説明

車体構造

【課題】乗員の足元スペースを狭めることなく車体をコンパクトかつ軽量に構成することが可能で、しかも車両衝突時における乗員の適正な保護をより低コストで実現することのできる車体構造を提供する。
【解決手段】車室フロア5上の車幅方向中心部に設置された運転席シート6と、側面視で運転席シート6の後方部と重複するとともに、平面視で運転席シート6を左右から挟むように配設された一対の後席シート7,8とを備えた自動車の車体構造において、上記運転席シート6の前方に設置されたステアリング9に、車両の衝突時に膨張展開して運転席乗員を保護する第1のエアバッグ60を設けるとともに、この第1のエアバッグ60の左右両側に位置する車室前方に、車両の衝突時に膨張展開して運転席乗員および後席乗員を保護する第2のエアバッグ61を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の側面部に形成された乗降用開口部と、この乗降用開口部を開閉するサイドドアと、車室フロア上の車幅方向中心部に設置された運転席シートと、側面視で運転席シートの後方部と重複するとともに、平面視で運転席シートを左右から挟むように配設された一対の後席シートとを備えた自動車の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料消費量の節減等の要求から、コンパクトで軽量な自動車が求められている。このような自動車では、コンパクトな構成でありながら車室内において乗員のためのスペースをできるだけ広く確保するための工夫が必要となる。例えば、下記特許文献1では、車室内の車幅方向中心部、すなわち、車体の左右両側端部から離れた位置に運転席シートを配設するとともに、その後方側に複数の後席シートを配設することにより、車体をコンパクト化しつつ運転席シートの左右に広いスペースを確保することが行われている。
【特許文献1】特開平7−156807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されているように、車室内の車幅方向中心部に配設された単一の運転席シートと、その後方側に配設された後席シートとを有する車両において、車体を効果的にコンパクト化するためには、上記運転席シートと後席シートとを互いに近接して配設することが望ましい。しかしながら、このように運転席シートと後席シートとを互いに近接させて配設した場合には、特に運転席シートの真後ろに配置された後席シートの前方側のスペースが狭くなり、これに応じて乗員の足元スペースを広く確保することが困難になるという問題がある。
【0004】
一方、上記のようなコンパクトで軽量な自動車では、車両の衝突時に他の大型車等から受ける相対的に大きな衝撃から運転席乗員および後席乗員の双方を適正に保護するために、車室内の各部にエアバッグを設けることが望ましい。ただし、コンパクトカーでは常に製造コストの削減が求められるため、このような低コスト化の要求に応えながら、上記エアバッグを車室内の各部に配置して乗員を適正に保護する必要がある。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、乗員の足元スペースを狭めることなく車体をコンパクトかつ軽量に構成することが可能で、しかも車両衝突時における乗員の適正な保護をより低コストで実現することのできる車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、車室の側面部に形成された乗降用開口部と、この乗降用開口部を開閉するサイドドアと、車室フロア上の車幅方向中心部に設置された運転席シートと、側面視で運転席シートの後方部と重複するとともに、平面視で運転席シートを左右から挟むように配設された一対の後席シートとを備えた自動車の車体構造であって、上記運転席シートの前方に設置されたステアリングに設けられ、車両の衝突時に膨張展開して運転席乗員を保護する第1のエアバッグと、この第1のエアバッグの左右両側に位置する車室前方に設けられ、車両の衝突時に膨張展開して運転席乗員および後席乗員を保護する第2のエアバッグとを備えることを特徴とするものである(請求項1)。
【0007】
本発明によれば、車室フロア上の車幅方向中心部に運転席シートを配設するとともに、この運転シートの後方部と側面視で重複するとともに、平面視で運転席シートを左右から挟むような位置に左右一対の後席シートを配設したため、乗員の足元スペースを充分に確保しながら、車体を効果的にコンパクトかつ軽量に構成できるという利点がある。しかも、運転席シートの前方に設置されたステアリングに第1のエアバッグを設けるとともに、その左右両側に位置する車室前方に第2のエアバッグを設けたことにより、上記のように運転席シートとこれを左右から挟む一対の後席シートとを備えた車両において、運転席乗員および後席乗員の双方を効率よく保護できるという利点がある。そして、このように乗員を効率よく保護することで、エアバッグの数がむやみに増えることによる製造コストの増大を抑制しつつ、車両の衝突時における乗員の安全をより適正に確保することができる。
【0008】
上記第2のエアバッグは、車両の前突時および側突時のいずれの場合にも展開するように構成されていることが好ましい(請求項2)。
【0009】
このようにすれば、車両の前突時に前方に突き動かされる後席乗員の2次衝突と、車両の側突時に左右方向に突き動かされる運転席乗員の2次衝突との両方を上記第2のエアバッグにより防止できるため、車両に発生し得る様々な事故状況下において、乗員の安全を簡単な構成でより適正に確保できるという利点がある。
【0010】
上記構成においては、車両の側突時に上記後席シートの側方で膨張展開して後席乗員を保護する第3のエアバッグをさらに備えることが好ましい(請求項3)。
【0011】
このようにすれば、車両の側突時に左右方向に突き動かされる後席乗員の2次衝突を効果的に防止して後席乗員を適正に保護できるという利点がある。
【0012】
上記第3のエアバッグは、上記後席シートのシートバッグの側部に設けられたサイドエアバッグもしくは車室の側壁面部に設けられたカーテンエアバッグであることが好ましい(請求項4)。
【0013】
このようにすれば、後席乗員の身体と車室側壁との間の適正な位置に上記第3のエアバッグを展開させて後席乗員を確実に保護することができる。
【0014】
上記構成においては、車両の衝突時に上記第2のエアバッグと後席シートとの間に展開する第4のエアバッグをさらに備えることが好ましい(請求項5)。
【0015】
このようにすれば、他のエアバッグよりも大きく膨張させる必要のある上記第2のエアバッグの容量を抑制できるため、エアバッグの展開応答性を向上させて乗員をより適正に保護できるという利点がある。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、乗員の足元スペースを狭めることなく車体をコンパクトかつ軽量に構成することが可能で、しかも車両衝突時における乗員の適正な保護をより低コストで実現することのできる車体構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1〜図3は、本発明の一実施形態にかかる自動車の車体構造を示している。この自動車には、車室の側面部に乗降用開口部1,2が形成されるとともに、この乗降用開口部1,2をそれぞれ開閉するサイドドア3,4が設置されている。そして、車室フロア5上の車幅方向中心部に運転席シート6が配設されるとともに、この運転席シート6の左右後方に一対の後席シート7,8が配設されている。また、上記運転席シート6の前方側にはステアリング9が設置されており、このステアリング9は、車室内の前端部に設置されたインストルメントパネル50の車幅方向中心部から後方に延びるように設置されている。
【0018】
上記車室フロア5は、車室の左右両側辺部に沿って前後方向に延びるサイドシル11,11の間に形成されたパネル状の部材からなり、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネル10の下端部から車体の後方側に延びるフロントフロア部12と、上記運転席シート6の設置部に位置する車幅方向中央部分が上方に隆起した第1キックアップ部13と、左右の後席シート7,8の設置部間に位置する車幅方向中央部分が上記第1キックアップ部13よりもさらに上方に隆起した第2キックアップ部14とを有している。上記第1キックアップ部13および第2キックアップ部14の下方には、燃料タンク15およびエキゾーストパイプ37が配設されているとともに、上記第1キックアップ部13の後端部下面には、車幅方向に延びるクロスメンバ16が設置されている。
【0019】
上記第1キックアップ部13の上方には、運転席シート6を車体の前後方向にスライド自在に支持する左右一対のシートスライドレール17が設置されている。このシートスライドレール17は、取付ブラケット18を介して上記第1キックアップ部13の上面に固定されたロアレール19と、このロアレール19に沿って摺動可能に支持されたアッパレール20とを有し、このアッパレール20の上面に運転席シート6のシートクッション21が支持されている。そして、このシートクッション21を支持するアッパレール20がシートスライドレール17のロアレール19に沿って摺動することにより、上記運転席シート6が車体の前後方向にスライド変位してその前後位置が調節されるようになっている。
【0020】
上記第2キックアップ部14には、図4に示すように、後席シート7,8のシートクッション23が載置されるシート載置部25,25が左右に形成されている。また、図4および図5に示すように、これら左右のシート載置部25,25の間、つまり第2キックアップ部14の車幅方向中心部には、周囲よりも上方へ大きく隆起する隆起部27が形成されている。
【0021】
上記第2キックアップ部14における左右のシート載置部25,25上にそれぞれ載置された後席シート7,8は、図2に示すように、側面視で運転席シート6の後方部と重複し、かつ図1に示すように、平面視で運転席シート6を左右から挟むように設置されるとともに、各シートの前面が車幅方向の斜め外側を向くように設定された傾斜ラインA,Aに沿って配設されている。
【0022】
上記燃料タンク15は、図2〜図4に示すように、上記第1キックアップ部13の高さ寸法および幅寸法に対応した形状に形成されてこの第1キックアップ部13の下方に配設される前側タンク30と、この前側タンク30の後端部に連設されて上記第2キックアップ部14の下方に配設される後側タンク33とから構成されている。このうち後側タンク33は、図4に示すように、上記第2キックアップ部14のシート載置部25に沿って車幅方向に延びる左右一対の側方延出部35,35と、これら側方延出部35,35の間で上記第2キックアップ部14の隆起部27に沿って上方に膨出する膨出部34とを有している。また、図2に示すように、上記前側タンク30の後端部上面には、上記クロスメンバ16との干渉を防止するための凹部36が形成されている。
【0023】
図5に示すように、車室内の各部には、車両の衝突時に膨張展開して運転席乗員および後席乗員をそれぞれ保護する第1〜第3のエアバッグ60〜62が設置されている。これら第1〜第3のエアバッグ60〜62は、車両の前突事故もしくは側突事故が発生したことが図略のGセンサ等からなる衝突センサにより検知されるのに応じて、各エアバッグ60〜62のうちの適当なエアバッグを展開させて乗員を保護するように構成されている。
【0024】
上記第1のエアバッグ60は、運転席シート6の前方に設置されたステアリング9に設けられている。この第1のエアバッグ60は、通常時にはステアリング9のパッド部52の内部に折り畳み状態で格納されているが、衝突センサの検出信号に基づき車両の前突事故の発生が検知されると、ガス発生装置としてのインフレータ54から供給されるガス圧に応じて膨張し、上記パッド部52の表面カバーを破断しつつ外部に展開するように構成されている。そして、このように車両の前突事故に伴って膨張展開する第1のエアバッグ60により、前突事故時に生じる減速度の作用で前方に突き動かされる運転席乗員がステアリング9等と衝突(2次衝突)することが防止されるようになっている。
【0025】
上記第2のエアバッグ61は、上記第1のエアバッグ60の左右両側に位置するインストルメントパネル50の側方部にそれぞれ1個ずつ設けられており、これら第2のエアバッグ61,61の設置部の近傍には、当該エアバッグ61にガスを供給してこれを展開させるインフレータ56,56がそれぞれ設置されている。そして、通常時において上記インストルメントパネル50の内部に折り畳み状態で格納された第2のエアバッグ61が、車両の前突事故時に左右の後席シート7,8の前方で大きく膨張展開することにより、前突事故時に生じる減速度の作用で前方に突き動かされる後席乗員の2次衝突を防止するように構成されている。このように、各後席シート7,8の前方で大きく膨張展開する第2のエアバッグ61は、当該膨張展開に伴い運転席シート6の左右の空間を埋めるように存在することで、上記後席乗員だけでなく運転席乗員をも保護することが可能である。すなわち、例えば車体の前後軸に対して少し傾斜した方向から衝突荷重が加わり、これに応じて斜め前方に突き動かされた運転席乗員が、ステアリング9から展開する上記第1のエアバッグ60によって適正に受け止められなかった場合には、運転席シート6の左右の空間に運転席乗員が投げ出されてインストルメントパネル50の側方部等に衝突するおそれがあるが、上記のように第2のエアバッグ61が運転席シート6の左右に展開するように構成されていれば、このエアバッグ61の存在により運転席乗員の左右方向への移動が規制されるため、上記のような事態の発生が効果的に防止されることになる。また、上記第2のエアバッグ61は、上記のような車両の前突事故時だけでなく、側突事故時にも膨張展開するように構成されている。これにより、側突事故時に生じる減速度の作用で左右に突き動かされる運転席乗員がサイドドア3,4等と衝突することが確実に防止されるようになっている。
【0026】
上記第3のエアバッグ62は、図5および図6に示すように、後席シート7,8のシートバック24の外側端部から展開するサイドエアバッグとして設けられており、上記シートバック24の内部には、上記第3のエアバッグにガスを供給してこれを展開させるインフレータ58が設置されている。そして、通常時において上記シートバック24の側部に折り畳み状態で格納された第3のエアバッグ62が、後席シート7,8に乗員が着座した状態において車両の側突事故が発生したときにシートバック24の前方側に膨張展開することにより、側突事故時に生じる減速度の作用で左右に突き動かされる後席乗員の2次衝突を防止するように構成されている。なお、図6において符号64は、シートバック24側部に形成された上記第3のエアバッグ62の格納空間を覆うカバーであり、インフレータ58からガス圧の供給を受けた上記エアバッグ62が、このカバー64を開放させつつシートバック24の前方側に膨張展開するようになっている。
【0027】
以上説明したように、上記実施形態によれば、車室の側面部に形成された乗降用開口部1,2と、この乗降用開口部1,2を開閉するサイドドア3,4と、車室フロア5上の車幅方向中心部に設置された運転席シート6と、側面視で運転席シート6の後方部と重複するとともに、平面視で運転席シート6を左右から挟むように配設された一対の後席シート7,8とを備えた自動車の車体構造において、上記運転席シート6の前方に設置されたステアリング9に、車両の衝突時に膨張展開して運転席乗員を保護する第1のエアバッグ60を設けるとともに、この第1のエアバッグ60の左右両側に位置するインストルメントパネル50の側方部に、車両の衝突時に膨張展開して運転席乗員および後席乗員を保護する第2のエアバッグ61を設けたため、乗員の足元スペースを狭めることなく車体をコンパクトかつ軽量に構成することができるとともに、車両の衝突時における乗員の適正な保護をより低コストで図ることができるという利点がある。
【0028】
すなわち、運転席シート6を車室フロア5上の車幅方向中心部に設置するとともに、この運転席シート6の後部がその後方に配設された左右一対の後席シート7,8と側面視で重複するように、上記運転席シート6と後席シート7,8とを互いに近接して配設したため、搭乗可能な乗員の人数を確保しつつ、室内スペースの前後長が大きくなるのを防止でき、これに応じて車体を効果的にコンパクトかつ軽量に構成できるという利点がある。また、平面視で運転席シート6を左右から挟むような位置に上記一対の後席シート7,8を配設したことにより、これら後席シート7,8の前方側のスペースが運転席シート6により遮られて後席乗員の足元スペースが狭くなるのを効果的に防止できるため、上記のように運転席シート6と後席シート7,8とが近接して配置された状況下においても、乗員の足元スペースを比較的広く確保することができる。
【0029】
特に、上記実施形態のように、左右の後席シート7,8を、それぞれの前面が車外側を指向するように設定された傾斜ラインA,Aに沿って配設した場合には、この後席シート7,8のシート幅を充分に広く確保できるとともに、図1の仮想線で示す後席乗員がその足を斜め前方に向けて伸ばした状態で着座する際に、運転席シート6に邪魔されることなくその足元スペースを充分に確保できるという利点がある。
【0030】
そして、運転席シート6の前方に設置されたステアリング9に第1のエアバッグ60を設けるとともに、その左右両側に位置するインストルメントパネル50の側方部に第2のエアバッグ61を設けた上記実施形態によれば、上記のように運転席シート6とこれを左右から挟む一対の後席シート7,8とを備えた車両において、運転席乗員および後席乗員の双方を効率よく保護することができ、車両の衝突時における乗員の安全をより低コストで確保できるという利点がある。すなわち、上記実施形態では、第1のエアバッグ60の左右両側に配設され、車両の衝突時に左右の後席シート7,8の前方であってかつ運転席シート6の左右側方の空間で膨張展開する第2のエアバッグ61が、運転席乗員の保護機能と後席乗員の保護機能との両方を兼ね備えるように構成されているため、エアバッグをむやみに増やさなくても乗員を適正に保護することができ、エアバッグの数に応じた製造コストの増大を抑制しつつ、車両の衝突時における乗員の安全をより適正に確保することができる。
【0031】
また、上記実施形態のように、車両の前突時および側突時のいずれの場合でも膨張展開するように上記第2のエアバッグ61を構成した場合には、この第2のエアバッグ61により、車両の前突時に前方に突き動かされる後席乗員が車室前方のインストルメントパネル50等と衝突することだけでなく、車両の側突時に左右方向に突き動かされる運転席乗員が車室側方のサイドドア3,4等と衝突することも防止できるため、車両に発生し得る様々な事故状況下において、乗員の安全を簡単な構成でより適正に確保できるという利点がある。
【0032】
また、上記実施形態のように、後席シート7,8の各シートバック24の側方で膨張展開して後席乗員を保護する第3のエアバッグ62を設けた場合には、車両の側突時に後席乗員が左右方向に突き動かされて車室側方のサイドドア3,4等と衝突するのを効果的に防止でき、側突事故による衝撃から後席乗員を適正に保護できるという利点がある。
【0033】
なお、上記実施形態では、車両の側突時に後席乗員を保護する上記第3のエアバッグ62を、後席シート7,8の各シートバック24の側部から展開するサイドエアバッグにより構成したが、例えばルーフサイドレールの車室内側面を覆うルーフトリム等に設置され、車室の側壁面に沿ってカーテン状に展開するカーテンエアバッグにより上記第3のエアバッグ62を構成してもよい。これらいずれの場合でも、後席乗員の身体と車室側壁との間の適正な位置にエアバッグを展開させて後席乗員を確実に保護することができるという利点がある。
【0034】
また、上記実施形態では、インストルメントパネル50の側方部に設置された第2のエアバッグ61を、左右の後席シート7,8とインストルメントパネル50との間の空間の大部分を埋めるように後方に大きく膨張展開させることで乗員を保護するようにしたが、図7に示すように、上記後席シート7,8と第2のエアバッグ61との間に展開する第4のエアバッグ63をさらに設けてもよい。このようにすれば、上記実施形態のように第2のエアバッグ61単独で上記後席シート7,8とインストルメントパネル50との間の空間をカバーするようにした場合と異なり、エアバッグの展開応答性を向上させて乗員をより適正に保護することができる。すなわち、第2のエアバッグ61と後席シート7,8との間に第4のエアバッグ63を補助的に展開させることにより、他のエアバッグよりも大きく膨張させる必要のあった上記第2のエアバッグ61の容量を抑制することができるため、この第2のエアバッグ61が展開を完了までに要する時間を短縮することができ、各エアバッグ61,63を素早く展開させて乗員をより適正に保護することができる。なお、図7の例では、運転席シート6のシートバック22の左右両側部に上記第4のエアバッグ63を設けたが、このエアバッグ63を、例えばサイドドア3,4の車室内側面を覆うドアトリム等に設けてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、第2のエアバッグ61をインストルメントパネル50の側方部に設けたが、この第2のエアバッグ61として、図8に示すように、サイドドア3,4のドアトリム66の前端部上面に形成されたドア前端パネル面67から車室内側の斜め後方を指向するように展開する第2のエアバッグ161を設けるようにしてもよい。特に、この図8の例のように、ドア前端パネル面67が、車室前方に至るほど(インストルメントパネル50に接近するほど)車内側に迫り出すように形成されている場合には、このドア前端パネル面67上のエアバッグ161の設置部を比較的車内寄りに設定できるため、第2のエアバッグ161を無理なく図示のような位置に展開させることができ、これに応じて乗員を適切に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態にかかる車体構造を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】車室内に設置された第1〜第3のエアバッグの展開状況を示す平面図である。
【図6】後席シートのシートバック側部に設けられた第3のエアバッグの展開状況を示す斜視図である。
【図7】第2のエアバッグと後席シートとの間に第4のエアバッグを追設した本発明の変形例を説明するための図である。
【図8】第2のエアバッグをサイドドアのトリム面に設けた本発明の別の変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0037】
1,2 乗降用開口部
3,4 サイドドア
5 車室フロア
6 運転席シート
7,8 後席シート
9 ステアリング
24 (後席シートの)シートバック
60 第1のエアバッグ
61 第2のエアバッグ
62 第3のエアバッグ
63 第4のエアバッグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の側面部に形成された乗降用開口部と、この乗降用開口部を開閉するサイドドアと、車室フロア上の車幅方向中心部に設置された運転席シートと、側面視で運転席シートの後方部と重複するとともに、平面視で運転席シートを左右から挟むように配設された一対の後席シートとを備えた自動車の車体構造であって、
上記運転席シートの前方に設置されたステアリングに設けられ、車両の衝突時に膨張展開して運転席乗員を保護する第1のエアバッグと、
この第1のエアバッグの左右両側に位置する車室前方に設けられ、車両の衝突時に膨張展開して運転席乗員および後席乗員を保護する第2のエアバッグとを備えることを特徴とする車体構造。
【請求項2】
請求項1記載の車体構造において、
上記第2のエアバッグは、車両の前突時および側突時のいずれの場合にも展開するように構成されていることを特徴とする車体構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の車体構造において、
車両の側突時に上記後席シートの側方で膨張展開して後席乗員を保護する第3のエアバッグをさらに備えることを特徴とする車体構造。
【請求項4】
請求項3記載の車体構造において、
上記第3のエアバッグは、上記後席シートのシートバッグの側部に設けられたサイドエアバッグもしくは車室の側壁面部に設けられたカーテンエアバッグであることを特徴とする車体構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車体構造において、
車両の衝突時に上記第2のエアバッグと後席シートとの間に展開する第4のエアバッグをさらに備えることを特徴とする車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−30517(P2008−30517A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203279(P2006−203279)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】