説明

車軸電動ユニット

【課題】規格化の容易な構造の車軸電動ユニットを提供する。
【解決手段】車軸と、該車軸を駆動するための電動モータと、該電動モータの出力軸であって、該車軸と非同一軸芯上のモータ軸と、該モータ軸と該車軸との間に介装される減速ギア列と、該減速ギア列を介して該モータ軸から該車軸までに及ぶ動力列のいずれかの要素を制動するよう構成されたブレーキと、ケースとを備えた車軸電動ユニット。該ケースは、該車軸、該電動モータ、該モータ軸、該減速ギア列、該ブレーキを内装する。該ケースにはフレームに取り付けられる取付部が設けられ、該取付部は、該ケースを上下反転しても車軸の中心から一定の高さを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースに車軸を駆動する電動モータを収納した車軸電動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、可変出力型電動モータをケースに収納するとともに、該電動モータにて駆動される車軸を該ケースにて支持した構成の車軸電動ユニットが、様々な車両や装置に用いられている。例えば、特許文献1に示す如きものである。
【0003】
典型的な車軸電動ユニットにおいては、電動モータの出力軸としてのモータ軸を、車軸と同一軸芯上にならないようにケース内に配設し、減速ギア列を、モータ軸と車軸との間に介装されるように該ケース内に配設し、ブレーキを、減速ギア列を介してモータ軸から車軸までに及ぶ動力列のいずれかの要素を制動するように該ケース内に配設している。車軸電動ユニットを用いた典型的な車両は、電動自動車やハイブリッド車である。さらに、車軸電動ユニットは、電動車椅子、また、芝刈機やスキッドステアローダ等の様々な作業車両にも適用可能である。
【0004】
車軸電動ユニットの製造を低コスト化する上で、規格化は重要な要素である。特に、車両が左右の車輪を各別に駆動するように左右一対の車軸電動ユニットを備えている場合、各車軸電動ユニットは、左右いずれの車軸電動ユニットにもなり得ることが望まれる。すなわち、各車軸電動ユニットは、車両等のフレームの左右いずれの部分にも取り付けが便利であることが望まれ、また、ブレーキ操作具に接続される左右いずれのリンク部材にも連係が便利であることが望まれる。
【0005】
さらに、車軸電動ユニットは、その部品の組立が簡単で、かつ、組み立てた部品が動かないようしっかりと支持されていることが望まれる。また、車軸電動ユニットには、ケース内の電動モータに接続されて該ケースの外側に延出される電線が付き物であるが、このことに鑑みて、車軸電動ユニットの組立中において、ケースの壁を貫通する電線に対して該ケースが確実かつ簡単にシールされることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3584106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明に係る車軸電動ユニットは、基本的構造として、ケース、電動モータ、車軸を備えており、該ケースは、該電動モータを収容するとともに、該電動モータにて駆動される該車軸を支持している。さらに、本発明に係る第一様態において、前記基本構造を有する車軸電動ユニットは、電動モータの出力軸であるモータ軸を、該車軸と同一軸芯上にならないように該ケース内に配設しており、該ケース内にて、減速ギア列を、該モータ軸と該車軸との間に介装している。
【0008】
本発明の第一目的は、前記第一様態の車軸電動ユニットを提供するにおいて、一方が他方の上下反転したものに該当するように左右の車軸電動ユニットを車両等に搭載する場合に、左右いずれの車軸電動ユニットにもなるように、車体等の左右いずれの部分にも取付が便利なものとすることである。
【0009】
本発明の第二目的は、前記減速ギア列を介して前記モータ軸から前記車軸までに及ぶ動力列のいずれかの要素を制動するようにブレーキを前記ケース内に配設した場合の第一様態の車軸電動ユニットを提供するにおいて、一方が他方の上下反転したものに該当するように左右の車軸電動ユニットを車両等に搭載する場合に、左右いずれの車軸電動ユニットにもなるように、ブレーキ操作具に接続される左右リンク部材のいずれにも取付が便利なものとすることである。
【0010】
本発明の第三目的は、前記第一様態の車軸電動ユニットにおいて、手動で任意に車軸を電動モータのモータ軸に対し自由に回転可能とすることである。
【0011】
本発明の第四目的は、左右車輪の各別駆動用に一対の車軸電動ユニットを搭載した経済的な車両を提供するものである。
【0012】
本発明の第五目的は、前記の基本構造を有する車軸電動ユニットを、その組立中において、ケースの壁を貫通する電線に対して該ケースが確実かつ簡単にシールされるよう構成することである。
【0013】
本発明の第六目的は、前記基本構造を有する車軸電動ユニットを提供するにおいて、電動モータの出力回転部材と電動モータの出力軸としてのモータ軸とをがたつきがないように容易に組み合わせられて締結されるものとする。
【0014】
本発明の第七目的は、前記基本構造を有する車軸電動ユニットであって、該電動モータとして、車軸に連動連結されるモータ軸を有する、車軸を駆動するためのモータアセンブリを該ケース内に配設し、該モータアセンブリが、車軸に連動連結されるモータ軸を有しているものを提供するにおいて、該モータ軸を軸支する軸受近傍の隙間から騒音がモータアセンブリの外部に漏れないようにするとともに、該モータ軸及び該軸受がモータ軸の軸芯方向のずれなく該モータアセンブリに組み付けられるようにするものである。
【0015】
本発明の第八目的は、前記の基本構造を有し、また、前記電動モータとしてのモータアセンブリを有する車軸電動ユニットを提供するにおいて、該モータアセンブリの部品、特にロータ及び電機子巻線を有効に冷却するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記第一目的を達成すべく、本発明の第一態様に係る車軸電動ユニットにおいて、請求項1に記載の如く、該ケースにはフレームに取り付けられる取付部が設けられ、該取付部は、該ケースを上下反転しても車軸の中心から一定の高さを有している。
【0017】
前記の請求項1に記載の如き構成の車軸電動ユニットにおいて、請求項2に記載の如く、該ケースは、間に水平の接合面を介して第一・第二分割ケース部を接合したものとなっており、該車軸の軸芯は該水平接合面上に配置されている。該第一分割ケース部は第一取付部を、該第二分割ケース部は第二取付部を有し、該第一・第二取付部のそれぞれが該フレームに取り付けられる該ケースの取付部となり得るものであり、該第一・第二取付部は、両者間の水平接合面に対し、上下で均等な距離を有している。
【0018】
前記の請求項2に記載の如き構成の車軸電動ユニットにおいて、請求項3に記載の如く、該モータ軸の軸芯を該水平接合面に配する。
【0019】
前記第二目的を達成すべく、前記ブレーキを有する該第一様態に係る車軸電動ユニットにおいて、請求項4に記載の如く、前記ブレーキ操作用のブレーキアームを該ケース外に延出しており、該ブレーキアームの、ブレーキ操作具に操作連係する接続部は、該ケースを上下反転しても車軸の中心から一定の高さを有している。
【0020】
前記の請求項4に記載の如き構成の車軸電動ユニットにおいて、請求項5に記載の如く、該ケースは、前記ブレーキアームを外側に延出させるための上下一対のアーム突出部を有しており、該両アーム突出部同士は、該水平接合面からの鉛直方向距離が均等であり、該ブレーキアームは、該両アーム突出部のうちから選択した一方より該ケース外に延出され、選択しなかったアーム突出部はシールされる。
【0021】
前記第三目的を達成すべく、本発明の第一態様に係る車軸電動ユニットにおいて、請求項6に記載の如く、該ケース内に、該減速ギア列を介して該モータ軸から該車軸までに及ぶ動力列のいずれかの部分に設けられる手動操作可能なクラッチを設け、手動での該クラッチの切り操作により、該車軸を該電動モータの出力より遮断可能としている。
【0022】
前記第四目的を達成すべく、本発明に係る車両は、請求項7に記載の如く、左右一対の車輪と、該車輪を各別に駆動するための左右一対の車軸電動ユニットとを備え、左右両車軸電動ユニットは互いに同一であって、それぞれ、前記第一様態の車軸電動ユニット、すなわち、ケース、電動モータ、車軸、減速ギア列を備えたものとなっており、該ケースは、該電動モータを収容するとともに、該電動モータにて駆動される該車軸を支持している。該電動モータの出力軸であるモータ軸が、該車軸と同一軸芯上にならないように該ケース内に配設され、該減速ギア列は、該モータ軸と該車軸との間に介装されるように該ケース内に配設されている。
【0023】
前記の請求項7に記載の如き構成の車両において、請求項8に記載の如く、該左右両車軸電動ユニットは、一方が他方を上下反転したものに該当するように配置される。
【0024】
前記の請求項7に記載の如き構成の車両において、請求項9に記載の如く、前記左右両車軸電動ユニットは、これらの両車軸を前記車両の左右方向に延伸する同一軸芯線上に配置し、該両車軸間の該同一軸芯線の中心における該車両の前後方向に延伸する中心線を介して線対称に配置される。
【0025】
あるいは、前記の請求項7に記載の如き構成の車両において、請求項10に記載の如く、該左右両車軸電動ユニットは、これらの両車軸を同一線上に配置し、該両車軸間におけるその同一軸芯線上における車両の左右中心を中心とする点対称に配置される。
【0026】
前記第五目的を達成すべく、前記基本構造を有する車軸電動ユニットにおいて、請求項11に記載の如く、該ケースは、間に接合面を介して第一・第二分割ケース部を接合したものとなっており、該接合面を介して該第一・第二分割ケース部に分割される孔を有し、該孔に電線を挿通する電線挿通材を嵌入して該第一・第二分割ケース部にて挟持している。
【0027】
前記の請求項11に記載の如き構成の車軸電動ユニットにおいて、請求項12に記載の如く、前記孔に嵌入した前記電線挿通材は、前記接合面に沿って見た場合に、該接合面とは直角方向に該接合面より該第一分割ケース部内へと延伸される第一半部と、該接合面とは直角方向に該接合面より該第一分割ケース部内へと延伸される第二半部とを有する形状となっており、該第一・第二各半部は、該接合面沿いの幅を有し、該幅が該接合面より遠ざかるほどに小さくなる。
【0028】
さらに、前記の請求項12に記載の如き構成の車軸電動ユニットにおいて、請求項13に記載の如く、前記孔及び該孔に嵌入した前記電線挿通材は、それぞれ、前記接合面に沿って見た場合に、該接合面上に延伸する対角線を有する菱形状である。
【0029】
前記第六目的を達成すべく、前記基本構造を有する車軸電動ユニットにおいて、請求項14に記載の如く、該電動モータの出力回転部材は、テーパー状の内周面を有する中空の部材であり、該モータ軸は、ケース内にて支持されて該車軸に連動連結されて、該電動モータの出力軸とされており、該モータ軸は、テーパー状の外周面を有している。該出力回転部材と該モータ軸とを軸芯方向に相対移動させて、該出力回転部材の該テーパー状の内周面と該モータ軸の該テーパー状の外周面とを押圧嵌合することにより、該出力回転部材を該モータ軸に固設する。
【0030】
前記第七目的を達成すべく、前記基本構造を有する車軸電動ユニットにおいて、請求項15に記載の如く、そのモータアセンブリは、それぞれの内輪を該モータ軸に係合した一対の第一・第二軸受と、該第一・第二軸受間にて、磁石を有して該モータ軸に固設されるロータと、電機子巻線を有して該ケースに移動不能に係合したステータと、該ステータに取り外し可能に固定される支持フレームとを備えている。該ステータには、第一係止用突起が形成されており、該ステータは、該第一軸受の外輪に係合され、該第一係止用突起を、該モータ軸の軸芯方向において該第二軸受とは反対側の該第一軸受の外輪の側面の外側に配置している。該支持フレームには、第二係止用突起が形成されており、該支持フレームは、該第二軸受の外輪に係合され、該第二係止用突起を、該モータ軸の軸芯方向において該第一軸受とは反対側の該第二軸受の外輪の側面の外側に配置している。該第一・第二係止用突起のうちの一方が、それに対応する該第一または第二軸受の外輪の側面に当接することで、該第一・第二係止用突起のうちの他方が、それに対応する該第一または第二軸受の外輪の外面との間に隙間を有している。該隙間に隙間埋め部材を嵌入して、該当の第一または第二軸受の、該モータ軸の軸芯方向における該当の第一または第二係止用突起に向かっての移動を阻止する。
【0031】
前記の請求項15に記載の如き構成の車軸電動ユニットにおいて、請求項16に記載の如く、前記モータ軸は、径の異なる複数の部分を有することで、一対の段差を有しており、これらを該第一・第二軸受それぞれの軸芯方向内側端面に当接させて、該第一・第二軸受の該モータ軸の軸芯方向における互いに向かっての移動を阻止するものであり、前記ロータはテーパー状の内周面を有しており、前記モータ軸は、該ロータの該テーパー状の内周面に係合するテーパー状の外周面を有し、該ロータにて、前記第一・第二軸受のうち一方に向かって該モータ軸の軸芯方向に押圧されており、該一方の第一または第二軸受が、その対応する第一または第二係止用突起と当接するものである。
【0032】
前記第八目的を達成すべく、前記基本構造を有する車軸電動ユニットにおいて、請求項17に記載の如く、前記ケース内にはモータ室が形成され、該モータ室内に該モータアセンブリを配設して、前記車軸を駆動するものとしている。該モータアセンブリは、該車軸に連動連結されるモータ軸と、磁石を有して該モータ軸に固設されるロータと、電機子巻線を有し、該ケースに移動不能に係止されるステータと、該ステータに固定されて該モータ軸を軸支する支持フレームとを備えている。該ロータ及び該電機子巻線は、該モータ軸の軸芯と直角方向の断面視で、該ステータと、該ステータに固定された該支持フレームとにて囲まれる空間内に配置されている。該支持板に固定した該支持フレームは、開口部を有し、該開口部を介して、該ロータ及び該電機子巻線が該モータ室に曝されている。
【0033】
前記の請求項17に記載の如き構成の車軸電動ユニットにおいて、請求項18に記載の如く、前記ケースは、接合面を介して一対のケース半部同士を接合することで構成され、前記支持フレームを、該両ケース半部のうちの一方に固定することにより、前記ステータを該ケースに移動不能に係止している。
【0034】
前記の請求項17に記載の如き構成の車軸電動ユニットにおいて、請求項19に記載の如く、前記モータ室には油が充填されて、油溜まりとなっており、前記支持フレームの前記開口部を介して前記ロータ及び前記電機子巻線に油を供給可能としている。
【0035】
また、前記の請求項17に記載の如き構成の車軸電動ユニットにおいて、請求項20に記載の如く、前記ケースは、前記モータ室に該当する外面にフィンを有している。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る車軸電動ユニットを請求項1に記載の如く構成することにより、互いに同一の車軸電動ユニットを一対設け、車両等のフレームの左右各部に取り付けられる左右車軸電動ユニットとして、一方が他方を上下反転したものに該当するように配設すると、両車軸電動ユニットは、フレームに取り付けられるそれぞれの取付部が左右それぞれの車軸の軸芯から同一高さとなり、フレームに取り付けるのに便利である。この結果、車軸電動ユニットは規格化され、コストを低減するのである。
【0037】
本発明に係る車軸電動ユニットを請求項2に記載の如く構成することにより、該第一・第二取付部のいずれもが、ケースを上下反転しても一定の高さを有する、該ケースのフレームへの取付部となる。ここで、左右一対の車軸電動ユニットを車両に搭載する場合には、必然的にそれぞれの車軸が同じ高さになるように該左右の車軸電動ユニットを配する。該左右の車軸電動ユニットが、一方が他方の上下反転したものに該当するように配設した一対の車軸電動ユニットである時、一方の車軸電動ユニットの第一取付部と、他方の車軸電動ユニットの第二取付部とが、それぞれの車軸に対して鉛直方向で均等の距離を有し、同じ高さに配置されるので、これらが、左右両車軸電動ユニットの各ケースの、フレームへの取付部となるのである。
【0038】
本発明に係る車軸電動ユニットを請求項3に記載の如く構成することにより、該車軸電動ユニットが、車両に搭載される左右車軸電動ユニットであって一方が他方を上下反転したものに該当するように配されてもののうち、いずれであっても、該水平接合面には該車軸の軸芯も配されているので、該モータ軸の軸芯を一定の高さにすることができる。
【0039】
本発明に係る車軸電動ユニットを請求項4に記載の如く構成することにより、互いに同一の車軸電動ユニットを一対設け、ブレーキ操作具より高さの均等な左右一対のリンク部材が延設されている車両等に搭載された場合に、左右車軸電動ユニットとして、一方が他方を上下反転したものに該当するように配設すると、両車軸電動ユニットそれぞれのブレーキアームの接続部が左右それぞれの車軸の中心から同一高さとなり、該ブレーキ操作具に接続された左右各リンク部材に接続するのに便利である。この結果、車軸電動ユニットは規格化され、コストを低減するのである。
【0040】
本発明に係る車軸電動ユニットを請求項5に記載の如く構成することにより、該左右の車軸電動ユニットが、一方が他方の上下反転したものに該当するように配設した一対の車軸電動ユニットである時、一方の車軸電動ユニットのブレーキアームをその選択した一方のアーム突出部より延出し、他方の車軸電動ユニットのブレーキアームをその選択した一方のアーム突出部より延出することで、一方の車軸電動ユニットのブレーキアームがケース外に延出される高さと、他方の車軸電動ユニットのブレーキアームがケース外に延出される高さとが同じとなる。したがって、ブレーキアーム自体を曲折させる等の複雑な加工をすることなく、両ブレーキアームの接続部を互いに同じ高さに配置することができる。
【0041】
本発明に係る車軸電動ユニットを請求項6に記載の如く構成することにより、該クラッチを有する車軸電動ユニットを備えた車両においては、故障による電動モータの停止時や、電動モータに接続された電線の不具合や、電動モータ用バッテリの消耗時において、手動操作でクラッチを切ることで、車両を手押しや牽引するのに便利なように、該車軸に駆動連結した駆動輪を、停止状態の電動モータのモータ軸より自由回転可能とすることができるのである。
【0042】
本発明に係る車両を請求項7に記載の如く構成することにより、互いに同一、すなわち、共通構造を有する車軸電動ユニットを一対、左右の車軸電動ユニットとして車両に設けることで、車軸電動ユニットの規格化による車両の低コスト化が実現する。
【0043】
請求項7に記載の如き構成の車両においては、請求項8、請求項9、あるいは請求項10に記載の如く、車両の設計に応じて様々な配置の中から選択して左右車軸電動ユニットを配置することが可能である。
【0044】
本発明に係る車軸電動ユニットを請求項11に記載の如く構成することにより、該第一・第二分割ケース部同士の接合前に、電線を挿通した電線挿通材の一部を、該第一・第二分割ケース部のうちの一方の、該孔の分割部に嵌入し、この状態で、該第一・第二分割ケース部のうちの他方を該一方に接合することで、自然に該孔のもう一方の分割部に該電線挿通材の残りの部分が嵌入されて、該第一・第二分割ケース部で挟持されることで、ケース外よりケース内に進入する電線に対して確実にケース内をシールされる。
【0045】
本発明に係る車軸電動ユニットを請求項12、さらには請求項13に記載の如く構成することにより、該第一・第二分割ケース部にて挟持された該電線挿通材の変形が抑えられ、したがって、耐久性の点で有利であり、また、挿通する電線のずれも少なくなる。
【0046】
本発明に係る車軸電動ユニットを請求項14に記載の如く構成することにより、該出力回転部材と該モータ軸とががたつきなく組み合わせらて締結され、両者間のずれにより生じる振動や騒音を防止するのである。
【0047】
本発明に係る車軸電動ユニットを請求項15に記載の如く構成することにより、該隙間埋め部材により、該隙間を介しての該モータアセンブリ外部への騒音の漏れが防止される。
【0048】
本発明に係る車軸電動ユニットを請求項16に記載の如く構成することにより、該モータ軸及び該モータ軸を軸支する第一・第二軸受がモータ軸の軸芯方向のずれなく該モータアセンブリに組み付けられる。
【0049】
本発明に係る車軸電動ユニットを請求項17に記載の如く構成することにより、ロータ及び電機子巻線は、モータ室内の空気または油により有効に冷却される。
【0050】
本発明に係る車軸電動ユニットを請求項18に記載の如く構成することにより、該ステータを簡素化することができる。
【0051】
本発明に係る車軸電動ユニットを請求項19に記載の如く構成することにより、ロータ及び電機子巻線を有効に冷却できる。
【0052】
本発明に係る車軸電動ユニットを請求項20に記載の如く構成することにより、モータ室内のモータアセンブリを有効に冷却できる。
【0053】
以上の、また、それ以外の目的、特徴、効果については、添付の図面を参照しての以下の説明により一層明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る一対の同一の車軸電動ユニットAを左・右車軸電動ユニットAL・ARとして、各後輪12(左右後輪12L・12Rの総称)駆動用に備えた車両の実施例である乗用芝刈機100の側面略図である。
【図2】前記芝刈機100の平面略図である。
【図3】前記芝刈機100の車体フレーム10に対して取り付け中の左右車軸電動ユニットAL・ARの斜視部である。
【図4】リアディスチャージ式モアを備える場合の芝刈機100における左右車軸電動ユニットAL・ARの支持構造を示す、該芝刈機100の部分正面断面略図である。
【図5】一対の同一の車軸電動ユニットAを左・右車軸電動ユニットAL・ARとして、両ユニットAL・AR間における機体左右中央上の点を中心に点対称に配置した状態の芝刈機100の平面図である。
【図6】前記車軸電動ユニットAの、ケース1よりケース半部1Bを除いた状態における、ケース半部1Aおよびその内外の構造を示す平面断面図である。
【図7】車軸4の駆動用の電動モータとしてのモータアセンブリ2内におけるモータ軸3周りを示す、図6の主要部分拡大図である。
【図8】前記車軸電動ユニットAの、ケース1におけるモータ室MC内のモータアセンブリ2およびモータ軸3を、ギア室GC側から見た場合の後面断面図である。
【図9】図1〜図3に示すように左右車軸電動ユニットAL・ARを芝刈機100に搭載したことを前提としての、右車軸電動ユニットARの右側面一部断面図である。
【図10】図1〜図3に示すように左右車軸電動ユニットAL・ARを芝刈機100に搭載したことを前提としての、左車軸電動ユニットALの左側面一部断面図である。
【図11】ケース半部1A・1B間に挟持されるハーネス配線用のゴムプラグ44を示す車軸電動ユニットAの部分断面図である。
【図12】モータ軸支持フレーム37をケース半部1Aに締止することでモータアセンブリ2をモータ室MC内に組み入れる構造とした場合の、車軸電動ユニットAの、ケース1よりケース半部1Bを除いた状態における、ケース半部1Aおよびその内外の構造を示す部分平面断面図である。
【図13】図12に示す構造を有する車軸電動ユニットAの、ケース1におけるモータ室MC内のモータアセンブリ2およびモータ軸3を、ギア室GC側から見た場合の後面断面図である。
【図14】冷却ファン25をケース1に収納する構造とした場合の、車軸電動ユニットAの、ケース1よりケース半部1Bを除いた状態における、ケース半部1Aおよびその内外の構造を示す部分平面断面図である。
【図15】ドライバ84をケース1に収納する構造とした場合の、車軸電動ユニットAの、ケース1よりケース半部1Bを除いた状態における、ケース半部1Aおよびその内外の構造を示す部分平面断面図である。
【図16】モータアセンブリ2を、ケース半部1A・1Bを接合してケース1を構成した後に該ケース1に組み入れる構造とした場合の車軸電動ユニットAの、ケース1よりケース半部1Bを除いた状態における、ケース半部1Aおよびその内外の構造を示す部分平面断面図である。
【図17】一対の車軸104および両車軸104同士を差動連結する差動機構Dを備える構造とした車軸電動ユニットAの、ケース1よりケース半部1Bを除いた状態における、ケース半部1Aおよびその内外の構造を示す部分平面断面図である。
【図18】車軸電動ユニットAにおけるケース1のモータ収納部1mの上・下端に配置される、ケース半部1A・1Bそれぞれに形成されるブリーザポート1pに、乾式としたモータアセンブリ2に対応するチェックボール46を収納した構造とした場合の、ケース半部1A・1Bの部分断面図である。
【図19】ギア室GC内に変速ギア機構を組み入れた場合の、車軸電動ユニットAの、ケース1よりケース半部1Bを除いた状態における、ケース半部1Aおよびその内外の構造を示す部分平面断面図である。
【図20】芝刈機100の車体フレーム10にて支持された一対の代替の車軸電動ユニットB(左右の車軸電動ユニットBL・BR)の平面図である。
【図21】芝刈機100の車体フレーム10に支持された左右の車軸電動ユニットBL・BRのうちの一つ(代表して右車軸電動ユニットBR)の正面断面図である。
【図22】車軸電動ユニットBの、ケース200よりケース半部200Bを除いた状態における、ケース半部200Aおよびその内外の構造を示す平面断面図である。
【図23】図22におけるV−V線断面図である。
【図24】図22におけるW−W線断面図である。
【図25】図23におけるX矢視断面図である。
【図26】車軸電動ユニットBに適応可能な仕切板201の斜視図である。
【図27】一対の車軸204および両車軸204同士を差動連結する差動機構Dを備える構造とした車軸電動ユニットBの、ケース200よりケース半部200Bを除いた状態における、ケース半部200Aおよびその内外の構造を示す部分平面断面図である。
【図28】鉛直面で左右及び中央のケース部に分割可能なケース300を有する代替の車軸電動ユニットCの平面断面図である。
【図29】車軸電動ユニットCにおける、位置決めピンを介してモータ軸支持部材を中央ケース部に係止した部分の平面断面図である。
【図30】図28におけるY−Y線断面図である。
【図31】図30におけるZ−Z線断面図である。
【図32】モアユニットMUの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明に係る車軸電動ユニットは、以後に説明するミッドマウントモアタイプの乗用芝刈機の他、フロントマウントモアタイプの乗用芝刈機、車椅子、スキッド・ステア・ローダ等の各種産業用車両に適用可能である。
【0056】
図1〜図4における、本発明の一実施例に係る車軸電動ユニットA(左右車軸電動ユニットAL・ARの総称)を備えた車両の実施例としての乗用芝刈機100の構成について説明する。なお、以下の説明は、芝刈機100の前進方向を前方とし、これを基準として、前後左右上下の位置および方向を示すものとする。また、図4は、芝刈機100が、図1、図2に示すモアのモアユニットMUとは別の刈芝送出方式のモアユニットを備え、図3と異なる車軸電動ユニットAの支持構造を有していることを前提としているが、図1〜図3に示す芝刈機100における左右車軸電動ユニットAL・ARの正面図として活用する。
【0057】
該芝刈機100は、車体フレーム(シャシ)10を有している。車体フレーム10後部の左右外側には、後輪としての左右各駆動輪12(左駆動輪12Lおよび右駆動輪12Rの総称)を配置し、各駆動輪12の駆動用に、左右一対の車軸電動ユニットAを該車体フレーム10後部の下方に備えている。なお、芝刈機100がフロントマウントモアタイプの場合は、通例の如く、後輪はキャスタまたはアッカーマン=ジャント式の強制操舵輪に構成され、前輪を駆動するべく、左右一対の車軸電動ユニットAが該車体フレーム10前部の下方に備えられる。
【0058】
各車軸電動ユニットAは、駆動輪12の中心軸となる車軸4を軸支するケース1を備えており、ケース1には、車軸4の駆動用電動モータとしてのモータアセンブリ2や、該モータアセンブリ2を該車軸4に駆動連結する減速ギア列G等が内装されている。該車軸4の左右外端上には、駆動輪12のハブ5を固設している。これに関し、図6に示すように、ハブ5の内周部と車軸4の外端との間にキー5aを介在させ、ナット5bにて該ハブ5を車軸4に締止することで、ハブ5を車軸4に固着している。
【0059】
各車軸電動ユニットAL・ARは、芝刈機100の車体フレーム10の左右各側板部10aの下方に配置され、それぞれのケース1が該車体フレーム10に、後述の様態にて支持固定され、該ケース1の左右外端より突出する車軸4の外端に固設されるハブ5が、駆動輪12のリム12aに装着されている。
【0060】
該車体フレーム10上には、運転席13、プラットフォーム14、ダッシュボード11a、ボンネット11が支持されている。該ダッシュボード11aの足元部にはアクセルペダル15が設けられ、該ダッシュボード11a上部より丸形ハンドル16が延設されている。以下の説明は、芝刈機100は操舵具として丸形ハンドル16を備えているものとの前提に基づくが、該丸形ハンドル16に代えて、図1で仮想線にて示すように、走行速度の変速と操舵を兼用する左右一対の操縦レバー160を設けてもよい。該一対の操縦レバー160は、オペレータによるその回動操作量および方向を電気信号に変換する機器を備える。あるいは、ジョイスティックや、コンピュータの入力機器としてのマウスであってもよい。
【0061】
アクセルペダル15は、通常の乗用車のアクセルペダルの操作と同様に、運転席13に座る運転者にて踏み込み操作されて、その踏み込み量に応じて、左右両車軸電動ユニットAL・ARのモータアセンブリ2の出力回転数を増減して、左右駆動輪12L・12Rの同時均等の増減速を制御し、芝刈機100の走行速度を制御する。丸形ハンドル16は、通常の乗用車の丸形ハンドルの操作と同様に、運転席13に座る運転手にて回動操作されて、その回動方向および回動量に基づき、左右両車軸電動ユニットAL・ARのモータアセンブリ2の出力回転数に差を生じさせ、左右駆動輪12L・12Rを差動させることにより、芝刈機100を左折または右折する。
【0062】
その他、芝刈機100には、運転席13に座る運転手にて操作される操作具として、後述のブレーキアーム60に接続される図示せぬブレーキ操作具(ペダル、レバー等)、図示せぬ前後進切替操作具(レバー、スイッチ等)が設けられている。なお、前後進切替操作は、例えばアクセルペダル15をシーソー式とし、その前端部を踏み込めば前進、後端部を踏み込めば後進と設定するようにしてもよい。あるいは、前進用と後進用の別々のアクセルペダルを設けてもよい。
【0063】
車体フレーム10の前端部の左右各端にて、前輪17が支持されている。該車体フレーム10前端部の左右各端にはボス部10bが形成されていて、各ボス部10bに前輪17の水平方向回動のための鉛直枢支軸17aが該車体フレーム10に対して相対回転自在に挿通されており、その上端が該ボス部10bより上方に突出して、機械式または電気式の前輪操舵機構を収納する前輪操舵ボックス18内に入軸されている。該前輪操舵機構は、丸形ハンドル16の回動量および回動方向に基づき、左右両枢支軸17aを回動制御して、左右前輪17の左右方向の向きを制御する。なお、前輪17はキャスタであってもよい。
【0064】
図1、図2に示すように、芝刈機100は、左右両車軸電動ユニットAの前方において、モアユニットMUを備えている。ここで、図1、図2、図32をもとに、モアデッキ19、ブレード20、モータアセンブリ21を有するモアユニットMUについて説明する。車体フレーム10は、その下方にて、3連のブレード20を内装するモアデッキ19を、図32に示す吊下リンク19aを介して上下移動自在に支持している。該モアデッキ19内にて、各ブレード20の駆動制御用の電動モータであるモータアセンブリ21が、各ブレード20が中心軸芯部に有する鉛直駆動軸20aに、各別に設けられている。これらブレード20の駆動の入り切りのため、芝刈機100に、図示せぬモア駆動入/切設定操作具(スイッチ、レバー等)が設けられている。
【0065】
図32に示すように、モータアセンブリ21は、駆動軸20aに一体回転自在に固設されるロータ212と、駆動軸20aに軸受214を介して相対回転自在に設けられるステータ215とを備えている。ロータ212は、上方開口状のカップ形で、その底端中心部を駆動軸20aに固設しており、該底端より鉛直上方に延伸し、その内周面に永久磁石213を固設している。ステータ215は、軸受214を介して駆動軸20a周りに設けた鉛直軸芯部の外周面に電機子巻線216を固設し、永久磁石213に対峙させている。このように、モータアセンブリ21は、鉛直の軸芯方向の長さよりも水平の径方向の幅が長い偏平状となっていて、モアデッキ19内に配置されることで、モアデッキ19の上端部を、モータアセンブリ21の上端を突出させることなく、水平の平坦板状とすることができ、これにより、芝刈機100の本体と干渉することなくモアユニットMUの最上昇位置を高く確保することができる。
【0066】
ステータ215の上端部は、水平円板状に拡張され、該上端部を、防振ゴム217及びボルト・ナット218を介して、ロータ支持フレーム219とともに、モアデッキ19の上端水平板部に防振据えつけしている。モアデッキ19の該水平円板状上端部には、ステータ212の上端面に臨む開口19bが設けられており、該ステータ215の上端面に固設した集線ボックス221が該開口19b内に配設されており、該集線ボックス221より、後述のハーネス87が上方に延設されている。該開口19b、集線ボックス221及びハーネス87を覆うように蛇腹222が該モアデッキ19の上端水平板部より上方延設されている。
【0067】
ロータ支持フレーム219は、ロータ212の外面に沿って、防振ゴム217及びボルト・ナット218にてモアデッキ19に締止された上端部より下方に延出され、その底端が、軸受220を介して、ロータ212の底端部を軸支している。上方開口状カップ形のプロテクタ211の底端中心部が、ロータ212の底端中心部とブレード20の中心部との間にて駆動軸20aに固設されている。こうして、ステータ215及びロータ支持部材219がモアデッキ19に移動不能に係止されている一方で、ロータ212、プロテクタ211、ブレード20及び駆動軸20aが一体的に、該ステータ215及び該ロータ支持部材219に対して相対回転自在となっている。
【0068】
モアデッキ19の鉛直板状部には、外気を取り入れるための空気窓19cが設けられている。プロテクタ211の鉛直円周板状部には、吸気口211aが開口され、各吸気口211aよりファン羽根211bを突設している。さらに、プロテクタ211の水平底板部には、排気口211cが開口されている。こうして、プロテクタ211は、ブレード20とともに回転して、空気窓19aを介してモアデッキ19内に取り込まれた空気を、吸気口211aを介してプロテクタ211内部に導入し、モータアセンブリ21に吹きつけ、排気口211bより外部に排出するものとしている。図32では、この風の流れを矢印で示している。このように、プロテクタ211は、ブレード20の刈る草よりモータアセンブリ21を保護する本来の役割以外に、モータアセンブリ21を冷却する冷却ファンともなっている。
【0069】
なお、本願で図示するモアユニットMUは、3連ブレード20の各駆動軸20aにそれぞれにモータアセンブリ21を設けているが、3連ブレード20のうちの一つを駆動ブレードとしてこれの駆動軸20aにモータアセンブリ21を設けて、他の二つのブレード20の各駆動軸20aを駆動ブレード20の駆動軸20aにベルト等で連動連結するものとしてもよい。
【0070】
図1、図2に示す芝刈機100のモアユニットMUは、ブレード20で刈った草をモアデッキ19の一側方に送出するサイド・ディスチャージ型モアユニットである。芝刈機100が、車体後部に配置される集草ボックスを有するリアディスチャージ型モアユニットを備える場合には、モアデッキ19より該集草ボックスへと後方に延設されるダクト190が、図4に示すように、左右両車軸電動ユニットAL・AR間のスペースを通過する。
【0071】
両車軸電動ユニットAL・ARの電動モータアセンブリ2および回転刃20駆動用の電動モータアセンブリ21の電源として、二次電池や燃料電池などの電源22が車体フレーム10上方における車体カバー11内に設けられている。電源22は、該車体フレーム10の後部に支持した車軸電動ユニットAと重量バランスを確保するように、図1で実線にて示す如く、車体フレーム10の前部上方に設けるのが好ましいが、図1で仮想線にて示すように、該車軸電動ユニットA上方の、該車体フレーム10の後部上方に設けてもよい。
【0072】
図2に示すモータアセンブリ2・21の電気制御系統について説明する。芝刈機100の適宜位置にて、コントローラ80が配設されており、該コントローラ80への操作信号の入力手段として、走行速度設定器81、旋回設定器82、モア駆動入/切設定器83が、コントローラ80の入力インタフェイスに電気接続されている。
【0073】
走行速度設定器81は、前述のアクセルペダル15の踏込量に対応した電気信号を発生させ、該電気信号をコントローラ80に送信する。図外の進行方向設定器は、前述の図示せぬ前後進切替操作具からの信号を受けることにより、前記アクセルペダル15の踏込量に対応した電気信号を正または負に切り替える。旋回設定器82は、丸形ハンドル16(あるいは左右両操縦レバー160)の回動方向および回動量に対応する電気信号を発生させ、該電気信号をコントローラ80に送信する。モア駆動入/切設定器83は、前述の図示せぬモア駆動入/切設定操作具の操作に基づくモア(すなわち回転刃20)の駆動・非駆動の選択に対応した電気信号を発生させ、該電気信号をコントローラ80に送信する。
【0074】
コントローラ80の出力インタフェイスには、左右両車軸電動ユニットAL・ARのモータアセンブリ2を各別に制御する制御手段としての一対のドライバ84が電気接続され、また、全ブレード20のモータアセンブリ21を一律に制御する制御手段としてのドライバ86が電気接続されている。各ドライバ84からはハーネス85が延設されて、各車軸電動ユニットAのモータアセンブリ2に接続されており、ドライバ86からは、ハーネス87を分岐延設して各モータアセンブリ21に接続している。
【0075】
ここで、ドライバとは、インバータおよび送受信手段を備えるユニットであって、コントローラ80は、前述の設定器81・82・83からの電気信号に応じて、各ドライバ84・86のインバータを制御し、各ドライバ84・86は、該インバータの制御に応じ、それぞれのモータアセンブリ2または21に接続されたハーネス85または87を介して、該モータアセンブリ2または21のコイルに電流を流す。
【0076】
なお、図2において、両車軸電動ユニットA用のドライバ84を各車軸電動ユニットAの外側に配置し、各ドライバ84と各ケース1との間にハーネス85を介設しているが、後述の別実施例(図15)のように、ケース1内にドライバ84を配設してもよい。
【0077】
コントローラ80は、モータアセンブリ21に付設したセンサ(図示せず)を用いて、ブレード20の回転動力に対する抵抗力やモータアセンブリ21の温度を検出することで、ブレード20に対する刈り草の抵抗、すなわち刈り取り負荷を監視する。コントローラ80は、刈り取り負荷が過剰であると認識すると、芝刈機100の走行速度を低下させるようモータアセンブリ2等を自動制御し、モータアセンブリ21への負担を軽減しつつ十分な刈り取り効果が得られるようにする。
【0078】
また、コントローラ80は、モータアセンブリ21を自動制御して、前記モア駆動入/切設定操作具の手動操作によるモアユニットMUの駆動切り操作に基づく電気信号、さらに、モアユニットMUの上昇時や芝刈機100の後退時等、作業中のモアユニットMUがブレード20の制動を必要とする時に自動的に発信される電気信号を受けてから任意時間、駆動軸20aを電気的に制動する。モータアセンブリ21の制動により生じたエネルギーは、モータアセンブリ2・21駆動用の電気エネルギーとして回生される。
【0079】
左右車軸電動ユニットAL・ARは、標準化された(共通の構造を有する)一対の車軸電動ユニットAを芝刈機100の左右各後輪12L・12R駆動用に配置したものである。これを可能とするための、車軸電動ユニットAのケース1の構成と、車体フレーム10への取付構造について、図1〜図3および適宜それ以外の図を用いて説明する。
【0080】
図1等に示すように、ケース1は、(第一・第二分割ケース部としての)上下一対のケース半部1A・1Bを有し、車体フレーム10に搭載したときにそれぞれの開口面を水平に配置し、両ケース半部1A・1Bの該開口面の周縁部同士を、図6、図9、図10に示す如きボルト29にて接合締結して構成されている。
【0081】
接合したケース半部1A・1B間の該水平面は接合面Jであり、電動モータアセンブリ2の出力軸であるモータ軸3の軸心および車軸4の軸心が該接合面J上にて互いに平行に(同一軸芯上にない状態で)配置されていて、該モータ軸3および該車軸4が、ケース1に対して相対回転自在に、両ケース半部1A・1B間に挟持されている。なお、モータ軸3の一端部をケース1より突出させて、該端部に冷却ファン25を固設している。図1、図2に示す実施例ではモータ軸3をケース1より左右内側に(すなわち、他方の車軸電動ユニットAに向かって)突出させ、この突出端部に冷却ファン25を固設しているが、後述の如く、モータ軸3の反対側の端部をケース1より突出させてここに冷却ファン25を固設させてもよいし、或いは、ケース1に内設してもよい。
【0082】
該芝刈機100において、各車軸電動ユニットAは、それぞれの車軸4が各ケース1より左右方向外側に延出され、該モータ軸3が該車軸4の前方にて左右方向に延伸されるように、配置されている。この配置を前提として、各車軸電動ユニットAの両ケース半部1A・1Bの外観形状は、シェル形状のモータ収納部1mを前端部に有し、該モータ収納部1mの左右外端よりギア収納部1rを後方に延伸し、車軸4を左右水平に支持する車軸収納部1sを該ギア収納部1rより左右外側に延伸したものとなっている。
【0083】
この実施例において、ケース半部1Aとケース半部1Bとの違いは、図8、図9に示すように、モータ軸3と車軸4との間の減速ギア列Gにおけるカウンタ軸66を収納し、かつ、ブレーキ軸61を支持するボス部1Aaからブレーキ軸61の一端部を外方へ延伸させてあるものがケース半部1A、カウンタ軸66を収納せず、ボス部1Baからブレーキ軸61の端部が外方へ延伸しないものがケース半部1Bとなっている。なお、カウンタ軸66は接合面J上にあるように支持してもよい。また、ブレーキ軸61は、両端がそれぞれボス部1Aa、1Baから外方へ延伸してあってもよい。
【0084】
各車軸電動ユニットAは、左の駆動輪12Lの駆動用にも、右の駆動輪12Rの駆動用にも用いられるものとなっており、こうして、車軸電動ユニットAを標準化して、低コスト化を図っている。図1〜図3に示す芝刈機100に適用する場合においては、左車軸電動ユニットALは、そのケース1におけるケース半部1Aを上に、ケース半部1Bを下に配置したものとなっており、右車軸電動ユニットARは、そのケース1におけるケース半部1Bを上、ケース半部1Aを下に配置したものとなっている。つまり、左右車軸電動ユニットAR・ALのうち一方を天地反転して、左右他方の車軸電動ユニットARまたはALとして使えるようにしている。
【0085】
図1〜3に示すように、車体フレーム10には、左右両車軸電動ユニットAL・ARを吊設支持するための前後のサブフレーム31・32が設けられている。サブフレーム31は車体フレーム10に溶接等にて固着されている。サブフレーム32は、後述の如く、車体フレーム10に分離自在に装着でき、事前に左右両車軸電動ユニットAL・ARを一体化したサブ・アセンブリとした状態で、車体フレーム10に着脱自在に取り付ける。
【0086】
前側のサブフレーム31は、両側板部10a間にて左右方向水平延伸状に架設されるクロス・バー31aと、該クロス・バー31aより鉛直下方に延伸される左右一対のステー31bと、ステー31bの下端を左右外側に曲折して形成される水平状の、ボルト孔を有するタブ31cとを一体に形成具備している。左右ステー31bの上下長は互いに等しく、したがって、左右両タブ31cは互いに同じ高さに配置されている。また、好ましくは、左右両タブ31cの前後方向位置を互いに同じとし、また、これらの左右方向の配置において、該クロス・バー31aの左右各外端からのそれぞれの左右方向距離が等しいものとしている。すなわち、該サブフレーム31において、左右一対のステー31bおよび左右一対のタブ31cが左右対称に形成されている。
【0087】
後側のサブフレーム32は、水平板部32aと、左右一対の鉛直板部32dとを一体に形成具備している。水平板部32aは、左右各側板部10aにまたがる長さとし、車体フレーム10の左右各側板部10aの直下に配置されている。該水平板部32aの該左右各部の上端面からは、ボルト孔を有する前後一対のタブ32bを上方に突設しており、該タブ32bを車体フレーム10の該側板部10aにボルト締止することで、該サブフレーム32を車体フレーム10に固設する。
【0088】
左右の各鉛直板部32cは、前後方向に延伸する鉛直側板部32dと左右方向に延伸する鉛直後板部32eとを有するように平面視L字に曲折した板材である。該鉛直側板部32dは、水平板部32aの左右各外端より鉛直下方に延伸している。該鉛直後板部32eは、水平板部32aの左右各部の後端より鉛直下方に延伸している。左右各鉛直板部32cの下端はL字に曲折して、該鉛直側板部32dより左右外側に延伸する前後一対のタブ32gを、該鉛直後板部32eより後方に延伸する左右一対のタブ32fを形成している。各タブ32f・32gにはボルト孔が設けられている。水平板部32aを水平に配した状態において、全てのタブ32f・32gが同じ高さに配置される。また、平面視でみて、サブフレーム32の左部のタブ32f・32gと右部のタブ32f・32gとが、互いに左右対称状に配置されている。
【0089】
図3その他に示すように、各車軸電動ユニットAにおけるケース1の、モータ収納部1mの左右内側前端部には、各タブ31cにその上端面を当接させるボス1cを左右内側水平延出状に形成し、ギア収納部1rと車軸収納部1sの後端部には、それぞれボス1eを後方水平延出状に形成している。また、各ケース1の、前記車軸収納部1sにて、車軸4が突出する左右外端部分の前後に、ボス1fが形成されている。
【0090】
左右の車軸電動ユニットAL・ARは、それぞれのケース1に形成されるボス1e・1fの上向き水平面をマウント座面(ケース1の車体フレーム10への取付用取付部)として、サブフレーム32のタブ32f・32gに各ボルト・ナット30を介して締止することで、サブフレーム32に吊設固定される。こうして、左右車軸電動ユニットAL・ARとともにサブ・アセンブリとする。このサブ・アセンブリを車体フレーム10に搭載するには、サブフレーム32のタブ32bを車体フレーム10の左右側板部10aにボルト締止する。さらに、左右各車軸電動ユニットAL・ARのボス1cの上向き水平面をマウント座面として、サブフレーム31のタブ31cに、ボルト・ナット30を介して締止する。
【0091】
こうして車体フレーム10に搭載した左右各車軸電動ユニットAL・ARは、モータ収納部1mが各側板部10aの左右内側に、車軸収納部1sが各側板部10aの左右外側に突出した状態となって、それぞれの車軸4同士を芝刈機100の左右方向に延伸される水平の同一軸芯線上に配置しており、平面視にて、芝刈機100の左右方向中心における芝刈機100の前後方向中心線を介して線対称に配置されている。
【0092】
なお、リア・ディスチャージタイプのモアデッキ19から後方に延伸するダクト190が、図4に示すように左右車軸電動ユニットAL・AR間のケース1を横切る場合は、ダクト190の左右各側面にサブフレーム131を固定させ、該サブフレーム131に各車軸電動ユニットAL・ARのボス1cをボルト・ナット30を介して締止してもよい。
【0093】
また、芝刈機100の設計に応じて、車軸電動ユニットAを、車軸4がモータアセンブリ2およびモータ軸3の前方に位置する状態で車体フレーム10に支持することも考えられる。例えば、図5に示すように、一対の同一の車軸電動ユニットAである左右車軸電動ユニットAL・ARを、互いに天地反転せずに前後反転した配置関係として(この実施例では、いずれのケース1も、ケース半部1Aをケース半部1Bの上方に配置した状態としている)、平面視で、両ユニットAL・AR間における機体の左右中心点を中心に点対称に配置して車両フレーム10に支持する。該機体の左右中心点は、同一軸芯に配した左右車軸4間の同一軸芯線上に配置されている。本実施例では、左車軸電動ユニットALは車軸4をモータアセンブリ2の後方に、右車軸電動ユニットARは車軸4をモータアセンブリ2の前方に配置した状態となっている。
【0094】
このような点対称状の左右両車軸電動ユニットAL・ARに配置に対応して、両ユニットAL・ARとともに車体フレーム10に取り付けられるサブ・アセンブリを構成する、前記サブフレーム32に該当するサブフレーム132の左部・右部に形成されるボス1e・1fへの取り付け用タブも、平面視で、機体の左右中央上の点を中心に点対称状に設けられている。また、サブフレーム132の前方に配置される左車軸電動ユニットALのボス1cには、サブフレーム132前方にて車体フレーム10に固設されているステーを、サブフレーム132の後方に配置される右車軸電動ユニットARのボス1cには、サブフレーム132後方にて車体フレーム10に固設されているステーを、それぞれ取り付ける。
【0095】
図6〜図10に示す各車軸電動ユニットAのケース1の構成について説明する。各ボス1c・1e・1fは、各ケース1のケース半部1A・1Bそれぞれより延設されるボス半部同士を合わせて構成されている。これについて、図9・図10に示すボス1eを代表例として説明する。ボス1eは、ケース半部1Aの後端より後方に延出されるボス半部1Aeと、ケース半部1Bの後端より後方に延出されるボス半部1Beとを合わせて構成される。図9に示すように、右車軸電動ユニットARでは、ボス半部1Aeの下面(第一分割ケース部の第一取付部)がボス1eの下端面になり、ボス半部1Beの上面(第二分割ケース部の第二取付部)が、マウント座面(ケース1の取付部)となる。図10に示すように、左車軸電動ユニットALでは、ボス半部1Beの下面(第二分割ケース部の第二取付部)がボス1eの下端面になり、ボス半部1Aeの上面(第一ケース半部の第一取付部)が、マウント座面(ケース1の取付部)となる。
【0096】
ここで、ボス半部1Aeの該マウント座面の、車軸4の軸心からの鉛直方向距離は、ボス半部1Beの該マウント座面の、車軸4の軸心からの鉛直方向距離と等しくする。したがって、左車軸電動ユニットALにおける、そのボス1eの上面(すなわち、ボス半部1Beのマウント座面)の高さは、右車軸電動ユニットARにおける、そのボス1eの上面(すなわち、ボス半部1Aeのマウント座面)の高さと同じである。なお、この実施例の場合では、車軸4の軸心上に接合面Jを配置させてあるので、ボス半部1Beとボス半部1Aeの上下方向での厚みは同じになる。言い換えれば、左右車軸電動ユニットAL・ARそれぞれのマウント座面をそれぞれの車軸4から同じ高さにし、上述の如く芝刈機100において線対称に配置することにより、左右駆動輪12L・12Rの中心軸である車軸4を水平の同一軸芯上に、すなわち芝刈機100における同じ高さに、配置できる。
【0097】
以上のようなケース半部1A・1Bを接合してなるケース1の構成により、車軸電動ユニットAは、同じものを一対用意して、一方が他方を天地反転した状態に配置して、左右車軸電動ユニットAL・ARとして、芝刈機100の車体フレーム10に搭載できる。
【0098】
さらに、各車軸電動ユニットAにおいて、前述の如く、ブレーキ軸61はケース半部1Aのボス部1Aaにて回動・摺動自在に鉛直方向に支持しているが、このブレーキアームを延出するアーム突出部としてのボス部1Aaは、左車軸電動ユニットAでは接合面Jより下方、右車軸電動ユニットAでは接合面Jより上方に配置されることとなる。しかし、ブレーキ軸61の外端に装着するブレーキアーム60は、図1、図9、図10に示すように、クランク状に曲折されていて、駐車ブレーキ等の、芝刈機100の制動操作具に連結される、ワイヤやロッド等のリンク部材への接続端(前端)である操作端60aを車軸4の軸心、すなわち、接合面Jの高さに配している。したがって、左車軸電動ユニットALのブレーキアーム60の操作端60aに接続される左リンク部材も、右車軸電動ユニットARのブレーキアーム60の操作端60aに接続される右リンク部材も、同じ高さに配置することができ、芝刈機100の製造合理化に貢献する。
【0099】
なお、ブレーキアーム60には、前記の、ワイヤやロッド等の、機械的なリンク部材に代わって、車体フレーム10等に枢支した左右一対の電動アクチュエータそれぞれの可動部を接続してもよい。この場合は、例えばバネで、ブレーキアーム60を、図6では図示しない制動位置に常時付勢しておく。芝刈機100の制動操作具は、電動アクチュエータを電気制御するためのものである。モータ軸3を回転しない時、あるいは、制動操作具を制動操作している時、該バネにより、両車軸電動ユニットAL・ARのブレーキアーム60は、該制動位置に保持されて、モータ軸3にブレーキをかける。モータ軸3が回転する時、あるいは該制動操作具を制動解除操作している時、左右両電動アクチュエータは指令信号を受けて同時に作動し、バネに抗して、それぞれのブレーキアーム60を、図6に図示する制動解除位置に回動する。これにより、例えば芝刈機100が坂道で停車した時に、自動的に左右車軸4・4が制動され、芝刈機100のフリーホイル、すなわち、駆動輪12L・12Rの予期せぬ回転を防止することができる。
【0100】
また、図3等に示すように、左右車軸電動ユニットAL・ARの各ケース半部1A・1Bのモータ収納部1mの最頂部とこれに対向する最低部にはそれぞれ同形状のポート1p(図8等参照)を開口させ、最頂部の天を向くポート1pをブリーザポート、最低部の地を向くポート1pをドレンポートとして用いる。ブリーザポートとしてのポート1p(図8等参照)に、管継手27が係合されて、上方に突設されており、図1に示すように、該管継手27より、ラビリンス箱24に接続したブリーザチューブ23が延設されている。ラビリンス箱24は、車体フレーム10内で、泥水などの異物が降り掛からない場所に装着されるが、各車軸電動ユニットAL・ARごとに設けてもよい。また、図4に示すように、ラビリンス箱24を左右両車軸電動ユニットAL・ARに共通して一個設けてもよい。図4に示す実施例においては、該ラビリンス箱24を車体の一部に固設し、これを二股の管継手24aに接続しており、該管継手24aの左右各接続端に、左右各車軸電動ユニットAL・ARより延設されるブリーザチューブ23を接続する。
【0101】
ドレンポートは通常、着脱自在な後述の蓋26で閉じられ、モータ収納部1m下部に、後述する油が溜められるようになっている。油を交換する際に該蓋26が外される。モータ収納部1m内に溜めた油が電動モータアセンブリ2の熱により体積増加/減少するときは、モータ収納部1m上部のエア溜まりの容積がブリーザチューブ23を介して減少/増加する。前記ラビリンス箱24は、ケース外へ放出されるエアに含まれた油分を吸収する。このブリーザチューブ23やラビリンス箱24を設けない代わりに、エア溜まりの容積変化を許容するアキュムレータをブリーザポートに付設してもよい。
【0102】
次に、図6〜図19より、車軸電動ユニットA内部の具体的構造について説明する。ケース半部1A・1Bを接合してなるケース1内は、隔壁1wを介して、モータ収納部1m内に形成されるモータ室MCと、ギア収納部1rおよび車軸収納部1s内に一繋がり状に形成されるギア室GCとに区画されており、モータ室MC内には、モータアセンブリ2および該モータアセンブリ2の中心軸たるモータ軸3が収納され、ギア室GC内には、モータ軸3の出力端部、車軸4、および該モータ軸3と車軸4との間に介設される減速ギア列Gが収納されている。
【0103】
ギア室GC内には、例えば該ギア室GCの容積の約4分の1を占めるように、ギア潤滑用の油が溜められている。なお、図9、図10に示すFLは、ギア室GC内の油溜まりの油面レベルを示す。モータ室MCを乾室とする場合には、ギア室GC内の油が漏出してモータ室MCに浸入しないよう隔壁1wとモータ軸3との間を油密としている。モータ室MCを湿室とする場合は、ギア室GCに溜められた油と同じ油をモータ室MC内に溜めるように、隔壁1wに形成した後述の連通孔1yを介して、両室MC・GC間を油が連通自在とする。このとき連通孔1yにはモータ室MCに流入する油を清浄化するためのフィルタ50を設けておくとよい。なお、図8に示すFLは、モータ室MC内の油溜まりの油面レベルを示す。この油により、モータアセンブリ2が発した熱を吸収してモータアセンブリ2の駆動効率を高い状態に維持できる。なお、モータ収納部1mの外側表面には、油の熱を、ケースを介して効率的に発散させるよう、図9、図10等に示すように、複数のフィン1nが形成されている。
【0104】
電動モータアセンブリ2は、ステータ33、電機子巻線34、ロータ35、永久磁石36、モータ軸支持フレーム37を有するものである。ステータ33は、モータ軸3と同一軸芯上に配置される水平軸芯円筒状のステータ芯33aと、該ステータ芯33aの軸芯方向一端に固設される円板状の支持部材33bとを備える。電機子巻線34は、ステータ芯33aの外周面に固設されている。ロータ35には、ステータ板33bに向かって開口するカップ状部35aを形成し、これにより、ステータ芯33aと該ステータ芯33a上の電機子巻線34とを囲んでおり、また、中心ボス部35bを形成して、これをモータ軸3に固設しており、また、該中心ボス部35bをステータ芯33aの内周面にて囲んでいる。永久磁石36はロータ35の該カップ状部35aの内周面に固設されて、電機子巻線34に対峙している。
【0105】
モータ軸支持フレーム37は、該ロータ35を跨ぐ大きさでアーチ形を成し、該ステータ板33bの鉛直側面に固設されて、モータ軸3を軸支している。平面視、すなわち、モータ軸3の軸芯方向に対し直角に見ると、図6に示すように、ステータ芯33a上の電機子巻線34、及び、永久磁石36を含めてのロータ35全体が、ステータ板33b及びアーチ状の支持フレーム37に囲まれた空間内に配置されている。後面視、すなわち、モータ軸3の軸芯方向に見ると、図8に示すように、支持フレーム37は、水平の上端面と水平の下端面とを有しており、ロータ35のカップ状部35aは、支持フレーム37の上端面より上方に、また、支持フレーム37の下端面より下方に、突出して、モータ室MCに曝されている。また、図6に示すように、ロータ35のカップ状部35aは、その軸芯方向端部にて、ステータ板33bに向かって開口しており、ロータ35のカップ状部35a内側の永久磁石36及び電機子巻線34をモータ室MCにさらしている。すなわち、支持フレーム37は、上下に開口部を有しており、支持フレーム37の開口部を介してロー35及び電機子巻線34をモータ室MCにさらしている。モータ室MCに油を満たして湿室とすれば、該油をロータ35及び電機子巻線34に効果的に供給でき、これらを有効に冷却できる。モータ室MCが乾室であって、その内部の空気が、フィン1nにより外気にて冷却される場合、モータ室MC内の空気の冷却効果は、ロータ35及び電機子巻線34に及ぶ。
【0106】
さらにこの電動モータアセンブリ2はブラシレスであるため付随して回転角度検出器38がモータ軸支持フレーム37の内側に備えられている。回転角度検出器としてはロータリ・エンコーダやホールセンサ、レゾルバを用いる。ホールセンサを用いる場合、ステータ板33bと軸芯方向で反対側にあるロータ35のカップ状部35aの、軸芯方向端の鉛直側面に、モータ軸3周りで隔壁1w側に突出する環状凸部35cが形成され、該環状凸部35cの内周面に環状の被検出体35dが固設されている。回転角度検出器38は、ロータ35の回転中における被検出体35dから所定の永久磁石36の位置を検出し、その検出信号をコントローラ80に送信する。これによりコントローラ80は、検知した回転する該磁石36の現在位置に応じて、電機子巻線34の磁力の向き(電流の向き)を、ロータ35が回転するように切り替える。また、後述するように、モータの種類によっては回転センサが用いられる。いずれにしても、これらのセンサから得られた信号は、車両の走行速度としても利用し、コントローラ80にフィードバックされる。
【0107】
このような”Permanent magnet”タイプのモータ(更に細かくは”Surface Permanent Magnet Synchronous”モータや”Interior Permanent Magnet Synchronous”モータ)の他、”Induction”タイプのモータや”Switched Reluctance” タイプのモータなどを用いることもできる。また、この実施例では、ラジアルギャップ構造でのアウターロータタイプを示したがインナーロータタイプでもよい。また、アキシャルギャップ構造のものであってもよい。
【0108】
図6〜図11に示すモータアセンブリ2およびモータ軸3の組立行程、および、組み立てられたモータアセンブリ2およびモータ軸3のケース1への組み入れ行程について、その他の図面に示す様々な他の実施例にも言及しつつ説明する。
【0109】
モータ軸3は、その外周面を、軸受42・43の内輪に係合し、該軸受42の外輪は、モータ軸支持フレーム37の中心ボス部37aに、該軸受43の外輪は、ステータ板33bの中心部に、それぞれ係止されていて、これにより、モータ軸3は、該モータ軸支持フレーム37及び該ステータ板33bにて、それぞれの軸受42・43を介して軸支されている。この、軸受42・43を介してのモータ軸3のステータ33及びモータ軸支持フレーム37への組み付けと関連してのモータ軸3のロータ35への組み付けについて説明する。
【0110】
図7に示すように、モータ軸支持フレーム37の中心ボス部37aの、軸芯方向でロータ35と反対側の軸芯方向端部は、軸受42の外輪の側面の外側にて、軸受42の外輪の外周面よりもモータ軸3に向かって径方向に延出して、ギア室GCに対峙する軸受42の外輪の側面に直接、あるいは、シムやワッシャ(ウェーブワッシャ等)、板ばね、皿ばね等の隙間補充部材を介して、当接可能な係止突起37bとなっており、該軸受42がそれ以上軸受43から離れる方向に移動するのを阻止するものとしている。一方、ステータ板33bの軸受43を囲む壁部の、軸芯方向でロータ35と反対側の端部は、軸受43の外輪の側面の外側にて、軸受43の外輪の外周面よりもモータ軸3に向かって径方向に延出して、軸受43の外輪の、ロータ35とは軸芯方向反対側の側面に直接、あるいは、シムやワッシャ(ウェーブワッシャ等)、板ばね、皿ばね等の隙間補充部材を介して、当接可能な係止突起33dとなっており、該軸受43がそれ以上軸受42から離れる方向に移動するのを阻止するものとしている。
【0111】
また、図7に示すように、モータ軸3の軸心方向途中部には、軸受42に向かうほどに径の大きくなるよう、テーパー状外周面を有するテーパー軸部3aが形成されている。該テーパー軸部3aに対応して、ロータ35の中心ボス部35bの内周面が、軸受42に向かうほどに径の大きくなるテーパー状になっている。該モータ軸3において、テーパー軸部3aの軸芯方向一端から軸受42に向かって延伸する一定の径の軸部3bが形成され、該軸部3bよりさらに延伸されて軸受42に嵌挿される軸部3cが形成されている。該軸部3cは、該軸部3bより小径となっていて、該軸部3bと軸部3cとの間に段差3dを形成している。モータ軸3において、該テーパー軸部3aの軸芯方向他端から軸受42の反対側に延伸する螺子部3eが形成されており、螺子部3eより軸受43に向かって延伸する一定の径の軸部3fが形成され、該軸部3fよりさらに延伸されて該軸受43に嵌挿される軸部3gが形成されている。該軸部3gは、該軸部3fより小径となっていて、該軸部3gと軸部3fとの間に段差3hを形成している。また、螺子部3e及び軸部3f・3gは、テーパー軸部3aの最小径の端部より、すなわち、ロータ35の中心ボス部35bのテーパー状ボス孔の最小径の端部より、小径となっていて、該テーパー状ボス孔を通過可能となっている。
【0112】
モータアセンブリ2の組立プロセスを説明する。まず、モータ軸支持フレーム37に装着された軸受42にモータ軸3の軸部3cを挿通する。その後、永久磁石36を付設したロータ35をモータ軸3に対して相対的に軸受42側に軸芯方向に移動させることで、ロータ35の中心ボス部35bのテーパー状ボス孔にモータ軸3の軸部3g・3f、螺子部3eを通過させ、最終的に該中心ボス部35bのテーパー状内周面を、モータ軸3のテーパー状軸部3aのテーパー状外周面に押圧する。これにより、モータ軸3が軸受42側に押圧され、段差3dが軸受42のロータ35側の側面に当接して軸受42の軸受43に向かっての軸芯方向の移動を阻止するとともに、係止突起37bが軸受42のギア室GC側の側面に当接して軸受42の軸受43から離れる方向の移動を阻止する。こうして、段差3d及び係止突起37bにより軸受42を軸芯両方向に移動しないように堅固に挟持する。この後、ナット40を螺子部3bに螺装することで、ロータ35をモータ軸3に強固に締止する。こうして、ロータ35、モータ軸3、軸受42、モータ軸支持フレーム37が、ノイズのもととなるゆるみやずれなく強固に一つのアセンブリに組み合わせられる。
【0113】
ステータ33は、前述の如くロータ35、モータ軸3、軸受42、モータ軸支持フレーム37よりなるアセンブリに組み付ける前に、予めステータ芯33a、ステータ板33b、電機子巻線34、軸受43、隙間充填材43aを接合または組み合わせて構成しておく。隙間充填材43aは、ワッシャまたはシムよりなり、ステータ板33bの軸受孔に嵌入した軸受43と、前記の係止突起33dとの間に充填されている。こうして、ステータ33を、モータ軸3に対して相対的に軸受42側に軸芯方向に移動させ、モータ軸3の軸部3gを軸受43に挿通させる。やがて、モータ軸支持フレーム37の、ステータ板33b側の前・後端部が、ステータ板33bに当接する。これにより、ステータ33の位置決めがなされる。この時点で、モータ軸3の段差3hの鉛直平坦面が軸受43のロータ35側の側面に当接し、モータ軸3の軸芯方向における軸受43の位置決めがなされる。モータ軸3の軸芯方向における隙間充填材43aの幅は、この時点での軸受43と係止突起33dとの間の隙間の、モータ軸3の軸芯方向の幅に対応して決定される。もし、ステータ板33bがモータ軸支持フレーム37に当接した時点で、軸受43と係止突起33dとの間の隙間の幅より隙間充填材43aが短ければ、ロータ35やモータ軸支持フレーム37から離れるようにステータ33を移動させてモータ軸3より外し、隙間充填材43aの幅を広げるように調節し(隙間充填材43aがシムであれば、シムの数を増やし)、再度、上述のようにステータ33を移動させて、ステータ板33bをモータ軸支持フレーム37に当接させる。逆に、もし、ステータ板33bがモータ軸支持フレーム37に当接するまでに、軸受43が段差3hの鉛直平坦面に当接する場合は、隙間充填材43aの幅が大き過ぎることを意味するので、ステータ33をモータ軸3より外して、隙間充填材43aの幅を狭めるように調節し(隙間充填材43aがシムであれば、シムの数を減らし)、再度、ステータ33を移動させて、ステータ板33bをモータ軸支持フレーム37に当接させる。こうして、隙間充填材43aの幅が最適化された状態で、モータ軸支持フレーム37の前・後端部にステータ板33bが当接した時点で、図8に示すように、ボルト41にて、該モータ軸支持フレーム37の前・後端部をステータ板33bに締止し、モータアセンブリ2の組立を終了する。隙間充填材43aが係止突起33dと軸受43との間に挟持係止され、該隙間充填材43aの反対側では段差33hが軸受43に当接しているので、軸受43の、軸受42に向かう軸方向及び軸受42より離れる軸方向のいずれの移動も阻止され、この移動により発生するノイズが防止される。
【0114】
モータ軸3は、更にステータ板33bの軸受43より外方へ延出しており、この延出した端部分は冷却ファン25を固設するものとしている。図5では、ケース1にモータアセンブリ2を組み込んだ状態で該端部分がケース1外に位置するような長さとしている。なお、図6で仮想線にて示すように、モータ軸3の、モータ板33bとは軸芯方向反対側に軸受42より延出する出力端部をさらに延出して、ギア室GCを貫通するものとし、ここに冷却ファン25を固設するものとしてもよい。
【0115】
さらに、ステータ板33bの面には電機子巻線34のそれぞれから延伸した配線を束ねるための集線ボックス133が装着され、ドライバ84より延設される前記ハーネス85が接続されている。さらにドライバ84からは、センサハーネス88が延設され、回転角度検出器38に接続されており、図11に示すように、断面視菱形のプラグ44(電線を挿通するための電線挿通部材)に形成した貫通孔44aそれぞれにハーネス85の各電線を、貫通孔44bそれぞれにハーネス88の各電線を挿通している。
【0116】
ここで、接合面Jを介してケース半部1A・1Bを接合した状態を想定すると、貫通孔44aの軸芯方向に見て、接合したケース半部1A・1Bに挟持されたプラグ44は、ケース半部1A・1Bの接合面J上に延伸される該菱形の対角線である上下中心部に、該接合面Jの方向の最大幅を有し、プラグ44の該上下中心部より上方に延伸する上半部及び下方に延伸する下半部が、各ケース半部1A・1B内に、該接合面Jと直角方向に延伸し、上半部・下半部それぞれの、該接合面Jの方向の幅は、接合面Jより離れるごとに小さくなる。
【0117】
以上のようにして組み立てた電動モータアセンブリ2は、接合面Jに該当する開口面を上にした状態のケース半部1Aに組み入れられ、さらにこの状態のケース半部1Aのギア室GCの半部に他の様々な部材を組み入れ、その後、ケース半部1Bをケース半部1Aに被せ、ボルト29でケース半部1Aに接合・締結することで、車軸電動ユニットAが完成する。
【0118】
図6、図7、図8に示す構造の車軸電動ユニットAのケース1のモータ収納部1mにおいては、各ケース半部1A・1Bのモータ室MCに面する内周面に、該内周面に沿って、モータ軸3の軸心方向に見て円弧状のクランプ部1hが形成されている。各クランプ部1hは、モータ軸3の軸心に向かって突出する左右一対の凸部と、両凸部間の溝とを有し、該溝は、両凸部間の間隔に相当する該ステータ板33bの厚み分の幅を有し、モータ軸3の軸心方向に見て、該ステータ板33bの軸心を中心に該ステータ板33bの直径よりも大きな直径を有する円周上に配置される円弧形状となっている。
【0119】
また、各クランプ部1hの、モータ収納部1mの上内端部と下内端部に位置する溝内には、ステータ板33bの外周の頂面と底面に当接させるための、モータ軸3の軸心方向に見て円弧状の嵌合部1haが突出形成されている。さらに、ケース半部1Aにおけるクランプ部1hの溝内において、該嵌合部1haの前側および後側に、該モータアセンブリ2の回り止めをするための回り止め部1Abを形成している。各回り止め部1Abは、ステータ板33bの外周面対峙させるように、モータ軸3の軸心方向に見て弦状の平面を有しており、この平面には、振動吸収用の弾性のパッド45を貼設している。一方、ステータ板33bの外周面には、各回り止め部1Abの平面に対応して、前後一対の切欠平坦面33cが形成されている。なお、ケース半部1Bのクランプ部1hの溝内にも、同様の回り止め部を形成し、ステータ板33bにさらにこの回り止め部に対応する切欠平坦面を形成してもよい。
【0120】
図6、図7、図8に示す車軸電動ユニットAでは、接合面Jに該当する開口面を上にした状態のケース半部1Aへの、モータアセンブリ2の組入れの際には、まず、ケース半部1Aのクランプ部1hの溝にステータ板33bの下半部の外周縁を挿入し、該ステータ板33bの底端部の外周面を、該クランプ部1hの溝内の嵌合部1haに嵌合当接し、さらに、該ステータ板33bの各切欠平面33cを、各回り止め部1Abのパッド45に当接する。こうして、ステータ板33bをモータ半部1Aに嵌合固定する。一方、モータ軸支持フレーム37の中心ボス部37aの外周面の下半部はケース半部1Aの、半割り状の保持孔1xに嵌合する。こうして、モータ軸3の軸心が接合面J上に位置し、その状態でケース半部1Bが被せられる。
【0121】
これに代わって、図12、図13に示す車軸電動ユニットAでは、接合面Jに該当する開口面を上にした状態のケース半部1Aへの、電動モータアセンブリ2の組入れの際には、モータ軸支持フレーム37をケース半部1Aにボルト49にて締止するものとしている。即ち、モータ軸支持フレーム37の、水平の、すなわち、接合面Jと平行な、上端面・下端面を有し、ステータ板33bへと延伸する前・後脚部には、それぞれに、鉛直方向、すなわち、接合面Jと直角方向に延伸される左右一対のボルト孔37d・37eが貫設されている。ボルト孔37dは軸心方向全長においてボルト49の直径と略同径となっており、ボルト孔37eは、該ボルト孔37dと同一径のボルト孔の、ケース半部1A側の端部を径方向に拡張した形状となっており、該拡張端部を、位置決めスリーブ49aを嵌入するダボ孔としている。該モータ軸支持フレーム37のボルト孔位置それぞれに対応して、ケース半部1Aの、モータ室MCに臨むモータ収納部1mの内壁には、前後一対のボス1iを鉛直方向に突出形成しており、各ボス1iには、左右一対の螺子孔1ia・1ibが、該モータ軸支持フレーム37の各ボルト孔37d・37eに対応して、鉛直延伸状に形成されている。螺子孔1iaは、鉛直方向の全長にわたって同一径の通常の螺子孔であり、ボルト孔1ibは、開口端部を径方向に拡張して位置決め用スリーブ49aを嵌入するためのダボ孔を有する螺子孔である。
【0122】
接合面Jに該当する開口面を上にした状態のケース半部1Aへの、電動モータアセンブリ2の組入れの前に、各位置決めスリーブ(ダボ)49aを前後の各ボス1iの螺子孔1ibのダボ孔に嵌入し、その上部を各ボス1iの上端面より上方に突出させており、各位置決めスリーブ49aの上方突出部をモータ軸支持フレーム37の各ボルト孔37eにおけるダボ孔に嵌入するようにして、モータ軸支持フレーム37の該前脚部および後脚部を各ボス1iに載置して位置決めする。その後、各ボルト49をモータ軸支持フレーム37の各ボルト孔37d・37eに挿入し両ボス1iの各螺子孔1ia・1ibに螺入して、ステータ板33bを、該モータ軸支持フレーム37を介してケース半部1Aに締止する。モータ軸支持フレーム37の中心ボス部37aの外周面の下半部をケース半部1Aの保持孔1xに嵌合することは図5の態様と同じである。こうすることで、モータ軸3の軸心が接合面J上に位置し、その状態でケース半部1Bが被せられる。
【0123】
図6、図8に示す構造、あるいは図12、図13に示す構造のいずれを有する車軸電動ユニットAにおいても、ケース1内の、モータ室MCとギア室GCとの間の隔壁1wには、前記モータ軸支持フレーム37を位置決めする保持孔1xが形成されている。隔壁1w及び保持孔1xは、接合面Jを境に、ケース半部1A・1Bそれぞれに半割形成される。
【0124】
モータ軸支持フレーム37の中心ボス部37aからのモータ軸3の延出部が、該保持孔1xを通過して、ギア室GC内に配置される。モータ軸3の出力端部には、モータ出力ギア65・ブレーキロータ62がスプライン嵌合にて固設されている。モータ出力ギア65・ブレーキロータ62は、電動モータアセンブリ2がケース半部1Aへ組み入れる前にモータ軸3の出力端部に固設される。
【0125】
また、代表して図6に示すように、ケース1の接合面J上の位置にて、モータ室MCとケース1外部との間にて貫通する軸孔1zを形成している。軸孔1zは接合面Jを境にケース半部1A・1Bそれぞれに半割形成される。モータ軸3が軸孔1zを貫通する部分にオイルシール48が外嵌されている。このオイルシール48より突出したモータ軸3の端部には冷却ファン25が固設される。
【0126】
また、冷却ファンの配置に関する別実施例として、図14に示すように、冷却ファン25をケース1のモータ収納部1m内に収納してもよい。すなわち、モータ収納部1m内にて、冷却室FCを形成し、該冷却室FC内に冷却ファン25を配設するものとしている。ケース1の、冷却室FCを形成するモータ収納部1mの外壁には冷却室FC内のエアを放出しまたは冷却室FC内に外気を導入するための複数のベント孔1vを形成している。なお、ブレード20で刈った草が空中に舞い上がるという状況に鑑み、該ベント孔1vを、冷却室FCへの刈草侵入防止用のフィルタで覆ってもよい。
【0127】
モータ室MCと冷却室FCとの間にて、該モータ収納部1mの内周面に、ステータ板33bの外周縁と嵌合するための段差部1jを形成している。該段差部1jは、ケース半部1A・1Bに半割され、ケース半部1Bを除いたケース半部1Aへのモータアセンブリ2・モータ軸3の組み入れの際には、ステータ板33bの下半外周縁をケース半部1Aの段差部1jに嵌合する。ケース半部1A・1Bを接合して完成した段差部1jは、モータ軸3の軸心方向に見て、ステータ板33bの全外周縁を覆うようにモータ室MCの端面として配置され、モータ室MCと冷却室FCとを完全に隔離する。
【0128】
段差部1jの、ステータ板33bに対峙させる面には、ケース半部1A・1B同士を接合した状態において、環状の溝142が形成され、ここに液体パッキンを充填しておく。さらに、ステータ板33bには、前述の軸受43に加えて、オイルシール143をステータ板33bの該中心孔内周面とモータ軸3の外周面との間に介設している。これにより、モータ室MCが湿室であっても冷却室FCは常に乾室として維持される。
【0129】
モータアセンブリ2・モータ軸3のケース1への組み入れの際の、ハーネス85・88の配線について説明する。図6、図8の構造または図12、図13の構造を有する車軸電動ユニットAでは、ケース1のモータ収納部1mの前端壁に、モータ室MCとケース1外部との間にて貫通するプラグ孔1qが形成されている。プラグ孔1qは、前述の如くケース半部1A・1Bに挟持される略菱形のプラグ44に対応して、図11の如く、前後方向(モータ軸3に直角な水平方向)に見て、鉛直方向に長い対角線を有し、接合面Jに沿って短い対角線を有し、上端・下端は円弧状にした略菱形状になっており、接合面Jを境に、ケース半部1A・1Bそれぞれに半割形成される。ケース半部1A・1B同士接合して完成したプラグ孔1qは、該前後方向に見て、その上下中央部が接合面J上にて延伸して、該接合面Jに沿っての最大幅を有しており、各ケース半部1A・1B内にて、該上下中央部より該接合面Jの直角方向に上下に延伸し、該接合面J沿いの幅が該接合面Jより離れるごとに小さくなるように形成されている。
【0130】
前述の接合面Jに該当する開口面を上にした状態におけるケース半部1Aに、電動モータアセンブリ2を組み入れる際、二種類のハーネス85・88の各電線を挿通した状態の共通のプラグ44の下半部を該ケース半部1Aのプラグ孔1qに嵌入する。
【0131】
なお、図14に示すように、ハーネス85の各電線を挿通するプラグ144とハーネス88を挿通するプラグ145とを別にしてもよい。ケース1には、プラグ144内嵌用のプラグ孔1qaとプラグ145内嵌用のプラグ孔1qbとが形成されていて、それぞれケース半部1A・1Bに半割されるようになっている。各プラグ144・145の形状や機能については、プラグ44と同様である。各ゴムプラグ144・145は、前述の、モータアセンブリ2・モータ軸3のケース半部1Aへの組み入れに際し、ケース半部1Aの各プラグ孔1qa・1qbに嵌入される。
【0132】
車軸電動ユニットAL・ARにおいては、それぞれにドライバ84が必要であるが、通常、ドライバ84は車体フレーム10の適所に搭載される。図15では、ドライバ84の設置場所をケース1内にしたものである。即ち、ケース1のモータ収納部1mに、ケース半部1A・1Bに半割可能なドライバ室DCを、モータ室MCおよびギア室GCより隔離して形成しており、モータ室MCとドライバ室DCとの間の隔壁に、ケース半部1A・1Bに半割可能なプラグ孔1qcを形成しており、ここに、ハーネス85・88の各電線を挿通するプラグ44を嵌入するものとしている。さらに、ドライバ室DCとケース1外部との間の壁を貫通するプラグ孔1qdをケース半部1A・1Bに半割されるように形成しており、ドライバ84からは、ケース1外部のバッテリ22やコントローラ80に接続される電線89およびアース線89が延伸されて、プラグ146に挿通され、該プラグ146が該プラグ孔1qdに嵌入される。プラグ146の形状や機能については、プラグ44と同様であり、ドライバ84のケース半部1Aのドライバ室DCへの組み入れに際し、プラグ146をプラグ孔1qdに嵌入する。
【0133】
ケース半部1Bをケース半部1Aの上に被せると、プラグ44の上半部がケース半部1Bのプラグ孔1qに嵌入する。そして、ボルト29にてケース半部1A・1B同士を螺子止めすると、プラグ44には、ケース半部1Bより下向きの、ケース半部1Aより上向きの面圧がかかり、その面圧に合わせて、ゴムプラグ44の接合面J上における断面菱形の短い対角線部が水平方向に延伸するように撓み、プラグ44の外周面がプラグ孔1qの内周壁面に密着し、電線の外周面が挿通孔の内周面に密着しモータ室MCのシール性が確保される。
【0134】
ケース1のモータ収納部1mの上端部と下端部に形成される一対のポート1pについて説明する。図1〜図3(および図4)の実施例においては、右車軸電動ユニットARではケース半部1Aのポート1pがドレンポート、ケース半部1Bのポート1pがブリーザポートとなり、左車軸電動ユニットALではケース半部1Aのポート1pがブリーザポート、ケース半部1Bのポート1pがドレンポートとなる。
【0135】
モータ室MCを湿室とする場合は、上述したとおりであるがモータ室MCを乾室とする場合は、図18に示すように、上下各ポート1p内にそれぞれ、チェックボール46を内装している。また、各ポート1pの、ケース1外部への開口端部に、内外連通孔を有する止め板47を係止しており、一方、各ポート1pの、モータ室MCへの連通孔にはテーパー状の弁座を形成している。各チェックボール46は、止め板47と、該弁座との間に配置されている。
【0136】
モータ収納部1m(ケース1)の上端のポート1pでは、弁座が止め板47の下方に位置されていて、チェックボール46は弁座に当接して、該ポート1pのモータ室MCへの連通孔を閉じる。こうして、上側のポート1pから水等の異物の浸入が阻止される。一方、モータ収納部1m(ケース1)の下端のポート1pでは、止め板47が弁座の下方にあり、チェックボール46は弁座より離れて止め板47上に載置されて、ポート1pのモータ室MC内を、止め板47の連通孔を通じてケース外に開放している。すなわち、下側のポート1pがブリーザとして機能し、矢印W1に示すように、止め板47の連通孔を介して外気がモータ室MCに導入される。また、矢印W2に示すように、該止め板47の連通孔を介して、モータ室MC内の結露を排出できる。
【0137】
なお、前述のハーネス85または88は、前述のプラグ44等を用いずに、モータ収納部1mの上端に位置するブリーザポート1pに挿通させることも考えられる。この場合、ハーネス85または88はブリーザチューブの中に通され、ブリーザチューブの適当な位置に設けた開口からチューブ外に引き出すようにする。
【0138】
次に、モータ室MCを湿室とした場合の、モータ室MCとギア室GCとの間の油の流通構造について説明する。図9、図10に示すように、ケース1の隔壁1wにおいて、保持孔1xの内周面より上下対称に長溝状の連通孔1y延出するよう形成されている。下側の連通孔1yはギア室GCとモータ室MCとの間で油を流通可能とするが、このために、下側の連通孔1yにフィルタ50を内嵌する。ギア室GC内の油には減速ギア列Gのギアの摩擦で生じる金属粉が混じるが、フィルタ50にてこの金属粉がモータ室MCに侵入するのを防いでいる。上側の連通孔1yは、モータ室MC及びギア室GCにおける油溜まりの油面レベルFLより上方になり、ここを通じてモータ室MCとギア室GCとの間で空気を流通自在とする。モータ室MCを乾室とする場合は、ケース半部1A・1Bにこれらの連通孔1yを形成しないものとする。
【0139】
以上は、電動モータアセンブリ2を、ケース1の一方の半割部(ケース半部1A)に組み入れてから、もう一方のケース1の半割部(ケース半部1B)を被せて両ケース半部1A・1B同士を締結することで、電動モータアセンブリ2をケース1内に組み入れる構造を説明したものである。
【0140】
これに代わり、ケース半部1A・1B同士を接合して構成したケース1に、電動モータアセンブリ2を組み入れるようにすることもできる。図16に示す実施例では、ケース半部1A・1Bを接合してなるケース1のモータ収納部1mの、ギア収納部1rとは反対側の側面が開口しており、この開口を介して、電動モータアセンブリ2を、モータ軸3の軸心方向にモータ室MC内に挿入し、モータ軸支持フレーム37の中心ボス部37aをケース1の保持孔1xに嵌入する。そしてステータ板33bは、その外周縁がケース1(ケース半部1A・1B)の前記開口面の外周よりも径方向外側に位置するように、ケース1のモータ収納部1mよりも径方向で大きくなっており、ステータ板33bの外周縁をケース1の開口周り壁部にボルト149にて締止して、モータアセンブリ2・モータ軸3のケース1への組み入れを完了する。
【0141】
なお、図16において、ステータ板33bに接続されるハーネス85は、ケース1の外部に配置されることとなり、図16にて図示を省略している。ケース1には、回転角度検出器38に接続されるハーネス88の各電線のみを挿通するゴムプラグ145を嵌入するプラグ孔1qbがケース半部1A・1Bに半割されるように形成されている。
【0142】
次に、図6、図9、図10に示す車軸電動ユニットAのギア室GCの内部構造およびそれに関連する構造について説明する。ギア室GCの前端部には、前述の如く、モータ軸3の出力端部が配置され、ここにモータ出力ギア65およびブレーキロータ62が固設されている。また、ケース1のギア収納部1rの後部および車軸収納部1sでは、単一の車軸4がモータ軸3と平行に軸受支持されている。車軸4の左右内端部(反突出側)は軸受51に嵌入され、車軸4の左右外端部(ハブ5を装着した突出側)は軸受52及び油シール53に挿通され、軸受51・52及び油シール53がケース半部1A・1Bにて挟持される。前記の前後一対のボス1f・1fは、軸受52・油シール53のすぐ前後におけるケース1(各ケース半部1A・1B)に形成されている。
【0143】
該ギア室GC内にて、ファイナルギア69が、車軸4の内端寄りの部分に対して相対回転自在に外嵌されている。そして、該ギア室GC内の、前後方向においてモータ軸3と車軸4との間の位置に、カウンタ軸66がモータ軸3と平行に両端を両ケース半部1A・1Bに挟持支持されている。ギア室GC内にて、モータ出力ギア65に噛合する大径ギア67と、ファイナルギア69に噛合する、該大径ギア67より小径の小径ギア68とが、互いに一体回転可能となって、該カウンタ軸66に外嵌されている。
【0144】
ここで、モータ軸3および車軸4の軸心は、前述のとおり、ケース半部1A・1B間の接合面J上に配置されており、モータ軸3については、前述の如くモータ軸3を支持するモータ軸支持フレーム37の下半部を、また、車軸4については、車軸4を挿通する軸受の下半部を、接合面Jに該当する開口面を上にした状態のケース半部1Aに組み付けてから、ケース半部1Bをケース半部1Aに被せて接合し、該ケース半部1A・1Bにてモータ軸支持フレーム37およびモータ軸3の軸受を挟持することで、モータ軸3、車軸4がギア室GC内に支持される。
【0145】
一方、カウンタ軸66は、接合面Jから離れて、ケース半部1A内に配置されるものである。すなわち、右車軸電動ユニットARにおいては、接合面Jより下方に、天地反転した左車軸電動ユニットALにおいては、接合面Jより上方に配置される。これにより、ギア室GCの前後長を短縮でき、車軸電動ユニットAが前後方向に短縮される。このカウンタ軸66の配置を実現すべく、ケース半部1Aにおいて、接合面Jに該当する開口面を上にした状態を前提として、ケース半部1Aのギア収納部1rの、モータ収納部1mとの間の隔壁1wと、モータ収納部1mとは反対側の外側部とに、それぞれ、接合面Jに該当する面より下向きの凹部1Acを形成しており、その底端平面よりさらに下方に、カウンタ軸66の下半部を受けるための断面半円状の凹部を形成している。
【0146】
そして、ケース半部1Bにおいて、接合面Jに該当する開口面を下にした状態を前提として、ケース半部1Bのギア収納部1rの、モータ収納部1mとの間の隔壁1wと、モータ収納部1mとは反対側の外側部とに、それぞれ、接合面Jに該当する面より下向きの凸部1Bcを形成しており、その底端平面より上向きに、カウンタ軸66の上半部を受けるための断面半円状の凹部を形成している。
【0147】
接合面Jに該当する開口面を上に向けた状態のケース半部1Aの各凹部1Ac底端の、断面半円状の下向き凹部に、カウンタ軸66の各端の下半部を嵌入し、その後、ケース半部1Bをケース半部1Aの上に被せ、接合する際に、各凸部1Bcを各凹部1Acに嵌入し、該凸部1Bcの底端部の、断面半円状の上向き凹部に、カウンタ軸66の各端の上半部を嵌入することで、カウンタ軸66をケース半部1A内にて支持する。
【0148】
なお、軸心を接合面Jに配置するように、すなわち、モータ軸3および車軸4の軸心と同じ高さになるように、カウンタ軸66を支持してもよい。この場合には、カウンタ軸66の両端を、ケース半部1A・1Bそれぞれにて接合面Jに該当する面より凹設した断面半円状の凹部に嵌入するようにして、接合したケース半部1A・1Bで挟持支持すればよく、ケース半部1A・1Bの形状加工を単純化できる。
【0149】
ギア室GC内の、モータ出力ギア65より前方にて、鉛直のブレーキ軸61が軸心回りに回動自在に支持されている。ブレーキ軸61の一端は、ギア室GC内に配置される上下途中の本体部よりも小径となっていて、これを、ケース半部1Aの貫通状(外向き開口状)のボス部1Aa(ブレーキアームを延出するアーム突出部)に挿通し、ボス部1Aaよりケース外に突出するブレーキ軸61の外端部に、前記のブレーキアーム60を外嵌固定している。ブレーキ軸61の他端も、該本体部よりも小径となっていて、ケース半部1Bに形成した外向き閉口状のボス部1Baに、ブレーキ軸61の該他端を嵌入する。ブレーキ軸61における本体部と該ボス部1Aaに挿通した端部との径差により、ブレーキ軸61のケース1からの抜け出しが防止されている。
【0150】
前述の如く、ブレーキアーム60はクランク状に曲折して、ブレーキ操作具に接続されるリンク部材への接続端部60aを車軸4の軸心と同じ高さに配置されている。これにより、車軸電動ユニットALと車軸電動ユニットARとを互いに天地反転した際にブレーキアーム60に接続される、ブレーキ操作具からのリンク部材の高さを等しくできる。
【0151】
ブレーキアーム60を、クランク状に曲折しない代わりに、ケース半部1Bのボス部1Baも外向き開口状にして、ブレーキ軸61の上下両外端をともにケース1の外側に突出する構造(ブレーキアームを延出するアーム突出部)にし、各ブレーキ軸61の両外端のうち、両車軸電動ユニットAL・ARにおいて例えば、どちらもケース1の上側に位置するブレーキ軸の外端に該ブレーキアームを外嵌固定すれば、左右の車軸電動ユニットAL・ARのブレーキアームの高さを等しくすることができる。
【0152】
ギア室GC内にて、ブレーキ軸61の上下途中部は、鉛直平坦なカム面61aを有する平面断面視略半円状のカム部となっており、該カム面61aに対峙するように、ブレーキシュー63が配置され、該ブレーキシュー63の、該ブレーキ軸61と反対側にブレーキパッド64が配置され、ブレーキパッド64をケース1に固定する。該ブレーキシュー63と該ブレーキパッド64の間に、ブレーキロータ62の一部が配置される。こうして、ブレーキ軸61、ブレーキロータ62、ブレーキシュー63、ブレーキパッド64よりなるブレーキ機構Brがギア室GC内に構成される。ブレーキ操作具を非制動状態にしている間は、カム面61aがブレーキシュー63の鉛直面と平行で、ブレーキロータ62に対してブレーキシュー63、ブレーキパッド64が互いに離れて配置される。ブレーキアーム60を制動位置に回動すると、カム面61aがブレーキシュー63をブレーキロータ62に向かって押し付け、モータ軸3を制動する。
【0153】
ギア室GC内にて、両ケース半部1A・1Bにて挟持支持される、鉛直円板状の磁石70が配置されている。この磁石70にて、各ギアの噛み合い磨耗で発生した鉄粉を吸着し、該ギア室GC内の油の汚染を低減する。
【0154】
電動モータアセンブリ22のコギング・トルクが大きく車両を牽引するときに車軸がスムーズに空転しない場合には、モータ軸3から車軸4に至る伝動系の中に機械式の車両牽引用クラッチを設けるのがよい。例えば、モータ軸3上にモータ出力ギア65を相対回転自在に設け、モータ軸3とモータ出力ギア65との間に車両牽引用クラッチを介装する、すなわち、該クラッチをモータ軸3上に配置することが考えられるが、図6には、車軸4上に車両牽引用クラッチTCを設けた例が示される。この車軸4上の配置によれば、クラッチTCを切った時に車軸4と一緒に減速ギア列Gを回転する必要がないので、芝刈機100の牽引時に車軸4を空回りさせるのに必要な力が最小限ですむ。車軸4には、該車軸4に対し相対回転不能で、かつ軸心方向摺動自在に、クラッチ部材71がスプライン嵌合されており、車軸4に固設した止め輪71bとクラッチ部材71との間にて、バネ71aを介設し、車軸4に巻装している。クラッチ部材71はバネ71aにてファイナルギア69へと付勢されている。ファイナルギア69には、一側面にて開口する凹部が形成され、クラッチ部材71先端の凸部が嵌入可能となっている。
【0155】
クラッチ部材71には環状溝が形成されていて、フォーク72が嵌入されており、該フォーク72のボス部72aが鉛直のフォーク軸73に外嵌されて、軸心回りに回動自在となっている。該フォーク軸73の両端(上端・下端)は、ケース半部1A・1Bそれぞれに形成したボス1kに嵌入され、該フォーク軸73を、接合した両ケース半部1A・1B間にて支持している。
【0156】
該フォーク72のボス部72aからは、該フォーク72およびボス部72aと一体回動可能なアーム72bが延設され、その先端部に、前後水平方向に移動自在な進退ピン74の前端部を係止している。進退ピン74は、その後部をケース1の後端壁部にて、その軸心が接合面J上に配置されるように支持し、さらに、その後端を該ケース1の後端面より後方に突出して、この後端のそれぞれに、芝刈機100における前述の図示せぬ、左右両車軸電動ユニットAL・ARに共通のクラッチ操作具からのリンク部材(ロッド等)が接続される。リンク部材には、前記バネ71aの付勢力に打ち勝ってクラッチ部材71をクラッチ切り位置に保持するデテント機構を含んでいる。
【0157】
クラッチ操作具のクラッチ入り操作により、左右略同時に進退ピン74の、ギア室GC内にて延伸されている部分は、前方に突出され、前記バネ71aの付勢力により、クラッチ部材71は、その凸部をファイナルギア69の凹部に嵌入したクラッチ入り位置に配置される。これにより、該クラッチ部材71を介してファイナルギア69が車軸4に一体回転自在に係合され、通常に車両が走行するようモータ軸3の回転力が車軸4に伝達される。
【0158】
クラッチ操作具のクラッチ切り操作により、進退ピン74の、ギア室GC内にて延伸されている部分は、後方に引き込まれ、これにより、該アーム72bの先端部を後方に引き、フォーク72をボス部72a中心に回動して、クラッチ部材71は、バネ71aに抗して、その凸部をファイナルギア69の凹部より外したクラッチ切り位置に配置される。これにより、ファイナルギア69は車軸4に対して相対回転自在となり、該ファイナルギア69に伝達されたモータ軸3の回転力が車軸4には伝達されない、車両牽引用の状態となる。
【0159】
なお、説明の便宜上、図6において、車軸4の上方にはクラッチ入り位置のクラッチ部材71を、車軸4の下方にはクラッチ切り位置のクラッチ部材71を図示している。なお、牽引クラッチとしては、以上のドッグクラッチに限らず、ボールクラッチや、回転数に応じて自動的に係脱する双方向クラッチなど種々のものを適用できる。
【0160】
なお、車軸電動ユニットAは、図17に示すように、それ一つで左右両後輪12R・12Lを駆動するために一対の車軸104を支持する構造とすることも考えられる。図17に示す構造を有する車軸電動ユニットAにおいて、ケース半部1A・1Bを接合してなるケース1は、前述のモータ収納部1mおよびギア収納部1rと同様のモータ収納部1mとギア収納部1rとを形成しており、該ギア収納部1r後部より、左右方向でモータ収納部1mとは反対側に、前述の車軸収納部1sに該当する車軸収納部1saを左右一方に延出し、さらに、該ギア収納部1r後部より、モータ収納部1mの後端部に沿って、もう一つの車軸収納部1sbを左右延伸状に形成している。
【0161】
前述の実施例と同様に、モータ収納部1m内に形成されるモータ室MC内には電動モータアセンブリ2が収納されており、ギア収納部1r内に形成されるギア室GC内には、ブレーキ軸61等のブレーキ機構Br、カウンタ軸66およびギア65・67・68よりなる減速ギア列Gが配設されている。各車軸収納部1sa・1sbにて、各車軸104が軸受支持されており、各車軸104は、各車軸収納部1sa・1sbの左右外端より突出して、該突出外端にハブ5が固設されている。
【0162】
ギア室GCの後部内にて、ファイナルギア69に該当するブルギア169が配置され、該ブルギア169の中心孔に、該ブルギア169に対して相対回動自在に両車軸104の内端部が嵌入されている。該ブルギア169と両車軸104との間には、該ブルギア169の回転力を両車軸104に伝達する差動機構Dが介設されている。すなわち、該ブルギア169内の、径方向軸線まわりに回転自在にデフピニオン76が支持されており、該ブルギア160の左右各側面に対峙するようそれぞれ各車軸104に固設された左右一対のデフサイドギア75を、該デフピニオン76に噛合させている。
【0163】
一方の車軸104上に、軸心方向摺動自在にデフロック部材77が外嵌されている。デフロック部材77は、その軸心方向摺動により、デフロック位置と非デフロック位置とに切り換えられる。図17では、説明の便宜上、車軸104の上方に非デフロック位置のデフロック部材77、車軸104の下方にデフロック位置のデフロック部材77を図示している。デフロック部材77には、車軸104の軸心方向に延伸されるデフロックピン77aを固設しており、常時、一方のデフサイドギア75に嵌入されている。デフロック部材77をデフロック位置にすると、デフロックピン77aがブルギア169に形成した凹部に嵌入し、左右車軸104同士がデフロックされる。デフロック部材77を非デフロック位置にすると、デフロックピン77aがブルギア169より離れ、左右車軸104は差動自在となる。
【0164】
デフロック部材77には環状溝が形成されていて、フォーク78が該環状溝に嵌入されており、該フォーク78の枢支軸である鉛直フォーク軸79がギア室GC内にて支持されている。該フォーク軸79は、本実施例においてケース半部1A・1Bそれぞれに形成した、前述のブレーキ軸61のボス1kと同様の形状のボスに、上端・下端のそれぞれを支持するものとしてもよい。上端もしくは下端から突出するフォーク軸79端にデフロックアーム(図示せず)が装着される。
【0165】
あるいは、車軸電動ユニットAL・ARは、そのケース1内のギア室GCに、図19に示す機械的な有段の変速機構SGを設けてもよい。図19に示す構造において、カウンタ軸96がモータ軸3と車軸4との間でギア室GC内に支持されている。なお、この実施例では、カウンタ軸96の軸心を接合面J上に配置する構成とし、カウンタ軸96は、その両端を各軸受に挿通し、該軸受を、接合した両ケース半部1A・1Bにて挟持し、これにより、ケース1にカウンタ軸96を回転自在に支持している。カウンタ軸96には一体回転自在のピニオン96bを形成し、車軸4に外嵌されるファイナルギア69に噛合させている。
【0166】
ギア室GC内にて、モータ軸3には、低速駆動ギア91と、該低速駆動ギア91より大径の高速駆動ギア92とを固設している。カウンタ軸96には、低速従動ギア93と、該低速従動ギア93より小径の高速従動ギア94と、両従動ギア93・94間に配置される中立スリーブ95とを、該カウンタ軸96に対し相対回転自在に外嵌して、低速従動ギア93を低速駆動ギア91に常時噛合してギア91・93よりなる低速ギア列を構成し、高速従動ギア94を高速駆動ギア92に常時噛合してギア92・94よりなる高速ギア列を構成している。
【0167】
カウンタ軸96の表面には、キー溝96aが形成されていて、各従動ギア93・94および中立スリーブ95の内周面に対峙するように軸心方向に延伸している。また、カウンタ軸96に、軸心方向摺動自在な、シフタ97が外嵌されている。シフタ97は、該キー溝96a内に内嵌されるキー部材97aの基部を保持するものであり、該シフタ97の環状溝に、鉛直のフォーク軸99を枢支軸とするフォーク98を嵌合させている。
【0168】
該フォーク軸99は、本実施例においてケース半部1A・1Bそれぞれに形成した、前述のブレーキ軸61のボス1Aa・1Baと同様の形状のボスに、上端・下端のそれぞれが支持される。上下ボスのいずれか(本実施例では、ケース半部1Aに形成したボス)より突出したフォーク軸99の外端に、クランク状の変速アーム99aが装着されて、前述のブレーキアーム60と同様に、運転席の近傍に配した副変速操作具に接続されるリンク部材への接続端部を車軸4の軸心と同じ高さに配置する。リンク部材に代えて、該変速操作具の操作に応じて電気制御されるアクチュエータに該変速アーム99aを接続してもよい。
【0169】
副変速操作具は、例えばレバーであって、低速設定位置、高速設定位置、さらに、中立位置の3位置間で切替可能とする。また、該副変速操作具は左右の車軸電動ユニットAL・ARに対して共通のものとし、左右同時に低速設定位置もしくは高速設定位置に切替が行われる。副変速操作具の操作に伴って、フォーク軸99およびフォーク98が回動し、シフタ97をカウンタ軸96の軸心方向に摺動させる。なお、説明の便宜上、キー溝96aをカウンタ軸96の上端・下端に形成しているように描いている。
【0170】
キー部材97aの、遊端側はラッチ状になっている。前記の副変速操作具を低速設定位置にすることで、シフタ97を低速位置Lにすると、キー部材97a先端のラッチが低速従動ギア93の内周部に嵌合し、これにより、低速従動ギア93がシフタ97を介してカウンタ軸96に一体回転自在に係合し、モータ軸3の回転力を、ギア91・93よりなる低速ギア列を介してカウンタ軸96に伝達する。前記の副変速操作具を高速設定位置にすることでシフタ97を高速位置Hにすると、キー部材97a先端のラッチが高速従動ギア94の内周部に嵌合し、これにより、高速従動ギア94がシフタ97を介してカウンタ軸96に一体回転自在に係合し、モータ軸3の回転力を、ギア92・94よりなる高速ギア列を介してカウンタ軸96に伝達する。なお、実線の変速アーム99aはシフタ97を高速位置Hにする位置、仮想線の変速アーム99aは、シフタ97を低速位置Lにする位置として描かれている。
【0171】
該副変速操作具を中立位置にしてキー部材97a先端のラッチが中立スリーブ95に嵌合すると、両従動ギア93・94ともカウンタ軸96に対し相対回転自在のままであり、モータ軸3の回転力は、カウンタ軸96には伝達されない。芝刈機100の牽引時には該副変速操作具を中立位置にすればよいので、図19に示す実施例における車軸電動ユニットAにおいて、車軸4上から前述のような車両牽引用クラッチTCは除かれている。
【0172】
次に、図20〜図26に示す実施例について説明する。本実施例では、図20、図21に示すように、左右一対の車軸電動ユニットBL・BRが、冷却ファンを備えない状態で芝刈機100の車体フレーム10に支持され、一対の冷却ファン225が、車軸電動ユニットBL・BRとは別に車体フレーム10に支持されて、各車軸電動ユニットBL・BRのケース200にそれぞれ対峙している。
【0173】
車体フレーム10の左右側板部10a直下にてサブフレーム231が延設されている。サブフレーム231は、両車軸電動ユニットBL・BR上方にて延設される水平板部を有し、左右のステー232を該水平板部上面の左右端それぞれに溶接等で固設し、上方突出状の鉛直板部を有している。左右のステー232の該鉛直板部をそれぞれ、ボルト・ナット245を介して車体フレーム10の左右各板部10aに締止することで、サブフレーム231が車体フレーム10に固設される。
【0174】
サブフレーム231の水平板部には左右対称な一対のファン孔231aが上下貫通しており、一対のファンモータステー233をそれぞれ、各ファン孔231aの直上に配設している。各ファンモータステー233はその中央部に水平の円形リングを有し、該中央のリングより径方向外側へ放射状に脚部233a(本実施例では等間隔に3本)が延出されている。各ファンモータステー233の脚部233aは下方に曲折されて、その先端にタブを有しており、各ファンモータステー233のタブは各ファン孔231aの周囲に配置されて、サブフレーム231の水平板部の上面に固着される。
【0175】
一対のファンモータアセンブリ234がそれぞれ、ファンモータステー233のリング上面に螺子止め等にて固定され、該リングの孔を介して各ファンモータステー233より吊下される。各ファンモータステー233の底部からは、各ファン孔231aを介して、鉛直のファン軸234aが下方に延出され、左右一対の冷却ファン225のそれぞれを、各ファン孔231aの直下にて各ファン軸234aの底端に固設している。各ファンモータアセンブリ234からは電線の収束体であるハーネス234bを上方に延出し、コントローラ(図示せず)へと接続している。
【0176】
互いに同一の(共通の構造を有する)一対の車軸電動ユニットBを、左右の車軸電動ユニットBL・BRとしており、一方の車軸電動ユニットBLが他方の車軸電動ユニットBRを上下反転した状態で、それぞれのケース200に支持した左右車軸204を同一軸芯上に芝刈機100の左右方向に延設した状態で、該芝刈機100において左右対称状に配設されている。
【0177】
サブフレーム231の該水平板部は、左右前端、左右両側端、左右後端を曲折して、下方延出する鉛直板部を形成しており、各鉛直板部の底端を曲折して、ケース200への取付用の水平状のタブ(総称してタブ231bとする)を形成している。左右各車軸電動ユニットBL・BRのケース200の前端部、後端部、左右外端部には、サブフレーム231への取付用のいくつかのボス(総称してボス200aとする)が形成されている。これらのボス200aの上面(ケース200におけるフレームへの取付部)をサブフレーム231の各タブ231bの下面に当接し、各タブ231bを介してボルト246を各ボス200aに螺入して、各タブ231bを各ボス200aに締止し、これにより、左右車軸電動ユニットBL・BRをサブフレーム231に固設する。なお、図20では、タブ231bに当接されるケース200の代表的なボスにのみ符号200aを付している。
【0178】
サブフレーム231に固設完了した左右車軸電動ユニットBL・BRは、左右冷却ファン225それぞれの下方に配置されている。これに関し、ケース200における後述のモータ室MCを内部に形成した水平軸芯円筒状のモータ収納部200nの円周面にフィン200pが形成されており、該円周面の上端がその上方の冷却ファン225に対峙している。したがって、冷却ファン225により起こる冷却風が優先的にフィン200p付きのモータ収納部200nに当たり、中のモータ室MC及び内装した電動モータアセンブリ202を効率的に冷却する。
【0179】
左右冷却ファン225及び左右車軸電動ユニットBL・BRをサブフレーム231に装着してなるサブ・アセンブリは、サブ・アセンブリを組み合わせて芝刈機100を製造する車両メーカーに供給される。該車両メーカーでは、該サブフレーム231の左右ステー232をボルト・ナット245で車体フレーム10の左右側板部10aに締止することで、該サブアセンブリを車体フレーム10に吊設する。
【0180】
各ケース200は、ケース1A・1Bよりなるケース1と同様に、間に接合面Jを持ってケース半部200A・200B同士を接合し、ボルト29にて締結したものであり、左車軸電動ユニットBLではケース半部200Aがケース半部200Bの上に、右車軸電動ユニットBRではケース半部200Aがケース半部200Bの下になっている。ケース半部200A・200Bは接合面Jを介して略対称であり、ボス200aはケース半部200A・200Bに半割可能となっている。すなわち、各ボス200aの両半割部の先端は、ケース200の配置でケース半部200Aがケース半部200Bの上になるかケース半部200Bの下になるかにかかわらず、一定の高さに保たれて、タブ231bへの当接に便利である。このように、各車軸電動ユニットBは、車軸電動ユニットAと同様に、上下反転するだけで左右車軸電動ユニットBL・BRのいずれにもなれるものである。
【0181】
なお、図20及び図21に示す実施例では、車軸204が電動モータアセンブリ202の前方になるように左右の車軸電動ユニットBL・BRを配置しているが、車軸204が電動モータアセンブリ202の後方になるように配置してもよい。この場合、左車軸電動ユニットBLではケース半部200Aがケース半部200Bの下にあり、右車軸電動ユニットBRではケース半部200Aがケース半部200Bの上にある。ここで、前述のように、ケース半部200A・200Bは、接合面J(ケース半部200A・200Bそれぞれの開口面に相当)を介して略対称であり、ケース半部200A・200Bの間で唯一の重要な相違点は、ケース半部200Aのみが、図23に示すようにボルト49により電動モータアセンブリ202(のモータ軸支持フレーム37)を据付け可能となっていることである。
【0182】
図22はケース半部200Bのみを図示し、図23〜図25では、ケース半部200Aがケース半部200B上方に配置されている状態でケース半部200A・200Bを図示しているが、ケース半部200Aがケース半部200Bの上であるか下であるかにかかわらず、図22に示すケース半部200Bにおけるケース200の半分の構造はケース200の全体構造を代表したものであり、車軸204は電動モータアセンブリ202の前方に配置されていることを前提として、ケース200の構造について、図22〜図26をもとに説明する。
【0183】
ケース200内には、ケース半部200A・200B間で半割可能な隔壁200bが形成されている。該隔壁200bは、ケース200の後端部より前方に延設され、その前端部が、車軸204と平行にケース200の左右方向に延設され、ケース200の内部空間を、平面断面視で略矩形のモータ室MCと、平面断面視で略L字形状のギア室GCとに分割している。
【0184】
隔壁200bの前部は、ブッシュ54を介して車軸204の左右方向内端を軸支する軸受部200cとなっている。車軸204は隔壁200cよりギア室GC内にて延設され、ケース200より外側に突出して、その左右外端にハブ5が固設されている。ここで、ケース半部200A・200Bの左右外端それぞれに機械加工で半円状の環状溝200dが形成されており、ケース半部200A・200B同士を接合することで、円形の環状溝が構成されるものであり、車軸204の軸芯方向途中部に設けられた軸受52が接合した溝200dに嵌入される。また、ケース200のギア室GC内には、筒状の車軸案内部200eが形成されており、該車軸案内部200eはケース半部200A・200B間で半割可能であって、ここに車軸204の軸芯方向途中部を挿通させる。
【0185】
後述のモータ軸3の端部がモータ室MCよりギア室GC内へと延出しており、ギア室GC内において、車軸電動ユニットAの減速ギア列Gと同様の、ギア65・67・68・69よりなる減速ギア列Gが構成され、モータ軸3の該端部と車軸204との間に介設されている。本実施例では、減速ギア列Gのカウンタ軸66の軸芯が接合面Jにあり、ケース半部200A・200Bに挟持されているが、図9、図10に示す車軸電動ユニットAの実施例のように、カウンタ軸66を接合面Jよりオフセットするようにケース半部200A・200Bのうちの一方内において支持してもよい。
【0186】
図22、図25に示すように、ギア室GC内のモータ軸3の端部周りには、車軸電動ユニットAのブレーキ機構Brと同様のブレーキ機構Brが構成されていて、鉛直のブレーキ軸61、モータ軸3に固設されたブレーキロータ62、ブレーキシュー63、ブレーキパッド64を備えている。これに関し、ケース半部200A・200Bには、上下のボス200mがそれぞれ形成されており、これらは接合面Jを介して対称状であり、それぞれ上下貫通孔を有し、両者間のギア室GCに対峙している。一方のボス200mには鉛直のブレーキ軸61の一端部が回動自在に挿通され、ケース200外側に突出しており、ここにブレーキアーム260を固設している。ブレーキ軸61の他端部はキャップ261にて塞がれたもう一方のボス200mに回動自在に嵌入されて、ケース200の外側に突出しない。
【0187】
本実施例では、ケース半部200Aがケース半部200Bの上下いずれにあるかにかかわらず、上側のボス200mがキャップ261にて塞がれ、下側のボス200mが、アーム突出部となって、ここよりブレーキアーム260をケース200の外側に突出させるものとしている。したがって、ブレーキアーム260は、左右両車軸電動ユニットBL・BRのケース200より下側のボス200mを介して下方に突出されるブレーキ軸61の端部に設けられて、同じ高さに配置され、車軸電動ユニットAの実施例と同様に、ブレーキ操作具に連係されるのに便利となっている。なお、ブレーキアーム260を、左右両車軸電動ユニットBL・BRのケース200より上側のボス200mを介して上方に突出されるブレーキ軸61の端部に設けてもよい。
【0188】
減速ギア列Gのギアを潤滑するため、ギア室GC内に油が溜められており、また、湿室としてのモータ室MC内にも油が溜められている。図23、図24において、「FL」は、ケース200(ギア室GC・モータ室MC)内の油溜まりの油面レベルを示す。ここで、ケース200には、図22に示すように、左右一対の鉛直状の溝が形成されており、一方は軸受部200cに、他方は軸受部200cと対峙するケース200の壁部に形成されている。また、ケース200には、図23に示すように、上下一対の水平状の溝が形成されており、一方はケース半部200Aに、他方はケース半部200Bに形成されている。これらの溝に、図26に示す仕切板201の上下左右縁が嵌入されて、モータ室MCとギア室GCとの間の隙間を覆っている。
【0189】
図26に示すように、仕切板201には一対の孔201a・201bが穿設されている。孔201aではなく孔201bのみがフィルタ203としての網に覆われている。仕切板201は、ケース半部200Aがケース半部200Bの上下いずれにあるかにかかわらず、孔201aが孔201bの上方となるように配設される。これにより、孔201a・201bは、上孔201aがモータ室MCとギア室GCとの間の空気流通を可能とし、下孔201bがモータ室MCとギア室GCとの間の油を流通可能とし、フィルタ203はギア室GC内の油がモータ室MCに流入する前に該油に混じる金属粉を捕捉するという、図9、図10に示す上下の連通孔1y及びフィルタ50と同様の機能を奏する。
【0190】
図22、図23に示すように、モータ室MC内の仕切板201近傍において、ケース半部200A・200Bには、上下の鉛直の障壁200fがそれぞれに形成されており、これらは、図23に示すように、接合面Jを介して対称状に互いに向かって鉛直状に延設されており、両者間には隙間を設けている。また、図22に示すように、上下各障壁200fはモータ軸3、車軸4の軸芯方向、すなわち車軸電動ユニットBの左右方向に延伸し、各障壁200fの左右両端は、それぞれのケース半部200A・200Bの、モータ室MCとギア室GCとを連通する通路を画する壁端との間に、上下両障壁200f間の隙間よりも狭い隙間gを設けている。こうして、仕切板201の下孔201bを介してのギア室GCからモータ室MCへの油流入に、下側の障壁200fが抵抗を与えるようにしている。
【0191】
このように、ケース半部200Aがケース半部200Bの上下いずれであるかにかかわらず、モータ室MC内の油溜まりに浸かっている下側の障壁200fは、電動モータアセンブリ202のロータ35の回転に対するモータ室MC内の油の攪拌抵抗を低減し、これにより、ロータ35の必要な回転効率を確保する。詳しくいえば、モータ室MC内でロータ35が回転中、モータ室MC内の油が該ロータ35の回転により飛沫化され、該飛沫化した油の大部分は、下側障壁200fを飛び越えてギア室GCに移動するが、ギア室GCからの油は、下側障壁200fの両隙間gを介してのみモータ室MCに流入し、大部分はモータ室MCに入るまでに該下側障壁200fにてとどめられる。これにより、回転中のロータ35に対する油の抵抗を低減する。
【0192】
図22、図23に示すように、ギア室GC内の、仕切板201と減速ギア列Gとの間の部分にて、ケース半部200A・200Bには、上下の磁石ポケット200gがそれぞれ形成されており、これらは接合面Jを介して対称状であり、軸受部200cにつながっている。ケース半部200Aがケース半部200Bの上下いずれにあるかにかかわらず、鉛直円板状の磁石70が、上側ではなく下側の磁石ポケット200gにのみ嵌合されており、車軸電動ユニットAの実施例で上述したように、減速ギア列Gのギアの擦れで生じた金属粉が磁石70にて捕捉されるものである。上下の磁石ポケット200gは止め板70aを取付可能となっており、止め板70aは、磁石70と嵌合した下側の磁石ポケット200gに固設されて、該磁石70の上端に押接され、これにより、磁石70を係止している。
【0193】
図24に示すように、ケース半部200A・200Bには、上下の孔200hがそれぞれ形成され、これらは接合面Jを介して対称状であり、両者間のモータ室MCに対峙している。ケース半部200Aがケース半部200Bの上下いずれにあるかにかかわらず、上側の孔200hはケース200の外側空間とケース200内のモータ室MCとの間の空気流通を確保するブリーザキャップ250により閉栓されており、下側の孔200hはモータ室MC内の油がそこから漏れないようにプラグ251にて閉栓されている。
【0194】
図22、図23に示すように、ケース半部200A・200Bには、上下の孔200iがそれぞれ形成され、これらは接合面Jを介して対称状であり、両者間のギア室GCに対峙している。上下両孔200iにはプラグ252が螺入されて両孔200iを塞いでいる。各プラグ252は回動して孔200iより外すことができ、特に、下側の孔200i内のプラグ252についてはドレンプラグとし、そして、下側の孔200iをドレン孔として、このプラグ252を外すことで、開口してギア室GCより油を抜くことができるのである。
【0195】
図22、図24に示すように、ケース半部200A・200Bには、上下のゲージプラグ孔200jのそれぞれが形成されており、これらは、両者間のギア室GCに対峙し、また、互いに水平方向にずれている。ケース半部200Aにおける、ケース半部200Bに形成したゲージプラグ孔200jの上下反対側の部分と、ケース半部200Bにおける、ケース半部200Aに形成したゲージプラグ孔200jの上下反対側の部分とは、上下外側に拡張されて、上下それぞれの油溜め部200kとなっている。ケース半部200Aがケース半部200Bの上下いずれにあるかにかかわらず、上側のゲージプラグ孔200jは、ゲージ棒253aを備えたゲージプラグ253にて閉栓され、下側のゲージプラグ200jは、プラグ254により閉じられて、ギア室GCからの油の漏れを防いでいる。なお、プラグ254を抜いて下側のゲージプラグ孔200jを開口することで、ギア室GCから油を抜くドレン孔としても兼用できる。ゲージ棒253aは、上側のゲージプラグ孔200jに螺入したゲージプラグ253より下方に延設されて、その底先端部が、上側ゲージプラグ孔200jと上下反対の下側の油溜め部200k内に溜められた油に浸漬されている。ケース200内の油量を測る時は、ゲージプラグ253をねじまわして上側ケージプラグ孔200jより外し、ゲージ棒253aの先端に付着した油を計測するものである。
【0196】
ケース200内のモータ室MCへの電動モータアセンブリ202の組み付けについて図22〜図24より説明する。電動モータアセンブリ202は、車軸電動ユニットAの電動モータアセンブリ2と同様に、ステータ33、ロータ35、モータ軸支持フレーム37を備える。ロータ35はモータ軸3の軸芯方向途中部に固設されている。モータ軸支持フレーム37は、図12及び図13に示す車軸電動ユニットAの実施例におけるモータ軸支持フレーム37と同様に、ボルト49を介して、ケース半部200Bでなくケース半部200Aのみに締止される。ステータ33のステータ板33bはモータ軸支持フレーム37に固定され、そのステータ芯33aに固設した電機子巻線34を、ロータ35の外周部とモータ軸3との間に配設している。そして、図7を用いて上述したプロセスにて、モータアセンブリ202が組み立てられる。
【0197】
なお、ステータ板33bには集線ボックス235が固設され、集線ボックス235には、ケース半部200A・200Bで挟持されたプラグ144に挿通されたハーネス85が接続され、これを電機子巻線34に接続している。
【0198】
電動モータアセンブリ202においては、回転角度センサ238が集線ボックス235内に配設されており、回転角度センサ238は、レゾルバ239と被検知体240とを備えている。これに関連して、ケース半部200A・200Bにて挟持されたプラグ145に挿通されたハーネス88がモータ室MC内にて延設されて、レゾルバ239に接続されている。集線ボックス235には孔235aが設けられ、この中で、モータ軸3の端部が、ギア室GC内のモータ軸3の端部とは軸芯方向反対側に、ステータ板33b内の軸受43より延出している。この孔235a内にて、円板状の被検知体240がモータ軸3に固設され、レゾルバ239が被検知体240を環状に囲むように配設されて、被検知体240の回転位置を検出する。レゾルバ239は、これを挟持する固定リング241・242を介して、螺子243にてステータ板33bに固定されている。
【0199】
なお、車軸電動ユニットBは、図27に示すように、左右一対の車軸204・205を支持し、両車軸204・205を差動連結する差動機構Dを減速ギア列Gに連動連係するものとしてもよい。これに関し、規格化したケース200(すなわち、ケース半部200A・200B)は、簡単な機械加工で変形して、単一車軸204か、一対の車軸204・205かを択一に支持可能となっている。
【0200】
ここで、ケース200が単一車軸204を支持するとの前提において、ケース200の左端部または右端部であって、ここから車軸204の外端をケース200外へと突出させる部分については、ケース200の左右外側端部とし、該ケース200の該左右外側端部と左右方向で反対側のケース200の右端部または左端部については、ケース200の左右内側端部とする。
【0201】
ケース200が単一車軸204を支持するか一対の車軸204・205を支持するかにかかわらず、規格化したケース半部200A・200Bの、単一車軸204を支持する場合にケース200の左右外側端部となる部分には、予め、断面視半円状の凹部200rが形成され、これらは接合されて車軸204を挿通する車軸孔を構成するものである。また、予め、断面視半円環状の溝200sが該凹部周りに形成されており、ケース半部200A・200B同士を接合することで、ケース半部200A・200Bの溝200qが接合し、環状の溝を構成するものであり、ここに、車軸204に設けた油シール53を嵌入する。
【0202】
単一の車軸204を支持する場合、図22をもとに前述したように、規格化したケース半部200A・200Bにはそれぞれ、機械加工による追加の変形加工を受け、該車軸孔の半部としての凹部周りに断面視半円環状の溝200dが形成される。ケース半部200A・200Bの溝200dは、ケース半部200A・200B同士を接合することで、円形環状の溝を構成し、車軸204の軸芯方向途中部に設けた軸受(詳しくは、ボール軸受)52を、溝200dを接合してなる環状溝に嵌入する。また、該車軸204の左右内端部に装着されたブッシュ54が、ケース半部200A・200Bを接合されることで構成される前述の軸受部200cに嵌入する。
【0203】
詳述すると、ケース200の上側ケース半部と接合させる前に下側ケース半部としてケース半部200Bまたは200Aを配置した状態で、車軸204上の軸受52及び油シール53の下半部を、下側ケース半部における断面視半円状の溝200d・200qに嵌入し、また、車軸204上のブッシュ54の下半部を、下側ケース半部における軸受部200cの下半部に嵌入する。その後、上側ケース半部としての残りのケース半部200Aまたは200Bを下側ケース半部に載せることで、軸受52及び油シール53の上半部が上側ケース半部の断面視半円状の溝200d・200qに、また、ブッシュ54の上半部が上側ケース半部に形成された軸受部200cの上半部に、それぞれ自然に嵌入し、これにより、軸受52・油シール53・ブッシュ54のケース200への装着を完了する。なお、後述のブッシュ55・56及び油シール57も同様にしてケース200に装着される。
【0204】
一方、単一車軸204を支持する際にケース200の左右内側端部となるケース半部200A・200Bの部分には、車軸を支持するための変形加工をしない。すなわち、規格化したケース200の左右内側端部は、車軸を支持するための孔のない状態で保持されて、ケース200からの油の漏れを防ぐのである。
【0205】
図27に示すように、左右一対の車軸としての一対の車軸204・205を支持する場合は、単一車軸204を支持する際にケース200の左右内側端部となるケース半部200A・200Bの部分には、軸受52嵌入用の溝200dに代わって、機械加工を施して、断面視半円状の溝200tを車軸204の外周面に沿うように延伸形成する。両溝200tは、ケース半部200A・200Bの接合により断面視円形孔を形成するものであり、これらの溝200tに、軸受52に代わって車軸204に設けたブッシュ156が嵌入される。また、車軸案内部200eにも、車軸204に設けたブッシュ55が嵌入される。両ケース半部200A・200Bを接合することにより、ブッシュ55・156を両ケース半部200A・200Bにて挟持し、該ブッシュ55・156を介して車軸204を軸支する。
【0206】
ギア室GC内の車軸案内部200eと軸受部200cとの間に、車軸204・205同士を差動連結する差動機構Dが配置される。軸受部200c内のブッシュ54は、車軸204と軸芯方向反対側に差動機構Dより延設される車軸205に装着されている。すなわち、差動機構Dの近傍にて、ブッシュ55・54が204・205それぞれを軸支している。
【0207】
さらに、車軸204を支持する部分と左右反対側、すなわち、車軸204のみを単一車軸として支持する際にはケース200の左右内側端部となる各ケース半部200A・200Bの部分には、平面視で車軸204支持用に形成される溝200t・200qを有する凹部と左右対称状に、断面視半円環状の溝200r・200sを周設した断面視半円状の凹部を機械加工にて形成する。両ケース半部200A・200Bを接合することで断面視円形孔となる溝200rには、車軸205に設けたブッシュ56が嵌入され、両ケース半部200A・200Bを接合することで断面視円形孔となる溝200sには、車軸205に設けた油シール57が嵌入される。ケース半部200A・200Bを接合することで、これらによりブッシュ56及び油シール57を挟持し、該ブッシュ56を介して車軸205を軸支する。
【0208】
このように、図27の実施例においては、ケース半部200A・200Bを接合することにより、両者間で挟持するブッシュ55・156を介して車軸204を軸支し、両者間で挟持するブッシュ54・56を介して車軸205を軸支し、車軸204に設けた油シール53を挟持し、車軸205に設けた油シール57を挟持する。
【0209】
以上の車軸電動ユニットBの説明では触れていなくても、車軸電動ユニットAに適用可能な様々な構造が、車軸電動ユニットBにも適用可能 なのは、当業者には自明のことである。特に、車軸電動ユニットAの実施例で用いたものと同じ符号は、車軸電動ユニットAの実施例での該当するものと同じ機能を有する部材や部分をさしている。
【0210】
なお、電動モータアセンブリ202のコキング・トルクが大きく芝刈機100を牽引するときに車軸204がスムーズに空転しない場合には、前述のクラッチTCの如く、車軸電動ユニットBにおけるモータ軸3から車軸204までの伝動系のいずれかの部分に機械式の車両牽引用クラッチ(前述のクラッチTC参照)を設けるとよい。
【0211】
車軸電動ユニットCについて、図28〜図31より説明する。車軸電動ユニットCは、ケース300を有し、ケース300より左右外側に車軸4が突出する。ケース300は、後述の分割ケース部310・311・312を備え、上下貫通状のボルト孔を有するボス300aがケース部310・311・312に形成されていて、車体フレーム10への取付部となっている。なお、図30に示すように、車体フレーム10にはボス300aの上面に当接されるタブ320が備えられており、ボルト321を各ボス300aのボルト孔に螺入してタブ320をケース300に締結している。
【0212】
ケース300に支持される車軸4が水平仮想面に配されると仮定して、ケース300は、ボス300aの上端・下端からの距離が等しい位置に該水平仮想面が配されるように形設されている。したがって、一方が他方を上下反転した状態であるように一対の車軸電動ユニットCを配設して、左右の車軸電動ユニットCとした場合に、左右両車軸電動ユニットCのボス300aの上面が等しい高さに配置され、これらを車体フレーム10のタブ320に当接するのに便利である。したがって、ケース300を上下反転して、車軸4が左外側に突出する状態の左車軸電動ユニットCのケース300としても、車軸4が右外側に突出する状態の右車軸電動ユニットCのケース300としても用いることができる。さらに、モータ軸3の軸芯も該水平仮想面に配置されている。
【0213】
ケース300は、水平面で上下の分割部に分割可能なのではなく、鉛直の面で、左・中・右の分割ケース部310・311・312に分割可能となっている。中ケース部311の鉛直状の開口面に、車軸支持ケース部312の左または右の鉛直状の開口面を接合し、ケース部311・312同士を図30に示すボルト341にて締結して、この中にギア室GCを構成している。そして、内部にモータ室MCを構成するモータケース部310の鉛直開口面を、中ケース部311を挟んで車軸支持ケース部312とは左右反対側にて、中ケース部311の右または左の鉛直面に接合し、図28、30に示す如きボルト340にて中ケース部311に締止されている。
【0214】
電動モータアセンブリ302の構造、電動モータアセンブリ302のモータケース部310への組み入れ、及び、電動モータアセンブリ302を内装したモータケース部310の中ケース部311への取付について、図28〜図31より説明する。モータアセンブリ302は、車軸電動ユニットAにおける前述の電動モータアセンブリ2と同様に、モータ軸3、モータ軸3に固設したドラム状のロータ35、該ロータ35の外周部の内周面に固設した永久磁石36を備えている。電動モータアセンブリ302は、モータ軸3と同一軸芯上に配されるカップ状のステータ330を備えており、該ステータ330の外周面に電機子巻線34を固設して、これを囲むように配置されるロータ35の永久磁石36に対峙させている。ステータ330のギア室GCと反対側の軸芯方向端部はモータケース部310の鉛直壁内側に固定される。
【0215】
カップ状のステータ330内に、モータ軸3上に固設されるロータ35の中心ボス35bを配置しており、ステータ330の、車軸4のケース300からの突出側とは左右反対側となる側の鉛直端面を、モータケース部310の鉛直壁の内面に固着し、該鉛直面の中心孔330aに、ロータ35の中心ボス35bより突出するモータ軸3を挿通させている。ステータ330の該中心孔330aに隣接するように該モータケース部310の鉛直壁内に装着した軸受43及び油シール331を配置し、該軸受43及び油シール331に、該中心孔330aを挿通したモータ軸3が挿通される。該モータケース部310の鉛直壁の外面には集線ボックス335が固設されていて、油シール331に挿通されたモータ軸3の外端部が集線ボックス335を回転自在に通過し、その外端に冷却ファン25が固設される。
【0216】
電機子巻線34に電気接続されるハーネス85は、図31に示すように、ケース300のモータケース部310に外付けされる集線ボックス335に接続されるので、ハーネス85挿通用にケース300に孔を開口したり、該孔にシールを装着したりする必要はない。
【0217】
電動モータアセンブリ302には、車軸電動ユニットAの電動モータアセンブリ2と同様に、ロータ35(すなわちモータ軸3)の回転角度を検出するため、カップ状部35aに形成した環状凸部35c、該環状凸部35c内周面に設けた被検出体35d、及び被検出体35dの回転位置を検出する回転角度検出器38を備えている。ただし、回転角度検出器38は、モータ軸支持フレーム37のようにステータ330に固定されておらず、中ケース部311に沿って配置されて該中ケース部311とモータケース部310とで挟持固定されるモータ軸支持フレーム337に固設され、回転角度検出器38に接続されるハーネス88は、図31を参照して後述するようにモータ軸支持フレーム337及び中ケース部311に挿通される。
【0218】
モータ軸3、ステータ330、ロータ35を組み合わせた状態の電動モータアセンブリ302を内装したモータケース部310を中ケース部311に取り付ける前に、モータ軸支持フレーム337は、その中心ボス337aに軸受42を装着した状態で、図29、図30に示す位置決めピン338にて、中ケース部311に係止しておく。なお、中心ボス337aの外周面と、それを囲む中ケース部311の円形孔311aの内周面との間に、鉛直リング状の網である油フィルタ350が装着されている。回転角度検出器38も、モータ軸支持フレーム337に固設されている。
【0219】
図30、図31に示すように、モータ軸支持フレーム337の上下一対の孔337bが中ケース部311の上下一対の孔311bにそれぞれ合わせられており、合わせた一対の上孔337b・311bか一対の下孔337b・311bのいずれか(本実施例では上孔337b・311b)を選択し、ハーネス88の電線88aを選択した孔337b・311bに挿通して、回転角度検出器38に接続している。選択した中ケース部311の孔311b(本実施例では上孔311b)には、外側に突出する管継手339が装着されて、該管継手339に該電線88aを挿通しており、該管継手339の外端には、該ハーネス88の電線88aに外装される保護管88bの端部を接続している。残りの孔311b(本実施例では下孔311b)はプラグ342が螺入されて閉じられている。
【0220】
この後、電動モータ302を内装したモータケース部310の鉛直開口部を囲う外周縁を、その環状の段差部をモータ軸支持フレーム337の外周縁に嵌合させつつ、中ケース部311の鉛直面に当接させる。なお、モータケース部310を中ケース部311にアクセスさせる中で、モータ軸3を、モータ軸支持フレーム337内の軸受42に挿通させ、ロータ35に固設した被検知体35dを、モータ軸支持フレーム337に固設した回転角度検出器38に対峙させる。こうして、モータ軸支持フレーム337の外周縁部をモータケース部310の外周縁部と中ケース部311の鉛直面とで挟持した状態にして、ボルト340にてモータケース部310の外周部を中ケース部311に締止することで、電動モータアセンブリ302を内装したモータケース部310の中ケース部311への取付が完了し、すなわち、ケース300に、電動モータアセンブリ302を内装したモータ室MCが構成される。
【0221】
車軸支持ケース部312は、電動モータアセンブリ302を内装したモータケース部310を中ケース部311に取付完了するまでは、中ケース部311に取り付けられない。つまり、ギア室GCはまだ構成されておらず、中ケース部311の、モータケース部310とは左右反対側の鉛直側面には大きな開口部が設けられている状態である。モータケース部310の中ケース部311への取付が完了すると、モータ軸3の出力端部がモータ軸支持フレーム337内の軸受42を介して中ケース部311の内部空間に突出するので、該中ケース部311の開口部を介して、この突出するモータ軸3の出力端部に、該モータ出力ギア65やブレーキロータ62を装着し、さらに、ブレーキ機構Brの他の部材、減速ギア列Gの他の部材、また、車軸4を中ケース部311の内部空間に装着する。
【0222】
ブレーキ機構Brを構成するため、中ケース部311には、鉛直のブレーキ軸61を支持すべく、図30に示すように、上下対向状のボス300b・300cが形成されている。ボス300bは外側に対して閉じていて、ブレーキ軸61の端部がここから突出しないようになっており、ボス300cは、上下貫通されていて、外側に開口している。ボス300bがボス300の上にあるか下にあるかは、車軸電動ユニットCが左のユニットか、該左のユニットを上下反転したものに該当する右のユニットかによる。クランク状のブレーキアーム60はボス300cより突出する鉛直ブレーキ軸61の端部に固設されて、その操作端60aを、ボス300cがボス300bの上下いずれにあるかにかかわらず(本実施例では、ボス300cをボス300b下方の下側ボスとしている)、常に車軸4の軸芯と同じ高さとしている。車軸伝動ユニットAの場合と同様に、操作端60aには、芝刈機100における制動操作具より延設されるリンク部材(ワイヤ・ロッド等)に接続して、該制動操作具に機械的に接続するか、あるいは電動アクチュエータ(図示せず)の可動部に接続して、該制動操作具に電気的に接続する。
【0223】
減速ギア列Gを構成するため、カウンタ軸66の軸芯方向各端は、分割ケース部に挟持されるのではなく、ケース部311・312それぞれに形成される円形ボス311c・312cそれぞれに嵌入される。車軸支持ケース部312を中ケース部311に取り付けるまでに、カウンタ軸66の一端のみを中ケース部311のボス311cに嵌入しておき、ギア67・68をカウンタ軸66に装着する。また、車軸支持ケース部312を中ケース部311に取り付けるまでに、車軸4の端部を軸支する軸受51を中ケース部311に形成したボス311dに嵌入しておく。
【0224】
一方、車軸支持ケース部312を中ケース部311に取り付けるまでに、軸受52及び油シール53を介して車軸4を車軸支持ケース部312に支持し、該車軸4にファイナルギア69と車両牽引用クラッチTCとを設け、ギアの擦れで発生する金属粉を捕捉するための円板状の磁石345を車軸支持ケース部312の壁にボルト締止する。車軸支持ケース部312を中ケース部311に取り付ける際には、カウンタ軸66の突出端部をボス312cに嵌入し、車軸4の端部を軸受51に嵌入し、ブレーキパッド64をブレーキロータ62と車軸支持ケース部312の壁との間に配設する。最後に、ボルト341にて車軸支持ケース部312を中ケース部311に締止して、車軸電動ユニットCを完成する。
【0225】
以上の車軸電動ユニットCの説明では触れていなくても、車軸電動ユニットA・Bに適用可能な様々な構造が、車軸電動ユニットCにも適用可能なのは、当業者には自明のことである。特に、車軸電動ユニットAまたはBの実施例で用いたものと同じ符号は、車軸電動ユニットAまたはBの実施例での該当するものと同じ機能を有する部材や部分をさしている。
【0226】
さらに、当業者なら理解できるように、以上の説明は、開示の装置の推奨例であって、以下の請求項にて画定される本発明の範囲を超えない限り、様々な変更や応用が可能である。
【0227】
A 車軸電動ユニット
1 ケース
1A、1B ケース半部
1c、1e、1f ボス
2 電動モータアセンブリ
3 モータ軸
4 車軸
G 減速ギア列
J 接合面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車軸と、
該車軸を駆動するための電動モータと、
該電動モータの出力軸であって、該車軸と非同一軸芯上のモータ軸と、
該モータ軸と該車軸との間に介装される減速ギア列と、
該車軸、該電動モータ、該モータ軸、該減速ギア列を内装するケースとを備えた車軸電動ユニットであって、
該ケースにはフレームに取り付けられる取付部が設けられ、該取付部は、該ケースを上下反転しても車軸中心から一定の高さを有していることを特徴とする車軸電動ユニット。
【請求項2】
前記ケースは、間に水平の接合面を介して第一・第二分割ケース部を接合したものとなっており、
前記車軸の軸芯は該水平接合面上に配置されており、
該第一分割ケース部は第一取付部を、該第二分割ケース部は第二取付部を有し、該第一・第二取付部のそれぞれが該フレームに取り付けられる該ケースの取付部となり得るものであり、該第一・第二取付部は、両者間の水平接合面に対し、上下で均等な距離を有していることを特徴とする請求項1記載の車軸電動ユニット。
【請求項3】
前記モータ軸の軸芯を該水平接合面に配することを特徴とする請求項2記載の車軸電動ユニット。
【請求項4】
車軸と、
該車軸を駆動するための電動モータと、
該電動モータの出力軸であって、該車軸と非同一軸芯上のモータ軸と、
該モータ軸と該車軸との間に介装される減速ギア列と、
該減速ギア列を介して該モータ軸から該車軸までに及ぶ動力列のいずれかの要素を制動するよう構成されたブレーキと、
該車軸、該電動モータ、該モータ軸、該減速ギア列、該ブレーキを内装するケースとを備えた車軸電動ユニットであって、
該ブレーキ操作用のブレーキアームを該ケース外に延出しており、該ブレーキアームの、ブレーキ操作具に操作連係する接続部は、該ケースを上下反転しても車軸中心から一定の高さを有していることを特徴とする車軸電動ユニット。
【請求項5】
前記ケースは、前記ブレーキアームを外側に延出させるための上下一対のアーム突出部を有しており、
該両アーム突出部同士は、該水平接合面からの鉛直方向距離が均等であり、
該ブレーキアームは、該両アーム突出部のうちから選択した一方より該ケース外に延出され、選択しなかったアーム突出部はシールされることを特徴とする請求項4記載の車軸電動ユニット。
【請求項6】
車軸と、
該車軸を駆動するための電動モータと、
該電動モータの出力軸であって、該車軸と非同一軸芯上のモータ軸と、
該モータ軸と該車軸との間に介装される減速ギア列と、
該減速ギア列を介して該モータ軸から該車軸までに及ぶ動力列のいずれかの部分に設けられる手動操作可能なクラッチであって、手動での該クラッチの切り操作により、該車軸を該電動モータの出力より遮断可能としたものと、
該車軸、該電動モータ、該モータ軸、該減速ギア列、該クラッチを内装するケースとを備えたことを特徴とする車軸電動ユニット。
【請求項7】
左右一対の車輪と、該車輪を各別に駆動するための左右一対の車軸電動ユニットとを備える車両であって、
左右両車軸電動ユニットは互いに同一であって、それぞれ、
車軸と、
車軸を駆動するための電動モータと、
該電動モータの出力軸であって、該車軸と非同一軸芯上のモータ軸と、
該モータ軸と該車軸との間に介装される減速ギア列と、
該車軸、該電動モータ、該モータ軸、該減速ギア列を内装するケースとを備えていることを特徴とする車両。
【請求項8】
前記左右両車軸電動ユニットは、一方が他方を上下反転したものに該当するように配置されることを特徴とする請求項7記載の車両。
【請求項9】
前記左右両車軸電動ユニットは、これらの両車軸を前記車両の左右方向に延伸する同一軸芯線上に配置し、
該両車軸間の該同一軸芯線の中心における該車両の前後方向に延伸する中心線を介して線対称に配置されることを特徴とする請求項7記載の車両。
【請求項10】
前記左右両車軸電動ユニットは、これらの両車軸を同一線上に配置し、
該両車軸間におけるその同一軸芯線上における車両の左右中心を中心とする点対称に配置されることを特徴とする請求項7記載の車両。
【請求項11】
車軸と、
該車軸を駆動するための電動モータと、
該車軸及び該電動モータを内装するケースとを備えた車軸電動ユニットであって、
該ケースは、間に接合面を介して第一・第二分割ケース部を接合したものとなっており、該接合面を介して該第一・第二分割ケース部に分割される孔を有し、
該孔に電線を挿通する電線挿通材を嵌入して該第一・第二分割ケース部にて挟持していることを特徴とする車軸電動ユニット。
【請求項12】
前記孔に嵌入した前記電線挿通材は、前記接合面に沿って見た場合に、該接合面とは直角方向に該接合面より該第一分割ケース部内へと延伸される第一半部と、該接合面とは直角方向に該接合面より該第一分割ケース部内へと延伸される第二半部とを有する形状となっており、該第一・第二各半部は、該接合面沿いの幅を有し、該幅が該接合面より遠ざかるほどに小さくなることを特徴とする請求項11記載の車軸電動ユニット。
【請求項13】
前記孔及び該孔に嵌入した前記電線挿通材は、それぞれ、前記接合面に沿って見た場合に、該接合面上に延伸する対角線を有する菱形状であることを特徴とする請求項12記載の車軸電動ユニット。
【請求項14】
ケースと、
該ケースに支持される車軸と、
該車軸を駆動すべく該ケース内に配設される電動モータと、
該ケースに支持され、該車軸に駆動連結される、該電動モータの出力軸としてのモータ軸とを備え、
該電動モータは、テーパー状の内周面を有する中空の出力回転部材を備え、
該モータ軸は、テーパー状の外周面を有しており、
該出力回転部材と該モータ軸とを軸芯方向に相対移動させて、該出力回転部材の該テーパー状の内周面と該モータ軸の該テーパー状の外周面とを押圧嵌合することにより、該出力回転部材を該モータ軸に固設したことを特徴とする車軸電動ユニット。
【請求項15】
ケースと、
該ケースにて支持される車軸と、
該ケース内に配設されて該車軸を駆動するモータアセンブリとを備えた車軸電動ユニットであって、
該モータアセンブリは、
該車軸に連動連結されるモータ軸と、
それぞれの内輪を該モータ軸に係合した一対の第一・第二軸受と、
該第一・第二軸受間で、磁石を有して該モータ軸に固設されるロータと、
電機子巻線を有して該ケースに移動不能に係合したステータと、
該ステータに取り外し可能に固定される支持フレームとを備えており、
該ステータには、第一係止用突起が形成されており、
該ステータは、該第一軸受の外輪に係合され、該第一係止用突起を、該モータ軸の軸芯方向において該第二軸受とは反対側の該第一軸受の外輪の側面の外側に配置しており、
該支持フレームには、第二係止用突起が形成されており、
該支持フレームは、該第二軸受の外輪に係合され、該第二係止用突起を、該モータ軸の軸芯方向において該第一軸受とは反対側の該第二軸受の外輪の側面の外側に配置しており、
該第一・第二係止用突起のうちの一方が、それに対応する該第一または第二軸受の外輪の側面に当接することで、該第一・第二係止用突起のうちの他方が、それに対応する該第一または第二軸受の外輪の側面との間に隙間を有しており、
該隙間に隙間埋め部材を嵌入して、該当の第一または第二軸受の、該モータ軸の軸芯方向における該当の第一または第二係止用突起に向かっての移動を阻止することを特徴とする車軸電動ユニット。
【請求項16】
前記モータ軸は、径の異なる複数の部分を有することで、一対の段差を有しており、これらを該第一・第二軸受それぞれの軸芯方向内側端面に当接させて、該第一・第二軸受の該モータ軸の軸芯方向における互いに向かっての移動を阻止するものであり、
前記ロータはテーパー状の内周面を有しており、
前記モータ軸は、該ロータの該テーパー状の内周面に係合するテーパー状の外周面を有し、該ロータにて、前記第一・第二軸受のうち一方に向かって該モータ軸の軸芯方向に押圧されており、該一方の第一または第二軸受が、その対応する第一または第二係止用突起と当接するものであることを特徴とする請求項15記載の車軸電動ユニット。
【請求項17】
内部にモータ室を形成したケースと、
該ケースに支持される車軸と、
該モータ室内に配設されて該車軸を駆動するモータアセンブリとを備えた車軸電動ユニットであって、
該モータアセンブリは、
該車軸に連動連結されるモータ軸と、
磁石を有して該モータ軸に固設されるロータと、
電機子巻線を有し、該ケースに移動不能に係止されるステータと、
該ステータに固定されて該モータ軸を軸支する支持フレームとを備えており、
該ロータ及び該電機子巻線は、該モータ軸の軸芯と直角方向の断面視で、該ステータと、該ステータに固定された該支持フレームとにて囲まれる空間内に配置されており、
該支持板に固定した該支持フレームは、開口部を有し、該開口部を介して、該ロータ及び該電機子巻線が該モータ室に曝されていることを特徴とする車軸電動ユニット。
【請求項18】
前記ケースは、接合面を介して一対のケース半部同士を接合することで構成され、
該両ケース半部のうちの一方に、該接合面と平行な壁面を形成し、
前記支持フレームに、該接合面と平行な面を設け、
該支持フレームの該面を該ケース半部の該壁面に当接することで、該支持フレームを該ケース半部に固定し、これにより、前記ステータを該ケースに移動不能に係止していることを特徴とする請求項17記載の車軸電動ユニット。
【請求項19】
前記モータ室には油が充填されて、油溜まりとなっており、前記支持フレームの前記開口部を介して前記ロータ及び前記電機子巻線に油を供給可能としていることを特徴とする請求項17記載の車軸電動ユニット。
【請求項20】
前記ケースは、前記モータ室に該当する外面にフィンを有していることを特徴とする請求項17記載の車軸電動ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2011−121573(P2011−121573A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86597(P2010−86597)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000125853)株式会社 神崎高級工機製作所 (210)
【Fターム(参考)】