説明

車載ナビゲーション装置

【課題】従来のナビゲーション装置では事前に交差点地点の音声案内が不要とわかっている場合に、音声案内を取り消すことなくアイコンを表示したまま走行している状態でラジオから流れてくる情報を聞き逃したくないために音声案内を取り消すようにした場合、画面上の小さなアイコンを探して操作せねばならず安全運転に支障をきたすといった問題が発生する可能性がある。
【解決手段】ラジオ或いはテレビ等の放送音声を出力中であるかどうかを判定する放送検出手段と、自車位置から音声案内が開始される音声案内開始地点或いは誘導地点までの距離が所定距離内にあるかどうかを判定する判定手段と、放送検出手段によって放送音声を出力中であることを判定すると共に、判定手段によって自車位置から音声案内開始地点或いは誘導地点までの距離が所定距離内あると判定されると音声案内の音量レベルを下げる或いはミュートする音量制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車に搭載され目的地までの推奨経路を地図上に表示して案内する車載ナビゲーション装置に係り、特にラジオ放送、テレビ放送等の放送機能を備えた車載ナビゲーション装置に関するものである。
尚、放送機能を備えたナビゲーション装置とはナビゲーション装置そのものに放送受信機能を一体化したものや、放送受信機をケーブルで結んでナビゲーション装置から音声や映像情報を流すもの等も含むものである。
【背景技術】
【0002】
現在の車載ナビゲーション装置では、目的地までの推奨経路を探索して探索された経路に沿って車両を誘導するため、右折や左折すべき交差点の手前で交差点をどの方向に進行すべきかを音声で案内したり、交差点直前で交差点をデフォルメした図を表示して車両が進むべき方向を矢印で表示したりしている。
【0003】
ところで、一般にナビゲーション装置の音声案内は自車位置から交差点までの距離に応じてラジオやテレビの(以下ラジオで説明する)の音声に割込んだ形で出力されるため、ラジオのニュースなど聞いている場合にも交差点に関する音声案内が出力されるので搭乗者に興味のある内容を聞き逃してしまうという不具合があった。
【0004】
このような背景で近年の車載ナビゲーション装置の中には前述の音声案内を中止できる機能を持ったナビゲーション装置が提案されている。
例えば、特開平8−327388号公報(特許文献1)では事前に経路上の誘導地点での音声案内を確認することができ、不必要と思われる地点での音声案内を中止させることができるナビゲーション装置も提案されている。
具体的には音声案内を行なう交差点地点を地図上にアイコンで表示し、そのアイコンを指定することで該当地点での音声案内を取り消すことができるようになっている。
【特許文献1】特開平8−327388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記したナビゲーション装置では事前に交差点地点の音声案内が不要とわかっている場合に有効であって、音声案内を取り消すことなくアイコンを表示したまま走行している状態で前述のようにラジオから流れてくる情報を聞き逃したくないために音声案内を取り消すようにした場合、画面上の小さなアイコンを探して操作せねばならず安全運転に支障をきたすといった問題が発生する可能性がある。
このような点に鑑み、本発明はラジオ放送等を聴取している時、ユーザが聞き逃したくない情報を音声案内によって掻き消されない機能、或いは交差点に至る所定期間の間ラジオ放送を録音し後で再生する機能を備えた車載ナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴は、ラジオ或いはテレビ等の放送音声を出力中であるかどうかを判定する放送検出手段と、自車位置から音声案内が開始される音声案内開始地点或いは誘導地点までの距離が所定距離内にあるかどうかを判定する判定手段と、放送検出手段によって放送音声を出力中であることを判定すると共に、判定手段によって自車位置から音声案内開始地点或いは誘導地点までの距離が所定距離内あると判定されると音声案内の音量レベルを下げる或いはミュートする音量制御手段とを備えることを特徴とする車載ナビゲーション装置にある。
【0007】
本発明の第2の特徴は、ラジオ或いはテレビ等の放送音声を出力中であるかどうかを検出する放送検出手段と、誘導地点或いは音声案内が開始される音声案内開始地点から所定距離に設定された音声案内録音区間に自車位置があるかどうかを判定する判定手段と、放送検出手段によって放送音声を出力中であることを判定すると共に、判定手段によって音声案内録音区間に自車があると判定されると放送音声を録音する放送音声録音手段を備えることを特徴とする車載ナビゲーション装置にある。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明によれば放送に含まれる聞き逃したくない情報をナビの音声案内により掻き消されることがなくなるものである。
また、本発明によれば音声案内が設定されている交差点付近で所定期間だけラジオ放送等の音声を録音するので後で再生して聴取することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の一実施例を図面に基づき詳細に説明するが、以下に説明する実施例に限られることなく本発明は種々の変形、応用ができることは言うまでもない。
【実施例1】
【0010】
図1に本発明の実施例である車載ナビゲーション装置の主要部を示しており、車載ナビゲーション装置1は、操作部10、ナビゲーション部20、制御部30、出力制御部40、スピーカ50、ラジオチューナ60、TVチューナ70、CD/DVD機構80等から構成されている。
【0011】
操作部10はタッチパネルスイッチ機能を備えたLCDディスプレイ12、電源のON/OFFを行なったり、現在地の地図を表示させたりするキー等で構成される操作キー14、搭乗者によるタッチパネルや操作キーを使っての入力に応じて処理を行なったり、ナビゲーション部から出力される画像データをLCDディスプレイ12に表示させたりする操作制御部16等から構成されている。
【0012】
ナビゲーション部20は、車両に搭載されたジャイロ、車輪速センサ、GPSセンサ等のセンサ類からの情報を基にアプリケーションプログラムによって自車位置を算出する処理や現在地から中継地或いは目的地までの経路を探索する処理などを行なうナビゲーション制御部22、誘導のための音声案内を生成する音声案内生成部24等で構成されている。
【0013】
制御部30は車載ナビゲーション装置1の全体を制御するもので、アプリケーションプログラムに基き演算処理を実行するCPU(Center Processing Unit)、演算に必要な作業エリアとして機能する読み出し/書き込み可能なRAM、アプリケーションプログラム、アプリケーションプログラムの実行に使用される道路データ等の地図データである地図情報、演算に必要な定数等が記憶されているROM等で構成されている。
【0014】
出力制御部40は、ラジオチューナ60、TVチューナ70、CD/DVD機構80から出力される音声データのいずれかを選択したり、ナビゲーション部20の音声案内生成部24から出力される音声案内データ100を合成してスピーカ50に出力する等の処理を行なう。また、CPUからの指示によって各音声データの音量レベルの制御も行なう。
【0015】
次に図2を用いて、音声案内を中止するための事前処理及び本発明の音声案内中止処理の考え方について説明する。
【0016】
図2は、ナビゲーション部20にて探索された推奨経路300を直線で表したもので、誘導地点(右左折すべき交差点等)200と、その手前での音声案内(例えば、“300m先右方向です”というメッセージ)を出力する地点202が表示されている。
音声案内地点202より所定距離Tだけ手前から誘導地点200までの期間が音声案内中止区間210として設定されている。この期間にタッチパネルの任意の場所が押されたら即時に音声案内の音量レベルを低減、もしくはミュートするというのが本発明の考え方である。
【0017】
また、この他に音声案内地点202より所定距離Tだけ手前から誘導地点200までの期間をラジオ放送録音期間して設定することもできる。この期間にタッチパネルの任意の場所が押されたら即時にラジオ放送を録音し、誘導地点を過ぎると録音された放送を再生するというのが本発明の別の考え方である。
【0018】
次に図3を用いて音声案内の出力レベルを減衰させる具体的な処理について説明する。
まず、図1において車載ナビゲーション装置1が目的地までの推奨経路を誘導中に搭乗者によってタッチパネルが押されると、操作制御部16がその動作を検出して制御部30にタッチパネルが押されたことを制御信号S1として通知する。
【0019】
この制御信号S1が入力されると、制御部30はこれに応答して図3に示すタッチパネル割込み処理を起動させる。
このタッチパネル割り込みが起動されるとステップ102(以下ステップをSと表記する)に進み、ラジオチューナ60あるいはTVチューナ70が選択されているかどうかを判断し、ラジオチューナ60あるいはTVチューナ70以外が再生されていると判断(S102でNoの場合)されると通常のタッチパネル処理に移行する。
【0020】
タッチパネル処理として押された位置に応じた処理、例えば、押された位置が画面中央にくるように地図をスクロールさせる処理などを行なう。尚、どの音楽ソースをスピーカ50に出力させるか、制御部30が制御信号S2により出力制御部40に指示を出して行なっているので制御部30で判断できる。
【0021】
一方、S102でラジオチューナ60あるいはTVチューナ70からの音声が出力されているかどうかを判定し、いずれかのチューナの音声が出力されている場合(S102でYes)にはS104に進み、車両が図2に示した音声案内中止区間内かどうかを判定する。
S104の判定は図2に示されているように自車位置から誘導地点200或いは音声案内地点202までの距離で行なわれるものであり、図2の場合は自車位置から音声案内地点までの距離が設定距離Tに達したかどうかで判断されるようになっている。尚この判定はナビゲーション制御部22にて行ない、その判定結果を制御部30へ制御信号S3として通知する。
【0022】
制御部30で制御信号S3を受けて、自車が音声案内中止区間外であるという判断がされると通常のタッチパネル処理へ移行する。
一方、S104で自車が音声案内中止区間内であると判断されるとS106へ進んで音声案内音量レベルを下げる。具体的には制御信号S2を用いて出力制御部40に指示を出すことで音声案内音量レベルの低減を行なうものである。このときにはラジオ放送の音量レベルはそのまま維持されている。
【0023】
S106で音声案内音量レベルが低減された後にS108に進み、自車が音声案内区間終了地点まで、つまり誘導地点200に到達したことを判断し、誘導地点200まで達していなければ音声案内音量レベルを低減させた状態とし、自車が音声案内期間終了地点である誘導地点200に達したことが検出されたらS110に進んで音声案内音量レベルを元に戻して本タッチパネル割込み処理を抜けるものである。
【0024】
尚、本実施例ではラジオ等から流れる音声を聞きやすくするために音声案内音量レベルを低減させるようにしたが、音声案内を完全にミュートするようにしても良い。
このように、本実施例によれば、放送に含まれる聞き逃したくない情報をナビの音声案内により掻き消されることがなくなるものである。
【0025】
次に本発明の他の実施例を図4に基づき説明するが、図2の実施例との相違点はラジオ
チューナ60及びTVチューナ70の後段に録音部90を設けた点である。
この実施例は図2に示す音声案内中止区間210の代わりに音声案内録音区間を設定し、音声案内を通常の音量レベルで出力するが声案内録音区間については選択されているチューナの音声を内部の録音専用メモリに記録しておくものである。
【0026】
尚、録音後に搭乗者の指示により録音された放送内容が再生されたら録音データは消去するか、あるいは次回の録音時に上書きするように構成されている。
【0027】
以下、図5(a)(b)を用いて図4に示す実施例における割り込み処理について説明すると、図5(a)に示す処理は図2に示すように自車位置が音声案内地点より所定距離T手前の地点に到達した場合に割込みが発生して特定地点割り込み処理が実行されるものである。
まず、特定地点割り込み処理が起動されるとS202でラジオチューナ60あるいはTVチューナ70からの音声が出力(選択)されているかどうかを判定する。
【0028】
このS202でラジオチューナ60あるいはTVチューナ70からの音声が出力されていない場合にはそのまま本処理を抜け、ラジオチューナ60あるいはTVチューナ70からの音声が出力されていた場合はS204に進んで選択されているチューナの音声の録音を開始して本割り込み理所を抜ける。
【0029】
一方、自車位置が誘導地点200を通過した場合に更に割込みが発生して、図5(b)に示される誘導終了割り込み処理が実行される。この誘導終了割り込み処理が起動されると、S302に進んでチューナの音声が録音されているかどうか判定し、S302で放送が録音されていなければそのまま本処理を抜け、放送が録音されていればS304に進んで録音を停止させた後に本処理を抜けるものである。
【0030】
以上説明した本実施例によれば、音声案内が設定されている交差点付近で所定区間だけラジオ放送等の音声を録音するので後で再生して聴取することができるものである。
尚、音声出力が切り替えられた場合(例えばラジオからCDに切り換えられた場合)も強制的に録音を停止させることにより無駄な録音を行なわずに済むものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例である車載ナビゲーション装置の内部構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施例である車載ナビゲーション装置の音声案内中止処理を説明する図である。
【図3】本発明の一実施例である車載ナビゲーション装置の音声案内中止処理を説明するフローチャート図である。
【図4】本発明の他の実施例である車載ナビゲーション装置の内部構成を示す図である。
【図5】本発明の他の実施例である車載ナビゲーション装置の音声録音処理を説明するフローチャート図である。
【符号の説明】
【0032】
1‥車載ナビゲーション装置、10‥操作部、12‥LCDディスプレイ、14‥操作キー、16‥操作制御部、20‥ナビゲーション部、30‥制御部、40‥出力制御部、50‥スピーカ、60‥RADIOチューナ、70‥TVチューナ、80‥CD/DVD機構、90‥録音部、100‥案内音声データ、102‥ラジオ音声データ、104‥TV音声データ、106‥CD/DVD音声データ、200‥誘導地点、202‥音声案内地点、300‥推奨経路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アプリケーションプログラムに基づき少なくとも中継地或いは目的地までの推奨経路を探索する演算及びこの推奨経路の交差点等の誘導地点に近づいた時に音声案内を行なう演算を実行するCPUと、前記アプリケーションプログラムの実行に使用される道路データ等の地図データを記憶する記憶手段と、前記CPUの演算で得られた推奨経路を地図と共に表示する表示部とを備えた車載ナビゲーション装置において、
ラジオ或いはテレビ等の放送音声を出力中であるかどうかを判定する放送検出手段と、自車位置から音声案内が開始される音声案内開始地点或いは誘導地点までの距離が所定距離内にあるかどうかを判定する判定手段と、前記放送検出手段によって放送音声を出力中であることを判定すると共に、前記判定手段によって自車位置から音声案内開始地点或いは誘導地点までの距離が所定距離内あると判定されると音声案内の音量レベルを下げる或いはミュートする音量制御手段とを備えることを特徴とする車載ナビゲーション装置。
【請求項2】
アプリケーションプログラムに基づき少なくとも中継地或いは目的地までの推奨経路を探索する演算及びこの推奨経路の交差点等の誘導地点に近づいた時に音声案内を行なう演算を実行するCPUと、前記アプリケーションプログラムの実行に使用される道路データ等の地図データを記憶する記憶手段と、前記CPUの演算で得られた推奨経路を地図と共に表示する表示部とを備えた車載ナビゲーション装置において、
ラジオ或いはテレビ等の放送音声を出力中であるかどうかを検出する放送検出手段と、誘導地点或いは音声案内が開始される音声案内開始地点から所定距離に設定された音声案内中止区間に自車位置があるかどうかを判定する判定手段と、前記放送検出手段によって放送音声を出力中であることを判定すると共に、前記判定手段によって前記音声中止区間に自車があると判定されると音声案内の音量レベルを下げる或いはミュートする音量制御手段を備えることを特徴とする車載ナビゲーション装置。
【請求項3】
アプリケーションプログラムに基づき少なくとも中継地或いは目的地までの推奨経路を探索する演算及びこの推奨経路の交差点等の誘導地点に近づいた時に音声案内を行なう演算を実行するCPUと、前記アプリケーションプログラムの実行に使用される道路データ等の地図データを記憶する記憶手段と、前記CPUの演算で得られた推奨経路を地図と共に表示する表示部とを備えた車載ナビゲーション装置において、
ラジオ或いはテレビ等の放送音声を出力中であるかどうかを検出する放送検出手段と、誘導地点或いは音声案内が開始される音声案内開始地点から所定距離に設定された音声案内録音区間に自車位置があるかどうかを判定する判定手段と、前記放送検出手段によって放送音声を出力中であることを判定すると共に、前記判定手段によって前記音声案内録音区間に自車があると判定されると前記放送音声を録音する放送音声録音手段を備えることを特徴とする車載ナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項3において、前記放送音声録音手段は自車が誘導地点を通過すると録音した放送音声を再生する再生手段を備えていることを特徴とする車載ナビゲーション装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−8641(P2008−8641A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176402(P2006−176402)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(501348139)株式会社 エイチ・シー・エックス (86)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】