻間の変位量とする移動体変位量算定手段とを備えることである。
【0016】
即ち、この第2の手段は、各時刻毎に得られる距離データから移動体を特定して、その変位量を同一の距離データから得られた走行車両の移動量で補正して、移動体の正確な変位量を求めるものである。
【0017】
また、本発明の第3の手段は、上記の本発明の第2の手段において、上記の連結体の移動速度と移動方向を求める速度算定手段と、その移動方向の時刻変化と移動速度とがそれぞれ共に所定の各範囲内に存在する時にその連結体を歩行者、自転車、または車椅子として判別する移動体判別手段とを備えることである。
なお、上記の自転車や車椅子は、モータ(原動機)を有するものであっても良い。
【0018】
また、本発明の第4の手段は、走行する車両の周辺の物体の距離データを微小時間間隔で収得して、それらの距離データから移動体を検出する車載用の移動体検出装置において、車両の周辺の物体までの距離に関する情報を含んだ距離データを微小時間間隔で収得する距離データ収得手段と、この距離データ収得手段により収得された相異なる2時刻の間の距離データの相互相関を求める相関演算手段と、この相関演算手段により求められる相互相関が最も大きくなる照合状態を生成する照合手段と、その照合状態において、その2時刻間で互いの距離が所定値以上離間している観測点を移動点として抽出する移動点抽出手段と、この移動点抽出手段により抽出された移動点から移動物を検出する移動物検出手段とを備えることである。
【0019】
即ち、本発明の第4の手段は、異なる時刻間の距離データの相関をとり、最も相関がとれた状態において、距離が所定値以上に離間している観測点を移動点として抽出するものであり、この操作により、静止点が除去され、移動点のみを得ることができる。そして、目的の移動体はこれらの移動点の中から検出される。
【0020】
ただし、本発明の第4の手段における距離データ収得手段は、前述のレーダセンサ(例:レーザーレーダやミリ波レーダなど)を用いて構成されるものに限定されるものではない。即ち、上記の距離データ収得手段は、例えばステレオカメラなどを用いて構成しても良い。周知の画像変換手段を用いれば、カメラ撮影された画像は例えば鳥瞰図などの距離データに変換することができるので、例えばこの様な手順を経て上記の距離データを得る様にしても良い。そして、この様な構成によっても、物体に対する距離データ収得手段をレーダセンサを用いて構成した場合と同様の作用に基づいて略同様の効果が得られる。したがって、本発明における距離データは、物体までの距離と方位を直接測定した測定データの他、広くは、ステレオ画像のように物体までの距離に係わる距離情報を間接的に含んだ画像データをも意味する。
【0021】
また、本発明の第5の手段は、上記の本発明の第4の手段において、物体までの距離と方位を微小時間間隔で検出するレーダセンサと、このレーダセンサにより検出された物体までの距離を方位と対応付けて距離データとして記憶する距離データ記憶手段とを備えることである。
【0022】
また、本発明の第6の手段は、上記の本発明の第4または第5の手段において、距離データ上において互いの距離が所定値以下に接近している移動点を連結体としてグループ化するグループ化手段を移動物検出手段に備え、更に、連結体の移動速度と移動方向を求める速度算定手段と、移動方向の時刻変化と移動速度とがそれぞれ共に所定の各範囲内に存在する時にその連結体を歩行者、自転車、または車椅子として判別する移動体判別手段とを備えることである。
なお、上記の自転車や車椅子は、モータ(原動機)を有するものであっても良い。
以上の本発明の手段により、前記の課題を効果的、或いは合理的に解決することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上の本発明の手段によって得られる効果は以下の通りである。
即ち、本発明の第1の手段の構成に従えば、照合位置探索手段により得られる相互相関が最も大きくなる距離の変位量と方位の変位量が、2時刻間における車両の変位量(車両の並進距離とヨー軸周りの回転角)を表している。したがって、これらの変位量の時間との関係に基づいて車両の運動を求めることができる。
【0024】
また、本発明の第1の手段においては、測定された物体までの距離rは実際にレーダセンサを用いて実測されるので、遠方の物体に対しても高い距離測定精度を確保することができ、更に、距離データ収得手段がレーダセンサを用いて構成されているので、障害物などの距離データは、上記の基準平面上におけるスキャン角度θ(物体の方位)を引数とする1次元データ(:θに対する物体までの距離rのデータ)となる。また、ステレオ画像撮像時の様に複数台の距離データ記憶手段を用いる必要がないので、1台のレーダセンサの距離データを取り扱うだけで良い。したがって、取り扱うべき距離データの量を非常に効果的に抑制することができる。
【0025】
更に、この距離データは、路面から所定の高さにある観測点の距離データに限定されているので、観測対象物の高さを推定する必要がない。即ち、この第1の手段の構成に従う限り、例えば特開2001−243456に記載されている従来の障害物検出装置などの様にして、従来ステレオ画像の照合処理によって行なってきた観測点の路面からの高さ割り出しのための推定処理などを実施する必要は全くない。また、上記の距離データ収得手段は1台で良いので、装置構成も簡単となり、同一時刻に収集された複数のステレオ画像を互いに照合する様な煩雑な相関演算処理も介在し得ない。
【0026】
したがって、本発明の第1の手段によれば、2時刻の間の静止点の当該車両からの見かけ上の挙動に基づいて、当該車両の運動(:ヨーレートや速度)を従来よりも大幅に高精度に推定することができる。また、従来のステレオ画像を照合する装置(例:特許文献3の車両ヨーレート検出装置)に比べて、その演算処理オーバーヘッドも効果的に抑制されるので、CPU負荷を軽減したり、演算処理を高速化したり、距離データ収得手段におけるサンプリング間隔を細かくしたり、或いは装置の製造コストを効果的に抑制したりすることができる。
【0027】
また、本発明の第2の手段によれば、上記の第1の手段を用いて正確に推定された当該車両の運動(:ヨーレートや速度)を加味して、観測対象物の速度を従来よりも正確に推定することが可能となるので、その観測対象物が静止物であるのか動体であるのかを従来よりも高い精度で見分けることができる。
また、本発明の第1の手段を用いればレーダセンサによってヨーレートや車速を検出することができるので、本発明の第2の手段にはヨーレートセンサや操舵角センサや車速センサなどを備える必要もなくなる。
【0028】
また、本発明の第4の手段を採用すれば、時刻間の2つの距離データの相互相関をとり、相関が最も大きくなる照合状態において、照合点を静止物として排除し、照合されない点、即ち、所定距離だけ離間した点を移動点として抽出することができる。即ち、この第4の手段は、移動点の精度の高い抽出を、創作性ある構成の下に実現したものであり、上記の移動点抽出手段によれば正確に移動点が抽出されるので、移動点と静止点との判別精度がより向上する。したがって、本発明の第4の手段によれば、静止物と移動体との判別がより確実になる。
【0029】
なお、上記の第4の手段において、移動体判別精度や速度算定精度をより高くするためには、上記の距離データ収得手段として、レーダセンサ(例:レーザーレーダやミリ波レーダなど)を用いることがより望ましい(本発明の第5の手段)。その理由は、得られる物体までの距離rを、実際にレーダセンサを用いて実測することによって、遠方の物体に対しても高い距離測定精度を確保することができるためである。
【0030】
また、本発明の第3または第6の手段によれば、歩行者、自転車、或いは車椅子の判別が従来よりも大幅に高い精度で実施可能となる。例えば特許文献1の従来装置においては、観測点の距離バラツキに関する各物体の物理的特性を識別基準に利用していたが、この識別基準だけでは前にも言及した様に高い判別精度が得られないので、歩行者に物理的特性が非常に似通っている例えば路肩の電柱や並木や或いは立て看板などの静止物と歩行者とを正確に区別することはできない。
【0031】
しかしながら、例えば上記の第6の手段によると、距離データから静止点が除去されて、移動点のみが抽出され、その移動点に対して連結体を求めるなどのグループ化をして、その連結体に対して移動速度、移動方向を求めるようにしているので、それらの値の精度が高くなる。
【0032】
また、本発明の第3または第6の手段では、移動物(観測対象物)の広がり具合と、従来よりも大幅に正確な移動速度との双方によって、移動物の種別が判別されるため、歩行者、自転車、或いは車椅子の判別処理を従来よりも遥かに高い精度で実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。
ただし、本発明の実施形態は、以下に示す個々の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
図1に、本実施例1の車両運動推定装置100のシステム構成を示す。レーザーレーダ100Bは、車両の前方バンパー付近に取り付けられたレーダセンサであり、スキャン型のレーザーレーダを用いて構成されている。距離データ記憶手段110はレーザーレーダ100Bを用いて収集した距離データ、即ち車両前方の監視対象となった物体までの距離と方位をそれぞれ対応付けたデータ記憶する手段である。照合位置探索手段120は、レーザーレーダ100Bによって収集されたこれらの距離データを処理する手段であり、相異なる2時刻間の距離データを照合する相関演算手段130を有している。運動算定手段140は、照合位置探索手段120が導いた探索結果(照合位置)に基づいて、当該車両(自車両)の運動を推定する。この運動を以下、車両運動Y或いは自車両の運動Yなどと言うことがある。
【0035】
図2のブロック図は、上記の車両運動推定装置100のシステム構成を具体的なハードウェア構成に対応させて書いたものである。上記の車両運動推定装置100は、物理的には図中の電子制御ユニット100Aとレーザーレーダ100Bから構成されている。一方、相関演算手段130を備えた上記の照合位置探索手段120や、上記の運動算定手段140などは、図中の電子制御ユニット100Aによって実現されている。
例えば、ROM102には、これらの各手段(120、130、140)を実現する制御プログラムが格納されている。CPU101はRAM103が供する記憶領域を制御プログラムのロード領域や作業領域などとして用いる。より具体的には、例えば図1の距離データ記憶手段110などとして用いる。インターフェイス部104は、入出力チャネルなどから成り外部との入出力処理に介在する。
【0036】
図3−A,−Bに本実施例1のレーザーレーダ100Bを用いた環境認識形態を示す。図1のレーザーレーダ100Bでは、図示する車両の中心線から前方右側40°と前方左側40°の合計80°の被測定領域をレーザーレーダによってスキャンする。この被測定領域は、所定の基準平面上にあり、この基準平面は、車両と路面との接平面に対して平行な面から成り、路面から略一定の高さに位置している。この高さはレーザーレーダの配設位置の高さに一致する。
【0037】
そして、レーザーレーダによる測定ピッチ、即ち角度分解能は、0.2°に設定した。また、スキャン一巡分の周期、即ちサンプリング間隔は、50msecに設定した。このレーザーレーダ100Bでは測定対象物からの反射光を検出して、その測定対象物までの距離rを測定するが、この距離rは上記の被測定領域内で各スキャン角度θ毎に測定されるので、上記の距離データはスキャン角度θを引数とする1次元データ(即ち、θに対する物体までの距離rのデータ:r(θ))として距離データ記憶手段110上に記録される。
【0038】
図4−A,−Bに、本実施例1における自車両の運動のモデル化形式を示す。前述の車両運動Yは、上記の微小時間(50msec)内の運動であり、前方への並進運動dzと車両のヨー軸周りの回転運動daとでモデル化することができる。言い換えれば、上記の微小時間をdtで表す時、自車両の前進速度vとヨーレートωは次式(1)の微分形式によって与えられる。
(自車両の運動Y)
v = dz/dt,
ω = da/dt …(1)
ただし、自車両の横方向への移動速度は前進速度vに比べて非常に小さく、無視できるものと仮定する。また、(v,ω)の代わりに(dz,da)を車両運動Y、即ち、車両の変位ベクトルと考えることもできる。
【0039】
図4−Bは、1サンプリング間隔dtだけ測定時刻が異なる自車両から周囲の静止物(図中の木)を見た時の車両と静止物との位置関係を表している。時刻t0 に測定した自車両から木までの距離をR0 (Θ0 )とし、時刻t1 =t0 +dtに測定したその木までの距離をR1 (Θ1 )とする。この時、次の関係をこれらの2つの距離R0 ,R1 の間に見い出すことができる。
【0040】
(R0 とR1 との関係)
1 (Θ1 ) = R0 (Θ0 −da)−dz …(2)
即ち、運動Y((v,ω)または(dz,da))が分っている時、R1 は上記の様なR0 に対する座標変換によって求めることができる。
【0041】
また、通常は、被測定領域にある殆ど大半のものは静止物であるので、次式(3)の評価式Sに対して最小値を与える(dz,da)が、時刻t1 =t0 +dt近傍における自車両の運動Yに一致するものと考えて良い。以下、本実施例1ではこの評価式のことを照合度Sと言う。ただし、総和は、図3−Aに図示したスキャン角θの全定義域に渡ってとる。また、r1 (θ)は、時刻t1 =t0 +dtに収集した各スキャン角度θ(全定義域)に渡る全距離データ(距離データ)に対応している。
(照合度S)
S(dz,da)≡Σ|r1 (θ)−〔r0 (θ−da)−dz〕| …(3)
【0042】
図5は1サンプリング間隔dtだけ測定時刻が異なる2時刻の距離データ(観測対象物の距離データ)のイメージ図であり、図6は本実施例1における照合処理(上記の座標変換)後のそれらの距離データのイメージ図である。例えばこの様に、被測定領域にある殆ど大半のものは静止物である場合には、上記の照合度Sを最小にする(dz,da)の組から、自車両の運動Yを求めることができる。
【0043】
図7に本実施例1の車両運動推定装置100の制御手順を示す。この処理は、前述の電子制御ユニット100Aを用いて実行可能な前述の制御プログラムによって実行すべきものであり、50msec周期で定期的に実行されるものとする。
自車両の運動を推定する処理を実現するこの制御手順では、まず最初に、本図7のステップ11において、上記の距離データを収集する。即ち、図2のレーザーレーダ100Bから上記の距離データを電子制御ユニット100A側に入力する。
【0044】
次に、ステップ12では、上記の照合度Sに対して、最小値を与えるパラメータ(dz,da)を求める。即ち、この時、図1の相関演算手段130では、与えられた変動パラメータ(dz,da)に対して、上記の照合度Sを算定する。照合位置探索手段120では、妥当と考えられる所定の範囲内で変動パラメータ(dz,da)を変動させて、最小の照合度Sを与えた変動パラメータ(dz,da)を運動算定手段140に出力する。
【0045】
この時、最小値を与えるパラメータ(dz,da)は、自車両の運動を直接反映する量であるので、経時的に大幅に急変することはない。したがって、前回の検索で最小値を与えたパラメータ(dz,da)の近傍に、今回も所望の値が有る可能性が高い。この性質を利用して上記の様な検索を実行すると、高速に最適値(最小値を与えるパラメータ(dz,da))を探索することができる。また、過去の(dz,da)のデータからオブザーバを用いて、現在時刻におけるパラメータ(dz,da)を予測し、この値に対して所定範囲を設定して、その範囲で相互相関演算を行うようにしても良い。このようにすれば、より短時間で車両の正確な運動Y(変位ベクトル)を求めることができる。
【0046】
次に、ステップ13では、前述の式(1)に基づいて自車両の運動Yを求めて外部の装置に出力する。即ち、図1の運動算定手段140にて、式(1)に従って自車両の運動Yを求める。ただし、出力先で上記の微小時間dtの値が分っている場合には、運動算定手段140は恒等変換手段(即ち、入力と出力とが常に等しい回路)に置き換えても良い。言い換えれば、図1の運動算定手段140は恒等変換手段であっても良く、よって運動算定手段140は事実上省略することが可能である。
本実施例の車両運動推定装置100を用いれば、以上の様な方式に基づいて、自車両の運動Yを推定することができる。
【実施例2】
【0047】
本実施例2では、上記の車両運動推定装置100から得られる正確な車両運動Y((v,ω)または(dz,da))に基づいて、走行路面上の移動物の移動速度を正確に推定する移動物検出装置について例示する。
図8に、本実施例2の移動物検出装置200のシステム構成を示す。本図8の車両運動推定装置100は、実施例1で説明した装置である。この移動物検出装置200は、その他に、距離データが示す測定点の局所性、即ち、距離が所定値以下に接近している複数の観測点を連結体としてグループ化するグループ化手段210と、相異なる2時刻間における各連結体の広がり(即ち、基準平面上での面積)の不変性、即ち、時刻間の面積の差などに基づいてそれらの連結体を同一の物体として同定する追跡処理部220と、各連結体の時刻間の距離と方位の各変位量(変位ベクトル)を、実施例1で求められる車両のその時の運動Yを用いて補正することで、連結体の時刻間の変位量を求める移動体変位量算定手段222と、その連結体の移動速度や移動方向を求め、それらの値が共に所定範囲に存在するか否かで、その連結体である移動体が歩行者、自転車、または車椅子であるか否かを判定する移動体判別手段230とを有している。ここで、判別すべき各移動体の種類に応じて、所定範囲は別々に設定される。追跡処理部220は、対象物追跡手段221と移動体変位量算定手段222から構成されている。
【0048】
この移動物検出装置200が具備する車両運動推定装置100は、図1に示す様にスキャン型のレーザーレーダ100Bを備えており、グループ化手段210は、車両運動推定装置100の距離データ記憶手段110を介して得られた環境情報である路上の被測定対象物の距離データを各座標の局所性を判定することで、即ち、各測定点(照射点)が互いに所定距離以内に接近しているか否かを判定することで、それらの測定点を連結体にグループ化する。
【0049】
また、移動体変位量算定手段222は、車両運動推定装置100から得られた自車両の運動Yを、上記の測定対象物の見かけ上の運動(見かけ上の速度y)から差し引く手段である。その様子を説明するものが図9である。即ち、図9は本実施例2における移動物の移動量drの求め方を示している。この図では、r0 ,r1 ,r′,drは、何れも基準平面上のベクトルであり、r0 は、1サンプリング時刻前の距離データで得られた値であり、r1 は現サンプリング時刻における距離データから得られた値である。r′は、移動体が静止しているとした時の、現サンプリング時刻における距離データ上の値であり、r0 に対する座標変換fによって求めることができる。また、この座標変換fは、先の実施例1で示した式(2)と略同様にして、自車両の運動Yから一意に決定することができる。したがって、移動物の運動(速度ベクトルdr)は次式(4)で与えられる。
(速度ベクトルdr)
dr = r1 −r′
= r1 −f(r0 ,Y) …(4)
【0050】
この様な方式により、その物体のサンプリング間隔dtにおける移動量drを精度よく推定することができる。この移動量drは基準平面上のベクトルである。したがって、実際の歩行者の速度は微分形式dr/dtで定義しても良い。しかし、サンプリング間隔dtはこのシステム(移動物検出装置200)内においては共通の定数であるので、先の式(1)に対する考え方と同様に、移動量dr自身をその移動物の移動速度(運動)と考えても特段差し支えない。
【0051】
図10に本実施例2の移動物検出装置200の制御手順を示す。この制御手順(歩行者認識処理)は50msec周期で定期的に実行される。この制御手順(歩行者認識処理)では、まず最初に、本図10のステップ21において、レーザーレーダ100Bを用いて図8の距離データ記憶手段110上に上記の距離データを収集する。
【0052】
次に、ステップ22(グループ化手段210)では、現時刻の全観測点の中から、互いに距離が近い観測点をまとめてグループ化する。この際、独立した観測点や大きさの小さいグループはノイズと判断して取り除く。
【0053】
次に、ステップ23(対象物追跡手段221)では、グループ化した物体をそれぞれ周知の追尾フィルタであるα−βフィルタを用いて追跡する。この時、サンプリング間隔dtを隔てた前後の観測結果(距離データ)において、基準平面上にて近くにあり、かつ大きさの似ているものを同一の測定対象物として同定する。そして、同定された測定対象物の中から所定の範囲内の広がりwを示すものについてのみ、その運動(見かけ上の運動y)を移動体変位量算定手段222に対して出力する。この範囲とは、例えば縦横共に1m以内の大きさ(基準平面上の広がり)などで良い。また、同時にその測定対象物の広がりwを移動体判別手段230に対して出力する。
【0054】
次に、ステップ24(移動体変位量算定手段222)では、この際、車両運動推定装置100から得られた自車両の運動Yを、上記の式(4)に従って、測定対象物の見かけ上の運動(見かけ上の速度y)から差し引く。
【0055】
次に、ステップ25(移動体判別手段230)では、上記の対象物追跡手段221で認識されたその移動物の大きさwや、上記の移動体変位量算定手段222から出力された移動速度drや或いはその移動速度drの経時的な安定性などをチェックして、その移動物の歩行者としての信頼度(歩行者らしさ)を算定または選択する。この信頼度がある閾値を越えた移動物が歩行者として検出される。例えば、歩行者と見なし得る移動物の速さは、0.5m/sec〜4.0m/secの範囲に限定するなどすると良い。
【0056】
その後のステップ26では、この判定結果(歩行者に関する検出結果)を所定の外部装置に出力する。この時、その判定結果をエンドユーザに直接知らせる場合には、その判定結果をグラフィカル表示したり、或いはその信頼度の高さなどによって色別表示したりすることがユーザの利便性の面でより望ましい。また、勿論、その判定結果は、車両の事故防止システムやオートクルーズ制御システムなどに出力しても良い。
以上の様な方式に従えば、歩行者を従来よりも正確に自動認識することができる。
【実施例3】
【0057】
上記の実施例2では、開示しなかったが、移動物と静止物とを最初から区別して、距離データから分離、抽出することも可能である。以下、その様な処理方式について説明する。
先の図5、図6からも判る様に、一時刻前の距離データ(距離データ)を、上記の車両運動推定装置100を使って推定された自車両の運動Y=(dz,da) だけずらし、即ち座標変換し、現時刻の距離データと重ねて見ると、このとき、2 つの時刻の座標が一致(座標偏差が所定値以下の場合)するものが静止物であり、一致(座標偏差が所定値よりも大きい場合)しないものが移動物であると判定することができる。
【0058】
図11に、その様な処理方式を実現する本実施例3の移動物検出装置300のシステム構成を示す。移動物検出手段302は、グループ化手段310と追跡処理部320から構成されている。また、移動点抽出手段301は、上記の座標変換を行う座標変換手段を用い行われる上記の距離データ(距離データ)の重ね合わせによって、移動点だけを抽出する手段である。この様な手段を用いれば、グループ化手段を用いる前段において、例えば図6に例示する様な移動物の移動点だけをグループ化の処理対象として取り出すことができる。したがって、その後の各処理のオーバーヘッドを大幅に削減することができ、同時に、移動物と静止物との区別も厳密となる。
【0059】
また、移動体の変位は、上記の2つの時刻における距離データを照合させた状態での移動体の変位として測定することができる。また、所定値以下に隣接点の距離が接近した移動点を連結して連結体としてグループ化して、その連結体の中点に関して変位ベクトルを求めることで、移動体の変位ベクトルを求める。なお、本図11のグループ化手段310と追跡処理部320と移動体判別手段330は、実施例2の移動物検出装置200(図8)の各部(グループ化手段210と追跡処理部220と移動体判別手段230)に対応しており、それぞれ、略同等の機能を奏する。
以上の様な方式に従えば、本実施例3の移動物検出装置300によって、歩行者は移動速度が遅いため静止物候補と区別できないこともあり得るが、走行中の車両は容易かつ確実に移動物として抽出することができる。
【実施例4】
【0060】
本実施例では、周囲に存在する静止物と歩行者の位置関係の時間的な変化によって歩行者の移動量を精度よく推定するための具体な装置構成例を開示する。図12に本実施例4の移動物検出装置400のシステム構成を示す。この移動物検出装置400は、レーザーレーダ100Bと、距離データ記憶手段110と、移動点抽出手段401と、移動物検出手段402と、歩行者判定部403の5つの部分に大きく分類することができる。
【0061】
そして、この移動物検出手段402は、前述のグループ化手段310と略同様の機能を奏するグループ化手段410と、前述の対象物追跡手段221と略同様の機能を奏する対象物追跡手段421から構成されている。一方、歩行者判定部403は、本実施例の最も特徴的な部位を具現する速度算定手段440と前述の移動体判別手段230と略同様の機能を奏する移動体判別手段430から構成されている。
【0062】
移動点抽出手段401は、前述の移動点抽出手段301と略同様の動作原理を用いて、距離データ(距離データ)中における静止点座標と移動点座標とを分離する。本実施例の移動点抽出手段401は、前述の実施例と同様に、図1の照合位置検索手段120と略同様の機能(:時刻間距離データ照合機能)をも有するものとする。即ち、本実施例は、実施例3と同様に、異なる2つの時刻における距離データの相関値が最も大きくなる照合状態を得ることで、移動点と静止点とを分別するものである。ただし、本実施例では、異なる時刻間での距離データの相関演算により求められる車両の運動Y(変位ベクトル)を、移動体を検出する場合に、陽には用いない。
【0063】
また、2つの距離データを照合して、最も照合すると思われる状態を形成して、離れた位置にある2つの照射点を静止点として決定する。照合演算には、レーザレーダの反射強度を、照合の対象に加えても良い。
【0064】
図13は、本実施例4における移動物の移動量drの求め方を、走行路面上の静止系(上記の基準平面上)において示したものであり、本図13の点A0 ,B0 はその様な静止点を表している。また、点A1 ,B1 は、各点A0 ,B0 の微小時間dtだけ後の点を表している。即ち、これらの各座標は座標変換前後でそれぞれ一致したものである。
即ち、走行路面上の静止系では、歩行者の移動(移動量dr)はこの図13に例示する様な動作イメージになる。ただし、図13の点O0 ,O1 は時刻t0 と時刻t1 =t0 +dtにおける各レーザーレーダ100Bのセンシング部の位置を示している。
【0065】
そして、上記の2つの静止点A0 ,B0 の座標は、移動点抽出手段401から速度算定手段440に対して出力される。
対象物追跡手段421は、1体の移動物としてグループ化され、かつ、同一の物体として同定された移動物の中心座標(例:点C0 ,C1 の各座標)を各サンプリング時刻毎に速度算定手段440に対して出力する。図13の略中央に図示された点C0 ,C1 は、その様な方法で与えられる、同一の移動物の各時刻(上記の時刻t0 と時刻t1 )の中心点を示している。
【0066】
この時、辺A0 0 と辺A1 1 とを基準平面上で重ね合わせると、両者の長さは当然一致しているので、点C0 から点C1 への動きdr(ベクトル)は、三角形A0 0 0 と三角形A1 1 1 の各頂点(点C0 ,C1 )のずれの量として表すことができる。
勿論、三角形A0 0 0 の大きさや形は対応する時刻の距離データ(距離データ)から容易に求めることができる。三角形A1 1 1 の大きさや形についても同様である。言い換えれば、A0 0 とA1 1 を座標軸として、その座標軸を基準にして、移動点C0 ,C1 の座標を求めることで、移動体の変位ベクトルを求めるようにしたものである。
即ち、時間dtの間におけるこの三角形ABCの経時的な変形に基づいて、移動量dr(ベクトル)を求めることができる。そして、この移動量dr(ベクトル)に基づいて、図12の速度算定手段440ではその移動体の速度ベクトルvを求めて、移動体判別手段430に出力する。
【0067】
例えばこの様な方式によっても、歩行者の運動(移動量dr)を正確に求めることができるため、従来判別が困難であった路肩の電柱や並木や立て看板などと、歩行者とを従来よりも大幅に高い精度で判別することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
上記の実施例2、3では、実施例1の車両運動推定装置100を用いて移動物検出装置(200,300)を構成したが、本発明の車両運動推定装置は、車両の運動(速度やヨーレート)を正確に検出する手段を供するものであるので、速度センサやヨーレートセンサなどの検出装置に代えて代替的に利用することも可能である。したがって、本発明の車両運動推定装置は、例えばABS関連装置やパワーステアリング関連装置などの、車両安定性や或いは操舵応答性などを改善したり調整したりするための各種の車両姿勢制御装置に対して適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例1の車両運動推定装置100のシステム構成を示すブロック図
【図2】実施例1の車両運動推定装置100のシステム構成を示すブロック図
【図3−A】実施例1の環境認識形態を示す説明図
【図3−B】実施例1の環境認識形態を示す説明図
【図4−A】実施例1における自車両の運動のモデル化形式を示す説明図
【図4−B】実施例1における自車両の運動のモデル化形式を示す説明図
【図5】実施例1における観測対象物の距離データのイメージ図
【図6】実施例1における照合処理後の距離データのイメージ図
【図7】実施例1の車両運動推定装置100の制御手順を示すフローチャート
【図8】実施例2の移動物検出装置200のシステム構成を示すブロック図
【図9】実施例2における移動物の移動量drの求め方を示す説明図
【図10】実施例2の移動物検出装置200の制御手順を示すフローチャート
【図11】実施例3の移動物検出装置300のシステム構成を示すブロック図
【図12】実施例4の移動物検出装置400のシステム構成を示すブロック図
【図13】実施例4における移動物の移動量drの求め方を示す説明図
【符号の説明】
【0070】
100 : 車両運動推定装置(実施例1)
110 : 距離データ記憶手段
120 : 照合位置探索手段
130 : 相関演算手段
140 : 運動算定手段
200 : 移動物検出装置(実施例2)
210 : グループ化手段
220 : 追跡処理部
221 : 対象物追跡手段
222 : 移動体変位量算定手段
230 : 移動体判別手段
300 : 移動物検出装置(実施例3)
301 : 移動点抽出手段
400 : 移動物検出装置(実施例4)
421 : 対象物追跡手段
440 : 速度算定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する車両の周辺の物体の距離データを微小時間間隔で収得して、それらの距離データから前記車両の運動を推定する車載用の車両運動推定装置において、
前記物体までの距離と方位を微小時間間隔で検出するレーダセンサと、
前記レーダセンサにより検出された前記物体までの距離を前記方位と対応付けて前記距離データとして記憶する距離データ記憶手段と、
前記距離の変位量と前記方位の変位量を変動パラメータにして、前記距離データ記憶手段に記憶された相異なる2時刻の各前記距離データの間の相互相関を求める相関演算手段と、
前記相関演算手段により求められる前記相互相関が最も大きくなる照合状態におけるその2時刻の間の前記距離の変位量と前記方位の変位量を求める照合位置探索手段と
を有する
ことを特徴とする車両運動推定装置。
【請求項2】
走行する車両の周辺の物体の距離データを微小時間間隔で収得して、それらの距離データから移動体を検出する車載用の移動体検出装置において、
請求項1に記載の車両運動推定装置と、
前記距離データ上において互いの距離が所定値以下に接近している観測点を連結体としてグループ化するグループ化手段と、
前記グループ化手段によって得られた前記2時刻における前記距離データ上の各連結体について、互いの距離が所定値以下に近接しておりかつ大きさの差異が所定値以下である前記2時刻間での連結体対を同一物として同定する対象物追跡手段と、
前記対象物追跡手段により同定される前記連結体の前記2時刻間の距離と方位の各変化量を、前記車両運動推定装置によって推定された前記距離の変位量と前記方位の変位量を用いて補正して、前記連結体の前記2時刻間の変位量とする移動体変位量算定手段とを有する
ことを特徴とする移動体検出装置。
【請求項3】
前記連結体の移動速度と移動方向を求める速度算定手段と、
前記移動方向の時刻変化と前記移動速度とがそれぞれ共に所定の各範囲内に存在する時に、その連結体を歩行者、自転車、または車椅子として判別する移動体判別手段と
を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の移動体検出装置。
【請求項4】
走行する車両の周辺の物体の距離データを微小時間間隔で収得して、それらの距離データから移動体を検出する車載用の移動体検出装置において、
前記車両の周辺の物体までの距離に関する情報を含んだ距離データを微小時間間隔で収得する距離データ収得手段と、
前記距離データ収得手段により収得された相異なる2時刻の間の前記距離データの相互相関を求める相関演算手段と、
前記相関演算手段により求められる前記相互相関が最も大きくなる照合状態を生成する照合手段と、
前記照合状態において、その2時刻間で互いの距離が所定値以上離間している観測点を移動点として抽出する移動点抽出手段と、
前記移動点抽出手段により抽出された前記移動点から移動物を検出する移動物検出手段とを有する
ことを特徴とする移動体検出装置。
【請求項5】
前記物体までの距離と方位を微小時間間隔で検出するレーダセンサと、
前記レーダセンサにより検出された前記物体までの距離を前記方位と対応付けて前記距離データとして記憶する距離データ記憶手段と
を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の移動体検出装置。
【請求項6】
前記距離データ上において互いの距離が所定値以下に接近している前記移動点を連結体としてグループ化するグループ化手段を前記移動物検出手段に備え、
更に、
前記連結体の移動速度と移動方向を求める速度算定手段と、
前記移動方向の時刻変化と前記移動速度とがそれぞれ共に所定の各範囲内に存在する時にその連結体を歩行者、自転車、または車椅子として判別する移動体判別手段と
を有する
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の移動体検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3−A】
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【図3−B】
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【図4−A】
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【図4−B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−160116(P2006−160116A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−355588(P2004−355588)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】