説明

車中のドライバの運転能力を測定するための装置

ドライバの眼の少なくとも一つを照らすための照明装置(1)と、照らされた眼の像を撮影するための画像撮影装置(2)と、画像撮影装置により撮影された像の評価を行うための評価装置(3)と、データ記憶装置(4)を有する、車のドライバの運転能力を測定するための装置が記載される。装置は基本的に、照明装置(1)が、ドライバの眼の少なくとも一つをフラッシュ型の光を用いてもしくは断続的に照らすことと、評価装置(3)が、画像撮影装置(2)によって撮影されたドライバの瞳孔反応用の測定値を、データ記憶装置(4)に保存された瞳孔反応用の少なくとも一つの標準値と比較することと、瞳孔反応用の測定値が標準値に達しないとき、車が起動しないように、もしくは運転状態の車が停止した後に運転されないように、制御装置(5)に影響を及ぼすことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバの眼の少なくとも一つを照らすための照明装置と、照らされた眼の像を撮影するための画像撮影装置と、画像撮影装置により撮影された像の評価を行うための評価装置と、データ記憶装置を備える、車中のドライバの運転能力を測定するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
毎年、居眠り運転するドライバにより引き起される自動車に関連する多くの交通事故がある。従って、車ドライバの覚醒もしくは非睡眠の状態を連続的に観測し、また運転時にドライバが居眠りする前の都合の良い時にドライバに警告するのに用いる様々な装置が既に提案されてきた。このために、少なくとも一つの眼の領域の像が画像撮影装置により撮影され、また下流側の画像評価装置により解析される。例えば、独国特許第198 03 158 C1号明細書と独国特許第196 21 435 A1号明細書から周知なこの型の装置を用いて、画像評価装置は、次第に頻繁になる眼の閉鎖を特定でき、またこれは疲労感の増大と理解される瞼の閉鎖を認識するための手段を含む。警告系装置が画像評価装置に割り当てられ、またこれは特定状態の疲労感に応じた警告信号を車のドライバに発出する。瞼の閉鎖を認識するための手段のみならず、独国特許第 198 03 158 C1号明細書に記載の装置は同様に、瞳孔径を測定するための、もしくは瞳孔径振動を検出するための手段を有する。
【0003】
道路交通の安全はしかしながら、ドライバの過労もしくは嗜眠状態により影響されるだけではなく;アルコール、もしくは麻薬、もしくは薬物の影響下で自動車を運転しているドライバに伴う特に高いリスクもある。独国だけで、毎年約40,000件の交通事故が、運転時のアルコールに起因し、そのうちの約2,000件が致命的結果をもたらしている。
【発明の開示】
【0004】
この発明の基本となる目的は、アルコールまたは薬物を飲んだり、あるいは麻薬を服用したりしたため運転することができないドライバにより、車が起動されないように、もしくは運転されないようにするのに適した、ドライバの運転能力を測定するための装置を車に設けることである。
【0005】
この目的は、請求項1の機能を備える装置による本発明に従って達成される。本発明に記載の装置の好適でかつ有利な実施形態は、従属請求項に記載される。
【0006】
本発明に記載の装置は、ドライバの眼の少なくとも一つを照らすための照明装置と、照らされた眼の像を撮影するための画像撮影装置と、画像撮影装置により撮影された像の評価を行うための評価装置と、データ記憶装置を具備する。照明装置は、ドライバの眼の少なくとも一つをフラッシュ型の光を用いてもしくは断続的に照らし、評価装置は、画像撮影装置によって撮影されたドライバの瞳孔反応用の測定値を、データ記憶装置に保存された瞳孔反応用の少なくとも一つの標準値と比較し、また瞳孔反応用の測定値が標準値に達しないとき、車が起動しないように、もしくは適切な場合でも、運転状態の車が停止した後に運転されないように、制御装置に影響を及ぼす。
【0007】
基本的に、人は瞳孔の幅もしくは瞳孔の挙動に意図的に作用できない。数分間に及ぶ暗闇においての自然な瞳孔の挙動の特性評価と解析は、無意識に制御された中枢神経活性化のレベルに関する情報をもたらす客観的方法である。安定な瞳孔の幅は、高い活性化レベル、即ち覚醒状態に対応するが、瞳孔振動は嗜眠状態の兆候である。薬物を飲んだ人に実施された瞳孔記録調査により、血液中の薬物濃度が低い場合でさえ、光に対する瞳孔反応に関する明確な不全が、嗜眠状態の瞳孔反応の形もしくは瞳孔反応の全くない形で発生することが分った。
【0008】
本発明に記載の装置の照明装置を用いて、ドライバの眼の少なくとも一つは、フラッシュ型の光を用いてもしくは断続的に照らされ、また瞳孔反応は、画像撮影装置によって記録される。この方法で記録された測定値は、少なくとも一つの保存された標準値もしくは評価装置の許容可能な標準値の帯域幅と比較される。もし比較が、運転中の瞳孔反応用の一般的な標準値と、取得された測定値に受容できない偏差の能力を示すならば、車は本発明に記載の装置の制御装置により起動されず、もしくは運転状態の車が停止した後に運転され続けないようにされる。
【0009】
瞳孔反応のないもしくは嗜眠状態の場合、運転しているとき自動車が突然に運転されないようにすることは問題があるので。本発明に記載の装置は、運転するための一般的な標準値と測定された瞳孔反応の値に受容できない偏差の能力がある場合だけ、自動車を起動せず、もしくは自動車が停止するならば運転され続けないようにするのが好ましい。
【0010】
適切な場合でも、運転状態の自動車が停止された後に運転されないようにすると記載の選択肢は、自動車が、最初に運転のできる人により運転され、かつ次にエンジンをかけたまま、アルコールもしくは薬物を飲んだため運転できないドライバへのドライバの交代がある場合に特に有利である。
【0011】
もし本発明に記載の装置が、瞳孔反応が無いもしくは嗜眠状態の瞳孔反応、そしてドライバの運転の不能を検出するならば、本装置の制御装置は、エンジン起動を解除しないのが好ましい。あるいは、またはさらに、制御装置はそのとき、適切な場合でも、自動車の手動もしくは自動の変速機の少なくとも前方ギアの係合も阻止できる。後者は、電気的にシフトされる変速機を用いて具体的に利用可能である。
【0012】
本発明に記載の装置の好適な実施形態はさらに、瞳孔反応用に記録された測定値が光により引き起された瞳孔反応用の保存された標準値に達しないとき、音響的及び/又は視覚的警告信号を発する信号発生器を作動する評価装置から成る。この実施形態は、適切な場合の運転中でさえ、ドライバの運転の不能を報せるために有利である。警告信号は例えば、クラクション信号、音声信号及び/又は車のヘッドライト及び/又はハザード警告フラッシュにより発せられた光信号であることが多い。同伴旅行者と他の道路ユーザはしたがって、具体的にドライバの運転の能力を察知できる。
【0013】
本発明に記載の装置の照明装置は、可視光を発する少なくとも一つのフラッシュ型光源を有するのが好ましい。
【0014】
さらなる好適な実施形態に記載の照明装置は、可視的な色のスペクトルの外側の熱線を発する少なくとも一つの赤外線光源を具備する。相応して、画像撮影装置はそのとき、赤外光に敏感なカメラ装置により形成される。具体的に赤外フラッシュ光源であることが多い赤外線光源は、運転時のドライバの瞳孔反応を測定するのに用いる。外部光源、具体的には赤外光に敏感なカメラ装置を用いて、近づいてくる車の光により引き起された瞳孔反応と同様に、ドライバの眼の少なくとも一つの角膜表面のサイズ、瞼の閉鎖の回数、瞼の閉鎖の継続期間及び/又は瞳孔径を測定できる。対応する測定値を対応する標準値と比較することにより、発現するもしくは現行のドライバの嗜眠状態を測定できる。もし嗜眠状態が検出されるなら、ドライバの嗜眠状態に対抗しもしくはドライバまたは第三者に警告するように、嗜眠状態を再び音響的及び/又は視覚的信号送信機により送信できる。
【0015】
これに関連して、本発明に記載の装置のさらに有利な実施形態は、角膜表面の可視サイズ、瞼の閉鎖の回数及び/又は眼瞼の閉鎖継続期間の変化及び/又は瞳孔径の振動の発生に応じたドライバの疲労感に対抗する、発散し広域の光を発する、ドライバの視野と整列されたもしくは整列可能な照明装置を作動する評価装置から成る。
【0016】
本発明に記載の装置が、アルコールもしくは薬物を飲んだため運転できないドライバにより回避されることがないように、虹彩構造、眼の色、両眼の距離、鼻の大きさ、口の大きさ及び/又は顔の形状に関する一つ以上の個人用の生体データを同様に、データ記憶装置に保存でき、また前記当該のドライバの対応する生体データを画像撮影装置により測定でき、ドライバを特定するための評価装置が構築された生体データを保存された生体データと比較し、かつ比較されたデータが前もって指定された許容限度の範囲内に対応しないならば、評価装置は、車が起動しないように、もしくは運転状態の車が停止した後に運転されないように少なくとも一つの制御装置に影響を及ぼすことが、装置のさらなる実施形態により提案される。
【0017】
運転のできる人が初めに自動車を起動し、また次に、エンジンがかかっているとき、アルコールもしくは薬物を飲んだため運転できないドライバに自動車の制御と使用を譲るということを本発明に記載の装置が回避することは、このように排除できる。
【0018】
これに加えてもしくはこれの代わりに、本発明に記載の装置を同様に、少なくとも一つの指紋用の生体データをデータ記憶装置に保存でき、またセンサによって、前記当該のドライバの指紋用生体データを取得でき、ドライバを特定するための評価装置が再び取得された生体データを保存された生体データと比較し、かつ比較されたデータが前もって指定された許容限度の範囲内に対応しないならば、評価装置は、車が起動しないように、もしくは運転状態の車が停止した後に運転されないように少なくとも一つの制御装置に影響を及ぼすように設計できる。
【0019】
本発明に記載された装置の別の有利な実施形態は、画像撮影装置、評価装置及び/又はデータ記憶装置が、信号及び/又はデータ転送用の少なくとも一つのインターフェースを設けられることを特徴とする。インターフェースは、別の移動又は中央の観測及び/又はデータ処理の装置から及び装置へ、簡単なデータ転送を可能にする。具体的に、このインターフェースを、ワイアレス信号もしくはデータ送信用の送信/受信装置として設計できる。
【0020】
さらに具体的で好適な実施形態に記載の、照明装置及び/又は画像撮影装置が、ドライバのために設けられた車用遮光板に一体化される。
【0021】
本発明に記載の装置の操作を阻止しないために、さらなる実施形態は、もし画像撮影装置の機能不全及び/又は照明装置の機能不全及び/又は音響的及び/又は視覚的警告信号を発する信号送信機の機能不全があるならば、評価装置は、車が起動しないように、もしくは運転状態の車が停止した後に運転されないように、少なくとも一つの制御装置に影響を及ぼすことを提案する。
【0022】
下記に、実施形態の幾つかの事例を示している図面によって、本発明はさらに詳細に説明される。これらは下記のとおりである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1に概略的に示される装置は、ドライバが運転席の位置に乗るときに自動車のドライバの少なくとも一つの眼、また好ましくは両方の眼を照らす照明装置1を有する。運転席の占有は、一つ以上の適切なセンサ、例えば圧力センサ(示されていない)及び/又は光センサ、具体的にはカメラにより検出される。照明装置1は、可視光、もしくは断続的に可視光を発するフラッシュ型の光から成る。放射される光の強度もしくは輝度は、ここでは時間の関数である。照射された眼の瞳孔径は放射された光もしくはその輝度により変化する。
【0024】
画像撮影装置2は、照明装置1に割り当てられ、また画像撮影装置はドライバの照らされた一つ以上の眼の像を撮影するカメラから成る。撮影された像は、データ記憶装置4を設けられた評価装置3を用いて評価される。
【0025】
評価装置3は、撮影された像から取得されたドライバの瞳孔反応用の測定値をデータ記憶装置4に保存された瞳孔反応用の標準値と比較する。比較は具体的には、瞳孔反応時間に関連する。瞳孔反応時間は、運転のできる様々な人について別の値を有し、かつ一定の帯域幅の範囲内に在ることが多いので、運転能力についての標準の瞳孔反応時間用の特定の限界値もしくは設定値がデータ記憶装置4に保存されるのが好ましい。
【0026】
もし測定された瞳孔反応時間が、標準値(設定値)もしくは限界値(最小値)に達しないならば、評価装置2は、自動車が起動しないように、もしくは運転状態の自動車が停止した後に運転されないように、制御装置5に影響を及ぼす。
【0027】
示された実施形態の事例において、制御装置5は、点火装置6、例えば点火ロックスイッチ及び/又はスタータと共に動作し、その結果もし必要ならエンジン起動を阻止する。さらに、図1において、制御装置によって、車の手動又は自動の変速機7の少なくとも前方ギアの係合を阻止できる可能性も示される。
【0028】
画像撮影装置2、評価装置3、データ記憶装置4及び/又は制御装置5は、外部信号機及び/又はデータ転送手段になりうる少なくとも一つのインターフェースを設けられるのが好ましい。
【0029】
さらに、評価装置3又はそれに割り当てられた制御装置5に取付けられ、対応する動作により音響的及び/又は視覚的警告信号を発する信号発生器8がある。ドライバ用に測定された実際の瞳孔反応時間が保存された“標準”瞳孔反応時間に達しないのを、評価装置が検出するとき、信号発生器8は評価装置3の制御装置5によって作動される。
【0030】
さらに、評価装置3に取付けられて、ドライバの特定に用いる指紋センサ9がある。センサにより測定された指紋の生体データを、データ記憶装置4に保存できる。評価装置3は、撮影された指紋を一つ以上の保存された指紋のデータと比較する。もし比較されたデータが前もって指定された許容限度の範囲内に対応しないならば、評価装置3は、車が起動しないように、もしくは適切な場合でも、運転される車が停止した後に運転されないように、制御装置5に影響する。この場合は、ドライバの指紋に関して“未知”であるドライバの運転能力を、瞳孔反応時間を試験することにより確実に立証したときだけ、評価装置3は、車が再び起動しもしくは運転されることを可能にする。
【0031】
あるいは又はさらに、一つ以上の人々の他の生体データも、データ記憶装置4に保存できる。前記当該のドライバの虹彩構造特性、眼の色、両眼の距離、眼尻、鼻の大きさ、口の大きさ及び/又は顔の形状などの生体データは、画像撮影装置により測定され、またデータ記憶装置4に保存されるのが好ましい。ドライバを特定するために、評価装置3は次にもう一度、測定された生体データを保存された生体データと比較する。もし比較されたデータが前もって指定された許容限度の範囲内に対応しないならば、車が起動しないように、もしくは運転状態の車が停止した後に運転されないようにする制御装置5に、対応する信号が発せられる。この場合もまた、ドライバの構築された生体データに関して“未知”であるドライバの運転能力を、瞳孔反応時間を試験することにより確実に立証したときだけ、評価装置3は、車が再び起動しもしくは運転されることを可能にする。
【0032】
さらに、図1に示される装置は、ドライバの視野と整列されたもしくは整列可能な赤外線光源10を有する。画像撮影装置2は、赤外光に敏感なカメラ装置により相応に形成され、あるいはこの型のカメラ装置を具備する。
【0033】
角膜表面の可視サイズ、瞼の閉鎖の回数及び/又はカメラ装置2により検出されるドライバの一つ以上の眼瞼の閉鎖継続期間の変化及び/又は瞳孔径の振動が発生するときに応じたドライバの疲労感に対抗する、発散し広域の光を発する、ドライバの視野と整列されたもしくは整列可能な照明装置11を作動するように、評価装置3が設計されるのが好ましい。このことは、図2−8を参照してさらに詳細に説明される。
【0034】
本発明に記載の装置の照明装置1と、10と、11及び画像撮影装置2を、ドライバ用に設けられる遮光板に一体化するのが好ましい。
【0035】
図2と3は、自動車のハンドル13を握ったドライバ12を示す。慣例により、ドライバは折り返し可能な遮光板14を提供されていて、図2は、遮光板14が上方へ折り返された位置にある状態を示している。この状態は一般に、夜間運転もしくは長いトンネルを通って運転する状態に対応する。
【0036】
ドライバ12の眼の少なくとも一つを、フラッシュ型の光によりもしくは断続的に照らす運転能力の測定に用いる照明装置は、遮光板14の両側に配置される。二つの照明装置1と1´のうち、遮光板14の位置に応じたドライバ12の視野に対向する照明装置のみが、スイッチを入れられるのが好ましい。
【0037】
遮光板13が上方へ折り返された位置にあるとき、ドライバ12に対向する遮光板14の先端に、ドライバ12の視野の領域の輝度を測定する光センサ15が配置される。
【0038】
さらに、遮光板14は、ドライバの眼の少なくとも一つの領域の像を撮影するための赤外線照明を具備する画像撮影装置を設けられる。評価装置3は、画像撮影装置2に割り当てられ、またこれは画像撮影装置2により撮影された像を評価し、かつドライバの視野と整列されたもしくは整列可能で、角膜表面の可視サイズ、瞼の閉鎖の回数及び/又はカメラ装置2により検出されるドライバの一つ以上の眼瞼の閉鎖継続期間の変化に応じたドライバの疲労感に対抗し、広域の光を発する、照明装置11を作動する。
【0039】
ドライバ12の臨界疲労状態を立証することは具体的には、眼瞼の開口度に応じた角膜の反射レベルを測定するいわゆる角膜反射法に基づいて可能である。
【0040】
評価装置3を、記憶装置を備える、適当なコンピュータ(車両コンピュータ)もしくはマイクロプロセッサによって実現できる。評価装置3を同様に、遮光板14に一体化できるのが好ましい。しかしながら、それを同様に、車の内部の別の位置に配置できる。コンピュータもしくはマイクロプロセッサはそのとき、データと電圧の供給接続によって、遮光板14の電気光学部品と電子部品と対話状態にある。
【0041】
さらに、評価装置3は、ドライバが疲労感の臨界状態にあることを評価装置3が特定したとき、視覚的及び/又は音響的警告信号によってドライバに警告する警告信号装置(図2−8には示されていない)に接続される。
【0042】
画像撮影装置2は、光に敏感なCCD配列と、レンズと、シャッタと、焦点装置を有する小型カメラ16を具備する。ドライバが見ることができないように遮光板14に配置されるカメラ16は、好ましくは凸形のミラー式の偏向光学素子18によってドライバの視野17を測定する。さらに、カメラ16の光学径路Sにおいて、遮光板14の壁の内部の開口部を覆うもしくは遮光板14を覆っていて、かつドライバ12に可視であるビームスプリッタ19が配置される(図3と4を参照)。
【0043】
第二の対応するビームスプリッタ19は、遮光板14の反対側に配置され、また遮光板14が下方に折り返されるとき、ドライバが見ることもできる。図7に具体的に図示できるように、二つのビームスプリッタ19と、19′は、上方に折り返された位置の遮光板14においては、ビームスプリッタ19によって、また下方に折り返された位置においてはビームスプリッタ19′によって、カメラ16がドライバの眼の少なくとも一つの領域の像を撮影するように、配置される。
【0044】
傾斜ミラー18は、移動可能に取付けられる。傾斜ミラー18の空間位置は、ドライバの座っている位置と大きさに応じて、モータ20と変速機21を有するアクチュエータによって自動的に設定される。アクチュエータのモータ20は、このために評価装置により作動される。評価装置に割り当てられるデータ記憶装置に、特定される視野(視覚資料)に対応する一つ以上の参照画像が保存される。評価装置3は、カメラ16により撮影された像を参照画像と比較し、また撮影された像と参照画像との間の偏差が特定の限界値を超えている場合に、撮影された像が、再びある程度一枚以上の参照画像に対応するまで傾斜ミラー18を調整する。
【0045】
本発明に記載の装置の照明装置11は、広域の光放射面を有し、かつ散光を発するプレート形のほぼ長方形の光伝導体から成るのが好ましい。光伝導体は、ガラスから、もしくはガラス質のプラスチック、例えば風防ガラスから作製される。光放射面の反対側に、光伝導体は、反射皮膜又は反射色を有するのが好ましい。示された実施形態の事例において、光放射面は、遮光板14の平坦側の半分以上を占有する。遮光板14が下方に折り返された位置にあるとき、光放射面は、移動の方向に指向する遮光板14の側面上にのみ配置される。
【0046】
光伝導体の端部に別の光源が配置され、それらの光はそれぞれ狭い端部領域を経て光伝導体内に導くようになっている(図6を参照)。光伝導体の上部の長手方向端部上に、可視光を光伝導体内に導く光ダイオード22のバンドが配置される。二つの交差する各端部上に、赤外光用光ダイオード23と24のバンドが配置される。下部の長手方向端部上には、紫外光、現実には320nmと400nmとの間の領域の紫外線、及び/又は好ましくは430−620nmのスペクトルの光を発する光ダイオード25のバンドがある。このスペクトルを備える光放射は、試験される人々の疲労感に効果的に対抗することが試用から分った。
【0047】
遮光板14の上端部は、光センサ26が挿入される開口部を有する。光センサ26は、外部輝度を測定するのに役立ち、また電子制御機器に接続され、それによって照明装置11により放射される眼に見える及び眼に見えない光放射の強度を、光センサ26に注ぐ周囲の光放射に応じて制御する。評価装置3のコンピュータもしくはマイクロプロセッサは、この電子制御機器を具備するのが好ましい。
【0048】
遮光板14の上端部に配置される光センサに加えて、二つのさらなる光センサ27と、28が右と左に配置される。光センサ27と、28は、夜に運転するあるいは長いトンネルを通って運転するときに、近づいてくる車もしくは外部のまばゆい光源の光放射を測定するのに用いる。光センサ27と、28は、まばゆい光源から光センサ27と、28に注ぐ光放射に応じて、照明装置11から放射される少なくとも可視光線を制御する電子制御機器に接続される。さらにまた一方、放射された紫外線を、検出されたまばゆい放射に応じて制御できる。評価装置3のコンピュータもしくはマイクロプロセッサは、この制御機器も受け持つのが好ましい。
【0049】
遮光板14が下方に折り返された位置において、光放射面はドライバの視野に対向していない。しかしながら、旅行中は一日中、即ち太陽がドライバの眼を眩ますとき、遮光板14は一般に下方にのみ折り返されるので、このことは有利ではない。カメラ16はしかしながら、下方に折り返された位置においてもまたドライバの視野17をビームスプリッタ19′によって構築できる。従って、遮光板14が下方に折り返された位置において、評価装置により測定されたドライバの疲労感の状態に応じて、警告信号が適切な視覚的及び/又は音響的信号装置によってドライバに発せられることが保証される。
【0050】
前述の遮光板14は従って、従来の機能に加えてさらに、ドライバの運転能力を測定することと、ドライバの覚醒状態を観測することと、車のドライバの疲労感に対抗する光を自動的に発することと、暗闇で運転するとき近づいてくる車のドライビング・ライトにより車のドライバの眼を眩ませないようにすること;から成る機能を持つ多機能遮光板である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、車中のドライバの運転能力を測定するための、本発明に記載の装置を表しているブロック図である。
【図2】図2は、自動車のハンドル位置で、側面図で示されるドライバの略図である。
【図3】図3は、図2に記載のドライバの平面図の略図である。
【図4】図4は、ドライバの視点からの折り返し式の遮光板の斜視図である。
【図5】図5は、外部からドライバの方向に見た図4に記載の遮光板の斜視図である。
【図6】図6は、図4に記載の遮光板のさらなる斜視図である。
【図7】図7は、上方に折り返された位置と下方に折り返された位置の、図4に記載の遮光板の断面図である。
【図8】図8は、ドライバの視点から下方に折り返された位置の、図4に記載の遮光板のさらなる斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車中のドライバの運転能力を測定するための装置であって、
前記ドライバ(12)の眼の少なくとも一つを照らすための照明装置(1)と、前記照らされた眼の像を撮影するための画像撮影装置(2)と、前記画像撮影装置(2)により撮影された前記像の評価を行うための評価装置(3)と、データ記憶装置(4)を備えるものにおいて、
前記照明装置(1)は、前記ドライバ(12)の眼の少なくとも一つをフラッシュ型の光を用いてもしくは断続的に照らすことと、前記評価装置(3)は、前記画像撮影装置(2)によって前記ドライバの瞳孔反応用に撮影された前記測定値を、前記データ記憶装置(4)に保存された瞳孔反応用の少なくとも一つの標準値と比較し、前記瞳孔反応用の前記測定値が前記標準値に達しないとき、車が起動しないように、もしくは運転状態の車が停止した後に運転されないように、制御装置(5)に影響を及ぼすことを特徴とする、
測定装置。
【請求項2】
前記制御装置(5)によって、エンジン起動を阻止できることを特徴とする、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記制御装置(5)によって、車の手動もしくは自動の変速機(7)の少なくとも前方ギアの係合を阻止できることを特徴とする、請求項1−2のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項4】
前記瞳孔反応用の前記測定値が、保存された瞳孔反応用の前記標準値に達しないとき、前記評価装置(3)は、音響的及び/又は視覚的警告信号を発する信号送信機(8)を作動させることを特徴とする、請求項1−3のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記照明装置(1)は、少なくとも一つのフラッシュ型の光源を有することを特徴とする、請求項1−4のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記照明装置は、可視的な色のスペクトルの外側の熱線を発する少なくとも一つの赤外線光源(10)を有し、前記画像撮影装置(2)は、赤外線に敏感なカメラ装置(16)により形成されることを特徴とする、請求項1−5のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項7】
眼の虹彩構造と、眼の色と、両眼の距離と、眼尻と、鼻の大きさと、口の大きさ及び/又は顔の形状に関連する少なくとも一つの個人用の生体データを、前記データ記憶装置(4)に保存できることと、前記当該のドライバの対応する生体データを前記画像撮影装置(2)により測定できることと、前記ドライバを特定するための前記評価装置(3)が構築された前記生体データを前記保存された生体データと比較し、比較された前記データが前もって指定された許容限度の範囲内に対応しないならば、車が起動しないように、もしくは運転状態の車が停止した後に運転されないように、少なくとも一つの制御装置(5)に影響を及ぼすことを特徴とする、請求項1−6のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項8】
少なくとも一つの指紋から成る生体データを前記データ記憶装置(4)に保存でき、また前記当該のドライバの指紋から成る生体データをセンサ(9)によって測定できることと、前記ドライバを特定するための前記評価装置(3)が構築された前記生体データを前記保存された生体データと比較し、前記比較されたデータが前もって指定された許容限度の範囲内に対応しないとき、車が起動しないように、もしくは運転状態の車が停止した後に運転されないように、少なくとも一つの制御装置(5)に影響を及ぼすことを特徴とする、請求項1−7のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項9】
前記画像撮影装置(2)、前記評価装置(3)及び/又は前記データ記憶装置(4)は、信号及び/又はデータ転送用の少なくとも一つのインターフェースを備えることを特徴とする、請求項1−8のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項10】
前記照明装置(1)及び/又は前記画像撮影装置(2)は、前記ドライバ(12)用に設けられた車用遮光板(14)に一体化されることを特徴とする、請求項1−9のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項11】
前記評価装置(3)は、前記ドライバの視野と整列されたもしくは整列可能で、また角膜表面の可視サイズ、瞼の閉鎖の回数及び/又は眼瞼の閉鎖継続期間の変化及び/又は瞳孔径の振動の発生に応じたドライバの疲労感に対抗する、発散し広域の光を発する照明装置(11)を作動することを特徴とする、請求項1−10のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項12】
前記画像撮影装置(2)の機能不全及び/又は前記照明装置(1)の機能不全及び/又は音響的及び/又は視覚的警告信号を発する前記信号送信機(8)の機能不全がある場合、前記評価装置(3)は、車が起動しないように、もしくは運転状態の車が停止した後に運転されないように、少なくとも一つの制御装置(5)に影響を及ぼすことを特徴とする、請求項1−11のいずれか一項に記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−522003(P2007−522003A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550064(P2006−550064)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000639
【国際公開番号】WO2005/073013
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(504191785)
【Fターム(参考)】