説明

車外ユーザ保護機能付車両

【課題】車外にいるユーザの安全状態を監視し、危険な状態であれば危険をユーザに知らせる機能を有した車両を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、車外にいるユーザの位置を検出するユーザ位置検出手段10と、
該ユーザ位置検出手段により検出されたユーザの位置に基づいて、ユーザ周辺の物体の位置を検出する物体位置検出手段20と、
前記ユーザ位置検出手段及び前記物体位置検出手段により検出されたユーザ及びユーザ周辺の物体の位置から算出される両者の相対位置及び相対速度に基づいて、ユーザと周辺の物体とが衝突し得る危険な状態にあるか否かを判定する危険状態判定手段30と、
該危険状態判定手段により、ユーザが危険状態にあると判定されたときには、ユーザに危険を通知する危険通知手段40、とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車外にいるユーザの安全を確保する機能を有する車外ユーザ保護機能付車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両運転時の安全性を高めるため、運転者が進行方向から目を離すことなく障害物の存在および危険度を確認できるよう、前方以外の障害物も含めて障害物を検出し、運転者にその存在および存在方向を知らせることによって、車線変更も含めて車両運転時の安全性を向上させた警報装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、作業用車両の遠隔操作において、遠隔操作時に通信異常が起きたと判定されて作業用車両を停止する制御がなされる場合でも、走行や旋回を急停止させてスリップや吊荷が大きく揺れるのを防ぐために緩停止するようにした技術が知られている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開平10−90406号公報
【特許文献2】特開2004−338817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の構成では、車両運転中の運転者又は運転者の運転している自車両の安全は考慮しているが、ユーザが車外にいる場合に、そのユーザの安全性を確保するために車両からユーザに警報を出すような事態は全く考慮されていない。
【0005】
また、上述の特許文献2に記載の構成では、作業用車両のユーザは車両外にいるが、ユーザが危険な状態にあるような場合は、全く考慮されていない。
【0006】
ところで、近年の通信技術の発達に伴い、車両を遠隔操作してドアをロックしたりウィンドウを開閉したりするだけでなく、例えば駐車場等で、車外にいるユーザが車両を目的地まで移動させるような場合が考えられる。このような場合には、車外にいるユーザは移動中の車両に気を取られがちであるから、ユーザの安全性を確保する必要が出てくる。また、遠隔操作を行わない場合でも、例えば高速道路のサービスエリアの駐車場では、多くの車両が駐車場内を横切っており、それらの車両によりユーザが危険な状態にさらされる場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、車外にいるユーザの安全を確保するため、車外ユーザの安全状態を監視し、危険な状態であれば危険をユーザに知らせる機能を有した車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る車外ユーザ保護機能付車両は、車外にいるユーザの位置を検出するユーザ位置検出手段と、
該ユーザ位置検出手段により検出されたユーザの位置に基づいて、ユーザ周辺の物体の位置を検出する物体位置検出手段と、
前記ユーザ位置検出手段及び前記物体位置検出手段により検出されたユーザ及びユーザ周辺の物体の位置から算出される両者の相対位置及び相対速度に基づいて、ユーザと周辺の物体とが衝突し得る危険な状態にあるか否かを判定する危険状態判定手段と、
該危険状態判定手段により、ユーザが危険状態にあると判定されたときには、ユーザに危険を通知する危険通知手段、とを備えたことを特徴とする。これにより、車外にいるユーザに危険な状態にあることを知らせることができ、ユーザに危険を回避させることができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明に係る車外ユーザ保護機能付車両において、
前記危険状態判定手段は、前記相対位置及び前記相対速度の関係に基づいて危険状態の度合いを判定する手段を含み、判定された危険状態の度合いに基づいて前記危険通知手段による危険通知の内容を変化させることを特徴とする。これにより、危険度に応じた適切なレベルの危険通知が可能となる。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係る車外ユーザ保護機能付車両において、
ユーザが前記周辺の物体を目視しているか否か又は前記ユーザの過去の行動特性のデータに基づいて、ユーザが危険を認識しているか否かを判定するユーザ危険認識判定手段を更に備え、
該ユーザ危険認識判定手段によりユーザが危険を認識していると判定されたときには、前記危険通知手段による危険通知を行なわないか、又は通知内容を変更することを特徴とする。これにより、ユーザが危険を認識しているのに関わらず不要な危険通知がなされる煩わしさや、大げさな危険通知を減らすことができる。
【0011】
第4の発明は、第1〜3の発明に係る車外ユーザ保護機能付車両において、
ユーザからの目的地の指示を受信する目的地指示受信手段と、
該目的地指示受信手段により受信した目的地の指示に基づいて、前記車両を前記目的地に移動させる遠隔車両制御手段とを更に備えたことを特徴とする。これにより、車両の遠隔操作を行っているユーザの安全性を確保することができる。
【0012】
第5の発明は、第4の発明に係る車外ユーザ保護機能付車両において、
前記危険通知手段は、前記遠隔車両制御手段により遠隔車両制御がなされている時に前記危険状態判定手段によりユーザが危険な状態にあると判定された場合には、前記遠隔車両制御の内容を変更することにより、ユーザへの危険通知を行うことを特徴とする。これにより、車両の遠隔操作を行っているユーザに効果的に危険通知を行うことができる。
【0013】
第6の発明は、第5の発明に係る車外ユーザ保護機能付車両において、
前記遠隔車両制御の内容の変更は、前記車外ユーザ保護機能付車両を所定の方向に移動させるか、又は停止させることを含むことを特徴とする。これにより、自分の方に向かって来る車両を見ているユーザに対して、車両の動きを効果的に使って危険を認識させることができる。
【0014】
第7の発明は、第4〜6の発明に係る車外ユーザ保護機能付車両において、
前記危険通知手段は、前記目的地指示受信手段に目的地の指示を送信する目的地指示送信手段を所持したユーザに対し、該目的地指示送信手段を通じて危険を通知する手段を含むことを特徴とする。これにより、ユーザと車両の間にある程度距離があっても、ユーザに確実に危険を認識させることができる。
【0015】
第8の発明は、第2〜8の発明に係る車外ユーザ保護機能付車両において、
前記危険状態判定手段により危険状態の度合いが高く、前記危険通知手段による危険通知ではユーザ保護が間に合わないと判定されたときには、前記車外ユーザ保護機能付車両を、ユーザを保護する位置に移動させるか、又は車外ユーザ緊急保護手段を作動させる制御を行う緊急車両制御手段を更に備えることを特徴とする。これにより、ユーザの対応が間に合わないおそれがある場合であっても、可能な限りユーザの安全を確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車外にいるユーザに危険を通知することにより、ユーザの安全を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0018】
図1は、本実施例に係る車外ユーザ保護機能付車両の機能ブロック図である。図1において、車外ユーザ保護機能付車両は、主要構成要素としては、ユーザ位置検出手段10と、物体位置検出手段20と、危険状態判定手段30と、危険通知手段40とから構成される。必要に応じて、ユーザ危険認識判定手段50と、行動特性データベース51とを備えてもよく、更に緊急車両制御手段90を備えてもよい。
【0019】
また、車外のユーザから車両の遠隔操作が可能に構成されている場合には、車両側に目的地指示受信手段60と遠隔車両制御手段70とを備え、ユーザが車外ユーザ保護機能付車両を遠隔操作するため、ユーザが車外で所持する目的地指示送信手段80を備える。
【0020】
ここで、図2を用いて目的地指示送信手段80の説明をする。
【0021】
図2は、目的地指示送信手段80の拡大機能ブロック図である。目的地指示送信手段80は、主要構成要素として、通信部81と、入力処理部83と、情報出力部84と、入力部85とを含む。必要に応じて、物体位置検出部86を更に備えてもよい。通信部81、入力処理部83及び情報出力部84は、マイクロコンピュータにより実現されてよい。
【0022】
通信部81は、目的地設定操作(遠隔操作)を実現するために、ユーザ保護機能付車両の目的地指示受信手段60との間で、一方向(送信)又は双方向の通信を行う。通信部81は、入力処理部83からの指示に従って、車両の目的地指示受信手段60に対して、アンテナ82を介して各種情報を送信する。また、通信部81は、車両側から送られてきた情報を受信するようにしてもよい。
【0023】
入力部85は、例えば携帯電話の入力ボタンやキーボードの類であってもよいし、音声入力部であってもよい。
【0024】
入力処理部83には、入力部85を介して、ユーザの所望する目的地の位置や、必要に応じてユーザの各種意思が入力される。また、目的地指示送信手段80により車両の走行状態を制御する構成の場合には、入力処理部83には、入力部85を介して入力される各種情報を処理して、通信部81を介して車両側に送信すべき各種送信信号を生成する。
【0025】
また、入力処理部83には、通信部81を介して車両側からの信号が入力される。入力処理部83は、車両側からの信号を処理して、情報出力部84を介して出力すべき出力情報を生成する。
【0026】
情報出力部84からは、入力処理部83からの指示に従って、通信部81を介して車両側から供給される各種情報を映像及び/又は音声により出力する。
【0027】
物体位置検出部86は、必要に応じて設けられるが、小型のCCDカメラやレーダ、クリアランスソナー等を利用して、後述する物体位置検出部20としての役割を担わすこともできる。ここで入力された信号も、入力処理部83により処理し、通信部81を介して車両側に送信すべき送信信号を生成するようにしてよい。
【0028】
次に、図1に戻り、遠隔操作に関連する車両側の構成要素の説明を行う。遠隔操作に関連する構成要素としては、アンテナ61と、目的地指示受信手段60と、遠隔車両制御手段70と、エンジンECUと、操舵ECU72と、ブレーキECU73と、トランスミッションECU74が挙げられる。
【0029】
目的地指示受信手段60は、目的地指示送信手段80からの目的地指示信号を、アンテナ61を介して受信する。受信した目的地指示信号は、復調等の処理を行なって、遠隔車両制御手段70に送る。
【0030】
また、目的指示受信手段60は、必要に応じて、後述する危険通知手段40から、ユーザの所持する目的地指示受信手段80の方に危険通知を音声等で行う場合には、その指令信号を出力し、アンテナ61を介して送信する。
【0031】
遠隔車両制御手段70は、目的地指示受信手段60から受けた目的地の指示に従い、車両の移動のための走行制御を行う。例えば、ある目的地に車両を移動させる指示を受けたら、エンジンECU71を制御してエンジンを駆動させ、操舵ECU72を制御してステアリング装置75を操舵することにより車両の進行方向を制御し、目的地に着いたら、ブレーキECU73を制御してブレーキをかけて車両を停止させる。また、車両をバックさせるときには、トランスミッションECU74を制御してギヤをバックに入れる制御を行う。
【0032】
ここで、エンジンECUは、車両の駆動手段であるエンジン(図示しない)を制御する手段であり、電気自動車等の場合は、モータを制御対象に含めてよい。
【0033】
操舵ECU72は、車両の操舵手段であるステアリング装置75を制御する手段であり、電動モータによりラック軸を駆動して自動操舵できるものであってよい。
【0034】
ブレーキECU73は車両の制動手段であるブレーキ装置(図示しない)を制御する手段であり、ブレーキ装置は例えばブレーキアクチュエータを制御して自動制動できるものであってよい。
【0035】
また、遠隔車両制御手段70は、必要に応じて地図データベース76を参照し、それらに基づいて車両の走行制御を行なってもよい。
【0036】
なお、遠隔車両制御手段70は、単独で設けられてもよいし、ECU内に設けられてもよい。上述のような車両の遠隔操作による走行制御を実現できるものであれば、その種類や形式は問わない。
【0037】
次に、図1における本実施例に係るユーザ保護機能付車両の他の主要な構成要素の説明を行う。
【0038】
ユーザ位置検出手段10は、車外にいるユーザの位置を検出するためのものである。ユーザの位置を検出するためには、例えばミリ波を用いたレーダ、超音波によるクリアランスソナー、カメラの画像認識等を用いて検出することができる。レーダやクリアランスソナーを用いれば、ユーザと車両間の距離を検出できるのでその位置を検出できる。また、カメラによりユーザを撮像して、パターンマッチング等を行えば、ユーザの存在を認識し、カメラの角度等も考慮してその位置を算出できる。図1においては、カメラ11を例に挙げて図示しているが、これは例えばレーダ又はクリアランスソナー等の対物位置検出センサに置き換え可能であり、またこれらを複数組み合わせて利用してもよい。例えば、カメラの画像認識によりユーザの存在を明確に認識し、レーダによりユーザとの正確な距離を検出するようにすれば、より正確にユーザの位置を検出できる。
【0039】
また、ユーザが上述の目的地指示送信手段80を用いて遠隔操作を行う場合には、ユーザが所持する目的地指示送信手段80から送信される通信信号からその位置を検出してもよい。更に、GPS(Global Positioning System)やG−BOOK、VICS(Vehicle Information and Communication System)等の外部センタ200による通信情報を用いてもよい。これらの通信信号に基づいてユーザの位置を検出する場合には、目的地指示送信手段80又は外部センタ200からの通信信号を受信するアンテナ61を備えてよい。
【0040】
なお、ユーザ位置検出手段10は、ユーザの位置が検出できればよいので、上述のカメラ等の直接的な検出手段や通信信号に基づく検出手段以外の手段であってもよく、その形式や種類は問わない。
【0041】
また、ユーザ位置検出手段により検出されるユーザの位置は、最初に検出した静止している位置だけでなく、ユーザが移動したらその動きに追随してユーザの位置を検出するようにしてよい。本実施例においてはユーザの保護が目的なので、ユーザの位置は常に把握する必要があるからである。
【0042】
物体位置検出手段20は、ユーザ位置検出手段10にて検出したユーザ位置に基づいて、ユーザ周辺の物体の位置を検出する。例えば、ユーザ位置検出手段10によりユーザ位置が定まることにより、ユーザ位置を略中心として、衝突が考えられる一定範囲内の周辺物体を検出するようにしてもよい。また、ユーザ周辺の物体には、壁300や駐車車両301等の静止物と、ユーザ周辺を移動している自転車302やオートバイ等の移動物の双方が考えられるが、物体位置検出手段20により、静止物と移動物の双方を検出してよい。ユーザがよそ見をして移動している場合には、壁300は駐車車両301に気付かず衝突することが有り得るし、ユーザが静止していても、自転車302のように移動物がユーザの方に向かってきて衝突する場合の双方が有り得るからである。
【0043】
物体位置検出手段20は、ユーザ位置検出手段10と同様に、レーダ、クリアランスソナー、カメラ11による画像認識等を利用してよい。なお、これらの物体位置検出手段20として用いるセンサは、ユーザ位置検出手段10と別々に設けてもよいし、兼用できる場合は兼用して利用してもよい。また、物体位置検出手段20は、ユーザ位置検出手段10と同様に、GPS、G−BOOK又はVICS等の通信情報手段を用いてもよい。なお、これらの通信情報を利用する場合は、単に周辺の物体の位置を検出するだけでなく、周辺の危険となり得る情報が入手できたら、それらも考慮してより危険度の高い方向の周辺物体を重点的に検出するようにしてもよい。
【0044】
危険状態判定手段30は、ユーザ位置検出手段10により検出されたユーザ位置と、物体位置検出手段20により検出された両者の位置に基づいて、相対位置と相対速度を算出し、これに基づいてユーザと周辺の物体が衝突し得る危険な状態にあるか否かを判定する。具体的には、ユーザ及び周辺の物体の位置の変化を所定時間毎に検出することにより、両者の相対的な位置関係の時間変位が分かるので、その移動方向と相対速度も知ることができる。
【0045】
個々に説明すると、ユーザの周辺の物体が移動しているときには、その移動速度と方向を算出することにより、ユーザの一定距離内に一定時間で到達するか否かを算出し、到達するときに危険な状態にあると判定するようにしてよい。例えば、ユーザの1m以内に5秒以内に到達する場合には危険な状態である、というような基準を予め設けておけば、これに基づいてユーザが危険な状態にあるか否かが判断できる。この危険な状態とみなす範囲を広く設定して、例えば1.5m以内に5秒以内に到達するときを危険な状態とみなすように設定すれば、上述の基準よりも多く危険状態と判定されるし、狭く設定して、例えば70cm以内に3秒以内に到達するときに危険な状態とみなすように設定すれば、危険な状態にあるとの判定は減少することになる。よって、この基準は、ユーザの仕様形態に適合するように、ユーザがある程度設定を変更できるように構成してもよい。
【0046】
また、ユーザ自身が移動している場合には、例えば画像認識を利用している場合には、ユーザの移動方向と速度や加速度だけでなく、ユーザの身長や幅を考慮して、衝突の可能性を判定する方が好ましい。また、レーダやクリアランスソナーを用いる場合でも、ユーザ毎に体格を記憶しておき、カメラと同様に体格をも考慮して判定を行うようにしてもよい。移動の推定に関しては、物体と同じようにユーザ移動方向とその移動速度の延長として推定する方法の他、ユーザが遠隔操作端末である目的地指示送信手段80により遠隔操作を行っている場合には、過去のユーザの遠隔操作時の動作履歴から推定することもできる。例えば、遠隔操作の際には、通信信号により目的地指示送信手段80の動きが分かるので、それらの動作履歴を蓄積することによりユーザの移動の癖や習慣が分かる。このような動作履歴を利用して照合を行うことにより、ユーザの移動を推定できるので、これから危険な状態にあるか否かを判定するようにしてもよい。
【0047】
ユーザとユーザ周辺の物体の双方が移動する場合には、個々の移動の方向と移動速度を組み合わせて考えることにより、ユーザとユーザ周辺の物体が衝突し得る危険な状態にあるか否かを判定することができる。その場合には、両者の相対位置と相対速度に基づいて考えることができる。また、ユーザか又は周辺の物体のいずれか一方が移動する場合であっても、両者が衝突し得るか否かは相対的な位置関係とその変化率に基づくので、双方の場合を含めて考えるようにしてもよい。
【0048】
また、危険状態判定手段30は、相対位置と相対速度の関係に基づいて、危険状態の度合いも判定するようにしてもよい。例えば、相対速度の上昇度が高い、つまり大きな加速度を有してユーザと周辺物体が接近している場合には、衝突したときの衝撃度合いは高くなるので、このような点を考慮して、危険状態の判定を行い、危険状態の度合いに応じて、後述する危険通知の内容のレベルを変えるようにしてもよい。これにより、ユーザは危険の存在だけではなく、その度合いをも知ることができる。
【0049】
なお、危険状態判定手段30は、上述のような演算判定ができる演算手段であればよく、好適にはコンピュータが用いられる。危険状態判定手段30は、単独に設けられてもよいが、ECU(Electrical Computer Unit)内に設けられてもよい。
【0050】
危険通知手段40は、危険状態判定手段30によりユーザが危険な状態にあると判定されたときには、ユーザに危険を通知する。通知の方法としては、ブザー等も含めたホーンやスピーカ等の音声出力手段41による音声、ヘッドライト42等の光、ヘッドアップディスプレイ等のようなフロントガラスへの画像表示(図示しない)、ミラー43を動かす等の車両の一部を作動させること等により通知してよい。例えば、「左から接近しています」等の方向情報も含めて注意喚起を促す趣旨の音声を出力したり、危険な方向のミラー43を駆動させたり、危険な方向に向けてヘッドライト42を点灯させる等により、どちらの方向に注意すべきかが分かるように通知してもよい。
【0051】
また、危険の度合いを伝えるために、音量、光度、画像表示の大きさを危険度に応じて変えたり、点滅等をさせ、更にその点滅周期を変えたり、ミラーの作動速度に変化をつけるようにしてもよい。例えば、危険な度合いが高ければ、音量をそれに応じて大きくしたり、光度を高くしたり、画像表示の表示像を大きく表示したり、ミラーの作動速度を高くすることにより危険の度合いを表現することができる。
【0052】
なお、ユーザが危険通知に従って、車両が危険通知した方向を見たか否かを確認するために、例えばユーザの顔又は目線をカメラ11等の撮像手段により撮像して、顔向き検知や目線検知等を行い、画像認識により判断してもよい。もし、ユーザが危険を通知した方向を見ていないと判断されたら、再度危険通知を行うようにしてもよい。
【0053】
また、ユーザへの危険の通知は、ユーザが所持している目的地指示送信手段80を通じて行ってもよい。例えば、音声による通知の場合は、目的地指示送信手段80の情報出力部84がスピーカ等の音声出力手段を備え、その音声出力手段を通じて危険を通知するようにしてもよい。目的地指示送信手段80は、通常はユーザに所持されており、車両よりもユーザとの距離が圧倒的に近いので、ユーザと車両の距離が比較的遠く離れている場合でも、小さな音量でユーザに効果的に危険を通知することができる。
【0054】
更に、ユーザがユーザ保護機能付車両を遠隔操作中であり、当該車両が目的地に向かって移動中のときは、危険方向をユーザが気付くように、当該車両が危険方向に車両の向きを変えて移動する等、制御内容を変更してユーザに知らせるようにしてもよい。
【0055】
図3は、上述のような車両の遠隔操作中に、ユーザが危険な状態であると判定したときの、遠隔車両制御の制御内容を変更して危険を通知する方法を示している。
【0056】
図3(a)は、本実施例に係るユーザ保護機能付車両がBの位置に駐車しているが、ユーザによりAを目的地として指示送信がなされ、その指示を受信してAに向かう車両制御を実施しようとしている状態を示している。ユーザ保護機能付車両は、当初はA地点に向かって最短距離で進行しようとしている。
【0057】
図3(b)は、ユーザ保護機能付車両がA地点に向かって進行中に、ユーザに向かってくる自転車302を検出し、それが衝突し得る危険な状態にあるとの判定がなされた状態を示している。このとき、ユーザ保護機能付車両はユーザに自転車302が接近していることを知らせるために、進路を変更して、危険対象物体が接近して来るユーザ保護機能付車両から見て左方向に進路を変更してCの進路をとる。逆に、危険を回避する方向を示すようにして、車両が右方向に進路を変更して、Dのような進路をとってもよい。このような危険通知は、図1の構成要素では、危険通知手段40による危険通知信号に基づいて遠隔車両制御手段70を制御し、遠隔車両制御手段70が操舵ECU72を制御してステアリング装置75を操舵し、進路変更を行うことにより実現できる。
【0058】
また、ユーザ保護機能付車両を途中で停止させ、例えばEの位置で停止させるようにしてユーザに危険を通知してもよい。この場合は、遠隔車両制御手段70がブレーキECU73を制御し、ブレーキをかけることにより、ユーザ保護機能付車両を停止させてよい。
【0059】
また、例えば危険の度合いが小さいようなときは、停止までさせなくても、車両の移動速度を遅くして、ユーザに時間的余裕を与えて危険回避を補助するようにしてもよい。この場合は、エンジンECU71とブレーキECU72を制御することにより、遠隔車両制御内容の変更を実行してよい。
【0060】
更に、遠隔操作を行っている駐車場の通路が狭く、他の駐車車両も沢山あって、ユーザ保護機能付車両が進行方向を変えたり停止したりする適切なスペースがない時には、例えばE地点からユーザ保護機能付車両を最初に駐車してあったB地点まで戻すような制御変更を行なってもよい。この場合には、トランスミッションECU74により、ギヤをバックにシフトし、エンジンECU71と操舵ECU72を適切に制御することにより、元の駐車位置に戻してユーザに危険を通知することができる。
【0061】
なお、これらの遠隔操作中における遠隔車両制御内容の変更による危険通知は、上述の音声、光、画像表示、ミラー等の車両の一部の作動による危険通知と併用するようにしてもよい。併用により、ユーザに危険通知をより効果的に行うことが期待できる。
【0062】
また、危険通知手段40は、単独で設けられてもよいし、ECUの内部に設けられていてもよい。上述のような危険通知を実現できれば、その種類や形式は問わない。
【0063】
次に、ユーザ危険認識判定手段50の説明を行う。
【0064】
ユーザ危険認識判定手段50は、ユーザが危険を認識しているか否かを判断するため、必要に応じて、危険状態判定手段30と危険通知手段40との間に設けられる。ユーザ危険認識判定手段50を設けることにより、危険状態判定手段30においてユーザが危険状態にあると判定されたときでも、ユーザが危険を認識している場合には、危険を通知する必要なしと判断して通知を行なわず、余分な通知を減らすことができる。また、通知を行う場合であっても、通知の仕方を、危険度の高いときに行う通知を、確認のための注意喚起レベルの通知に変更することにより、ユーザへの過度な危険通知を減らすことができる。
【0065】
ユーザ危険認識判定手段50は、例えばカメラ11を備え、ユーザが周辺の移動物体又は障害物の方を目視しているか否かを、カメラ11により撮像し、ユーザの顔の向き又は視線を検知して、パターンマッチング等により画像認識してよい。画像認識の結果、ユーザが周辺の移動物体又は障害物の方を目視していれば、それらを認識していると推定判断することができる。なお、カメラ11は、危険認識手段50に単独に設けてもよいし、上述のユーザ位置検出手段10や物体位置検出手段20で用いたカメラと兼用するようにしてもよい。
【0066】
ユーザ危険認識判定手段50により、ユーザが危険を認識していると判断されたときには、例えば、危険通知手段40による危険通知を取り止めることとし、危険通知取り止め信号を送ってもよいし、又は危険状態判定手段30から危険通知手段40に信号が送られないようにしてもよい。
【0067】
また、ユーザ危険認識判定手段50によりユーザが危険を認識していると判断されたときには、危険の通知は行うが、その度合いを下げるようにしてもよい。例えば、音声による危険通知を行う場合には、その音量を下げてもよいし、光で通知を行う場合には、その光度を落とすようにしてもよいし、ミラーを作動させる場合には、その駆動速度を遅くするようにしてもよい。また、例えば、ユーザが車両を目的地指示送信手段80により遠隔操作中のときには、車両の遠隔制御内容は変更せず、単に音声、光、画像表示又はミラー等の車両の一部を作動させるだけにしてもよい。
【0068】
更に、ユーザ危険認識判定手段50は、ユーザ毎の行動特性に関するデータを蓄積しておき、例えば図1に示すような行動特性データベース51を作成し、このデータベース51に蓄積されたデータに基づいて、ユーザが危険を認識しているか否かを判断するようにしてもよい。
【0069】
図4は、ユーザの行動特性と危険認識の関係を学習してデータベース化するための一例を示した図である。図4は、本実施例に係るユーザの危険認識度を、ニューロモデルにより学習する例を示している。
【0070】
図4において、入力の項目と出力の項目があり、入力項目の階層を入力層、その項目に重み付けを行った階層を中間層、中間層の総和として最終的に危険認識度を出力する階層を出力層と呼び、それぞれの層は各項目のニューロンから構成されている。図4において、Wは、入力層と中間層の各ニューロンの結びつきの強さを表す重み付け係数を示しており、0〜1の間の値をとる。
【0071】
入力層には、例えば、「目線・顔向き」、「リモート車両制御中止タイミング」、「リモート車両制御実施位置」、「リモート車両制御実施時刻」、「リモート車両制御時の天候」、「リモート車両制御時の目的に対する目的地設定」、「ユーザの身振り・手振りによる判断」、「ユーザの脈拍・呼吸・体温」、「ユーザの移動方向」、の9つを例として挙げている。
【0072】
これらの入力層の項目は、本実施例に係るユーザ保護機能付車両が、ユーザが危険な状態にあると判定したときに、ユーザがその危険な状態を認識していた、又は認識していなかった事例の状況を表現するための項目である。これらの項目は、ユーザにより個人差があり、ユーザなりの行動パターンの癖、習慣に大きく左右されそうな項目を例として挙げている。
【0073】
例えば、「目線・顔向き」であれば、危険な状態を認識しているときのユーザの目線や顔向きを、画像パターンとして記憶蓄積できる。また、例えば、「リモート車両制御中止タイミング」であれば、ユーザは車両の遠隔操作中に危険を認識したときには、ユーザは車両を止めるために遠隔操作用の操作ボタンから手を離す、又は中止ボタンを押す可能性が高いが、その中止タイミングもユーザにより個人差が出る。
【0074】
また、「リモート車両制御実施位置」であれば、自宅の駐車場、職場の駐車場、○○デパートの駐車場等の位置の相違により、ユーザの危険認識度と関連付けて蓄積記憶できる。例えば、自宅や職場であれば慣れているので危険認識度は高く、デパートであれば危険認識度は低いことが考えられる。また、ユーザによっては逆に自宅の駐車場は視界が悪く、よく利用するデパートの駐車場は視界が良いので、逆のパターンも考えられる。
【0075】
また、例えば、「リモート車両制御時刻」であれば、時刻により、朝であれば急いでいることが多いユーザは危険認識度が低い、また視力が弱いユーザは、夜は視認力が大幅に落ちるので危険認識度が大きく下がる、ということが考えられる。同様に、「リモート車両制御時の天候」が雨であれば、大きな傘を比較的下方の位置でさすことが多いユーザは、周囲が視認し難くなるので危険認識度が大きく下がる、ということが考えられる。
【0076】
また、「リモート車両制御時の目的に対する目的地設定」とは、例えば、ユーザが遠隔操作により車両の目的地を設定したときに、目的地に車両が停止することができないときには、ユーザの目的を推定してそれを満たすような代わりの位置に停止するようなインテリジェント車両自動運転システムを利用しているときには、ユーザの目的に対する目的地の設定の仕方にもユーザの個性が表れると考えられる。また、ユーザの設定した目的地の位置が、車両自動運転システムにより判断されたユーザの目的と反するような位置に設定されたときには、目的地と車両との間に道路等の障害があって、危険等の何らかの理由があり別な位置を設定している、等の高度な推定もなし得る。
【0077】
また、「ユーザの身振り・手振りによる判断」であれば、例えばユーザが危険を認識したときには、身を守ろうとしたり、止まれという趣旨の身振り、手振りを行う習慣があるユーザとあまり無いユーザでは個人差が出ると考えられる。
【0078】
また、「ユーザの脈拍・呼吸・体温」であれば、危険を認識したユーザの脈拍が上がったり、体温が上がったりすることが考えられるので、これらを例えばユーザが所持する目的地指示送信手段80により検出し、蓄積記憶できる。
【0079】
更に、「ユーザの移動方向」であれば、例えばユーザが右に移動したときは認識していることが多く、逆に左に移動したときは危険認識度が低い、というようなユーザによる個人差が考えられる。
【0080】
図4において、上述のような項目の入力層からの入力に基づいて、中間層において入力層の各ニューロンの重み付け調整がなされて、中間層の出力の総和が出力の危険認識度となる。このようなニューロンモデルにおいて、この入力層と出力層の事例を記憶させてゆくことにより、重み付け係数が変化してゆき、学習により行動特性のデータベース51が作成されてゆく。
【0081】
このようなデータベース51を用いて、逆に入力層の項目情報を入力したときに、危険認識度を推定演算することが可能となるので、現実に起こる種々の状況について、危険認識度を出力することが可能となる。そして、例えば、推定された危険認識度に対して、例えば80%以上の危険認識度であれば危険通知を行なわない、又は危険通知の程度を下げる等の処理を行うことにより、ユーザの危険認識度の推定値を本実施例に係る車両に生かすことが可能となる。
【0082】
次に、緊急車両制御手段90について説明する。緊急車両制御手段90は、危険状態判定手段30により、危険な状態で、かつ危険を通知してもユーザが危険を避けられない、と判断されたときに車両を制御する手段である。
【0083】
例えば、ユーザに車両が向かってきて、車両の相対速度がある程度大きく、既に相対位置も近すぎるときには、ユーザに危険を通知しても間に合わない場合があると考えられる。このようなときには、ユーザ保護機能付車両は、例えば車外エアバッグ作動させ、ユーザを保護することができる。車外エアバッグは、例えば、車両の前方のフロントガラスとワイパーの間付近にユーザが衝突するのを防止するような構成となっていれば、これを作動させて直接の衝突を防ぐようにしてもよい。また、車外エアバッグは、Aピラーにユーザが衝突するのを防ぐように構成されていてもよい。車外エアバッグを作動させることにより、車両の最も危険な箇所であるフロントガラス等との衝突を回避することができる。
【0084】
更に、緊急車両制御手段90は、危険状態判定手段30により車外エアバッグも間に合わない、又は効果が無いと判断されたときには、ユーザ保護機能付車両がユーザに向かってくる車両とユーザの間に入り、ユーザが突っ込んでくる車両との直接の接触を避けるように制御することもできる。このときの車両の走行制御は、エンジンECU71、操舵ECU72、ブレーキECU73等を協働させて行ってよい。
【0085】
なお、この制御を実行する場合は、ユーザ保護機能付車両がユーザと車両との間に入ることにより、相手車両の乗員や周囲の人が重症を負わないと判断されてときのみ同制御がなされることが好ましい。このような緊急時の制御により、危険を完全には避けられないときでも、ユーザの危険又は損傷を軽減することができる。
【0086】
また、緊急車両制御手段90は、単独に設けられてもよいし、ECUの内部に設けられてもよく、その種類や形式は問わない。
【0087】
以上の説明で、主要な検出手段や判定手段、制御手段等は総て車両側にある例を説明してきたが、必要に応じて、ユーザが所持する目的地指示送信手段80の方で備えていてもよい。例えば、図2で説明したように、目的地指示送信手段80がレーダ、クリアランスソナー、小型CCDカメラ等の物体位置検出部86を備え、これにより物体位置を検出するように構成してもよい。ユーザに近い位置にある物体位置検出部86により周辺の物体を検出するため、車両に備えた物体位置検出手段20よりも精度良く周囲の物体を検出することが期待できる。また、車両側の物体位置検出手段20と併用し、ユーザの前方は目的地指示送信手段80で検出し、目的地指示送信手段80に備えられた物体位置検出部86の死角となり易いユーザの後方は、車両側の物体位置検出手段で検出するようにしてもよい。
【0088】
なお、物体位置検出部86により検出した周辺の物体位置は、通信部81を通じて車両側のアンテナ61に送信し、その後の危険状態判定手段30等による処理を車両側で行うようにしてもよいし、それらの手段も遠隔操作端末である目的地指示送信手段80に備えるように構成してもよい。
【0089】
次に、本実施例に係るユーザ保護機能付車両の動作フローについて説明する。なお、図1〜4において説明した構成要素には同一の参照符号を用い、その説明を省略する。
【0090】
図5は、本実施例に係るユーザ保護機能付車両が遠隔操作手段を備えていない、又は備えていても遠隔操作機能を用いていない場合の、基本的な実施態様の動作フロー図である。
【0091】
ステップ100では、ユーザ位置検出手段10により、ユーザ位置を検出する。ユーザが移動している場合は、その移動位置も連続的又は一定周期毎に検出し、ユーザの位置の変化も検出するようにしてよい。
【0092】
ステップ110では、ステップ100で検出したユーザの位置に基づいて、物体位置検出手段20により、ユーザ周辺の物体の位置を検出する。検出範囲については、ユーザが含まれ、ユーザの安全を確保できる所定の広さの範囲について、周辺の物体の位置を検出する。ユーザの位置を略中心とする所定範囲の物体の位置を検出するようにしてもよい。また、検出する物体については、壁や駐車車両等の静止物体と、自転車や他車両等の移動物体の双方を検出するようにしてよい。移動物体については、その位置変化も検出するようにしてよい。
【0093】
ステップ120では、危険状態判定手段30により、ステップ100で検出したユーザ位置とステップ110で検出したユーザ周辺の物体の位置から相対位置と相対速度を算出し、これに基づいて、ユーザと周辺の物体が衝突し得るか否かを判定する。両者のうち、一方又は双方の移動対象の移動方向から、両者の距離が一定時間以内に所定距離内に到達するか否かを算出することにより、危険な状態にあるか否かを判定してよい。その他、車車間通信、路車間通信、G−BOOKなどの外部センタ200を経由する通信情報を利用して、周辺の危険となり得る情報を受信し、危険状態の判定に利用してもよい。
【0094】
ステップ120において、危険な状態になってないと判定されたときは、ユーザ保護のための危険通知を行う必要が無いので、本実施例に係るユーザ保護機能付車両の処理を終了する。一方、危険な状態になっていると判定されたときは、ステップ130に進む。
【0095】
ステップ130では、ユーザに危険の通知を行う。上述のように、音、光、画像、ミラー等の車両の一部を動作させることにより、危険を通知し、ユーザの注意を喚起する。
【0096】
なお、ステップ200で判定された危険の度合いが相当に高く、更にステップ210でユーザ危険を認識してないと判定され、危険通知によるだけではユーザの危険が回避できないと判断されたときは、ステップ130は緊急車両制御手段90により緊急車両制御を行う処理に切り替えられてもよい。
【0097】
図6は、本実施例に係るユーザ保護機能付車両が遠隔操作手段を備えていない、又は備えていても遠隔操作機能を用いていない場合であって、危険の度合いの判定とユーザの危険認識の判定をも行う場合の動作フロー図の一例である。なお、図5で説明したのと同様のステップについては、同一の参照符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。
【0098】
ステップ100では、ユーザの位置を検出する。図5における説明と同様の動作を行うので、その説明を省略する。
【0099】
ステップ110では、ユーザ周辺の物体の位置を検出する。図5における説明と同様の動作を行うので、その説明を省略する。
【0100】
ステップ120では、ユーザが危険な状態になっているか否かを判定する。図5における説明と同様の判定動作を行い、危険な状態になっていないと判定されたら、処理を終了する。危険な状態にあると判定されたら、ステップ200に進む。
【0101】
ステップ200では、ステップ120でユーザが危険な状態にあると判定されたら、その際にユーザと周辺の物体との相対位置と相対速度との関係に基づいて、その危険の度合いも合わせて判定する。例えば、予め相対位置と相対速度の関係に基づく衝撃の大きさを表した図表や演算式を準備して危険状態判定手段30に記憶しておき、相対位置の距離と相対速度の大きさとの関係から、衝撃の大きさを推定するようにしてもよい。相対速度の変化から、加速度も算出して演算に利用すれば、更に精度を増すことができる。
【0102】
ステップ210では、ユーザが危険を認識しているか否かの判定を行う。上述のように、カメラ等の撮像手段を用いて、ユーザの顔向きや目線を検出して画像認識により判定してもよいし、ユーザ毎の行動特性に基づく行動履歴のデータから、判定するようにしてもよい。ユーザが危険を認識していないと判定したときには、ステップ130に進み、危険を通知する。ユーザが危険を認識していると判定したときには、ステップ220に進む。
【0103】
ステップ220では、各車両の設定に基づき、危険通知を行うか否かの判定を行う。ユーザが危険認識をしていると判定したときには、危険通知を行わないという設定にしてあれば、危険通知は行わずに処理を終了する。一方、通知内容を低減して危険通知を行うという設定にしてあれば、ステップ230に進み、音声による通知であれば音量を下げる、光による通知であれば光度を下げて通知する、ミラーの動作による通知であれば動作速度を遅くする、等の制御を危険通知手段40にて行って危険を通知する。
【0104】
図7は、ユーザが本実施例に係るユーザ保護機能付車両の遠隔操作を行っているときの本実施例に係るユーザ保護機能付車両の動作フロー図の一例である。図7において、遠隔操作による車両の遠隔制御の動作とユーザとの関連が分かるように、ユーザ側と車両側を分けてフローを示す。
【0105】
ステップ300では、ユーザが目的地指示送信手段80を用いた遠隔操作により、遠隔車両制御を実施する。ユーザの目的地指示は、ユーザが具体的な位置を指示する形でもよいし、所持する目的地支持送信手段80の位置に追随して移動する旨の指示を出す形でもよい。
【0106】
ステップ310では、車両が、目的地指示受信手段60で受けたユーザの目的地指示に基づき、遠隔車両制御手段70により遠隔車両制御を実施する。遠隔車両制御は、上述のように、遠隔車両制御手段70が、エンジンECU71、操舵ECU72、ブレーキECU73、トランスミッションECU74と協働して走行制御を行い、車両を目的地まで移動させる。
【0107】
ステップ320では、ユーザ位置検出手段10により、ユーザの位置を検出する。図5のステップ100において説明したのと同様の動作によりユーザ位置を検出してよいが、他に、ユーザが所持する目的地指示送信手段80から送信されている通信信号に基づいて、ユーザの位置を検出してもよい。目的地指示送信手段80からの通信信号に基づいてユーザ位置を検出する場合は、ユーザが移動したときも、目的地指示送信手段80から信号が送信され続けていれば、ユーザの位置を追跡して検出することができる。
【0108】
ステップ330では、物体位置検出手段20により、ユーザ周辺の物体の位置を検出する。図5のステップ110において説明したのと同様の動作により、ユーザ周辺の物体の位置を検出してよい。
【0109】
ステップ340では、危険状態判定手段30により、ユーザが危険な状態になっていないか否かを判定する。図5のステップ120において説明したのと同様の動作により、危険な状態か否かを判定してよい。ユーザが危険な状態になっていないと判定されたときには、ステップ350に移り、そのままステップ310にて受けたユーザの目的地指示に従い、遠隔車両制御を継続する。一方、ユーザが危険な状態にあると判定されたときには、ユーザへの注意喚起をすべく、ステップ360に進む。
【0110】
ステップ360では、遠隔車両制御の内容の変更を行うことにより、ユーザへの危険の通知を行う。上述のように、目的地に移動走行中の車両が、その進行方向を変更したり、停止したり、元の駐車位置に戻ることにより、ユーザが危険な状態にあることを通知してよい。
【0111】
図8は、図7とは異なる、ユーザが本実施例に係るユーザ保護機能付車両の遠隔操作を行っているときの本実施例に係るユーザ保護機能付車両の動作フロー図の一例である。図7と同様の動作ステップについては、同一の参照符号を用い、その説明を省略又は簡略化する。
【0112】
ステップ300では、ユーザが遠隔車両制御を実施する。ユーザ側の遠隔車両制御は、図7におけるステップ300と同様の動作により実施されてよいので、その説明を省略する。
【0113】
ステップ310では、車両側で遠隔車両制御が実施される。車両側の遠隔車両制御は、図7におけるステップ310と同様の動作により実施されてよいので、その説明を省略する。
【0114】
ステップ320では、ユーザの位置が検出される。ユーザ位置の検出は、図7におけるステップ320と同様の動作により検出されてよいので、その説明を省略する。
【0115】
ステップ330では、ユーザ周辺の物体の位置が検出される。ユーザ周辺の物体の位置検出は、図7におけるステップ330と同様の動作により検出されてよいので、その説明を省略する。
【0116】
ステップ340では、ユーザが危険な状態になっていなか否かが判定される。ユーザが危険な状態になっていないか否かの判定は、図7におけるステップ340と同様の動作により実行されてよいので、その説明を省略する。ユーザが危険な状態にないと判定されたときは、ステップ310で受けた目的地指示に従って車両側の遠隔車両制御を継続する。一方、ユーザが危険な状態にあると判定されたときには、ステップ370に移る。
【0117】
ステップ370では、ユーザの危険の度合いが判定される。ユーザの危険度合いの判定は、図6のステップ200と同様の動作により判定されてよいので、その説明を省略する。
【0118】
ステップ380では、ユーザが危険を認識しているか否かが判定される。ユーザが危険を認識しているか否かは、図6のステップ210と同様の動作により判定されてよいので、その説明を省略する。ユーザが危険を認識していないと判定されたときには、ステップ360に進み、遠隔車両制御の内容変更がなされ、ユーザへの危険通知が実行される。具体的には、図6のステップ360と同様の処理がなされる。一方、ユーザが危険を認識していると判定されたときは、ステップ390に進む。
【0119】
ステップ390では、危険通知を行うか否かが、車両の設定に基づいて判断される。ユーザが危険を認識しているときは、危険通知を行わないという設定にしてあれば、ステップ350に進み、ステップ310にて指示された遠隔車両制御をそのまま継続実行する。一方、危険通知を行うという設定がなされているときには、ステップ400に進む。
【0120】
ステップ400では、ユーザへの危険通知が行われるが、通知処理の度合いは下げる方が好ましいので、例えば遠隔車両制御は継続しつつ、音声、光、画像表示、ミラー等の車両の一部の動作による通知は行うようにしてよい。これにより、ユーザは危険を認識しているという前提の下で、確認的に危険通知を行うとともに、ユーザが本来欲している目的地への車両の移動も継続することにより、ユーザの安全にも配慮しつつユーザの本来の目的を達成することができるからである。
【0121】
なお、ステップ370において判定された危険の度合いが相当に高く、ステップ380においてもユーザが危険を認識していないと判定され、ステップ360における遠隔車両制御の内容を変更するだけではユーザの安全を確保できないと判定されたときには、ステップ360が緊急車両制御手段90による緊急車両制御に切り替わり、車外エアバッグの起動やユーザとユーザに向かってくる車両の間に入り込む等の緊急危険回避がなされるようにしてもよい。
【0122】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。特に、本実施例では、危険度合いの判定、ユーザの危険認識の有無、それらに基づく危険通知の方法については、種々の組み合わせが考えられるので、本実施例は実施例同士で適宜組み合わせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本実施例に係る車外ユーザ保護機能付車両の機能ブロック図である。
【図2】目的地指示送信手段80の拡大機能ブロック図である。
【図3】車両の遠隔操作中に、遠隔車両制御の制御内容を変更して危険を通知する方法を示している。
【図4】ユーザの行動特性と危険認識の関係を学習してデータベース化するための一例を示した図である。
【図5】本実施例に係るユーザ保護機能付車両が遠隔操作機能を用いていない場合の動作フロー図の一例である。
【図6】図5と異なる、本実施例に係るユーザ保護機能付車両が遠隔操作機能を用いていない場合の動作フロー図の一例である。
【図7】ユーザが本実施例に係るユーザ保護機能付車両の遠隔操作を行っているときの本実施例に係るユーザ保護機能付車両の動作フロー図の一例である。
【図8】図7とは異なる、ユーザが本実施例に係るユーザ保護機能付車両の遠隔操作を行っているときの本実施例に係るユーザ保護機能付車両の動作フロー図の一例である。
【符号の説明】
【0124】
10 ユーザ位置検出手段
11 カメラ
20 物体位置検出手段
30 危険状態判定手段
40 危険通知手段
41 音声出力手段
42 ヘッドライト
43 ミラー
50 ユーザ危険認識判定手段
51 行動特性データベース
60 目的地指示送信手段
61、82 アンテナ
70 遠隔車両制御手段
71 エンジンECU
72 操舵ECU
73 ブレーキECU
74 トランスミッションECU
75 ステアリング装置
76 地図データベース
80 目的地指示送信手段
81 通信部
83 入力処理部
84 情報出力部
85 入力部
86 物体位置検出部
200 外部センタ
300 壁
301 駐車車両
302 自転車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外にいるユーザの位置を検出するユーザ位置検出手段と、
該ユーザ位置検出手段により検出されたユーザの位置に基づいて、ユーザ周辺の物体の位置を検出する物体位置検出手段と、
前記ユーザ位置検出手段及び前記物体位置検出手段により検出されたユーザ及びユーザ周辺の物体の位置から算出される両者の相対位置及び相対速度に基づいて、ユーザと周辺の物体とが衝突し得る危険な状態にあるか否かを判定する危険状態判定手段と、
該危険状態判定手段により、ユーザが危険状態にあると判定されたときには、ユーザに危険を通知する危険通知手段、とを備えたことを特徴とする車外ユーザ保護機能付車両。
【請求項2】
前記危険状態判定手段は、前記相対位置及び前記相対速度の関係に基づいて危険状態の度合いを判定する手段を含み、判定された危険状態の度合いに基づいて前記危険通知手段による危険通知の内容を変化させることを特徴とする請求項1に記載の車外ユーザ保護機能付車両。
【請求項3】
ユーザが前記周辺の物体を目視しているか否か又は前記ユーザの過去の行動特性のデータに基づいて、ユーザが危険を認識しているか否かを判定するユーザ危険認識判定手段を更に備え、
該ユーザ危険認識判定手段によりユーザが危険を認識していると判定されたときには、前記危険通知手段による危険通知を行なわないか、又は通知内容を変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の車外ユーザ保護機能付車両。
【請求項4】
ユーザからの目的地の指示を受信する目的地指示受信手段と、
該目的地指示受信手段により受信した目的地の指示に基づいて、前記車両を前記目的地に移動させる遠隔車両制御手段とを更に備えたことを特徴とする請求項1乃至3に記載の車外ユーザ保護機能付車両。
【請求項5】
前記危険通知手段は、前記遠隔車両制御手段により遠隔車両制御がなされている時に前記危険状態判定手段によりユーザが危険な状態にあると判定された場合には、前記遠隔車両制御の内容を変更することにより、ユーザへの危険通知を行うことを特徴とする請求項4に記載の車外ユーザ保護機能付車両。
【請求項6】
前記遠隔車両制御の内容の変更は、前記車外ユーザ保護機能付車両を所定の方向に移動させるか、又は停止させることを含むことを特徴とする請求項5に記載の車外ユーザ保護機能付車両。
【請求項7】
前記危険通知手段は、前記目的地指示受信手段に目的地の指示を送信する目的地指示送信手段を所持したユーザに対し、該目的地指示送信手段を通じて危険を通知する手段を含むことを特徴とする請求項4乃至6に記載の車外ユーザ保護機能付車両。
【請求項8】
前記危険状態判定手段により危険状態の度合いが高く、前記危険通知手段による危険通知ではユーザ保護が間に合わないと判定されたときには、前記車外ユーザ保護機能付車両を、ユーザを保護する位置に移動させるか、又は車外ユーザ緊急保護手段を作動させる制御を行う緊急車両制御手段を更に備えることを特徴とする請求項2乃至8に記載の車外ユーザ保護機能付車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−65381(P2008−65381A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239320(P2006−239320)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】