車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置
【課題】高い通信成立性を確保することができる車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置を提供する。
【解決手段】車両1のアウターミラー22の鏡26にスリットを切り、鏡26を電力伝送用アンテナ29として使用する。ユーザが車外ドアハンドルノブをタッチ操作すると、アウターミラー22が閉状態から広角度位置に一時的に広げられ、電力伝送用アンテナ29の電波放射方向X1がユーザ(電子キー2)に向けられる。電子キー2は電力伝送用アンテナ29から送信される電力電波によって起動し、車両1とID照合(スマート照合)を実行する。そして、この照合が成立するとドアロックが解錠されるとともに、ID照合完了後、アウターミラー22は広角度位置から開き定位置に角度が戻される。
【解決手段】車両1のアウターミラー22の鏡26にスリットを切り、鏡26を電力伝送用アンテナ29として使用する。ユーザが車外ドアハンドルノブをタッチ操作すると、アウターミラー22が閉状態から広角度位置に一時的に広げられ、電力伝送用アンテナ29の電波放射方向X1がユーザ(電子キー2)に向けられる。電子キー2は電力伝送用アンテナ29から送信される電力電波によって起動し、車両1とID照合(スマート照合)を実行する。そして、この照合が成立するとドアロックが解錠されるとともに、ID照合完了後、アウターミラー22は広角度位置から開き定位置に角度が戻される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車外ミラーに車外アンテナを内蔵した車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの車両には、車両キーとして電子キーを用いた電子キーシステムが広く使用されている。ところで、この種の電子キーシステムでは、車両と電子キーとの間で高い通信成立性を確保することが非常に重要な問題となってくるが、通信成立性を確保するために、例えば車両側のアンテナをアウターミラーに組み込む技術(特許文献1)が考案されている。この場合、アウターミラーは車体から飛び出す形状をとっているので、アウターミラーに車両アンテナを内蔵すれば、車両アンテナがより電子キーに近づくことになり、高い通信成立性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−251830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的にアンテナには、どうしても指向性が存在し、電波が多く飛ぶ電波放射方向に対して、電波がさほど飛ばないヌル方向(ヌル点)ができる現状がある。よって、アウターミラーに車両アンテナを組み込んで通信成立性を確保しても、アンテナの電波放射方向が、ユーザの所持する電子キーに合わせ込まれていなければ、通信が成立しないことになるので、このようなヌル方向を考慮に入れて通信成立性を確保することが非常に大きなニーズとなっていた。
【0005】
本発明の目的は、高い通信成立性を確保することができる車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明では、車両の車外ミラーに内蔵された車外アンテナと、車体に対して開閉に取り付けられた前記車外ミラーのミラー開き角度、又は当該車外ミラーの本体部に対して角度変化可能に取り付けられた鏡の鏡面角度を変化させる角度切換機構と、前記ミラー開き角度又は前記鏡面角度を管理することにより、これら2つうちの一方と連動して動く前記車外アンテナの電波放射方向を、乗降車するユーザにより所持される通信端末に向けるアンテナ角度切換手段とを備えたことを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、車外ミラーに車外アンテナを組み込み、この車外アンテナと通信端末とが通信を行う際に、ミラー開き角度又は鏡面角度を切り換えることにより、車外アンテナの電波放射方向を通信端末に向ける。このため、車外アンテナの電波が通信端末に届き易くなるので、車外アンテナと通信端末との間の通信成立性を高くすることが可能となる。また、車外ミラーや鏡は、鏡面の位置を変えるために元から向きを変えることが可能な構造をとっているので、本発明を採用するに際して、車外ミラーや鏡の構造を大幅に変更する必要もない。
【0008】
本発明では、前記通信端末は、自身が持つIDコードを無線により前記車両に送信して、該車両にID照合を実行させる電子キーであって、当該ID照合が成立すれば、車載機器の操作が許可又は実行となり、前記アンテナ角度切換手段は、前記ID照合が完了するまで、前記電子キーへの前記電波放射方向の合わせ込みを継続することを要旨とする。
【0009】
この構成によれば、通信端末を電子キーとし、電子キーと車両とのID照合が完了するまで、車外アンテナの電波放射方向を電子キーに向かせる。このため、ID照合が完了するまで車外アンテナと電子キーとは電波放射方向に沿って相対する向きをとるので、ID照合時において高い通信成立性を確保することが可能となる。
【0010】
本発明では、前記車外ミラーには、前記車外アンテナの前記電波放射方向を前記通信端末により多く向かせる導体部材が設けられていることを要旨とする。
この構成によれば、車外ミラーに設けた導体部材により、車外アンテナからの放射電波を、より多く通信端末に向かせることが可能となる。よって、車外アンテナと通信端末との通信成立性を、より高くすることが可能となる。
【0011】
本発明では、前記アンテナ角度切換手段は、前記車外アンテナと前記通信端末とが通信を行う際、前記車外ミラー又は前記鏡を、通常時の使用状態である開き定位置よりも一度角度を変えて前記電波放射方向を前記通信端末に合わせ込み、これら2者の通信完了後、当該車外ミラー又は前記鏡を、元の前記開き定位置に戻すことを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、車外アンテナが通信端末と通信する際、車外ミラー又は鏡を、開き定位置よりも外に一旦大きく開かせるので、車両から少し離れた位置に通信端末が位置していても、この通信端末に車外アンテナの電波放射方向を向かせることが可能となる。よって、車外アンテナと通信端末との通信成立性を、より高くすることが可能となる。
【0013】
本発明では、前記通信端末の電源となる電力電波を少なくとも送信可能な電界型アンテナであることを要旨とする。
この構成によれば、通信端末を電池レスとし、車外アンテナから送信される電力電波を電源として通信端末を動作させることが可能となる。よって、通信端末から電源用の電池を省略することが可能となるので、通信端末の電池切れを想定せずに済み、電池交換等のメンテナンス作業を不要とすることが可能となる。
【0014】
本発明では、前記車外アンテナは、前記鏡の鏡面にスリットを形成することによって該鏡をアンテナとして使用したスロットアンテナであることを要旨とする。
この構成によれば、車外ミラーの鏡をアンテナの一部として使用するので、鏡を車外ミラーの鏡と車外アンテナのアンテナとで共用することが可能となる。よって、これらで別々の部品を用意する必要がなくなるので、部品点数を削減することが可能となる。
【0015】
本発明では、前記車両にユーザが乗車することを検出する乗車検出手段と、当該車両からユーザが降車することを検出する降車検出手段とを備え、前記アンテナ角度切換手段は、前記乗車検出手段で前記乗車を検出すると、閉状態をとっている前記車外ミラーを開状態にしつつ、当該開状態の過程で、前記車外アンテナの前記電波放射方向の合わせ込みも併せて実行し、前記降車検出手段で前記降車を検出すると、前記車外アンテナの前記電波放射方向の合わせ込みを行い、通信完了後、前記車外ミラーを閉状態に戻すことを要旨とする。
【0016】
この構成によれば、ユーザが車両に乗車するときと、車両から降車するときとの両方で、車外アンテナのアンテナ角度の合わせ込みが行われるので、装置として機能性の高いものとすることが可能となる。
【0017】
本発明では、前記通信端末は、自身が持つIDコードを無線により前記車両に送信して、該車両にID照合を実行させるキー端末であって、当該ID照合が成立すれば、車載機器の操作が許可又は実行となり、前記車外アンテナは、前記キー端末とRFIDに準じた通信を実行する磁界型アンテナであり、前記キー端末は、当該車外アンテナを介して前記車両と前記RFIDに準じた通信により前記ID照合を実行することを要旨とする。
【0018】
この構成によれば、車外アンテナとして磁界型アンテナを使用する。ところで、車外ミラーに車外アンテナを組み込んだ場合、鏡に磁束を交差させないために、フェライト等の磁性体を入れて磁束を曲げることが多く、このときアンテナには、磁束の向き(いわゆる軸)1方向に大きく偏る指向性が生じる。なお、指向性とは、磁界強度の方向依存性を指す。また、通信距離が短いことと、携帯電話が受信できる電波の方向軸とが決まっているため、アンテナ位置を意識したかざし動作が必要となる。しかし、本構成を採用すれば、車外アンテナにこのような指向性及び方向軸が生じても、同アンテナの指向性及び方向軸をユーザに向かせることが可能となるので、この種のアンテナで、磁界の向きを最適に設定できることは、今までの向きの合わせ難さを考えると、非常に効果が高いと言える。
【0019】
本発明では、前記車外アンテナは、前記車外ミラー内の収納空間において、前記鏡と反対側の壁に沿わせて配置されていることを要旨とする。
この構成によれば、車外ミラーにおいて鏡の反対側の壁は非常に大きな面積が存在する箇所となっているので、車外アンテナをこの壁に沿わせて配置すれば、車外アンテナのアンテナ径を、できるだけ大きくとることが可能となる。よって、アンテナはアンテナ径が広くなれば、通信距離を長くするに有利であるので、本構成の部品配置をとれば、車外アンテナの通信エリアを広く確保することが可能となる。
【0020】
本発明では、前記アンテナ角度切換手段は、乗車前、前記車外ミラーを閉状態として、前記車両と前記キー端末との通信を実行し、通信完了からエンジンが始動するまでの間に、前記車外ミラーを開状態に切り換えることを要旨とする。
【0021】
この構成によれば、車外アンテナとして磁界型アンテナを採用し、同アンテナを車外ミラーに搭載した場合、アンテナ指向性を乗降車に応じた最適なタイミングで切り換えることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、車両及びその通信端末の間の高い通信成立性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態におけるアンテナ角度切換システムの概略を示す構成図。
【図2】アウターミラーの外観を示す正面図。
【図3】アウターミラーの内部部品配置を示す断面図。
【図4】スロットアンテナの電波放射特性を示す説明図。
【図5】アウターミラー内の電力伝送用アンテナのアンテナ指向性を示す説明図。
【図6】アウターミラーの開閉動作の流れを示し、(a)はミラーが閉状態をとるときの状態図、(b)はミラーが広角度位置をとるときの状態図、(c)はミラーが開き定位置をとるときの状態図。
【図7】スマート照合の通信シーケンスを示すタイムチャート。
【図8】第2実施形態におけるアンテナ角度切換システムの概略を示す構成図。
【図9】(a)はアウターミラーを閉状態としてアンテナ指向性をユーザに近づけた状態を示す説明図、(b)はアウターミラーを開き定位置に切り換えた状態を示す説明図。
【図10】コイルアンテナの外観を示す斜視図。
【図11】コイルアンテナに発生する磁界の分布及び方向を示す磁界分布図。
【図12】別例におけるアンテナ角度切換システムの概略を示す模式図。
【図13】他の別例におけるアウターミラーの構造を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置の第1実施形態を図1〜図7に従って説明する。
【0025】
図1に示すように、車両1には、電子キー2が車両1に近づくと自動でID(Identification)照合を実行するキー操作フリーシステム3が設けられている。このキー操作フリーシステム3には、実際のキー操作を行うことなくドア開閉の一連の操作過程の中でドアロックの施解錠が実行されるスマートエントリシステムと、車内に設置されたプッシュ式のエンジンスイッチ4を押し操作するのみでエンジンを始動することが可能なワンプッシュエンジンスタートシステムとがある。なお、電子キー2が通信端末及び端末キーを構成する。
【0026】
この場合、車両1には、電子キー2との間でキー照合を実行するキー照合装置5と、ドアロック動作を管理するドアロック装置6と、エンジンの動作を管理するエンジン始動装置7とが設けられ、これらは車内バス8によって接続されている。キー照合装置5には、同装置5のコントロールユニットとして照合ECU(Electronic Control Unit)9が設けられている。照合ECU9のメモリ(図示略)には、車両1と組みをなす電子キー2のキーIDとしてIDコードが登録されている。照合ECU9には、車外にLF(Low Frequency)帯の電波を発信する車外発信機10と、車内にLF帯の電波を発信する車内発信機11と、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信する車両チューナ12とが接続されている。車外発信機10及び車内発信機11は、電子キー2へのID送信要求としてリクエスト信号SrqをLF帯の電波によって送信する。なお、ドアロック装置6やエンジン始動装置7が車載機器を構成する。
【0027】
また、本例のキー操作フリーシステム3は、電子キー2の電源として車両1側から電力電波Svvを送信し、この電力電波Svvによって電子キー2を動作させる電力伝送式をとっている。こうすれば、電子キー2を電池レスとすることが可能となり、電子キー2の電池交換が不要となる。この場合、照合ECU9には、車外にUHF帯の電力電波Svvの通信エリアを形成する車外電力伝送装置13と、車内にUHF帯の電力電波Svvの通信エリアを形成する車内電力伝送装置14とが接続されている。
【0028】
一方、電子キー2には、電子キー2の動作を統括制御する通信制御部15が設けられている。通信制御部15のメモリ(図示略)には、電子キー2側の固有IDとしてIDコードが登録されている。通信制御部15には、LF帯の電波を受信可能なLF受信機16と、UHF帯の電波を受信可能なUHF受信機17と、UHF帯の電波を送信可能なUHF送信機18とが接続されている。
【0029】
通信制御部15は、UHF受信機17で電力電波Svvを受信すると、これを電源として起動する。通信制御部15は、起動状態をとる際、リクエスト信号SrqをLF受信機16で受信すると、これに応答する形でID信号SidをUHF送信機18から送信する。ID信号Sidは、電子キー2のIDコードが含まれた信号である。照合ECU9は、このID信号Sidを車両チューナ12で受信すると、ID信号Sid内のIDコードを自身のIDコードと照らし合わせて、ID照合、いわゆるスマート照合を実行する。
【0030】
車両1の車外ドアハンドルノブ19には、車外ドアハンドルノブ19のタッチ操作有無を検出するタッチセンサ20が設けられている。ドアロックが施錠時、車外ドアハンドルノブ19のタッチ操作がタッチセンサ20により検出されると、車外発信機10からリクエスト信号Srqが送信されて、車外のスマート照合、いわゆる車外照合が実行される。そして、この車外照合が成立すると、ドアロックが施錠される。また、この車外ドアハンドルノブ19には、解錠状態のドアロックを施錠に切り換える際に操作するロックボタン21が設けられている。そして、ロックボタン21が操作されると、車外照合が実行され、車外照合が成立すればドアロックが解錠される。なお、タッチセンサ20が乗車検出手段に相当し、ロックボタン21が降車検出手段に相当する。
【0031】
また、運転者が乗車したことが例えばカーテシスイッチ等により検出されると、今度は車内発信機11がリクエスト信号Srqの送信を開始する。このとき、電子キー2がリクエスト信号Srq受信して車内通信が確立すると、車内のスマート照合、いわゆる車内照合が実行される。そして、車内照合が成立すると、エンジンスイッチ4の操作による電源状態の遷移が許可され、エンジン始動操作や電源遷移操作が許可される。
【0032】
車両1には、車両1の各動作状態に応じてアウターミラー22を開閉するアウターミラー開閉システムKが設けられている。アウターミラー開閉システムKには、同システムKの駆動源としてミラー開閉モータ23が設けられている。ミラー開閉モータ23は、駆動回路24を介して照合ECU9に接続され、動作が照合ECU9により管理されている。ミラー開閉モータ23は、例えば直流モータ(DCモータ)からなる。なお、アウターミラー22が車外ミラーに相当し、ミラー開閉モータ23及び駆動回路24が角度切換機構を構成する。
【0033】
アウターミラー22は、車内から車外後方を目視により確認するためのものである。アウターミラー22は、車体1aの左右に一対設けられ、例えば運転席ドア及び助手席ドアにそれぞれ取り付けられている。アウターミラー22とミラー開閉モータ23との間には、モータ23の回転運動をアウターミラー22の開閉動作に変換する変換機構22aが設けられている。車両1が駐車状態をとる際、アウターミラー22は閉状態をとり、例えば運転者がドアロックを解錠するなどの乗車行為をとると、アウターミラー22が開状態に切り換わる。開状態をとったアウターミラー22は、例えばドアロックが施錠されると、これに伴って閉状態に戻る。なお、変換機構22aも角度切換機構を構成する。
【0034】
図2及び図3に示すように、車両1のアウターミラー22には、同ミラー22の外枠部分として器形状のミラー本体25が設けられている。ミラー本体25の開口縁には、鏡(ミラー板)26が設けられ、鏡面は車両後方を向いている。アウターミラー22の内部には、部品の収納空間27が設けられ、この収納空間27に車外電力伝送装置13とミラー開閉モータ23と駆動回路24等が収納されている。なお、ミラー本体25が本体部に相当する。
【0035】
本例の鏡26は、鏡26の表面(以降、鏡面26aと記す)にスリット30が切られることにより、スロットアンテナとして形成されている。そして、このスロットアンテナが車外電力伝送装置13のアンテナ、即ち電力伝送用アンテナ29として使用されている。このため、本例の場合、アウターミラー22の鏡26は、鏡としての役目のみならず、車外電力伝送装置13のアンテナとして共用されている。電力伝送用アンテナ29は、送信電波として電界成分及び磁界成分の両方を持つ電波を送信する電界型アンテナとなっている。なお、電力伝送用アンテナ29が車外アンテナ及び電界型アンテナを構成する。
【0036】
スリット30は、鏡面26aに形成された溝、正確に言うならば、その部分だけ鏡が存在しない切り欠きであって、鏡面26aの下端位置に形成されている。スリット30は、車体1aの左右方向(以降、車幅方向と記す:図2の矢印W方向)に延びる形状をとっている。なお、ここで、車幅方向Wとは、地面に対して水平方向に沿う方向を言う。また、スリット30は、車体1aの高さ方向(以降、車体高さ方向と記す:図2の矢印H方向)において車両ドア1bの窓1cと向き合う高さ位置に配置されている。スリット30の長さは、例えば送信電波(電力電波Svv)の1/2波長に形成されている。
【0037】
スロットアンテナは、磁流アンテナとも言われ、ダイポールアンテナに対して逆の特性を持つアンテナである。スロットアンテナは、図4に示すように、スリット30の長さ方向に沿って磁流が流れ、この磁流の周りに電界(電界ループ)が発生するアンテナである。そして、この電界に基づく電波が送信されることになる。これにより、電力伝送用アンテナ29は、図5に示すように、見かけ上、自身を中心として、車体1aの前後方向に各々1つずつ略円形の通信エリアE,Eを持つことになる。なお、本例の場合、運転席ドアに近い側を第1電力伝送エリアE1とし、運転席ドアから遠い側を第2電力伝送エリアE2とする。
【0038】
よって、図6(b)に示すように、アウターミラー22を挟んで車両後方に向く方向と車両前方の向く方向とが、それぞれ電波が多く飛ぶ電波放射方向Xとなり、この電波放射方向Xと水平面上において直交する方向が、電波の放射が期待できないヌル方向(ヌル地点)Yとなる。なお、本例の場合、車両後方を向く電波放射方向Xをユーザ側電波放射方向X1とし、車両前方を向く電波放射方向Xを反ユーザ側電波放射方向X2とする。よって、電子キー2と電力伝送用アンテナ29との通信成立性を高めるには、電力伝送用アンテナ29の車体1a側のヌル方向Y1を車内に向かせて、ユーザ側電波放射方向X1をユーザに向かせるのが効果的であることが分かる。
【0039】
図3に示すように、電力伝送用アンテナ29は、鏡26の裏面に位置する電力伝送用送信回路13aと電気接続されている。電力伝送用送信回路13aは、照合ECU9から供給される電力電波Svvの元データを変調や増幅する回路である。また、電力伝送用アンテナ29は、通信ケーブル28を介して電力伝送用送信回路13aと電気的に接続され、この通信ケーブル28によって電力伝送用送信回路13aから給電されている。
【0040】
また、ミラー本体25の内面には、電力伝送用アンテナ29の放射電波においてユーザ側電波放射方向X1を向く成分を多くとるための反射材31が取り付けられている。この反射材31は、例えば電波を反射できる機能を持つ部材から構成されている。但し、ユーザ側電波放射方向X1の放射電波Shに対し、反射電波Skが逆位相をとってしまうと、これらが打ち消し合ってしまうので、その点には注意が必要である。なお、反射材31が導体部材に相当する。
【0041】
図1に示すように、電力伝送用アンテナ29のアンテナ角度を切り換えるアンテナ角度切換システム32が設けられている。アンテナ角度切換システム32は、アウターミラー開閉システムKを利用し、即ちアウターミラー22が開閉操作可能であることを利用し、アウターミラー22を通常時の使用状態である開き定位置よりも一時的に大きく外に広げて、アウターミラー22に組み込まれた車外電力伝送装置13、即ちその電力伝送用アンテナ29を、ユーザが所持する電子キー2に向かせるシステムである。
【0042】
この場合、照合ECU9には、電力伝送用アンテナ29のアンテナ角度を切り換えるべくアウターミラー22の開き角度(以降、ミラー開き角度θmと記す)を制御するアンテナ角度制御部33が設けられている。なお、アンテナ角度制御部33がアンテナ角度切換手段に相当する。
【0043】
アンテナ角度制御部33は、乗車時にアウターミラー22を閉状態から開状態に切り換える際、通常時の使用状態である開き定位置よりもアウターミラー22を一時的に外に大きく広げて、アウターミラー22を広角度位置とし、電力伝送用アンテナ29のアンテナ角度、即ちユーザ側電波放射方向X1をユーザ(電子キー2)に合わせ込む。また、アンテナ角度制御部33は、例えば降車時にアウターミラー22を閉状態に切り換える際も、アウターミラー22を一時的に広角度位置にして、電力伝送用アンテナ29のアンテナ角度をユーザ(電子キー2)に合わせ込む。アンテナ角度制御部33は、一定の制限時間を持ってスマート照合が完了するまでアウターミラー22を広角度位置とする。
【0044】
次に、本例のアンテナ角度切換システム32の動作を図6及び図7に従って説明する。
車両1が駐車状態(ドアロックが施錠状態で、かつエンジンが停止状態)をとる際、図6(a)に示すように、アウターミラー22は閉状態をとっている。駐車状態の車両1に乗車する際、ユーザは車外ドアハンドルノブ19をタッチ操作する。照合ECU9は、このタッチ操作をタッチセンサ20で検出すると、電力伝送用アンテナ29からの電力電波Svvの送信を開始させる。電力電波Svvは、一定の制限時間を持って、電子キー2のID照合が完了するまで継続送信される。
【0045】
また、アンテナ角度制御部33は、このタッチ操作をタッチセンサ20で検出すると、ミラー開閉モータ23を回転させて、閉状態をとっているアウターミラー22の開動作を開始する。このとき、まずアンテナ角度制御部33は、図6(b)に示すように、アウターミラー22のミラー開き角度θmを、通常時の使用状態である開き定位置よりも一時的に外に広げて、アウターミラー22を広角度位置に位置させる。これにより、電力伝送用アンテナ29のヌル方向Y1が車内方向を向き、ユーザ側電波放射方向X1がユーザ(電子キー2)を向く。よって、電力伝送用アンテナ29の放射電波、即ち電力電波Svvの放射エリアに電子キー2がより確実に位置することになるので、電子キー2を電力電波Svvによってより確実に起動状態に切り換えることが可能である。
【0046】
照合ECU9は、図7に示すように、電力電波Svvの送信動作に伴い、車外発信機10からLF帯のリクエスト信号Srqの断続的送信も同時に行う。このとき、電子キー2は電力電波Svvによって起動されているので、リクエスト信号Srqの受信動作に問題なく入ることが可能である。電子キー2は、リクエスト信号Srqを受信すると、これに応答して、ID信号SidをUHF帯の電波で送信する。照合ECU9は、ID信号Sidを車両チューナ12で受信すると、ID信号Sidに含まれるIDコードを自身のものと照らし合わせて車外照合を行い、車外照合が成立すると、ドアロック装置6にドアロック解錠を実行させる。
【0047】
アンテナ角度制御部33は、車外照合が成立したことを確認すると、図6(c)に示すように、ミラー開閉モータ23を広角度位置に向かせるときとは逆向きに回転させて、広角度位置にあるアウターミラー22を開き定位置に位置させる。これにより、アウターミラー22が通常の位置に復帰する。なお、照合ECU9は、車外照合が成立したことを確認すると、電力伝送用アンテナ29からの電力電波Svvの送信を停止する。
【0048】
一方、車両1から降車する際には、エンジンスイッチ4を操作してエンジンを切る。このとき、アンテナ角度制御部33は、開き定位置で以て開状態にあるアウターミラー22を開状態のままで維持する。そして、車両1から降車してドアロックを施錠する際には、車外ドアハンドルノブ19のロックボタン21が押し操作される。照合ECU9は、このロックボタン21のボタン操作を検出すると、電力伝送用アンテナ29からの電力電波Svvの送信を開始させる。電力電波Svvは、一定の制限時間を持って、電子キー2のID照合が完了するまで継続送信される。
【0049】
このとき、アンテナ角度制御部33は、開き定位置にあるアウターミラー22を一時的に外に広げて、図6(b)に示す広角度位置に位置させる。これにより、乗車の際と同様に、電力伝送用アンテナ29のユーザ側電波放射方向X1がユーザを向き、電子キー2を電力電波Svvによってより確実に起動状態に切り換えることが可能である。そして、照合ECU9は、乗車時と同様に車外発信機10からリクエスト信号Srqを送信して車外照合を行い、車外照合が成立すると、ドアロック装置6にドアロックを施錠させる。
【0050】
アンテナ角度制御部33は、車外照合が成立したことを確認すると、ミラー開閉モータ23を広角度位置に向かせるときと逆向きに回転させて、広角度位置にあるアウターミラー22を、図6(a)に示す閉状態に位置させる。これにより、アウターミラー22が車体1aに収納される。なお、照合ECU9は、車外照合が成立したことを確認すると、電力伝送用アンテナ29からの電力電波Svvの送信を停止する。
【0051】
従って、本例においては、アウターミラー22の鏡26を電力伝送用アンテナ29として利用することにより、アウターミラー22に電力伝送用アンテナ29を一体化する。そして、ユーザが乗降車する際、ミラー開き角度θmを開き定位置のときよりも大きく外に広げて、電力伝送用アンテナ29のヌル方向Y1を車内方向に向かせることにより、電力伝送用アンテナ29を電子キー2に向ける。このため、電力伝送用アンテナ29からの電力電波Svvを、電子キー2はより確実に受信することが可能となるので、電子キー2と電力伝送用アンテナ29との間の通信成立性を、高いものとすることが可能となる。
【0052】
また、従来からアウターミラー22は、通常の使用状態である開き定位置と、車体1aに収められた収納位置との、2位置の間で開閉する構造をとるものが多い。このため、アウターミラー22に電力伝送用アンテナ29を内蔵して、アンテナ角度を切り換える構造を採用したとしても、アウターミラー22の開閉は、元からある開閉構造をそのまま使用すればよいことになる。よって、本例の場合、アウターミラー22に電力伝送用アンテナ29を組み込んで、アウターミラー22のミラー開き角度θmを切り換えてアンテナ角度を切り換える構造をとったとしても、アウターミラー22の構造を大幅に変更する必要もない。
【0053】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)アウターミラー22の鏡26を電力伝送用アンテナ29として使用し、電力伝送用アンテナ29をアウターミラー22と一体化する。そして、スマート照合を行う際、アウターミラー22の開き角度θmを通常の開き定位置よりも一時的に大きくして、アウターミラー22を広角度位置とすることにより、電力伝送用アンテナ29のユーザ側電波放射方向X1を電子キー2に向かせる。このため、電力伝送用アンテナ29からの電力電波Svvが電子キー2に届き易くなるので、本例のようにアウターミラー22の開閉を管理してアンテナ指向性を調整すれば、これら2者の通信成立性を高くすることができる。また、アウターミラー22は従来から開閉構造をとるものが多いので、アウターミラー22に電力伝送用アンテナ29を組み込んでミラー開き角度θmを変えることによりアンテナ角度を切り換える構造をとったとしても、アウターミラー22の構造を大幅に変更する必要もない。
【0054】
(2)アウターミラー22に車外電力伝送装置13を組み込み、アウターミラー22の鏡26をその電力伝送用アンテナ29として利用する。このため、鏡26をアンテナ部品として共用することが可能となるので、部品点数を削減することができる。
【0055】
(3)アウターミラー22内には収納空間27があるので、このスペースを利用して車外電力伝送装置13を収納することができる。また、アウターミラー22内に電力伝送用送信回路13aを収納して、アウターミラー22の鏡26を電力伝送用アンテナ29として共用すれば、電力伝送用送信回路13aと電力伝送用アンテナ29とを繋ぐ通信ケーブル28を、極力短いもので済ますことができる。よって、車外電力伝送装置13の電力損失を低く抑えることができる。
【0056】
(4)車体1aから外方に突出するアウターミラー22に車外電力伝送装置13を組み込むので、車外電力伝送装置13をよりユーザに近づけることが可能となり、その分だけ通信成立性を向上することができる。
【0057】
(5)スロットアンテナは磁流アンテナであるので、金属が近接する状況となっても、放射が低減しない利点がある。よって、本例の場合、鏡26にスリット30を切ることでできるスロットアンテナを電力伝送用アンテナ29としたので、電力伝送用アンテナ29を金属に影響を受け難いアンテナとすることができる。
【0058】
(6)アンテナ角度切換システム32を車両1のキー操作フリーシステム3に使用し、車両1及び電子キー2の間のスマート照合が完了するまで、電力伝送用アンテナ29のユーザ側電波放射方向X1を電子キー2に向かせる。このため、スマート照合期間中は電子キー2に電力電波Svvが送信され続けるので、通信に必要な電力を電子キー2に供給し続けることができる。
【0059】
(7)ミラー本体25の内面に反射材31を設けたので、電力伝送用アンテナ29からの電波を、より多く電子キー2に向けて飛ばすことが可能となる。よって、電子キー2及び電力伝送用アンテナ29の間の通信成立性を、より高く設定することができる。
【0060】
(8)乗降車時のスマート照合の際、アウターミラー22を広角度位置まで一旦大きく開けるので、もし仮にユーザ(電子キー2)が車両1から少し遠い位置にいたとしても、電力伝送用アンテナ29のユーザ側電波放射方向X1を、このユーザに向けることが可能となる。よって、よって、電子キー2及び電力伝送用アンテナ29の間の通信成立性を、より高く設定することができる。
【0061】
(9)電力伝送用アンテナ29のヌル方向(Y方向)を車内に向けるようにしたので、車外の電子キー2とより確実に車外通信を行うことが可能となる。よって、電子キー2の車内閉じこめを、より確実に防止することができる。
【0062】
(10)車両1の電力伝送装置13,14から電力電波Svvを送信させ、この電力電波Svvを電源として電子キー2を動作させる。このため、電子キー2に電池等の電源を搭載する必要がなくなるので、電池レス化に伴って、電池交換作業を不要とすることができる。
【0063】
(11)ユーザが車両1に乗車するときと、車両1から降車するときとの両方で、電力伝送用アンテナ29のアンテナ角度の合わせ込みが行われるので、装置として機能性の高いものとすることができる。
【0064】
(12)電力伝送用アンテナ29のアンテナ角度を変化させるに際して、アウターミラー22自体を動かして角度切り換えを行うので、より広い角度範囲でアンテナ角度を切り換えることができる。
【0065】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図8〜図11に従って説明する。本例は、第1実施形態に対し、スマート通信の通信形式と、アンテナ角度の切換手順とが異なるのみで、基本的な部分は同一である。よって、第1実施形態と同じ箇所は同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0066】
図8に示すように、車両1には、電子キーシステムとして端末かざし照合システム40が設けられている。端末かざし照合システム40では、車両キーとして携帯電話41が使用されている。携帯電話41には、電子キー2のIDコードが登録されている。携帯電話41は、車両1とRFID(Radio Frequency-Identification)に準じた通信形式によりID照合、いわゆるかざし照合を実行する。なお、携帯電話41が通信端末及びキー端末を構成する。
【0067】
RFIDは、ID情報を埋め込んだタグやラベルから、磁界(交流磁界)を用いた近距離無線通信(数十cm)によって、情報のやり取りを行う無線通信の一種である。タグやラベルは、自ら電源を持たず、通信相手から無線により電力を受け取り、これを電源として通信動作を実行する。また、RFID通信の周波数には、例えばHF(High Frequency)が使用されている。
【0068】
携帯電話41には、通話やメールの動作を管理する電話機能部42の他に、携帯電話41側のRFID通信を管理する通信モジュール43が設けられている。通信モジュール43は、RFID通信のタグに相当し、今日において携帯電話41に予め実装されることが多い。通信モジュール43は、自ら電源を持たず、車両1から送信された駆動電波Spwを電源として動作する。通信モジュール43は、電話機能部42に接続され、RFID通信に関する各種情報が電話機能部42とやり取りされる。
【0069】
通信モジュール43には、通信モジュール43の通信動作を統括管理するモジュール制御部44が設けられている。モジュール制御部44は、例えば1チップICからなる。通信モジュール43のメモリ(図示略)には、車両1のIDコードが登録されている。これにより、携帯電話41を車両キーとして使用することが可能となっている。モジュール制御部44には、電波の送受信を実行する通信機45が接続されている。通信機45には、送受信アンテナとしてのモジュール側コイルアンテナ46と、受信電波の復調や送信電波の変調等を行う通信回路47とが設けられている。モジュール側コイルアンテナ46は、単一コイルであるため、受信できる磁界の方向が一方向に束縛される。また、この通信系の通信距離は非常に短い。そのため、通信を実行するには、アンテナ位置と携帯電話41との向きを意識して、コイルアンテナ46の前面に携帯電話41をかざす操作が必要となる。
【0070】
車両1には、携帯電話41(通信モジュール43)とかざし照合を実行するリーダライタ48,49が設けられている。本例の場合、車外かざし照合用に車外リーダライタ48が設けられ、車内かざし照合用に車内リーダライタ49が設けられている。リーダライタ48,49は、駆動電波Spwを断続的に送信するとともに、駆動電波Spwを送信した後に、リクエスト信号Srqを送信する。そして、リーダライタ48,49は、携帯電話41からID信号Sidを受信すると、照合ECU9にID照合を行わせるべく、ID信号Sidに含まれるIDコードを照合ECU9に転送する。
【0071】
携帯電話41が車外にある際、車外リーダライタ48から駆動電波Spwが断続的に送信される。ドアロックを施解錠する際、ユーザは携帯電話41を車外リーダライタにかざす動作をとる。このとき、通信モジュール43は、車外リーダライタ48からの駆動電波Spwによって起動し、その後に受信するリクエスト信号Srqに応答して、自身に登録されたIDコードをID信号Sidとして返信する。車外リーダライタ48は、駆動電波Spwを送信した後に、ID信号Sidを受信できると、このID信号Sidに含まれるIDコードを照合ECU9に出力する。照合ECU9は、IDコードを取得すると、車外照合を実行し、車外照合が成立すると、ドアロック施解錠を実行させる。
【0072】
また、ユーザが乗車したことが例えばカーテシスイッチ等により検出されると、車外リーダライタ48に代えて、今度は車内リーダライタ49から駆動電波Spwの送信が開始される。このとき、携帯電話41が車内リーダライタ49にかざされると、車内リーダライタ49は通信モジュール43からIDコードを取得する。そして、照合ECU9は、このIDコードによって車内照合を行い、車内照合が成立すれば、エンジン始動操作や電源遷移操作を許可する。
【0073】
図9(a),(b)に示すように、本例の車外リーダライタ48は、アウターミラー22内の収納空間27に配置されることにより、アウターミラー22に組み込まれている。ところで、アウターミラー22は、車外方向に突出する部品となっている。よって、アウターミラー22に車外リーダライタ48を搭載すれば、車外リーダライタ48がユーザにより近づくことになり、車外かざし照合時の通信成立性向上に非常に効果が高くなる。
【0074】
車外リーダライタ48には、送受信アンテナとして、図10に示すような板状のリーダライタ側コイルアンテナ50が設けられている。このコイルアンテナ50は、スパイラルアンテナが使用されている。スパイラルアンテナは、基板51上にアンテナ線52がスパイラル状に巻回されたアンテナである。コイルアンテナ50は、RFID通信、即ち放射成分として磁界のみの成分で通信を行うので、磁界型アンテナとなっている。なお、コイルアンテナ50が車外アンテナ及び磁界型アンテナを構成する。
【0075】
また、図11に示すように、基板51びの裏面位置には、コイルアンテナ50の磁界損失を抑制するフェライトシート53が設けられている。フェライトシート53は、自身の周りに磁路を形成して、磁界を集磁する役目を持つ。これにより、もし仮にアンテナ線52の裏面側に金属部品54(鏡26や電子部品等)が位置していても、磁界が金属部品54に至って渦電流が発生することを要因とする磁界の減少が生じ難くなるので、金属部品54に影響を受けることなく、広い通信エリアを確保することが可能となる。
【0076】
なお、コイルアンテナ50にフェライトシート53を設けると、鏡に磁束を交差させなくすることが可能となるが、この利点とは逆に、コイルアンテナ50に指向性が生じ、通信エリアが所定の一方向を向き、コイルアンテナ50の前方付近が通信エリアとなる(図9参照)。このとき、ユーザがアンテナ位置を意識してかざし動作を行うには、図9(b)の場合、通信エリアが遠く、ユーザに無理な動作を強いることとなる。よって、本例のように、アウターミラー22の角度を調整して、図9(a)のようにコイルアンテナ50の指向性をユーザ(電子キー2)に向けば、ユーザにとって無理なくかざし動作を行うことが可能となる。
【0077】
図9(a),(b)に示すように、コイルアンテナ50は、アウターミラー22内の収納空間27において外側寄りの位置、即ちアウターミラー22の前面壁55に沿わせて配置されている。ところで、コイルアンテナ50は、コイル径を大きくとると通信距離を延ばすのに有利な特性があるので、携帯電話41との通信性能を高くするためには、コイル径を大きく取れるように、ミラー22内に空間を設けることが好ましい。ここで、アウターミラー22で相対的に広い面積を確保できるのは、前面壁55となっているので、本例の場合、コイルアンテナ50を前面壁55に沿わせて置くことにおり、コイルアンテナ50のコイル径を大きくとっている。なお、前面壁55が鏡と反対側の壁に相当する。
【0078】
また、コイルアンテナ50は、鏡26から遠く離された位置に配置されている。これは、前述したように、仮にコイルアンテナ50の磁界が鏡26に至ってしまうと、この磁界により鏡26に渦電流が生じて逆磁界が誘起され、この逆磁界によってコイルアンテナ50の磁界が減少するおそれが生じるからである。よって、コイルアンテナ50と鏡26との距離Lを広くとり、コイルアンテナ50の磁界が鏡26に届き難いように長さ設定されている。
【0079】
コイルアンテナ50のアンテナ指向性は、図9に示すように、コイル軸C(図10参照)に沿う方向おいてコイルアンテナ50の一方側(即ち、アウターミラー22と反対側)に、円を描くような通信エリア(以降、車外かざしエリアEkと記す)で形成される。このため、コイルアンテナ50のコイル径を確保するために、コイルアンテナ50をアウターミラー22の前面壁55に沿わせて配置すると、必然的に車外かざしエリアEkは、アウターミラー22の前方位置となる。従って、アウターミラー22が開状態を常時とっていると、図9(b)に示すように、車外かざしエリアEkが車両前方に大きく傾き、車両ドアの前に位置するユーザから大きく離れた場所に位置してしまう。よって、ユーザが車外かざし照合を実行する際、手を大きく延ばさないと、車外かざしエリアEkまで届かず、かざし操作が非常に行い難い問題に繋がる。
【0080】
そこで、本例のアンテナ角度制御部33は、車外かざし照合を行う際、アウターミラー22を閉状態としておき、アウターミラー22内のコイルアンテナ50のアンテナ指向性を車体側方、即ち車両ドア前に立つユーザに向ける。そして、アンテナ角度制御部33は、ユーザが乗車して車両1を走行させる際に、閉状態のアウターミラー22を開き状態に切り換えて、アウターミラー22を開き定位置に位置させる。
【0081】
次に、本例のアンテナ角度切換システム32の動作を図9に従って説明する。
車両1が駐車状態(ドアロック施錠、エンジン停止)をとる際、アンテナ角度制御部33は、図9(a)に示すように、アウターミラー22を閉状態として、コイルアンテナ50のアンテナ指向性を、車体側方、即ち車外ユーザ側に向けておく。これにより、運転者が乗車時に運転席ドアの前に立った際、その位置から車外かざしエリアEkは非常に近い状態をとる。よって、ユーザは、さほど手を延ばさなくても、携帯電話41をコイルアンテナ50にかざすことが可能となり、楽な体勢で車外かざし照合を実行することが可能となる。
【0082】
携帯電話41がコイルアンテナ50にかざし操作された際、通信モジュール43は、コイルアンテナ50から駆動電波Spwを受信すると、それまでの待機状態から起動状態に切り換わり、リクエスト信号Srqを受信するとID信号Sidを返信する。車外リーダライタ48は、携帯電話41からID信号Sidを受信すると、ID信号Sid内のIDコードを照合ECU9に転送する。照合ECU9は、車外リーダライタ48からIDコードを受け取ると、このIDコードでID照合を行い、ID照合が成立することを確認すると、施錠状態のドアロックを解錠する。
【0083】
続いて、運転者が車内に乗車すると、今度は車内リーダライタ49から駆動電波Spwの送信が開始される。車内リーダライタ49は、例えばエンジンスイッチ4の近傍に設けられているので、車内かざし照合では、携帯電話41をエンジンスイッチ4にかざす操作をとる。そして、照合ECU9は、この車内かざし照合が成立することを確認すると、エンジン始動操作を許可する。よって、エンジンスイッチ4が押し操作されると、エンジンが始動する。なお、車外かざし照合や車内かざし照合は、実施のところ第1実施形態のような通信シーケンスをとってID照合を実行するが、基本的な内容は同じであるので、詳細は省略する。
【0084】
アンテナ角度制御部33は、エンジンが始動状態に切り換わったことを確認すると、図9(b)に示すように、閉状態のアウターミラー22を開状態に切り換えて、アウターミラー22を開き定位置に位置させる。これにより、走行中にアウターミラー22で車両後方を確認することが可能となる。また、このとき、車外かざしエリアEkが車両前方を向くが、かざし照合は実行されないので、問題はない。
【0085】
目的地に到着するなどして車両1から降車する際、運転者はエンジンスイッチ4を押し操作して、エンジンを停止させる。アンテナ角度制御部33は、エンジンが停止状態になったことを確認すると、アウターミラー22を開き定位置から閉状態に切り換える。これにより、降車した運転者がドアロックを施錠するかざし照合を行う際に、そのアンテナ指向性を確保することが可能となる。そして、運転者は、降車した際、閉状態をとるアウターミラー22に携帯電話41をかざし、車外かざし照合を成立させて、ドアロックを施錠する。
【0086】
従って、本例のように、車両1と車両キー(携帯電話41)とのID照合にRFIDを使用し、車外リーダライタ48のコイルアンテナ50を、アウターミラー22の前面壁55に沿わせて配置しても、車外かざし照合の際には、コイルアンテナ50のアンテナ指向性を、車両ドア前に立つ運転者に向けることが可能となる。よって、運転者に無理な体勢をとらせることなく車外かざし照合が可能となるので、車両1及び携帯電話41の間で高い通信成立性を確保することが可能となる。
【0087】
本実施形態によれば、第1実施形態に記載の(1)〜(12)の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
(13)RFID通信用のコイルアンテナ50は、磁界型アンテナであるので、放射成分の軸方向が1方向のみとなるので、アンテナ指向性に極端な偏りが生じる。しかし、このようなコイルアンテナ50を使用しても、同アンテナ50をアウターミラー22に搭載して、アウターミラー22の開閉を管理することにより、コイルアンテナ50のアンテナ指向性をユーザ側に向かせるので、コイルアンテナ50を使用しても、充分な通信成立性を確保することができる。
【0088】
(14)アウターミラー22では、鏡26の反対側の壁、即ち前面壁55に、大きな面積が存在している。よって、本例の場合、この前面壁55に沿わせてコイルアンテナ50を配置するので、コイルアンテナ50のコイル径を大きくすることが可能となる。よって、コイルアンテナ50のコイル径を自由に設計できるスペースが確保されれば、その分だけ通信距離を延ばすのに有利となるので、コイルアンテナ50の通信エリアをより広くとることができる。
【0089】
(15)鏡26とコイルアンテナ50との距離Lを充分に広くとって、コイルアンテナ50を鏡26から離間して配置したので、コイルアンテナ50の磁界が鏡26に影響を受け難くなり、コイルアンテナ50の通信距離を、より長くとることができる。
【0090】
(16)運転者が乗車する際、アウターミラー22を閉状態として車外かざし照合をユーザに実行させ、乗車後にエンジンが始動すると、アウターミラー22を開操作して開き定位置に位置させる。そして、エンジンが停止となると、開き定位置にあるアウターミラー22を閉状態に切り換える。よって、アウターミラー22内のコイルアンテナ50のアンテナ指向性を、乗降車に応じた最適なタイミングで、適宜切り換えることができる。
【0091】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・第1及び第2実施形態において、電力伝送用アンテナ29のアンテナ角度を切り換える形式は、アウターミラー22自体の開き角度θmを変えることに限定されない。例えば、図12に示すように、鏡26自体の角度(鏡面角度θn)を切り換える形式を用いてもよい。なお、鏡26は上下左右の十字方向で角度設定が可能であるので、この場合はより細かくユーザ側電波放射方向X1を設定することができる。なお、第2実施形態の場合は、コイルアンテナ50を鏡26に取り付ける必要がある。
【0092】
・第1実施形態において、スリット30の切り込み角度は、地面(鏡26の下端縁)に対して水平であることに限らず、図13に示すように、若干の傾きを持つものでもよい。
・第1実施形態において、スリット30の形成位置は、鏡面26aの下端に限定されず、例えば上端でもよい。
【0093】
・第1実施形態において、電力伝送用アンテナ29のアンテナ角度を調整する際、アウターミラー22を一時的に広角度位置まで広げる必要は必ずしもない。即ち、アウターミラー22が開き定位置をとることを以て、電力伝送用アンテナ29のアンテナ角度を調整するとしてもよい。
【0094】
・第1及び第2実施形態において、アンテナ角度切換システム32は、運転席側にのみ設けられることに限らず、例えば助手席側のミラーにも設けてもよい。
・第1及び第2実施形態において、角度切換機構の駆動源は、モータ(ミラー開閉モータ23)に限らず、例えばシリンダ等の他のものを使用してもよい。また、ミラー開閉モータ23は、直流モータ、交流モータ、ステッピングモータ等の種々のモータが使用可能である。
【0095】
・第1実施形態において、電力電波Svvの通信エリアは、リクエスト信号Srqと同じに限らず、これに対して範囲が異なっていてもよい。また、電力電波Svvの周波数は、UHF帯に限らず、他の周波数を使用してもよい。
【0096】
・第1実施形態において、電波放射方向Xとは、2次元的な電波の向きを表すものに限らず、広義として3次元的な方向を含むものとする。なお、これは、第2実施形態におけるコイルアンテナ50の磁界放射方向についても同様に言えることである。
【0097】
・第1実施形態において、導体部材は、反射材31に限らず、例えば単なる鉄板でもよい。
・第1実施形態において、導体部材は、アウターミラー22の内部又は外部に施したメッキでもよい。
【0098】
・第1実施形態において、車外発信機10の配置位置は、車外ドアや車体等、種々の位置が採用可能である。
・第1実施形態において、車外電力伝送装置13は、部品の全てがアウターミラー22に設けられることに限らず、例えば電力伝送用アンテナ29がアウターミラー22に組み込まれ、送信回路13aが車体1aに設けられていてもよい。
【0099】
・第1及び第2実施形態において、通信端末は、電子キー2や携帯電話41に限らず、無線通信可能な端末であればよい。また、キー端末は、電子キー2や携帯電話41に限らず、例えばRFIDによりID照合を行うICカードでもよい。
【0100】
・第1及び第2実施形態において、ID照合成立時に使用可となる車載機器は、ドアロックやエンジンに限らず、例えばカーナビゲーションシステムや車載オーディオシステム等としてもよい。
【0101】
・第1実施形態において、キー操作フリーシステム3は、電力伝送式に限らず、例えば電子キー2に電池が内蔵されていれば、このような電力伝送式をとる必要はない。
・第1実施形態において、アウターミラー22に組み込まれる送信機は、車外電力伝送装置13に限定されず、例えば車外発信機10でもよい。また、アウターミラー22に車外発信機10及び車外電力伝送装置13の両方が組み込まれてもよい。
【0102】
・第1実施形態において、アウターミラー22に組み込まれる通信機は、送信機に限らず、例えば受信機としてもよい。
・第1実施形態において、アウターミラー22は、ID照合が完了する期間の間、継続して広角度位置をとることに限定されない。例えば、ID照合の初期時において電子キー2が高速充電可能であれば、ID初期時のみ広角度位置に切り換えるようにしてもよい。
【0103】
・第1実施形態において、電力伝送用アンテナ29は、アウターミラー22の鏡26をアンテナとして使用するものに限らず、自身のみで自立してアンテナ部品を構成するものでもよい。例えば、ダイポールアンテナ等の他のアンテナを採用可能である。
【0104】
・第1実施形態において、電力電波Svvと通信データは、各々異なる送信機(発信機10,11と電力伝送装置13,14)から送信されることに限らず、同一の送信機から送信されるものでもよい。この場合、電子キー2を電波反射型により構成すれば、高いエネルギー効率で以て電子キー2に電波を送信させることができる。
【0105】
・第1実施形態において、キー操作フリーシステム3は、車両1から電子キー2に電波送信する往路通信と、電子キー2から車両1に電波送信する復路通信とで、周波数が各々異なることに限定されない。例えば、往路通信及び復路通信ともに例えばUHF帯の電波として、同じ周波数を使用してもよい。
【0106】
・第1実施形態において、電力伝送用アンテナ29のアンテナ角度の合わせ込みは、乗車及び降車の両方で実行されることに限らず、一方で行われもよい。なお、これは第2実施形態でも同様に言えることである。
【0107】
・第1実施形態において、電子キー2が自ら電源を持つものでもよい。この場合、アウターミラー22の内蔵アンテナは、車両チューナ12となる。
・第1実施形態において、電力電波Svvの送信開始は、タッチセンサ20で車外ドアハンドルノブ19のタッチ操作を検出することに限定されず、常時送信されるものでもよい。また、降車時も同様である。
【0108】
・第1実施形態において、乗車時のアンテナ角度切換システム32の動作開始は、タッチセンサ20で車外ドアハンドルノブ19のタッチ操作を検出することに限定されない。例えば、電子キー2が自ら電池を持ち、車両1が定期的にリクエスト信号Srqを車両周囲に送信する場合、電子キー2がリクエスト信号Srqの通信エリアに入ったことを開始条件としてもよい。また、降車時の動作開始も、ロックボタン21の操作有りを開始条件とすることに限らず、例えば車外ドアが開閉されたことしてもよい。
【0109】
・第1実施形態において、アウターミラー22は、閉状態→広角度位置→開き定位置という動作をとることに限定されない。例えば、駐車時、アウターミラー22は開き定位置を常時とり、車外ドアハンドルノブ19がタッチ操作されると、開き定位置から広角度位置をとり、通信成立後、元の開き定位置に戻るものでもよい。また、降車時は、ロックボタン21が押し操作されると、アウターミラー22は開き定位置から広角度位置をとり、通信成立後、元の開き定位置に戻る。
【0110】
・第2実施形態において、リクエスト信号Srqの送信は、常時送信(ポーリング)に限定されず、第1実施形態のように操作トリガを得てから開始されるものでもよい。
・第2実施形態において、携帯電話41へのIDコード登録は、サーバを介したものに限らず、例えば携帯電話41に予め登録されていてもよいし、或いは専用ツールを使用するものでもよい。
【0111】
・第2実施形態において、コイルアンテナ50の配置向きは、鏡面26aの平面方向に対してコイル軸Cが直交する向きに限定されない。例えば、鏡面26aの平面方向とコイル軸Cとが並行する向きにコイルアンテナ50を配置してもよい。
【0112】
・第2実施形態において、コイルアンテナ50は、スパイラルアンテナに限定されず、例えば磁性体コアにアンテナ線が巻回されてなるループアンテナでもよい。また、コアは、例えば筒状のプラスチックからなる誘電体でもよいし、或いは中空状となっていてもよい。
【0113】
・第2実施形態において、コイルアンテナ50は、収納空間27の外側寄りの位置に配置されることに限らず、配置位置を適宜変更してもよい。
・第2実施形態において、磁界型アンテナは、放射成分として磁界成分のみを持つものであれば、どのような種類のものを採用してもよい。
【0114】
・第2実施形態において、電子キー2により車両1を動作させる電子キーシステムは、キー操作フリーシステム3に限定されない。例えば、電子キー2に組み込んだトランスポンダ(RFIDタグ)により、例えばRFID方式でID照合を行うイモビライザーシステムとしてもよい。
【符号の説明】
【0115】
1…車両、1a…車体、2…通信端末及び端末キーを構成する電子キー、6…車載機器を構成するドアロック装置、7…車載機器を構成するエンジン始動装置、20…乗車検出手段としてのタッチセンサ、21…降車検出手段としてのロックボタン、22…車外ミラーとしてのアウターミラー、23…角度切換機構を構成するミラー開閉モータ、24…角度切換機構を構成する駆動回路、25…本体部としてのミラー本体、26…鏡、26a…鏡面、27…収納空間、29…車外アンテナ及び電界型アンテナを構成する電力伝送用アンテナ、30…スリット、31…導体部材としての反射材、33…アンテナ角度切換手段としてのアンテナ角度制御部、41…通信端末及びキー端末を構成する携帯電話、50…車外アンテナ及び磁界型アンテナを構成するコイルアンテナ、55…鏡と反対側の壁としての前面壁、θm…ミラー開き角度、θn…鏡面角度、X(X1,X2)…電波放射方向、Svv…電力電波。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車外ミラーに車外アンテナを内蔵した車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの車両には、車両キーとして電子キーを用いた電子キーシステムが広く使用されている。ところで、この種の電子キーシステムでは、車両と電子キーとの間で高い通信成立性を確保することが非常に重要な問題となってくるが、通信成立性を確保するために、例えば車両側のアンテナをアウターミラーに組み込む技術(特許文献1)が考案されている。この場合、アウターミラーは車体から飛び出す形状をとっているので、アウターミラーに車両アンテナを内蔵すれば、車両アンテナがより電子キーに近づくことになり、高い通信成立性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−251830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的にアンテナには、どうしても指向性が存在し、電波が多く飛ぶ電波放射方向に対して、電波がさほど飛ばないヌル方向(ヌル点)ができる現状がある。よって、アウターミラーに車両アンテナを組み込んで通信成立性を確保しても、アンテナの電波放射方向が、ユーザの所持する電子キーに合わせ込まれていなければ、通信が成立しないことになるので、このようなヌル方向を考慮に入れて通信成立性を確保することが非常に大きなニーズとなっていた。
【0005】
本発明の目的は、高い通信成立性を確保することができる車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明では、車両の車外ミラーに内蔵された車外アンテナと、車体に対して開閉に取り付けられた前記車外ミラーのミラー開き角度、又は当該車外ミラーの本体部に対して角度変化可能に取り付けられた鏡の鏡面角度を変化させる角度切換機構と、前記ミラー開き角度又は前記鏡面角度を管理することにより、これら2つうちの一方と連動して動く前記車外アンテナの電波放射方向を、乗降車するユーザにより所持される通信端末に向けるアンテナ角度切換手段とを備えたことを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、車外ミラーに車外アンテナを組み込み、この車外アンテナと通信端末とが通信を行う際に、ミラー開き角度又は鏡面角度を切り換えることにより、車外アンテナの電波放射方向を通信端末に向ける。このため、車外アンテナの電波が通信端末に届き易くなるので、車外アンテナと通信端末との間の通信成立性を高くすることが可能となる。また、車外ミラーや鏡は、鏡面の位置を変えるために元から向きを変えることが可能な構造をとっているので、本発明を採用するに際して、車外ミラーや鏡の構造を大幅に変更する必要もない。
【0008】
本発明では、前記通信端末は、自身が持つIDコードを無線により前記車両に送信して、該車両にID照合を実行させる電子キーであって、当該ID照合が成立すれば、車載機器の操作が許可又は実行となり、前記アンテナ角度切換手段は、前記ID照合が完了するまで、前記電子キーへの前記電波放射方向の合わせ込みを継続することを要旨とする。
【0009】
この構成によれば、通信端末を電子キーとし、電子キーと車両とのID照合が完了するまで、車外アンテナの電波放射方向を電子キーに向かせる。このため、ID照合が完了するまで車外アンテナと電子キーとは電波放射方向に沿って相対する向きをとるので、ID照合時において高い通信成立性を確保することが可能となる。
【0010】
本発明では、前記車外ミラーには、前記車外アンテナの前記電波放射方向を前記通信端末により多く向かせる導体部材が設けられていることを要旨とする。
この構成によれば、車外ミラーに設けた導体部材により、車外アンテナからの放射電波を、より多く通信端末に向かせることが可能となる。よって、車外アンテナと通信端末との通信成立性を、より高くすることが可能となる。
【0011】
本発明では、前記アンテナ角度切換手段は、前記車外アンテナと前記通信端末とが通信を行う際、前記車外ミラー又は前記鏡を、通常時の使用状態である開き定位置よりも一度角度を変えて前記電波放射方向を前記通信端末に合わせ込み、これら2者の通信完了後、当該車外ミラー又は前記鏡を、元の前記開き定位置に戻すことを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、車外アンテナが通信端末と通信する際、車外ミラー又は鏡を、開き定位置よりも外に一旦大きく開かせるので、車両から少し離れた位置に通信端末が位置していても、この通信端末に車外アンテナの電波放射方向を向かせることが可能となる。よって、車外アンテナと通信端末との通信成立性を、より高くすることが可能となる。
【0013】
本発明では、前記通信端末の電源となる電力電波を少なくとも送信可能な電界型アンテナであることを要旨とする。
この構成によれば、通信端末を電池レスとし、車外アンテナから送信される電力電波を電源として通信端末を動作させることが可能となる。よって、通信端末から電源用の電池を省略することが可能となるので、通信端末の電池切れを想定せずに済み、電池交換等のメンテナンス作業を不要とすることが可能となる。
【0014】
本発明では、前記車外アンテナは、前記鏡の鏡面にスリットを形成することによって該鏡をアンテナとして使用したスロットアンテナであることを要旨とする。
この構成によれば、車外ミラーの鏡をアンテナの一部として使用するので、鏡を車外ミラーの鏡と車外アンテナのアンテナとで共用することが可能となる。よって、これらで別々の部品を用意する必要がなくなるので、部品点数を削減することが可能となる。
【0015】
本発明では、前記車両にユーザが乗車することを検出する乗車検出手段と、当該車両からユーザが降車することを検出する降車検出手段とを備え、前記アンテナ角度切換手段は、前記乗車検出手段で前記乗車を検出すると、閉状態をとっている前記車外ミラーを開状態にしつつ、当該開状態の過程で、前記車外アンテナの前記電波放射方向の合わせ込みも併せて実行し、前記降車検出手段で前記降車を検出すると、前記車外アンテナの前記電波放射方向の合わせ込みを行い、通信完了後、前記車外ミラーを閉状態に戻すことを要旨とする。
【0016】
この構成によれば、ユーザが車両に乗車するときと、車両から降車するときとの両方で、車外アンテナのアンテナ角度の合わせ込みが行われるので、装置として機能性の高いものとすることが可能となる。
【0017】
本発明では、前記通信端末は、自身が持つIDコードを無線により前記車両に送信して、該車両にID照合を実行させるキー端末であって、当該ID照合が成立すれば、車載機器の操作が許可又は実行となり、前記車外アンテナは、前記キー端末とRFIDに準じた通信を実行する磁界型アンテナであり、前記キー端末は、当該車外アンテナを介して前記車両と前記RFIDに準じた通信により前記ID照合を実行することを要旨とする。
【0018】
この構成によれば、車外アンテナとして磁界型アンテナを使用する。ところで、車外ミラーに車外アンテナを組み込んだ場合、鏡に磁束を交差させないために、フェライト等の磁性体を入れて磁束を曲げることが多く、このときアンテナには、磁束の向き(いわゆる軸)1方向に大きく偏る指向性が生じる。なお、指向性とは、磁界強度の方向依存性を指す。また、通信距離が短いことと、携帯電話が受信できる電波の方向軸とが決まっているため、アンテナ位置を意識したかざし動作が必要となる。しかし、本構成を採用すれば、車外アンテナにこのような指向性及び方向軸が生じても、同アンテナの指向性及び方向軸をユーザに向かせることが可能となるので、この種のアンテナで、磁界の向きを最適に設定できることは、今までの向きの合わせ難さを考えると、非常に効果が高いと言える。
【0019】
本発明では、前記車外アンテナは、前記車外ミラー内の収納空間において、前記鏡と反対側の壁に沿わせて配置されていることを要旨とする。
この構成によれば、車外ミラーにおいて鏡の反対側の壁は非常に大きな面積が存在する箇所となっているので、車外アンテナをこの壁に沿わせて配置すれば、車外アンテナのアンテナ径を、できるだけ大きくとることが可能となる。よって、アンテナはアンテナ径が広くなれば、通信距離を長くするに有利であるので、本構成の部品配置をとれば、車外アンテナの通信エリアを広く確保することが可能となる。
【0020】
本発明では、前記アンテナ角度切換手段は、乗車前、前記車外ミラーを閉状態として、前記車両と前記キー端末との通信を実行し、通信完了からエンジンが始動するまでの間に、前記車外ミラーを開状態に切り換えることを要旨とする。
【0021】
この構成によれば、車外アンテナとして磁界型アンテナを採用し、同アンテナを車外ミラーに搭載した場合、アンテナ指向性を乗降車に応じた最適なタイミングで切り換えることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、車両及びその通信端末の間の高い通信成立性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態におけるアンテナ角度切換システムの概略を示す構成図。
【図2】アウターミラーの外観を示す正面図。
【図3】アウターミラーの内部部品配置を示す断面図。
【図4】スロットアンテナの電波放射特性を示す説明図。
【図5】アウターミラー内の電力伝送用アンテナのアンテナ指向性を示す説明図。
【図6】アウターミラーの開閉動作の流れを示し、(a)はミラーが閉状態をとるときの状態図、(b)はミラーが広角度位置をとるときの状態図、(c)はミラーが開き定位置をとるときの状態図。
【図7】スマート照合の通信シーケンスを示すタイムチャート。
【図8】第2実施形態におけるアンテナ角度切換システムの概略を示す構成図。
【図9】(a)はアウターミラーを閉状態としてアンテナ指向性をユーザに近づけた状態を示す説明図、(b)はアウターミラーを開き定位置に切り換えた状態を示す説明図。
【図10】コイルアンテナの外観を示す斜視図。
【図11】コイルアンテナに発生する磁界の分布及び方向を示す磁界分布図。
【図12】別例におけるアンテナ角度切換システムの概略を示す模式図。
【図13】他の別例におけるアウターミラーの構造を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置の第1実施形態を図1〜図7に従って説明する。
【0025】
図1に示すように、車両1には、電子キー2が車両1に近づくと自動でID(Identification)照合を実行するキー操作フリーシステム3が設けられている。このキー操作フリーシステム3には、実際のキー操作を行うことなくドア開閉の一連の操作過程の中でドアロックの施解錠が実行されるスマートエントリシステムと、車内に設置されたプッシュ式のエンジンスイッチ4を押し操作するのみでエンジンを始動することが可能なワンプッシュエンジンスタートシステムとがある。なお、電子キー2が通信端末及び端末キーを構成する。
【0026】
この場合、車両1には、電子キー2との間でキー照合を実行するキー照合装置5と、ドアロック動作を管理するドアロック装置6と、エンジンの動作を管理するエンジン始動装置7とが設けられ、これらは車内バス8によって接続されている。キー照合装置5には、同装置5のコントロールユニットとして照合ECU(Electronic Control Unit)9が設けられている。照合ECU9のメモリ(図示略)には、車両1と組みをなす電子キー2のキーIDとしてIDコードが登録されている。照合ECU9には、車外にLF(Low Frequency)帯の電波を発信する車外発信機10と、車内にLF帯の電波を発信する車内発信機11と、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信する車両チューナ12とが接続されている。車外発信機10及び車内発信機11は、電子キー2へのID送信要求としてリクエスト信号SrqをLF帯の電波によって送信する。なお、ドアロック装置6やエンジン始動装置7が車載機器を構成する。
【0027】
また、本例のキー操作フリーシステム3は、電子キー2の電源として車両1側から電力電波Svvを送信し、この電力電波Svvによって電子キー2を動作させる電力伝送式をとっている。こうすれば、電子キー2を電池レスとすることが可能となり、電子キー2の電池交換が不要となる。この場合、照合ECU9には、車外にUHF帯の電力電波Svvの通信エリアを形成する車外電力伝送装置13と、車内にUHF帯の電力電波Svvの通信エリアを形成する車内電力伝送装置14とが接続されている。
【0028】
一方、電子キー2には、電子キー2の動作を統括制御する通信制御部15が設けられている。通信制御部15のメモリ(図示略)には、電子キー2側の固有IDとしてIDコードが登録されている。通信制御部15には、LF帯の電波を受信可能なLF受信機16と、UHF帯の電波を受信可能なUHF受信機17と、UHF帯の電波を送信可能なUHF送信機18とが接続されている。
【0029】
通信制御部15は、UHF受信機17で電力電波Svvを受信すると、これを電源として起動する。通信制御部15は、起動状態をとる際、リクエスト信号SrqをLF受信機16で受信すると、これに応答する形でID信号SidをUHF送信機18から送信する。ID信号Sidは、電子キー2のIDコードが含まれた信号である。照合ECU9は、このID信号Sidを車両チューナ12で受信すると、ID信号Sid内のIDコードを自身のIDコードと照らし合わせて、ID照合、いわゆるスマート照合を実行する。
【0030】
車両1の車外ドアハンドルノブ19には、車外ドアハンドルノブ19のタッチ操作有無を検出するタッチセンサ20が設けられている。ドアロックが施錠時、車外ドアハンドルノブ19のタッチ操作がタッチセンサ20により検出されると、車外発信機10からリクエスト信号Srqが送信されて、車外のスマート照合、いわゆる車外照合が実行される。そして、この車外照合が成立すると、ドアロックが施錠される。また、この車外ドアハンドルノブ19には、解錠状態のドアロックを施錠に切り換える際に操作するロックボタン21が設けられている。そして、ロックボタン21が操作されると、車外照合が実行され、車外照合が成立すればドアロックが解錠される。なお、タッチセンサ20が乗車検出手段に相当し、ロックボタン21が降車検出手段に相当する。
【0031】
また、運転者が乗車したことが例えばカーテシスイッチ等により検出されると、今度は車内発信機11がリクエスト信号Srqの送信を開始する。このとき、電子キー2がリクエスト信号Srq受信して車内通信が確立すると、車内のスマート照合、いわゆる車内照合が実行される。そして、車内照合が成立すると、エンジンスイッチ4の操作による電源状態の遷移が許可され、エンジン始動操作や電源遷移操作が許可される。
【0032】
車両1には、車両1の各動作状態に応じてアウターミラー22を開閉するアウターミラー開閉システムKが設けられている。アウターミラー開閉システムKには、同システムKの駆動源としてミラー開閉モータ23が設けられている。ミラー開閉モータ23は、駆動回路24を介して照合ECU9に接続され、動作が照合ECU9により管理されている。ミラー開閉モータ23は、例えば直流モータ(DCモータ)からなる。なお、アウターミラー22が車外ミラーに相当し、ミラー開閉モータ23及び駆動回路24が角度切換機構を構成する。
【0033】
アウターミラー22は、車内から車外後方を目視により確認するためのものである。アウターミラー22は、車体1aの左右に一対設けられ、例えば運転席ドア及び助手席ドアにそれぞれ取り付けられている。アウターミラー22とミラー開閉モータ23との間には、モータ23の回転運動をアウターミラー22の開閉動作に変換する変換機構22aが設けられている。車両1が駐車状態をとる際、アウターミラー22は閉状態をとり、例えば運転者がドアロックを解錠するなどの乗車行為をとると、アウターミラー22が開状態に切り換わる。開状態をとったアウターミラー22は、例えばドアロックが施錠されると、これに伴って閉状態に戻る。なお、変換機構22aも角度切換機構を構成する。
【0034】
図2及び図3に示すように、車両1のアウターミラー22には、同ミラー22の外枠部分として器形状のミラー本体25が設けられている。ミラー本体25の開口縁には、鏡(ミラー板)26が設けられ、鏡面は車両後方を向いている。アウターミラー22の内部には、部品の収納空間27が設けられ、この収納空間27に車外電力伝送装置13とミラー開閉モータ23と駆動回路24等が収納されている。なお、ミラー本体25が本体部に相当する。
【0035】
本例の鏡26は、鏡26の表面(以降、鏡面26aと記す)にスリット30が切られることにより、スロットアンテナとして形成されている。そして、このスロットアンテナが車外電力伝送装置13のアンテナ、即ち電力伝送用アンテナ29として使用されている。このため、本例の場合、アウターミラー22の鏡26は、鏡としての役目のみならず、車外電力伝送装置13のアンテナとして共用されている。電力伝送用アンテナ29は、送信電波として電界成分及び磁界成分の両方を持つ電波を送信する電界型アンテナとなっている。なお、電力伝送用アンテナ29が車外アンテナ及び電界型アンテナを構成する。
【0036】
スリット30は、鏡面26aに形成された溝、正確に言うならば、その部分だけ鏡が存在しない切り欠きであって、鏡面26aの下端位置に形成されている。スリット30は、車体1aの左右方向(以降、車幅方向と記す:図2の矢印W方向)に延びる形状をとっている。なお、ここで、車幅方向Wとは、地面に対して水平方向に沿う方向を言う。また、スリット30は、車体1aの高さ方向(以降、車体高さ方向と記す:図2の矢印H方向)において車両ドア1bの窓1cと向き合う高さ位置に配置されている。スリット30の長さは、例えば送信電波(電力電波Svv)の1/2波長に形成されている。
【0037】
スロットアンテナは、磁流アンテナとも言われ、ダイポールアンテナに対して逆の特性を持つアンテナである。スロットアンテナは、図4に示すように、スリット30の長さ方向に沿って磁流が流れ、この磁流の周りに電界(電界ループ)が発生するアンテナである。そして、この電界に基づく電波が送信されることになる。これにより、電力伝送用アンテナ29は、図5に示すように、見かけ上、自身を中心として、車体1aの前後方向に各々1つずつ略円形の通信エリアE,Eを持つことになる。なお、本例の場合、運転席ドアに近い側を第1電力伝送エリアE1とし、運転席ドアから遠い側を第2電力伝送エリアE2とする。
【0038】
よって、図6(b)に示すように、アウターミラー22を挟んで車両後方に向く方向と車両前方の向く方向とが、それぞれ電波が多く飛ぶ電波放射方向Xとなり、この電波放射方向Xと水平面上において直交する方向が、電波の放射が期待できないヌル方向(ヌル地点)Yとなる。なお、本例の場合、車両後方を向く電波放射方向Xをユーザ側電波放射方向X1とし、車両前方を向く電波放射方向Xを反ユーザ側電波放射方向X2とする。よって、電子キー2と電力伝送用アンテナ29との通信成立性を高めるには、電力伝送用アンテナ29の車体1a側のヌル方向Y1を車内に向かせて、ユーザ側電波放射方向X1をユーザに向かせるのが効果的であることが分かる。
【0039】
図3に示すように、電力伝送用アンテナ29は、鏡26の裏面に位置する電力伝送用送信回路13aと電気接続されている。電力伝送用送信回路13aは、照合ECU9から供給される電力電波Svvの元データを変調や増幅する回路である。また、電力伝送用アンテナ29は、通信ケーブル28を介して電力伝送用送信回路13aと電気的に接続され、この通信ケーブル28によって電力伝送用送信回路13aから給電されている。
【0040】
また、ミラー本体25の内面には、電力伝送用アンテナ29の放射電波においてユーザ側電波放射方向X1を向く成分を多くとるための反射材31が取り付けられている。この反射材31は、例えば電波を反射できる機能を持つ部材から構成されている。但し、ユーザ側電波放射方向X1の放射電波Shに対し、反射電波Skが逆位相をとってしまうと、これらが打ち消し合ってしまうので、その点には注意が必要である。なお、反射材31が導体部材に相当する。
【0041】
図1に示すように、電力伝送用アンテナ29のアンテナ角度を切り換えるアンテナ角度切換システム32が設けられている。アンテナ角度切換システム32は、アウターミラー開閉システムKを利用し、即ちアウターミラー22が開閉操作可能であることを利用し、アウターミラー22を通常時の使用状態である開き定位置よりも一時的に大きく外に広げて、アウターミラー22に組み込まれた車外電力伝送装置13、即ちその電力伝送用アンテナ29を、ユーザが所持する電子キー2に向かせるシステムである。
【0042】
この場合、照合ECU9には、電力伝送用アンテナ29のアンテナ角度を切り換えるべくアウターミラー22の開き角度(以降、ミラー開き角度θmと記す)を制御するアンテナ角度制御部33が設けられている。なお、アンテナ角度制御部33がアンテナ角度切換手段に相当する。
【0043】
アンテナ角度制御部33は、乗車時にアウターミラー22を閉状態から開状態に切り換える際、通常時の使用状態である開き定位置よりもアウターミラー22を一時的に外に大きく広げて、アウターミラー22を広角度位置とし、電力伝送用アンテナ29のアンテナ角度、即ちユーザ側電波放射方向X1をユーザ(電子キー2)に合わせ込む。また、アンテナ角度制御部33は、例えば降車時にアウターミラー22を閉状態に切り換える際も、アウターミラー22を一時的に広角度位置にして、電力伝送用アンテナ29のアンテナ角度をユーザ(電子キー2)に合わせ込む。アンテナ角度制御部33は、一定の制限時間を持ってスマート照合が完了するまでアウターミラー22を広角度位置とする。
【0044】
次に、本例のアンテナ角度切換システム32の動作を図6及び図7に従って説明する。
車両1が駐車状態(ドアロックが施錠状態で、かつエンジンが停止状態)をとる際、図6(a)に示すように、アウターミラー22は閉状態をとっている。駐車状態の車両1に乗車する際、ユーザは車外ドアハンドルノブ19をタッチ操作する。照合ECU9は、このタッチ操作をタッチセンサ20で検出すると、電力伝送用アンテナ29からの電力電波Svvの送信を開始させる。電力電波Svvは、一定の制限時間を持って、電子キー2のID照合が完了するまで継続送信される。
【0045】
また、アンテナ角度制御部33は、このタッチ操作をタッチセンサ20で検出すると、ミラー開閉モータ23を回転させて、閉状態をとっているアウターミラー22の開動作を開始する。このとき、まずアンテナ角度制御部33は、図6(b)に示すように、アウターミラー22のミラー開き角度θmを、通常時の使用状態である開き定位置よりも一時的に外に広げて、アウターミラー22を広角度位置に位置させる。これにより、電力伝送用アンテナ29のヌル方向Y1が車内方向を向き、ユーザ側電波放射方向X1がユーザ(電子キー2)を向く。よって、電力伝送用アンテナ29の放射電波、即ち電力電波Svvの放射エリアに電子キー2がより確実に位置することになるので、電子キー2を電力電波Svvによってより確実に起動状態に切り換えることが可能である。
【0046】
照合ECU9は、図7に示すように、電力電波Svvの送信動作に伴い、車外発信機10からLF帯のリクエスト信号Srqの断続的送信も同時に行う。このとき、電子キー2は電力電波Svvによって起動されているので、リクエスト信号Srqの受信動作に問題なく入ることが可能である。電子キー2は、リクエスト信号Srqを受信すると、これに応答して、ID信号SidをUHF帯の電波で送信する。照合ECU9は、ID信号Sidを車両チューナ12で受信すると、ID信号Sidに含まれるIDコードを自身のものと照らし合わせて車外照合を行い、車外照合が成立すると、ドアロック装置6にドアロック解錠を実行させる。
【0047】
アンテナ角度制御部33は、車外照合が成立したことを確認すると、図6(c)に示すように、ミラー開閉モータ23を広角度位置に向かせるときとは逆向きに回転させて、広角度位置にあるアウターミラー22を開き定位置に位置させる。これにより、アウターミラー22が通常の位置に復帰する。なお、照合ECU9は、車外照合が成立したことを確認すると、電力伝送用アンテナ29からの電力電波Svvの送信を停止する。
【0048】
一方、車両1から降車する際には、エンジンスイッチ4を操作してエンジンを切る。このとき、アンテナ角度制御部33は、開き定位置で以て開状態にあるアウターミラー22を開状態のままで維持する。そして、車両1から降車してドアロックを施錠する際には、車外ドアハンドルノブ19のロックボタン21が押し操作される。照合ECU9は、このロックボタン21のボタン操作を検出すると、電力伝送用アンテナ29からの電力電波Svvの送信を開始させる。電力電波Svvは、一定の制限時間を持って、電子キー2のID照合が完了するまで継続送信される。
【0049】
このとき、アンテナ角度制御部33は、開き定位置にあるアウターミラー22を一時的に外に広げて、図6(b)に示す広角度位置に位置させる。これにより、乗車の際と同様に、電力伝送用アンテナ29のユーザ側電波放射方向X1がユーザを向き、電子キー2を電力電波Svvによってより確実に起動状態に切り換えることが可能である。そして、照合ECU9は、乗車時と同様に車外発信機10からリクエスト信号Srqを送信して車外照合を行い、車外照合が成立すると、ドアロック装置6にドアロックを施錠させる。
【0050】
アンテナ角度制御部33は、車外照合が成立したことを確認すると、ミラー開閉モータ23を広角度位置に向かせるときと逆向きに回転させて、広角度位置にあるアウターミラー22を、図6(a)に示す閉状態に位置させる。これにより、アウターミラー22が車体1aに収納される。なお、照合ECU9は、車外照合が成立したことを確認すると、電力伝送用アンテナ29からの電力電波Svvの送信を停止する。
【0051】
従って、本例においては、アウターミラー22の鏡26を電力伝送用アンテナ29として利用することにより、アウターミラー22に電力伝送用アンテナ29を一体化する。そして、ユーザが乗降車する際、ミラー開き角度θmを開き定位置のときよりも大きく外に広げて、電力伝送用アンテナ29のヌル方向Y1を車内方向に向かせることにより、電力伝送用アンテナ29を電子キー2に向ける。このため、電力伝送用アンテナ29からの電力電波Svvを、電子キー2はより確実に受信することが可能となるので、電子キー2と電力伝送用アンテナ29との間の通信成立性を、高いものとすることが可能となる。
【0052】
また、従来からアウターミラー22は、通常の使用状態である開き定位置と、車体1aに収められた収納位置との、2位置の間で開閉する構造をとるものが多い。このため、アウターミラー22に電力伝送用アンテナ29を内蔵して、アンテナ角度を切り換える構造を採用したとしても、アウターミラー22の開閉は、元からある開閉構造をそのまま使用すればよいことになる。よって、本例の場合、アウターミラー22に電力伝送用アンテナ29を組み込んで、アウターミラー22のミラー開き角度θmを切り換えてアンテナ角度を切り換える構造をとったとしても、アウターミラー22の構造を大幅に変更する必要もない。
【0053】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)アウターミラー22の鏡26を電力伝送用アンテナ29として使用し、電力伝送用アンテナ29をアウターミラー22と一体化する。そして、スマート照合を行う際、アウターミラー22の開き角度θmを通常の開き定位置よりも一時的に大きくして、アウターミラー22を広角度位置とすることにより、電力伝送用アンテナ29のユーザ側電波放射方向X1を電子キー2に向かせる。このため、電力伝送用アンテナ29からの電力電波Svvが電子キー2に届き易くなるので、本例のようにアウターミラー22の開閉を管理してアンテナ指向性を調整すれば、これら2者の通信成立性を高くすることができる。また、アウターミラー22は従来から開閉構造をとるものが多いので、アウターミラー22に電力伝送用アンテナ29を組み込んでミラー開き角度θmを変えることによりアンテナ角度を切り換える構造をとったとしても、アウターミラー22の構造を大幅に変更する必要もない。
【0054】
(2)アウターミラー22に車外電力伝送装置13を組み込み、アウターミラー22の鏡26をその電力伝送用アンテナ29として利用する。このため、鏡26をアンテナ部品として共用することが可能となるので、部品点数を削減することができる。
【0055】
(3)アウターミラー22内には収納空間27があるので、このスペースを利用して車外電力伝送装置13を収納することができる。また、アウターミラー22内に電力伝送用送信回路13aを収納して、アウターミラー22の鏡26を電力伝送用アンテナ29として共用すれば、電力伝送用送信回路13aと電力伝送用アンテナ29とを繋ぐ通信ケーブル28を、極力短いもので済ますことができる。よって、車外電力伝送装置13の電力損失を低く抑えることができる。
【0056】
(4)車体1aから外方に突出するアウターミラー22に車外電力伝送装置13を組み込むので、車外電力伝送装置13をよりユーザに近づけることが可能となり、その分だけ通信成立性を向上することができる。
【0057】
(5)スロットアンテナは磁流アンテナであるので、金属が近接する状況となっても、放射が低減しない利点がある。よって、本例の場合、鏡26にスリット30を切ることでできるスロットアンテナを電力伝送用アンテナ29としたので、電力伝送用アンテナ29を金属に影響を受け難いアンテナとすることができる。
【0058】
(6)アンテナ角度切換システム32を車両1のキー操作フリーシステム3に使用し、車両1及び電子キー2の間のスマート照合が完了するまで、電力伝送用アンテナ29のユーザ側電波放射方向X1を電子キー2に向かせる。このため、スマート照合期間中は電子キー2に電力電波Svvが送信され続けるので、通信に必要な電力を電子キー2に供給し続けることができる。
【0059】
(7)ミラー本体25の内面に反射材31を設けたので、電力伝送用アンテナ29からの電波を、より多く電子キー2に向けて飛ばすことが可能となる。よって、電子キー2及び電力伝送用アンテナ29の間の通信成立性を、より高く設定することができる。
【0060】
(8)乗降車時のスマート照合の際、アウターミラー22を広角度位置まで一旦大きく開けるので、もし仮にユーザ(電子キー2)が車両1から少し遠い位置にいたとしても、電力伝送用アンテナ29のユーザ側電波放射方向X1を、このユーザに向けることが可能となる。よって、よって、電子キー2及び電力伝送用アンテナ29の間の通信成立性を、より高く設定することができる。
【0061】
(9)電力伝送用アンテナ29のヌル方向(Y方向)を車内に向けるようにしたので、車外の電子キー2とより確実に車外通信を行うことが可能となる。よって、電子キー2の車内閉じこめを、より確実に防止することができる。
【0062】
(10)車両1の電力伝送装置13,14から電力電波Svvを送信させ、この電力電波Svvを電源として電子キー2を動作させる。このため、電子キー2に電池等の電源を搭載する必要がなくなるので、電池レス化に伴って、電池交換作業を不要とすることができる。
【0063】
(11)ユーザが車両1に乗車するときと、車両1から降車するときとの両方で、電力伝送用アンテナ29のアンテナ角度の合わせ込みが行われるので、装置として機能性の高いものとすることができる。
【0064】
(12)電力伝送用アンテナ29のアンテナ角度を変化させるに際して、アウターミラー22自体を動かして角度切り換えを行うので、より広い角度範囲でアンテナ角度を切り換えることができる。
【0065】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図8〜図11に従って説明する。本例は、第1実施形態に対し、スマート通信の通信形式と、アンテナ角度の切換手順とが異なるのみで、基本的な部分は同一である。よって、第1実施形態と同じ箇所は同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0066】
図8に示すように、車両1には、電子キーシステムとして端末かざし照合システム40が設けられている。端末かざし照合システム40では、車両キーとして携帯電話41が使用されている。携帯電話41には、電子キー2のIDコードが登録されている。携帯電話41は、車両1とRFID(Radio Frequency-Identification)に準じた通信形式によりID照合、いわゆるかざし照合を実行する。なお、携帯電話41が通信端末及びキー端末を構成する。
【0067】
RFIDは、ID情報を埋め込んだタグやラベルから、磁界(交流磁界)を用いた近距離無線通信(数十cm)によって、情報のやり取りを行う無線通信の一種である。タグやラベルは、自ら電源を持たず、通信相手から無線により電力を受け取り、これを電源として通信動作を実行する。また、RFID通信の周波数には、例えばHF(High Frequency)が使用されている。
【0068】
携帯電話41には、通話やメールの動作を管理する電話機能部42の他に、携帯電話41側のRFID通信を管理する通信モジュール43が設けられている。通信モジュール43は、RFID通信のタグに相当し、今日において携帯電話41に予め実装されることが多い。通信モジュール43は、自ら電源を持たず、車両1から送信された駆動電波Spwを電源として動作する。通信モジュール43は、電話機能部42に接続され、RFID通信に関する各種情報が電話機能部42とやり取りされる。
【0069】
通信モジュール43には、通信モジュール43の通信動作を統括管理するモジュール制御部44が設けられている。モジュール制御部44は、例えば1チップICからなる。通信モジュール43のメモリ(図示略)には、車両1のIDコードが登録されている。これにより、携帯電話41を車両キーとして使用することが可能となっている。モジュール制御部44には、電波の送受信を実行する通信機45が接続されている。通信機45には、送受信アンテナとしてのモジュール側コイルアンテナ46と、受信電波の復調や送信電波の変調等を行う通信回路47とが設けられている。モジュール側コイルアンテナ46は、単一コイルであるため、受信できる磁界の方向が一方向に束縛される。また、この通信系の通信距離は非常に短い。そのため、通信を実行するには、アンテナ位置と携帯電話41との向きを意識して、コイルアンテナ46の前面に携帯電話41をかざす操作が必要となる。
【0070】
車両1には、携帯電話41(通信モジュール43)とかざし照合を実行するリーダライタ48,49が設けられている。本例の場合、車外かざし照合用に車外リーダライタ48が設けられ、車内かざし照合用に車内リーダライタ49が設けられている。リーダライタ48,49は、駆動電波Spwを断続的に送信するとともに、駆動電波Spwを送信した後に、リクエスト信号Srqを送信する。そして、リーダライタ48,49は、携帯電話41からID信号Sidを受信すると、照合ECU9にID照合を行わせるべく、ID信号Sidに含まれるIDコードを照合ECU9に転送する。
【0071】
携帯電話41が車外にある際、車外リーダライタ48から駆動電波Spwが断続的に送信される。ドアロックを施解錠する際、ユーザは携帯電話41を車外リーダライタにかざす動作をとる。このとき、通信モジュール43は、車外リーダライタ48からの駆動電波Spwによって起動し、その後に受信するリクエスト信号Srqに応答して、自身に登録されたIDコードをID信号Sidとして返信する。車外リーダライタ48は、駆動電波Spwを送信した後に、ID信号Sidを受信できると、このID信号Sidに含まれるIDコードを照合ECU9に出力する。照合ECU9は、IDコードを取得すると、車外照合を実行し、車外照合が成立すると、ドアロック施解錠を実行させる。
【0072】
また、ユーザが乗車したことが例えばカーテシスイッチ等により検出されると、車外リーダライタ48に代えて、今度は車内リーダライタ49から駆動電波Spwの送信が開始される。このとき、携帯電話41が車内リーダライタ49にかざされると、車内リーダライタ49は通信モジュール43からIDコードを取得する。そして、照合ECU9は、このIDコードによって車内照合を行い、車内照合が成立すれば、エンジン始動操作や電源遷移操作を許可する。
【0073】
図9(a),(b)に示すように、本例の車外リーダライタ48は、アウターミラー22内の収納空間27に配置されることにより、アウターミラー22に組み込まれている。ところで、アウターミラー22は、車外方向に突出する部品となっている。よって、アウターミラー22に車外リーダライタ48を搭載すれば、車外リーダライタ48がユーザにより近づくことになり、車外かざし照合時の通信成立性向上に非常に効果が高くなる。
【0074】
車外リーダライタ48には、送受信アンテナとして、図10に示すような板状のリーダライタ側コイルアンテナ50が設けられている。このコイルアンテナ50は、スパイラルアンテナが使用されている。スパイラルアンテナは、基板51上にアンテナ線52がスパイラル状に巻回されたアンテナである。コイルアンテナ50は、RFID通信、即ち放射成分として磁界のみの成分で通信を行うので、磁界型アンテナとなっている。なお、コイルアンテナ50が車外アンテナ及び磁界型アンテナを構成する。
【0075】
また、図11に示すように、基板51びの裏面位置には、コイルアンテナ50の磁界損失を抑制するフェライトシート53が設けられている。フェライトシート53は、自身の周りに磁路を形成して、磁界を集磁する役目を持つ。これにより、もし仮にアンテナ線52の裏面側に金属部品54(鏡26や電子部品等)が位置していても、磁界が金属部品54に至って渦電流が発生することを要因とする磁界の減少が生じ難くなるので、金属部品54に影響を受けることなく、広い通信エリアを確保することが可能となる。
【0076】
なお、コイルアンテナ50にフェライトシート53を設けると、鏡に磁束を交差させなくすることが可能となるが、この利点とは逆に、コイルアンテナ50に指向性が生じ、通信エリアが所定の一方向を向き、コイルアンテナ50の前方付近が通信エリアとなる(図9参照)。このとき、ユーザがアンテナ位置を意識してかざし動作を行うには、図9(b)の場合、通信エリアが遠く、ユーザに無理な動作を強いることとなる。よって、本例のように、アウターミラー22の角度を調整して、図9(a)のようにコイルアンテナ50の指向性をユーザ(電子キー2)に向けば、ユーザにとって無理なくかざし動作を行うことが可能となる。
【0077】
図9(a),(b)に示すように、コイルアンテナ50は、アウターミラー22内の収納空間27において外側寄りの位置、即ちアウターミラー22の前面壁55に沿わせて配置されている。ところで、コイルアンテナ50は、コイル径を大きくとると通信距離を延ばすのに有利な特性があるので、携帯電話41との通信性能を高くするためには、コイル径を大きく取れるように、ミラー22内に空間を設けることが好ましい。ここで、アウターミラー22で相対的に広い面積を確保できるのは、前面壁55となっているので、本例の場合、コイルアンテナ50を前面壁55に沿わせて置くことにおり、コイルアンテナ50のコイル径を大きくとっている。なお、前面壁55が鏡と反対側の壁に相当する。
【0078】
また、コイルアンテナ50は、鏡26から遠く離された位置に配置されている。これは、前述したように、仮にコイルアンテナ50の磁界が鏡26に至ってしまうと、この磁界により鏡26に渦電流が生じて逆磁界が誘起され、この逆磁界によってコイルアンテナ50の磁界が減少するおそれが生じるからである。よって、コイルアンテナ50と鏡26との距離Lを広くとり、コイルアンテナ50の磁界が鏡26に届き難いように長さ設定されている。
【0079】
コイルアンテナ50のアンテナ指向性は、図9に示すように、コイル軸C(図10参照)に沿う方向おいてコイルアンテナ50の一方側(即ち、アウターミラー22と反対側)に、円を描くような通信エリア(以降、車外かざしエリアEkと記す)で形成される。このため、コイルアンテナ50のコイル径を確保するために、コイルアンテナ50をアウターミラー22の前面壁55に沿わせて配置すると、必然的に車外かざしエリアEkは、アウターミラー22の前方位置となる。従って、アウターミラー22が開状態を常時とっていると、図9(b)に示すように、車外かざしエリアEkが車両前方に大きく傾き、車両ドアの前に位置するユーザから大きく離れた場所に位置してしまう。よって、ユーザが車外かざし照合を実行する際、手を大きく延ばさないと、車外かざしエリアEkまで届かず、かざし操作が非常に行い難い問題に繋がる。
【0080】
そこで、本例のアンテナ角度制御部33は、車外かざし照合を行う際、アウターミラー22を閉状態としておき、アウターミラー22内のコイルアンテナ50のアンテナ指向性を車体側方、即ち車両ドア前に立つユーザに向ける。そして、アンテナ角度制御部33は、ユーザが乗車して車両1を走行させる際に、閉状態のアウターミラー22を開き状態に切り換えて、アウターミラー22を開き定位置に位置させる。
【0081】
次に、本例のアンテナ角度切換システム32の動作を図9に従って説明する。
車両1が駐車状態(ドアロック施錠、エンジン停止)をとる際、アンテナ角度制御部33は、図9(a)に示すように、アウターミラー22を閉状態として、コイルアンテナ50のアンテナ指向性を、車体側方、即ち車外ユーザ側に向けておく。これにより、運転者が乗車時に運転席ドアの前に立った際、その位置から車外かざしエリアEkは非常に近い状態をとる。よって、ユーザは、さほど手を延ばさなくても、携帯電話41をコイルアンテナ50にかざすことが可能となり、楽な体勢で車外かざし照合を実行することが可能となる。
【0082】
携帯電話41がコイルアンテナ50にかざし操作された際、通信モジュール43は、コイルアンテナ50から駆動電波Spwを受信すると、それまでの待機状態から起動状態に切り換わり、リクエスト信号Srqを受信するとID信号Sidを返信する。車外リーダライタ48は、携帯電話41からID信号Sidを受信すると、ID信号Sid内のIDコードを照合ECU9に転送する。照合ECU9は、車外リーダライタ48からIDコードを受け取ると、このIDコードでID照合を行い、ID照合が成立することを確認すると、施錠状態のドアロックを解錠する。
【0083】
続いて、運転者が車内に乗車すると、今度は車内リーダライタ49から駆動電波Spwの送信が開始される。車内リーダライタ49は、例えばエンジンスイッチ4の近傍に設けられているので、車内かざし照合では、携帯電話41をエンジンスイッチ4にかざす操作をとる。そして、照合ECU9は、この車内かざし照合が成立することを確認すると、エンジン始動操作を許可する。よって、エンジンスイッチ4が押し操作されると、エンジンが始動する。なお、車外かざし照合や車内かざし照合は、実施のところ第1実施形態のような通信シーケンスをとってID照合を実行するが、基本的な内容は同じであるので、詳細は省略する。
【0084】
アンテナ角度制御部33は、エンジンが始動状態に切り換わったことを確認すると、図9(b)に示すように、閉状態のアウターミラー22を開状態に切り換えて、アウターミラー22を開き定位置に位置させる。これにより、走行中にアウターミラー22で車両後方を確認することが可能となる。また、このとき、車外かざしエリアEkが車両前方を向くが、かざし照合は実行されないので、問題はない。
【0085】
目的地に到着するなどして車両1から降車する際、運転者はエンジンスイッチ4を押し操作して、エンジンを停止させる。アンテナ角度制御部33は、エンジンが停止状態になったことを確認すると、アウターミラー22を開き定位置から閉状態に切り換える。これにより、降車した運転者がドアロックを施錠するかざし照合を行う際に、そのアンテナ指向性を確保することが可能となる。そして、運転者は、降車した際、閉状態をとるアウターミラー22に携帯電話41をかざし、車外かざし照合を成立させて、ドアロックを施錠する。
【0086】
従って、本例のように、車両1と車両キー(携帯電話41)とのID照合にRFIDを使用し、車外リーダライタ48のコイルアンテナ50を、アウターミラー22の前面壁55に沿わせて配置しても、車外かざし照合の際には、コイルアンテナ50のアンテナ指向性を、車両ドア前に立つ運転者に向けることが可能となる。よって、運転者に無理な体勢をとらせることなく車外かざし照合が可能となるので、車両1及び携帯電話41の間で高い通信成立性を確保することが可能となる。
【0087】
本実施形態によれば、第1実施形態に記載の(1)〜(12)の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
(13)RFID通信用のコイルアンテナ50は、磁界型アンテナであるので、放射成分の軸方向が1方向のみとなるので、アンテナ指向性に極端な偏りが生じる。しかし、このようなコイルアンテナ50を使用しても、同アンテナ50をアウターミラー22に搭載して、アウターミラー22の開閉を管理することにより、コイルアンテナ50のアンテナ指向性をユーザ側に向かせるので、コイルアンテナ50を使用しても、充分な通信成立性を確保することができる。
【0088】
(14)アウターミラー22では、鏡26の反対側の壁、即ち前面壁55に、大きな面積が存在している。よって、本例の場合、この前面壁55に沿わせてコイルアンテナ50を配置するので、コイルアンテナ50のコイル径を大きくすることが可能となる。よって、コイルアンテナ50のコイル径を自由に設計できるスペースが確保されれば、その分だけ通信距離を延ばすのに有利となるので、コイルアンテナ50の通信エリアをより広くとることができる。
【0089】
(15)鏡26とコイルアンテナ50との距離Lを充分に広くとって、コイルアンテナ50を鏡26から離間して配置したので、コイルアンテナ50の磁界が鏡26に影響を受け難くなり、コイルアンテナ50の通信距離を、より長くとることができる。
【0090】
(16)運転者が乗車する際、アウターミラー22を閉状態として車外かざし照合をユーザに実行させ、乗車後にエンジンが始動すると、アウターミラー22を開操作して開き定位置に位置させる。そして、エンジンが停止となると、開き定位置にあるアウターミラー22を閉状態に切り換える。よって、アウターミラー22内のコイルアンテナ50のアンテナ指向性を、乗降車に応じた最適なタイミングで、適宜切り換えることができる。
【0091】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・第1及び第2実施形態において、電力伝送用アンテナ29のアンテナ角度を切り換える形式は、アウターミラー22自体の開き角度θmを変えることに限定されない。例えば、図12に示すように、鏡26自体の角度(鏡面角度θn)を切り換える形式を用いてもよい。なお、鏡26は上下左右の十字方向で角度設定が可能であるので、この場合はより細かくユーザ側電波放射方向X1を設定することができる。なお、第2実施形態の場合は、コイルアンテナ50を鏡26に取り付ける必要がある。
【0092】
・第1実施形態において、スリット30の切り込み角度は、地面(鏡26の下端縁)に対して水平であることに限らず、図13に示すように、若干の傾きを持つものでもよい。
・第1実施形態において、スリット30の形成位置は、鏡面26aの下端に限定されず、例えば上端でもよい。
【0093】
・第1実施形態において、電力伝送用アンテナ29のアンテナ角度を調整する際、アウターミラー22を一時的に広角度位置まで広げる必要は必ずしもない。即ち、アウターミラー22が開き定位置をとることを以て、電力伝送用アンテナ29のアンテナ角度を調整するとしてもよい。
【0094】
・第1及び第2実施形態において、アンテナ角度切換システム32は、運転席側にのみ設けられることに限らず、例えば助手席側のミラーにも設けてもよい。
・第1及び第2実施形態において、角度切換機構の駆動源は、モータ(ミラー開閉モータ23)に限らず、例えばシリンダ等の他のものを使用してもよい。また、ミラー開閉モータ23は、直流モータ、交流モータ、ステッピングモータ等の種々のモータが使用可能である。
【0095】
・第1実施形態において、電力電波Svvの通信エリアは、リクエスト信号Srqと同じに限らず、これに対して範囲が異なっていてもよい。また、電力電波Svvの周波数は、UHF帯に限らず、他の周波数を使用してもよい。
【0096】
・第1実施形態において、電波放射方向Xとは、2次元的な電波の向きを表すものに限らず、広義として3次元的な方向を含むものとする。なお、これは、第2実施形態におけるコイルアンテナ50の磁界放射方向についても同様に言えることである。
【0097】
・第1実施形態において、導体部材は、反射材31に限らず、例えば単なる鉄板でもよい。
・第1実施形態において、導体部材は、アウターミラー22の内部又は外部に施したメッキでもよい。
【0098】
・第1実施形態において、車外発信機10の配置位置は、車外ドアや車体等、種々の位置が採用可能である。
・第1実施形態において、車外電力伝送装置13は、部品の全てがアウターミラー22に設けられることに限らず、例えば電力伝送用アンテナ29がアウターミラー22に組み込まれ、送信回路13aが車体1aに設けられていてもよい。
【0099】
・第1及び第2実施形態において、通信端末は、電子キー2や携帯電話41に限らず、無線通信可能な端末であればよい。また、キー端末は、電子キー2や携帯電話41に限らず、例えばRFIDによりID照合を行うICカードでもよい。
【0100】
・第1及び第2実施形態において、ID照合成立時に使用可となる車載機器は、ドアロックやエンジンに限らず、例えばカーナビゲーションシステムや車載オーディオシステム等としてもよい。
【0101】
・第1実施形態において、キー操作フリーシステム3は、電力伝送式に限らず、例えば電子キー2に電池が内蔵されていれば、このような電力伝送式をとる必要はない。
・第1実施形態において、アウターミラー22に組み込まれる送信機は、車外電力伝送装置13に限定されず、例えば車外発信機10でもよい。また、アウターミラー22に車外発信機10及び車外電力伝送装置13の両方が組み込まれてもよい。
【0102】
・第1実施形態において、アウターミラー22に組み込まれる通信機は、送信機に限らず、例えば受信機としてもよい。
・第1実施形態において、アウターミラー22は、ID照合が完了する期間の間、継続して広角度位置をとることに限定されない。例えば、ID照合の初期時において電子キー2が高速充電可能であれば、ID初期時のみ広角度位置に切り換えるようにしてもよい。
【0103】
・第1実施形態において、電力伝送用アンテナ29は、アウターミラー22の鏡26をアンテナとして使用するものに限らず、自身のみで自立してアンテナ部品を構成するものでもよい。例えば、ダイポールアンテナ等の他のアンテナを採用可能である。
【0104】
・第1実施形態において、電力電波Svvと通信データは、各々異なる送信機(発信機10,11と電力伝送装置13,14)から送信されることに限らず、同一の送信機から送信されるものでもよい。この場合、電子キー2を電波反射型により構成すれば、高いエネルギー効率で以て電子キー2に電波を送信させることができる。
【0105】
・第1実施形態において、キー操作フリーシステム3は、車両1から電子キー2に電波送信する往路通信と、電子キー2から車両1に電波送信する復路通信とで、周波数が各々異なることに限定されない。例えば、往路通信及び復路通信ともに例えばUHF帯の電波として、同じ周波数を使用してもよい。
【0106】
・第1実施形態において、電力伝送用アンテナ29のアンテナ角度の合わせ込みは、乗車及び降車の両方で実行されることに限らず、一方で行われもよい。なお、これは第2実施形態でも同様に言えることである。
【0107】
・第1実施形態において、電子キー2が自ら電源を持つものでもよい。この場合、アウターミラー22の内蔵アンテナは、車両チューナ12となる。
・第1実施形態において、電力電波Svvの送信開始は、タッチセンサ20で車外ドアハンドルノブ19のタッチ操作を検出することに限定されず、常時送信されるものでもよい。また、降車時も同様である。
【0108】
・第1実施形態において、乗車時のアンテナ角度切換システム32の動作開始は、タッチセンサ20で車外ドアハンドルノブ19のタッチ操作を検出することに限定されない。例えば、電子キー2が自ら電池を持ち、車両1が定期的にリクエスト信号Srqを車両周囲に送信する場合、電子キー2がリクエスト信号Srqの通信エリアに入ったことを開始条件としてもよい。また、降車時の動作開始も、ロックボタン21の操作有りを開始条件とすることに限らず、例えば車外ドアが開閉されたことしてもよい。
【0109】
・第1実施形態において、アウターミラー22は、閉状態→広角度位置→開き定位置という動作をとることに限定されない。例えば、駐車時、アウターミラー22は開き定位置を常時とり、車外ドアハンドルノブ19がタッチ操作されると、開き定位置から広角度位置をとり、通信成立後、元の開き定位置に戻るものでもよい。また、降車時は、ロックボタン21が押し操作されると、アウターミラー22は開き定位置から広角度位置をとり、通信成立後、元の開き定位置に戻る。
【0110】
・第2実施形態において、リクエスト信号Srqの送信は、常時送信(ポーリング)に限定されず、第1実施形態のように操作トリガを得てから開始されるものでもよい。
・第2実施形態において、携帯電話41へのIDコード登録は、サーバを介したものに限らず、例えば携帯電話41に予め登録されていてもよいし、或いは専用ツールを使用するものでもよい。
【0111】
・第2実施形態において、コイルアンテナ50の配置向きは、鏡面26aの平面方向に対してコイル軸Cが直交する向きに限定されない。例えば、鏡面26aの平面方向とコイル軸Cとが並行する向きにコイルアンテナ50を配置してもよい。
【0112】
・第2実施形態において、コイルアンテナ50は、スパイラルアンテナに限定されず、例えば磁性体コアにアンテナ線が巻回されてなるループアンテナでもよい。また、コアは、例えば筒状のプラスチックからなる誘電体でもよいし、或いは中空状となっていてもよい。
【0113】
・第2実施形態において、コイルアンテナ50は、収納空間27の外側寄りの位置に配置されることに限らず、配置位置を適宜変更してもよい。
・第2実施形態において、磁界型アンテナは、放射成分として磁界成分のみを持つものであれば、どのような種類のものを採用してもよい。
【0114】
・第2実施形態において、電子キー2により車両1を動作させる電子キーシステムは、キー操作フリーシステム3に限定されない。例えば、電子キー2に組み込んだトランスポンダ(RFIDタグ)により、例えばRFID方式でID照合を行うイモビライザーシステムとしてもよい。
【符号の説明】
【0115】
1…車両、1a…車体、2…通信端末及び端末キーを構成する電子キー、6…車載機器を構成するドアロック装置、7…車載機器を構成するエンジン始動装置、20…乗車検出手段としてのタッチセンサ、21…降車検出手段としてのロックボタン、22…車外ミラーとしてのアウターミラー、23…角度切換機構を構成するミラー開閉モータ、24…角度切換機構を構成する駆動回路、25…本体部としてのミラー本体、26…鏡、26a…鏡面、27…収納空間、29…車外アンテナ及び電界型アンテナを構成する電力伝送用アンテナ、30…スリット、31…導体部材としての反射材、33…アンテナ角度切換手段としてのアンテナ角度制御部、41…通信端末及びキー端末を構成する携帯電話、50…車外アンテナ及び磁界型アンテナを構成するコイルアンテナ、55…鏡と反対側の壁としての前面壁、θm…ミラー開き角度、θn…鏡面角度、X(X1,X2)…電波放射方向、Svv…電力電波。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車外ミラーに内蔵された車外アンテナと、
車体に対して開閉に取り付けられた前記車外ミラーのミラー開き角度、又は当該車外ミラーの本体部に対して角度変化可能に取り付けられた鏡の鏡面角度を変化させる角度切換機構と、
前記ミラー開き角度又は前記鏡面角度を管理することにより、これら2つうちの一方と連動して動く前記車外アンテナの電波放射方向を、乗降車するユーザにより所持される通信端末に向けるアンテナ角度切換手段と
を備えたことを特徴とする車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置。
【請求項2】
前記通信端末は、自身が持つIDコードを無線により前記車両に送信して、該車両にID照合を実行させるキー端末であって、当該ID照合が成立すれば、車載機器の操作が許可又は実行となり、
前記アンテナ角度切換手段は、前記ID照合が完了するまで、前記キー端末への前記電波放射方向の合わせ込みを継続することを特徴とする請求項1に記載の車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置。
【請求項3】
前記車外ミラーには、前記車外アンテナの前記電波放射方向を前記通信端末により多く向かせる導体部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置。
【請求項4】
前記アンテナ角度切換手段は、前記車外アンテナと前記通信端末とが通信を行う際、前記車外ミラー又は前記鏡を、通常時の使用状態である開き定位置よりも一度角度を変えて前記電波放射方向を前記通信端末に合わせ込み、これら2者の通信完了後、当該車外ミラー又は前記鏡を、元の前記開き定位置に戻すことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置。
【請求項5】
前記車外アンテナは、前記通信端末の電源となる電力電波を少なくとも送信可能な電界型アンテナであることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置。
【請求項6】
前記車外アンテナは、前記鏡の鏡面にスリットを形成することによって該鏡をアンテナとして使用したスロットアンテナであることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置。
【請求項7】
前記車両にユーザが乗車することを検出する乗車検出手段と、
当該車両からユーザが降車することを検出する降車検出手段とを備え、
前記アンテナ角度切換手段は、前記乗車検出手段で前記乗車を検出すると、閉状態をとっている前記車外ミラーを開状態にしつつ、当該開状態の過程で、前記車外アンテナの前記電波放射方向の合わせ込みも併せて実行し、前記降車検出手段で前記降車を検出すると、前記車外アンテナの前記電波放射方向の合わせ込みを行い、通信完了後、前記車外ミラーを閉状態に戻すことを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置。
【請求項8】
前記通信端末は、自身が持つIDコードを無線により前記車両に送信して、該車両にID照合を実行させるキー端末であって、当該ID照合が成立すれば、車載機器の操作が許可又は実行となり、
前記車外アンテナは、前記キー端末とRFIDに準じた通信を実行する磁界型アンテナであり、
前記キー端末は、当該車外アンテナを介して前記車両と前記RFIDに準じた通信により前記ID照合を実行する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置。
【請求項9】
前記車外アンテナは、前記車外ミラー内の収納空間において、前記鏡と反対側の壁に沿わせて配置されている
ことを特徴とする請求項8に記載の車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置。
【請求項10】
前記アンテナ角度切換手段は、乗車前、前記車外ミラーを閉状態として、前記車両と前記キー端末との通信を実行し、通信完了からエンジンが始動するまでの間に、前記車外ミラーを開状態に切り換える
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置。
【請求項1】
車両の車外ミラーに内蔵された車外アンテナと、
車体に対して開閉に取り付けられた前記車外ミラーのミラー開き角度、又は当該車外ミラーの本体部に対して角度変化可能に取り付けられた鏡の鏡面角度を変化させる角度切換機構と、
前記ミラー開き角度又は前記鏡面角度を管理することにより、これら2つうちの一方と連動して動く前記車外アンテナの電波放射方向を、乗降車するユーザにより所持される通信端末に向けるアンテナ角度切換手段と
を備えたことを特徴とする車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置。
【請求項2】
前記通信端末は、自身が持つIDコードを無線により前記車両に送信して、該車両にID照合を実行させるキー端末であって、当該ID照合が成立すれば、車載機器の操作が許可又は実行となり、
前記アンテナ角度切換手段は、前記ID照合が完了するまで、前記キー端末への前記電波放射方向の合わせ込みを継続することを特徴とする請求項1に記載の車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置。
【請求項3】
前記車外ミラーには、前記車外アンテナの前記電波放射方向を前記通信端末により多く向かせる導体部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置。
【請求項4】
前記アンテナ角度切換手段は、前記車外アンテナと前記通信端末とが通信を行う際、前記車外ミラー又は前記鏡を、通常時の使用状態である開き定位置よりも一度角度を変えて前記電波放射方向を前記通信端末に合わせ込み、これら2者の通信完了後、当該車外ミラー又は前記鏡を、元の前記開き定位置に戻すことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置。
【請求項5】
前記車外アンテナは、前記通信端末の電源となる電力電波を少なくとも送信可能な電界型アンテナであることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置。
【請求項6】
前記車外アンテナは、前記鏡の鏡面にスリットを形成することによって該鏡をアンテナとして使用したスロットアンテナであることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置。
【請求項7】
前記車両にユーザが乗車することを検出する乗車検出手段と、
当該車両からユーザが降車することを検出する降車検出手段とを備え、
前記アンテナ角度切換手段は、前記乗車検出手段で前記乗車を検出すると、閉状態をとっている前記車外ミラーを開状態にしつつ、当該開状態の過程で、前記車外アンテナの前記電波放射方向の合わせ込みも併せて実行し、前記降車検出手段で前記降車を検出すると、前記車外アンテナの前記電波放射方向の合わせ込みを行い、通信完了後、前記車外ミラーを閉状態に戻すことを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置。
【請求項8】
前記通信端末は、自身が持つIDコードを無線により前記車両に送信して、該車両にID照合を実行させるキー端末であって、当該ID照合が成立すれば、車載機器の操作が許可又は実行となり、
前記車外アンテナは、前記キー端末とRFIDに準じた通信を実行する磁界型アンテナであり、
前記キー端末は、当該車外アンテナを介して前記車両と前記RFIDに準じた通信により前記ID照合を実行する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置。
【請求項9】
前記車外アンテナは、前記車外ミラー内の収納空間において、前記鏡と反対側の壁に沿わせて配置されている
ことを特徴とする請求項8に記載の車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置。
【請求項10】
前記アンテナ角度切換手段は、乗車前、前記車外ミラーを閉状態として、前記車両と前記キー端末との通信を実行し、通信完了からエンジンが始動するまでの間に、前記車外ミラーを開状態に切り換える
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の車外ミラー内蔵アンテナの角度切換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−121507(P2011−121507A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281702(P2009−281702)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
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