説明

車体パネル構造

【課題】一端側からの入力荷重を他端側に効果的に伝達することができる車体パネル構造を得る。
【解決手段】フロアクロス28は、車体前後方向に延在する縦メンバ34と、それぞれ車幅方向に延在すると共に車幅方向の内端36Aが縦メンバ34に突き当てられた複数のEAクロス36と、それぞれ車幅方向に延在すると共に車幅方向の外端38Aが縦メンバ34に突き当てられた複数の横クロス38と、縦メンバ34、EAクロス36、横クロス38をそれぞれ車体上下方向の両側から挟み込んで保持するサンドイッチパネル40と、を備える。縦メンバ34、EAクロス36、横クロス38は、主にCFRPにて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体パネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ハニカム等の芯材と表層との間に強化繊維を配設した自動車の樹脂フロア構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−193691号公報
【特許文献2】特開2005−225364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の如き従来の技術は、側方からの荷重について記載がなく、この点に改善の余地がある。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、一端側からの入力荷重を他端側に効果的に伝達することができる車体パネル構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る車体パネル構造は、所定方向に長手とされた第1骨格部材と、前記所定方向との直交方向に長手とされ、それぞれ一端が前記第1骨格部材の幅方向の一端面に突き当てられた複数の第2骨格部材と、前記所定方向との直交方向に長手とされ、それぞれ一端が前記第1骨格部材の幅方向の他端面に突き当てられた複数の第3骨格部材と、前記第1骨格部材、第2骨格部材、及び第3骨格部材を、それぞれの厚み方向の両側から挟み込んで保持する一対のパネル部材と、を備えている。
【0006】
請求項1記載の車体パネル構造では、例えば複数の第2骨格部材(の一部)の他端に荷重が入力された場合、この荷重は、第1骨格部材によって所定方向に分散されて複数の第3骨格部材にそれぞれ伝達される。この際、一対のパネル部材が第1乃至第3骨格部材を厚み方向から挟み込んでいるため、これらが厚み方向に位置ずれして荷重伝達経路が不連続となること(面外変形)が防止される。これらにより、本車体パネル構造では、例えば一端側(第2骨格部材の他端)に局所的に入力された荷重に対しても、この荷重を分散しつつ効果的に他端側に伝達することができる。
【0007】
このように、請求項1記載の車体パネル構造では、一端側からの入力荷重を他端側に効果的に伝達することができる。なお、第1部材と第2又は第3部材との間には、荷重伝達可能な他の部材を介在させても良い。換言すれば、このような他の部材は、第1乃至第3部材の一部として把握することができる。
【0008】
上記目的を達成するために請求項2記載の発明に係る車体パネル構造は、繊維強化プラスチックを含む材料にて構成され、車体前後方向に延在する第1骨格部材と、繊維強化プラスチックを含む材料にて構成され、それぞれ車幅方向に延在すると共に車幅方向の内端が前記第1骨格部材に突き当てられた複数の第2骨格部材と、繊維強化プラスチックを含む材料にて構成され、それぞれ車幅方向に延在すると共に車幅方向の外端が前記第1骨格部材に突き当てられた複数の第3骨格部材と、前記第1骨格部材、第2骨格部材、及び第3骨格部材を、それぞれ車体上下方向の両側から挟み込んで保持する一対のパネル部材と、を備えている。
【0009】
請求項2記載の車体パネル構造では、例えば複数の第2骨格部材(の一部)の車幅方向外端から車幅方向内向きの荷重が入力された場合、この荷重は、第1骨格部材によって車体前後方向に分散されて複数の第3骨格部材にそれぞれ伝達される。この際、一対のパネル部材が第1乃至第3骨格部材を車体上下方向から挟み込んでいるため、これらが車体上下方向に位置ずれして荷重伝達経路が不連続となること(面外変形)が防止される。これらにより、本車体パネル構造では、脆性材料である繊維強化プラスチックを含んだ構成において、例えば車幅方向外端側に局所的に入力された荷重に対しても、この荷重を分散しつつ効果的に車幅方向内端側に伝達することができる。
【0010】
このように、請求項2記載の車体パネル構造では、一端側からの入力荷重を他端側に効果的に伝達することができる。なお、第1部材と第2又は第3部材との間には、荷重伝達可能な他の部材を介在させても良い。換言すれば、このような他の部材は、第1乃至第3部材の一部として把握することができる。
【0011】
請求項3記載の発明に係る車体パネル構造は、請求項2記載の車体パネル構造において、前記複数の第2骨格部材の車幅方向外端は、それぞれ車両フロア部の車幅方向外端で車体前後方向に延在するロッカから車幅方向の荷重を伝達可能に配置されており、前記複数の第3骨格部材の車幅方向内端は、それぞれ車両フロア部の車幅方向内端で車体前後方向に延在するトンネル部に車幅方向の荷重を伝達可能に配置されている。
【0012】
請求項3記載の車体パネル構造は、車体フロア部を構成しており、例えば車幅方向の内向き荷重がロッカに入力された場合、この荷重は、第2骨格部材、第1骨格部材、第3骨格部材を経由して、トンネル部(をさらに経由して反対側のロッカ)に効果的に伝達、分散することができる。
【0013】
請求項4記載の発明に係る車体パネル構造は、請求項2又は請求項3記載の車体パネル構造において、前記複数の第2骨格部材は、前記複数の第3骨格部材よりも車体前後方向に密に配置されている。
【0014】
請求項4記載の車体パネル構造では、車幅方向外側に位置し外部から荷重が入力され易い第2骨格部材が第3骨格部材よりも密に配置されているので、局所的に入力される荷重を第2骨格部材で受けることができ、主に荷重伝達用の第3骨格部材を疎に配置することで、局所的に入力される荷重を分散させる機能を確保しつつ、全体として軽量化を図ることができる。第2骨格部材間の車体前後方向の間隔は、例えば想定される衝突体の寸法よりも小さいことが好ましく、車体前後方向に隣接する第2骨格部材を互いに車体前後方向に当接させても(間隔を0にしても)良い。
【0015】
請求項5記載の発明に係る車体パネル構造は、請求項2乃至請求項4の何れか1項記載の車体パネル構造において、前記一対のパネル部材は、それぞれ繊維強化プラスチックを含む材料にて構成されている。
【0016】
請求項5記載の車体パネル構造では、一対のパネル部材が繊維強化プラスチックを含む材料にて構成されているので、軽量化を図ることができる。
【0017】
請求項6記載の発明に係る車体パネル構造は、請求項2乃至請求項5の何れか1項記載の車体パネル構造において、前記第2骨格部材及び第3骨格部材の一方又は双方は、繊維強化プラスチックを構成する繊維が車幅方向に沿って配向されている車幅配向層を有する。
【0018】
請求項6記載の車体パネル構造では、第2又は第3骨格部材の車幅配向層において主たる荷重伝達方向に沿って繊維が配向されているので、同じ質量で擬似等方性を有する繊維配向の構成と比較して、車幅方向荷重に対する耐力が向上する。換言すれば、本車体パネル構造では、擬似等方性を有する繊維配向の構成と比較して、同等の耐力を確保しつつ軽量化を図ることができる。
【0019】
請求項7記載の発明に係る車体パネル構造は、請求項2乃至請求項6の何れか1項記載の車体パネル構造において、前記第2骨格部材及び第3骨格部材の一方又は双方は、繊維強化プラスチックを構成する繊維が車幅方向に対し所定角度だけ傾斜して配向されている傾斜配向層を有する。
【0020】
請求項7記載の車体パネル構造では、第2又は第3骨格部材の傾斜配向層において主たる荷重伝達方向である車幅方向に対し傾斜して繊維が配向されているので、繊維の配向方向に応じて、荷重を車幅方向内側及び車体前後方向の所要の方向に伝達、分散することができる。
【0021】
請求項8記載の発明に係る車体パネル構造は、請求項2乃至請求項7の何れか1項記載の車体パネル構造において、前記第2骨格部材及び第3骨格部材の一方又は双方は、繊維強化プラスチックを構成する繊維が、車幅方向に対し所定角度だけ傾斜しつつ交差するように配向されている交差配向層を有する。
【0022】
請求項8記載の車体パネル構造では、第2又は第3骨格部材の傾斜配向層において主たる荷重伝達方向である車幅方向に対し傾斜してかつ交差して繊維が配向されているので、繊維の配向方向に応じて、荷重を車幅方向内側及び車体前後方向の所要の方向に一層効果的に伝達、分散することができる。
【0023】
請求項9記載の発明に係る車体パネル構造は、請求項7又は請求項8記載の車体パネル構造において、前記第2骨格部材及び第3骨格部材の一方又は双方は、少なくとも車体上下方向を向く表層が前記傾斜配向層又は交差配向層とされており、前記一対のパネル部材は、少なくとも前記第2骨格部材及び第3骨格部材側の面が、前記傾斜配向層又は交差配向層と同じ方向に繊維を配向させて構成された繊維強化プラスチックにて構成されている。
【0024】
請求項9記載の車体パネル構造では、第2又は第3骨格部材の傾斜配向層又は交差配向層と、これらを挟み込む一対のパネル部材の表面(表層)とで、繊維の配向が同じ方向とされているので、該第2又は第3骨格部材と一対のパネル部材との荷重伝達が効果的に行われ、傾斜配向層又は交差配向層にて分散させた荷重を、さらに広く車体に分散させることができる。
【0025】
請求項10記載の発明に係る車体パネル構造は、請求項2乃至請求項9の何れか1項記載の車体パネル構造において、前記複数の第2骨格部材のうち少なくとも2つの前記第2骨格部材にそれぞれ車両用シートの車幅方向の外側取付部を設け、前記少なくとも2つの外側取付部をシート骨格部材で連結した。
【0026】
請求項10記載の車体パネル構造では、2個所の外側取付部が車体前後方向に延在するシート骨格部材にて連結されているので、このシート骨格部材による車体前後方向への荷重分散も果たされる。また、外側のシート骨格部材に入力された荷重を車両用シート経由で内側のシート固定部(車体構造部)に伝達することも可能になる。
【0027】
請求項11記載の発明に係る車体パネル構造は、請求項10記載の車体パネル構造において、前記第1骨格部材、前記第2骨格部材、前記第3骨格部材、前記一対のパネル部材は、車体の車幅方向中央部に対する両側にそれぞれ設けられており、車幅方向中央部に対する両側にそれぞれ位置する前記車両用シートの車幅方向の内側取付部間を連結する連結部材をさらに備えた。
【0028】
請求項11記載の車体パネル構造では、外側のシート骨格部材に入力された荷重を、車両用シート、内側取付部、連結部材経由で、直接的に車幅方向中央部に対する反対側に伝達することができる。特に、第3骨格部材から車幅方向内向きの荷重を伝達可能に内側取付部を配置した構成では、車幅方向一方の第2骨格部材に入力された車幅方向内向き荷重を、第1骨格部材、第3骨格部材、内側取付部を介して連結部材すなわち車幅方向中央部に対する反対側に伝達することが可能になる。
【0029】
請求項12記載の発明に係る車体パネル構造は、請求項11記載の車体パネル構造において、前記内側取付部は、前記第3骨格部材又は該第3骨格部材に対する車幅方向内側に設けられ、該第3骨格部材に対する車体上下方向の上側で前記車両用シートの骨格部材が取り付けられると共に、該第3骨格部材に対する車体上下方向の下側で前記連結部材が取り付けられる固定部材を含む。
【0030】
請求項12記載の車体パネル構造では、内側固定部の固定部材が第3骨格部材に対し車体上下方向及び車体前後方向にオーバラップして位置するため、第3骨格部材に作用する車幅方向内向きの荷重を支持することができ、またこの荷重を固定部材を介して連結部材に伝達することができる。
【0031】
請求項13記載の発明に係る車体パネル構造は、請求項2乃至請求項12の何れか1項記載の車体パネル構造において、前記第1骨格部材は、車両用シートの車幅方向外端よりも車幅方向内側に配置されており、車体前後方向に延在する配管の敷設経路を構成する凹部を有する。
【0032】
請求項13記載の車体パネル構造では、第2骨格部材に所定値以上の車幅方向内向き荷重が入力された場合、車体前後方向に荷重を分散させる第1骨格部材よりも車幅方向外側に位置する第2骨格部材が主に変形してエネルギを吸収する。これにより、車体におけるシートの設置範囲は、変形が抑制されて空間が確保される。そして、第1骨格部材の凹部に少なくとも一部が入り込んだ配管は、変形が及ばずに保護され易い。
【0033】
請求項14記載の発明に係る車体パネル構造は、請求項2乃至請求項13の何れか1項記載の車体パネル構造において、前記一対のパネル部材の車幅方向外端部を、それぞれ車体上下方向の上向きに延設すると共に互いに重ね合わせて重合部とし、前記重合部は、車体上下方向の上側が下側よりも車幅方向外側に位置するように傾斜した傾斜部を含む。
【0034】
請求項14記載の車体パネル構造では、一対のパネル部材の重合部が傾斜して車幅方向外側に張り出しているので、その車幅方向外側に位置する部材が車体上下方向に位置ずれして一対のパネル部材(各骨格部材)の上に乗り上げることが、重合部によって効果的に防止される。これにより、車幅方向外側に位置する部材から各骨格部材に確実に荷重が伝達される。
【0035】
請求項15記載の発明に係る車体パネル構造は、請求項14記載の車体パネル構造において、前記重合部の傾斜部は、車両フロア部の車幅方向外端で車体前後方向に延在するロッカに車幅方向内側及び車体上下方向の上側を向くように形成された傾斜面に対し、車体上下方向及び車幅方向にオーバラップするように配置され、かつ、前記一対のパネル部材及び前記ロッカの車体上下方向の下側から覆うカバーパネルをさらに備えた。
【0036】
請求項15記載の車体パネル構造では、一対のパネル部材が形成する重合部の傾斜部とカバーパネルとが、ロッカを車体上下方向に挟むように配置されているため、ロッカと一対のパネル部材(各骨格部材)とが車体上下方向に位置ずれして、互いに上下に乗り上げることが防止される。これにより、車幅方向外側に位置する部材から各骨格部材により一層確実に荷重が伝達される。
【発明の効果】
【0037】
以上説明したように本発明に係る車体パネル構造は、一端側からの入力荷重を他端側に効果的に伝達することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の第1の実施形態に係る車体パネル構造が適用された車体フロア構造10について、図1乃至図17に基づいて説明する。先ず、車体パネル構造としての車体フロア構造10が適用された自動車車体Bの概略全体構成を説明し、次いで、本発明の要部である車体フロア構造10について詳細に説明することとする。なお、図中矢印FRは車体前後方向の前方向を、矢印UPは車体上下方向の上方向を、矢印LHは走行方向を見た場合の左側(車幅方向)を、矢印RHは走行方向を見た場合の右側を、矢印INは車幅方向の内側を、矢印OUTは車幅方向の外側をそれぞれ示す。
【0039】
(車体の全体構成)
図11及び図12には、車体フロア構造10が適用された自動車車体Bの概略全体構成が異なる方向から見た斜視図にて示されている。これらの図に示される如く、自動車車体Bは、それぞれ車体前後方向に長手とされた左右一対のロッカ12を備えている。それぞれ縦骨格部材としての左右のロッカ12には、車体フロアFを構成するフロアパネル14の車幅方向外端部が接合されている。主に車体前後方向及び車幅方向に延在する車体フロアFの車幅方向中央部には、車体前後方向に延在すると共に車体上下方向の下向きに開口するトンネル部としてのフロアトンネル16が設けられており、左右のフロアパネル14の車幅方向内端はフロアトンネル16の車体上下方向の下向き開口端部に接合されている。
【0040】
また、各ロッカ12は、それぞれの前端12Aが、略車体上下方向に沿って延在するフロントピラー18の下端18Aに連続している。図示は省略するが、左右のフロントピラー18は、図11に示すよりも車体上下方向に延出され、互いの間にフロントウインドシールドガラスを保持するようになっている。さらに、左右のフロントピラー18には、それぞれダッシュパネル20の車幅方向の異なる端部が接合されている。
【0041】
ダッシュパネル20は、車幅方向及び車体上下方向に延在し、車室Cと該車室Cよりも前方の空間Rf(例えばエンジンルーム)とを隔てている。このダッシュパネル20には、図示しない左右一対のフロントサイドメンバの後端部が接続されるようになっており、左右のフロントサイドメンバの前端間はフロントバンパを構成するバンパリインフォースメントによって架け渡されている。このダッシュパネル20の車幅方向中央部には、フロアトンネル16の前端を前方空間Rfに開口させる切欠部20Aが形成されている。
【0042】
一方、左右のロッカ12の後端12Bは、それぞれ略車体上下方向に沿って延在するセンタピラー22の下端22Aに連続している。左右のロッカ12の後端12B、センタピラー22には、リヤサイドメンバ23(図12参照)が連続している。さらに、左右のセンタピラー22には、それぞれルームパーティションパネル24の車幅方向の異なる端部が接合されている。
【0043】
ルームパーティションパネル24は、車幅方向及び車体上下方向に延在し、車室Cと該車室Cよりも後方の空間Rrとを隔てている。ルームパーティションパネル24の車幅方向中央部には、フロアトンネル16の後端を後方空間Rrに開口させる切欠部24A(図12参照)が形成されている。すなわち、フロアトンネル16は、車体フロアFの車体前後方向の全長に亘って延在し、車体前後方向の両端でも開口する構成とされている。
【0044】
また、図11に示される如く、自動車車体Bは、車幅方向に長手とされ、フロアパネル14の上側でロッカ12とフロアトンネル16と連結する左右一対のクロスメンバ26を備えている。この実施形態では、クロスメンバ26は、フロアパネル14の車体上下方向の上面側に接合され、ロッカ12とフロアトンネル16との車体前後方向の前端部間を連結している。
【0045】
そして、図11に示される如く、自動車車体Bを構成する車体フロア構造10は、ロッカ12とフロアトンネル16との車体前後方向の後部間を連結する左右一対のフロアクロス28を備えている。フロアクロス28は、全体として車幅方向及び車体前後方向に延在する平面視矩形状に形成されて、フロアパネル14の車体上下方向上面側に固定的に配設されている。より具体的には、図13に示される如く、フロアクロス28は、車体前後方向に長手とされ、乗員着座用の車両シートSを車体フロアFに支持するための左右(着座乗員に対する左右)一対設けられたシート骨格部材としてのシートレール30、32の設置範囲、換言すればシートレール30、32によって車体前後方向にスライド可能に支持される車両用シートSの全可動範囲をほぼ含む範囲で延在している。
【0046】
以上説明した自動車車体Bは、その主要構成要素であるロッカ12、フロアパネル14、フロアトンネル16、フロントピラー18、ダッシュパネル20、センタピラー22、ルームパーティションパネル24、クロスメンバ26、フロアクロス28の主要部がそれぞれ炭素繊維強化プラスチック(以下、CFRPという)にて構成されている。
【0047】
(車体フロア構造の詳細構成)
以下、車体パネル構造としてのフロアクロス28を含む車体フロア構造10について詳細に説明する。先ず、フロアクロス28について説明し、次いで、フロアクロス28と他の構成部品との関係を説明することとする。なお、車体フロア構造10は、基本的にフロアトンネル16に対し左右対称に構成されるので、以下、左側の車体フロア構造10について説明し、異なる部分については補足する。左右のフロアクロス28を区別する場合には、フロアトンネル16に対し左側に位置するフロアクロス28をフロアクロス28Lh、フロアトンネル16に対し右側に位置するフロアクロス28をフロアクロス28Rhということとする。
【0048】
図2には、フロアクロス28Lhの単体の斜視図が示されており、図1には、フロアクロス28の分解斜視図が示されている。これらの図に示される如く、フロアクロス28Lhは、車体前後方向に長手とされた第1骨格部材としての縦メンバ34Lhと、それぞれ車幅方向に長手とされ車幅方向内端36Aを縦メンバ34Lhに突き当てた第2骨格部材としての複数のEAクロス36と、それぞれ車幅方向に長手とされ車幅方向外端38Aを縦メンバ34Lhに突き当てた第3骨格部材としての複数の横クロス38と、縦メンバ34Lh、それぞれ複数のEAクロス36、横クロス38を車体上下方向の上下から挟むサンドイッチパネル40とを主要部として構成されている。
【0049】
縦メンバ34Lhは、CFRPより成り、図1示される如く、長手方向直角断面視で矩形の下部が略円弧状に切り取られて(下縁が略円弧状に形成されて)、長手方向の全長に亘って車体上下方向の下向きに開口する凹部35を有する中実構造体(FRPブロック)として構成されている。これにより、縦メンバ34Lhの凹部35内に後述する燃料配管54を敷設可能とされている。
【0050】
各EAクロス36は、図7にも示される如く、それぞれ長手(車幅)方向直角断面視で、略矩形状の閉断面を成すCFRP製の外郭Hの内部に発泡ウレタンフォームUが充填された構造とされており、また外郭Hの長手方向両端は開口端とされている。この実施形態では、図1に示される如く、5つのEAクロス36がそれぞれ車幅方向内端36Aを縦メンバ34Lhの車幅方向外側面34Aに突き当てつつ車体前後方向に並列すると共に、車体前後方向に隙間なく配置されている。この状態では、各EAクロス36の車幅方向外端36Bの車幅方向における位置が略一致される(各EAクロス36の長さが一致している)と共に、車体前後方向の最前に配置されたEAクロス36(構成する外郭H)の前壁36C、最後に配置されたEAクロス36の後壁36Dの車体前後方向における位置が縦メンバ34Lhの前後端34B、34Cの車体前後方向における位置に略一致されている。
【0051】
各横クロス38は、図8にも示される如く、それぞれ長手(車幅)方向直角断面視で、略矩形状の閉断面を成すCFRP製の外郭Hの内部に発泡ウレタンフォームUが充填された構造とされており、また外郭Hの長手方向両端は開口端とされている。この実施形態では、図1及び図3に示される如く、3つの横クロス38がそれぞれ車幅方向外端38Aを縦メンバ34Lhの車幅方向内側面34Dに突き当てつつ車体前後方向に略等間隔で並列して配置されている。この状態では、各横クロス38の車幅方向内端38Bの車幅方向における位置が略一致される(各横クロス38の長さが一致している)と共に、車体前後方向の最前に配置された横クロス38(構成する外郭H)の前壁38C、最後に配置された横クロス38の後壁38Dの車体前後方向における位置が縦メンバ34Lhの前後端34B、34Cの車体前後方向における位置に略一致されている。
【0052】
各EAクロス36、横クロス38は、それぞれ車体前後方向の幅寸法と比較して車体上下方向の厚み寸法が小さい上下扁平形状(略矩形状)とされている。また、EAクロス36と横クロス38とは、互いの幅寸法が略同等とされており、これにより各横クロス38の車体前後方向の離間間隔は該横クロス38の幅寸法と略同等とされている。
【0053】
図1及び図3に示される如く、サンドイッチパネル40は、一対のパネル部材としてのサンドイッチロアパネル42と、サンドイッチアッパパネル44とを接合して構成されている。サンドイッチロアパネル42は、車幅方向及び車体前後方向に延在し平面視で略矩形状を成す平板状の底板部42Aと、底板部42Aの車幅方向外端から車体上下方向の上向きに立設された外側壁42Bと、底板部42Aの車幅方向内端から車体上下方向の上向きに立設された内側壁42Cと、外側壁42Bの車体上下方向の上端から延設された外フランジ42Dと、内側壁42Cの車体上下方向の上端から車幅方向内向きに延設された内フランジ42Eとを有する。この実施形態では、外フランジ42Dは、外側壁42Bから車幅方向外向きでかつ車体上下方向の上向きに延設されて水平面に対し傾斜している。
【0054】
また、図1に示される如く、フロアクロス28Lhを構成するサンドイッチロアパネル42は、底板部42Aの一部が隆起されて縦メンバ34Lhの凹部35に入り込む(内側から接触して被覆する)膨出部42Fが形成されている。膨出部42Fは、縦メンバ34Lhよりも車体前後方向に長い底板部42Aに車体前後方向の全長に亘って形成され、車体上下方向の下端及び車体前後方向の前後端で開口する凹部45を形成している。
【0055】
以上説明したサンドイッチロアパネル42上には、図1に示される如く、上記の如く配置された縦メンバ34Lh、各EAクロス36、及び各横クロス38が、各EAクロス36の車幅方向外端36Bが外側壁42Bに突き当てられると共に各横クロス38の車幅方向内端38Bが内側壁42Cに突き当てられ(図5参照)、かつ車体前後方向の両側にはみ出さないように配設されるようになっている。この状態でフロアクロス28Lhでは、図5に示される如く、膨出部42Fが凹部35に入り込んで該凹部35内に燃料配管54が入り込む空間を形成している。以下、底板部42Aにおける縦メンバ34Lhの前後端34B、34C(前壁36C、38C、後壁36D、38D)よりも車体前後方向に張り出した部分を、それぞれ前フランジ42G、後フランジ42Hという場合がある。
【0056】
サンドイッチアッパパネル44は、図1に示される如く、車幅方向及び車体前後方向に延在し平面視で略矩形状を成す平板状の天板部44Aと、天板部44Aの車体前後方向の前端から垂下された前壁44Bと、天板部44Aの車体前後方向後端から垂下された後壁44Cと、前壁44Bの下縁から車体前後方向の前向きに延設された前フランジ44Dと、後壁44Cの下縁から車体前後方向の後向きに延設された後フランジ44Eと、天板部44A及び前後のフランジ44D、44Eの車幅方向外端から車体上下方向の上向きに立設された外側壁44Fと、前後のフランジ44Dと、44Eの車幅方向内端から立設された内側壁44Gと、外側壁44Fの上端から外フランジ42Dに対応して傾斜して延設された外フランジ44Hと、天板部44Aの車幅方向内端及び内側壁44Gの車体上下方向上端から内フランジ42Eに対応して車幅方向内向きに(略面一に)延設された内フランジ44Iとを有する。
【0057】
フロアクロス28Lhのサンドイッチアッパパネル44について補足すると、膨出部42Fに重ね合わされる膨出部44Jが前後のフランジ44D、44Eからそれぞれ膨出されて、前壁44B、後壁44Cに連続しており、前壁44B、後壁44Cは、膨出部44Jよりも車体上下方向の下側部分が切り欠かれて膨出部42Fの干渉が防止されている。
【0058】
このサンドイッチアッパパネル44は、前フランジ44Dが前フランジ42Gと、後フランジ44Eが後フランジ42Hと、外側壁44Fが外側壁42B(の一部)と、内側壁44Gが内側壁42Cと、外フランジ44Hが外フランジ42Dと、内フランジ44Iが内フランジ42Eとそれぞれ接合されることで、サンドイッチロアパネル42とで縦メンバ34Lh、各EAクロス36、各横クロス38を挟み込んだサンドイッチパネル40を構成している。この状態では、サンドイッチアッパパネル44の前壁44Bは、縦メンバ34Lhの前端34B、最前に配置されたEAクロス36、横クロス38の各前壁36C、38Cに当接すると共に、サンドイッチアッパパネル44の後壁44Cは、縦メンバ34Lhの後端34C、最後に配置されたEAクロス36、横クロス38の各後壁36D、38Dに当接している(EAクロス36、横クロス38について、図7及び図8参照)。
【0059】
また、図1、図2及び図8に示される如く、サンドイッチアッパパネル44には、車体前後方向に離間して位置する横クロス38間に入り込む凹部46が設けられている。凹部46は、横クロス38が3つ設けられていることに対応して、前後一対設けられている。各凹部46は、サンドイッチロアパネル42の底板部42A上に重ね合わされる凹底壁46Aと、車体前後方向の前側に位置する横クロス38の後壁38Dに当接する前壁46Bと、車体前後方向の後側に位置する横クロス38の前壁38Cに当接する後壁46Cと、縦メンバ34Lhの車幅方向内側面34Dに当接する外側壁46Dと、サンドイッチロアパネル42の内側壁42Cに当接右する内側壁46Eとに囲まれて構成されている。
【0060】
これにより、サンドイッチパネル40にて上下から挟み込まれた縦メンバ34Lh、各EAクロス36、各横クロス38は、該サンドイッチパネル40に対し、車体前後方向、車幅方向、車体上下方向の各方向に拘束されて、図2に示される如く、フロアクロス28を構成している。
【0061】
フロアクロス28Rhについてフロアクロス28Lhと異なる(左右対称ではない)部分を説明する。図6、図11及び図12に示される如く、自動車車体Bにおけるフロアトンネル16に対する右側では、燃料配管54を敷設するために筒部56がフロアパネル14に設けられていないため、フロアクロス28Rhは、図3及び図4に示される如く、凹部35を有する縦メンバ34Lhに代えて、EAクロス36、横クロス38と同様に、外郭Hの内部に発泡ウレタンフォームUを充填して構成された縦メンバ34Rhを備えている。このため、フロアクロス28Rhでは、サンドイッチロアパネル42の底板部42Aに膨出部42Fが形成されず、サンドイッチアッパパネル44に膨出部44J(前壁44B、後壁44Cの切欠き)が形成されていない。
【0062】
フロアクロス28Rhの他の構成は、フロアクロス28Lhの対応する構成と同じである。したがって、縦メンバ34Rhは、その単体としての構造が縦メンバ34Lhとは異なるが、EAクロス36、横クロス38、サンドイッチパネル40との関係は、凹部35、42F、44Jに関する部分を除き全く同じ(対称)である。以下、縦メンバ34Lhと縦メンバ34Rhとを区別する必要がない場合には、単に縦メンバ34という場合がある。
【0063】
図5及び図6に示される如く、以上説明したフロアクロス28は、フロアパネル14上に接合されてロッカ12とフロアトンネル16とを連結している。フロアクロス28の車体フロアF(自動車車体B)への取付構造を説明する前に、車体フロアF廻りの構造について補足する。
【0064】
図5及び図6に示される如く、フロアパネル14は、車幅方向外端から車体上下方向の上向きに延設された外フランジ14Aがロッカ12の外側面12Cに例えば接着やリベット等にて接合されると共に、外フランジ14Aの近傍部分がロッカ12の下面12Dに例えば接着やリベット等にて接合され、かつ車幅方向の内端がフロアトンネル16に接合されている。フロアトンネル16は、図9に示される如く、その車体上下方向下向きに開口した開口端16Aの車幅方向両側に車体前後方向の略全長に亘って形成された閉断面構造のトンネルサイド骨格部48を有しており、フロアパネル14の車幅方向の内端は、トンネルサイド骨格部48の下面48Aに例えば接着やリベット等にて接合されている。
【0065】
また、ロッカ12の下部は、図5に示される如く、車体上下方向に延在する内側壁50の上側に、車体上下方向の上側及び車幅方向内側を共に向くように傾斜され本発明における傾斜面を構成する傾斜壁52が設けられている。内側壁50の車体上下方向の高さは、サンドイッチロアパネル42における外側壁42Bの車体上下方向の高さに略一致している。また、傾斜壁52の水平面に対する傾斜角は、サンドイッチパネル40の外フランジ42D、外フランジ44Hの水平面に対する傾斜角に略一致している。
【0066】
そして、車体フロア構造10では、フロアクロス28は、車幅方向外端側において、サンドイッチロアパネル42の底板部42Aが略全面に亘ってフロアパネル14上に接着(及びリベット)にて固定されると共に、外側壁42B、外フランジ42D(外側壁44F、外フランジ44H)がロッカ12の内側壁50、傾斜壁52に接着(及びリベット)にて固定されている。したがって、この実施形態では、フロアパネル14が本発明におけるカバーパネルに相当する。
【0067】
また、フロアクロス28は、車幅方向の内端側において、サンドイッチロアパネル42の内フランジ42E(内フランジ44I)がトンネルサイド骨格部48の上面48Bに接着(及びリベット)にて固定されている。この状態では、フロアクロス28の内側壁42C(各横クロス38の車幅方向内端38B)が、トンネルサイド骨格部48の車幅方向内端を成す外側壁48Cに当接又はごく近接して位置している。
【0068】
また、フロアトンネル16に対する左側の構造について補足すると、図12に示される如く、フロアパネル14には、ダッシュパネル20の前方空間Rfからルームパーティションパネル24の後方空間Rrに至る燃料配管54を挿通させるための中空部56Aを囲む筒部56が車体前後方向の全長に亘り設けられており、図10に示される如く、筒部56における車体上下方向の上側略半分56Bは、サンドイッチロアパネル42の凹部45(縦メンバ34Lhの凹部35)に入り込まされている。筒部56の上側部分56Bは、膨出部42Fの内面(下面に)接着等によって固着されている。
【0069】
さらに、車体フロア構造10では、以上説明したフロアクロス28に、車両用シートSを支持するシートレール30を取り付けるための外側取付部としてのシートレール固定部58、60が設けられている。シートレール固定部58は、図1乃至図4に示される如く、最前に配置されたEAクロス36における車幅方向内端36Aの近傍部分に配置されており、シートレール固定部60は、最後に配置されたEAクロス36における車幅方向内端36Aの近傍に配置されている。
【0070】
具体的には、図7に示される如く、シートレール固定部58は、フロアクロス28における最前に配置されたEAクロス36の車幅方向内端36A近傍部分を貫通した締結用カラー62を、該EAクロス36に埋設したインサート材64にて保持することで構成されている。締結用カラー62は、車体上下方向の上向きに開口するねじ孔62Aを有しており、図5に示される如く、ねじ孔62Aに螺合するシートアンカボルト66によってシートレール30の前端をフロアクロス28に締結固定するようになっている。
【0071】
図1乃至図4に示される如く、シートレール固定部60は、フロアクロス28における最後に配置されたEAクロス36の車幅方向内端36A近傍部分を貫通した締結用カラー62を、該EAクロス36に埋設したインサート材64にて保持することで構成されている。締結用カラー62は、ねじ孔62Aに螺合するシートアンカボルト66によってシートレール30の後端をフロアクロス28に締結固定するようになっている。
【0072】
なお、シートレール固定部58、60は、フロアクロス28をフロアパネル14上に固定した状態で、インサート材64、フロアクロス28、及びフロアパネル14を貫通する貫通孔を形成し、該貫通孔に締結用カラー62を圧入(嵌合)して構成され、締結用カラー62は、そのフランジ62Bがフロアパネル14の下面に係合することで締結荷重を支持するようになっている。また、シートレール固定部60を構成するインサート材64には、締結用カラー62に対する車体前後方向の前側で開口し、シートレール30の位置決め部が挿入される位置決め孔68が形成されている。
【0073】
一方、シートレール30に対し車幅方向内側に位置するシートレール32は、トンネルサイド骨格部48に配設された内側取付部としてのシートレール固定部70、72にて固定されるようになっている。図9に示される如く、シートレール固定部70は、フロアクロス28の内フランジ42E、44I、トンネルサイド骨格部48、及びフロアパネル14を貫通した固定部材としての締結用カラー74を、トンネルサイド骨格部48に埋設したインサート材64にて保持することで構成されている。締結用カラー74は、車体上下方向の両側に開口するねじ孔74A、74Bを有しており、上側のねじ孔74Aに螺合するシートアンカボルト66によってシートレール32の前端をトンネルサイド骨格部48に締結固定するようになっている。
【0074】
シートレール固定部72は、フロアクロス28の内フランジ42E、44I、トンネルサイド骨格部48、及びフロアパネル14を貫通した締結用カラー74を、トンネルサイド骨格部48に埋設したインサート材64にて保持することで構成されている。締結用カラー74は、上側のねじ孔74Aに螺合するシートアンカボルト66によってシートレール32の後端をトンネルサイド骨格部48に締結固定するようになっている。締結用カラー74は、そのフランジ74Cがフロアパネル14の下面に係合することで、シートアンカボルト66の締結荷重を支持するようになっている。
【0075】
そして、図12にも示される如く、車体フロア構造10は、フロアトンネル16を挟んで位置する左右のトンネルサイド骨格部48(フロアクロス28Lh、28Rh)を連結するための前後一対のトンネルアンダブレース76を備えている。図9に示される如く、各トンネルアンダブレース76は、本発明における連結部材に相当し、例えばアルミニウム合金等の金属材にて車幅方向に長手に形成され、車幅方向の両端が左右異なる締結用カラー74の下側のねじ孔74Bに螺合する締結ボルト78にて該締結用カラー74に固定され、車体全方向に並列しつつ左右のトンネルサイド骨格部48を架け渡している。したがって、車体フロア構造10では、シートレール32とトンネルアンダブレース76とが共通の締結用カラー74にて共締めされていると把握することができる。なお、トンネルアンダブレース76は、金属材には限られず、例えばCFRPのような繊維強化プラスチックにて構成しても良い。
【0076】
さらに、車体フロア構造10では、図13に示される如く、フロアクロス28上に配置され車両用シートSを構成するシートフレーム80が左右のシートレール30、シートレール32によって、車体前後方向に所定範囲だけスライド、任意のスライド位置での保持可能に支持されている。シートフレーム80は、平面視で略矩形枠状を成し、左右のシートレール30、32間を架け渡している。このシートフレーム80、シートレール30、32は、それぞれ鋼等の金属材にて構成されている。
【0077】
以上説明した10では、例えばロッカ12に車幅方向内向きに入力された荷重は、図14に模式的に示される如く、該ロッカ12からフロアクロス28のEAクロス36に伝達され、EAクロス36から車幅方向に沿って縦メンバ34に伝達され、縦メンバ34にて車体前後方向に分散されながら各横クロス38に伝達され、横クロス38からフロアトンネル16に伝達されると共にさらにトンネルアンダブレース76を介してフロアトンネル16の反対側のフロアクロス28、ロッカ12に伝達されるようになっている。
【0078】
この車体フロア構造10の構造、荷重伝達経路をモデル化して示すと図15に示す如くなる。この図において車幅方向外端に位置する部材は、乗員乗降用の車体開口部を開閉するためのドア82である。この図に示される如く、車体フロア構造10が適用された自動車車体Bでは、フロアクロス28の縦メンバ34の車幅方向外側面34Aを境に、主にドア82からEAクロス36までの部分が側面衝突時に変形(圧壊)して衝撃吸収する衝撃吸収(クラッシャブル)エリア、主に縦メンバ34からフロアトンネル16(トンネルサイド骨格部48、トンネルアンダブレース76)までの部分が変形が抑制されて乗員に対する室内空間を確保するための乗員保護エリアとされている。
【0079】
また、車体フロア構造10(フロアクロス28)では、主に車幅方向に荷重を伝達する部材であるEAクロス36、横クロス38は、図16に模式的に示される如く、それぞれの外郭Hを構成するCFRPの繊維が車幅方向に沿って配向された配向層を有する。この実施形態では、EAクロス36、横クロス38の外郭Hは、ほぼ全繊維の配向方向が車幅方向に略一致されている。なお、縦メンバ34、サンドイッチロアパネル42、サンドイッチアッパパネル44の炭素繊維の配向には特に制限はなく、この実施形態では、各部材の物性が擬似等方性を呈するように炭素繊維が配向されている。
【0080】
さらに、車体フロア構造10が適用された自動車車体Bでは、ロッカ12内にエネルギ吸収部材84が配設されている。図5及び図6に示される如く、エネルギ吸収部材84は、正面視で車幅方向に長手の略矩形状に形成されたエネルギ吸収部86を有する。エネルギ吸収部86は、図17(A)及び図17(B)に示される如く、山部86Aと谷部86Bとが車体前後方向に一致される長手方向に交互に連続して側面視で波板状に形成されており、全長に亘り略等幅とされている。エネルギ吸収部86の山部86A及び46Bは、それぞれ側面視で略半円弧状に形成されている。この実施形態では、エネルギ吸収部86は、山部86Aが下向きに開口する半円弧状を成すと共に、谷部86Bが上向きに開口する半円弧状を成すように配置されるようになっている。
【0081】
図17(A)に示される如く、エネルギ吸収部材84は、エネルギ吸収部86の車幅方向に一致される幅方向両端に設けられた支持板部88を有する(図17(B)では一方の88を取り除いている)。支持板部88は、車体上下方向の高さが、エネルギ吸収部86の車体上下方向の上端(山部86Aの頂部)から下端(谷部86Bの頂部)までの車体上下方向に沿った高さよりも大とされており、エネルギ吸収部86の幅方向両端面(波板状の端面)全体が固着されている。
【0082】
そして、図5に示される如く、エネルギ吸収部材84は、その幅方向が車幅方向に一致するように、ロッカ12内の最下部に配設されている。エネルギ吸収部材84は、例えばロッカ12内(仕切られた空間)に充填された発泡ウレタンフォームU等によって該ロッカ12に対する所定の位置、姿勢で保持されている。
【0083】
この状態でエネルギ吸収部材84は、車体前後方向の前後端の位置がフロアクロス28の車体前後方向の前後端の位置に略一致されると共に、車体上下方向の上下端の位置がフロアクロス28の車体上下方向の上下端の位置に略一致されている。したがって、車体フロア構造10では、内部でエネルギ吸収部材84を変形させつつ緩衝された荷重がロッカ12からEAクロス36に入力されるようになっている。エネルギ吸収部材84は、波板状のエネルギ吸収部86を有することにより、車体前後方向に一部に局所的に入力される荷重や車幅方向に対し傾斜した方向に入力される荷重等のあらゆる方向からの荷重に対し、安定して変形して衝撃吸収効果を得ることができる構成とされている。
【0084】
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
【0085】
上記構成の車体フロア構造10が適用された自動車車体Bでは、例えば図14に示される如く、車体上下方向に延在する柱状部材であるポールPが、乗員の着座エリアの側方から衝突した場合(所謂ポール側突が生じた場合)、ドア82、ロッカ12がエネルギ吸収部材84と共にポールPの衝突部位の近傍で変形(破壊)されて衝撃エネルギを吸収しながら、このポール衝突に伴う荷重をフロアクロス28に伝達する。
【0086】
この荷重は、フロアクロス28の車体前後方向の一部に局所的に作用する荷重F1として該ポールPの衝突部位近傍のEAクロス36に伝達され、このEAクロス36が主に長手方向に圧縮変形(圧壊)されつつ衝突荷重を縦メンバ34に伝達する。EAクロス36の圧縮変形によって、ポール側突の衝撃荷重はさらに吸収される。
【0087】
一方、縦メンバ34に伝達された荷重は、該縦メンバ34の長手方向に略一致する車体前後方向に分散され(図14の荷重F2参照)、3つの横クロス38に分散される(図14の荷重F3参照)。また、縦メンバ34の長手方向に分散された荷重の一部は、サンドイッチパネル40を介して、フロアトンネル16側に向かう斜め荷重としてフロアパネル14にも分散される(図14の荷重F4参照)。さらに、各横クロス38に分散された荷重F3の一部は、自動車車体Bの骨格部(高剛性部)を成すフロアトンネル16(トンネルサイド骨格部48)にて支持され、また車体前後方向に分散され、さらに荷重F3の他の一部は、トンネルアンダブレース76を経由してフロアトンネル16とは反対側のフロアクロス28、ロッカ12に伝達される(以上、図15の矢印Aルート)。
【0088】
また、EAクロス36の圧縮に伴う荷重は、サンドイッチパネル40、インサート材64、締結用カラー62、シートアンカボルト66を介してシートレール30にも伝達される。この荷重の一部は、シートレール30の長手方向に略一致する車体前後方向に分散され、ポール側突部位とは車体前後方向に離間した横クロス38にも車幅方向内向き荷重として伝達される。この荷重は、上記した矢印Aルートで、フロアトンネル16、反衝突側のフロアクロス28、ロッカ12に伝達される。さらに、シートレール30に伝達された荷重の他の一部は、シートレール30からシートフレーム80、シートレール32を経由してフロアトンネル16(トンネルサイド骨格部48)、トンネルアンダブレース76に伝達される(図15の矢印Bルート参照)。
【0089】
さらにまた、ポール側突のエネルギが大きく、EAクロス36の変形がシートレール30の設置領域まで至った場合、ポールPからシートレール30に直接的に車幅方向内向き荷重が作用し、この荷重は、上記の通り横クロス38を経由する矢印Aルート、シートフレーム80を経由する矢印Bルートで、それぞれフロアトンネル16(トンネルサイド骨格部48)、トンネルアンダブレース76に伝達される。
【0090】
以上により、車体フロア構造10が適用された自動車車体Bでは、ポール側突のように局所的に大荷重が入力される場合に、主に縦メンバ34の車幅方向外側面34Aよりも車幅方向の外側部分(主にEAクロス36、ロッカ12、ドア82で構成する衝撃吸収エリア)が変形して衝撃エネルギを吸収すると共に、縦メンバ34の車幅方向外側面34Aよりも車幅方向の内側部分は、該縦メンバ34が荷重を分散することで局部的な応力集中が緩和され、局部的な変形、破壊が防止されて車両用シートSに着座している乗員に対する室内空間が確保される。
【0091】
そして、フロアクロス28は、車両用シートSを車体前後方向にスライド可能に支持するシートレール30、32の延在領域(シートレール固定部58、60間の領域)を含む車体前後方向の領域に配置されているので、換言すれば、該領域においてEAクロス36が車体前後方向に隙間なく配置されているため、調整し得る車両用シートSのあらゆるスライド位置すなわち乗員の車体前後方向における着座位置において、安定して衝撃吸収効果を発揮して乗員を保護することができる。
【0092】
補足すると、CFRPは脆性材料であり、金属製のボディように単にクロスメンバを車体前後方向に並列して設けた構成を採ると、クロスメンバ間にポールPが衝突した場合等には車体変形が大きくなり易いが、乗員の着座領域に亘ってEAクロス36を密に配置することで、乗員着座慮域の側方へのポールPの衝突に対し、効果的なエネルギ吸収が果たされる。また、ポールPが衝突したEAクロス36からの荷重は、縦メンバ34が車体前後方向に分散するので、横クロス38を車体前後方向に密に配置する必要がなくなり、自動車車体Bの軽量化に寄与する。
【0093】
特に、車体フロア構造10では、EAクロス36、横クロス38を構成する外郭Hの炭素繊維の配向方向が荷重伝達方向(車幅方向)に一致されているので、擬似等方性の繊維配向を採る構成と比較して、同等の圧縮方向の耐力を確保しながら軽量化を図ることができる。
【0094】
また、車体フロア構造10では、サンドイッチパネル40が縦メンバ34、EAクロス36、横クロス38を上下から挟み込んで所定の姿勢に保持(拘束)するため、縦メンバ34、EAクロス36、横クロス38の面外変形が防止され、EAクロス36の確実な変形(衝撃吸収)、EAクロス36から縦メンバ34、横クロス38への確実な荷重伝達が果たされる。
【0095】
さらに、車体フロア構造10では、フロアクロス28にシートレール30を固定しているため、より具体的には最前及び最後のEAクロス36の車幅方向内端36A近傍に設けたシートレール固定部58、60でシートレール30を固定したため、シートレール30によっても車体前後方向に側突荷重を分散することができる。すなわち、縦メンバ34の分担荷重を減じることが可能となり、軽量化に寄与する。
【0096】
さらにまた、車体フロア構造10では、シートレール32をトンネルサイド骨格部48及びフロアクロス28の車幅方向内端部に固定し、シートレール30とシートレール32とがシートフレーム80にて連結されているため、シートレール30に入力された荷重をフロアクロス28(矢印Aルート)とは別のルート(矢印Bルート)で、トンネルサイド骨格部48、反衝突側のフロアクロス28、ロッカ12に伝達することができる。また、それぞれ前後端がフロアクロス28、トンネルサイド骨格部48に固定されたシートレール30、32が枠状のシートフレーム80にて連結されるため、換言すれば、左右のシートレール30、32とシートフレーム80とで箱型フレームを構成するため、これらによりフロアクロス28の曲げ、ねじりに対する剛性が高められている。このため、車幅方向外端への車幅方向内向き荷重(圧縮方向荷重)に対するフロアクロス28の車体上下方向に曲げモード変形が抑制され、EAクロス36の一層確実な変形(衝撃吸収)、EAクロス36から縦メンバ34、横クロス38への一層確実な荷重伝達が果たされる。
【0097】
またここで、車体フロア構造10では、ロッカ12における内側壁50の上側に傾斜壁52を設け、該傾斜壁52にフロアクロス28の互いに接合された外フランジ42D、44Hを車体上下方向の上側から重ね合わせた(接合した)ため、例えば内側壁50と外側壁42Bとの接合が外れた場合でも、外フランジ42D、44Hが傾斜壁52に引っ掛かってロッカ12に対しフロアクロス28が脱落してしまうことが防止され、ロッカ12からフロアクロス28(EAクロス36)への適正な荷重伝達が果たされる。特に、ロッカ12の下面12D、サンドイッチロアパネル42の底板部42Aには、共通のフロアパネル14が接合されているため、ロッカ12がフロアクロス28に対し車体上下方向の下側に位置ずれすることも防止され、上記の如く仮に内側壁50と外側壁42Bとの接合が外れた場合でも、ロッカ12からフロアクロス28(EAクロス36)への適正な荷重伝達が確実に果たされる。
【0098】
さらに、車体フロア構造10では、シートレール32とトンネルアンダブレース76とが、共通の締結用カラー74にて共締めされているため、シートレール30、シートフレーム80、シートレール32経由(矢印Bルート)の荷重を直接的にトンネルアンダブレース76に伝達し、効率良く反衝突側に伝達することができる。また、トンネルサイド骨格部48を貫通した締結用カラー74は、横クロス38と車体上下方向及び車他前後方向にオーバラップして位置するため、横クロス38からの荷重を効果的に支持し、またトンネルアンダブレース76を介して反衝突側に伝達することができる。さらに、締結用カラー74を共通化することで部品点数(金属部品)の削減が図られ、一層の軽量化に寄与する。
【0099】
さらにまた、車体フロア構造10が適用された自動車車体Bでは、燃料配管54を縦メンバ34Lhの車幅方向外側面34Aよりも車幅方向内側、すなわち乗員保護エリアの下側に配置しているため、側面衝突に伴って燃料配管54が損傷を受けることが抑制される。特に、FRPブロックとして構成された縦メンバ34Lhに設けた凹部35にフロアパネル14の筒部56を入り込ませて、該縦メンバ34Lhにて筒部56を補強しているため、燃料配管54が一層効果的に保護される。
【0100】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る車体フロア構造90を構成するフロアクロス92について、図18に基づいて説明する。なお、上記第1の実施形態と基本的に同一の部品、部分については、上記第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略し、図示を省略する場合もある。
【0101】
図18に示される如く、フロアクロス92は、縦メンバ34(34Lh)と、EAクロス36と、横クロス38と、サンドイッチロアパネル42及びサンドイッチアッパパネル44で構成されるサンドイッチパネル40とを含んで構成され、これらのうちEAクロス36と、横クロス38と、サンドイッチロアパネル42及びサンドイッチアッパパネル44における炭素繊維の配向が第1の実施形態における配向とは異なる。
【0102】
具体的には、各EAクロス36を構成する外郭Hの少なくとも表層(サンドイッチロアパネル42、サンドイッチアッパパネル44、隣接するEAクロス36と接触する層)は、炭素繊維の配向が荷重伝達方向(車幅方向)に対し交差するように傾斜した交差配向層とされている。この実施形態では、外郭Hの表層における炭素繊維は、車幅方向に対し45°、−45°(以下、±45°と表記する)傾斜して配向されることで、交差配向層を形成している。
【0103】
同様に、各横クロス38を構成する外郭Hの少なくとも表層(サンドイッチロアパネル42、サンドイッチアッパパネル44、隣接する横クロス38と接触する層)は、炭素繊維の配向が荷重伝達方向(車幅方向)に対し交差するように傾斜した交差配向層とされている。この実施形態では、外郭Hの表層における炭素繊維は、車幅方向に対し±45°傾斜して配向されることで、交差配向層(傾斜配向層の一形態)を形成している。
【0104】
サンドイッチロアパネル42は、少なくとも底板部42Aの上面すなわちEAクロス36、横クロス38との接触側の表面が、炭素繊維の配向が車幅方向(EAクロス36、横クロス38における主たる荷重伝達方向)に対し交差するように傾斜した交差配向層とされている。この実施形態では、サンドイッチロアパネル42の底板部42Aの上面における炭素繊維は、車幅方向に対し±45°傾斜して配向されることで、交差配向層を形成している。
【0105】
同様に、サンドイッチアッパパネル44は、少なくとも天板部44Aの下面すなわちEAクロス36、横クロス38との接触側の表面が、炭素繊維の配向が車幅方向(EAクロス36、横クロス38における主たる荷重伝達方向)に対し交差するように傾斜した交差配向層とされている。この実施形態では、サンドイッチアッパパネル44の天板部44Aの下面における炭素繊維は、車幅方向に対し±45°傾斜して配向されることで、交差配向層を形成している。また、この実施形態では、サンドイッチアッパパネル44における凹底壁46Aの下面すなわち底板部42Aとの接触側の表面も、交差配向層とされている。
【0106】
なお、図18では、左側のフロアクロス92のみを示しているが、右側のフロアクロス92(縦メンバ34Rhを有するフロアクロス92)についても、EAクロス36、横クロス38、サンドイッチロアパネル42、サンドイッチアッパパネル44の表層は、左側のフロアクロス92と同様の交差配向層とされている。
【0107】
車体フロア構造90の他の構成は、図示しない部分を含め、第1の実施形態に係る車体フロア構造10と同様に構成されている。
【0108】
したがって、第2の実施形態に係る車体フロア構造90によっても、EAクロス36、横クロス38の繊維配向が車幅方向に沿って配向されていることによる作用効果を除き、第1の実施形態に係る車体フロア構造10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。そして、車体フロア構造90では、フロアクロス92を構成するEAクロス36、横クロス38、サンドイッチロアパネル42、サンドイッチアッパパネル44の少なくとも表層が炭素繊維を±45°で配向して構成されているので、車幅方向の内向きに入力された荷重(側突荷重)を、車体前後方向に分散させながら車幅方向に伝達することができる。
【0109】
より具体的には、例えばEAクロス36や横クロス38(構成部品)においては、図19に矢印にて示される如く、荷重が炭素繊維の配向方向に沿って車体前後方向に分散されながら車幅方向内向きに伝達され、フロアクロス92全体としては、図20に模式的に示される如く、車体フロア構造10よりも車体前後方向の広範囲に荷重を分散させることができる。特に、EAクロス36、横クロス38、サンドイッチロアパネル42、サンドイッチアッパパネル44の互いに接触する表層が同じ配向の交差配向層とされているため、隣り合う部材間で効率的に荷重伝達することができ、荷重分散性が一層良好となる。これにより、例えば、荷重入力側のEAクロス36においては、ポールPとの衝突部位から車体前後方向にずれて隣接するEAクロス36間でも荷重伝達(分散)が果たされ(図20の矢印F5参照)、横クロス38では、サンドイッチパネル40を経由してフロアパネル14に荷重を効果的に分散させることができる(図20の矢印F6、F7参照)。
【0110】
なお、上記した各実施形態では、EAクロス36、横クロス38等の炭素繊維配向を車幅方向に配向した例、車幅方向に対し±45°に配向した例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、これらEAクロス36、横クロス38の一部又は全部について、を擬似等方性配向としても良く、車幅方向に対し一定の方向に傾斜した配向としても良く、荷重伝達方向に対する配向方向を45°以外の方向に設定しても良い。
【0111】
また、上記した各実施形態では、EAクロス36の車幅方向内端36A、横クロス38の車幅方向外端38Aが直接的に縦メンバ34に突き当てられた例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、縦メンバ34とEAクロス36の車幅方向内端36Aとの間、縦メンバ34と横クロス38の車幅方向外端38Aとの間に荷重を伝達し得る部材を介在させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車体フロア構造の主要部を成す左側フロアクロスの分解斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る車体フロア構造の主要部を成す左側フロアクロスの斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る車体フロア構造の主要部を成す右側フロアクロスの分解斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る車体フロア構造の主要部を成す右側フロアクロスの斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る車体フロア構造の左側を示す正面断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る車体フロア構造の右側を示す正面断面図である。
【図7】図11の7−7線に沿った断面図である。
【図8】図11の8−8線に沿った断面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る車体フロア構造を構成するシートレールとトンネルアンダブラケットの共締め部分を拡大して示す正面断面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る車体フロア構造における燃料配管敷設部位、ロッカとの結合部位を拡大して示す正面断面図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る車体フロア構造が適用された自動車車体を上方から見た斜視図である。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る車体フロア構造が適用された自動車車体を下方から見た斜視図である。
【図13】本発明の第1の実施形態に係る車体フロア構造が適用された自動車車体へのシートフレームの取り付け状態を示す斜視図である。
【図14】本発明の第1の実施形態に係る車体フロア構造が適用された自動車車体のポール側突荷重の伝達経路を示す斜視図である。
【図15】本発明の第1の実施形態に係る車体フロア構造が適用された自動車車体のポール側突荷重の伝達経路を模式的に示す正面図である。
【図16】本発明の第1の実施形態に係る車体フロア構造を構成するEAクロス、横クロスの炭素繊維の配向を模式的に示す斜視図である。
【図17】本発明の第1の実施形態に係る車体フロア構造が適用された自動車車体のロッカに配設されるエネルギ吸収部材を示す図であって、(A)は車幅方向内側から見た斜視図、(B)は車幅方向外側から見た斜視図である。を構成するEAクロス、横クロスの炭素繊維配向方向を模式的に示す斜視図である。
【図18】本発明の第2の実施形態に係る車体フロア構造の主要部を成す左側フロアクロスの分解斜視図である。
【図19】本発明の第2の実施形態に係る車体フロア構造を構成するEAクロス、横クロスの炭素繊維の配向及び荷重伝達方向を模式的に示す斜視図である。
【図20】本発明の第2の実施形態に係る車体フロア構造が適用された自動車車体のポール側突荷重の伝達経路を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0113】
10 車体フロア構造(車体パネル構造)
12 ロッカ
14 フロアパネル(カバーパネル)
16 フロアトンネル(トンネル部)
28 フロアクロス(車体パネル構造)
30 シートレール(シート骨格部材)
34 縦メンバ(第1骨格部材)
35 凹部
36 EAクロス(第2骨格部材)
38 横クロス(第3骨格部材)
40 サンドイッチパネル(一対のパネル部材)
42 サンドイッチロアパネル(一対のパネル部材の一方)
44 サンドイッチアッパパネル(一対のパネル部材の他方)
54 燃料配管(配管)
58・60 シートレール固定部(外側取付部)
70・72 シートレール固定部(内側取付部)
74 締結用カラー(固定部材)
90 車体フロア構造(車体パネル構造)
92 フロアクロス(車体パネル構造)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に長手とされた第1骨格部材と、
前記所定方向との直交方向に長手とされ、それぞれ一端が前記第1骨格部材の幅方向の一端面に突き当てられた複数の第2骨格部材と、
前記所定方向との直交方向に長手とされ、それぞれ一端が前記第1骨格部材の幅方向の他端面に突き当てられた複数の第3骨格部材と、
前記第1骨格部材、第2骨格部材、及び第3骨格部材を、それぞれの厚み方向の両側から挟み込んで保持する一対のパネル部材と、
を備えた車体パネル構造。
【請求項2】
繊維強化プラスチックを含む材料にて構成され、車体前後方向に延在する第1骨格部材と、
繊維強化プラスチックを含む材料にて構成され、それぞれ車幅方向に延在すると共に車幅方向の内端が前記第1骨格部材に突き当てられた複数の第2骨格部材と、
繊維強化プラスチックを含む材料にて構成され、それぞれ車幅方向に延在すると共に車幅方向の外端が前記第1骨格部材に突き当てられた複数の第3骨格部材と、
前記第1骨格部材、第2骨格部材、及び第3骨格部材を、それぞれ車体上下方向の両側から挟み込んで保持する一対のパネル部材と、
を備えた車体パネル構造。
【請求項3】
前記複数の第2骨格部材の車幅方向外端は、それぞれ車両フロア部の車幅方向外端で車体前後方向に延在するロッカから車幅方向の荷重を伝達可能に配置されており、
前記複数の第3骨格部材の車幅方向内端は、それぞれ車両フロア部の車幅方向内端で車体前後方向に延在するトンネル部に車幅方向の荷重を伝達可能に配置されている請求項2記載の車体パネル構造。
【請求項4】
前記複数の第2骨格部材は、前記複数の第3骨格部材よりも車体前後方向に密に配置されている請求項2又は請求項3記載の車体パネル構造。
【請求項5】
前記一対のパネル部材は、それぞれ繊維強化プラスチックを含む材料にて構成されている請求項2乃至請求項4の何れか1項記載の車体パネル構造。
【請求項6】
前記第2骨格部材及び第3骨格部材の一方又は双方は、繊維強化プラスチックを構成する繊維が車幅方向に沿って配向されている車幅配向層を有する請求項2乃至請求項5の何れか1項記載の車体パネル構造。
【請求項7】
前記第2骨格部材及び第3骨格部材の一方又は双方は、繊維強化プラスチックを構成する繊維が車幅方向に対し所定角度だけ傾斜して配向されている傾斜配向層を有する請求項2乃至請求項6の何れか1項記載の車体パネル構造。
【請求項8】
前記第2骨格部材及び第3骨格部材の一方又は双方は、繊維強化プラスチックを構成する繊維が、車幅方向に対し所定角度だけ傾斜しつつ交差するように配向されている交差配向層を有する請求項2乃至請求項7の何れか1項記載の車体パネル構造。
【請求項9】
前記第2骨格部材及び第3骨格部材の一方又は双方は、少なくとも車体上下方向を向く表層が前記傾斜配向層又は交差配向層とされており、
前記一対のパネル部材は、少なくとも前記第2骨格部材及び第3骨格部材側の面が、前記傾斜配向層又は交差配向層と同じ方向に繊維を配向させて構成された繊維強化プラスチックにて構成されている請求項7又は請求項8記載の車体パネル構造。
【請求項10】
前記複数の第2骨格部材のうち少なくとも2つの前記第2骨格部材にそれぞれ車両用シートの車幅方向の外側取付部を設け、
前記少なくとも2つの外側取付部をシート骨格部材で連結した請求項2乃至請求項9の何れか1項記載の車体パネル構造。
【請求項11】
前記第1骨格部材、前記第2骨格部材、前記第3骨格部材、前記一対のパネル部材は、車体の車幅方向中央部に対する両側にそれぞれ設けられており、
車幅方向中央部に対する両側にそれぞれ位置する前記車両用シートの車幅方向の内側取付部間を連結する連結部材をさらに備えた請求項10記載の車体パネル構造。
【請求項12】
前記内側取付部は、前記第3骨格部材又は該第3骨格部材に対する車幅方向内側に設けられ、該第3骨格部材に対する車体上下方向の上側で前記車両用シートの骨格部材が取り付けられると共に、該第3骨格部材に対する車体上下方向の下側で前記連結部材が取り付けられる固定部材を含む請求項11記載の車体パネル構造。
【請求項13】
前記第1骨格部材は、車両用シートの車幅方向外端よりも車幅方向内側に配置されており、車体前後方向に延在する配管の敷設経路を構成する凹部を有する請求項2乃至請求項12の何れか1項記載の車体パネル構造。
【請求項14】
前記一対のパネル部材の車幅方向外端部を、それぞれ車体上下方向の上向きに延設すると共に互いに重ね合わせて重合部とし、
前記重合部は、車体上下方向の上側が下側よりも車幅方向外側に位置するように傾斜した傾斜部を含む請求項2乃至請求項13の何れか1項記載の車体パネル構造。
【請求項15】
前記重合部の傾斜部は、車両フロア部の車幅方向外端で車体前後方向に延在するロッカに車幅方向内側及び車体上下方向の上側を向くように形成された傾斜面に対し、車体上下方向及び車幅方向にオーバラップするように配置され、
かつ、前記一対のパネル部材及び前記ロッカの車体上下方向の下側から覆うカバーパネルをさらに備えた請求項14記載の車体パネル構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−68720(P2008−68720A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248713(P2006−248713)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】