説明

車両騒音低減構造

【課題】車両の騒音をより一層低減する。
【解決手段】本発明の車両騒音低減構造10では、車両幅方向における車輪24とサイドメンバ26との間に、車輪24の車両幅方向内側面24Aと車両幅方向に対向して吸音壁30が配置されている。この吸音壁30は、その下端部30Aがサイドメンバ26に対する車両上下方向下側に位置するように車両上下方向に延在されている。この構成によれば、エンジン22からサイドメンバ26に対する車両上下方向下側を通過して車両幅方向外側に放出される駆動ノイズを吸音壁30によって吸収することで低減させることができるので、車両12の騒音をより一層低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両騒音低減構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両騒音低減構造としては、次のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、特許文献1に記載の例では、ホイールハウス内にフェンダライナが設けられると共に、車輪とフェンダライナとの間の空間を通過して車外に放出される音を音波の干渉を利用して低減させる構造が備えられている。
【特許文献1】特開2004−168174号公報(図5)
【特許文献2】実開昭64−10442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の例では、サイドメンバに対する車両上下方向下側を通過するノイズについては対策がなされていない。従って、サイドメンバに対する車両上下方向下側を通過するノイズを低減して、車両の騒音をより一層低減させるためには改善の余地がある。
【0004】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、車両の騒音をより一層低減することができる車両騒音低減構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車両騒音低減構造は、車両幅方向における車輪とサイドメンバとの間に配置されると共に、前記車輪の車両幅方向内側面と車両幅方向に対向して設けられ、且つ、その下端部が前記サイドメンバに対する車両上下方向下側に位置するように車両上下方向に延在されて、吸音性を有する吸音壁を備えている。
【0006】
この請求項1に記載の車両騒音低減構造によれば、車両幅方向における車輪とサイドメンバとの間には、車輪の車両幅方向内側面と車両幅方向に対向して吸音壁が配置されており、この吸音壁は、その下端部がサイドメンバに対する車両上下方向下側に位置するように車両上下方向に延在されている。
【0007】
従って、サイドメンバに対する車両上下方向下側を通過するノイズを吸音壁によって吸収することで低減させることができるので、車両の騒音をより一層低減させることができる。
【0008】
請求項2に記載の車両騒音低減構造は、請求項1に記載の車両騒音低減構造において、前記吸音壁が車両の駆動源に対する車両幅方向外側に配置された構成とされている。
【0009】
この請求項2に記載の車両騒音低減構造によれば、駆動源からサイドメンバに対する車両上下方向下側を通過して車両幅方向外側に放出される駆動ノイズを吸音壁によって吸収することで低減させることができる。
【0010】
請求項3に記載の車両騒音低減構造は、請求項2に記載の車両騒音低減構造において、前記車輪に対する径方向外側に配置されると共に、前記車輪の周面と前記車輪の径方向に対向して設けられ、且つ、前記吸音壁と連続するように接続されて、吸音性を有するフェンダライナと、前記駆動源に対する車両上下方向下側に配置されると共に、少なくとも前記吸音壁と連続するように接続されて、吸音性を有するアンダカバーと、をさらに備えている。
【0011】
この請求項3に記載の車両騒音低減構造によれば、フェンダライナ及び吸音壁が連続するように接続されているので、車輪が路面を転動することに伴って発生したロードノイズをフェンダライナ及び吸音壁で効果的に吸収することができる。
【0012】
また、吸音壁及びアンダカバーも連続するように接続されているので、駆動源から発生した駆動ノイズを吸音壁及びアンダカバーで効果的に吸収することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上詳述したように、本発明によれば、車両の騒音をより一層低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の車両騒音低減構造の一実施形態について説明する。
【0015】
図1には、本発明の一実施形態に係る車両騒音低減構造10が適用された車両12の前部が平面図にて示されており、図2には、この車両12の前部が斜視図にて示されている。また、図3には、この車両12の前部を図1の3−3線で切断した図が示されている。
【0016】
なお、これらの図において示される矢印UP、矢印FR、矢印OUTは、この車両12の車両上下方向上側、車両前後方向前側、車両幅方向外側(右側)をそれぞれ示している。
【0017】
車両12は、図1,図2に示されるように、前部にエンジンルーム14を有している。エンジンルーム14は、バンパカバー16、フェンダパネル18、ダッシュパネル20によって構成されており、このエンジンルーム14には、駆動源としてのエンジン22が収容されている。
【0018】
また、このエンジン22に対する車両幅方向外側には、図3に示されるように、車両前後方向に延在するサイドメンバ26が設けられており、このサイドメンバ26に対する車両幅方向外側には、車輪24が設けられている。
【0019】
車両騒音低減構造10は、図1,図2に示されるように、この車両12の前部に適用されており、フェンダライナ28と、吸音壁30と、アンダカバーとしてのフロントアンダカバー32と、リアアンダカバー34とを備えて構成されている。
【0020】
フェンダライナ28は、上述の車輪24の周面に沿う円弧状に形成されており、図3に示されるように、車輪24に対する径方向外側に配置されると共に、この車輪24の周面と車輪24の径方向に対向して設けられている。なお、このフェンダライナ28は、フェンダパネル18及びバンパカバー16に固定されている。
【0021】
吸音壁30は、車両上下方向及び車両幅方向に延在されており、上述のフェンダライナ28と一体的に構成されている(フェンダライナ28と連続するように接続されている)。この吸音壁30は、エンジン22に対する車両幅方向外側に配置されると共に、車両幅方向における車輪24とサイドメンバ26との間に配置されている。
【0022】
また、この吸音壁30は、車両12の直進時における車輪24の車両幅方向内側面24Aと車両幅方向に対向して設けられると共に、その下端部30Aがサイドメンバ26に対する車両上下方向下側に位置するように車両上下方向に延在されている。
【0023】
フロントアンダカバー32は、車両幅方向及び車両前後方向に延在されており、エンジン22に対する車両上下方向下側に配置されている。このフロントアンダカバー32における車両幅方向両端側は、図1,図2に示されるように、上述のフェンダライナ28及び吸音壁30と連続するように接続されている。
【0024】
リアアンダカバー34は、フロントアンダカバー32に対する車両前後方向後側に配置される共に、エンジン22に対する車両上下方向下側に配置されている。
【0025】
本実施形態において、上述のフェンダライナ28、吸音壁30、フロントアンダカバー32及びリアアンダカバー34は、いずれも例えば不織布等の吸音性を有する材料により構成されている。
【0026】
なお、フロントアンダカバー32は、バンパカバー16及び図示しないサスペンションメンバに固定されており、リアアンダカバー34は、図示しないサスペンションメンバに固定されている。
【0027】
次に、本発明の一実施形態に係る車両騒音低減構造10の作用及び効果について説明する。
【0028】
先ず、本発明の一実施形態に係る車両騒音低減構造10の作用及び効果をより明確にするために、比較例に係る車両騒音低減構造110について説明する。図8には、比較例に係る車両騒音低減構造110が適用された車両112の前部が断面図(図3と同様な断面図)にて示されている。
【0029】
この比較例に係る車両騒音低減構造110は、上述の本発明の一実施形態に係る車両騒音低減構造10に対し、吸音壁30、フロントアンダカバー32、リアアンダカバー34が省かれた構成とされている。
【0030】
この比較例に係る車両騒音低減構造110では、エンジン22が駆動すると、このエンジン22から発生した駆動ノイズN1がサイドメンバ26に対する車両上下方向下側を通過して車両幅方向外側に放出される。
【0031】
従って、サイドメンバ26に対する車両上下方向下側を通過する駆動ノイズN1を低減して、車両112の騒音をより一層低減させるためには改善の余地がある。
【0032】
これに対し、本発明の一実施形態に係る車両騒音低減構造10によれば、図3に示されるように、車両幅方向における車輪24とサイドメンバ26との間には、車輪24の車両幅方向内側面24Aと車両幅方向に対向して吸音壁30が配置されており、この吸音壁30は、その下端部30Aがサイドメンバ26に対する車両上下方向下側に位置するように車両上下方向に延在されている。
【0033】
従って、エンジン22からサイドメンバ26に対する車両上下方向下側を通過して車両幅方向外側に放出される駆動ノイズN1を吸音壁30によって吸収することで低減させることができるので、車両12の騒音をより一層低減させることができる。
【0034】
また、本発明の一実施形態に係る車両騒音低減構造10によれば、フェンダライナ28及び吸音壁30が連続するように接続されているので、車輪24が路面を転動することに伴って発生したロードノイズN2をフェンダライナ28及び吸音壁30で効果的に吸収することができる。
【0035】
また、本発明の一実施形態に係る車両騒音低減構造10によれば、エンジン22に対する車両上下方向下側には、フロントアンダカバー32及びリアアンダカバー34が配置されている。従って、エンジン22から車両上下方向下側に向けて発生した駆動ノイズN3についてはフロントアンダカバー32及びリアアンダカバー34でそれぞれ吸収することができる。
【0036】
また、吸音壁30及びフロントアンダカバー32も連続するように接続されているので、エンジン22から発生した駆動ノイズN1,N3を吸音壁30及びフロントアンダカバー32で効果的に吸収することができる。
【0037】
特に、本発明の一実施形態に係る車両騒音低減構造10によれば、吸音壁30、フロントアンダカバー32及びリアアンダカバー34によってエンジン22が囲まれているので、エンジン22から発生した駆動ノイズN1,N3に対する吸音効果だけでなく遮断効果も奏することができる。
【0038】
また、本発明の一実施形態に係る車両騒音低減構造10によれば、円弧状のフェンダライナ28に吸音壁30が一体的に構成されている(フェンダライナ28に吸音壁30が連続するように接続されている)ので、フェンダライナ28の剛性を向上させることができる。また、フェンダライナ28の剛性が向上されることで、このフェンダライナ28に接続されたバンパカバー16の剛性を向上させることができる。
【0039】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【0040】
例えば、本発明の一実施形態に係る車両騒音低減構造10は、上記実施形態以外に、次のように構成されていても良い。図4〜図7には、本発明の一実施形態に係る車両騒音低減構造10の変形例が示されている。
【0041】
つまり、図4,図5に示される第一変形例では、上記実施形態に対し、リアアンダカバー34における車両幅方向両端側が吸音壁30と連続するように接続されている。
【0042】
このように構成されていると、一対のフェンダライナ28間がアンダカバーとしてのフロントアンダカバー32及びリアアンダカバー34によって接続されるので、エンジン22から車両上下方向下側に向けて発生した駆動ノイズに対する吸音性能をより向上させることができると共に、エンジン22の前後方向に亘って吸音性能を向上させることができる。また、エンジン22から発生した駆動ノイズに対する遮断効果もより一層向上させることができる。
【0043】
また、この場合に、図6に示されるように、フロントアンダカバー32及びリアアンダカバー34の適宜箇所にビード38が形成されていても良い。また、ビード38は、フェンダライナ28に形成されていても良い。
【0044】
このように構成されていると、フロントアンダカバー32、リアアンダカバー34及びフェンダライナ28の表面積を拡大することができ、吸音性能及び遮音性能をより向上させることができる。
【0045】
また、図示していないが、ビード38は、吸音壁30に形成されていても良い。
【0046】
また、上記実施形態及び上記変形例において、フロントアンダカバー32及びリアアンダカバー34は、別体に構成(車両前後方向に分かれて構成)されていたが、図7に示されるように、アンダカバー36として一体に構成(車両前後方向に連続して構成)されていても良い。
【0047】
また、上記実施形態において、車両騒音低減構造10は、車両の前部にエンジンが搭載された車両の前部に適用されていたが、車両の後部にエンジンが搭載された車両の前部又は車両の中央部にエンジンが搭載された車両の前部に適用されても良い。
【0048】
また、上記実施形態において、車両騒音低減構造10は、車両の前部にエンジンが搭載された車両の後部又は車両の中央部にエンジンが搭載された車両の後部に適用されても良い。
【0049】
また、上記実施形態において、車両騒音低減構造10は、エンジン22(例えば、ガソリンエンジン等の内燃機関)を備えた車両12に適用されていたが、駆動源としてモータを備えた電気自動車や、駆動源としてエンジン及びモータを備えたハイブリッド車に適用されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両騒音低減構造が適用された車両の前部を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車両騒音低減構造が適用された車両の前部を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両騒音低減構造が適用された車両の前部を図1の3−3線で切断した断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る車両騒音低減構造の第一変形例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る車両騒音低減構造の第一変形例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る車両騒音低減構造の第二変形例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る車両騒音低減構造の第三変形例を示す図である。
【図8】比較例に係る車両騒音低減構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
10 車両騒音低減構造
22 エンジン(駆動源)
24 車輪
24A 車両幅方向内側面
26 サイドメンバ
28 フェンダライナ
30 吸音壁
30A 下端部
32 フロントアンダカバー
34 リアアンダカバー
36 アンダカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両幅方向における車輪とサイドメンバとの間に配置されると共に、前記車輪の車両幅方向内側面と車両幅方向に対向して設けられ、且つ、その下端部が前記サイドメンバに対する車両上下方向下側に位置するように車両上下方向に延在されて、吸音性を有する吸音壁を備えた車両騒音低減構造。
【請求項2】
前記吸音壁は、車両の駆動源に対する車両幅方向外側に配置されている、
請求項1に記載の車両騒音低減構造。
【請求項3】
前記車輪に対する径方向外側に配置されると共に、前記車輪の周面と前記車輪の径方向に対向して設けられ、且つ、前記吸音壁と連続するように接続されて、吸音性を有するフェンダライナと、
前記駆動源に対する車両上下方向下側に配置されると共に、少なくとも前記吸音壁と連続するように接続されて、吸音性を有するアンダカバーと、
を備えた、
請求項2に記載の車両騒音低減構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−52660(P2010−52660A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222099(P2008−222099)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】