説明

車載用ケーブル

【課題】 高速伝送が可能でシステムの自由度が大きく、かつ高温でも伝送特性が安定した車載用ケーブルを提供する。
【解決手段】 融点が150℃よりも高いプラスチック層12を外周に設けたので、例えばエンジン等の高温体の近傍等にも敷設することができる。また、少なくともコア15部分には石英系ガラスを用いるので、伝送損失を小さくして伝送容量を大きくすることができ、大容量かつ長距離の伝送が可能になる。これにより、高速伝送が可能でシステムの自由度が大きく、かつ高温でも伝送特性が安定した車載用ケーブル10を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内で光ファイバにより光信号を伝送可能とする車載用ケーブル及びコネクタ付き車載用ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内においても画像データを表示するモニタが搭載され、自動車外に取り付けられているカメラにより撮影した画像や、無線通信回線を介して得られた画像データを表示することがなされるようになってきている。この際、自動車内の通信用途に使用されるケーブルは、高温環境下で使用されることがあるので耐熱性が要求される。また、自在に曲げて配線することが可能なように、高屈曲性が要求される。高屈曲性を有するという利点によりプラスチック光ファイバケーブルが自動車内の短距離の通信に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−212871号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示されているようなプラスチック光ファイバでは500Mbps以上の伝送速度が実現できないため、伝搬される情報量が多くなると車内での信号の通信が十分にできなくなる。また、プラスチック光ファイバは、85℃以上の高温にさらされると伝送特性が劣化するという問題がある。
【0004】
本発明の目的は、高速伝送が可能でシステムの自由度が大きく、かつ高温でも伝送特性が安定した車載用ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述した目的を達成するために、本発明にかかる車載用ケーブルは、石英系ガラスの外周にプラスチック層を有する光ファイバ心線の外周に150℃よりも融点が高い熱可塑性樹脂からなるシース層を設けたものである。
【0006】
このように構成された車載用ケーブルにおいては、融点が150℃よりも高い熱可塑性樹脂からなるシース層を外周に設けたので、例えばエンジン等の高温体の近傍等に敷設しても熱によりケーブルが溶融することがない。また、少なくともコア部分には石英系ガラスを用いるので、伝送損失を小さくして伝送容量を大きくすることができ、高速かつ長距離の伝送が可能になる。これによりシステムの自由度が大きくなる。また、高温でも伝送特性が安定した車載用ケーブルを提供することができる。
【0007】
また、本発明にかかる車載用ケーブルは、前記光ファイバ心線よりも径の大きな抗張力体を前記光ファイバ心線から離して配列し、前記シース層が前記抗張力体と前記光ファイバ心線とを一括して覆うことが望ましい。
【0008】
このように構成された車載用ケーブルにおいては、例えば車載用ケーブルの上に物を載せたり、物が落下してきたりした場合、外力による衝撃をまずは外径の大きな抗張力体が物を受け止めることになる。このため、光ファイバ心線が受ける衝撃は減少され、光ファイバ心線が溶融するおそれが減少する。つまり、光ファイバ心線が外力による衝撃から保護される、言い換えるとケーブルの耐衝撃性が向上する。
【0009】
また、本発明にかかる車載用ケーブルは、前記光ファイバ心線のコアおよびクラッドが石英を主成分としたマルチモード光ファイバであることが望ましい。
【0010】
このように構成された車載用ケーブルにおいては、コアが大きなマルチモード光ファイバを用いることにより、ケーブルを機器等と接続する際に両者の光軸が多少ずれても光学的に接続できる。したがって、石英系光ファイバを用いながらも光軸のずれについての精度はあまり要求されないので端末処理を容易にすることができ、例えば、コネクタ付けを容易に行うことができる。
【0011】
また、本発明にかかる車載用ケーブルは、前記光ファイバ心線がプラスチッククラッドファイバであることが望ましい。
【0012】
このように構成された車載用ケーブルにおいては、コアが大きなプラスチッククラッドファイバを用いることにより、ケーブルを機器と接続する際に両者の光軸が多少ずれても光学的に接続できる。したがって、光軸のずれについての精度はあまり要求されないので端末処理を容易にすることができ、例えば、コネクタ付けを容易に行うことができる。また、プラスチックは石英よりも耐衝撃性に優れるので、石英系のクラッドに比べて耐衝撃性が向上することになる。
【0013】
また、本発明にかかる車載用ケーブルは、抗張力体がある部分の厚さが光ファイバのある部分の厚さよりも厚いことが望ましい。
【0014】
このように構成された車載用ケーブルにおいては、例えば車載用ケーブルの上に物を載せたり、物が落下してきたりした場合、その物は厚さが厚い抗張力体がある部分に当たる。ケーブル側からすると厚さの厚い部分に衝撃が加わる。この部分には、光ファイバ心線がないので、光ファイバ心線に直接的に衝撃が加えられることはない。抗張力体がある部分のシース層が変形した結果光ファイバ心線に衝撃が加えられるとしても、抗張力体部分のシース層の変形により衝撃が吸収されているので、光ファイバに伝わる衝撃は小さくなっている。このため、光ファイバ心線が衝撃により損傷しない。つまり、ケーブルの耐衝撃性が向上することになる。
【0015】
また、本発明にかかる車載用ケーブルは、シース層の光ファイバ心線と抗張力体との間にノッチがあることが望ましい。
【0016】
このように構成された車載用ケーブルにおいては、ノッチ部分からシース層を裂いて光ファイバと抗張力体とを容易に分離することができ、光ファイバの端末処理を容易にする。
【0017】
また、本発明にかかるコネクタ付き車載用ケーブルは、上記の何れかに記載した車載用ケーブルをその端末でコネクタ付けしたコネクタ付き車載用ケーブルであって、前記コネクタが、前記車載用ケーブルに含まれる光ファイバ心線の径と実質的に等しい内径の挿通孔をその一端に有し、前記車載用ケーブル本体を固定する固定部分を他端に有し、かつ前記挿通孔と前記固定部分との間に前記光ファイバ心線を撓ませる空間を有し、前記車載用ケーブルの一端のシース層を除去して前記光ファイバ心線を剥き出しかつ前記抗張力体を切断し、前記光ファイバ心線を前記挿通孔に挿通し、前記光ファイバ心線の先端を前記挿通孔の先端よりも突き出す位置に収め、前記車載用ケーブルを前記固定部分で前記コネクタに固定したものである。
【0018】
このように構成されたコネクタ付き車載用ケーブルにおいては、車載用ケーブルの一端のシース層を除去して剥き出した光ファイバ心線を光ファイバ心線の径と実質的に等しい内径でコネクタに設けられている挿通孔に挿入する、つまり光ファイバ心線の被覆部がついたままコネクタを取り付けることができる。また、光ファイバ心線の先端は挿通孔の先端よりも突き出しているので、コネクタを相手方の機器やケーブルと接続すると、突き出した光ファイバ心線の先端が押されて後退し、挿通孔と固定部分との間の光ファイバ心線を撓ませる空間で光ファイバ心線が撓む。このとき光ファイバ心線の先端は挿通孔に沿って軸心を大きくずらすことなく後方へ移動する。したがって、車載用ケーブルに取り付けられているコネクタを相手側部材に装着して光ファイバ心線の先端面を相手側光ファイバ心線の先端面に突き合わせると、互いに先端面を押し合いながらしかも光軸のずれがほとんどないので、光学的に接続することができる。光ファイバ心線にマルチモード光ファイバやプラスチッククラッド光ファイバを使用するとコアが大きいので、各ケーブルに含まれる光ファイバ心線の光軸が多少ずれたとしても光学的な接続が保たれる。つまり、ファイバ心線にマルチモード光ファイバやプラスチッククラッド光ファイバを使用すると光学的接続が確実になされる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、少なくともコア部分には石英系ガラスを用いるので、伝送損失を小さくして伝送容量を大きくすることができ、高速かつ長距離の伝送が可能になる。また、融点が150℃よりも高いプラスチック層を外周に設けたので、例えばエンジン等の高温体の近傍等にも敷設しても熱による溶融がないつまり、高速伝送が可能でシステムの自由度が大きく、かつ高温でも伝送特性が安定した車載用ケーブルを提供することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の車載用ケーブルに係る第1実施形態を示す断面図である。
図1Aに示すように、本発明の第1実施形態である車載用ケーブル10Aは、石英系ガラス(コア15およびクラッド16)の外周にプラスチック層12を有する光ファイバ心線13の外周に150℃よりも融点が高い熱可塑性樹脂からなるシース層14(例えば、ナイロン12)を設けたものである。
【0021】
ここで、石英系ガラスとは、石英を主成分(例えば、重量%で90%以上)とするガラスを意味する。
車載用ケーブル10Aは、中心に石英系ガラスで形成された例えば外径φ0.01mmのコア15を有し、その外側に例えば外径φ0.125mmの石英系ガラスのクラッド16を有し、更にその外側に例えば外径φ0.25mmのプラスチック層12を有している。そして、その外側に例えば外径φ2.25mmのシース層14を設けて形成されている。
【0022】
融点が150℃よりも高い熱可塑性樹脂からなるシース層14を外周に設けたので、例えばエンジン等の高温体の近傍等にも敷設することができる。また、少なくともコア15には石英系ガラスを用いるので、伝送損失を小さくして伝送容量を大きくすることができ、大容量かつ長距離の伝送が可能になる。これにより、高速伝送が可能でシステムの自由度が大きく、かつ高温でも伝送特性が安定した車載用ケーブル10Aを提供することができる。
【0023】
光ファイバ心線にプラスチッククラッド光ファイバを使用する場合は、コアを石英系ガラスとしクラッドをプラスチック層とする。コアの径は例えば0.200mm、クラッドの径は例えば0.235mmとすることができる。プラスチッククラッド光ファイバを使用する場合は、クラッド層の周囲にさらにプラスチック層を設ける必要はなく、クラッド層のすぐ外周をシース層とすることもできる。
図1Bに示すように光ファイバ心線を2本含む車載用ケーブルとしてもよく、3本以上の光ファイバ心線を含む車載用ケーブルとしてもよい。
【0024】
次に、図2に基づいて、本発明の第2実施形態である車載用ケーブル10Bについて説明する。なお、前述した第1実施形態と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
図2に示すように、本発明の第2実施形態である車載用ケーブル10Bでは、光ファイバ心線13よりも径の大きな抗張力体17を光ファイバ心線13から離して配列し、シース層14が抗張力体17と光ファイバ心線13とを一括して覆っている。例えば、光ファイバ心線13を外径φ0.25mm、抗張力体17を外径φ0.3mmとすることができる。抗張力体には鋼線、カーボン繊維、繊維強化プラスチック(FRP)などが使用できる。ただし、ケブラ繊維は切断するときに処理時間が長くかかるので好ましくない。
なお、車載用ケーブル10Bの高さは、前述した第1実施形態にかかる車載用ケーブル10の場合の外径と同様に、例えば2.25mmとすることができるが、車載用ケーブル10Bの幅は高さよりも大きくなって、断面が横に広い楕円や長円形状となっている。
【0025】
車載用ケーブル10Bの上に物を載せたり、物が落下してきた場合、車載用ケーブル10Bに加えられた衝撃をまずは外径の大きな抗張力体17が受け止めるので、光ファイバ心線13が外力による衝撃から保護され、光ファイバ心線13が衝撃により損傷するおそれが減少する。つまり、車載用ケーブル10Bの耐衝撃性を向上することができる。光ファイバ心線にプラスチッククラッド光ファイバを使用する場合も同じである。
【0026】
次に、図3に基づいて、本発明の第3実施形態である車載用ケーブル10Cについて説明する。なお、前述した第1あるいは第2実施形態と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
図3に示すように、本発明の第3実施形態である車載用ケーブル10Cでは、光ファイバ心線13のコア15およびクラッド16が、石英を主成分とするマルチモードファイバである。例えば、コア15は外径φ0.05mmの石英系ガラスで形成され、クラッド16は外径φ0.08mmの石英系ガラスで形成することができる。また、プラスチック層12を外径φ0.15mm、抗張力体17を外径φ0.3mmとし、車載用ケーブル10Cの厚さを2.25mmとすることができる。
【0027】
このように、コア15が大きなマルチモード光ファイバを用いることにより、車載用ケーブル10Cを機器等と接続する際に両者の光軸が多少ずれても光学的に接続できるので、石英系光ファイバを用いながらも端末処理、例えば、コネクタ付けを容易に行うことができる。また、例えば車載用ケーブル10Cの耐衝撃性の向上は第2実施形態で説明したことと同様である。
【0028】
次に、図4に基づいて、本発明の第4実施形態である車載用ケーブル10Dについて説明する。なお、前述した第1〜第3実施形態と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
図4に示すように、本発明の第4実施形態である車載用ケーブル10Dでは、光ファイバ心線13がプラスチッククラッドファイバである。すなわち、光ファイバ心線13は、石英系ガラスからなる外径φ0.2mmのコア15と、プラスチックからなる外径φ0.235mmのクラッド16から構成されている。
なお、車載用ケーブル10Dの高さは、例えば2.25mmとすることができるが、車載用ケーブル10Dの幅は高さよりも大きくなって、断面が横に広い楕円や長円形状となっている。
【0029】
このように、コア15の外径が大きなプラスチッククラッドファイバを用いることにより、ケーブル10Dを機器等と接続する際に両者の光軸が多少ずれても光学的に接続できるので、端末処理、例えば、コネクタ付けを容易に行うことができる。また、クラッド16がプラスチックで形成されているので、石英系のクラッドを用いた場合に比べて耐衝撃性が向上することになる。
【0030】
次に、図5に基づいて、本発明の第5実施形態である車載用ケーブル10Eについて説明する。なお、前述した第1〜第4実施形態と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
図5に示すように、本発明の第5実施形態である車載用ケーブル10Eでは、抗張力体がある部分17aの厚さが光ファイバのある部分13aの厚さよりも厚く形成されている。例えば、コア15は外径φ0.01mm、クラッド16は外径φ0.125mm、プラスチック層12は外径φ0.25mm、抗張力体17は外径φ0.7mmであって、車載用ケーブル10Eの厚さは抗張力体17を有する部分17aにおいて最も厚く2.25mmとすることができる。光ファイバ心線13を有する部分13aの厚さは抗張力体17を有する部分17aの高さに比べて薄く、例えば1.8mmとなっている。従って、全体の断面形状としては、大小の円形を結合したような形状となっている。
【0031】
このように、抗張力体17がある部分17aの厚さが光ファイバ心線13のある部分13aの厚さよりも厚いため、例えば車載用ケーブル10Eの上に物を載せたり、物が落下してきたりした場合でも、厚さが厚い抗張力体部分17aに当たって衝撃等を受けることになる。また、抗張力体部分17aのシース層14が変形して光ファイバ部分13aに物が当たる場合でも、抗張力体部分17aのシース層14の変形により衝撃が吸収されているので、光ファイバ心線13に伝わる衝撃は小さくなっている。このため、光ファイバ心線13が損傷するおそれは減少し、車載用ケーブル10Eの耐衝撃性が向上することになる。
【0032】
次に、図6に基づいて、本発明の第6実施形態である車載用ケーブル10Fについて説明する。なお、前述した第1〜第5実施形態と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
図6に示すように、本発明の第5実施形態である車載用ケーブル10Fでは、光ファイバ心線13と抗張力体17との間のシース層14の外表面14aにノッチ18が設けられている。ノッチ18は、断面がV字の溝形状や、断面が矩形の溝形状でも良い。また、ノッチ18は、車載用ケーブル10Fの長手方向に連続して設けるのが望ましい。また、車載用ケーブル10Fの上下両面に設けるのが望ましい。
なお、図6においては、図5で説明した車載用ケーブル10Eにノッチ18を設けた形状となっているが、図1〜図4で説明した車載用ケーブル10A〜10Dでも同様にノッチを設けることが可能であることは言うまでもない。
【0033】
このように、光ファイバ心線13と抗張力体17との間にノッチ18を設けたので、光ファイバ心線13の端末処理時にノッチの部分からシース層14を裂いて光ファイバ心線13と抗張力体17とを容易に切り離すことができる。
【0034】
次に、図7および図8に基づいて、本発明の第7実施形態であるコネクタ付き車載用ケーブル10Gについて説明する。
図7はオス型コネクタ20Aを装着したコネクタ付き車載用ケーブル10Gaと、メス型コネクタ20Bを装着したコネクタ付き車載用ケーブル10Gbとを嵌合させる前の状態を示す断面図、図8は両コネクタ20A、20Bを嵌合させて両ケーブルを接続した状態を示す断面図である。なお、前述した第1〜第6実施形態で説明した車載用ケーブル10(以下において、車載用ケーブル10A〜10Fを車載用ケーブル10で総称することとする。)と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
【0035】
コネクタ付き車載用ケーブル10Ga、10Gbは、前述した車載用ケーブル10の端末にコネクタ20A、20Bを付けたものである。コネクタ20A、20Bは、車載用ケーブル10に含まれる光ファイバ心線13の径と実質的に等しい内径の挿通孔21をその一端(オス型コネクタ20Aについては左端、メス型コネクタ20Bについては右端)に有し、車載用ケーブル10本体を固定する固定部分22を他端に有し、かつ挿通孔21と固定部分22との間に光ファイバ心線13を撓ませる空間23を有している。
【0036】
固定部分22にはケーブル固定部材22aが設けられており、ケーブル固定部材22aが車載用ケーブル10のシース層14に食い込むようになっている。また、光ファイバ心線13を上方へ撓ませる空間23においては、空間23の底面23aが挿通孔21の底面と同じ高さで設けられており、光ファイバ心線13をスムーズに挿通孔21へ挿入できるようになっている。
【0037】
メス型コネクタ20Bの先端部には、オス型コネクタ20Aを嵌合させて接続するためのハウジング26が設けられており、ハウジング26の内径がオス型コネクタ20Aの外径に対応している。オス型コネクタ20Aの先端には位置合せ用凸部24が設けられており、メス型コネクタ20Bの先端に設けられている位置合せ用凹部25に嵌合して、両コネクタ20A、20Bの挿通孔21の位置を容易に合わせることができるようになっている。また、メス型コネクタ20Bのハウジング26内部には、オス型コネクタ20Aの先端の外周壁28を嵌合して固定するための嵌合凹部27が設けられている。
なお、オス型コネクタ20Aの位置合せ用凸部24の先端からは、オス型コネクタ20Aに取り付けられている車載用ケーブル10の光ファイバ心線13の先端がわずかに突出しており、メス型コネクタ20Bの位置合せ用凹部25の内部にはメス型コネクタ20Bに取り付けられている光ファイバ心線13の先端が突出している。
【0038】
従って、コネクタ20A、20Bを車載用ケーブル10に取り付ける際には、車載用ケーブル10の一端のシース層14を除去して光ファイバ心線13を剥き出し、かつ抗張力体17を切断し、光ファイバ心線13を挿通孔21に挿通し、車載用ケーブル10を固定部分22でコネクタ20A、20Bに固定する。この時に、接続する2本の光ファイバ心線13の先端面は、光学的に接続可能となるように研磨等の処理を施していておくことが望ましい。
【0039】
図8に示すように、車載用ケーブル10に装着されたコネクタ20A、20B同士を接続すると、オス型コネクタ20Aの先端部の外周壁28がメス型コネクタ20Bのハウジング26の嵌合凹部27に挿嵌されて固定されるとともに、オス型コネクタ20Aの位置合せ用凸部24がメス型コネクタ20Bの位置合せ用凹部25に挿嵌されて両挿通孔21が芯合せされる。このとき、位置合せ用凸部24から突出している光ファイバ心線13の先端面と、位置合せ用凹部25に突出している光ファイバ心線13の先端面とが当接して押し合い、その結果両光ファイバ心線13が図8中左右両外向きに押し込まれて各々空間23において撓む(撓み部分29が生じる)ことになる。
【0040】
このように構成されたコネクタ付き車載用ケーブル10Gにおいては、車載用ケーブル10の一端のシース層14を除去して光ファイバ心線13を剥き出すとともに抗張力体17を切断して除去し、光ファイバ心線13の径と実質的に等しい内径でコネクタ20に設けられている挿通孔21に光ファイバ心線13を挿入して固定部分22において固定するので、光ファイバ心線13の被覆部がついたままコネクタ20を取り付けることができる。このため、被覆部を除去する作業が不要となるばかりでなく、被覆屑等をふき取るといった清掃作業も不要となり、車載用ケーブル10にコネクタ20を容易に取り付けることができるので、コネクタ20の組み立て作業性が向上する。
シース層にノッチが設けられている場合は、ノッチの部分からシース層を裂いて、一定の長さのシース層を除去して光ファイバ心線13と抗張力体17とを剥き出す。抗張力体はシース層の端部の位置で切断工具により切断する。
また、挿通孔21と固定部分22との間には、光ファイバ心線13を撓ませる空間23を有するので、光ファイバ心線13の先端は、挿通孔21に沿って軸心を大きくずらすことなく後方へ移動可能な状態となる。従って、オス型コネクタ20Aとメス型コネクタ20Bとを接続した際に空間23において生じる両光ファイバ心線13の撓み部分29が真っ直ぐになろうとして両端面を押し合うので、接続端を固定することなく光学的に確実に接続することができることになる。
【0041】
次に、車載用ケーブル10の具体例について説明する。
図9には、前述した図1〜図6に示した車載用ケーブル10について、具体的な構成、サイズおよび伝送損失、耐衝撃性試験、接続ロス等の測定結果について示してある。なお、耐衝撃性試験では、外径φ30mm、重さ1kgの円柱部材を、高さ51mmから10回落下させて、断線なく、かつ試験前後における伝送損失(ロス)の増加が0.8dB以下であれば合格とする。また、曲げ剛性(ケーブルの屈曲性)については、全実施例とも、コネクタ付けやハーネス組み立て時の取り扱い性は良好であった。
【実施例1】
【0042】
図1に示す車載用ケーブル10Aで、コア15を外径10μmの石英系のシングルモードファイバ(SMF)、クラッド16を石英系の外径125μm、プラスチック層12を外径250μm、シース層の外径を2.25mmとした。
このときのケーブルが伝送する波長850nmの信号光の損失は、1.9dB/kmとなった。これは、光ファイバ心線にプラスチック光ファイバを使用した場合の同波長での損失が通常250dB/km程度である事を考えると、伝送損失を大幅に改善することができたといえる。なお、耐衝撃性試験においては、8回目で断線した。
【実施例2】
【0043】
図2に示す車載用ケーブル10Bで、前述した実施例1と同じ光ファイバ心線13を用いるとともに、外径0.7mmの鋼製の抗張力体17を設けた。シース層の厚さは2.25mmとした。光ファイバ心線13と抗張力体17との間隔は1mmとした。
その結果、光ファイバ心線13が同じものなので伝送損失は実施例1と同様、1.9dB/kmとなり、従来のプラスチックファイバと比較して大幅に改善することができたといえる。なお、光ファイバ心線13の外径よりも外径が大きな抗張力体17を設けることにより、抗張力体17が衝撃を受けて光ファイバ心線13を保護するため、耐衝撃性試験においては、断線することなく合格した。
【実施例3】
【0044】
図3に示す車載用ケーブル10Cで、コア15を外径50μmの石英系のマルチモードファイバ(MMF)、クラッド16を石英系の外径80μm、プラスチック層12を外径150μmとした。
このとき波長850nmの信号光の損失は、3dB/kmとなり、従来のプラスチックファイバと比べて伝送損失を大幅に改善することができたといえる。なお、耐衝撃性試験においては、外径0.7mmの鋼製の抗張力体17が衝撃を受けて光ファイバ心線13を保護するため、耐衝撃性試験においては、断線することなく合格した。また、接続ロスは0.3dB以下と良好であり、実施例1、2と比較して数倍良好な結果であった。
【実施例4】
【0045】
図4に示す車載用ケーブル10Dで、コア15を外径200μmの石英系ガラスとし、クラッド16を外径235μmのプラスチックとした(MMF)。なお、クラッド16の外側にはプラスチック層12を設けていない。
このときの波長850nmの信号光の損失は、7.2dB/kmとなり、従来のプラスチックファイバと比べて伝送損失を大幅に改善することができたといえる。なお、耐衝撃性試験においては、外径0.7mmの鋼製の抗張力体17が衝撃を受けて光ファイバ心線13を保護するため、耐衝撃性試験においては、断線することなく合格した。また、接続ロスは0.2dB以下であり、良好であった。
【実施例5】
【0046】
図5に示す車載用ケーブル10Eで、コア15を外径10μmの石英系のシングルモードファイバ(SMF)、クラッド16を石英系の外径125μm、プラスチック層12を外径250μmとした。
このとき波長850nmの信号光の損失は、1.9dB/kmとなり、従来のプラスチックファイバと比較して伝送損失を大幅に改善することができたといえる。なお、耐衝撃性試験においては、外径0.7mmの鋼製の抗張力体17が衝撃を受けて光ファイバ心線13を保護するため、耐衝撃性試験においては、断線することなく合格した。また、耐衝撃性試験の前後における伝送損失の増加は0.1dB以下であり、シース層14の形状が楕円形(例えば、実施例2)の場合に比べて少なくなっている。これは、光ファイバ心線13がある部分13aの厚さを1.8mmとして、抗張力体17がある部分17aの厚さ2.25mmよりも小さくした効果であると考えられる。
【実施例6】
【0047】
図6に示す車載用ケーブル10Fであり、図5に示す車載用ケーブル10Eにおいて光ファイバ心線13と抗張力体17との間にノッチ18を設けたものである。
この結果、実施例5と同様の数値を示すとともに、光ファイバ心線13と抗張力体17との分離に要する時間が短縮できた。つまり容易に分離することができた。
【0048】
なお、本発明の車載用ケーブルは、前述した各実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
例えば、前述した各実施形態において、1本の光ファイバ心線13と1本の抗張力体17を含む場合について説明したが、この他、図10(A)に示すように、抗張力体17を挟んで両側に各々光ファイバ心線13を配置しても良い。また、図10(B)に示すように、2本の抗張力体17を設け、その間に光ファイバ13を配置するようにしても良い。この場合、全体の形状として図10(C)に示すように全体矩形状としても良いし、全体丸みを帯びた形状とすることもできる。なお、図10(C)および(D)においては、抗張力体17がある部分17aの厚さが、光ファイバ心線13がある部分13aの厚さよりも厚く形成されている。さらに、図10(E)に示すように、2本の抗張力体17を配置し、その間に2本の光ファイバ心線13を配置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の車載用ケーブルに係る第1実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の車載用ケーブルに係る第2実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の車載用ケーブルに係る第3実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の車載用ケーブルに係る第4実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の車載用ケーブルに係る第5実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明の車載用ケーブルに係る第6実施形態を示す断面図である。
【図7】オス型コネクタを装着したコネクタ付き車載用ケーブルと、メス型コネクタを装着したコネクタ付き車載用ケーブルとを接続する前の状態を示す断面図である。
【図8】オス型コネクタを装着したコネクタ付き車載用ケーブルと、メス型コネクタを装着したコネクタ付き車載用ケーブルとを接続した状態を示す断面図である。
【図9】実施例の構成やサイズ、試験結果等を示す表である。
【図10】(A)〜(E)は、車載用ケーブルの構成の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
10 車載用ケーブル
12 プラスチック層
13 光ファイバ心線
13a 光ファイバのある部分
14 シース層
15 コア(石英系ガラス)
16 クラッド
17 抗張力体
17a 抗張力体がある部分
18 ノッチ
20 コネクタ
21 挿通孔
22 固定部分
23 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英系ガラスの外周にプラスチック層を有する光ファイバ心線の外周に150℃よりも融点が高い熱可塑性樹脂からなるシース層を設けた車載用ケーブル。
【請求項2】
前記光ファイバ心線よりも径の大きな抗張力体を前記光ファイバ心線から離して配列し、前記シース層が前記抗張力体と前記光ファイバ心線とを一括して覆う請求項1に記載の車載用ケーブル。
【請求項3】
前記光ファイバ心線のコアおよびクラッドが石英を主成分としたマルチモード光ファイバである請求項1または2に記載の車載用ケーブル。
【請求項4】
前記光ファイバ心線がプラスチッククラッドファイバである請求項1または2に記載の車載用ケーブル。
【請求項5】
前記抗張力体がある部分の厚さが前記光ファイバ心線のある部分の厚さよりも厚い請求項2ないし4のいずれかに記載の車載用ケーブル。
【請求項6】
前記シース層の前記光ファイバ心線と前記抗張力体との間にノッチがある請求項2ないし5のいずれかに記載の車載用ケーブル。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の車載用ケーブルをその端末でコネクタ付けしたコネクタ付き車載用ケーブルであって、
前記コネクタが、前記車載用ケーブルに含まれる光ファイバ心線の径と実質的に等しい内径の挿通孔をその一端に有し、前記車載用ケーブル本体を固定する固定部分を他端に有し、かつ前記挿通孔と前記固定部分との間に前記光ファイバ心線を撓ませる空間を有し、前記車載用ケーブルの一端のシース層を除去して前記光ファイバ心線を剥き出しかつ前記抗張力体を切断し、前記光ファイバ心線を前記挿通孔に挿通し、前記光ファイバ心線の先端を前記挿通孔の先端よりも突き出す位置に収め、前記車載用ケーブルを前記固定部分で前記コネクタに固定したコネクタ付き車載用ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−47504(P2007−47504A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232526(P2005−232526)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】